○植原悦二郎君 ただいま
議題となりました
日本海外移住振興株式会社法案につきまして、外務
委員会における
審議の経過及び結果を御報告申し上げます。
この
法案は、六月二十二日
内閣から
国会に
提出、同
日本委員会に付託されましたので、六月二十五日から七月二十日まで八回にわたり外務
委員会を、また外務
委員会農林水産
委員会連合
審査会を開き、最も慎重に
審議を重ねました。
政府側の
説明によりますれば、戦後、中南米諸国に対する移住者の送出は
昭和二十七年度末から開始されましたが、
政府が送出いたしましたいわゆる
計画移民の数は逐年増加いたしまして二十九年度には三千七百四十一名に達し、本年度は約五千五百名を送り出す予定であります。このように海外移住事業が進展いたして参りました直接の原因は、ブラジルを初めとし、アルゼンチン、パラグァイ、ボリビア等の対日感情が好転し、わが移住者を歓迎するに至ったためでありますが、
政府が進んで渡航費の貸付を行なったことも大いにあずかって力あるものと考えます。しかしながら、わが移住者受け入れに対する国際
情勢の好転に即応して、大量移民送出を可能ならしむるためには、農業移民に加うるに、資本と技術を持つ企業移民の育成
強化にも常に留意し、移住者の行う事業及び移住者を受け入れる事業の助成拡大にまで乗り出すことが必要となったものであります。
政府はかねてより
米国の民間三銀行との間に移民借款の交渉を進めていたのでありますが、話し合いは有利に展開し、三銀行が千五百万ドルの借款を与うる意向を表明いたして参りました。よって、とりあえず
予算の許す範囲内でなし得る財政出資をもととし、これに民間資本を加え、海外移住振興業務を行う機関を設立、これにただいま述べました移民借款を受け入れ、もって移住者及びその団体の行う事業に資金を貸し付けるほか、必要あるときは移住者を受け入れる現地事業に投融資し、さらに場合によっては移住者を受け入れる現地事業を経営できるようにして、移住者受け入れの現地側の基盤を積極的に拡大培養せんとするものであります。かような見地から、移住振興業務を行うため、特別法に基く株式会社を組織しようとするので、この
法案が作成された次第であります。
この
法案は特殊な会社組織と重大な
国家的意義を有する移民事業とを規制せんとするものでありますから、この際簡単にその
内容を
説明しておきたいと思います。
まず第一に、この
法案に規定されました会社の業務の範囲は、前に述べました移住者のためにする資金の貸付、投融資、事業経営のほかに渡航費の貸付をいたすことになっておりますが、これは外務大臣の指定する団体に委託できることになっております。
第二に、資本
関係につきましては、
政府の出資額は
予算の範囲内となっており、三十年度においては
政府は一億円出資することを規定しておるのであります。
第三に、役員に関しては、取締役四名以内、監査役二名以内とする規定になっております。
第四に、社債発行額の限度は、資本及び準備金総額または純財産額、いずれか少い額の五倍以内と規定いたしております。
第五に、
政府は、会社の外債償還を
確保するために、会社振り出しの外貨手形をその満期前一日までに
政府が相手方外国銀行から買い取る旨の契約をなすことができ、また会社の利息債務を
政府が保証する規定となっております。
第六に、監督
関係の規定において外務大臣が会社を監督することになっておりますが、社債募集、定款の作成変更、毎営業年度の事業
計画、一年以上の資金借り入れ、重要財産の処分等については、外務大臣は大蔵大臣と協議して認可することになっております。
最後に、本会社は、一般的に本
法律案に規定する場合のほか、もとより株式会社として商法その他の民事法の適用を受けるわけでありますが、会社の業務の公共性にかんがみ、会社に対する
政府の監督は業務にまで及び、また役員その他の
職員の不正行為に対しては重く罰する規定となっております。
以上は本会社の
内容の概略であります。
次に、
政府と外務
委員との間に活発な
質疑応答が行われました。また、参考人、
日本海外協会連合会副会長上塚司君、鳥取県海外協会
事務局長大久保毅一君を招致し、
意見を聴取いたしたのであります。その詳細については
委員会議事録によって御了承を願います。
ここにおもなる
質疑応答をあげますれば、次の
通りであります。
まず、
委員から、この会社の総資本額及び経理について
質疑があり、これに対して
政府側は、この会社に対する
政府出資は本年度において一億円でありまして、民間資本を大体五千万円を想定し、総資本額一億五千万円をもって会社は設立せられるはずであります、この金額は
国内において諸経費に充てることになるはずで、三銀行から借り受ける外貨一千五百万ドルは外国において移民に関連する事業並びに移民
自体に貸付使用される構想であるとの
答弁でありました。
委員から、渡航費の貸付は大体
政府の事業であり、かつこれが回収もなかなか困難である、この会社は採算を基礎とする株式会社であるので、これを会社の業務の一つとするのは不適当であるので、他の機関にまかすべきではないかとの質問があり、これに対し、
政府側は、現在渡航費の貸付は海外協会連合会がこれを行なってくるのでありますが、
国家資金の回収を必要とする面から考慮して、この会社の業務とすることが妥当であるとの
意見がありまして、かように定められた次第であります、しかしながら、渡航費貸付の業務だけは会社は海外協会連合会に委託することができるように規定されたわけであるとの
答弁でありました。
また、
委員から、移民の渡航費支出は戦前においては
政府の補助で行われたが、これを貸し付けることは当該移民に過重な負担ではないかとの質問があり、これに対し、
政府側は、当今中南米への渡航費は一家族当り五十万円を要し、
予算の
関係上
政府の全額負担とすることは困難であるので、据置期間付長期貸付の形式をとっており、かつ、これが回収に当っても、移民個々の事情を十分考慮し、貸付期間をさらに延長することができるように
措置するつもりであるとの
答弁でありました。
また、
委員から、本
法案に関連して外務、大蔵、農林、通産、労働の各省間に
意見の相違があって、移民
政策の一本化に支障を来たしたようなうわさがあるが、その真相いかんとの質問があり、これに対し、
政府は、各省の所管
事務からそれぞれの主張があって、十分論議を尽したが、結局海外移住に関する
事務調整についての閣議決定その他各省次官間の了解事項等の作成によって調整せられ、そのうち重要なものはこの
法案中に織り込まれるに至ったのであるとの
答弁でありました。
質疑終了に続いて、大橋
委員から、各派
共同提案として、
日本海外移住復興株式会社
法案に関する附帯決議の動議が
提出されました。
すなわち
本会社設立の上は、
政府は左の事項につき充分留意せられたい。
(一)
政府は会社の指導に当り、会社の活動が移民受入国の利益及び需要に合致し誤解を招かないよう万全の配慮を加うること。
(二)外務省は円滑なる運営のため、つねに
関係各省と連絡を密にし、ことに事業
計画及び資金
計画に関する認可を与えるときは農林、通産、労働その他の
関係各省に事前に諒解を求めること。
(三)本会社の配当は、如何なる場合に於ても一割を超えないこと。
以上の
通りでありました。
最後に、
討論に入り、
日本民主党大橋忠一君、
自由党北澤直吉君、
日本社会党左派穗積七郎君及び
日本社会党右派戸叶里子君から、それぞれの党を代表し、
本案及び附帯決議案に対し
賛成の
意見を表明されました。
採決の結果、本
法案は附帯決議を付して全会一致をもって
原案の
通り可決すべきものと議決いたしました。
以上、御報告申し上げます。(
拍手)