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田原春次君 去る十日以来、富士山の北側の一帯におきまして、日本国家の独立を無視し、日本民族の誇りを傷つける重大な国辱
事件が進行中でございます。私は、
日本社会党を代表いたしまして、昨日
現地に参り、昨晩から今朝にかけまして
現地を視察いたし、内外それぞれの
人々に会見を求めまして、先ほどこちらへ帰ったようなわけでございます。私は、この問題につきましては、地方自治体の国際紛争に関する件について川島
国務大臣にまず第一にお尋ねし、それから専用地拡大傾向に対しましては調達庁を
監督します西田
国務大臣に
質問し、警察権の侵犯事項につきましては大麻
国務大臣に
質問し、なお自衛隊の治安維持力に対しましては杉原防衛庁長官に
質問し、行政協定改訂問題について重光外務
大臣に
質問したいと
思いますが、これらの
方々の御
答弁のいかんによりましては、あらためて
総理大臣の
答弁を求めるつもりでございます。
第一は、この富士山ろくにおける米国軍隊の不法演習行動に関しまして地元山梨県は、知事以下各層がこぞってこれに反対をいたし、
現地におきましてアメリカ軍に陳情いたしましたところ、それは日本
政府に聞いてくれ。そこで、山梨県は中央官庁に交渉いたしましたところ、それはアメリカ側に聞いてくれということになりまして、いまだにその交渉相手が見つからないという悲劇をわれわれはまのあたり見たのでございます。従って、川島
大臣の所管になっております自治庁は、こういう地方の、たとえば山梨県、たとえば妙義山問題における群馬県というような地方自治体の地域における国際紛争に対して、一体どういう
態度を今までとってきたか、またとるべきものであるかということを、第一に聞きたいのでございます。このことは、たとえば名古屋郊外における小牧飛行場の拡張問題も今進行している。あるいは福岡市内の板付飛行場に対しましても、新たに拡張しようという動きがあるのでありまして、これらが地元民を不安に陥れ、しかしながら、その交渉相手が見つからぬうちに、どんどん工事が進むという非常に大きな問題でございますから、自治庁のこれに対する
答弁を第一に要求するものであります。
第二点は、西田
国務大臣に対する
質問であります。これは調達庁の福島長官に尋ねる筋でありますけれ
ども、本日は
現地交渉をやっているということを聞きますので、
監督大臣である西田
国務大臣に聞きたいのであります。
御承知のように、最近の新聞の報ずるところによりますと、新たにまたまた飛行場が拡張される計画が進んでいるように承わっております。たとえば横田飛行場、たとえば立川飛行場、たとえば愛知県の小牧飛行場、たとえば福岡の板付飛行場、あるいは新潟飛行場、木更津飛行場等が拡張されるということに新聞は伝えている。拡張される段になりますと、いずれはその付近の農地を強制接収する、あるいは、はなはだしきは宅地を接収するというような形になるのであります。さらに、その飛行場の拡張問題以外に、通路の通行禁止問題というものもいまだにくすぶっている例が一つある。それは福岡県の小倉の中心地の旧城内の通路禁止問題というのでありまして過去三年間、いまだに解決しておらないのであります。かように、最近の傾向は、占領時代と少しも変らず、独立しているにもかかわらず、一歩々々実体が取り上げられていくような傾向になっている。
およそ、協定というものは、わが方の利益のために結ぶべきものであるにもかかわらず、行政協定を結んでおりましても、あしたに板付の飛行場を、あるいはタベには富士山ろくをというように、次々に召し上げられているような傾向になっておりますが、これに対しまして、昨日の予算委員会における福島長官の
答弁の中には、たとえば富士山ろくの問題に対しましては、日米、すなわち山梨県と
現地における米国軍との双方に行き過ぎがあるというような
答弁でごまかしておりますけれ
ども、私は断じて日本側には行き過ぎなしと
考えるのであります。なぜかと申しますと、アメリカ側は、協定を無視して、現に実力を発揮して実弾演習をやっているのであります。山梨県の方は、それは困るという言葉をもって反対しているにすぎないのでありまして、山梨県側において、すなわち日本側においては、何らの行き過ぎはない。一方的な行き過ぎであると思うにかかわらず、福島長官は、双方に行き過ぎがあるとして
答弁をごまかしております。こういう
態度は最も日本
国民として悲しむべきことでありまして、われわれは、協定の精神に立ちまして、協定通りに実行してもらわねばいかぬと思うのであります。しかも、皮肉なことには、十日から始まりました富士山ろくにおける実弾演習は十四日で終るのであります。実際的にはあすで終了することになっております。従って、上級機関との間の協議をやると、こう言いましても、協議の時間をあさってまで引き延ばされますというと、ついに第一回の五月の射撃演習は終ってしまうということになるのであります。
現地に行ってみますと、この精進湖側の新しい砲座からA地区といわれます
方面へ射撃演習をやっておりますが、大体距離において三里半、ほぼ十マイルのものであります。十マイルくらいの距離の大砲の演習というものは、私は、今後の戦争においても大して重要性はないのじゃないか、そのくらいのことをやるのならば、何も反対をするわが日本の領土内においてやることなく、むしろ国境くらいで演習をやったらいいのだと思うのであります。(笑声)そういう点について、一体調達庁あたりからアメリカ側に、向うへ行ってくれというような話をしたかどうかということも聞いてみたい。
問題は、お互いに
考えていかなければならぬことは、敗戦によって国が滅びるのではない。卑屈な
態度が国を滅ぼすのであります。今日のように、協定があるにもかかわらず、この協定を迫る力を持たない、もしくは自信を失っているところに、私
どもは、今の
内閣の実力を知ることができ、はなはだしく不満を感ぜざるを得ない。このことは、
現地に行ってみますと、
現地民はもとより、県内の労働団体等もひとしくこの点を心配いたしまして、日本民族の誇りを傷つけるような、あの傍若無人な演習は即刻やめてもらいたい。——およそ二百名からの青年諸君が砲座の前にがんばって、これらの青年の力によって阻止しようとさえしておるのでございます。これを、
会議また
会議によって、うやむやのうちに、あさってまで延ばして、演習を終らしてしまうということは、もってのほかでありまして、西田
国務大臣のこれに対する御
見解を聞いておきたい。
第三点は、警察を担当します大麻
国務大臣に対する
質問であります。現場に行ってみますと、その新しく作りました臨時の砲座の周辺千ヤード四方になわを張りまして、立ち入り禁止ということになっている。これに対して、
現地の住民並びに労働組合の
人々が、現場に押しかけて、その演習しております米軍に交渉しようとしますと、立入り禁止内であるからというので、時にはおよそ二百人の山梨県の警察官がこれを阻止しているという状態でありまして、まことに私は悲しくなったのである。なぜならば、きのうの福島長官の
答弁の中でもわかりますように、確かにアメリカ側には行き過ぎがあると言っている。協定または調整という言葉を無視してやっていると言っておるのでありますから、従って、その無視してやっていることに対して、千ヤードのなわを張って、この中に入っちゃいかぬと言うことは、協定無視ということをむしろ合理化して、当然のような形になってくると思うのであります。警察官の
態度によりますと、その立ち入り禁止地区に日本側が入るというと、刑事特別法の第二条で引っぱると言っておるのであります。私は
現地において言いました。引っぱるべきものはアメリカの軍隊じゃないか、われわれが日本の領土に入っていくというのに、協定もまだできてない、上級機関に話をするという間に、なわを張って日本人を引っぱるというのはあべこべではないか、この立ち入り禁止は回れ右をしてアメリカの方を引っぱれと私は言ったのであります。(
拍手)従って、警察担当の大麻
国務大臣といたしましては、直ちに立ち入り禁止を解くか、しからすんば、逆にアメリカ側を追っ払っていくかという決意ありやいかんということを承わりたい。(
拍手)
第四点は、杉原防衛庁長官に承わりたい。昨日の社会党の小平君の予算委員会における
質問に鳩山首相は答えて、演習を一方的に中止させる
方法なしと言っているのであります。これは最もけしからぬ
考えであると思う。たとえば、行政協定の違反を犯した場合に、これを阻止する
方法がないということを鳩山首相は言っているのであります。そこで、自衛隊の問題になるのでありますが、自衛隊法第三条によりますと、「必要に応じ、公共の秩序の維持に当るものとする。」こういう言葉が載っているのであります。いかなる時期が「必要に応じ」であるか、いかなる時期が「公共の秩序の維持」に当るものであるかということは、この問題に関する限り、
現地に至ってアメリカ軍を追っ払ってもらいたいと思っている。(
拍手)なるほど自衛隊の装備はアメリカのまねをしているようでありますけれ
ども、私は、少くとも、かような不法な演習に対しましては、今こそ、私は、立ち上ってアメリカ軍を帰ってもらうように一つやってもらいたい、かように
考えるのであります。かような点について傍観をしておってよいかどうか、この点をお尋ね申し上げたい。
次は、重光外務
大臣にお尋ねするのでありますが、なるほど調達庁は日米行政協定に基きまして当面の問題を
処理していくのでございますけれ
ども、現われておりますような富士山ろくの演習問題を初めといたしまして、飛行場の拡張、あるいは海岸面におきまして、これは九州や千葉県に起っております問題でありますが、実弾演習に伴う漁場の損害の補償の問題等、各地に問題を起しております。従って、この辺で行政協定を破棄するか、あるいは改訂する用意があってしかるべきものだと
思いますが、これに対する
見解いかん。行政協定第三条の三には、使用する区域内の作業は公共の安全に妥当な考慮を払うべきものである、こういうことがうたってあるのであります。従って、今、富士山ろくの一例を申しましても、断じてこれは公共の安全に妥当な考慮を払っていると思えませんから、この点をつきまして、行政協定の改訂を迫るか、あるいは進んでその廃棄を要求すべきものであると
思います。たまたま行政協定の第二十八条にはかような項目が書いてある。それは、いずれの当事者でも、この協定のいずれの条文もいつでも改訂を要求し得るということになっておりまして、行政協定に対する改訂要求は、いかなる時期においても、自由に、双方のどちらからでもできるのでありますから、問題の起っておりますこの際、また過去において幾多の問題の山積いたしましたことから見まして、直ちに行政協定改訂の申し入れを重光外相はやるべきではないか。これに対する重光外相の
見解を聞きたい。今度の
事件はテスト・ケースといわれておりますが、このテスト・ケース、すなわち、これをもしうやむやにいたしますと、次から次にアメリカ側はやってくると思う。われわれは、アメリカに対しましては初めから援助よりも貿易をという
態度をとっておるのでありまして、日米間においては、物ごいのような、お金もらいのような
態度で外務外臣がアメリカにやってもらいたくないのであります。従って、まず行政協定の廃棄を、今こそ絶好の
機会でございますから、要求し、実現し、名実ともに日本民族が独立を実現した後にわれわれは初めて次の段階に進むことができるのではないか、こう
考えております。
以上の点に関しまして、先ほど申しました順序に従って御
答弁を願いたい。御
答弁にして満足ができませんならば、
総理大臣にあらためて
答弁を要求するつもりであります。(
拍手)
〔
国務大臣重光葵君
登壇〕