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1955-06-23 第22回国会 衆議院 本会議 第32号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十三日(木曜日)     —————————————  議事日程 第三十一号   昭和三十年六月二十三日     午後一時開議  一 恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案内閣提出)の趣旨説明     —————————————  第一 所得税法の一部を改正する法律案内閣提出)  第二 法人税法の一部を改正する法律案内閣提出)  第三 租税特別措置法等の一部を改正する法律案内閣提出)     ————————————— ●本日の会議に付した案件  議員請暇の件  更生保護事業審議会委員任命について国会法第三十九条但書の規定により議決を求めるの件  在外財産処理促進に関する決議案奧村又十郎君外四百三十名提出)  日程第一 所得税法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第二 法人税法の一部を改正する法律案内閣提出)  日程第三 租税特別措置法等の一部を改正する法律案内閣提出)  会計検査院法の一部を改正する法律案内閣提出)  行政機関職員定員法の一部を改正する法律案内閣提出)  出入国管理令の一部を改正する法律案内閣提出)  下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付)     午後三時五十一分開議
  2. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) お諮りいたします。議員星島二郎君から、台湾フィリピン国におけるMRA大会に出席並びに政情視察のため、六月二十二日より本会期請暇申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって許可するに決しました。      ————◇—————
  5. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) お諮りいたします。内閣から、更生保護事業審議会委員に本院議員高橋禎一君及び参議院議員宮城タマヨ君を任命するため、国会法第三十九条ただし書きの規定により議決を得たいとの申し出がありました。右申し出通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よってその通り決しました。      ————◇—————  在外財産処理促進に関する決議案   (奧村又十郎君外四百三十名提出)     (委員会審査省略要求事件
  7. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、奧村又十郎君外四百三十名提出在外財産処理促進に関する決議案は、提出者要求通り委員会審査を省略してこの際これを上程し、その審議を進められんことを望みます。
  8. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  9. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。  在外財産処理促進に関する決議案議題といたします。提出者趣旨弁明を許します。小山長規君。     〔小山長規登壇
  10. 小山長規

    小山長規君 ただいま議題となりました決議案につきまして、提案理由を御説明申し上げます。  まず、決議案の本文を朗読いたします。   在外財産処理促進に関する決議案   政府は、在外財産処理に関して、さきに在外財産問題審議会を設置し、在外財産に関する基本的問題その他これに関連する重要事項について審議処理しつつあるが、いまだその根本的解決を見るに至っていない現状である。   よつて政府は、状勢の推移に即応し、速かに在外財産問題の処理促進して、財政上及び法律上必要な措置を講ずべきである。  右決議する。  私は、日本民主党自由党両派社会党を代表して、以下、提案理由を簡単に御説明申し上げます。  第二次世界戦争によって国の内外において国民の受けました損失は、精神的にも物質的にも筆舌に尽しがたいものがありました。これらの損失は、もとより、いかなる方法をもってしても完全に償うということは不可能でありますが、損失の一部については、すでにそれぞれの方法によって補償または救済措置が講ぜられつつあるのであります。しかるに、これらの損失のうち、いまだにほとんど何ら救済の方途を講じられておりませんのは、外地または外国からの引揚者外地または外国に残したまま失った資産についての問題であります。  これらの引揚者の数はおよそ百七十万世帯に上り、その財産評価額は何兆円という巨額と推定されます。これらの諸君は、いずれも、青春にして郷国をあとに未見の新天地に渡航し、営々たる努力、粒々たる辛苦に満ちた数十年の生涯を通じてこれらの資産蓄積し、後半生の生活の基礎を作り上げたのでありますが、一朝敗戦の結果、理由なくして、これをことごとく失うに至ったのであります。  そもそも、近代戦争法規におきましては、私有財産の尊重は絶対の原則であり、敗戦のゆえをもって私人の私有財産が没収されるようなことは、とうていあるべからざる事柄でありました。しかるに、今回の敗戦に際しましては、この戦争法規原則が根本的に否定せられて、わずかに朝鮮、台湾についてのみ両国間の交渉にゆだねられておるにすぎず、一部国民のみが財産上不当に損失を甘受することとなったのであります。かかる一部国民損失国民全体で公平に負担してやるということは、鳩山総理の口癖であるところの友愛の精神から申しましても当然のことと言わなければなりません。従って、政府はすみやかにこれが救済補償措置を講じなければならぬと存ずるのであります。  なお、本件の解決をはかるためには、根本対策として、韓国政府に対しては、国際法原則に基き、日本人私有財産の公正なる処理を強く要求しなければなりません。さらに、千島、樺太等については、その領土権を強く主張し、これら引揚者財産権確保のためにも、これが返還を要求すべきであります。また、すでに日本人私有財産権を認めているところの台湾政府に対しては、これが具体的処理につき、すみやかに交渉を進められたいのであります。  本問題の処理は、戦後に残された最大の問題の一つでありまして、もとより容易のわざではありませんが、引揚者の窮状をまのあたり見るとき、じんぜん日をむなしゅうするわけに参りません。よって、政府は、在外財産問題審議会を活用し、さらに進んでは、この問題解決を使命とする特別の行政機関を設ける等、関係機関を動員して、引揚者諸君実情を十分に把握し、すみやかに適切の措置を講ずべきであります。  以上、日本民主党自由党両派社会党を代表して、政府に対し強く要請するものであります。(拍手
  11. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 採決いたします。本案を可決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって本案は可決いたしました。  この際外務大臣から発言を求められております。これを許します。外務大臣重光養君。   [国務大臣重光葵登壇
  13. 重光葵

    国務大臣重光葵君) ただいま御決議になりました在外財産処理促進に関する決議、この御趣旨は十分に尊重いたしまして、政府としては慎重に検討をいたすことにいたします。(拍手)      ————◇—————  第一 所得税法の一部を改正する法律案内閣提出)  第二 法人税法の一部を改正する法律案内閣提出)  第三 租税特別措置法等の一部を改正する法律案内閣提出
  14. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 日程第一、所得税法の一部を改正する法律案日程第二、法人税法の一部を改正する法律案日程第三、租税特別措置法等の一部を改正する法律案、右三案を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。大蔵委員会理事横路節雄君。     〔横路節雄登壇
  15. 横路節雄

    横路節雄君 ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案外二法律案につきまして、大蔵委員会における審議経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、所得税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  今回の所得税法等改正は、政府説明によれば、勤労者中小企業者等低額所得者負担軽減を中心として直接税の軽減をはかるとともに、資本蓄積促進に資する等のために所要の改正を行おうとするものでありますが、所得税法につきましては、まず第一に、基礎控除額を七万円から八万円に引き上げるとともに、青色申告者に対する専従者控除限度額基礎控除額と同様に引き上げることとしております。次に、税率につきましては、現行税率が急激に累進して負担を加重する結果となっておりますので、課税所得二百万円をこえる部分現行のままとし、おおむね百万円までの部分について緩和をはかろうというのであります。次に、給与所得控除限度額現行四万五千円となっておりますが、この額が必ずしも実情に即しないと認められますので、これを六万円に引き上げようというのであります。また、生命保険料控除につきましても、その限度額現行一万二千円から一万五千円に引き上げるとともに、短期の生存保険をこの対象から除外することとし、契約者配当金については、これを支払保険料から差し引くなど、課税適正化をはかろうというのであります。  これらの改正は本年七月一日から実施することとしておりますので、昭和三十年度分の所得税につきましては、月数按分により計算して初年度分控除及び税率を定めておりますが、給与所得に対する源泉徴収につきましては、本年七月一日以降に支給される給与から平年度計算による改正後の控除及び税率によって行うことといたしております。  以上の改正により所得税負担相当軽減されるのでありますが、たとえば、基礎控除引き上げで、夫婦及び子供三人の場合、給与平均月額一万九千円程度までは所得税負担しなくてもよいことになるのでありまして、また、この措置により、本年度所得税におきましては約二百三十億円の減収が見込まれるのであります。  次に、法人税法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本法律案については、企業資本蓄積強化に資するため、普通法人に対する税率現行の百分の四十二から百分の四十に引き下げることとするとともに、解散した法人が継続しまたは合併することとなつた場合における法人税課税関係を明確にし、また、所得税における外国税額控除法人税における配当金の益金不算入等について、その適用条件を緩和して、期限後申告の場合にもこれを認めることとし、なお、調整組合及び酒類業組合については、その性格上、収益事業による所得以外の所得に対しては法人税を課さないこととしようというのであります。  以上申し上げました措置により、法人税において約四十四億円の減収が見込まれるのであります。  最後に、租税特別措置法等の一部を改正する法律案について申し上げます。  本法律案について、おもな内容は次の諸点であります。  まず第一に、資本蓄積促進に資するため、本年七月一日から昭和三十二年三月末日までの間に支払いを受けるべき預貯金公社債等利子所得に対しては所得税を免除することとするとともに、同様に、本年七月一日から昭和三十二年三月末日までの間に支払いを受けるべき配当所得に対しても、所得税源泉徴収税率現行の一五%を一〇%に引き下げようというのであります。  次に、輸出の振興に資するため、輸出所得控除限度現行の五〇%より八〇%に引き上げることとしました。また、プラント輸出した場合には、そのプラントの範囲を拡張し、油井管及び送油管等についても特別の控除割合を適用しようというのであります。  次に、住宅建設促進に資するために、新築住宅に対して特別償却制度拡充をはかるとともに、地方公共団体等一定期間内に新築した小住宅に対する所有権取得登記についての登録税を減免しようというのであります。  次に、中小企業対策一環として、中小企業等協同組合法規定による事業協同組合等一定要件に該当するものについては、農業協同組合の場合に準じ、積立金額が出資の四分の一に達するまでは、その所得のうち留保した金額に対し法人税を課さないこととしようというのであります。  最後に、航空事業の助成のため、昭和三十年七月一日から昭和三十二年三月三十一日までの間、航空機の乗客に対する通行税税率現行の二〇%から一〇%に引き下げようというのであります。  なお、この措置により約五十三億円の減収を見込んでおります。  以上が三法律案内容でありますが、これらの法律案につきまして、五月二十七日には公聴会を開き、学識経験者等広く各層各界の意見を聴取いたし、また委員政府委員との間にも種々質疑がかわされました。特に今回の改正が真に低額所得者減税となっているかいないかという点と、利子所得免税負担の公平を破り租税全体の体系をくずすことにならないかどうかという点等について、相当質疑がなされました。  次いで、六月十一日、前尾繁三郎君外二十五名による三法律案に対する民主、自由両党共同修正案提出されました。これは過般行われました予算修正一環として提出されたものでありまして、その提案趣旨は、第一は、所得税について、主として低額所得者負担軽減均衡化並びに合理化をはかること、第二は、これら所得税との均衡上、法人低額な利益に対して税率軽減すること、第三は、預貯金利子課税の廃止との均衡上、配当所得に対する課税上の優遇措置を講ずること等であります。その内容のおもな点は、所得税法については、寡婦、不具者等控除額引き上げ法人税については、公益法人及び特別法人に対しての法人税率現行の三五%から三〇%に引き下げるとともに、普通法人については、その所得金額のうち年五十万円以下の金額に対して三五%の税率を適用しようというのであります。最後に、租税特別措置法については、納税義務者の選択により、社会保険料控除医療費控除及び雑損控除にかえて、所得金額の五%に相当する金額を一万五千円を限度として所得金額から控除することと、また、昭和三十年分及び昭和三十一年分の所得税に限り、配当控除割合現行二五%から三〇%に引き上げようというのであります。以上の修正により、初年度は六十七億円の減収を見込んでおります。  なお、質疑の詳細につきましては速記録に譲りたいと思います。  以上三法律案並びに各修正案につきましては、審議の結果、二十二日質疑を打ち切り、原案及び修正案を一括して討論に入りましたところ、日本社会党を代表して横山委員反対の旨、自由党を代表して大平委員賛成の旨、日本社会党を代表して平岡委員反対の旨、それぞれ討論せられました。  次いで、それぞれについて採決いたしましたところ、修正案及び修正部分を除く原案はいずれも起立多数をもって可決せられ、よって三法案修正議決いたしました。  以上、御報告を申し上げます。
  16. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 討論の通告があります。順次これを許します。木原津與志君。     〔木原津與志君登壇
  17. 木原津與志

    木原津與志君 ただいま議題となりました所得税法の一部を改正する法律案外二法律案並び右法案に対する修正案につきまして、日本社会党を代表して反対討論をなさんとするものであります。(拍手)  この三法律案は、鳩山内閣の五百億円減税公約に基きまして、過般の自由、民主両党の野合的な修正を含めまして、本年度約三百九十四億円余り減税をするというのであります。そのかわりに、この減税の穴埋めには、砂糖を二十万トン輸入を増加し、二級酒を二十万石増石して、そうして間接税を増徴しようというのであります。国民大衆にほんのわずかばかりの税金をまけてやつて、そのかわり砂糖や酒をたくさんなめさせ飲ませて、そうして砂糖消費税や酒税でかたきをとろうというのでありますから、まさに羊頭を掲げて狗肉を売るというのはこのことでございます。(拍手)  日本経済の実態と国民所得現状からして減税をやろうとするならば、再軍備に使われておる二千億余りの不生産的な費用を削るか、思い切つた高額所得累進課税を断行するかしなければその方法が絶対にないということを、このわずか四百億円足らずの減税からくりが如実に見本を示していると言わなければならないのでございます。(拍手)  次に、その減税内容について見まするならば、所得税におきまして低額所得者負担軽減合理化をはかったというのでありまするが、断じてさようではございません。低額所得減税よりも資本課税優遇しておるというのがこの減税法案の特質であることを指摘しなければならないのであります。(拍手)月二万円の勤労所得者、家族三人の標準世帯の場合は、わずかに一カ月百四十円の減税にしかならないのに対しまして、月五万円の給与所得者に対しましては一万円当り四百円の減税ということになっており、配当所得の場合は、五%の源泉課税率引き下げと、配当控除額を五%引き上げることによって、実に百二十二万円までは税金をかけないということになるのでございます。政府がほんとうに低額所得者のために減税をやろうとするならば、わが党がかねて主張しておりまするように、勤労所得者たると青色申告たるとを問わず、基礎控除を十万円以上に引き上げ、しかも勤労所得控除率現行一五%から二〇%以上に引き上げなければ、低額所得者負担軽減にはならないのであります。生活苦にあえいでいる全国勤労者夏季手当五千円までの免税すら拒否するに至りましては、もはや低額所得者減税を口にする資格はないと断ぜざるを得ないのであります。(拍手)  特に奇怪千万なのは、預貯金利子に対する源泉課税を向う二カ年間免除しようとしている点であります。一体、世界のどこに不労所得たる預貯金利子に対する課税を無制限に全免するという国がございますか。(拍手)すでに預貯金に対しては十万円までは無税措置がとられておるのでありまするから、預貯金に対しては十分な優遇がなされておると言わなければならないのに、さらに本法におきまして利子免税をやろうというのでありますから、資本課税にはまことに至れり尽せりと言うほかないのであります。政府は、預貯金をふやして資本蓄積をするために出た措置であつて、これによって四、五百億円の預金がふえると説明しておるのでありますが、しかしながら、預貯金をふやさんとするならば、今日生産拡大の一番の隘路である貸出金利引き下げ生産所得の増大をはかるということが先決要件でなければならないことは、当然のことであろうと思うのであります。(拍手)しかるに、政府は、これと全く逆に出ておるのであります。預貯金の増大することによって一番もうけるのは、言うまでもなく金融資本家であります。でございますから、預貯金利子免税しようというのは長年にわたる銀行関係からの熱望であったことは御承知の通りであります。過ぐる総選挙で、———金融機関団体から民主党自由党両党に莫大な政治資金が献金されたのでございましたが、(発言する者多し)政府は、その利子課税免除措置で、金融資本に——————————————————と言っても過言ではなかろうと思うのであります。(発言する者多し)このようなからくりをやられて、いりも、この国では、無産の働く低額所得階級がばかを見ておるのでございます。  次に、法人税法改正して、税率を四二%から四〇%に、農業協同組合中小企業協同組合等の時別法人税率を三〇%に引き下げるというのでありますが、これはまた負担の公平を無視した、大企業擁護減税であると言わなければなりません。(拍手)  大企業会社は、現行租税特別措置法によって手厚く免税措置が講じられてこれによる減税総額は優に五百億円をこすと計算されておるのであります。しかも、この免税措置恩典中小企業には均霑される余地がないようにちゃんとできておる。従いまして、大企業中小企業に一律二%の減税措置をするならば、この措置は大企業に対してだけ実質上一〇%以上の減説となるのであります。だから、われわれは、課税負担の公平を期するために、課税所得金額の大小によって課税率を三段階に区別し、特別法人は三〇%、所得二百万円以下を三五%、五百万円以下を三七%、五百万円をこえるものを四〇%とし、各種租税特別措置法につきましては、大資本不労所得者にばかり免税特典を与え、法人負担均衡を失するものでありますから、このうち輸出免税輸出所得控除限度引き上げ住宅特別償却拡充に対する免税措置を除いては、これを廃止せんとするものでございます。  政府は本減税措置によって平年度八十七億円以上の減税をしたいと言うのでありますが、そのうち五十七億円は、わすかに三千に足りない全国の大企業に対する大幅の減税であり、全国二十余万に上る中小企業減税恩典はわずかに三十億円にすぎないのであります。デフレと不況にあえいで倒産しておる全国中小企業の救われる道は、この減税政策のどこにも見出すことができないのであります。(拍手)  要するに、本法律案並び修正案は、低額所得者負担軽減税負担の公平という政治効果をおとりにしてそのねらうところは独占資本拡大強化をやろうとする悪質なる企図に出た立法であることを指摘いたしまして本法案並びに修正案反対するものであります。(拍手
  18. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) ただいまの木原君の発言中、もし不穏当の言辞があれば、速記録を取り調べの上、適当の措置をとるごとといたします。  大平正芳君。   [大平正芳登壇
  19. 大平正芳

    大平正芳君 私は、自由党を代表いたしまして、ただいま議題となりました所得税法改正する案件外二件に関する委員長報告に対し、賛成討論を行わんとするものであります。  政府今次の税制改正案は、自由党内閣時代税制調査会の答申の線に沿いつつ、主として低額所得者課税軽減資本蓄積に対する税制上の保護を発展せしめたものでありまして、いわば自由党内閣租税政策の大体を踏襲したものと言うことができます。  民主党内閣は、組閣以来、その施政に、自由党のやり方に対する反対テーゼを打ち出したい、あるいは少くとも若干の新味を織り込みたいという焦燥にかられて、相当の苦心を重ねられた形跡が見られるのであります。もちろん、新規を追うこと自体は、一がいにこれを非難するに当らないのでありますが、民主党内閣施政のあるものは時日の経過とともにだんだん色あせたものとなり、あるものは当初のねらいや言明から相当の後退を余儀なくされ、ようやくにして世論の批判を浴びつつある現状であります。しかるに、事税制に関する限りにおきましては、民主党内閣は、過度に新規を追い求めることなく、本筋におきまして自由党内閣の敷設した軌道を地道に歩もうとしておることに対し、私は、わが国租税政策の安定という観点から、一応これを了とするものであります。  所得税におきましては、今次の改正により各種控除引き上げ税率引き下げ等によりまして、納税人員は、平年度給与所得者におきまして約七十万人、申告納税者におきまして約十六万五千人を減少し、かつ、夫婦子三人の標準世帯におきましては、給与所得者については二十二万六千四百円、申告納税者にありましては十八万五千円まではそれぞれ無税となり、税務行政簡素化低額所得者負担軽減に資するところは僅少でないと信ずるものであります。さらに、自民両党の修正によりまして、この点は一段と前進し、納税者はさらに三十八万人減少し、給与所得者免税限度は平年度におきまして実に二十三万一千二百五十円となり、自由党公約として掲げておりました月給二万円までの無税という線がこの際ほぼ実現を見たのであります。  法人税におきましては、基本税率を二%引き下げるとともに、輸出所得控除限度の拡張を期し得たことも、わが国経済現状に照らし、おおむね了解のできる改正であると思います。  預貯金公社債等利子に対する税制上の優遇措置は、本来、インフレの段階におきまして相対的に不利な確定利付貯蓄保護し、国民貯蓄の増強を期する場合において、実効性のある政策であります。しかるに、今日わが国経済がようやく反動的デフレの様相を帯び、かつてのデフレ期によく見られましたように、近来預貯金の形態をとる蓄積現行の政策のもとにおきましても顕著な躍進を遂げていることは、統計の示すところであります。かかる段階における預貯金利子課税減免の政策的効果は、かつてのように、これを高く評価することはできないのであります。しかし、たとえば、銀行預金の残高が今なお戦前の半ばにすぎず、銀行や企業がオーバー・ローンの症状からいまだ脱却するに至らない現状におきましては、ここしばらく時限立法をもってその免税を認めることも、またやむを得ないところであると思います。  しかしながら、今回の政府原案を通観いたしまして、われわれは、その基本的構想におおむね共感を覚えつつも、なお相当修正を試みる必要を痛感し、自民両党の共同修正という形で、われわれの主張の一部を貫徹、具現することに成功をいたしたのであります。  この修正案の骨子は、所得税における選択的経費控除制度の創設、利子所得免税との権衡をはかるための配当所得優遇措置、未亡人、不具廃疾者等に対する控除額引き上げ低額法人所得に対する法人税軽減等でありまして、平年度百四十一億円の追加減税を伴うものであります。なかんずく選択的経費控除制度は、今日社会保険に加入していない、あるいは、加入していても、当然受くべき税法上の控除恩典を、人手や知識の不足、記帳の不備等によって現実に受けていない農民、中小企業者あるいは未組織の恵まれざる勤労者に対し、その所得の五%、一万五千円までを、社会保険料、医療費、災害等の場合の雑損の控除にかえて、これを認めようとする新しい制度でありまして、特に低額所得者、未組織の勤労大衆に今回の修正案がもたらす新しい福音であると確信するものであります。  もとより、現行税制は、これらの改正ないしは修正によりましても、租税本来の原則に照らし、なお多くの問題を残しておることを私は否定しようとは思いません。今日わが国の租税負担は依然として重いと言わなければなりませんし、特に税制の平常化という観点から、すでに指摘されましたように、各種の特別減税措置利子免税配当所得優遇等には異論を差しはさむべき余地が十分あり、なるべく早い機会に税制の平常化をはかりたいという念願において、われわれは決して人後に落つる者ではありません。しかしながら、申すまでもなく、現実の日本の税制は、日本経済の構造に対応するものであり、かつ、現実の財政需要充足の任務をになっておるのでありまして、抽象的租税理論がいかに首尾一貫しておりましても、かかる現実の条件から遊離せる立論であるにおきましては、それは結局空論に堕することになります。  今日の日本の経済が今なお正常な国民経済のあり方からほど遠いものでありますことは、だれ人も否定することができない事実であり、その根本の欠陥は資本の欠乏と輸出の不伸という点に象徴的に表現されていることも、一般に認められているところであります。なるほど、敗戦による混乱期から今日に至るまで、国民は、よく勤労と貯蓄に耐え、資本蓄積輸出の増強にかなりの実績を上げ、国民の生活水準もようやく戦前の水準を突破することができたのであります。しかし、かかる生活水準の向上は、決して安定した経済基盤の上にささえられ十分の弾力を保ちつつ維持されているものでないことも、いなむことができない事実であります。資本蓄積輸出の伸張とを通じまして、経済の正常化、雇用の増大、消費水準の維持向上をはかることこそ、わが国の当面せる緊切なる課題でありまして、税制もまたこの至上の要請に奉仕することが当然その使命であると、申さねばなりません。そのためには、ある程度また一定の時限を限つて本来の租税原則を犠牲に供することは当然是認さるべきものと考えるのであります。私は、かかる条件を度外視して、租税の公平原則を一がいに固執している諸君が、この点に関し一そうの理解と熱意を深められ、ひいては財政経済政策の賢明な運用を通じて広範な勤労大衆の生活向上に真剣な配慮を払われんことを衷心希求してやまない次第であります。  最後に、われわれが提案いたしました選択的経費控除制度に対し、社会党が、この制度が、すでに社会保険により手厚い保護を受けている主として大組織を持つ勤労層に対するよりも、未組織の勤労者中小企業者、農民等に対してより大きい恩典を及ぼす点を指摘しつつ、この制度を非難しておりますことは、私の最も了解に苦しむところであります。(拍手)強大な組織力を持ち、争議権の発動に訴えても、みずからの利益を戦い取ることができ、両時に社会保険その他の福利施設による保護におきまして相当の充実を見ておる大組織勤労層は、今日の日本の現状におきましては、相対的に恵まれた階層であると申して差しつかえないと思います。(拍手)われわれの今次の提案は、もちろん、それらの人Aの既得権を剥奪しようとするものでは決してなく、なおその不備をも補わんとするものであります。ただ、今日、これら比較的に恵まれた階層に比し、人手や知識の不足、記帳の不備等のため、当然受くべき税法上の恩典からとびらを閉ざされている恵まれざる未組織の勤労大衆がなお二百万人の多きに達しておる事実に注目しなければならないと思います。(拍手)われわれは、その現状を黙視するに忍びず、かかる経費の概算控除の制度を創設し、これらの人々に税法上の恩典に浴する道を開かんとするものであります。私は、社会党がともすれば大組織を持つ労働者の利益擁護を偏重しがちであるという世間の批判を一掃する上から見ても、この制度に対し社会党の諸君の共感と同調を期待してやまない次第であります。  以上をもちまして私の討論を終ります。(拍手
  20. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 春日一幸君。     〔春日一幸君登壇
  21. 春日一幸

    ○春日一幸君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となりました所得税法法人税法租税特別措置法政府提出改正三案並びに民主、自由両党の共同修正案に関する委員長報告に対し、ここに反対の意思を表明し、以下、その理由を明らかにせんとするものであります。(拍手)  そもそも、わが国現行税制度は、大企業や金持ち階級にははなはだ軽くして、一方、零細業者や勤労者には過重苛酷にわたるものとして、すでに世論の非難はごうごうたるものがあるのであります。(拍手)しかるところ、政府提出改正案はこの悪傾向にさらに拍車を加えたものでありますが、特に自民両党の共同修正案に至っては、もはや世論も外聞も何はばかるところなく、すなわち金持ち一辺倒の本性を一瀉千里の形で露出したものであるのであります。(拍手)  たとえば、租税特別措置法におけるこの政府改正案によりますと、今後、金持ちたちが受ける預貯金、公社債の利子所得は、全額これを免除されることと相なります。また、資本家たちが受ける株式からの配当所得、これは現行法では配当所得年額七十万円まではすでに無税でありましたのを、政府改正案では、この免税点を引き上げて八十四万円となし、進んで民自両党の修正案では、さらに株主の利益の大躍進をはかり、実に配当年額百二十二万円までを非課税とするものであります。けだし、この政府改正案は金持ちや大企業に対しわが世の春を謳歌満喫させるところのものでありますが、さらに自民共同修正案は、加えて、彼らをして欣喜雀躍せしめるほどのものであるのであります。(拍手)ここに、預貯金利子、公社債の免税措置による平年度歳入減は六十億、配当控除額引き上げによる歳入減は十億でありましてこの金持ち保護立法による歳入減は合計七十億となるものであります。もしそれ国の財源にしてこの種の余裕ありといたしましたならば、わが国国民経済現状においては、なお先んじて貧しき者のために緊急に処すべき事柄は数限りなくあるでございましょう。(拍手)  およそ、徴税行政は、所得のある者に課税をなし、かつ担税力の強き者からこれを及ぼすのが、その鉄則でなければなりません。今や、全国給与生活君たちは、夏季手当、年末手当に対する税の軽減方について、政府並びに国会に対し痛切なる陳情を続けております。お正月のもち代や、三伏の夏、極寒の冬をしのぐ必要実費である季節手当に税金をかけるのは残酷ではないかと、世論もまたこの要求を支持いたしておるのであります。すなわち、この七十億に及ぶ金持ち減税の財源をかつて、せめてはこの季節手当に対する税の軽減だけでも何とか取り計らえというのが、われら日本社会党の強き主張であります。(拍手)いかに資本蓄積の必要ありとはいえ、多数国民の窮乏を外に、ただただ金持ちと大企業への減税に没頭し、まことに緩急前後の序列をわきまえず、かつは租税制度の原則をじゆうりんするもはなはだしきものでありまして、かくのごときはわが党の断じて承認しあたわざるところであります。  これが租税特別措置法改正案並びに修正案に対しわが党の反対する理由であります。  次は、法人税について申し述べます。  民自両党の修正案によりますと、所得金額のうち、五十万円以下の部分に対しては三五%の税率をもってし、それ以上の所得には四〇%の税率を適用するとあるのであります。しこうして、これをもって中小法人税負担軽減をはかったと称しておるのでありますが、それならば、この修正案の恩恵を、いわゆる中小法人のみに限定せず、大企業、大所得法人へもひとしく青天井で全面的に適用する理由は何でありましょう。言うならば、これは、今次政府改正案によって法人税は四二%から四〇%に下げられたものを、さらにこの修正案によって、一法人につき五十万円の五%、すなわち二万五千円ずつの総花減税をむぞうさに加えたものであつて、これは中小法人法人としてその中に介在していたというにすぎないものであります。これが中小法人を特定した税の軽減措置などとは、とうてい理解いたし得るものではありません。  わが党の調査によれば、大企業、大法人は、現行租税特別措置法その他各種税法上の優遇を受けて、すでに年間八百億をこえる税の軽減を受けておるのであります。現に、二十九年度においては、価格変動準備金として控除された税額百二十八億、貸し倒れ準備金において七十四億、退職準備金において百七億、輸出減税特別措置において四十億五千万、増資配当免税において十五億、企業合理化法による特別償却費六十億、重要物産の免税五十億、さらに交際費の損失算入容認によって概算三百億、その他発電会社に対しては渇水準備金として十三億、船会社に対しては特別修繕費として三億三千万、鉱山に対しては新鉱床買入金控除制度によって一億五千万、証券会社に対しては違反損失準備金として一億、損害保険事業に対しては異常危険特別積立金として二十一億等々でありまして、これが現行租税特別措置法が大企業、大法人所得に対し特に課税の免除を行なっているものの概要であります。かくて、大法人の実際上の法人税負担税率は、各種の控除を通算いたしますると、その法定税率四二%応対し、その実行税率は実に二五%ないし三〇%にも及ばないものであるのであります。しこうして、中小法人は、この租税特別措置法の適用を受けようとしても、現実にはその適用条件を具備していないので、その結果、四二%の法定税率一ぱいの課税を受けているという実情であります。  かくのごとくにして、税負担の権衡は大きく破れ、担税力と課税との比例関係が逆転しておるので、よって中小法人に対する法定税率を下げよという要求は当然のことであり、これは捨ておきがたき現行法人税法上の大いなる欠陥となっておるものであります。しかるに、政府改正案においては、この問題に触れることをことさらに避けて、ただ資本団体の声にのみ従い、ここに一率二%の減税をはかることとし、また、民自共同修正案においては、没理論、現実無視の観念的悪平等の無理じいを行なって、法人全般に対しさらに二万五千円ずつをまけるという、実に総額十億円にわたる大盤ぶるまいを行なつたのであります。まことに、資本主義政権は、資本家の要求に対しては、あたかも放射能を受けるガイガー計数器のごとく鋭敏かつ正確に反応を示すのであるが、中小企業者や勤労者の声に対しては、まるきりのからつんぼで、何を訴えても、ただ聞えないふりをしているということは、ただただあきれ返るばかりであります。(拍手)  まことに、民自両党の五十万円の段階課税修正案こそは、いつそこつけいと言うのほかはなく、これは、本年度の予算案が、民自両党によって、バナナのたたき売り式に、元値とつけ値をたして二で割つて妥結したものでありましたので、この修正案もまたそれを反映したものでありましょうが、これはあまりに即興的で、出まかせで、この修正案によっては法人税法上の懸案は何一つ解決されたものはないのであります。  ここに法人税法政府改正案による平年度歳入減九十一億七千万円、さらに自民両党の修正案による歳入減十億円でありまして、今次法人税法改正による収入減総額は一百一億七千万円であります。これら歳入の減少は、しよせんは、零細業者たちへの水増し課税や、さらには大衆への間接税によって補完するの余儀なきものでありましてかくて貧富の懸隔は一そう増大され、両階層の相剋はさらに激化の一途をたどるでありましょう。わが国行財政の将来をおもんばかり、まことに深憂にたえません。  これに対するわが党の主張は、普通法人税の税率現行通り四二%に据え置いて、この財源をかつて租税特別措置法の恩恵を受けざる中小法人に対し特に一二%を下げて、その中小法人税税率を三〇%となし、もって大小法人相互間の税負担の権衡をはかり、加えて中小企業の窮乏を救わんとするものでありました。(拍手)しかるに、わが党のこの正論は、民自両党にとつてはまさしく馬の耳に風でありました。かくて、租税学界の定説は無視され、中小法人の切々たる要求をほどよくあしらつて退けたのが実はこの改正案と修正案でありまして、かかるごまかし立法は断じてわが党の容認し得ざるところであります。  これがこの改正案と修正案に対するわが党の反対する理由であります。  次は、所得税法について申し述べます。  一萬田大蔵大臣は、その財政演説において、現行税制においては低額所得者に対する税負担が過重であるから、特にその負担軽減をはかる旨を、実にしばしば強調されておるのであります。しかるところ、この政府改正案によりますと、たとえば夫婦子供三人の事業所得二十万円の者は千七百五十円の減税となり、その所得一万円当りの減税は八十七円でしかありませんが、これが、同じ事業所得百万円の場合は減税額三万七千円となり、その所得一万円当りの減税は実に三百七十円となるのであります。また、給与所得者について検討いたしまするならば、夫婦子供三人の標準家庭の世帯主は、月給二万円の者は月百四十一円しか減税されないのに、月給十万円の人は月当り三千六百四十五円の減税となるのであります。扶養家族四人をかかえる月給取りに対し、その月給十万円の高額所得者に対しては一万円につき三百六十四円の減税を行う一方、その月給二万円の低額所得者に対しては一万円につき七十円しか減税しないような、そんな改正案を出しておいて、それで低額所得者の税の軽減をはかるなどとは、かりそめにも言えた義理ではないでありましょう。まことに荒唐無稽な、から宣伝と申しても決して過言ではないと思うのであります。いみじくも一萬田大蔵大臣が指摘したことく、わが国現行税制度は、収入の乏しき者にその税は過重でありますから、当然今回の改正に当つてはこの低額所得者への減税に重点が置かれなければなりませんのに、本改正案のもたらすものは実にその逆であるのであります。  さらに、民自両党は、この所得課税に対し、選択概算所得控除の新制度を設くるの修正をあえて行なつたのであります。この選択控除の制度は、納税者の選択により、社会保険控除医療費控除及び雑損控除にかえて、一万五千円を限度額として所得金額の百分の五を所得から控除せんとするものでありますが、かかる措置は、勤労者の大部分は現に社会保険、厚生年金、失業保険に加入して、すでにこの部分に対する税の軽減を受けておるのでありまするから、この修正によっては何ら新規減税とはなり得ないものであります。しかのみならず、本制度によれば、納税者がかりに社会保険その他から離脱して、その保険料の支払いをやめた場合、この新制度によって差引年間一万五千円の相当額がその者の手元に残り得る計算となるものでありますが、かかる措置は、社会保障制度の拡充強化の最も急を要するのとき、まさにこれに逆行するものであり、社会保険の将来に最もおそるべき暗影を投ずると思うのであります。まことに、この修正案は、社会保険料の支払いを行なっておる者と、しからざる者とに対し、画一無差別の取扱いをなさんとするものでありまして、これは明らかに社会保険加入者の現に有する税法上の既得権をここに剥奪するものであるのであります。特に川崎厚生大臣の注意を喚起してやみません。もしそれ民自両党の修正案にしてこれが低額所得者に対する税の軽減を全図するものでありといたしましたならば、すべからくその財源は基礎控除引き上げもしくは扶養控除引き上げに回すべきものでありましょう。この修正案は、まるで立ち話の思いつき以上に格別の根拠ありとは思えず、まさに奇矯に過ぎるものでありまして、かくの如きはわが党の絶対承認しあたわざるところであります。  ここに所得税法改正に対するわが党の当面の主張は、夫婦子供三人の標準家庭においては、年間所得二十四万円までの所得は、それは生活に要するぎりぎりの実費であるから、かかる生活実費に対しては課税すべきではないというのが、その主張の根幹であります。すなわち、基礎控除は八万円とするも、扶養控除は、最初の一人を四万円に、その他の扶養親族はすべて一人につき二万五千円とし、かつ、事業所得者に対しては、中小企業の時を分たぬその過重労働を参酌し、特別勤労控除の制度を新設し、その控除額を四万五千円とし、一方、給与所得者に対しては、現行勤労控除率百分の十五を百合の二十とし、かつその限度額を七万円に引き上げることによって、それぞれ二十四万円までの所得を非課税にせんとするものでありました。このわが賞の主張は、まさに徴税理論上完璧なものであり、かつは税収の関係においても即時実施可能なるものであったのでありますが、政府並びに保守両党は、あらぬ遁辞を設けて、ついにこの当然にして最小限度要求をすらも退けたのであります。  かくて、わが国税制は、貧しき者より収奪し富める者へ貢献するという、まことに異様なる風貌と怪奇なる姿勢を整えて参りました。この税法改正三案とその修正案によって、貧しき者はいよいよ窮乏し、富めるものは一そうに繁栄するでありましょう。もはや、資本家政権の存続する限り、勤労者と少額所得者の税金はとうてい軽減されるものではないということが、ここに目に痛いほどあざやかに示されたのであります。(拍手)  なお、この際特に非難せなければならないことは、現内閣においては、所管の一萬田大蔵大臣を初めとし、経済閣僚たちは、税制に関してはほとんど無知無定見のごとくであります。また、鳩山総理大臣が税制改革に対し具体的な抱負経綸を述べられたことを、私はいまだかつて耳にいたしません。かくて、租税行政はもつぱら税務官僚の恣意にゆだねられていると思うのであります。現に、この重大なる租税法案委員審議に当つて、一萬田大蔵大臣の委員会出席はきわめて悪く、重要なる政策論議はほとんど行い得ないという状況でありました。特に政府の猛省を促すゆえんであります。  以上申し述べました理由により、ここに勤労者を初め中小企業者の税負担はいよいよ重くして、緊急これが軽減を要望されるのとき、この政府改正案並びに民自両党修正案は、いずれもその実情に沿わないのみならず、むしろそれに逆行するの改悪案とも称すべく、よって、わが党はここに断固としてこれに反対し、その再検討を求めるものであります。  以上をもって私の討論を終ります。(拍手
  22. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これにて討論は終局いたしました。  三案を一括して採決いたします。三案の委員長報告はいずれも修正であります。三案を委員長報告通り決するに賛成諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立〕
  23. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 起立多数。よって三案とも委員長報告通り決しました。(拍手)      ————◇—————  会計検査院法の一部を改正する法律案内閣提出)  行政機関職員定員法の一部を改正する法律案内閣提出
  24. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、内閣提出会計検査院法の一部を改正する法律案行政機関職員定員法の一部を改正する法律案、右両案を一括議題となし、この際委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  25. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  26. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。  会計検査院法の一部を改正する法律案行政機関職員定員法の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。内閣委員長宮澤胤勇君。給するものとし、その他の給与は、支給しないものとする。正行政機関職員定員法の一部を改正する法律昭和二十九年法律第     〔宮澤胤勇君登壇
  27. 宮澤胤勇

    ○宮澤胤勇君 ただいま議題となりました二つの法律案につきまして、内閣委員会における審査経過並びに結果を簡単に御報告申し上げます。  まず、会計検査院法の一部を改正する法律案について申し上げます。  改正の第一は、検査事務量の増加に伴い、一局を増設して検査機能を強化すること、第二は、現行会計検査院法昭和二十二年四月に制定せられたものでありますが、その後制定されました国家公務員法の規定に準拠して、事務総局職員の任免、進退に関する規定を整備することであります。第三は、日本専売公社、日本国有鉄道及び日本電信電話公社の適正な会計経理を確保するため、これら公社に対する検査権限を拡張することでありまして、すなわち、検査の対象を、公社自体の会計経理のほか、補助金、工事の請負、物品の納入等、公社と経理上一定の関係を有するものの会計についても検査することができることといたしますなど、必要に応じ、国の場合に適用される規定のうち必要なものを公社にも適用することといたしておるのであります。  本案は五月十七日当委員会に付託され、政府説明を聞いた後、決算委員会とも連合審査会を開き、熱心なる質疑が行われ、六月二十三日に至りまして、日本社会党両派の共同提案として、検査の徹底を期するため、会計検査院は、必要と認める場合、国が資本金の全部を出資しておる公庫または銀行から貸付金を受けておるものの当該貸付金にかかる会計をも検査することができることをその権限に追加する旨の修正案提出されたのでありますが、これらの内容の詳細につきましては会議録によって御承知をお願いいたしとうございます。  かくて、討論に入りましたところ、高橋及び田中の両委員は、日本民主党及び日本自由党をそれぞれ代表して、いずれも原案賛成修正案反対の意見を表明されたのであります。採決の結果、修正案は否決、全会一致をもって原案通り可決いたしました。  次に、行政機関職員定員法の一部を改正する法律案について申し上げます。  本案は、本年度における各行政機関の事業予定計画に即応して、主として現業職員その他六千三百三十六人の増加を行いますとともに、その反面、不要となりました職員千八百五十二人の縮減を行い、差引四千四百八十四人を増加し、もって行政機関全般の定員の適正化を諸かろうとするものであります。  今回の改正によって定員の合計は六十三万六千三百三十二人となりますが、増員のおもなるものといたしましては、文部省の国立学校の学年進行、学部、学科の増設による七百五十八人、厚生省の国立結核療養所の増床による五百九十六人、郵政省の郵便、電話の業務量の増加による三千二百七十一人、奄美群島の復帰に伴う琉球政府職員の政令定員を定員法定員に吸収することによる七百三十七人等であります。減員のおもなるものといたしましては、国税庁の奢侈繊維品消費税の実施取りやめによる六百八十人、郵政省の電話業務の日本電信電話公社への移管による四百人、建設省の営繕関係業務量の減少による二百二十人等であります。  なお、総理府本府、警察庁、大蔵省、通商産業省及び建設省におきましては、事務の縮小等に若干の期間を要する事情を考慮し、実施期日について特別の措置を講じ、また、調達庁、文部省及び厚生省の職員で、昨年度決定された人員整理の年次計画によりまして本年度以降三十二年度にわたって整理される者につきましては、整理を円滑に行うため、昨年度の臨時待命制度と実質的にほぼ同様の制度を政令で定めることといたしたのであります。  委員会におきましては、本案が付託せられました五月十九日以来、農林委員会と連合審査会を開く等、慎重審議を行なつたのでありますが、その内容につきましては、これまた会議録によって御承知を願うこととし、かくて本日質疑を終了、直ちに討論に入りましたところ、石橋委員は、両派社会党を代表して、その実情に照らし定員制並びに今回の指名退職制度については合理適切ならざるものありとの理由反対の意見を述べられました。採決の結果、多数をもって原案通り可決いたしました。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  28. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 討論の通告があります。順次これを許します。石橋政嗣君。     〔石橋政嗣君登壇
  29. 石橋政嗣

    ○石橋政嗣君 私は、日本社会党を代表し、ただいま議題となりました行政機関職員定員法の一部を改正する法律案反対し、以下、その理由を述べんとするものであります。  政府は、本法案提出に当り、この法律案昭和三十年度における各行政機関の事業予定計画に即応して職員の増減を行い、行政機関全般の定員の適正化をはかろうとするものであると述べているのでありますが、政府は、このような事務的な増減を行うことによって定員の適正化をはかり得ると、ほんとうに考えているのでありましようか。定員の適正化は、まず根本となる行政機構、行政事務の整備から始められなければならないのであり、このような事務的な職員の増減はかえつてますますその不合理性を強めるものなのであります。(拍手)ともあれ、総選挙に際し、行政機構の改革、行政事務の簡素能率化を公約した民主党が、一たび政権を担当するや、官僚攻勢に屈したる、逆にこのような機構の拡大をはからなければならなかったというのも、まことに皮肉と言えるのであります。(拍手)確かに、航空、原子力、賠償、移民、失業対策等の関係機関の新設あるいは拡張は、個々に取り出してみますれば、それぞれ時代の脚光を浴びるに足る必然性を持つた措置かもしれません。皮肉なる観察を下すならば、何人も反対しがたいものを選んで機構の拡大と定員の増加をはかつているとすら言えるのであります。しなしながら、これらの機構拡大の措置が万全のものであるかいなかは、当初に申し上げた通り、機構全般を通じての検討が行われて初めて結論づけられるものであります。にもかかわらず、政府には現在機構の合理化促進しようとの熱意は全く見られず、ただ一時のがれの公務員制度調査会の答申を待って考慮すると言っているにすぎないのであります。このようなことで、どうして戦後著しく複雑かつ膨大となつた機構の改革、事務の簡素化がはかれるというのでありましようか。この点においても、民主党公約は早くも空文と化しつつあるのであります。(拍手)  次に、この法案を通覧して感ずることは、今や法律によって職員の定員を定める意義が全くなくなっているということであります。今回の改正案によりますれば、職員の数は六十三万六千三百三十二名に達するわけでありますが、これはあくまで定員内職員の数であり、この外郭には、驚くなかれ、この数とほとんど同数のいわゆる定員外職員がいるのであります。この中には、常勤労務者といたしまして、三十年度予算編成に際しても予算定員として明白に認められている三万三千四百十五名の者を初め、当然に定員法の規制を受くべき多数の職員のいることを、われわれは断じて見のがすことはできないのであります。(拍手)定員法の定員と関係なく、しかも随時交流を可能とするところにかかる膨大な職員をかかえていて、定員を法律によって定めることに何の意義があるのでありましようか。これこそ、法軽視の第一歩であります。かかる悪習を政府みずからが作り出すことは、言語道断と言わなければならないのであります。(拍手政府は、よろしく、このような日陰者的な扱いを受けている多数の職員を一帰し、彼らを一日も早く日の当る場所に引き上げるべきであります。さもなければ、定員法はもはや本来の目的を遠く離れ、職員の中に定員内、定員外の二種の職員を作り、定員外の職員を劣悪な労働条件で自由に駆使せんがためにのみ存すると断じてはばからないのであります。(拍手)はしなくもこの法案審議中に紛争を惹起した恩給局の職員の問題にいたしましても、実はその原因が、大学を卒業した者が日給わずか二百七十五円という驚くべき労働条件にあったことを、政府は大いに反省すべき余地があるのであります。  定員外職員の大半は農林省関係機関に所属するものでありますが、一例を農地局にとつてみますならば、その中には実質的に係長級の職務を行なっている者があり、学歴もまた七割余が旧制中学以上を卒業しております。勤続年数にいたしましても、一年以上が約七割、二年以上が約三割に達することを知るべきであります。このように、あらゆる面で定員内職員と異なるところのない人たちを、なぜに定員の外に置き、差別的な取扱いをしなければならないのでありましようか。これこそ、われわれの断じて容認できないところであります。(拍手政府は、一日も早くこの法律を本来の姿に引き戻し、すべての職員が安んじて職務に精励できるよう措置すべきであります。  さらに、われわれは、この法案の持つ次のような不合理と欺瞞性を指摘し、反対理由とするものであります。  その第一は、この法律に基いて本年新たに整理される者に対して、昨年度の臨時待命制度・本年度のいわゆる指名退職制度の適用が除外されているということであります。これについて、政府は昨年と本年とでは実情が異なると言っておりますが、整理する側の実情がいかように異なろうとも、整理される者にとつてみれば、首を切られるということに二つはないのであります。また、本年は配置転換を行うので実出血はないとも申しておりますが、これも、今回提出された配置転換計画のずさんさと、過去の実績から推して、実出血がないという証言をわれわれは絶対に信ずることができません。(拍手政府は、よろしく、公平の原則に基いて本年度の該当者にも昨年同様の取扱いをすべきであります。  第二は、この法案の持つ欺瞞性であります。御承知の通り、昨年の整理は強制と任意という二本建で行われました。ところが、今年は、これが、本人の申し出に基いてのみ行うというふうに、きわめて穏当な形に改められているのであります。しかしながら、これは果して運用面においてもその通り行われるものでありましようか。実は、この法案が国会において審議されているさなかに、法案成立を見越して、一方的に職員を指名し、強制的に捺印させようとし、あまつさえ、これを拒否した場合には国家公務員法第七十八条を発動して免官処分にするかもしれないと威嚇している事実があるのであります。(拍手)このような卑劣な、しかも国会を無視した行為が法案審議中に堂々と行われているということを考えるとき、どうして法成立後の公正な運用を信ずることができるでありましようか。(拍手)表面では民主的な装いをし、裏面ではこのような悪らつな手段がとられている。これこそ鳩山内閣の象徴的な姿であると言えるのであります。(拍手)それだけではありません。この指名退職制度適用の手続等は人事院規則によらなければならないにもかかわらず、一方的にかかる行為を行なっていることは、明らかに国家公務員法違反であり、徹底的に究明されるべきものであります。(拍手)少くとも、われわれは、職員の申し出が少く、適用者が法の予定する数に達しないときはどうするのかという重大な一点をごまかした、かかる法案を、絶対に認めることはできないのであります。(拍手)  第三は、本年指名退職制度の適用を受ける者は昨年の臨時待命制度適用者と同等の取扱いを受くべきであるにもかかわらず、その待命期間が昨年に比しそれぞれ一カ月間短縮されようとしていることであります。この点について、政府は、三十年度本予算は六月から施行されるものという予定で、指名退職制度の実施も六月からと予定していたが、不幸にして六月も暫定予算となつたため、この法律も七月一日から施行することになつた、しかし、予算額との関係もあるので、この指名退職制度は、形式的には七月一日から実施するけれども、実質的には六月一日から実施しているので、六月一日から起算すれば昨年の待命期間と同じになると、全く理由にならない暴言を吐いているのであります。われわれは、法律の権威を守るためにも、かかる欺瞞と便宜主義の上に立って立案された法案を絶対に認めることはできないのであります。(拍手)  最後に、われわれは、この法律によって整理が行われたときに強化されます過重労働の面を考慮し、本法案に強く反対しようとするものであります。一例を建設省営繕局にとつてみるとき、今回工事量の減少を理由に二百二十名の職員が整理されようとしているのでありますが、これは全く不合理なものであります。なぜならば、通常、他の部局におきましては、職員一人当りの工事負担量が二、三百万円であるにもかかわらず、営繕局の職員は、昭和二十七年以降、実に人当り一千万円になんなんとする工事量を消化しているのであり、これを実績として、工事量の減少を理由に人員整理を行うことは、引き続き職員に過重労働と工事の質の低下という二重の苦悩を負わせることとなり、国家のためにも益のないことと言おねばならないからであります。  以上いろいろと申し上げた通り、この法案は無計画と欺瞞から成り立っており、このようなものを成立させるならば、矛盾と不合理はますます拡大されるのみならず、職員に不公平と労働強化をしいることとなるので、われわれは絶対に反対せんとするものであります。各位の御賛同をお願いし、私の討論を終ります。(拍手
  30. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 細田綱吉君。   [細田綱吉君登壇
  31. 細田綱吉

    ○細田綱吉君 私は、日本社会党を代表いたしまして、ただいま上程されました行政機関職員定員法の一部を改正する法律案に対して、これに反対するものであります。以下、その理由説明いたします。  鳩山内閣は、本年二月の衆議院議員の総選挙に際しまして、行政機構を国力相応のものに簡素化、能率化するために、同機構の根本的な改革をはかるとともに、信賞必罰による官界の粛正を断行するということを国民の前に公約したのでございます。ところが、その後鳩山内閣が行なってきた跡を見まするに、この公約について何らの真剣な考慮を払つた跡が見受けられないばかりか、その計画の一端すら発表されていないのでございます。今回の定員法の改正についても、ただ単に三十年度の各省事業計画に一時的な足並みをそろえるという、その場限りの改正にすぎないのであります。われわれは、いやしくも政府が定員法を改正せんとする以上、それは総合的にして計画的な行政機構改革の線に基いて行われなければならないと信ずるのでございます。(拍手)今回の政府改正案のごとき、そのつど御都合主義によって定員の増減を行うがごときことは、国家行政執行の任に当る者をして、いたずらに不安動揺の念にかり立てる以外に何らの取り柄がないと考えるのでございます。(拍手)同時に、そうした無計画な定員法の改正は、改正自体何らの意味もないものであるということを、政府においては深く反省していただきたいのであります。  反対する第二の理由としましては、政府改正案に基く定員数が現在の実情に適していないという点であります。申し上げるまでもなく、定員法は事務量に応じた定員を確保するところにその目的があります。政府は、今回の改正法案提案理由説明の中で、「昭和三十年度における各行政機関の事業予定計画に即応して、必要やむを得ない事務の増加に伴う所要の増員を行うとともに、業務の廃止及び減少に伴う余剰定員の縮減を行い、行政機関全般の定員の適正化をはかる」と述べておりまするが、実際には、これに対してはきわめて縁遠いのでございます。すなわち、現在各省には臨時職員もしくは非常勤職員と呼ばれる者が非常にたくさんな数に上っておりまして、これらの人たちは、実際には定員内の職員と同様の仕事をしておりながら、その待遇は定員法上の職員と格段の区別をつけられ、中には二週間休むと首にされるというがごとき実情にすら置かれておるのでございます。こうした職員は、すでにさきの内閣委員会において明らかにされたように、農林省だけでも膨大な数に上り、また恩給局においても、前討論者が申し上げましたように、二百人の定員に対して約一千になんなんとするような臨時職員をかかえ込んでおるといわれておりまするが、しかも、これらの人たちは過去二年もしくは三年以上引き続いて勤務しておるという実情に置かれておるのでございます。かくのごとく、当然職員とさるべきものをそのまま放置しておいて、待遇上、整理上安易な臨時職員によってまかなわんとする政府の態度は絶対に許されないと信じます。(拍手)これらの事実をほおかむりしている本定員法の改正法案は何ら意味のないものと信じまするがゆえに、反対する第二の理由にあげた次第でございます。  最後に、反対の第三の理由としましては、この改正法案は行政機構簡素化に名をかりました職員の首切り法案であるからであります。(拍手)本改正法案は、各省庁で総体的には四千十九名を増加することになっておるが、同時に既存の定員から三千三百十七人を整理することを内容としておるのでございます。政府は、この定員法の実施に基く被整理者に対しては指名退職制度を適用し、しこうして、あくまでも任意制に基いて整理を行うと申しておりまするが、これに対して、その整理を拒否する者に対しては整理を行わないという保障はどこにも与えていないのでございます。すでに、政府は、本年六月暫定予算提出前に、被整理者に対する指名勧告の挙にすら出ておるのでございます。また、政府は、被整理者について、各省内部の操作によってある程度の配置転換が可能であると楽観した態度をとつておりまするが、これは、建設省、調達庁その他の例を見てもわかる通り、事態は全く逆の方向をたどりつつあるのであります。要するに、今回の定員法実施による各省定員増減の問題は、政府全般にまたがつて統合的な配置転換を行うならば、事態はある程度円滑に処理できるかとも思うのでありまするが、政府のやり方は、定員法の改正一本にしておいて、整理はおのおの他省に関係なく個別的に行わんとするところに、不合理な犠牲者を出す結果になるのであります。しかも、これらの犠牲者は、昨年度の被整理者が受けたごとき何らの特典を保有しないのでありまして、本改正案による犠牲者は、前述のごとく、不合理にしてまことにお気の毒な立場に立つことはきわめて明瞭でありまするがゆえに、反対する第三として説明申し上げた次第でございます。  その他の点につきましては、すでに前討論者の討論においても尽きておりまするので、以上三点をあげまして本法案に対する私の反対討論を終る次第であります。(拍手
  32. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず、会計検査院法の一部を改正する法律案を採決いたします。本案委員長報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  33. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって本案委員長報告通り可決いたしました。  次に、行政機関職員定員法の一部を改正する法律案を採決いたします。本案委員長報告は可決であります。本案委員長報告通り決するに賛成諸君の起立を求めます。     〔賛成者起立]
  34. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 起立多数。よって本案委員長報告通り可決いたしました。      ————◇—————  出入国管理令の一部を改正する法律案内閣提出)  下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案内閣提出参議院送付
  35. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 議事日程追加緊急動議提出いたします。すなわち、内閣提出出入国管理令の一部を改正する法律案下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案、右両案を一括議題となし、この際委員長報告を求め、その審議を進められんことを望みます。
  36. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  37. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって日程は追加せられました。  出入国管理令の一部を改正する法律案下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案、右両案を一括して議題といたします。委員長報告を求めます。法務委員長世耕弘一君。     〔世耕弘一君登壇
  38. 世耕弘一

    ○世耕弘一君 ただいま議題となりました出入国管理令の一部を改正する法律案及び下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の要旨及び委員会における審議経過並びに結果を御報告申し上げます。  まず、出入国管理令の一部を改正する法律案につきまして申し上げます。  この法律案改正点は二点ありまして、第一は、強制退去を命ぜられ収容されておる外国人を仮放免する場合には千円以上三十万円以下の保証金を納めさせておりますが、最近、収容が長期にわたり、かつ違反の内容も比較的軽微であつて、仮放免をしてもよいと思われるにもかかわらず、適当な身元引受人がない等のため、保証金を納付することができないものが相当あるのであります。そこで、これらの者につきまして、保護団体等の保証書をもって保証金にかえることを許し、もって仮放免手続の円滑な運営を期したいとするものであります。  第二は、終戦前から引き続いて在留する朝鮮人及び台湾人並びにじれらの者の子で終戦後から平和条約発効の日までに生まれた者については、現在出入国管理令に定める正規の在留資格を有しないままで本邦に在留することを許しているのでありますが、これらの朝鮮人及び台湾人の子で平和条約発効後一年の間に在留資格を取得した子供たちの在留期間更新については、政令で定める日まで千円の手数料を免除しようとするのであります。これによって不法残留者の続出を防ごうとするものであります。  さて、委員会における審議のうち、おもなる質疑を申し上げますと、保護団体とはどんなものをさすのかとの質問に対し、政府より、政治色を帯びないもので、社会的に信頼のできる保護団体であつて、現在実績を持っているものには善隣厚生会がある旨の答弁がありました。また、今回の改正により手数料を免除される者はどのくらいあるかとの質問に対し、今年度の該当者は約八千人である旨の答弁がありました。  かくて、質疑を終了し、討論省略の上採決いたしましたところ、全会一致をもって出入国管理令の一部を改正する法律案政府原案通り可決せられた次第であります。  次に、下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律案について申し上げます。  この法律案の要点は次の三点であります。  第一は、市町村の廃置分合等に伴いまして、三十三の簡易裁判所の庁名を改称しようとするものであります。  第二は、市町村その他の行政区画の変更に伴いまして合計百三の簡易裁判所の管轄区域を変更しようとするのであります。  第三は、従前の市町村の一部合併または分離に伴い、裁判所の管轄区域の基準となつた行政区画に変更等のあったものについて、この法律の別表を改正しようとするものであります。  法務委員会におきましては、これら管轄区域の変更は一般国民の利害と密接な関係があるが、いかなる方法で変更の決定をするのかとの質問がありました。これに対して、いずれも地元市町村、関係官公署、弁護士会等の意見を十分しんしやくし、最高裁判所とも協議の上決定する旨、政府の答弁がありました。また、今回の改正案の内容は例年に比し特に膨大であり、これは町村合併の促進に基くものと思うが、無理な合併をそのまま本案内容に織り込んで、地元住民に不満の念を抱かせるようなことはないかとの質問に対して、政府より、この点は慎重に考慮し、地元民の意向を十二分に聴取して処置した旨の答弁がありました。  かくて質疑を終了し、討論省略の上採決いたしましたところ、全会一致をもって政府原案通り可決した次第であります。  以上、御報告申し上げます。(拍手
  39. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 両案を一括して採決いたします。両案は委員長報告通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  40. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって両案は委員長報告通り可決いたしました。      ————◇—————
  41. 長谷川四郎

    長谷川四郎君 恩給法の一部を改正する法律の一部を改正する法律案趣旨説明は延期し、本日はこれにて散会せられんことを望みます。
  42. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 長谷川君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  43. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって動議のごとく決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時三十分散会