○西村彰一君 私は、
日本社会党を代表いたしまして、数項目にわたって
鳩山内閣総理大臣及び
関係国務大臣に
所信をただしまして議会を通じて
全国の
国民諸君に知っていただきたいと思うのであります。(
拍手)
先日来、
政府の
施政方針演説及びこれに対する
質疑をいろいろ伺っておりますと、
わが国の八千八百万の
国民の大半を占むる農山漁村民に対する事柄が、本日になってやや現われたのでありますけれども、非常に少いことを痛感するものであります。
鳩山総理大臣は、
農業はこれを育成しようと思っておるけれども、
財政の
関係その他でなかなか思うようにいかないというようなことを申しておられます。私は、主として
食糧、
農林水産業に関することについてお伺いをいたしたいと存じます。
鳩山内閣は組閣以来やがて半年になりますけれども、
全国の農山漁村の人たちは、現
内閣は
一体農業、林業、水産業というようなものをどういうふうに
考えておるかということを非常に不安に思っておるのであります。これは、
日本民主党が、まあ申し上げれば寄木細工のようなものでありますし、また、ややもすると、
民主党は憲政会、商工党の後身のように思われておる点もあるのでありますけれども、また
関係の
農林大臣などは、ややもすると米麦
増産を軽んずるような言動を議会の外においてなされて、あとでこれを取り消される、こういうようなことがあり、(
拍手)また、MSAの援助で、買う必要のないところの外国産の小麦がどんどん入って参りましたり、また、内地において牛乳や乳製品が相当洪水をいたしておりまするのに、幾ら
政府に注意をしても、外国産のバターやチーズが市中にはんらんしておる。こういうような状態でありまするから、これは不安に思うのは私はもっともしごくであると思うのであります。(
拍手)
総理の
演説におきましても、
国民生活の安定について
農林、水産、鉱業の生産と貿易を盛んにして消費生活を豊かにすると言っておられます。
そこで、第一にお伺いいたしたいことは、
食糧政策に対するところの
政府の
根本理念であります。
総理は、いたずらに権力をふるって独善に陥ることなく、あくまで謙虚な
気持で各派の
意見に耳を傾けて国政の審議に当りたいと言っておられますが、本日の同僚議員の
質問に対しては、必ずしもこれに該当しておらないということは、すこぶる遺憾に思うのであります。(
拍手)
政府は、四十二万戸の
住宅を確保するということを、えらく一枚
看板に、ておられますけれども、
農林、水産について、真剣に、かつ具体的に、生産及び貿易を盛んにするという根本
方針が、この
昭和三十
年度の
予算に具体的に盛られておるかどうか、こういうことなのであります。貿易を盛んにするということは、国産品をできるだけ多量に外国に輸出するということでありまして、国内にたくさんあるところの乳製品や内地
食糧を圧迫するような、外国からたくさんの
食糧を輸入するということではないのであります。
食糧増産に必要な
土地改良とか開拓とか、あるいは指導奨励の経費を
政府は減らしておらないように言われますけれども、
農林省の
予算を見れば相当な減額を見ておることは一目にわかるのでありまして、これは詭弁に類すると
考えられます。未墾の
土地に多数の引揚者を追い込んでおいて、そうして
食糧増産の責任を負わせながら、その後、
予算がないからというので、これを見殺しにしておるような例が随所にあるではありませんか。(
拍手)
また、
増産には各種の
補助施設のほかに、米麦その他の農産物の
価格というものをはっきりきめていかなければならないのに、それらに対する
価格を暫定的だというようなことに放任しておいて、そうして各種の補償を行なっておらないということも、これまたすこぶる遺憾なことであります。
わが国の
食糧の自給度を高めるということは、万難を排してこれは進めていかなければならないことであります。
食糧輸入のための外貨の支払いは、主食だけでも、
昭和二十九
年度においては実に四億七千四百万ドルに達しておるのでありまして、
大蔵大臣は、
昭和二十九
年度において三億四千万ドルの出超があったといって自慢しておられまするけれども、昨年は比較的
食糧が豊作であったために
食糧の外貨支払いが少かったことによるのでありまして
政府の
努力でも伺でもないのであります。国際貸借の見地から申しましても、また
農家の経済を豊かにし、消費者の生活を豊かにする面から申しましても、経済自立の根本
方針は
食糧の
増産にあるのでありまするが、
一体、
政府は、
食糧の
増産ということを、
ほんとうにどういうふうに
考えておるか。従来、
食糧増産の五カ年計画とか十カ年計画というものがございましたが、これは大体一カ年に百五十万石とか二百万石の
増産をするということを目標に掲げておりましたが、自立経済の六カ年計画においては、米換算これを九十三万石といたしております。これは、私は、
食糧の自給ということを口にはいろいろと申しまするが、現
内閣が
食糧の
増産を非常に軽んじておるところがかような
数字に出てきておると
考えるのであります。
食糧増産を
考えるならば、限られた
土地において
増産するのでありまするからして、申し上げるまでもなく、生産コストというものは加速度的に
増加していく。そうすれば、生産
要素であるところの
農地の拡張と、その
土地の改良というものは
国家の責任であります。
国家において全額を補償すべき筋合いのものであると
考えるのであります。その
補助金を大幅に減らしておいて、ただいたずらに
農民に
増産をしいてしかもその責任を回避しておるというのが、現
内閣の
態度であると私は思います。(
拍手)計画の目標をいたずらに過大に見られては、
農民こそいい迷惑でありまするけれども、国内米麦生産目標を一旦きめましたならば、それに向って—総合
食糧増産というようなことでごまかしたり、外国
食糧が安ければどんどん輸入して、全体としての国際収支のバランスを農山漁村民の犠牲において改善しようとしておるのも、これまた現
内閣の
ほんとうの腹ではないかと私は
考えます。(
拍手)こういう点を、
総理大臣は
一体どういうように
考えておられるか。
先ほど来、
米価の問題につきましてもいろいろ言われておりまするが、
河野農林大臣は、
予算米価をそのまま暫定
米価と見ていこう、豊作であるか凶作であるかわからないから、こう言うのでありますけれども、こんなことで、
農民に生産意欲、供出意欲を強調して、
わが国の
食糧問題の解決が
ほんとうにできるかどうか、こういうことを私は危ぶむものであります。二言目には
米価審議会に相談をしてと言われまするが、今まで
米価審議会の答申がそのまま
政府の案となったことは一回もないということは、皆様御承知の通りであります。(
拍手)いずれにいたしましても、
米価は常に一定の限度に抑制されてしまう。そうなれば、生産コストの引き下げのためには、肥料であるとか、あるいは家畜のえさ、飼料、農薬、農機具などというような主要生産資材を、これまた適正
価格に抑制するということが、生産維持及び
増産に絶対に必要なるところの保障と言わなければなりません。
また、畜産
関係についても、これが
増産に対してサイロをこしらえるとか、あるいは家畜の購入資金の利子補給をやるというようなことでもってお茶を濁して、飼料対策そのものに具体的の筋が入っておらないために、乳価の暴落を見て、現在、多数の
農家は、せっ
かく買ったところの牛を二束三文で手放してしまう。また、大都市におけるところの乳牛業者も、極端な飼料高と乳価安でもって、いずれも重大なる危機に瀕しております。
政府は、
国民所得が四%
増加してきただの、また
国民生活安定の徴候がぼつぼつ見えてきたというような勝手な御託を並べておられまするけれども、農山村及び都市中小企業者の実情は、決してそんななまやさしいものではないのであります。よろしく、
政府は、声なき声を聞いて、世情の
ほんとうの根底を洞察することを忘れてはならないのであります。
また、水産
関係におきましても、何ら積極的の
施策を講じないばかりではありません。ビキニの水爆被害について、いたずらに
アメリカに遠慮して、十分な補償の方策も、また今後の対策についても
考えがございません。
アメリカが提供したところの二百万ドル、七億二千万円は、単なる慰謝料だと言もれて、具体的補償については相手にされておらない。このことについては、後刻さらに
農林大臣に
質問する
考えでございます。
以上、
農林水産業の生産を豊かにするという
総理の主張はこれを一応よしとするも、その具体的の裏づけ、いな、これに対するところの現
内閣の
根本理念というものが
一体どこにあるか。経済保障といい、
社会保障というからには、それは真の保障でなければならないのでありまして、
考えてはおるけれども、金がないから、
財政的の事情が許さないからということであってはならないのであります。ただ
国家の要請によって責任だけを負わされて、結局苦しむところのものは農山漁村民であるということになります。現
内閣は、
施政方針演説において、すでに
農林、水産の
増産を
公約しておられるのでありますから、これを実行するがために、
米価の決定、
農民負担の軽減、肥料、飼料等の重要資材の
価格抑制等について十分なる責任をとるところのお
考えがあるかどうか。それとも、いたずらに自由経済の声に引きずられて、一部資本家ないしは企業会社に御遠慮なさって、さようなことは実際はできないかどうか。不必要に
アメリカ政府に引きずられて、ただ自衛隊の増強をすることだけにきゅうきゅうとされて、八千八百万の
国民の半分を占めるところの農山漁村民を経済的並びに社会的に防衛するということをお忘れになっておられるのではないか。(
拍手)この点について、
内閣総理大臣の責任のある明確なる
答弁をお願いをいたしたいのであります。
第二には、
農民の税負担の問題について
大蔵大臣にお伺いをいたしたいと存じます。
農業所得税については、去る三月、
予算委員会におきまして、同僚議員からも
質問がございましたが、現在公平に見て
農民の負担は過重であるということは何人も疑いません。単に納税の申告を納得ずくでやっておるかどうかという、そういう技術的の問題ではございません。現在、所得税に関しましては、給与所得と事業所得というものに分れておるのでありまするが、給与所得は、これは勤労所得であるからということで優遇されております。体、
農業は事業所得に入っておりまするけれども、
農業は事業であるかどうか。
わが国の
農業の実情は、家族労働を中心とするところの真の勤労労働でありまして、私は
農業所得については特別に考慮する必要があると
考えるのであります。
現在、
農業におきましても、青色申告については、専従者の親族に対しては、今回の改正においては年八万円を控除してこれを経費から差し引くというのが
政府の案でありまするが、
農家に青色申告などをいたずらにしいても無理であります。勤労所得の免税点は今度の改正で二十二万六千円になるのでありまするが、事業所得は十八万五千円ということになるのである。そこで、私は、
農業というものが事業所得ではなく、給与所得と全くひとしいものであるならば、
わが国の
農家の労働人員というものは大体平均をいたしまして二人半でありますが、その世帯主を除きまして、あとの一人半に対して、青色申告によって一人八万円、二人半でありますから十二万円になりますが、この十二万円を
農業所得の場合に考慮いたしまして、十二万円の免税点を大幅に引き上げてやっていくところの
考え方が
大蔵大臣にあるかどうかということを、第一にお伺いいたしたいのであります。
また、もう一点は、従来、
農業所得が、豊作のために、たった二、三万円くらい収入がふえたということでもって、税金が二倍にも三倍にもなるのでありますが、
農業については特に累進税率を軽減して、
農家の生産意欲、供出意欲を起りやすいようにしてもらいたいというのが第二点であります。
また、
農家の固定資産税の評価につきましても、
農家の
住宅は、申し上げるまでもなく、これは作業場であり、また家畜小屋であり、物ほし場で、あります。これらについて特別の考慮を払う必要が私はあると思います。また、
農地についても、現在はその移動が禁止せられて、小作料も固定せられておるのでありますから、その評価額をみだりに改訂して、実際の負担を過重にするということも、われわれは反対であります。これらの点に対して、
大蔵大臣の
農業課税に対する特別の措置に対するお
考えを伺いたいのであります。(
拍手)小作料を固定しておいて、固定資産税が上ったから小作料を改訂しなければならぬというようなことは、私は謀略であると
考えます。固定資産税の実質的引き上げに賛成をせられたところの保守党の人たちの責任でもあると私は
考えるのであります。(
拍手)
大蔵大臣は、これらについて、
農村事情を精査して、これを現実に考慮せられる
考えがあるかどうかということをお伺いいたしたいのであります。
また、
農業金融につきましても、
大蔵大臣はだいぶ御自信のあるようなことを申しておられます。中小企業その他につきましては、相当な考慮を払われたようにも
考えられまするが、
農業金融については、現在の制度でもって
食糧の
増産が可能であるかどうかということを、
大蔵大臣にお伺いいたしたいのであります。
農林漁業金融公庫においても、設備資金等については、ある程度のまかないができておりまするが、
農家が
ほんとうに必要であるところのものは、春の肥料資金であり、あるいは農薬の資金その他の、ごくわずかな、しかもこれは半年かそこいらの短期の資金であります。これらについて
日本銀行は、
農林中央金庫の金を押えつけて
日本銀行に引き揚げておりますけれども、かような意地悪なことをしないで、もっと農山村に対するところの資金源を
昭和三十
年度においては豊富にせられて、各府県で行なっておられるところの
農業生産資金に対する利子補給、あるいは保険制度というようなこまかな
施策に対して、
大蔵省において助成をしていかれるところの
考え方はないかどうか、こういうことを申し上げたいのであります。これに対する
大蔵大臣の御
意見を伺いたいと思います。
第三は、肥料及び飼料の問題であります。これはすでにたびたび問題になって、
農林大臣からも御
答弁がございましたが、
〔副
議長退席、
議長着席〕
去る二月、硫安一かます八百二十五円に対して、たった五円、はがき一枚ぐらいの値引きを行われただけでは、肥料問題の解決はできません。(
拍手)私は、現在
農林省の
予算の中に相当の
補助金がございまするけれども、これはただ単に農山村に対する
補助金であるとは
考えておりません。これは、
農民とすれば、経済的立地条件を無視して
食糧増産を断行しておるのでありまするから、それに対する
国家の補償金でありまして、
考え方を変えまするならば、消費者はもっと米を高く買わなければならないのでありまするけれども、労働問題その他の
関係がありまするので、安くこれを配給するから、消費者に対するところの補給金であるとも
考えられるわけであります。いつも問題になります
米価の決定について、一般物価の
関係とか、
国民生活、労働攻勢の立場から、再生産のための補償に十分なる
米価の決定ができないということでありましたならば、前述のような生産に必要なるところの肥料、飼料のような資材については、
価格抑制の方法を講じて
国家において行政権の発動によってこれを処置していかなければならないと
考えるのであります。
食糧増産が今日のようにやかましくなかった時代におきましても、肥料統制法というものがありまして、
米価と肥料
価格との均衡を得るように、
政府は肥料会社に対して行政権を発動し、場合によっては肥料
価格の公定を行なってやって参ったのでありまするが、現在においては、
米価だけいたずらに抑制されて、これに対する十分な補償はなくて、しがも肥料や飼料は一部会社や資本家がもうけほうだいであるということは、あまりにも片手落ちと言わなければならないのであります。(
拍手)(「需給安定法ができた」と呼ぶ者あり)これも、需給安定法があるとか、あるいは酪農振興法があるというようなことでありますけれども、これらはいずれもただお題目を並べるだけでありまして、その
財政的、経済的の基礎もございません。また、飼料の
価格、肥料の
価格についても、ただ腰だめでもって若干えさを売ったり買ったりしているだけでありまして、確たる基準がないのであります。かようなことであっては相ならないのでありまして、
予算がなければ
予算のないなりに、
河野農林大臣は、もっと徹底的に、いずれ研究するというようなことでなくして、肥料や飼料について具体的な指示
価格あるいは公定
価格の制度を設け、行政権の発動によって、肥料会社にも十分なる監督を行うとともに、
農村に対しても十分なる生産補償を与える、こういうことをお
考えになるところの
考え方がないかどうか。いずれ研究をするというようなことでありましては、かりに私が満足をいたしましても、
全国の
農民は決して満足をしないと
考えられます。(
拍手)
第四は、主として病虫害等によりますところの
農業災害の
国家補償の問題であります。
わが国の
農業経営はだんだん集約的になって参りまして、その経営が外国にも見られないほどに高度化して参りましたために、特に米麦作に対するところのいもち病その他の災害というものは非常に多くなって参りまして、年々五百億以上に上ることが往々にしてあるのであります。現在、建物、
住宅の火災防止については、御承知のように消防の制度があって、早期にこれを発見して防火し得るところの制度になっております。しかも、その経費は、たといそれが個人の失火でありましても、あとになってガソリン代やポンプの修繕代を個人から要求するということにはなっておりません。また、措定伝染病でありますところのコレラ、ペストのようなものにつきましても、伝染病予防法によりまして、その経費は
国家及び公共団体が負担することになっております。
農業災害は、申し上げるまでもなく、まさに天災でありまして、いかに周到なる注意をもってするも自然発生を見てうっかりしておるというと、数日の間に蔓延して、取り返しのつかないことになることは、御承知の通りであります。われわれは、
農業災害防除法というものを設けて、
食糧増産に対するところの
国家補償の見地から、病虫害の発生を見たときには、町村及び
農業協同組合が直ちに農薬を入手してこれが防除に努むることとして、その所要経費はこれを
国家において負担するところの制度を確立いたしたいのであります。本
年度の
予算においては、災害防除の
予算すら、二億八千万ほどでありまするけれども、逆に削減をせられておりまして、予備費もごくわずかでありまするから、いざ災害の発生ということになりますと、またいざこざを生ずることは火を見るよりも明らかであります。本年の天候状況は必ずしも順調でありません。
前述のごとく、
農業が世界まれに見るほど集約的になればなるほど病虫害の発生は大きいのであります。九州
地方においては、すでに麦に対して相当な被害があって、同僚の議員諸君はその善後処置に非常な苦心をしておられるような状態であります。病虫害が現実に現われてから
農業保険によるところの多額の分担金を
国家が負担するというような制度を改めて、
農業災害防除法のごとき制度を確立するところの
考えが
農林大臣にあるかどうかということをお伺いいたしたいのであります。(
拍手)
また、
食糧増産に特に重大なる
関係のあるところの産米の集荷制度の問題でございます。これはすでに同僚の議員諸君からいろいろ御
質問なされましたので省略をいたしまするが、事前の買付制度、予約買付制度というものを、
一体農林大臣はどういうお
考えでもって作られたか、こういうことに対してまだ御
質問がないようであります。おそらく、これは、今よりもよくしよう、米をたくさんに入手のできるように、また
食糧事情をよくしようというためにこれを設けられたことは間違いがないと思いまするけれども、
米価は暫定
米価であって、豊作であるか凶作であるかわからないから、とりあえず暫定
米価で九千七百三十七円でいく、肝心のことは
米価審議会で相談をしてきめる、こういうふうに言っておられまするが、
農家は、すでに田植も始まりまして、ことしも豊作ということで非常に張り切っておるのであります。ここで
考える以上に、
農家は、いかなる方法、いかなる
価格でもって粒々辛苦の米麦が買い上げられるかということに非常な関心を持っておるのであります。ただ思いつきでもって改善をせられて、
大蔵省に相談をしなければ供出促進奨励金も思うようにはいかない、また免税の点もこれから
大蔵省に相談をしてからきめる、こういうようなことであっては絶対に私はならないと思うのです。(
拍手)そのくらいであるならば、そんなことをやるということを
新聞に発表したり、あるいは
考えない方がいいのであります。ただいたずらに
農民を惑わして、また長年今までいじめつけられたような方法でもって、二束三文で米を強制的に買い上げられるのではないかという不安を、すでに
農民はたくさん持っておるのであります。
河野農林大臣は、予約買付制度をやられれば、米がうまく集まり、
農民も喜んで、
農家の経済が豊かになるというお
考えであるかどうか、この点をはっきり議会を通じて
農民諸君に知らしめていただきたいのであります。(
拍手)
最後に、私は、第六でありまする、が、ビキニの水爆実験に関する被害の問題につきまして、外務
大臣及び
農林大臣にお伺いをいたしたいのであります。
一昨日、同僚の成田議員がすでに御
質問になりましたが、
答弁が非常に不徹底でございまするので、さらに突き進んで御
質問をいたしたいのであります。いわゆる福龍丸の事件は、御承知のように、
昭和二十九年の三月十六日に起りました。その被害の賠償について、
政府は、本年の一月四日、米国
政府に損害賠償として六百余万ドル、邦貨にいたしますと二十六億円というものを要求したのでありますが、その三分の一にも達しないところの二百万ドル、すなわち七億二千万円というものを慰謝料名義をもって受け取っておるのであります。しかして、これをもって対
アメリカの
関係が一応終了した、妥結したということになっておることは、遺憾しごくなことなのであります。しかも、
政府は、その七億二千万円を一月四日に
アメリカ政府から受け取っておきながら、これを
日本銀行に無利息で預け入れて、それから無為にして四カ月を経過し、一昨日の四月二十八日になって、ようやくその配分を決定したという始末であります。その間、
政府は、その配分がおくれたために、漁業者及び漁業流通業者が非常に困るだろうというので、二億三千万円の短期資金を預金部の運用資金から短期に融通いたしました。しかしながら、その期限は三月三十一日であります。三月三十一日にまだその配分がきまらなかったのでありますけれども、
政府が世話をやいて貸した金であるから返さなければならないというので、強引にこれを三月三十一日に業者から引き揚げております。これがために、業者は、
日本銀行には七億二千万円の無利子の金があって、当然もらうべき金であるにもかかわらず、それを横目でにらみながら、高利の、日歩二十五銭、三十五銭というような金を借りて、これを預金部に支払っておりました。しかも、七百九十万円に上るところの無意味な利息まで払わされておるというような状態でありまして、かようなことをして水産業者に水産の
増産をはからせるというようなことは、これはもってのほかであると思うのであります。(
拍手)そこで、私のお伺いいたしたいところの第一点は、外務省当局が、当初の要求において—マグロ漁業者は、水爆実験によって、福龍丸その他の実際の被害はもちろんでありまするが、一般の生産者のマグロの
価格というものは非常に下ったのであります。百五日間の、下ったところの、その下落の著しい期間の損害賠償の十三億数千万円というものを、
農林省を通じて外務省に要求したのであります。これは当然
アメリカに対しても要求し得るところのものであるにもかかわらず、外務省は、これは間接の損害であるからということでもって、これを
アメリカに対して要求をしなかったのであります。この点について、外務省の当局に重大なるところの過失がなかったかどうかということを外務
大臣に伺いたいのであります。(
拍手)直接汚毒は受けなかったけれども、これによって一時マグロの生産者
価格というものが三割から四割の下落を見たのでありまして、これは、国際法上の慣例から申しましても、当然要求し得るものであります。現に、
アメリカは、カナダのトレールというところにある溶鉱炉—これは
アメリカの資本が若干入っておりますカナダ
政府の溶鉱炉であります。この溶鉱炉の煙毒によりまして、
アメリカの地域内の森林が非常に被害を受けて、その近所の畑地の地代も非常に下落をしたのでありまするが、
アメリカは、これに対して、森林の直接被害はもちろん、地代の値下りの損害に対してもこれをカナダの
政府に要求して、一九四一年に、それだけの損害賠償額というものを完全に受領したところの事例があるのであります。私は、思うに、外務当局が、単にマグロの業者が損害として一般の値下りまで虫よく要求しておるのだから、いいかげんでよい。—こういうようなことは、国際法上の慣例なりその他の事例について十分なるところの研究調査を行わないで、言葉を変えて申しますならば、マグロの業者や漁業者の立場というものを軽視して、外交
交渉の上に重大なるミスがあったということを確信するものであります。(
拍手)
重光外務大臣は、外務当局にさような重大な過失がない、こういうことを明言できるかどうかをお伺いいたしたいと思うのであります。
第二は、去る三月、参議院の水産委員会においても、水産委員の方々から鋭く追及を受けた点でありますが、
政府は、生産者の
価格の値下りはこれを認めないで、
アメリカ政府に対してはこれを要求しませんでした。その過失、責任は免れないのでありまするが、外交不再理の原則といたしまして、これを再び
アメリカに要求せよということは私は申しません。しかしながら、二十六億円というものは、
日本政府がこれを認めて
アメリカに要求したものでありまして、慰謝料として七億二千万しかもらわなかったから、あとは知らないというようなことが、
一体できるかどうかという点であります。
わが国憲法第十四条には、すべて
国民は、政治的、経済的、社会的
関係において平等であって、差別されてはならない、と明記されております。漁業
関係者は、前記の差額十九億円をみだりに無視されるわけにはいかないのであります。現に、石川県の内灘においてさえ、進駐軍の演習におけるところの損害については、相当に広範な漁業者の損害が、
日本政府によって賠償せられております。憲法第二十九条にも、「財産権は、これを侵してはならない。」、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。」と明記せられております。
政府といえども、漁業
関係のこの財産権を、
アメリカからこれだけしかよとさなかった、
アメリカから来たのは慰謝料だけだから、あとのことは知らないというようなことで、その責任を免れることは絶対にできないのであります。一昨日、西田労働
大臣が、何事も事実を御存じなくして、まあ金を出すというようなことは、一応は出さないというような工合に言っておけば間違いがないというので、同僚成田君の
質問に対して、出す
考えはございませんというようなことを
答弁されたのは、まことに笑止千万と言わなければなりません。(
拍手)
以上二点について、外務
大臣並びに
農林大臣の率直なる御
答弁をお伺いいたしたいのであります。
以上六項目にわたりまして
農林漁業、
食糧増産の重要性に対するところの
政府の
認識を喚起しながら、
政府の簡明にして誠意ある
答弁をお願いいたします。もし不十分である場合においては再
質問を留保して、私の
質問を打ち切ります。(
拍手)
〔
国務大臣鳩山一郎君登壇〕