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1955-07-30 第22回国会 衆議院 本会議 第51号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月三十日(土曜日)     —————————————  議事日程 第五十号   昭和三十年七月三十日     午前十時開議  第一 消防力強化に関する決議案鈴木直人君外七名提出)(委員会審査省略要求案件)  第二 自作農維持創設資金融通法案内閣提出参議院回付)  第三 地方税法の、一部を改正する法律案内閣提出参議院回付)  第四 補助金等に係る予算執行適正化に関する法律案内閣提出)     ————————————— ●本日の会議に付した案件  日程第四 補助金等に係る予算執行適正化に関する法律案内閣提出)  日程第一 消防力強化に関する決議案鈴木直人君外七名提出)  健康保険法の一部を改正する法律案内閣提出)  健康保険法等の一部を改正する法律案岡良一君外十一名提出)  厚生年金保険法の一部を改正する法律案内閣提出)  船員保険法の一部を改正する法律案内閣提出)  日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案内閣提出)  証券取引法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  あん摩師はり師、きゆう師及び柔道整復師法の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)  韓国に抑留せられた日本漁民の処遇及び帰還促進に関する決議案大坪保雄君外七名提出)  第三国人戦争受刑者の出所後の援護対策に関する緊急質問山下春江提出)  在日米軍原子砲等原子兵器の貯蔵に関する緊急質問柳田秀一提出)  三重県津市における学童の水死事件に関する緊急質問平田ヒデ提出)  日程第二 自作農維持創設資金融通法案内閣提出参議院回付)  日程第三 地方税法の一部を改正する法律案内閣提出参議院回付)  請願日程 地方財政再建に関する請願(第一〇四号)外千百四十一請願     午前十一時五十分開議
  2. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) お諮りいたします。日程第四を繰り上げ上程するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程の順序は変更せられました。  日程第四、補助金等に係る予算執行適正化に関する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。大蔵委員会理事内藤友明君。     〔内藤友明登壇
  5. 内藤友明

    内藤友明君 ただいま議題となりました補助金等に係る予算執行適正化に関する法律案につきまして、大蔵委員会における審議経過並びに結果を御報告申し上げます。  この法律案は、補助金等にかかる事業費について、過大にあるいは不実に積算したり、設計通り工事施行しなかったり、はなはだしいのは架空の工事や二重の申請をして国庫補助金等交付を受けているもの等が多いことにかんがみ、かたがた、第十七回国会参議院予算委員会において決議されました予算の不正・不当支出防止に関する決議を尊重して、これら補助金等にかかる予算執行適正化をはかるため、政府においては、第十九回国会補助金等に係る予算執行適正化に関する法律案提出いたしたのであります。しかるに、同法案罰則規定等について相当問題がありましたので、第二十回国会に持ち越されて継続審議となりましたものの、ついに同国会において審議未了に終ったのであります。従いまして、政府は、今回、前法律案罰則規定を相当緩和して、本法律案を再度提出するに至ったものでありまして、要は補助金等不正申請不正使用の反社会性法律をもって明確化しようとするものであります。  以下、この法律案のおもなる内容につきまして御説明申し上げます。  第一に、この法律の適用を受ける補助金等とは、補助金負担金利子補給金及びその他国が相当の反対給付を受けないで交付する給付金であって政令で定めるものとし、補助金等に関しまして他の法律またはこれに基く命令に特別の定めのない限り、この法律によることといたしております。  第二に、補助金等交付申請及び決定の手続を規定するほか、決定に際し必要な条件を付することといたしますとともに、交付決定後に、天災地変等特別の事情により補助事業の全部または一部を継続する必要がなくなった場合等において、当該交付決定の全部もしくは一部の取り消しまたは決定内容もしくはこれに付した条件の変更ができることといたしております。  第三に、補助事業等または間接補助事業等遂行に当っては、常に善良な管理者の注意をもって遂行すべき義務を課するとともに、補助事業者等提出する報告等により、必要がある場合には当該補助事業等を適正に遂行すべきことを命じ、また必要に応じ一時停止を命じ得ることとし、さらに事業完了後は必ず実績報告を徴し、その審査及び必要に応じて行う現地調査等により、補助金等の額を確定することといたしておるのであります。なお、補助事業等により取得した財産等につきましては、補助金等交付目的に反する使用処分等を原則として禁止することといたしております。  第四に、補助事業者等または間接補助事業者等が、補助事業等または間接補助事業等に関し、法令等に違反し、または補助金等もしくは間接補助金等の他の用途への使用をした場合には、補助金等交付決定の全部または一部の取り消しをすることができることとし、この取り消しがあった場合で、すでに補助金等交付されているときは、その返還を命ずることとし、右の返還命令があったときは加算金納付させることとし、返還金納期日までに納骨しないときはさらに延滞金納付させることとするとともに、これら返還金等納付がない場合には、他の同種補助金等交付を一時停止し、もしくは他の同種補助金等と未納付額とを相殺することができることとし、さらにこれら返還金等徴収に当っては国税徴収の例によることができることといたしております。  第五に、偽わりその他不正手段により、補助金等交付を受け、または間接補助金等交付もしくは融通を受けた者、あるいは補助金等もしくは間接補助金等の他の用途への使用をした者等に対し、所要の罰則規定を設けているのであります。  第六に、右のごとく補助事業者等に対し相当厳格な規律をもって臨むことといたしたのでありますが、他面、補助金等交付する側においても、その取扱いをより適正にするため、補助金等に関する事務その他補助金等にかかる予算執行に関する事務に従事する職員に対し、事務を不当に遅延させたりまたは必要な限度を越えて補助事業者等もしくは間接補助事業者等に対し干渉してはならない義務を課したほか、補助金等交付決定その他の処分に不服のある地方公共団体に対しては不服の申し立ての道を開くことといたしております。  なお、日本専売公社日本国有鉄道及び日本電信電話公社に対しましてもこの法律を準用することといたしております。  この法律案は去る七月十九日政府委員から提案理由説明を聴取し、自来、補助金等の性格、補助金等の査定、交付監督等に当る官庁側責任及びそのあり方、補助金等不正申請不正使用をした者に対して、公職追放等行政罰によらないで特に刑事罰規定した理由等について、大蔵大臣を初め政府当局並びに会計検査院当局に対し質問が行われました。この内容速記録をごらん願います。  かくて、昨二十九日各派共同修正案提出されました。修正案内容は、第一に、この法律目的を、予算執行適正化のほか、補助金等交付決定適正化をはかることに改め、第二に、修正を加えて補助金等交付決定をするに当っては、当該補助事業等遂行を不当に困難とさせないようにしなければならないこととし、第三に、偽わりその他不正手段により補助金等交付を受けた者に対し課せられる罰則を、交付する官庁側公務員の不正行為に対しても適用することとする等に改めたことであります。  次いで、討論を省略し直ちに採決いたしましたところ、修正案並び修正部分を除く原案はいずれも起立総員をもって可決せられました。  右、御報告申し上げます。(拍手
  6. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 採決いたします。本案委員長報告修正であります。本案委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。   [「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって本案委員長報告の通り決しました。      ————◇—————
  8. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第一は提出者より委員会審査省略申し出があります。右申し出の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。  日程第一、消防力強化に関する決議案議題といたします。提出者趣旨弁明を許します。荒舩清十郎君。     〔荒舩清十郎登壇
  10. 荒舩清十郎

    荒舩清十郎君 私は、本院四党を代表いたしまして、消防力強化に関する決議案につき、その趣旨弁明をいたすものであります。  本案は、第十三回国会において、大野伴睦君外十二名の提案により、本院において同趣旨決議を見たところでありますが、今回重ねて各派共同提案として御審議をわずらわす次第であります。  まず、案文を朗読いたします。   消防力強化に関する決議案   最近、水火災その他の災害がひん発する実情にかんがみ、政府は、これが対策を慎重に考究し、消防制度を整備し、消防業務につき、最善の策を講ずべきであるが、現下緊急の措置として、とりあえず次の事項を速やかに実施すべきである。  一 消防施設強化促進法に基く国庫補助金増額すること。  二 消防関係公務災害補償拡充強化につき、適切な措置を講ずること。  右決議する。  この際、簡単に提案理由説明いたします。  近時、火災、水害その他の災害が急激に増加し、かつ被害の規模が逐次増大しつつある傾向にありますことは、きわめて遺憾であり、これが万全の対策を早急に実施する必要のあることを痛感する次第であります。ことに、火災は、四季を問わず、ひんぴんとして発生しておりますが、一方、これに対処する市町村消防力はまことに寒心にたえない現状であり、そのため、気象的悪条件のもとに一たび火災発生を見れば、大火となって幾多の人命、財産を烏有に帰しており、せっかく住宅対策に腐心しながら、一方から目に見えてこれをくずしつつある現状であります。また、治山治水事業もいまだ緒について間もない実情より見まして、来たるべき雨季、台風季における水魔の跳梁に思いをいたすとき、毎年そこなわれている幾多貴重な人的、物的損害を想起し、まことに、はだえにアワを生ずるの感を禁じ得ないのであります。このときに当り、それらの災害に対処して、挺身防除の任に当る全国二百有余万人の消防関係者に対し、後顧の憂いなく、安んじて活動でき得るようにするためには、公務災害補償制度完全実施の必要を痛感する次第であります。  まず、決議案の第一に消防施設強化促進法に基く国庫補助金増額を掲げましたのは、右に基く補助金実績が逐年減少の一途をたどり、本年度はわずかに二億六千万円弱を計上されているにすぎないのであります。反面、これに対する市町村補助金要望額は年々増大いたしまして、本年は三十億余円を計上することを希望しておるのであります。こうした現状から見まして、市町村財政の窮迫は、消防施設強化の必要を痛感しつつも、手を施し得ざる状況にあり、ために、施設は老朽化するばかりであって、法律の示す消防力強化の実をあけることはとうてい困難であり、まことに憂慮すべきことと考えさせられるのであります。右補助金増額をはかり、もって大火災発生を封じ、災厄の未然に防止されんことを希求するものであります。  次に、第二の、消防関係公務災害補償拡充強化につき適切なる措置を講ずると掲げましたのは、現行公務災害補償制度市町村の負担するところとなっており、その裁定補償金支給はすべて市町村責任で行われているのであります。しかしながら、最近の市町村財政の窮乏はその完全な実施を妨げている状況もうかがわれ、あるいは公務の認定を渋り、ときには休業日数を打ち切る等の方策が講じられる結果、せっかく打ち立てられた補償制度実施が不完全となり、ために、一朝有事の際には、身命を挺して水火の難におもむく消防関係者士気に影響するところきわめて大なるものがあります。この点、まことに寒心にたえない次第であります。もし若干でもさような傾向が生ずれば、そのもたらす社会的不安はまことに憂慮すべきものがあると考えられるのでありまして、これにわずかな国庫補助金を支出することによって、公務災害補償が完璧に実施され、関係者士気を鼓舞し、挺身災厄を防除できれば、国家のため大なる仕合せと信ずる次第であります。  何とぞ、満場各位の御賛成を得て、政府当局に強く要望し、本決議案のすみやかに実現せられんことを切望し、あわせて二百万消防関係者に深甚なる感謝をささげ、ここに提案理由説明を終る次第であります。
  11. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって本案は可決いたしました。      ————◇—————
  13. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、内閣提出健康保険法の一部を改正する法律案岡良一君外十一名提出健康保険法等の一部を改正する法律案、(「話がついておらぬ」「話はつけてある」「暫時休憩」と呼び、その他発言する者多し)内閣提出厚生年金保険法の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案、右四案を一括議題となし、この際委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  14. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議あり」「異議なし」と呼び、その他発言する者あり〕
  15. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) そのまま暫時お待ちを願います。一     〔「議事進行」「休憩々々」と呼び、その他発言する者多し〕
  16. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 異議があるとのことでありますから、長谷川提出動議採決いたします。長谷川提出動議賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  17. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 起立多数。よって長谷川君の動議は可決いたしました。よって日程は追加せられました。  内閣提出健康保険法の一部を改正する法律案岡良一君外十一名提出健康保険法等の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案、右四案を一括して議題といたすはすでありますが、この際暫時休憩いたします。     午後零時二十一分休憩      ————◇—————     午後二時四十二分開議
  18. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 休憩前に引き続き会議を開きます。      ————◇—————
  19. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 内閣提出健康保険法の一部を改正する法律案岡良一君外十一名提出健康保険法等の一部を改正する法律案厚生年金保険法の一部を改正する法律案船員保険法の一部を改正する法律案、右四案を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。社会労働委員会理事松岡松平君。     〔松岡松平登壇
  20. 松岡松平

    松岡松平君 ただいま一括上程されました四法案について、社会労働委員会における審査経過並びに結果を御報告申し上げます。  健康保険法の一部を改正する法律案につきまして御報告申し上げます。  健康保険制度は、昭和二十八年度に至り、相次ぐ医療費増高収入を上回り、特に昨年に入って以来保険経済はきわめて困難な事態に立ち至り、昭和三十年度の予算におきましては、前年度と今年度との赤字見込み総額は約百億円に達する次第でありますが、政府は、当面の健康保険財政的措置といたしまして、予算措置及び行政措置によって赤字の大部分を解消することとし、あわせて本法の一部を改正することによりこれに対処せんとするのが、本改正法律案提案理由であります。  その要旨は、被扶養者範囲を被保険者の三親等内の親族までとすること、標準報酬等級は従来の二十等級を二十三等級に改め、かつその月額最低四千円から最高四万八千円までとすること、継続給付資格期間を一年に延長すること、厚生大臣または都道府県知事検査の権限に関する規定を整備すること、不正受給者に対して損失を補てんさせる措置を講ずること等であります。  次に、船員保険法の一部を改正する法律案要旨は、まず収入増加をはかるものとしては、標準報酬について現行最低四千円を五千円とすること、保険料率を千分の九引き上げたことであり、次に、給付の節減をはかるものとしては、職務外の療養の給付傷病手当金等を被保険者資格喪失前の一年間の三月以上被保険者であることを必要とすること、職務外傷病手当金につきまして三日間の待期期間を設けたこと、被扶養者のない者が入院中に支給される本手当金額を、一日につき標準報酬日額の百分の六十から百分の四十に引き下げること等であります。以上のほかに、被扶養者範囲行政庁質問検査あるいは不正受診防止等につきまして、若干の規定を設けておるのでございます。  次に、厚生年金保険法の一部を改正する法律案要旨は、健康保険法改正に伴い、標準報酬最低現行月額三千円から四千円に引き上げることとして、現業事務簡素化をはかること、並びに現行厚生年金保険法施行前に被保険者資格を喪失した女子に対して、脱退手当金支給条件を緩和いたそうとするものであります。  次に、健康保険法等の一部を改正する法律案要旨は、健康保険については保険給付の百分の二十以内を、船員保険については百分の三十以内を国庫が補助することとすること、並びに健康保険の料率については現行の千分の六十を維持することといたそうとするものであります。  健康保険法の一部を改正する法律案は去る六月九日、船員保険法の一部を改正する法律案及び厚生年金法の一部を改正する法律案は五月三十一日、健康保険法等の一部を改正する法律案は六月三十日本委員会に付託せられ、前三法案は六月十三日厚生大臣より、後者は七月二十七日長谷川保君より提案理由説明を聴取した後、数回にわたり審議が行われたのでありますが、本日の委員会において質疑を終了いたしましたところ、前三法案について民主党より次の修正案提出せられ、小島委員よりそり趣旨説明がありました。  その要旨は、まず、健康保険法については、一、被扶養者範囲現行法通りとすること、二、標準報酬改訂を取りやめること、三、医療担当者に対する診療施設その他の施設への立ち入り検査規定を削除したこと、四、施行期日公布の日に改めたこと等であり、船員保険法については、一、被扶養者範囲現行法通りとすること、二、標準報酬改訂を取りやめること、三、医療担当者に対する診療施設その他の施設への立ち入り検査規定を削除したこと、四、施行期日公布の日に改めたこと等であり、厚生年金保険法については、一、標準報酬改訂を取りやめること、二、施行期日公布の日からに改めること等であります。  かくして、各修正案並びに他の原案等を一括して討論に入りましたところ、民主党を代表して大石委員、自由党を代表して野澤委員より、修正案及び他の政府原案賛成社会党案反対日本社会党を代表して滝井委員、及び日本社会党を代表して井堀委員及び小会派クラブを代表して中原委員より、修正案並び政府案反対社会党案賛成の意見が述べられたのであります。  次いで、まず健康保険法等の一部を、改正する法律案採決に入りましたところ、本案は少数をもって否決せられ、さらに他の内閣提出の三案について、修正案並び修正部分を除く他の原案を一括して採決に入りましたところ、多数をもって可決すべきものと議決いたした次第でございます。  以上をもって報告といたします。(拍手
  21. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 討論の通告があります。順次これを許します。長谷川保君。     〔長谷川保登壇
  22. 長谷川保

    長谷川保君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程せられました両派社会党提出健康保険法等の一部改正法案賛成をし、政府提案健康保険法の一部改正法案船員保険法の一部改正法案厚生年金保険法の一部改正法案に対して反対の意を表明せんとするものであります。(拍手)  御承知のように、近代民主国家は、洋の東西を問わず、また共産社会あるいはいわゆる西欧民主主義国家の別を問わず、ことごとく社会保障制度の進歩した制度を持ち、実施をいたしておるのであります。この点は、わが国におきましても、すでに早く戦後アメリカから調査団が参り、これによって近代的な社会保障制度推進することを勧告され、これに応じまして内閣社会保障制度審議会ができて、これからあの非常にりっぱな社会保障制度推進勧告が出されたのであります。この勧告に対しましては、国会におきましても、すでに二回にわたって、院議をもって、すみやかにこれを推進すべきことを決議されておるのであります。また、どの政党も、今日ことごとく、この社会保障制度の完成ということは重要政策として取り上げておりまして、ことに、先般の総選挙におきましても、今日ここにお集まりのどなたも、ことごとく、この社会保障制度推進ということは公約としてなさったと思うのであります。  しかるに、御承知のように、昨年あたりからい日本社会保障制度の重要な根幹をなしておりまする健康保険制度、また国民健康保険等財政、会計に赤字が出て参りました。この赤字は、私は、決して、単に悲しむべきものでもなければ、またあわてる性質のものでもないと思う。これは、明らかに、日本保険医療内容が非常に向上いたしまして、そのために出てきた赤字であるということが、ます第一点として言えるのであります。これは、この反面に、御承知のように日本人の死亡率がずっと減ってきております。でありますから、もし、政治の一番根本になりますものが国民基本的人権を守ることであり、その基本的人権の根底をなすものは国民の生命であるということをお考えになりますれば、この医療の進歩によって、同じ同胞が非常にたくさん死ぬことから免れて、病気が全快していくということが行われておるのでありますから、これは私は決してあわてる性質のものではない、悲しむべき性質のものでもない、この医療費の増大ということは、むしろ積極的に考えれば、おめでたいことであると考えなければならないと思うのであります。(拍手)  さらに、また、もう一つの赤字の大きな原因は結核であります。結核病日本におけるあらゆる社会の階層の中にびまんしておりまする関係上、御承知のように、この結核に対する医療費は非常に増大いたしました。これが今日保険財政赤字になっている大きな理由であります。これは申すまでもなく社会病であります。従って、これは、個人の責任というよりも、あるいは単なる一保険財政の問題というよりも、国家全体の問題であります。従って、これらにつきましては、国家が当然その責任を負って、この保険財政赤字に対してはこれを埋めるという方策を立てればよろしいのであります。しかるに、この赤字が出て参りました。昨年及び今年二カ年を合せまして大体の見通しは百四、五億円ばかり赤字になりはせぬか。これを見ますと、政府は、非常にあわてて、そうして、何とかしてこの保険財政赤字を埋めるために、今回の健康保険法及び船員保険法改正を持ち出したのであります。  この改正内容を見てみますと、第一は、先ほども御説明があったように、被扶養者範囲を被保険者の三親等以内の扶養家族ということに限定いたしまして、この者でなければ健康保険診療はこれから受けられないようにする。今までよりもずっと範囲を狭めようというのである。もしこうなりますと、被保険者でありまする大部分の方は労働者でありますが、この労働者のお宅のその家計というものは非常に困難が加重して参る。今まで健康保険で治療できましたものが、今後は三親等以内の者でなければできない、こういうことになってくるのでありますから、これは非常に困難が増して参る。  さらに、第二の改正点としましては、標準報酬は今まで三千円以上三万六千円でありましたが、これからは四千円で切って、そうして、それ以下の者は、つまり三千円しか給料をもらっておらない者、たとえば新制中学を出ました勤労者等の諸君というのは三千円しか月給をもらっておりませんのに、四千円分もらっているものとして料金を取ろうという。これも私はひどいじゃないかと思います。こんなことをなぜする必要があるかと思います。  第三の改正点としましては、健康保険診療の不正及び健康保険の不正受給というものを防ぐために、医者や、あるいは被保険者事業所や、あるいはその居宅にまで立ち入ってその不正を調べようというのであります。今回、これが、民自の諸君が出しました修正案によって、この事業所に入ることは修正されました。けれども、もし国民のその居宅に立ち入って検査をするというならば、これは憲法が保障しますところの基本的人権に対して重大なる侵害をするということを考えなければならぬ。こういうことをなぜしなければならぬか、私は理解に苦しむのであります。  さらに、第四の改正点としましては、今まで健康保険に入っておりました者が、たとえば病気になってその事業所をやめたときに、それからあと継続して診療を受けることが、健康保険で許されております期間だけはできるようになっていた。このできるようになっておりました資格は、その診療を受けます前六カ月間健康保険の被保険者であればよかったのを、今度は条件を変えて一年間にしよう。一年間被保険者であった者でなければ、その継続給付というものは受けられないようにしよう。これもまた勤労者にとっては重大な問題であります。病気になってやめた。生活にいよいよ困難する。そのときに、いよいよこれをやろという。さらに、また、今日のようなデフレ政策下で、中小企業は倒れていく。中小企業はやめてしまった。被保険者でなくなった。生活が困難になったときに追い打ちをかけようという。一体、こんなことが正しい考え方でありましょうか。われわれは、こういうような改正に対して反対であります。  今日健康保険に入っている諸君の数は、被保険者、被扶養者を合せまして二千三百万人であります。二千三百万人の、日本の生産を背負って立っている一番大事な人々であります。この大事な人々を何ゆえにこんなところに押し込む理由があるのでしょう。諸君御承知のように、日本の憲法は、はっきりと、二十五条におきまして、「すべて国民は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。」「国は、すべての生活部面について、社会福祉、社会保障及び公衆衛生の向上及び増進に努めなければならない。」と、国の責任がはっきり書いてある。一体、こういうような健康保険船員保険改正が、どうしてこの憲法二十五条の社会保障の向上及び増進に努めなければならないということになるのでしょう。(拍手)諸君が選挙で公約してきたことと、どうしてこれが合うのでありますか。一体政府は何を考えているのか、私はまことに疑わざるを得ないのであります。  今回のこの保険財政赤字を埋めるために政府がやったことは、たった一年間に十億円補助金を出そうということだけであります。冗談じゃない。もしこれでもって政府補助金を出していると思ったら大間違いだ。なぜかならば、この健康保険に入っております二千三百万人の人々は、全部厚生年金保険に入っているのであります。厚生年金保険の積立金は、今日、この三月の統計でありますが、すでに千六十五億円に達しております。千六十五億円の、この同じ労働者がかけております厚生年金保険の積立金の運用は、全部政府が持ってきてやっています。この運用に対しまして、政府が払うという予定利子は三分五厘であります。これは、政府は、三分五厘はさすがに払いかねて、大体五分五厘を払っておりますが、この厚生年金保険の積立金は、労働者が二十年間かけっぱなしの養老年金が大部分であります。二十年間の長い間かけっぱなしにしておくものならば、なぜ一体三分五厘や五分五厘の利子を払っておく理由がありましょう。もっとよけいに利子を払うべきである。こんな長期の安定した資金というものはないのであります。もしこれを八分払うとしますならば、それだけでもまだ二十五億円労働者によけい払わなければならない。(拍手)八分に利用しても、もう二十五億円もよけいに払わなければならぬのに、それを払わずにおいて、たった十億円、同じ労働者健康保険財政に出したからといって、補助をしたと思っだら大間違いだ。労働者は十五億円もよけい損をしておる。こういうわけでありますから、政府はなぜもっと積極的にこれに対して国庫負担をするということをなさらないのか。  同じこの国民医療保障をしております国民健康保険におきましては、先般、御承知のように、療養給付に対する二割の国庫負担を決議しておるのであります。同じ国民の健康を守ります国民健康保険に対して二割の国庫負担をすでに決議してやっておりながら、何ゆえ労働階級のための健康保険にこの補助ができないのでしょう。たった十億円とは一体何でしょう。このような不合理なことは断じて許されるべきでない。新憲法がもし国民的公平という観点に立つならば、絶対にされるべきではないと思う。従って、わが日本社会党提案をいたしておりまする健康保険法等改正におきましては、この健康保険に対しましては二割以上の国庫負担、また船員保険に対しましては三割以内の国庫負担ということを要求いたしておるのであります。これは当然のことであります。  さらに、私ども社会党が要求しております改正案の中には——今回、政府は、行政措置によってやって参ります保険料率千分の六十を千分の六十五に引き上げて、二十五億円一年間に労働者及び資本家から金を集めようということをやっている。これにわれわれは反対である。こういうようなことをしないで、もっと積極的に、もし憲法の条章に政府が忠実であろうとしますならば、当然二割以内の国庫負担を国民健康保険同様にすべきであります。  私は、この、われわれの提出いたしました健康保険法等の一部改正法案に対して何とぞ御賛成を賜わり、今政府提出いたされました健康保険法厚生年金保険法及び船員保険法の一部改正法案に対して反対せられるように、切に壇上からお願いをする次第であります。(拍手
  23. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 野澤清人君。     〔野澤清人君登壇
  24. 野澤清人

    ○野澤清人君 私は、自由党を代表いたしまして、健康保険法の一部を改正する法律案外二法案に関し、修正部分賛成し、修正部分を除く政府原案賛成をいたし、両派社会党より提案されました改正案に反対討論をいたすのでございます。  今回の政府提出改正案は、提案当初からとかくの論議や批判が行われたものでありましてそのねらいは全く当面する健康保険赤字対策にすぎぬという便宜的な糊塗策であったのであります。すなわち、予算編成当時からしばしば繰り返し指摘せられました通り、昭和二十九年度、昭和三十年度等の赤字の想定のもとに、抜本対策として、政府管掌健康保険に対し長期資金の借り入れをいたし、国庫負担の基本線を打ち出しまして、一時的に弥縫しようと計画したのであります。ことに昭和三十年度の赤字対策といたしましては、約その半額に当りますところの二十六億円を、保険料率の引き上げをもととした行政措置によって獲得いたし、残余の赤字補てんと称して、標準報酬の引き上げを骨子として今回の改正法案を出されたのでありますが、本法案に関しましては、さきに社会保障制度審議会社会保険審議会等からもいち早く原案反対を表明せられておるのであります。しかも、国会提出の前日に、標準報酬七万円を急に四万八千円に引き下げまして、無意味な提案をいたしたのであります。  再三指摘せられましたごとく、今次の改正案はおよそ健保の赤字対策としては最も拙劣なものでありましてその着想たるやきわめて一時しのぎのものに尽きるということは、これが審議経過並びに結果において明らかにせられたのであります。ことに標準報酬の引き上げのごときは、単に厚生事務当局の算術計算を法案の上に示したものであって、最低三千円を四千円に上げるがごときは、わが党の大橋議員の質疑に対し、政府は何ら満足すべき回答もなし得なかったのであります。また、被扶養者を三親等に限定するがごとき法文は、健保の精神をじゅうりんするものでありまして、わずかの保険給付の節約の対象として適用範囲を故意に圧縮しようとするがごときは、たとい数学的な赤字対策といたしましても、とうてい了解し得ないところでありまして、社会保険のむしろ改悪とも言うべきであります。また、近年一部の医師の不徳義漢が故意に保険検査を拒否することに関し、一般善良なる医師の住居にまで立ち入り検査実施するがごとき、第九条の二に関しましても、その検査の上における幾多の障害は了解し得るのでありますけれども、社会保険育成の上から、善良な医師の人格を無視し人権を侵害するがごとき不意の立ち入り検査を公けに認めることは、円満な保険の施策の上からも、また健全なる医療の発展からも、当然好ましからざる立法であることは、論を待たないところであります。  これを要するに、今回の民主党内閣提案した健康保険法の下部改正案は、全く政府みずからが無為無策であることを示したと同時に、官僚依存の弊を如実にこの改正案に暴露したものであってそれが証拠には、これだけ重要な法案社会労働委員会提案しておきながら、あたかも原爆におののくと同様に、政府民主党も、これが審議に何らの誠意を示すことなく、会期末まで放任しておいたことは、全く与党である民主党が、きわめて自信のない法案に対するあきらめと投げやりとから来る自然のままの審議の停滞に基くものであったことを、声を大にして御忠告申し上げるわけであります。(拍手)  しかしながら、本日の社会労働委員会において、与党である民主党審議経過をよく理解せられ、民主党みずからが、修正案を、良心的に、しかも率直に提案されたのでありますが、これが修正点といたしまして、第一、標準報酬を完全に改訂して現行法通りとしたこと、第二には、被適用者の縮小を取りやめたこと、第三は、保険検査の第九条の二における立ち入り検査の字句を削ったことは、与党であります民主党が、国会審議を尊重して、民主的な討論を具現したものであって、その誠意と勇気と決断に対し深甚なる敬意を表するわけであります。これらの民主党修正点を基本といたしまして、今後残されました社会保険の根本対策は当然急がなければならぬ緊要事となったことはもちろん、将来の根本課題たる国庫負担や患者の一部負担、さらに標準報酬等の相関関係に集約せられたこと、さらにまた、立ち入り検査等の極端な弊害を除去するため最も合理的な保険医制度の根本改正を暗示するがごとき、幾多の重要な項目がこの法案を通じて明らかになったことは、幸いと申さなければならぬと思うのであります。  さらに、社会党両派が提案されました事柄につきましては、今日の日本の国情下から考えますならば、その理念はきわめて適切緊要な事柄でありますけれども、七人委員会等に期待されております社会保険の根本対策等をにらみ合せますならば、今日ただいま二割の国庫負担を確定するがごとき法案は時期尚早であると思います。  これらの点から勘案いたしまして、社会党両派の提案されました改正案に反対をいたし、政府提案されました改正法のうち、修正部分賛成をいたし、修正部分を除く原案に賛意を表しまして、私の討論を終ります。(拍手
  25. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 吉川兼光君。     〔吉川兼光君登壇
  26. 吉川兼光

    ○吉川兼光君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました健康保険法の一部を改正する法律案外二法案につきまして、民主党提案修正案並びにこの修正案を除く政府原案反対し、社会提出改正案に賛成討論をいたすものであります。  第一この三つの社会保険は、わが国社会保障制度の中核をなすものでありまして、健康保険のごときはすでに三十年の長い歴史を有しておるのであります。しこうして、これは逐年充実、発達の一途をたどって今日に至ったのでありまするが、なかんずく戦後におきましては、その普及は著しいものがあるのでありまして、政府管掌健康保険におきましては、その適用事業所の数は二十三万七千にも達しているのであり、また被保険者の数は八百四十万、家族は一千四百四十万にも及んでおるのでございます。さらに、また、保険医療内容におきましては、医学並びに医療方法等の進歩と相待って急速な発達を遂げつつあるのでありまして、今や国民大衆、特に労働者の生活にとりましては不可離の制度となっておることは、今さら申し上げるまでもないのであります。  しかるに、この運営状況に至りましては、政府管掌におきまして、昭和二十九年度において約四十一億円の赤字を生じており、また三十年度におきましては、赤字は約六十億円と見込まれておるのでございまして、この統計は約百億に上るわけであります。政府は、この膨大な赤字の解消策といたしまして、百億のうち七十億については財政措置によると言っておるのでありまして、このうちすでに十億円は三十年度の予算の中において認められておるのでございます。また、残余の六十億につきましては、川崎厚生大臣は、社会労働委員会等における発言の中におきまして、すでに資金運用部から借り入れすることに内定したかのような口吻を漏らされておるのでございまするが、これにつきましては、私は必ずしも大蔵省においてこれを実証しておらないと見ておるのであります。さらに、残りの三十億についてが問題でありまするが、これは、いわゆる保険経済自体におきまして、すなわち、収入増加措置を講ずることによってこの問題を解消しようとするのが政府の態度であるように、私どもは見ておるのであります。  健康保険事業の増大する赤字を押えまして、危機を克服し、その運営を健全化させなければならないということは、今やわが国の世論とも言うべきでございまして、現に、昨日の本会議におきましても、健康保険赤字対策の急速なる実施をすべしという決議が満場一致でなされておるのでございまして、この事実を見ましても、健康保険事業がいかに非常事態に直面しているかということは、思い半ばに過ぎるものがあるのでございます。しかるに、政府は、昨日の決議案通過直後に行われました川崎厚生大臣の言明に見ましても、大臣は、決議趣旨はもっともであるからして、目下審議中の七人委員会決定を見た上で善処したいなどというようなことを言っておるのでありまして、これは依然として、無責任な、一時を糊塗する言明であると私は見るのであります。  このたびの政府提案にかかりまする原案につきましては、さきに社会保障制度審議会とか社会保険審議会等におきまして反対の答申をとておりますることは周知の事実であります。しかるに、政府は、それらの両審議会の反対を押し切って、そうして提案を強行しておるのであります。従って、七人委員会なるものが真にまじめに社会保障についての審議を続けていくものでありまするならば、それから出まするところの結論は、今申し上げました二つの審議会によって反対答申がなされましたと同様に、今政府の持っておりまする間違った構想に対しましては、明らかに反対をするか、あるいは、百歩譲りましても、大幅な修正を求めるものであろうことは、想像にかたくないのであります。私はここに声を大にして申しまするが、政府が前に述べました二つの審議会の反対答申をけってここに提案いたしましたところの原案をもっていたしましては、政府管掌の健康保険事業赤字の解消は絶対にできない、できないばかりではない、この赤字がら参りますところの圧力を一方的に労働大衆にしわ寄せするものであるということを断言いたしまして、われわれは断固反対を表明せざるを得ないのでございます。(拍手)  さらに、民主党から提案になりましたところの修正案についてでございますが、これは、第一条にありますところの被扶養者範囲を縮小すること、さらに、第三条の標準報酬の引き上げはこれを取りやめること、さらに、第九条の政府原案改正規定中から、診療施設その他の施設への立ち入りという、いわゆる立ち入り検査の条項を削るということだけにとどまっておるのでございますが、この健康保険法改正をなすに一番大事な眼目でなければならないところの継続給付現行六カ月を一年以上に延ばすというような事柄につきましては、全然触れておらないのであります。そのほかにもいろいろ重要な点があるのでありますが、そういうものについても、原案に対しては一指も染めようとしていないのであります。そればかりではない。船員保険法のごときに至りましては、改正原案では、いわゆる標準報酬最低線を健康保険よりもより高いところにきめてあることが一つ、また、従来継続診療に対して制限のなかったのを、新たに制限を設けておりまするにもかかわりませず、こういうことにも、一指も民主党改正案は手をつけていないのであります。本来相互扶助、平等互恵が原則でなければならないところの保険制度の精神に反するこの原案に対しまして、民主党修正案は全然考慮が払われておらないということは、驚くべきものであると言わなければならないのであります。  このような、何ら一貫した赤字対策というものを伴っておらない、ただ一時を糊塗するために修正案を作ったとしか思われないような民主党修正をもっていたしましては、私は、膨大な赤字を解消することは絶対にできない、かえって逆に赤字を増大するものであるということを断言するものであります。しこうして、また、その増大した赤字から来ますところの圧迫は、いわゆる労働大衆の生活を圧迫するものでありまして、われわれは断じてこれを見のがすことができないのであります。  これに引き比べまして、両派社会党より提案いたしましたところの改正案は、すでに長谷川議員からも触れたようでありますが、ます保険給付の百分の二十以内を国庫負担とすること、さらに保険料率政府が勝手に引き上げるようなことをやらないために、これを法律によることにいたしておるのでございますが、この二つは、社会保険の中核でありますところの健康保険制度の真に重要なる改正点であると、われわれは確信するのでございます。  本日の社会労働委員会におきまして、この法案討論が行われました際に、ただいま自由党を代表して討論に立ちましたところの野澤君のごときは、その討論の冒頭において、自分は良心的には社会党の案に賛成であるということを断わっておる。さらに、また、民主党を代表いたしました大石議員におかれましても、社会党の提案は一応納得するものであるということを、前にこれを断わってから討論をいたしております。(拍手)  皆さん、趣旨において一応納得し、あるいは良心的に賛成するような、社会党の完全に近いこの改正案に対して、何ゆえに民自両党はこれに反対しなければならなのでございましょうか。われわれは、この委員会において示されましたところの両委員の良心的なこの考え方を、ぜひこの際民主、自由の両党の議員にお訴え申し上げたいと思うのであります。そうして、それこそ今からでもおそくはないのでありまするから、社会党の理想に近い改正案に対して本会議において賛成されて、いわゆる民主党修正案並び政府原案に対して反対されるように特に勧告いたしまして、私の討論といたす次第であります。(拍手
  27. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず、内閣提出健康保険法の一部を改正する法律案につき採決いたします。本案委員長報告修正であります。本案委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  28. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 起立多数。よって本案委員長報告の通り決しました。(拍手)  次に、岡良一君外十一名提出健康保険法等の一部を改正する法律案につき採決いたします。本案委員長報告は否決であります。本案委員長報告の通り否決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  29. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 起立多数。よって本案委員長報告の通り否決いたしました。  次に、厚生年金保険法の一部を改正する法律案及び船員保険法の一部を改正する法律案の両案を一括して採決いたします。両案の委員長報告はいずれも修正であります。両案は委員長報告の通り決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立
  30. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 起立多数。よって両案とも委員長報告の通り決しました。      ————◇—————
  31. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、内閣提出日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案証券取引法の一部を改正する法律案、右両案を一括議題となし、この際委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  32. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。  日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案証券取引法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。大蔵委員会理事内藤友明君。     〔内藤友明登壇
  34. 内藤友明

    内藤友明君 ただいま議題となりました証券取引法の一部を改正する法律案外一法律案について、大蔵委員会における審議経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、証券取引法の一部を改正する法律案について申し上げます。  この法律案は、第一に、証券金融会社に対して新たに監督規定を設け、証券金融会社がその業務を営もうとするときは大蔵大臣の免許を必要とすることとし、その資本の額も五千万円以上でなければならないものとするほか、その商号の変更、貸し出し方法、または条件を変更するなどの場合には大蔵大臣の認可を受けなければならないこととするなど、所要の監督規定を設けております。第二に、証券業の名義貸しを禁ずる規定を設け、有価証券の割賦販売について規定の整備を行うなど、証券業者の監督規定について若干の整備をはかっております。  本法案につきましては、大蔵委員会に付託せられてから慎重に審議を重ね、本日春日一幸委員より各派共同提案の附帯決議提出いたされました。その内容は、長期清算取引の実施の問題については、証券取引の現状国民経済の実情にかんがみ、政府において積極的に検討せられたいというのであります。  続いて、質疑を終了し、討論を省略して直ちに採決に入りましたところ、本案並びに附帯決議は全会一致をもって原案の通り可決いたしました。  次に、日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案について申し上げます。  最近、東南アジアを初めとして、海外からのプラント輸出などの引き合いは相当の額に上っており、その契約条件は依然として長期化の傾向にありまして、日本輸出入銀行の融資を必要とする事案は累増する見通しであります。従いまして、本法律案は、昭和三十年度において新たに日本輸出入銀行に対して産業投資特別会計から百四十億円の資金を出資することとし、日本輸出入銀行の資本金を、百四十億円増加して、現在の二百十億円から三百五十億円にいたそうとするものであります。  この法案は、大蔵委員会に付託せられてから慎重に審議を続けましたが、本日質疑を終了し、討論を省略して直ちに採決に入りましたところ、全会一致をもって原案の通り可決いたしました。  右、御報告申し上げます。(拍手
  35. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 両案を一括して採決いたします。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  36. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって両案は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————
  37. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、内閣提出あん摩師はり師、きゆう師及び柔道整復師法の一部を改正する法律案議題となし、この際委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  38. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  39. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。  あん摩師はり師、きゆう師及び柔道整復師法の一部を改正する法律案議題といたします。委員長報告を求めます。社会労働委員会理事松岡松平君。     〔松岡松平登壇
  40. 松岡松平

    松岡松平君 ただいま議題となりました、あん摩師はり師、きゅう師及び柔道整復師法の一部を改正する法律案について、社会労働委員会における審査経過並びにその結果について郷報告を申し上げます。  改正要旨は、従来医業類似行為の一種として取り扱われてきました指圧を、あんまに含まれることとするとともに、現在医業類似行為を行うことを本年末まで認められている者に対し、期限をさらに三年間延長し、同時に、その間に、あんま師試験の受験資格を認め、これに合格したときは、あんま師の免許を受けることができることにいたしたことであります。  本法案は、七月五日予備審査のため本委員会に付託せられ、同十四日提案理由説明を聴取し、審議に入りましたが、慎重を期するため特に小委員会を設け、日本民主党の不肖松岡小委員長のもとに、きわめて熱心なる審議が行われ、一応の結論を見た次第であります。  次いで、昨二十九日本付託となり、本日質疑を終了し、討論を省略して採決に入りましたところ、本案は全会一致原案の通り可決すべきものと議決いたした次第であります。  次いで、各派共同提案による次の附帯決議案提出せられ、日本民主党大石委員よりその趣旨説明がありました。  朗読いたします。   附帯決議案   医業類似行為に関しては、政府は引続きその業態を把握、検討の上左記事項に関し適当なる措置を講ずべきである。     記  一、第十九条第一項の規定による届出をしたる既存業者であつて、本法に認められない者については猶予期間中に充分な指導を行い、国民保健上弊害のない者については、その業務の継続ができるよう適切な措置を速かに講ずること。  二、あん摩師等のうち身体障害者については、本法運営上その業態に支障なからしむるよう万全の措置を講ずること。  三、無免許あん摩その他これに類する者に対する取締を厳にし、その根絶を期すること。  本附帯決議案は全会一致をもってこれを付すべきものと決した次第であります。  右、御報告いたします。(拍手
  41. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 採決いたします。本案委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  42. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって本案委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————
  43. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、大坪保雄君外七名提出、韓国に抑留せられた日本漁民の処遇及び帰還促進に関する決議案は、提出者の要求の通り委員会審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
  44. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。   [「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  45. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。  韓国に抑留せられた日本漁民の処遇及び帰還促進に関する決議案議題といたします。提出者趣旨弁明を許します。大坪保雄君。     〔大坪保雄登壇
  46. 大坪保雄

    大坪保雄君 ただいま議題となりました、各派共同提案になりまする、韓国に抑留せられた日本漁民の処遇及び帰還促進に関する決議案趣旨を御説明申し上げます。  まず、決議案を朗読いたします。   韓国に抑留せられた日本漁民の処遇及び帰還促進に関する決議案   昭和二十七年一月十八日李承晩ラインの一方的宣言以来、公海漁業自由の国際慣例は無視され、わが日本漁業の最重要漁場である日本と韓国との間の海域の漁業が不法に抑圧せられたまま今日に至り、不法不当にだ捕された漁船は百八十九隻、漁民は二千三百三十九人の多きに上っている。しかも現在なお二百七十六人もの同胞漁民が韓国の獄舎又は外人収容所に抑留され、きわめて苛酷なる処遇を受けてほとんど全部が栄養失調に陥つていると伝えられる。このことは人道上まさに許しがたきことと云わざるを得ない。しかるに今日に至るもなお釈放帰還の気配も見えず、また何等問題解決の端緒も見出されず、不法な李承晩ラインは次第に既成事実化しつつあり、わが国、経済自立の前途にじん大な不安を与えていることは全国民とともにまことに遺憾とするところである。よって政府は、次の事項につき、速かに適切、有効な措置を講ずべきである。  一 速かに韓国に対し、その抑留中の日本漁民を釈放帰還せしめるよう有効適切なる折衝を行うこと。なお、場合によっては国際連合に訴えて、その解決の促進を図ること。  一 速かに、日韓会談の再開を図り、また公正な世界の世論に訴え、漁業問題の根本的解決、少なくとも暫定的解決をはかること。  一 抑留漁民と、その留守家族の援護につき、充分なる措置を講ずること。  右決議する。  わが国と韓国とは、一衣帯水の、きわめて近接し、相隣した国であります。このことは、何人も否定し得ず、何ものもこれを引き離し得ない事実であります。申さば神のなせる民族の宿命であります。人類の歴史の教えるところによりますれば、境を同じゅうして国をなす民族が、その感情、利害を調整して相互に協力し合い、善隣友好なれば、すなわちともに栄え、これに反して互いに嫉視反発して相争えば、勢いともに衰亡すること、幾多の事例をもって明らかなるところであります。日本と韓国とは、一時は共同の国をなしたこともあったのであります。戦後、韓国の独立とともに分立はいたしましたが、分立は必ずしも対立を意味しない。わが日本国民が、内地に在住する百万に近い韓国の人々を以前と変らぬ同胞のごとく友愛の心をもって好遇し、共存しておりますことは、善隣友好、ともに平和に、ともに栄えることをこいねがうからであります。  しかるに、私どもがまことに残念にたえませんことは、韓国との関係が今なお正常化を見るに至らず、いろいろの懸案事項が未解決のまま放置されておることであります。かの、いわゆる李承晩ラインのごときは、その重大なる例であります。  今日、言うまでもなく、いわゆる李承晩ラインなるものは、去る昭和二十七年一月十八日に、海洋主権の宣言と称し、魚族の保護を名目として、国際法の原則、慣例を無視して、わが国と韓国との間の海域に、韓国側にきわめて有利に、すなわち、狭いところでも海岸から二十マイル、広いところでははるか百七、八十マイルの公海上にわたって一線を画して、主としてわが国漁民の出漁を禁止することを宣言したものであります。自来、韓国の軍艦あるいは警備船は、何ら国際法上の権限に基くことなく、不法不当にも公海上においてわが国の漁船を拿捕し、漁民を拉致し、抑留し続けてきておるのであります。それが、今日までに、船において百八十九隻、人において二千三百三十九人の多きを数え、今日なおいまだ帰還しないもの、船において九十一隻、人において二百七十六人もあるのであります。しかも、これら抑留された漁民たちは、韓国側の一方的裁判によって、一年ないし六カ月の体刑の判決を受けておるのであります。しこうして、今日抑留されておるこの二百七十六人は、みな昨年七月以来拿捕抑留されたもので、長いものはまさに一カ年に及んでおるのであります。最近送還されてきた者の話によりますると、右の二百七十六人の抑留者の中には、未成年の者もある、また学生もある。これらは、何ら有罪の判決も受けず、そのまま抑留されており、また六カ月くらいの刑を受け、すでに刑期満了して釈放されながら、今日まで帰されない者もおるのであります。  しこうして、これら漁民たらは、釜山の外人収容所というのに入れられるのでありますが、その収容所は、トタンぶき平屋のバラック建でありまして、内部に設備らしきものは何ものもなく、板の間、無灯火で、食堂もなく、八畳の部屋に二十人がごろ寝の状態、毛布のごときも二人に一枚の割合で支給されるにすぎないために、冬期寒冷の季節には抱き合って暖をとるありさまであった。衛生状態は悪く、医療手当はなかなかに講ぜられず、脊髄炎に倒れた者にも、また最近悪性の流行性感冒がはやり、四十度の高熱を出した者にも、医者を呼んでくれず、お前たちは死んでも仕方がないのだなどと放言されるありさまであり、食事のごときもきわめて粗末で、主食は、丸麦と大豆に、ごく少量の米が混っており、それも一食一椀だけ、副食物は梅干一個または海草の入った塩汁である。さようなわけで、みな空腹を訴え、ほとんど栄養失調に陥っていると伝えております。二百七十六人もの同胞が、国際法上何ら正当の理由なくして逮捕、抑留されるのみでなく、一方的裁判による刑期を終えた後も、非衛生的な環境のもとに、長期にわたって拘禁同様の生活を送らされ、いつ帰されるかわからぬという全く不安な状態に放置され、まさに死線を彷徨しておるありさまでありますことは、本人たちはもちろん、留守家族の方々の身になって考えてみましても、まことにお気の毒にたえず、われら同胞として同情と義憤禁じがたきものがあり、人道上よりするも断じて許し得ざることと申さねばなりません。  一部新聞紙の伝うるところによりますと、鳩山内閣が北鮮と交通を開始せんとする意図ありやの報道に李承晩氏がつむじを曲げて、日韓関係の好転するまではこれらの抑留者は帰さないと言ったとかいわれている。もしこのことが事実なりといたしますならば、個人の自由と生命とを人質として外交の具に供するもので、まさに言語道断と申さねばなりません。  われわれは、去る五月十七日、当院本会議において、総員一致の決議をもって、中ソ両地域における未帰還同胞の引き揚げ促進方について要望をいたしたのでありますが、私どもが長期間異境に抑留され精神的に肉体的に苦痛に呻吟している同胞について思いますことは、その抑留地が、ソ連たると、中共たると、はたまた韓国たるとを問わないのであります。中共に抑留されたアメリカ人飛行士十余人の釈放のためには、アメリカにおいては国をあげての救援運動を展開し、政府もまた不断の努力を続け、ついに国際連合を動かして、ハマーショルド事務総長がはるばる中共に出かけるまでになりましたことは、世界周知の通りであります。政府は、国民の生命、財産を守るべき当然の職責からも、また広く人道上の見地からも、さらに、関係者や家族はもちろんのこと、一般国民の熱望からも、かつ、また、一日放置すれば多くの同胞の生死にかかわるごとき事態の緊急性からも、この際きわめて強硬に韓国政府に交渉いたし、また、さらに、場合によっては国際連合等に訴えてでも、これら多数の抑留者たちが一日も早く帰還できるように、不安と焦燥にかられ、生活困難にも耐えて、一日千秋の思いをもって待ちこがれている家族たちのもとに帰れるように、万全の方策を講ずる要があると思うのであります。  次に、この李承晩ラインの設定された朝鮮海峡の海域一帯は、サバ、グチ、カレイ等の魚族に富み、従って、従来日本よりの出漁船が多く、自然漁獲高も多く、すなわち、九州地方や山陽、山陰の漁業者でこの海域を主たる生業の場として生活を営んでいる者が少くないのでありまして、その操業する船二千五百隻、従業員四万人、その年間漁獲高二十二、三万トン、百三十億円に及ぶのでありますが、これらの漁業者たちが、この李承晩ラインの出現以来生活の場を失い、また多数の者が漁船、漁具等を奪われ、中には、共同出資によってようやく遠洋漁業用の船を建造したが、出漁と同時に拿捕され、人は帰っても船は帰されないために、再建はできず、生活破綻の状態にある者もあるのであります。国民の大切な蛋白給源としての漁業、その優秀なる漁場が失われんとし、多数漁民の経済生活が破壊され、のみならず、その生命、財産が危殆に瀕しておるのであります。漁期も間近に近づいておる今日、あすにもまた不法襲撃せられるおそれがあるのであります。かくのごとき不法なる暴行ざたから国民を守る保障がなされることが今日の急務であります。しかるに、これまでのような、先方の一方的な、国際法上の原則無視の行動を見のがしておくのみでは、その結果ついに韓国側の一方的な一種の既得権のごときものとなって、将来永久に日本漁民はその海域から締め出されるような事態となることなきかを、私どもはおそれ、かつ憂えるのであります。  政府は、この海域を平和なものにするために、すみやかに韓国との間に交渉を再開し、場合によっては公正なる世界の世論にも訴えて本問題の解決に当るべきであり、少くとも暫定的に漁業協定を取り結ぶことだけでも急速に取り運ぶような努力が望ましいのであります。さらに、抑留漁民の残された家族の中には、一家の支柱と長く別れ、すでに生活の道に困窮し、憤りと恨みとを込めて泣訴しておる者も少くないありさまでありまするから、これら困窮しておる漁民並びに留守家族の援護についても遺憾なき措置が講ぜられるべきであります。  ここに、本院は、日本国民の総意として、善隣友好を望み平和を愛する立場から、本問題に対する国民的衷情を韓国の朝野並びに広く世界の良心に訴えて、韓国政府がいさぎよく正義と人道とに立脚してすみやかに本問題の根本的解決をはからんことを期待し、また政府がこれが促進方につき直ちに有効適切なる措置に出られんことを切に望む次第でございます。(拍手)  以上をもって本決議案趣旨弁明といたします。何とぞ全会一致可決せられんことを切望いたします。(拍手
  47. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって本案は可決いたしました。      ————◇—————
  49. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、この際、山下春江提出第三国人戦争受刑者の出所後の援護対策に関する緊急質問を許可されんことを望みます。
  50. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。  第三国人戦争受刑者の出所後の援護対策に関する緊急質問を許可いたします。山下春江君。     〔山下春江登壇
  52. 山下春江

    山下春江君 ただいま議題となりました、巣鴨プリズンに服役中の第三国人戦争受刑者に対する出所後の援護対策について、政府当局の所信をたださんといたすものでございます。  と申しますのは、先ごろせっかく仮出所を許されました韓国人二名の出所延期問題に端を発しまして、自来二、三の委員会においていろいろと事情を調査究明いたしましたるところによりますと、政府対策に重大な欠陥があったというよりも、そもそも根本的対策そのものができていなかったということが判明したと思われるからでございます。それが証拠には、この二名の問題がいまだに解決を見ていないことによっても明瞭であると存じます。  現在、巣鴨プリズンには二十名の韓国人と三十八名の台湾人が在所しておりますが、御承知のごとく、彼らは、仮出所の場合、その保護観察の期間中は日本国内に居住を余儀なくされ、また満刑となりましても、彼らの過去の経歴及び彼らの祖国の現状かち、必ずしもその祖国は彼らにとって安住の地ではなく、さような事情からも、当分は留守家族と離れて日本に残留せざるを得ないという、まことにお気の毒な実情にあるのでございます。しかるに、従来は、彼らの出所に直面するごとに、政府や巣鴨当局が、そのつど、あわてて弥縫策を講ずるというようなやり方でしのいで参りまして、根本的対策ができていなかったために、たびたび問題を引き起したものと考えられるのでありまして、まことに遺憾にたえない次第であります。  思うに、彼らの身の上というものは、今なおソ連、中共に残されておりますわが抑留同胞にも比すべき、まことに過酷なる運命のもとにあるのでありまして、あの大戦争に際会いたしまして、絶大なる軍の権力のもとに、自分の生まれ故郷から戦地に送られ、最下級の軍属として、文字通り身命を賭して日本のために奮闘した彼らが、今日、かえって、その日本政府の手によって縲絏のはずかしめを受けなければならぬということは、何たる皮肉何たる悲惨事でございましょう。現在巣鴨の在所者につき身分別にこれを検討いたしてみますれば、最も多数の犠牲者を出しているのは下級軍属でありまして、その過半数は実にこれら旧同胞たる第三国人によって占められているということでございます。これはまことにゆゆしい問題でありまして、かつてはこれら旧同胞をも戦争のために動員し、その結果最下級の軍属として駆使した彼らを今日の悲境に陥らしめたことについて、日本国民はすべからく道義的責任を感ずべきであると信ずるのであります。  もし、それ、今に至って、日本人として裁かれた彼らを無情にも残虐行為の下手人であるとののしって、これを弊履のごとく見捨てて顧みざるにおきましては、これこそまさに日本民族の恥辱とも言うべく、ただに旧同胞たりし隣邦に信を失するのみならず、新生日本、立国の基礎である道義国家の理想は直ちにその日から音を立ててくずれ去るでありましょう。しかるに、現状においては、かつての利己的な戦争目的のために酷使した彼らを、そのために負わされた刑を終えて出所する際には、その苦難に対してほとんど報いるところなく、追放するにひとしい結果となっておりますことは、内に省みて、まことにざんきにたえない次第であります。  このような不幸な境遇にある彼らに対しましては、その拘禁中はもとより、出所後の生活にも十分なる便益を供し、特にその出所に際しては彼らに相当額の補償を与え、もって彼らの過失の苦難に対して報いるところがなければならないと存じます。それは、今日、日本民族が、そして日本国が負わなければならない道義上当然の責務であると私は信じて疑わないのであります。これを果してこそ、初めて日本は彼らに対する負債をきれいに返済し、隣邦に対しても顔向けができ、国際的にも友好親善の実績は期して待つべきものがあろうと存じます。  もとより、戦争受刑者並びにその留守家族の救済のためには、今日もろもろの法令が整備されて参っておりまするが、一般の日本人と異なり、彼らの留守家族は、今となっては遠く国外に住む外国人であり、彼らの身分はもとより、国籍の上からも、恩給法の適用から除外されている。これら第三国人に対しては、厳密にいえば、未帰還者留守家族等援護法の適用についても疑念があるのみならず、異国に流寓の生活を送る彼らのハンディキャップを考えれば、遺憾ながら、単純に一般の日本人に対すると同一の法的処遇によっては必ずしも援護の十全を期し得ないというところに、根本の問題が横たわっていると信ずるのでございます。これ、すなわち、一般の日本人に対するとは即値の法的理念に基きまして、第三国人戦争受刑者に対する特別の対策を要求せられるゆえんであります。  ここにおいて、私は、根本的対策樹立の意味において、第三国人戦争受刑者に対する特別補償もしくは特別援護に関する法律を制定するの必要を強請いたすものでございます。本筋から申しますれば、この問題は日韓会談等外交交渉において解決せらるべき問題でありますが、それを待ちましたのでは百年河清を待つがごとく、事は目前政府の管理下に置かれている第三国人に関する現実の問題であり、近くまた紛糾の続発を予想せられる問題でもありますので、この際特に緊急の措置を必要とするものと考えて、あえて問題を提出いたした次第でございます。  以上の件に関する政府の所信について、総理大臣、外務大臣、法務大臣、厚生大臣より明確なる御答弁を願いたいと存じます。(拍手)     〔国務大臣花村四郎君登壇
  53. 花村四郎

    ○国務大臣(花村四郎君) お答え申し上げます。  お説のごとく、第三国人戦犯は、戦争中日本国民として働き、終戦とともに戦犯として拘禁せられた人々でありまして、特に同情すべき事情あるものと認めざるを得ないのであります。よって政府は、今回その出所後の住居に対する対策を立てかつ、また、生業資金の貸付については特に予算措置を講じ、その窮状を救済することといたしましたのみならず、就職につきましては、本人の希望や経歴や能力等を勘案して、関係部局においてこれをあっせんすることといたしたのでございます。さらに、立法化につきましては、ただいま慎重に研究中でございます。  なお、この機会に、ただいま決議となりました件につきまして、政府を代表して一言申し上げたいと存じます。  韓国に抑留されておりまする日本漁民の問題は人道上の問題であり、政府としては、抑留のつど並びに総括的に、漁民の方々の釈放について韓国政府に申し入れて参りました。先般、本院の農林水産委員会でも、ただいまの決議と同趣旨決議がなされましたので、韓国側に本件について申し入れておきましたが、政府は、今後とも、御決議趣旨を体し、抑留同胞漁民釈放帰還促進のために最も適切なる処置をとる所存でございます。     〔国務大臣川崎秀二君登壇
  54. 川崎秀二

    ○国務大臣(川崎秀二君) ただいま御質問の、第三国人戦犯の援護対策に対しましては、過ぐる戦争における経緯とその跡始末といたしまして、日本としても、これを放置することは——国の名誉上、逡巡することはできないと考えております。  山下議員の御指摘の通り、五月の中旬に二名の戦犯が釈放されたにもかかわりませず、日本社会の受け入れ態勢が整っておらないということを理由といたしまして、本人たちは依然として巣鴨の方にいる方がよいというので、がんばっていることは、政府としても、はなはだ不面目でございます。  そこで、私は、直ちに法務大臣に積極的に連絡をいたしまして、昨日閣議の決定をもちまして、次のような措置を行なったわけであります。すなわち、ただいま花村大臣からも答弁がありましたが、詳しく申し上げれば、約六百万円をもって、これら約数十名のために新しい住宅施設を建てる。最初は引揚寮に入ってもらおうと試みましたけれども、いろいろな点を考えまして、一緒にこれらを収容した方がよかろうというので、この方に収容することに相なったわけであります。また、厚生省としては、総額約三百万円の資金をもちまして、適当なる民間団体をして生業資金の貸付を実施するというようなことも措置をいたそうといたしております。目下これが実施に必要な事務を早急に取り進めている次第であります。また、職業のあっせんにつきましても、労働省と連絡をして処置をいたしておりますが、将来は一そうその援護に努力をいたす所存であります。  以上、お答えを申し上げます。     〔政府委員園田直君登壇
  55. 園田直

    政府委員(園田直君) かつて日本国民として戦争された方々が受刑者として服務をいたしておりますが、釈放後、御趣旨のごとく、その置かれている特別の事情について、深い同情を禁じ得ないところでございます。これらの方々の援護については、日本人と同様の措置をとり、出所持に帰還手当一万円と被服等を支給しておるのでありますが、日本における人縁の薄い特殊の事情にかんがみ、その出所後の援護対策としては、ただいま厚生大臣から述べられた通り、適当な厚生保護団体をしてこれらの者のための一時的居住施設を設けることとし、なお生業資金として一人五万円程度の資金を貸し付けることといたしております。外務省といたしましては、特にこれを抑留しておる国、及び韓国及び中華人民共和国などと連絡をとりまして、御趣旨の方針をくんで幇助いたしたいと考えております。
  56. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 内閣総理大臣の答弁は適当の機会に願うことといたします。      ————◇—————
  57. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、この際、柳田秀一提出在日米軍原子砲等原子兵器の貯蔵に関する緊急質問を許可されんことを望みます。
  58. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。  在日米軍原子砲等原子兵器の貯蔵に関する緊急質問を許可いたします。柳田秀一君。     〔柳田秀一登壇
  60. 柳田秀一

    柳田秀一君 私は、日本社会党を代表して、在日米軍の原子兵器持ち込みの問題について質問いたします。この問題は非常に重要な問題でございますので、内閣総理大臣、外務大臣、防衛庁長官の御出席をわずらわしておりましたが、会期末日の参議院の特殊事情もありますので、やむを得ず了承いたします。従いまして、政府委員からは、形式的でなしに、真に政府を代表するに足る誠意ある答弁を要求いたします。  昨日来の各新聞、ラジオが一斉に伝えるところによりますと、在日米軍に原子ロケット弾であるいわゆるオネスト・ジョン砲及び原子砲部隊が送られることを報じております。おそらく、この報道に、日本人のだれしもが、一様に背筋に冷たい戦慄を覚えると同時に、何とも言いようのない不安と恐怖の念におそわれたことと思うのであります。  そもそも、三月十四日の鳩山総理の原爆貯蔵の不用意なる発言以来、国会におきましては、日本が将来原子戦争の渦中に巻き込まれるのではないかと、真剣にこの国の前途を憂える幾多の論議がなされたのでありますが、政府の答弁は常に明確なる法理論を欠き、総理や外務大臣の答弁を幾ら承わっても、安心するどころか、ますます疑いと不安の念を強くせざるを得ないような御答弁に終始されておったのであります。  総理は、昨日の参議院において、事は単なる新聞報道にすぎないと、いとも簡単に片づけられておるようでありますが、世界人類の中で、日本国民ぐらい、原水爆の惨禍をのろい、原子兵器ないしは原子戦争に敏感な国民はございますまい。また、これは当然なことでございましょう。この国民感情を無視して、単なる新聞報道とは、これは何事でありますか。すでに日本側にも通告すらあった厳然たる事実ではありませんか。私は、鳩山総理が御老体で、しかも御不自由なおからだで、今国会、連日各種委員会に精励恪動されたお姿は、さすがに多年議会政治家としてこられた方として、深い敬意を表するものではありますけれども、今回の問題に対して、また原爆貯蔵の問題に対しての政府のとられた態度というものは、戦後十年いまだに広島、長崎、ビキニへの悲しみと憤りを忘れんとして忘れ得ざる日本国民に対する冒涜とさえ私は思うのであります。(拍手)ただ当面を糊塗すれば足るというようなおざなりな答弁は断じて許されぬと思うのであります。謙虚に、真剣に、人間の魂に触れた答弁をまずもって要求しておきます。  質問の第一、この問題に関してアメリカ当局からいかなる連絡を受けたか、まずこの点を明らかにしていただきます。  質問の第二、本日の新聞によりますと、外務省が二十九日米国大使館に確かめたところ、今度のロケット砲は普通の爆弾のほか原子弾をも装置し得るものだが、今のところ原爆を日本に持ち込むことはないとの回答を得たようでございますが、これは重大でございます。すなわち、事の真相は、いわゆるロケット砲、オネスト・ジョン砲を原爆ロケット砲部隊とともに日本に派遣することを、回りくどく別の言葉で裏書きしたものであると思うのであります。また、その事実については、政府はアメリカ軍当局からすでに通告を受けておったやに今朝の新聞にも米当局の言明として報道されておるのは事実でございますか。もし事実とするならば、いつ通告を受けられましたか。  質問の第三、七月三日の外務委員会におきましては、重光外務大臣及び杉原防衛庁長官は、それぞれ、五月三十一日アリソン米国大使から、米国は日本の承諾なしには原爆を日本に持ち込まないこと、日本の承諾なしに日本を原水爆の基地としないこと、この二点について、口頭ではございましたが、文書と同等の法律的拘束力のある国際約束をさせたと言明しておられます。しかるに、今回のこの事実は、たとい原爆は日本には持ってこないとしても、新聞の伝えるように、ロケット砲に装填する原爆はグァムに貯蔵するのでございましょう。しかしながら、その原爆ロケット砲を日本に持ってくることは、明らかに日本を原爆基地にする意図をアメリカが持っておることだけは明瞭だと思うのであります。(拍手)従って、オネスト・ジョン砲そのものを日本に持ち込むことを拒絶せざる限り、日本政府はこの日本を原爆基地としてアメリカに認めたことになると思うがいかん。  おそらく、政府はこういう御答弁をなさると思います。今回のロケット砲は普通の爆薬のほか原子弾をも装置し得るものであるが、米軍からは原子弾を日本に持ち込む考えはないという回答を得ているから、それらのロケット砲を日本に持ってきても、原爆基地として直ちに認めたことにはならない。このような御答弁をきっとなさるに違いないと思うのであります。もしそのような御答弁ならば、私ははっきり申し上げます。わざわざ沖繩には純粋の原子砲をもうすでに持ち込んできた。日本には、見ようによっては普通のロケット砲、見ようによっては原子ロケット砲、このようなものを配置するところに、アメリカ側の深慮遠謀というか、知能犯的な陰謀が隠されているのでありまして、いつでもアメリカの随意なときに日本が原爆の基地にさらされる危険の前に立たされたことだけは明々白々であります。アメリカ側にしても、日本政府においても、何と弁解されようとも、だれしも納得は行かないでありましょう。思えば、いよいよはだにアワの立つおそろしさであります。従って、私があらかじめくぎをさしておいたような言いのがれでなしに、今回の原子ロケット砲を日本に持ち込んでも日本が原爆基地にならないという御説明がかりになし得るものとすれば、私はそんなことはなし得ないと思いますが、かりになし得るものとするならば、それはいかなる理論的展開によるものか、納得し、了解を得られるところの御答弁をお願いいたしたいと思います。  質問の第四、今回のごとき紛議を避けるためにも、原子兵器に関係のある一切の兵器を日本に持ち込まないよう、アメリカ当局へ、法律的拘束力のある約束を、口頭でなしに文書によって要求することは、この際日本政府の当然の処置と存じますが、政府においてはその御意思がございますか、もしその御意思がないとするならば、それはいかなる理由によるのか、これまた八千万国民が十分納得し得るよう、懇切にお答え願いたいと存じます。  以上、十分なるお答えがいただけなければ、私は、まだ時間も余っておるようでありますから、再質問に出て参ります。(拍手)     〔政府委員根本龍太郎君登壇
  61. 根本龍太郎

    政府委員(根本龍太郎君) お答え申し上げます。  今回ロケット砲を日本及び沖繩に配置することについては、昨日参議院の内閣委員会において総理が申した通り、当時総理には何らの連絡がなかったことは事実でございます。これに基いて、実は、外務省を通しましてアメリカ大使館筋にその旨をただしたところ、これは新型兵器が配置になるということの回答がございました。その新型兵器というものは、原子爆弾、原子兵器ではないという明確なる回答がありましたので、そのように承知しておる次第でございます。なお、また、現在そのものが日本あるいは沖繩にもまだ到着していないようでありますので、それをわれわれは国際信義において信ずるのが当然のことと存じておる次第であります。  なお、また、ロケット砲が直ちに原子兵器なりと断定する何らの根拠がないと政府は信じておる次第でありまして、詳細のアメリカ大使館に対する連絡並びにその回答については、外務当局から御説明申し上げることになっております。  以上の点を申し上げます。     〔政府委員園田直君登壇
  62. 園田直

    政府委員(園田直君) ただいまの御質問にお答えをする前に、経過の概略を御報告申し上げます。  米国国防省の発表として、外電が新兵器輸送に関する報道を伝えて参りましたので、これについて外務省としては直ちに米国大使館に問い合せたところ、同大使館当局は次の通りに通報をいたしました。新兵器を日本に輸送する計画はあるが、いまだこれらの兵器は到着はしていない、これらの新兵器は原子爆弾とは何ら関係はない、ただこれには原子弾頭を装置し得るけれども、これら日本向けの新兵器には何らかかる原子弾頭を伴っていない、以上の通りでございまして、本件に対するわが方の態度及び方針は従来しばしば説明した通りでございまして、今後もこの方針に従って処置する方針でございます。  次に、具体的に御質問に御答弁を申し上げます。  本件について米国側より通報あるいは事前に意思の表明があったかということでございますが、本件については通報はございません。  次に、日本とアメリカ当局との話し合いによって、日本側に協議しなければ原子爆弾を持ち込まぬと、再三答弁をしておるが、今回の問題はそれとは食い違っておらぬかという御質問でございますが、われわれは食い違っておらぬと解釈をいたしております。ただいま日本に輸送せんとする計画をしておるところの十一インチ、オネスト・ジョンというロケット発射装置、発射管でありますが、御承知のごとく、兵器と弾薬の進歩によりまして、兵器の分類は逐次変って参っております。たとえば、迫撃砲によっては一般砲弾も発射いたしますし、これでルイサイト、イペリット等のガス弾を発射すれば、これはガス弾も発射し得ます。あるいは発煙剤を発射すれば、発煙剤を発射することができます。しかしながら、その発射する本体である迫撃砲は、あくまでこれはガス兵器ではなくて一般兵器の分類を受けております。特に今回日本に送るという計画のロケット発射装置は、御承知のごとく、ロケットはそのたまそのものに特色がございまして、その噴進装置が特色でございます。場合によってはロケット弾は簡単なる方向性を付与するのみにおいても発射できるものでございまして、従って噴進装置そのものは、決して精巧斬新なる最新兵器でもなければ、まして、いわんや、原子兵器では断じてないと考えております。これに原子弾頭をつけることによって、初めてこれが原子兵器の一部としての効果をもたらすわけであります。まして、いわんや、その原子弾頭を持ち込む計画は今のところないということでございますから、将来これに対しては当然協議があるものと考え、協議ある場合には十分考慮をし、原子爆弾など危険なものならば拒否したいと考えております。  以上、お答え申し上げます。     〔政府委員田中久雄君登壇
  63. 田中久雄

    政府委員(田中久雄君) 柳田議員の御質問のうち、園田政務次官から経過概略についてお答えを申しておりますが、私どものオネスト・ジョンについての見解を申し上げまして、補足いたしたいと存じます。オネスト・ジョンは原子兵器であるかどうかといえば、これは原子兵器でないという解釈でございます。ただいま世界中の認識でございます。この装置の上に原子砲を載せるか普通砲を載せるかという違いでございまして、オネスト・ジョンそのものは、これは何ら原子兵器ではない。これが一般の通念になっておるのでございます。簡単でありますが、補足説明をいたします。(拍手
  64. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 柳田君より再質問の要求があります。柳田秀一君。     〔柳田秀一登壇
  65. 柳田秀一

    柳田秀一君 おそらく、どこかの役所の、どこかの役人が書いた原文を読まれて、その原文の趣旨は、私からくぎをさしておったようなことであろう、その通りであります。今ここで根本官房長官以下御答弁になりましたが、あなた方も、われわれと同様に、やはり議員であり政治家であります。この原子砲に関しては、あるいは原子問題に関しては、われわれ日本人だけが、何の因果か、一度、二度、三度までもこの惨害をこうむった。よろしゅうございますか。そのわれわれが、政治家として、何もそのようなオネスト・ジョンが、これは原子の弾頭に原子爆薬を装置できるけれども、必ずしも原子兵器でないというような、そういうような三百代言的なことをここで論議しようとは思っておらないのであります。(拍手)よろしゅうございますか。八千五百万国民がひとしく心配しておることに対して、政府がきぜんたる態度をとって、日本は、どのようなことがあっても、今後いかなることがあっても、世界の原子戦争の中には巻き込まれない、政府責任をもって巻き込まれないようにするから、国民諸君は安心しろということをこの議場を通じて言うのが、あなた方の政治ではありませんか。(拍手)でありますから、私は、この問題に関しましては、なお後刻、閉会中におきましても、委員会等においてさらに政府を追及することを、ここに権利を保留いたしておきまして、再質問を終ります。      ————◇—————
  66. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、この際、平田ヒデ提出、三重県津市における学童の水死事件に関する緊急質問を許可せられんことを望みます。
  67. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  68. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。  三重県津市における学童の水死事件に関する緊急質問を許可いたします。平田ヒデ君。     〔平田ヒデ登壇
  69. 平田ヒデ

    平田ヒデ君 私は、日本社会党を代表いたしまして、三重県津市橋北中学校の水泳遭難事件に関し、文部大臣に対し二、三お伺い申し上げたいと思います。  一昨二十八日津市中河原浜において橋北中学校生徒三十六名の水死した事件につきましては、まことに遺憾きわまりないことでございまして、ここにつつしんで、深く哀悼の意を表する次第でございます。  本事件は、相模湖の遭難、紫雲丸の沈没と、相次ぐ中学生の水難事件の痛ましい記憶がまだ消えぬやさきでありまして、災難などと申すあきらめの言葉などでは絶対に許されてはならぬ問題であると思うものであります。(拍手)科学が今日ほど進歩発達している現在において潮流の調査もせず、ことに河口における潮の干満の注意も怠っていたと思われる点、まことに遺憾しごくであります。文部省におかれても、毎年のことであり、注意はされておったと思うのでありますが、それがいつの場合も観念的でなまぬるく、すべてが後手であると、いつも私は感じさせられているのであります。(拍手)  以下、項目をあけて、この水難事件を分析し、質問いたす次第であります。  まず第一に、一瞬にして三十六名の青春に富む若く尊とき生命を奪ったいわゆる危険個所は、通常みおと呼ばれる二メートルに達する深所でありますが、同個所は、津市教育委員長の言で明らかなことく、あらかじめわかっていたという事実があります。それにもかかわらず、そこへ押し流されるとは思わなかったというところに、大きな原因があるのではないでしょうか。  第二は、引率の先生方は、万一の場合の救助対策は全然考慮されていなかったのみならず、先生たちの、みおと呼ばれる危険個所に対する油断と、非常の場合の救助連絡措置がおそかったのも、事故を大きくした原因の一つにあげなければなりません。すなわち、女生徒約五十名が大波にさらわれた際、監督指導に当っていられた校長先生初め二十余名の先生たちは、自分たちだけで救助に当るのみで、一人の先生も、学校、警察等関係当局にすみやかに連絡し救いを求めるという所要の手続をとるのを怠ったのであります。事故発生後実に三十分後にして初めて当局に連絡したため、救援隊が現場に到着したのは約一時間後であるといわれております。そのため、人工呼吸がおくれ、当然助かったであろう生徒も、かけつけた父兄たちの数時間に及ぶ人工呼吸も効を奏さなかったという点についても、監督指導に当られた先生たちの責任はきわめて重かつ大なるものがあり、断固究明されてしかるべきであると思いますが、この点いかがでございますか。  次に、第三点といたしまして、事故発生後四十八名を海岸に引き揚げたといわれますが、そのうち助かったのは八名にすぎないのでありまして、海岸引き揚げ後における加療措置に不備な点はなかったでありましょうか。また、監督者は救助方法を知らなかったのではなかったか。  さらに、第四点といたしましては、この種事件の発生の原因の一つとして、県教育委員会が日ごろ水難対策について万全を期していなかったことがあげられると思いますが、この点について教育委員会の手落ちはなかったか。  次に、第五点として、特に文部大臣の明確なるお答えを希望いたしますことは、今日の事件発生の直接、間接の責任の所在と、責任者に対する処置についてであります。さらに、学童に対する警戒区域の徹底について不備な点がなかったかどうか。市並びに市教育委員会は、同海岸に監視人を置かず、学校当局の自主的統制にまかせ切りであったと思われますが、この点明らかに手落ちがあると思いますが、いかがでございましょう。  さらに、河口に近い危険水域で女子生徒を泳がせたことは明らかに監督者の手落ちであると思われますが、この点についてはどうか。  最後に、津市においては緊急全員協議会を開き、犠牲者には弔慰金五万円、入院者には医療費一切を市が負担することに決定したといわれますが、政府におかれましては、これらの補償問題についていかなる対策を講ぜられるお考えでございますか。  要するに、私が文部大臣にお伺い申し上げたいのは、ひとりこの事件だけではなく、近時類似の災厄事件が頻発いたしている実情にかんがみまするに、教育者の学生、生徒に対する指導監督よろしきを得ない面がはなはだ大であると存ずるのでありまして、これは文政当局の指導怠慢の結果でないとは言われないと思うのであります。(拍手)文部大臣は、これに対しいかに責任を感じ、今後どういう対策をおと年になるおつもりでございますか、明確なる御答弁をお願いいたす次第でございます。     〔国務大臣松村謙三君登壇
  70. 松村謙三

    ○国務大臣(松村謙三君) お答えを申し上げます。  御質問の第一の、学校側において現地の調査不十分と認められるがどうかというお尋ねでございます。実は、事件発生と同時に、三重県の教育委員会その他に直ちに連絡をとり、また人を派して実際を調べさしております。三重県の知事も一昨日上京をいたしておりまして、これとも連絡をいたしたのでございますが、これらのすべてを総合いたして判断をいたしますと、ただいまお尋ねの現場の調査が不十分でなかったかというお問いに対しては、遺憾ながら、さようの疑いがあると存じます。  それから、第二に、この事件が起った当時の教師の側の措置が機宜を失ったのではないかという点でございます。これも、この救助がおくれ、そうして医師が現場へ手当に参りますことがおくれたことは、遺憾ながら、これを認めざるを得ないのでございます。病院までの距離は一千メートルぐらいでありまして、従いまして、直ちに連絡をすれば、あるいはいま少しく犠牲者を少くいたしたかと思いますが、それが手おくれになりましたところに、お話通りの遺憾の点が多いと考えまして、まことに残念に思うのでございます。  それから監視の問題でございますが、これも十分のことはやっていないように存じます。このような重々の過失が重なっておりまして、かの紫雲丸の事件のように学校の引率者にとりましてはほとんど不可抗力ともいうべき事態とは「遺憾ながら、今度の事件は変っているわけでございます。  これに対する措置をどうするかということでございますが、ただいままでとりました措置は、このような事件が重なって起ります一つの原因は、やはり教職にある方がその緊張を欠いておるということが重大な原因であろうと思いまして、直ちに教育委員会に対して、気の毒であるが十分調査をして責任の所在を明らかにするよう指示をいたしておいたのでございます。また、三重県知事に対しても、同様の趣旨をもって、協力をせらるることを望んでおいたような次第でございます。また、一般の各府県に対しても、さらに、こういう悲惨な事件にかんがみて十分の注意をいたすよう指令をいたしておいたようなわけでございます。  このような措置をとっておりますが、その犠牲者の家族に対する補償の点は、ただいまのお話の通り地方において行われておるわけでございますが、国といたしましては今日はそういう制度はございませんが、義務教育の中にこのようなことが起りますことは、これはやはり制度を考えなくてはならないのではないかと考えるのでございます。その制度はどういうことが適切とあるか、共済の制度にいたしますかどうかというようなこともあり得ることと思いまして、これらのことは慎重に研究をいたす心得でございます。      ————◇—————
  71. 益谷秀次

  72. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 本案の参議院の修正に同意するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって参議院の修正に同意するに決しました。      ————◇—————
  74. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第三、地方税法の一部を改正する法律案参議院回付案を議題といたします。
  75. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 本案の参議院の修正に同意するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  76. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって参議院の修正に同意するに決しました。      ————◇—————
  77. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) この際本日の日程に掲載された請願を一括して議題といたします。     —————————————
  78. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 各請願委員長報告を省略して採択することとし、同種の議案議決の結果採択とみなすものの整理については議長に一任するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  79. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よってさように決しました。  この際暫時休憩いたします。     午後四時四十三分休憩      ————◇—————     〔休憩後は会議を開くに至らなかった〕