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1955-03-26 第22回国会 衆議院 予算委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年三月二十六日(土曜日)    午前十時二十六分開議  出席委員    委員長 牧野 良三君    理事 上林山榮吉君 理事 重政 誠之君    理事 中曽根康弘君 理事 小坂善太郎君    理事 西村 直己君 理事 赤松  勇君    理事 今澄  勇君       赤城 宗徳君    稻葉  修君       今松 治郎君    宇都宮徳馬君       北村徳太郎君    小枝 一雄君       楢橋  渡君    福田 赳夫君       藤本 捨助君    古井 喜實君       松浦周太郎君    三浦 一雄君       三田村武夫君    村松 久義君       相川 勝六君    植木庚子郎君       太田 正孝君    北澤 直吉君       倉石 忠雄君    周東 英雄君       野田 卯一君    橋本 龍伍君       平野 三郎君    阿部 五郎君       久保田鶴松君    志村 茂治君       田中織之進君    田中 稔男君       滝井 義高君    福田 昌子君       三鍋 義三君    柳田 秀一君       井堀 繁雄君    岡  良一君       片山  哲君    小平  忠君       杉村沖治郎君    川上 貫一君  出席国務大臣         内閣総理大臣  鳩山 一郎君         外 務 大 臣 重光  葵君         法 務 大 臣 花村 四郎君         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君         文 部 大 臣 松村 謙三君         厚 生 大 臣 川崎 秀二君         農 林 大 臣 河野 一郎君         通商産業大臣  石橋 湛山君         運 輸 大 臣 三木 武夫君         労 働 大 臣 西田 隆男君         建 設 大 臣 竹山祐太郎君         国 務 大 臣 大麻 唯男君         国 務 大 臣 杉原 荒太君         国 務 大 臣 高碕達之助君  出席政府委員         内閣官房長官  根本龍太郎君         内閣官房長官 田中 榮一君         法制局長官   林  修三君         大蔵事務官         (主計局長)  森永貞一郎君  委員外出席者         専  門  員 小林幾次郎君         専  門  員 園山 芳造君         専  門  員 小竹 豊治君     ————————————— 三月二十六日  委員井出一太郎君、小川半次君、犬養健君、伊  藤好道君、武藤運十郎君及び片山哲君辞任につ  き、その補欠として床次徳二君、今松治郎君、  植木庚子郎君、滝井義高君、三鍋義三君及び水  谷長三郎君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  昭和三十年度一般会計暫定予算  昭和三十年度特別会計暫定予算  昭和三十年度政府関係機関暫定予算     —————————————
  2. 牧野良三

    牧野委員長 これより会議を開きます。  昭和三十年度一般会計暫定予算昭和三十年度特別会計暫定予算及び昭和三十年度政府関係機関暫定予算の三案を一括して議題といたします。
  3. 赤松勇

    赤松委員 議事進行について。この際私は委員長所信をお伺いしておきたいと思います。と申しまするのは、先日来理事会におきましては、いわゆる暫定予算でもございまするし、ことに少数党政府でありまするから、われわれといたしましては、できる限り誠意をもって協力をしたい、こう思って予算委員会に臨んだのでございます。昨日も理事間の打ち合せでは、本日正十時より開会をする。なお念のため官房長官中曽根理事を通じまして、政府都合をお伺いしました。そうしますと、政府の方は十時より開会してもらいたい、そして十時にはぜひ出席をする、こういうお話でございました。しかるにこの委員会の状況を見ますると、定足数を欠いている。ことに与党諸君出席が非常に悪い。こういうことで、果してこの暫定予算審議をばスムーズに進めることができるかどうか疑わしい。従いまして、私はこのような状態のもとにおいてこの暫定予算審議を進めるということは、ことにわが党の田中織之進君が本日は第一陣に質問をするわけでございますが、かような状態のもとにおきましては、議事進行はできません。そこで委員長暫時休憩をして、直ちに各予算委員に対して厳重な警告を与え、ことに与党予算委員全員出席を私は.要求します。
  4. 牧野良三

    牧野委員長 暫時休憩いたします。    午前十時二十九分休憩      ————◇—————    午前十時三十三分開議
  5. 牧野良三

    牧野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。田中織之進君。
  6. 田中織之進

    田中(織)委員 第二次鳩山内閣が発足したばかりではありますが、私は、日本社会党を代表いたしまして、現内閣施政根本方針について質疑をいたしたいと考えるものであります。  鳩山さんは、今回の選挙で百八十五名の少数与党ではありますけれども、第一党を確保いたしまして、第二次鳩山内閣を組織せられたのであります。しかし第二次鳩山内閣顔ぶれを拝見いたしますと、残念ながら、選挙管理内閣であった第一次鳩山内閣当時とは若干顔ぶれはかわりましたけれども、あまり強力なる内閣であると見受けられない点は、非常にお気の毒ではございますが、一昨日鳩山総理はわざわざ野党の首脳部を歴訪せられまして、国会の民主的な運営について御協力を求められ、とにかく当面の政局を担当していかれようとする熱意を表明せられたのであります。その意味で、まずわれわれは、鳩山第二次内閣が当面何をなそうとしておるかということをお伺いいたしたいのであります。特に鳩山総理といたしましては、久しく政権につくことについての希望を持たれておったのが、一次、二次と政権を担当せられることになったわけであります。また鳩山さんは、前々内閣吉田内閣の六年間にわたる施政につきましては、個人といたしましてもかなりきびしい批判をされていたと思うのであります。その意味で、あなたはいわば念願かなって政権を担当せられるに当りまして、吉田政治を具体的にどういうように変改されていこうとするか、これを私はまず第一にお伺いいたしたいと思うのであります。  特に吉田政治のうちで、われわれ社会党といたしまして最も注目しなければならぬ点は、憲法条章に基いた政治というものが、吉田政治の末期において非常に乱れてきたということであります。憲法改正はなされなかったけれども、また憲法改正ということは、公然とは吉田内閣は打ち出さなかったのでありますけれども、憲法をそのままにいたしまして、実質的に憲法を破壊するところのいろいろの政治現象が現われてきております。現在の自衛隊も、われわれ社会党見解をもっていたしますならば、憲法九条に違反しておるところの違憲的な軍隊であるということも明白であると思います。そこでまず、吉田政府のこうした憲法無視政治の方向を、あなたはどういうように変えていかれようとするかという点についてお伺いいたしたいのであります。特にこの点につきましては、鳩山さんは二月二日の仙台市における演説会におきまして、過般の選挙で、もし民主党初め保守党が議会の三分の二の議席を占めたならば、憲法改正に着手いたしたいということを申されておったのであります。しかし選挙の結果は、御承知のように憲法改正に絶対に反対いたしますところのわれわれ両派社会党だけで百五十六名を確保いたしまして、憲法改正発議はできないということが明白になって参ったわけであります。これはいわば現行平和民主憲法をあくまで守っていくという国民意思の現われであると、われわれは考えるのでありますが、それにもかかわらず鳩山総理は、第二次内閣を組閣せられた後におきましても、依然として憲法改正についての意思をお捨てにならないようであります。私は、憲法改正をあなたがお考えになるということは自由であると思うのでありますけれども、少くとも憲法の第九十九条によりますと、天皇、摂政始め国務大臣国会議員、裁判官その他の公務員は、すべてこの憲法を尊重し、これを擁護していかなければならない義務が厳然として規定されておりまするから、その意味において、憲法改正のあなたのお考えとは別個に、あくまでこの現行憲法は守っていかなければならぬ。これはまた国政輝用の基本的な問題であると思うのでありますが、この点に対する鳩山総理の御所信を明確にしていただきたいと、かように考えるものであります。
  7. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 お答えをいたします。どういう心持で政治をやっていくかという御質問に対しましては、国民の声を聞いて国民とともに明るい政治をやっていきたいと思っております。ただいまの憲法を守れというお考えに対しましては、もとより憲法を守っていかなくてはならないと思っております。私は、ずいぶん前から憲法改正の必要を唱えておりました。その当時においては、憲法の九条を改正しなくては軍隊を持つことができないと思いました。そうして日本を防衛するためにほどうしても軍隊が必要だ、それには憲法改正しなくてはいけないと思いまして、強く憲法改正論を言っておりました。ところがその後憲法九条の解釈について、自衛のためには軍隊を持ってもいいという論に国論がなったと思っております。自衛のためならばよろしい、それがゆえに直接間接の侵略に対しては自衛隊がその防衛の任に当るというような法律が、衆議院を通過したわけでありますから、自衛のためなら軍隊を持ってもいいということは、……(「どこできまったのだ」と呼ぶ者あり)衆議院がそういうふうに決定しております。それでそういうようになったのでありますから、憲法改正の非常に緊急だという点は、やわらいだと思っております。しかしながら憲法の諸…において国情に合しない…もありますから、改正の念慮は捨ててはおりません。機会を得たならば改正をいたしたいとは思っております。憲法違反をしても政治をやろうという考えは毛頭ございません。
  8. 田中織之進

    田中(織)委員 政治の基本的な考え方としては、国民の声をよく聞いてやっていこうとすることは、これは政治の原理でありますから、その点についてはさらに過般の選挙における民主党公約を、どういうように実行されるかということについても、逐次お伺いをいたしたいと思います。ただ、ただいまの憲法条章に準拠して国政を運用するという点につきましては、遺憾ながら総理のただいまの答弁では、特に憲法第九条の点につきましては、自衛のための軍隊を持つことは憲法第九条に違反しないのだということは、すでに国論として決定をされた、その意味において憲法第九条の改正を含む憲法改正というものは、当面緊急なものになっておらないという総理の御見解を表明されたのでありますが、これは私はきわめて重大な問題だと思うのであります。なるほど自衛隊法は、あくまで憲法第九条を守ろうという立場からわれわれ社会党反対をいたしましたにかかわらず、当時の自由党民主党前身である改進党の諸君によってこれが国会を押し切られて、現実自衛隊が発足をいたしておることは事実ではございますけれども、これはあくまで憲法の第九条に違反をしないものであるということについては、いわば未解決の問題だ。こういうような形で憲法第九条の解釈をそのつど、そのつど変更することによって、都合よく解釈することによって、憲法は変えておらないけれども、実質的には憲法を変改するところのこうした自衛隊というようなものが創設されていく。さらには、憲法において保障されておりまするところの労働者基本的人権であるところの団結権その他に対しても制限を加える。さらには、公務員等政治活動についても、国家公務員法その他の法規の制定を通じて、実質的に憲法で保障されておる基本的人権が破壊されていく。こういうような傾向は、これは憲法改正を実費的になしくずし的にやろうとするもであるから、少くともこの憲法の第九十九条に示されておりますところのこの憲法を尊重し、これを擁護しなければならぬ義務が規定されておりますところの特に中心的な内閣総理大臣といたしましては、そうしたことは絶対に避けなければならぬ、こういう意味合いにおいて申し上げておるのでありまして、その意味から自衛隊の問題は憲法第九条に違反しない、当然認められるものだということは、これはいわば未解決の問題である。その意味からも、あなたがおっしゃられるように憲法改正を公然とやられるということならば、これはおのずから別問題であります。しかし今度の選挙の結果では憲法改正は正面切ってできないということは、あなたも認められるようにはっきりいたしておるのでありますから、私は少くとも自衛隊の問題についてもこれは憲法第九条に違反するという、少くと毛国会の三分の一の議席を確保いたしまする社会党意見というものは厳として存在しておる立場から見ますならば、この問題についての調整のために、現実的な解決のために総理が今後努力をしなければならぬ根本的な責任があると私は思うのでありまするが、その点に対する総理の御所信を重ねてお伺いをいたしたいと思うのであります。
  9. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先刻答弁をしたことによって大体御了承を願いたいと思いますが、第九条はやはり改正をした方が明瞭になりますから改正をしたいと思っております。その改正をしたいという努力は続けていくつもりであります。
  10. 田中織之進

    田中(織)委員 憲法の第九条は改正をした方が明確になると言われる総理のただい左の答弁で、事態はやや明確になったわけでありますが、それではあなたは憲法改正意思をなお捨てておらないのでありますけれども、その中心的な問題として憲法第九条をお考えになっておるようであります。そのほかにあなたがもし憲法改正が行われる時期には、どの点を改正せられようとお考えになっておるのか、またその改正手続はどういうように進められようとしておるか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  11. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 憲法改正の諸点につきましては、委員会をこしらえましてよく研究をしたいと思っております。(「それはどこへ作るのか国会の外へ作るのか、委員会を作るのか」と呼ぶ者あり)わが党の間におきましてまず作っていきたいと思っております、とても今議会内に作りましてもよき案を得ることができないと思いますから。
  12. 田中織之進

    田中(織)委員 民主党の中に、憲法調査のための機関を設けて、憲法改正についての案を策定せられるということは、これは民主党の党内問題でありますから、私らは干渉いたしません。ただここで総理確認を求めておきたい問題は、あなたの方の党内では、憲法改正問題について超党的な調査会というようなものを国会に作られるとか、こういうような御意見があるようにわれわれ伺っておるのでありますが、これはただいまの総理答弁で、民主党の内部に作るということで明確になったわけでありますが、特にその発議の問題については、御承知のように憲法の九十六条に「この憲法改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。」こういう規定が明確にあるわけであります。憲法改正発議は、国会が各議院の総議員の三分の二の賛成を得て、国会がこれを発議するということが明定せられておるのでありますから、私の確認を求めたい点は、少くとも現在憲法改正反対をいたしておる両派社会党の百五十六名がある以上、この憲法改正発議——あなたの方でいろいろの憲法改正案を用意せられることはわれわれこれを阻止する道はないわけでありますが、少くとも現在の国会議席の分野においては、憲法改正ということはできないものだとわれわれは憲法の九十六条の当然の帰結として考えておるわけでありますが、その点については総理の方でももちろん異存のないことだと思うのでありますけれども、一応確認をしておきたいのでありますが、いかがでありますか。
  13. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 田中君のおっしゃる通りであります。
  14. 田中織之進

    田中(織)委員 憲法改正の内容についてもいろいろ民主党と申しますか、民主党前身の改進党、あるいは現在の民主党幹事長である母君が、自由党にまだおられた当時から持たれておるたとえば天皇の地位をどういうように変えるか、あるいは家族制度の問題についてどう触れるかというようないろいろな案が示されておるようでありますが、この点は先ほどの総理答弁で、民主党内で案を固めたいということでありますから、この点についてはいずれ別の機会にお伺いすることにいたします。私は、この質問最後といたしまして、特に総理も先ほど認められたのでありますが、憲法現実に今の議会勢力関係においては改正することが不可能だ、そういうことになりますならば、少くとも現在の憲法を尊重し、これを擁護する任務が現内閣に課せられておるという点を、特に国政運用の基本的な問題として、総理は絶えず念頭に置いていただきたいということを最後に申し述べまして、次の質問に移りたいと思うのであります。  先ほど総理は、第二次鳩山内閣施政の根本的な心構えといたしましては、国民の声をよく聞いてやりたいということでありますが、私が先ほどお伺いいたしましたように、その具体的な現わし方というものはどういうようにやっていかれようとするか。私は、あなたがまだ政権につかれる以前から、吉田内閣政治というものに対して非常にきびしい批判をなされておったのであります。これは外交についても、内政につきましてもそうであったと思うのであります。そういう意味で、また今回の選挙国民は、比較多数でありますけれども、民主党に第一党を与えたということは、少くとも鳩山さんの吉田政治を変えよう、具体的には選挙公約を通じて現われて来ておるわけでありますが、そうしたものを、いわば選挙公約を具体的にどういうように実行していこうとされておるか、もっと具体的にその点についての構想をお示しを願いたいと思う。
  15. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 大体を言えば、国民生活の安定それから平和外交推進をしたいというように考えておりますが、昨日大蔵大臣が簡単に説明いたしましたように、予算骨格について話しましたようなあのような工合にして予算面に現われて来るだろうと思います。
  16. 田中織之進

    田中(織)委員 国民生活の安定と平和外交推進の二点で進めて行きたいと思う、こういうことでございますが、国民生活安定の立場からの施策といたしましては、もちろん選挙のときに五百億の減税問題、さらに四十二万戸の住宅建設、その他いろいろ羅列せられておるのでありますが、残念ながら昨日われわれに示されました昭和三十年度の骨格予算構想というものの中には、議事進行に関連いたしまして自由党小坂君からも指摘がされましたけれども、自由党内閣で編成いたしました二十九年度の予算数字はございますけれども、現実にそれをどういうように具現するかということの数字が全然出ておらないのであります。これは、昨日の大蔵大臣との質疑関係から推理いたしますならば、まだ目安がつかないというふうにわれわれ伺ったのでありますが、少くともこの骨子によりますと、一兆円に予算の総ワクをきめる、それから減税については、七月から本予算が実施されるものとして三百二十億の減税をやる、反面地方税あるいはいわゆる間接費等関係増税分を含んだ間接税の増徴、こういうようなものが出ておるのでありまして、全体としてはたして公約実行に向けられる財源が、大まかに見ましてもどの程度あるかということは、少くともこの構想を策定せられる以上私は出てこなければならないと思うのでありますが、その点について、今大蔵大臣はおらぬようでありますが、総理の方では三十年度の予算骨格予算の編成の基本的な方針といたしまして、公約実行分に新たに向けられる財源をどういうように確保したらいいかというようなことについて指示を与えられているでしょうか、どうでしょうか。
  17. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 後刻大蔵大臣出席しましたら、その際に御答弁をいたすことにいたします。
  18. 田中織之進

    田中(織)委員 それでは大蔵大臣も今お見えにならぬようでありますから、先ほど総理の御答弁になられた平和外交推進の問題について、総理からお答えを願える部分についてお伺いをいたしたいと思うのであります。  昨日本予算委員会質問の第一陣に立たれました自由党犬養健君が、外交問題に重点を置いた質問をなされたのでありますが、その場合にいわゆる米英自由主義国家群と、それから総理考えておられる中ソ両国に対するいわゆる共産主義圏に対する国交調整の問題とは、二元外交ではないか、こういう非難をされておったように私伺ったのでございますがこれは鳩山内閣外交方針というものが一貫したものを持っておりまするならば、私はこの二元外交という非難は出てこないと思うのであります。そこで総理も昨日犬養君の質問に対しましては、その点はいわゆる自主外交——ら社会党立場から見るならば、それに自主中立外交中立が加わるならば非常に明確になってくると思うのでありまするが、総理はややそれに近いような発言をせられたので、私は以下その点に関連をして質問を申し上げたいと思うのであります。  総理も昨日述べられましたように、従来のアメリカ一辺倒外交政策、いわゆる米英自由主義国家群とだけ手を結べば、共産主義圏を敵に回してもいいんだというような従来の外交は改めなければならぬ、こういうことを申されたのでありますが、その意味において、昨日犬養君が質問をされたように、中ソとの国交調整問題の手続がどうだこうだ、こういうようなことはわれわれは問わない。もちろん総理が取り上げられたような形で、ソ連及び中国との国交調整がすみやかに進められることをわれわれ支持する立場に立ちたいと思うのでありますが、そこでその反対の側に立っておるところのアメリカ陣営との外交調整については、これは従来の吉田内閣外交方針をそのまま踏襲されたのでは、あなたが新たに取り上げられた中ソ両国との国交調整もできなくなると思うのであります。従来の米英陣営との外交関係をどういうように今後鳩山内閣の手によって修正していくというか、調整していこうとするのか、その点についての総理構想伺いたいのであります。
  19. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外交方針は、自主独立を堅持しつつ、自由主義国家群と緊密な関係を保持していきたいと思っておるのでありまして、親米政策をとっても、自主独立を忘れてアメリカの言う通りになるという意味ではありません。  それからアメリカやイギリス、つまり自由主義国家群と緊密な提携を続けていくということはやはり必要だと考えております。ただ、同時にソ連や中共とも平和外交推進していきたい、貿易をして仲よくやっていきたいという気持であります。
  20. 田中織之進

    田中(織)委員 米英自由主義陣営に片寄らないで、同時に現在国交の回復しておらない共産主義圏等との間の外交関係が回復するように、並行的に進めたいという考え方は、原則としてわれわれも賛成であります。そこで特に私、これはどちらから先にお答えを願ってもいいのでありまするが、たとえばソ連との国交調整を始める場合に、領土返還問題が当然起って参ります。昨日は歯舞色丹の両島の返還問題と千島——南樺太の問題については、千島と若干違った取扱いをしなければならない問題が起るかもしれないと思うのでありますが、総理はわけて考えられておるようでございますが、その場合に、歯舞色丹返還はすぐにも求められるけれども、千島返還の問題は、サンフランシスコ講和条約によりまして一応日本領土権というものが取り上げられているから、歯舞色丹返還を求めるようなわけにはいかないというような考え方は、私はこれはちょっとおかしいと思う。それはなぜかといえば、この領土返還問題を通じて考えられる問題は、勢いサンフランシスコ講和条約、さらにはこれから私が御質問を申し上げたいと思っておりますが、たとえば防衛分担金の削減交渉の過程からいたしまして、将来アメリカの駐留軍が全部日本から撤退するということと関連をいたしまして、安保条約の改正というような問題が私は出て参ると思うのであります。その意味で、すでに総理が、まだ準備の段階ではありましょうけれども、ソ連との国交調整関係からいたしまして、サンフランシスコ講和条約なり、あるいは日米安全保障条約なり、こういうようなものについても、アメリカとの間の外交の過程におきましてこれの改訂問題等を当然持ち出さなければならないことと私は思うのでありますが、そうした点について総理は具体的に構想を持っておられるかどうかという点をさらにお伺いをいたしたいと思います。
  21. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外務大臣から答弁をしていただきます。
  22. 重光葵

    ○重光国務大臣 日ソ国交の正常化という問題につきまして、これから交渉をいたしたいと考えております。その交渉の上でどういうことが起るかということを一つよく突きとめつつ、わが方の立場を維持していきたい、こう考えております。しかしサンフランシスコ条約は、日本の今日の国際的地位を作ったものでありまして、これを軽々に変更するという考え方は持っておりません。さよう御了承を願います。
  23. 田中織之進

    田中(織)委員 私は外交上の具体的な問題については外務大臣から御答弁を願わなければならぬことはわかりますが、たとえば今度の日ソの国交調整の問題等につきましても、昨日のこの委員会における質疑の過程を通じて明らかになりましたように、まず第一に総理ソ連側の関係者からの申し出をきわめて適切に取り上げられてきている点は、私は非常にけっこうだと思う。そういう意味合いで、対米関係の問題につきましても、総理自身としても、従来の吉田内閣時代のような、全くアメリカに従属したというか、そうした外交ではいけないという点については、あなたもお考えになっておると私は思うので、そういう意味で、対米外交についての従来の古田方式というものを、あなたは少くとも鳩山内閣としての新しみというものを出そうというお気持はあろうと思うのでありますが、そういう意味でごく概括的な問題でけっこうなんですが、総理からお答えを願えませんでしょうか。
  24. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 先刻申しましたように、自主独立を堅持しつつ米英と親密な関係を継続したいと言ったのでありまして、自主を忘れて外交をするはずはございません。
  25. 田中織之進

    田中(織)委員 それでは具体的な問題でも総理お答え願える問題もあろうかと思いますので、逐次四、五点について、対米外交の過程において現在懸案になっておる問題について伺ってみたいと思います。  その一つは、昭和三十年度の予算編成とも深い関係を持って来ておるのでありますが、いわゆる占領中のアメリカのガリオア、イロア資金によるところの対日援助費の返済問題、これは吉田内閣時代から対米関係において懸案になっております。今お見えにならぬようでありますけれども、ことに現内閣の農林大臣である河野一郎君は、日本自由党時代には特にこの対米債務の問題については鋭く吉田内閣に対して食い下った問題でございます。見受けるところ、暫定予算の中にもこの点についての頭も出ておらないようでありますが、これは当時の河野一郎君の論法をもっていたしましても、われわれ国民の側からいたしますならば、当時援助物資というものにマル公で代金を支払わされている。見返り資金はどういう方面へ貸し付けされて、それがどういうような形で現在処理されておるか明確ではございませんけれども、こうしたものがどうしてもアメリカに返済しなければならない債務であるということは、われわれは河野君と同じような立場において現在もなおそういうようにはとっておらない。債務であるというふうには考えておらない。その意味から見まして、具体的な問題に入りますけれども、この対米債務の処理の問題については、鳩山総理としては吉田内閣当時の、これはアメリカにどうしても返さなければならぬものだというお考えを今なお持っておられるのかどうか。この点は対米外交の面で大きな問題だと思うのでありますが、総理のお考えをお伺いしたいと思います。
  26. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外務大臣から答弁をしてもらいます。
  27. 重光葵

    ○重光国務大臣 対米債務が債務である以上は返さなければならぬ、こういうことは一般的に当然のことであります。今お話のガリオアの問題も、前内閣時代からこれは返すべきものであるという大体の建前をとって交渉をいたしております。しかし御承知通りに、ガリオアは戦後の経済援助という意味を非常に含めておるものでありますから、その返済の条件等は、わが方もいろいろ考えなければならぬ。そこで交渉を数回続けておりますが、今日までまだ解決を見ませんので、交渉中と申し上げるよりほかに方法はございませんが、大体のことは、米国側はこれは戦後の経済援助の方式によって、ドイツに対しても同じようなことがあるから、その方式でやりたいという考え方をもってわが方に接触いたしております。さらにまたわが方といたしましては、それよりも有利な条件をもって解決したいという考え方をもって目下交渉中でございます。いずれある時期が参りまして交渉が妥結の上は、詳細に御報告を申し上げます。
  28. 田中織之進

    田中(織)委員 この問題は、ただいまの重光外務大臣の御答弁を伺っておりますと、大体吉田内閣当時と同じような見解のもとになお折衝を続けられて行こうとする。内閣はかわりましても、外務省の事務当局はそのまま接触を持っておることだと思うので、交渉の経過は今外務大臣の御答弁のような経過をたどっておると思うのでありますけれども、この問題については、財政法上からも私は大きな疑義のある問題だと思う。ガリオア、あるいはイロア資金の返済の問題については、これを返済しなければならぬ。そうなると、法律上でいえば一種の債務ということになる。国が返済をしなければならぬ債務、借款をやるという場合には、当然国会の議決を経なければならぬ。吉田内閣時代に当時の小笠原大蔵大臣は、返済のときにこれは国会予算の議決を経るんだからそれでいいという意味答弁をなされたことがありますけれども、私は対米交渉の基本的の問題といたしましては、占領中という特殊な事情とはいい、国が外国から借金をする、こういうことでありますならば、占領中でも日本の財政法というものがあったわけでありますから、そうした債務を受けるについては当然国会の承認を経なければならぬ。その手続が実は経ておらない、こういう問題だけに、特にこの問題については非常に内容にも詳しい河野農林大臣が閣僚の中におられるわけでありますから、私はこうした問題につきましても、ただ吉田内閣からの引き継ぎ事項としてこれを処理するというようなことではなくて、鳩山内閣鳩山内閣の自主的な立場で——自由党内閣の延長ではないのでありますから、独立した立場に立ってこうした問題を検討してもらいたいと思うのでありますが、その用意があるかどうか、重ねて伺いたいと思います。
  29. 重光葵

    ○重光国務大臣 むろんかような問題は、新しい内閣において十分に研究をいたさなければならぬと考えております。しかしながらガリオアのできた当時の事情は、御存じの通りの敗戦の結果、占領国の行政中に起った問題でございまして、その後にこれは外交交渉としてすでに取り上げられた問題でございます。従いましてこの外交交渉はそのまま続ける以外に方法がございません。外交交渉は全然対外関係を無視価することはできませんので、それを基礎として、交渉をできるだけ有利に導こうと思って努力をいたしている次第でございます。
  30. 赤松勇

    赤松委員 先ほど委員長より、大蔵大臣は参議院におきまして暫定予算の提案理由の説明だけをやりたい、五分だけ参議院にやらしてもらいたいということで、私は五分という約束で委員長との話合いに了解をしたのでございますが、すでに三十分以上であります。ことにきょうはわが党の代表質問である。当面の暫定予算の責任者である大蔵大臣が、ただ提案理由の説明だけをするということで行って、今質疑に入っている、そういう不信義なことは許されない。これについて委員長どう思いますか。
  31. 牧野良三

    牧野委員長 ごもっともでございます。よって参議院に対して厳重に抗議を申し込ましております。御了承を願います。質疑をお続け願います。
  32. 田中織之進

    田中(織)委員 持ち時間を経過してしまって、大蔵大臣質問を残すわけにいかないわけですから……。
  33. 牧野良三

    牧野委員長 田中君、ほかの大臣に質疑を続けてください。なるべく時間を尊重したいと思いますから、どうぞ。——今曾祢益君か質問で、すぐこちらにお送りすると向うから言ってきましたから、ちょっとお待ちください。——田中織之進君。
  34. 田中織之進

    田中(織)委員 大蔵大臣がこちらに向ったそうでありますから、質問を続行いたします。  これも対米交渉の具体的な問題として、現に現内閣の取り組んでいる問題であります。これまた昭和三十年度の予算編成と深い関連を持ってくるのですが、防衛分担金の削減の交渉は、具体的にどういうようになっておるでありましょうか。これは選挙の場合の現内閣としての一つの公約——われわれは防衛庁の関係及び防衛分担金の全廃を実は主張する立場に立っておるのでありますが、現内閣といたしましても選挙中から、防衛分担金と防衛費の総ワクは前年度の千三百なにがしを上回らないものに押えたい——昨日の大蔵大臣予算の骨子に関する構想の中にもその点がうたわれておるのであります。新聞紙等によりますと、この問題は相当難航いたしておるようでありますが、まずこの防衛分担金の削減交渉は具体的にどういうような段階にまで進んでおるか、この点をお伺いいたしたいと思います。
  35. 重光葵

    ○重光国務大臣 暫定予算及び本予算編成の上において、防衛庁費及び防衛分担金の問題がアメリカとの関係になっておるということは、まさにその通りでございます。そうしてこの問題につきましては、政府といたしましては、予算の編成上大体前年度のワク内でこれをやりたいという方針を持っております。しかしアメリカとの関係において話し合いをしなければならぬ部分は、これはどうしても向うの了解を得て進むことが当然のことでございます。今その了解を得るために、そうした政府考え方を十分了解してもらうために、手続をいたしております。交渉をいたしております。その交渉の結果は、幾らになりますか、その結果を見た上ではっきりまた御報告を申し上げる機会があると考えます。
  36. 田中織之進

    田中(織)委員 交渉過程にあることは私も承知いたしますが、政府の方といたしましても、後ほどまた伺いますけれども、実はこの防衛分担金の削減分だけは、むしろ公約実行財源に向けたいというようなお考えも示しておられるようでありますが、われわれの聞くところによりますれば、大体米軍が現在何個師団駐留しておるかわかりませんが、一個師団日本から引き揚げるその関係で大体百八十億円が浮いてくる。それから昨年度から現象として現われておるようでありますけれども、アメリカ側が負担しておるいわゆるドル負担分が、二十九年度から非常に激減しておるようにわれわれ伺っておるのであります。その激減しておるということは、大蔵省から出た数字だということに新聞紙は報道いたしておるのであります。たとえば特需の関係から見たアメリカ駐留軍のドル払いというものがどの程度になっておるかという数字を見ますると、大体二十八年は一月から十二月までの月平均が六千四百八十万ドル、それが二十九年度になりますと、月平均で四千六百七十万ドル、三十年に入りましては一月が三千五百五十万ドル、二月が二千五百六十万ドル、こういうように二十八、九、三十年と、著しく特需のドルで受け入れているものは減少して来ているのであります。これは私は駐留軍のドル払いによる特需関係だけではなしに、それ以外のものもこの特需の中には入って来ていると思うのであります。そういう関係から考えますると、二十八年度の特需関係から推定すると、米側のドル負担が大体四億二千万ドル、二十九年度は二億五千万ドルと減っておる。これは一月、二月の推定でありますけれども、実勢から推しますると、大体三十年度は一億二千万ドル程度に激減をするのではないか、こういうように見ますると、どうも交渉の過程から見て、防衛費が九百億を上回ってかりに一千億になれば、その半分の五百億は向うはまけてやろう、こういうような態度に出ておるというようなことも新聞紙で報道せられておるのであります。これは行政協定の関係から見て、一千百億要るものなら、そのうちの二百五十億を日本側が負担して、あとは米側がドルで負担する、こういう取りきめから出発したものだと思うのでありまするが、特需の関係から推算したものでありまするけれども、米側の負担分が非常に減少しておるということで、駐留軍は全く日本側の分担金で日本へ駐留しておるというようなことは、これは行政協定の内容を著しく向う側が変更してきているものだということになると思うのであります。この点についてのもっと確たる交渉の内容をこの際お示し願えないでしょうか。
  37. 重光葵

    ○重光国務大臣 今お話のような数字等については、これは慎重に検討を要する問題だと思います。特にさようなアメリカ側の支出等については、これはアメリカ側の的確な材料を入手する必要がございます。さようなわけで、実はこの交渉において、専門家が向うとこちらと顔を突き合せてそういうような数字を十分検討している状況でございます。その上で日本側に有利な材料はむろんこれは提出して、われわれの希望、政府の希望が貫徹するように努力を今も進めているわけでございます。しかしその数字の内容に至りましては、今私どもはっきり記憶をいたしておりません。また向うからそういうことについて一々的確な材料を今入手中でございますから、まだ申し上げる段階にありませんことを御了承願います。
  38. 田中織之進

    田中(織)委員 この点は実は総理からお答えをできれば願いたいと思うのであります。こういうことは外務大臣の言われることも私無理もない点もあると思うのでありますけれども、向う側の部分は向うさんの方で数字を出してくれなければわからないのでは、これは対等の立場で日米行政協定あるいはそのもとの安全保障条約というようなものができているということにはならないと私は思うのです。その意味からみて、われわれがアメリカのドル負担がどの程度になっているかということの一つの間接的に知り得るものとしては、やはり特需がどれだけドルで落ちているかということをつかんで推算するよりしようがないと思う。確かにこれは減少していることの一つの証左として資料としてわれわれは見られると思う。そこで総理にお伺いしたいのは、この防衛分担金の削減交渉も現内閣公約の一つでありますけれども、どうもわれわれの見るところでは非常に難航している。しかし対等の立場に立って考えれば、おそらく政府側が希望している二百五十億円程度を削減してもらいたいというようなものは、その前池五百億を削減してもらってもいいような実は一方の数字が出てくるわけです。公約実行立場から、これは腰を据えて思い切ってやられた方がいいと私は思うのでございますが、それに関連をして行政協定であるとかあるいは安保条約であるとかいうようなものは、当然改訂を加えてこなければならぬ情勢はすでに出ていると思う。そこで私が一番最初にお伺いをいたしましたところの対米外交の面におきましても、こういう現実の問題の解決を通じて、基本になるところの講和条約なりあるいは安全保障条約なり、さらにそれに引き続きできました行政協定あるいは昨年押しつけられたところのMSA協定、こういうものをほんとうに自主独立立場からアメリカ側に改訂をするような要求を現内閣としてやられる根本的なお気持があるかどうか。この点は一つ総理からお伺いをしておきたいと思います。
  39. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 現在そういうような点については考慮をしておりません。
  40. 田中織之進

    田中(織)委員 現在対米関係においていろいろ現内閣が交渉しておる案件の締めくくりが、やはり私は行政協定なり安保条約なりあるいはひいては講和条約の問題にまで及んでくると思う。すでに現実に及んで来ている問題である。それだからこれを考えていないということであるならば、残念でありまするけれども鳩山内閣の対米外交の基本方針というものは、従来のまま、どちらかといえばアメリカに優位性を持たした形の外交をそのまま続けていこう、こういうような実は印象を、これはただ単に私が受けるだけでなくて、国民が受けると思う。この点はアメリカに気がねせずに、中ソとの国交調整問題を勇敢に取り上げられた鳩山さんとしては、この面をやらなければ、ほんとうの自主独立外交というものは生まれてこない。私はこの点から一つ総理にとくとお考えを願いたいと思うのでありまするが、いかがでしょうか、くどいようでありますが、重ねて……。
  41. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまは、先刻申し上げましたような考え方でおります。
  42. 田中織之進

    田中(織)委員 聡明な鳩山総理の日ソ国交調整問題に対するような熱意があれば、これは私はできないことはないと思うのでありますが、非常に残念であるし、その意味から見れば、国民は非常な失望を禁じ得ないことは、国民とともに遺憾に思いますが、時間もありませんので、次の質問に移ることにいたします。  なお、外交問題と関連を持つのでありますが、経審長官がおられましたならば、これも前内閣からの引き継ぎの問題でありますMSA協定に基く余剰農産物の受け入れの交渉が、その後どうなっておりますか。これもやはり予算の骨子によりますると、大体この関係から来る見返り円二百億を財政投融資の原資に充てるように大蔵大臣は示されておるのでありまするが、われわれの承知するところで、これは吉田内閣時代でありますけれども、五千万ドルのいわゆる小麦の関係から見ました三十六億の見返り円、これのうちアメリカ側の承諾をした部分はわずかに九億円である。従って財政投融資の原資に充てようとしておる二百億は、その新しい部分であろうと私は思うのでありますが、果してこういうようなものは、向うが依然としてやはりひもつきを主張しておるかどうか。そういうような形で現内閣としても、選挙の前、選挙中あるいは選挙のあとにおきましても、たとえばドル条項の問題であるとか、あるいは見返り円の余剰農産物の贈与分に対する使用についての自主的な運用ということについて、強く意見を出しておったように考えるのでありますが、その後の経緯がどういうようになっているかということについて、外交問題に関連をした問題でございますので、この際伺っておきたいと思うのであります。
  43. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいまの御質問お答えいたします。MSA援助の五千万ドルの問題と、それから余剰農毒物の一億ドルの問題、これは別になっておりますから、それを別にお答えいたします。  五千万ドルの問題は、昨年自由党内閣のときに、三月と記憶しておりますが、アメリカとの間に協定ができまして、そのうち一千万ドルが譲与される。あとの四千万ドルについてはいろいろ話がありまして、当時の協定といたしましては、贈与の分についてはよく相談をするということの申し合せがありますから、その線に沿って、ただいまやっておるわけであります。  それから昨年の十一月、自由党内閣時代に協定いたしました一億ドルの問題、これはアメリカの余剰農産物を一億ドル買う。そのうちで一割五分、千五百万ドルはギフトとして贈与される。あとの八千五百万ドルのうちの七割は、日本側においてこれを長期に借りて使用する。あとの八千五百万ドルの三割というものは、アメリカ側が日本において使用する。いずれもこれを日本政府が買い取りまして円として支払う、借りる、こういうふうな申し合せがあったのであります。ところがそこに二つの問題がまだ残っておりまして、一つは、この円については、支払いのときにドル・クローズがつくかというふうな問題が解決されていなかったのであります。もう一つは、金利の問題が解決されていなかったのであります。その二つの問題につきまして、現内閣はこれを受け継ぎまして今交渉いたしておりますが、ドル・クローズがつくものとすれば、むしろドルで払った方がいい、こういうことの建前から、将来ドルの借款にしたい、こういうふうな方針で進んでおります。それからドルで払うということになれば、円で払うときよりも利息が一分安い、こういうことでありますから、その方針のもとで、ただいませっかく折衝中であります。以上現況を申し上げます。
  44. 田中織之進

    田中(織)委員 ドルで払うということだといたしますと、大体どのくらいの期間で払うというお話になっておるのかという点と、もう一つは予算の骨子に示されておる二百億という、これは円で計算したものでありますが、それは大体この年度のどの時期に財政投融資の原資として組み入れられる見込みであるか、この点を高碕さんからお客えを願いたいと思います。
  45. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 大体七割の分は、日本金直しますと約二十四億になるわけであります。それは三年据え置きの四十年年賦というふうなことで今交渉しておるわけであります。その妥結の時期によりましてその金を見返り資金として予算の中に繰り入れたい、こういうことでただいま交渉中でございます。
  46. 田中織之進

    田中(織)委員 先ほど大蔵大臣がお見えにならないので、党内での割り振りの私の時間がだいぶ超過いたしましたのでありますが、党の代表的な質問でありますので、特に、先ほど総理からお答えになった公約実行の問題についての予算上の関係についてお伺いいたしたいと思うのであります。もし総理からお答え願えるような場合には、総理すわったままお答え願ってもけっこうであります。  国民が一番期待しておるのは、減税と住宅のいわゆる四十二万戸の建設、まあそのほかに物価の引き下げの問題であるとか、その他の公約もございますが、一番代表的なものとしてこの二つを国民が期待いたしておるのでありますが、どうもわれわれ政府側が示しました減税の要綱を検討して参りましても、残念ながら当初五百億ということ、これは平年度だということで、三十年度は三百二十億だ、こういうことで七月から実施するというように出ておるのでありますが、この減税の半面、御承知のように、間接税の面で二級酒の増石と砂糖の二十万トンの輸入増加によって二百億、これはすでに三十年度において増収をはかろうということになっております。これは一つは緊縮財政の面から見て、当然あらゆる面における消費節約というものを伴わなければならぬが、私は一種の消費奨励のような形になると思うのでありますが、そういう意味で、地方税における相当の増税的な増収という問題は別問題といたしましても、三十年度国税の両だけで三百二十億の所得税を中心とした申しわけ的な減税の裏に、すぐ砂糖と二級酒の増石による間接税の増徴で二百億を増収するということは、結局国民のふところには幾らも減税にはなって現われないと思うのでありまするが、この点について大蔵大臣は、それでもなおこの間の本会議の農業所得に対する質問では、減税減税、砂糖その他の消費税の増徴による部分は何か社会保障にでも振り向けられるようた答弁をなさっておったのでありますが、私はやはり減税問題は減税問題として、国民のふところから国に納める税金が幾ら少くて済むかということ、国民減税というものの理解はそういうように単純にいたしておると思うのでありまして、果してそういう点から見れば国民の期待に沿えるものであるかどうかという点に疑問なきを得ないのでありますが、減税案についてのもう少し具体的な内容をお示し願いたいと思います。
  47. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ただいまの御質問お答えいたします。砂糖や酒の税で間接税を増収する、その点だけをとりますと、これはもとより考えなくちゃならぬ点がありますことは御説の通りだと思うのであります。ただ今日日本の税制を見ますと、特に戦後におきまして、所得税、直接税中心になっておるのであります。従って特に直接税が非常に重いというふうに私は考えております。そうして今日の日本の国情は、特にすべてこの財産といいますか、資産をいろいろな関係において失っておる。国民すべてがごく大ざっぱに言えば勤労大衆、こういうふうな形に今日日本の国情がなっておるときでありますから、ある程度税を間接税に持っていく方が今日の日本の国情には合うであろう、こういう考え方が一つ基本にあるのであります。特に今回のこの減税に関連して、具体的の場合につきましては、できるだけ経費の節約、まあ補助金等も削ります。そうして歳出の重点的かつ合理的、効率的な使用によってできるだけ歳出をカットし、かつ節約によって財源の確保に努めるのでありますが、なおかつしかしそれで総合的に見まして不足する場合は、酒につきましては今日いろいろ密造等もあります半面需要も多い。それから砂糖は相当やはり今日値段も高いのであります。ですからこの輸入の増加をはかる。そうすると自然それによって消費者の砂糖の値段は下る、こういうことも考えて——むろんそういうことをしないことが一番よろしいかもしれないが、日本の今日の国情では、総合的に考えてみましてすべてがいいというわけにも参りませんので、そういう点を考えていこう。どういうふうにそれがやれますか、今数字を示されましたが、今後十分検討を加えた上で出したいと思います。
  48. 田中織之進

    田中(織)委員 だんだん時間が過ぎていくのでありますが、減税の問題についてもどうも大蔵大臣の説明では納得がいきかねるのであります。時間がありませんから、いずれ他の同僚から質問してもらいたいと思いますけれども、たとえば今度の基礎控除が七万円から八万円に一万円引き上げられるという関係、それから税率の点から見ましても、月割にいたしまして二万五千円以上の給与所得者は、確かに大蔵省の原案によっては今度は若干軽くなるわけであります。これもきわめてわずかであります。ところが給与生活者のうちで、二万五千円以上とっておるのが大体二五%、残りの七五%というのは二万五千円以下です。これは今度の減税によっては何らとにかく均霑をしない。反面、たとえば五百万円の預金の利子で食っている人たちに対する今度の減税処置によりますと、これは年間五十万円のいわば減税という恩典を受けるわけであります。そういう意味から見まして、これは現内閣公約として掲げました減税案ではありますけれども、ほんとうの下積みになっておる国民の各階層——俸給生活者だけではなく中小企業や農村の関係においては、全く均霑しない減税案、羊頭狗肉の案だということを私は指摘しておきたいと思うのであります。その証拠には、何と申しましてもいまだにその他の公約に関する、たとえば住宅政策の四十二万戸の増設——昨日も大蔵大臣はここで言明されたのでありますが、一体四十二万戸の住宅建設をやるということになっておりますが、新聞紙等の報道によりますと、民間の住宅建設を促進するというだけでは、まるきり四十二万戸の住宅を建てるという公約の実行にはならないのであります。少くとも四十二五尺これを公営住宅でどんなちゃちなものを建てるにいたしましても、一千億円という金がいると思う。まだ前内閣時代の数字予算の骨子には出ておりますが、四十二万戸の住宅建設を促進するためにという言葉を書いてもいいと思います。国民に何か公営住宅を建ててやるようなそういうまやかしは言わない方がいいと思う。四十二万戸の住宅建設を促進するためには、この点だけはいくら予算がきまらないとしても、担当の建設大臣もおるわけでありますが、一体幾らの財源を見ているか。この点を大蔵大臣からお示しを願いたい。
  49. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。この四十二万戸建設につきまして、四十二万戸新規に新しい家を政府の手で建てるという意味でありませんことは、御指摘の通りであります。私ども考えておることはこの十年間に何とかして大衆の住宅難を解決したい。その方法は私はそう問わなくても、実現可能なことでやっていく。十年たてば一応大衆が住宅についてそう心配しなくても済む状態日本を持っていけばこれは大へんいいことだ、こういう見地に今立っておるわけであります。従いまして今度の四十二万戸のうちに、やはり民間住宅——従来二十万戸近いものがあったと記憶するのでありますが、そういうようなものを考えておることは申し上げるまでもありません。政府が直接建てます住宅は、公営住宅、それから住宅公庫によるのでありますが、これはただいま建設省とも相談をいたしております。どういうふうにやっていくか、目下十分検討を加えております。
  50. 田中織之進

    田中(織)委員 この昨日お示しになつた構想によりますと、住宅建設のための財政資金として総類二百八十億は前内閣時代にすでに支出されているのでありますが、現内閣は少くとも目安はあるのであろうと思うのでありますが、どのくらい増額しようとされておるのでありますか。
  51. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは今申しましたように、建設自体について建設省の意見も十分聞いて、そうしてきめなければなりませんから、今どうということははっきり言えませんが、まあ私大ざっぱに言って相当な金額はとれる、たとえば百億近いものを計上したいと思っております。
  52. 田中織之進

    田中(織)委員 全くあきれ果てて二の句がつげないような状況でありますが、前内閣でもすでに二百八十億円出ている。それだから公営ではないにいたしましても少くとも四十二万戸の——これは三十年度であります。大蔵大臣は十年間に住宅難を解消したい、この十年間に解消することを目標として三十年度において四十二万戸という建設目標を掲げたのであります。今言う百億程度のものは、四十二万戸じゃない、そのうちの二割も建てられれば私はいい程度だと思う。そういうことではとうてい国民は納得しないと私は思うのであります。  それではいずれこの点については同僚諸君からも質疑があろうかと思いまするので、あと二点ばかりで私の質疑を一応締めくくりをいたしますが、ほかに社会保障費の関係も増額するということが出ておる。ところが社会保障の関係から見まするならば、失業対策費の関係にいたしましても、あるいは生活保護費の関係にいたしましても、あるいは健康保険等の関係にいたしましても、実は公約による社会保障費の増額ではなしに、いわゆる法律できまっている義務的な支出の増加というものが相当莫大な金額に上っておると私は思うのであります。四月、五月の暫定予算関係を見ましても、当然法律的にも事務的にもふやさなければならぬ義務支出費というものも、社会保障の関係では私は十分盛っておらないように思うのでありまするが、一体社会保障の関係ではそういう義務的な支出の増大をまかなって、さらに公約によるところの——まあ少くも吉田内閣時代よりもこれを増額するという面を生み出す財源的な自信がおありかどうかという点を次に伺いたいと思います。
  53. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今社会保障に関連しております各省と折衝をいたしておりますが、今お話の御趣旨のようになるべく努力をいたしております。
  54. 田中織之進

    田中(織)委員 そこで私最後にお伺いをいたしたいのでありますが、防衛分担金の点の交渉は、先ほどからのように、現内閣のような腰ではなかなか減額はむずかしいと思う。そこでこの点から見て、大蔵大臣が示しておるように、防衛分担金と防衛費の総額で前年度の予算のワク内にとどめたいという関係から見て、もし防衛分担金の削減がうんとできるならば、それを公約の方の実現の財源に振り向けるということもほとんど望み瀞であります。  それから現内閣がそういう一兆円予算のワクへとどめる新たなる財源的な問題としてこの際伺わなければならぬのは、大体中央で三百億の補助金削減を見込んでおられるということでございますが、この補助金削減というのは一体どういう構想で臨まれようとするのか、この際一つ明らかにしていただきたいと思います。ことに四月、五月の暫定予算を見ますると、補助金の関係は一切計上しておらぬということが昨日の予算説明で明らかになったのでありますが、これは補助金等の整理に関する例の時限法の関係からいたしましても、六月までは従来通り支出できることになっている部分も今度は出してきておらない。これは私補助金削減に関する一つの根本的な構想との関係だろうというふうに見ておるのでありますが、一体補助金削減によってどれだけのものを浮かそうとされておるのか、この点を伺いたいことが一つと、それから物価の引き下げ、いわゆる物価は大体五分下げる、この点についても、来年度の本予算との関係から見て、物価水準の問題、あるいは生産指数の問題、国民所得の問題等についてもたださなければならぬ問題があるのでありますが、まず物価引き下げの関係から見て、五分下るものとして物件費その他で大体百五十億の節約を見込んでおるようでございますが、いわゆる予算の節約面は物価の五分下げによる百五十億円だけしか見込まれないものかどうかということを、補助金に関する問題と同時にお答えを願いたいと思うのであります。同時に、こういうふうに見て参りますと、かりに補助金の削減で三百億、物件費の節約関係で百五十億、ほんとうの公約の実行に向けられる財源は合計すれば大体四百五十穂、五百億程度しか新たに出てこないようにわれわれには見受けられるのであります。この関係から見て、先ほど私が質問しました社会保障関係義務的支出の増大分をかりに二百億だと押えましても、公約実行に向けられる新たなる財源というものはどこから持ってくるのかわれわれ全く見当がつかないのでありますが、その点もあわせて一つお答えを願いたいと思います。
  55. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 補助金の削減についての考え方は、補助金を出しても十力効率を上げていない、あるいはまたかえってそのために負担の増加を来たすというふうな、補助金本来の目的を十分達していないものがありはしないか、あるならこれは整理をしたい、こういうふうな考え方でやっておる。それがどういうふうな金額に上るか、今検討させておるわけであります。  それから歳入につきましては、一般物価の関係、これも今試算をさせておるわけであります。数字がどういうふうになりますか、今試算中であります。
  56. 牧野良三

    牧野委員長 田中君、大体締めくくりを一つ……。
  57. 田中織之進

    田中(織)委員 あとの質問者もつかえておるようでありますからこれで私終りますが、たとえば補助金の削減の問題についていえば、新聞紙等の報道でありますし、まだ各省との間の話し合いが済んでいないので最終的なものは出てこないように思いますが、たとえば保温折衷苗しろに対する補助金であるとか、こういうようなものは時期的な関係からみればほんとうは暫定予算に入れなければならぬ、そんなものは実は入れていない。これは来月からいよいよ地方選挙が始まる前に現内閣としてもよほど考えなければならぬ問題だと私は思うので、言葉を濁すのだ、こういうふうに実は考えておるのでありますが、問題は補助金の思い切った整理をやるという考え方は、これはわれわれもあながち反対するものではありません。けれども、少くとも補助金についてはそれぞれやはり一つの歴史的な経過をたどっておると私は思うのです。そういう点から見て、この点についてはやはり十分慎重な態度をもって進んでいただかなければならない。当然この関係から残してもらわなければならぬものも出てくる。その意味で、この点は実は慎重な取扱いをやってもらいたいという私の希望を申し述べておきます。  以上で私の質疑を終るのでありますが、どうもまだ三十年度の本予算の概数も示してもらっておらないだけに、果して現内閣公約その他当面いろいろな面でぎしぎしとした摩擦の起っておるような面が早急に調整できるというふうには、実は数字が出ない関係から見通しがつかないと思いますが、私の本日の質問に対する答弁を通じて、よほど予算の編成の問題についても根太的な再検討をやらないことには、これは残念ながら民主党内閣に対する国民の期待が、この三十年度の本予算が出てくることによってまるきりがた落ちになりますから、その点だけは一つ警告を発して、私の質問を終ります。
  58. 牧野良三

  59. 片山哲

    片山委員 私は主として憲法問題を鳩山首相に質問いたしたいのでありますが、これは鳩山首相の抱く平和に対する思想を伺うわけであります。従って現鳩山内閣平和外交政策、平和に対する外交基調とでもいうべき根本問題を伺うことになるのでありますが、これまた、国内においても国際関係におきましても、今日における平和運動は、この憲法を守り、憲法の精神を擁護して行くというところに集約せられております関係上、具体的な問題は、この憲法をいかに解釈し、憲法をいかに守るか、こういうところになりますので、まず最初に、首相の抱く平和的な精神を、これらの憲法問題にいかに現わされるかということを伺うのであります。あなたの民主主義に対する思想は、だんだんとわかって来ておるのでありますけれども、いまだわかっていないのは、真にあなたが世界の平和を念願し、わが国における平和思想の達成に対して、いかなる熱意と努力を持っておられるか、こういう点については、国民はいまだ理解していないと思うのであります。伝えられるあなたの再軍備論あるいは憲法改正論は、これは誤っておるかもしれませんけれども、あるいは吉田前首相以上の再軍備論者であるとも伝えられまして、現民主党内閣が非常に反動性を持っており、再軍備に対して非常なる力を入れておるのである、こういう誤解が、あるいは考え方が、国民の間に浸透しておると思うのであります。  民主主義者は、徹底いたしますならば平和主義者になるべきはずのものであります。そこでまず第一に、あなたに対しまして、この憲法を戦後こういう形において制定したことは、形式ではなしに、こういう内容を持つ憲法を制定したことは、日本の戦後の再建のためにはよきことであったかどうか、この点を伺うのであります。制定当時あなたは関係されなかったのであります。今のお考えはあとで聞くといたしまして、敗戦日本の立ち上りのために、かくのごとき民主的、平和的な憲法を制定したことは、日本にとってまことによきことであったと今日お考えになっておりますかどうか、この点を最初に伺いたいのであります。
  60. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 現在の憲法が民主主義を採用したということは、非常にいいことであったと考えております。
  61. 片山哲

    片山委員 私の伺うのは、平和に対する、織り込まれたる憲法の思想をどうお考えになっておるか、こういう点です。
  62. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、第九条の挿入されたことは、平和を守るという趣旨もあったでしょうけれども、第九条があるということによって平和は守れないと思っております。国際関係紛争解決手段として、兵力を持つということはいいとは思いませんけれども、直接または間接の侵略に対しては、やはり防備を持たなくてはいけないと思っておるのであります。
  63. 片山哲

    片山委員 しからばこれを改正しようというお考えを持っておると理解してよろしいと思うのですが、総選挙後においても、またあなたが第一次内閣を組織された直後におきましても、憲法改正ということについて、いろいろの御意見を発表されておった思うのであります。そこで、時間が限られでおりまするから要約して申したいのでありまするが、一体どう改正しようとしておるのか、全般的に改正しようとしておるのか、局部的に改正しようという——首相としてのお考えですね。憲法調査会等に指示する基本方針として、あなたのこの憲法を変えたいと思う主眼点を明示していただきたいと思います。
  64. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は九条をやはり改正したいと思っております。その他の天皇制とか家族制度につきましては、審議の結果改正すべしという意見が多ければ、これに聞きたいと思いますけれども、自分としては天皇制並びに家族制度について改正する意思はありません。
  65. 片山哲

    片山委員 しからば第九条が一番のあなたの改正したいと思う主眼点と考えまして私の質問を進めたいと思うのであります。そうすると、この九条のどの点を改正したいか、こういうことなのですが、今まで伝えられておりまする御意見等を総合いたしてみまするならば、自衛軍を持ち縛る、自衛権は独立国家として当然——憲法以上というような言葉もありまして当然持っておるのである。この自衛権は、憲法第九条からくるというのではなくして、独立国家ならば当然国際法上自衛権あり、自衛権は憲法第九条の規定とは無関係だ、こういう解釈を今日されておると以前に発表されたことがありまするが、首相はなおこのお考えを持っておられまするか。つまり自衛軍隊を持つということは、憲法第九条と無関係である。言いかえてみまするならば、自衛軍隊というものは、防御戦争、防御対抗力だけでありまして、それは戦力を持ってもかまわない、こういう趣旨に解釈されるのでありまするが、これについてのお考え伺いたいのであります。
  66. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 直接または間接の侵略に対しては、自衛権を持っているという解釈は正しいものと思っております。しかし憲法第九条を何も考えないで読みますと、そういうような程度の兵力すら持ってはいけないように見えますから、そういうようなあいまいな規定は直した方がいいと思っております。
  67. 片山哲

    片山委員 これは決してあいまいなる規定ではなく、かくのごとく私は解釈をいたしておるのであります。その私の考えが正しいと思っておりまするので、それを一応説明申し上げたいと存じます。これに対して首相の御見解伺いたいのであります。  これは、字句とかあるいは法律的な解釈でなしに、その精神を十分に会得して、平和の達成の趣旨を見なければならぬと思うのであります。第九条は、侵略戦争とか防御戦争などを区別しておるのではないと思うのであります。これは、制定当時に関与されましたる吉田前首相が、当時憲法制定の審議に当りましたときの答弁として、さような区別を立てることは何ら利益のないのみならず、むしろこれは有害である、こういう説明をしたことは、当時、その後においても繰り返された言葉でありまするが、これによっても当時の心持がよくわかるわけであります。  そこで九条を理解するにつきましては、憲法の前文を十分に見なければならないのであります。前文と九条との不可分関係、九条の精神を前文によく表わしておるのであります。九条を解釈するに当りましては、前文を見ずしては価値がないと思うのであります。すなわち「再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、」さらに「日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであって、」こういう前提のもとに値久平和を念願し、一切の戦争の惨禍−侵略戦争でありましても、防御戦争でありましても、今日においては惨禍を起すことは言うまでもない。一切の惨禍が再び起らないように、しかもまた恐怖と欠乏を去って、国民の平和なる生活を確保する大きなる責任を国家が持つものである、こういう趣旨から、国民主権を実現したる民主国家を建設し、同時にそれと相応呼いたしまして平和憲法を制定し、平和国家、平和日本として進んでいこうとする、その構想のもとに、その理想のもとにこの九条が制定せられたのであります。  さらに進んでこの憲法の条文を見まするならば、冒頭にどう書いてあるかと申しますると、戦力を放棄するということを冒頭には書いていないのであります。すなわち主たる目的は何であるかと申しますると、正義と秩序を基調として国際平和を求めるということを大きなる目的、大前提として、大上段に掲げておるのであります。これは、今日の世界の情勢において、武力で国際紛争を解決する武力外交をとらない、平和の外交会議外交、話し合っていこうとする外交を土台として、これからの外交をやっていこうとする根本方針をここに掲げたものと思うのであります。武力を背景とするようなやり方では、とうてい日本の再建はできない。武力を捨てておりまする国の当然の外交方式、私はこれは外交基調を示したる、政府並びに国民に対する大きなる指示であろうと思うのであります。この目的を達成するために、第二段において、国際紛争を解決する手段としては、国権の発動たる戦争とか武力の威嚇とか武力の行使はこれを永久に放棄する、こういう書き方であります。これは、字句及び法律的解釈ではなしに、大きな平和に対する理想と、平和に対する熱意というものを、この九条と前文から取り上げてこなければならないと思うのであります。  さらにもう一度最後に、その方法といたしまして、念に念を入れまして、前項の目的を達成するために交戦権はこれを認めないのみならず、一切の戦力はこれを放棄する、こういう、大理想を実現するための手段方法も明示いたしまして、念に念を入れておるのであります。国内における民主主義を達成し、民生政治の確立をはかるための外交政策といたしまして、戦争で解決をする軍閥の台頭を促したり、特権階級の進出を促進するような、そういう土台となってくる憂いの多分にありまする軍閥外交のなき国民外交を実践するためには、どうしても武力によらざる外交平和外交、すなわちそれは一切の戦争をもって国際紛争を解決するのではない、こういう建前から来ておると思うのであります。そこでこの第九条は、前文と照らし、その後における各条項の精神等も昭らし合せてみますならばなお明白でありますが、外交方針を示したものである、外交基調を示したものである、敗戦日本の立ち上りの根本外交基調を示し、世界に向って平和日本の価値を、発言権を十分に表わしていく建前を示したものである。従って戦争に侵略戦争、防御戦争の区別をつけないで、一切の戦争を放棄する。従って国際紛争を解決するには平和的な方法でやっていこうという、平和外交の基調を示したものであるということを見ることが、まことに民主国家建設のためにも必要なことであり、そう理解することが当然の事柄であると信ずるのでありまするが、これに対するあなたのお考えを聞きたいのであります。(拍手)
  68. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 策九条は、ただいま片山さんが言われたような理想によってでき上ったものかもしれません。動機がどういうような工合でアメリカがその第九条を押しつけたかどうか、それは私は知りませんけれども、そこに出ておる文字は、とにかく戦争を絶対にしない。それが国際関係の平和のためであろうが、あるいは真の防御のためであろうが、その区別はしていないものと、その制定された当時はそういうような趣旨でできたと思っております。けれども自衛隊法ができまして、とにかく間接または直接の侵略に対して、自衛のためにする兵力は認められた今日におきましては……(「憲法違反だ」と呼ぶ者あり)あの法律を憲法違反とは解釈せずして、憲法解釈がさように変化してきたものと私は考えております。事実はあなたのおっしゃった通りのことでできたものであったにしても、今日の国民感情がそれを否定する人が多ければ、それに聴従することが憲法解釈として正しいものと思っております。
  69. 片山哲

    片山委員 あなたが昨年の十二月、プレス・クラブで外人記者に話された結論に、こういう話があったと伝えられておるのであります。すなわち、平和と安全が武力によって維持される世界はよくない、相互の友愛によって世界の平和を維持していきたい、こういう演説をされたと伝えられておるのであります。これは一切の武力を放棄して、世界の紛争を平和のうちに解決をしていかなくてはならない。常にあなたの言われる友愛の精神というものが外交の上にも現われて、国際間においてもすぐ武力に訴える、すぐ戦争で事を解決しようというような考えはよくない、こういう理想を述べられたことと思うのであります。このお考えは今日においても依然お持ちであろうと思うのでありまするが、この構想から来まするならば、この理想を持っておられるといたしまするならば、これはただ言うだけでは役に立たないのでありまして、これを実現するために努力しなければならぬと思うのであります。憲法制定当時のこの高き理想があなたの理想と合致しておると言われるのでありまするから、国際情勢の変化に事寄せて、そうしてこれを自分勝手な方に引きつけたり、これは当時はよかったかもしれぬけれども、今は都合が悪いというようなことでは、理想実現はできるものではないのであります。理想に対しては最も忠実に最も勇敢に——平和を愛する精神を持っておられるならば、民主主義を信奉するならば、外交の上において、国内の政治において、当然この高き理想をお持ちでなくてはならないはずであります。そういたしますると、当然九条の解釈は私と同様で、しかもまたこの精神を貫いていくということによって、日本政治ができるのである、こういう方向に進むことが当然でありまして、この憲法はいろいろと勝手な解釈をつけるものじゃないと思うのです。  解釈の問題についてはもう一段と伺いますが、プレス・クラブにおけるこのあなたの理想は、今日もお持ちになっておりまするか、さらにこれを実現するために努力をお払いになりまするか、お払いになるとするならば、この第九条の大きなる構想をどこまでも実現すべく努力すべきが当然のことと思うのであります。これに対する首相のお考えを聞きたいのであります。
  70. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 プレス・クラブにおきまする私の話は、もちろん今でも私の理想とするところであります。世の中のすべての人が友愛の精神になれば、戦争がなくなることはもとより当然でありますが、悲しいことには現在は無抵抗主義の人が必ずしも平和を維持はできないのであります。現在の日本においても、悲しむべきことには暴力革命ということすらありまして、暴力革命に対しての準備をしなければならない甘木なのであります。世界の国際関係もまだ戦争がなくなるという時代にまでは達しておらないのでありまするから、そういうような時代において防備力を持つということはやむを得ざる必要と考えておるのであります。だから無抵抗主義で行って、もう抵抗する必要がなくなるというわけにはならないと思っておるのであります。
  71. 片山哲

    片山委員 少しく他の面から重ねて質問をいたしまするが、あなたの国際紛争という解釈を聞きたいのであります。  今日の国際情勢におきましていろいろの国際間におけるトラブルが起きておりますることは言うまでもないのでありまするが、外敵侵入ということは一夜にして起るわけのものではない。外敵侵入が起きるということは、大きなる国際紛争の現われである。国際紛争あってこそこれに基いて外敵侵入、直接攻撃、こういうことが出てくるのであります。こういう関係から申しまするならば、この九条は直接侵入だけに対する戦争放棄ではなくして、防衛をする、防御する防御戦争、またよって来たるところの国際紛争である。国際紛争の中には、直接侵入と防御体制をとらなくてはならないという二つの事柄を、区別を立てずして入れておるのである。第九条のいう国際紛争は、こういう意味において自衛権はあるけれども武力は行使しない、これは、以上の目的を達成するために一切の戦力はこれを放棄する、交戦権はこれを認めない、こう最後の念を入れておることから見まするならば、一切の国際紛争に対して、直接侵入であろうが防御体制であろうが、自衛権はありとしても自衛権を武力で行使しない、武力で行使するということは戦後日本の建前からよくないことである、こういう意味において一切の戦力を放棄したと解釈することが当然のことであると思うのであります。でありまするから、この外敵侵入は一切の国際紛争の現われがそういう形となってくるものであると理解することが粛然と思うのでありまするが、費用のお考えを聞きたいのであります。
  72. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国際紛争が突然に来るものではないというお話ですか。
  73. 片山哲

    片山委員 それはやはり国際状態がヨーロッパの問題でも今日の通信の発達等からただちに日本にもわかってくるし、いろいろのトラブルは事前の動きがよくわかっておるのである。火山が一晩でふき出すように、いつの間にやら外敵が北九州に上陸したとか、北海道へ上陸したとかいうような、そんなことは今日のこの通信網の発達から、あるいは情勢が事前にわかる態勢の上においてあり得ないことである。そういう紛争があってこそ、外敵侵入というようなことになるのであるから、それを事前に平和の手段で話し合いで解決をすべきであるという方針をきめたのがこの九条だ、こう解釈するのです。こういう意味で、外敵侵入の事前に働きかけをいたしまして、そして敵の襲来を防止するという余裕が十分にあり、時間もあれば、その交渉もなし狩るという関係が十分あるのであるから、それに努力すべきであって、すぐ戦争で対抗するというようなることは、この憲法の認めざるところである、こういう意味であります。
  74. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 片山君のその見方には私も賛成であります。それがゆえに自分一国でもって外敵の侵略を防御するという力を持つ必要はないのでありまして、国際連合の力によって、あるいは自由主義国家群の力によって、速急に起らない侵略に対して防御するだけのある範囲の防御力は、すべての国が持たなければならない。それはやはり自由主義国家群のためにも共同の義務だと思っておるのであります。
  75. 片山哲

    片山委員 その防衛体制につきましては、さらに別段の考慮は考られることでありまするけれども、日本としての防衛体制というものは自分の武力で、自衛権を承認の上に、この自衛権を武力で行使しないという建前に立っておるということを認めなくちゃならぬと思うのであります。その憲法を承認する限りにおいては、自衛権は認めるけれども、自衛権を武力では行使しない。その他の問題は外交、話し合い、平和的な方法で全力を傾倒して紛争解決に邁進をする、こういう建前が憲法の趣旨である、これこそ平和憲法の価値である、これこそ平和日本の再建の大きなる理由であると私は考えるのであります。重ねてその点を伺いたいと思います。
  76. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 戦争が世の中からなくなってしまうことは非常にありがたいことでありますけれども、現在そういう世の中ではないので、戦争が起るかしれないと思ってみんなが心配しておる世の中ですから、やはり一国としても平和を保つ義務として、相当な兵力を持つということが平和を守る企てになるのであります。日本だけは少しも防備力を持たない、ほかの国が日本を守ってくれるだろうという態度に放任しておくわけにはいかないでしょうと思います。
  77. 片山哲

    片山委員 それではこの問題をまた他の方面から、もう一度お尋ねしますので、質問の体系を少しかえます。この憲法は三つの原則を表わしておるものと信ずるのであります。一つは日本国民主権の実現であります。これが民主主義を行う政治体制として表わしたること、第二は基本的人権を尊重しておること、これは政治の主体となります国民に実力を与えて、経済的社会的な背景を形づくる。こういう意味合いから申しまして、第二の大きなる原則であります。国民を戦争の惨禍から救い、恐怖と欠乏から救って、ほんとうに平和なる生活をなし得る態勢に導いていかなくてはならない。こういうために一切の国際紛争は武力で解決をしないのである。民主主義を守り、基本的人権を擁護する国際関係から平和的な外交推進する、こういう三原則をこの憲法は立てておるのであります。こういう意味から申しまして、基本的人権を擁護するという強い熱意を持ち、民主主義を達成しようとする熱意を持っておりますれば、不可分一体の関係となっておりまする国民を恐怖から救うということ、戦争の惨劇から救うということ、これが民主的な政治体制を確立する上の不可欠な要素である、こういうふうに形づくられたる一つの構造であります。一つの建築物というか、一つの建設であります。これほどこまでも一つを教意をもって守るということによって、全体を築き上げて行くということであります。憲法の第十章に最高法規という規定がありまして、その第九十七条にこういうことが出ております。「この憲法日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であって、これらの権利は、過去幾多の試練に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。」こういう最高法規として、九十七条が特別の規定を置いておるのであります。これは主として今までじゅうりんせられておりましたる基本的人権を擁護していかなければならない、これを育て上げ、守り通していかなくてはならない非常なる熱意のこもった文章であり、これを読むたびに私の過去の幾多の思い出を思い出すのでありまするが、とうとき成果としてでき上っておりまするこの九十七条、政治的には民主政治でこれを守っていく、外交政策を基調といたしまして恐怖と欠乏から国民を守っていく、戦争の惨禍から国民を守っていく、こういう熱意をもって表わしておるのでありますから、総理大臣の言われましたる侵入して来る者があるからしようがないとか、そういうような考え方ではなしに、わが日本としてはこの基本的人権をどこまでも擁護していかなくてはならないために、民主政治平和外交を突っかい棒として三位一体の関係で育て上げていく、こういう一つの創作物とでも言うか、一つでも欠いてはいけない、一つのくいでも欠くと、それががたがたになって来るのであって、こういうまとまったる一つの形の創造物であるというふうに考えていくことが、将来の国民の幸福のために忠実なるゆえんであると思うのであります。でありまするから、国際情勢の変化なり、あるいは外敵問題に対しては別の方法を講じてよろしい、あるいは外交方式、国際関係に対して特段の努力を払ってよろしいのでありまするが、国内における体制としては、どうしてもこの三つの関係を不可分に締めくくっていかなくてはならないと思うのであります。でありまするから、一応国内における方針をきめる必要があります。外交方針をきめて、われわれは武器を持たずして、とにかくこのあらし吹く国際情勢に対処していくのである、こういう意味合いから、この九十七条を忠実に実践擁護されようとする建前をお持ちであるとするならば、外交政策においても基本的人権を守って、恐怖と欠乏から国民を守るために、一切の戦争を避けるという基本的な国内方針を樹立してもらわなくてはならないと思うのであります。これに対して総理大臣のお考えを聞きたいのであります。
  78. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 憲法があなたのような御主張によってできておることは、大体私も同感でありますが、しかし外国から侵入して来た場合に、無抵抗であってよろしいというほど徹底しているとは私は思はない。憲法違反とは思わない。外国から侵入して来た場合において、これは無抵抗でいろというほどまでに徹底した平和主義をとっている憲法ではない。それですから、外国の侵入も、先刻のお話のように、突然に来ることはないでしょう。突然に来ることはないからして、準備をする期間はありましょうが、しかしながら無抵抗でいてはとても間に合わないと思うのであります。相当の抵抗力は外国の侵入に対して持ってもいい。外敵が侵入した場合に、日本人は無抵抗でおるべしという徹底したる憲法であったならば、自衛隊のようなものはできなかったかもしれません。そこまで徹底した平和主義ではない。そういうような平和主義もあるかもしれません。宗教としてはそういうような主義が成立するでしょう。しかし現実の世の中においてはそういう論は通用はしないと私は思うのであります。
  79. 片山哲

    片山委員 私は何も無抵抗を言っておるのじゃないのです。防衛体制は別個に考えるが、この憲法の平和を守る精神というものは一応確立しなければならぬ。そうして第二段のかまえにおいて防衛方法というものが考慮される。あるいは国連の関係もありましょうし、あるいは一切の戦争の中に日本を巻き込まないようにする外交的な戦いもあるでありましょうし、それらを切り離して考えていかなくてはならない。平和の確立は、同時においでなさいというわけで一切を無抵抗にすると、いうのではないのでありまして、それを切り離して考えるべきである、こういう主張であります。  そこでもう一段重ねてお伺いをいたしますが、九条だけをかりに変えましても、前文が存在いたしますならば、——前文は九条の前提なんです、前提でありますから、九条を削ってしまうと、前文は死文となります。前文をそのままにしておいて九条を骨抜きにして別の規定と取りかえるというようなことは、全く魂のない憲法となってしまいます。民主主義と平和主義と基本的人権をかみ合せておりまする、大きなる理想を表わしておりまする前文でありまするから、前文に対する総理大臣のお考え、九条を削ると同時にこれも削ってしまうのか、これをそのままにしておこうとするのであるか、これはまことによき前文である、こういうふうにお考えであるならば、前文は生かしていかなければならない。前文と九条の関係、これについてのお考えを聞きたいのであります。
  80. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 九条を改正するに際しましては、やはり前文も改正をしなくてはならないと思います。
  81. 片山哲

    片山委員 今回の選挙によりまして、革新派と申しまする両社その他の憲法を守ろうとする議員が三分の一以上の議席を獲得いたしましたので、ただちに改正に着手することができない状態になっておると思うのであります。そこで憲法は変えない、変えることが今直ちにできないとするならば、あなたはどういう方針で九条の問題を取り扱っていかれるのですか、これは解釈だけでいこうとするお考えですか、その点を伺います。
  82. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 とにかく昨日もお話したと思っておりますが、自衛隊法ができまして、間接、直接の侵略に対して防衛する任務を有する兵力ができましたから、そう急ぐ必要はないように思っております。そういうような機会が来ましたときにやりたいと考えております。
  83. 片山哲

    片山委員 私は、自己流の解釈自衛隊憲法違反ではない、こういう解釈はよくない、これは憲法違反であると思うのであります。そこで伺いたいのでありまするが、魔法の第九十八条であります。九十八条にこう書いてあります。「この憲法は、国の最高法規であって、その条規に反する法律、命令、詔勅及び国務に関する——これは国事でなくて国務と書いてありますが、国務に関するその他の行為の全部又は一部は、その効力を有しない。」こういう条項が最高法規として厳として存在するわけであります。そこで問題は、この効力を有しないということをだれが判定するか。吉田前内閣も勝手な解釈をいたしまして、戦力なき兵隊とか、妙な解釈で押し切ってきましたが、続いてあなたの内閣自衛隊は戦力ではない——ある一部ではこれは戦力と認めてよいというような意見を出した方もおったと思いますが、いずれにいたしましても、同じような吉田方式の解釈で押し切ってきておるのであります。しかも国会は多数でこれを認めるかもしれませんけれども、悪法の九十八条において「その効力を有しない。」と書いてあります以上は、だれが一体これを判定するのでしょうか。その効力を有しないということは主権者である国民が審判する以外に道はないといえばあまりに抽象的になってしまいます。よってこれに対して効力を有するか有しないか、合憲であるか違憲であるかということの審判機関を設置するということが当然の事柄であります。「効力を有しない。」ということでこれは書きっぱなしであります。これは憲法としては当然のことであります。これを受けておりますところのいろいろの法規におきまして、効力を有するか有しないかを判定する機関の設置を必要とすると信ずるのであります。いかにお考えになっておりますか。
  84. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 民主政治の国家におきましては、国会が最高機関でありますから、国会解釈したものが一番通用する解釈と見るよりいたし方がございません。だからして、憲法に疑惑がありましたならば、国会において審議したらよいだろうと思います。  それから片山君のお話の中で、自衛隊法憲法違反ときめてかかっておられますけれども、とにかく先刻も申しましたように、国際紛争を戦争で解決するということはいけないにきまっておりますけれども、外国が侵入した場合において無抵抗でよろしいとは書いてないのでありますから、国家は当然の独立国家としてこれを防衛する軍隊を持つということは当然にできる、こういうふうに考えておるのであります。従って自衛隊法というものは憲法違反とはわれわれは考えていないのです。それで国会を通ったものと思っておるのです。その解釈日本国民の多数の解釈なのですからいたし方がないと思います。それに従うよりほかに仕方がないと思います。
  85. 片山哲

    片山委員 あなたは、すぐ無抵抗でよろしい云々ときめてかかるのが間違いでありまして、国際紛争というものの範囲は広いし、一切戦争で事を解決しないという外交方針を確立しておきますならば、それに対してもう全力を傾倒して奮闘するということによって第一段の防止はできるおけです。現に昨年のベルリン会議から、朝鮮の問題から、インドシナの問題から、ブラッセル会議から、ずっと世界的な紛争を解決するにあらゆる要路に立っております政治家たちが平和のうちにこれを解決しようと努力しておるのであります。今日日本政府が、無抵抗ではしょうがないといって放棄する必要は少しもない。あらゆる力をそこに集中いたしまして、戦争で解決するよりはずっとよい方法なんですから、またやらなくてはならないためにそこに努力するのであります。私はそういう意味において、この武力を持ち、戦争の用意をいたしまする自衛隊は、憲法の認めないところである。紛争は一切戦争によらずして解決をするという基本方針を断然確立すべきものである、こう考えるわけなんです。そこで自衛隊は違憲である、違憲でないという水かけ論をやりましてもしょうがない。要はこれは国民の投票によって決定をする、こういうところが結論であります。そこであなたの性格から言いましても立場から申しましても、堂々と、ごまかし的なやり方はやめてもらって——吉田方式ならば別ですけれども、ごまかして、自己流の解釈でやることはやめてもらいたいと思うのであります。そこで第一段、国民投票でこれを決定する、こういうこと。第二はこの効力を有しないとする判断機関を別途に求めるということが必要であります。これは法律の解釈ともなれば、法律に当てはまる事実の解釈ともなるのでありまして、現に外国における違憲裁判所というものが活躍をいたしまして、憲法の番人であるとか憲法の守護者であるとかということによりまして、国民は納得をいたしております。国会においてこれを一応の形はつけまするが、はたしてそれが憲法の精神に合致しておるやいなや、こういう点を審判する機関が必要であります。その意味において違憲裁判所の設置を要望する次第であります。これはむずかしいことは一つもありません。きわめて容易にできることであります。すなわち最高裁判所をしてこれを取扱わしめればいいのであります。最高裁判所に関する裁判所法を見ますならば、裁判所法の第七条においては、最高裁判所は上告と抗告だけ二つ扱う、こういうことだけしか書いてないのはこれは欠点であります。ここへ第一審としておいて、憲法違反の訴えを受け付けられる、こういう条項を裁判所法の改正でやればいいのです。これは進歩せる外国においても——しかも民主的に国会のやりましたることを判断する、政府のやりましたる解釈の正しいかいなやを判断する、こういう上において最も必要なることであります。現にアメリカにおいても黒人の差別待遇の問題について違憲の判決がありましたし、またドイツにおきましても違憲裁判所が、今日のザール問題を政府のやりましたことについて、いかにこれを処理するかということで、公正厳正なる立場に立って審判をしつつあるのであります。それと同様、とめどなくこれを解釈々々で勝手なことをやっていきますると、国民は非常なる疑惑を受けるわけでありまするから、どうしてもこれははっきりしなければならない。民主政治の建前から申しましても、これを明瞭にするために、最高裁判所の取扱いとして裁判所法を改正する、こういうことが必要と思います。これはこの条文に明るいところの他の閣僚からお答え下さってけっこうであります。政府のお考えを聞きたいのであります。
  86. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 違憲裁判所というものを法律の改正でもってやるということは、これは違憲だそうであります。違憲裁判書の設置の問題は、やはり憲法改正の際に審議すべきものであるというのが通説だそうでありますから、憲法改正のときに審査をお願いします。
  87. 片山哲

    片山委員 これは一つの方法ででありまするけれども、私の申しましたる裁判所法を改正して、最高裁判所にこれを取扱わしめるということは決して違憲ではないと思います。どこの条項によってこれを違憲と言われるか、その根拠を示されたいと思います。これはどなたでもよいですからお答え願いたい。
  88. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 法制局長官からお答えいたさせます。
  89. 官林修三

    ○林(修)政府委員 ただいまの点、私からお答えいたしますが、結局これは司法権というものの解釈の問題になると思います。結局現在の憲法においては、司法裁判所の判断は具体的事件を通じて判断をするという考え方であります。もちろん最高裁判所は、ある法律が憲法違反するかどうかということを審判し得る権限は持っておりまするが、これはやはり司法権の内容として、具体的事件を通じて判断をするというのが憲法の建前であるというのが、これは通説であります。従いましていわゆる憲法違反問題を直ちに提訴するような、いわゆる違憲裁判所、具体的事件を通ぜずして、ある法律自体について、違憲かどうかということを再断してもらいたいという違憲裁判所をつくるということは、やはり憲法問題に触れてくる、こういうのが一般の解釈であります。
  90. 片山哲

    片山委員 今の政府委員答弁は自己流の解釈であります。違憲裁判所という特別なる建物をこしらえたり、あるいはまたそれを専門に扱うというのではなくして、わが国における司法最高機関である最高裁判所がこれらの一切の問題を扱うということはちっとも違憲ではないと思います。裁判所法の一部を改正しさえすればよろしいのである。上告と抗告と限定したのが間違いなのです。これをもっと広く開放いたしまして、憲法問題一切の国民の訴えを聞くということが民主的でなければならないと思うのであります。根拠は今示されますか。
  91. 官林修三

    ○林(修)政府委員 今片山委員から仰せになりましたように、裁判所法の改正でそういうものができるという説も一部にはございます。しかし日本憲法の趣旨は、やはり三権分立の建前から、ある法律を具体的事件を通さずして直ちにその法律の有効性を審判する、これはやはり憲法の認めるところではないという考え方が一般であります。最高裁判所の判決も大体そういう考え方に立っております。
  92. 片山哲

    片山委員 ただいまの答弁はもちろん承服することができません。追ってこの問題は明らかにしなければならぬと存じております。  重ねて総理大臣に伺いますが、憲法調査研究会とか、改正の機運の盛り上りを研究するという機関を置きたいようなお考でありまするが、一体それはどこに置くのですか、政府部内ですか、国会でありますか。あるいは与党でありまするか。国会に置くとするならば、国会における構想を示していただきたいと思います。
  93. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国会に置きたいと思ったことがあるのでございますが、今日の情勢におきまして国会に置きましても、意見の統一ができないと思いますので、まず党内において審査をしていきます。
  94. 片山哲

    片山委員 改正発議ということでございますが、その前提として、この改正の提案はどういう形でやられるのですか。法律案という形になるのですか。いかなる形で改正の提案をされるのですか。一部においては憲法議会というものをつくるというようなことを、与党の岸君でありましたか、発表しておりましたが、提案の形、これは他の閣僚でけっこうであります。いかなる形でこの提案をされるか。さらにまたこの九十六条によりますと、国民投票の場合においては、こういうことが書いてあります。「特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行ほれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。」この「国会の定める選挙の際」とはどう解釈されておりますか。この改正問題を取り扱うについての政府のお考えを聞きたいのであります。なおまた国民投票ということに対する構想ができておりますか、この問題を伺います。
  95. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいまのところ、そういうことについて考えておりません。
  96. 片山哲

    片山委員 それらは結局解釈一点張りでいくということに理解してよろしい〜思います。われわれはこの誤まてる解釈に対しましては承服できません。憲法の精神は、先ほど田中君が言われたと思いますが、九十九条によりまして、一切の「公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」こういう建前から、われわれは憲法擁護運動を起しております。擁護という言葉はこの九十九条から出てきておるわけなんで、ほんとうに正統派、正流にさおさしているという関係になっておるのであります。こういう建前から、どこまでもこの憲法の精神を擁護することが国民の精神であって、これを正解せず、曲解するということは、断じて違憲であるという建前に立っておるのであります。  続いて原水爆のことを総理大臣にお尋ねいたしたいと思います。国際的にこの禁止を主張する考えについて伺いたいのでありますが、まことに残酷きわまるこの原水爆、非人道的なる原水爆の製造、貯蔵から、実験の禁止を叫び縛るのについては、日本が最も適格者であろうと思います。日本がこれを世界的に叫ぶことは、世界の納得のいく運動であると思います。了承を得られるところの、まことにふさわしい要求であると思いまして、世界の人々に訴えるべき時期は来ていると思うのであります。過般原水爆の禁止署名運動を大衆に求めましたるところ、二千三百万名以上の多数のとうとき署名を得ました。これは総理大臣にもその際要求いたしたことでありますが、何はともあれ原水爆はやめてもらいたい。戦争に関するいろいろの意見はありましても、この残酷なる、非人道的な原水爆はぜひやめてもらいたい。こういう国民の多数の声を世界的に現わしていく、世界の権威ある機関にこれを訴えて、世界の輿論を喚起するということは、日本国民のなすべきふさわしい事柄であろうと存じます。これは被害者であるということと、戦力を放棄している、交戦権はこれを認めないという憲法を持っております日本国民の、大きな仕事であろうと思います。国民の中からもほうはいとして、これを世界的に訴えたいという原水爆禁止運動が起っておる際に、政府は何らかの方法でこれを取り上げて、世界の権威ある機関にこれを伝達したり、あるいは手続を取りまして、国民の声を訴えの中に入れて行くべきであろうと存じます。ことに自治団体においても、また御承知通り国会においても、この実験をやめてもらいたいという決議をしております際でありますから、この問題を取り上げるべき、まことによき機会がきておると思うのであります。総理大臣のこれに対するお考えを聞きたいのであります。
  97. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 片山君と全く同一の意見を持っております。
  98. 片山哲

    片山委員 ぜひともこれを権威ある機関に訴えて、すでに諸国において軍縮よりさらに進んでは原水爆の禁止のために、その前提としてこれを国際管理に移して、この禁止の厳重なる実行を管理しようとする具体案の進んでおる今日でありますから、ぜひともその実現をはかるべく、鳩山内閣努力を願う次第であります。  進んでこの間うちから問題となりましたるところの、原水爆の貯蔵について、頼まれれば断われない、こういう問題であります。この問題につきましては、二、三日前の本会議においても御答弁になりまして、それは仮定の問題であるということでそのままになっております。仮定の問題でけっこうであります。私はその前提のもとに伺いたいのでありますが、やはりこれは憲法違反であろうと思うのであります。貯蔵するということは、憲法違反になってくると思うのであります。何となれば、「陸海空軍その他の一切の戦力は、これを保持しない。」これが第九条の規定であります。九条の精神からすれば、人のものであろうと、自分のものであろうと、そんなおそろしい爆発物を日本がお預かりするというようなことは、とんでもない話であります。これが爆撃の機会ともなりまするし、戦争の大きなる誘導ともなるというような議論がなされておりまするから、御承知のことと思いまするが、他人のものであろうと、自分のものであろうと、この第九条の、「戦力は、これを保持しない。」この条項にひっかかって参りまして、違反となると私は信ずるのであります。それにもかかわらず、頼まれれば断わることができない、こういう考えほお持ちでありまするか、この問題に対するお考えを聞きたいのであります。
  99. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 原水爆を日本が持つというようなことは、私は想像しておりません。それに対する答弁をしたわけではないのであります。アメリカが原水爆を貯蔵したいということの申し込みを受けたわけでも何でもないわけでありますから、現実問題ではないのであります。ただアメリカが持つか持たないかというような——アメリカが世界の平和を維持し、戦争を防止するために、これを保持することが必要だと思えば、持ちたいというであろうと思うのであります。その際には、戦争を防止し、平和を維持するために必要かどうかということを目標として考うべきものと考えます。
  100. 片山哲

    片山委員 それはわかっておるのでありまして、日本が持つというようなことは、これは考える必要が全然ないことであります。アメリカから頼まれたときに断われないであろうというようなことは間違いである、断じてこれは預かるべきものじゃない、断わるべきである、これは憲法が言うことを聞かない、こういうことをいえばいいのです。これを憲法をたてにして断わればいいのであります。(拍手)一切の戦力はこれを保持しないという意味は、この際は一つわれわれと同じ解釈でやって下さい。そういうふうで、これはアメリカのものであろうと、どこのものであろうと、そんなおそろしい爆発物は、戦力は、一切日本が持たない、預かりもしない、保持もしない、これが第九条の精神であります。これだけはぜひあなたがほんとうの民主主義者として立って自由を尊重するならば、この点は断固これを通さなくてはならないと信ずるのであります。(拍手)ぜひこれは実現を願いたい。
  101. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は日本が持つとか、日本が貯蔵するということを考えてみましょうと言ったことはないのであります。日本が持つということは全然あり得ない話であります。
  102. 片山哲

    片山委員 最後にあなたの平和思想をまとめて伺うために、今わが国における平和愛好者はあげて憲法を守っていこう、こういうことに集約されて、擁護運動が超党派的に進展をいたしておるのであります。従って、この憲法の制定当時の精神ははっきりしております。特に念を入れまして、この憲法を発布いたしました当時の勅語でありまするけれども、これを一つ念のために読んでみたいと思います。「この憲法は、帝国憲法を全面的に改正したものであって、」古い思想を一掃したのである。「国家再建の基礎を人類普遍の原理に求め、自由に表明された国民の総意によって確定されたのである。即ち、日本国民は、みずから進んで戦争を放棄し、」これは直接戦争、防衛戦争たるを問わず、一切の戦争を放棄し、「全世界に正義と秩序とを基調とする永遠の平和が実現することを念願し、常に基本的人権を尊重し、民主主義に基いて国政を運営することを、ここに、明らかに定めたのである。」はっきりと一切の戦争を放棄し、人類普遍の原則に立ちまして、永遠の平和を実現する」とを念願し、そのために民主主義と基本的人権を擁護して、そうして国政を運営することをここに明らかに示したものである。実に戦後における再建方針書であります。運動方針書とでも言うべきところの国家宣言であります。国民宣言であります。これはほんとうに公正、厳正なる解釈をして、いやしくもこれを自己流に勝手なごまかしの解釈は許すべきものではないのであります。でありまするからして、これを解釈するのについていささかでも国民が疑惑をうような点については、改正のときにこれをやるのであるとか、あるいは国会がやったからこれは国民も承服するであろうとかいうような誠意のない話ではなくして、これは即時に、これが正しいか正しくないか、効力を有しないとまで書いておるのでありまするから、ぜひともこの点については一つ努力してもらわなければなりません。先ほど申しました第九条は、国務大臣憲法を尊重し、憲法を擁護するの義務を与えております。国会議員にも憲法を擁護する義務を与えております。戦後におけるこの方針憲法できまったのであります。でありますからして、この制定当時の精神をあなたが理解されるならば、一つ思い切ってこの憲法擁護派に入るくらいの意気込みをもって平和のために努力を願いたいのであります。あなたの欠点は、民主主義、自由を尊重する、人権も尊重する、公明な、まことに明朗な政治家として、性格として敬意を払っておりますが、一点疑問に思うのは、平和に対するあなたの熱意であります。ほんとうに平和主義、平和愛好者であるかいなや、こういう点は、憲法に対する忠実なる順法者、忠実にこれを尊重し擁護するか、こういうところにかかってぐるのでありますから、防衛問題については、これは別にお考え下さい。憲法の厳たる精神は、第九条の精神は、何としてもこれはごまかしあるいは自己流の解釈はやめてもらいまして、そうして公正な、何人が聞いても納得のいくような解釈をしてもらわなくてはなりません。どうしてもこれは速急にこの国会において裁判所法を改正して、最高裁判所の判定を待って国民の安心を——国民が、なるほどそれももっともだ、こういう方向に向わしむることが、民主政治のあり方でなくてはならないと思います。これに対してあなたの平和に対する熱意をもう一度伺うとともに、自己流の解釈を正しいかいなやを判定する機関を、速急にこの国会において裁判所法を改正して取り上げるべきことを要望いたしまして、これに対する信念を伺いまして私の質疑を打ち切りたいと思います。(拍手)
  103. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私みずから平和愛好については片山君に劣らないほどの熱意を持っておるものと思います。今日平和を愛好しない国民はないと思います。今日第三次世界大戦が始まったならば非常な災害が直ちに来たるということは、だれも知っていることなんでありますから、平和愛好の熱意は人によって違いがないだろうと思うのであります。ただそれをどういうように実行するか。あなたは防衛問題と憲法解釈とを切り離して、防衛問題は防衛問題として論ずればいいというようにお考えになりますけれども、防衛問題も憲法解釈できまるのでありまして、私は防衛をするように憲法解釈できるならば、その方を取りたいと思っているのであります。熱意においては決して人後に落ちません。それだけは誤解のないようにしていただきたいと思います。  最高裁判所が解釈することができるならば、そういうようにしたいと思いますけれども、ただいまの学説の通説は、個々の事件について裁判所は審査するというのが、裁判所としての立場からそれが至当であるというような解釈でありまして、一般に自衛隊法が違法だというような裁判は最高裁判所ではできないというのが、今日の解釈でありますから、あの法律を憲法違反だ、無効とするとするのには、特別の機関をこしらえる規定が憲法に挿入されなければならないと思っておるのでありまして、憲法改正の際にはそういうこともむろん考えなくてはならないと考えております。
  104. 牧野良三

  105. 小坂善太郎

    小坂委員 私は自由党を代表いたしまして、鳩山総理を中心として、関係閣僚に対し四、五同月暫定予算を中心として質疑を展開いたしたいと思うのでありますが、この予算委員会で相談をいたしまして、原則としてあなたの御答弁はお立ちになるということになっておりますが、おからだの御都合もありましょうから、御気分で、場合によってはすわったままで答弁されてもけっこうでございます。  鳩山内閣は、今回ここに暫定予算を提案されておりますが、またこれが事務的なものであるという理由でもって、非常に早急な審議を要望されております。私ども、もとより暫定予算国民の希望もあり、できる限りこれを早く通過させたいと考えておるのでありまするが、しかし四、五両月の予算といえども、やはり三十年度予算の一部でありまするから、その背後の構想というものについて十分に了知しておきたいと考えまして、理事会においてその構想を要求いたしたのであります。昨日その構想なるものが出て参りました。私どもに言わせますれば、これは一種の作文のような感じがいたすのでありまするが、しかしこの閣議決定、すなわち内閣においてこの作文に責任を持つかどうかということにつきまして問いただしたところ、総理大臣から責任を持つという話がありました。われわれは、あの構想の中に数字を入れていただきたいということを申したのでありますが、数字は遺憾ながらきわめてわずかに入っておる。しかし一つ入っておりましたことは、一兆億円の予算のワクということが書いてあります。これは昨日の御答弁で、内閣総理大臣が、閣議決定と同様な責任を持つと言われたのでありまするから、おそらくこれは一兆円を出ることはなかろう、三十年度予算は一兆円以内である、かように思うのでありますが、この点さように了承してよろしゅうございますか。
  106. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その通りであります。
  107. 小坂善太郎

    小坂委員 そこで私は、少しお耳ざわりなことを聞くのでありまするけれども、第二次鳩山内閣というものは、これは幸いにして選挙に勝たれたので、閣僚は些少入れかわりましたが、経済閣僚はすべて同一人物である。でありまするから、この予算というものに対する構想は、あなたが十二月に政権をお取りになりまして以来、すでに考えておられなければならなかったものだと思います。ところが選挙中に、幾多の重要施策に関しまして関係大臣が、総理大臣を初めいろいろの場所において大きな話をされた。いわゆる公約をされたのであります。しかしながらその公約というものが、そういう話をしながら、その背後にある資金の裏づけ、予算の裏づけというものが一体考えられていたのであろうかどうか。今日まで、三十年度の予算も、ああして数字を一つも書いてこない。今幸いにして一兆円という話だけはありましたけれども、その内部の問題をほとんど検討されていなかったということが、非常に私としては予算を無視して行われた、こういうように考えるのでありまするが、総理の御所信を承わりたいと思います。
  108. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 関係閣僚から答弁してもらいます。
  109. 小坂善太郎

    小坂委員 私は総理大臣の総括的な御所信を承わっているのであります。
  110. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 関係閣僚でなければわかりません。
  111. 小坂善太郎

    小坂委員 総理大臣は、おわかりにならぬことを各所でおっしゃったということにもなりまするが、これはだんだんにお話をして参りたいと思います。鳩山内閣は、成立以後日が浅いのであるから、時間の余裕もない、従ってはっきりした答えはこの場でできない、こういうことも一応の弁解として聞いておきまするが、政府が真に国務を尊重して、真に予算の編成というものに対して誠意を持っていたならば、こういうことはできた。今日においても、もうすでに相当の構想を言えるものであるということは、私は断言できると思うのであります。予算委員会において示されました大蔵大臣構想、これはもう正式のものでありまするが、一兆円のワクということは明瞭になっております。それともう一つ公債を発行しない、こういうことが言われていると思うのであります。ですから、私どもをして言わしめていただくならば、この予算構想というものは、前内閣の継続である。前内閣は一兆円予算、公債発行をしない、この二つの柱のもとに予算を編成しておったのでありますが、この構想はちっとも違っていない。であるから、いわば費目の組みかえでできるのであります。各費目を、予算をどう盛っていくか、重要経費をどうつけていくか、こういうようなことであるのでありまして、鳩山内閣は、これは第一次内閣から通算してみますと、百日以上をけみしているのであります。こういう長い時日をけみしながら、今もってその構想数字的な裏つけが全然できないということは、はなはだ遺憾に存じますが、総理はこの点についてどうお考えになりますか。
  112. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいま具体的に研究中であります。
  113. 小坂善太郎

    小坂委員 そういうお答えがあるだろうと思っていましたが、憲法八十六条には何と書いてありますか。毎年の予算国会に提出して、これが審議を受けるということが書いてある。財政漁には、内閣は毎会計年度の予算を前年度の十二月中に国会に提出するということが書いてあるのであります。これが一月に延びるということは、従来よくあった慣例でありますが、しかし当年度以内におきまして翌年度予算の編成がなかったということ、国会にこれが四月になってから提案されなければならなかったということは、新憲法下、新財政法下、いまだかってないことなんであります。政府がこの暫定予算を出すということが、何か当然のことのように考えられているように思いまして、私は非常に不満なんでありますし、また昨日の予算大綱も、これはどうしてもできぬものを、とにかく要求があるから出してやったというような、ちょっと恩着せがましい口吻を感じまして、はなはだ遺憾に思っておりますが、こういうことはどうしてできたかといいますと、政府選挙ということに対して異常な興奮を示され、政権というものに対して異常な執着を示されたる結果、国民に対して責任を負えないような、非常に膨大な公約を乱発された結果、こういうことになったんだと思うのであります。こういうことば、国民に対して責任を負わない非常に不親切なやり方であると思うのでありまして、明朗なる政治を看板とされる鳩山総理にしましては、少々できが悪いんじゃないかと思いますが、この点はどういう御感想を持たれますか。
  114. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、大蔵大臣その他の関係閣僚が責任を持って、そのうちによく御説明ができると思います。
  115. 小坂善太郎

    小坂委員 これは、三十年度予算が提出されてからよく伺いたいと考えておりまして、この点は留保しておきますが、それでは三十年度予算はいつ提案されますか。
  116. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 大体四月十五日ごろに提出するつもりであります。
  117. 小坂善太郎

    小坂委員 この予算委員会におきまして、総理大臣が四月十五日に予算を提案されるということを言明されたことを、はっきりと承わっておきます。  次に、ここに出ております暫定予算でありますが、これはあくまで事務的な予算でありますかどうですか。
  118. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 この四、五月の暫定予算は、今御質問のように、四、五月の間にぜひとも支出しなければならぬと思われる金額を計上いたしたものであります。
  119. 小坂善太郎

    小坂委員 この説明書を拝見しますと、継続費については、三十年度年制額のうち、四、五月に支出を必要とすると思われる金額を計上していると、こう書いてあります。これは、その点においてはよろしいと思う。ところが府県でもやはり事業をしているのであります。府県で継続事業として行われておりまする土地改良その他の事業がたくさんにあることは、大蔵大臣承知通り。国においてすることが必要であるからここに事務的に経費を盛ったとするならば、府県に対する継続事業の補助というものは、何ゆえに削られたのでありますか。
  120. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 大体国の直営、災害復旧、これを計上しているのであります。地方の分につきましては、もしも資金繰り等に支障がありますれば、この継続事業については短期融資で出す、こういうふうな考え方をしております。
  121. 小坂善太郎

    小坂委員 私は、この考え方が非常に地方自治尊重の念に欠ける考え方だと思うんです。国でやはり一定の方針を持ち、地方でいたしまする事業に対して補助をいたしておるのでありまするから、国において事業の継続中のものは認めるというならば、府県でもやはり国家、国民のために事業をやっておるのであります。これに対するところの補助は当然入れるべきものと考えます。  河野農林大臣に一言だけ承わっておきまするが、府県団体営の土地改良事業というものは今どのくらいございますか。もし今数字が何でございましたら、あとで資料として御提出願ってもけっこうでございます。
  122. 河野一郎

    ○河野国務大臣 今調べさせておりますから、後ほど資料として差し上げます。
  123. 小坂善太郎

    小坂委員 この府県団体営を削ったということは、私は非常に不満でありますし、建前といたしまして、これは一種のポリシーである、政策である、国においてのものを事務的に支出するならば、県のものを特に削るということ、そのことが暫定予算政治性が入っておる、こういうことになるのでありまして、この点はあとで予算を決定いたします際に、われわれとしてわれわれの考えを十分述べるということを留保しておきたいと思います。  次に、昨日のお話で財政投融資を三千億円するということを言っておられまするが、これにつきまして後ほどまた伺いまするが、一般会計からの財政投融資というものは考えておられるのでしょうね。考えておられるとすればどのくらいか。
  124. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 考えておるわけでありますが、それは今全体の予算関係を総合的に見た上で、金額については考えたいと思っております。
  125. 小坂善太郎

    小坂委員 一般会計からの財政投融資は必ずする、こういう言明と承わっておきます。  次に、鳩山内閣外交方針につきまして伺いたいと思いまするが、昨日犬養君からもいろいろ質疑があったのでありまするが、鳩山総理が従来しばしば声明されたソ連・中共に対する外交方針、またはその考え方につきまして、私どもは非常に心配をいたしておるのであります。これは国内においてのみならず、国外におきましても不安を生じまして、ある意味において、悪影響をもたらしたという事実はおおいがたいものがあると思うのであります。総理はいかなる国とも仲よくするということを言っておるようであります。これは非常に抽象的には、また観念的にはけっこうなことであると思いまするが、問題は、政府として現実の問題をいかに処理するかということが問題であると思うのでありまして、単純に、無条件にソ連。中共と仲よくするということは、日本の置かれておりまする現実の国際的な地位をどう考えるか、ソ連・中共との今日までの関係をいかに把握するかということを考えなければならぬと思うのであります。どういう手段がいいか、どういう条件が考えられるかということは、十分考慮しなければならない問題でありまして、ただ単純な仲よし論ということだけではいかぬと思うのであります。われわれは中共等につきましても、できるだけ経済上の問題につきましては、中共貿易等を促進する考え方を持って従来進んできたのでありまして、現に昨年は、一昨年に比べて貿易額は約十倍に伸びておることは、御承知通りであります。鳩山総理の対ソ国交調整論が、ソ連サンフランシスコ講和条約による行動に出ることを期待してやっておられるのか、あるいはまたサンフランシスコ講和条約の所定の範囲を逸脱するような条件をもあえてのんで、将来の日ソ関係調整をはかろうとする意向でありましょうか、それを承わっておきたいと思います。
  126. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 サンフランシスコ条約を逸脱する考えは持っておりません。
  127. 小坂善太郎

    小坂委員 あくまでも平和条約の線で行くということは、これは当然でありまして、もしこれを逸脱されるというようなことになりますれば、二十六条によりまして、加盟国全体がこの線に均霑することになって、一大混乱を起しまするから、これはあなたでなくても、とうていこんなことは考えられない、だれでもさように言う、だろうと思っております。過日、ソ連との戦争状態の終結宣言を、わが方からするということを言われております。これは昨日もお話があったようですが、きわめて異例な措置であって戦争終結宣言ということは、事柄の性格上、戦勝国の方からするのでありまして、われわれ敗戦のうき目を見たものから、何ゆえにこういうことをあせって、終結宣言を出すということを言われたのであるか、この点を承わっておきたいと思います。
  128. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私が、ソ連に対して戦争終結宣言をした方がよいだろうというような話をしましたのは、三年前の話でありまして、三年前の九月の十二日に、日比谷公会堂でいたしました。確かに言ったのであります。その当時は、戦争状態終結未確定の事態を、どうしても早く戦争状態需給確定の事態にしたいという一念があったのであります。すなわちその時分は、一九五三年ごろが危険だという、世界第三次大戦が起るかもしれないといううわさの非常に高かったときであります。そういう場合に、戦争状態終結未確定の事態に置いておくことは非常に危険だと思いまして、そういう論をいたしました。今日そういうような考えをするばかはありません。昨日も犬養君に対して、戦争状態終結のための宣言はする必要はないだろう、事実によって戦争状態が終結しておるということが確認せらるるような事態を作るがよい、それは領土問題なり、未帰還の抑留者や戦犯者を帰してもらう、あるいは貿易をするとかいう事実によって、戦争状態が終結したということをお互いに確認できるような事態を作ることが目的だ、こういうように犬養君に話をしておりましたことは、お聞きになっておると思いますが、その通りであります。
  129. 小坂善太郎

    小坂委員 戦争状態終結宣言というようなことは、情報を十分に知らなかったために言うたことである、そこで、今はむしろ事実問題の解決から入って行かねばならぬという話になりまして、戦争状態終結宣言をわが方からするということ、この考え方は放棄されたということを承わりまして安堵いたしました。われわれにおきましては、ソ連からかって受けました、中立条約を一方的に廃棄された態度というようなものに関連して、非常に危惧を持っておるのであります。でありますから、国交調整の問題というものは、われわれとしましては、どうしてもこの今お話のあった領土問題、あるいは未帰還同胞帰還の問題、また北洋漁業の問題、あるいはしばしばソ連によって妨害をせられたわが国の国連加盟の問題、そうした問題を結了するというソ連の誠意を見て後に、私どもは話し合っても決しておそいことではないではないか、今日まで十年近くの日子の間、戦争状態を法律的に続けておるというようなことで過ごしたのでありますから、何を好んでこの際あせって、あわてふためいて、わが方からこういう特殊のまことに奇特な申し出をする必要があるかと考えておったのでありますが、そういうことでないならけっこうでありますが、私が今申しましたような趣旨で総理大臣は考えておられるのでありますか、どうでありますか。
  130. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ソ連や中共と国際関係を正常化するということは、できるだけ早い方がよいと思っております。
  131. 小坂善太郎

    小坂委員 ちょっと答弁にならないと思うのでありますが、早い方がいいのは、もうあなたに伺わなくてもよくわかっておるのでありまするが、ただそういう話をするときに、今私が申したような四つの問題、国連加盟の問題、北洋漁業の問題、同胞未帰還の問題、あるいは領土の問題、昨日も話があったんですが、千島、南樺太の問題は、わが方は領土の請求権は放棄しておりますが、これがどこの国に帰属するかという問題については、まだ確定を見ておらないことは御承知通りでありまして、そういう問題をあなたがどういうふうに御解釈になっておるか。こういう問題について十分ソ連の誠意を見なければ話ができぬ。日本ソ連の間は——ほんとうに平和ということは、相互の理解に発しておることなのでありますから、相互の理解ができる、かように考えておられるかどうか、こういうことなんでありますから、その点をお答え願います。
  132. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 昨日詳しくお話をしました。あなたいらしたでしょう。そのときお聞きになっておる通りであります。
  133. 小坂善太郎

    小坂委員 御疲労のせいか、どうも少しお答えが不満であります。私の聞き方はまた違うのでありまして、こういう点をあなたは強く主張をして交渉するという気がまえであられるのかどうか、こういうことを開いているのであります。
  134. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 むろん誠意を披瀝して強く主張いたします。
  135. 小坂善太郎

    小坂委員 今伺っても、特に成案もないようにもとれるのでありますから、これはこの程度にしておきます。  次に私どもの立場から、総理がこの間記者団に語られた原爆貯蔵の問題を少し伺っておきたいと思います。総理は、原爆というものは平和のために役に立つならば、これは別に特に取り上げて言うべきことでもないという話をされたのであります。しかし、これはアメリカからそういう話があったわけでなし、仮定の問題であるということを言われた。そこで、総理は一国の総理大臣、何ゆえにこれは御自分の方から言い出されたのであるか。何ゆえに自分の方から仮定の問題を言い出されたのであるか。平和のために役に立つならばと言われるのでありますが、あなた御自身が、原爆、水爆というものは平和のために役に立つと考えられるかどうかということが問題なんであります。その点はあなたはどうお考えになりますか。
  136. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 現在、世界の平和が維持せられているのは何であるか、どういう原因によって世界の平和が維持されておるかということについては、人の見方は違うのでしょうけれども、ある人は、現在世界の平和が維持せられているのは、アメリカが優秀なる戦闘力を持っているためだ、こういうことを言っている人があるのであります。もしもアメリカソ連よりも優秀でない戦力を持っているならば、イギリスなどはすでにソ連の占領するところとなっているであろうというような考え方をしている人もありますから、それで現在の平和というものは、力による平和、力以外には平和を維持し得ないというような考え方をしておる人があるくらいの世の中でありますから、そういうふうに、戦争を防止し、平和を維持するために戦力が必要である世の中ならば、そういうようなものを持つということが必要であるかもしれないと私は考えたので、アメリカがそういうものを持ちたいといったときには、こういう見地から考えますということを外人記者団に答えたのであります。私は何も作っていい出したのではない。外人記者団が質問をいたしまして、アメリカ日本アメリカの基地に原爆を持ちたい——水爆の話はありませんでした。原爆を持ちたいといったときにどうするかという質問でしたから、今申したような返事をいたしたのであります。
  137. 小坂善太郎

    小坂委員 御趣旨は一応伺っておきますが、そういう考え方を通して、日本が戦争に接近するということも一応考えられるのでありまして、この問題については、御質問があってもノー・コメントという態度もとれるのであります。こういう問題は、非常に慎重にお扱い願いたいということだけ申しまして、これは本予算の際に毛さらにこの問題を突っ込んでいきたいと思います。  次に、中共との関係でありますが、総理は、二つの中国があるというこの現実を認められるということを言っておられます。しかし御承知のように、サンフランシスコの講和条約におきまして、国民政府との友好関係というものは、私どもは確認をいたしておるわけであります。中共との関係を正常化するということは、現状におきましては両国政府を同時に承認して友好関係を結ぶという問題でありまして、これは両国間においてその合意がなされぬことにはできない。しかしその両国間が互いにこれを反駁し合っておるということは、御承知通りでありまして、私はこのことは非常に困難であると思う。それぞれと条約を作るということのようにもとれるのでありますが、この点はどういう気持で言われたのでありますか。この国会の議場というのは、ある意味で非常に弁明の機会を与えるものでありますから、この点そうした気持でお答えを願いたいと思います。
  138. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 現在国民政府があり、現在中共があるということは歴史的の事実でありますから、両方がけんかをしないようにしてもらいたいと思っておるのであります。一方中共という事実あるものを認めないわけにいかなでしょうし、むろん国民政府はあるのでありますから、両方、二つの中国を認めるということはやむを得ない事実だと思っておるのであります。
  139. 小坂善太郎

    小坂委員 この問題は、一国の政府が認めるということは、やはり国の主権に関する問題であって、それぞれと友好関係を結ぶ以上、条約を作るという問題は当然にあると思う。この点は外交技術上から見て、外務大臣どう考えておられますか。
  140. 重光葵

    ○重光国務大臣 事実上二つの権力者がおるということは、これは認めざるを得ないと私は思いますが、しかしながら、国際法上の意味において法律上二つの政府を認めるということは、非常に困難だと思います。それは今問題になっておりません。
  141. 小坂善太郎

    小坂委員 今のお話を伺って私ども非常に奇怪に思いますことは、今のお話では、前内閣と何ら異なるところはないということが明瞭なんです。われわれ前内閣におきましても、そうした法律上の問題があるのであるが、できるだけ善隣友好の関係を進めようということを言っておった。しかし、それに対して中共貿易をやる必要上、中共政府とも仲よくする、すなわち国交関係調整する、そういうことを言われたことが私は重光外交の特色といいますか、むしろこれは鳩山外交かもしれませんが、鳩山外交の特色であったというふうに一般国民は認識しておるのであります。今のお話で、根も葉もない、お化けのような、風袋ばかり大きくて中身もないような話であったということが明瞭になったが、それでよろしゅうございますか。
  142. 重光葵

    ○重光国務大臣 これは、実際上中共地区との貿易をできるだけ進めていきたい。この点については、前内閣の意向と同じであるというお話でありますが、さらにこれ以上に中共との貿易を進めていきたい、こういうわけであります。
  143. 小坂善太郎

    小坂委員 それ以上にという話でありますが、前内閣も、別に一カ所に停止しておるわけではない、できるだけ善隣友好の関係を進めるということであって、私の言っておるのは量の問題ではない、質の問題であります。質的に外交の問題が違っておるかどうかということを伺っておるのです。鳩山総理でなく、あなたに申し上げますが、重光外交と岡崎外交は、対中共の関係についてどう違うか、こういうことをはっきり伺いたい。質的にどう違うかということです。
  144. 重光葵

    ○重光国務大臣 私は、前の内閣の時代に、はっきりと中共との貿易関係を進めるという方針をもって進められておったということを十分了解しておりませんでした。私は、中共との関係は、事実上そこにある地区に対して、日本の経済問題の改善のために貿易をでき得る範囲内において少しでも進めるということは、非常に重要なことであると思って、それを促進したい、こういう方針をもって参ったのであります。
  145. 小坂善太郎

    小坂委員 驚くべきことを伺ったのですが、あなたは、とにかく当時改進党の総裁なんです。一党の総裁が、時の政府のやっておることを御存じないということは、いかに野党であっても、私は職務怠慢のそしりを免れないと思う。中共貿易がなぜできないかというと、これはいわゆる禁止品目があったからです。貿易に制限があったからできないのです。その禁止品目というものを、だんだん拡張して行こうという努力をわれわれはやっておった、いわゆるココム・リストというものに手を触れて行く、こういう考え方で私どもはやって来たのでありまするが、あなたは、ただ単に仲よくしよう、貿易を促進しよう、しようしようというだけで、具体的に、質的には何もないということを、今の答弁の中で腕曲に言われたのでありまするから、この程度にいたしておきましょう。  次に、外務大臣は、日米協力を緊密にしてわが国の国際的地歩を強固にすることが、かえって日ソ関係調整をする近道であるということを言っておられるのであります。また重光外交の基本方針として、第一に対米協力だ、第二に東南アジアとの友好関係増進だ、第二に共産圏との国交回復の問題であるといっておられます。あなたは、共産圏に近づくには、迂回して日米協力関係を緊密にして行くことがいいのだというふうに考えておられる。鳩山総理は、直接にソ連と話をすることがいいんだというふうに言われております。この間に介在する見解の相違が、何となく二重外交であるというような非難を受けておるのだと思いまするが、この機会に、ひとつ重光外務大臣から明瞭にこの考え方を伺っておきたい。
  146. 重光葵

    ○重光国務大臣 私は、日本外交といたしましては、あくまで平和外交を進めて行かなければならぬ、こう思っております。平和外交が一体何であるかということを今詳しく申すことは、差し控えてよかろうと思います。その平和外交を進めて行くためには、今の日本の置かれておる地位をはっきりと把握して、そうしてその基礎の上に立って行かなければ、現実外交でないと思います。日本がサンフランシスコ条約によって平和及び独立を得て、その地位に立っておるということは、どうしてもこれを動かすことはできません。それは、つまりアメリカとの協調、協力関係を緊密にするということが基調になることは、当然であると考えております。それが日本の地位を国際的に作り上げる、これは何もアメリカだけの言うことを聞くということじゃない。それは、日本自主独立の見地から、その方向に寄らなければならぬと思います。その意味におきまして、日本はあくまで平和的に外交を進めて行かなければならぬ。その基礎の上に平和外交を進めて行かなければならぬ。それでありますから、何も共産主義に賛成するとかなんとか、そういう意味では少しもございません。しかし国家と国家との間の関係を平和関係に置く、戦争関係を終結するということは、日本の自主外交の大きな平和外交としての目的を達するゆえんだと思っております。その意味において、私は米国との協力関係を基調として、できることだと考えております。今第一段、第二段、第三段と、こう言われておりますが、さようなことを言ったこともあるでしょう。しかしこれは、何も重要性によってこれを区別したのではございません。日本としては、あくまで東洋の国として、アジアの方面において友好関係を進め、そして日本の経済の発展の基礎を作るということは、これはどうしてもやらなければならぬことのように考えます。しかしその経済の発展は、やはり基調をどこに置くかというと、米国との協力関係がこの発展に貢献するところが非常に多いと考えます。従いまして、すべては実は一体となった平和外交であると私は信じておる次第でございます。
  147. 小坂善太郎

    小坂委員 まことに平凡にして、善良なる外交方針であると思います。なおこれについていろいろ伺いたいと思いますが、先ほどからメモが回って来て、総理を解放せられたいということでありますから、私もさようにいたしておきたいと思いますが、最後に一言だけ、重光さんよく国会などで、ソ連と談判する、談判するとしきりに言われますから、あなたの外交は談判外交であるという話もありますが、一方におきましては、結局実際の外交の主導権というのは、鳩山総理がやられるので、あなたのは残飯外交であるということをいわれておりますから、どうか一つ霞ケ関の伝統を守るあなたとしてその地位を自負されて、あまり人の言うことに調子を合せるようなことをあとで考えないで、やはり自主独往の考え方を持って、自主性を堅持されて進まれんことを切に要望いたしまして、あとの質問は先ほどのお話もありますから、内閣の方が外国人との話が済みましたあとで私は質問を進めたいと思いますので、以上をもってこの質問を中断いたしておきます。(拍手)
  148. 牧野良三

    牧野委員長 午後四時三十分より再開することとし、暫時休憩いたします。    午後二時七分休憩      ————◇—————    午後四時三十九分開議
  149. 牧野良三

    牧野委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  質疑を継続いたします。小坂善太郎君。
  150. 小坂善太郎

    小坂委員 休憩前に引き続きまして質疑を継続いたします。よく総理は超党派外交ということを言っておられるが、私も、この外交のごとき性格のものの継続性ということは、これは外交ばかりでないと思いますが、特に必要であると考え、大局的にはけっこうなことだと思っております。しかしこのごろ見られるように、総理と外務大臣の間の意見も、ときどきは食い違うというような段階におきまして、しかもそれを軽々に表明せられたあとで持ってこられましても、私どもとしましては、こういう外交方針に同調をしなければ超党派外交にならぬというような形においてお話を受けましても、これはどうにもならぬというふうに思っております。私どもが内閣におりましたときは、先ほどのような中座をされますると、国会軽視であるということを非常に言われたのであります。しかしわれわれは政府を長い間やっておりましたし、よく事情もわかりますから、さようなことは申さぬつもりでございますが、きょうのようなことも多少外交に関連があるのではないかと思います。もしお差しつかえない限りにおいてお漏らしを願えれば——防衛分担金の問題等についてどの程度削減の見通しが立ち得るのか、お答えをいただきたいと思います。われわれといたしましては、百億程度のものは削減できるのではないかという考え方を持っておったのでありますが、その当時から見るとさらに事情も違います。もう少し削減できるのは当然ではなかろうかと思っておりますが、その間の事情をお答えいただければよろしいと思うのであります。  なお、お答えはすわったままでけっこうでありますから……。
  151. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 失礼ですがすわったままで答弁いたします。  防衛分担金の交渉には私は入っておりません。重光外務大臣と杉原防衛庁長官が入っておりまして、私は入っておりませんから、防衛分担金の交渉についてならば、どうか重光君なり杉原君から御聴取を願いたいと思います。  超党派外交委員会というようなものは、直ちに作りましても、なかなかただいまの状態では各派の有力者が入ってくれない。まあ私的に相談でもしてから、だんだんとそういうようなものができるようにいたしたいと、ただいまは思っております。
  152. 重光葵

    ○重光国務大臣 防衛分担金の交渉は、今やっておる最中でありまして、実はまだ結末について少しも具体的に申し上げられる予想がつきませんことを御了承願います。
  153. 小坂善太郎

    小坂委員 交渉中の過程を私は特に聞こうと思いません。私どもの場合にはそういうことを申しますと、これは秘密外交であるということでさんざん悪たれをつかれたのでございますが、そういうものでございましょうと思います、外交というものは。この点は重光外務大臣は御了承になりますね。
  154. 重光葵

    ○重光国務大臣 御趣旨がちょっとわかりませんが……。
  155. 小坂善太郎

    小坂委員 お答えにくいでしょう。実はそういう交渉中のことを国会を通じて常に言えというような趣旨のことを、あなたの統率せられる改進党の議員は、われわれの内閣の時代にはしきりに言った。しかしそういうことはできぬものだということは、あなたはよくおわかりだろうと思います。
  156. 重光葵

    ○重光国務大臣 今の私の申し上げるのは、交渉中であって実は申し上げられる材料がないということを申しあげたのであります。交渉中のことは言いにくいというその点は、私もそう思います。
  157. 小坂善太郎

    小坂委員 これ以上いろいろ申しても無理だろうと思いますから、この程度にいたして、あなたのお答えも暗黙の了解というふうに了承しておきます。  次に重光さんは昨年の十二月十一日に外国向けに記者団と会見をされ、その中で外交方針を発表されまして、ソ連、中共との貿易は現状では多く期待することができないということを言われております。さらに今年になってからもプレス・コンファレンスでもって、自分は中共貿易は少額であるとは思うけれでも、少額でもそれだけプラスになる、ヘルプになる、こういうことだと言って弁解しておられるのであります。鳩山内閣国民に中共貿易という旗を掲げて非常に大きな期待を持たせておる。選挙の際にも、そうした鳩山内閣ができれば中共貿易が非常に伸びるであろう、こういう錯覚にとらわれて投票された人が非常に多いと思うのでありますが、あなたのお考えでは、この中共貿易促進の方法というものは、さっきも少し伺ったのでありますが、ココム・リストというものの範囲内でするということですか、それともそれを大幅に修正してやる、こういうことなんですか。
  158. 重光葵

    ○重光国務大臣 中共貿易をココム・リストの範囲内でやることはむろんのことであります。これをその範囲内でできる限り実際的に伸びるようにやりたいというのが第一階段でございます。ココム・リストというものもできるだけこれを拡張したいという努力を今やっておるわけでありますから、今なるたけこれを拡張したいという考えを持っております。
  159. 小坂善太郎

    小坂委員 中共貿易はすでに昨年度におき面して、朝鮮動乱の勃発当時の実績まで回復しておるのでありますが、現内閣として中共貿易というものは今年度どのくらいの程度輸出入のものを期待しておられ、輸出入貿易においてどのくらい伸ばすという見通しを持つておられるのでありますか。
  160. 重光葵

    ○重光国務大臣 去年のうちでもだいぶ伸びたことはお話の通りでございます。本年でも同じような率、もしくはそれ以上に伸ばすこと々期待しておるのでありますが、額については今はっきり申し上げられません。
  161. 小坂善太郎

    小坂委員 あなたは改進党の総裁のころから計画経済ということを盛んにおっしゃっておられます。私は計画経済というものは、社会主義のもとでなければやれぬという考えを持っておるのです。経済の計画性を方向づけていく、こういうことなら言えると思うのでありますが、そういうことで、そこにおられる文部大臣の松村さんが、吉田前総理に対して御質問があって、その問題を混淆してお尋ねになった答弁をいろいろ引用されておるのでありますが、私はそういうものだと思う。ほんとうの計画経済をやるなら、個人の、自由というものを抹殺して計画を立っていかなければ、経済の計画というものは進まない。ただ経済の計画を立てると言うなら言えるのでありますが、そういう旗じるしを掲げておられるあなたの党でありますから、さぞかし今年度の計画も立っておる、こう思ったのでありますが、それがない、これは看板に偽りがあると思います。  ところで中共貿易でありますが、昭和三十八年度におきまして、輸出が四百五十万ドル余であります。輸入が二千九百七十万ドル余であります。これが二十九年度になりまして、輸出が千九百十万ドル、さらに輸入が四千七十七万ドルと、輸出入においてそれぞれ、四一一%輸出がふえ、輸入が二二七%ふえておるのであります。こういうようなふえ方をしておるにもかかわらず、あなたの方が内閣をお取りになってから、実はこれは非常に奇異な現象が起きておるのでありますが、中共への輸出は十二月面五十万ドルであったものが、一月にはわずか五十八万ドルに落ちておる、これはあなたの方の話と逆なんです。なぜ、こういうふうにあなたの方が天下を取れば、中共貿易は大いに促進すると言われたのに、実際的の貿易額が落ちておるか、その理由をお考え通り伺いたいと思います。
  162. 重光葵

    ○重光国務大臣 私はその数字を実はよく心得ておりません。調査して御報告申し上げて差しつかえございませんが、実は私が承知しておる限りにおいては、そう衰えておらぬと承知いたしておりますが、これは一つよく調べてお答えいたします。
  163. 小坂善太郎

    小坂委員 お手元に一枚看板の牧牛がないのでは話になりませんから、後刻お調べになってまたお答えをいただきたいと思います。  さらに賠償のことでありますが、今度はフィリピンとの間に新たなる構想をもって、大野・ガルシア協定の四億ドルというものを一つ修正してかかるというような印象、今までの経過を全部御破算にして、フィリピンとの賠償解決をはかるというような構想が、新聞紙上で散見せられておるのであります。私どもといたしましても、もとよりフィリピンとの間の賠償は一日も早く円満に解決するということを期待しておるのでありますが、しかしこれはあまり国民負担の現状、あるいはビルマとの賠償協定との均衡を失してそういうものを無視してお考えになりますと、これまた一つ非常に大きな波乱の原因になると思うのであります。こういう問題につきまして、国民外交をモットーとされておるのでありますから、これは国民の最も聞きたいところであろう思うので、この機会に明らかにせられたいと思います。
  164. 重光葵

    ○重光国務大臣 フィリピンの賠償問題を一日も早く片づけたいという根本方針で進めております。ビルマの賠償問題、これは前内閣時代に締結されたもので、これと不当にふつり合いにやるということはむろん考えておりません。しかしながらフィリピンとの関係は、いろいろ賠償問題が複雑な経緯をたどって参ったのでありますが、日本側のなるべく早くこれを解決したいという根本方針が向うによく反映したものと見えまして、日本側の提案の通り、専門委員を向うから日本に派遣して、そうして日本において賠償方法を討議するということになりまして、専門委員が昨今東京に到着する予定になっております。その上で、わが方の専門委員も任命することになりまして、その専門委員の間で討議をして、賠償の方法をきめて、これを立案する、こういうことになっております。
  165. 牧野良三

    牧野委員長 なお小坂君に御了解を得たいと思いますが、経済審議長官碕達之助君が五時半ごろからお差しつかえがある、その様子を聞きますと、事情やむを得ないと思いますから、関連質問はどうぞ適当なときにお願いをいたします。
  166. 小坂善太郎

    小坂委員 承知いたしました。また明日でも機会を得まして……。実は今伺いまして、非常に真摯な御答弁であるとは存ずるのでありますが、内容は私も実は承知しておる。なぜかというと、これは外国電報、新聞にすでに出ておることなんです。これでは少し困ると思うのであります。私どもの内閣のときに、吉田秘密独善外交が悪いといって、私どもはさんざん毒づかれた。私は同じ毒づき方を実はしたくない。こういうことをしなければ非常に国会も明朗になると期待しておったのです。同じ態度をとられるのではなはだ遺憾に存じます。どうか一つそういうことがございませんように、先ほども触れた点ですが、今後自主独往の気概を持って、外国の方から日本人に最初に日本の賠償問題を知らされるようなことがありませんように、御配慮を賜わりたいと思います。なおこの問題は微妙である点もありましょうから、もう少し伺うことがありましたら伺わしていただきたいと思いますが、そうでなければこの程度にしておきます。どうでございますか。
  167. 重光葵

    ○重光国務大臣 外国電報にはありましたでしょう。しかし実はそれ以外のことは何にも申し上げる内容はございませんから、どうぞ一つ御了承を願いたいと思います。
  168. 小坂善太郎

    小坂委員 新構想というので非常に期待しておりましたが、双方から人を出して話し合いをする、それじゃ前にもやったことである、もう一度同じことをやる、こういうことになるのだと用心いますが、この程度にしておきましょう。そういうように外交問題につきましてもいろいろ鳩山総理のお考えと重光外務大臣のお考え方とが食い違っておるということは世間でいわれておりますし、きょう伺ってみますと、重光さんの内に蔵する考え方が別にあるのだが、鳩山総理もやられたことだから、つじつまを合せていこうという、あなたとしては非常に謙遜な御態度をとられておる。しかしそれはいかぬと思うのであります。あなたは専門家なのでありますから、どうか一つ専門的な立場において、内閣意見が疎隔しないように今後十分御努力願いたいと思います。しかしいずれ本予算が提案されるころには、まだまだ問題もありましょうから、これは機会をあらためて伺うことにいたしておきたいと思います。  大体そういう二つの外交鳩山内閣にあることを遺憾とすると同時に、さらに経済政策におきましても、二つの方向があるのではないかと感じておるのであります。一萬田大蔵大臣は、多年吉田内閣当時の日銀総裁としまして、財政、金融の関係は唇歯輔車の関係にある、車の両輪のごときものでありますので、まず自由党大蔵大臣と歩調を合せられて、わが国の財政金融の健全化に御尽力を賜わった方でございます。その結果といたしまして、金融の引き締めもあったし、あるいは緊縮財政を常に主張されまして、また多くの事績を上げておられる方でございます。一方石橋通産大臣も、これは私どもの財政の先輩としまして、多くの傾聴すべき経綸を持っておられる方でありますが、石橋さんといえばインフレ財政というような、およそ緊縮とは反対の印象を世の中に与えておられる。そこで積極財政論者としては一見識ではあると思いますが、この大切なときに、少くとも経済政策というものは一体でなければならぬと思うのであります。——文部大臣、お眠かったらどうぞ御退席になってもよろしゅうございますよ。
  169. 松村謙三

    ○松村国務大臣 いや、聞いております。
  170. 小坂善太郎

    小坂委員 同じような問題がありまして、あなたの部下の改進党の方が非常に痛烈に非難された。国会を何と心得るか、大臣席でもってあくびをするとは何事だ、党の代表が質問をしておるのに何事だ、こういうことがありましたが、私はあなたの部下がそう言われたことなんですからあなたはよく御承知のことだと思うから、これ以上は言いません。今後はお慎しみ願いたい。(笑声)  そこで、この鳩山内閣は経済六カ年計画というものをお作りになって、新聞に発表しておられる。私どもも内閣の末期におきまして、経済の見通しを十年ぐらいにわたって立ててみようという考えを持っておったのです。またそういう作業をやっておった。ところが内閣ができましてからもう一月足らずの間に、六カ年先の計画が新聞に発表された。これはなるほど有能な内閣だと私どもも感嘆いたしました。ところが私どもよくこの数字を検討してみますと、私どもは十年の見通しを——これは計画と言っては、いろいろな前提があるのではなはだおこがましい点があると思って、発表しないで握っておったものに、十分の六をかけたもの、十で割って六倍したものであるということが、悪口でしょうが、いわれておるのであります。私は、むしろこの際国民として知りたいことは、六年後の問題というよりも、三十年度自体の問題、この三十年度において物価がどうなるかということが知りたい。また国民所得がどうなるであろうか、産業活動がどうなるであろうか、あるいは国際収支がどうなるであろうかということが知りたいと思うのであります。こういう点につきまして簡単でよろしゅうございます、これは数字を言っていただければよろしいのでありますから、まずこの点について国民所得からお伺いいたします。大蔵大臣、どういうふうに見ていらっしゃいますか。
  171. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。私の考えでは三十年度の経済の一応の見通しといたしましては、大体多くの拡大は困難でありますが、今日の情勢よりも幾らかよくなっていくだろう、こういうふうな感じであります。従いまして国民所得につきましては、二十九年度に比べてそう大きな所得の増大はないが、若干はある、こういうふうに考えられます。
  172. 小坂善太郎

    小坂委員 数字を言っていただきたいのでありますが、若干というとどのくらいと見ていらっしゃいますか。
  173. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。二十九年度の国民所得は大体六兆というふうに押えておりますが、これより若干上回るだろう——今経済審議庁で詳しいことは調べておりますのではっきりするだろうと思います。
  174. 小坂善太郎

    小坂委員 実は十五日に予算を提出せられるということを総理大臣が言明されておるのです。私は若干の内容を知りたいのですが、親愛なる一萬田さんですから、これ以上はやめておきましょう。  もう一つ伺っておきますが、国際収支はどうなりますか。大体物価が予算の基礎であることは言うまでもない。御承知通り、物価はどういうふうに変動するのだということを基礎にして予算が立てられるのです。それから国民所得というものは、若干でなくて、明確に把握されてないと、正確な予算は立てられない。しかし立ったあとで変動することはもちろんございます。しかしいずれにいたしましても、そういうものをつかまないといけないと思うのでありますが、これは経済審議長官からでもどちらからでもけっこうでございますから、今の物価と国民所得と国際収支、その見通しを伺いたいと思います。
  175. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。国際収支の見通しも、そう二十九年度に比べて、増大するようにも考えていないのでありまして、大体輸出が十六億ドルないし十七億ドル、こういうふうなところを見ております。そして二十二億ドル前後で一応国際収支がとんとんくらい——これは見方がいろいろありますから、若干黒字と見る人もありますが、大体とんとん、そういうふうな見通しであります。
  176. 小坂善太郎

    小坂委員 どうも大体と若干とが交錯して出てくるだけで、これは総理大臣非常に督励していただかないと、予算が正確にならぬのじゃないかと私は思うのであります。大体若干予算では国会審議はできないのであります。  実は一兆円予算ということをおっしゃったのでありますが、一兆円予算というものを作るめど、何ゆえに一兆円予算というものをきめておられるのか、これは現内閣考え方の基本でありますから、これを伺わしていただきたい。    〔委員長退席、中曽根委員長代理着席〕
  177. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 一兆円の予算で行くという意味は、従来のデフレの財政金融の施策をなお三十年度において継続して、そして日本の経済の地固めをする必要がある、こういう見地から続いてやっているわけであります。
  178. 小坂善太郎

    小坂委員 そうしますと、まあ一兆円というものは特段に取り立てて言う理論的な根拠は乏しいけれども、心理的によいのではないか、前内閣がやっておったから前内閣方針を踏襲する。そして経済地固め政策も前内閣がやっておったから、その方針に従って本年度の予算を組む、こういうことになりますね。
  179. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 経済の施策というようなもの、あるいは財政経済、金融に関してもそうでありますが、そう変動が与えられるものではなのでありまして、これを規制しております客観的な諸条件というものが、大きな要素をなしております。むろん私は自由党が従来とられておった施策はきわめて適切だと思います。これが今後さらに展開をする、根本において展開の仕方とか方法はいろいろ考えられるのでありますが、いわゆる政策の発展がある、こういうように御了解を願います。
  180. 小坂善太郎

    小坂委員 前内閣の財政方針を是認せられたことはけっこうであります。またそれは当然だと思います。あなたはそれを是認せられればこそ、日銀総裁として金融の総帥としてやっておられたのでありますから、これは当然のことと思います。その方針はけっこうだと思う。前内閣の財政方針が正しかった、こういうお話がありまして、これは私も了承いたします。ただここで問題になりますことは、今度の選挙の際に、いろいろインフレ要因となるべき問題を公約としてたくさん掲げておられる。もちろんわれわれもこれはできればよいと思う。ただ一兆円という予算の制約もありますから、この制約のもとにおいて可能なる限りの努力をしようということでやっておったつもりであります。ところが社会保障も非常に必要なことでありまして、どうしてもしなければならぬ。そこで自由党内閣としても毎年社会保障費というものはふやしてきたのであります。また住宅を四十二万戸作られる、これもけっこうなことであります。しかしこれはから手ではできてないので、資金が要るわけであります。これらについてはだんだん伺ってみますが、一方において減税をやる、減税はもちろん必要なことであります。これはみんなそのまま消費資金になるとも思いませんけれども、減税をやるということは、そこに若干の消費購買力をふやすということで、これは間違いない。私がさっき国民所得の見通しを伺ったのはこの点に関連してであります。あなた方がこういう公約を言われるということは、さぞかし国民所得が増大するという前提で言っておられると思ったから伺ったのであります。それで国民所得が増大し、昨年で経済の地固め政策が終ったのだから、拡大均衡に向うのだ、こういう方針でやっておるのかと伺ったところが、あなたはやはり経済地固め政策というものは今年度も継続して行くのだ、こういうお話でございます。国民所得の見通しも本年とかわらないというようなことでありましたが、そうなりますと、この公約の実行というものは財政的に資金的にきわめて無理ではないか、こう思うのでありますが、これにつきましてはどなたでもよろしゅうございます。総理大臣なら一番けっこうでありますが、大蔵大臣でもけっこうであります。御答弁を願いたいと思います。
  181. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 減税をして、それがある程度消費に向うというお説もむろん傾聴いたします。そうして私どもはそれを資本の蓄積に向けようという努力を払うわけであります。そうして金融等を正常化していく、こういう考えであります。従いまして選挙のときにいろいろと公約をしておりますが、この実行についてたいへんな苦心を要するということは率直に認めます。いかにしてこれを実現するか。これを実現すれば国民生活に非常にいいことである。私はこういう見地から今全力をあげて一兆円のうちでこの公約を果そうといたしておるのでありますから、もしもこのこと自体がいいのならどうぞ皆さん方も、一つ御協力を願いたいと思います。
  182. 中曽根康弘

    ○中曽根委員長代理 小坂君に申し上げますが、申し合せの時間を大へん経過しております。
  183. 小坂善太郎

    小坂委員 大へん意外なお話ですが、私の時間がきまっているのですか。
  184. 中曽根康弘

    ○中曽根委員長代理 五時二分までです。
  185. 小坂善太郎

    小坂委員 これは私自身の時間でなく、党に割り当てられた時間でありますから……。
  186. 中曽根康弘

    ○中曽根委員長代理 今理事会を開いて月曜日の打ち合せまでやったのであります。
  187. 小坂善太郎

    小坂委員 私も理事ですが、それは聞いておりません。
  188. 中曽根康弘

    ○中曽根委員長代理 あなたは御質問中ですから、理事会を開いて西村君とも話して五時二分までとなっておるのです。
  189. 小坂善太郎

    小坂委員 私も理事ですが、質問中だからといって、勝手に理事会をやってきめてはいけません。私も予算委員長をやっておりましたからよく知っておりますが、そういう慣例はありません。
  190. 中曽根康弘

    ○中曽根委員長代理 ただいま西村理事のお話によりますと、月曜日の時間に食い込んでよろしいそうでありますから、質問を許します。  なお下野三郎君から関連質問の申し出がありますが、あなたの質問が終ったあと許した方がいいですか、それとも今やった方がいいですか。
  191. 小坂善太郎

    小坂委員 これはすでに与野君とも打ち合せしてありまして、私が関連質問をさせるときに合図をいたします。  委員長の御配慮か、途中で水をさされたので、鋭鋒がくじけたのでありますが、私も資本の蓄積に回すことはけっこうでありまして、その通りしたいのでございますが、これはよほどのことではできぬと思う。ことに減税は低額所得寿に対しての減税がおもでありましょう。低額所得者というものが資本の蓄積ができる、預金ができるという状態にあればいい。これは最近私ども非常に努力して参りまして、預金はふえております。ことに郵便貯金はふえております。しかし低額所得者に対して減税するから、これをみんな資本蓄積に回すという感覚で、あなたが大蔵大臣としてお出しになると、何だ、おれらの生活で貯金ができるかということになってしまう。これは非常にむずかしいところであります。これはだんだんお話することにして、時間の注意もありましたから、この程度にしておきましょう。これは非常にむずかしい問題であるということを申し上げておきます。さらに社会保障等も同断であります。  次に物価の問題でありますが、経済六カ年計画には物価の問題が織り込まれていないのであります。インフレにならないように経済発展をするというふうに言っておられますが、やはり物価がどうなるという見通し、あるいは輸出計画をどう血てるにいたしましても、物価の見通しがなければ輸出計画は立たぬと思うのであります。きのうの説明書ですか、御構想にあったのでありますが、物価を極力引き下げていくということはけっこうでありますが、どういう方法で物価を下げようとされるのでありますか。卸売物価は昨年末だいぶ下りました。私どもは一〇%の引き下げということで一応出発しまして、八%程度下った。ところが最近また——私はこのころの数字はあまり持ち合わせませんが、四%くらい反騰しているのではないかという説がありますが、これをどういうふうに扱われるのか。物価を下げるという方針をどういう方法で下げていくか、伺いたい。
  192. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今お話の、物価が下る。これは日本の経済におきまして、私が申し上げるまでもありませんが、消費が過多であり、またインベスト、投資が多かった、こういうことから物価の騰貴が招来された。そこで金融引締め、かつ財政を一兆円程度、前内閣でこういうふうにやった結果、まず流通過程にこれが響いてきて、そして過多な消費と過多なインベスト、これが、いわゆる資金面から抑えられた。その結果、物価が下ってきたと私は考えております。今後におきましては、この国際の諸情勢から、経済、特に貿易が中心でありますが、これの自由化、こういうような見地からいたしましても、一層国際的な競争が激しいから、どうしても日本経済は物価を下げなければならぬが、その過程においては、やはり生産コストを引き下げて、そうして物価が下っていく、こういうところに主力を集中しなければならぬと思います。従いまして日本経済の生産費を引き下げる。そこに今後力を注いで物価を下げていくという政策をとる。従いまして当面は、こういう施策をとる関係からしても、物価の騰貴情勢というものはできるだけ押えておかなければなりません。そこで政府公社関係の運賃、料金等の引き上げはとめておく、こういうような施策もとっておるわけであります。
  193. 小坂善太郎

    小坂委員 官業その他の運賃を据え置くということは当然だろうと思いますが、むしろ引き下げるというにはやはりある程度のデフレ政策と申しますか、地固め政策を強行しなければならぬと思う。あなたの今のお話を伺うと産業を振興していくというお話がありましたが、物価を下げるとか、産業を振興するとかいうことは、ただそのままの成り行きまかせではできぬと思うのです。これはどうしてもある程度の基幹産業に対する大きな財政投資がなければ、その設備を非常に新しくして、能率的なものにしていくということがなければできぬと思う。そこでそういうことをどういう方針でやっておられるか。あなたのお話を伺いますと、財政投資というものは三千億だ、昨年に比べて二百億ふえております。これは大体そういう余裕金もあるからふえるのは当りまえな話でありますが、どういうふうな目標でこれをやられるのか。それから物価の引き下げをどこからやっていかれるつもりであるか。何だか巷間伝うるところによると、石炭から物価を引き下げていくというお話もありましたが、こういうものに対する見通しを伺いたい。これは経済審議長官でもよろしゅうございます。
  194. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほど申しましたように、物価を下げる政策を実行する上におきましては、何といっても一番基礎的なもの、これを下げる。そういう意味合いにおきまして——これは私の考えでありますが、いろいろと他の人のお考えもありましょうが、私としてはまず石炭を下げる、この値段を下げることがすべての産業についてその生産コストを下げるのに普遍的な影響を与える、こういう意味で石炭を取上げたわけであります。
  195. 小坂善太郎

    小坂委員 それでは時間がないそうでありますから残念ながらはしょります。  次に完全雇用ということを非常に言っておられるのでありますが、完全雇用というのは、石橋さんが非常にお得意のケインズの理論で言っておられるのでしょうが、これはどういうことを言っておられるのでしょうか。これは一つどなたからでもけっこうです。完全雇用とは何ぞや、これをお答え願いたい。
  196. 中曽根康弘

    ○中曽根委員長代理 一萬田大蔵大臣、どうぞ御答弁願います。
  197. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私からお答え申し上げますが、すべての人が職を得る、これが望ましいのは占うまでもないことであります。(笑声)そういうふうな一つの目標に向って努力をする、こう考えるのが一番実際的だろうと思います。
  198. 小坂善太郎

    小坂委員 私はそういうことを聞いておるのではないのです。今一応の定義としてビバリッジの話がありますね。大体三%以下は摩擦的失業ではない、こういうことが一応の定義としてある。そこで政府の言っておられる完全雇用というのは、これは今の六カ年計画でもって六年後には完全雇用を実現する、こう言っておられますが、どういう程度を一体完全雇用というのかということを聞きたい。御承知のように、人口が百二十五万ふえておる。労働力人口としましても七、八十万のものがふえておる。昨年あたり一時百万ふえた時期もあると思うのです。昨年の七月ごろに百万ふえておる。この百万のものが新たなる労働力を求めて出てくる、それを完全に雇用するということをあなたの政府は言っておられるのです。それはどういうことを目標にして言っておられるのか、どの程度を言っておられるのか。そうしてなお加えて伺っておきたいのでありますが、昭和三十五年ですか、におきます就業者数というものの完全雇用を見る、こういうことなのでありますが、これはどういうことで完全雇用ということをうたわれるのですか。一次産業で幾ら、二次産業で幾ら、三次産業で幾ら、こういうことを一つおっしゃっていただきたいと思います。
  199. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 私、五時半に出なければなりませんので、一つ簡単に申し上げます。完全雇用ということは非常にむずかしいことでありまして、大体生産に従事する労働力人口、これは普通の人口は来年は百三万となっておりますが、労働力人口は七十九万人ふえる。これは労働力人口のふえ方が非常に多いのでございまして、六年後には四千三百万になる。これに生産の指数というものを考えまして、それに対して完全に仕事ができるようにやっていこうといたすわけなんですが、どうしても一割くらいのフリクションの失業者が出る。だから四千三百万に対して一%の四十三万人ぐらいの失業者は出る、こういうような計算になっております。
  200. 小坂善太郎

    小坂委員 現在労働力人口は四千万ですから、六年後に三百万という数字は甘いと思います。もう少しふえると思いますが、いずれにしましても、一割の失業者が出ても完全雇用だ、こういう説が現内閣の完全雇用でありますか。
  201. 高碕達之助

    ○高碕国務大臣 ただいま申し述べましたのは間違っておりました。一分であります。六年後には四千三百万でございます。
  202. 小坂善太郎

    小坂委員 ここで問題になるのは日本の産業構造でありますけれども、一次産業が圧倒的に多いわけです。それからいわゆる二次、三次の廃業においても中小企業、…十人未満を雇用している企業が圧倒的に多いわけです。そこで政府の財政投融資をふやすとか、そういうようなことでなかなか解決しない層なんです。この問題は私はきょうは結論を出せとは申しません。しかし政府においてよくお考えになって、三十五年には一%程度の失業者にとどまるというようなことは非常にむずかしいということをよく御反省になって、完全雇用とは何ぞやということについては、もう少しよくお考えになって、民主党政府の旗じるしをはっきりされたいということを要望いたすにとどめておきます。  次に、社会保障を行なって減税を行うということですから、なかなか困難な問題を両方やっていこうというわけです。そこで当然これに要する財源を生み出さなければならない。これはやはり行政整理という問題に触れざるを得ないのじゃないか。この行政整理という問題についてどう考えておられますか。  さらに、この補助金について大なたをふるわれる、これは一つの見識だと思います。しかしながら、この補助金を一体それでは幾らお切りになるのか、これをまず伺っておきます。補助金の整理の見通しがあるかどうか。これだけを伺っておきます。
  203. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 補助金を整理してどのくらいになるか、これは今やっておるのでありまして……。
  204. 小坂善太郎

    小坂委員 わからないということであります。そこでわからないながらこれは一つ要望しておきますが、先ほども触れたように、公共事業においての費用は、暫定予算では四、五月の両月出しておるのです。ところが地方にも府県税と団体営とがある。土地改良事業等は、ことに団体営の土地改良事業というものに対しては、非常に激怒しておるのです。これを一つ何とかされませんと、せっかくできたばかりの内閣も、暫定予算を出しただけで、断末魔の非鳴を上げられるようなことになっては非常に遺憾でありますから、これは一つ親愛なる河野農林大臣において善処されたいと考えておりますが、いかがでありますか。
  205. 河野一郎

    ○河野国務大臣 先ほどお尋ねになりました数字をこの際申し上げます。二十九年度の内地の改良事業の補助金は総額が六十六億円であります。このうち都道府県営の分が三十一億円、団体営のものが三十五億円になっております。なお北海道の分は九億八千万円、このうち道営分が三億九千万円、団体営が五億九千万円になっております。なおこのほかに農林漁業金融公庫からの融資があるのでございますが、これは補助額がおおむね三十六億円くらいになっておるわけであります。  ただいまいろいろ御注意がありましたから、予算編成に当りましては善処するつもりであります。
  206. 小坂善太郎

    小坂委員 その三十五億円の団体営、これを善処されるというのは、この予算の修正でもしなければ、私どもは善処できぬと思います。そういうおつもりは——これは民主党からでもあればいいでしょうが、そういう場合にはむろんわれわれ自由党としては、この点は復活してもらわねばおさまらぬと思うのでございますが、この点どうでございますか。
  207. 河野一郎

    ○河野国務大臣 申し上げました通り、府県営の分につきまして継続事業、団体営の分につきましては、大体その年度限りというものが多いのでございますから、これらを総合して勘案して善処いたしたい、こう思います。
  208. 小坂善太郎

    小坂委員 それじゃ総合して勘案の上善処される場合、私どもも意見を申し上げますから、善処を願いたいと思います。
  209. 中曽根康弘

    ○中曽根委員長代理 この際関連質問を許します。平野三郎君。
  210. 平野三郎

    ○平野委員 関連質問ですからごく簡単にお尋ねしますが、過般の本会議におきまして、社会党の日野吉夫君から農業に対する不当課税の質問がございました。これに対して大蔵大臣からも答弁がありましたが、大蔵大臣としてこの問題についてその後どういう処置をとられたか、その点をまず伺いたいと思います。
  211. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今日とっておりますのは二十九年度の税金で、これが二十八年度よりもふえております。それで特例を置きまして、五月まで納期を延ばしておるわけであります。それから査定につきましても、肥料とかその他の経費も税務署でよく考えまして、納税者の立場考えて課税するということをやっておるわけであります。しかしまたこれはお米のできぐあい等、あるいはまた凶作の状況が全国一様というわけではありませんので、特にひどいところもある。そういうところは格段に開きができておるわけであります。そういうようなところは特にいろいろ陳情も受けておりますので、よく調べてみたい、こういうふうに考えております。
  212. 平野三郎

    ○平野委員 ずいぶん驚き入った御答弁であると思います。この間本会議においても、これは社会党だけの立場質問したのではない、各党を代表して、国会の多数の意思で、この不当なる課税ということについて質問をしておる。それに対してあなたの御答弁では、ただ調査してみるという一般的なお話だけである。あのときはおそらく、私も御答弁を聞いておりましたが、所得が増加しておるのだから、税金がふえるのは当りまえだというあなたの御答弁であった。だからそれで済んだと涼しい顔で今日おられるのでありますが、所得がふえれば税金が多くなる、これは当りまえのことで、そんな当りまえのことならば、わざわざ本会議で日野君があれだけの質問をするはずはないのです。これは確かに新潟県の例で申しますれば、供出数量がふえております。二十八年度に二百十一万石であったものが、二十九年度には二百五十六万石供出しておりますから、確かにふえておる。すなわち数量が二割一分ふえております。しかし御承知通り、米の価格は二十八年度が石当り一万一千九百十四円、これが二十九年度は一万百十九円、九百七十五円というものが減っております。従って農家の収入としての増加分は一割一分にすぎないのであります。しかるに税金が二倍から五倍になってるおるということは、これはもう明瞭に不当なのであって、もちろん所得が増加すれば税金がふえるのは当りまえでありますけれども、その率が全然問題にならない。これは何が原因かといえば、要するに税務署の査定が実情と全然遊離して過酷である、こういうことにあるわけなのです。この点について、あなたは今調査しておるとか、そんな手ぬるいことで、いやしくも本会議であれだけの質問があったのに対して、大蔵大臣ははなはだ怠慢です。どう思われますか。
  213. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は本会議で御質問について答弁いたしましたが、あれはやはり二十八年度、二十九年度を比べまして米価も上っておりますし、米の生産もふえておるということで、農業所得が一般的に申してふえておる。これも間違いはないと私は思います。従いまして所得税もふえる。しかしそういう条件があっても、やはりふえただけ納めるのはなかなか苦しいから、納税者の立場考えて、納期を五月一ぱいまでは猶予しよう。それから査定についてもいろいろと肥料その他の経費について考える、こういうふうに申したので、今申し上げたのとかわりはないわけです。ただ先ほども新潟県の方々が陳情に参りまして、具体的な数字を示されてお話がありました。それでこれは困った、一つ特に調べてみましょう、こういうふうに申し上げたわけであります。そういうふうな意味でありますので御了承願います。
  214. 平野三郎

    ○平野委員 五月一ぱい延ばすということ、それはけっこうですが、それは法律でできることになっておるわけであります。しかしながら三月十五日が申告の期限になっておりまして、三月十五日以後は、延びることは五月に延びますけれども、延滞利子をとるわけであります。それではあなたは五月まで延滞利子をとらないで、特にこの点については延ばして適当な措置をとる、こういう御意見ですか、その点もう一ぺん念のためお伺いいたします。
  215. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、それはやはり納期を延ばすのでありまして、法律できまっております通りにやるべきである。ただ査定の額が違っておるというような場合については、別個に考えてみなくちゃならない、こういうふうに考えておるわけであります。
  216. 平野三郎

    ○平野委員 法律通りやるのなら、何もありがたくも何ともないことです。  それではもう一つ根本問題についてお尋ねいたします。こういう問題が起ってくるということは、要するに、税務署の査定が現実と遊離しておる。しかも、農林省が統計調査部というものを持って、供出の割当を食糧管理法においてやるわけですから、正確に調べておるわけです。それが税務署の調査とまるっきり違っておるわけであります。これは新潟県の例で申しますと、面積においては逆に税務署の査定の方が少い。すなわち農林省では十七万六千町歩というのが、大蔵省の方では十七万一千町歩になっておる。しかるに生産石数は、大蔵省の方は四百五十万石であるのに対して、農林省の方は四百三十五万石ということになっております。これは反収でいうならば、大蔵省の方が非常な過酷な査定をしておるわけであります。農林省が政府の責任において調査をし、その数字を基礎として割当が行われておるわけであります。しかるに同じ政府部内において、大蔵省がこの農林省と全然違ったことをやっておるということは、いかにもこれはつじつまが合いませんが、大蔵省としては、農林省がこれは政府の責任において調査をしておるわけですから、その数字に基いておやりになる意思があるかどうか、この点お尋ねいたします。
  217. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申します。これはやはり農林省はまた農林省としての見方がある。それからまた税をとる方の大蔵省は大蔵省としての見方があるわけであります。ですから、税をとる方はやはり大蔵省の方の見方でやりたいと考えております。しかしそれだからといって、無理をしたり公平を欠くというわけでは絶対ないのであります。それだけは申しておきます。
  218. 平野三郎

    ○平野委員 これはもう全然しどろもどろのわけのわからない御答弁で、了解に苦しむのであります。  それでは農林大臣にお尋ねをいたします。実は伝え聞きますと、農林大臣は、大蔵大臣けしからぬ、さっそくその不当な農業課税は是正するということを陳情団に言われたという、案外頼もしいお話を漏れ承わっておりますが、農林大臣としてはこれをどういうふうにお考えになっておるか。
  219. 河野一郎

    ○河野国務大臣 お答えいたします。大蔵大臣けしからぬと申したことはないのでございます。ないのでございますが、平野さんも御承知通り、従来の慣行が今お示しになりましたように、農林省の見方と主税当局の見方と違って参ったこともあるのでございます。それはそういう場合もまたあると思いますが、私といたしましては、農民の立場を十分考慮いたしまして、そうして先般も本会議お答えいたしましたように、今回の問題は各地々々にそういう問題が部分的に起っておるのでございますから、それらの実情を調査いたしまして、そうしてそれぞれの出先の機関を督励いたしまして、われわれも民間の農家の方の要望に沿うことができますように、事情は税務署の方に具申するようにいたして参りたい、こう考えております。
  220. 平野三郎

    ○平野委員 関連質問ですから、全く納得はできませんけれども、一応これで終りますが、ただ、今農林大臣からは、さっそく税務署に対しまして正確なる数字を出すように善処するというお答えがございました。念のため大蔵大臣に対しまして、さっそくこの問題について真剣に調査をして、そうしてどういう処置をとられたかということを本委員会に、後ほどでよろしいから、御報告願うこを要求いたしておく次第であります。
  221. 小坂善太郎

    小坂委員 ただいまの問題ですが、延滞日歩は二銭五厘でありますが、六月になるとこれは四銭五厘になる。調査がおくれておるために日歩がまた、あなたのお話のように、法律通りということでとられると、これはまた非常に問題になると思いますので、この点は十分事前にお話しておきますから、手落ちのないように願いたいと思います。  どうも時間の制約があるので大分飛ばしましたが、最後に一言伺っておきたいと思います。憲法改正論というものは鳩山総理大臣の持論であって、この前の国会におきましても、わが党の総裁が、鳩山さんは自由党を出たり入ったりまた出たりされたというような話もあって、攻撃をされたのでありますが、私は憲法改正するという問題は、一種の独立意識の高揚運動である。アメリカ人に与えられた憲法を、そのまま日本国の社会生活の基本として、未来永劫持ち続けるということは私はよくないことだと思うのです。    〔中曽根委員長代理退席、委員長着席〕 そういう意味で、憲法というものは、われわれ自身の手によって、日本国民考えを盛った憲法を作るということは、当然なことだと思うのであります。しかしながらこれを政府が言うちゃまずい。私どもが内閣におりましたときに、吉田さんにそれを言わせようと思って、しきりに言うておられたのでありますが、これは私は見当違いだと思う。政府が一体やるべきものでなくて、憲法というものは主権者たる国民が制定すべきものだと思う。ですから私は、政府はこの問題についてあまり発言せぬ方がよいと思う。またこれを特に国会において聞くということもやるべきものではない。総理大臣の意見いかんということを言って聞くことは、これは一極の不見識だと私は思う。これはこの問題の提案の仕方が従来誤まっておったのではないかと思いますが、何か憲法改正ということは、すぐに第九条の改正だ、再軍備をするということが憲法改正なのだ、憲法改正すなわち再軍備だ、こういうふうに一般に言いならわされておって、そういう方向が非常に若い人の耳に入っておる。これが自主的憲法を持つということを非常に困難ならしめておる原因であると私は思うのです。そこで私は提案するのでありますが、これは総理大臣の、何といいますか、政党政治の先輩としてのお考えでけっこうです。憲法というものは、これは容易に改正すべきものでないということはもちろんでありますし、一度作ったらこれは改正すべきものではない、不磨の大典であるべきものです。しかるがゆえに、明治憲法を作ります際にも、伊藤博文公がこれを起草するに八年の日子を費されておる。ですから、自分の方の政党が天下をとったら、すぐ憲法改正して軍備を持つというような言い方はやめて、国民憲法を作ろうではないかという気持を国民の中にはうはいとして起らせる、それも短時日のうちじゃなくて、少くとも五年間は現行憲法でいくのだけれども、その後はわれわれ国民がお互いに研究したものを持ち寄って憲法改正するのだということを、憲法改正論の要旨として持ち出す、今までの憲法改正、再軍備論というのは、すべて御破算にして、そういう考えを持ち出すということについていかに考えられるか、これは政党政治の先輩としての鳩山さんにお伺いしたいと思います。
  222. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国民のうちから盛り上ってきて憲法改正論ができることは、非常にいい考え方だと思います。しかしながら、民主国家におきまして、政府というものは、国民意思が盛り上るのもいいが、同時に国民を指導する責任があるのであります。政府という言葉は、ガヴァーンという言葉は指導するという意味があるから、民主国家において政府が指導して悪いはずはないと思っております。
  223. 小坂善太郎

    小坂委員 それでは私はその指導の方針が今まで誤まっておったではないか、こう思いますが、国民が軍備を持つために憲法改正するということじゃなくて、われわれ自身の手によって、われわれの国会の運営なり、地方自治のあり方なり、そうしたものをすべて検討して行こうという気分を盛り上げる考えはありませんか。
  224. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それは用心深い考え方だと思います。それがゆえに私は平和外交推進をまず言って、憲法改正選挙の際には申しませんでした。
  225. 小坂善太郎

    小坂委員 それはどうも少し違うと私は思います。平和外交推進ということと憲法改正ということは、これは別個の問題です。われわれが独立意識を高揚するのだ、こういう方向で——この際すぐに答弁しろといっても無理でありましょうから、そいう方向で憲法改正というものは考えなければならなぬ、そういうことをあなたは御研究になる方がよろしい、これは私の忠告にとどめまして、時間がありませんからこの程度にいたしますが、さらに、われわれは自衛隊軍隊ではないということをいっておって、そのうちに数の関係で、軍隊といいたい人があればいってもよかろうというような話になった。ところが最近見ますと、前の防衛庁長官でありますか、現行憲法下において自衛隊を無制限にどんなに増強してもよろしいのだ、無制限拡大論を唱えておる方がありましたが、新防衛庁長官は、この点はどうお考えになりますか。
  226. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 前の長官自衛隊無制限拡大論というような意味のことをおっしゃったということは私聞いておりません。私は、これはそういうふうに持っていくべきものではないと信じております。自衛隊の目的、任務等からいたしまして、その間おのずから客観的の限度、制約があるものだと存じております。
  227. 小坂善太郎

    小坂委員 この考え方——目的論的な割り出し方というものは、前内閣と違うと思います。この点は、この短時間では無理でありますから、一つあとでゆっくり御相談、御討議をいたしたい、かように考えます。  いろいろ伺ってみましたけれども、どうもお答えの内容は非常に空疎でありまして、結局大ぶろしきは広げたけれども、内容は、現内閣は前内閣の引き継ぎをやっておるにすぎない。ことに経済政策も、経済地囲め政策を踏襲する、あるいはまた外交問題におきましても、日ソ国交調整の問題もサンフランシスコ条約の線でやるということになれば、別に変った問題はない。中共貿易についても、ココム・リストの範囲内でということでやっておるのでは、これは変りばえはありません。そうすると何もかも現内閣は前内閣の踏襲内閣であるというふうな見解を、私はこの質問を通して持ったのであります。しかし本予算もそのうちに提案せられるでありましょうから、十分御研さんあられて、ほんとうに国民のためになる、国民に喜ばれる予算を一日もすみやかに、しかもお約束の期限までに御提案あらんことを要望いたしまして、そのときにまた私も批判をさしていただくということを約束いたしまして、この質問を終りたいと思います。(拍手)
  228. 牧野良三

  229. 田中稔男

    田中(稔)委員 私は社会党左派を代表して、特に外交及び防衛の問題につきまして質問をいたしたいと思います。  イデオロギーとしての共産主義には反対であるが、共産主義をもって立国の原理とする中ソ両国とも国交を開くことが、戦争を防止し、かつ日本の平和と安全を守るために必要であるという鳩山首相の外交上の御所見に関しましては、オールド・リベラリストとしての良識として、いささか敬意を表したいと考えるものであります。この良識は、今日国民の常識を反映しているのであります。そのために民主党は、今度の総選挙におきまして予想外の勝利をおさめたのであります。私は中ソ両国との国交回復及び貿易拡大というようなスローガンが、民主党選挙戦術としてきわめて有利であったという事実は認めますが、しかしそれだからといって、首相がただ選挙戦術としてのみこういうことを提唱されたというような、そういうけちな見方は私はしないのであります。首相自身申されましたが、自分はこのことをすでに二年半前から考えておったと言われた。私はあながちうそではないと思う。わが左派社会党当面の国会対策の一般的な方針は、いたずらに鳩山内閣を攻撃するのではなく、その選挙公約の忠実な履行を要求し、監視するのにあるのでありますが、この中ソ両国との国交回復、貿易の拡大というようなことは、国民すべてがひとしくその実現を期待しておりますところの選挙における民主党の最大の公約でありますが、私は首相がその病躯にむちうってこれが実現のために断固として邁進されんことを希望するものであります。しかるに昨日来、この委員会における政府側と自由党委員諸君との質問応答を聞いておりますと、政府が果してこの公約実現のために断固たる勇気を持続することができるかどうか、いささか心配であります。自由党委員諸君はしきりに自由主義国家群との協調とか、国際信義とか、こういう美しい言葉を用いまして、鳩山内閣をして再びアメリカ一辺倒外交に逆もどりさせようとしておるようでありますが、首相もこれに答えて、まるでこの委員室の隣にダレス国務長官が控えておって、われわれのこの質問応答を聞いておるかのごとく、きわめて遠慮した口吻で、アメリカに対する忠誠を誓う答弁を繰り返しておられるのであります。また最近はアメリカのスタッセンなどがやって参りまして、アメリカは陰に陽に鳩山内閣の新しい外交路線を妨害しようとしておるのであります。その上に、もともと鳩山内閣におきまして外交の責任者たる重光外相の態度は、総理に比べまして、はなはだしく消極的であることをあわせ考えますならば、鳩山民主党内閣も、結局は吉田前自由党内閣と同様に、アメリカ一辺倒に陥るのではないかと憂慮せざるを得ないのであります。もしそういうことになりましたならば、鳩山民主党内閣国民の激しい批判の前に倒れ、首相の政治的生命も永久に失われるということを、ここにあらかじめ警告しておきたいと思うのであります。  以下、外交及び防衛の諸問題につきまして、首相、外相、防衛庁長官その他に逐次質問を試みたいと存じます。  第一に、対ソ交渉に関する質問でありますが、すでにニューヨークにおいて沢田国連大使が予備交渉を進めておられると思うのでありますが、その今までの経緯、またいよいよほんとうの交渉はいつから、どういう全権団の顔ぶれで始まりますか、その点について、これは外務大臣の御答弁をお願いしたい。
  230. 重光葵

    ○重光国務大臣 日ソ交渉のこれまでの経緯は、そのまま発表いたしましたその通りでございまして、今国交の正常化を実現するための交渉を開きたいということに、彼我の考え方が一致いたしまして、それをどこでやるかという問題につきましては、日本側は国際連合の所在地であるニューヨークを希望いたし、そうしてソ側はこれに異存がないという段階にあるのでございまして、そこでこれからどういうふうにその交渉を進めるかということについて、今準備中でございます。さような状況にあることを御承知願います。  全権の顔ぶれは、腹案はございますけれども、まだ決定はいたしておりません。先方のこれに対する態度を見きわめて決定をいたしたい、こう考えております。
  231. 田中稔男

    田中(稔)委員 次に交渉の順序でありますが、戦争状態終結宣言をソ連側に発してもらうというようなことを求め、国交回復を先にやって、それから個々の具体的な懸案の解決に当るか、それとも個々の具体的な懸案の解決をやって、国交の回復に至るか、この手順の問題がありますが、これにつきまして外務大臣の御所見を伺いたい。
  232. 重光葵

    ○重光国務大臣 その手順の問題は、さきに鳩山総理から詳しくお話がありました通り国交回復に対する日本立場がございます。それらを十分開陳をいたしまして、そしてまた先方の立場をも聴取して、その交渉の結果国交の正常化に至るように努力いたしたい、これはにらみ合わしてその上で考えたい、こういうわけであります。
  233. 田中稔男

    田中(稔)委員 これは日ソ交渉の内容になることでありますが、戦犯及び抑留者の問題、北洋漁業の問題、領土問題、国際連合加盟問題等々の問題があります。しかしこういう問題は外務省としてはかねて研究をされておると思うのでありますが、今日までこういう問題について御研究の結果を伺えれば幸いだと思います。  そこでこのうちで特に領土問題についてお伺いしたいと思うのでありますが、鳩山首相は歯舞色丹返還をたびたび言われております。しかしこれは相当むずかしいということも付言されているようでありますが、この問題につきまして特に首相の御所見を伺いたい。
  234. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 お答えをいたします。歯舞色丹返還をさほどにむずかしいと言ったことはないと思います。ただ南樺太及び千島列島の返還を要求することは、歯舞色丹返還を要求するようにはいかないと思う、こう言ったつもりであります。
  235. 田中稔男

    田中(稔)委員 それでは歯舞色丹については何か首相の胸中に御成算がありますか。
  236. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 国際関係が正常化されまして、世界大戦が遠のいたというような感じができてくれば、やはりその返還の請求は達成できると思っております。
  237. 田中稔男

    田中(稔)委員 ソ連の方では、歯舞色丹千島列島の一部、こう考えて、千島同様に考えているようでありますが、首相は特に歯舞色丹千島と切り離してお考えになっているようでありますが、その点についての御説明を願います。
  238. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 歯舞色丹は、千島列島に属するよりは、北海道に属するものと解釈しておるのであります。
  239. 田中稔男

    田中(稔)委員 これは戦前におきましては歯舞色丹も北海道のやはり一部であり、千島全体がまた北海道のやはり一部であったのでありますから、戦前における行政区域の点においては同様だと思う。それをどうして区別されますか。
  240. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 歯舞色丹は非常に北海道に近うございまして、北海道の漁民がいつでも使っておりますから、千島列島とは同様には考えなくてもいいような気がしておるのであります。
  241. 田中稔男

    田中(稔)委員 そうすると、首相は単にそういう気がするというお考えであると思うのでありますが、私はこの両島が日本返還されることを国民の一人として強く希望するものでありますが、ただ首相のお考えはどうも少したよりないという感じがするのであります。  その次に千島と南樺太でありますが、これの返還を求めるというお考えがあることはわかったのでありますが、これをソ連返還の要求をするその場合に、アメリカとの関係がやはりきわめて重大であると思うのであります。もし日米安全保障条約があり、日米行政協定がある今日の日本において、無条件にこの千島、南樺太を日本に返した場合に、ソ連としてはこれらの地域にアメリカの軍事基地が設けられるのではないか、こういう懸念を抱くのはソ連としては私は当然なことだと思うのであります。昨年私同僚議員たちとともにソ連に参りまして、なくなりましたヴィシンスキー外務次官とも会いましたが、そのときの口吻からもそういうことが察しられたのでありますが、その点について首相はどうお考えになりますか。
  242. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私も同じような考えを持っております。
  243. 田中稔男

    田中(稔)委員 そうであれば、千島、南樺太の返還ソ連に要求する場合には、アメリカに対して何らかの交渉をしなければならぬ。日米安全保障条約、日米行政協定というようなものを、わが党の主張しますように全部これを廃棄すれば問題ないのでありますが、それがにわかにできません場合においては、少くともこの両地域が日本返還された暁、アメリカがこれを対ソ基地として軍事的に利用しないという保障だけはアメリカからとらなければ、この返還は実現しないと思います。そういうことについてのお考えをお尋ねしたい。
  244. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 同じような考え方をしております。
  245. 田中稔男

    田中(稔)委員 次に去る三月十六日、日ソ交渉の交渉地の問題について、ソ連側の正式の回答がもたらされたのでありますが、これが麻布におりますドムニッキー氏によって音羽の鳩山邸にもたらされたのであります。その前にドムニッキー氏が音羽の私邸をたずねたことは申すまでもないことでありますが、こういうふうにたびたびドムニッキー氏が首相を訪問している。そうして事実上外交使節の役割を果しているのであります。こういうことを考えまして、また対ソ交渉をします場合に、やはり何か日本ソ連の公館あるいはソ連の代表部というようなものがありますことが、これが非常に交渉上便宜である。なお最近の例をいろいろ申し上げてみますと、クルーピン貿易代表が昨年秋やって参りまして、現在まだ滞在中でありまして、日ソ貿易の交渉に当っておるのであります。ところがこういう人々も、どうも日本政府における扱いが適当でないために十分その使命を果し得ない。また別な例をあげますと、来たる五月の初めには日本学術会議の会長である茅誠司氏以下十五名の日本の学者の方々が、ソ連アカデミーの招待を受けてソ連に参るのでありますが、この問題は実はもう昨年六月以来の懸案であったのであります。日本学術会議ソ連のアカデミーと直接文書によって往復いたしますためになかなか容易に解決しないで、やっと最近に解決しました。もしこれが麻布にある元駐日ソ連代表部というようなものを介して交渉をやりますならば、もっとこれは迅速に解決を見ておったと思うのであります。こういうふうなことを幾多例を申し上げましたが、いずれは日ソ交渉が結実して、そしてソ連の公館が日本にできると思います。ところがすでに従来の駐日ソ連代表部というものは麻布にあるのでありますが、この機会に麻布にある元駐日ソ連代表部に対して政府としてはどういうふうな扱いをされるか、またドムニッキー氏なんかに対して一体どういうふうな処遇をされるか、これは外務大臣に一つ御所見を承わりたいと思います。
  246. 重光葵

    ○重光国務大臣 日本ソ連との間にいろいろ事実上の交渉があるのでありますから、一日も早く国交を回復して正式の文書をかわして、交渉の便にしたい、こう考えておるわけでございます。その間にいたしましても、通商のために今日においてもエカフェの会議ソ連の代表が参っておりまして、これらの人々が与えられたる仕事を遂行するためには十分な便宜を供与したい、こういうふうに考えておる次第でございます。
  247. 田中稔男

    田中(稔)委員 鳩山首相はソ連に対する国交の回復と同時に、中国との国交の回復についてもお考えになっておるような談話を新聞紙上で見たのでありますが、現在の中国、つまり正確には中華人民共和国に対しまして、何とか国交回復の努力をなさる御意向があるかどうか、お尋ねいたします。
  248. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 もとよりそういう考えを持っております。
  249. 田中稔男

    田中(稔)委員 ここで問題は二つの中国という問題であります。そこでこの点について首相のお考え伺いたいのであります。台湾というものは歴史的に民族的に中国の一部である、こういうふうに私どもは考えますが、首相もそういうお考えだと思いますが、いかがでございますか。
  250. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 台湾は中国の一部であったことは、確かにそういう時代がありました。しかしながら中共が国民政府の解放ということをやり出すことは、世界の戦争を引き起す一つの原因になりますから、この際は二つの中国が仲よくやっていくことを日本としては希望するのが一番いいと思っております。
  251. 田中稔男

    田中(稔)委員 その点についてちょっと私首相と食い違っているのでありますが、なるほど台湾には国民政府があります。蒋介石の政府がありますが、北京には中華人民共和国の中央人民政府があります。毛沢東の政府があります。なるほど二つの政権があり、二つの政府があります。しかしながら私のお尋ねしたいのは、台湾という土地が歴史的に中国の一部であるということ、また台湾に住んでおります人々が、あるいは広東省、あるいは福建省あたりから移住をした中国民族であるということ、こういう歴史的、民族的な事実はお認めいただけるのじゃないかと思いますが、政権でなく、歴史的、民族的な関係、これをお尋ねしておるのでありますが、いかがですか。
  252. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 その点は間違ってはいないと思います。
  253. 田中稔男

    田中(稔)委員 私の説でよろしゅうございますか。
  254. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ええ。
  255. 田中稔男

    田中(稔)委員 そうしますと、結局こういうことになる。二つの中国というのではなく、一つの中国に二つの政権がある。土地を異にして北京と台北に二つの政権がある、こう考えていいんじゃないかと実は思うのであります。たとえ話を申し上げて恐縮でありますが、かりに東京に鳩山政権がある。ところが四国の高知に吉田残存政権ができるといったような格好じゃないかと思います。その場合に私どもは中央政権鳩山内閣こそ日本政権だと思って、吉田さんがかりに高知県に吉田残存政権を作られましても、こういうものをわれわれは相手にはしない。しかもまた、吉田さんがかりに高知県に吉田残存政権を作っても、四国という土地はやはり日本国の一部であります。そういう関係が、この中国大陸と台湾についていえるのじゃないか。一つの中国における二つの政権、こういうふうに私は考えたいと思いますが、いかがですか。
  256. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 どうもそういうような考え方はできないと思っています。とにかく国民政府も台湾に一つの独立国家としての形式を備えておりますから。支配をする人民と土地を持っている以上は、一つの独立国家と見なくてはならないと思っております。
  257. 田中稔男

    田中(稔)委員 その点で鳩山首相とは所見を異にしますが、また私のたとえ話から申しても、首相としてもちょっと答弁に窮せられると思いますが、私どもはそういう考えであります。  そこで台湾の問題は中国の純然たる国内問題である。中国の国民が北京の政府を選ぶか台北の政権を選ぶかということは、中国国民自体の選択に属することでありますから、アメリカが今日台湾の国民政府——かいらい政権をバック・アップして、台湾海峡に第七艦隊を入れて中国と台湾とを切り離し、台湾問題が中国の国民自身の手によって国内問題として合法的に、平和的に解決される道を閉ざしている、こういう事態こそ極東における国際緊張の最大の要因だと思うのでありますが、首相はこういう私どもの考えに対してどうお考えになりますか。
  258. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はその説には同意しかねます。
  259. 田中稔男

    田中(稔)委員 私も御同意なさらないと思ったのでありますが、しかしこういうわれわれの立場に立って台湾問題を考えるというのでなければ、いつまでも台湾問題は解決しない、アメリカの内政干渉が続くと考えるのであります。  次に中ソ両国との貿易のことについてお尋ねいたしたい。この点も鳩山内閣がきわめて御熱心でありまして、私どもその点では積極的にやっていただきますように協力したいと思うのでありますが、今度中国から通商代表団がやって参ります。今晩、もうきょうの四時五十分ころ先発隊六名は羽田に着いたと思うのであります。そして二十八日にはいよいよ本隊が来るということになっておるようでありますが、この代表団が単に視察をするだけでなく、貿易協定を結ぶ、そのほか日本の財界その他各界の人々といろいろ意見の交換をする、そして今後の両国の貿易の促進のために寄与するという重大な使命を持っておるのであります。まずこの点において特に警察関係の方に念を押しておきたいと思うのでありますが、一行三十九名の生命、財産等につきまして、その滞日中のことは十分安全を期していただけると思いますが、一つ御答弁をお願いしたい。
  260. 大麻唯男

    ○大麻国務大臣 お答え申し上げます。使節団の来日につきまして、目下その安否については十分に注意をいたしております。また招請代表団と申しますか、その代表者からの申し入れもありますし、また警察当局の当然の仕事といたしましても、その御一行の安全につきましては慎重によく準備いたしております。在日中は、その身体等の安全につきましてはもちろん責任をもって警備、警護をしていきたいと考えております。どうぞさよう御了承を願います。
  261. 田中稔男

    田中(稔)委員 次に石橋通産大臣に若干お伺いいたしたいと思います。今度参ります一行が貿易協定を結ぶためにも、また日本の各界の関係者と十分意見を交換するためにも、できるだけやはり広範囲に歩いてもらった方がいいと思うのであります。外務省は一行の来日に当りまして、視察する地域を京浜地方、京阪神地方、名古屋地方とか数カ所に限定される御意向のようでありましたが、外務大臣の御意見伺いたいと思いますが、特に通産大臣は九州であるとか、北海道であるとか、地方に大きな産業のある、また有力な経済団体の存在するところは、できるだけ一つ回ってもらうようにごあっせん願いたいと思いますが、いかがでございますか。
  262. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 今回の使節団の視察に対しては、できるだけの便宜をはかりたいと考えております。
  263. 田中稔男

    田中(稔)委員 もう少し具体的に……。
  264. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 実際には日数の関係で、そう最初お話のように各方面の要求に従って山形県まで行くというようなわけにはいかないのではないかと考えております。
  265. 田中稔男

    田中(稔)委員 日数の関係でというわけでありますから、日数の関係でうまくスケジュールが組めましたら、できるだけ一つ広く回ってもらう、こういうふうにお願いしてよろしゅうございますか。——今御同意の合図があったようでありますが、外務大臣いかがでありますか。
  266. 重光葵

    ○重光国務大臣 外国人の入国のときの旅券は、ちゃんと目的を限っておるのでございまして、これは相互的にやっておるのでございます。そこで、この中共通商使節団は貿易協定を締結して産業の施設を視察するということになっておるのでございまして、滞在期間は三週間ということになっております。そこで産業視察でございますが、主として京浜、名古屋、京阪神地区を視察することによって十分目的を達するというふうに考えております。さよう御承知を願います。
  267. 田中稔男

    田中(稔)委員 それはすでに私が知っておるところでありますが、この際一つ大臣にお願いしたい点は、スケジュールが許しますならば、時間が許しますならば、もっと広範に歩き回るように一つお願いたしたいと思います。その点も確かめたいと思います。
  268. 重光葵

    ○重光国務大臣 それは中共使節団を招いた団体の意向によって御相談することにいたします。
  269. 田中稔男

    田中(稔)委員 次に石橋通産大臣に、貿易協定を結びますために参考になるようなことを若干簡単にお尋ねしたいと思います。  まず第一に、小坂委員からもお尋ねがありました例のココム・リストの問題でありますが、外務大臣もその緩和のためには努力をしておると言われましたが、通産大臣、もとより同意見だと思うのでありますが、通産大臣は専門の方でもありますから、このココム・リスト緩和についての御意見といいますか、御抱負でありますか、そういう点を一つ承りたい。  次に、最近の中国貿易の統計を見ますと、たとえば昨年は暦年を通じて輸出輸入の承認額はそれぞれ千三百万ポンドくらいに達しておるのでありますが、いよいよこれが通関統計として現われたところを見ますと、これは一月から十月までではありますけれども、輸出が五百万ポンド、輸入が千三百五十万ポンドというような数字になっております。バーター貿易の建前でありますから承認額の方は大体同じ数字でありますが、いよいよこれが通関となりますと非常なびっこになってしまっておる、これはなかなかバーター貿易というものが輸出輸入の品目の組み合せもうまく行きませんので、こういうことになります。そこでバーター貿易の方式でなく、むしろ外貨の割当を受けて、そうして外貨で決済するというような方法も考えたい、そうすることによって中国貿易の一つの難関を打開したいという意向が非常に民間には強いのであります。そういうことを考えまして、外貨の割当をもっとふやしていただくお考えはないか、さらにまた通商代表がおりませんことが何かと不便でありますが、一つ日中両国通商代表を相互に駐在させるというようなことについてのお考え、さらにまた中国貿易の可能性につきましては、いろいろな評価の方法がありますが、問題は結局禁輸リストに難関があるのでありまして、この禁輸リストの緩和が行われますならば貿易規模は非常に大きくなる。特にまた中国は大建設をやっております関係上、建設資材なんかにつきましては非常に大きな輸出の可能性があるわけでありますが、一九五五年、本年度の貿易規模の見通しなんかは通産省として大体どの程度とお考えになっておるか。もう一度まとめて申しますと、禁輸リスト、ココム・リストの緩和の問題、外貨割当の問題、通商代表の相互設置の問題、あるいはことしの中国貿易の規模についての大体の見通し、こういうものについて専門的な御答弁伺いたいと思います。
  270. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 お説のようにバーター貿易というのは技術上非常にむずかしいものでありますから、いろいろ支障がございます。しかし昨年の中共との貿易は案外に伸びまして、概数で大体輸出が二千万ドル、輸入が四千万ドルくらいに上ったと思います。そこで決済の方法でありますが、現在は一品ごとのバーターということでありますから非常に困難があることは事実でありますが、今のところこれはやむを得ないだろうと思います。しかしできればもう少し総括的なバランスができるという見込みで貿易をやるということが非常に望ましいことでありますから、今度は使節団が来まして当業者といろいろ話し合いをします。その結果によって善処したいと考えております。本年の中共貿易がどのくらいになるかということは、実は今われわれは品物によって輸入輸出の検討をしておりまして、一国ごとのまとまった数字を今ここに持っておりません。米をどうするとか、大豆をどうするとか、あるいは鉄鋼をどうするとかいうふうな計画でいっております。国別についての数字は必要あれば調べましていずれお答えをいたしますが、ただいまここに持っていませんから御了承願います。
  271. 田中稔男

    田中(稔)委員 私のお尋ねしたことのごく一部分しか御答弁がなかったのでありますが、通商代表の問題、外貨割当の問題とか、ココム・リスト緩和の問題とか、もう少し具体的に。
  272. 石橋湛山

    ○石橋国務大臣 落しまして恐縮です。禁輸のリストの問題は、毎日のように現地で折衝して、これの緩和をはかっておるというのが現在の事実であります。ですからできるだけその範囲を拡大するということに毎日努力をしておる、かような次第でございます。  それから外貨割当は、現在でも品物ごとに、大豆とかあるいは米とかいうふうにして外貨の予算は組んでおりますから、外貨割当はあるわけです。あるのですが貿易の実際に当りますと、うまくマッチしないことも起ってきますからいろいろの支障がある、従ってさっき申しましたように、ことごとくオープン・アカウントにすぐしてしまうということは、中共との関係としてなかなかむずかしいのでありましょうが、しかし全体のバランスがとれるという見込みがつけば、できるだけ一品ごとのバーターというものを緩和したい、こういう希望を持っております。
  273. 田中稔男

    田中(稔)委員 最近朝鮮民主主義人民共和国の南日外相が、日本との経済及び文化の交流をやりたいということを声明しておるようでありますが、これにつきまして首相の御意見を一つ承わりたい。普通北鮮といいますが、朝鮮民主主義人民共和国というのが正式の国号でありますが、いわゆる北鮮の方の南日という外務大臣が日本と経済及び文化の交流をしたいということを言っております。これにつきましての首相の御意見を承わりたい。
  274. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 善隣とは友好の実をあげたいと思っております。北鮮の方でも何か用意をしておるようでありますから、近いうちにそういうような相談ができるかと思っております。
  275. 田中稔男

    田中(稔)委員 現在日本には朝鮮人がたくさんおります。六十万といったり百万といったり、ずいぶんたくさんでありますが、この在日朝鮮人の政治的な傾向を調べてみますと、いわゆる北鮮を支持する人々が圧倒的に多いのであります。そういう人々は日本においてどうも適当な職業もない。それでどぶろくをつくったりヒロポンをつくったり、いろいろつい悪いこともしなければ食って行けないというような羽目に陥っております。また子弟の教育というようなことを考えましても、どうも日本におきましては正規の高等教育を受ける機会がほとんどないのであります。こういうことで非常に困っておる。こういう人々がその政治的傾向のために韓国の方には帰りたくない。しかしいわゆる北鮮の方には帰りたい、また帰れば、日本におきますと違って、北鮮は今建設をやっておりますから、ネコの手もほしいくらいでありますが、特に何らかの技術や技能を備えた人々ならば非常に向うは歓迎するわけであります。こういう人々を何とか早く祖国である北鮮に帰したいというのが関係者の希望でありますが、なかなか今までうまく行かなかった。こまかいことは省略いたしますが、これはすいぶんいろいろな努力が行われたのでありますけれども、うまく行かなかったのでありますが、外務大臣はどうでしょうか。一つそういう在日朝鮮人の希望をかなえてやって、こういう人々を北鮮に帰すように一つ御尽力いただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
  276. 重光葵

    ○重光国務大臣 その点は少しも異存はございません。できるだけのことをしたいと思います。またできるだけのことを今努力をいたしております。
  277. 田中稔男

    田中(稔)委員 今度いよいよジャワのバンドンでアジア・アフリカ会議というのが開かれます。これには日本政府も代表を送るということになったのでありますが、この会議に臨む日本政府の態度、これは非常に大きな問題だと私は思うのです。鳩山首相がこの間外人記者団との会談をされましたが、そのお話の一部が英字新聞に載っておりまして、日本の新聞にはどうもあまり載っていなかったようでありますが、こう書いてあります。  日本は来月インドネシアにおいて行われるアジア・アフリカ会議に代表を送るつもりだ。そうしてこの会議において経済的ないろいろな問題の討議に参加するつもりである。しかしながらもしその際アジアにおける共産主義の拡大を防止する問題が取り上げられたならば、これにも参加するであろうと、こういうふうなお話であります。鳩山首相はアジア・アフリカ会議を例の東南アジア条約機構の会議、SEATOの会議と取り間違えられているのじゃないかと私は思ったのでありますが、SEATOの会議は御承の通りアメリカが音頭を取りまして、アジアにおける反共戦線を結成する反共軍事同盟の会議でありますが、アジア・アフリカ会議はそういう性格を持っておりません。ところがどうも鳩山首相のお考えはその点で狂っているように思うのであります。首相は一体そういうことを言われたかどうか。つまりアジア・アフリカ会議に何か反共戦線というものが形成されるようにお考えになっているかどうか、一つお尋ねしたいと思います。
  278. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私はそういう問題が起きたならばという意味で話しました。そういうような問題が起きたならばやはりレッド・イクスパンションに対しては警戒を要すると考えておりますので、そういうことを申し上げたのであります。
  279. 田中稔男

    田中(稔)委員 私はこれは鳩山首相の国際外交に関するセンスの大きなずれだと思います。鳩山首相は政治家としてわれわれの大先輩である。その人柄は私ども実は非常に尊敬しておりますが、それにもかかわらず首相は、アジアの民族運動、戦後のアジアの大きな情勢の変化というようなことについては、はなはだ失礼でありますけれども、非常にセンスが狂っていると思うのです。実はアジア・アフリカ会議はコロンボ・グループと申しまして、インド、インドネシア、ビルマ、セイロン、。パキスタン、この盗難アジア五カ国の首相会議がありますが、これがイニシアチブをとって開く会議であります。そうしてこの会議の参加国のうち、インドもビルマもインドネシアもともに中国、つまり中華人民共和国と非常に仲のいい国であります。特に、インドのネール、ビルマのウー・ヌー、この両国の首相は昨年秋、私どもが北京から帰りましたあと、北京をたずねまして、そして周恩来と会談をせられました。その前にも一ぺん会っておりますが、二度会いまして、平和五原則によってアジアにおける平和地域の拡大をはかろうじゃないかというような話し合いをして、すっかり意見が一致している。平和五原則というのは申すまでもなく主権の尊重、相互不可侵、相互内政不干渉、平等互恵、平和的共存、この五つの原則によって体制を異にする国々が戦争をやめて平和的地域を一つつくり上げよう、こういう考えなのであります。こういう考えを持ったインドやインドネシア、ビルマ、こういう国が中心になって、多年欧米帝国主義の植民地の状態にあった国々が集まって、そして平和と国民の幸福な社会の実現のために相談をしよう、こういう趣旨の会議です。だからこれは共産主義を敵にして共同戦線を張るというようなSEATOの会議と全く違うのでありまして、体制を異にする両陣営、両世界を一つにしてしまおう、こういう考えであります。だからそういう会議で何か反共戦線の話が出るのじゃないかというようなことをお考えになること自体がもうこれはすでに大きな思い違いだと私は思うのであります。そういう問題はとうてい問題になりませんが、実はこの会議日本を招請するかどうかということは、相当問題になったのであります。私の聞き及びますところによりますと、ビルマやインドやインドネシヤは、日本はあまりに西欧陣営と深く結びついておる、今日私どもの言葉で言えばアメリカ一辺倒だ、こういう国はどうもアジアの仲間に入れるわけにいかぬというような意見が強かったのであります。しかし私どもはそれじゃいかぬと思います。日本がアジアから離れまして、アジアのみなしごになってすでに十年、われわれは早くアジアに帰って、アジアの隣組に入って、その中で他の諸国民とほんとうの共存共栄の楽しみをしなければならぬ。それにはこれは絶好の機会であります。首相はこの会議に臨む日本政府の抱負といいますか、そういうものをお考えになっておるならば、一つこの際御披瀝願いたい。なお重光外相にも同様なことをお願いしたいと思います。
  280. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 バンドン会議についてのあなたの考え方は、正解、だと思います。
  281. 田中稔男

    田中(稔)委員 これで合格したわけでありますが、重光外相に一つ……。
  282. 重光葵

    ○重光国務大臣 バンドン会議は今申されます通り。アジア・アフリカ民族のためにきわめて重要なものであり、アジア・アフリカの隣組の会議である、そういう趣旨で私どもはこれに非常に重きを置いているわけであります。しかしこの会議において両陣営の非常なあつれきを深めるような方向には向けていきたくないので、われわれはあくまでアジア・アフリカ諸民族の友好な関係を増進したい、こういう根本の考えをもってこれは臨もう、こう考えております。
  283. 田中稔男

    田中(稔)委員 そこで全権団の問題になるのでありますが、これは政府でもちろんおやりになることでありますが、これに国会の各党を代表するような人々を何らかの資格でお加えになる御意向はないか、これをお尋ねしたいと思います。実は一昨年でありましたか、吉田内閣の岡崎外相がずっと東南アジア諸国を回りました。そうしましてインドネシアを訪問して、ジャカルタ郊外の飛行場に着きますと、その土地のムルデカというような新聞が、岡崎帰れというふうな失礼な記事を書いたようなこともありまして、吉田内閣の岡崎外相というような人では、とてもインドネシアに対する外交などというものは実はうまく行かないのじゃないか。今度は場所も同じインドネシアであります。そうして集まるものは、アジア・アフリカにおける新興民族国家の人々であります。そうして今申しましたように、反共戦線を作るというのではなく、一つ両陣営とも全部一緒になって平和地域をアジアから全世界に拡大しよう、こういう趣旨の会議でもありますから、国民立場において、わが党のごときも大いに協力したいとも考えておりますが、全権団の構成についてそういう御考慮があるかどうか、お尋ねしたいと思います。これは外務大臣にお尋ねいたします。
  284. 重光葵

    ○重光国務大臣 今全権団の構成を急いでおります。さようなことも参考に入れて急いでおります。しかし今、どういうことに決定になりますか、これは政府の代表が招かれておるのでありますから、よくその事情を取り調べております。そういう情報を集めて一つ決定いたしたい、こう考えております。
  285. 田中稔男

    田中(稔)委員 時間がありませんので、ずっと中を飛ばしまして、今度は防衛問題について若干お尋ねいたします。  まず鳩山首相にお尋ねしますが、巷間伝うるところによれば、最初防衛庁長官の地位には野村吉三郎元海軍大将が擬せられておったようであります。首相もなかなか御執心であったようでありますが、これが突如としてかわりまして杉原さんがその地位につかれましたが、この間の経緯をちょっとお尋ねしたい。
  286. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は、アメリカとの関係が多いものですから、アメリカが好感をもって迎える野村君を防衛庁長官にしたならば分担金の交渉などについていいだろうと思ったのです。ところが野村君は文官ではないというような説が出て来まして、その説の方が議会内において多いようであります。そうすれば野村君を推すということは、同君にも非常な迷惑をかけるし、政府としても不利益だと思いまして、それでアメリカ関係についてもいいと思う杉原君を採用したわけであります。
  287. 田中稔男

    田中(稔)委員 専門家の意見によりましても、野村さんは文民だというような解釈さえ成り立つようでありますけれども、常識的に考えましても、何と申しましても元海軍大将でありまして、私どもはこれは文民とは受け取れないのであります。こういう方が防衛庁長官の地位につかれますと、どうもこれはますます国民に与える影響がよくない。日本が再び軍国として復活しつつあるというような印象を与えては悪いと思う。防衛庁の存在自体にわれわれは反対でありますけれども、まあそういうものがありまして野村さんが長官になられると、これはなおどうも国民に与える印象は悪かったのでありますが、今鳩山首相はアメリカとの折衝の上で野村さんが適任だ、こういうお話でありますが、私はむしろそういうお考えには反対であります。今日、日本自衛隊というものは、われわれはもとよりこれは自衛隊考えておりません。冗談を申しますとこれはアメリカのための他衛隊のようなものでありまして、アメリカの極東における軍事政策に協力するための軍隊であると私ども思うのでありますが、そういう見地からしますと、アメリカの言いなりほうだいになる。アメリカにいいということは、結局アメリカにとって都合のいい人だということでありますが、そういう人がなられますというと、傭兵再軍備としての日本自衛隊の傾向はさらに強くなる。杉原さんは私深く知りませんけれども、今までいろいろ国会その他でお話になっているところを聞いておりましても、民主党の中では私は非常にりっぱな方だと思うのでありまして、いずれまたお尋ねしたいと思いますが、自衛隊というようなものにつきましてもいろいろお考えになっておる。ことに日本の安全を守り、日本の平和を守るという場合に、外交の力によってこれを守るという必要を非常に強く言われてもおる。こういうふうな方でありますから、むしろこの方の方が私は適任だと思います。  そこでそのことのついでに一つ杉原長官にお尋ねするのでありますが、日本の平和と安全を武力によって守るというようなことがナンセンスであることは、私どもが申し上げている通りであります。どうせ日本軍隊を作りましても、まさかの場合に役立つようなものはできやしません。しかもまたMSAの軍事援助を受けて作ります軍隊というものが、アメリカのための傭兵の役割を果すということも、これは明らかでありますが、防衛庁長官はそういうことにつきまして一体どうお考えになっておるか、一応この際御所見を聞きたいと思います。
  288. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 自衛隊の性格というようなものにつきましては、これがわが国の平和と独立を守ることが目的であって、直接侵略ないし間接侵略があった場合に、こっちからするのじゃなくして、向うからあった場合に、国を防衛するという任務を持つべきものである。この点は今後とも私は堅持していくべきものだと思っております。
  289. 田中稔男

    田中(稔)委員 それはきわめて紋切り型の御答弁でありますが、一体日本の周辺で日本に対して直接侵略をしようというかまえをしている国があるかどうか、具体的には中ソ両国にそういう侵略の意図なり計画なりがあるかどうか、防衛庁長官はちょうど担当の大臣でありますが、どうお考えになりますか。その前に申しますが、私は中曽根君たちと一緒に昨年ソ連、中国を回って参りました。どうもソ連や中国が日本を侵略するような意図を持ち、またかまえをしておるとはちょっと考えられないのでありますが、防衛庁長官は一体どうお考えになりますか。
  290. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 現在外国からの武力攻撃の危険が存在するとは私は思っておりません。しかし将来のことを考えますとき、そこに世界の情勢の複雑な中においていろいろと危険の要因があるということも事実であります。また戦争を回避する要因も強く動いておることも事実であります。それらが織りまざって今後どういうふうになるか、これはたれしもあらかじめ予断はできないことだと思います。しかしながら努力といたしましては、それを何とかしてわれわれもこれが戦争の防止、平和の維持という方向に情勢が向うように努力していかなければならぬことだと思います。そうしてそれがためのわが国としてなし得る道は、私はただ単に防衛という一本だけではいかないと思います。同時にやはり外交というものと相待ってその目的を達成するようにやっていかなければならぬことだと思っております。
  291. 田中稔男

    田中(稔)委員 いろいろ申し上げたいこと、お聞きしたいことはあるのでありますが、憲法改正の問題に関します質問はずいぶんありましたが、鳩山首相は憲法改正をやるという御意向でありますが、ただこれが国会における議席の数の関係でできない。しかしいずれやりたいというお考えでありますが、前任の防衛庁長官大村さんは、新聞に載っておりましたところをそのまま引用しますと、こういうふうなことを言うている。「自衛力は自衛権にもとづく独立国家固有の権利であり、自衛の限界ならば増強して戦力に達してもかまわない。理論上原爆攻撃を受けた場合にはこれに対処し、準備することは憲法上可能である。」こういうのであります。これはいわゆる清瀬理論という考え方と同じでありまして、清瀬さんの考えは、原爆に対しては原爆をもって対処しても少しも差しつかえない、そういう高度の戦力であっても、これが自衛のためならば現行憲法上少しも差しつかえない、こういう御議論の筋であることは周知のところでありますが、先ほどの質問に対する御答弁の中に、現長官はそれは少し行き過ぎだと言われたのであります。その行き過ぎだくらいのことで——私はそういうあいまいなことよりも、はっきり言えば鳩山さんやなんかのお考えはこうなるのではないかと思いますが、鳩山首相はどうでしょうか。
  292. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 現在の憲法をそのままに解釈しますると、原爆の所有はできないという解釈が正しいと思っております。使用ももちろん。
  293. 田中稔男

    田中(稔)委員 そうすると鳩山首相は、憲法改正してほんとうの軍隊を作る、ほんとうの戦力を持つ、また持つべきだというお考えだと思いますが、その戦力は、日本の事情さえ許すならばやはり原水爆までも日本は持つべきである、こういうふうな御意見でありましょうかどうか。
  294. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 すわったままでよいですか。
  295. 田中稔男

    田中(稔)委員 どうぞ。
  296. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 では許していただきます。  原爆を所有して戦争に参加するというようなことは、ただいま考えておりません。
  297. 田中稔男

    田中(稔)委員 しかし憲法改正し、軍隊を持ち、そうして日本が外国の侵略を受けた場合、国を守るためにあらゆる手段を用いるというならば、やはり望むらくは原水爆までも持ちたいという、こういうことになるのは私は当然の筋だと思う。われわれは再軍備に反対しておりますから結論が違うのでありますが、一たび軍隊を認め、軍隊によって国を守る、しかもまた侵略の危険があるということであればそうなると思いますが、それを中途半端にとめて、軍隊はつくり、武装はするが、原水爆までは手をつけぬというのは、一体どういうことでありますか。
  298. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 原水爆が戦争に使用せらるるということには、反対でありますものですから、憲法改正のときによく審議をするより仕方がないと思います。
  299. 田中稔男

    田中(稔)委員 そうすると、少し矛盾しているのです。一昨日でしたか細迫兼光君が本会議の緊急質問でもお尋ねしましたが、先般の外国記者団に対するお話の中に、アメリカ日本の基地に原水爆を貯蔵するという場合には、仮定の上であっても、そういう場合にはそれはやむを得ぬであろう、これは認めざるを得ないだろう、こういうようなお話があったようであります。そうしますと、これは結果においては同じことでありまして、もしほんとうに首相が、原水爆というものは人道上許すべからざる兵器である、こうお考えになり、さらにまた、昨年四月一日の衆議院の本会議におきまして採択されました決議案があります。申し上げますと、「原子力の国際管理に関する決議案、本院は、原子力の国際管理とその平和的利用並びに原子兵器の使用禁止の実現を促進し、さらに原子兵器の実験による被害防止を確保するため国際連合がただちに有効適切な措置をとることを要請する。右決議する。」こういうような真剣な決議がすでに行われておるにもかかわらず、アメリカの原水爆貯蔵といえども、とにかくそれを日本の軍事基地に貯蔵するという要請があった場合には——今はないけれども、そういう要請があった場合には、それを肯定して認めざるを得ないというお話は、私はどうも首相の今の御答弁とは矛盾すると思いますが、どうでありますか。
  300. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 アメリカが所有するということについて言ったのでありまして、日本が所有するということを前提としてそういうことを申したのではないのであります。アメリカが所有するということは、世界の平和がそれによって維持せられるかどうかということによって決定するより仕方がないだろう、こう言ったのであります。
  301. 田中稔男

    田中(稔)委員 アメリカのものでありましても、日本の国土にこれを貯蔵するのでありますから、これは日本にとっては深刻な問題であります。また原水爆の貯蔵を許すことが平和のために有益になるならば認めてもいいというようなお話でありますが、一体首相は原水爆の貯蔵を日本における米軍の基地に許すことが、日本並びに世界の平和のために有益であるとお考えになっておるかどうか。先ほどこれはどなたかの御質問にありましたが、御答弁がはっきりしませんでしたので、もう一度、首相自身は、一体原水爆を日本の基地に貯蔵することが日本並びに世界の平和のために有益であるかどうか、その御判断をお聞かせ願いたいと思います。
  302. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 この問題はそのときになって考えるより仕方がないと思います。抽象的に原子爆弾を貯蔵することが平和に利益なりということも言えませんし、原子爆弾を貯蔵することが戦争を防止する理由になるということも、想像において論議するわけには参らないことであります。そのときの情勢によって判断をして行くより仕方がないと思います。
  303. 田中稔男

    田中(稔)委員 もうすでに現実の問題であります。台湾海峡をめぐる情勢もきわめて深刻でありますし、情勢がかわりますならばどうなるかもわからぬ。しかしその場合には、アメリカが原水爆を使用するという意図も十分あるのであります。現実の差し迫った危険もあるのでありますが、首相はのんきなことを言っておられまして、これをこれ以上追及しましても適当な御答弁もいただけないと思いますからこれでやめますが、首相の答弁を私ははなはだ遺憾とするものであります。
  304. 牧野良三

    牧野委員長 田中稔男君、時間が経過いたしております。適当に御考慮を願います。
  305. 田中稔男

    田中(稔)委員 それでは最後に防衛庁長官にお尋ねしておきますが、防衛六カ年計画というものをおつくりになっておりまして、それがまだ防衛庁の試案の程度であって、関係各省との御折衝の過程だそうでありますが、何でもその内容によると、六カ年計画の最後昭和三十五年には陸上自衛官が十八万とかになる。それでその十八万は、さらに私は増強される運命にあると思うのでありますが、経費の上から考えましても、また一方二十九年度の予備自衛官募集の実績を見ましても、その実績というのは、ちょっと申し上げますけれども、三月一日の締め切り日までに一万五千人を目標として募集しましたが、実際に応募した者はわずか千四百九十六名、一割に満たなかった、こういう状態、こういういろいろな事情を考えまするならば、日本自衛隊を増強し、これを本格的な軍隊としてだんだん増強します場合には、どうしてもここに徴兵制度という問題が起ると思いますが、この点について防衛庁長官の御意見を一つ伺っておきたい。
  306. 杉原荒太

    ○杉原国務大臣 防衛につきまして漸増、とこう言いますが、ただ漸増というだけではどこまで一体いくのか、これを一年々々というようなことでは、かえって国民の間にもいろいろと理解を得ることはむずかしいであろうと私は思います。大体少くとも五、六年くらい先のところは、どれくらいの限度を考えておるかというようなこと、それからまた一方日本の現在の防衛の関係におきまして、アメリカの駐留軍がおる、これは何といっても暫定的な措置に違いない、それでこの駐留軍の撤退を可能ならしめるその目途、そういうことを考えて、やはりここに相当長期な計画を立てていった方が私はいいと考えております。そうして、その内容につきましては、これからよく一つ検討していきたい。  それからただいま徴兵制度のことがございましたが、私今そういうことを考えておりません。
  307. 田中稔男

    田中(稔)委員 それではこれをもって私の質問を終ります。
  308. 牧野良三

    牧野委員長 岡良一君。
  309. 岡良一

    ○岡委員 私は日本社会党立場から、今度の総選挙で各党あげて、特に政府並びに民主党諸君が声を大にして公約をせられました社会保障制度に対する御方針を承りたいと思っておるのであります。しかしながら社会保障制度と申しましても、日本の国があるいは原爆に見舞われたり、戦争に巻き込まれたりするということでは、百の社会保障制度も一片のほごに相なってしまうわけでありますから、当然国民の生活を守る努力よりも、国の平和を守る努力が優先することは申し上げるまでもございません。そういう意味で幸い政府自主独立平和外交ということを常に強調しておられますので、事実に即して総理平和外交推進に関する御所見をあらかじめ承りたいと思うのであります。  まず繰り返しわれわれ申し上げますが、私は昨年における世界の各国の平和への努力は、原水爆に対するその国の政府の態度が平和への努力の一つのめどを物語るものではないかというような印象も受けておりますので、具体的にこの問題についての総理の御所見を、繰り返し恐縮ではありまするがお伺いいたしたいと思うのであります。そこで先般の本会議の席上においても、またきょうの委員会において片山氏の御質問に対しましても、総理は、原水爆の実験は中止をしてもらいたい、その意思を何らかの方法で適当な機関に申し出ることをも意図しておられるという御答弁があったのでありまするが、具体的にそれはどういうふうな方法でどこに申し出られようとしておられるのか、この点を承りたいと思います。   〔委員長退席、重政委員長代理着席〕
  310. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 すわったままでよろしいですか。——原子爆弾は国際連合において管理されまして、世界大戦には原子爆弾、水素爆弾などは用いないというような約束ができ上ることをこいねがっておる次第であります。
  311. 岡良一

    ○岡委員 私がお尋ねをいたしましたのは、先ほどの委員会で、片山氏の、原水爆の実験は中止してもらいたいという希望を、その意思を、総理は何らかの形で全世界に広く訴えられる必要があるのではなかろうか、こういう質問に対して、総理はそのように処置いたしたいという御答弁があったのであります。そこで、具体的にどういう方法でこの訴えをなさろうとせられるのであるか、この点を承わりたいと思います。
  312. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ビキニ問題が起きまして、そうしてアメリカがああいう実験をいたしましたときに、アメリカに対して、将来はああいうような実験をしてくれないように要請をしたのであります。
  313. 岡良一

    ○岡委員 私は、原子力の解放という、いわば近代科学の粋ともいうべき高い人間の知恵の力が、あるいは人間を殺したり、文明を破壊したりする、こういうことには絶対に反対をして、こういうものは文明を進めたり、人類の仕合せのために役立たしめようという意図、しかも二度ならず三度ならず被害を受けておるこの地球しにおけるただ一つの民族とも言っていい日本であれば、当然にその要求はいたすべきでもあり、されば国会は、ビキニの被爆事件直後、昨年三月末には、すでにこの自覚の上に立って、強く水爆実験中止の要請を決議として採択をいたしております。その後も、全国の自治団体等は、ほとんどあげてこの決議をいたしておるのであります。しかしながら、今総理の仰せられたように、原爆の実験は中止をしていただきたいという要請をビキニの交渉の妥結の際に申し入れはされましたが、事実上あの交渉においてわれわれが承知をいたしておるのは、わずかに二百万ドルの慰謝料を受け取って、しかもその後における法律上の責任については、日本はこれを追及する権利を放棄しておるかの態度に終始している。従って、私は今初めて総理からそのようなお言葉を承わりましが、アメリカは、あのビキニの交渉の妥結の際に、はっきりといわば一札を入れて、水爆の実験は今後やらないという責任ある保障を果して日本政府に与えてくれたのでありますか、この点をもう少しはっきり承わっておきたいと思うのであります。
  314. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外務大臣からお答えいたします。
  315. 重光葵

    ○重光国務大臣 ビキニの実験によって公海におけるわが日本人の利益を害したということは、非常に遺憾なことでございました。その賠償問題の交渉を進めた経緯は、発表いたした通りでございます。その実験は、アメリカの行政権のあるところで実験がされて、そうしてその実験の結果、公海における、また予告を受けない地域におった日本の漁船等がいわゆる被害を受けたのでございます。それを根拠といたしまして、アメリカ側に賠償を交渉いたしました。しかし今日まで、水爆の実験とか、さような事態は国際間において全然新たな事態でございまして、今まで先例もありません。また国際法上の規定もありません。そこで理屈として、権利としてこれをはっきり認め、賠償を認めしめるということはできませんでした。しかしそうかといって、そのまま損害を受けたことを放任することはむろんできません。そこで交渉の結果いろいろなことを勘案して、補償額を二百万ドルということでこれは妥結をするのやむを得ないことに立ち至ったのであります。それで十分であるとは少しも考えておりません。しかしそういうふうに妥結をすることがいいと考えた次第でございます。その際にアメリカ側としては、今後においてはかようなことの起らないようにあらゆる努力をするという、こういう証言を得たのであります。その後は今のところ事件はいまだ起っておりません。
  316. 岡良一

    ○岡委員 時間もありませんので、別に国際法の解釈について専門家のあなたと論争しようと思いませんが、しかし今おっしゃった点については私も不服なんです。なるほどこういう事例は初めてあったことかもしれませんが、初めてあったことであるだけに私は国際法上のはっきりした慣例をつくっておかなければいけないと思います。御存じのように国連憲章第七十六条のb項を見ましても、信託統治の施政権者の領海は、やはり三海里ということになっております。それを四百五十海里という遠距離に広めまして、それを警告地域として、入ったものについての生命財産の保障はしない。しかもあの実験のあとは、マーシャル群島の住民が信託統治の理事会の方へ請願をしております。住民が不当に立ちのきをさせられ、生命の保障が与えられない。施政権者としては、当然国連憲章にのっとって、住民の保護に任じなければならない義務がある。ところがそういう悲惨な目に住民はあっている。これは明らかに国連憲章の違反である、国際法上のこれは重大な道義的な違反である。しかも公海の自由と申しましても、国際法上公海の自由というものは、ある特定のものが排他的にその公海を支配することはない。いわんや長期にわたり相当な遠距離にわたって立ち入りの禁止をし、入ったものについてはこれに対しての生命や財産の保障はしない。しかも日本の漁夫はその警戒区域の外におって、平和な漁業に従事しておった。それが日本の医学陣を総動員をしても、とうとう一人の犠牲者を出すというような不慮なことが起った。しかもその結果としては、日本の大気も汚染されている。日本の近海の海洋も汚染されている。こうなれば他国の領域と国民に対して重大な損害と不安、恐怖を与えている。こういう点からいえば、初めての事例であればあるほど、日本政府としては当然国際法上この黒白を争う、少くともやはり損害賠償請求権というものの上に立って、堂々と損害賠償をする。もちろん最後のきめ手としては水爆の実験をしない、この一札をとらなければいかぬ、これが独立国の政府のほんとうのあり方ではないかと私は思う。今の御説明を聞くというと損害賠償でもない。しかも事実もらったのは二百万ドルの慰謝料という金一封だ。法律上の責任は今後追及しないという一札を入れておる。これでは独立国としての面目がどこにありましょう。こういうことでは一体向米一辺倒の吉田内閣といわれたが、これにもつと輪をかけたものであるとさえ非難するものがある。はっきりと水爆の実験は今後しない、日本には迷惑を与えないという一札をほんとうに確たる公文書によっておとりになったならばとにかく、アリソン大使の公文によれば、慰藉料として与える、公平に政府の責任において分配しなさい、法律上の責任は今後追及しないということを条件にしておる。こういうことでは、私どもはいかに口頭の上でそういうあいさつがあったといたしましても、水爆の実験は今後中止をされるという安心には立てない。この点もう一ぺんはっきりと承わりたい。
  317. 重光葵

    ○重光国務大臣 水爆実験を今後一切やらないという一札はとっておるわけではございません。その点は今申しました通りに、この事件は国際関係において初めて起った事件でありまして、非常にわれわれ日本としては迷惑をこうむった事件なのでございます。そこでできるだけ日本側の利益を擁護する処置をとりたいと思って、その点に努力をいたしたのであります。そしてこの事件については米国側は今後あらゆる努力をして、このようなことの再発のしないようにという言質を与えたのに満足した次第でございます。
  318. 岡良一

    ○岡委員 なお総理大臣の御所信を承りたいと思います。先般の本会の席上でも、またきょうの片山氏の御質問に対しても、総理のお言葉の一つとして、原水爆貯蔵の問題は現実の問題ではない、仮定の問題である、こう軽く言い放たれておられるようであります。また片山氏の質問には、日本がみずから貯蔵するものでもないというようなことを、憲法の問題とも関連して強く言っておられました。しかし私はこれは仮定の問題とは思えないのです。なぜかと申しますと、ダレス国務長官が今月十五日の定例記者会見ではっきりと申されておる。新聞によって多少内容は違いますが、要は、もし中共が澎湖島、台湾等を目がけての大規模な軍事行動を起すということになれば、アメリカとしては当然小型の原子兵器を装備した海空軍で介入することになるであろう、こうはっきりダレス長官は申しておる。これが十五日のことなんです。十四日に総理は記者団との会見で原爆貯蔵のことに触れておられる。またあわせて台湾政府が中国本土攻撃に出る場合には、米国が日本の基地を使用することをはばむこともできないであろうというようなことを敷衍して申しておられる。十四日には東京において鳩山総理のこのような言明があり、全く偶然の一致とは言えないように、符節を合して十五日にはワシントンでダレスさんが今申しましたような声明をしておるわけであります。このようにして現在水爆、原爆を作っておる国の人が、しかもそれを管理する人が、その使用を言明しておる。しかも同時にまた、それに基地を提供しておる国の最高責任者の総理が、これの貯蔵についての承認を与えようという意思表示をしておられる。そうなれば、これは当然日本の基地に原爆を貯蔵してもよいという日本意思表示、そうしてまたしようというこの意思表示、これがはっきりいわば結び合っておるのです。この両者の言明というものを総合的に私どもが解釈をすれば、別に勘ぐるわけじゃないけれども、日本とすればやはりそういう場合には事実上戦争へ介入をしなければならない羽目に追い込まれてくるということをわれわれは危ぶまざるを得ない。こういう点について、総理は一体、こうして実験にさえ反対をしておる国民が、こういうような事態になるというようなことには非常な心配をしておる。それでこそわれわれはこの原水爆貯蔵の問題についてはいわばしっこくあなたの御所信を承わっておるわけである。端的に申し上げれば、やはりはっきり、この際国民を安心させるためにも、原水爆の貯蔵は絶対認めないということを言明をしていただきたいと思うのでありますが、総理の御所見を承わりたい。
  319. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 原水爆を日本が貯蔵するということは、私は憲法違反になると思っております。ただアメリカが貯蔵し、これを使用するということは別問題であります。アメリカが使用することを日本が抗議を申し込むというようなことは、アメリカの使用することが世界の戦争を防止し、平和を維持することに必要ならば、容認しなくちゃならないかもしれない、こう答えたのであります。アメリカから何にも交渉がないのでありますから、現実の問題にはなっていないということを申し上げたのであります。
  320. 岡良一

    ○岡委員 私が申し上げましたのは、十五日にはダレス氏が今申しましたような声明をしておる。原子兵器を使用するんだと言い切っておる。ところがその前日には、総理が、原子兵器をアメリカ日本の基地において貯蔵することを妨げることはできない、こう言っておられる。原子兵器を作っておる国の管理者がこれを使用すると言っておる。その使用のための手段として日本の基地に貯蔵されるということも、この一連の事実ではっきりしてくる。仮定の問題じゃない、事実問題としてはっきりしてきておる。そういうことになれば、この際やはり原爆の貯蔵をもわれわれは拒否する、使用のための手段として貯蔵されるんだから、貯蔵もわれわれとしてはお断わりする、ここまではっきりと総理としてはお出になっていただくことが、国民を安心させる一番大きなてこだ、こう思ってあなたの御所信を承わっておるのです。  それからなお力の関係で平和が維持されるというふうな観点から、原爆等の使用あるいは貯蔵等について触れられましたけれども、それも少し総理としてお考え違いじゃないかと私は思うのです。ちょうどそういうような同様の趣旨のことを、私は先般新聞か何かで英国のチャーチル首相の言葉として拝見いたしました。しかし何と申しましても、あの国は一カ年間の予算日本の金にして四兆、憲法で堂々と軍備が許されて、たしか昨年度の予算では一兆六千億の軍事費を使っておる。全国民に対しては、社会保障制度をやっておる。しかもマーシャル・プランはヨーロッパのどの国よりも先にこれを断わって、経済自立の道にいそしんでおる。この国の総理大臣と、おそらくそれらの条件とは反対な今の日本総理大臣とが、同様に力によって平和が維持されるというふうなことを言われるということ、そのことも私は片山氏と同様に総理の平和に対する信念に対して大きな疑惑を持ちたい思う。しかしこれは別でありますが、とにもかくにも私はやはり総理としては、この際原爆の貯蔵ということについては、これに反対であるという意思表示をお願いはしておきます。これ以上総理のお考えもありましょうから追及はいたしませんが、当然私はそうあるべきだと思っております。  さて本題に入りまして、社会保障の問題でありまするが、実は私はかねてから民主党の政策要綱等も拝見をいたしまして、またその後川崎厚生大臣の御就任の弁などをも拝見をいたしまして、私ども年来社会保障制度については多少微力をささげておる者の立場から、非常に意を強うしておるのであります。しかしながら、とは申しますものの、何と申しましても非常に切り詰められた国の予算、でありますので、一体この切り詰められた国の予算、財政の規模の中で、国民の生活を守る努力、国を守る努力、いわゆる防衛努力というようなものが、われわれの納得のいくような形で調整をされ得るのだろうかという点に私は危惧を持っておるし、また前内閣時代には常にそれが私どもの希望しない形に取り上げられておったわけなんです。今度もこの暫定予算の御説明、大蔵大臣構想を拝見しますと、一兆のワクに押える、三百億も減税はする、防衛庁費も最近の新聞によれば多少増加するらしいし、一方では防衛支出金の減額については、まだ十分な見通しがない。言うまでもなく当然国の義務支出としての、あるいは教育費なりあるいは地方交付税交付金なりの増額は必至である。いろいろな条件のなかで、しかも現在あるところの日本の社会保障制度あるいは生活保護法にいたしましても、その適用を非常にきびしい制限をして、どうやら財政の危機を切り抜けておる。せっかくの健康保険制度のごときは、本年は非常な赤字で破産に瀕しておるというのがありていの姿なんです。こういう切り詰められたこの苦しい予算外のワク内で、一体総理は諸政の根本の方針として、国を守る努力国民の生活を守る努力、いずれを優先せられるかという、総理としての基本的な心がまえを私はまず承わりたいのであります。
  321. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 社会の福祉制度は、失業救済を主として考えておるわけです。防衛問題も、これも緊急やむを得ざることだと思っておりますので、両々相待ってやっていくより仕方がないと考えております。そうしてこれが可能であると考えております。
  322. 岡良一

    ○岡委員 私は今も申しましたように、いろいろなファクターというものが予算をきびしく締めつけておる、しかも現在ある社会保障制度が財政的にくずれようとしておる、とすれば、この際国民生活を守るという努力が優先すべきじゃないかということで総理の御所見をお伺いしたのですが、それについては満足のいく御返事を承われませんでした。しかしながら、社会保障制度は失業対策事業だけではありません。社会福祉事業だけではないのであります。こういう点はまた関係の閣僚とも十分御相談いただきたいのでありますが、われわれはやはり、岡を守るためにはまず守るに足る国を作るということを諸政の原則にいたすべきであるという立場から、総理の御討論をわずらわしたいと思うのであります。  関連して大蔵大臣にお尋ねをいたしたいと思います。防衛分掛金の問題についてでありますが、大蔵省の方では、国民所得だとか、国民の税負担だとか、あるいはまた敗戦後における国の財産の喪失とか、いろいろな条件をあげて、防衛支出金の負担を困難ならしめておるということを御指摘になり、新聞にも発表しておられるのでありますが、私どもをして言わしむれば、このような国民の、重い税負担とか、国民所得が各国に比して非常に低額であるということとか、また国のいろいろな財産の敗戦、災害等による喪失等の事情というものは、むしろ日本の国が社会保障制度、こういうものを年次的に作って、これを財政的な裏づけによって推進をしていくというその必要性を物語る大きな理由であろう。大蔵省の検討された防衛支出金減額のための理由というものも、そのように私は理解しておるわけであります。政府の方では六カ年経済建設計画を遂行するというような御意見もあるようでありまするが、それならばなおさらこの経済六カ年計画の裏づけとしての社会福祉計画というものがやはりあるべきであろう、思います。現におくれたビルマのような国でもビタ・ウダ計画を見ると——やはり六カ年経済建設計画には、労働力の移動とか、環境の変化とか、経済的な失業とかいう社会編祉行政というものがあって、経済建設と表裏一体的な形で進められなくては、この建設計画というものは失敗する。そういう意味で、まず大前提として、国民の所得なり国の財政の規模なり、あるいは国民の生活水準というものから翻り出した社会保障制度に対する国の財政負担の基準というようなものがやはりあってしかるべきじゃないかと思う。防衛費については、国民一所得の二・五%とか二・四%とか、何に基く数字か知らないが、しばしば拝見するのであるが、むしろこれ以上に社会保障のための年次計画、それを裏づけるその年次々々の会計年度における社会保障の予算の基準というような毛のがあってよかろうと思う。こういう点について大蔵大臣の御所見があれば承わりたいと思う。
  323. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 御所見のように、たとえば予算の一定割合を社会保障に充てる、こういうようになし得れば私どもやはり非常にけっこうだと思います。そういうことをやはり日本の現状では理想として考えなくてはならないと思いますが、今日の情勢ではそういかないのでありまして、やはり年度ごとに何を重点に——むろん一定の計画に沿うてこれは考えなければなりませんが、年度ごとに何が重点であるかということを考えていかなくてはなるまいと思うのであります。そうして今日の日本の状況、特にこの三十年度の予算という関係から考え京すれば、先ほどのお話の防衛費との関係におきまして、防衛については防衛庁費と防衛分担金とをくるめて前年度のワクのうちに置こう、こういう方針を私どもは立てております。しかし社会保障は苦しいが、失業対策を中心としてふやしていこう、言いかえれば、その関係から見れば、三十年度の予算において、民生の安定ということを考えて、ここに重点を置いていきたい、こういうふうな考えで今日進んでおるわけであります。
  324. 岡良一

    ○岡委員 私が申し上げたのは、経済六カ年計画という、そういう計画をお立てになって、これを遂行しようというならば、経済建設の裏づけとしてのやはり社会保障の年次計画、その財政的裏づけしての予算基準的なものを御考慮あってしかるべきではないか、というのは、いつもこれまでは社会保障というのは、各党声を大にして叫ばれながら、事実上いざ予算となるとほとんどこれを奮発してもらえない。まことに気の毒な運命に日本の社会保障制度が置かれておるのです。そういうことからせっかく経済計画をやるのなら、計画的に社会保障制度も進めなければならない。その裏づけとなる財政というものが示されてしかるべきではないかということを申し上げて、この点あらためてお願いいたしておきたいと思う。  そこで社会保障制度の中でも特に現在問題の多い点、ぜひとも改めていただきたい点については、専門の川崎厚生大臣にその所見を承りたいと思います。  まっ先に申し上げたいのは、民主党の発表されました政策要綱については、ずいぶん私どもの歓迎すべき項目が羅列をされている。私どもも正直のところわが意を得たり、こう申し上げておったのでありますが、しかしこのたびいただいた予算大綱、あるいは大蔵大臣構想なるものを見ると、なるほど失業問題が重点的に取り上げられてはおりまするが、しかし社会保障制度の中で一番すみやかに改革をし、また樹立をしなければならない諸点については何ら触れるところがないのであります。私はそういう点において実はいたく失望をいたしました。    〔重政委員長代理退席、委員長着席〕 それはそれといたしまして、現在日本の社会保障制度の中で二、三すみやかにその実施に着手をしていただきたい諸点について厚生大臣の御所見を承りたいと思いますが、第一点は現在の社会保障制度の統合の問題であります。申し上げるまでもなく日本の社会保障制度ほどその機構においてもその制度においても複雑多岐をきわめているものはありません。つとに川崎さんもこの点にはお気づきになって、御就任の弁とやらにもその点に触れておられることをわれわれも意を強うしておるのでありますが、この各省にまたがっている社会保険制度の統合整備は、もちろん民主党の政策要綱にも掲げられておりまするが、社会保障制度審議会がその総合統一を政府に勧告をして参ったことも一度、二度ではないのでありますけれども、一向にこれが実現を見ておりません。一体なぜその実現を見ないかという点において、私どもの党とすれば、まあ将来は社会保障省というような、一元的な機構を設置すべきだという考えを持っておりますが、さしあたりの問題としては、まずこの社会保険だけでも整備統合する、こういうような点について厚生大臣も——先般新聞で御構想の一端を拝見したのでありますが、具体的にどういう方針をお持ちなのか、また必ずこれをやるのであるというお約束がいただけるかどうか、この点をまずお伺いいたしたい。
  325. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいま総理大臣並びに大蔵大臣にお尋ねになりましたことに関連しても、私の所信を申し上げておきたいと思うのであります。  昨日発表せられました総予算に対する大蔵大臣としての構想の中には、御指摘の通りに、失業対策を中心とする社会保障制度の向上に歳出の重点の第二を振り向けたいという案が示されております。しかしながら失業対策費のみが社会保障でないことは御指摘の通りでありまして、ことに社会保険の拡充強化ということは、防貧対策として最も重要に論ぜられなければならず、その必要性は、民主党としても先ごろの総選挙におきまして、きわめて明確に国民に約束をしておる事実であります。従いまして、社会保障制度の充実につきましては、当然第一に社会保険の強化、また救貧対策であるところの生活保護の充実という方向に向けられなければならないというふうに私は感ずるのでありまして、党の政調会におきましても、強力な意見の台頭もありますので、これらにつきましては、予算編成の過程におきまして、私どもの主張を実施する所存でございます。  それからただいま御質問のありました件についてお答えをいたしておきます。社会保険の統合ということは、二十五年の十月でありますか、社会保障制度審議会の第一次の勧告に盛られた一番重要な点でありまして、われわれも野党時代に、これを強力に主張しておった者の一人であります。従って今日主管大臣といたしまして、これらの問題についてはすみやかに案を立てて前進をしたいというふうに考えをいたしております。今日の医療保険の実態は、御承知通り健康保険を中心とする被使用者を対象にするものと、もう一つは国民健康保険、すなわち国民全体を対象にするものとの二つにわかれておりまして、この二つに大体系列を統合して行えというのが、社会保障制度審議会の勧告でもあります。国民健康保険の方は、最近非常に充実をして参りまして、ことに医療給付費の二割国庫負担をいたしましてから、数字の上におきましても相当な増大を見ております。全国七千二百六十八の市町村のうち、四千六百六十七も今日すでに実施をしておりますので、今危機に瀕しているといわれる健康保険の方に目下は主力を置きまして、そうして社会保険の整備をしていきたい、かように存じておる次第であります。
  326. 岡良一

    ○岡委員 私が申し上げましたのは、たとえば社会保障制度審議会が勧告を立案いたしまして、法律の規定に従ってこれを内閣総理大臣に持って行った。持って行っただけで、あと一体どなたが責任を持ってわれわれの勧告を吟味し、また必要なものについては、これをとっていただけるかということについては、これまで何ら責任ある措置がとられておらなかった。そこで現在の社会保険制度でも、これを一木に統合しようというお考えであるならば、やはり内閣の中に、受けて立つ中心的な機関というものが作られなければならぬ。一時関係閣僚懇談会というものが、林譲治氏が副総理で、厚生大臣のとき作られましたが、これも半年で立ち消えになった。これではせっかくの勧告自身が立ち消えになってしまう。まとめよう、統一しようと言われるならば、そういう責任ある受け入れ態勢を政府部内にお作りをいただきたい。お作りいただけるかどうかということをお尋ねしているわけであります。
  327. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 社会保障制度審議会が勧告をしたのは二十五年の十月、それから第二次勧告が二十六年の十一月であると私は記憶いたしております。従って、この勧告を受けて立つべき政府といたしましては、当然前内閣自由党内閣が長年にわたって政権を担当しておったのでありますから、今日までのところは、前内閣の主たる責任であったかと思うのであります。そこで民主党政府としては、これは社会保障制度審議会の勧告を尊重して、受け入れ態勢を整備いたしたいというのが元来の考え方でもありますから、ただいま御要望の点などは十分参照いたしまして、善処をいたしたいと考えております。しかしながら、ただここに非常に困難な情勢がありますことは、御承知のように日本の社会保険は非常に複雑多岐に分れておりまして、これを今直ちに実施をするということにつきましては、相当な隘路があると思うのであります。従ってわれわれとしては、たとえば健康保険を単に五人以上の職場に実施をしておるというような今日の状態を、さらに広めまして、すべての被使用者に適用するということにまず第一の主点を置いて実態を調査いたしたい、かように考えておる次第であります。
  328. 岡良一

    ○岡委員 すべての国民を医療保険に包括をするという御趣旨は、われわれも年来宿願として唱えておるところでありますが、しかしその方向として、五人未満の事業所の従業員にもこれを適用するようにしようということで調査を始められるという。しかし私は、これは事実上の問題としては、その形で全国民を包括しようとすることはもうすでに試験済みで、私はだめだと思う。これはもっと別な構想で当らなければならぬと思う。やはり国民健康保険そのものの大拡充という姿で行かなければ、五人未満のところをとらえて、職場の標準報酬の少い、異動の激しい零細な事業場をその対象にして健康保険をやっていくということは、これはよほど慎重にかまえられませんと、なかなか意思はそうでも、事実上の問題として非常に困難な問題があろうと私は思っておりますが、それはさておきまして、そこで社会保障制度統合の問題の第一着手として私が特に御所信を承わりたいと思うのは、年金問題であります。私は今の日本の社会問題の中で一番痛切な問題は、日本の年寄りの問題だと思う。日本の若者がヒロポンに悩むように、年寄りは不幸な立場におる人が非常に多い。ところが日本のこの養老年金制度というものほど諸外国の年金制度に比べておくれておるものはない。おくれておるどころではなく、非常に不統一です。官吏の普通恩給が、一昨年の調査で年金が五万七千円、十五年間炭坑の中で重労働に従っておった者が、五十になっつてわずか二万四千円フラット、そうかと思うと、軍人の遺家族が二万七千円、こういうように受給の年金の額も違えば、その受給資格も違い、国庫の補助率も違い、窓口も違い、まことに不統一である。やはり社会保障制度は、揺籃から墓場までと申しまするが、現在日本の不幸な老人の老後の生活、何商売であろうと、お国のために働いておったのだから、やはり国が老後の生活は守る、これが憲法第二十五条の理念の現実の制度化だと思いまするが、そこまでいかなくとも、現在の不統一な年金制度というものをもっと平準化する。これは、私が日本の社会保障制度の現行の体系を見たときに、まず第一着手としてしていただきたいことだと思う。これについての川崎厚生大臣の御意見を承わりたい。
  329. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいま私の発言に関連いたしまして、御注意がありましたことはごもっともであります。われわれも、単に健康保険の拡充というようなことではなしに、むしろ国民健康保険をこそ、全国民を対象としての大きな荒筋としての保険という意味で、ぜひ国民健康保険に力を注ぎたいという点は、ただいま御質問ではありませんでしたが、御指摘になった通りでありまして、全く同感であります。  それから厚生年金といいますが、諸外国に比べて、ただいま申されましたように、養老年金ないしは老齢年金というものが非常に日本において立ちおくれておる。この適用範囲というものは非常に狭いものでありますから、これをなるべく広げたいということは、もう国民、ことに良識者あげての議論になっておると思うのであります。昨年の国会に、厚生年金改正法案が一応提出をされましたが、あれをもって厚生省としては満足をいたしておるわけではないのでありまして、でき得る限り今後養老年金制度の拡充には意を注ぎたい、かように考えております。
  330. 岡良一

    ○岡委員 全く重労働の坑内労働者が、十五年間義務として、ほとんど強制貯蓄的に掛金をして、それが五十五になってもらう年金は二万四千円です。しかもあのときには——まあこういうことを申し上げるのは、皮肉で申し上げるわけじゃないが、厚生年金法の審議のときには、改進党の方もやはり当初は一万八千円の政府案に御賛成であった。これはしかし何とかやはり引き上げていただきたいと思うのです。大した予算も要りません。受給人員にしたってわずか一万に満たないのですから、ぜひともこの問題はこの際御考慮願いたいと思います。  なおこの機会大蔵大臣にお尋ねをいたしたいのですが、厚生年金積立金の問題です。莫大な積立金を労使双方が世々として毎月積み立てておりますが、これが現在のところは、厚生省からそのまま運用部資金に預入されて、大蔵省がいわば独断的にこれを運営しておられる。私はやはりこういう資金というものは、諸外国の立法例を見てもそうなんですが、こういう社会保険の掛金が、その国の大蔵省の独占的な運営にまかせられるという例は、私は知りません。これはやはり醵出者の福祉に還元をする、こういう形で運営をせられるというのが当然の筋じゃないかと思うのです。この点大蔵大臣の御所見をお聞きしたいと思います。
  331. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 厚生年金の積立金、これを勤労大衆等へ還元しろ、これは私は非常にけっこうだと思います。大蔵省といたしましても、逐年その方針で、この年金はそういう方面に還元するようにいたしております。二十九年度にもそういう方針を採り、三十年度もさらにこれをふやしていこう、こういうふうに考えております。今これだけを別に運用部資金から離して、そして別途の会計を作るということにつきましては、今日私は全体の資金の関係から考えておりません。しかし、できるだけ御趣旨に沿うようにこの年金を運用したい、かように考えております。
  332. 岡良一

    ○岡委員 昨年の年金勘定で見ると、大体全部の積み立てられた積立金の総額は千百八十余億、利息が五十四億、これに対して労働者の福祉に環元されたものは、住宅の費用が二十五億、医療施設への融資として十五億であるから、五十四億の利息にも満たない。これでは話にならないと思う。これは、何も今運用部資金に入っているものをごそっと引出して、別途な金庫を作って直接に福祉に還元しろ、そういう無理な乱暴な理想論を申し上げるのではないのですが、しかしそれにいたしましても、年々四百億近いものが預入されておる。もっと大幅に、利息の一部などというのではなく、総額の何十%というものは、やはりこれを労働者の福祉に還元するという原則を立てていただいて、特殊法人でもつくって、総合基金とでも何とでも適当に名前をつけて、運営はやはり醵出者の意向を含めての民主的な運営をはかられて、そうして醵出者の福祉に直接還元する、こういう運営をするのが私は当然だと思う。この点については、ぜひとも一つ大蔵大臣としても、あなたの大事なお仕事として御研究をいただきたいと思うのです。  それから川崎さんにお尋ねをいたしまするが、健康保険の赤字問題です。健康保険の赤字問題は、一々内容の説明をいたす必要もありませんが、さしあたり本年度の健康保険勘定の赤字はどういうふうにしてこれを切り抜けられますか。また将来に対する対策としては、どういう対策を用意しておられますか。この二点を承わりたいと思います。
  333. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 健康保険の赤字が、工十九年度の末におきまして、大体四十一億出るだろうということが見込まれておりまして、非常に健康保険の危機という問題に立ち至っておることは、率直に認めざるを符ないと思うのであります。この原因やその他については、すでに岡さん御承知通りでありまするから、あえて申し上げませんが、対策といたしましては、二十九年度の赤字と三十年度の赤字の見込みについては、これは関連をしておるわけでありますから、一体となって対策を立てなければならぬのであります。昨年の暮れに国庫余裕金を二十億借り入れをいたしておりまするが、これは当然返済をしなければならぬのであります。従って、今日出ました赤字については、ただいま財政当局とも折衝をいたしておりますが、二十九年度分については、当然政府として措置をいたさなければならぬという考え方になっておるのであります。それから三十年度の分につきましては、これは予算の編成と関連をいたすことでありますから、厚生省としての考え方は、財政当局に話をして目下折衝をいたし、赤字を解消することに努力したい、かように考えております。
  334. 岡良一

    ○岡委員 この会計年度ももうあと数日でありますから、何とか対策を講じようということでは、私どもも満足がいきかねるので、具体的にどういうふうに処置をされるか。これをしていただかないと、傷病手当金も医療報酬の支払いも何もできなくなってしまう。そのことだけで、健康保険というものは一時麻酔状態に陥るのでありますが、どういう具体的な対策をしていかれるのか、この点はっきりとお答えをお聞きしたい。  それからいま一つは、これも恒久的な対策については、いろいろ厚生省としては御相談をしておるというお話であります。新聞にもいろいろな対策が伝えられておるようでありますが、私は率直に私の考えを申し上げて、これは大蔵大臣の御所見も承わりたいと思う。要するに健康保険の給付費については、国が補助するという原則を一つ立てていただかなくては、真の恒久的対策はあり得ない。船員保険についても同様で、給付費についても国が補助する。現在の第七十条を改正をして、事務の執行に関する費用じゃない、その保険の費用についても国が補助するというところで、赤字の療給は国の責任においてこれをやっていく。これをやらなくてはとうていこの健康保険なり船員保険というものの苦しい財政状態は切り抜けられない。これは何も国に甘えるという意味じゃない。しかし少くとも国労保険、いわば強制貯蓄のような形で労働者が積み立てておる。しかも結果においては、その制度が普及をし、利用をされるという喜ばしい現象のもとに赤字が出ておるわけであります。とすれば、これはやはり当然国の責任において負担をする。どこの国でもこれはやっておるじゃないかと私は思うのですが、これは特に大蔵大臣いかがですか。これまでの自由党大蔵大臣では、保険というものは、やはり保険料の収入でまかなうのだというようなことをおっしゃって、給付費の国庫負担というものは実現ができなかったわけです。国保についてはどうやら衆議院、参議院の厚生委員会が非常な努力をして、そうしてきびしい条件で二割の国庫補助をいただいておる。しかし健康保険も船員保険も、やはり健康を生活の元手とし、生産の元手としておる船員や労働者の保険です。農民の健康を守ると同じように、給付費についても国が補助する、国が負担をするという原則を打ち出すということが、やはり社会保険のあり方として正しい姿だと思うが、大蔵大臣の御所見はいかがですか。
  335. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 健康保険の今日の赤字及び今後のことについて、なぜそういうかうに赤字が出るに至ったか、具体的に今調べておるわけであります。そうしてこれを突きとめた上でまたいろいろと考えていきたい、こういうふうに考えております。
  336. 岡良一

    ○岡委員 こういうことはよくお調べだと思うから、私はあえて理由を申さないのですが、健康保険の赤字の理由は幾つもありましょう。あるいは保険料の不正な利用もある。あるいは医者の不当な請求もある。しかし何といって毛一番大きな赤字は結核なんです。結核が入院費の六割を占めておる。しかも幾何級数的に年々ふえておる。これは、結核という病気は個人の過失で起きる病気ではない。貧困とか失業とか過労とか、あらゆるそういう社会的な要因によって起る病気なんです。国民病というのです。これが非常な形で今蔓延しようとしておる。こういうことから、健康保険が民間産業の労働者を結核から守る防波堤としていよいよ役立ってきておるということが、結核に関する支払いを多くし、これが健康保険の赤字の大きな原因になっておる。であるから、理由をお調べになればなおさらのこと、健康保険の納付については、国が一部負担をする、この原則を立ててもらわなければ困る。今になってのんきな、また原因を調べてみようなどということでは、あまりにもスロー・モーションで困るのですが、そこで結核の問題に移っていきたいと思います。結核は今申しましたように、最近の厚生省のいわゆる結核白書と申すものを見ると、治療を要する結核患者が三百万人に近い、入院を要するものが百三十七万人である、莫大な数に達しております。これはやはり健康保険や生活保護法等の財政の赤字を救うというだけではなく、このような個人の過失に基かない社会的な諸条件によってあたら生産力を失わんとし、しかも家族が非常に大きな負担をしなければならぬというこのような病気に対しては、この結核蔓延の実情に照らしても、政府としては積極的な対策があってしかるべきだと思うが、これについての厚生大臣の御所見はいかがでしょう。
  337. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいま、診療報酬の支払いの遅延につきましてどうするかということの御質問が私にあったのであります。ちょうどそれに関連して、大蔵大臣答弁が先にありました。大蔵大臣の御答弁は、三十年度に見込まれる赤字の問題については、これは十分従来の原因を調査してみないと、これに対して国費をもって負担するとか、あるいは一部で伝えられましたような、保険料率の引き上げをするとかいうような問題についての結論も出ないものでありますから、そういう御答弁があったと思いますが、二十九年度の赤字あるいは診療報酬の支払いによるものは、これは国庫余裕金をもって一時充当するという考え方をもつて、厚生省としては大蔵事務当局に対して折衝いたし、大体了解がつき得る段階に達しておると確信をいたしております。  それからただいま御質問になりました結核問題につきましては、これは岡さんの御専門のことであります。私は就任日浅くして、結核問題についての専門知識は持ちません。しかしながら、近時結核による死亡が非常に減少してきているものの、なお一昨年厚生省で行った調査によりますと、二百九十二万人もいる。それから最近著しい現象としては二十才台、あるいは三十才台という年層ではなくして、それ以上の年層に相当な結核患者があるということが、相当学界からも指摘をされ、事実そうのようでもあるようであります。そこで厚生省としては、結核はもとより長期の療養と多額の医療費を必要とするものでありまして、個人的にも社会的にも非常な打撃を与える疾病でありますから、この禍害から国民を守るということにつきましては、最も重視をいたしまして対策を講じたいと思っているのであります。新しい対策といたしましては、まず第一に健康診断の対象を拡大するという——まあ今実態調査に現われました、三十才以上の年層の人々を対象にしての健康診断を、拡大することが第一の点であります。  それから第二は、在宅患者の隔離方策を改善したいという考え方を持っております。  それから第三には、結核医療費に対する公費による負担の割合の増加につきましても、十分検討いたしております。またすでに吉田内閣以来、この結核対策については、前内閣も相当な努力をいたしておるのでありまして、結核病床の増床計画が現に進められておりますが、これを本年も引続き拡充をしていきたいという考えを持っております。  その他アフター・ケアの問題につきましてもこれは日本は非常に立ちおくれておるようでありまして、私らも現に諸外国において見聞をいたしまして、非常に考えさせられるものがあるのでありますが、こういう施設の拡充につきましても努力をいたしていきたい、かように考えております。
  338. 岡良一

    ○岡委員 とにもかくにもただいまお示しのいろいろな方策については、私どももかねてから承知をしておるのでありますが、特に力こぶを入れていただきたいのは、何と申しましてもやはり集団検診の励行、それも現在のような保健所の姿ではだめだと思います。だからもっともっと保健所を充実して、医者も定員の六割しかいないということでは、機動性ある集団検診のための活動ができるはずがない。だからこの保健所活動、これをうんと充実するためには、大蔵大臣もよほど予算を張り込んでいただかなきやならぬ。  それから公費負担の問題も、やはり健保財政や生保医療扶助費の六割が結核の医療補助に占められておる実情に照らしてみても、もっと根本的な大改革をやってもらわなければならぬ。その方針は今おっしゃった検討しようというそのことですが、具体的には、やはり生保並みに国が八割を補助する、この原則を立てなければ、他の社会保障制度の療養給付の中に全部結核が食い込んでいって、他の制度がつぶれてしまう。だからこれをやってもらうとともに、現在のように任意支出、任意負担ということでは、どうしても郷道府県はいやがってやらない。これが国の補助率が高くなって、義務支出になれば、その義務支出に従って当然府県も変えるのですから、これは、あくまでも義務負担にする。そうして国庫の補助率は生保並みにしていただく、これを一つぜひとも予算としていただきませんと、三百万の結核患者がいるということは、生産力の喪失——療養のための支払いを含めて、大へんな国の財産の喪失を意味するので、大蔵大臣としてもどうかそういう点を十分お考えになって、財政的予算的に御奮発を願いたいと思います。  それから最後に人口問題の点でありますが、人口問題も、大体百何が人というところまで自然増加は減って参りました。しかしこれではまだまだ、日本の今日の実情においてはもっとこれを抑える必要があろうかと思う。しかも三割三分くらいまで受胎調節が普及してきたのは、いわば経済的に恵まれた階層、あるいは文化的に多少高い階層に三割三分の線までどうやら人口調節が来ておる。これからはよほど啓蒙をし、宣伝をし、また薬剤も器具も持ち込んでやらなければ、受胎調節がやれないという階層がこのあとに控えておる。だからして、そういう階層が受胎調節をやらないで、経済的に文化的に恵まれた階層が受胎調節をやるということでは、民族の将来においても逆淘汰が起る。今こそ非常な力こぶを入れて、受胎調節というものについては、よほど真剣に、予算的にもあるいは行政的にも取っ組んでもらわなければならない。この点について厚生大臣の御所見があれば伺いたい。
  339. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 人口問題はある意味では日本における最大の問題ではないかと思います。日本国内で論議をされる以上に、諸外国においても日本の人口問題については注目をいたし、すでに警鐘を乱打しておる雑誌なども相当現われておるのでありますから、われわれとしては、この問題に真剣に取り組んで解決をはからなければならぬと思います。そこでただいま御指摘の通り、受胎調節の問題につきましては、厚生省の所管に属する人口問題の解決に関連をするわけでありますが、昨年人口問題審議会から受胎調節の意見が出まして、いわゆる家族計画の理念を基調にして人口問題を考慮しろという、勧善といいますか、答申が出ましたので、これを積極的に推進をはかりたいと思っております。御指摘の通り、中産階級以上の階層においては、受胎調節は割合に行われておるようでごさいますが、最も必要とする貧困の階層であるとか、あるいはそういう実際の知識に欠けておる人々に対する指導の方法が、今日まで十分でなかったことは、われわれとしても認めざるを得ないのであります。従いまして、今後は優生保護相談所というようなものなどの陣容を強化いたしまして、そしてこの巡回指導とか、町内指呼とかいうようなものに対しても、力を注ぎたいと思っております。
  340. 岡良一

    ○岡委員 最後に要望を申し上げて、私の質問を終りたいと思うのでありますが、社会保障制度の拡充についていかに私どもが申し上げても、要は国の財政に大きく左右されることは、申し上げるまでもないのであります。政府も第一次の組閣の当初の声明として、防衛費は民生を圧迫しない程度にし、防衛支出金の減額に期待するというような声明を出しておられます。これはやはり国民も非常に歓呼して迎えた政府の御意思であったと私は思っている。これは全国民も、何とか独立を達成したいという大きな希望があればこそ、この防衛支出金に対する政府の断固たる削減の意図というものを歓迎している。でありますから、今せっかく外務大臣や、大蔵大臣や、防衛庁長官等でお進めの防衛支出金の削減に対する交渉というものが、国民の失望を招かないように。これがあるいは困難に遭遇し、あるいは不可能に陥るというふうなことは、単に本予算編成の技術上の錯誤にとどまらない。独立を待望する国民に対する、これはまっこうから水をかけるような政治的な大きな責任を伴う問題であるということを、十分に御銘記を願いたいと思います。同時にまた総理大臣は、しばしば庶政の根本は独立の達成にある、こう申されていることを私は承知しておるのであるが、しかしながら毎会計年度において、常に本予算編成においては防衛女出金をめぐって、いわば第三国の意思日本予算編成が大きな拘束を受けている。予算の作成というのは、憲法に規定された、重大な内閣の国務である。これがこのような外からの圧力によって強制されるというような事態は、決して真に独立国の政府のあり方ではないと私は思う。どうか社会保障制度を守る意味においても、同時にまた独立を多く期待している国民の希望に沿うためにも、防衛支出金の削減については格段なる御努力をお疑いして、私の質問を終りたいと思います。(拍手)
  341. 牧野良三

    牧野委員長 川上貫二君。
  342. 川上貫一

    ○川上委員 私は主として鳩山総理大臣に対して二、三の質問をいたします。どうか御答弁はそのままでお答え下さってけっこうであります。  まず第一に、日本アメリカの原爆を置くという問題について、本会議並びに本委員会における委員諸君質問に対する総理大臣の御答弁は、とうもあいまいでありまして、あれでは国民が納得しないと思う。そこで、端的に私は質問をいたしたいのでありますが、総理大臣は、日本アメリカの原爆基地として提供することに御賛成であるかどうか、この点をまずお伺いいたします。
  343. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 原爆基地としてアメリカに許すか許さないかは、ただいま言明することはできないと思います。アメリカからそういうような要求があった場合に考えるよりいたし方ないと思っております。とにかく現在の平和が原子力兵器の均衡によって保たれておるという事実は、認めなくちゃならないだろうと思う。それですから、その場合が参りましたときに、アメリカがこれを貯蔵することを、容認するかどうかということを考えるよりいたし方ないと思っております。
  344. 川上貫一

    ○川上委員 そういたしますと、総理大臣は、アメリカは、日本アメリカの基地に原爆あるいは原子力による兵器を置く場合には、必ず日本政府の承諾を求めてくるとお考えになっておるのでありますか、この点をお伺いいたします。
  345. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それはただいま想像することはできません。多分アメリカはそういうような要求を日本にしまいと思っております。
  346. 川上貫一

    ○川上委員 それは日本に置く必要がないから要求はしまいという意味でありますか、あるいは要求をしないで勝手に持ってくるという意味でありますか。
  347. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 いや、そうじゃありません。日本の基地にこれを所有する必要を持たないだろうと思っておるのであります。
  348. 川上貫一

    ○川上委員 それは総理大臣の非常に勝手なお考えでありますが、現に台湾海峡には、アメリカの空母のミッドウェーほか数隻が出動しておって、これが原子兵器を搭載しておるということは世界的な常識になっておると思う。それから、ダレス・アメリカ国務長官は、バンコックの会議で、アメリカの極東戦略は、原子兵器を通常防衛兵器として認めることを基本としておるのであると名言しておるのであります。原子兵器を極東戦略の通常防衛兵器として認める、これを基本にしておる、こうはっきり言うておるのに、日本の基地は原爆には使わないと言う。どういう理由でそういう保証がありますか。
  349. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 日本にこれを要求しなくても、アメリカは自由に使い得る場所を持っておる思うからであります。
  350. 川上貫一

    ○川上委員 日本に要求しないでも使い得る場所を持っておるが、日本に要求して持ってきたら戦略上さらによろしい。日本には持ってこないという保障があるかどうか。
  351. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 アメリカが要求してきた場合にはそれを考える、多分そういうことはないであろうというわけであります。
  352. 川上貫一

    ○川上委員 アメリカが要求してきた場合には考えるという総理大臣の御答弁でありますが、日米安全保障条約及び行政協定によると、アメリカ日本に原水爆を置くということはアメリカの自由であります。何もことさらに日本政府の承諾を求めなければならぬという法的根拠はないと思うのです。日本政府が拒もうと拒むまいとそんなことには関係なく、アメリカは一方的意思によって日本の基地に原子兵器を持ってくることができるようになっておると思うのでありますが、この点では総理大臣はどうお考えになっておりますか。
  353. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は日本に無断でそういうことはしないと思っております。
  354. 川上貫一

    ○川上委員 それを聞いておるのではないのです。無断でするかしないかということは主観の問題で、これは政治になりません。日本に相談をしなくても、持ってき得ることに法的になっておるではないか。これはどうでありますかということを聞いておるのです。
  355. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 外務大臣に答弁していただきます。   〔発言する君あり〕
  356. 牧野良三

    牧野委員長 お静かに願います。
  357. 重光葵

    ○重光国務大臣 行政協定によりアメリカ軍が原水爆弾を日本に持ち込み得るかどうみ、法律的の根拠としては、これは疑問があるように思います。しかしこれは重大な問題でありますから、さようなときには必ずアメリカ側から日本政府に相談がある、こう考えております。
  358. 川上貫一

    ○川上委員 重大問題だから日本政府に相談があるだろう、こう日本政府がお考えになることは自由であります。それは自由でありますが、日本政府に相談をしなければならないという根拠がないとわれわれは理解するのでありますから、そうすれば日本に相談しなくても持ってこられる。それは持ってこれないという法的根拠がありますかということを聞いておるのですが、これはどうもお答えにならない。これをお知りにならないようではどうも困ると思うのであります。(笑声)これは正確に一つお答えを願いたい。  第二には、アメリカの前のマクマフォン、昨年改正しました新しい原子力法、この法律によって、アメリカの大統領といえども、原子兵器の配置については漏らすことができないことになっておると思う。これには死刑になるまでのをきつい法律があると思う。これはやはり日本に相談しますか、これはどうお考えになりますか。
  359. 重光葵

    ○重光国務大臣 これは相談を受けることと思っております。
  360. 川上貫一

    ○川上委員 これはちょっとどうもならないと思う(笑声)受けると思っておるというのでは、これは外交になりません。政治にならないです。必ず受けるものであるか。場合によっては受けないこともあるのか。これがはっきりしませんと、この国民にとって重大な問題、軍事基地の問題というものの性格ははっきりしないのです。もう一度繰り返して言いますと、必ず日本の承諾を求めなければ持ってこられぬのであるか。自由に持ってこられる、こういう権能をアメリカ政府は安全保障条約並びに行政協定によって持っておるのであるか。この点がはっきりしませんと、そう思うというようなことでは、どうもこれは外交にも政治にも私はならぬと思うのですが、総理大臣どうでございましょうか。
  361. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私、先刻申しました通り日本にはそういうようなことは要求しないと思っておる。
  362. 川上貫一

    ○川上委員 これは政府が、この重大な問題について法的根拠を知っておられぬのでありますから、総理大臣も御承知でないようでありますから、あとでよく勉強してもらうことにして、私この問題についてはこの辺でおきまして、また次の委員会にでもよく御勉強なさってから承わりたいと思うのでありますが、ただ一つ申したいことは、日本国民が原子兵器の使用と、日本に原水爆を持って来て置かれるのじゃないかという心配を上下こぞってしておる時分、政府当局の方々がどういう格好で日本に原子兵器を持ってこられるのかという法的根拠、国際的な根拠もお知りにならぬというようなことでは、日本国民は安閑として政権をこういう政府にまかしておくことはできません。私はこれをはっきり国民にかわって言いたいと思う。今日国民の一番心配しておる問題は戦争の問題です。原子兵器の問題です。これが使われやせぬかという問題です。これは私は重大な問題だと思って、問題はあとに残しますけれども、政府の方でももう少し御勉強下さらぬと、これは危ないです。  さらに総理大臣にお聞きいたしたいのでありますが、先日来各委員に対する御答弁を聞いておりますと、先日外人記者に言うたのは、仮定の問題であるというような御答弁もあります。いろいろあるのでありますが、この国会において、この委員会においてはっきりした答弁ができない、これが私は不思議なんです。きょう、今日の総理のお考えでけっこうです。言うて来た時分にどうこうという問題ではないのです。危険は目前に迫っておるのであります。すなわち今日、今、現在、総理大臣は、日本を原水爆の基地として使用するということの必要があると思うておられるのか、基地として提供しても仕方がないと思うておられるのか、それ絶対に困ると思うておられるのか、はっきり言えないはずはない。外人記者に対してさえおっしゃっておる、国会でこれが言えないはずがないのでありますから、この委員会でこの点はどうしてもはっきりと国民の前に明らかにしておいていただきたいと思う。重ねて質問いたします。
  363. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 原子力の兵器の均衡というものが、世界の平和の原因になっておるわけでありますから、そういうような事態の生じてきたときに考えるより仕方がないではありませんか。現在は、原子力の兵器を使われては困るということは、だれもかれも考えておるのでありますから、よほどの理由がなければ原子力の兵器が使われることを欲する人はないだろうと思う。原子力の兵器というものの均衡が現在の平和の基礎になっておるわけでありますから、そういうような観点から解釈をいたししまして、平和の維持のために、戦争防止のために必要であるならば、原子力の兵器もある場合には認めなくちゃならないのじゃないかと考えたのであります。
  364. 川上貫一

    ○川上委員 そうするとこう理解したらよろしゅうごさいますか。原子兵器を使わなければ平和が保てぬという前提のもとで、日本を原爆の基地にすることもしかたがない、こう理解していいのですか。
  365. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 つまり逆に言えば、原子力の兵器が戦争を勃発するようなおそれのある場合においては、原子力の兵器は持たないということになるのであります。
  366. 川上貫一

    ○川上委員 アメリカの航空母艦が原子兵器を積んで台湾海峡に出ておるのに、その使わなければならぬ事態が来るとか来ぬとか……。もう目の前に来ておるのと違いますか。使う必要のないのに航空母艦は出ておる。これは普通の常識から考えて、鳩山総理のような経験の深い方は常識的にわかる。アメリカの空母がもう持ってきておる。それを使わなければならぬようなときにはと言いますが、使わなければならぬようなときが来ておるから出ておるのと違いますか。
  367. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 アメリカの航空母艦が原子力の兵器を持つというようなことが考えられるならば、日本に貯蔵をアメリカが交渉するはずはないじゃありませんか。
  368. 川上貫一

    ○川上委員 これはきわめてこんにゃく問答になるが、私の時間は非常に短いので、大てい要点はわかったと思いますから、次の質問に移ります。  先刻来の応答でわかったように、行政協定、安全保障条約は、日本を自動的にアメリカの原水爆基地にすることのできる協定だと思うのです。というの、施設の制限がない、兵器の種類についての制限がないのです。これは協定の全文にも条約の全文にもありません。一方アメリカの国内法においては、原子兵器の配置については、大統領といえどもこれを発表することはできぬことになっていると思う。そうすると、行政協定、安全保障条約は、日本を自動的に原水爆の基地にすることができる、これが一つ。このことは日本が自動的に、いやおうなしに、アメリカの原水爆戦争に協力する義務を負わされておると同じことだということの結論が出てくる。そうすると日本国民はこの協定が存在する限り、自分の意思には関係なく、アメリカ意思によって、アメリカの戦争に必然的に加担しなければならぬという協定になっておると思うのでありますが、このように解釈し、よろしいかどうか。そうでないとするならば、その法的の根拠、条文を明らかにしていただきたい、これは総理大臣にお伺いします。
  369. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 法文にこれ明示してありませんが、しかしながら原子力を行政協定によって日本に保有し得るということも規定してはないのであります。これは道徳の問題であります。それですから、そういうような非常に被害の多いような原爆なり水爆なりを、日本に交渉なくアメリカ日本に貯蔵するということはないであろうと思っておるのであります。
  370. 川上貫一

    ○川上委員 総理大臣、戦争ですぜ。戦争の場合にいわゆる道徳ばかり言えましょうか。これはそういうことじゃ私はいかぬと思う。日本がこういう状態に陥って、単独講和以来安全保障条約、行政協定のもとにあって、その条約に基いて日本に基地が設定され、その条約に基いて先ほど来問題になっておる防衛分担金の負担というものも起っておるのであります。これは国際的にも国内的にも一つの法的根拠があって、それに基いて日本は基地を提供しておるのであって、その提供の法的根拠に原爆の問題、あなたのおっしゃるような形のことが書いてないので、これは道徳的にやってくれるだろう、これでは困ると思う。これでは危なくてしょうがない。私はこういうことでは外交はできない、今日のような切迫しました状態のもとにおいてやれないと思うのですが、総理大臣はこういうことをすべて道徳論で片づけて行けると思うておられますのでしょうか、この点はどうでございましょうか。
  371. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 道徳と常識とによって解釈するほかに道がありません。
  372. 川上貫一

    ○川上委員 もう一ぺん聞きます。安全保障条約と行政協定、これの条文の表側からは——原水爆の兵器を日本に持ってくることを日本の承諾を得たければならぬということは、法律的にこの条文そのものからはないということをお認めになるかどうか、この点もう一ぺん聞きたい。
  373. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 それは明示してないということは、先刻申した通りであります。
  374. 川上貫一

    ○川上委員 こういうおそろしい条約、協定、原水爆を持ってこようと持ってこまいとアメリカの勝手であって、それについては何の取りきめもしてないというような条約、協定、これを日本国民にとって満足すべき協定であると総理大臣はお考えになっておりますかどうか、これは念のために聞いておきたいと思う。
  375. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 ただいま安全保障条約、行政協定を変改するという意思は持っておりません。
  376. 川上貫一

    ○川上委員 満足すべきものだという意味に理解してよろしゅうございますか。
  377. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 改正する意思はありません。ただいま持っていないのですから……。
  378. 川上貫一

    ○川上委員 総理大臣は最近およそこういう意味の言明をなされておると思うのです。蒋介石が中国本土を攻撃する場合に、アメリカ日本の基地を使用することは拒み得ない云々、いま一つは、二つの中国を認めるという条件なら、中華人民共和国と国交調整の用意がある、こういう言葉なのであります。そこで時間がありませんので、私は一つ一つお聞きしたいのでありますけれども、まとめてお聞きいたしますから、一つずつお答えを願いたいと思うのであります。  第一に、総理大臣は台湾は中国の明らかなる領土であるということをお認めになりますかどうか、これが一つです。  第二は、中華人民共和国と台湾の問題は、中国自身の問題であって、国内紛争の問題であって、他の国の関与しない問題であるとお考えになるかどうか。別のお考えがあるかどうか、これが第二点。  第三点は、われわれの考えでは、総理の言われたことは、明らかに中国の六億の人民の意思を無視しておられるのじゃないか。蒋介石一派を支持して中国の内政に干渉して、アジアでのアメリカの戦争の挑発に加担するという、こういう格好になるのではないか。その上にアメリカの原水爆戦略にもやはり加担するという意思を明らかにした、こういう形になるのではないか。これが明らかになりませんと、次の中国との貿易の問題、国交調整の問題についての政府の基本的な態度が明らかにならぬと思うのでありますから、簡単でけっこうでありますから、この三点についてお答えを願いたい。
  379. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 台湾が中国のものであることは認めるかという質問はちょっと困るのです。台湾は国民政府領土であるということは認めます。しかしながら中共のものであるということを認めるわけにはいかない。一国を完全になしておると認めるから二つの中国、二つの独立国があるという観念を持って解決していかなくてはならないという観測をしておるのであります。それですから蒋介石政権国民政権が本土に大陸帰還を主張し、中共が台湾の解放を主張するということは、日本は干渉する権利はもちろんありませんけれども、しかしながらそういうことを両国が主張しないことを希望するということが私の心情です。もしも台湾政権が大陸に帰るということを言い、大陸に領土権を持って主権を立てているところの中共が台湾の解放を叫べば、戦争が起る危険性が非常に多いのです。二つの国だけではなかなか解決できないのが実情でありますから、両国がそういう争いをしないことを日本国が希望するということは当然であろうと思うのです。中共が台湾の解放を叫ぶのは当然なりとして、これは中国人同士で解決するがいいといって対岸の火災祝するということは非常に危険じゃありませんか。そこで戦争が起るということは、第三次世界大戦ということになる危険性がある今日におきましては、そういう事態の生じないことを希望するということは適当だろうと思うのです。希望するからといって手段があるというわけではありませんけれども、それは蒋介石政権なり中共政権なりにもし話合いがあれば、私はそういうことは言いたいと思うのです。
  380. 川上貫一

    ○川上委員 総理大臣の、どう考えているという主観はわかりますが、それはきわめて奇妙なんです。二つの中国を認めるという条件を出した。これは二つなんです。台湾が中国の領土であれば二つになるはずはない。台湾は独立宣言も何もしていない。台湾は北京までひっくるめて、わしの領土だとしておる。一方の方は、台湾は明らかに中国人民の領土であるというておる。これを勝手に総理大臣は二つの国と認めるという、こういう国際慣例はない。こういうことをしておる国は世界中にありません。できないのです。  いま一つの問題は、二つを認めるというておいて、一方では蒋介石が中国本土に攻撃をすれば、日本の基地をアメリカに与えてもいい、日本の基地から爆撃をしてもいい、こういうことを一緒に言うておられる。
  381. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 そういうことを言ったことはないはずです。
  382. 川上貫一

    ○川上委員 中国の本土を蒋介石が攻撃する場合に、アメリカ日本の基地を使う場合にはやむを得ぬと総理は言うておられる。
  383. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 言ったことは断じてありません。
  384. 川上貫一

    ○川上委員 私は言うておられるということの記録を持っておりますけれども、言うておられぬと言われますと、ここでは水かけ論になりますから、それはそれなりにしておきましょう。しかし中国に二つの国があるということは、台湾が独立したということを言うておるのでなし、中華人民共和国は、台湾は自分の領土であるということを主張しておるのです。またアメリカはカイロ宣言以来、その後におけるアメリカ国務省の特別命令書においても、あるいは国務省から発表した文書においても、台湾は中国の領土であるということを認めておるのであります。ところがその時分に鳩山総理大臣がこの中国の中に二つの国を認める、こういう論拠がどこから起るのか、またこういうような国際的前例がどこかにあるのか、一つの国で二つの国家を認めておる、こんなことが歴史上あるのか、国際的にこんなことができるのか、やはりこれを聞いておかなければならぬ。
  385. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 台湾が一つの独立国をなしておるというのは、ただ私一人の意見ではありません。アメリカもこれを認めておるし、イギリスもまたこれを一つの独立国と認めております。ですから私一人が間違った考えを持っておるというのは少し迷惑です。
  386. 川上貫一

    ○川上委員 イギリスは認めておりません。それは領事は出しておりますけれども、決して国難を認めておらぬ。イギリスの認めておるのは明らかに中華人民共和国です。またアメリカが認めておるのは蒋介石一派の政府です。中華人民共和国を認めておりません。両方認めておる国はないのです。こういうことはできないのです。これは一体総理はどういう御量見かわからぬ。
  387. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は現在存在している事実を認めまして、二つの国と取り扱うのがいいと思っております。
  388. 川上貫一

    ○川上委員 そういうことを勝手に認めるということそれ事態が内政干渉じゃないですか。それ戦争挑発ではないか。アメリカは今日台湾を中心にして明らかに戦争挑発をしておるのです。明らかにアメリカが軍艦、空母を出して、そうして原爆戦争、こういう態勢を整えておるのです。その時分に総理大臣は平和をこいねがう、世界の話し合いを希望する、こう害うておられる。ところが一方においては、台湾が蒋介石一派が中国本土を攻撃すれば、二つの国があるのだからこういうことは当りまえだというような考えを持っておられることは明らかだ。それではロジックが合わない。ほんとうに平和をこいねがうということになるならば、台湾と中国との間のこれらの……。   〔発言する者多し〕
  389. 牧野良三

    牧野委員長 お静かに。
  390. 川上貫一

    ○川上委員 どこの国も二つを認めていない。そういうことはない。その時分にわざわざ総理大臣が、その一つの国の中にあるところの二つの国を認める条件ならば、中華人民共和国と国交調整の話し合いをする用意がある一これ条件なんです、談話ではない。こういう条件を持ち出しておられる。これが一体当りまえの考え方であるかという点を私は聞いておるのであります。
  391. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私の考え方は今まで申しておる通りであります。
  392. 川上貫一

    ○川上委員 よく聞えません。
  393. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 あなたは一つの国に両方をしてしまいますけれども、私は現在の事実に即して二つの国と認めるのがよろしいと考えておるのであります。
  394. 川上貫一

    ○川上委員 時間がないようでありますから、もう一つ承っておきます。総理大臣は中国、ソ同盟との国交の回復、友好親善について努めなければならぬ、こう言うておられるが、この中国と言われるのはおそらく中華人民共和国のことであろうと思う。そうすると、この中華人民共和国に対する総理大臣の前提的態度をちょっと伺っておきたいのでありますが、国交調整し、貿易を進め、平和を回復していかなければならぬということであるならば、中華人民共和国の主権の尊重、内政不干渉、平等互恵の態度というもので臨まなければならぬと思う。そうすると、中華人民共和国の主権の尊重、内政不干渉、平等互恵、平和共存という、こういう態度でなければ、これはとても親善友好が深まらぬと思うのでありますが、そういう態度でお臨みになる御決心であるかどうかということが一つ、もしもそういう態度でお臨みになるのでありますれば——このたび中国から貿易使節団が来るときに、この使節団の旅券一つに対しても中華人民共和国と書くことを鳩山政府は最初これを拒否しておられる。今日事は済んでおりますけれども、中国との親善友好、国交回復を主張しておられる総理大臣の基本的態度の中に、やはり中華人民共和国を認めぬという態度があったからこそ、ああいう問題が起った。  第二点には、このたび貿易使節団が来ることになっておるのでありますが、これに対してもほんとうに総理国交の回復、貿易の平等互恵を進めようとする態度があるならば、たとい国交回復以前といえども政府間で通商の協定はできるのです。この例はどこにでもあるのです。そこで政府は今度の貿易使節団と直接に交渉を進めるということについて努力をされたかどうか、これが第二点。  それから第三点としてもう一点あるのでありますが、努力どころか妨害されておるのではないか。これはきのうの毎日新聞に明らかに出ておるのであります。詳しくは古いませんが、通産省首脳部は二十四日に日活国際会舘に丸紅、日綿、東綿、第一通商、伊藤商事など有力貿易商社八社の代表を招き、今回の使節団を迎えての貿易交渉に通産省としての申し入れをいたしておられる。これに行ったのは通商局長であると承わっておりますが、これについては業者は非常に怒っておる。明らかにこれは干渉だ。こういうような協定を結ばなければならぬということを申し入れをしておられる。こういうことをなぜされるのか。こういうことをするかわりに、政府みずからが通商の協定にも乗り出すという熱意がある、こういう方向でなければ、鳩山総理大臣が言われておるような中国との国交の回復などというものは思いも器らないと思うのでありますが、これはどうも趣旨が一貫しない。この点について総理大臣のお考えを承わっておきたい。
  395. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 私は中国という言葉を使わなかったのであります。中国と言いますと、台湾政権と混同するおそれがありますから、国民政府と中共というように区別して使っております。ソ連や中共と国交関係を正常化したい、こういうように申しておりました。それから中共と貿易をし、国交を正常化したい、これは今日においてももとより熱烈にこいねがっております。妨害をいたしたことはございません。通産省の役人がどうしたというような事実は全く知りません。
  396. 川上貫一

    ○川上委員 時間がないと言っておるけれども、そういうことを言われると聞かなければならぬ。新聞にもちゃんと出ておる。通産当局が行って商社を呼びつけて、こうこうこういうぐあいにやれと指示しておる。これは明らかに干渉です。
  397. 鳩山一郎

    鳩山国務大臣 知らないのです。
  398. 川上貫一

    ○川上委員 総理大臣が知らないということがどんどん行われておるということは、一そう問題です。総理大臣は中国との通商友好を進めるということをこの内閣の性格にしておられる、第一政策にしておられる。それを通産当局が勝手にそういうことをやっておるならば、これは私は問題だと思う。これはこの内閣の第一の重要な政策に対して、意見が一致しておらぬどころではない。ある下部の機構が勝手なことをやっておると養わなければならぬと思う。新聞に記事が出ておるのみならず、事実を言うならば、幾らでも材料を持って来ます。きのう申し出ておる。明らかに商社は怒っておる。こういう事実があるのです。これは総理大臣がお知りにならぬというのでありますから、これでは総理が幾ら公約をなさって中国との国交回復、貿易の振興などと言われても、おそらくできっこはないであろうということをわれわれは憂慮しなければならぬ。いわんやこの言葉のもとで、繰返しては申しませんけれども、中国を二つ認めたり、中華人民共和国と書くことをいやがったり、今度の貿易使節団についても、政府はこれと協定を結ぶというような努力を一つもしない。のみならずこれに一つの障害を与える方向をとっておる。中国貿易使節団の視察の場所でも、政府みずからが制限をしておる。たとえば大阪においても、ここのところを見たいというところをことごとく制限して来たのは政府なんだ。このことを総理大臣が中国、ソビエトと国交を親善し、貿易を進めるということとは一つもそぐわない。これは総理大臣は国民を欺くつもりであるか。もしそうでないとするならば、かなりふんどしをお締めになりませんと、将来鳩山内閣の政策の破綻が必ずそこから生じて来るであろうということを考えます。時間がありませんので、私の質問はこれで終ります。
  399. 牧野良三

    牧野委員長 本日はこの程度にいたし、明日曜日は休む。次会は明後二十八日午前正十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後八時五十九分散会