○松本七郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、日ソ
交渉問題につきまして、鳩山総理大臣並びに
重光外務大臣に対しまして若干の質問を行わんとするものでございます。
今日、日本の
国民は、先ほど総理大臣も言われましたように、全
国民がこの日ソの
交渉が円満に妥結して国交の回復のできることを待ちあぐんでおるのでございます。従いまして、こういう大切な時期に当りまして、
重光外務大臣がみずから進んで本院を通じてその決意を明らかにされましたことは、私どもその気持を了とするのでございます。しかしながら、肝心なその
内容に至りましては、はなはだばくとして、とらえどころがございません。雄大な決意は述べられましたが、その
内容について、私はさらに具体的に少し御質問を申し上げたいと思うのでございます。(
拍手)
鳩山総理大臣は本日緒方自由党総裁を訪問されたように伝えられております。先ほども御答弁にありましたように、自由党も結局は日ソの国交回復には賛成であるから必ず協力してくれるだろう、こういうことをさらに御答弁なさったのでございますが、本日のこの会談は、おそらく日ソの
交渉についても話し合いをされたものと思いますが、一体本日の会談でそのような日ソの
交渉についての話し合いをされたのか。もしされたとするならば、何らかこの日ソの
交渉に
影響があるものかどうか。この点を明らかにしていただきたいのでございます。(
拍手)さらに、鳩山総裁は、社会党両派の
委員長の要求によりまして、本日この両派
委員長と会見をされておるのでございます。そうして、この両
委員長から要望事項を伝えられておられるはずでございますが、この
委員長との会談に際して、こちらから伝えられました
内容に対し、鳩山首相はどのような見解を抱いておられるのか、本院を通じて
国民の前に明らかにしていただく時期であると思うのでございます。(
拍手)
先ほどの御答弁でも、総理大臣は、実は各党の協力は当然得られると思ったから今までは協力要請をしなかったのだ、今になってしたのだ、こういう御答弁がございました。これは、はなはだどうも甘い観察だと思いますけれども、とにかく、おそまきながらも各党に協力方を要請された態度は、私どもも了とするのでございます。私どもは、しかし、さらに一歩を進めまして、鳩山総理大臣は、野党
各派の代表もこの日ソの
交渉にオブザーバーとして参加をしてもらうように要請される気持がないかどうか、この点を鳩山総理大臣から御答弁をお願いいたしたいのでございます。われわれは、自由党も、鳩山首相が期待されるように、これに協力態勢をとることを期待するものでございますけれども、今までの
経過、あるいは外務
委員会における
質疑応答等を通じて私どもが判断いたしますならば、私は自由党の協力を得られると期待することは楽観に過ぎるのではなかろうかと思うのでございます。従いまして、もしも自由党が協力を拒否した場合に、鳩山総理大臣はいかようにされるのか。もちろん、自由党の協力を得ることが望ましい。しかし、どうしても協力が得られない場合に、社会党との協力を得て、この
交渉を積極的に進められる御決意があるかどうか。この点、首相から御答弁をお願いしておきたいのでございます。(
拍手)そういう態度でなければ、自由党の協力が得られないから自分はしり込みをするのだ、これでは、まるで保守政党の党略外交という烙印を押されても仕方がないことになるのでございます。この点の御決意をはっきりと伺いたいのでございます。
今度の日ソの
交渉におきまして一番大切なことは、先ほど森島議員からも指摘されましたように、自主独立の態度を堅持してこれに臨むということであろうと思います。その場合に、私どもは、今まで戦争状態にあった国と平和の回復をするのでございますし、いろいろな問題がまだ残っておるのでございますから、どうしてもお互いが疑い深い態度でこれに臨むならば、円満な解決はできないと思います。お互いは相互信用の原則をもってこれに臨むことが、この
交渉を成功させる一番大切な点であると思うのでございますが、鳩山首相のこれに対する御決意を伺いたいのでございます。
日ソの
交渉は、何よりもます世界の緊張を緩和いたしまして、日ソ両国の間に友好
関係を進めることが基本の原則でなければなりません。領土問題、戦犯
問題等は、両国の友好
関係の上に立って、平等互恵の立場から平和的にこれを解決すべきでございまして、あくまで日本の自主的立場からなさるべきであると思うのでございます。ところが、今、日本の
国民は、せっかく日ソ
交渉は始まっても、何か米国の指図やあるいは制約を受けるのではなかろうか、あるいはまた
政府は米国に気がねをして、なすべきこともなし得ないのではないかというような疑惑をやはり持っているのが実情でございます。現に、
政府は、日ソ
交渉について、わざわざ特使を米国に派遣するというようなことを
計画しておるやに伝えられておるのでございますが、果してそのような意図があるのかどうか。自主独立の態度堅持について
政府の所信を明らかにしておいていただきたいのでございます。この点は特に総理大臣の御答弁をわずらわしたいのであります。
この日ソの国交回復を実現して諸問題を解決いたしますために一番大切な条件は、やはり両
国民の間に友好的な空気を盛り上げていくということでございます。幾ら外交的な技術がすぐれておりましても、肝心のこの両
国民間の友好
関係というものが確立されなければ、土台はくずれてしまうのでございます。従って、あらゆる具体的な政策をもって私どもはこの両
国民間の友好促進をはかるべきであると思うのでございますが、一体
政府にどのような具体策があるのか、特に外務大臣の御答弁をお願いいたしたいのでございます。
これに関連して、次の三点を特にお伺いいたしたい。
それは、私どもはすでにこの両
国民の友好
関係樹立についていろいろと問題を考えておるわけでございます。たとえば、すでに外務
委員会でも出した問題でございますが、日ソ両国の国
会議員団を交換するということがこの際必要ではなかろうか、こういうことを現在衆議院においてわれわれは協議しつつあるわけでございますけれども、かりにそういうことを院議として決定いたしましても、日本から国
会議員が向うに行く、向うの国
会議員が日本に来ようとする場合に、入国その他について
政府がそっぽを向くようでは、まことに醜態に陥るわけでございます。従いまして、これらの点について
政府はどれだけ協力する決意があるのか、これは特に首相の御答弁をお願いいたしたいと思います。
また、御承知のように、今、日中、日ソの国交回復
国民会議というものが民間の諸団体によって組織され、この日ソの国交回復を
国民運動として推進しつつあるわけでありますが、この
会議が先般懇談会を持ちました結果、新聞紙上の報道するところによりますと、久原房之助氏あるいは小畑忠良民など数名の者を直ちに民間代表としてロンドンあるいはモスクワに派遣して、そうして両
国民の友好促進と日ソ
交渉の成功を側面から援助するようなことをやろうではないかという
計画があるやに聞いておるのでございます。こういうことをなされる場合に、
政府としては一体これを歓迎されるのか。せっかく民間からこういう運動が起っておるのに、
政府がそっぽを向いて迷惑がるようでは、はなはだ困りますから、この際首相のこういう運動に対する考え方も承わっておきたいのであります。
また、私どもは、ソ連の元代表部に対する
政府の態度についても、もっと融通性のある態度をもって臨むことが、両国の友好促進をしながらこの
交渉を妥結するに必要なものであると思うのでありますが、
政府は、このことについて、今までのように、あくまでも国交回復ができなければ向うの旧代表部の人々とは話をしないというような、かたくなな態度を堅持されるおつもりかどうか、特に外務大臣にお伺いいたしたいのでございます。
最近、
政府は、いよいよ
交渉に臨むに当りまして、基本要綱という、いわば松本全権に対する訓令を作ったということでございますが、もちろんその
内容をここで発表をお願いするわけにも参りませんが、この
政府の作りました訓令に基いて今後いよいよ
交渉をされる場合に、一体ソ連の方はどういう態度をもってこれに臨んでくるか、その見通しは全然ないのか、あるいは見通しが多少でもあるとするならば、その見通しについても明らかにしていただきたいのでございます。また、アメリカがこの日ソの
交渉に対してどのような態度に出るかということにつきましても、国内にいろいろの憶測がございます。外務省の一部では、あくまでも米国は日ソ
交渉を阻止するような挙に出るだろうとも言われておりますし、また一部では、幾ら米国でも、この日ソの国交回復ということについては少しも異存はないのだ、むしろこれを歓迎するであろうと言われておるのでございまするが、
政府の見通し、判断はどのようなものであるか、外相並びに首相両者からその見解を明らかにしていただきたいのでございます。先ほどからいろいろ問題が提起されましたように、私どもは、この日ソの
交渉に当って何よりも大切なことは、国交の正常化である、これがいろいろな問題を解決する一番賢明な道であると考えているのでございますが、この点については、いろいろと具体的な問題が、今後進展するにつけても、国内にいろいろな面で起ってくると思います。たとえば戦犯の問題についても、先日以来、一部の間では、この戦犯という名称を取り消せというような要求も出てきておりまするし、あるいは抑留者の抑留中の労働に対する損害賠償を要求しろというような言まで吐かれつつあるのでございます。私どもは、今こういうふうな大切な時期に、
国民の一部からこのような言が吐かれておるということについては、非常に憂慮をいたしておるのでございます。私どもは、まず第一に、友好的な空気でもって接するということが一番必要ではないか、このように、戦犯の名称を取り消せとか、いろんな因縁のような要求を突きつけるけんか腰では、この
交渉は成り立たないと思うのでございまするが、これらについては
政府はどのような考えを持っておられるのか、このことを首相から明らかにしていただきたいのでございます。
こうように、私どもは、国交回復という、正常化ということを中心に考えておるわけでございまするけれども、万一平和条約の
交渉が長引いておくれるような場合に、とりあえず、日ソ両国においてあらかじめ協議の上、戦争終結の共同宣言を発すべきが妥当な処置だと考えるのでございますが、この点の
政府の所信を、これまた総理大臣からお伺いいたしたいのでございます。
この諸問題の中で特にめんどうなのは、もちろん領土の問題であろうと思います。日本はポツダム宣言を受諾して無条件降伏をいたしたのでございまするが、その宣言には「日本国ノ主権ハ本州、北海道、九州及四国竝二吾等ノ決定スル諸小島二局限セラルベシ」こうあるだけでございまして、千島、南樺太のソ連による領有ということは、御承知のように、ヤルタ秘密協定によってこれは定められたものでございます。従いまして、日本
政府は、現在のところ、ヤルタ協定には拘束をされない、こういう答弁だけいたしておるわけでございますけれども、幾ら私どもがこれには拘束されないという宣言をいたしましても、ヤルタ協定が存在しておるということは厳粛なる事実でございます。従いまして、当然このヤルタ協定に
関係する諸国に対して
政府は何らかの働きかけをしなければならなくなるのではなかろうかと思うのでございまするが、一体外国に対してこの問題をどのように訴えられるのか。世界に向って、もうすでに十年もたったヤルタ協定、しかも世界は平和的共存に進んでおる今日、これを破棄するというようなことを訴えられる御意思があるのかどうか。この点を、特に首相にその政治的な考え方、それから外務大臣からは法的な解釈について、お伺いをいたしておきたいのでございます。私どもは、やはり、平和条約である以上は、なるべくならば領土の問題の永久的な解決をこの中に含んだ平和条約であることが望ましいと思うのでございます。しかしながら、こういうふうないろいろな複雑な問題がございまするから、
政府の所信をここで明らかにしておいていただきたいのでございます。
最後に、私は、この自主独立の外交を今日日本が確立する絶好の機会に際会しておるのでございますから、どうしても、この問題を解決するに当っては、米国その他のいろいろな
関係が出てくるだろうと思います。沖繩の問題とも関連が出てくるでございましょうし、あるいは軍事基地の問題とも関連してくるであろうと思います。
政府が自主独立の態度をもってこの外交を推進していく過程においては、当然、今後少くとも日本と米国の安全保障条約あるいは行政協定の根本的改訂問題にも、この
政府といえども及ばざるを得ないと思うのでございまするが、その腹がまえのほどを首相から明らかにしていただきたいのでございます。
鳩山総理大臣は、非常にからだの悪いところを、外務
委員会等にも非常によく出席をしていただいて努力をして下さっておることは、国会
運営上非常に私どもは歓迎するところでございまするけれども、まあ、欲を申しますれば、もう少ししっかりした定見に基いた
責任のある答弁をしていただきたいのでございます。昨日はある問題を肯定して答弁をしながら、翌日はこれを否定し、また翌日は肯定するというようなことでは、結局これは答弁をしないのと同じことでございます。従いまして、以上の諸点につきまして、総理大臣並びに外務大臣から
責任のある明確な答弁を要求するものでございます。(
拍手)
〔国務大臣鳩山一郎君
登壇〕