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1955-05-06 第22回国会 衆議院 予算委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月六日(金曜日)     午前十一時一分開議  出席委員    委員長 牧野 良三君    理事 上林山榮吉君 理事 重政 誠之君    理事 中曽根康弘君 理事 小坂善太郎君    理事 西村 直己君 理事 赤松  勇君    理事 今澄  勇君       赤城 宗徳君    井出一太郎君       稲葉  修君    今松 治郎君       宇都宮徳馬君    北村徳太郎君       楢橋  渡君    福田 赳夫君       藤本 捨助君    松浦周太郎君       三浦 一雄君    三田村武夫君       村松 久義君    相川 勝六君       植木庚子郎君    太田 正孝君       北澤 直吉君    倉石 忠雄君       周東 英雄君    野田 卯一君       橋本 龍伍君    平野 三郎君       福永 一臣君    阿部 五郎君       伊藤 好道君    久保田鶴松君       志村 茂治君    田中織之進君       田中 稔男君    福田 昌子君       武藤運十郎君    柳田 秀一君       岡  良一君    小平  忠君       杉村沖治郎君    西村 榮一君       川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         外 務 大 臣 重光  葵君         法 務 大 臣 花村 四郎君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         文 部 大 臣 松村 謙三君         厚 生 大 臣 川崎 秀二君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  石橋 湛山君         運 輸 大 臣 三木 武夫君         郵 政 大 臣 松田竹千代君         労 働 大 臣 西田 隆男君         建 設 大 臣 竹山祐太郎君         国 務 大 臣 大麻 唯男君        国 務 大 臣 大久保留次郎君         国 務 大 臣 川島正次郎君         国 務 大 臣 杉原 荒太君         国 務 大 臣 高碕達之助君  出席政府委員         内閣官房長官  根本龍太郎君         内閣官房長官 田中 榮一君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 五月六日  委員北村徳太郎君辞任につき、その補欠として  今松治郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十年度一般会計予算  昭和三十年度特別会計予算  昭和三十年度政府関係機関予算     —————————————
  2. 牧野良三

    牧野委員長 これより会議を開きます。  昭和三十年度一般会計予算外二案を一括して議題といたします。質疑を行います。  この際資料要求に関しまして、小坂善太郎君及び今澄勇君から発言を求められております。順次これをお許しいたします。小坂善太郎君。
  3. 小坂善太郎

    小坂委員 予算審議に必要な資料要求に関してでありますが、先般要求したものが逐次出てはおりますが、一番政府看板としておりまする経済六ヵ年計画、またそれに関連しての防衛力増強に関する計画資料が出てきておらないのであります。これらはわれわれ野党として、最も聞きたい中心をなすものでありますから、こういうものについては、至急誠意をもって提出せられるようにお願いしたいと思います。  それからなお追加的なものといたしまして、本年度予算所管別組織別項別事項別目別の前年度予算額と標準予算額、さらに予算節減額、三十年度予算額これを御提出願いたいと思います。
  4. 牧野良三

  5. 今澄勇

    今澄委員 予算を伴う法律案所管別名称、それから要綱提出予定月日を明示した一覧表をこの予算委員会に提示して、われわれの予算審議にぜひ便益を供してもらいたいと思います。大体予算審議の上で予算を伴う法律案内容は、予算委員が知っておかなければならない重大な問題でありますが、従来は著しくこれがおくれておって、予算審議の促進上まことに困難を来たしておるのでありまして、いつもわれわれ野党側予算審議を引き延ばしたといわれるけれども、そうではなくて、これらの重要な資料が出ておらない。それから私が要求した資料の中で、どうも提出困難と思われるものがありますが、これは予算審議上不可欠のことであるから、私が質問をする前に見たいので、ぜひあしたの朝までに出していただきたい。  私の要求する資料をこれから読み上げます。本年一月初句米軍顧問団長ハーディ少将から上村航空幕僚長あて航空五ヵ年訓練計画、これを記載した書簡の全文写し一つ提出を願いたい。本年三月十四日に決定され、米国側に提示された防衛力六ヵ年計画全文写し一つせび提示せられたい。本年二月三日アリソン大使から重光外務大臣にあてられた防衛分担金に関する覚書の全文写し目下記草中のジェット軍用航空機生産日米協定草案要綱、これは要綱がなければ骨子でもけっこうであります。昭和三十年度予算に計上せられた拡張予定米軍使用飛行場名称拡張工事の規模、特に滑走路の完成時の長さ、拡張予定の設備と坪数を明記、右の拡張に要する年度別予算額及び組織別項目別予算額、以上の資料政府提出になる防衛関係予算審議の上に不可欠であり、これらの資料がないことには当予算委員会としても、この予算審議が非常に遅れるでありましょうから、ぜひ明朝までにこれらの資料提出していただきたいと思います。
  6. 牧野良三

    牧野委員長 政府に申し上げます。お聞き及びの通りでございます。要求資料につきましては、政府においては十分御配慮を願います。  これより質問に入ります。橋本龍伍君。
  7. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 私は昭和三十年度予算案の審議に当りまして、その基本的な諸問題について自由党を代表して質問をいたします。  私がこれから質問をいたしますることは、今までに何ほどかは触れられた諸問題が多いのでありますが、総理以下政府側のとかく誠意を欠いた答弁によりまして、大切な問題が放置されてしまってはなりませんので、主としてこれを掘り下げて問題をはっきりさせたいのであります。すべてごく平易な問題ばかりでありまして、従って内閣総理大臣として、当然御承知にならなければならない問題ばかりでありますから、特に他の閣僚を指定いたしません限り、お答えはすべて総理からお願いをいたします。誠意をもって、こだわりのないはっきりした御答弁を願いたいのであります。  私は大体一貫した体系的なお尋ねをしたいと思いますので、少しおそくなって恐縮でありますが、委員長の御配慮で午後にかけてもなるべく質疑を終えてしまいたいと思います。
  8. 牧野良三

    牧野委員長 さようなとりはからいをいたします。
  9. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 総理はからだが御不自由でありますから、御着席のまま御答弁を願ってけっこうであります。  私は第一に外交につきまして、第二に直接本年度予算に触れる諸問題につきまして、第三に政局の安定につきまして、総理の所信を伺うつもりであります。  鳩山内閣は何か新しそうな言葉を使う内閣であります。昨年十二月の発足が選挙管理内閣でありましたために、選挙目当てのスローガン探しがすっかり板についてしまいまして、内閣にしみついたにおいになってしまったような感じであります。ちょっと拾い上げてみましても、明るい政治、希望の持てる政治平和外交友愛外交自主外交超党派外交国交正常化国際収支正常化、金融の正常化地固め予算、新生活運動といったようなぐあいであります。まだまだたくさんあるでありましょう。そして政府与党人々も、自分の好き勝手に中身を解釈して使われるのみならず、鳩山総理みずからも、ときに応じて調子を変えて解説をせられまして、しかもその変化に何らの政治責任を負われないために、それがこの大切な時期に、国内を大きく混乱をさせておるのであります。外交につきましては平和外交自主外交超党派外交というような看板が掲げられておるのでありますが、その実態はどんなところにあるのかを明らかにせられたいと思います。  まず平和外交ないし平和友愛外交ということについて伺います。国の政治、国の外交が平和を自的とするものでなければならないのは、今日言うまでもないことでありまして、わが党もそのために苦心しながらこれまでやって参ったのであります。しかるにもかかわらず、鳩山内閣がことさら外交の上に平和という形容句をつけて、これを強調するからには、本来何か特別な意義がなければならないのでありますが、それは何でありますか。これが質問の第一点でありますが、この際申しておくことがあるのであります。衆参両院におきまする質疑応答を見ますと、総理はこうした質問に対して、外交は平和であるべきです。ですから、平和外交をやってなぜ不思議ですかというようなとぼけた答弁をなさるのが例であります。しかしそんなことを聞いておるのではありません。そこで私は多少話がくどくなるかもしれませんが、努めて問題の内容をはっきり詰めて質問をいたします。  施政方針外交演説内容を私はよく読んでみたのでありますが、これを分析いたしますと、平和外交をやるということの今日における具体的内容は、ソ連中共等共産主義国国交調整をすることのようでありまするが、そうでありますか。これが質問の第一点であります。
  10. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 お許しを得まして、この席から答弁させていただきます。  橋本君の御質問の第一点は、平和外交とはどういう意味かというのですが、平和外交ということは平和外交でありまして、とにかく世の中では第三次世界大戦が起りそうだと思っておる人が多いものですから、第三次世界大戦のないように、できるだけのことを企てるというのが平和外交の主たる目的でございます。従って、ソ連中共とも国交関係正常化したいと思うわけであります。
  11. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 もちろん平和外交ということの根本的な御趣旨はそうであろうと思います。そこで私はお伺いしたいのですが、平和のために外交をやるという趣旨でおっしゃったということはよくわかりますが、今日における特別な意義は、ソ連中共との国交調整ということでありますか。
  12. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 さようです。
  13. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 お話はわかりました。  そこでもう一段掘り下げて伺うのでありますが、今日の日本の平和と安全を保持するには、理論的に見て二つ行き方があるといえるでありましょう。一つ自由主義国家、特に米国との緊密な協調基本とする行き方であります。一つは自由、共産陣営の間に立って、独自の立場で泳いでいく行き方であります。総理はそのいずれをとられるお考えでありますか。
  14. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 お答えをいたします。自由主義国家群協力関係をますます緊密にしていくというのも平和外交一つ方面であります。同時に、ソ連中共とも国交関係正常化していきたいというのも平和外交の他の方面であります。両々相待っていく方が平和外交目的を達するにしごくけっこうだと思っております。
  15. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 今のお話はその通りであろうと思います。私も、今申しました平和と安全を保持するのに二つ行き方があると言った一つ自由緒国家との緊密な協調基本とする行き方というのは、その基本の問題だけであって、だから中共ソ連つき合いをしないという意味では決してないのであります。つまりどちらを基本にするかという意味においては、自由諸国家との緊密な協調基本とするのか、それともネールの言っている中立政策のように、いずれとも同盟をしないで、両陣営の間に立って泳いでいくという行き方をやるのか、その基本の方を伺っておるのであります。
  16. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 どちらを重んじるかということを言う必要はないと思います。両々相待っていくので、互いに矛盾いたしませんから、両方とも熱心に推進していったらばよろしいと思っております。
  17. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 その辺が鳩山総理の非常にいけない、考えの混迷しているところでありますが、これをやっておるから回りをいたしますので、その先を私は質問することにいたします。  総理は、共産主義国家群とつき合わないという態度戦争を誘発すると言われました。まず第一にお断わりをいたしておきますが、自由党内閣は将来も共産主義国家群とつき合わぬという方針はきめておりません。まず第一に、サンフランシスコ講和会議に参加したソ連が、この条約に調印することを望んだのであります。これができませんでしたが、中ソ両国日本を敵視をして中ソ同盟条約を結んだことを深く遺憾といたしまして、講和条約の規定に従って、今年四月二十八日までにあとから入ってくることを待ったのであります。なお後で申しまするが、中ソとの関係相手の動くのを待つ方が適当だと考えて参ったのでありますが、昨年十月中ソ共同宣言の形で旧ソ、日中国交回復の呼びかけがありましたが、いまだ時期が早いと思って、引き揚げや中共貿易のような事実上の国交を進める方に重点を置いて参ったのであります。いやしくも世界中に存在をいたしまする国である限り、共産主義国であろうとなかろうと、結局はつき合いをすべきことは当然でありまして、つき合うのがよいか悪いかなどということを聞いておるのではないのであります。総理はとかく質問意味を理解する頭をお持ちにならないのか、または理解しながらわざととぼけた答弁をなさるのか知りませんが、党派心からして、なるべく相手国民から悪く思わせようとしておるのではないかと思われるような答弁が、しばしばこの速記録に出ておるのでありまするが、政友、民政の昔ならいざ知らず、敗戦後の今日、国民の総意を大きく、まとめていくことが何よりも大切な今日、こうした態度民主政治の墓穴を掘るものであります。私はそこで申しておきたいのでありまするが、共産主義国とつき合うのかよいか悪いかなどということを聞いておるのではありませんから、質問に対する端的な答弁をお願いいたします。共産主義国家群とつき合わないという態度戦争を誘発すると言われましたが、それはいかなる根拠に基くものでありまするか。どういう筋道でそうした断定ができるのでありますか。
  18. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ソ連中共とつき会わない態度とおっしゃるのですか。
  19. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 共産主義国家群とつき会わないという態度戦争を誘発するということを総理が言っておられるのであります。それはどういう根拠に基いて、どういう筋道でそういう判断ができるのかということであります。
  20. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 どういうわけでそういうことが言えるかというのですか。
  21. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 そうです。
  22. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 つき合わないという態度戦争を勃発するおそれがあると私はそう思うから言うのです。
  23. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 どういう理由でそう思うのです。
  24. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 どういう理由だといえば、仲間はずれにするような態度はという意味です。
  25. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 それでは少し先へ進めて私の質問を申し上げたいと思います。  総理発言は、半面共産主義国とつき合えば戦争を誘発する危険はなくなるという印象を与えがちであります。つまり、総理が言っておられるのは、共産主義国家群とつき合わないという態度戦争を誘発するというのが速記録に書いてある言葉でありますが、この御発言は、半面共産主義国つき合えば戦争を誘発する危険はなくなるという印象を与えがちなのであります。事実多くの国民はそう受け取りつつあるのであります。ここが何でもないようできわめて重要な問題点なのでありまするが、総理もそういうお考えでありますか。
  26. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ソビエトや中国共産主義を採用することはその国民の自由だということは、橋本君も御同感であろうと思います。その国民共産主義をとって国をなした以上は、その主権を尊重するというのも日本としては当然にとるべき方針だろうと思うのです。それですから、ソ連や共の主権を認めていく日本は、やはりつき合っていく方が平和外交になるだろうと私は思います。
  27. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 そうすると、結論共産主義国とつき合えば戦争を誘発する危険はなくなるというお考えでありますな。
  28. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 戦争をする危険は薄らぐと思います。
  29. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 そこが大事なんであります。かつて日本ソ連とつき合っておりました。しかも日ソ中立条約が有効に存在しておりました間に、ソ連条約に違反して日本を攻撃がいたしました。ポーランドブルガリアにも同様の事例があったと思っておるのであります。こうした事例から見ますと、現実には、共産主義国とつき合っても、戦争を誘発する危険はなくなっておらないのでありまするが、総理の御所見はいかがでありますか。
  30. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 とにかくソ連中共国際関係正常化しない場合は、ソ連日本とは戦争状態終結確定事態にあるものですから、戦争状態終結確定事態をそのままにしておくということはおもしろくないと思ったのであります。
  31. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 それは話が違うのです。先ほども申し上げたように、私は、戦争状態を終結してソ連とつき合うようにするというようなことがいいか悪いかということを質問していないのです。それは、いつの日か必ずつき合うようにしなければならぬのです。そういうことではないので、要するに、ただいま総理からお話がありました、つき合っておると、戦争を誘発する危険がなくなるとは言わぬが、薄らぐとおっしゃったのでありますが、現実は一向薄らいでいらない事実があるのでありまするが、総理の御所見はどうかということであります。
  32. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、先刻申しました通り、薄らぐと思っております。
  33. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 もう一つ具体的な事例をあげて申します。米英仏等の国々はソ連正常国交関係にあります。アメリカイギリスもフランスも、ソ連正常国交関係にあるのであります。ありながら今日のように激しい対立状態にありまして、実にしばしば戦争の危険を感ずるときがあったのであります。ここにも、共産主義国とつき合っても戦争を誘発する危険は必ずしもなくならない現実があるのでありまするが、総理はこれをどう思われますか。
  34. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、とにかく戦争状態終結確定事態は直さなくてはならない状況だと考えておるのであります。
  35. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 その点は私も全く同感なんです。聞いておるのはその話じゃない。つまり、戦争状態をなくして正規の国交回復をするということは、いつの日か必ず必要なんです。そうじゃない。要するに、先ほど言われたソ連中共、つまり共産主義国とつき合っていると戦争を誘発する危険が少くなるという総理の言明は、これは非常に大事な問題を含んでおるのですが、一向現実にはそうないじゃないか。ないのに、しいてがんばられるのは、頭がおかしいと申さなければならないので、そういう無理なことを言わないで、現実がこうなのをどう思うかということであります。
  36. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私にはあなたの頭がよくわからない。(笑声)
  37. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 これはよほどおかしい話であります。つまり、先ほど申し上げましたように、日ソ中立条約を侵犯した問題からいっても、ポーランドブルガリアの問題を見ても、今日のアメリカイギリスソ連との関係からいっても、共産主義国とつき合っても戦争の危険は少くならないのであります。これは、総理の頭がおかしいということをみずから言われたのと同じでありますが、どうしてもそう思われるそうでありますから、次の質問に移って参りましょう。  重大な問題でありますから、こだわりを去って、落ちついてゆっくりお考えを願いたいのでありますが、要するに、分析をいたしますと、ここには二つの問題があるのであります。一つ共産主義国国交調整をすることであります。一つ日本の平和と安全を保つための外交方針をきめることであります。ところで大切なのは、この両者をめぐって二つ考え方があることであります。第一は、この二つ同一である。すなわち共産主義国国交調整をすることによって戦争を誘発するという危険がなくなり、日本の平和と安全が保たれるというのでありまして、これは共産党を頂点とする左翼人々主張であります。わが党の考えはこれとは違うのであります。すなわち共産主義国との国交調整は、それはそれとして考えていかなければならない。また日本の平和と安全のための措置は、それはそれとして考えていかねばならない。この両君は決して無関係ではないが、しかし同一ではないという考え方であります。ところがただいまも鳩山首相が言われ、また外交演説の中にも出てくるように、平和外交ということの今日における具体的内容は、ソ連中共国交調整をすることだということを黙って聞くと、共産主義国国交調整をすることによって日本の平和と安全とが保たれるという左翼主張と同じに聞えるのであります。ここに問題があるのでありまして、多くの人々が、鳩山内閣考えはこの点については左翼人々考えと同じなんだと受け取っておるのでありますが、そう受け取る方がほんとうなのか、間違いなのか、これが押しての質問の第一点であります。
  38. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、ソ連とは戦争が済んだ後に何事もしていませんから、早く講和条約でも結んで、そうして国際関係正常化すれば、戦争状態に持っていくという一つの弱みがなくなるだろうと思っているだけなんでして、戦争状態を起さないようにするのには、戦争が終ってその後何事もしておらないソ連とは、講和条約を結ぶのが当然のことだろうと思っておるのであります。左翼の人がそういう主張をしておるかどうかよく知りませんけれども、私はそれによって、戦争を回避するのには一つの原因になるだろうと思っておるのです。
  39. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 そうすると、要するにこの点に関して鳩山内閣考えておられるのは、共産主義国国交調整をすることによって、日本の平和と安全が保たれるという考え方でありますか。
  40. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなたはそういうようにしきりに区別してしまうのですけれども、日本の平和、世界の平和を維持するためには、自由主義国家群と緊密なる協力関係を保っていくということが平和外交なんでして、それがやはり平和を維持するために必要なんですが、ソ連中共国交調整をしたというだけで平和が確保せられるということはまだ断言はできません。それができるならば、何も自由主義国家群との協力関係基調とするということを言わなくてもいいはずなのでありますけれども、そうではないのであります。
  41. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 あなたははっきり平和外交と、頭に平和ということをくっつけて、平和外交ということを今日施政方針でも外交演説でもよく言われる。その平和外交意義は、今日においては要するにソ連中共との正式国交を開くことにあるのだというお話であります。まさしくみんなもそう受け取っておるのであります。そうすると、先ほど申し上げたように国交調整の必要なことはよくわかるのであります。自由主義の諸国家ともよく連繋を保っていくこともわかるのでありますが、平和外交ということをあなたが言われたことの結論として、今日における意義としては、共産主義国国交調整することによって日本の平和と安全が保たれる、結局そういうことになると思うのです。
  42. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そうはならないのです。
  43. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 どうして。
  44. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 平和外交は、ソ連中共国交を調整したというだけで満足していないのです。その上に——その上にというか、基調としては、自由主義国家群との協力関係を緊密にしていくことが平和外交基調になるということを言っておるのですから、切り離してしまうわけにはいかないのです。
  45. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 重光外務大臣に伺いたいと思います。あまり長いこと繰り返してもしようがありません。先ほどの質問は外務大臣は聞いておられたと思います。要するに、平和外交ということの今日における特別な意義は、ソ連中共国交調整することにあるということをはっきり言明しておられるのであります。そうすると、結局われわれとしては国交調整と、それから安全保持というものは関係はあるけれども、別だと考えておるのでありますけれども、聞いておると——実際国民はみんなそう思っておるのです。鳩山内閣の言い分、鳩山首相の言い分は、共産主義国国交調整することによって戦争を誘発する危険が少くなり、日本の平和と安全とがとにかく保たれるというふうに、今日における意義としてはそれに重点を置いていると聞えるのでありますが、一体どうなんでありますか。重光外務大臣に伺います。
  46. 重光葵

    重光国務大臣 今お話の点は外交の根本問題に関係いたしております。そこで私の考え方を申し上げます。それは私の外交演説の繰り返しになることをあらかじめ御承認を得たいと思います。  私は日本外交は、日本は独立自主の国であるから日本の立場を強力に推進していかねばならぬ、こう考えております。そのためには、具体的の外交上の利益を得るためには、あくまでりっぱな平和外交によって独立自主の外交を進めていかなければならぬ、こう思っております。その平和外交という外交の根本を進めていくためには、今も総理お話通りに、民主諸国、特にアメリカとの協力関係を緊密にするということが基調でなければならぬ、しかしそれと同時に今あなたの御賛成になっておる共産主義諸国との国交の回復も平和外交のために進めなければならぬ、こういうふうに考えておるわけであります。これが日本の行くべき道でなければならぬ。これを概括して申し上げれば、平和外交と申しても、ああいう戦争の後を受けた日本でありますから、いろいろ誤解もあります。貿易、通商、外交を進めるのについても、これは日本の平和方針を十分徹底せしめるということがまだ前提となっております。これは何もわれわれの内閣だけでそれをやっておるわけではございません。自由党の前内閣からこれは強力にその方面に進められていることを私もよく承知しております。しかしさようなことをわれわれはあくまで続けていくことがわれわれの外交方針でなければならぬと思って、東南アジアの方面においてもそれを強力に進めておるわけであります。そういうぐあいにして経済外交も進めたい、こう思っておる。それは一に日本の自主独立の外交であって、その外交の様式は平和外交である、こういうことで、一つの作用として共産国との国交調整もぜひやりたい、こういうことに相なっておることを申し上げます。
  47. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 話がだんだん例の調子になってくるのですが、私はここで繰り返して申し上げておく、つまり自由主義国家群とつき合うというのは元からつき合っておって、けんかもしないし、心配も何もないのですから、要するにアメリカとつき合うのには平和外交という看板はいらない。特に今日平和外交ということを言われるのは、ソ連中共との国交調整をはかりたいからだとさっき総理がはっきり言われたのではないですか。ですから私の申し上げるのは、要するに今日この平和外交ということは、アメリカとの間は平和なんだから、平和外交というスローガンによって特に進めたい問題は、ソ連中共との国交調整をはかりたいのだ、これはさっきおっしゃった。平和外交という言葉で強調されるのはそこなんだということは間違いないのですな。
  48. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 どうも橋本君の質問が私よくわからないのですけれども、アメリカとの外交もやはり平和外交と言って差しつかえないと思います。アメリカとの外交も、国連の精神を基調としまして安全保障条約を結んでいる。これもやはり、平和を維持するために必要な行き方なんですから、アメリカとの協力関係をますます緊密にしていくというのも平和外交に違いないのです。それだけでは満足ができない、ソ連とはまだ戦争をしたままであって、講和条約ができていないのであるから、これとやはり講和条約を結んで国際関係正常化したい、これが戦争回避に役立つということはだれもかもわかるだろうと思う。わからないのはあなただけだと私は思う。
  49. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 そんなことはさっきからわかっているということを申し上げているのです。あなたはやはり頭がよほどおかしくなっておられると思います。あわてないで落ちついて答弁を願います。  この辺で、あんまりやぶに入っていると話が進みませんので、大事な問題として、とにかく平和外交という点で、アメリカとの関係はもう平和なんだから、今日における特別な意義というものは、ソ連中共との国交調整をすることにあるという先ほどの御答弁をよく承っておきます。  ここでちょっと伺っておきますが、総理は別に力による平和ということを外人記者会見などで述べておられるのでありますが、この考え方と、いわゆる平和外交とはどういう関係がありますか。
  50. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 今日の平和はやはり力による平和ということも考えられるのです。力というものがアメリカになかったならば、世界は乱れているでしょうから、力による平和というものは今日では納得しなくちゃなるまいと思うのです。しかしながらこの力による平和ということは、ただ平和を維持することだけの一つ行き方があるとすれば、力による平和は、またその力を追い越そうとする方法があるに違いない、それをやり出せば必ずまた争いが起きる。だから力による平和というものは決して永遠的のものでもないし、確立的のものでもないから、そこでやはりこの永遠的確立の平和を樹立するのには、心の底から仲よくなるということが必要だ、それだから力による平和のほかに国交を緊密にしていくということが必要だというので、ソ連中共との間においても、そういうことのないようにするために国交を調整していこうとする考え方なんです。どうしてわからないのでしょうね。
  51. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 わからないと一つも言っていない。わからない点はほかにたくさんあるのです。わからないのじゃない、よくわかっていてあなたの外交はよくないと思って検討しているのだから、それは間違えないでほしい。私の方は頭がはっきりしているから、どんな行き方をしているかよくわかっておって、それがよくないと思っているのである。なだいまの御意見は一応承っておきます。  今日鳩山内閣外交方針として、国民に与えている印象としては、力による平和という言葉に表現される行き方よりも、平和外交という言葉に表現されている行き方が圧倒的に強いのであります。先ほど総理自身がおっしゃったように、国民自身も平和外交というスローガンによって、今日においてはソ連中共との国交調整というのが、平和外交の今日における意義だと受け取っておるのであります。そこで、今日鳩山内閣外交方針として国民に与えている印象としては、力による平和という言葉に表現される行き方よりも、平和外交という言葉に表現されるという行き方の方が圧倒的に強いということは、はっきり読み取れることであります。すなわち、平和維持の主眼点は、共産主義国との正常国交の回復の方にあると考えて、サンフランシスコ講和条約、安全保障条約及び国連協力を打って一丸とする現行の安全保障体制を忌避する風潮が強いのでありますが、これでよいと思われますか。またそういう風潮をつくること自体が、鳩山内閣の本来ねらっておられる方針なのでありますか。また同時に事実問題として、わが国内における共産主義勢力を著しく進展せしめたのでありまするが、これでよいと思われますか。これが押しての質問の第二点であります。
  52. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私の考え方を全部一まとめにして結論を出さないで、ソ連とだけ仲よくしていけばそれで平和の目的が達成できるのだ、そうきめ込んでしまって、それでいいのですかと言われても、私は返事はいたしません。私は両面、アメリカとも国際関係を緊密にしていって平和を維持せんとするのでありますし、同時にソ連とも国交を調整していくことが平和外交の推進になると思っているのですから、両々相まっていこうとしているのを、しいて片っ方だけにしてしまって、それでいいのですかという返事を私に求めるということは、それはあなた少々御無理でしょう。
  53. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 問題は、日本の国の中には鳩山総理一人がいるのではないので、日本国民全体の外交をしなければならないわけであります。あなた自身がどう思っているというのは、言われる通り思っておられるのでありましょう。そういうのじゃない。あなたの思っていられるようなことをあなたのやり方でやると、現実に国内にこういう風潮を来たしておるのであります。これでよいと思うかということであります。つまり、先ほどあなたの言われた平和外交ということの今日における意義は、ソ連中共との国交調整だというと、平和維持の主眼点は共産主義国との正常国交の回復の方にあると考えて、講和条約、安保条約、国連協力を打って一丸とする現行の安全保障体制を忌避する風潮が現実に強いのであります。そして、それが現実に国内の共産主義の勢力を強めておるのであります。これをあなたが一体いいと思っているのかどうかということであります。
  54. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は橋本君が世の中はこういうように考えているというその言い方に反対です。世の中はそうは思っておりません。
  55. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 これを独善というのです。もう少し国内をよう見られたらよろしい。私はこの点について、明らかに鳩山内閣の軽率な政治行動についての責任を問うものであります。もちろんソ連の人からの書簡の受け取り方、また数々の失言などにつきましても、それぞれ政治責任を問わなければなりませんが、そうした失政の根本は、私がただいままでの質疑の間に明らかにしたあなた方の間違いと軽率さに出発をしておるのであります。憂慮しておるのは、ひとり私のみではありません。名前は言いませんが、過日鳩山総理にきわめて近い人物の一人が私に対して、このようなことをしていると、共産党を伸ばすばかりだ、根本的に行き方考えなければならないと言ったことを、お伝えをいたしておきます。国交調整の交渉をすること自体に必ずしも反対をするものではありませんが、それに反対でさえなければ、黙って見ていればよいではないかというような問題ではないのであります。同じ問題でも、その取扱い方なり、その目的や主眼点の置きどころによりまして、日本の将来について致命的な重大影響を持っておるのであります。私は、平和外交すなわちソ連中共との国交調整、これはもう外交演説を読んでも、きわめてそう読める文句で書いてあるのでありますが、こういう話の持っていき方の国民に与える誤られやすい印象に顧みて、鳩山外交のこうした行き方を考慮していただきたいのであります。これはこだわりを持たないで真剣に考慮してほしいのでありますが、御所感はいかがでありまするか。現実にとにかくこういう色彩を持つということについて、同じ大事な国の問題なのでありますから、これをひとつ分析して、振り返って考えてほしいのであります。この点についての御所感をお伺いします。
  56. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はあなたのような考え方をしておりません。私の主張によって日本共産党が勢いを得るというようなことは断じてないと思っております。
  57. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 これは現実に勢力を得ておるのであります。選挙の結果木でもごらんになったらいい。あまりいいかげんなことを言わないで、もう少しまじめに御自分の国政を検討なさい。私はこの問題の締めくくりをいたしましょう。これ以上話をしていても、いつもの通りわけのわからないようなかっこうでごまかしをするだけでありますから、ここに締めくくりといたしましてわが党の所見を申します。  共産主義者は世界革命の方針を決して捨てておりませんし、しかして世界革命を達成するために、思想宣伝と経済謀略とにあわせて、赤軍の軍備拡張をはかることを現実に怠っていないのであります。従ってときに戦術として平和維持を考える、今日はまさしくその時期に遭遇しておるのでありますが、これは自由国家群の力が共産主義国家群の力につき合っておるからでありまして、これによって初めて平和を守っていくことができるのであります。サンフランシスコ講和条約、日米安全保障条約及び国連協力のそれぞれの内容につきましては、今後ときに応じて改善を加えていかなければなりませんが、われわれが自由国家群と協力し、特に米国協力して平和と安全の維持をはかること自体は、単なる当面のさしあたりの便宜ではなくして、相当長期にわたる日本外交の根本方針でなければなるまいと思うのであります。これは共産主義国との国交調整が行われるといなとにかかわらず、そうでなければならないのであります、従ってこの根本方針を軽視する風潮が国内にみなぎることは危険であると思うのでありまして、ここに鳩山内閣の軽率な外交の責任を問うとともに、その危険の根源はみなで心してこれを除かなければならないと思うのであります。鳩山さんは今ぬけぬけとしたああいう答弁をされましたが、現実に民主党の中で私に対して非常な深刻な憂慮を訴える人があるということもお伝えをいたしておきます。どうか国家の将来のために十分慎重に御考慮を願いたいのであります。  次に、私は日ソ交渉に当って、ひとつ要望を申し上げておきます。われわれはソ連中共との国交回復は必要ではあるが、こちらからあせって求めない方が適当であるという考えでありまして、今でも根本的にはそう考えておるのであります。向う側から必ず呼びかけてくると思っておりましたが、果せるかな向う側の働きかけは次第に活発になりまして、ついに昨年十月、日本に向けて中ソ共同宣言の形で国交回復を呼びかけて余りましたし、中共に呼ばれていった議員代表の山口氏に対して周恩来首相から、吉田内閣相手にして交渉したいと特に伝言がありましたが、 いまだ早いと思って応じなかったのであります。サンフランシスコ講和条約加入期限の本年四月二十八日を過ぎれば、当然ぼつぼつこれを取り上げるべき時期になっておるのでありまして、鳩山内閣が過日の総選挙対策として、あせって軽率な取扱いをされたことの悪影響については、重大な責任を感じられなければなりませんが、日ソ交渉の開始自体については、すでにきまったことでありまするから、これ以上申しません。ただその交渉に当って、第一に、要求すべき事項は強くこれを要求してその貫徹を期すること、第二に、絶対に妥結の時期をあせらないことを心していただきたいのであります。この二点につきましては御異存がないと思いまするが、一応伺っておきます。
  58. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまの御意見については賛成です。
  59. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 御賛同を得て幸いであります。私はあまりやかましいことを申しませんが、特に念を押しましたのは、この間実は松本俊一君の全権の承認について、私自身が疑問を持ったからであります。松本君は民主党の代議士でありまして、かりに政変でもあり、解散でもあるという場合にはどうするかといったようなことが一応心配になるし、また従前の日ソ条約というものが、数年を要してきまった。最後にまとめた芳沢・カラハンの北京会談もたしか一年を越えたと思いますが、そうした心構えで行かなければならない日ソ交渉につきまして、今日現役の民主党代議士が行かれるということは、松本君自身の手腕ということを抜きにして、私は心配だと思いましたので、特にその点を念を押しておいたのであります。松本君の身分につきましても、首席全権の選び方であるとか、そういったようなものについては、なお十分心して御検討を願いたいと希望いたしておきます。  次に、国交調整をやるにいたしましても、ソ連に対する考え方と、中共に対する考え方同一であるべきであるとお考えでありまするか、異なるべきであるとお考えでありまするか。
  60. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 中共に対しましては、国民政府を承認しておる関係上、ソ連中共とを全く同一に取り扱うということはできません。
  61. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 ただいまの問題以外にも、いろいろ掘り下げて論じたいことがありますが、私は次の問題に移ることにいたします。われわれは中共に対しましては、さしあたり国際法上の承認はしないが、事実上の国交を進めるように措置して参ったのであります。引き揚げの問題は、吉田内閣のもとにおいてほとんど軌道に乗りましたし、村田省蔵氏を派遣することも、吉田総理の外遊中延期してもらいましたために、鳩山内閣になってからになりましたが、話は前からきまっておったことは御承知の通りであります。事実上の国交回復に関しまして、特にわれわれが努力を注いで参りましたのは、対中共貿易をできるだけ促進することにあります。これには過大な期待をかけてはいけませんが、とにかく促進できるだけは促進することでありまして、対中共貿易は、昭和二十八年度の輸出四百五十三万ドル、輸入二千九百七十万ドルに対しまして、昭和二十九年度は、輸出一千九百十万ドル、輸入四千七十七万ドルと、輸出は四・二倍、輸入は一・四倍になりまして、また香港中継などをやめて、内地各港から天津、上海等に船が直航するようにいたしたのであります。対中共貿易は、毎月きわめて着実に伸びてきておりますから、当然もっと伸びるでありましょう。わが党の内閣は、これを達成するために、ココムの禁輸制限の解除等につきまして、米国政府と苦心の折衝を重ねて参りましたが、米国の議会の空気や、米国の世論を刺激することの不利を考えまして、国内宣伝を努めて慎んで参ったのであります。この点だけは、確かに鳩山内閣方針と違うのでありまするが、しかし対中共外交の根本方針として、さしあたり国際法上の承認はしないが、事実上の国交を進めるということについては変らないわけでありますな。
  62. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その通りであります。
  63. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 ところが、実質は今お話のあったように変らないにかかわらず、その通りだとおっしゃったにかかわらず、昨年の暮れに第一次内閣ができて以来、何か変ったように盛んに言われたのであります。これは、さきに論じました平和外交にも関連のある問題でありますが、鳩山総理は、当初中共を台湾ともどもこれを承認して——これは認めるという言葉を使われたのですが、承認して、正規の国交関係を開くかのような発言をして誤解を国民に与えましたし、またそれによってのみ平和の保障ができそうな印象国民に与えて、国内を誤まった責任を感ぜねばなりません。それでも、中共貿易がどんどん伸びるならばまだよろしいのでありますが、このところ足踏み状態であります。対中共貿易がなかなか伸びにくいのは、ココムの対支輸出制限にあるのは周知の事実でありますが、自由党吉田内閣は、一品目々々々をはずしていくために、しんぼう強い努力を続けて成功いたして参りました。内閣がかわる際に、懸案になっていた品目はたくさんあるのでありますが、鳩山内閣になってからどんな品目がはずされましたか、それを伺いたいのであります。これはこまかいことのようでありますが、鳩山首相が一枚看板といってもいいくらい、初めから大いに言われたことでありますから、それくらいの実情は御承知のはずだと思って、まず首相からお伺いいたします。
  64. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ココムの制限を撤廃する必要性は非常に感じております。そのために努力はしておりますが、現在どうなっているか、外務大臣もしくは政府委員から答弁してもらいます。
  65. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 外務大臣の答弁を求めます。第一次鳩山内閣成立以来今日までです。
  66. 重光葵

    重光国務大臣 中共貿易を進めていきたいということについては、自由党内閣においてそうきまっておったんだ、こう言われます。もしそうであったならば、われわれはそのことをさらに強力に進めていきたい、こういう趣旨でもって進めております。ココムについても、私の時代になってからゼネヴァでずいぶんと話を進めております。話を進めておりますが、その品目一々のことについて今お尋ねがございました。品目一々のことも知らぬようなことでは外務大臣は勤まらぬと、こう言われるかもしれませんが、そうかもしれません。(笑声)けれども、その品目の一々を私は今承知いたしておりませんから、よくこれを調査してお答えいたすことにしますから、しばらく、御猶予を願いたいと思います。
  67. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 私の申し上げているのは、品目を一々言えと言ったのではない。要するに品目があるかということを申し上げたのです。これをはずされた品目が鳩山内閣ができてから今日まであるか、われわれの内閣のときには、毎月のように苦心してはずしてきたのです。それがあるかと開いているのです。今ここで政府委員から返事をしてもらいたい。——政府委員答弁を求めます。
  68. 牧野良三

    牧野委員長 後ほど答弁いたします。質問をお続け願います。
  69. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 今やってもらいたい。これは簡単に、童話をかけてもわかることなんです。経済局にかけてみればすぐわかる。私は実際は知っているんだけれども、政府から答弁を聞きたい。——外務大臣に伺いますが、答弁のできる政府委員はここにおりませんか。
  70. 重光葵

    重光国務大臣 実は外務委員会にみんな出席しておりますので手不足でございます。しかしこれだけはお答えしておきます。ココムの交渉については、今品目を一々申し上げるわけには行きませんが、しかし交渉の継続中であることだけははっきり申し上げます。
  71. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 それでは、私の質問はまだ続きがありまするから……。これは簡単な問題ですから、直ちにお調べになりまして、質問継続中に御回答願います。  私の知りまする限りにおいて、鳩山内閣ができましてから絶無なのであります。ココムの解除制限の交渉が継続中であることは、これはもうもとから継続中であります。われわれは非常に努力をして参りまして、今日とにかく中共貿易というものが、輸出入合計で年間二百億を越えるようにするまでの努力をして参ったのであります。ところが鳩山内閣においては、宣伝はされるのでありまするが、鳩山内閣になりましてからあとでは、ココムの制限解除は一切とまってしまったのであります。ただいまは一つあるというお話でありましたが、私の知る限りにおいて、一つもないはずであります。一体こんなことでどうなるのでありますか。一体これは、政治的に責任を負わなければならぬと、これでもあなたたちは思わないのか。鳩山総理が去る三月二十五日の参議院本会議におきまして、ココムの制限全廃は非常に賛成というふうに、非常にという形容詞までつけて言われたのに、このありさまは一体何でありますか。そこで伺うのでありまするが、米国がいろいろの考慮で苦心をしながら今日とっている政策について、全廃は非常に賛成といって、あたかも全廃してしまえということを頭ごなしに公言するようなことが、日本内閣総理大臣発言として、外交上適当であると思っておられまするかどうか、これをまず所見を聞きたいのであります。
  72. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 全廃が賛成だと参議院で申したのですか。
  73. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 そうです。速記録に書いてあります。
  74. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 だれもかも全廃は賛成でしょうが、そこまで急に行かないでしょう。やむを得ません。
  75. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 ココムの禁輸制限というのは、アメリカとしてもいろいろな苦心で考えておる制度であろうと思うのであります。それを日本の国会の中で、日本内閣総理大臣が、頭ごなしに制限全廃に非常に賛成というような発言をすることが、内閣総理大臣として責任上適当かどうかという所見を聞いておるのです。まじめな返事をしなさい。——返事ができないようでありまするから、もう一つ質問をいたします。一体これに対しては、内閣総理大臣としてお答えができないほど、これは悪い無責任な発言であるということを御自分で認めておられるのでありましょう。同時に聞きたいのですが、総理のそうした態度が、ココムの制限緩和に大いに役立つと思っておられるのかどうか、これをお伺いいたしたいのであります。
  76. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ココムの制限の中には、ソ連に対しては輸出を制限していないような品目も加わっておるわけですから、当然に変更さるべきものと私は考えております。
  77. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 私の言うのは、あなたが要するに頭ごなしに、参議院の本会議で全廃は非常に賛成というようなことを言って、内輪のじみちな交渉といったようなことに重きを置いてないということに対するあなたの意見を聞いたのですが、ただいまも例の通り、顧みて他を言う答弁であります。おそらくまともな答弁はできないでありましょうから、私は、こうして鳩山内閣中共貿易の宣伝をしておられまするけれども、現実にはこうした軽率不謹慎な行動によって、それをはばんでいるんだということについての鳩山総理の、また鳩山内閣の責任を問うて次の質問に移ります。  もう一つあらためて聞きまするが、対中共貿易の伸展をはばんでいる原因はどういうことであるかということを、あらためてもう一ぺん伺いたいと思うのであります。
  78. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 中共との貿易の伸展をはばんでおるものは、いろいろありましょうが、ココムの制限など、とにかく妨害になるワクを一つ一つはずしていくということが必要だと考えております。
  79. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 この点は外務大臣に伺っておきたいと思います。要するに中共貿易というのは、あなた方が選挙の際でもあれくらい宣伝をした問題なんだから、中共貿易の実体というものがどうなのか、どうすれば国民のためにこれを伸展することができるかという御研究は、責任者として十分できていなければならぬものであります。そこで伺うのであります。ただいまの総理大臣の御意見は、この点においてまことに無責任で満足できませんので、外務大臣の方の御意見を伺います。
  80. 重光葵

    重光国務大臣 私は中共貿易、すなわち共産国との貿易は非常に困難なものであると思っております。これは日本におきましては、御承知の通り共産国の最も中心であるソ連との貿易も、ずいぶん苦心をして、長い間かかって開きましたけれども、その結果は、思う通りに行かなかったということは事実でございます。そこで中共共産国でありますし、共産主義のもとに貿易を運用しておるのであります。従いまして、ほかの制約がなくても、これはなかなか困難であります。しかし困難なことであっても、その困難な制約のもとにおいて、あらゆる努力をして貿易を進めて行くことが、これが一番政策として必要である、それが私は前の内閣時代からのよいやり方であったと思います。もしそういうことであったということを確認されるならば、これはよいことであります。これはあくまでやりたい、そのために外部の制約の一つであるココムの問題についても、これは全力をあげてそのワクを広げるということに努力をしなければならぬ。しかし御承知の通りに、ココムのワクというものは、これは中共だけの問題だけじゃなくして、世界的の政策にかかった大きな問題であります。これは思う通りにならぬということも、やむを得ないところだと思います。しかしそういうことについて努力をするということは、あくまでやらなければならぬ、さようなふうにして進めたいと、こう思っておる次第でございます。
  81. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 ただいま外務大臣のお話の中で、ココムの制限は世界的な制約にかかった重要な問題だということを言われましたが、その通りでありますな。
  82. 重光葵

    重光国務大臣 それに間違いはありません。
  83. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 外務大臣は、ただいまココムの制限というものは、世界的な制約にかかった大事な問題なのだということをいわれました。まさしくその通りなんです。それにもかかわらず鳩山内閣総理大臣は、参議院の本会議において、全廃が非常に賛成だということを言われました。世界的な制約にかかった、日本としても考慮しなければならない重大な国際問題なのだということは、その言葉の中に一つも出てこない。一体外務大臣の今言った言葉と、内閣総理大臣の参議院の本会議における言明とはどういう関係にあるか、所見を聞きます。
  84. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私が参議院で答弁をいたしましたのは、中共貿易が発展をしないのは、ココムの制約によるという見地から、日本の貿易を増大していくのには、ココム制限の撤廃にはもとより賛成であるということを申したのでありまして、趣旨においては少しも反対する理由はないと思っております。
  85. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 趣旨において反対すべき理由がないというのは、要するにココムの制限があるということの趣旨に反対する理由がないという意味でありますか。
  86. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 中共との貿易を制限するワクをはずすということに反対すべき理由はないと思う、こういう意味答弁をしたのであります。
  87. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 この点は、これは本会議で平野君が精神分裂と言ったら多少問題になっておったようでありますが、私はなるべく品の悪い言葉を使わないようにしたいと思うけれども、精神が大分混迷しておるようであります。これは大事な問題でありまするから、もっとまじめに考えていただきたい。実は中共貿易の伸展をはばんでおる原因は何かということを私が申し上げたのは、これは大事な問題で、当然鳩山内閣として検討しておられなければならない問題でありまするから、そう一つ一つについてどういう対策をとっておられるかということを聞きたかったのでありますが、一体中共貿易がどんなことになっておるのか、そしてそれにどんな隘路があるかということについても、責任者が的確に考えていないようで、これはとてもしようがないから、要望だけ申し上げておきます。原因の大きなものは三つあるわけであります。第一はココムの制限でありまするが、これははずすどころか、鳩山内閣のおかげで悪くなっておるのでありまするが、これは冗談でなしに、真剣に考え外交のやり方を慎重にやって、日本国民全体が損をしないように努力してもらわなければなりません。第二の問題は、これは国交関係のある問題でありまするが、決済の問題等で、やはりいろいろな問題があるわけであります。根本的には通商航海条約がないからでありまして、これはある程度今日やむを得ないでありましょう。しかし事実上今までの二回の民間協定でも骨を折ってきたし、今後もじみちにこれが解決をはかっていかなければなりません。いつの日かまじめに聞きたいと思うけれども、それまで内閣が持っているかどうかわかりません。第三は、日本は隣国で運賃諸掛りが安いにもかかわりませず、価格の上で欧州物より高価な場合がしばしばあることでありまして、これはほかにも関係のあることでありますが、大事な問題であります。それから特にお願いしておきたいのは、第四の点でありまして、中共側の貿易を通ずる政略であります。実は共の対外需要といたしましては、ココム制限外の物資だけで、日本だけではとても受け切れないくらいの量があるのであります。中共は貿易計画の数字を発表いたしませんが、諸般の資料からとりますとそうなのであります。それが明瞭なのであります。それであるのに、吉田内閣時代に結ばれた過去二回の日中民間貿易協定でも、今回の協定でも、中共側は故意に制限物資を日本側に注文するのであります。しかもこれを日本の最もほしい物資、鉱石とか、あるいは米とかいうような物資とのバーターにいたすのであります。今度の協定にもA類としてそう書いてある。これには、明らかに純粋な経済上の考慮のほかに、日米離間の政略が含まれておるのでありますが、これを不勉強で実情を知らない政治家やジャーナリストが、対中共貿易の伸びないのはココムのせいばかりのように申して、共産側の思うままに踊らされておる傾向が非常に強いのであります。わが国といたしましては、もちろん米国に対しても品目によって制限緩和の交渉をいたすべきでありますが、まず中共側に対して、制限外の物資でも買うものは山ほどあるではないかといって交渉をすることを忘れてはなりませんし、また同時にそれを交渉しても、政略上なかなかこれに応じてくれないということも忘れてならないことであります。私は中共貿易の問題について鳩山内閣があれだけ看板にしながら、実にふまじめな態度で、せっかくわれわれが苦心して積み上げてきたものを茶々めちゃにしておるような状況を非常に遺憾に思います。  以上の質問でわかりましたことは、鳩山内閣は、事情を知らない国民をつりながら、みずからも中共貿易の実情を全く知らずに、むしろ今のところ害あって益なき行動をしておるのでありまするが、ここに今回の第三回日中民間貿易協定にきわめて重大な疑問があるので、これを伺います。今回の協定文の中に、首相は貿易協定に対し支持と協力を与える旨を言明したとありますが、事実でありますか。これは間違いだという説もありますが、もしそうでありまするならば、これを取り消すためにいかなる措置をとりましたか。また間違いだとすれば、この協定については、あなたは全くどうでもよいと思っておるのでありますか。支持と協力までは行かないが、その促進について賛成したという説もあるのでありまするが、いかがでありますか。
  88. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 お答えをいたします。私は四月の二十七日に、促進連盟ですか、名前はよく知りませんが、促進に熱心な方々数名にお目にかかりました。そのときに、私に陳情書を持っていらっしたのです。その陳情書に賛成をしてくれ、協力してくれということでありました。私読んでみて下さいといって、読んでもらったのですが、別に反対すべき事情が少しもありませんでしたから、私は協力をいたしましょうという返事をしたのです。それですから、今度できた正文は私は知らないのです。けれども、四月二十七日に持っていらっしたところの諸条項については、協力をいたしましょうという返事をしたのであります。
  89. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 そうすると、正文を直接見てはおられませんけれども、協定文の中に、協力をするということを言明したということを書いてあるのは正確でありますな。
  90. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 今度できた正文について、協力をするということは、そういうことは事実ないのです。
  91. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 もう一度伺いますが、今度できた協定文について、協力を与えるということは言わなかったとおっしゃるのですか。そのとき協力するとおっしゃったのは、実はそのときに協定を作る交渉が進んでおって、それが政府保証なんかでひっかかって、協定を成立させるための指示と協力を得るために、あなたのところへ代表は行ったはずなんです。それに対してあなたは協力すると言ったら、協定に協力することになりませんか。
  92. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 今度できた正文を見ますと、四月二十七日に読んで聞かされたものとは違うのです。それですから、今度できた正文について協力をするということは、まだ調べてみないとわかりません。
  93. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 そうすると、調べてみなければわからないとおっしゃると、もし調べた結果、変っている部分が少くて、ごらんになったのが多いということであれば、やはりおおむねこの協定文に書かれたものが確かだということに、今後なる可雄性があるのですか、ないのですか。
  94. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それはこの前四月の二十七日に陳情を受けた正文、それは池田君に持って来てくれといって頼んでありますから、それと今度のを比較してみないと、どこが違っているかも知らないですから、さよう御承知を願います。
  95. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 これはなお調べるというお話でありまするから、ここで押しても何でありましょうから、総理に対するこの質問を保留をしておきます。大事な問題でありまするから。今のお話でありますると、やはり総理は、今日むげにこれはうそだといって取り消しをすることはできないので、一応とにかく調べないと文句が言えないという状態にあるようでありますが、その点だけ確かめておきます。私はこれが全く事実に反することなら、大事な問題だから、あなたは取り消しをしなければいかぬと思います。ところが今のお話だと、四月二十七日に聞かされたのとどこが違っているかわからない、どこか違っているらしいということで、やはりお調べになった上でないと確たる態度はきめられないということのように思うのですが、さようでございますか。
  96. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そうです。
  97. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 それでは私はこの質問を留保いたします。この問題につきまして、予算委員会において、内閣総理大臣質問する機会を持ちたいと思いまするので、なるべく早くただいまの点のお調べを願います。  次にあの協定の中には、両国の首都で、両者おのおの通商代表部を設けるということが書いてあるのであります。一応民間代表部という名目だそうであります。日本側はまさしく民間でありますが、中共側は国営貿易でありまするから、最初から政府機間でありまするし、職員は中共政府の公務員であります。日本政府が特に外交官待遇を与えるといなとにかかわらず、とにかく外国政府の機関であり、外国政府の公務員であることを承知しながら、外国政府の機関が日本国内において職権を執行することを認めて、入国許可、滞在許可の法律手続をとり、しかも内閣総理大臣がその趣旨に賛成ということになれば、中共政府に対して、国際法上にいうところの事実による承認を行なったことに該当すると思うのでありまするが、いかがでありますか。私は内閣総理大臣趣旨に賛成ということを言わないでも、いわゆる事実による承認というのになる可能性が強い、むしろそうなるのじゃないかと思うのでありますが、いかがでありまするか。
  98. 重光葵

    重光国務大臣 私はまだそこまでにはならないと思います。事実上の承認というのは、形式があるわけではございません。今日の状態においても、いろいろな点について、政府筋はこれに関係しないで、民間の間で話をつける。たとえば漁業問題等についても。これはやっぱりある程度の事実を認めるのでありますから、事実上のある程度の承認といっても差しつかえないかと思います。しかしさような程度において、法律上の異議が出てくるわけではございませんから、そこで承認の問題ということにはならないと思っております。
  99. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 これは大事な問題ですから申し上げたいのです。私の言うのはこういうことなんです。今まで漁業関係や何かで、ただ人が行き来をしたというのじゃない。向うの政府機関が日本の国内に入って職権執行をするのを認めることになるわけです。私は国際法の専門家でありませんが、私の国際法の知識では、条約を締結しないでも、自分の国の中で相手の国の政府機関の職権執行を認めることは、国際法上いわゆる事実上の承認というのに該当する場合があるということでありまするが、これについてもう一つ最後に法律上の御意見を承わりたい。
  100. 重光葵

    重光国務大臣 今私の意見として御説明いたしました通り、それが法律上の承認とはならないということを申したのであります。
  101. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 国際法の上では、条約を結ばないでも、要するに政府機関の職権執行を国内で認めるときには、相手政府を承認したことになるということがあるのであります。これはあなたは外交官だからよく御承知だと思う。ならないと思うというのでなくて、一体相手国の政府機関の日本国内における職権執行を認めて、これが国際法にいわゆる事実による外国政府の承認ということにならないならならいでいいが、なぜならないかという理屈を伺いたいのであります。
  102. 重光葵

    重光国務大臣 今日共産国との間の通商関係を処理するために、外国においてさような機関を設けておる国は、承認をしていなくともあるのでございます。従いまして、それがある程度の事実上の承認になることは、これはそれだけの程度において否定はできません。しかし、それは何も法律上そこに関係ができるわけではございません。日本の漁業問題についても、当業者と向うの中共関係、すなわちこれは政府筋の機関になりますが、ちゃんと話をしておるわけです。私は、それはそれで事実上関係を設定して、現実の利益を擁護するということは、これは当然のことだと考えております。
  103. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 今のお話では納得いたしません。漁業関係などというのは、相手の国が日本国内に政府機間を設けて、それの職権執行を日本政府が認めたという場合ではないわけです。そこで、これは先ほど総理に対する質問を留保している問題と不可分一体でありますから、あとでまた質問をすることにいたします。よく法律上御研究を願いたいと思います。  もう一つ、今度できました日中民間貿易協定の第三回目のものについての御質問をいたしたいと思うのであります。今までも過去二回協定がございました。それについては吉田内閣としては、人を出すとか、出すのを承認するとかなんとかいうような意味において、これは出国許可を出すとかいったような意味で間接的には知ってはおりましたけれども、内容自身は全く民間と向うという形でやって参ったわけであります。ところが今回の問題については、内閣総理大臣が一応その中に介入をしておられまして、今日でも、直ちには自分の支持、協力関係についての表現が間違いであると断言はできない状態にあるのであります。そういうふうな協定であるのであります。とにかく政府側がある程度知ってできておるという協定であります。そうすれば、あの協定の中には、輸出制限物資がたくさんあるのでありますが、米国との下交渉もなしに、鳩山内閣自体が断定的にかかる物資は大いに出すべきものと天下に言明したと同じ結果になるのでありますが、かりに日本側が将来そうしたいと思うにいたしましても、今日のようなこうした扱い方の態度外交上賢明だと思いますか、これは先般の参議院の本会議における総理の言明と同じなのですが、私はこれをもう一度聞いておきたい。
  104. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいま私が四月二十七日に受け取りました覚書の案文が参りました。それと日中貿易協定とは幾分か違うのですけれども、趣旨はこっちの方が大ざっぱに書いてある。こっちの方は具体的になっているような違いのようにちょっと見受けたのですが、私もこの程度ならば協力はしてもいいと思ったから、協力しますという話をしたのでして、日中貿易協定の方はまだ見ておりませんから、この方はあとで御答弁をすることにいたします。
  105. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 ただいま私が聞いた外交上賢明かどうかということについてもお返事がありませんが、あとで検討の上ということでありますから、その際に伺いたいと思います。  ただいままで私がずっと聞いて参りましたところでも、鳩山内閣の失政は実に枚挙にいとまがないのであります。その結果として、あなたはどうしても政治責任を負って進退をなさらなければならぬ時期が近づいていると思いますけれども、あなたの責任はそれで済むかもしれませんが、国家として受ける有形、無形の損害は、国民が全部負わなければならないのであります。ですから、一日でも内閣総理大臣の席におられる間は、その一日一日をもっと謹んでいただきたい。私は単なる悪口でなくて、真剣に言っているのです。閣僚の諸君も、真剣に総理を補佐していただきたいのであります。  以上申しましたように、鳩山内閣ソ連中共とから回りをしております反面において、東南アジアに対して実に冷淡で、誠意が見えないのであります。せっかくきまりましたビルマとの賠償にいたしましても、十年間二億ドル、一年間二千万ドルの予算を組んでおらないのであります。アジア・アフリカ会議などに出席して何とか言ってみても、約束した賠償予算も削ってしまって、どうして諸国が日本誠意を認めてくれるのでありますか。こういうところにもまた鳩山外交の大きな欠陥があるのであります。なぜ賠償予算を削減するのでありますか。(「入っているよ」)と呼ぶ者あり)二千万ドル入っていない。総理で御答弁ができなければ、外務大臣。
  106. 重光葵

    重光国務大臣 ビルマの賠償協定は、年々二千万ドルの価格のものをビルマに供給するということになっております。それは私は予算の中にある、こう信じております。
  107. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 これは私の知る限りにおいて、ないと思っておるのですが、(「ある、ある」と呼ぶ者あり)中で予算の内訳を拝見をいたしまして、その際に、もし入っておらなかったら、これはもう政府で御言明なんですから、自発的に修正をなさいますか。(「ここに入っているよ」と呼ぶ者あり)入っておればそれでいいのだ。   〔西村(直)委員「議事進行」と呼ぶ〕
  108. 牧野良三

    牧野委員長 西村君より議事進行について発言を求められました。お許しいたします。
  109. 西村直己

    西村(直)委員 議事進行を申し上げます。先刻来わが党の橋本委員から、主として中共貿易問題につきまして詳細にいろいろ検討を加えておるわけでありますが、政府の方としては、たとえばココムの品目の解除の問題でも、参議院における総理の全廃論賛成だというのと、それから外務大臣においては、これは世界各国政策に非常に大きな関連を持つから、簡単に行かないという答弁の食い違いもあるわけであります。いわんや鳩山第一次内閣以来、ココムの品目が一体解除になったものがあるのかないのか。それらに対しましても、これはきわめて重要な問題であるだけに、すぐ答弁できるものが、いまだにできていない。あるいは貿易協定等が先般調印になりました場合に、それに対して、政府、特に鳩山総理協力支持という言葉を——どの程度まで協力支持ということを発言されたのか。これに対して質問者はいろいろ質問をされておりますけれども、政府態度がきわめてあいまいもこであります。これでは予算審議として非常に遺憾に思うのでありまして、暫時休憩いたしまして、政府としてはしっかりとこれらの点を打ち合せの上、この委員会に臨まれんことを望んで、その動議を出します。採決をお願いします。
  110. 牧野良三

    牧野委員長 外務大臣。(「動議採決」と呼ぶ者あり)動議でありますが、今動議について発言を求めておられますから、お許しいたしました。(「動議を先議して下さい」と呼ぶ者あり)先議するのじゃない。——それでは外務大臣の発言はいりませんか。
  111. 西村直己

    西村(直)委員 もう一ぺん説明いたしますが、要するに政府態度をきめるべく暫時休憩をして、政府態度をきめた上、さらに再開すべく暫時休憩をしてもらいたい。それには政府態度を十分にはっきりさせて再開をするように、われわれは暫時休憩の動議を出します。
  112. 牧野良三

    牧野委員長 ただいま西村君より休憩の動議が出ました。賛成の……。
  113. 小坂善太郎

    小坂委員 ただいまの休憩の動議に補足しますが、政府答弁がすこぶる誠意を欠いておって、かかる態度においては予算審議に支障を来たしますから、それについて政府態度を明確にされるために、休憩を宣せられたいということであります。
  114. 牧野良三

    牧野委員長 それでは一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十六分休憩      ————◇—————    午後一時四十九分開議
  115. 牧野良三

    牧野委員長 休憩前に引続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。  この際午前中西村直己君より提出の動議の趣旨に沿うて政府より発言を求められております。これをお許しいたします。総理大臣鳩山一郎君。
  116. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先刻の御質疑に対し答弁をいたします。日中貿易促進議員連盟から要望書を提出したのでありまして、その要望書に対して、私は民間の希望に対し、できるだけ協力をいたしますということは確かに申しました。この要望書と日中貿易協定の間には、幾分違った点がたくさんありますけれども、しかし大体において、趣旨において違いはないと思っております。私からの答弁はそれだけで十分足りていると思っております。
  117. 牧野良三

    牧野委員長 なお先ほどの西村さんの動議に関連しまして、大蔵大臣及び通商産業大臣から発言を求めておられます。これをお許しいたします。大蔵大臣一萬田尚登君。
  118. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ビルマの賠償に関して御答弁申し上げます。ビルマの賠償については、ただいま実施の方法について現地で具体的に交渉中であります。これがきまって実行に移っていく、こうなるのでありますが、かりに二千万ドル支払うことになりましても、予算上不都合がないように、予算には計上いたしてあります。御答弁といたします。
  119. 牧野良三

    牧野委員長 通商産業大臣石橋湛山君。
  120. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 先ほどココムについてのお尋ねがあったそうでありますから、お答えいたします。ココムの禁輸品は、大体昨年八月ごろまでに、解除できるものだけはほとんど全部解除されました。それはどういう標準かというと、西欧並みになった。西欧並みの輸出ができるだけの除解は、大体昨年八月で終った。その後は、ことにこの一月ころからも交渉はしておりますが、しかし御承知のように、国際情勢も大へんその後悪くなりましたし、すでに西欧並みに解除されたのですから、それ以上日本だけに解除を求めるということは、実際非常に困難な仕事でありますから、これは進展しておりません。交渉しておるが……。ただしケース・バイ・ケースに、いわゆる特免とか言っておりますが、特別の許可を受けて輸出した、禁輸品の中のあるものを、その一つ一つの場合について、輸出の許可を受けて輸出したという事実はございます。これは相当の数に上っておりますが、金額はわずかなものであります。それだけお答えいたします。
  121. 西村直己

    西村(直)委員 先ほどの議事進行の趣旨で特に一番重要な問題は、ココムの禁輸解除の問題ですが、それについて外務大臣とそれから鳩山総理大臣との間に大きな答弁の——参議院における答弁橋本君は援用されましたが、それとこの席における外務大臣の答弁とは、かなり大きな食い違いがある。そうしてさらに、今の貿易協定が最近できましたことに対する協力、支持の態度等につきましても、今政府から御答弁を承わって、質問者におかれましても、十分誠意を持った答弁と受け取れぬというふうに考えているわけであります。従ってそれらの問題について、もう少し政府態度を——大体私がさっき動議を申し上げました理由は、委員長もいささか僣越と申しては失礼だが、少しおっかぶせの態度をおとりになったのは残念に思います。私は何も一時半に始めてくれという条件じゃなくて、むしろ誠意を持って十分に委員の諸君を——答弁に意見の相違はあってもけっこうですが、納得をさした上で審議を進めてもらいたい。その意味政府が、おれの方の態度はこうなんだという、納得させるような態度でお臨みになるために、暫時休憩してもらいたいと言ったのです。だから何も時間を制限するという意味じゃなかった。ところが委員長の方は、それを単に一時半から始めればいいだろう、その間何とかなるだろうというような態度でお進めになったので、こういう食い違いが起っている。われわれの方は、政府態度を明らかにしてもらった上で、質問者の質問をさらに続行する、それが予算審議に対しての態度であります。従って政府の方も、できる限り誠意のある態度をお示し願いたい。いわんや今のココムの解除問題に対して、大きく答弁が食い違っている。片方は全廃が非常に賛成であると、特に非常にという言葉まで使っている。片方は、世界各国における非常に重要な問題で、影響が大きくなかなか困難だ。この食い違いというものには国民は迷う。この点については総理、外務大臣の間ではっきりしてもらいたい。それでなければ進行できない。どうぞ委員長からもう一ぺん督促をしていただきたい。
  122. 牧野良三

    牧野委員長 委員長より釈明をいたします。午前中は、大体一時間くらい休憩をというお言葉に従いまして、三十五分でありましたから、一時半と申し上げたのであります。誤解があったと存じますから一応の釈明をいたします。  なお政府に申し上げます。ただいま答弁の食い違いが、いまだ釈明が十分でないという重ねての発言でございます。これに政府より御答弁になりますかどうですか。
  123. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私が、さつき橋本君の質問を聞いておりますと、私がココムの制限を全廃することを理想とするというようなことを言ったことに、非常なこだわりがあったようでありますが、これは私はただ理想を言ったのでありましてココムというようなものの起りは、これは冷戦の結果起きたものであって、ああいうもののない方が、実際は世の中は平和なんですから、そういうようなものの全廃を理想とするという意味でそう言ったので、目前のことを言ったわけではありません。誤解のないように願います。
  124. 重光葵

    重光国務大臣 今の問題は、私は世界の真の平和を実現するために、また真の平和があったならば、貿易の制限というようなものは全廃さるべき問題だと、こう言われる総理の御意見は、これは私もその通りだろうと思います。ただ私の申し上げるのは、今日ココムの制限を全廃すること、もしくはその制限を取り除くことが容易であるかといえば、これは容易じゃない。ただ中共の問題だけではないのでありまして、世界情勢全般にわたる問題でありますから、これは容易なものでないと、こういうことを申し上げたのです。ただしこれに対して日本側としてはあらゆる努力をして、その緩和をはかるということは、これまた当然のことであろうと、こう考えておるのであります。またその努力をいたしていることを申し上げた次第でございます。
  125. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 ただいまの御答弁を伺いましたが、まことに不満足であります。ことに鳩山総理大臣の御答弁は、ふまじめと申さなければなりません。ああいうようなことが浮世にないことを希望するというのは、何ごとでありますか。それは要するに浮世に病気がないのがいい、浮世に戦争がないのがいいというのと同じことです。そんなばかなことを何で国会で聞きますか。今までの質疑応答の間において、質問した方もそんな意味で聞いたのじゃない。今日の現実を聞いたのだし、あなたの答弁も、今日の現実に対して返事をしているのじゃありませんか。今日の考えの誤まっておったのを誤まっておったと認められるのならよろしい。しかしぬけぬけと、私がさっき言ったのは、およそ世の中にこういう災いのない方がいいという理想を述べたのだと言うとは何事でありますか。今日まで国会が開かれ、議会が開かれている間に、これくらいふまじめな答弁というものはないと思う。私は全体に対してなお質問を掘り下げて申し上げたいと思いますが、こういったような状態では私はがまんができませんので、今後速記録を見直した上で、総体的に再質問を私はいたしたいと思いますので、きょうは、あまりひどいふまじめな答弁をなさることに対する警告を発して、先ほどのあなたの御答弁は、はなはだけしからぬということを私は申し上げておきたいのであります。もっとまじめにお考えにならなければいけません。それから私は先ほどの質問の中で、ココムの問題についてもアメリカが実力者でありますから、アメリカアメリカと申し上げましたが、ココムは御承知の通り国際連合の決議によってきまりまして、パリに委員会があって管理をしていることであります。自由国家群の対共産外交の重要な部分であります。従いまして、重光外務大臣も先ほどココムは世界各国の制約の大事な問題であるということを言われました。当りまえの話であります。ところがそれに対して内閣総理大臣は、今まで明らかに、今日の現実の問題として、ああいうものの全廃に賛成であるということを言われましたし、また今日お話の出ておりまする第三回の日中貿易協定に関しましても、あの品目の中には制限品目が非常にたくさんあったのにかかわらず、趣旨においてこの前と今度とは違いがないということをあなたが言っておられる。内容は大体御承知のこと、これに対してココムの制限をやめてしまうということ、これは、やめることに非常に大きく協力をされたわけであります。  私は重ねて伺っておきたいのでありまするが、ただ災いのない世の中がいいという理想を言ったのだといったようなふざけた御答弁でなしに、誤まりであったのなら誤まりであったと言われるがよろしいが、一体きょうの午前中お話があり、前に参議院でもお話のありました、ココムの制限は全廃した方がよろしいということは、明らかに国際連合できめた世界の自由国家群の対共産外交の重要な部分に対して、日本内閣総理大臣は非協力であるということを、天下に宣明されたことになるのでありますが(「ノーノー」)それでよろしいか。
  126. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私の発言によってあなたのおっしゃったような結論は出ません。
  127. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 どうして出ませんか。
  128. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ━━━━━━━━━━━。
  129. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 今の言葉は一体何という言葉か。━━━━━━なんというのは何という言葉だ。委員長、この暴言——この暴言に対して私は許しませんぞ。私は今までの間、━━━━━━━━━とかなんとか、そんな無礼な答弁は聞いたことがありません。第一、今日のこの委員会の答弁は一体何事でありますか。もっとまじめに反省してごらんなさい。あなたはこの間の外務委員会におきましても、議会の決議として戒告を受けました。橋本龍伍はいまだかつて議会から戒告を受けたことはない。頭の方はとにかく、議会の決議を問題にするなら、少くともあなたは一回戒告を受けたことがあるが、私は受けたことがないのであります。今の言葉をもう一度反省していただきたい。   〔「取り消し」と呼ぶ者あり〕
  130. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 取り消した方がよければ取り消します。   〔「よければとは何だ」と呼び、その他発言する者あり〕
  131. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなた方の方の言葉だけが許されて、同じ言葉を私が使って許されないという不公平な議会であるということならば、それでよろしい。
  132. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 内閣総理大臣としてあなたはそんなことを言ってよろしいと思うか。少し冷静に考えられたらどうでしょう。今日は国会の審議を通じて、日本の国のためによかれと祈ってやっておることであります。私が、国際連合の決議によってできたココムの制限というものを、内閣総理大臣がどんなに尊重しなければならないかということについての問題を論じておるのも、私はいいかげんなことを言っておるのではない、国の将来を思えばこそであります。もう少し冷静に考えてごらんなさい。
  133. 牧野良三

    牧野委員長 委員会における発言はお互いに懇切丁寧に、かつ個人の身上に及ばないようなことにいたしたいと存じます。この程度において橋本龍伍君の質問を継続していただくことを希望いたします。   〔「取り消したのか、取り消さないのか、はっきりしろ」と呼ぶ者あり〕
  134. 牧野良三

    牧野委員長 お互いに言葉を慎しむことにいたしたい。さように……(「取消したのか取消さぬのか」と呼ぶ者あり)その程度にいたしましょう。(「委員長おかしいじゃないか」と呼ぶ者あり)おかしくありません。お互いに慎しみましょう。(「不公平だ」と呼び、その他発言する者あり)いやそればかりじゃない。(「委員発言にもそんな制限をつけることは、委員長、おかしい」と呼ぶ者あり)制限じゃありません。   〔小坂委員「議事進行」と呼ぶ〕
  135. 牧野良三

    牧野委員長 小坂君。
  136. 小坂善太郎

    小坂委員 議事進行について発言を求めて許されました。ただいま委員長の取りさばきでありますが、老練なる委員長にしては、少し自分の老練さに酔っておるのじゃないかと、はなはだ失礼ながら思うのであります。この事の起りは政府答弁であります。政府答弁をきっかけとして委員長のこの発言があった。ところが委員長は、その政府答弁があったことについて何ら裁定を下していない。われわれ委員会としてはこういう発言は非常に不満とする。あなたの独断できめられるものではない。もし委員長がその独断をもってよしとするならば、われわれは承服しませんから、直ちに理事会を開いてこの問題を協議したいと思います。これを動議として提出いたします。
  137. 牧野良三

    牧野委員長 ただいま小坂善太郎君より、お聞きのような動議が提出せられました。   〔「採決々々」と呼ぶ者あり〕
  138. 牧野良三

    牧野委員長 理事会を開くことに御異議ありませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  139. 牧野良三

    牧野委員長 異議なしと認めます。  暫時休憩いたします。    午後二時八分休憩      ————◇—————    午後二時二十分開議
  140. 牧野良三

    牧野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  この際鳩山内閣総理大臣より発言を求められております。これを許します。内閣総理大臣
  141. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先刻の発言中不適当な言葉があったことを認めまして、これを取り消します。
  142. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 お伺いをいたします。先ほどの質疑を継続いたしたいのであります。私はもう一度念を入れて丁寧に質問をいたしますが、きょうの午前中、またあるいは参議院の本会議におきましてのココムの制限緩和に対する質問は、私が申しましたのも、参議院で多分伊能君だったと思いますが、質問したのも、明瞭に今日の現在の問題に対しまして質問をいたしたのであります。それに対しまして、鳩山内閣総理大臣は明らかに制限全廃がいいのだという御意見を言明せられたのであります。ただいま承わったところによりますれば、これは今日の問題についての所見を言ったのではなくて、こういうような冷戦のようなものが世の中にあったり、従ってココムのようなものがあったりするのはまことに嘆かわしいから、ないとまことによろしいのだがという理想を言ったのだというお話であります。そういうお話であれば、これは世の中に病気がない方がいいとか、地震がない方がいいとかいうような話で、国会の質疑応答としてはばかげたことなのであります。でありますから、質問者もそういうことでないし、速記録を見ても、あなたが今まで答弁なさったのは、そういう趣旨でないことが明瞭なのでありますから、もし前言が間違っておったなら間違っておったということをおっしゃっていただきたいということであります。
  143. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 今日でもココムの制限は一つ一つだんだんとはずしていきたいと考えております。
  144. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 一つ一つだんだんにはずすということと、全廃とは意味が違うのであります。先ほど重光外相が言いましたように、ココムの制限というのは、国際連合で決議しまして、中共向けの戦略物資の輸出禁止をいたしておるのであります。従いまして、自由諸国家群の対共産外交といたしましては、この制限の戦略物資いかんという点において除くということは、品目によって考えるにいたしましても、制限そのものは置くという建前であるわけであります。従いまして、全部ない方がいいのだということは、自由国家群の対共産外交、今日きまっておる外交に非協力だということにしかならないのであります。そして明らかにあなたの参議院の本会議におきます答弁、きょうの午前中に私にいたしました答弁は、全部やめるというのでありますから、そうとしか聞えないのであります。一体そういうお考えなのかどうか、それでいいと思うかということを、押してお尋ねをいたします。
  145. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ココムの制限の中には戦略物資と見らないものもずいぶんたくさんあるのでありますから、一つ一つはずしていったらいいということを申したのであります。全廃を理想と申すのはやはり今日においてもかわりはありません。
  146. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 今日国際連合においては中共向けの戦略物資の輸出を禁止しておるのでありまして、従いまして、今日の外交問題として全廃は理想でないという建前であります。先ほど申しましたようにおよそこんなものの制限はない方がいいのだというような、そういうような意味での話というものは、一体政治の面ですることはないのであります。もっと私は正直に答弁をしていただきたい。あなたは今まででも意見を変えることがよくあるのであります。むやみに政治家が意見を変えるのはいけませんが、しかし変えたのなら変えたということを、はっきりおっしゃった方がよろしい。
  147. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 この前答弁したのと同様でありますから、答弁いたしません。
  148. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 参議院の質問対しては、今月の問題として尋ねられたのに対して全廃に非常に賛成ということでありました。今日は今日の問題として全廃に賛成でないのですかあるのですか。
  149. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 理想としては全廃に賛成です。
  150. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 末長い将来の希望としてこういうものがあるのがいいか悪いかなんということは、前からだれも聞いちゃおらないのです。そういうふうな御答弁をなすっちゃいけないのです。今日国際連合できめて対共産圏貿易について戦略物資の輸出きんしをやっているということがあるのでありまして、全廃を理想とするということであれば、そうした決議はいけないということになるのでありますが、そういう意味でありますな。
  151. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 今日全廃をしようと言ってもできないことは判明しておりますから、そういうような間違いは起きますまいと思っております。
  152. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 これは実に驚き入った御答弁であります。これはもちろんで、日本だけでやっておるのでないから、全廃しようとあなたがお思いになってもできないのは当りまえの話です。そういうことを言っているわけではないのです。参議院の本会議においても、私が全廃すると言ったのではないのです。あなたが要するに今日非常に全廃に賛成だということを言われたのである。もう少し正直な答弁をされたらどうですか。つまり今日の国際連合できめた中共向け戦略物資の輸出制限に反対なら反対だと言われたらいい。それをはっきり返事をして下さい。
  153. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 たびたび答弁した通りであります。
  154. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 この問題は結論が出ておりません。一体国会議員というのは政府に対して疑義をただす職権があるのでありますから、私は時間の関係上あとの質問を継続いたしますが、後にさらにお尋ねを申し上げます。  先ほどビルマの賠償について御答弁がありました。こういう御答弁があろうかと私は実は思っておったのであります。ところがここに問題があるのでありまして、この賠償等特殊債務処理費百億円でありますが、これはたしか繰り越しが百七一億あって、二百七十億になっていると思うのであります。なるほどその中に、二千万ドルだと七十二億ですから、入っているということのようでありますが、私は率直に話を申し上げたい。これの中には連合国人の財産の賠償、スイス・フランの賠償、沈船引き揚げの問題といったようなものがございまして、実は中の裁量といたしまして、ビルマの賠償は一応十年間二億ドルとなっておるけれども、年割りにすると二千万ドルだが、最初の年はそう進みもしないから、これを二千万ドルやらないようしようということを大蔵省が言いまして、そうして問題がごたごたしておるのであります。   〔委員長退席、上林山委員長代理着席〕 ですから、もし政府部内においてこの賠償等特殊債務処理費の中身として、ビルマの賠償には二千万ドル払うということにきめて、今後大蔵省が削るということを何ら言わないというならば、それはそれで、きのう御決定になったかおととい御決定になったか知りませんが、それでよろしいのですが、私はこういうところに問題があると思う。で総体の中で、ついこの間までは二千万ドルやらない、袋は大きいけれども、お前の割当はそうはないといって、もんでおったのでありますから、私はこういう面についてもそんなにもんだりしないで、初めから二千方ドルはきちんときめた方がよろしいと考えておったのであります。そうしてこういうふうないざこざからくる、せっかくきめた賠償、問題に関する外国側の感触を悪くしないために、むしろそうしたいざこざの起らぬように、このビルマならビルマとの賠償といったようなものを表に掲げて、初めからはっきりもらえるのだ、相手の方も二千万ドルはくるという安心感がいくし、日本政府の内部でも当初は要らないだろうから削るといったような問題の起らぬようにした方がいいんじゃないかと思うのですが、御意見はいかがです。これは大蔵大臣から伺ってけっこうです。
  155. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。賠償のすでにきまったものを払い渋るというような考えは毛頭持っておりません。ただいまのお話の御意見、私も全く同感考えます。
  156. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 毛頭持っておられないそうで、本日そういう決意を聞いて、これはけっこうでありますが、私は実情をよく知っております。稲垣平太郎さんは、毛頭以上にそういう意見が出ておって、ついこの間までたいへん憤慨をして、自分がビルマ賠償の責任者でありながら、こういうばかなことをされては東南アジア外交というものはうまくいかないと言って怒っておりました。どうか一つ今後十分な御留意をお願いいたします。  そこで賠償の問題に触れて伺いたいのでありますが、一体この賠償というものは日本としてひたすら少いことを欲しますか、必ずしもそうでないのか、方針を伺いたいのであります。
  157. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 賠償の問題はできるだけ公平に、すみやかに解決した方がいいという考え方をしております。
  158. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 公平に、すみやかに解決をすることはいいのでありますが、その公平の内容といたしまして、日本側の希望としてはひたすら少いように値切ってかかるということですか、必ずしもそうでないのですか、それを伺いたいのであります。
  159. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先方の言うことをよく聞きまして公平にやっていきたいというつもりであります。
  160. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 私の申しますのは、つまり賠償の問題というのは、一応わが国の負担になるわけでありますから、その意味においてはこれは少い方がいいに違いないのでありますが、相手国に対する損害を賠償するといったような意味でもいろいろ考えなければなりませんし、それ以外につきましても、賠償によって、ビルマでもわかりますように、日本側の手で日本側の資金で開発を手伝うという作業は現実にあると思うのであります。こうした点は、結局広い意味で東南アジア全体、日本をも含めて生活水準の向上という面にも役立つことがあろうかと思うのですが、その辺に対する総理の見識を伺っておきたいと思うのであります。
  161. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 橋本君の考えられる通りであります。
  162. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 東南アジアに対してわれわれは十分な関心を持って相互の親善をはかり、相互の繁栄をはかって参らなければならないのでありますが、単に東南アジアそれぞれの国があるというだけでなしに、アメリカイギリスその他の諸国がそれぞれ微妙に、異なった態度をもって臨んでおるのであります。そこで東南アジアに対しては、フィリピンにはフィリピンに対し、インドネシアにはインドネシアに対しというふうに、それぞれの東南アジア各国に対して手を打つばかりでなしに、アメリカに対し、イギリスに対し、その他の国々に対して臨むべき東南アジア関係基本方策がなければならないのでありますが、どんなふうにお考えでありますか。
  163. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 東南アジアに対しては、その外国の事情をよく研究して、どうしたら東南アジア諸国のためになるかということをやはり考えの中に入れて、そうして賠償問題を決定していかなくちゃならないと思っております。
  164. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 ただいまの御答弁は、全然的をはずしておりまして、私の伺っておることと違うのでありますが、これは別の機会に掘り下げて伺いたいと思います。  もう一つ鳩山内閣ソ連中共といろいろから回りしておりまする反面、欠陥として出ておりますのは、移民問題にきわめて不熱心な点であります。政府は一年間に六千人送るというようなことを言われましたけれども、南米諸国はもっと多くの人を迎えたがっておるのであります。そして私の聞いたところによりますれば、この移民問題というのは相手がかりに十万人なら十万人要求するときに、それは今年要求したから十年後でも要求するかというと、そうはいかないのでありまして、時期を失したならば移民というものは非常にできにくくなるのであって、今日がきわめて大事な時期のようであります。そこで具体的な問題として、先般吉田前首相が外遊中、話をきめて参りました千五百万ドルの移民借款の受け入れ態勢を作って、これを使えば五万人くらいは送れるはずであります。そうして昨年の十二月に、政変のあります直前に、移民会社の案をきめて進行中であったのでありますが、なぜこういうふうな問題をもっと熱心に実現をいたさないのでありますか。
  165. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外務大臣から答弁をしてもらいます。
  166. 重光葵

    重光国務大臣 今お話通りにわれわれも考ております。その意味は、移民は受け入れ態勢が一番重要なことでございますから、現在のように、また過日私が御説明をいたしたと思いますが、中南米において特に受け入れ態勢がいい国際情勢にありますことは、これは非常に幸いなことと思います。この機会を逸せず移民のことに努力をすることは、これはわれわれの義務だ、こう考えております。従いまして、今の財政上の困難な時期にもかかわらず、満足とは申し上げられませんけれども、努力をいたしまして、移民関係に費用を計上いたしておるわけでございいます。  そこでお話アメリカの銀行借款の問題でございます。銀行借款の問題もぜひ成立をさせたいと思います。銀行借款の問題は、御承知の通りに、移民が向うにありつくための費用でございます。移民が送り出し地においてありつくための費用を支出するために、便宜を与えようということでございます。その受け入れ態勢をつくるがために、これまたこちらの受け入れる組織をこしらえなければなりません。そのことについて今決してなまけているわけではございませんけれども、いろいろ協議をいたすのに時日をかけておるのでございますが、これも不日でき上ることだと考えております。さようにいたしまして、こちらから送り出した移民が向うによくありつけるために万全を期したい、こう考えております。
  167. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 私の知る限りにおいては、やはり中ソ関係といったような点でわいわい言っておりまして、こういう地道な面について仕事をやられる努力に欠けておるようでありますので、もっとこの点に力を入れてぜひやっていただきたいと思います。実はただいまでやっといわゆる平和外交という問題を主題にした質問一つだけ終えたところでありますが、どうか誠意ある答弁によって質疑が進捗するようにお願いいたしておきます。  外交に関します質問の第二といたしましては、自主外交というスローガンについて伺いたいのであります。国の政治、国の外交が自主的判断に基いて行われなけばならないのは当然でありまして、われわれも苦心しながらこれをやって参ったのであります。しかるにもかかわらず、鳩山内閣がことさら外交の上に自主という形容句をつけてこれを強調するには、本来やはり何か特別の意義がなければならないのでありますが、それは何でありますか。自主外交をやるということの今日における具体的内容は、何事にも米国と連絡をとらずに日本が単独にやってしまうとか、または日本のやりたいことは、諸外国が反対してもやってしまうとかいうような意味でありますか。さらに具体的に言えば、アメリカと連絡をせずに日ソ国交調整をやってしまうとか、中共を承認してしまうとか、今日貿易機関の問題についてすでに具体的にそういう問題が出てきておるのでありますが、対支輸出制限を撤廃してしまうとかいう意味がありますか。自主的という言葉は、世俗的にはそう受け取られやすいし、現にそう受け取っておる人がたくさんあるのであります。この点についてどういう意味であるかということを伺いたいのであります。
  168. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は日本の利益を忘れずに外交をやっていきたいという意味だけに使っておりましたのですが、この字をつけたのは外務大臣ですから、外務大臣から答弁してもらいます。
  169. 重光葵

    重光国務大臣 私は、日本が不幸にして戦争をやり、そうして敗戦のあと、すべての方面においていかにも自主性がないような気持を持っておるように感ぜられました。これはそういうことはないと言われればそれまででよろしゅうございます。しかし私はさように考えて、特に外交には自主性がなければいけない、すべて他人まかせの外交では相ならぬ、もう日本も独立して今日三年にもなるのでありますから、自主性に重きを置かなければならぬという意味で、自主外交ということを唱えておるのでございます。特にそれはこういうことをすべきだという一々のことについて申し上げるよりも、その気持をそういうところに置くべきだという意味で私は申し上げました。
  170. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 橋本君にお願いがありますが、持ち時間はすでに経過しておりますから、適当にお願い申し上げます。
  171. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 お気持がそうであるということを伺いました。ただ政治の問題として大事なのは、主観的にどんなつもりでやったということよりも、それがどういう影響を持つかということが大事なのでありまして、ただいまの言葉はそれでとにかく御答弁を承わって先に進みたいと思うのであります。  本来からいうならば、外交は自主的でなければならぬのはあたりまえでありますから、わざわざ言わないでもよいわけでありますが、そうすると、自主的ということは、日本だけが好き勝手にやるということでもないし、また外国と連絡をとったり、外国と意思の疏通をはかったり、外国の了解を求めたりすることは自主的でないと考えることは、ないのですか、あるのですか、それを伺っておきたいと思います。
  172. 重光葵

    重光国務大臣 それは当然のこととして自分の国の利益を主として自主的にやれば、そのために必要なことは外国と相談しなければならない、国際協調も十分に尊重しなければならない、特に条約は尊重しなければならぬ、いろいろなことに考慮を払わなければ自主的ではないと私は思います。但しそれがために必要のないこと、もしくは何でも自分の気ままなことをすればよいというのが自主的という意味でないことも、それはよく御了解の通りだと思います。
  173. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 この自主的という問題も、鳩山内閣としては自主外交といって、ただこの間の総選挙以来のスローガンとしてそのままやっておられるのでありますが、これが現実にはいろいろな意味を持っておるのであります。従いまして重光外務大臣におかれましても、ただいま御答弁を伺いましたが、現実政治の画でどういう動きを持っておるかということを十分分析してお考えにならないといけないと思います。  私は話を具体的に申したいと思うのであります。今日イギリスアメリカやフランス等の大国でさえ、共産諸国との外交問題、ことに防衛問題については、常に相互に緊密な連絡協力をして、互いに了解を求め合ってこれを推進しておるのであります。しかし各国とも、自分たちの考えや行動がそのために自主的でないとは考えておらないのであります。またイギリスのような大国でさえ、自国内に米軍の軍事基地を設けさせておるのでありますが、これまた自主的でないとは思っておらないのであります。国民の要望として、何とかして昔のように単独で強力な外交の推進がしたいと考えるのは当然でありまして、私自身もその要望についてはあえて人後に落ちないのであります。しかし今日、実力の背景のない日本がいたずらにこれをのみ要望いたしまして、無分別に何でも好きにやればできると思うのは間違いであります。しかしそれかといって、現在の日本外交は自主的でないと思うのは、敗戦ずれのした劣等感と申さなければなりません。われわれは国情の変化を素直に認めなければならないのであります。われわれは、みずからの自主的判断として、国の平和と安全とを維持するために米国と提携し、また平素日米両国相互の間にはいささかの誤解も残さないように常に連絡し、常に意思の疎通をはかることが適当でもあり、また有利でもあると考えておるのであります。そうすることがわれわれの自主的外交方針であることを国内において徹底的に理解し合わなければならないと思うのでありますが、この点に関する総理の御所見をお伺いいたします。
  174. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 自主的外交というのは、単独に勝手な外交をしていいという意味ではありません。とにかく自由主義国家群協力関係を緊密にしていく、話合いをしていくというのは、むろん含まれておるものと思っております。
  175. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 この点は非常に大事な点で、私は十分にお考えを願いたいのでありますが、今日の国内の現状を見ますと、鳩山内閣が掲げられたところの自主外交というスローガンによりまして、これについてむやみにアメリカと相談などをするのは自主的でないのだというような空気が相当多くあるのであります。私はこういう点につきまして、鳩山内閣の軽率な政治行動についての責任を問いたいと思います。とかく日本人は外交の実情にうとい上に、一面には過去の大日本への追憶があり、他面には敗戦後の劣等感から抜けきれないために、とかく極端に卑屈になったり強がりを言ったりしやすいのでありますが、この感情に迎合することは、政治家として無責任でかつ危険であります。私の国内を静かに見るところによりますれば、鳩山内閣があちらこちらで自主外交ということを言っておられますのが、この危険な傾向に迎合する無責任さを示している場合がよくあるのであります。この点につきましては、総理みずからも、御自身の考えの整理がついておりません。公式な答弁において、あるいは一々米国の許可を受ける必要はないとか、自分は向米一辺倒の外交はやらないなどと言われるのであります。これを一々取り上げて論ずるひまはありませんが、本来占領の終った今日許可なんということもないのでありますし、一々米国の許可を受ける必要はないなんというと、何かときには許可を受けるのかといったような感じがして、おそらくこれは総理考え方と違うのじゃないかと思うのだが、聞いている方には、ああ、こんなところに存外劣等感が残っているという非常な情ない感じがするのであります。向米一辺倒などということも今日ないのでありますから、このような言葉を使うことは、いささか誇張したたとえ話としても間違いのもとであります。このようないろいろな実情からいたしまして、自主外交というスローガンが米国との提携を深めることを軽視し、ないしは米国との意思の疎通をはかることを罪悪視する風潮をすら生みつつあるのであります。この際私はこういう傾向に顧みて、自主外交という行き方について、十分考慮をめぐらしていただきたいと思うのでありますが、いかがでありますか。
  176. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 自主外交という外交方針は、私は正しい外交方針だと思います。それによって生ずる誤解のないように、また誤解を国民の間に起さないようにする注意は必要であると思っております。
  177. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 平和外交自主外交というスローガンが、ただに外交を知らない国民を惑わしたのみならず、鳩山総理以下内閣そのものの考え方を混迷させていることを示す好個の事例が、防衛分担金の問題であります。われわれは米国と相談したから自主性がないなどとは言わないのであります。しかしこれも参議院の本会議で言われたのでありますが、総理は外人記者会見の際に、防御分担金を減らして住宅建設等にまわすというようなことを言われました。これはもう責めません。この言葉相手を刺激してかえって悪かったと思うということを言っておられるのであります。その通り相手を刺激して悪い結果を来たしました。本来鳩山内閣といたしましては、防衛分担金を削って内政費に回すということは、かりに鳩山総理大臣だけのそのときの外人記者団との思いつきの所見であったかもしれませんが、総体的には防衛費については前年度の予算のわくを変えないようにしようということが方針であったはすであります。ところが今日形式上わくを越えないようになっておりますが、予算外契約で莫大な金額が追加されておるのは御承知の通りでありまして、外電を見ますと、要するに鳩山内閣鳩山首相の言明によって、防衛分担金を減らして内政費にまわすということ云々がもとになって非常にこの折衝がこんがらがった。しかしもし分担金を減らすということになっちゃたいへんだ。だからとにかく防衛分担金を減らしてくれ、そのかわり防衛分担金さえ減らしてくれるならば予算外契約でふやすのをのむといって、結果は初めから安全保障条約に従ってまじめに出た場合に比して、防衛費の負担というものを予想以上にふやしたんだということを、はっきり外電で書いておるのであります。外人記者の報道によれば、この点について日本におりますアメリカの大使及び米軍の司令官は、予想外の成功をおさめたという、電報すら打っておるのであります。こういったような事例に対しまして一体どうお考えになりますか。
  178. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は防衛分担金を減したことによって、防衛庁費が旧来のわくよりもふえたというように考えておりません。
  179. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 これはふえておるのであります。要するに今年度の年度内の支出としてお金がそれだけ今年度内に出ないというだけで、予算外契約で百五十四億円ふえておるのであります。こういう点につきましては、これはもう十分に好個の事例で、結局こうした問題は、外交の失敗というものをみなが負担していかなければならないのでありますから、十分に御留意を願いたいと思います。  外交問題に関しまする最後の質問として、私は時間があまりありませんので、超党派外交というスローガンについて、一言だけ伺っておきたいと思うのであります。私はほんとうは超党派外交というものについても、十二分に論じてみたいと思うのでありますが、ただいまの状態においてはあまり論ずる実益がなさそうであります。なぜと申しますのに、鳩山総理超党派外交ということを政治的な公約として言われたのであります。一体外交には、外交方針をきめること、それに従って交渉その他を進めること、それから結論を出してそれを責任を持って実施していくという三段階があるのでありますが、もし超党派外交をやるというならば、これはもう最初のスタートの基本方針を論ずるときから超党派で話合いをしなければならないのであります。しかるに鳩山総理大臣は平素超党派外交ということを言われながら、この中ソ国交調整の問題であるとか、二つ中国を認める問題であるとかというふうなものはこれはもう超党派どころではないので、自分の内閣の中の責任閣僚にすらお話しにならないで、自分で意見を出されたそうであります。超党派どころでない、超独善と申すべきでありますが、一体超党派外交ということを言いながら、こうした大事な政治的公約を弊履のごとく捨てられたのはどういうわけでありますか。
  180. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外交というものはすべてのことをお互いにみんなが知っておれば、つまり誤解がなければ大した争点というものはないだろうと思いましたので、各党各派の人に大体において外交関係を率直にお話をして、そうして結論を得ていった方がいいと思ったので、超党派外交をして、各派から委員になってもらって外交調査会というものをつくっていきたいと最初考えたのであります。ところが外交方針が各派によっておのおの主張が違うもんですから、とても超党派外交ではいかないと思いました。それで外交調査委員会というものを作るのを中止しておるわけであります。
  181. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 私はそういうことを伺ったのでないので、せっかくそうやってお話し合いをなさるつもりならば、お話し合いをなさるまで——新しい外交方針というものをあっという間に出してしまったが、これはお話し合いをなさろうとすれば党首会談をやろうといろいろなことをやることができたのです。外交調査会なるものを作ってからでなければ超党派外交ができぬということはないはずでありますが、どうして今回の第二次鳩山内閣成立後の外交方針の打ち出しの大事なときに、超党派外交を実現なさらなかったのでありましょうか。
  182. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その当時、その余裕を持っておりませんでした。
  183. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 そうすると超党派外交というのは理想だけれども、これは余裕といっても考えようなんですが、鳩山総理から見て余裕がないと見たらいつでも超党派外交はやらないということでありますな。
  184. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまのところ超党派外交はできないと思っております。
  185. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 御答弁は十分満足はできませんが、私は次に第二の大きな問題といたしまして、直接予算に関する緒問題についてお伺いをいたします。  この予算の性格は、すでに本会議質疑を通じて明らかにされたところによりますれば、一つには超デフレの予算であること、二つには公約無視の予算であること、三つには農山漁村軽視の予算であること、四つには経済六ヵ年計画というものを政府与党が全くやる気を持っていないことを示す予算であることなどを、おもな特徴といたしておるのであります。すべて本会議において一応触れられておりますし、また今後本委員会においてさらに掘り下げた質問があるのでありますが、若干の要点についてお尋ねをいたしておきます。  まず超デフレの性格についてであります。今回の予算はいわゆる一兆円予算で、昨年度の予算と同様のように見えるのでありますが、昨年度は、一千二百七億円の繰越金を見込んだ一兆一千二百七億円の予算であり、加うるに外為特別会計を通じ、国際収支の赤字を原因とする支払い超があり、従って政府対民間収支は一千九百億円の支払い超過でありました。昨年度は引締めをやりながら、これだけの手当てを考えて参ったのであります。われわれの行いました昨年度の措置は大成功でありました。国際収支は三億ドルの黒字に転じたのであります。この成功は一つには引締めの効果でありますが、一つには、ただいま申しましたように、過度の引締めにならぬように資金を流した効果によるのであります。しかるに今年度の予算は一兆円ぎりぎりで、繰越金もはるかに少いし、国際収支じりの黒字もそう多くないし、また租税は見積り以上に徴収されるのではないかと思われますが、何ゆえ現在以上にさらに超デフレをやる必要があるのか、この点を伺いたいのであります。大蔵大臣に伺う前に総理の御所見も承わっておきたいと思います。
  186. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は超デフレの予算とは思っておりませんけれども、大蔵大臣から説明をしてもらいます。
  187. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えを申し上げます。今回の予算は一兆円ではありますが、決してただいま御指摘のように超デフレ予算ではないのであります。特に一兆円予算は、他面平年度で五百億、本年度で三百億以上の減税をしておるということも御考慮願わなければなりません。そしてこの予算執行の結果は、おそらく私の推算では七百億から八百億くらいな払い超になると思います。大体デフレ予算というものは、支払い超過にならぬ予算がデフレの本格的なものであります。しかしすでに七百億、八百億の支払い超過であります。ただ昨年との関係からすれば払い超が少いということは言える。しかしこれは市場資金の問題でありまして、この場合は他面金融というものを考える。昨年度におきましてはそのために金融独走の非難を受けて金融引き締め政策を強行いたしました。日本銀行の貸し出しが千六百億も減少しておることは御承知の通りであります。私は財政と金融というものをごく調和して、強力的に運用する。本来のあり方としては、財政がやはり緊縮であって、これを金融の本来の姿でファイナンスしていく、こういうのがむしろいい。財政の払い超が多くて、それを追いかけて金融で締めていくというのは非常に無理がある、こういう考え方であるのでありまして、決して超デフレというようにはお考え下さらないことを私は希望いたすわけであります。
  188. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 橋本君にお願いいたしますが、もう持ち時間を三十五分経過しておりますから、あと五分ぐらいでできるならばお願いいたします。
  189. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 だいぶ時間はかかります。  ただいま一萬田大蔵大臣からお話がありましたが、これは全く納得できがたいのであります。まず減税の問題についてお話がありましたが、これはなるほど普通に減税をやったならば、それだけ資金が残るということになりましょうが、あなた自身が言っておられる通り、要するに消費税で吸い上げて、直接税の減税をするというので、市中の資金の問題としてはとんとんであります。それから今日の日本の状態から参りますと、財政でまかなわれる面が非常に大きいのでありまして、支払い超過が去年に比べて——去年千九百億あったのが、今年七、八百億ということになれば、去年と今度では明瞭に三百億以上の市中資金の相違ができるのであります。それを何らの相違ができないというようなことは、これはとんでもない間違いであります。それからもう一つ金融でうまくやると言いましたが、それはできないのであります。今日は新聞を持っておりませんでしたが、日本銀行は貸し出しを緩めるようなことはしないと言っておるのであります。現にどんどん引き締めておる。大体が日本銀行に対して大蔵大臣は指図ができないのであります。現にあなたは日本銀行総裁をやっておられたときに、われわれが善処を求めたのに対して、財政のけつを金融でぬぐうのはごめんだ、日銀はそんなことはしないのだ、財政は財政でよろしきを得ればいいし、金融は金融でよろしきを得ればいいのだということを、あなたは自分で言ったではないか。今日大蔵大臣になってとぼけて、そういうふうな前と違った説を吐かれてはいけないのであります。あなたは確かに昭和二十五年の当時でありましたが、この財政面ではその際非常にいろんな面での引き締りがありまして、日本銀行に貸し出し要望をされることが多かったのであります。日銀は、いかぬという声に対して財政は財政でやってくれ、金融は金融でやるんだ、その財政の面は締まっておるけれども、金融の方でよろしきを得るんだなんということはできぬということをはっきり言いました。本日は時間もありませんし、私はこの点は大切で、さらに他の委員によって具体的な掘り下げが行われますので、あまり長い時間をこれに使うことができないのでありますが、一体去年以上にことし引き締めをやることにはっきりなっておるのでありますから、そうしたデフレをやるならやるで、その所信を明らかにされて、それに対してまじめな利害得失の議論を行われることを希望するのであります。それはそれで意味のあることでありますから、十分に議論をしたいと思います。本心はことし一年あるいは明年にかけても、大いにデフレをやるつもりでおりながら、この間の選挙で民主党が好景気の民主党などと言ってきた関係上、党外政策ないし国内宣伝として、去年より引き締まらぬなどということをおっしゃるのは、問題を不明確にいたしまして、日とともに得るところがないのであります。国会というところはただやりとりをするところではない。ほんとうに問題をつかみ合って、意見の相違は相違で仕方がありませんけれども、十分に述べ合わなければならないのであります。あなた自身は大蔵大臣として、政治家としての良心の問題として、ことしは去年よりも引き締めになる、そうすることがよいと思ってこの予算を組んだということを、はっきり聞かせていただきたいのであります。意見はいろいろありますけれども、それはそれとして一つの見識でありますから、それをもとにしてさらに論じたいと思います。再度御答弁を願います。
  190. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほどの答弁に加えて一言なおつけ加えておきますが、この市場資金の点につきましては、御承知のように、財政投融資は昨年に比べて四百二十億ふえております。これは主として設備資金に向けることになっております。断然これは他面運転資金が伴う、こういう金融情勢を馴致するだろう。そうして一方金融は預貯金の増加をはかっておりますから、市場は自然資金が潤沢になり、金利も下る傾向をとる。これが金融の正常化に一歩一歩向っておる現状である。そういう意味におきまして、私は何も金融にしわ寄せをする、そういうことは毛頭考えておりません。ただ従来のように財政が散超になって、それを金融で一生懸命カバーするように引き締めていく、ここに非常な無理ができて、また実際所期の目的を達せぬから、それで財政は財政、これが今回の財政でもあり、財政でやるべきところを金融に移すということではないのでありまして、財政でいろいろと産業に手を出しておる、それが金融経済の正常化につれて普通の取引に従来やっておったことを、だんだんと経済の常道に移していく、そういう意味で経済の方に移す、こういうふうな考え方を持っておることを申しておきます。  なお、今回の三十年度の予算につきましては、私は性格といたしまして、一面あくまで地固めをやっていくと同時に、今後の発展のための基礎を培養するという面を持たなければならない。同時にもう一つは、こういうふうな引き締めが一年半続きましたものですから、いろいろと故障ができる、その故障もこの辺である程度を差し伸べる、それが減税、その他の社会政策的なことになっておるわけでありまして、また先ほど国際収支の三億四千四百万ドル、こういうふうに受け超になっておる。それではなぜこんな予算を組むか、こういうふうな御意見もあったかと思いますが、これは私が申すまでもなく、橋本さんは十分御承知の通りでありまして、しさいに検討すれば、いかほども受け超になっていないのでありまして、今後の国際情勢並びに日本の経済の実態から言うと、やはり従来の地固めをこの際進めて行かなければならぬというふうに思いますから、御了承を願いたいと思います。
  191. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 その点が大事なんです。私はもう時間がありませんから、あまり長く掘り下げはいたしませんけれども、今あなたの言われた最後の点が大事なんで、要するにどう考えてみても、ことしの予算は去年より一そう引き締めた予算であるということが明瞭であると思うのです。あなたの今言われた最後の点もそれを言っておられると思うのでありますが、それを端的に承認していただかないと、今後の論議が進まないと思います。去年に比べてことしの予算が引き締めにならぬというのは、これはむしろ非常識でありまして、その点をあなたは国のために去年に比べて一そう引き締めるのがいいと思って組んだということを、はっきり言うていただけるとそれでけっこうであります。
  192. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいま申しましたように、この財政が昨年の予算に比べて日本の財界により強いデフレ的な効果を与えるとは私は考えておりません。
  193. 上林山榮吉

    ○上林山委員長代理 橋本瀧伍君、適当に願います。
  194. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 なお伺いたいことがたくさんありますが、これは次に移したいと思います。  そこで本会議の御答弁を伺っておりましたときに、大蔵大臣はことし拡大均衡に移るというのはまだいけないという御答弁があったと思います。確かにそうだったと思いますが、いかがですか。
  195. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ことし拡大均衡に移るのは早いということは私の考えであります。
  196. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 なぜでありますか。私は時間を急ぎますから、私がなぜかという疑問を発するゆえんをこまかい質問として申し上げたいのですが、拡大均衡というのは、ごく平たく言えば生産力を拡大させてもそのために物価、賃金が変動したり、国際収支が悪化したり、過去の蓄積を食いつぶしてしまったりというような波乱なしにやっていける、すなわち経済緒要素のつり合いをとりつつ、生産力の拡大をやっていけるということであります。昨年は残念ながら一昨年以来の国際収支の逆超を、急いで順調に転じさせるために、物価の割高を是正するために、ある面で生産力の縮小をがまんせざるを得なかったのであります。ところが昨年半ばごろからの趨勢を見まして、われわれは今年から拡大均衡に転じ得るし、転ずべきだと思って、輸出の増進と国内産業振興とを柱とした経済拡大計画の実施を決意して、立案をいたして参ったのであります。不幸にして昨年十二月に吉田内閣は総辞職をいたしまして、実施の機会を失いましたが、今日もその所信は変っておりません。  そこで掘り下げてお尋ねをするのでありますが、あなたは今年は拡大均衡はいけないと言われたが、今日のこの状態において生産力を拡大させると、どうして物価、賃金が上ったり、国際収支が悪化したりするのでありますか。われわれは賃金を安定させ、物価の割高を是正し、国際収支を順調にし、資本蓄積を促進するためには、今日ではすでに生産力の積極的拡大をはからなければならない時期だと思っておるのでありますが、お考えはいかがでありますか。
  197. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。御意見は非常に傾聴いたしますが、私は国際収支の詳細な分析並びに今日の物価の情勢、今日の経済界における各企業のあり方、すべていろいろな経済活動に関する諸条件を考えてみました場合に、今ここですぐに拡大均衡に行くのは、先ほど御指摘になったような、悪い影響が現われてくるということを考えておりますので、従いまして本年は拡大均衡に将来向うべき基盤をまず確立をする。そこで財政投融資も昨年に比べるとふやして、そして重点的にこれを合理化に使う。そして出産コストを下げる。これは広い意味ですが、単にいい機械とかいい技術とかいうのではなしに、全体の日本産業における生産費を下げるというところに、まず本年は主力を集中すべきだという私の考えであります。
  198. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 御意見に反対であります。私は下げるためにも生産力を拡大させるべきだと思っておりますが、この点についての一そうの深入りの質問はしないことにして、次に移ります。  この予算には、選挙の公約の中で、わずかに減税をある程度行なっただけでありまして、住宅対策も羊頭狗肉の程度に貧弱になりましたし、旧軍人恩給の改善についても公約を無視してありますし、また失業の増加に伴う失業対策費の増加をもって、社会保障費がふえたと誇るに至っては、さたの限りと申すべきであります。まさしく公約無視の予算と申すべきであります。吹きまくった公約の大きさに比べまして、はなはだ非良心的であって、初めからできないのを承知で選挙民をだましたものであると思いますが、この点は別に質問することにいたします。  私は大きな大切な問題として、農業について伺いたいのであります。この予算は土地改良費や災害復旧費を大幅に切ってしまったのが著しい特色であります。しかして民主主義の原則であるところの最大多数の最大幸福をはかるという点から申しますならば、わが国にあっては、人口の四八%を占める農民の福祉ということが、常に最大の問題であるにかかわらず、財政演説においては、農業には全く触れておらないのであります。速記録によりますと、こう書いてあります。「歳出につき政府が重点を置きましたのは、まず住宅対策費であります。「次に、社会保障関係費であります。」とあって、以下貿易の振興対策費、防衛関係費、地方財政、財政投融資の順に、重点を置いたと称せられる項目が六つ掲げてあって、最後の財政投融資の内訳として、住宅対策、中小企業対策、輸出振興、開発銀行を通ずる重要基礎産業、電源開発会社の五つの項目が掲げてあるのであります。すなわち予算編成上、農業に関しまする経費を特に削減をして、これを極度に虐待せられ、しかしてその説明として、財政演説において、政府が重点を置いた項目から明瞭に、意識的に農業をはずしてあるのであります。鳩山内閣予算編成の実体において農業関係費を特に削減いたしましたのみならず、大胆にも、農業には重点を置かないことを、大蔵大臣の財政演説を通じて天下に宜明せられました。大蔵大臣は、平野三郎君の本会議における質問に対して、自分の演説では農業に触れなかったが、経審長官の演説の方に農業のことを言ったという、実にふざけ切った答弁をされたのであります。平野君は農業について、だれかが、どこかで、何かを言ってほしいというようなことを言っておるのではないのであります。また河野農林大臣は、土地改良費などは今やらないでもいいから、あと回しにしたということを、はっきり本会議において明言せられました。一萬田大蔵大臣といい、河野農林大臣といい、これほど正面切って農業に挑戦するような政治家を見るのは、初めてであります。食糧というものの重要度から言っても、雇用という面からいっても、日本で最重要の産業であるところの農業に関する経費について、何ゆえ政府が重点を置かない方針なのかということを、はっきり伺いたいのであります。まず総理大臣に伺います。
  199. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はそういうふうに考えませんが、農林大臣から答弁してもらいます。
  200. 河野一郎

    ○河野国務大臣 お答えいたします。今橋本さんは私の答弁いたしました一節をお読みになりましたが、私はそういうふうに申してないのであります、その前に説明がございまして、たとえば土地改良費にいたしましても、ことしやられないでも、来年経費をふやしますことによって、数年かかるのでございますから、五年、七年かかりますものを、一年なくとも、来年倍にしてやればできることもありますから、そういうものについてなくしたものはございます。その半面におきましては、小規模開墾でございますとか、早急にやらなければならぬものにつきましては、今まで手をつけてなかったものにつきましても、手がつけてあるのでございまして、予算の編成上そういう結果になったということを御了承いただきたいのであります。
  201. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいまのお話では、非常に農村、農業を尊重しないという御非難でございますが、決してそういうことはないのでありまして、私の財政演説に農業に触れなかったというお話がございましたが、   〔上林山委員長代理退席、委員長着席〕 私は今回の財政演説では、大体その前の国会ですでに基本的な大綱を演説しておりましたので、あれを受けまして予算を編成して、主として予算の説明に今回は終始をしよう、こういうところで演説したわけであります。従いまして、そういう経済的な関係は、特に経審長官が農業についてはお話もあるのでありますから、そういう意味でただ触れなかっただけで、尊重しないということは絶対ないことを申し上げておきます。  なお予算面におきまして、相当農林省の予算が減っておるじゃないかという御指摘もごもっともと思いますが、これは二十九年度において二十八年と違って災害が少なかったので、災害復旧費が減っておるということに主たる基因がある。そのほか二、三特別会計に移したということから減っておるのでありまして、その他においてはほとんど昨年度に比べまして減っておるというわけでもないのでありまして、この点も御了承を得たいと思います。
  202. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 私はなお伺いたいことがたくさんありまするが、次の大事な政局の問題がありまするから、農業の問題については締めくくってお話を申します。ただいまの総理大臣また農林大臣、大蔵大臣の御答弁は、みんな顧みて他を言っておるのでありまして、私の質問に対して返事をしておらないのであります。私の申しましたのは、ただの干拓とかなんとかいうことを言っておるのではないので、あなたの方で予算を通じ、また財政演説を通じて、はっきり重点を置いたものはこれだということを宣明したものの中に入れてないという点を、はっきり指摘しておるのであります。予算上特に重点を置いた項目を拾い上げる限り、毎年度の予算において、農業は必ずその中に加えられるのが今までの例でありました。しかして日本の国情が根本的に変ってしまうことは考えられませんから、今後もそうでありましょう。この意味において、予算をめぐる内閣方針として、旗幟鮮明に農業を重点からはずしてしまった内閣として、現内閣は特筆大書に価する一大特色を発揮したというべきであります。私はきょう時間もないので、あとに専門的に質問をされる方もありましょうから、それに譲りまして、私もまた機会がありましたならば、ぜひ伺いたいと思うのであります。  なお経済六ヵ年計画については、伺いたいことがたくさんありまするが、私はこれを全部省くことにいたします。以上のほかにも反共対策のことであるとか、新生活運動や、旧軍人恩給のことや、また健康保険や、国民健康保険や、環境衛生とか人口問題についても伺いたいことがたくさんございますが、私は他の方が済んでからでもいいですから、機会を得て伺いたいと思います。  そこで私は第一に外交について、第二に予算自体についてお尋ねをいたしたのでありますが、大きな第三点としてお尋ねをいたしたいのは、政局の安定に関する鳩山総理の所信についてであります。新聞などで拝見いたしますると、総理はしばしば政局の安定について語っておられるようでありまするが、総理の言われる政局の安定というのはどういう意味でありますか。そうしてどうすれば政局が安定するとお考えでありますか。
  203. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 政局の安定というのは、政局が不安定だから安定にしたいというだけであります。
  204. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 どういう理由で不安定だとお思いでありますか。
  205. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 一言にして言えば、民主党の勢力が百八十五名きりないことです。
  206. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 この間三木発言というものがあったのであります。その内容は、民主党が百八十四名では、とても鳩山内閣はやっていけないから、しかるべき時期に総辞職をして、鳩山総理に御引退を願って、あとはどんな形でもよろしいが、ともかく自民民両党の連携によって政局を安定させたいということでありました。いかに民主党内の有力者の発言でありましても、単に総務会長の私見を相手にして意見を聞いたり述べたりする必要はないと思っておったのでありますが、本会議での御答弁によりますると、総理は三木発言に御同意だそうであります。そこで伺っておかねばならないことがあるのであります。総理も三木氏の言のように、鳩山内閣は少数単独だから、なかなかやっていけぬとお考えであるのだということはただいまも伺いました。その次のことを伺いたいのであります。総理も御同意の三木発言によりますれば、保守連携をやりたいとのことでありまするが、保守連携がこの際ぜひ必要だという理由は、どういうお心持からでありまするか。そうして保守連携によってどんなことを実現したいとお考えでありまするか。最近の新聞を見ますと、政府、与党は保守連携によって社会党の進出を押えたい、しこうして憲法、選挙法の改正や、防衛関係法規の制定を実現したい意向であって、逆にまたこれらの法律の審議を通じて保守連携を推進したい気持でもあるということが書いてあるのでありまするが、果してそうでありまするか。
  207. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 世界に第三次大戦のないように外交が樹立せられ、そうして国民生活の安定が期せられるような保守勢力の結集ができることを希望しておるのであります。そういうような点について、自由党並びに民主党が、同じような意見を持つようにならなければ、政局の安定というものはできないと考えております。自由党と民主党とがそういうような関係になる過程としては、まあ私の内閣が存続をするというようなことを条件としたり、あるいは民主党なり自由党なりが、お互いに自党の内閣を作りたいというような気分を持ったりしていては、政局の安定というものはできるものではない。おのおの無私無欲の態度になれば政局の安定ができる。それで初めて社会党に対して対立した政党になると思うのでありますが、そうでなければ、やはり社会党の天下が来るというのは情勢だろうと思っています、そういうことにならなければ。
  208. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 それで、保守連携をやりまして——今の質問に落ちておったのですが、保守連携によってどういうことを実現したい御意向でありますか。
  209. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 保守連携になって希望するところは、外交方針が一致したり、国民生活の安定についての方策が一致したりすることであります。
  210. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 実は、私は速記録を見てみたのでありまするが、第一次鳩山内閣組閣の当時に、予算委員会におきまして、鳩山総理大臣は、百二十名の少数党で政局を担当することは僣越しごくであると述べられたのであります。ところが.だんだん気が強くなられまして、その総選挙の後には、百八十五名にはなられましたけれども、やはり少数党であるということは変らないのでありまするが、僣越しごくということをおっしゃらないようになって、そこで少数の単独内閣をお作りになったのであります。ところがただいま伺いますると、少数ではいかぬから保守連携が必要だということであります。何かしら御自分の都合次第で僣越しごくと思ったり思わなかったり、保守連携をした方がいいと思ったり思わなかったり、勝手ほうだいに自分の政権維持の都合次第で変るような感じが非常に強いのでありますが、今回一体第二次鳩山内閣を作りますときに、ああした発足をいたされて、今日意見を変えられた動機はどういうことでありますか。
  211. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私が内閣を作るのには、どうしても過半数を持たなければ政局が安定しないわけなんです。それですから、保守党が政権をとるのが今日日本国家としていいのならば、保守党がここで考え直さなくてはならぬ。それにほ自分のことを考えてはいけないというだけのこときり考えておりません。この民主党を大きくするのには、自由党と合同するか、しからざればもう一度選挙をやってみて国民の意見を聞くか、どっちか二つの方法以外にはないでしょう。そう思っております。
  212. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 私の言うのは、要するに今そういう気になったが、前にはそういう気でなかった。そういうふうに始終変ると、また変るんじゃないか。御都合次第でそういった基本方針を変えるのはいかぬということで申したのであります。ただいまの御答弁答弁になっておりませんが、私は次に移りたいと思います。  私はただいままでの総理の御答弁を伺って、強い不満を禁じがたいものがあるのであります。一体政局の安定という言葉は、だれでもが使う一応わかったような言葉でありますが、われわれは無反省にそれになずんでしまわないで、民主主義というものの本質から,時に振り返って考えなければならないのであります。民主主義という制度はいろいろの人の意見の総和を見出していって、少数意見で独裁をさせない制度であります。従ってある程度の不安定性は本質的につきものでありまして、安定させようと思ったら常に他の意見と調和をはからなければならないのであります。ですから少数でも多数の納得を得れば政治はりっばに安定をいたしますし、また国会だけ一応安定したように見えても、国民の納得を得なければ国内は安定しない場合もあるのであります。鳩山内閣は何かというと少数だから不安定だと言われる。今も言われました。三木発言総理のただいまの答弁も、ただ数が足りないというだけで、総理自身が施政方針演説の中で述べられた、互譲の精神で各派の意見を聞くという民主政治のあり方の片鱗すらうかがわれなかったのであります。みずからの不徳や失政が政局不安の原因になっていはしないかということに対する御反省が一つもございません。あなたは合同しないと外交方針が一緒にならないとおっしゃいますが、話は逆でありまして、外交方針が一緒でなければ合同はできないのであります。政府誠意を尽して政策を立案し、これを説明し、協力を求め、また誠意をもって野党の意見を受け入れて参りますならばたとい与党が少数でも、政治は円滑に運営されて参るのであります。一体この点を全然考慮に入れないで、すなわちみずからの行き方に対する反省というものが一つもなくて、ただ数をそろえるために保守連携をするとか保守合同をするとかいっても、一体こんなことが簡単にできると思っておられるのですか。またそれでよいと思っておられるのですか。私は具体的に、さっきあなたが言われた、合同して外交方針の統一をはかるというのは逆で、外交方針について意見が一致しなければ合同はできぬじゃないかという具体例をあげて私は申し上げているのです。ただ数をそろえるために保守連携をするとか合同するとかいっても、それができるかどうかということについて端的な御所見を伺います。
  213. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなたの御意見のうちで、政策が一致しなければ合同はできないじゃないかという御意見には私もその通りに思っております。それですから、自由党と民主党との合同は政策の方からきめてかからなくてはならないというように考えておりまして、その考え方についてはあなたと少しも違いがないのです。もう一つは、民主的なあり方といえば、民主政治というのは主権者が国民なんです。国民政治に関与するというのは選挙のとききりなんです。ですから選挙のとききりということになれば、政策を統一して政策の一致点を見なければ合同はできない。しからずして他の方法の合同はない。そうして政局は不安定だということになれば、民主主義の本体に従って国民主権者と見て、これにもう一度意見を聞くというのが民主政治のあり方で一番公平だと私は思っているのです。それをあなた方の方から言えば、政府党としては解散したがっているという攻撃をすぐされる。しかしながら私は解散になつても、私一人で自分の誇りだと思っているのは、選挙権の濫用だとか、選挙によって圧制をもって強圧したというようなことの非難が起きなかったことは、私の内閣として非常な成功だと思っているのであります。公平に選挙をやって、これが楽に選挙ができる、そのことだけが、国民が初めて自分が政治に参加する唯一の機会だということになれば、選挙というものをいやがらないで、国民に意見を聞いて、それによって政局を安定させていくというのが一番の基本的な考え方だと思っておるのであります。
  214. 牧野良三

    牧野委員長 橋本君に御相談を申し上げますが、時間がきておりますので……。
  215. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 あと二点だけですから……。
  216. 牧野良三

    牧野委員長 その点を特別に御注意下さい。
  217. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 ただいまの御意見を伺いまして、私は選挙によって民主的に事をきめるというのもけっこうなことであると思います。しかしそれはあなたが、自分の意見は話し合う余地がないんだときめてかかられるからそういうことでありまして、施政方針演説の中にはそう書いてありません。互譲の精神によってやっていくということと、各般の意見を聞くということでありまして、各般の意見を聞けば、そこで解散をするということはないわけであります。われわれはいよいよの場合に意見をはっきり現わして国民の判断を求めまするが、まず第一に、それは最後のことにいたしまして、今日の内閣としては御自分のやっておられることについての意見を十分耳を傾けて聞くべきであります。私はそのことだけ申し上げておきます。三木発言においてもやはりそういう趣旨で、解散を今日やるのはよくないという考え方のようでありました。  私はここであと時間もありませんが、二点だけ大事な問題が残っておりますから、それを伺いたいと思うのであります。  保守連携論というのはこのごろまことに盛んであります。私もそれには意味があると思います。しかしわれわれ政治に携わる者がそれだけを考えていて果してほんとうによいものでありましょうか。今日の一般の論調を見ますと、今日私が質問を通じて明らかにしたように、重大な意見の相違があるにもかかわりませず、とにかく自民両党はまずいわゆる保守合同をすべきである、しこうして保守合同をすれば、両派社会党が統一をしても政権を渡さずに済むと言っておるようであります。さっき鳩山総理もそう言われました。社会党の諸君は不愉快に思われるかもしれませんが、真剣なまじめな話ですから、しばらくがまんしてお聞きを願いたい。このままで行きますると、何かしら日本国内を互いに離れ離れに、今の全く相反した二つ国民の群れに分けてしまって、分けっきりにしてしまうことを、国をあげてみなで促進しているような感じがするのであります。私は悠久な日本の将来の平和と発展と繁栄とを考えますときに、ただこうした風潮の中に流されていてよろしいのかと思うのであります。今日日本政治に要求されておりまする課題は、民主主義の精神によつて国民の総意を大きく取りまとめて、国の再建をはかることであります。いわゆる保守だけが合同をして国家の安泰をはかればいいというときではないのであります。要は適正な政策を実行し、筋の通った政治行動を実践することにあるのでありまして、もし政策、政治行動に国民の信頼をつなぐことができなければ、たとい合同をしても遠からざる将来に必ずや破れるに違いないのであります。私は自由主義の諸政党も、社会主義の諸政党も次第に小異を去って大同について、常により大きな集まりに発展していくことはよいことだと思っております。しかし同じ結果を目ざすにいたしましても、大義名分の明らかでない行動は実らないのであります。一時はよろしくても先は栄えないのであります。われわれは日本再建のために、民主主義の精神によって、国民の総意を大きく取りまとめることに心がけて、政策を中心に今後の日本のためにぜひ必要な問題について協力し合うことにいたしまして、政府はまず謙虚な態度野党の意見を受け入れていけば、しいて合同せずとも政局は動揺をいたしませんし、また自然その間に真に大きな大同団結の機運が熟していくでありましょう。この点に関する総理の御見解をもう一度伺いたいのであります。
  218. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 橋本君のただいまの結論には賛成です。
  219. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 ここで私は最後に、憲法問題の取扱いについて総理の御意見を伺いたいのであります。私は憲法改正の問題についても、正式な改正論義もしないうちから.、自民両党は賛成だが社会党は反対だというように、今から、勝負をつけてしまう考え方は早計であると考えておるのであります。われわれもまだまだ考えなければならないことをたくさん持っておりまするが、社会党の諸君にもなおなおお考えを願いたいのであります。政治の専門家がむずかしく論議しているといろいろな片寄りができるものでありますが、正しい政治行動は多く常識の範囲を出ないものであります。占領下においてほとんど最後通牒のような形で突きつけられた憲法、議会で審議はしたけれども、占領軍司令官の許可によって作られた憲法、外国人が外国語で書いた憲法は、どんなによい原理原則を含んでおりましょうとも、これをそのまま何らの再検討もせずに子々孫々に伝えるのは不適当であります。現に西ドイツにおきましては、社会党も占領下作られた憲法は占領下にしか効力がないという原則に賛成していると聞いているのでありまして、日本の社会党の諸君にももう一度お考えを願いたいのであります。社会党の多数の諸君は、誠意を尽してしんぼう強く話し合えば、とにかく話は聞いてくれると思います。現に問題の自衛隊につきましても、昨年十二月の祉会党左右両派の協定の中には、現在程度の自衛隊はこれを認めるとはっきり書かれているのでありまして、この文言につきましては、左右両派の中でその解釈についていろいろ御意見があるようでありまするが、われわれが話をし合う余地は十分にあると私は思うのであります。総理は去る四月二十七日に淺沼稻次郎君の質問にこうお答えになりました。「議会に憲法調査会を設けると言ったのを内閣に置くと言ったのは、意見を変えたかというお話であります。変えました。これは情勢の変化でいたし方ないのです。あなた方の議席が三分の一以上をとられて、これではなかなか議会に設けたのでは憲法改正の案はできないだろう、そういう危険を感じたのであります。」「反対が多くては案ができないと思います。それで変えたのであります。」と言っておられるのであります。一体国会の特別委員会は、たとい憲法調査をやるにいたしましても、議決は過半数でよいのであります。従ってこの場合、両派社会党が三分の一以上を占めるに至ったといっても、単に委員の数がもとよりほんの一、二人多くなったというだけであって、議決のいかんには何の関係もありません。そんなことは総理は当然御承知のはずでありますが、社会党が従来よりわずか増して国会の三分の一以上を占めるに至ったという理由だけで、すなわち議論が多く出そうだという理由だけで、これを情勢の変化と称して、従来国会に置くと言っておられた憲法調査会を内閣に置くと言われることは、御見解があまりにも非民主的であり、またあまりにも狭過ぎはいたしませんか。私は日本をめぐる国際情勢を見ても、また国内諸般の情勢から見ても、きわめて重大なこの時局に対処をいたしまして、総理がもっと大きな、もっと民主的な心で日本の将来を見てほしいのであります。私は総理の御意見とは違いまして、たとい社会党が国会に三分の一以上を占めるといなとにかかわらず、また社会党両派の諸君がいやだとおっしゃっても、こちらから説いて、憲法だとか国防に関する制度のようなものにっいては、社会党の諸君とも十分話し合って、しかる上で民主的に決をとってきめるべきものであると思うのであります。私はいわゆる保守合同によって、無理に社会党をのけものにして作った五十万の軍隊よりも、われわれにとって多少の不満はあっても、みんなに納得してもらって作った十万の軍隊の方が、いざという場合にはるかに強いものであることをかたく信ずるものであります。自己の政権維持のために、憲法や防衛関係法のような大切な大切な国の基本法規を道具に使って、自由党工作の足がかりにするというごときは、短見浅慮、実に思わざるのはなはだしいものでありまして、国家の前途に対してまことに憂慮にたえません。たとい閣内、党内のいかなる有力者が進言しましょうとも、総理はそんなことに決して耳をかしてはならないのであります。そこで私はお尋ねをいたしまするが、私自身は、憲法改正については今もあまりあせってはいけないのであって、国内における世論喚起にもっともっと努力すべきであると思っております。従って必ずしも今すぐ憲法調査会を正式にこしらえる必要もないのではないかと思っておりまするが、しかしもし総理が憲法調査に着手しようとされるのならば、社会党が少しふえたからといって、これを情勢の変化と称して内閣に持ち込むのは、あまりにも非民主的ではないかと思います。あまりにも考えが狭過ぎ、小さ過ぎはしないかと思うのであります。むしろもとのままのお考えによって国会に置くことを提言なさるべきではないかと思うのでありまするが、御意見はいかがでありまするか、これが最後のお尋ねであります。
  220. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私も橋本君のお説のように、すべての問題が互譲と寛容の精神によって統一されていって成案ができるということは、全くいいことだと思います。けれども憲法の改正になりますと、ずいぶんたくさんの点に議論がありまして、それに反対が三分の一以上も加わっておれば、なかなか成案を得るのにひまがかかるだろうと思う。そうして成案を得るにはできるだけ早くして、どういう点を改正したいかということをきめて、それからそれを国民に示して、国民の納得を求めなくちゃならないのでありまして、あなたのおっしゃるのは、国民に納得と支持とを求めるということをできるだけ早くしろというお話でありましたが、国民の納得と支持とを求めるのには、憲法改正の案というものを持っていなければ納得と支持とは求め得られませんから、納得と支持とを求める案を得るには、やはり改正論者ばかりでもって、それで成案を得た方がいいと思っております。
  221. 橋本龍伍

    橋本(龍)委員 ただいまの御答弁については、もう一度お考えを願いたいと思います。実際社会党の両派がふえたといっても、それによって憲法調査特別委員会の両派社会党の委員数がわずかふえるだけでありまして、これが情勢の変化として内閣に置く、議会に置くということをきめる分れ目にはならないと思います。私は、どうせ話し合った上でも、決をとりながらきめていかなければなりませんが、なるべくこの問題は、初めから多くの人たちと話し合っていく方がよいと考えておるのであります。以上をもちまして私の質問を一応終りまするが、本日の答弁は実に不満であります。なお答弁が不十分であると思われます問題については、後に検討いたしまして、間がありましたならば、さらに質問をさせていただきたいと考えておるのであります。  最後に質疑を通じての私の所感を申し上げたいのであります。私は単なる党派心からする悪口でなしに、今日の鳩山内閣行き方があまりにも世俗への迎合が多く、外交に内致に失政を続けて、国の前途を誤まるおそれがありまして、日本政治の今日歩むべき道をじみちに歩んでいるものとは認めがたいのであります。やることは一つのようでありましても、その取扱い方や受け取られ方によっては、国家の将来に千里の開きを生じます。今日のような状態がいつまでも続くならば、国家の将来のために、真剣に鳩山内閣の退陣を要望するものであります。どうか総理初め内閣の各位は、虚心たんかいに今日の時局に対処する道を考えてみていただきたいのであります。それが真の民主政治の実をあげるゆえんでもあり、また諸君の待望せられる、いわゆる保守連携のためにも唯一の根本的な道でありますし、やがては国内にもっと大きな大同団結の機運を招来する源でもあろうことを申し述べまして、私の質問を終ります。(拍手)
  222. 牧野良三

    牧野委員長 本日はこの程度にいたしまして、次会は明七日午前正十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時五十七分散会