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1955-05-09 第22回国会 衆議院 予算委員会 第8号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月九日(月曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 牧野 良三君    理事 上林山榮吉君 理事 重政 誠之君    理事 中曽根康弘君 理事 小坂善太郎君    理事 西村 直己君 理事 赤松  勇君    理事 今澄  勇君       赤城 宗徳君    井出一太郎君       稻葉  修君    宇都宮徳馬君       小川 半次君    河本 敏夫君       小林 一雄君    楢橋  渡君       福田 赳夫君    藤本 捨助君       古井 喜實君    松浦周太郎君       三浦 一雄君    村松 久義君       相川 勝六君    植木庚子郎君       太田 正孝君    北澤 直吉君       倉石 忠雄君    野田 卯一君       橋本 龍伍君    平野 三郎君       福永 一臣君    伊藤 好道君       久保田鶴松君    志村 茂治君       田中 稔男君    田中織之進君       滝井 義高君    福田 昌子君       武藤運十郎君    柳田 秀一君       井堀 繁雄君    岡  良一君       小平  忠君    杉村沖治郎君       西村 榮一君    川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         外 務 大 臣 重光  葵君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         文 部 大 臣 松村 謙三君         厚 生 大 臣 川崎 秀二君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  石橋 湛山君         運 輸 大 臣 三木 武夫君         郵 政 大 臣 松田竹千代君         労 働 大 臣 西田 隆男君         建 設 大 臣 竹山祐太郎君         国 務 大 臣 大麻 唯男君        国 務 大 臣 大久保留次郎君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 杉原 荒太君         国 務 大 臣 高碕達之助君  出席政府委員         内閣官房長官  根本龍太郎君         調達庁長官   福島慎太郎君         通商産業事務官         (大臣官房長) 岩武 照彦君  委員外出席者         防衛庁参事官         (防衛庁次長) 増原 恵吉君         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 五月九日  委員今松治郎君及び武藤運十郎君辞任につき、  その補欠として北村徳太郎君及び滝井義高君が  議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十年度一般会計予算  昭和三十年度特別会計予算  昭和三十年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 牧野良三

    牧野委員長 これより会議を開きます。  昭和三十年度一般会計予算外二業を一括して議題といたします。質疑を継続いたします。今澄勇君。
  3. 今澄勇

    今澄委員 今後予算委員会審議もずっと予定よりも延びて長くかかるであろうと思います。総理もお疲れでありましょうから、すわったまま御答弁を願ってけっこうであります。  私は、予算委員会における審議過程を通じて、鳩山内閣外交基本方針がまことに不明確であるということを、まずお伺いをいたさなければなりません。私は、総理大臣国際外交基本的な方針をどういうふうにお考えになっているかということを聞きたいのであります。現在の進歩いたしております、原水爆を含む兵器のもとにおいて、第三次世界大戦の勃発ということは、直ちに人類大半の死滅を意味するものであります。そのことはどんなに理屈をつけて、これが正義のためであるとか、民主主義のためであるとかいってみたところで、しょせん戦争を誘発するというそのことは、間違いなく最大の罪悪であります。アメリカ国民といえども、共産主義もこわいでしょう。だが、さらにそれよりも戦争の方がこわいであろうと私は思います。逆にまた、ソ連の場合も同様であろうと考えられるのであります。だから、米ソ両陣営の地域的な中間に位する日本総理大臣としては、いかにして世界大戦を防止し、日本戦争の渦中に巻き込まれないようにするかということが、最大な任務でなければならぬと私は考えておるのであります。この施政基本方針であり、予算編成政府政策中心である外交の根本的な方針について、お答えを願いたいと思います。
  4. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 今澄君のただいまの御意見、すなわち世界大戦を避けることが最大政府の重要な務めであるという御意見に対しては、まことに同感であります。その世界第三次大戦をどうして防ぐかということについては、やはり自由主義国家群協力関係を緊密にし、同時にソ連中共とも国交関係正常化して、そして戦争の防止に努めたいと考えております。
  5. 今澄勇

    今澄委員 今の総理の御答弁は、私と考えにおいては同感であるというのですが、単なる希望や願望にとどまったのでは、これは政治家内閣をとって責任を負うた政治とはならぬのであります。必ず政策となって現われなければならぬのであります。その世界の平和を維持していこうとする政策の基礎は、世界情勢分析がまずその前提とならなければならぬのであります。総理大臣は、米ソ関係国連現状など、世界情勢についてどのように御判断になっているか、世界は今緊迫しているとお思いであるか。日本の基地をアメリカに貸して日本自衛力を大いに増強しなければならぬほど、日本を取り巻く情勢が、緊迫しているとお思いであるか、これらの世界情勢について総理の御見解を承わりたいと思います。
  6. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 見方によりますれば、世界情勢緊迫しているとも考えられますが、しかしながら、第三次世界大戦の勃発しないよう努力をすることについては、一刻もゆるがせにすべきものではないと考えております。
  7. 今澄勇

    今澄委員 世界情勢米ソ関係であるとか、国連現状などについて、これは政策をきめる前提でありますが、総理大臣がどのように御判断な・さっているかということをお聞かせ願いたいのであります。
  8. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいま申しましたように、緊迫しているとも考えられる状態だと思うのです。
  9. 今澄勇

    今澄委員 私はやはり一国の総理としては、世界情勢について、こうなっているという判断に基いて、こういう政策のもとにこういう予算を組んだのだという答弁国会においてはなさるべきものであって、選挙のときだけいろいろと公約が出るというようなことでは、私は国民にとって不幸であると思いますが、専門の外務大臣がおられることでありますから、外務大臣にお聞きいたしましよう。  本国会において外務大臣は、外交演説をやっております。その中で、国際情勢をかよう分析をいたしております。ソ連は二月の政変によって、力には力をもってする政策に転換した。国際情勢緊張の度を増してきたと判断せざるを得ません。今総理は、見方によれば緊張しておるとも言えますというお話であったが、外務大臣は、この外務大臣施政方針で述べた国際情勢分析に何かつけ加えることがあるか、今なおさように思っておるかということについて、御答弁を願いたいと思います。
  10. 重光葵

    重光国務大臣 お答えいたします。私は外交演説をやりまして、その外交演説の中に今お話通り述べました。そう信じております。それが正しい国際関係客観的観察だと思っております。ただ、今つけ加えることがあるかというお話でございますが、私はこういうことをつけ加えたいと思います。かよう緊張した国際関係であることは事実でありますが、まだこれが破綻になるとは思っておりません。それと同町に、また将来の平和を確保する希望は、努力いかんによって十分に持てる、さように観察するが適当である、こう思っております。それからまた、世界の各方面において、平和の確保のためにいろいろな努力が行われておるということは、これまた私が申し上げるまでもないことであります。さよう考えております。
  11. 今澄勇

    今澄委員 私は、遺憾ながら今の総理並びに外務大臣が御判断になっておるよう世界情勢ではないと思うのであります。ここに現下の国際情勢の事実を一つ申し述べて、国際情勢がいかに東西対立緩和しつつあるかということについて、私は御注意を申し上げたいのであります。その第一は、ソ連オーストリアとの中立不可侵国家条約であります。これはソ連の譲歩によって中立保障せられ、そのために四囲の外相会議が開催せられ、イギリスイーデン首相は、米英仏ソ四国巨頭会談を提唱いたしております。国家国家との単独な取りきめではなしに、列強が集団的に中立保障の形をとらんとしつつある。西ドイツの独立にからむヨーロッパのこの現状というものは、いかに今の世界情勢が大きく転換しつつあるかということを物語るものであって、オーストリアラープ首相はかように述べておるのであります。オーストリアは将来中欧の他の未解決問題の打開に力を貸すことができる。オーストリア中立か、さらにその領土保全を四大国から保障されれば、オーストリアをめぐって紛争が起る危険を根絶できる。これはまた、欧州における戦争の危険をも大幅に減少させるものである。だがオーストリアは、依然として思想的には西欧世界の一員としてとどまるというのです。このオーストリアをめぐる現状というものは、世界緊迫が、今総理が言われておるように、力と力の関係に伸びつつあるというのではないと私は思うが、外務大臣のこれに対する御見解を聞いておきたいと思います。
  12. 重光葵

    重光国務大臣 お話通りオーストリア問題を中心にして、今緊張しておる国際情勢を、ヨーロッパ方面からどうかして緩和したいという努力が非常に行われておるということは、私もそう考えます。そうして、これがある程度の成功をもたらすということも希望され得るのでありますから、私は決して今国際情勢緊張がコントロールできないものだとは考えておりません。さきに申し述べた通りに、平和の希望を持って進み得るのだ、こう思っております。
  13. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は総理大臣にお伺いいたしますが、まだうんとあるのです。いま一つアジアアフリカ会議、これは世界人口の過半を占める十三億、二十九ヵ国が参加して、アジアアフリカの被圧迫民族植民地主義を批判し、平和を求めて立ち上っております。周恩来中共首相アメリカ中共会談の提唱がございます。特に注目すべきは、イギリスイーデンも、アイクダレス等の要人とこの中国周恩来氏とのいわゆる中米会談に賛意を表しておることであります。第四帝日は、台湾水域停戦気がまえ模様であります。イギリスは香港を拠点とする中共貿易のために、アメリカを説得し、中共国連加盟はすでに時期の問題であると外交消息通は語っておるのであります。以上の四点については、これは推測ではなしに、まさに厳然たる四つの事実であります。こういうふうな世界緊張緩和し、非常に東洋の形勢も変ろうかという、この根本的な認識を総理が持たずして、日本政策を定め、予算をつくるということはまことに危険であります。総理はこれらの厳然たる事実について、どのような御判断をなさっておるか、一つお答えを願いたいと思います。
  14. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 今澄君にお答えをいたします。私は、世界の各国民が第三次世界大戦を避けたいと熱望しておるということは、確かにあると思うのです。アメリカもそうです。ソ連もそうだと思うのです。しかしながら同時に、戦争は絶対に避けられるにきまったというように観測するのも、まだ時期尚早だと思っております。ですからして、戦争のないようにするために、やはり努力をしなくてはならない。ではどうして努力するかといえば、やはり自由主義国家群協力関係を緊密にして、力による平和ということも考えなければならないし、また誤解による国際間の不調和の生じないように、誤解をなくなすためには、国際関係正常化するということを共産主義国家ともしなくてはならない。そういうふうに痛切に考えております。戦争がないということを今判断するのは、少しまだ時期尚早であります。こういうよう考えております。
  15. 今澄勇

    今澄委員 私は、ここのところが各政党の見解の分れる非常に重大なところで、外務大臣は力と力の緊迫が一途に増加したという演説をするし、総理大臣はそうではない、非常に緩和はしたが、これで一ぺんに戦争がなくなるわけではないと言う。すでに総理外務大臣との間に国際情勢判断について見解の相違があります。集団安全保障というけれども、オーストリアの例を見ると、大国保障による、いわゆる中立条約によるその国家安全保障もまた現に行われつつあるのであって、私は、この国際情勢判断内閣総理大臣がいかにするかということによって、その岡の運命は定まると思います。私は総理大臣に、どうか一つこれらの国際情勢を御検討願って、世界話し合いでいろいろと紛争解決ようという方向に向っておる。総理答弁も、戦争の危険が全然なくなったわけではないが、そういう方向へは向いておるという答弁でありますから、これ以上私は深く聞くのはやめて、具体的な問題をこれからお聞きすることにいたします。  まず私は、この東西対立緩和が一段と進んで、アメリカ中共を承認するという、いわゆる金門島の問題を解決すると同時に、一挙にそういう方向に行くというと、日本は取り残されはしないかという不安を第一番に持ちます。四月二十四日、ラドフォード統合参謀本部議長ロバートソン米国務次官補台湾蒋介石総統と会見し、金門島などの問題を協議して、緊張緩和態度を大体きめておる。アイク大統領ジューコフ国防相に書簡を送って、この国府と中共との間の問題に対する見解を述べておる。かよう世界情勢の急転換に、平和を求めての人類努力が大きく実を結ぼうとしているときに、日本が今最も考えなければならぬのは、ソ連との外交であります。  そこで私の具体的質問の第一は、ソ連との外交をいかに進め、ロンドン会談に臨む鳩山内閣は、基本的にいかなる方針を立てているかということを総理からお伺いをいたしたいと思います。
  16. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ソ連との関係について基本的に考えていることは、国際関係正常化して、戦争後の講和条約をできるだけ早く結びたいというのが基本考え方であります。
  17. 今澄勇

    今澄委員 その基本考え方は、前前からのことでわかっておりますが、それでは具体的にお聞きすると、外交交渉というものは相手のある仕事でありますから、その進め方には、弾力性ある柔軟方式が望ましいでしょう。だがしかし、交渉方式には二つあるのです。懸案は提示するにとどめて、これらの従来の懸案あと回しにして、まず平和関係を成立させるというやり方が第一であります。もう一つやり方は、まず懸案話し合いを先にやって、これらの交渉過程で主張すべきは十分主張していき、これらの懸案解決された後に国交の調整をはかっていくという二つ方法があります。この二つ方法のいずれの道を鳩山内閣基本的方針としてとろうとしておるのであるかということを、お答えを願います。
  18. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は国際関係正常化するのに、どっちの話を先に進めた方がいいかは、これは外務大臣考えによってきめていった方がいいと思っております。外務大臣から答弁してもらいます。
  19. 重光葵

    重光国務大臣 この交渉にどういう方針をもって臨むかということを、今秋から申し上げるのは非常に心苦しゅうございます。しかし私はかような問題については、根本的に双方の考え方が一致しなければ、国交正常化ということはできぬと思うのであります。重要な問題について考え方を一致させるように、まず努力しなければならぬ。そのときにおいて国交正常化ということが容易にでき得る、こう考えております。しかし、それは何もかもこちらの立場が認められなければならぬとか、また向う立場も認められなければならぬという意味ではございませんが、根本問題については、十分に意思の合致があることが国交正常化前提である、こう考えております。
  20. 今澄勇

    今澄委員 この点は非常に大事なところで、外務大臣にもう一ぺん聞くのでありますが、外交交渉やり方としては、まず平和関係を樹立して、あといろいろ話をしようという考え方と、とにかく懸案解決しなければ話はできないんだ、交渉は持たないんだという考え方二つある。これは国がよその国と外交するときの基本的態度として、どうしてもはっきりしてもらわなければならぬのです。このいずれの方針をとるかということを、簡単で、一分間でよろしゅうございますから、明確にお答えを願いたいと思う。
  21. 重光葵

    重光国務大臣 私の考えておりますことは、今申し上げた通りでございます。
  22. 今澄勇

    今澄委員 そういうことであれば、気の毒ですけれども鳩山総理に聞かなければならぬ。あなたは参議院における曾弥議員質問に対して、対ソ外交についてはこうだといって答えていらっしゃるのです。参議院答弁することができて、どうして衆議院で答弁することができませんか。外務大臣の今の答弁は、私には何のことやらわかりません。私は総理大臣から、懸案解決を先にして平和閥係を結ぶのか、先に平和関係を結んで、それから懸案解決に入るのか。一体内閣基本方針があるのかどうか。それからお伺いをいたしましょう。
  23. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 とにかく戦争をしていた国がそのままになっているのでありますから、講和条約を作りたい、これが基本方針である。講和条約を作るのには、国際関係正常化したいということだけを解決して、懸案の問題に少しも触れないということは、私は講和条約の体裁をなすものじゃないだろうと思うのです。それですから、国際関係正常化するには、自然と懸案になっているものも話し合いをしなくちゃならぬ。しかしどっちの話を先にし始めるかということは、やはり外交上のタクティックスだと思いますから、外務省においてやるのが当然で、しろうとが口にすべきものじゃないだろうと考えておるのであります。
  24. 今澄勇

    今澄委員 鳩山内閣の中におけるそういった講和方式については、今あなたのお話から聞くと、講和条約を先に結ぶように手を握って、それから懸案解決も漸次話し合うというふうに受け取れましたが、これは重光外務大臣と違います。あなたの内閣は、二つの違う意見があるのです。その二つ意見のどちらをとるかというところに総理大臣としてのあなたの職責があると思います。だから私は、日本国民鳩山内閣をたよりながっておるのだと思いますが、この程度にしておきます。  もう一つ聞きたいのは、鳩山総理は三月三十日の参議院予算委員会において、こういう答弁をしていらっしゃいます。私は終戦宣言のみで日ソ関係正常化することを望んでいない。なぜなら、ソ連の一方的宣言懸案解決するものではなく、無意味になるからである。そこで、宣言が出るときは懸案解決されているときでありたい。この参議院における三月三十日における答弁と、今のあなたの御答弁とは大へん違います。その後の情勢の変化で変更をなさったのでありますか、どうですか、一つお聞きしたいと思います。
  25. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は講和条約を結ぶのには、懸案問題を解決する必要があると思っているのであります。ですから、参議院のときの答弁とただいまの答弁とは、別に矛盾をしているとは思っておりません。
  26. 今澄勇

    今澄委員 それでは、あなたが話された懸案解決されておるときでなければならぬという懸案は、一体何と何でございますか。
  27. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 懸案とはいろいろありましょうが、あなたも御承知の通りの、それらの問題を考えております。
  28. 今澄勇

    今澄委員 私は、不幸にしてあまり承知しておらぬのです。何と何があなたの言われておる懸案であるかということを、お教えを願いたいと思います。
  29. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それは漁業の問題もあるし、未帰還戦犯者及び抑留者の問題もありますし、領土の問題もありますし、それらをさして言ったのであります。
  30. 今澄勇

    今澄委員 私は今の総理答弁で、漁業の問題、未帰還者の問題、領土問題等話し合いをしつつ、これらの問題の解決の目安をつけながら講和条約に入りたいということが、鳩山内閣ソ連に対する、大体ロンドン会議における基本方針である、かように今お話を聞いて判断をいたしましたが、これで大体よろしゅうございますか。
  31. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その通りであります。
  32. 今澄勇

    今澄委員 私は総理に、この世界情勢のもとにおいては、ぜひ一つソ連との外交正常化し、戦争状態を一日も早く解消して、平和状態に入ることに努力してもらいたいと思います。  そこでロンドン会議がどれだけかかるかわかりませんが、これらの懸案、今あなたがおっしゃいました三つの懸案と、それから講和関係等がだんだん話し合いができて、平和状態が成立した場合には、何らかの形による相互の代表声設置考えなければなりませんが、この代表部設置をあなたはおやりになりますか。
  33. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国際関係正常化すれば、当然なことであると考えております。
  34. 今澄勇

    今澄委員 私の申し上げたのは、講和条約は結ばれないが、しかしながらソ連との間に戦争終結宣言が近く行われようという平和な状態に入ったときに、実質的な承認——国交回復意味合いにおいて、その事前折衝等もあろうから、代表部というものをお互いが置きたいということになるだろうと思います。そういう際に、代表部をお置きになりますか、どうですかという意味であります。
  35. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は自分の答弁でいいと思うのですけれども、専門的のことですから、外務大臣から答弁してもらいます。
  36. 重光葵

    重光国務大臣 私は、国交正常化前に正式の代表部を設けることは困難であると考えます。
  37. 今澄勇

    今澄委員 大体外務大臣は、今の世界情勢並びにさき総理が述べた平和に対する努力という近代的な感覚から、はずれておると思うのです。私は総理大臣にもう一度聞きたい。そういうことでは、いつまでも関係がつかない。中国日本との貿易の問題についてもそうなんです。われわれは、実質的な方針からまず入って行って、そうして漸次講和に持っていくんだという総理の本会議における答弁を忘れておるものではないのです。総理ば本会議において、講和条約はむずかしかろう、けれども一つ一つ個々の問題を、懸案解決し、そうして実質上の外交関係に入る方が今のところではいいんだという答弁をしておるのです。だとするならば、ロンドン会議の一応の成果が見えれば、まず正式の講和条約前に、その内交渉をすべきいろいろの機関を作らなくちゃならぬということになるんですが、もう一度総理の御見解を聞いておきたいと思います。
  38. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ロンドン会議が始まれば、そうすれば国際関係は間もなく正常化せらるるものと思いますから、その間に実質的の代表部を設くる必要はないだろうと思っております。
  39. 今澄勇

    今澄委員 総理がそういうことだから、おそらくあなたがソ連との外交外交と言われるけれども、アメリカの制約を受けて、だめなんではないかという批評が現われてくると思うのです。中共に対しても、これは同じことなんです。私は中共政府に対して、おととい外務大臣答弁によると、向う通商代表部を認めるということは、その限りにおいて、その範囲内で中共を認めることになったと外務大臣ははっきりおっしゃっているのですが、私は、中国に対して日本代表機関を現実の講和条約前に置かなければ、中国との間の国交もまたこれはうまく行かないのではないかと思う。この中国に対する総理考え方は、それではどうです。
  40. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 中国代表部——商売をする、貿易をすることについて、中国代表部日本に置かれるということは、これは認めざるを得ないと思っております。民間の代表部です。私は、日中貿易促進議員連盟の諸君と、それについては協力を約束いたしました。
  41. 今澄勇

    今澄委員 そう総理のあげ足をとるわけではないから、一つゆっくりと御答弁を願いたいと思うのですが、中国にそう民間というのはないのです。中国は、政府貿易も何もみな公団を作ってやっているのですから。これの日本における通商代表部を認めるということをあなたは言われたわけです。それからいま一つは、議員連盟で総理に求めたその内容にあなたから承諾の判が押されていることは、その内容が今度取りきめた中国との通商条約の内容と変らないのですから、同じなのですから、今それには責任を持つと言われた総理答弁は、それでは今回の日中協定に総理は責任を持って、これらの問題に一つ協力をする、こういう意味に解して私は非常にうれしいと思います。どうかそういう意味において、十分一つ御尽力を願いたいと思います。
  42. 牧野良三

    牧野委員長 総理から何か御答弁がありますか。
  43. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 質問はないのでしょう。ただ私が協力を約束いたしました文書の中には、民間通商代表部を相互に設置するということに書いてあるものですから、それに対して私は協力を約束します、こう申し上げたのであります。その中に書いてある文字を私は言ったのであります。民間の希望については、できるだけ協力をするということを私は議員連盟の諸君に約束をしたのであります。
  44. 今澄勇

    今澄委員 大へん恐縮ですが、今マイクが切れて聞えなかったので、不可抗力ですから一つ……。
  45. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私が約束をした原文の方には、政府は両国の民間通商代表部を相互に設置することに同意し、中国代表には左の諸点に万全の措置をとること、一、生命財産の安全並びに居住の自由、二、業務執行上必要な便宜の供与、三、通信の自由、こう書いてあります。その民間の希望に対して、できるだけ協力をいたしますと私は申しました。
  46. 今澄勇

    今澄委員 今読み上げられました通商の自由、生命財産の保護等々、それらのものについて、鳩山内閣が責任を負うという答弁でありましたから、私は深く追及はいたしません。この点はまた同僚議員から一つお聞き願うことといたしましよう。  そこで問題のソ連との外交に戻るのでありますが、私は杉原防衛庁長官にお聞きしたいのです。一月末、あなたはドムニッキー氏と会見しておられるが、それは、民主党の外交委員長としてお会いになったものだと私どもは考えておりますが、杉原長官からちょっとそのときの模様をお答え願いたいと思います。
  47. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 お答えいたします。私はドムニッキー氏と一度も会ったことはございません。
  48. 今澄勇

    今澄委員 ソ連との接触をするのに外務省は谷正之氏、それから片方は杉原氏を中心に連絡をするということに閣議できまっておるのに、全然連絡もしないというようなことはないでしょう。もう一度一つ答弁を願いたいと思います。
  49. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 ただいま申し上げた通りでございます。
  50. 今澄勇

    今澄委員 あなたは、ドムニッキ一尺に連絡を一度もいたしたことはありませんか。
  51. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 ございません。
  52. 今澄勇

    今澄委員 それでは、もしわれわれが調査の結果、あなたがドムニッキー氏に何らかの形において連絡をとった。これは電話でも手紙でも何でもかまわぬが、連絡をとったという事実が明らかになったときは、防衛庁長官は責任をおとりになりますか。
  53. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 私は責任を持って申し上げております。
  54. 今澄勇

    今澄委員 それではこの問題はこの程度で一つおきましょう。  そこで私は、今度はアメリカとの外交の問題について一つお聞きをいたしたいと思います。そこで、対米外交でありますが、ただいま総理は、中共との問題についても御回答なさり、それからソ連との外交の問題についても御回答をなさいました。本会議答弁においては、われわれのソ連中共との接触は十分アメリカにも話して了解が得てあるというのですが、今お話になった程度まで了解が得てあるのですか。アメリカもこれには反対しないであろうというあなたの抽象的な答弁は、一体具体的にはアメリカはどの線までやってよろしいというのか、全部日本政府に一任して、好きなようにおやりなさいというのか、どういうふうになっておるか、一つ私は総理からお答えを願いたいと思います。
  55. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 アメリカはむろん承知をしておることと思うのです。それに対し異議を申し述べて参りませんから、承知をしておると解釈しております。
  56. 今澄勇

    今澄委員 あなたはそうおっしゃるけれども、アメリカはクーパー法の上院通過並びに修正案の通過等で、日本に対する報復的な経済措置をとってきたので、財界は、これはどうにもならぬといって大きく陳情しておるではありませんか。これは全然あなたの答弁とは通うが、どういうわけでアメリカではそういうクーパー法なり、その他日本を特別に苦しめるような報復的な措置までとっておるかということをお聞きしたいと思います。
  57. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は報復的な措置とは考えませんが、外務大臣から答弁をしてもらいます。
  58. 重光葵

    重光国務大臣 日ソ交渉は、むろん日本が独自の見解でやるわけであることは、これはもう申すまでもございません。しかし米国と従来密接なる協力関係を設定いたしております以上、十分に連絡をとって、いやしくも誤解のないように進めたいということは当然のことでありますので、その手段をとっておるわけでございます。しかし今お話のクーパー法案、これは日ソの交渉の問題には何も関係のないことだ、こう私は考えております。
  59. 今澄勇

    今澄委員 この点も、時間の関係があって、この程度にしておきますが、とにかく国民から見ればたよりなく思うでしょう。私は政府外交政策は、国民が非常に不安だと思うのです。それは、実際の様子が国民にわからないからなんです。率直に国民が聞きたいと思うことを、一つ私は総理にお問いいたします。一つ率直簡明にお答えを願いたいと思うが、今度の防衛分担金に関する折衝において、総理は、米国側の態度は何と無理押しをして強引で、毎年々々かような折衝が続いたのではどうにもならぬとお思いでございますか、それとも、米国側の言うことは当りまえの話なんで、まことにわれわれはそれに従うべきはずであった、従わねばならぬとお思いになりますか。一体あなたはどういう御感想ですか、一つそのアメリカ態度についての総理の御見解を聞きたいと思います。
  60. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、日本の主張をアメリカはよく了解してくれたと考えております。
  61. 今澄勇

    今澄委員 結論として、アメリカのとった今回の態度は、当然なのであるというふうなお考えでありますか、はっきり一つ聞いておかぬといけませんが……。
  62. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 アメリカとしてはアメリカの見地から、当然主張すべきことを主張したと思っております。
  63. 今澄勇

    今澄委員 だけれども総理は、日本総理大臣なんですから、この交渉過程を通じてアメリカ側が主張してきたことは当然なことで、これは共同声明になったが、日本政府がこれに賛成をするのは当然のことである。アメリカのとった態度その他もこれは当然のことである。かようにお思いになるわけですね、そう了解していいですか。
  64. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日本の主張をよく了解をしてくれたと考えております。
  65. 今澄勇

    今澄委員 そこで私はそれ以上追及いたしますまい。総理としては、アメリカ日本の主張をよく了解してよくやってくれた、こうお思いになっておるだけであります。そこで今度の日米交渉中心になっておるものは、安全保障条約と行政協定がこの交渉の基礎になる条約なり協定でありますから、総理国会においての答弁ように、この条約を基礎としてアメリカとの折衝をおやりになったわけですね。
  66. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そうです。
  67. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は反対党の社会党ですから、行政協定などは全くとんでもない内容でもあるし、不平等であると思って、われわれはあなたとは態度が違うのです。だけれども民主党というのは、今あなたが言われたように、安全保障条約、行政協定をお認めになったという立場から政権をおとりになっておるものとすれば、私は総理に一言申し上げたいことがあるのです。それは、こういう安全保障条約なり行政協定によって防衛分担金の問題などは相談をすることになっておるということならば、最初にアメリカ側と相談をして、そうしてわれわれは今度挙選に臨むのだが、これとこれとこれの見通しは一体どうかということを謙虚にお聞きになって、その結果これこれの削減が可能であるということをはっきりと確かめて、それから国民の前に民主党も公約をして、政府をとっておる、内閣をとっておる与党なのですから、国民に公約をしていくという態度が、総理大臣としての慎重な態度であり、かつは日本国家の利益であり、それがまたこれらの条約に示されておるところの当然の成り行きだと思います。なぜあなたはそういうアメリカとの折衝を先にやらないで、勝手に防衛分担金を削減して国内の民主安定費に充てるなどというようなことをおっしゃったわけであるか。私どもはどうも合点が行かないのです。ところが日米安全保障条約を認め、行政協定を認める限りにおいては、この条約に示された精神にのっとってまずアメリカと接触すべきものを、接触されないで、その個人的見解あるいはその政党的見解国民に発表なさいましたゆえんは一体どこにありますか、お伺いいたしたいのです。
  68. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、そういうことは日本政府が自主的にきめて、責任をもってやるべきものと思いました。
  69. 今澄勇

    今澄委員 日本政府が自主的にきめてやるべきものと思いますと言ったって、あなたは今安全保障条約並びに行政協定を認め、これの上に立って折衝したとおっしゃったでしょう。さすれば、その安全保障条約、行政協定は、日本内閣だけで防衛分担金の問題をきめることができないようになっておるのじゃありませんか。そういうできないようになっておる条約を認めておる政府が、勝手に自分でこう思ったといって発表することは、間違いではないかと私は言っておるのです。
  70. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は間違いとは思わないのです。政府は独自にそういう見解をきめて、そうして責任をとって実行すればいいと思っております。
  71. 今澄勇

    今澄委員 政府は独自の見解をとって折衝したが、見解通りに行かなくて、防衛全体の費用をついに削減することができない結果になったとあなたはおっしゃるわけですね。
  72. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は過日も申し上げましたけれども、防衛庁費はどうしても二百億ぐらい上るだろう。その防衛庁費を日本でまかなえば、それに相当する金額は防衛分担金の減額によって得たい。そうして千三百二十七億の線において両方がととのえばよろしい、こう思ったのであります。
  73. 今澄勇

    今澄委員 私はこの問題は重大でありますから、一つゆっくりとお聞きをしたいと思います。総理は、よくお考え願わなければならぬのは、あなたの公約というのは、アメリカの防衛分担金を削減をして、日本の防衛庁費も八百億ぐらいに押えて、それでその残りの金を、百億になるか百五十億になるか、とにかく民生安定の費用に回すというのがあなたの公約であったのです。その公約をなさるなさり方は、あなたがほんとうに日本国家の利益を考え総理大臣ならば、そういう選挙目当の公約をしないで、事務当局をまず十分に活用し、アメリカと接触をとりつつ、これらの防衛分担金並びに防衛費の問題で十分な接触をすることがアメリカの感情を刺激しない一つ方法でもあるというのです。これは現実論ですよ。それをあなたが勝手にこうやるのだと言ったって、カントリー・チームもあれば、防衛庁の予算などは顧問団を通じて筒抜けなんですから、それが今度の交渉の結果に大きなマイナスを招いた原因であって、総理大臣の責任が大きいというのです。だから一党の利益、一個人の利益を常に思って、日本は大東亜戦争に、時の政治家が心の中ではどうにもならぬと思いながら、突入したではありませんか。あなたもそのときのお一人でしよう。私はやはり今度の場合も、一党の利益、鳩山内閣の利益よりも国家の将来を思いたいのです。そうだとするならば、アメリカ側に、まず事務当局を活用し、十分折衝し、そうして防衛分担金というもののめどをつけてやられるということが必要ではなかったかということをお聞きしておるのです。この点についてもう一度御答弁を願いたいと思います。
  74. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、内閣方針内閣が自主的にきめなくてはならない、そうしてアメリカ交渉すべきものは、それがきまった後においてするのが順序だろうと思っておりました。
  75. 今澄勇

    今澄委員 そういう御見解なら、あなたは現実というものを全然意に介さないのです。私は、鳩山内閣が今回の予算編成の上に、三回も閣議を流して大へんに苦労した根本理由はそこにあると、かようにあなたに申し上げておきます。  それから、大蔵大臣にもついでに申し上げなければならぬのですが、おとといの質疑応答で、飛行場の拡張その他設営の七十九億幾らという金額を、防衛支出金のもう一つの金額に入れて、ちゃんと明文に出ておるにもかかわらず、そういう問題に対して、あなたの属僚の局長さんから聞かなければ答弁のできない大蔵大臣を見て、私はまことにどうも不勉強の至りであると思いました。そこで私は 大蔵大臣でも外務大臣でも鳩山総理でもけっこうですが、日本が防衛分担金をアメリカになぜ払わなければならぬか。それは日米安全保障条約、行政協定の線から出ておるのだが、これは今鳩山総理の言っているように、日本の自主的な政府見解できめていいものか、それともアメリカと相談しなければだめなのか、しかもそれはアメリカ側が期待をしておるのであって、日本が最終決定をするのか、何が理由でアメリカと相談をしてきめなければならないのかという、政府としての解釈の根拠を一つお聞きをしたいと思います。総理、外務、大蔵大臣三者のうち、どなたでもけっこうであります。
  76. 重光葵

    重光国務大臣 それは今お話通りに、これは条約上の規定から来るわけでございます。そう心得ております。
  77. 今澄勇

    今澄委員 条約上の規定は、われわれ見ているのです。あなた方はその条約上の規定からこれを義務と思っているのか、それとも、日本政府が自発的にきめて協力をする。向うが期待するものに対する自発的な協力なのか、どういう根拠に基いて防衛分担金をお払いになっているのか、あわせて諸外国の例も御存じならばお聞かせ願いたい。
  78. 重光葵

    重光国務大臣 これは約束の結果払っておるのでありまして、約束を守るために払っておると、こう申し上げて少しも差しつかえないと思います。それから諸外国の例は、ヨーロッパの防衛組織の点についても、いろいろ例があろうかと思います。しかしそれは、私は今市し上げる材料を持ちません。
  79. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は、この問題は、今国民日本予算編成の中でどうして一体その金をアメリカに払うか、その金がこんなに増加するのだろう、自分の国の防衛は自分の国がやるのだというけれども、どうしてよその国に強制せられて、日本は防衛庁費をふやすのだろうという大きな疑問が国民にあるのです。一体国民生活をどの程度にはじいて、どの程度の分野においてアメリカに金を払い、防衛経費を計上するのか。これは日本政府の一存では全然だめだとすれば、弱ったものだなと国民は思っているでしょう。そこで私は申し上げておきたいのですが、大体防衛分担金というものについての吉田内閣のときからのいきさつをちょっと総理に申し上げて、私は総理並びに外務大臣の今度の交渉過程における態度をお聞きしたいと思うのです。防衛分担金というのは、昭和二十七年から予算に計上された経費を見ると、その性格ははっきりしておるのです。行政協定二十五条二項(b)において「合衆国が輸送その他の必要な役務及び需品を日本国で調達するのに充てるため、年額一億五千五百万ドルに相当する額の日本国通貨を合衆国に負担をかけないでその使用に供すること。」としておるのです。そこでこの一億五千五百万ドルは、昭和二十六年の終戦処理費——これは朝鮮戦争の翌年で米軍六個師団が駐留しておったときなんです。九百九十九億円に時の物価の高騰率三十%を見込んだ千三百億円を二十七年の米軍駐留費用として推定をして、これを基礎にして割り出し、日本円の五百五十八億円に相当する金額を在日合衆国軍交付金としてきめたのです。なぜ日本が負担するかということに対する吉田内閣見方は、これを負担する理由は、在日米軍の共同及び相互防衛のための経費をまかなうためである。駐留軍の経費は二種類に分れておる。その一つ基本的な経費で、他国に駐留するのに要する軍人軍属の俸給、軍需品、食糧などの経費、その二番目は派生的経費で、受け入れ国に駐留するための宿舎、土地、受け入れ国の国民の労務その他の役務、備品、消耗品などに要する経費であって、大体各国が負担をしておるのはこの派生的な経費だけなんです。そこで基本的な経費は各国とも負担しておらない。負担するのは派生的経費だけで、この負担をするやり方に三つあるのです。定額負担というのはイギリスアメリカ協定あるいはアメリカ・イタリア協定による事務処理費の定額負担で、イギリスは五千四百万ドル、イタリアは一億四千六百万ドル負担をしておるのです。これはいわゆる定額負担の方式による派生経費の負担であります。第二掛目は一定.種類の経費別負担という。これはアメリカと豪州が協定しておる米豪協定の場合であります。もう一つは定額負担と経費別負担との折衷案、これが日本の場合で、日本の場合は例外になっておるのです。これが一億五千五百万ドルで役務及び需品の一部を日本国が負担をすることになっておるのです。だからこの日本の負担方式は、つまり派生的経費についての定額経費別負担方式であるということになるのであります。だから要するに駐留軍の派生的費用を基礎にして算出されたものであって、この点は行政協定と岡崎・ラスク会談の議事録録によって——議事録では明確ではありませんけれども、その本質は駐留軍費に見合うもので、駐留軍が減少し、米側負担が減少すれば、派生的費用を担当すべきわが国の割合いは、それに応じて日本側角掛も減少しなければならぬのです。岡崎・ラスクの議事録で、岡崎外相は日本の防衛費の増加にかんがみて防衛支出金の減額を要請したのに対して、ラスク氏はそのような考慮を払う——いろいろあるけれども、払うと言っているのです。これによって分担金の削減というのは、日本の防衛力の増強に応じて米側は考慮を払うということになる。当初の趣旨である分担金の削減が、駐留軍の派生的経費と見合って、向うの経費が下れば日本の経費も続けて下るという解釈から、岡崎・ラスク会談というのは一歩後退をして、非常に日本側が不利になったのです。だからこういうこれまでの防衛分担金に関するアメリカ日本との折衝、その了解事項、さらに岡崎・ラスク会談によって百歩譲ったけれども、それは間違いであったというような、かくのごとき法律的な解釈からいくならば、私は重光外相はもう少しアメリカに対して、なぜ今度の場合においても譲歩をしないかということが追究できるはずだと思うのです。    〔委員長退席、上林山委員長代    理着席〕  あなたはこの解釈についてどういう御見解ですか。なぜ一体アメリカがこの解釈に従わないでやっておるものをやすやすとそれで引き受けて帰ってきたのですか。鳩山総理はまことに今回のやり方アメリカとしては了解のいくいいやり方だなどとおっしゃっておりますけれども、この精神と吉田内閣答弁と、この行政協定並びにこういうものの解釈からして考えてごらんなさい。一つアメリカ態度は筋が通っておらぬじゃありませんか。日本政府が常に——あなた方吉田内閣よりもまだもっと押されているじゃありませんか。この基本的な解釈と見方について、外務大臣でよろしゅうございますが、なぜあなたはこれを突っ込まなかったのですか。
  80. 重光葵

    重光国務大臣 今お話の岡崎・ラスク議事録、それは私もその通りに了解をいたしております。その筋は、つまり日本が防衛力の漸増をやる、増強をやるということに応じて、アメリカ側も防衛分担金の軽減の話に応ずる、こういうことが筋だと思います。それに違いないのであります。(「それ以前の問題がある。アメリカ軍の分担金支出の問題がある」と呼ぶ者あり)ところがアメリカ軍の維持費です。このアメリカの駐留軍が非常に激減したというふうなことも伺いましたが、私どもの調べにより、また向うの報告によりましても、その当時とあまり激減はございません。これが今報告に接したところなんでございます。そういうふうに相なっております。
  81. 今澄勇

    今澄委員 私は今の外務大臣ようなまるっきり話にならぬ答弁では仕方がないが、ちょっと聞きますが、アメリカ軍は今幾ら駐屯して、何個師団いて——もとは六個師団おったのですが、費用は一体幾らくらいですか。わかっているなら、そんな連絡があったなら、一つ教えてください。
  82. 重光葵

    重光国務大臣 兵力の減少がないという事実だけは申し上げられますが、兵力についてはこれは私の口から申すことができぬことになっているそうですから、どうぞあしからず。
  83. 今澄勇

    今澄委員 あなたは数字は今来たからと言ったじゃないですか。だからそういうふうに、一体アメリカの軍隊が幾らいて経費が幾ら、日本の自衛隊が幾らできて経費が幾らということもわからないで、今私の言ったあれがありますか。政府だけにはそれがわかっているのじゃないですか。そのわかっている政府アメリカとそれらの問題をひっさげて交渉ができないということになるが、国民の側では実際黙ってその政府を見ておるわけにはいかぬじゃないですか。あなたがされた今回の共同声明が、岡崎・ラスクの議事録よりもさらに後退しておるということを私は言うのです。とにかくアメリカの駐留軍は六個師団いたのが大体二個師団に減っておると言われておるのです。あなたは一つも減っておらぬと言うけれども、減っておると言われているのです。政府はどう思って、いるかしらぬが、基礎があるなら御報告願いたい。しかも岡崎・ラスク会談の前の安全保障条約には日本の防衛力増強を期待するというのです。向うが期待をしておるだけなんです。だから防衛力増強が必ずしも義務であるというわけはないのです、期待をするというのですから。だからこの日米安全保障条約の期待をするという文字と、今の岡崎・ラスク会談と、そうして今度の共同声明とを私が並べてみると、今言った法的根拠によって日本アメリカにもっと強力に主張をする基礎があるのです。鳩山内閣総理大臣が言われたように、十分アメリカが聞いてくれたなんということはありません。今の理論的なあれから言うと、聞いてくれておらぬじゃありませんか。それに対して外務大臣見解一つここで聞いておかなければならぬのです。
  84. 重光葵

    重光国務大臣 私の交渉ぶりについて御不満を承わりました。しかし私どもの大眼目としておるところは、前年度の防衛費のワク内でこの問題をおさめる、これがまた実質的に日本の条約上期待されておる防衛力の増強ということになるんだということを向うに説得することに主力を置きました。そうしてそのことにつきまして向うの了解を得て、その増強の点については防衛分担金の軽減ということがこれに伴って行われて、その前年度のワク内でこれをおさめることができた、こういうふうに考えておるのでございます。
  85. 今澄勇

    今澄委員 それはもう答弁がまるっきり違うのです。そういうことだから、国民は全然納得できませんよ。今私がるる述べたあの筋道で行くと、今度の日米間の取りかわしの三百八十億円の共同声明は、これはもうまったく百歩から今度は千歩後退した非常な妥協ですよ。これは率直に申せば吉田内閣総理大臣のときよりもむしろ大へんな妥協ですよ。私はこういう妥協をしなければならぬようになった原因は、まず大使も私は問題だと思うが、アメリカの井口大使から防衛分担金の折衝について、一体事前に連絡がありましたか、どうですか。閣議にあなたはそれを報告なさいましたか、御答弁を願います。
  86. 重光葵

    重光国務大臣 この問題については、出光とも絶えず連絡をとっておりました。
  87. 今澄勇

    今澄委員 そうすると、出先と連絡をとれば、井口大使もアメリカの意向がわかっているはずです。アメリカの意向がわかっているやつを閣議にかければ、そんなものを国民に約束してもうまくいかぬということがわかっているじゃありませんか。あなたはなぜ閣議で主張しなかったのですか。これはうまくいかなそうだぞ、アメリカはこういうふうな態度だぞということを、専門の大臣としては外務大臣が一人じゃないですか、あなたがそれを閣議に報告して閣議の了解を求め、政府態度をきめるのじゃないですか。それをあなたが事実のことを勇気を持って報告をしなかったからこそ、鳩山内閣はこんなつまらぬことになったし、将来とも大きく、来年度の防衛費にまで負担を受けたんじゃありませんか。あなたの責任じゃありませんか。あなたはどう思いますか。
  88. 重光葵

    重光国務大臣 よく御質問の趣旨が私にはわかりかねますが、しかし防衛の費用を前年度のワク内におさめたいということは、これは政府の惑星でございました。その意見を具体化して、それにおさめることが私の交渉の義務だ、こう思っておりました。
  89. 今澄勇

    今澄委員 もう一ぺん申しておきたいのは、自衛隊にはカントリ一・チームがついている、いわゆる顧問団だから、防衛庁の経費が当初九百億幾らであったということも、みんなアメリカ側に筒抜けでしょう。それを大蔵省は八百何億か何かに査定しましたね、そういうやつも筒抜けでしょう。そういうように、アメリカから見ますと日本は防衛庁費をどんどん削って民生安定にまわすというようなことを、あなたの方は勝手に言っているのです。そして井口大使からアメリカ態度がこうだぞという連絡がなければ、日本のかような重大な問題に対して井口大使は怠慢そのものですよ、もし井口大使がアメリカ情勢を報告したとすれば、そのアメリカ情勢日本外務大臣が閣議で報告しなかったということは怠慢そのものですよ。そういう報告があれば、閣議としてはもっと慎重に防衛庁の経費の削減、あるいは民生安定費の大蔵省の査定の方針だって、もっとやりようがあったと思います。これは一萬田大蔵大臣の責任というよりは、外務大臣のあなたがあなたの職責に忠実ならざるゆえなのです。一体井口大使から連絡がなかったのか、連絡はあったけれども外務大臣が閣議に報告しなかったのか、どちらですかということを、私はあなたに聞いているのです。電光さん、お答え願いたい。
  90. 重光葵

    重光国務大臣 アメリカ側の防衛増強に対する希望は、単に出先大使の連絡のみでなく、東京でもよくわかっておりました。これは私は閣僚にも十分に話をしてあります。しかし、そうでありますから、さようアメリカ側の防衛費増強の要請を、前年度のワク内においてこれをおさめるということが非常に重要になって来、また日本希望と合するゆえんだ、こういうことになって来たわけでございます。
  91. 今澄勇

    今澄委員 そうじゃないです。あなたはそう言われるけれども、あなたがそのアメリカ態度について強く閣議で述べれば、そういう結果にならなかったのです。最後に防衛分担金がいよいよ山に乗り上げたときに、鳩山総理はあまり様子がわからぬが、重光さんはその前年度のワクを越えてある程度承認しても、予算を早く作るためにはやむを得ないではないかという弱気論であったそうじゃないですか。そこで一萬田大蔵大臣が、そんなことではどうもならぬというのでがんばって、しかも三木総務会長を高松から呼んで三木談話というものをやって、内には保守合同による弱体内閣の補強の意味において、外にはアメリカとの折衝に日本鳩山内閣態度を守る意味において、そういう苦肉の、醜態の限りを尽さなければならなかったという、この日米分担金交渉の経緯から見ると、重光さん、あなたの責任は重大だと思います。私が今述べた経緯からするとあなたの責任です。外務大臣としてアメリカと強硬なるかけ合いをして、その結果において大蔵大臣が手算を期間内において作るべきようにするのがあなたの任務じゃありませんか。あなたは自分で、外務大臣として今度のことについて何ら責任感はございませんか。これで上等な外交であり、これで自分はりっぱな外務大臣であるとお思いでございますか。
  92. 重光葵

    重光国務大臣 私は分担金に関する交渉において、日本政府希望が大体実現したことについて、その点は満足に考えておるのであります。
  93. 今澄勇

    今澄委員 今度の分担金の折衝において、鳩山内閣の折衝ぶりは大成功であったという、この答弁国民が聞いてくれておりますので、私はこの問題は時間もありませんからこの程度にしておきましょう。  そこで重光さんにもう一つ聞かなくちゃならぬことがあるのです。四月十九日に発表された日米共同声明の中に「昭和三十一年およびそれに引続く年間において、自己の資力のより大きな部分を防衛目的のために振向けることが、日本政府の意向であり、政策である」と明記してございます。これは明年度以降の予算編成において、防衛庁費並びに防衛分担金の双方を増額することを意味するのか、それともそのうちの防衛庁費だけの増額を意味するのか。これは鳩山総理でも重光さんでもけっこうですが、鳩山政府見解を聞きたいと思います。
  94. 重光葵

    重光国務大臣 防衛関係の費用のことでございます。
  95. 今澄勇

    今澄委員 その防衛関係の費用に防衛分担金というのと防衛庁費と両方ある。防衛分担金の方には防衛支出金その他三つに分れておりますけれども、それを一諸にまとめて、その二つの増強を意味しておるのか、日本の防衛庁費だけの増強を意味しておるのか。一つだけしがなければ聞きやしません。二つあるから、どっちもなのか、日本の防衛庁費だけなのかと聞いておるのです。このくらい簡単なことが答弁ができませんか。
  96. 重光葵

    重光国務大臣 防衛庁費のことを意味しております。
  97. 今澄勇

    今澄委員 それではこの「日本政府の意向であり、政策である」という「自己の資力により」という分は、防衛庁費だけの増強を意味しておるわけですね。これははっきりしました。  もう一つ聞きたいのは、この日米共同声明に盛られておる、予算編成に対する「日本政府」という言葉でありますが、この日本政府という言葉は鳩山内閣だけをさすのか。鳩山内閣が何かのことでやめたら、あと内閣は全然関係がないのか。それとも鳩山内閣だけでなしに、歴代の日本政府はすべてこの共同声明による予算の編成に対する日本政府というのに当るのか。ただ「日本政府」とだけしか書いてありませんが、日本政府はどの政府もこれに責任を持つのか、鳩山内閣がこれを取りきめたんだから、鳩山内閣がやめればこの共同声明にうたわれた責任というものはそれでなくなるのか、この点について内閣総理大臣からお伺いをいたしたいと思います。
  98. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日本政府と言えば鳩山内閣だけではないと私は考えます。
  99. 今澄勇

    今澄委員 鳩山内閣だけでなければ、それじゃ歴代の日本政府はこの声明の義務を負うわけですね。
  100. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 鳩山内閣が負うべきである、そういう約束をしたので、その責任は鳩山内閣がとらなくてはなりません。
  101. 今澄勇

    今澄委員 今私が聞いたのは、この共同声明をしたのは鳩山内閣だが、「日本政府」と書いてあるから、鳩山内閣だけでなしに、ずっと歴代の政府を拘束するのかと聞いたのです。あなたの答えは、鳩山内閣だけでない、歴代の政府であると、こう言われたけれども、確認をしたわけです。よろしゅうございますか。この日米共同声明において予算編成に対する「日本政府」と書いてあるから、その日本政府というのは鳩山内閣だけをさしておるので、鳩山内閣がやめればあと内閣は実行しなくていい、こういう意味なのか、鳩山内閣がやめて、ほかの内閣ができても、やはりこれをやらなければならぬ責任を持つのかどうかということなのです。
  102. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はこう考えるのです。その声明というものは条約とは性質が違うので、声明を出した内閣が責任を負わなくちゃならない。その出した内閣はどういうよう考え方でやったかといえば、自分の内閣ばかりでなく、日本政府というものはこういうようにやるということを約束した、そういうことを言った意味であろうと思います。
  103. 今澄勇

    今澄委員 それでけっこうであります。私はその内閣だけを拘束するものであるならば、これは単なる行政措置であって、法律に優先しないのです。ところがその内閣だけでなしに、日本のこれから後の内閣にもこの声明が影響力を持って拘束するということになると、これは協定であります。鳩山内閣がやめればそれでもう責任は終るのだというのなら、この共同声明というものは行政措置であって、何ら私どもは国会に諮る必要も何もないと思うけれども、歴代の政府を縛るということになれば、その協定は法律に優先するのです。だから鳩山内閣の声明は、ただ単に鳩山内閣だけの一片の声明のように見えるけれども、鳩山内閣がこれを国会に諮ることなしにやるということは違反であります。鳩山内閣がもし歴代の内閣にわたって、たとえば来年度予算編成のときにほかの内閣ができても、この意味せられた共同声明を実行しなければならぬということになるとこれは重大問題であって、私は鳩山内閣の大きな失態であると思います。こういう大事なことを、なぜあなたは国会に諮りませんでしたか。私は鳩山内閣だけで終るのかと思っておったけれども、歴代の内閣がこれの責任を持たなければならぬということになると、名は声明であってもその実質は協定ではありませんか。しかも日米行政協定からさらに数歩、十歩日本側が譲歩したところの協定ではありませんか。国家の将来のためにも大きな損失であります、なぜあなたはこれを国会に諮りませんでしたか。法律よりも協定の方が優先するということになってくると、これは大へんな違反であります。総理大臣として、この点についてぜひはっきりしたお答えを願わなければなりません。
  104. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先刻申し上げました通りであります。そういうような声明は条約とは同一性質のものではないので、拘束力は法律的にないと思うのです。
  105. 今澄勇

    今澄委員 それでははっきり聞きますが、もし鳩山内閣が総辞職をして別の内閣ができたときに、昭和三十一年度の予算において、この協定に載っております諸条項を履行しなくても、何らそれに対しては責任はありませんね。これは大事なところですよ。
  106. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日本政府が条約に違反したということにはなりません。鳩山内閣政治的、道義的の責任があるだけであります。
  107. 今澄勇

    今澄委員 もうちょいと申し上げますが、たとえば日米行政協定でいろいろ取りきめが行われております。これは、吉田内閣日本国会に諮らずに行政措置であるといってきめました。だがしかしこの行政協定は歴代の内閣を現実に縛っておるのです。一億五千五百万ドルを、きのう大蔵大臣は国会で否決になればやむを得ぬというようなことを言っておりましたが、おそらくは、吉田前総理大臣に聞いてごらんなさい、そんなことはないはずです。これは名前は協定であるけれども、歴代内閣を縛っておる。だから大へんなことなのです。だからこれもそれと同じよう意味合いにおいて、とにかく国民を欺瞞するために協定というようなことを言って——アメリカは議会第一だからその行政協定を国会にかけましたけれども、日本は議会にかけなかった。安全保障条約の一節に、行政協定によってという一節があるから、言いのがれはできぬことはないが、だがそういうふうにして吉田内閣はラスク・岡崎会談の線までくずれたのです。ところが鳩山内閣はそのまた行政協定を基礎にしたと申しながら——行政協定というものは国会の批准を受けていないのですが、そう申しながら今日歴代内閣に対する拘束力を持たせるがごとき声明を結んだとすれば、これは大へんではありませんか。拘束力がないものならば次の内閣はこれをやらなくてもいいのだ、責任はないのだということも言えるわけではありませんか。その点はどうですか。
  108. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は行政協定とは性質が違うと思うのです。行政協定は条約によって認められたところのものです。それですから、行政協定も条約そのものではないけれども、行政協定は条約によって認められてでき上ったものですから、ただいまの声明とは性質が違うと私は考えております。
  109. 今澄勇

    今澄委員 だから、この声明はこの次の内閣に対しては拘束力がないのだろうと私は聞いておるんですよ。それで拘束力がないから、この次の内閣はこれは行わなくてもさしつかえがないんですね。
  110. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 政府としては法律的にはそういうことにはならぬと思います。
  111. 今澄勇

    今澄委員 そこで総理答弁で、この日米共同声明に盛られておる来年度の防衛関係の費用並びに分担金等の問題については、この通りにやらなくても日本政府には何らの責任はないのであるということが、鳩山総理答弁によってはっきりいたしましたことは、私は国民のために非常に慶賀すべきことであります。ここでこの問題についての質問は、これで私はやめましょう。   〔「政府ははっきり答弁しろ」と呼び、その他発言する者多し〕
  112. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 静粛に願います。
  113. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日本政府政治的責任を帯びることは先刻申しておる通りであります。何らの責任を負わぬかといえば負うと答えるより仕方がない。しかしながら条約としてあと内閣がすべてそれを履行していかなくちゃならぬというような法律的の責任を負う必要はない、こう申したのでありますから、誤解のないように願います。
  114. 今澄勇

    今澄委員 私は鳩山さんに申し上げておきますが、あなたの内閣の消長や鳩山個人の政治的な生命は短かいのです。だが、しかしこういう協定なり声明をしたその拘束力が歴代内閣に及ぶのか、鳩山内閣だけで済むのかというこの答弁は、世界の各国も見ておるし、アメリカも見ておる重大な問題であります。拘束力があるならば拘束力があるのである、拘束力がないならば何ら拘束力はないのであると、はっきりした答弁を、自分の立場のいかんにかかわらずここで申されることが、日本総理大臣として大事なことです。これが国民国会で聞きたいと思っておるところです。ぜひ一つ慎重にお答え願いたいと思います。
  115. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 何べんも申しました通りに、条約と同じような拘束力は持っておらない。ただその声明は、私の内閣でいたした声明でありますから、私の内閣の責任だ。私の内閣の責任において声明したものである。あと内閣は条約と同じような拘束力を負わない。法律的には負わない。政治的にぼくらの内閣が負う責任があるということを申しておるのであります。
  116. 今澄勇

    今澄委員 そうすると、それは日本語の表現としては——日本語を一つ研究願わなきゃいかぬが、そういうことは日本語では言えないのです。あと内閣は、あと内閣の自主的な見解によって勝手にやることができるのかどうか。それとも鳩山内閣がこういう声明を賛成をして出したから、この声明に道義的な、あるいは国際慣習法的な性格があって、どうしてもこれに従わなければならないものかどうかということを聞いておるので、法律的な責任論をやっておるのではない。拘束力があるのかどうか。あと内閣は自主的に勝手にやれるかどうかということを聞いておるのです。総理としてこれは当然国民に答うべき義務があるんですよ。
  117. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私がたびたび申しておる通りでありまして、一つ内閣政治的に責任を帯びている問題を、次の内閣がその政治的責任を尊重するかどうかということはその内閣の自由ですから、次の内閣が前の内閣政治的責任を無視しようとすればできないことはない、こういうことになるのであります。
  118. 今澄勇

    今澄委員 問題はやや明瞭になってきたが、これは二つ一つしかない。次の内閣に対する鳩山内閣としての見解ですよ。次の内閣ができておらぬのですから……。次の内閣に対する鳩山内閣としての見解は、次の内閣がこれを勝手にやらなければ、やらなくてもさしつかえないのか。鳩山内閣としては次の内閣が当然やるべきものであると思うのか。拘束力があるものか。次の内閣はやらなくてもいいと思うのか。鳩山総理見解を聞いておる。(「希望だ」と呼ぶ者あり)希望ではない。見解です。拘束力があるかどうか、これははっきりしてもらわなければ、そういう答弁では全然われわれは了承できません。この問題がはっきりしなければ、休憩をして、一つ閣内において意見の統一をしてもらわなければならない、これは大事なことです。
  119. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それは政治的責任というものは、政治的責任を次の内閣が守るか守らぬかとうことは次の内閣の自由です。けれども前の内閣はこういう約束をしたという、その政治的責任を次の内閣は尊重する内閣であるかもしれない、尊重するならばそれは前の内閣が負うたところの政治的責任を、やはり次の内閣が尊重するということになって、全然政治的責任がないといって破棄しても何でも勝手だということにもならないと思うのです。法律的にそういうような拘束力がないということだけは事実なんですね。
  120. 今澄勇

    今澄委員 これは今の答弁意味するところを私は検討してみたけれどもはっきりしないです。私はやはりこの日米共同声明は歴代内閣に拘束力を持つものか、次の内閣は、鳩山内閣としては勝手にやってよろしい、これはおれの内閣だけの話であるとかという答弁をしてもらわないことにははっきりしないので、ぜひ一ぺん閣議を開いて、これらの問題に対する解釈をきめてもらうべく、休憩されんことを望みます。
  121. 田中織之進

    ○田中(織)委員 議事進行について。ただいまの今澄委員質問に対する総理大臣答弁は、やや明確になったよう思いますけれども、この問題は国際関係も伴いまする、きわめて重大な問題だと思うので、私どもはそのまま確認していただいてもよいと思いますけれども、政府側としても十分ただいまの今澄君に対する答弁をさらに練って、明確にしていただかなければならぬと思いますので、この際暫時休憩されるよう動議を提出いたします。
  122. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 動議を採決いたします。田中君の動議に賛成の諸君の起立を願います。   〔賛成者起立〕
  123. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 起立多数。動議は可決されました。  暫時休憩いたします。    午前十一時五十八分休憩      ————◇—————    午後零時十七分開議
  124. 牧野良三

    牧野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際政府より発言を求められております。これをお許しいたします。総理大臣
  125. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先刻の私の答弁は幾分か不明瞭であったよう思いますから、この際明瞭にいたします。  鳩山内閣は本声明に政治責任を負います。他の内閣政治的責任を尊重するかいなかは当該内閣が自主的に決定をするのであります。ただし鳩山内閣としては、本声明が将来も尊重されることはもとより希望するところであります。  次に、本声明は条約ではないのですから、いずれの内閣も法律的の責任のないことは、たびたび申した通りであります。  次に、声明中の日本政府とあるのは、右の意味のもとに解釈していただきたいと思います。
  126. 今澄勇

    今澄委員 それで、先ほど鳩山総理から答弁のあったあれは軽率な答弁だと思いますが、次の内閣にも拘束力を及ぼすんだということは、当然今のお話でお取り消しになるかどうかというようなこと……(「そんなことは言わない」と呼び、その地発言する者あり)さっきそのように聞いたよ。それからもう一つは、たとえば、あと社会党内閣ができた場合にも……。   〔発言する者多し〕
  127. 牧野良三

    牧野委員長 お静かに願います。
  128. 今澄勇

    今澄委員 あと社会党内閣ができた場合も、具体的な問題で法律的、政治的責任は負わなくてもいいというわけですね。それにちょっと答えてもらわぬと……。
  129. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先ほど申します通りに、法律的の責任はございません。
  130. 今澄勇

    今澄委員 政治的責任もありませんか。
  131. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ありません。ただし、鳩山内閣としては、本声明が将来も尊重せられることを希望はいたします。
  132. 今澄勇

    今澄委員 だが、この点については質問を留保いたしておきます。
  133. 牧野良三

    牧野委員長 それでは午後一時二十分より再開することといたしまして、  暫時休憩いたします。    午後零時十九分休憩      ————◇—————    午後一時四十五分開議
  134. 牧野良三

    牧野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。今澄勇君。
  135. 今澄勇

    今澄委員 私は一昨日当委員心会で問題になったアリソン覚書について重光外務大臣にお聞きをしたいのであります。重光外務大臣答弁によると、アメリカ側と打ち合せをしたあとでなければ報告できないという話でありましたが、もってのほかであります。アメリカ日本との交渉経過を詳細に発表するということになれば、それはアメリカ側と打ち合せの必要がありましょう。けれども国会法第百四条は「各議院又は各議院の委員会から審査又は調査のため、内閣、官公署その他に対し、必要な報告文は記録の提出を求めたときは、その求めに応じなければならない。」となっておるのです。これは国会法百四条であります。しかもアリソン氏はアメリカの駐日大使で、アメリカ政府全体の意向をメモにして出したものをこの委員会に提出できないということは、私はあり得べからざることだと思います。私は重光さんにもう一度アリソン覚書でお伺いをしてみたいと思います。
  136. 重光葵

    重光国務大臣 一昨日でございましたか、二月三日の日付のアメリカ大使の覚書を出せ、こういう御要求でございました。むろん国会に対して必要な文書等を提出しますわれわれの責任を心得ております。私はその際にそういうものの存在を実は知りませんと申し上げておきました。全く調べてみましてもその通りでございます。しかし関係の文書がございました場合において、アメリカ側の提出したものがあるならば、やはりこれはアメリカ側の意向を聞き、それを公表することの承諾を得ることが当然だ、こう考えております。この件に関する一切の文書をとくと調査をいたしまして、他日私は公表しまたは御報告をいたすことに考えておる次第でございます。
  137. 今澄勇

    今澄委員 ただ私は何も二月三日と日にちを切っておるわけではないので、いわゆるアリソン覚書というものは日本の大新聞には全部出ているのです。そういうものか新聞に出て国会に発表しない。アメリカイギリスでは、国会では発表する、だが新聞にはなかなか出ないのです。私が聞いたところでは、四月十三日重光外相は一萬田大蔵大臣とアリソン、テーラー氏と四者会談を行い、その際アリソン・アメリカ大使から、どうもあんなに新聞に出てはいかぬではないかという旨の発言があったそうでありますが、大新聞が書いたあのアリソン覚書がそれでは全部うそなのか、あるいは重光外相は国会を軽視して、国会法百四条の規定をあなたは無視せられるのか。ここで大新聞が書いたのは全部うそであるという御答弁でも私はよろしゅうございます。それとも国会法百四条を無視するのだ、あるけれども出さぬのだというのでもよろしゅうございます。そのいずれか一つをあなたは答弁していただきたい。少くともかようアメリカ大使が日本に要望し、しかもあれだけ大きく宣伝せられて、それが事実無根であるなどといわれて、衆議院がそうですかといって黙っておられますか。どうです外務大臣
  138. 重光葵

    重光国務大臣 私は決して関係の文書を提出することをがえんぜざるものじゃございません。なるべく関係の文書は出す、かつまたできるだけ早くこれを発表し、議会には特に報告すべきものだと考えております。そしてそうする考え方をもってすべて進めております。しかし今申されるものがそれに当りますかどうかは、これを調査いたすことは少しも私のいなむところじゃございません。しかし交渉の経過における文書がもしあったとしても、それは相手方の承諾を得て発表することが適当だ、こう申し上げておるわけであります。あしからず。
  139. 今澄勇

    今澄委員 私が聞きたいのは、四者会談で向うから注意を受けるほど新聞には流すことができるが、国会には報告ができないのかということを聞いておるのです。堂々と全国の大新聞にみな載っているじゃありませんか。それじゃあれはうそですか。その点について責任ある外務大臣から答弁を聞かなければならぬ。新聞は常々と報道する、国会は全然聞かしてはもらえない、それで黙っておるわけにはいかぬのです。
  140. 重光葵

    重光国務大臣 新聞にはわれわれの方から何も流したものはございません。米国側からも流したということは聞いておりません。もしさようなことでありましたならばとくと調査をいたします。
  141. 今澄勇

    今澄委員 私は日本の報道機関のあらゆるものから報道せられたこの事実を、あなたは議会で強弁されるけれども、日本の報道機関はそんなに、あなたの目から見ると全然虚構の事実をつくり上げたものですか。あなたそんな答弁をして、一体それで外秘大臣が勤まりますか。もう一ぺん答弁をしなさい。
  142. 重光葵

    重光国務大臣 私は遺憾ながら新聞記事に責任を持つわけには参りません。
  143. 今澄勇

    今澄委員 いろいろ問題がありますけれども、時間の関係で、外務大臣に対する日米交渉関係質問はこれで打ち切りますが、少くとも私は今度の交渉経過を通じ、その他を通じて見て、外務大臣国会法百四条並びに国会に対する報告その他の問題で怠慢であるということは事実なんです。だからこのアリソン覚書のみならずアメリカと防衛関係の折衝の経過その他を、きのうはまるきり子供だましのような経過の説明でありましたが、一ヵ月かかったというような……。そんなことではどうにもなりません。機会を改めて私どもはこの問題を外務大臣に、党の代表からお伺いをして、その結果いかんにおいては私どもの党としても重大なる決意をする考えであります。外務大臣はもう少しく国会に対して誠意ある態度を持たれることを要望をいたしてきます。  そこで防衛関係の問題でありますが、防衛分担金の削減交渉の途中において、米国側から、吉田内閣は米国に断わりもなく、実行予算と称して予算の削減を行った。このため二十九年度では防衛予算は四十五億減となった。さらに日本の米国に対する不信行為がある。これは二十九年度の防衛分担金削減に当って、日本は、小牧、板付、伊丹、立川、横田、千歳の各飛行場滑走路の拡充を約束しながら、全然今日まで実行しておらない。このような不信行為があったから、今回はなかなか慎重なる態度をとるのであるという強硬な態度を示したと伝えられておりますが、交渉の経過においてかようなことがあったかどうかひとつお伺いをいたしておきたいと思います。
  144. 重光葵

    重光国務大臣 昨年の十一月でございましたか、防衛庁の費用についての修正予算で四十五億円の削減をしたということに対して、アメリカ側は不満を表してきたことは事実でございます。それからまた飛行場の建設についてもずいぶん長い懸案でございました。そしてそれに対して米国側がその建設の進捗ぶりに対して不満を表したことも事実でございます。
  145. 今澄勇

    今澄委員 そうすると、今の外務大臣答弁によって、日本の飛行場の拡張について、ずっと前から吉田内閣と折衝しておって、どうもはかどらないから不満であったという、アメリカ側が交渉の経過において意思表示したことが事実であることは明らかになりました。私は去る六日に資料要求をいたしました拡張予定の米軍主要飛行場の名称について、調達庁の回答は、小牧、新潟、木更津、立川、横田の五飛行場について、現存の滑走路を二千フィートないし三千フィート延長し、これに要する経費として防衛支出金の項に十二億円を計上しておる。しかもその経費は、飛行場別、事項別に、科目にわかれておらないということを回答いたして参っておりますが、今度鳩山内閣が引受けた拡張飛行場の名称は、一体この五つだけなのか、それとも伊丹、千歳、板付などにも飛行場拡張の計画があるのかどうか、まず私はこの飛行場の名前からひとつ外務大臣にお聞きをしておきたいと思います。
  146. 重光葵

    重光国務大臣 飛行場の建設の問題については、主管の閣僚の御答弁を願いたいと思いますが、いかがでしゃうか。
  147. 今澄勇

    今澄委員 けっこうです。主管大臣から答弁を願います。
  148. 西田隆男

    ○西田国務大臣 お答えいたします。ただいまお読みになりました五ヵ所のことは私承知しておりますが、そのほかのことは承知いたしておりませんので、政府委員調達庁長官が来ておりますから、長官から答弁いたさせます。
  149. 福島慎太郎

    ○福島政府委員 拡張いたします予定の飛行場は、仰せの通り小牧、新潟、木更津、立川、横田のこの五ヵ所を一応予定しております。それ以外にもアメリカ側には希望はあるのでありますけれども、われわれの方ではこの五ヵ所しか考えていないということであります。
  150. 今澄勇

    今澄委員 アメリカ側の希望した飛行場の名前をついでにちょっと長官にお聞きをしたいと思います。
  151. 福島慎太郎

    ○福島政府委員 アメリカ側の希望しております飛行場は、千歳とか、現在あります飛行場ほとんど全部につきてまして滑走路の長さが足りないのでありますから、これを延長して実際に使えるようにしたいという希望はあります。しかしながら、われわれの方は予算の制約等もございますので、これしかできないということを言っておるわけであります。
  152. 今澄勇

    今澄委員 そこで外務大臣にお伺いをいたしますが、この飛行場の滑走路の拡充は、吉田内閣のころから向うからの要望のもので、非常にアメリカ側が不満であったと今お答えがありました。そこで日本側としては、この吉田内閣がなかなか諸情勢考えながら実行しなかった、がんばって参ったところの拡張工事を、今度は鳩山内閣としては引き受けてやるんだ、こういう結果に相なりますが、何ゆえ外務省としてはこの飛行場の拡張工事に賛成をしたか、どういう理由で飛行場を拡張しなければならないのであるかということについて、外務大臣から答弁を願います。
  153. 重光葵

    重光国務大臣 従来の飛行場は、新しいジェット飛行機の需要に対しては不満足である。しかるにアメリカ側の説明は、共同防衛の責任を持っておるんだ、その場合に、日本に対する大陸方面の空軍の配置は実に重大な状態になっておる。そこで米軍としては、これに対応するために対しジェット機を使用しなきゃならぬ。その新しいジェット機というのは滑走路の長いことを要求する。ジェット機の名前も申しておりましたが、そこでその場合に共同防衛の責任を果すために、一つ滑走路の延長をしてもらいたい、こういう要求がずっと前から来ておったのでございます。先方の説明はそういう説明を繰り返しておりました。この問題については初めから日本側は協力するという態度をもって進んできておりましたし、私もこれは共同防衛の責任上、また防衛力の漸増の責任上、その要求に応ずることが条約上の趣旨に合するものだと、こう考えておりました。
  154. 今澄勇

    今澄委員 防衛庁長官に聞きますが、F八六ジェット戦闘機と全天候のF八六D戦闘機等の技術的な関係で、もし滑走路を延ばすものとすれば、一体どの程度の滑走路で可能なのであるか、しかも新しいF八六D戦闘機は、原爆小型爆弾も積めるとのことであるが、これらの性能について、ちょっと杉原さんから御答弁を願いたいと思います。
  155. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 従来のプロペラ機に対する滑走路の長さをもってしては、ジェット機の場合はどうしても不足するということは、これは事実であります。各飛行機の性能上、具体的にそれぞれの機種についてどれだけの長さを要するということは、私知識がございませんので、なお取り調べまして御返事申し上げます。
  156. 今澄勇

    今澄委員 杉原長官にはあとでゆっくり聞くとして、とりあえず今政府を代表して答弁のあった、アメリカからは日本の全飛行場について要望があったが、政府としては小牧、新潟、木更津、立川、横田の五つの飛行場の滑走路の拡張以外は、断じて同意しないという調達庁長官答弁がありましたが、鳩山総理大臣、あなたはこの小牧、新潟、木更津、立川、横田以外の飛行場については、いかなる場合があろうとも、断じて拒絶をするということを、ここで一つ御確認を願いたいと思います。
  157. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私としては、研究をしなければそれは答弁ができません。
  158. 今澄勇

    今澄委員 この飛行場五つをやるということは、それではこれだけの大事な問題で、調達庁は総理大臣にも相談もしないで、ただ調達庁だけがきめたわけでありますか。調進庁長官は断じてやらないと言っているけれども、あなたは責任者として外交折衝をしているわけではないので、総理大臣はまだ研究してみなければわからぬと言っておりますが、調達庁長官は、総理大臣と打ち合せて、一体絶対にあとは拒絶するのかどうか、もう一ぺんお答えを願いたいと思います。調運庁長官の答弁では安心ができない。
  159. 西田隆男

    ○西田国務大臣 お答えします。調達庁長官お答えいたしましたのは、予算の制約を受けておりますので、今のところ五ヵ所以外はできない、かよう答弁をしたと私は心得ております。
  160. 今澄勇

    今澄委員 その通りでないのです。アメリカは他の飛行場にも全部言ってきたけれども、あとの飛行場は断わるつもりであるという答弁である。板付から伊丹から、そういうところもみんなこの拡張工事の中に入れてやられるようなことになると、日本国民はちょっと困るのです。だから、鳩山内閣アメリカに押されて拡張を引き受けたことは今認めたが、それがどの線で食いとまるかということが、国民の最も関心を持っているところなのです。大体どの線でとまるのですか。あとのやつも年度内に第二期拡充工事で、予算があればほかの飛行場もやるというのですか、どうなのですか。
  161. 福島慎太郎

    ○福島政府委員 これ以外の飛行場につきまして、アメリカ側に希望があることは事実でございますけれども、私どもがその拡張の実務を担当するわけでありますので、私どもに与えられております予算の限度では、この五つしかできないということを申し上げたつもりでございます。アメリカとの交渉とか断わるというような言葉は、申し上げてなかったつもりでございます。
  162. 今澄勇

    今澄委員 それでは、はっきりいたしましたから、もう一度外務大臣にお伺いをいたしますが、アメリカ側はもとより日本にあるアメリカの飛行場の全部を拡張したいでありましょう。日本側としては一つの拡張だけでも大へんなのに、これからあと引き受けるというようなことは大へんなことであります。だから今言うたように、五つの飛行場以外は、外務大臣としては、アメリカが言うてきても断わるつもりなのか、言うてくれば次々と全部やるつもりなのか、一つ外務大臣から答弁を願いたいと思います。
  163. 重光葵

    重光国務大臣 なるべくこれは制限してもらいまして、そうしてこれ以上ふやさないよう努力をいたしたい、こう考えます。
  164. 今澄勇

    今澄委員 そこで私は鳩山総理に、総理は調べてみなければとおっしゃるけれども、あれだけあなたの前で答弁があったらよくおわかりでありましょう。私は日本中の総理大臣が、こうい大事な問題を全然わからぬというようなことは、最も国政に対して怠けておるものだと思います。今の外務大臣答弁から、総理は、この五つの飛行場のほかの飛行場については、総理大臣としてはどういうお考えでありますか。
  165. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 こういうような問題は、すべて国際情勢の変化に伴って変えていくべきものだろうと思うのです。それですから、国際情勢とにらみ合せて決定すべきものと思いますから、ただいま絶対にふやさないということは、断言でなきいと思います。ふやさないことを欲することはいいのですけれども、これはどうしてもできないということは、言うべきものじゃないというような気がしております。
  166. 今澄勇

    今澄委員 将来科学の進歩とともに距離は狭まるのです。アメリカが、そのアメリカ世界各国との距離が狭まったときは、日本の基地もいらなくなるのです。そういう科学が進歩して、飛行機の航程距離がずっと延びるに従って、日本はどうせ基地としての値打はなくなるのです。私は、向うの都合のいいときだけはけっこう基地として利用せられて、科学の進歩とともにいらなくなれば投げ捨てられるような、世界の進運と科学の進歩も眼をつけないで、国際情勢がどうとかいうようなことを総理大臣が言って、この確約もできぬような軟弱外交で、一体どこが自主独立ですか。飛行機の航程はどんどん延びている。やはりアメリカの飛行機の現能力の程度においては、日本に基地が要るけれども、アメリカから直接ソ連まで飛べるような飛行機の発達があれば、日本の基地は要らなくなるのです。そういう中間的な、よその国の要望によって日本の国の基地の拡張を、次から次と引き受けるということは、まことに国家として損失であるということを、私は総理大臣にぜひ要望いたしておきます。  そこで問題は、調達庁からもらった資料を見ると、この経費は飛行場別、事項別に科目に分けることができないということが書いてあるが、これは本年度の拡張予定が上述の五飛行場だけと限らない。五飛行場だけときまっておれば、これは科目に分けて、そして予算が立つわけなんです。なぜ今日予算のそういう詳細な科目の分け方ができないかということ、それからもう一つは、年度内に第二次の拡張工事でやるようなことはあるりかないのか、この二点について調達庁の長官から、一つお聞きいたしておきたいと思います。
  167. 西田隆男

    ○西田国務大臣 お答えいたします。各飛行場別の単価がきまってりおませんのは、御承知のように、小牧はまだ調査を終っただけでありまして、用地の買収とかあるいはその他の補償という問題の金額がきまっておりません。ほかの飛行場は、まだ調査すらもいたしておりませんので、これを五つの飛行場にどれだけ要るということを、今予算的に分けて御説明することは困難だということでございます。
  168. 今澄勇

    今澄委員 だから分けて説明ができないから、大ざっぱに計上したというのですか。まことにだらしない予算編成だと思います。それでは滑走路の延長について、土地の買上げ、それから、それらの買い上げた土地の補償等々の現地交渉は、一体いつごろから始まるのか。これも国民がぜひ聞きたいと思っております。それは一体いつごろから始まるのです。
  169. 福島慎太郎

    ○福島政府委員 滑走路の延長は、御報告喧し上げましたように、二千ないし三千尺の予定であります。またその幅は、飛行場によって違うところもありましょうが、大きく見ましても百間ぐらいのことであろうかと思います。そのほかに付属地その他の要望などもありますので、これを最小限度に切り詰める努力を、今いたしているわけであります。従って、大きさもほんとうに最小限度に切り詰めることができれば、滑走路だけで事足りるということになるかもしれませんし、あるいはアメリカの要望しております付属施設も、価値のあるものもあるかもしれませんし、大きさそのものもきまりませんし、また地質その他の関係が適しているかどうか、これも調べてみなければわかりません。前の方に延ばすか、あとの方に延ばすかということもわかりません。従いまして、まだ交渉はいたしておりません。
  170. 今澄勇

    今澄委員 いつごろやるか……。
  171. 福島慎太郎

    ○福島政府委員 いつごろやるかということになりますと、現在調査をいたしております小牧につきましては、もう三十日もたてば調査が終了いたしますので、その調査の結果に基いて案を立てて、どこの地面が要るのだということがきまりましてから交渉することになると思います。それ以外の飛行場につきましては、いまだに調査を始めておりませんし、土地々々によりまして調査期日その他も一定いたしませんので、相当先になることだと考えております。
  172. 今澄勇

    今澄委員 これは予算をここに出して、そして調査に時間がかかる、かかると言われるけれども、小牧を初めなかなか早期にやるというような話であったそうです。けれども私は今の意見ように、もう少し近所の住民の、国民の意思を聞いて、その調査をやり直して、これらの飛行場の拡張については政府は慎重な態度でやってもらいたい。私どもはこういうやり方には反対でありますけれども、もう長官をそう追及しても仕方がありませんから、この程度でやめておきましよう。  もう一つは、本年度の防衛庁費には、航空自衛隊の増強計画が計上されておって、この中には既往の飛行場の整備、海上自衛隊の増強計画を盛っております。この中の内訳を見ると、飛行場を関東、東北、九州の三ヵ所に新設の経費が計上せられております。この三ヵ所の飛行場の地名はどことどこですか。これらの自衛隊の飛行場はジェット戦闘機発着も想定して設備をするのか、それともそうではないのか。これは長官から、この三箇所の飛行場名と、飛行場の設備は一体ジェット戦闘機を目的にしておるのかどうかということを答弁願いたいと思います。
  173. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 お答えいたします。三ヵ所は関東地区と九州地区とそれから東北地区でございますが、その具体的場所はまだ決定しておりません。それからこれは海上自衛隊の飛行場でございまして、これはジェット機を予想しておるものではございません。
  174. 今澄勇

    今澄委員 ついでに飛行機に関係があるから長官にお伺いしておきますが、日本の自衛隊は予算の編成も自主的であると大蔵大臣も言うし、長官はいつも日本の自衛隊はわが国のものだと答弁されるが、日本の海上自衛隊にSNJという練習機が十二機ありますか。
  175. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 ございます。
  176. 今澄勇

    今澄委員 それがあるということになると、自由党内閣のときに木村長官名で、いわゆる木村裁定というものが防衛庁の中におりておるのです。この海上で使っておる飛行機を航空自衛隊に回して、航空自衛隊で一元的にやりたいという木村長官の裁定がおりておるわけです。ところがアメリカの海軍から、それはいけないというて横やりが出て、木村長官が防衛庁長官として裁定を下したにもかかわらず、いまだに海上自衛隊にあるということは、日本の自衛隊は日本の長官の命令で動いておるのではなくて、アメリカの海軍の意向によってこの長官裁定が今日まで無視をせられておるということについて、あなたは木村さんの次の長官として、どういう理由によるものであるかということを一つお答えを願いたいと思います。
  177. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 その点について問題があるということは事実でございます。実際に即するように処理したいと、私今せっかく考えております。
  178. 今澄勇

    今澄委員 この一事をもってしても、わが日本の国内飛行場、自衛隊の飛行場、アメリカの駐留軍の飛行場、いずれもアメリカの意思によって、日本国内もよそも区別がつかぬということを、防衛庁長官みずから国民に明らかにしたものであります。鳩山総理はいつもこの委員会で、われわれは日本自衛力を増強してなんて言われておりますけれども、現に日本の航空自衛隊の、木村長官がこうしたいということも、木村長官の言う通りにすればアメリカの海軍に工合が悪いし、アメリカの海軍の言う通りにすれば木村長官の裁定というものを全然無視しなければならぬ。こういうような自衛隊を、どうか杉原さんはもう少し日本の思うように動く自衛隊にしていただきたいと思います。正直に御答弁がありましたので、この問題はこれで打ち切ることにいたします。  今の回答のように、わが国にジェット爆撃機基地並びにジェット戦闘機基地の網が着々と張りめぐらされていくことについては、私どもはまことに憂慮にたえません。このわが国側の基地から飛び出す飛行機として、防衛庁では、ジェット機生産計画を立てておりますが、本委員会より提出を要求した政府資料によれば、防衛庁ジェット機生産計画の内訳は、昭和三十二年までにF八六が七十機、T三三が九十七機、これを国産のレールに乗せようとしておるようであります。所要の技術援助、組立用治工具部品は米国側から供給を受け、防衛庁が部品を契約相手に官給をして、治工具は貸与するようになっております。日本側の負担額は総所要額の三割強と、あなたの方からの資料に書いてありますが、この三割相当額とは、本年度予算のうちで米国よりの供与品の運搬費が五億円、予算外契約三十一年度が二十九億、三十二年度が二十四億、合計五十八億円になるが、この五十八億をさすものですか、それともまだほかにあるのですか、これについて一つ答弁を願いたいと思います。
  179. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 今大体おっしゃられた通りでございます。歳出予算において五億、それから予算外契約において五十二億八千万円でございます。
  180. 今澄勇

    今澄委員 もう一つお聞きしたいのは、米国から供与される治工具と書いてありますが、この治工具というのは製造設備を一切含むのですか、どうですか。
  181. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 治具及び工具はそれだけでございまして、全部を含むのでは、もちろんございません。
  182. 今澄勇

    今澄委員 この治工具というのは、一系列の製造プラントをそのまま日本が、向うのノース・アメリカンなどという大会社からスクラップでもらい受けるものではないという、今の長官の答弁を速記録にはっきりと残しておいて、もしアメリカの飛行機製作会社からこういうプラントを日本が入れた際は、私どもはまたこの予算委員会においてあなたの答弁中心に追求をいたしたいと考えております。私が特にここで言いたいのは、F八六やT三三なんというのは、航空機の国際水準からいくと旧型で、今の戦争では使いものにならぬ。この前の朝鮮事変のときでもミグ戦闘機にたたき落されて、全然使いものにならぬ飛行機なんです。こういうふるい飛行機を自衛隊でやってみても話にはならぬのです。もし自衛隊が飛行機を使うとすれば、なぜもっと新しい飛行機を採用しなかったのか。アメリカのお古をもらい、機械工具の要らなくなったものをもらい、アメリカの財閥がスクラップで捨てるベきものを日本の自衛隊が引き受けて、まるきり向うの利益にばかりなるというような印象を持ち、しかも対外関係においては、日本が航空機増強をして、ソ連中共側に対して非常に敵対的であるなどという印象を与えて、全く取るところが少いと思うのですが、これに対する長官の御見解を聞いておきたいと思います。
  183. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 今澄議員はよく御存じだと思いますが、F八六は現在でも第一線機として、アメリカやNATO諸国でも使っておるのが事実でございます。そしてまた御承知の通りアメリカではさらにF一〇〇台のを相当研究もし、またある程度量産をしておるのも事実でございます。しかし一方NATO諸国に対してはやはり今のF八六など、これをアメリカから援助しておりまして、それがためにまた生産もしておるような次第でございます。
  184. 今澄勇

    今澄委員 この問題は見解の相違ですからこの程度にして、もう一つ長官に聞きたいのは、防衛庁の過年度繰越金であります。過年度繰越金受け入れは、昭和二十九年度二百五十七億円、三十年度で二百二十七億円であって、毎年度にわたってかように過大な繰越金があるにもかかわらず。なぜ本年度は前年度より百二十五億円も上回る予算を計上したかということです。日本の財政法によるとこういう繰り越しは基礎的な姿ではない。財政法四十二条によれば、この繰り越しというのは特別の措置なんです。これが毎年々々こういうふうに多額の費用を繰り越すということは、一体どこに理由があるのか。予算使用の主務大臣としての杉原さんは、国会に対して一言これは申し開きがなければならぬと思いますが、その理由を一つ聞かしていただきたいと思います。
  185. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 防衛庁の関係のものにつきましては、今まで本年に限らずかなりの繰り越しが生じてきておったことは事実でございます。そうしてまた二十九年度から三十年度にも、今おっしゃったように、繰り越しができておりますが、これは主として設計などの遅延とか、あるいは実際上施設に要る土地の取得とか、そういった点について実行上はなはだ時日を要するものが多かったことが原因になっております。
  186. 今澄勇

    今澄委員 私は防衛庁長官に言っておきたいのは、少くとも財政法四十二条は、その年の金はその年に使うというのが建前なんです。それを防衛庁だけが、五億とか十億ならともかくも、二百億も三百億も毎年々々繰り越し繰り越しで繰り越しておいて、そうしてまた本年も予算は繰り越しはこれだけある、これだけは増加するというようなことで、一体主務大臣が予算使用の面において責任をとれますか。私はこういうことは日本国会予算委員会を最もなめた話だと思います。こんなに金が余っておるくせに、片方ではどうかというと、膨大な金を余らしておきながら、一方では整備が間に合わないためかどうか知りませんけれども、自衛隊員の兵舎のベッドは、北海道の自衛隊をながめてみると三段になっておる。そうして上の人が動くたびにごみが落ちてまことに非衛生であります。さらに仙台においては、旧格納庫を兵舎に使用しておってまことに不衛生であります。このように居住施設が不備なばかりでなく、第一お医者——医官の数が今定数に足らぬではありませんか。医官が定数に足らぬ状態でありますから、健康保全が十分ではない。なぜ一体そんなに予算が余っておるなら医官を早く充足しませんか。このように一ヵ年前の近江絹糸工場の設備にも劣るようなところに、本年度はさらに三万人の青年諸君を補充しようとしておる。片方では毎年々々二百何十億の使い残しの予算があって、しかもこういう状態ということは、一体長官は国民にどういう説明をいたしますか。この現象にして金は余っておる。しかも自衛隊はこういう状態なんだ。一体なぜその金を余らしておるのですか、御答弁を願いたいと思います。これらの状態をいつ改めますか。
  187. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 今御指摘の中で、特にお医者の方のことが非常に不備になっておる点は、私も非常に遺憾に思っております。その点につきましては、実は医官の志望者をなかなか得にくい実情であります。それをどうしても何とかして一つ確保することがぜひとも必要でございますから、今学生に対してこちらから希望者を募りまして、相当の補助をいたして、医官の充実ということに力をいたしていきたいと思います。
  188. 今澄勇

    今澄委員 そのことは、すなわち日本の自衛隊が鳩山さんの言うように、日本の自主的な立場でやっておるのではなくて、用意も何もないけれども、アメリカからがんがん言われるから、こういうことになるんじゃありませんか。それが雄弁に物語っているんです。鳩山総理に申し上げておきたいのですが、あなたは自主的に自衛隊をふやすとおっしゃるけれども、今の長官の答弁日本の自衛隊が自主的な自衛隊とお思いになりますか。毎年々々繰り越しをやって、その繰り越しのできる原因は、やはりアメリカと折衝しないと防衛費がきまらないから、財政法の特例によって毎年々々繰り越しができるというのが根本的な原因なんです。だから大蔵大臣は日本予算日本で自主的にきめるんだとおっしゃるけれども、この財政法の特例をもってしてまでもやらなければならないということが、日本予算が自主的に編成できない根本的な原因なんで、それはわが国の自衛隊が日本の金でやっておるけれども、その現実の指揮者はアメリカということになるんです。それなくして一体こんな不備なことがありますか。私は実にけしからんと思っております。だが長官の正直な御答弁でありますから、この程度にいたしておきます。  そこで本年度防衛庁費八百六十八億、このうち本年度の新規増強が二百六十六億。本年度の新規増強は防衛六ヵ年計画の一環として考えられたものか、防衛六ヵ年計画と関係なくこの新規増強というものはおやりになっておるのか、一つ長官からお答えを願いたいと思います。
  189. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 防衛六ヵ年計画につきましてはただいま研究中でございます。まだ成案を得るに至っておりません。従いまして三十年度に盛りました計画は、三十年度の予算の計画として立てた次第でございます。
  190. 今澄勇

    今澄委員 そうすると、三十年度の新規増強二百六十六億というのは、防衛六ヵ年計画の一環ではないということになっておるわけでありますね。長官としては防衛六ヵ年計画を国会に出せと言われることはぐあいが悪いでしょうから、そういう御答弁でありましよう。  私はもう少し聞いてみたいと思います。防衛六ヵ年計画を今御研究中であるというが、この防衛六ヵ年計画構想の中において、駐日米軍の撤退を想定いたしておるかどうか、自衛隊だけの自衛体制確立を考えておるのかどうか、米軍は一体いつ日本を撤退するこが正しいんだ、それでそれに見合う防衛体制というものはどういうふうに考えたらいいかという構想くらいは、長官として述べられるだろうと思いますから、一歩後退をして、この駐留軍と日本の自衛隊増強との構想について一つ答弁を願いたいと思います。
  191. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 六ヵ年計画の構想そのものが研究の対象で、非常に大事な点で研究中でありますが、その中におきまして駐留軍のなるべく早期の撤退ということは、考慮の中に入れてやっていくべきものだと私は考えております。
  192. 今澄勇

    今澄委員 そんなたよりない話ではだめなんで、横浜の根岸基地をごらんになればすぐわかる。コンクリートによってアメリカの駐留軍は恒久的設備を作っておる。学校も調達庁がこの間世話をして、アメリカの子供ばかりが行くのに必要だというので取り上げて、アメリカの子供用の学校もこの間接収したばかりである。漸次日本国内においてはアメリカ駐留軍が恒久化の体制をとっておるときに、なぜ一体そんないいかげんなことなんですか。私は鳩山内閣として、先ほど答弁がありましたように、自衛隊を増強してアメリカ軍を帰すというなら、どういう計画でどう帰すかという構想くらいはここで述べられなくては話にならぬじゃありませんか。このアメリカ駐留軍の恒久的施設についてはまだもっと申してもいいが、これでとめておいて、これらと見合ってあなたの方はアメリカ駐留軍をいつ帰すつもりなのか。これは杉原長官から御答弁ができなければ、鳩山総理大臣から政治論的な御答弁をお願いいたします。
  193. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 もともと安保条約そのものが、御承知の通り、暫定的の措置としてとられておることでございます。そうしてまたあの安保条約の中に明記いたしておりますように、日本の条約の中に個別的あるいは焦団的の自衛の取りきめの有効なものができたと両国政府が認めた場合には、あの条約は効力を失う、こういう建前になっておるわけでありまして、これがいろいろ議論よりも何よりも事実においてわが国の自衛の体制というものが実際においてそこにできること、それ自体がアメリカ軍の撤退を可能ならしめるゆえんだと考えております。
  194. 今澄勇

    今澄委員 鳩山総理伺いますが、これは総理のためにもはっきりしておいた方かいいかと思って伺うのです。一昨日の質問で、千島、樺太の返還をするには安保条約、行政協定の骨抜き的改訂をやらなければ、とても千島、樺太の返還には応じないだろうという質問に対して、あなたは同感ですと言った。その同感ですというのは、行政協定、安保条約の骨抜き改訂に同感なのか、そんなことはないと思いますが、それとも、それをやらなければ千島、樺太の返還は鳩山内閣が要求してもだめだから、お説の通りだという同感なのか、この二つの点を一つ御解明を願って、行政協定、安保条約に対する鳩山総理大臣の今後の見解を聞いておきたいと思います。
  195. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私が一昨日お答えをしたときには、安保条約あるいは行政協定等の改正を前提として申したわけではないのであります。しかしながら根本問題としては、安保条約あるいは行政協定というものは、日本一つ自衛力を持っていない時代に作ったものでありますから、これはだんだんと変改さるべきものだと思っておるのであります。一昨日申しましたのは、樺太南部あるいは千島列島を日本にソヴエトが返すに当って、その使用が、あなたがおっしゃった通りに、米軍の基地にすぐ使われるよう情勢であれば、返すはずはないだろうという赤松君のお説に、私は同感だと言ったのです。
  196. 今澄勇

    今澄委員 ここのところは、今杉原長官の答弁でも、私は追及をしませんが、最後は安保条約、行政協定で逃げることになるのです。この安保条約、行政協定というものの基本的な考え方は不平等条約であります。日本を守ってやろうという。基地は提供するがアメリカ側に義務はない。日本の防衛力増強を期待しておる。よその国に義務として防衛力の増強を課せられるというようなばかなことはない。こういう不平等性を除かなければいかぬということで、これらの安保条約、行政協定というものの改訂を政府の若い事務当局の者はみんな考えているのです。鳩山さんも今行政協定、安保条約は改めていかなければなるまい、かようにおっしやいましたが、いわゆるその不平等性を直すべき必要があるというお考えですね。
  197. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そうです。
  198. 今澄勇

    今澄委員 そうすると私は鳩山さんに聞かなくちゃならぬのです。あなたは憲法改正、憲法改正と言って、今度も憲法改正調査会をお作りになるが、これはいろいろ法律的に疑義はありますが、あとで申し述べましょう。あなたの憲法改正のその意義はどこにねらいがあるかというと、あなたの答弁を見ると、これは占領下にできた憲法で隷属性である、不平等であるから改正すると言われるのです。ところが憲法改正は国会審議にかけて国会がやらなければならぬ、日本の大法典なのです。行政協定というのは、吉田内閣アメリカと結んだ、一つ国会に諮らなかった協定なんです。もし真に日本の独立を確保し、不平等性を直すのならば、この行政協定から改めていって憲法改正にということが当然のコースでなくちゃなりません。あなたは今その不平等性を直すというのならば、その理由は同じことだ。憲法と行政協定では天地雲泥の相違です。鳩山内閣は行政協定を直してから憲法改訂にお進みになる方がいいと思うが、一体御意見はどうですか。
  199. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 行政協定は相手のあることでありますから、やはり日本自衛力——自衛隊ができ上ってからでなければもちろん改正はできないと思っております。
  200. 今澄勇

    今澄委員 そうすると、アメリカがなかなか無理を言うからこういうむずかしいところは避けて、安易に日本国内の多数を制して憲法の改正をしようというあなたの考え方は、私は全く自分勝手な考え方だと思います。そういう困難な相手と、とにかく国家のために大いにしのぎを削って改訂をしてくることが、日本総理大臣の義務ではありませんか。一応これだけを申し上げておきましょう。  そこで防衛庁長官に、本年度の予算外契約百五十四億円、これが三十一年と三十二年度の両年度にわたっております。この各年度別の支出額をちょっと聞かせていただきたいと思います。
  201. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 お答えいたします。来年が百三十億でございまして、再来年が二十四億でございます。その再来年の分がジェット機間内生産の部分に、ある部分かかっておるわけでございます。
  202. 今澄勇

    今澄委員 そうすると、その予算外契約の年度別支出額の計上というものは、まさかでたらめにやるわけじゃないでしょう。何か一定の計画に基いておやりになったのでしょうが、どういう計画で三十一年度を百三十億に、三十二年度を二十四億というふうにお分けになったのですか。思いつきでお分けになったのじゃないでしょう。その計画の基礎をお間かせ願いたいと思います。
  203. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 お答えいたします。三十二年度の分にかかるものは、もっぱら飛行機の調達に関する部分だけでございます。そのほかは、施設整備費にしましても、装備品の購入費にしましても、全部三十一年度でございます。
  204. 今澄勇

    今澄委員 そこで私防衛庁長官に聞かなければならぬのですが、そういうふうに予算外の契約を一定の計画に基いてやるということになると、何かそこに計画がなくして、およそ日本国民の金を使うのに思いつき次第に使うというようなことでは、国会は了承いたしません。その計画の基礎は航空機ということになると、本年一月初旬米軍事顧問団ハーディ少将から上村航空幕僚長あてに、防空五ヵ年訓練計画というものが来ている。これはわれわれは確認をしておる。この防空五ヵ年計画というものを基礎にして、それらの飛行機の発注をやらなければ、やることはできないわけです。そこでこれらの防空五ヵ年計画というものが、一体どういうふうな方向になっているか。向うから来た本文を私は提出してもらいたいと思ったけれども、あなたのお立場もあろうから、防衛庁が考えておるその五ヵ年計画というものをちょっと聞かして下さい。
  205. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 ただいまお触れになりましたアメリカ側の顧問団の空軍部長から出ました文書でございますが、これは先方の係官の一応の意見を申してきておるのでございまして、先方としてもまだきまった意見ではないのでございます。繊了承願います。  それから日本側では五ヵ年計画というものはまだ成案を得るに至っておりません。
  206. 今澄勇

    今澄委員 そこで防衛庁の予算に関する質問を終りますが、私が言いたいのは、計画がなくしてこういう予算外契約五十四億をやるということは、それはでたらめです。計画があるからこそ予算外契約が国の財政をにらんでやれるのです。その計画をもってやったからには、防衛計画というものがないわけはないのです。もし防衛計画がないというならば、国会にでたらめな予算を防衛庁は要求したことになるのです。防衛庁の責任者として、そういう計画がないのに、でたらめな予算国会に出して、予算審議が通ると思いますか。もし国会に対してそういう年度別に分けた予算を請求したのならば、その基礎となるべき計画を出すことが当然であるくらいあなたはおわかりであろうと思うのです。そこで私どもはこの際——あなたはないないと言われるけれども、この前の防衛庁長官の木村さんですら、防衛五ヵ年計画というものをこの予算委員会でわれわれに報告をしたのです。もっとも、だいぶもんで理事会を開いた結果ですけれども……。それでは本村長官がここで報告をした五ヵ年計画は全部やめられたのか、あるいはそれを骨子として今できつつあるのか、この防衛五ヵ年計画についてもう一度御答弁を願いたい。この防衛五ヵ年計画なり六ヵ年計画なりというものについては、私どもは非常に重視をしておる。計画のない年度別に割った百五十四億なんというものが認められますか。当然自由党だってそうだと思います。その点でもう少し長官は国会が納得する御答弁をなさらなければならぬと思います。
  207. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 この六ヵ年計画につきましては今日まで申しておりますように、政府といたしましてそういうものを立てていく方針だということは決定いたしております。従いまして防衛庁といたしましては、当然の職責といたしましてただいま研究中でございます。そうしてまだ防衛庁限りとしても事実成案を得るに至っておりません。
  208. 今澄勇

    今澄委員 木村長官の分はどのようになりましたか。前内閣から引き継いだ分はどうなりましたか。
  209. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 私は木村長官の案なるものを存じません。
  210. 今澄勇

    今澄委員 これは前木村長官が議会で説明をしたのです。防衛庁事務当局案と言ったのです。そうすると防衛庁の事務当局の人は来ていますか。防衛庁の事務当局の責任者からその事務当局案というものはどこへ行ったか、ちょっとここで説明して下さい。
  211. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 お答えいたします。私は防衛庁に関して大臣の知らない事務当局案とかいうものはあるべきものじゃないと思っております。
  212. 今澄勇

    今澄委員 だけれども木村長官は事務当局案と言っている。事務当局案と言ってここで説明をしたのですからそれは事実です。そうするとあなたは木村長官から何も引き継がなかったわけですか。これは大事ですよ、引き継がなかったかどうかということを聞いているのです。
  213. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 引き継ぎは受けておりません。   〔「休憩だ、休憩だ」と呼ぶ者あり〕
  214. 牧野良三

    牧野委員長 そう休憩が好きでは困る。   〔「何で休憩するのだ」「委員長、進   行、進行」と呼ぶ者あり〕
  215. 牧野良三

    牧野委員長 むろん進行です。——今澄君。
  216. 今澄勇

    今澄委員 とにかくこれは予算編成の上からいくというと、百五十四億とというものが三十一年、三十二年にわたって年度別に出ておるのでしょう。そうすると計画なくして出るわけがないじゃないですか。計画なくしてもし出したというならば、予算委員会を侮辱するもはなはだしいじゃありませんか。そうすると何らかの計画というものはあるはずなんだ。現にあなたは米軍事顧問団ハーディ少将の手紙を認めたのですから。これは五ヵ年計画と書いてあるのですから。そうすると何かの計画があるのに全然ないというお答えで、そのまま予算審議をわれわれにやれと言われたって、これはちょっと無理だと思うのです。そこでもう一度一つ納得できるよう答弁をお願いしたいと思います。
  217. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 お答えいたします。私、この六ヵ年計画というものは今研究中でありまして、まだ成案を得るに至っていないのが事実でございます。そうして研究中でまた成案でもないものを御報告申し上げるということは、私は国会を尊重する趣旨からいたしましても、まだ責任を持てないようなものを国会で報告することはいかがであろうかと思っております。
  218. 今澄勇

    今澄委員 そうするとこの案を、きまってないでたらめなものをいいかげんに思いつきで分割して出したということになると、まことにゆゆしい一大事なんです。増原さんがお見えになっておるから政府委員として一つ答弁願いたいと思います。
  219. 増原恵吉

    ○増原説明員 お答えをいたします。木村前長官が当委画会で申し上げましたのは、事務当局において当時五ヵ年計画をいろいろ検討さしておるということを申したのでありまして、この席で事務当局の案を御説明いたしてはおりません。三十一年度、三十二年度にわたりまして一部予算外国庫負担が本年度の予算に出ておりますが、これは航空機の関係でございます。航空機の関係につきましては、大体ジェット関係の飛行機を、七十機のF八六と九十七機のT三三を作るという計画のもとに、その経費を本年、三十一年、三十三年にわけてお願いをしておるということでございます。
  220. 今澄勇

    今澄委員 ただいまの増原次長の答弁でありますが、木村長官はこの会議場でもみにもんだ結果、秘密会を開いて報告をしたのです。それで私はいろいろの問題もあろうから、この問題はまだまだあといろいろ同僚委員もあることでありましょうから、それに留保をしてつなぎますが、ただ問題のところは、そういう計画もないのに百五十四億の金を二つに分けるということは、それじゃ思いつき次第でやったのかということになるのです。この百五十四億を予算外文出にするからには、何らかの計画がなければ国会が納得することはできない。何らかの説明がなければ納得することはできないと思います。この点について杉原長官からそれではもう一度御答弁を願いましょう。   〔赤松委員委員長、議事進行」と呼ぶ〕
  221. 牧野良三

    牧野委員長 ちょっと待って下さい。
  222. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 この予算外契約につきましては、先はどからお答えをいたした通りでございまして、飛行機につきまして三十一年度までの分を計上しておる次第でございます。
  223. 牧野良三

    牧野委員長 赤松勇君より議事進行について発言の要求があります。お許しいたします。
  224. 赤松勇

    ○赤松委員 ただいま増原君からも、杉原長官からも、空軍についての計画はあるということは言われておる。これはあってしかるべきだ。ないものが予算に計上されるはずはないのであって、従って予算委員会で三十年度予算審議するに当って重要な事項でございますから、この際空軍計画の全貌、もしその全貌が言えなければその要綱でも示していただきたい。それまで暫時この委員会を休憩されたいという動議を提出いたします。
  225. 牧野良三

    牧野委員長 杉原国務大臣。   〔赤松委員委員長、動議を出しておるじゃないか」と呼ぶ〕
  226. 牧野良三

    牧野委員長 いや、できるならできるという説明を聞こうじゃないか。   〔赤松委員「休憩の動議を出しておるのだ、休憩の動議はすべてに先議するんだ」と呼ぶ〕
  227. 牧野良三

    牧野委員長 説明は聞きませんか。   〔赤松委員「休憩の動議だ」と呼ぶ〕
  228. 牧野良三

    牧野委員長 ただいまの動議に賛成の諸君の起立を求めます。   〔賛成者起立〕
  229. 牧野良三

    牧野委員長 起立多数。よって動議のごとく決しました。  暫時休憩いたします。    午後二時四十九分休憩      ————◇—————    午後二時五十二分開議
  230. 牧野良三

    牧野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  政府より発言を求めております。これを許します。杉原国務大臣。
  231. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 先ほどから申しました三十一年度及び三十二年度の分を申し上げます。先ほどのジェット機生産の点でありますが、F八六の方は三十年度はまだございません。三十一年度におきまして、おおむね二十七機くらいを予想しております。三十二年度におきましては四十三機です。それからT三三の練習機でございますが、これはことしの歳出予算に組んでおりますもの九機、来年の三十一年度の予算外契約に計上しておるものが六十七機でございます。三十二年度が二十一機、こういうふうに見込んでおります。
  232. 今澄勇

    今澄委員 それでこ問題はあとでまた聞くことにして、一応質問を留保して国防会議の問題をお聞きいたしましょう。  そこで国防会議の問題ですが、防衛庁設置法のときに時の改進党から、この国防会議というものをつけなければこの設費法は通さないのだということで、これは今の与党でありますがそこから話が出て、それでこの国防会議が防衛庁設置法にくっついているわけです。そこでこの国防会議の構想は、新聞にはよく出ておりますが、一体どういう構想でどういうふうな建前からこの国防会議を作るのか。まあ純理論的に言えば、この前の国会も何ともない、今度の国会も何ともない、あのときの改進党の態度としては、国防会議を即時次の国会に出すということを折衝のときにしきりに言っておったのを私は知っておるが、私はこういうものができるのをあまり喜ばないので、別段あれはいたしませんけれども、もし政府の方で国防会議についての構想——どういう考え方であるかということは国民の重大関心であります、御説明を願いたいと思います。
  233. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 お答え申し上げます。国防会議につきましては、その構成等に関する部分以外の基本的なことは、御承知の通り防衛庁設置法の中にすでに規定されておるところでございます。そうして構成等については別に法律を定めることに相なっておりまして、政山では今せっかく検討中でございます。
  234. 今澄勇

    今澄委員 そんな答弁ではいけませんよ。だから私は資料を要求したのであって、予算を伴う法律案の一覧表を当予算委員会に出せと言ったら国防会議はちゃんと載っているのですよ。予算を伴う法律案として出しておるのです。そういうふうに予算を伴うからというので、当予算委員会に出しておるものに国防会議が入っているのに、あなたがここで何もわからぬということでは、何で一体予算を伴う法律案として国会に出したのですか。話にならぬじゃありませんか。国会立場よりも保守合同ばかり考えておってはしようがないじゃありませんか。   〔発言する者あり〕
  235. 牧野良三

    牧野委員長 お静かに願います.
  236. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 お答え申し上げます。構成等の問題につきましては、当時いわゆる三党折衝なるものがありましたことは御承知の通りでございまして、その当時一つの案があったわけでございますが、今のところは、それを一つの重要な参考として、今検討いたしております。
  237. 今澄勇

    今澄委員 そこで問題の点は、この防衛庁設置法の中に内閣は諮らなければならぬということがあるから、われわれは諮問機関であると考えておるが、この国防会議というものは諮問機関であるということに間違いはないかどうか、この点だけ一つお答えを願いたいと思います。
  238. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 これはあの法律の建前からいたしまして、それ自体が決定機関でないことは明瞭だと思います。ただあそこには、これこれの事項は総理大臣が国防会議に諮らなければならない、こういうふうに規定してありますところに、一つの特殊な性格が出ておると思います。
  239. 今澄勇

    今澄委員 そうするとこれに諮らなければならないということになると、諮ったときに多数決にするのか一致か知りませんが、国防会議がきまらなかった場合は一体どういうことになりますか。
  240. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 実はその議決方法等も、これは非常に大事でありますから、今検討中でございます。
  241. 今澄勇

    今澄委員 まあいいでしょう。  それでは一言だけ聞いておきますが、もしこの国防会議が諮問機関であるとすれば、国務大臣が加入しておることは、同一人格の国務大臣がまず国防会議員としてその判断内閣に諮問するということになります。これは憲法第六十五条「行政権は、内閣に属する。」という憲法に違反になるのであって、こういう内閣の行政最高責任性を犯す、憲法違反になるおそれのある国防会議を、予算を伴う国防会議に関する法律案としてわれわれの手元に出しておきながら、いまだ議決の方法もわからぬ、何もわからぬ、一体何のためにここへ出したのですか。(拍手)これがささたる小さな一法律案というならば私は申しません。けれども憲法六十五条「行政権は、内閣に属する。」というこの毅然たる憲法の章条に照らして、閣僚がこの国防会議に入るということについては非常な疑義があるじゃありませんか。こういう重大な、憲法上の疑義になる問題を、一体鳩山内閣総理府の三番目に国防会議に関する法律案として軽々に出しておるが、これは一体どういうことですか。鳩山総理並びにその他だれでもいいのですが、もう少し責任のある——私もあんまり追及したくありませんし、ほかの問題に移りたいのですけれども、これではあんまりだらしがないではありませんか。
  242. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 私はその点は憲法上差しつかえがあるとは思いません。
  243. 今澄勇

    今澄委員 まあこの問題は留保して、また同僚議員にやってもらいましょう。そこで大蔵大臣に少し質問したい。  それでは今度は大蔵大臣でありますが、私は大蔵大臣の所管にかかる防衛支出金に含まれざる国有地、国有施設、これは防衛分担金その他の勘定に入らない純然たる日本の国有地、国有施設を一体幾ら、土地についてどの程度、建物がどの程度、機械がどの程度、アメリカ駐留軍に貸しておるか。これは国有財産の担当しておる大蔵大臣の最大責任であります。アメリカ駐留軍に日本の国有地、国有施設を一体幾ら貸しておるかということについて、監督の責任のある大蔵大臣から一つ御説明を願いたいと思います。
  244. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御答弁します。建物が三百四万三千坪あります。それから土地が二十三万。それから機械が一万五千八百九十七個。   〔「数字が違う」と呼ぶ者あり〕
  245. 今澄勇

    今澄委員 それは大蔵大臣、もう少し単位を間違えないで、よく聞いてからもう一ぺん御答弁なさい。単位が違う。
  246. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 訂正します。土地が二億三千五十六万一千坪です。
  247. 今澄勇

    今澄委員 さらに国有施設の中に機械が入っているのですが、機械を一体どの程度貸しておるのですか。
  248. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 機械が一万五千八百九十七個であります。
  249. 今澄勇

    今澄委員 その機械の一万五千はちょっとそれは間違いなんです。機械はもう少し多いのです。もう一ぺん見てください。機械は少し間違いなんです。——まあ、いいでしょう。そうしましょう。それでその国有財産の帳簿価格です。これは歳入予算売払価格として帳簿価格を政府は一体幾らにはじいておりますか。この点を一つ伺いをいたします。
  250. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御答弁します。先ほどの土地の二億三千五十六万一千坪、これは価格で六百四十七億二千百八十六万六千五百七十五円、これは詳しい数字であります。それから建物の方が千二百二十四億九千三百九十六万三千四百五十八円、こういうことであります。それから機械が三十億八千三百十七万九千十九円、こういうことになります。
  251. 今澄勇

    今澄委員 そこで合計すると、これは相当な金額なのです。これは防衛分担金折衝の過程においてこれらの国有地、国有施設こういう膨大なものは一これは政府としては一体五%の借入率としてはじいて勘定しておるのか、これは全然無償になってはおるけれども、あまりにも国有財産としては膨大なものをアメリカ側に無償提供しておるわけなんです。大蔵大臣は分担金交渉の経過においてこの膨大な国有地の問題について話が出ましたか、どうですか。これは将来どういうふうに取り扱いますか。
  252. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 分担金の交渉等について、こういう点について常に注意を喚起はいたしております。
  253. 今澄勇

    今澄委員 私は大蔵大臣に——あなたは今度の交渉ではなかなか強腰ではあったそうですけれども、日本の国有財産をきょう初めて——これは金額にして初めて出た数字なんです。終戦以来十年これだけの国有財産をアメリカの駐留軍に貸しておいて、これらの点について日本政府としての何らの意思表示がないということは、国民の大多数の者が見るならば、全くこれはだらしのない内閣なんです。私はこういう国有財産の駐留軍への貸与の問題は、どうか一つ今後——これは外務大臣もそうですけれども、この数字が出たからには国民は明らかにこれだけのものを貸しておると知るでしょう。それにもかかわらず、一体アメリカ駐留軍のこの富士山麓の射撃問題——冨士山麓における今日の現状はどうですか。私は山梨のキャンプ・フジの米軍司令官から山梨県当局に対し、米軍富士演習場内で今までより広い範囲にわたり実弾射撃を行う旨の通知があって、山梨県としては観光や森林資源保存の上からも大へんなことだし、近所の住民の生命にも関することであって、日米合同委員会にかけてこの一方的なアメリカ軍の射撃範囲の拡大を食いとめてもらいたいということが今大問題になっておるのです。日本国民を代表する政府は、こんなに何千億という膨大なものをただで貸しておるにかかわらず、その富士演習のアメリカ軍のやり方はどうですか。政府はこれをどう解決するおつもりですか、担当の責任大臣から御答弁を願いたい。
  254. 西田隆男

    ○西田国務大臣 お答えをいたします。ただいまの富士山麓のA地区、B地区の問題は、選挙前に米軍駐留軍司令官の方から山梨県の方に射撃を開始したいという申し出がありまして、山梨県側といたしましてはそれに対して選挙が済んでからにしてもらいたい、かような返事をしておったそうでございます。そこでアメリカの方では選挙が済めばやれるものとこう理解をしておった。山梨県側の方では選挙が済んでから、新たに協議調整するという考え方に立っておった。この二つ考え方の相違が現在の紛争を巻き起しておるのでありまして、これは日米合同委員会にかけまして早急に調整をはかりたいと考えております。
  255. 今澄勇

    今澄委員 私は鳩山内閣総理大臣に今お聞きした通りであります。おそらくは山梨県側が選挙が済んでからにしてもらいたいというのは、選挙が済んでからあらためて交渉をしようという意味なんです。私はこういう重大な問題は選挙が済んでから交渉ようと言ったのに、選挙が済んだとたんに、日本の坐り込みがあってもやるというような、そういうむちゃな話はないと思います。日米合同委員会を至急開かれてこの問題を善処されることが、鳩山総理の責任であると思いますが、総理からお答えを願いたいと思います。
  256. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 御意見通り思います。
  257. 今澄勇

    今澄委員 それでは御意見通り善処するということでありますから、私はそこで今度は経済問題について通産大臣に、まだだいぶ残っておりますから、一つ伺いをいたしておきたいと思います。  私は先般来問題になっておったココムの問題について、ぜひ一つ誤謬を訂正しておかなければならぬのです。日本ソ連中共との貿易について、通産大臣はしきりと西欧並み、西欧並みということを言われたけれども、大体ココムというのがどういう機構であるか通産大臣は御承知ですか。ココムの禁輸品目というのは百六十品目なんです。その禁輸品目の百六十品目というのは、西欧も日本も同じなのです。日本も全然これにはあれされておらないのです。だが中共との貿易はこのココムの百六十品目ではないのです。一体ココムに関しては、政府はこれらの折衝をどこにやったのですか、アメリカの大使館にやったのですか、それともココムの事務局にやったのですか、お伺いをいたします。
  258. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 交渉はココムの事務局でやったのであります。
  259. 今澄勇

    今澄委員 ココムの事務局に交渉をしたら、もっと気のきいた答弁ができると私は思うのです。ココムというのは、ソ連及び欧州、ソ連衛星国向けの禁輸統制をする機関なのです。中共と北鮮向けの禁輸統制をする機関には、チャイナ・コムというのがあるのです。このチャイナ・コムというのがいわゆる中共貿易をやっておる。だからココムというのは欧州の百六十品目しか押えておらぬけれども、それが幾ら緩和になったところで、中共には出せぬのです。中共に出すには、このチャイナ・コムの品目が四百六十品目あるのですが、このチャイナ・コムがいわゆるその禁輸品目をココムの線にまで下げてこなければ、わが日本中共貿易する上において非常に障害となるのです。これがココムの問題の焦点なのです。しかるにかような重大な問題を、通産大臣ともあろうものが知りもしないで、何でも欧州の品目が百六十だから、日本のやつもそれでしょうというようなことで、どうして中共貿易があれしますか。このチャイナ・コムの品目は、絶対禁止品目と事前、事後承認品目とに分かれておるのです。だからこれを通産省に申請すると、通産省は、今あなたはココムの事務局に連絡するとおっしゃいましたが、ココムの事務局に通産省が連絡しておりますか、下僚に聞いてごらんなさい。
  260. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 ココム、ココムと簡単に言っておられますが、お話のチャイナ何とかというのはその中に入っておる。それで同じところでやっておるのです。それから禁輸品目が違うことはむろん承知しております。それが支那の方に対してひどい。しかしこれは日本だけに適用されておるのではないので、その点は西欧諸国もやはり同じように禁止されておる。だからこの間じゅうから申し上げましたのは、ソ連に対するものだけではない、支那に対する分も今まで解除される分だけは解除されて、日本だけが特別に強い禁輸は受けておらぬ。前には受けておったのですが、だんだん解除されて、大体同じようになった、こう申し上げたのであります。
  261. 今澄勇

    今澄委員 そこで今の問題点は、チャイナ・コムの禁輸品目の線まで下げることが大事なんで、通産大臣は、チャイナ・コムの品目を一般ココムの品目の線まで下げる努力をするという答弁をきのうなされば妥当なのでありますけれども、そういう認識不足のことだから、幾ら中共貿易中共貿易と言ったって、中共貿易が伸展するわけはない。もう少し私は通産当局も勉強願わなければならぬと思うが、この通産省に出された事前率後の承認品目は、今まで日本の業者が出したやつは、全部全面的に通産省から却下になっておる。これを却下しないで、ココムの事務局に通達をして何とかしたという事例が、一つでもおありになるならば御回答願いたいと思いますが、事務当局の方に聞いて下さい。
  262. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 通産省が全部却下しているということはございません。事実相当に解除というか、ケース・バイ・ケースに許されております。今品目を一々覚えておりませんから政府委員お答えさせます。
  263. 岩武照彦

    ○岩武政府委員 ココムの禁輸品目のチャイナ・コムのことでございますが、チャイナ・リストの禁輸品目の中でも、契約によりましてそのケースだけを輸出するというふうな手続はございます。それによりまして、物ごとによって申請をしておりまして、十二月以来化学薬品等におきましては約百万ドル程度の輸出許可を与えております。品目は酪酸、重クロム酸塩類その他であります。
  264. 今澄勇

    今澄委員 そこで私が注意をしなければならぬのは、事前事後承認品目で、今あなたの方ではだいぶやられたという話でありますが、通産省に承認のあれを出すと、どうしても向うからのオファー先がわかります。このオファー先をつついてみると、出した情報が米国大使館に全部流れていて、米国の業者があなた方の許可しないうちにもう向うにオファーをして、日本の業者がせっかく苦労してやっているやつがそのまま米系の業者に乗っ取られているという実情が二、三あるのです。こういう点は国際商行為の慣行として石橋通産大臣は——重大な日中貿易についてそういう日本の業者が通産省に出して、その情報が米国大使館に漏れて、米国の業者が日本との取引先に当っておるというような実例を申し上げることは遠慮いたしますが、そういうことのないように通産大臣は一つ御善処を願いたいと思います。御答弁を願います。
  265. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 私の知っている限りにおいては、アメリカ側にそういうことがあるとは思いませんが、しかしせっかくの御指摘ですから、十分調査しまして、今後そういうことがありましたら善処するようにいたしたいと思います。
  266. 今澄勇

    今澄委員 そこでこの鳩山内閣の今度は国際収支並びに日本の輸出の問題にかかってくるのですが、四月十九日イギリスは、ガット規定第三十五条を日本に適用して、事実上ガット譲歩税率をわが国には適用しないことにすると公表いたしております。イギリスは昨年来わが国のガット加入に関連して、意匠盗用、航空、領事等の各国別協定を結ぶよう提案してきたのでありますが、これが日本間品ボイコットを合理化するための手段であったので、日本側はこの提案を拒否したのであります。ところがイギリスはこれをもってわが国のガット加入承認の前提条件が満たされていないとして第三十五条を適用しておるのです。かかるイギリスの不当な措置に対して、鳩山内閣がいかなる経済外交を行なったかということを私どもは聞いておらぬのです。そこでこれは日本の西欧民主主義陣営に対する輸出の大きな問題で、なるほど中共貿易をすればイギリスと競争状態になるでしょう。イギリスは香港を通じて相当やっておるのですから。けれどもこういう理不尽なイギリスの不当な措置に対しては、鳩山内閣は何らかの措置をとらなければならぬと思うのです。外務大臣はどういう措置をおとりになったか、一つお聞かせ願いたいと思います。
  267. 重光葵

    重光国務大臣 今のお話は、ガット加入の問題についてどういう処置をとったかということに帰着すると思います。ガットの加入のためには関税交渉を各国とやっておることも、他の機会で御説明を申し上げました。そして今では大体ガット加入に必要な二十三ヵ国の承認に対して、二十一ヵ国は日本を支持するところまで交渉が参っております。そこでもうしばらくこの交渉を続けていってその加入の条件を御たいと思います。  そこでイギリスのことでございますが、イギリス日本がガットに加入することを積極的にじゃまをするということはしないけれども、イギリスとしては、日本とのいろいろな競争防止をする必要がある場合に、その権利を行使するだけの処置はとっておかなくてはならぬというので、日本のガット加入ということに対するイギリスの保留があるわけでございます。しかしこれと同町にイギリスは、日本に対して通商航海条約の交渉を開始したいと申して参ったのでございます。これは間もなく交渉が東京で開かれる予定でございます。さようなわけでありまして、イギリスとの関係において、ガット加入の問題について意見の合わないのは実にこれは残念でございます。しかしながら、現にイギリス日本に対して実質上最恵国待遇を与えておるのでありますから、通閥航海条約の交渉等によって、十分通商上の目的を達するよう努力をしてみたい、こう考えております。
  268. 今澄勇

    今澄委員 今の通向上の努力をしてみたい、あるいは通商航海条約ということで私は外相にお尋ねいたしますが、今後わが国の対外経済協定の締結に当っては、国別の通商航海条約の締結という建前でいくのか、それとも今回のアジアアフリカ会議日本代表が国際協定や地域的多数国間協定の締結を提唱しておるように、ガットなどの国際協定の、締結を優先して考えていこうとするのか、そのいずれの方針をとられようとするのであるか、外務大臣からお伺いをいたしたいと思います。
  269. 重光葵

    重光国務大臣 その点は結論的に申し上げれば、両方でいきたいと考えております。各国に対して通岡航海条約を締結するために交渉をするということはやらなければならぬことでありますが、今のガット加入のごとく、通商の自由ということをなるべく広範囲に広げることに対する国際的な努力はいたさなければならぬと考えております。
  270. 今澄勇

    今澄委員 もう一つ経済外交で聞かなければならぬのは、日本の輸出の振興は、來南アジアの賠償の問題かと思います。東南アジアに関する賠償が一体どうなっているか。ビルマとの間の賠償は、その後どういうように具体化しておるか、フィリピンとも近く高碕さんが会われるということであるが、インドネシア、ビルマ、フィリピン等との賠償交渉の今日までの過程と見通しを一つお聞かせ願いたい。
  271. 重光葵

    重光国務大臣 賠償問題は東南アジア数ヵ国との国交回復が前提と相なっておることは、御承知の通りでございます。ビルマは賠償協定ができまして、国交回復の平和条約も成立をいたしまして、そうして今では正式の国交が開かれてきたのでございます。ただビルマに対しては、賠償協定の跡始末について、今細目協定をビルマで交渉をいたしております。そうしてこれにつきましては何といっても専門的のいろいろの故障と申しますか、いろいろな困難があることは事実でございますが、すでに賠償協定もできておるわけでありますから、それに基いて協定の細目実施を現実にはかっていこうというので、目下努力をいたしております。これがビルマに関する問題であります。  次に賠償協定で今問題になっておるのは、御承知の通りにフィリピンとの関係がございます。フィリピンとの関係は、その大要は私が本会議において御説明申し上げた通りでございます。それは最近四月になりましてフィリピンから専門委員を東京に派遣しております。専門委員を派遣して賠償問題に関する専門的の事項について協議をするということについて、われわれは歓迎をいたしまして、そうして目下双方の専門委員によって賠償問題の専門的の方面のことの討議が進められております。最近賠償問題の主任者とも申されるフィリピン側のネリ大使が東京に到着をいたしまして、この専門委員会の仕事をさらに促進して何らかの案を作るべく一つ試みてみたいという意向の表示がございましたので、わが方もこれを歓迎いたしまして、協議に入ることに相なっております。これは昨今その協議に入らんとしつつある状況でございます。  次はインドネシアの問題でございますが、インドネシアはまだごく準備的の時代でありまして、向うの意思もはっきりわかりません。はっきりわからないというのは、交渉をいかにして始めるかということについてはっきりまだいたしておりません。しかしわが方としては、先方の希望があるならば、何どきでもこの問題を取り上げ得るという態勢におるわけでございます。従いまして、フィリピンの問題の解決を今急ぐということが現状でございます。インドネシアはまださようなごく緒論的のところにおるわけでございます。
  272. 今澄勇

    今澄委員 御親切な答弁がありましたので、外務大臣に対する笠間は打ち切ります。  そこで私は、経済外交の最後の問題としては原子力の平和利用、これは第二次産業革命の原動力といわれておるが、この原子力の平和利用についてどう考えておるか、特に高碕経審長官等の原子力の平和利用に対する政府考え方、もう一つは濃縮ウラニウムの受け入れについても、政府は当然考えておかなければならぬと思うが、この二点について一つ伺いいたします。
  273. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまの御質問お答えいたします。政府といたしましては、原子力は将来エネルギー資源の最も重要なものである。特に日本のごとくエネルギー資源が他の国と比較して少い国においては、その研究はどの国よりも十分にやらなければならぬ、こういう決心のもとに現在いろいろ方策を講じておるような次第でございます。  最近の濃縮ウラニウムの問題につきましては、これに対するいろいろなひもがついていないという場合は、当然これは借り入れたい、私はこういう所存でございます。ただいまそれは検討中でございまして、最近にアメリカの方からその方の調査に参りました人間も帰って参りましたものですから、今よく協議中でございます。  以上お答えいたします。
  274. 今澄勇

    今澄委員 そこで最後に、私は大蔵大臣にこの昭和三十年度予算編成基本方針についてお伺いをするわけであります。  今までいろいろ外交の問題、経済外交の問題、防衛の問題等お聞きをいたしましたが、鳩山内閣国民に公約をいたしましたいろいろの大言壮語と、似ても似つかぬ貧弱な情勢であるということを私は痛感をいたしました。私は、この際大蔵大臣に予算編成基本方針について伺いたい。大臣は財政演説並びに予算案の説明において、基本方針の第一として、財政収支の均衡を確保し、一般会計予算の総ワクを一兆円以内にとどめることにしたと言われております。しかしながらこの公約は、実質的には全く無意味になっておって、これは歳入面において、専売益金中三十億円が一般会計とは無関係に地方へ流れ、道路税の形で行われるガソリン税の増徴七十三億円、入場税譲与が一兆円ワク外の歳入にされておるところを見ても、なぜこんなに一兆円の名目にとらわれておるかということを疑わざるを得ません。このように、政府の一兆円予算規模とは単なる名目と形式だけの一兆円ワクであって、あたかも実質的にも一兆円規模の均衡予算を堅持するかのごとく国民に訴えられておりますが、私は、政府がことさらに一兆円予算を堅持しなければならぬという基本的な考え方を伺っておきたいと思います。
  275. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 予算編成に関しまして、一兆円というワクを設けました。これはどういうふうなことに基くかと申しますれば、私どもの考えでは、今日日本の経済におきまして、まず地固めをするという意味において一兆円ということが非常に意味があるのであります。予算編成の全体の構想のそれは一つでありますが、さらに今後の経済発展の基礎を培養していく。それから一兆円予算がもはや二ヵ年に及びまして、従ってその間においていろいろと支障が生ずる。そのでこぼこを直していく施策を予算面に打ち出していくというのが、予算編成の根本になっておるのであります。なお実際的見地からいえば、今日の租税収入その他の歳入が一兆をこえてはなかなかまかなえない現状にあるのも、大きな一つの理論的な根拠になると思います。
  276. 今澄勇

    今澄委員 本年度予算案は、四月二日に発表された大蔵省原案では、歳入九千九百九十一億円、歳出が九千九百四十三億円であったものが、各省及び与党である民主党自身が地方選挙を控えての人気取りにあせり、復活要求を争って、蔵相の持論であった歳出の重点化というねらいが全く消え去っておることは、蔵相自身がお認めにならなくてはなりますまい。この予算分取りの弊害というものは、原案より雑件を百四十一億円削減し、予備費を五十億円削減し、補正予算編成の際の新財源を既出経費に求めるという弾力性を全く失った予算になっておるのであります。また一方では、防衛分担金削減の日米共同声明に制約をせられて、本年度は防衛庁費を今後節約する機会を失わしめたかの感が——先ほどの総理答弁にはいろいろ問題がありますけれども、そういう感がいたします。しかもわが国は毎年自然災害に見舞われて、この復旧のための補正予算を予定しておかなければならないのです。平年並みの災害よりもちょっとでも大きな災害が出た際には、政府は本年度の補正予算の編成に際して、新財源を既出予算以外に求めて、歳出規模を一兆円に押えることはおそらく不可能でしょう。一兆円をこえると思いますが、補正予算の際には、一兆円をこえるもやむを得ないというお考えでありますか、それとも来年慶予算は一兆円予算をこえても、地固めが済んだからやむを得ないというお考えであるか。補正予算と来年度予算についての大蔵大臣の御見解をひとつ伺っておきたいと思います。
  277. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 補正予算は組む考えを持っておりません。来年度の財政規模を幾らにするか、来年慶は、経審の発表によります六ヵ年計画の進展からみましても、一兆にこだわることはないだろう、こういうふうに考えております。
  278. 今澄勇

    今澄委員 もう一度聞きますが、一兆のワクを出るわけですね。
  279. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 来年度三十一年度の予算規模において、一兆のワクということ自体がなくなるのだろうと私は思っております。
  280. 今澄勇

    今澄委員 その御答弁は、今次国会における最初の答弁であって、一兆円のワクを形式的に常に維持していくという行き方が一体どうかということは、大体問題であると思います。私はこの予算の編成に伴う財政法との関係があって、これは非常に問題であるが、今の大蔵大臣の御答弁で、大体政府方針はわかりました。  もう一つ聞いておかなければなりませんが、この場合新財源には、租税の自然増収を予定できるかどうか。昨年度の租税及び印紙収入の三月末現在実収額は、予算額七千九百三億円をわずかに五十億円上回っただけであるが、本年度はこの程度の自然増収も期待できない。だからあなたは、補正予算は仮定の問題だというのであるけれども、災害は毎年日本に起るのですから、災害が起った際には、大蔵省としてはどういうかまえを持っておるかということを予算委員会に報告する義務があると思うので、災害が起った際はどうしてお行きになるかという点を、これらの自然増収等の問題も含めて御答弁願いたい。
  281. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。災害につきましては、その災害の規模によることはもちろん言うまでもありません。しかし大体今の考えでは、昨年度もやはり予備費は八十億であったのであります。そうしてこの予備費からむろん災害をまかなうつもりにしておりますが、さらにこれで不足するような場合は、その他の公共事業費、災害復旧、いろいろと予算に組んであるものを研究して、執行面においてやっていきたい、かよう考えております。
  282. 今澄勇

    今澄委員 そこで問題は、先ほど防衛庁に聞いた例の防衛庁関係費の繰り越しです。この厖大な繰り越しを一体大蔵大臣としてはどう考えておるのか。現行の財政法第四十二条で「繰越明許費の金額を除く外、毎会計年度の歳出予算の経費の金額は、これを翌年度において使用することができない。」ということを書いてあるわけです。だから、次年度への繰り越しとか継続費は、この原則の特別除外例としてのみ許されている。しかるに防衛関係費のみが毎年度にわたって何百億という厖大な繰り越しをやっておるということは、大蔵省としてはそのままでいいのですか、どうですか。この繰り越しの制度は、韓国とスイスと日本だけしかやっておらぬ。あとの国は、全部国庫債務負担行為によってこういう繰り越し的なものをやっておらぬ。大蔵省としては、この防衛庁の繰り越しを毎年このままやってお行きになるおつもりですか、それとも何かほかに手を打たれるおつもりでありますか、大蔵大臣  にお閥きしたいのです。
  283. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えを申し上げます。繰り越しについてのただいまの御意見は、私自身も大体同じよう考えて、やはりそう繰り越し繰り越しをすべきでないというのが私の態度であります。しかし最近の繰り越しは、ちょうど三十年度に繰り越したのは約二百三十三億ばかりあるのですが、しかしこれは行年産別にずっと見ると、減ってはきておるのです。前年に比べると繰り越しは減りつつある。しかしなお私は、なるべく繰り越しを多くしないように、減らすような処置を予算面においてとるべきだと考えております。
  284. 今澄勇

    今澄委員 御意見に私も同感であります。そうすると、過年度繰越金の査定について、もっと厳格に規定するように財政法を改正すれば、大蔵省の査定はもっと厳格になるのですが、財政法改正について何らかの御見解がありますか。
  285. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 その点については、私十分検討を加えてみよう思います。
  286. 今澄勇

    今澄委員 そこで最後に私は大蔵大臣に金融の問題を聞かなくちゃならぬのです。政府は本年度の経済政策として、資本蓄積をはかるためには法人税の引き下げ及び預貯金の利子免税、配当利子の減税を行うと同時に、金融機関の金利の引き下げをはかって、企業のコスト低下をはかると大蔵大臣が財政演説で述べておられるのですが、この一節はまことに重大であります。大蔵大臣は四月二十五日の予算説明において、本年度は財政資金の経済刺激力が弱いが、これを民間資金の融資の方で補うと説明されたのであります。本年度は金融がどのように推移するかが景気を大きく左右する原動力でありますから、この際本年度の金融政策の具体的方針について伺わなければならぬのです。大蔵大臣が金融機関の金利の引き下げを提唱しておる理由は、第一に、預貯金利子の課税の免除と見合うものであるということであります。第二に、国際収支の改善のためには輸出を伸ばすよう商品コストを引き下げることが必要であり、このためには原価に入ってくる金利をできる限り安くすることが必要だという二点に集約できるのですが、私は以上の二つの理由で、大蔵大臣はいかなる金融政策を支持し、そうしていかなる金利引き下げの対策を持っておるかということを御説明を願いたいと思います。
  287. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。金融政策については、一口に申せば、金融を正常化するという一語に尽きると思うのであります。大体三十年度の預貯金の見通しは、八千億の増加を目標にして運動を展開しております。私は少くともこれに近いものになるだろうと思っております。他方従来の金融の推移を見ますと、二十九年度において日本銀行に対する各銀行の依存度はよほど減りまして、銀行自体でやって、日本銀行に申し出ないものが非常に多くなっておる。日本銀行自体の貸し出しを見ても、一時四千億以上あったものが二千億を割る、こういうふうな状況で、昨年度だけでも千六百億くらいの返還金が日本銀行にありまして、全体では日本銀行の通貨回収は千九百億に上っておる。ちょうど財政で払い超となった部分が日本銀行の引き揚げ勘定になっておる。従って財政の支払いと一般の金融との関係はとんとんである、こういう状況になっておるのであります。ところが先ほど言いました八千億ばかりの預金が増加すると、日本銀行に返る金は非常に少い。日本銀行に返る金はせいぜい数百億になる。預金がふえるという状況になってきますと、どうしても金利も下り、従って資金の運用といいますか、需給関係も円滑にいき、企業も大へんいい方向になる。従って従来政府が財政でやっておりましたいろいろな金融措置が、金融自体の力によってやっていける、こういうふうな金融政策になっていくと私は思う。たとえば政府が金融的にいろいろともう少し手を出していいじゃないか、それを出さぬからしわが金融に寄るんだというよう意見がともするとあるのでありますが、それは私は非常に間違いだと思っております。従来は財政で当然すべきものを財政でしなくて金融にやらしていた。それで金融にしわが寄るのでありますけれども、今度は当然金融でやるべきものを金融に返していく、こういうことになるのでありまして、決して金融にしわが寄るわけではない。そういうような見地から、今後の金融政策はそういうような金融の正常化の姿に変えていくというのが、私のとる政策であります。
  288. 今澄勇

    今澄委員 そうだとすると、貸し出し金利の引き下げは預貯金金利の免税が実施せられる七月一日を予定してやるのかどうか。金利の引き下げの方はやらないで、預貯金の利子の免税だけやれば、銀行がもうかるのはさまっているのです。では日銀の総裁は大蔵大臣と同じ意見かというと、今度の予算は消費項目が多いからインフレ的性格があるので、依然として日銀は締めなくちゃならぬという談話を発表しておられるのです。あなたの説明と少し違うのです。だから私は、その日銀総裁の見解とあなたの見解との相違、並びに免税だけはするが金利はなかなか現実に引き下らないじゃないか、七月一日を期して断行するというのなら話はわかりますけれども、このはっきりした二つの問題について大蔵大臣の答弁一つ願います。
  289. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 日銀総裁の見解については直接私聞いておりませんが、財政がインフレ的である。インフレ的であるとかりに言えば、財政が約七百億くらいの払い超に今度の予算はなりますから、インフレ的とも言い得るかもしれません。しかしそういう場合に日本銀行の総裁がとる金融政策はどこに限界があるかといえば、その払い超の七百億を日本銀行で回収するというところに限界がある。ところが二十九年度においては、先ほど申しましたように、財政の払い超が千九百億。だから二十九年度においては少くとも千九百億を回収するよう努力しなければならぬ、そういう引き締め政策を必要とするわけです。従いまして、同じ引き締めとかりに言いましても、その引き締めの度合いは、三十年度は二十九年度よりは非常に少さい。言いかえれば七百億を目標にすればよろしい、こういうふうにお考え下さればこの点はよくわかると思います。同時に一方金の方は八千億に上る預貯金ができるから、当然資金の方は豊富になります。それだから、資金の需給関係から見ても金利は下る。今のところ当面一番問題は、何としても資本の蓄積をまずはかるということにある。初めからあまりひもつきで、資金がふえたから、こうせい、ああせいとこまかいことを言わずに、まず全力をあげて資金をふやしなさい。これがやはり私は自由主義の行き方のいい点だと思っております。同時にもう一言申し上げておきますが、これは非常に資金がふえることで雇用の機会も与え、それから生産コストも下るのです。ちょうどこのことは、今ノルウェーは三分の二くらい社会党の勢力のあるところですが、あそこがやはり同じこと、つまり銀行の預貯金に対しての免税を国会に出しておる。これは社会党から出ておるのですが、これは非常に参考になると思います。
  290. 今澄勇

    今澄委員 かんじんかなめの七月一日から引き下げるかどうかということの答弁を待っているのです。これはどうなんですか。免税ばかりして金利を下げなくてはしようがない。
  291. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ある程度金利を下げることに努力をいたしますし、そういうふうな指導を与えるのでありますが、まず金利を下げるについては、やはり資金がある程度ふえる勢いをとったときが適当なときである。従って四月という考えは持っていません。
  292. 今澄勇

    今澄委員 四月でなく、七月一日です。
  293. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 七月になるか何月になるか、なるべく早く、あるいは七月前にそういうことが実現できるかもしれません。
  294. 今澄勇

    今澄委員 そこで、一萬田大蔵大臣の造詣ある金融論を御教示賜わったのですが、私が申し上げたいのは、昨年の九月大蔵省の銀行局長が——今だから言ってもいいでしょうが、銀行貸し出しの内容が悪くて、資産内容が非常に悪いという警告を発した銀行が、三井、神戸、福岡銀行、十八、北海道、武蔵野、泉州、池田、河内、鳥取、関東などの十七銀行で、これらの銀行に銀行局長名をもって、非常に内容が悪化したという通達をしているのです。これは小笠原前大蔵大臣に聞いて、銀行の名前はそのとき実際非常に悪かったから私は遠慮しておきましたが、今ならば言ってもいいでしょう。こういう銀行に対して政府は内容が悪いぞと言っておる、その内容の悪いぞと注恵をした銀行に、今度は利子に対する免税をして金を集めるという、この集め方——たとい自由主義的な観点に立ってみても、銀行利子の免税によって資本を蓄積するということは、国民負担の公平なる原則において正しいやり方ではない。銀行は株式会社という私企業です。私企業に国家の権力でその金利に対する免税をして金を集めるということは、国家が私企業に大きく保護しているということじゃありませんか。そうだとすれば、当然免税と同町にその金利を引き下げるということが産業資本への寄与である。銀行利子の免税をやるならば、それじゃ株式配当その他直接産業資金まで取り扱う株式方面のことは一体どうなるのか。さらに生活に余裕のあるものが銀行へ金を預けるのです。銀行へ預ける利子を免税にして金を集める資本蓄積がいいのか。四十億の利子の減税で四百億を集めると大蔵省は言っているのですが、そういうやり方と、減税して国民生活を安定して、その安定した生活の中から預貯金が自然と集まるようにしていくのと、資本蓄積のいき方において一体どれが正しいのか。私どもは、今あなたの言われる一万九千円以下が免税になるというのは、エンゲル係数でいくと、エンゲル係数の五〇%というのは、今の日本でいえば、約五人家族二万三千円ぐらいが、ちょうどエンゲル係数で五〇%なんです。エンゲル係数で五〇%以下の生活ということになると、これは極貧階級なんです。私は、日本は極貧階級が非常に多いと思うのです。その極貧階級の免税をやる方が先なのか、預貯金の利子を免除して金を集めるのが先なのかというこの資本蓄積論については、やはり民主党の大蔵大臣だけあって、資産内容が悪かったこれらの銀行の資産内容が直るまで、預貯金を免税にして金を集めさせて、大体資産内容がよくなったところで金利をぼちぼち下げて——それをあわててやると金融財閥の反撃を受けるから、あなたの政策としては、おそらくこの免税の法案が通ってもなかなか金利の引き下げがむずかしいのではないか。  さらに私はそれにからんで、こういう状態のもとにおいて日銀法を改正する必要があると思います。あなたは日銀法についてどういう見解を持っておられるか。民間銀行の金利の引き下げはなかなか抵抗があってむずかしいでしょう。あなた自身が意外に驚いていられるでしょう。だから人数も少くて大蔵大臣の最も勢力の及びやすい開発銀行だとか、輸出入銀行などの政府機関の金利をまず下げていくということが、日本の金利政策の上に私は妥当なる方法だと思う。だからこれらのことについて一体どうなさいますか。株式投資による産業資金る開発と、銀行金利の引き下げによる今の私どもの考えておる資本蓄積の方向と、あなたの考えとは違います。だからこれは見解の相違で、あなたが長々とやられたから一言私の方の意見を申し述べたのです。今の日銀法並びにそれらの問題について一つ答弁を願いたいと思います。
  295. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。大へん傾聴いたしたのであります。減税を先にして、それから資本蓄積をやる。これはもうそれができればそれに越したことはないと思います。ただしかしこの減税をやるというふうな、そういう国内情勢に持っていくために、日本の今日の情勢ではどうしても、何をおいてもまず資本の蓄積を十分はかるということが一番急務と思う。そのためにこういう——これは必ずしも常則ではないと私は思いますけれども、日本現状ではこういう手を打つ必要がある、こういう意味から出ておるのであります。  それから銀行法についていろいろ御注意がありましたが、銀行の経営について、あるいはその内容については極力今後注意も与えますし、十分歌碑もしなければならぬ。それとこの預貯金の増加をはかるということとは、どうか一緒にせずにお考えを願いたい。  それから金利については、これは私としては、先ほどから申しましたように、できるだけ早い機会に、しかも無理がないように、どこまでも命令で金利を下げろといっても金利が下るわけでもありません。従いましてそういう金利の下る客観情勢を極力育成するとともに、金融機関自体も公共性という立場から、みずから進んで金利を下げるという意欲と実効をはかっていく、こういうふうに両々相待っていきたい。それはできるだけ早い機会にしょう。それから国家機関といいますか、開発銀行その他の政府の金融機関の金利、これは今日でもそれぞれの用途においてできるだけ下げる方法をとっておりますので、これは十分今後も考えていくつもりでおります。
  296. 今澄勇

    今澄委員 それでは、私の外交、防衛、それから経済はちょっと時間がないのでかけ足しましたが、質問を大体終りました。  そこで鳩山総理もだいぶ休んでいただいたから、最後に鳩山総理に保守合同並びに国会運営についてお伺いをして、私の質問を終りたいと思います。  保守合同並びに国会運営についての総理の所見は今この予算審議において非常に関係が深いのです。私どもは第一次鳩山内閣の政権の移動が、政党の離合集散によって行わるべきものではなくて、総選挙を通じて行われるべきものであることを主張いたし、日本民主党は、かつては日本自由党あるいは自由党から分れた者、改進党で選挙せられた者が、勝手に党籍を変えて集まった政党であって、しかも百三十一名の少数をもって政権を担当いたしたのであります。だから鳩山さんは、これでは潜越しごくであるということで衆議院を解散なさいました。しかし選挙の結果は百八十五名の第一党とはなったけれども、過半数は取られなかったのであります。参議院の定数二百五十名の一割にも足りない、参議院は二十三名であります。参衆両院を合算すると社会党の勢力よりも民主党の方が微弱であります。従って一党で政権をとれば、政局は不安定になるということは、初めからわかり切っておったところであります。しかるに百八十五名の少数政権を担当してきて、いよいよ国会が開かれるや国会運営は非常な困難に直面いたしております。予算の編成に当っては三木談話となって保守合同が叫ばれ、総辞職、民主党の解党が主張せられ、さらには岸幹事長の談話となって、保守合同は場合によっては民主党の解体を辞せずと発表いたされる現状であります。一体、鳩山総理は、保守合同についていかなる見解を持たれ、並びに少数政権で国会運営についてはどのようにいたしたならばいいかと増えておられるか。その総理見解をまず一つ伺いをいたします。(「重複だ、橋本君に答えたよ。」と呼ぶ者あり)答えていない。
  297. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 保守合同は、現在のところなかなか困難です。とにかく自由党と民主党の両党の政策についての庶兄が相違をしておりますので、この政策意見がだんだんと近似してきましてから、保守合同が考えられる問題となろうと思っております。
  298. 今澄勇

    今澄委員 そうすると、岸談話の意味するところは、あくまでも政権を担当してがんばるんだ、こういう意味合いに総理はお考えになっておるわけですか。
  299. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その通りであります。
  300. 今澄勇

    今澄委員 そこで予算案でありますが、そうするとわれわれは社会党両派でこの予算案に組みかえの要求をすることになるでしょう、きょうの答弁ではとても認めるわけにはいきませんから。そうすると、自由党から修正案が出て参るというと、政府はこれをのまざるを得なくなると思うが、その場合は、自由党の修正案を共同の責任を求めてのみ、単独内閣から民主自由連立内閣に発展するつもりなのか。それともその自由党の修正をけって断固としておやりになるものか。総理の御見解一つ聞いておきたいと思います。
  301. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういうよう情勢になりましたらば、そのときに決心をするよりいたし方がないと思います。
  302. 今澄勇

    今澄委員 なかなか吉田さんと同じで答弁がうまくおなりになりました。(笑声)だが、私は、鳩山さんがこの予算審議を切り抜けていくためには、岸幹事長がああいったような声明を発して天下の耳目を聳動させておるので、当予算委員会において、政府として、やはり総理大臣としての見解をお述べになる必要があると思うのです。政策協定をやって、そうして鳩山さんがこの内閣を乗り切られるのか。断固所信に邁進して解散をも辞せず、断固たる決心でお臨みになるのか。私は、総理としてはこういう機会に明確な所信を一つ発表されることが必要であると思うが、総理見解を聞きます。(「和戦両様だ」と呼ぶ者あり)君に聞いておるのじゃないよ。総理に聞いておるのだ。
  303. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 保守合同どいうことは、なかなかむずかしい問題で、何か言えば必ず問題を生じますから、ないでおる方が保守合同のためにいいと思います。
  304. 今澄勇

    今澄委員 保守合同ということは、さきの選挙において何ら国民に訴えず単独政権を訴えてあなたは選挙をしたのです。だからもし今後保守合同を行うということになると、それは選挙の公約に違反をするのです。だからあなたはそういった政治家としての筋の通った立場から行動をなさいますかどうかということを、これは遠慮なく一つ答弁を願います。
  305. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 保守合同については、今日まだ民主党自体が、党議が決定しておりません。
  306. 今澄勇

    今澄委員 民主党の党議は決定しておらないが、鳩山さんとしては何も考えるところはないか、公約というものは大事です、国民に訴えた選挙の公約通り前進せられるかどうかということを聞いておるのです。
  307. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 謙虚な気持をもって保守合同ができることを希望しております。
  308. 今澄勇

    今澄委員 これ以上追及することをやめましょう。私は以上予算案について重大な点を聞きましたけれども、国民が非常に不安に思っておるところが多々ございますから、政府においては今日われわれの指摘した点を一つ十分取り入れて、心していただきたいと思います。  私の四点にわたって留保した質問はそのまま留保いたしまして、あらためてまた機会を得てお聞きすることにして、私はこれで終ります。
  309. 牧野良三

    牧野委員長 赤松勇君。
  310. 赤松勇

    ○赤松委員 簡単に昨日御質問を申し上げまして御答弁をいただいてない三、三の点につきまして、総理の御見解をばお伺いしたいと思います。  その前に、ただいまの今君の質問に関連をいたしまして、富士山のいわゆる射撃の問題につきまして御答弁がございましたが……。   〔発言する者あり〕
  311. 牧野良三

    牧野委員長 なるべく早くやっていただきます。
  312. 赤松勇

    ○赤松委員 そこでお伺いしたいのでありますが、先ほど福島長官から飛行場の延長につきまして、二千フィートから三千フィートになるというお話がございましたが、小牧の場合さようでございますか、いかがでございますか。
  313. 福島慎太郎

    ○福島政府委員 お答え申し上げます。小牧の場合につきましても目下調査中ではっきりいたしておりませんが、小牧の場合は比較的短かい方に属するのではないかと考えております。
  314. 赤松勇

    ○赤松委員 現地の米軍基地、第六一〇一部隊の発表によりますと、現在七千五百フィートの滑走路をば九千フィートに延長するものである、こういうことが発表されておるのでございます。これは現地におきまして県当局及び畑田名大助教授も調査いたしまして、現在のままでも戦術用原爆の基地になる、いわんやこれだけの拡張が行われますならば当然原水爆の基地になる、こう言っております。しかも私二昨日御質問申し上げましたように、米国側との間にはすでに飛行場の拡張につきまして、ジェット戦略爆撃機のための飛行場の滑走路が七ヵ所延長されるということになって参りますと、いわゆる原水爆の基地というものが今度は公然の形において日本設置をされる、こういうことに相なって参ります。  そこで私は鳩山総理にお尋ねをしたいのでありまするが、総理はこの際一党一派の問題でなく、これは日本を守る、日本国民の生命財産を守るといべ高い立場に立ちまして、率直簡明に一つ答弁をばお願いしたいと思います。  第一点は、日米共同声明にいわれておりまする日本国内の米軍航空基地滑走路延長は、原水爆搭載可能の大型戦略爆撃機発着のためのものと思われるのであります。こういう危険きわまる滑走路の延長に対しては、日本国民の生命財産を守るという立場から拒否すべきであると思いまするが、いかがでございましょう。
  315. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 赤松君にお答えをいたします。飛行機がプロペラ式からジェット式に進歩したために、滑走路の延長が必要となったのでありまして、大型爆撃機発着のためではないと思っております。
  316. 赤松勇

    ○赤松委員 それではジェット戦闘機のことでございますか、それでよろしゅうございましょうか。
  317. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そうです。
  318. 赤松勇

    ○赤松委員 大型ジェット爆撃機が現に小牧飛行場で飛んでおるのですよ。
  319. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 大型戦略爆撃機発着のためではないと思っております。
  320. 赤松勇

    ○赤松委員 それでは高蔵寺にただいま原水爆の貯蔵が行われておるといううわさもあるわけなんですが、この原水爆の貯蔵及び日本国内基地を原水爆の基地として使用せざるようアメリカ政府に対しまして責任のある保障をとる、こういうお考え総理はございませんか。
  321. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 原水爆を貯蔵し得る爆薬庫等の基地は、日本には今日ありません。将来とも考えていないのであります。
  322. 赤松勇

    ○赤松委員 ところがお考えになっていなくても、現に一昨日申し上げましたように小牧の飛行場から戦術用原爆を積んで、そして沖繩や韓国に、いわゆる大陣島の撤退作戦援護のために飛行機が出動しておるのは事実なんです。  そこでさらにお尋ねしたいのは、一昨日の大蔵大臣の説明によると、この飛行場の滑走路の延長に必要な費用は防衛分担金より支出するということを私に答弁されたわけです。ところが本日の新聞を見ますると「米軍飛行場の拡張——ジェット機用滑走路の延長を、政府予算の成立を見越して早くも実施する準備にかかっている。そして、その衝に当る調達庁では、三十年度予算案に計上された飛行場拡張のための経費だけでは不足だとして、その資金をねん出するため、今後米軍に対し、提供施設の返還、国有建物への移転促進などを交渉することになった。こう言われております。私は一昨日八十億のこの飛行場基地強化の予算がどこから出るのか、七十九億より施設費は計上されていないではないか、こう質問しましたら、それは施設費と交付金を合せたいわゆる防衛分担金の中から出すのだ、大蔵大臣はこういう答弁をしております。ところが本日の新聞によりますと、早くも特別調達庁は米軍がただいま接収しておりますこれらの接収建物その他をば解除してもらって、そしてそれをばやりくりの一つの資金源にしていく、こういうことが載っておりまするが、政府は一体どこからこの予算をお出しになる考えでございますか。
  323. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私はそういう予算を何も考えておりません。
  324. 赤松勇

    ○赤松委員 考えていないということは出さないということなんですか。
  325. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 その新聞の記事は、今私初めて承知するのであります。
  326. 赤松勇

    ○赤松委員 もっと質問したいのですけれども、私関連質問でございますから、遠慮しておきます。  そこで総理に最後にお尋ねしておきます。先ほど申し上げましたように、すでに小牧の飛行場ほか六ヵ所の飛行場の拡張計画が行われ、これが原水爆の基地になるのだといううわさがずっと出、国民は非常に不安におびえておるわけなんです。それで一昨日も申し上げましたように、重ねて日米合同委員会におきましてこの問題を議題として、原水爆の基地にしないよう政府は強くアメリカ側に要求して、責任のある態度を御決定なすって、政府はこれを国民の前に声明をして、疑惑、不安を一掃される用意があるかどうか、これを最後にお尋ねしておきます。
  327. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はかつてこの委員会で申しましたが、原水爆をアメリカが内地に貯蔵しようとする意思はほんとうにないと思っているのです。それで貯蔵し得る弾薬庫等は現在は全くありません。将来も私は考えていないと思っているのです。けれども、あなたのおっしゃる通りにそういうようなことは重大な問題ですから、ある機会においてアメリカ交渉をして、原水爆の貯蔵は内地においてはしないというような言質は得ておきたいと思っております。
  328. 赤松勇

    ○赤松委員 わかりました。総理大臣が米国と交渉して、機会を見て言質をとって、さような貯蔵の危険のないよう処置を講じたい、こうおっしゃるのでございますが、ただ今日もう外電はほとんどこのことの真実性、つまり今度の日米交渉によりまして、アメリカが原水爆の基地を日本国内において獲得することに成功したということをどんどん流しているのです。知らないのは日本政府と、それから日本国民でございますから、そしてまた国民の間でもだんだんこれがわかりつつあります。どうか一つ御研究をなさって、十分な対策を講じていただきたいと思います。
  329. 牧野良三

    牧野委員長 本日はこの程度にいたしまして、次会は明十日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時十一分散会