○松本七郎君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題になっておりまする
農産物に関する
日本国と
アメリカ合衆国との間の
協定の
締結について
承認を求める件につきまして、
鳩山総理大臣以下
関係閣僚の所見を伺わんとするものでございます。
協定の
内容につきましてはすでに同僚議員よりいろいろ御
質問がなされましたので、私はまず大局的な基本
方針について御
質問を申し上げたいのでございます。
政府におかれましても、どうぞ大所高所に立って明確な御
答弁をお願いいたしたいのでございます。
質問の第一点は、今回の
米国余剰農産物輸入が当面の
日本外交の進路に及ぼす
影響いかんという点でございます。この
余剰農産物輸入の問題は、昨年秋、吉田前
内閣当時に、吉田前首相みずからが
米国に出向きまして、その
大綱について話し合いをつけたものを、現
内閣がこれを引き継いでまとめ上げたものでございます。向米一辺倒の
外交に終始しておりました吉田
内閣は、ことごとに
アメリカの意を迎える
外交方針をとってきたことは、これはあらためて異とするに足らないのでございます。これに対して、鳩山
内閣は、日中、日ソの国交正常化をはかり、平等互恵の立場に立って
貿易、産業の進展をもはかろうとする
方針を打ち出すことによりまして、吉田
内閣との違いを
国民の前に明らかに公約いたしたのでございます。従いまして鳩山
内閣としましては、吉田前
内閣当時の対米
外交を漫然と継承することなく、全面的にこれを再検討する責務があるのではなかろうかと思うのでございます。(
拍手)
政府は、今回の
協定につきましてこれは、
米国にとってはもちろん、
日本にとっても有利な
協定であり、しかも平等な立場に立って
締結されたものであると言っておるのでございます。そういう見解をとっておられるようでございます。しかしながら、この
協定の基本をなしておりまするところの
アメリカの
法律、すなわち一九五四年の
農産物貿易の
促進及び援助に関する
法律を見てみますると、本
協定が
日本にとって有利であると断定することが誤まりであることは一目瞭然でございます。(
拍手)一九五四年の
農産物貿易の
促進及び援助に関する
法律の第二条及び第百四条の規定によりますと、この
法律は、
米国とその友好国との間の協力体制を強化し、さらに
米国の立場よりする防衛力の強化に役立たせることをその目的としておるのでございます。すなわち、
米国があくまで二つの
世界の対立を前提といたしまして、いわゆる友好国とのつながりを強化するために制定された
法律が、この一九五四年の
農産物処理法なのでございます。従いまして吉田
内閣当時と同様に、従属的な対米協力をその基本精神として、初めてこのような
協定のごとき性質のものを認めることができるのではないかと思います。
政府は、
日ソ交渉もすでに進められておる今日におきまして、この
農産物協定を結ぶことが平和的共存の妨げにならないという確信が一体あるのか。その確信がありとするならば、本
協定にからむところの内外の
疑惑をこの際一掃するために、
鳩山総理及び
重光外務大臣それぞれから、その信念を明らかにしていただきたいのでございます。(
拍手)第二の点は、本
協定並びに本
協定に基くところの投融資計画が
わが国の
長期経済計画にいかなる
影響があるかという点でございます。プラスの面もございましょう。けれども、マイナスの面も出て参りまして、将来困ったことになるおそれはないか。それに対して
政府は一体どれだけの考慮を払っておられるかをお尋ねしたいのでございます。
政府は、さきに、
経済六ヵ年計画を樹立いたしまして、それに目標を置いて一切の財政
経済政策を実施する旨を言明されておるのでございます。ところで、この総合
経済六カ年計画におきましては、
政府は相当の外資を当てにしておられるのでございます。すなわち、この
余剰農産物円資金と
世界銀行
借款を当てにされておるのでございます。
政府はこの
余剰農産物輸入は本年限りで打ち切るかのごとき印象を与える
説明をされておるのでございますが、それでは
経済六カ年計画に現われておるような膨大な投資計画についての
説明はできないことになるはずでございましょう。
政府の農地開発計画を拝見いたしましても、
円資金分五百四十七億円、それから
世界銀行融資分六十二億円が予定されておるのでございまして、しかも
円資金分で三十六年度以降に予定しておる分がなお十五億円もあるのでございます。これで明らかな
通り、
政府は、明年も明後年も、いな、三十六年度以降においても、これを予定して計画を立てているのであって、しかも、その規模は、今後ふえることはあっても減らないのであろうと思うのでございます。
政府は、この際、
余剰農産物受け入れを今後も継続するつもりであるのか、あるいは本年限りとする腹なのかを明らかにすべきであります。もしも本年限リで打ち切るというのであるならば、今年はとも
かくといたしまして、その後五カ年間の投融資に要する資金の相当部分を一体どこに求めようとするのか。それがはっきり
説明できないということになるならば伺の
長期計画ぞやと言わなければならないことになりましょう。(
拍手)また、外資にのみ多く依存する開発計画がいかに危険なものであるか、万一外資がはずれた場合に、
国内資金をもってこれを埋め合せることに何ら心配はないものかどうか、その際の計画全体に与えるところの
影響について、
政府は一体どれだけの確信を持って対処するつもりか、この点については一萬田
大蔵大臣及び高
碕経審長官より明らかにしておいてもらいたいのでございます。
第三の点は、
わが国の
食糧自給計画との
関係でございます。実は、今回のこの
協定の問題は今、
世界中、
農産物があり余っておる。
買手市場の状態になっております。そういうときに、
アメリカは、
アメリカの農業をいかにして保護するかということに必死になっておるのでございます。
日本も
日本の農業を保護しなければなりません。このそれぞれの国の農業の保護
政策が、こうした弱い立場にある国に対して、あり余った
農産物を売りつけるという形になって、競争の形が現われておると私どもは
考えるのであります。(
拍手)これは前
内閣も同様でございまするけれども、吉田
内閣の場合は五カ年計画、今回の鳩山
内閣では六カ年計画、そういった
食糧増産計画をもって、
政府は
食糧輸入をだんだんに減らしていく、そして自給度を
向上するということを言っておるのでございまするが、計画
通りに実施された年は一年もないのでございます。(
拍手)
輸入食糧をだんだん減らしていくためには、少くとも年に二百万石以上の増産をはからなければなりません。しかるに、
政府の年年の投融資計画では、いずれも百万石をわすかにこえる程度でございます。従いまして
政府の
食糧輸入の予定数量は決して滅ってはおりません。三十五年度においても、米が百二万トン、
小麦が二百十五万トンの
輸入となっておるのでございます。そういたしますと
アメリカからの
余剰農産物輸入は、その他の方法によるところの
輸入食糧とともに、今
日程度の
食糧輸入はすでに恒久的なものとなってしまっていると
考えるほかないのでございます。もしも
政府が真に
食糧の
国内の増産と完全自給そこまで行かなくても、需給度を高めようという気持があるのならば、少くとも五年後には
食糧の
輸入を半分に減らす、十年後には完全に自給するくらいの気魂のこもった計画が作られねばならぬと思うのでございます。(
拍手)しかるに、今後予想し得るところの相当長い期間にわたりまして、現在程度の
食糧輸入を漫然と続けるというのであっては、
食糧の積極的な
国内増産は思いもよらないことでございましょう。これは、
河野農林大臣がしばしば言明されておりまするように、高い
食糧を
国内で作るよりは安い外国
食糧を
輸入せよ、こういう基本
方針の当然の帰結であろうと思うのでございます。そうしてこの
方針は、また、おのれの
利益だけを中心に
考えるところの
日本の財界の支持を得ているのでございます。
余剰農産物の
輸入がこの点で大きな役割を果しているといたしますならば、これは明らかに
国内の
食糧増産を妨げるものと言わなければなりません。そうして、
愛知用水その他の
農業開発は、結局は
国民の目をごまかすものにすぎない結果となることは明らかでございます。
政府は、一体、真に
国内食糧の増産をはかる熱意があるのか、それとも
食糧増産
政策を放棄するだけの気持でやっておるのか、
農林大臣の所見をお
伺いしておきたいのでございます。
第四には、この
米国余剰農産物輸入が
国内の
農産物価格に及ぼす
影響についてでございます。
政府は、この
余剰農産物輸入は
政府の予定いたしております
輸入数量の
ワク内で入れるのであるから
価格に及ぼす心配はない、
影響はない。こういうことを言っております。ところが、
政府の予定する
輸入数量なるものは、決して一定不動のものではないのでございます。
余剰農産物そのものが
ワク内のものか、あるいは
ワク外であるかというようなことは問題ではない。全体としての
輸入数量がかえていくところに実は
根本の問題があるのでございます。また、
食糧の国際
価格が下って参りますると、その数量は、今年中にも自動的にふえてこなければならぬはずでございましょう。
政府は、
輸入食糧がたとい安くなったといたしましても、
食管会計内で操作することによって、
国内食糧価格には
影響のない
価格で配給するから心配はないのであるこういう
説明をされておるようでございまするけれども、このような操作というものは、一時的には可能でございましても、永久に続けるわけに参りません。国際
価格が長きにわたって相当下って参りますと、当然消費者
価格もやがて下げざるを得なくなるのでございます。従いまして、間接的に園内の生産者
価格に当然
影響して参ることは明らかでございます。いわんや、
河野農相初め民主党の大部分の方々は
食糧の統制撤廃論者でございましょう。従って、米の統制が撤廃された場合、あるいはまた、現在
政府の
考えておられる事前売り渡し制のごとき中途半端な統制が将来瓦解するような暁になりましたときに、この
余剰農産物の
輸入による
国内価格への
影響を一体どうやって防ごうとされるのか。(
拍手)
政府が、いかに、心配はない、大丈夫だ、こう強調されましても、
政府の腹の中を読むことのできない全国五百万の農家は、決して安心することはできません。あらためて、この点に関する
河野農林大臣の御
答弁をわずらわしたいのでございます。(
拍手)