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1955-07-05 第22回国会 衆議院 本会議 第37号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月五日(火曜日)     —————————————  議事日程 第三十六号   昭和三十年七月五日     午後一時開議  一 憲法調査会法案清瀬一郎君外四名提出)の趣旨説明     —————————————  第一 国民健康保険法の一部を改正する法律案山下春江君外十名提出)  第二 医師国家試験予備試験受験資格特例に関する法律案大石武一君外四名提出)  第三 昭和二十七年九月三十日以前に給与事由の生じた旧財団法人私学恩給財団年金特別措置に関する法律案内閣提出)     ————————————— ●本日の会議に付した案件  公正取引委員会委員任命について同意を求めるの件  立川飛行基地土地強制調査に関する緊急質問山花秀雄提出)  憲法調査会法案清瀬一郎君外四名提出)の趣旨説明及びこれに対する質疑  日程第一 国民健康保険法の一部を改正する法律案山下春江外本名提出)  日程第二 医師国家試験予備試験受験資格特例に関する法律案大石武一君外四名提出)  日程第三 昭和二十七年九月三十日以前に給与事由の生じた旧財団法人私学恩給財団年金特別措置に関する法律案内閣提出)  教育公務員特例法第三十二条の規定の適用を受ける公立学校職員等について学校看護婦としての在職を準教育職員としての在職とみなすことに関する法律案赤城宗徳提出)  在外公館等借入金整理準備審査会法の一部を改正する法律案高岡大輔提出)     午後四時二分開議
  2. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) お諮りいたします。内閣から、公正取引委員会委員塚越虎男君を任命するため、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律第二十九条第二項の規定により、本院の同意を得たいとの申し出がありました。右申し出通り同意を与えるに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって同意を与えるに決しました。      ————◇————— 立川飛行基地土地強制調査に関する緊急質問山花秀雄提出
  5. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、この際、山花秀雄提出立川飛行基地土地強制調査に関する緊急質問を許可されんことを望みます。
  6. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。  立川飛行基地土地強制調査に関する緊急質問を許可いたします。山花秀雄君。     〔山花秀雄登壇
  8. 山花秀雄

    山花秀雄君 私は、日本社会党を代表して、現在政府が行いつつある米国軍事基地たる各地に散在する飛行場拡張にからむ付近住民意思を無視した土地接収問題について質問するものであります。  政府は、さきに、本年度事業として新潟、木更津、小牧及び立川横田飛行場拡張を明らかにされました。そのため十二億円の予算も計上されたと聞いておるのであります。特に緊急にお尋ねいたしたいことは、最近新聞紙上に連日報道されておる立川飛行場拡張に関して、土地接収を予定されておる東京都下砂川町民との紛争問題であります。問題の砂川町は、戦争中に立川及び横田飛行場拡張資材庁等々の使用地として百七十五万八千八百二十六坪を強制接収されたのであります。戦後、米国軍隊が進駐してより、四回にわたり、住民意思を全く問うことなく、占領軍の威力のもとに、無断措置立川横田の両基地拡張のため農耕地を接収され、その延べ総面積は二百四十四万三千三百十坪となり、町の優秀なる農耕地の大半を失うに至り、経済的に大打撃を受けたのであります。当時は、何分にも東条軍政のもとでもあり、また占領支配下のこととて、住民のすべてが泣き寝入りの状態でしんぼうして参ったのであります。しかるに、またまた政府は、国防上絶対飛行場拡張が必要なりとの理由のもとに、町の死命を制する暴虐なる土地接収の挙に出たのでありますが、その政府の言っている国防とは、自衛の線か、攻撃の線か、この際その概念をはっきり説明願いたいのであります。  いかに飛行機が進歩し、逐次大型となり、また急速力を有するに至っても、自衛の線を守る、すなわち一般にいう空の守りを全うすることは、現在の設備で十分であります。しかし、一段と積極性を発揮し、いずれかに仮想敵国を求め、攻撃態勢を築く概念をもっては、あるいは拡張が必要となるかもしれませんが、今のところ、どう見ても国際的にさような事情は存せぬのであります。いな、むしろ、戦争のむだが論ぜられ、世界は原水爆の脅威のもとに、世界平和への態勢が漸次築かれつつある状態であります。わが国にあっては、基地拡張という時代逆行に邁進する愚かさを即時中止して、軍事基地の減少にこそ一切の力を注ぐべきときであります。過去のいきさつにとらわれることなく、思い切って米国政府にこのことを強く要請することが、わが国の持つ現憲法下にあって政治家の果すべき最大の任務であろうと心すべきが至当であります。(拍手国防に関する見解については、憲法にも明らかにされてある通り、万一の場合の自衛権は存在しておりますが、みずから仮想敵国を求め、国内軍事施設わが国経済力の負担の限度を越え、さらに他国の協力を得て攻撃態勢に切りかえるごときは、戦争誘発への危機をはらみ、明らかに憲法違反であります。  以上申し述べました観点から、国防に関する自衛攻撃概念説明防衛庁長官に、また、国際的には、緊張時代より緩和時代、すなわち戦争より平和に態勢が進行しつつある現状については外務大臣より、それぞれ所見を承わりたいのであります。  次に、総理大臣よりは、現憲法下にあって、いたずらなる軍事基地拡張が、しかも国民生活を塗炭の窮乏に陥れることが条件になるようなもとに実施されるのが、現憲法に忠実なるゆえんであるやいなや、この際私ども納得の行く説明を承わりたいのであります。  また、基地拡張に関して、その衝に当る人々より聞き捨てならぬことを往々耳にするのであります。率直に申し上げますと、この問題は向うさまの要求に基くものであるから仕方がないという表現であります。昭和二十七年講和条約効力発効以前なれば、占領、被占領という関係上やむを得ぬことかもしれませんが、わが国独立後の現在において、今なおかかる卑屈な言動をあえてなす公務員の多く存するに至っては、鳩山内閣外交方針にきわめて遺憾な隷属外交の片りんが、その部下どもをしてかかる言動をあえてなさしめるものと思われますが、この際、総理大臣外務大臣より、わが国外交方針独立国家外交として毅然たる方針を堅持されておられるや、または、日米安全保障条約に基く日米行政協定がその内容において毅然たる方針を堅持できないような事項があるやいなや、この際はっきりとわが国国民諸君に知らしてもらいたいのであります。この問題に関して、特に総理大臣外務大臣の御両人に答弁を求めます理由は、巷間伝うるところによりますと、外交方針に関しては両者全く意県の食い違いがあるやに伝えられているからであります。  さきに、政府は、総選挙に際して、米国との防衛分担金の削減を交渉し、てれに成功した金額はあげて社会保障拡充に回すと公約されたのであります。このことについては、鳩山総理大臣もたびたび言明されておるのであります。しかるに、今日防衛分担金はある程度減額に成功されましたが、この減額された金額は少しも社会保障拡充に回されていないのであります。逆に、軍事基地拡張や再軍備の費用に充てられておるのであります。鳩山内閣は、この乗り心地のいい汽車に乗りなさい、涼しい北海道に連れていきますと称して、とにかく多くの国民諸君汽車に乗せることに成功いたしました。国民諸君は信用して汽車に乗っておると、着いたところは、涼しい北海道でなく、暑い暑い南の果ての九州に着いていたのであります。まことにもって国民諸君を愚弄する公約無視を行なっておるのであります。いかなる理由で、かかる結果になりましたか、この機会に、日米安全保障条約に基く日米行政協定におけるいきさつについて、国民諸君に明らかにされたいのであります。私の特に承わりたいことは、その減額分の使途について、ひもつき条件になったのかどうか、もしひもつき条件となったとすれば、選挙当時の公約をいかなる方法で果されるのか、特に明瞭にお答え願いたいのであります。さらに、明年及び明後年と減額された場合に、本年度同様の措置に相なるのか、この点、お尋ねするものであります。  このたびの砂川町における土地接収に関して、その現地における出先機関に、まことに私ども納得できない数々の行為に出ておるのであります。最初、基地拡張方針政府から発表されますと、当然、従来の土地集収にからむ当局者不信行為と相待って、これ以上砂川町のみが犠牲になりたくないという感情の上からも、町民諸君が絶対反対の挙に出たのは自然の姿であります。また、調達庁長官を初めとする当事者所信は、あくまで、町民語君の納得の上に立って、順序と段階を経て事を運ぶと言明されたのであります。私どもは、当然のこととて、当事者言明を信用いたしたのであります。しかるに、ここ数日間の事態は、この当事者言明を裏切って、法的措置も円満なる話し合い解決もなく、謀略と権力によって町民諸君意思をじゅうりんせんとする傾向を見受けるに至ったのであります。民主主義政治の将来のためにも、まことに遺憾に存ずるものであります。去る七月一日の平院内閣委員会で、同僚議員土地収用法質疑に関して、政府委員答弁は、私ども納得せしめることができません。そこで、重ねて政府見解をいま一度明らかにしてもらいたいことは、同法第十二条の規定盲腸的存在のごとく答弁されておられますが、私どもは法の一条々々は絶対必要条項のみ規定されておるものと理解しておるのであります。同法第十二条が第十一条と第十三条とのつながりの役目のみを果すものとして、それ自体何らの意義はないものかどうか、法制局長官伝的解釈をこの際いま一そう明らかにしていただきたいのであります。また、法務大臣にお尋ねいたしたいことは、去る七月一日午後一時半ごろ、関東公安調査局多摩支局法務事務官山崎君雄と名乗る者が、砂川町役場に現われ、宮崎町長に面会を求めて、反対問題は今まで外部団体との共闘は一切行わないと言っていたが、六月三十日の立ち入り調査の際、外部の応援を受けたのはなぜか、また、反対同盟の強い抵抗があって、調達庁でも一応折れて帰ったが、これは破防法違反の疑いがあるので返事を伺いたい、かよう申し入れたと聞いているのであります。法務当局は、かかる指示を出先機関に与えたものであるか、もし与えたとすれば、いかなる見解に基くものか、ただし、出先機関の一存によって行われたものとすると、この出先機関行為に対して法務大臣はどうお考えになるか、法務大臣答弁を伺いたいのであります。
  9. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 山花——山花君、申し合せの時間が過ぎましたから簡単に願います。
  10. 山花秀雄

    山花秀雄君(続) 簡単にやります。  現地ではいろいろ揣摩憶測が行われ、複雑な様相を呈しているので、この際この問題について種々なる誤解の生じない明快なる御見解を御発表願いたいのであります。  七月二日には、東京調達局山田不動産部長を先頭とする測量隊員をジープに満載して砂川町に乗り入れてきましたが、この測量隊は、必要量測量機具もなく、なお測量隊の中に多数の私服警官がまぎれ込んでいたといわれるのであります。これは明らかに悪質の挑発行為であります。向うさんの要求に基くと称し、日本国民をまるで敵のごとく扱い、かかる挑発行為までして基地拡張に狂奔する調達庁及びその出先機関のこの狂態を、所管責任者である西田労働大臣はどうお考えになっているか、所信のほどを御答弁願いたいのであります。
  11. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 山花——山花君、申し合せの時間を過ぎましたので簡単に願います。
  12. 山花秀雄

    山花秀雄君(続) さらに、いま一つ労働大臣にお尋ねいたしたい点は、立川飛行場拡張に対しては、砂川町民に示した第一次拡張計画がいまだ紛争中で解決を見ない今日、第二次拡張案提出されておりますが、これはどういうことに相なりますか。第一次、第二次と一括してやられる意思を持っていられるのか、両案のうちいずれかの一案の実行をお考えになっておられるのか、一応この際はっきりしていただきたいと思うのであります。  私は最後にただ一言総理大臣にまとめてお聞きいたしたいことは、今日、基地拡張の問題につきまして、米国の必要から来る要求の陰には、無事の日本国民土地を奪われ、生活を追われ、愛する国土が一歩々々と徐々に日本支配権の届かない軍事基地の領域内に削り取られることは、独立後の国民感情としては許せないことであります。(拍手)こうした国民感情を、総理大臣わが国政治責任者の一人としてどうお考えになっておられますか。この際、日本国民意思を完全に取り上げて、日本完全独立達成のため日米安全保障条約破棄もしくは改訂に邁進する意思ありやいなやをお尋ねいたしまして、私の質問を終える次第であります。(拍手)     〔国務大臣鳩山一郎登壇
  13. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 山花君の御質問お答えをいたします。  基地拡張攻撃態勢を整えるためではございません。従って、自衛範囲を出ているものとは考えないのであります。自衛範囲を出ていないならば、憲法違反とは考えないのであります。  最後に、アメリカとの関係において安保条約破棄等考えないかという話でございました。アメリカに対しての外交方針は、自主態度でもって対米外交に臨んでいることは、たびたび申し上げた通りでありまして、現在の状態において安保条約破棄する考えはございません。(拍手)     〔国務大臣重光葵登壇
  14. 重光葵

    国務大臣重光葵君) お答え申し上げます。  現在の国際情勢緊張緩和の方向にあるようには認められますが、いまだ最小限度自衛力を不必要とするには至っておらないのでありまして、現在不十分なわが自衛力の充実のために、飛行場拡張が必要となっておる次第でございます。国際情勢がさらに一そう緩和して、かようなことが不必要になる時期の来たらんことを希望するものでございます。  行政協定等尊重して対米協力をなすというのは、国際信用を重んずるがためでありまして、すべて自主的にこれを行うものでございます。われわれはあくまで自主独立外交をやることを申し上げて、お答えといたします。(拍手)     〔国務大臣杉原荒太登壇
  15. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) お答え申し上げます。日米安全保障条約に基くところの措置は、一本条約の精神にかんがみまして、決して攻撃態勢を整えるためではなく、全く自衛範囲を出ないものであることは、先ほど総理大臣からも申し上げた通りでございます。(拍手)     〔国務大臣花村四郎登壇
  16. 花村四郎

    国務大臣花村四郎君) お答え申し上げます。山花君の述べられたように、調査官がその日時、場所に町長を訪問した事実はございます。しかしながら、法務省が指示したことはございません。しかしながら、暴力主義的破壊活動を対象といたしまする団体が加入しているかいないかということを調査する必要がありと認める場合においては、その職務上調査官が出張をいたしますることは、これは当然であると申し上げてよろしいと思います。(拍手)     〔国務大臣西田隆男登壇
  17. 西田隆男

    国務大臣西田隆男君) お答えいたします。  七月二日、調達局職員測量に参りました際には、きわめて事務的に測量を果す目的測量機械その他一切を持って参ったのでございまして、決して地元の皆様に挑発行為を行う目的をもって行ったものではございません。  第二の問題は、アメリカ側から示されましたいわゆる原案——第一次案と山花さんは言われましたが、この案によりますと、立ちきの家屋も非常に多数ありますし、かつ五日市街道というあの大事な道路がこれにかかっておりますので、調達局としましては、できるだけ少い被害において米軍側要請にこたえたいという意味合いで、道路にかからないように、立ちきの家屋の最も少い方面をも調査をあわせていたしておりますので、二つ調査をしたから、二つ滑走路を設けて、二つを使用するという意味合いではございません。幾カ所調査いたしましても、最も犠牲の少い地点において滑走路の延長を一カ所だけするということでございます。  さよう御了承願います。(拍手)     〔政府委員林修三登壇
  18. 林修三

    政府委員林修三君) ただいまの御質問に対してお答えいたします。土地収用法の第十一条の第三項は、国が起業者である場合には、同条第一項ただし書きの規定によりまして、その事業種類並び立ち入ろうとする土地の区域及び期間を都道府県知事に通知をいたしました場合には、これによって、その起業者は、みずから、またはその委任をした者をして、その土地立ち入らせることができると規定いたしております。従いまして、こういう手続が済めば、調達局長立ち入り権限を有効に取得したことになると思うのであります。このことは、第十二条の手続、特に第二項の市町村長公告がなくとも、この立ち入り調査権限は有効に発生したものと考えなければならないと思うわけでございます。第十二条の規定はもちろん無用な規定ではございませんので、十二条の規定に従っての手続は当然行われるべきものでございますが、十二条第二項の規定による公告がなくとも立ち入り権は有効に成立している、かように考えるわけでございます。このことは、同法第十三条で、第十一条第三項の規定による立ち入りを正当な理由がない限り拒めない、こう書いてあるのでございまして、それからでも明らかであると存じます。正当な理由があるかないかは個別的、具体的に判断すべきものでございます。      ————◇————— 一  憲法調査会法案清瀬一郎君外四名提出)の趣旨説明
  19. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 憲法調査会法案趣旨説明を求めます。提出者清瀬一郎君。     〔清瀬一郎登壇
  20. 清瀬一郎

    清瀬一郎君 ただいま議題となりました憲法調査会法案につきまして、提案の理由と、この法律案概略とを御説明いたします。  申し上ぐるまでもなく、現行日本国憲法は、昭和二十一年、すなわち、わが国主権連合国最高司令官の制限のもとに置かれておった時代に制定せられました。ことに、その法文は、同司令部の示唆と指導のもとに、きわめて短時日の間に立案せられたのであります。わが国主権を取り戻した今日におきましては、日本国民の手によって自主的の憲法を作りたいというの声は近時ますます盛んになっております。(拍手、発言する者あり)しかしながら、現行日本国憲法は、平和主義民主主義基本的人権尊重等、もろもろの原則を基調とする多くの長所を持っておるのでございます。これらの長所はあくまでこれを尊重し、また擁護すべきは当然でございます。しかしながら、わが現行憲法が施行せられましてから今日まで、われわれの経験にかんがみますると、わが国情に照らしてさらに検討を要すべきところが多々あることは、これまたおおいがたきところでございます。(拍手)  ここにおいて、わが党は、国民的立場に立って自主的に現行日本国憲法に全面的の検討を加えることは独立完成のためにもきわめて緊要なことであると考えるのであります。(拍手)そのためには、まず有力なる憲法調査審議機関を設けることが必要と思量いたしたのでございます。ここにこの法律案を提案した理由はこれであります。  この法律案は、かような趣旨に基きまして国会議員三十名以内、学識経験ある者二十名以内、合計五十名以内の委員をもって組織する憲法調査会内閣に置くことにいたしておるのでございます。この調査会は、特別の諮問を待つことなく、自主的に現行憲法検討を加え、関係諸問題を調査審議いたしましてこれを内閣及び内閣を通じて国会に報告することが所掌事務でございます。この調査会には会長一名、副会長二名を置きますが、いずれもこれは委員の互選によるものでございます。さらに、調査会専門委員及び幹事を置くことができることといたしております。この調査会の運営に要する経費は、過日今次国会において御協賛を得、通過をいたしました本年度予算に計上されておるのでございます。  以上がこの法律案提出理由並びにその規定内容概略でございます。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに可決あらんことをお願い申し上げます。(拍手)      ————◇—————  憲法調査会法案清瀬一郎君外四名提出)の趣旨説明に対する質疑
  21. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) ただいまの趣旨説明に対する質疑に入ります。山崎巖君。     〔山崎巖登壇
  22. 山崎巖

    山崎巖君 私は自由党を代表し、ただいま上程になりました憲法調査会法案に関し、本法案日本民主党全員賛成のもと、清瀬一郎君外四名の提出にかかわるものではございまするが、事、憲法改正につながる重要案件でございまするがゆえに、この機会鳩山首相に対し若干の質問をいたさんとするものであります。  質問の第一点は、憲法問題に対する首相基本的構想についてであります。現行憲法民主主義平和主義並びに基本的人権尊重にその基本原則を貫く点においては、何人もこれを不可とするものはないと信じます。しかしながら、現行憲法が、占領治下連合国最高司令官要請に基いて制定せられたものであり、日本国民自由意思によるものにあらざることは、否定しがたき事実であります。また、過去八ヵ年の実施の経験にかんがみましても、わが国の伝統と国情とに符合しない個所のあることもまた明瞭と相なって参ったのであります。(拍手)従って、わが国独立完成再建日本将来の発展と繁栄とを期し、日本国民のため、日本国民によって、よりよき憲法を持つために、現行憲法に再検討を加えますることは、私どもの全面的に賛意を表するところであります。(拍手)私は、ここに、わが党の憲法問題に対する基本的立場をまずもって鮮明いたしておきたいと存ずるのであります。しかるに、鳩山首相におかれましては、従来久しきにわたり憲法改正を力説せられて参ったのでありまするが、首相の組閣以来本問題に対しとって参られました態度につきましては、納得しがたき点がきわめて多く、私どものまことに遺憾に存じておるところであります。首相は、在野時代においては、現在の自衛隊をもってごまかしの軍備なりとし、これをもってしては国土防衛に欠くるところありとし、再軍備のための憲法改正を強く主張せられ、これが改正こそは自己の政治的使命のごとく強調して参られたのであります。しかるに、一たび政権の座に着かれまするや、憲法第九条の解釈につきましても、その態度を急に改変せられまして、自衛目的であれば、いかなる戦力を持つも憲法違反にあらず、と飛躍せらるるに至りたのであります。しかも、最近、国防会議法案審議内閣委員会においては、わが党江崎真澄君のこの点に関する追及にあうや、戦力解釈については自由党見解と根本的に相違せずと答えられておるのであります。しこうして国力相応防衛力を持つことこそ現行憲法の容認するところであり、近代戦における戦力憲法改正せざる限りこれを保持し得ずと、三たびその解釈を変更せられたのであります。国の基本法たる憲法解釈につき、しかも、首相が年来憲法改正の重点のごとく主張せられたる憲法第九条につき、その追及にあうや、その都度変節政論し、何ら自信なき態度は、われわれの断じて承服しがたきところであります。  また、首相は、第二十一回国会においては、その施政方針演説において、国会憲法調査審議機関の設置を言明せられたるにかかわらず、今回これを翻したるのみならず、その責任を回避せんがためか、堂々内閣提出法律案とすることなく、さきに予定せられたる会期の終末たる去月二十八日に至り、与党をして本法律案提出せしめ、しかも、調査会はこれを内閣に設置せんとするものであります。その意図那辺にありや、われらの真に了解に苦しむところであります。  しかしながら、その形式のいかんにかかわらず、本法律案に掲ぐるごとく、憲法調査会内閣に設置しますことは、末期国会において首相のしばしば言明せられたところであります。本法案首相の意を体して提出せられたることは、こうも疑いをいれません。しこうして、首相があえてこれを内閣に設置せんとせらるる以上、首相においては必ずや現行憲法改正に関する一応の御構想がなくてはならぬはずであります。この機会に、首相が従来のごとき自信なき態度を一擲せられ、これを明示せらるることは、首相国民に対する重大なる責務であり、かつ本法案審議の要点なりと思量いたしまするがゆえに、この点に関し首相の明確なる御答弁をわずらわしたいのであります。  質問の第二点は、憲法改正に関する提案権の問題であります。すなわち、内閣憲法改正の提案権ありやいなやの問題であります。憲法第九十六条の規定によれば、「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、」とあり、また憲法第七十二条におきましては、「総理大臣は、内閣を代表して議案を国会提出し、」云々とあり、この二条文をめぐり、国会のみに憲法改正の発議権ありとするもの、同時に内閣にも提案権ありとするもの、学説はまことに区々であります。本法律案によりますれば、調査会はこれを内閣に設置することに相なっております。このことは、内閣憲法改正の提案権ありとの見地に立つものと思われまするのみならず、首相もまた、本期国会において、内閣に提案権ありと言明せられておるのであります。果してしかりとするならば、この機会にその法律的根拠を明らかにしていただきたいのであります。同時に、内閣の提案権と国会の発議権との関係であります。もとより、国会の持つ憲法改正の発議権は明文の示すところでありまするが、首相の主張せらるる内閣の提案権が、国会発議の参考資料を提供するにとどまるか、あるいは国会の発議を促す作用をなすものか、両者の関係をこの際明らかにすることはきわめて重要なりと信ずるものであります。この点に関する首相の明確なる御所見を伺っておきたいのであります。第三の質問は、憲法改正国民世論喚起の方策であります。申すまでもなく、憲法は国の基本法であり、これが改正は真にやむを得ざる場合であって、しかも、これが改正によってその基本原理がさらによりよく実現せられ、国家の繁栄と国民福祉の向上とに寄与する場合に限るべきは当然であります。これが取扱いは慎重の上にも慎重を期すべきであります。従って、かりに本法律案が両院を通過し、内閣調査会が設置せらるる場合におきましても、これが成案を得ることは容易でなく、かつ相当の時日を要するものと考えぬばなりません。しかるに、一面、革新陣営を中心として、憲法改正反対の平和憲法擁護運動は、現実に全国に展開されつつあるのであります。この現状に対し、政府はいかに対処せんとするのでありますか、この点を伺いたいのであります。平和憲法擁護運動なるものが、憲法改正論をみだりに歪曲し、憲法第九条の改正が、国力の許す範囲内において自衛のための軍備を認めんとするを、しいて侵略戦争の企図と徴兵制度の復活なりと独断し、あるいは青年層を——し、(「何を言うか」と呼び、その他発言する者多し)あるいは婦人層に宣伝しつつあることは、首相もすでに御承知の通りであります。かかる運動が将来の憲法改正にいかに重大なる支障を来たすかは火を見るよりも明らかなりと申さねばなりません。  かつて、昭和二十一年六月の、現行憲法制定の審議会において防衛の戦争は正しい戦争と言って差しつかえない、戦争一般の放棄という形でなく、侵略戦争の放棄とすることが適確であると、軍備の必要を主張したのは、実に当時の共産党の指導者野坂參三君であります。また、昨年発表せられました社会党左派の綱領には、恒久政権論と同時に、社会主義の原則に従って憲法改正し、基本的な産業の国有化または公有化を確立し、行政、司法の諸機関や教育、新聞、出版、放送などの諸機構を社会主義の方向に適応させるということがはっきり打ち出されたのでありまして、憲法改正の必要が強く主張せられておるのであります。あるいは軍備の必要を主張し、あるいは憲法改正を強調するこれら一連の人々等によって指導せらるる憲法改正反対運動が、平和憲法擁護なる美名のもと、いたずらに国民に混迷を与えつつあることは、きわめて明瞭な事実であります。(拍手)また、かかる運動が大衆を欺瞞せんとする見えすいた戦術なりとの批判は、まさに当れりと申さねばなりません。政府は、この種運動に対し、いかに認識し、いかなる対策を講ぜんとせらるるのでありますか、伺いたいのであります。私どもは、政府がこの際すみやかに憲法改正に関する基本的構想国民に明示し、断固世論の喚起に努むるの要ありと信ずるのでありまするが、政府にその具体的方策あらば、お示しを願いたいのであります。  以上は、ただいま議題に相なっておまする憲法調査会法案に関し、重要なる疑点の二、三につき、鳩山首相に対し質問をいたしたのでございまするが、事はまことに重大であります。私どもといえども首相が御不自由なからだを挺して今日まで国政掌理に努力を払われました御心情に対しましては、敬意を表するに決してやぶさかなるものではございません。しかしながら、現内閣は、組閣以来、あるいは外交に、あるいは内政に、常に閣内の統一を欠き、現行憲法の指向する議院内閣制の真価を発揮することができず、国策の遂行に渋滞を来たしつつあることは、何人も否定しがたきところであります。憲法改正のごとき国家将来の重大問題を託するには、遺憾ながら、あまりにも少数かつ弱体内閣と申さねばなりません。(拍手)私は率直に申し上げたいと存じます。憲法改正こそは、結集せられたる保守勢力はもとより、広く国民大多数の強力なる支持なくしては、とうてい具現し得ざる基本的国策なりと確信をいたします。今回憲法問題を公式に取り上げられまする以上、鳩山首相におかれましては、これが具現のためにはあらゆる角度より慎重かつ深甚なる御考慮を払われ、国家将来のため最善の方途を講ずるの御決意あることを切に望み、かつ深く信ずるものであります。この点に関し、重ねて首相の確固たる御信念を伺い、私の質疑を終ります。(拍手
  23. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) ただいまの山崎君の発言中、もし不穏当な言辞があれば、速記録を調査の上、適当の措置をとることといたします。     〔国務大臣鳩山一郎登壇
  24. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 山崎君の御質疑に対してお答えをいたします。  第一に、改正の構想について御質問がありました。清瀬君の説明にもありました通りに、制定の経緯、施行後の状況等によりまして、全面的に改正をした方がいいという構想は持っております。  それから、九条について批判的のお話がございましたが、九条も、とにかく問題の、誤解を生じやすい条項でありまするから、これを改正する必要があると私は考えております。その他、基本的人権につき、あるいは国会制度につき、あるいは衆議院の解散権につき、最高裁判所の性格につき、内閣制度等につき、いろいろ考えねばならぬものがあると思いますので、全面的に検討した方がいいと思っております。それから、内閣に設置した理由をお聞きになりましたが、これは便宜だと思ったからであります。  それから、憲法改正の提案権について御質疑がありましたが、国民に発議をするのには政府に提案権はないことは、もとより明瞭であります。しかしながら、国会意思の決定をする議案につきましては、理論的に内閣にも提案権があると考えております。  次に、改正運動に対する方法について御質問がありました。憲法改正反対運動もありますが、自主憲法期成同盟というものも最近できておるのであります。改正運動もまた起っておりますから、結局落ちつくところには落ちつくものと私は考えております。(拍手
  25. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 飛鳥田一雄君。     〔飛鳥田一雄君登壇
  26. 飛鳥田一雄

    ○飛鳥田一雄君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま提案せられました憲法調査会法案、すなわち覆面の憲法改悪について提案者並びに内閣に対し、いざさか質問を試みんとするものであります。(拍手)  去る二月に行われました総選挙は、まさに平和憲法を守るかいなかの審判でありました。(拍手)この選挙において、憲法改正への誘惑はいろいろの形で行われたのであります。しかるに、国民の答えは、明らかに改正運動の否定でありました。(拍手)すなわち、わが党を初め平和憲法擁護を主張する党派が三分の一以上の議席を占めたことがその証左であります。(拍手国民は、今日の憲法改正論議が、明らかに再軍備を指向するものであり、人間性を否定し、国民の基本的権利や自由をじゅうりんせんとする体制を再び作り上げんとするものであることを、今日までの経験によって見抜いたのでありました。(拍手)それがすなわち選挙の結果に現われたものであります。鳩山首相は、常に民主政治を正しく運用すると申しておられますが、単なる推測や解釈だけではなしに、総選挙という厳然たる事実に現われたこの国民意思をいかに考えられるのか。さらに、国民のかかる審判に反してまで、かくも急速に改正の第一歩に入らなければならないほどの弊害が、具体的に憲法のいかなる部分、いかなる条文に発生しているものであるか。もし発生しつつあるとするならば、むしろその点を明白に改正することを公約して、さらに国会を解散し、総選挙に圧倒的な勝利を占められた後に初めて改正手続に入らるべきである。(拍手)総理及び提案者は、この点についていかにお考えになっておられるか、伺いたいのであります。  さらに、第二に、本法案の提案者と賛成者を拝見いたしますと、それは議席の三分の一にも満たない民主党の人々にしかすぎないのであります。しかも、自画党の諸君がこれに加わっていないということは、真に重大であります。新聞等で拝見いたしますと、初め民主党は本法案政府提出とすることに決し、自由党の賛同を得られた。ところが、幾ばくもなく議員提出とすることに改め、そうして今度は自由党の賛成を得られなくなった。この間三転し四転し、社会はその君子豹変ぶりにあきれ返っておるのであります。(拍手)およそ、憲法改正は、軽々しく行わるべきものではありません。憲法の第九十九条によって、国務大臣国会議員は、この憲法を守って、軽挙盲動せざる義務があります。この覆面の改正手続が、改正することを必要とするかどうか調べるのにすぎないとかりに言われても、その本質が憲法改正の第一歩である以上、かくのごとき少数の提案者、そして、かくのごとき自信なき動揺せる態度によって行われるということは、そもそも憲法の根本精神にもとるものではないか、同時に、また、自由党が共同提案に賛成されなかった経緯、保守合同の具に供されたのではないか、こういう点を提案者並びに総理大臣にお伺いいたしたいのであります。  第三にお伺いいたしたいことは、この調査会による改正案が独立日本にふさわしい自主的なものになり得る可能性があるかどうか、お伺いいたしたいのであります。改正論者の諸君は、独立国になったのだから日本人自身の手で作り直さなければならない、こういう点にその主たる理由を求めておられるようであります。なかんずく、提案者の清瀬先生は、憲法記念日を国辱の日とすると言っておられるように承わっております。なるほど、現行憲法の文案はGHQで作られたことに相違はありません。しかし、その内容国民意思に反しておるかどうか、国辱的なものであるかどうかということとは別の問題であります。敗戦によって初めて過去の軍国主義政治のあやまちを認め、真の国家のあり方を知った国民は、新憲法を喜び、これを希望したのであります。しかるに、今日、明らかに憲法に違反し、国民の希望をじゅうりんしておるのは自衛隊であります。その自衛隊の増強こそが改正を迫る第一の要因であることは否定し得ないところであります。(拍手)  警察予備隊が、朝鮮戦争の直後、実にマッカーサー指令によって出現し、続いて、吉田内閣は、安保条約、行政協定、MSA協定によって、アメリカに対し防衛力漸増の責任を負いました。軍事的義務の履行を迫られて、自衛隊という、だれの目にも憲法と同居することができない軍隊を作らざるを得なくなったのであります。今アメリカ要請を除外して自衛隊の成立を論じ得ざることは明らかであります。一昨年米国のニクソン副大統領が来たときに、日本戦争放棄の憲法を作らせたのは米国の失敗だと言明いたしましたことも、この間のいきさつを物語って余りありましょう。(拍手)さらに、鳩山内閣成立以後に至りましては、防衛分担金交渉によって財政面、予算面にまで干渉せられ、軍隊の増強を強制せられているありさまであります。憲法改正せざるを得ない羽目に陥れたのは、たれあろう、朝鮮戦争以後のアメリカの政策そのものであります。(拍手)それまでは、アメリカ意思をそんたくしかねて、陰でこそこそやっておりました改正論が、ニクソン副大統領の御裁可をいただいて急に公然化して参りましたのなどは、むしろ、その小心さにほほえまざるを得ないのであります。(拍手)すなわち、改正論は、日本国民の自主的な意思に基いたものではなく、アメリカ意思に奉仕しようとする人々や、昔日の夢を追うごく一部の人々の意思に発するにすぎないのであります。(拍手)  こうした環境の中で憲法調査会が設置されるとするならば、アメリカヘの従属をますます深めるための憲法になってしまうことは、火を見るより明らかであると言わなければなりません。(拍手)こうした現実、この現実を捨象いたしまして、いかに美しいことを考えましたところで、それは、しょせん、一個の空想にしかすぎません。鳩山総理は、このような背景のもとに提案されるところの憲法調査会並びにその結果でき上る憲法が、真に日本独立と平和を守る自主的な憲法であると、自信を持って国民の前で言い得るかどうか。むしろ、ほんとうに独立国の憲法たらんとするならば、安保条約、行政協定並びにMSA協定の廃棄こそがその第一段階ではないか。(拍手)一方において、余剰農産物の受け入れ等、日本の政治と経済をがんじがらめにしておきながら、他方において憲法の自主性をはかるというような矛盾した立場から脱却するための努力こそふ、まず第一に自主憲法制定の第一歩ではないか。(拍手首相は、かつて自由党憲法調査会の発足に当って、冷却しつつあるアメリカとの関係を再び旧に復するため至急成案を得るようにとの発言をせられておるのでありますが、むしろ、現在の段階においては、現行憲法を擁護していくことこそ完全独立への第一歩であるとはお考えにならないか。(拍手首相及び提案者にお伺いをいたしたいのであります。  さらに、第四点といたしましては、首相及び外相は、今いかなる努力が国際社会の中で払われつつあるか御承知かどうか、こういうことであります。国際情勢は、今日、全く戦争とは反対の方向に動いております。国際的世論に押されて、水と油の関係にある米ソは、英仏を含めた巨頭会談によって原子戦争の惨害を未然に防ごうといたしておりまするし、軍備縮小の問題、原子力の平和利用の問題が会議日程に上り、国連は不戦の宣言をいたしました。また、対米従属によって深められた日本の政治と経済的危機を救うために、日ソ国交回復、日中通商の拡大、インドを初め東南アジア諸国との友好関係の樹立が急がれておるわけであります。この時に当って本法案提出せられるならば、いかに調査会について弁明これ努められようとも、諸外国は、今の日本が置かれている従属的な地位、そして国内で行われている再軍備的な憲法改正論議と、これを分離してそれを理解するはずはありません。このことによって日本の軍国主義化が進むと考えるであろうアジア諸国、特に中ソと、首相及び外相はいかに国交を回復せられていこうとするのか、お伺いいたしたいのであります。  さらに、第五点といたしましては、いわゆる憲法改正についての内閣の提案権であります。もちろん、私たちは、この単なる調査機関の設置法にすぎない本法案の中で、この重大なる憲法解釈の問題を一挙に解決してしまうような規定を置け、こう言うのではありません。だが、しかし、この問題はやはり今後の調査機関の運用に重大なる影響を与えるものであり、なかんずく、鳩山総理は、しばしば、委員会において、あたかも内閣に提案権ありとせられるごとき発言をせられているのであります。  そもそも、憲法第九十六条は、憲法改正が、国会の発議、すなわち国民に対する国会の提案と、それに対する国民の承認とによって行われるものであることを規定し、単にそれは国会の可決だけで実質上完成するいわゆる通常の立法作用でないことを示しております。しかも、その国会の発議たるや、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で国会みずからが行わなければならないとせられております。このことは、発議の全過程において国会意思が十分に表明せちれることを憲法要求し、事を慎重の上にも慎重に行うべきものといたしておることを示しております。もし国会意思が十二分に表明せられることを要求されるとするならば、それは立法作用の全過程にわたるべきものとすることも、これまた当然でありましょう。  言うまでもな、立法作用は原案の起草及び提案に始まります。立法作用は、決して、他の国家機関の起草し提出したものを討議し、修正し、議決するだけのものではありません。原案にいかなるものが現われるかということは、むしろ全体の方向を決定することすらあります。従って、憲法国会の発議と規定いたしまする限り、この重要な原案の起草、提案についても国会自身が行うべきことを要求していると考うべきことは当然であります。(拍手)もちろん、内閣国会の信任によって存在しているものでありますが、しかし、その半数は国会議員でない者を含み得るものであり、しかも、特定政党の性格によって貫かれている行政機関にしかすぎません。従って、それは、国会が立法機関であるとされているのとは全く異なった憲法上の地位を持つものであり、この性格の異なる両機関に、すなわち国会内閣に同時並列的に提案権ありといたしますがごときは、明らかに法的無知に基くものであります。(拍手)特定政党の内閣改正案の起草に指導権を持つがごとき提案権ありといたしますのは、憲法の精神をじゅうりんするのはなはだしいものがあるとしなければなりません。この点、首相及び提案者はいかに考えておられますか、お伺いをいたしたいのであります。  最後に、時間もあまりありませんので、二、三、個条的にお伺いをいたしますが、その第一は、憲法改正の限界についてであります。すなわち、憲法は、その前文において平和主義民主主義基本的人権の擁護を国家の名誉にかけて全力をあげて達成することを誓っておるのでありまして、この基本的原理はいかなる改正によっても破壊し得ないものであるはずであります。(拍手)しかるに、近時行われまする改正論議は、ややともすれば、自主独立を口実といたしまして、基本的人権をそこない、軍国主義的傾向を有するのでありまして、右の基本的原理を逸脱せんとする勢いにあります。この点、提案者及び首相の御意見を承わりたいのであります。  第二に、憲法改正の時期であります。吉田前内閣は、この憲法改正の時期について、はなはだ抽象的ではありますが、米軍の完全撤退の時期、あるいは現行志願兵制度が兵力の増大により限界に達したる時期と、各委員会において述べられておるのでありますが、鳩山内閣考えるところもまた同様であるかどうか、お伺いをいたしたいのであります。  また、昭和二十八年十一月下旬にホワイト・ハウスに送られたニクソン副大統領の日本報告には、再軍備及び憲法改正へのきわめて楽観的な結論が述べられており、その結果として米当局側は、日本は一九五四年が憲法改正準備の年、一九五五年が改正実現の年と考えているとの報道がありますが、果してしかりやいなや、お伺いをいたしたいのであります。  最後に、本法案を通覧いたしますと、本調査会内閣に置かれること、その委員専門委員及び幹事がすべて首相の単独に任命するところとなっていることに注目せざるを得ません。一体、これによって、言うがごとく中正公平なるべき調査会首相の恣意によって左右せらるべきおそれなきや。また、本調査会が、その所掌事務よりして単なる内閣の諮問機関でないにもかかわらず、首相権限かくのごとく強大なるは一体いかなる意味なのか。また、本調査会国会に置かず内閣に置くとするのは、いかなる理由によるものなりや。すなわち、内閣は一時にして国会は悠久なるもの、調査会がそのときどきの政党内閣によって左右せらるるは、はなはだ危険であります。首相調査会を通じて国会へ影響を与えようとするものなのかどうか、この点をお伺いいたしたいのでございます。  以上、数点をあげて御質問を申し上げましたが、日本国民が今何を求めつつあるか、何を願いつつあるかということを十分御考慮の上に、正しいお答えを賜わりますようお願いをいたしまして、質問を終る次第であります。(拍手)     〔清瀬一郎登壇
  27. 清瀬一郎

    清瀬一郎君 ただいま飛鳥田さんからたくさんの御質問をこうむりましたが、できるだけ詳しくお答えいたしたいと存じます。  一番初めは、本年の二月の選挙の結果、革新勢力が国会の三分の一を得た、かかる際に憲法改正はできょうか、こういうのであります。本年二月の選挙は、憲法改正を中心の問題としてやった選挙ではないのです。ほんとうに憲法改正を中心とした選挙であるならば、今回試みたように、理想的の、自主的の憲法案を一つ作って、それと━━━━━━━━とどちらがいいかという選挙をしなければならぬのです。(拍手)私ども考えは、この調査会でりっぱな憲法案ができましたら、国会を解散して、自主的、新たなる憲法と━━━━━━━━とどちらがいいかという選挙をやってみようと思っております。     〔発言する者多く、議場騒然〕
  28. 清瀬一郎

    清瀬一郎君(続) 訂正いたします。——訂正いたします。——訂正いたします。——ただいまの━━━━━━━━という言葉を取り消します——いさぎよく取り消しました。(発言する者多く、議場騒然)今の言葉は取り消しました。━━━━━━━━というのは取り消しました。  その次のお問いは……。(発言する者多く、議場騒然)先刻の言葉は取り消しました。
  29. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) ただいまの発言について、清瀬君から自発的に取り消しする旨の発言がありました。(発言する者多く、議場騒然)静粛に。——重ねて申し上げます。ただいまの発言については、清瀬君から自発的に取り消すとの発言がありました。
  30. 清瀬一郎

    清瀬一郎君(続) その次の、第二のお問いは、今の憲法改正を試みるの必要があるかどうかということでございます。(発言する者多し)その後、憲法を施行しました結果……。(「答弁続行」と呼び、その他発言する者多し)飛鳥田君の第二の点は、その後、憲法実施の結果、わが国憲法改正をする必要があるかいなかの問いでございます。過去数年の間、わが国憲法を実施いたしました結果、第一に、わが国においては自衛権があるかないかの疑いを生じました。(拍手)またさらに、内閣には国会を解散する権利があるかいなかの疑いさえ生じておるのであります。(拍手)かような疑いが生じた以上は、憲法改正をなすのは当然でございます。(拍手)私は、この際……(発言する者多く、聴取不能)憲法改正を切望するものであります。(拍手)  今日の国際情勢を見まするというと、(「議長々々」と呼び、その他発言する者多し)一時のあるときよりも、幾らか国際緊張は緩和いたしております。しかしながら、いまだ独立国として全く自衛の兵備を撤退していいという時代には到達いたしておりません。(拍手)  内閣の提案権について御質問がありましたが、このことについては、すでに鳩山総理より山崎君に対してお答えになった通りであると私は考えております。(拍手)  憲法改正の限界につきましては、私は、国民主権をもって憲法改正するならば、国民主権は否定はできません。国民主権を否定せらるる前提において、いかなる条項によってこれを改正し得るかと私は考えております。しかしながら、われわれは、基本人権を否定したり軍国主義に返ろうという考えは少しも持っておるものではございません。(拍手)  憲法改正の提案の時期につき、外国の人がどういうことを言ったかは知りませんが、私は、ただいまわが国憲法改正に着手するに適当なる時期に到達しておると思います。(拍手)  この調査会委員総理大臣が選ぶということよりして、この調査会が不公平なるものになるとは考えておりません。憲法調査会の議事は、政府より独立して、公平に自発的に審議されるように考えて、この案を立てているのでございます。(拍手)  御清聴を感謝いたします。(拍手
  31. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 暫時このままお待ちを願います。  鈴木茂三郎君から即時休憩すべしとの動議提出されました。この採決は記名投票をもって行います。鈴木君提出動議に賛成の諸君は白票、反対の諸君は青票を持参せられんことを望みます。閉鎖。氏名点呼を命じます。     〔参事氏名を点呼〕     〔各員投票〕
  32. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 投票漏れはありませんか。——投票漏れなしと認めます。投票箱閉鎖。開匣。開鎖。  投票を計算いたさせます。     〔参事投票を計算〕
  33. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 投票の結果を事務総長より報告いたさせます。     〔事務総長朗読〕 投票総数 二百四十六  可とする者(白票)   九十四     〔拍手〕  否とする者(青票)  百五十二     〔拍手
  34. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 右の結果、鈴木君提出動議は否決されました。(拍手) 鈴木茂三郎君提出即時休憩の動議を可とする議員の氏名   阿部 五郎君  青野 武一君   赤路 友藏君 茜ケ久保重光君   足鹿  覺君  飛鳥田一雄君   有馬 輝武君  井岡 大治君   井谷 正吉君  井手 以誠君   伊藤 好道君  石田 宥全君   石村 英雄君  石山 權作君   加賀田 進君  片島  港君   勝間田清一君  川村 継義君   河野  正君  北山 愛郎君   久保田鶴松君  小松  幹君   佐藤觀次郎君  下川儀太郎君   下平 正一君  鈴木茂三郎君   田中 武夫君  田中 稔男君   高津 正道君  楯 兼次郎君   辻原 弘市君  中村 英男君   成田 知巳君  西村 力弥君   野原  覺君  原   彪君   古屋 貞雄君  帆足  計君   穗積 七郎君  細迫 兼光君   正木  清君  松原喜之次君   三鍋 義三君  武藤運十郎君   森 三樹二君  森島 守人君   森本  靖君  八百板 正君   八木 一男君  八木  昇君   安平 鹿一君  柳田 秀一君   山時 始男君  山田 長司君   山花 秀雄君  山本 幸一君   横錢 重吉君  横山 利秋君   和田 博雄君  渡辺 惣蔵君   井上 良二君  井堀 繁雄君   池田 禎治君  稲富 稜人君   今村  等君  大西 正道君   春日 一幸君  川島 金次君   小牧 次生君  佐竹 新市君   杉山元治郎君  鈴木 義男君   田中幾三郎君  田原 春次君   田万 廣文君  戸叶 里子君   中居英太郎君  中島  巖君   中村 時雄君  西村 彰一君   日野 吉夫君  平岡忠次郎君   平田 ヒデ君  細田 綱吉君   前田榮之助君  松岡 駒吉君   松平 忠久君  門司  亮君   矢尾喜三郎君  山口シヅエ君   山下 榮二君  吉田 賢一君   久保田 豊君  小林 信一君  否とする議員の氏名   赤城 宗徳君  赤澤 正道君   秋田 大助君  有田 喜一君   有馬 英治君  安藤  覺君   五十嵐吉藏君  井出一太郎君   伊東 岩男君  伊東 隆治君   池田 清志君  石坂  繁君   今松 治郎君  宇田 耕一君   植原悦二郎君  植村 武一君   臼井 莊一君  小笠 公韶君   大石 武一君  大倉 三郎君   大村 清一君  大森 玉木君   岡崎 英城君  加藤 高藏君   上林山榮吉君  亀山 孝一君   唐澤 俊樹君  川崎末五郎君   川崎 秀二君  川島正次郎君   菊池 義郎君  岸  信介君   北 れい吉君  清瀬 一郎君   楠美 省吾君  小泉 純也君   河野 一郎君  高村 坂彦君   纐纈 彌三君  櫻内 義雄君   笹本 一雄君  椎熊 三郎君   椎名悦三郎君  椎名  隆君   重政 誠之君  重光  葵君   島村 一郎君  首藤 新八君   白浜 仁吉君  須磨彌吉郎君   杉浦 武雄君  鈴木周次郎君   砂田 重政君  田中 久雄君   高岡 大輔君  高橋 禎一君   竹内 俊吉君  辻  政信君   渡海元三郎君  床次 徳二君   中嶋 太郎君  中曽根康弘君   中村 梅吉君  中村三之丞君   中村 寅太君  中山 榮一君   永田 亮一君  長井  源君   楢橋  渡君  南條 徳男君   丹羽 兵助君  根本龍太郎君   野依 秀市君  長谷川四郎君   鳩山 一郎君  濱野 清吾君   早川  崇君  林  唯義君   林   博君  平塚常次郎君   廣瀬 正雄君  藤枝 泉介君   藤本 捨助君  古井 喜實君   古島 義英君  坊  秀男君   堀内 一雄君  本名  武君   眞崎 勝次君  眞鍋 儀十君   前田房之助君  松岡 松平君   松澤 雄藏君  松永  東君   松村 譲三君  松本 瀧藏君   三浦 一雄君  三田村武夫君   宮澤 胤男君  山口 好一君   山手 滿男君  山村新治郎君   山本 正一君  横井 太郎君   亘  四郎君  相川 勝六君   逢澤  寛君  青木  正君   池田 勇人君  犬養  健君   植木庚子郎君  内田 常雄君   小澤佐重喜君  大島 秀一君   大坪 保雄君  大野 伴睦君   大平 正芳君  加藤 精三君   加藤鐐五郎君  黒金 泰美君   小林  郁君  小林かなえ君   小山 長規君  周東 英雄君   鈴木 直人君  薄田 美朝君   瀬戸山三男君  田中 正巳君   竹尾  弌君  徳安 實藏君   中垣 國男君  中山 マサ君   仲川房次郎君  永山 忠則君   灘尾 弘吉君  野田 卯一君   橋本登美三郎君 橋本 龍伍君   八田 貞義君  林  讓治君   福井 順一君  船田  中君   古川 丈吉君  前尾繁三郎君   町村 金五君  松山 義雄君   村上  勇君 山口喜久一郎君   山崎  巖君  山中 貞則君   吉田 重延君  小山  亮君     —————————————
  35. 益谷秀次

  36. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) お答えをいたします。  三分の一以上の反対があるからといって、現在の憲法調査をしないで、現行憲法を捨てて顧みないというわけには参りませんので、審査をしておるわけであります。(発言する者多し)改正の是非については、是非の審判は改正案ができた後が最も適当であると私は考えます。その他の質問については、清瀬君がすでに全部答弁しましたから、私は省略いたします。(拍手)     〔国務大臣重光葵登壇
  37. 重光葵

    国務大臣重光葵君) お答えを申し上げます。憲法調査会設置の目的は、わが国独立完成のため、民主主義及び平和主義を堅持して、占領下にできました憲法の最終検討をするということが目的のようでございます。そうでありますから、これがためには、決して日本の国際的の地位に暗影を投ずるものでもなく、また、わが東南アジア方面の諸国に対する外交に支障を来たす性質のものではないと私は考えます。(拍手
  38. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) そのまま暫時お待ちを願います。  田中幾三郎君。     〔田中幾三郎君登壇
  39. 田中幾三郎

    ○田中幾三郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま趣旨説明のございました憲法調査会法案に関し、提案者並びに総理大臣外務大臣防衛庁長官に対し質問をせんとするものでございます。  ただいま、提案者の清瀬君は、日本国憲法を━━━━━━━━と称されました。それは日本国会並びにわれわれ国会議員に対する重大なる侮辱であると私は信じます。(拍手)また、━━━━━━━━のもとに日本の政治が行われておるという認識を国民に与えたことに対しては、わが国の政治の重大なる失墜であると信ずるのであります。(拍手)まず、私は、提案者の清瀬君に対し、何ゆえに日本国憲法を━━━━━━━━と称したのであるか、この点をお伺いいたしたい。  私の質問は、第一に、憲法改正の基本的な考えを中心として二、三、さらにいま一つは、憲法調査会設置の手続についてでございます。  その前に提案者にお伺いしたいことは、日本国憲法は、占領治下にあって、自由でない環境のうちに、しかも短時日のうちに制定せられたがために改正せんとするものであるということを申されました。もしそういうことを言うのであるならば、同じ自由を制限された占領治下において作られたところの法律並びに日本の政治はいかように解釈するのでありますか。(拍手)この自由のないところに日本法律と政治が多数行われてきたのでありますが、あなたは、憲法だけをなぜそういう特別扱いにして、自由でないときにできたと称せられるのでありますか。これは日本の現実の政治を否定するものであってかくのごとき考え日本の政治秩序を破壊するものであります。(拍手)この点に関しまして、あなたの御意見をお伺いしたいと思います。  御承知の通り日本国憲法は、その前文において、恒久の平和を念願し、再び戦争の悲劇が起ることのないようにすることを決意して、自由と幸福を国民の上にもたらすことを崇高なる理想と目的といたしまして、人権を尊重し、主権国民に存することを明らかにいたしておるのであります。これは日本の内外に対する平和宣言である。この前文こそは、日本の行くべき新しい道標を示したものであります。また、日本の国家的性格を明確にいたしておるのでございます。これによって日本の進むべき道標が明らかとなり、理想と目的が明らかになっておるのであります。しかも、これは人類普遍の原理である。鳩山総理大臣は、この憲法の前文をも改正せんとするかのごとき御意思であるように思われまするが、しかも、この憲法は、日本国民は国家の名誉にかけて全力をあけて崇高なる理想と目的を達成することを誓っておるのでございます。このような、日本の国家の政治的性格を明確にしたようなこの根本原理を、ここに改正せんとするのでありましょうか。  この憲法の発布せられました当時、内閣から「新憲法の解説」という小冊子が出ました。その中に、当時の吉田総理大臣は、序文を書かれまして、これは日本国民の教典であると書かれておるのでございます。この憲法日本国民のバイブルであるということを、内閣発行の「新憲法の解説」に申されておるのであります。それが、今日変じて━━━━━━━━と言い、あるいは、これはアメリカからもちったものであると言う。しかも、当時の日本国民は、双手をあげてこの平和憲法を歓迎いたしたのであります。     〔議長退席、副議長着席〕 私は、こういう意味におきまして、提案者並びに総理大臣は、この憲法の前文をも改正せんとする御意思があるのかどうかということをお伺いいたしたいと存するのであります。  さらに、憲法第九条の問題につきましては、すでに論議は尽されておりまするけれども、吉田前総理大臣は非常に正直でございました。憲法第九条の解釈は終始一貫しております。自衛のためであろうと何であろうと、目的、任務のいかんを問わす、戦力を持ってはならない、これが吉田内閣の一貫した考えでございました。よって、吉田前総理大臣は、保安隊、自衛隊という軍隊を持っておりながら、憲法に違反することをおそれて、これは軍隊ではないのだということを終始申されてきておるのであります。しかるに、鳩山総理は、この軍隊を軍隊であるかのようにお認めになりまして認めるということになりますと、憲法に違反をいたしますから、憲法第九条は自衛のためには持ってもいいのである、かように解釈をされるのでありますけれども、昨年の十二月二十一日の予算委員会におきまして、成田議員の質問に対し、私も、二年半ばかり前の時代におきましては、自衛のための軍隊も禁止せられておるという方が多数の意見だったと思うのです、ところが、日米関係の変化とか米ソ関係の変化とかいろいろの変化があって、だんだんと自衛のためならば持ってもいいという解釈になってきたのであります、かように答弁をなさっておる。しかも、これが総理大臣のお考えによれば通説であると考えておるようでございますが、これは、私は、通説ではない、多数の意見はやはり吉田総理大臣と同じ解釈であると考えるのであります。あなたは、日本の防衛をするために、軍隊を持ちたいために、憲法を融通解釈なさったのである。あなたはそう申されておる。融通解釈をしなければ日本の防衛をすることができないということを、あなたが申されておる。憲法日本基本法です。その基本法を、あなたは、自分の考えによって、融通、拡張、変化ある解釈をなされておる。果してその解釈は正しいとお思いになりましょうか。  さらに、私は、この憲法違反の問題は、あなたとここで何時間論議をしても決しない。あなたは、憲法第九条は、自衛のためには持ってもいいと言うし、学者並びに私どもは、持ってはいけないと、こう言う。一体、この違憲問題を何人が解決するのでありますか。このことによって多くの問題が論議されており、国民もまた、その帰趨に迷っておるのであります。そこで、先ほどあなたの御答弁の中にも、最高裁判所の改正ということを申されましたが、最高裁判所の機構を改革して、違憲訴訟を取り扱わせる御意志はないか。憲法第八十一条には、「最高裁判所は、一切の法律、命令、規則又は処分が憲法に適合するかしないかを決定する権限を有する終審裁判所である。」と規定されております。この最終決定権を生かして、裁判所法を改正して最高裁判所に違憲訴訟を取わ扱わせる道を開く御意思があるかないか、これをお尋ねいたします。  次に、外務大臣にお伺いをいたしますが、鳩山総理の憲法第九条の解釈の変化は、この融通解釈の変化は、ただいまも申しました通り、日米関係の変化、米ソ関係の変化があって、自衛のためには軍隊を持ってもいいというふうに変ってきたと、こう言う。私は、あなたに、米ソ関係、日米関係、国際関係の変化をただ単に聞こうとするのではありません。総理大臣憲法第九条の解釈を変化させるほどの世界情勢の変化があったかどうか、この点であります。この日ソ、日米の関係の変化によって鳩山さんは心境の変化を来たして、第九条の解釈をこういうふうに変えられた。これが原因なんです。その点を私はお尋ねいたしたいと思います。  なお、この憲法改正調査会が設立せられたということが外国応報道せられましたならば、おそらく、日本はさらに再軍備へ進むのだ、軍国主義に還元するのだという影響があるのではないかということをおそれるのでございます。日ソ、日中、韓国との関係、その他東南アジアとの関係が非常によく進もうとしておるときに、忘れもしない昔の侵略日本に返るという印象を国際間に与える影響というものは大きいのではないかと思いますが、外務大臣はいかにお考えでございましょうか。  さらに、杉原国務大臣に対してお尋ねをいたします。吉田前首相は、保安隊、自衛隊をもって軍隊ではないと申してきておったのであります。これを引き継ぎました鳩山総理大臣は、これは軍隊であるというごとき見解に立たれておるようであります。私は、いつ一体どんな条件の変化があって、吉田さんが軍隊でないと言ったものを鳩山さんは軍隊と認めるようになったのか、れは軍隊そのものの組織が変ったのであるか、鳩山さんと吉田さんの見解の相違であるか、これをお尋ねいたしたいのであります。もし内容に何ら変化がないとすれば、吉田さんの作った軍隊を鳩山総理は認知したことになる。軍隊だとして認知したことになる。その認知した軍隊が日本の国籍に入れないから、憲法第九条を改正して、そうして門戸をあけようとしておるのではないかと私は考えるのであります。杉原国務大臣に、いつ一体どんな条件の興化によって軍隊になったのであるかという点について伺いたいのであります。さらに、この憲法の第九条が改正されましたならば、日本は軍国主義に返り、大手を振って軍備拡張する時代が来るのではないかと思うのでありますが、そのおそれなきやいなや、お尋ねをいたします。  さらに、この憲法調査会の設置の手続についてお尋ねをいたしますが、憲法改正は、各議院の三分の二以上の賛成で国会がこれを発議する、これが憲法第九十六条の規定するところでございます。国会の発議が憲法改正手続におきまして重要なる過程であることは申すまでもありません。もし憲法改正をするならば、憲法検討調査、これは発議権を有する国会になければならぬと思うのであります。しかるに、憲法改正の発議権のない内閣検討調査をさせる調査会を設置せんとするのは、いかなる意図によるのでありますか。この点は、鳩山総理はすでに国会において自白をされております。の特別国会の劈頭におきまして、淺沼稻次郎氏の質問に対して、最初は、議会に設ける、国会に設けると言ったのを、内閣に置くと変ったのは、これは情勢の変化でいたし方ないのです、あなた方の議席が三分の一以上をとられて、これではなかなか議会に設けたのでは憲法改正の案はできないだろう、そういう危険を感じたのであります、憲法改正の案を得るのには、どうしても民間からもよけいに委員をとらなければならないし、案を作らなくてはならぬから、反対が多くては案ができないと思います。それで変えたのであります、議会が通るまでには、情勢の変化がまたあるだろうと思っております、それを楽しみにしておるわけであります、かようにあなたは申されておる。今日の国会におきましては、三分の一以上を反対党に占められましたから、あなたは楽しんでこの三分の一以上の数をくずすということを意図しておるのではないかと存ずるのであります。  そこで、この調査会というものは、国会においてはすでに反対されるということが明らかでありますから、この調査会憲法改正の基地たらしめんとする深謀遠慮に基く作戦であると私は考える。また、提案者は、総理と相呼応して、この内閣を本拠といたしまして、覆面して国会の発議権の発動をねらうのが本調査会の正体であると私は思うのでございます。(拍手)これは、明らかに政治の常道を踏みはずし、邪道を歩まんとするものである。憲法改  正の表街道を避けて裏街道を行かんとするのが、この憲法調査会法案であります。あなたの目まぐるしい変節改論、自由むげの法律解釈、御都合主義のやり方は、吉田さんの横暴専制以上の危険思想であると私は考えるのであります。(拍手)提案者はこれを撤回する御意思はありませんかどうか、総理はかかる調査会の設置を認めるつもりでございますかどうか、お尋ねをいたす次第でございます。  また、憲法調査会法案は、われわれは早くから国会提出されるということを承わっておったのでございますが、この特別国会も終りに近づこうとしたときに出されたのでありますが、一体この法案提出のおくれた理由は那辺にありますか。また、この法案内閣提出にせずして民主党の単独提案にしたという理由はどこにありましょうか。また、民主、自由両党の共同提案にしないで、民主党の単独提案にしたというそのいきさつは、国民の疑惑のうちにこれをながめておるのでございます。この理由を御説明ありたいと存ずるのであります。  さらに、この法案を見ますると、調査会所掌事務といたしまして、憲法検討を加え関係諸問題を調査審議するとあるのでありますが、一体関係諸問題というのはいかなる問題をさすのでありましょうか。憲法検討を加え、さらに関係諸問題まで検討審議するというこの条項は、何らか具体的にお考えになっておる点があるのでございましょうか。この点を提案者にお伺いいたしたいと存ずるのであります。  今までの答弁を聞いておりますと、論弁にあらざれば言いのがれであります。かかるふまじめなる答弁でなしに、最も理由の立つ、納得の行く、合理的なる御答弁要求いたしまして、私の質問を終ります。     〔古井喜實君登壇
  40. 古井喜實

    ○古井喜實君 提案者の一人といたしましてお答えを申し上げます。  第一に、先ほど提案者清瀬一郎氏のお使いになった言葉が不穏当であったという点についてお尋ねがございました。この点につきましては、すでに御自身お取り消しになっておることでございますから、これによって御了承を願いたいと存じます。  第二番目は、現行憲法占領治下において短時日の間に作られたものであるから改正しなければならぬというのであるならば、一般の法令でもそうではないか、政治の秩序が破壊されるのではないかという意味の御質問でございました。現行憲法ができます際に、短時日の間にこの案が進められたことは、おおえない事実でございます。国の基本法であります以上は、特に憲法については慎重入念な審議検討が要るはずであったと思います。この点について、今回の調査会を発足するに当って考慮されたことも事実でありましょう。この点は、先ほど提案者清瀬一郎氏が提案理由においてお述べになったところによって御承知を願いたいと思います。  第三番目に、この法案を撤回する意思なきかどうかということでございました。必要ありと信じて提案いたしたものでありまして、撤回する意思は毛頭ございません。(拍手)  次に、民主党単独提案にしたわけを話せということでございました。政府提案にするか、民主党、自由党の共同提案にするか、ないしは民主党単独提案にするか、そのいずれをとることも可能であると思います。政治の情勢等を勘案して民主党単独提案と相なった次第であります。  最後に、この法案内容につきまして、日本国憲法検討を加え、関係諸問題を慎重審議するというこの関係諸問題とは何かということでございました。関係諸問題は、日本国憲法検討ということを中心にし、これに関係する問題でありますから、果して憲法改正する必要ありやいなや、ありとすればその内容はいかんということが関係問題だと考えております。  以上によって御答弁とさせていただきます。(拍手)     〔国務大臣鳩山一郎登壇
  41. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 田中さんの御質疑に対して答弁をいたします。  憲法の前文にもとるような改正憲法違反になりはしないかという御質問でありました。前文もまた憲法の一部でありますから、憲法改正と同時に改正はできるものと考えております。  第九条についてまた御質問がございましたが、第九条に対しては、たびたび申し上げますごとく、自衛のための兵力ならば、必要にして最小限度の兵力は持てるものと考えております。  第三に、違憲裁判所についての御質問でありましたが、違憲裁判所は、最高裁判所をいわゆる憲法裁判所にいたしますのには、裁判所法の改正だけではできないと思います。憲法改正をしなければ、最高裁判所をもって違憲裁判所とすることはできないと思います。  それから、内閣調査会を置くことは憲法違反ではないかというような御質問がありましたが、先刻も申しますごとくに、国民憲法改正を発議するのは国会でなければできませんが、国会意思決定をする議案については内閣が提案権を持っていると思いますので、提案権を持っている内閣憲法改正についての国会意思を問うのでありますから、これは内閣に提案権がある、憲法違反にならないと思います。  大体においてこれで答弁したつもりであります。(拍手)     〔国務大臣重光葵登壇
  42. 重光葵

    国務大臣重光葵君) お答えいたします。  憲法第九条に関連してのお話でございました。今日自衛のための軍隊を必要とする国際関係であると総理大臣が判断されたことは、私は、正しい判断である、こう考えております。  次に、占領下にできました憲法を自主的に再検討するための調査会を作るということによって、わが対外関係、特に東南アジア諸国に対する関係に悪影響があるというふうに言うことはできないと私は思うのであります。  これをもって御答弁を申し上げます。(拍手)     〔国務大臣杉原荒太登壇
  43. 杉原荒太

    国務大臣杉原荒太君) お答え申し上げます。  総理がいわゆる軍隊という言葉を使われたのは、いつから、どういうわけか、こういう御質問が第一点にございました。御承知の通り、昨年の七月一日から実施されました自衛隊法によって、自衛隊は、その主要なる任務として、直接侵略に対処する任務をも加えられたのでありますが、普通にこの直接侵略にもし対処する実力部隊をもって軍隊と言うならば、それならば、言葉の用語としては、その意味においてなら軍隊と言っても差しつかえなかろう、こういう意味において使われたものであろうと存じます。  それから、第二に、自衛範囲を越えました再軍備のために憲法改正するとか、そういうことは考えておりません。(拍手)、
  44. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) これにて質疑は終了いたしました。      ————◇—————  第一 国民健康保険法の一部を改正する法律案山下春江君外十名提出)  第二 医師国家試験予備試験受験資格特例に関する法律案大石武一君外四名提出
  45. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 日程第一、国民健康保険法の一部を改正する法律案日程第二、医師国家試験予備試験受験資格特例に関する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。社会労働委員長中村三之丞君。     〔中村三之丞君登壇
  46. 中村三之丞

    ○中村三之丞君 ただいま議題となりました国民健康保険法の一部を改正する法律案及び医師国家試験予備試験受験資格特例に関する法律案につきまして、社会労働委員会における審査の経過並びに結果を御報告申し上げます。まず、国民健康保険法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本改正案のおもなる点は、療養の給付、保健婦並びに事務の執行に要する費用に対して交付する国庫の補助金を国の義務支出といたし、その補助率は、療養給付に要する費用に対する補助については毎年その総額の二割を下るを得ないこととし、保健婦に要する費用に対してはその三分の一、事務の執行に要する費用に対してはその全額である旨を法律に明文化いたしたことでありまして、その他貸付金等に関し若干の規定を設けたものであります。  本法律案につきましては、さきに、日本民主党、自由党、両派日本社会党よりそれぞれ改正法律案提出せられ、すでに審議が行われていたのでありますが、各党打ち合せの結果、その三法案を撤回し、四党の共同提案として、あらためて去る七月一日本委員会に提出された次第でございます。  同日提案者山下春江君より提案理由説明を聴取した後、審議に入り、質疑終了後、討論を省略して採決に入りましたところ、本法律案は全会一致原案通り可決すべきものと決した次第でございます。  次に、医師国家試験予備試験受験資格特例に関する法律案について申し上げます。  正規の日本の医学校または歯科医学校を出てはいないが、外地において免許を受けて医業または歯科医業を営んでいて、終戦により引き揚げた者の救済のために定められた特例試験を受けて二度とも合格しなかった者に対しましては、それぞれ医師国家試験予備試験または歯科医師国家試験予備試験に合格し、さらに国家試験を受けて医師または歯科医師になる道が開かれているのであります。しかしながら、現在、医師国家試験予備試験及び歯科医師国家試験予備試験に合格しなかった者は、昭和二十八年三月二十三日以降ソ連、北鮮、中国等より引き揚げた者を除いては、医師国家試験予備試験については昭和二十九年十二月二十六日以降は試験を受けることができなくなり、歯科医師国家試験予備試験については本年八月二十四日以降は試験を受けることができなくなるのであります。これらの者の多くは引揚者であって、経済的にも同情すべき立場にあり、また年令的にも転業を困難とする者も少くないのでありまして、今回医師国家試験予備試験または歯科医師国家試験予備試験の実施期間を昭和三十一年十二月三十一日まで延長し、これらの人々の将来に希望を持たせようとするのが本案提出理由及び概要であります。  本法律案は各派の共同提案でありまして、六月三十日本委員会に付託せられ、同日提案者大石武一君より提案理由説明を聴取し、七月一日審査を行い、質疑を終了し、討論を省略し採決に入りましたところ、本法案は全会一致原案の通り可決すべきものと議決した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  47. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 両案を一括して採決いたします。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  48. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって両案とも委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————  第三 昭和二十七年九月三十日以前に給与事由の生じた旧財団法人私学恩給財団年金特別措置に関する法律案内閣提出教育公務員特例法第三十二条の規定の適用を受ける公立学校職員等について学校看護婦としての在職を準教育職員としての在職とみなすことに関する法律案赤城宗徳提出
  49. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、日程第三とともに、赤城宗徳提出教育公務員特例法第三十二条の規定の適用を受ける公立学校職員等について学校看護婦としての在職を準教育職員としての在職とみなすことに関する法律案を追加して、両案を一括議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  50. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  51. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。  日程第三、昭和二十七年八月三十日以前に給与事由の生じた旧財団法人私学恩給財団年金特別措置に関する法律案教育公務員特例法第三十二条の規定の適用を受ける公立学校職員等について学校看護婦としての在職を準教育職員としての在職とみなすことに関する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長の報告を求めます。文教委員長佐藤觀次郎君。     〔佐藤觀次郎君登壇
  52. 佐藤觀次郎

    ○佐藤觀次郎君 ただいま上程になりました昭和二十七年九月三十日以前に給与事由の生じた旧財団法人私学恩給財団年金特別措置に関する法律案及び教育公務員特例法第三十二条の規定の適用を受ける公立学校職員等について学校看護婦としての在職を準教育職員としての在職とみなすごとに関する法律案につきまして、文教委員会における審議の過程及びその結果を御報告申し上げます。  まず、昭和二十七年九月三十日以前に給与事由の生じた旧財団法人私学恩給財団年金特別措置に関する法律案について、その内容を簡単に御説明申し上げますと、第一は、私立学校教職員共済組合法により昭和二十九年一月一日に設立された私立学校教職員共済組合が支給義務を負う旧跡団法人私学恩給財団の年金のうち、昭和二十七年九月三十日以前に給与事由の生じたものについて、昭和三十年四月分以降その年金額を一般の社会保険における年金額と均衡を失しないよう二倍半に増額することに規定しようとしております。第二は、国家公務員共済組合法に基く共済組合の年金の若年停止の制度にならい、年令満五十才に達するまではその増額分について支給を停止することに規定しようとしております。第三は、この年金額の改定により増加する費用は私立学校教職員共済組合が負担するものとし、その財源については私立学校振興会がこれを助成するものとし、その助成の方法等については文部大臣が定めることに規定しようとしております。  本法律案は、去る五月三十日委員会に付託され、以来慎重に審議を重ねて参りました。本委員会の審議に当りましては、辻原弘市君等から熱心な質疑が行われ、一、本法第一条の規定により、施行日のいかんにかかわらず、年金受給者は本年四月一日に遡及して増額支給されるものかどうか、二、第三条により私学振興会からの助成支出分も本年四月一日以降に遡及するものか、三、本法によって改定年金額が改定前の年金額に対しその比率が二倍半になっているが、この倍率の妥当性、換言すれば他の社会制度との均衡について等、細部にわたり検討が加えられたのであります。その詳細については速記録によって御承知願いたいと思います。  次いで、七月一日質疑を終了、討論を省略して採決の結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定した次第であります。  次に、教育公務員特例法第三十二条の規定の適用を受ける公立学校職員等について学校看護婦としての在職を準教育職員としての在職とみなすことに関する法律案について、その内容を簡単に御説明申し上げますと、文部省訓令をもって学校看護婦に関する件が制定された昭和四年十月二十九日以降、国、公立の幼稚園、小学校等に学校看護婦、学校衛生婦、養護婦等として勤務した者が、国民学校令の制定に伴い、昭和十六年以降引き続いて幼稚園、小学校等に養護訓導として在職し、あるいは国民学校令の改正により昭和二十一年六月二十一日以降引き続いて養護教員として在職し、あるいは学校教育法の制定に伴い昭和二十二年四月一日以降引き続いて養護教諭として在職し、あるいは公立学校職員等臨時設置制により昭和二十三年十月七日以降引き続いて養護助教諭として在職し、公立学校の教員として昭和二十四年一月十二日以降教育公務員特例法第三十二条の規定により恩給法の準用を受けている者及び国家公務員として恩給法の適用を受けている者について、恩給法の一部を改正する法律昭和二十六年法律第八十七号)による改正前の恩給法の準教育職員としての在職とみなして、第四十二条により、恩給上の在職年に学校看護婦、学校衛生婦、養護婦としての勤続年数の二分の一を通算することに規定しようとしております。また、附則においては、本法が適用されるのは本法施行の際現に在職しておる者に限られております。しかし、国家公務員については恩給法の適用がありますので、その者がまた再び就職して本法施行後にあらためて退職または死亡したときは、本法により在職年に通算がなされるように規定しようとしております。  本法律案は、赤城宗徳提出にかかるものでありまして去る七月一日委員会に付託され、以来慎重に審議を重ねられました。本委員会の審議に当りましては、国会法第五十七条の三に従って、委員長から本案に対する内閣の意見を求めたところ、松村文部大臣は、内閣の意見として、本案に関して内閣は現在十分な調査資料を持ち合わせていないので、至急調査することにいたしたいから、御了承を請う旨の答弁があり、引き続いて永山忠則君、島上善五郎君等から非常に熱心な質疑が行われ、一、本法により適用される学校看護婦等のうち勤務当時非常勤であった者は当然除外すると考えられるがどうか、二、養護教諭の設置状況等について細部にわたって検討が加えられ、特に養護教諭の設置については急速に義務設置するよう強く要望されたのであります。その詳細については速記録によって御承知願いたいと存じます。  次いで、七月五日質疑を終了、討論を省略して採決の結果、全会一致をもって原案の通り両決すべきものと決定した次第であります。  右、御報告申し上げます。
  53. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 両案を一括して採決いたします。両案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  54. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって両案は委員長報告の通り可決いたしました。      ————◇—————  在外公館等借入金整理準備審査会法の一部を改正する法律案高岡大輔提出
  55. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、高岡大輔提出在外公館等借入金整理準備審査会法の一部を改正する法律案を議題となし、この際委員長の報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  56. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  57. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。  在外公館等借入金整理準備審査会法の一部を改正する法律案を議題といたします。委員長の報告を求めます。海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会理事臼井莊一君。     〔臼井莊一君登壇
  58. 臼井莊一

    ○臼井莊一君 ただいま議題となりました在外公館等借入金整理準備審査会の一部を改正する法律案について、海外同胞引揚及び遺家族援護に関する調査特別委員会における審議の経過及びその結果を簡単に御報告申し上げます。  まず、本案の趣旨並びに内容を簡単に申し上げますと、本案は、在外公館等借入金整理準備審査会法の第五条及び附則第二項、第三項により、昭和二十七年六月三十日以降在外公館等借入金の確認の請求の権利を失っている者等に対して、本年十二月三十一日まで借入金の確認を請求することができるように改正しようとするものであります。すなわち、在外公館等借入金は、終戦に際して、日本より外国へ送金できなかったため、朝鮮、満州、中国等の各地における在外公館及び居留民会等が、外務省の訓令に基き、邦人救済費、引揚費等に要する資金を後日返済する条件で借り入れた資金でありまして、政府は、その性質にかんがみ、国の債務として確認し、在外公館等借入金の返済の実施に関する法律に従い、現地通貨表示金額を本邦通貨に換算して返済しているものでありますが、在外公館等借入金整理準備審査会法によりますと、借入金を提供した者は、法律施行後百五十日以内に、政令に定めるところにより、証拠書類を添えて外務大臣に対し借入金の確認を請求すること、及び、この規定によって請求権を失った者については、昭和二十七年六月三十日までに請求することになっております。現在、借入金の確認請求期日以後において引揚者の税関に預けた書類の返還により未請求の借入金関係の書類が提供者の手元に返ってきたこと、及び請求漏れの書類が発見されたこと等のため、確認未請求のものが約四万件もあるのであります。これら確認請求の権利を失っている者に対し、借入金の性質にかんがみまして、さらに確認の請求ができるようにしようとするものであります。  本案は、六月二十一日に高岡大輔君より提出され、二十二日に本特別委員会に付託されましたので、二十八日委員会を開き、提出者より提案理由説明を聴取し、七月二日及び本五日、現在までにおける借入金審査の状況等について質疑を行なった後、討論を省略して直ちに採決を行なった結果、全会一致をもって原案の通り可決すべきものと決定いたしました。  以上、御報告申し上げます。
  59. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 採決いたします。本案は委員長報告の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  60. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 御異議なしと認めます。よって本案は委員長報告の通り可決いたしました。  本日はこれにて散会いたします。     午後六時三十六分散会