○前尾繁三郎君 私は、
自由党を代表し、ただいま
議題となりました
地方財政再建促進特別措置法案に対し、重要な修正を加えて、かつこれに伴う財政措置及び
地方財政の今後の根本的立て直しについて強い希望条件を付して賛成をするものであります。
地方財政が、終戦以来漸次窮迫の度を加え、今や重大なる危機に直面しておりますことは、
諸君の御承知の
通りであります。すなわち、
昭和二十八年度決算におきましては、府県の約八割、市の約七割、町村の約二割が実質上赤字決算であり、その総額が四百六十二億円に上っているのでありまするし、また、
昭和二十九年度の単年度におきましても、なお多くの団体が赤字を出しており、その総額も百二十億円に達することが予想せられておる状況でありまして、このまま放置しますれば、地方団体の財政は崩壊の一途をたどるほかはないのであります。これら赤字の原因につきましては、
一つは国の
責任であって、地方団体に自己財源を与えずに、補助金などによってあまりに過重な事業をしいておることにあるのでありますが、
一つには、平衡交付金制度等の欠陥とともに、民主主義の行き過ぎが
地方財政の運営を放漫ならしめていることにも基くのであります。従って、この際は、抜本的な制度の改廃と財源の付与を行います一面、すでに発生した赤字に対し特別の措置を講じてその整理を断行せしめなければならないことは、何人面認めておるところであります。
これにつきましては、すでに地方行政
委員会においても長い間検討してきたところでありまするし、また、
政府の設けた地方制度調査会においても、すでに答申がされておるところであります。しかるに、今回
提出されました
政府の
特別措置法案なるものは、これらの
結論に基くものと称しておりますが、何ら抜本的な
地方財政の改善案は出されず、ただ単に既存の赤字の整理
法案のみが
提出されておるのであります。しかも、その
内容を見ますと、従来の論議は全く無視せられ、はなはだ遺憾とする点が多いのであります。すなわち、その
一つは、あまりにも再建措置が自治庁の專断的に行われることであって、あたかも、
政府は、一方に地方団体を赤守団体に転落せしめながら、中央の権力の拡張強化をはかり、地方自治を抑圧せんとするかの疑いを起させるものでありますし、
一つには、あまりにも国の援助が少いことであつて、みずからは
責任を回避し、地方団体の自粛、自力のみによる再建をしいて、やせ馬にむち打つかの感じを与えているのであります。従って、われわれは、この際大幅に
本案を修正するもやむを得ないのであります。
第一に、財政再建
計画は、あくまで地方団体において自主的に策定せしむべきものであります。しかるに、
原案は、
政府が勧告によって半強制的になさしめたり、地方議会の議決を経だ再建
計画を
政府が勝手に変更し得ることにしているのでありまして、これでは、真にみずからの力によって建て直す意慾を失わしめるのであります。
第二に、
原案は、再建団体の理事者側の地位を強化するがために、議会や行政
委員会の地位を無視するかの感を与えているのであります。すなわち、議会が、再建
計画に関し再建団体の長と
意見を異にする場合には、直ちに不信任とみなして解散かまたは辞職に追い込むようなことをしたり、財政再建に事よせて、各種の行政
委員会に落し専断的に介入するかの感を与えているのでありまして、財政の再建は、地方団体みすからの融和をはかりつつ、総力をあげてさせなければ効果のないことを忘れているのであります。
第三に、
原案は、財政再建
計画の忠実なる履行を求めんとするの余り、不必要に
政府が直接の権力を用い得ることとして、いるのであります。もとより、特別の援助を行う限り、再建
計画の実施につき何らの
発言権なしというわけには参りません。しかし、直ちに予算の執行停止を命じたり、起債の許可権を振り回すことは、あまりにも官僚
政治の復活を思わせるものであって、地方自治圧迫のそしりを免れないものと思うのであります。
第四には、国からの援助について、
原案は、ただ単に利子の六分五厘をこえるものに対しわずかに二分の利子補給をし、また特別の場合に国の補助率の引き上げを行うことを規定いたしておるのにすぎません。しかし、六分五厘の利息を支払いながら再建し得るものとすれば、崩壊寸前にある赤字団体の実態を知らざるもはなはだしいものと言わなければなりません。赤字の原因が国と地方の両者にあることを思えば、再建団体の利子負担は
政府資金の最低三分五厘にとどめるべきものと信ずるのであります。
要するに、
政府原案は、あまりにも国の与えるところ少く、しかも地方自治団体を拘束することはなはだしく、サーベルをもって威嚇しつつ赤字の解消をはかろうとする旧来の官僚
政治に帰るものと言わなければなりません。従って、
自由党は、これらの点を是正し、真に民主主義に徹した再建
整備を行い得るよう、全面的に修正を施しているのであります。
なお、社会党の代案を拝見いたしますと、再建団体の好まぬことば全部
削除し、ただ
政府の利子補給だけを行わんとするものであります。しかし、赤字の多い団体は、団体自身にも欠陥があり
責任があることを忘れてはなりません。赤字がすべて
政府の
責任であるかのように
考えたり、また赤字をすべて
政府の援助によって解消すべしと
考えますことは、ますます国に対する依存心を高め、かえって地方自治の本旨にもとり、時流におもねって、
地方財政の改善を期するゆえんではないのであります。赤字を出したものが得をするという風潮は、何としても是正しなければなりません。従って、
国家資金によって漫然赤字の穴埋めをしようという社会党の代案には、遺憾ながら
反対を表明せざるを得ないのであります。また、積立金のない地方団体に退職金の起債を認めますことは当然の処置であって、これによって首切り
法案などとする社会党の
諸君の攻撃は、何ら
理由のない、ためにする宣伝にすぎないのであります。
最後に、私は、強く
政府に要望しなければならぬ諸点を述べたいと思います。
その第一は、
本案に対する財政措置でありまするが、
政府が
考えておりますのは二百億円で、そのうち百五十億円は公募債によるのであります。これでは、もとより、二十八年度の赤字四百六十二億のみについても十分でないと思うのであります。しかも、二十九年度の赤字も百二十億円をこえることを予想せられているのであります。しかし、かかることによって、せっ
かくの今回の措置が中途半端なものに終ってはなりません。再建
計画の
提出の状況を見て直らに所要額を補てんせられるよう強く要望するものであります。また、百五十億円の公募債については、公募が非常に困難な折柄、早急に
政府資金への切りかえを要するのでありますが、少くとも、
政府は、早急に容易に公募できるよう万全の措置をとられることを希望する次第であります。
次に、再建
整備については、過去の赤字の解消はもとより焦眉の急でありますが、将来に赤字を出さないことがより根本的な問題であることを忘れてはな力ません。
政府も本年度以降赤字を出さない方策を講ずるつもりでありたのが、事志と違い、三十年度、三十一年度、両年度にまたがって、かかる措置を行うことを約束せざるを得なくなったものと
考えられるのであります。しかし、赤字の解消は、あくま弧今後に赤字を出さないことが前提条件でなければなりません。それには、軸方
交付税率の引き上げ等、地方税制の抜本的な改正を、行わなければなりまんが、
政府はそれに応ずるだけの十分な用意をせられることを希望するものであります。
さらに、二十八年度の決算によっイ判明した給与の実態が、
地方財政計画を上回っている額が四百億円以上にも及んでおるのであります。これについては、
政府は今秋の給与実態調査を待って処置することを言明せられておるのでありますが、これまた早急に最も適切な方途によって解決されることを強く希望してやまない次第であります。
繰り返し申しますように、
地方財政は崩壊寸前にあります。私は、
地方財政が安定し、地方住民に一日も早く明るい公民生活が来たることを念願しつつ、自由、民主両党の
修正案、
修正案を除く
政府原案に賛成し、社会党の代案に
反対の意を表明する次第てあります。(
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