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1955-04-30 第22回国会 衆議院 本会議 第15号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年四月三十日(土曜日)     —————————————  議事日程 第十四号   昭和三十年四月三十日     午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑(前会の続)     ————————————— ●本日の会議に付した案件  ソヴィエト社会主義共和国連邦との国交正常化目的とする交渉における全権委員任命につき国会法第三十九条但書の規定により議決を求めるの件  日本銀行政策委員会委員任命につき同意の件  電波監理審議会委員任命につき同意の件  日本電信電話公社経営委員会委員任命につき同意の件  議員請暇の件  国務大臣演説に対する質疑(前会の続)  高碕国務大臣のアジア・アフリカ会議についての報告     午後二時三十九分開議
  2. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより会議を開きます。      ————◇—————
  3. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) お諮りいたします。内閣から、ソビエト社会主義共和国連邦との国交正常化目的とする交渉における全権委員に本院議員松本俊一君を任命するため議決を得たいとの申し出がありました。右申し出の通り決するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よってその通り決しました。      ————◇—————
  5. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 次に、内閣から、日本銀行政策委員会委員に安川第五郎君を任命するため本院の同意を得たいとの申し出がありました。右申し出の通り同意するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって同意するに決しました。
  7. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 次に、内閣から、電波監理審議会委員飯野毅夫君及び田上穣治君を任命するため本院の同意を得たいとの申し出がありました。右申し出の通り同意するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって同意するに決しました。      ————◇—————
  9. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 次に、内閣から、日本電信電話公社経営委員会委員井上富三君及び古野伊之助君を任命するため本院の同意を得たいとの申し出がありました。右申し出の通り同意するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  10. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって同意するに決しました。      ————◇—————
  11. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) お諮りいたします。議員小川豊明君から、欧ア各国農業事情調査視察のため本日より本会期請暇申し出があります。これを許可するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって許可するに決しました。      ————◇—————  一 国務大臣演説に対する質疑(前会の続)
  13. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 国務大臣演説に対する質疑を継続いたします。平野三郎君。     〔平野三郎君登壇〕
  14. 平野三郎

    平野三郎君 私は、自由党を代表いたしまして、政府施政方針演説に対し若干の質問をなさんとするものであります。  すでに、わが党の太田正孝田中伊三次両君から、財政経済全般に関し、外交問題に関し、また政局安定の根本理念について、それぞれ質疑が行われたのであります。これに対する政府側答弁は、全くしどろもどろ、都合の悪いことは顧みて他を言うという、すでに鳩山内閣に対する国民の信望は地を払うに至ったとの印象を強くいたしたのであります。(拍手)ことに、太田田中両君の指摘するところにより、選挙中における民主党公約なるものは全く空虚なから宣伝にすぎなかったことが、今や国民の前に完全に暴露せられたのでございます。(拍手)私は、本日は、主として内政を中心とし、これら宣伝内閣公約不履行実態を具体的に追及し、国民の前に明らかにいたしたいと存ずるのであります。  劈頭、まず私は鳩山総理大臣お尋ねを申し上げたいのであります。これらの公約違反は、今ここに昭和三十年度予算を提出するに当って初めて明らかになったことではございません。すでに選挙の最中においてわかり切っていたことであります。すなわち、各国務大臣は、至るところにおいて勝手気ままな放言を行い、あれもやります、これもやりますという調子で、無責任きわまるでたらめを並べ立てたのであります。しかるに、一方、大蔵大臣は、これまた公約と称し、一兆円予算を堅持すると申していたのであります。昨年わが党の編成いたしました予算といえども、最終的には九千九百九十億、いわゆる一兆円予算でありました。昨年に比すれば、本年は、人口増加、たとえば学童数増加による義務教育費半額国庫負担分等は当然自動的に増加するわけであって、前内閣政策を継続するだけでも一兆円内に押え込むことは困難であり、いわんや、盛りだくさんの公約を盛り込むことの不可能なことは、小学生の算術的頭脳をもっても明瞭なことであります。よもや、一国の総理たる鳩山さんにして、これを御存じないはずはありません。  総理は、施政演説の冒頭において、政府は今後あくまでも民主政治の本義に徹して、みずから恥じない行動をとり、わが国民主政治を正しい姿に引き戻して、りっぱに育て上げ、国民議会政治に対する信頼を回復するため最善の努力を傾注すべく深く決意しておる、と述べておられるのであります。およそ、政党公約は、一たび政局を担当した暁には、確実にこれが実現されることによって、初めて政党政治に対する国民信頼が生まれ、議会政治の権威を全うすることができるのであります。しかるに、あなたは、できもしない公約を各閣僚が勝手に放言するのを、できないことをみずから知力つつ、選挙にさえ勝てばよいという気持から、黙ってこれを放任しておられたのでありまするかどうか。もちろんそうとしか思われないのでありますが、これこそ総理のいわゆる謙虚な態度とは正反対のものであると言わなければなりません。総理は常に口を開けば友愛精神を説かれておるのでありまするけれども、出たり入ったり、また出たりした上に、かつての反対党である改進党と手を握り民主党を作り上げたような政治行動が果して友愛精神の発露であり謙虚な態度であるとは、私には了解できないのでありまするが、この点、私はまず総理の御心境をお伺いいたしたいのであります。  以下、私は、各項目について、すでにわが党の太田君からいみじくもタコ予算と折紙をつけられたこの予算案をめぐりまして、いかに民主党公約とかけ離れたものであるかを具体的に明らかにすべく、関係閣僚に対し質問を進めたいのであります。  まず、民主党住宅四十二万戸建設一大看板として掲げられました。この四十二万戸という端数をつけられたことには何か根拠でもありまするのかどうか。聞くところによれば、単に大量建設というのでは信憑性がない、四十二万戸というふうに端数をつければ何となくもっともらしく聞えがよいというような、たわいのない理由に基くものだといわれているのであります。果せるかな、予算案を拝見いたしまするに、昨年度における自力建設分二十万戸を、本年は政府は二十三万戸に水増しをし、さらに自費で増改築する分一万五千戸を加え、合計二十四万五千戸は民間自力建設というわけであります。結局政府出資によるものは十七万戸にすぎませんが、それも、公営住宅が昨年度四万八千戸であったものを、わずかに二千戸増加して五万戸、公庫住宅が昨年度四万戸のものを四万五千戸、公務員住宅二万戸を三万戸にしたにとどまり、わずかに公団住宅二万戸というのが現内閣の唯一の新機軸という情ない状態であります。しかも、公団住宅の家賃は三千五百円以上となりますから、これを利用する階層は国民のごく一部にしかすぎません。  およそ、今日の住宅政策は、低額所得者のための公営住宅を根幹としなければなりません。ことに、住宅環境衛生の必要が強く叫ばれている現状であります。しかるに、政府案によれば、六坪の第二種公営住宅に主力が置かれ、住宅狭小化の傾向が強くなっているが、これは明らかに四十二万戸というばかげた公約につじつまを合せんがための苦しまぎれの結果であるとしか思われぬのであります。ことに、宅地に対する金融措置をストップして、土地に対しては何らの手も打たれていないのはどういうことでありまするか。およそ宅地のない住宅政策というものはありましょうか。まさにこれこそ空中楼閣住宅政策であります。(拍手)今日、住宅に対する国民の真の要望は、かかるマッチ箱式の平家の乱造ではありません。不燃性のアパートでありまして、この際、無責任な公約にとらわれることなく、根本的にやり直すべきものと思うが、政府にその意思ありやなしや、竹山建設大臣の責任ある答弁を求めるものであります。  鳩山内閣の一枚看板たる住宅政策にして、すでにかくのごとき現状であります。いわんや、他の諸政策に至っては全くの空白そのものであって、ただただあきれるのほかはないのであります。社会保障について川崎厚生大臣は至るところにおいて大みえを切られたのでありまするから、われわれもいささか期待いたしたのでありますが、あけてびっくり、軍人恩給健康保険国庫負担の諸問題等、何一つ根本的に解決されたものはなく、厚生省所管事項は全面的に後退するに至っておるのであります。  去る三月二十九日、靖国神社において第七回全国戦没者遺族大会が開かれましたが、その席上、政府を代表し、鳩山総理大臣及び川崎厚生大臣は次のごとき演説を行なっておられます。鳩山総理大臣は、国家のためにお尽しになった遺家族の諸君にお目にかかって感慨無量である、あなた方の家族は国のために命を投げ出したのに、国家としてあなた方にお報いすることの少いのはまことに相済まない、当然受くべきところのことは国家としてもやらなければならぬのだから、今後とも努力します、日本は今大へんな場合に立っておる、どうか国を恨まないで、国のために協力してください、こういうのが鳩山総理大臣のごあいさつであります。川崎厚生大臣は、国に殉じられた人の遺族は、国として当然厚く遇すべきである、この点に立ち、援護法が成立し、軍人恩給が復活したが、今後改善すべき点が少くない、私は、厚生大臣としての責務を自覚し、皆様の要望にこたえるよう努力する、特に民主党意見を参酌し、予算編成過程において十分努力すると申しておられる。さらに、某民主党の幹部は、民主党を代表して、この前の選挙民主党が大きな公約をした、その一つ公務扶助料を文官のそれに近づけることだ、二は公務死ワクを広げること、三は遺族ワクを拡大することだ、この三つは誠実に実行する、民主党は、政調会を開き、本年度において九十億円以上遺族扶助料を引き上げることにした、一兆円予算といわれているが、遺族の心情を思い、ほかの予算を削っても遺族に納得してもらわねばならぬ、われわれは、この公約を守るためには、場合によっては内閣と衝突してもやると述べておられるのである。まさか、あなた方は、そんなことを言った覚えはないとおっしゃいますか。川崎厚生大臣は、団十郎のように大みえを切ることだけはまことにりっぱでありまして、その点においては確かに大臣の資格があると思います。しかし、あなたは、予算編成過程において十分努力すると全国遺家族に対して約束せられたのでありますが、一体何を努力せられたのでありましょうか、はっきりとお答えを願いたいのであります。  また、これは民主党お尋ねをしたいが、あわせて厚生大臣お尋ねを申し上げる。民主党は、三月二十八日、政調会において、本年度において九十億円以上遺族扶助料を引き上げることに決定した、場合によっては内閣と衝突してもやるとまで言明せられておるのであります。私は、この予算案を虫めがねで見ましても、そんな数字をどこにも発見することはできませんが、一体どこに九十億というような内容が入っておるのでありまするか、お教えを願いたいのであります。また、内閣と衝突するというお話でありますが、どんなふうに御衝突になったものでありますか、その辺の真相について、全国遺族に納得できるよう、明快率直なるお答えを希望いたすものであります。  次に、本日私が最も重点を置いてお尋ねを申し上げたいのは、鳩山内閣農林政策についてであります。  まず、鳩山内閣は、日本農村日本農業に対しいかなる根本認識を有せられるかという点であります。私は、日本農業資本主義発達過程において取り残された立ちおくれ的存在であると考えるものであります。すなわち、封建的要素を多分に持ったまま、産業革命の進展についていくことができず、足踏みをしておるというのが、日本農業実態であります。ことに、極端な零細農である。地理的、気象的、人口的悪条件は、悲しい宿命として、商工業とは完全に分離して考えなければならないと思うのであります。ここに日本農業に対する保護助成政策の必要な根本理由が横たわっているのであります。もし政府補助政策をやめて、百姓みずからが創意、工夫、努力によって生産費を切り下げ、国際競争にも耐え得るよう、農家を裸にして自由競争の世界にほうり出そうということは、一つ理想論ではありまするけれども、それでは日本農業は死んでしまうのであります。この点は、近代工業化し、日本農業とは根本的に違うアメリカ農業といえども、政府価格保証政策を採用していることを記憶しなければなりません。アメリカ政府がファーム・ユニオンの勧告をいれて麦の買い入れを実行しておればこそ、麦の価格は安定し、日本はまたそれによって余剰農産物の恩恵を受けているのであります。われわれ自由党が、長年農民政党としての伝統に輝き、農村に根強い地盤を持っているのは、この認識の上に立っているからであります。(拍手)私は日本民主党もまたこの点同様の立場を堅持せられんことを切に望んでやまないものであります。鳩山民主党総裁は、この農政基本についておそらく御同感であろうと思うが、いかがでありますか。労働者はストライキの自由を持っておるが、黙々として食糧増産に励むことを運命づけられておる全国八百万の農家に対しても、鳩山総理友愛精神は何ら変らないと思いますが、総理の御所信お尋ね申し上げるものであります。  また、この農政に対する基本について、一萬田大蔵大臣の御見解をもお伺いせねばなりません。今回の大蔵大臣財政演説の中には、食糧増産はおろか、農という字句は一言も入っておりません。およそ、わが国議会史を通じ、今日まで政府財政演説の中で農業に対し一言も触るるところがなかったということは、この一萬田大蔵大臣をもって嚆矢とするものである。(拍手)空前にしておそらく絶後であると言って過言ではありません。私は、農政に対する一萬田大蔵大臣の御認識について、遺憾ながら大なる疑問を感ぜずにはおられないのであります。この際大蔵大臣の御所信を伺うゆえんであります。  さて、河野農林大臣は、昨年就任早早読売新聞の紙上に次のような意見を発表せられております。食糧増産すべきものなりと、ばかの一つ覚えのように言っているんだ。これは農林行政ではないと思う。戦争中の農林行政では、生産費を下げるとか上げるとかいうことよりも、増産が主だった。これこそ、ここで一ぺん修正されるべき問題だと思う。もっと具体的に言えば、従来の石黒忠篤流のやり方は僕はどうかと思うことなんだ。たとえば、農地改良費に一千億円近い金を使って、そうして果して引き合うかどうか。米を作ってみたら高くついてしまったというのでは何にもならぬ。やはり引き合う米を作らなければいかぬと思う。それから、すぐ農家の二、三男をどうするかと言うけれども、これを農林行政で解決しなければならぬくらいばかな話はない。この談話を要約いたしますれば、結局、土地改良はやるな、安い外米を買えということであります。自由党が長年営々としてやって参りました農地造成及び土地改良事業に対する反対意見であります。さらに、このことを裏づけるように、一萬田大蔵大臣は、三十年度から一千万円以下の補助金は全部打ち切って、五百億円の節約を断行するということを、日本経済新聞十二月二十七日号に発表いたしたのであります。これの犠牲に供せられるものは全部農林関係補助金であり、言いかえれば、日本農業は保護する必要はない、国際農業競争に負けるものは滅びても仕方がないという徹底した農業放任思想であります。この新聞を見た全国農民は、ただ、あぜんといたしたのであります。もしこの新聞放言が農相の真意であるとするならば、遺憾ながら、われわれは、少くとも河野農林大臣を信任することに疑問を持ざるを得ないのであります。(拍手)  もちろん、このことは、国会において大問題となりました。去る三月二十八日、本院の農林水産委員会におい七、この新聞談話が取り上げられ、わが党の足立篤郎君から農林大臣真意をただしたのであります。しかるに、世にも奇怪なることは、河野農林大臣は、これらの新聞記事は全然事実無根である、全く知らぬ存ぜぬと、徹底的に否定せられたのであります。このときの速記録には、「河野国務大臣」「新聞に出ておったということですが、それは今ここであらためて申し上げておきますが、全然そういうことはありません。私は前にお答え申し上げたように、そういうことは閣議で相談になったこともなし、農林省がそれに関係して発言したこともなし、われわれの関する限り政府としては事実無根でございます。あらためてはっきり申し上げておきます。全然ございません。」「河野農村を裸にしてしまうのではなかろうか、裸どころか、そんなことは決して考えておりませんから、ひとつ御心配なく御了承願いたいと思います。」こういうのであります。私どもは、もちろん新聞記事よりも国会における大臣の言明を信用し、大いに安心をいたしたのであります。  河野農林大臣は、さらに、農林水産委員会において、土地改良に関し次のように所信を明らかにせられております。「どこまでも土地改良をして増産をすることが生産費引下げの一番大事な要素であるということにつきましては、長年私も農村関係いたしております者といたしまして、決して見落すわけはないのであります。また、先ほども申し上げました通りに、今までの国際情勢ないしは国内情勢からいたしますれば、増産をしたことがばかばかしいことである、増産一途に集中したことがばかばかしいことであるというような考えは、私自身持っておりません。」「食糧増産は絶対の要求であるという場合におきまして、あらゆる施策をこの一点に集中したことが、決してばかばかしいことであるとか、むだなことであるとかいうようなことは、絶対に私は考えたことはございません。従いまして、今申し上げますように、生産費引下げには土地改良というものは絶対にやらなければならぬものである、これが生産費引下げの第一の前提であるということは、決して私は見落そうとは考えません。」これだけはっきりと新聞放言を否認しておられるのであります。  しかるに—しかるに、問題はここに提出せられておる予算であります。口ではどんな言い回しもできましょう。最後にすべてを雄弁に立証するものは具体的数字であります。農林省関係予算各省予算中最も著しく全面的に後退し、また各種補助金は見るもむざんに打ち切られ、または減額を見ておるのであります。時間がありませんから要約して申し上げまするが、農林省全体で、昨年度九百六十六億円が八百四十九億円と百十六億円の激減を来たし、食糧増産費においては二百億円が百九十億円、災害復旧費に至っては二百七億円が百六十六億円と実に四十億円以上の大激減を来たしておるのであります。これは一体何を物語るか。これでは、遺憾ながら、われわれは、読売新聞記事の方が河野農林大臣の本音であったとしか解釈せずにはいられないのであります。(拍手一体どちらがほんとうでありまするか。河野農政なるものは一体何であるか。全国農民はあなたの真意を見守っております。この際、ほんとうの、偽わりのない気持を、ごまかさないで、この議場を通じて国民の前に明らかにされんことを切望いたすものであります。  さらに、河野農林大臣につけ加えてお尋ねをいたしたいことは、あなたは農村の二、三男対策農林行政の中で解決するほどばかなことはないと言っておられるのでありまするが、これは、農村の二、三男のために耕地の拡張や土地改良をやることはばかげておるということであります。農村の二、三男は町へでも行って勝手にしろということでございまするか。もちろん、狭い国土のことでありますし、均分相続という新しい憲法が農地に適用することのできない矛盾を持っている今日、理想的には移民をすることが必要であります。重光外務大臣は、外交演説の中で、「移民政策は、直接間接人口問題解決の一助として、政府として最も力を注いでおるところでありますが、最近中南米諸国日本移民受け入れ態度は著しく好転し、単にブラジルのみならず、アルゼンチン、パラグァイ、ボリビア及びドミニカその他の国々も好意的態度を示しておる状況であります。この情勢に即応して、できるだけ多くの移民送り出しをなすため、有効なる施策を行う方針」であると述べておられまするが、実は私も昨年政府を代表して移民問題について南米諸国を歴訪いたしましたが、その結果、わが国農村人口問題解決に資し得るほどの自信を持たないものであります。政府のいわゆる有効なる施策とは一体どういうことをなさるお考えでありますか、具体的に御答弁願いたい。また、数字的に本三十年度において何人くらいの南米移民が可能であるかということも、あわせてお答えをいただきたい、また諸外国がいかに日本移民を歓迎すると仮定いたしましても、輸送力が伴わなければ現実に実行できないことでありまするが、政府はこの移民輸送能力についてどういう計画を持っておられまするか、これは三木運輸大臣お尋ねを申し上げるものであります。  次に、大蔵大臣お尋ねを申し上げます。大蔵大臣は、本年度麦価の決定に当り、現行価格は高過ぎる、麦の国際水準にさや寄せする必要があるから再検討を要すると称して、食糧管理特別会計編成要領なるものを大蔵省で作成し、しばしば新聞に公表しておられるのであります。その後、これは法律の改正が必要であることがわかって、にわかに引っ込められたようでありまするけれども、ほんとうにそういうことは全然考えていないのであるかどうか。また、政府は米の予約売り渡し制を実施しようとしておるということを聞いております。しかも、その前提である三十年産米米価は決定しておりません。予算米価は九千七百三十九円で、昨年度手取り価格を下回っている。米穀懇談会の答申は、前年度までの生産者手取り額を基準として定めることをも考慮すると言っているのであります。その他、予約奨励金前渡金免税措置等、何一つとして決定しておりません早い地方はすでに田植えが始まっております。政府一体予約売り渡し制をやるのかやらないのか。政府の確固たる方針をお伺いいたしたいのであります。問題はすべて米価にあると思いまするが、この点、大蔵農林大臣の明瞭なる御答弁を要求いたすものであります。  なお、川島国務大臣に対してお伺いをいたしたいことがあります。政府は、農業団体に対する補助金を大幅に削減し、特に農業委員会職員に対する補助を打ち切り、これを地方交付税の中でまかなわんとする意図を明らかにいたしたのであります。かくのごとき方策によって、窮乏にあえぐ地方財政の中にあって目的が達成し得られるとは全然考えられません。政府農業団体の持つ使命に対してどのように考えておられるのでありますか。農民が組織し、農民の経済的、社会的地位の向上をはかり、国の農政を末端に浸透するとともに、農民の意思を反映する重要な役割を持つ農業団体が、かくては地方財政の中において結局人員整理のほかなく、解消の危機に直面するに至ると思うが、政府一体どうして農政を浸透しようとしておられるのでありますか。かくのごときやり方には川島自治庁長官はおそらく賛成されないことと思うが、あなたの御所見をこの際伺いたいものであります。  それから、文教政策につき一言お尋ねいたしたい。鳩山総理大臣は、施政演説の終りに、特に声を大にして、「国民のかおり高い品性と良知良能にあることはもちろんであり、その意味で教育こそすべての大本である」、政府はそのために必要な文教の充実を講ずるということを述べておられます。また、特に文部大臣には、副総理格ということで、大物文相と称して松村謙三氏を迎えておられるということを聞いております。正直なところ、この文部大臣に対しては各方面で相当期待をいたしておったのであります。しかるに、この文部予算を見ましても、科学振興費、私学振興費がほんのわずかふえておるだけであって、安藤前文相以来声をからして叫ばれた教科書の無償配付、困窮児童対策は一体どこへ行ったのでありますか、松村文部大臣の責任ある御答弁を求むるものであります。  最後に、私は石橋国務大臣お尋ねを申し上げたい。あなたの御演説は、東洋経済の解説のようなもので、単に当面の諸問題を羅列されたにすぎません。政府施策に対する意気込みもなければ情熱もなく、鳩山内閣に対する弔辞演説のごとく、まことにわびしいものがあります。さながら、石橋の名は中小企業者にとって新興宗教の教祖とでもいうほどの魅力があったことは事実であります。しかるに、あなたの御演説の中には、得意の拡大均衡論もなければ、公債発行論も全く影をひそめておるのであります。そこにあるものは、冷やかな一萬田デフレ金融資本に対する屈服の姿のみのように思います。石橋インフレ大臣の御心境を伺いたい。  通産省の予算を拝見いたしまするに、中小企業対策としてわずかに中小企業相談所補助金三千万円が計上されておるだけであります。あれほどインフレの雨でも降るかのように鳴りもの入りで宣伝された石橋財政によって全国の中小企業者に与えられるものが三千万円の相談所だけとは、まさに、これこそ、あいた口がふさがらないということであります。財政投融資の面を見ましても、開発銀行は前年度そのまま、中小金融公庫は、自己資金を保有すると称して三十億のワクは拡大しておるけれども、一般会計からも資金運用部資金からもそれぞれ十億円ずつ出資を減らしておるということは、一体何たることでありますか。これで果して本年度の中小企業対策として御自信がおありになりましょうかどうか、大臣の御信念をお伺いいたすのであります。  以上をもって私の質問を終りまするがすでに指摘いたしました通り、鳩山精神分裂内閣国民の前に馬脚を現わし、ありしのごとく吹きまくった鳩山ブームも、この春の桜の花とともにあわただしく散り去って今や世は鳩山内閣に刑する怨嗟の声に包まれているということを十分御認識の上、謙虚に御答弁あらんことを希望いたしまして、私の質問を終るものであります。(拍手)  時間が多少ありまするならば、答弁いかんによっては再質問を保留いたします。     〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕
  15. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 平野君の御質疑に対して答弁をいたします。第一は、総選挙の際の公約についての御非難でありました。私は総選挙の際の公約は大体実現しておるものと思っております。(拍手)特に平野君の言われた農業についてのお考え方は、共鳴するところもありました。農業は天部分が零細な資本で経営せられ、所得も非常な低水準にあるということは認めざるを得ません。そこで、生産水準を向上したり生活水準を高めるためにやる政府の仕事、つまり保護育成の必安はあると思っております。(「どうしてやらない」と呼び、その他発言する者あり)その点は、やらないではありません。その程度というものは、財政絵済の諸事情をしんしゃくしてやるより仕方がないのであります。これは、しんしゃくして、育成の手続はやっているものと思っております。  他の点は、私に対する御質問ではなく、特に関係大臣の氏名を指摘して御質問になりましたから、その当局大臣より答弁をしてもらいます。(拍手)     〔国務大臣重光葵君登壇〕
  16. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私に対する御質問移民政策の問題でございました。中南米方面の情勢が好転するに応じまして移民政策を推進しなければならぬということは、当然のことでございます。政府は、本年度移民関係の費用として約六億の予算を組みました。そうして、これによって約六千の移民を送り出す計画でございます。その国別といたしましては、御希望に応じて、国別の数字を申し上げます。ブラジルは、北ブラジルでは千五百、南ブラジルでは千、中部ブラジルに五百、アルゼンチンに五百、パラグァイに五百、ボリビアに六百、ドミニカに六百、その他三百となっております。もちろん受け入れ国の希望はさらに大きいのでございますが、しかし、財政の困難な状況及び輸送の困難な状況等の制約がございまして、本年度でき得る計画は以上の通りでございます。お答えします。(拍手)     〔国務大臣竹山祐太郎君登壇〕
  17. 竹山祐太郎

    国務大臣(竹山祐太郎君) 御質問のうちで若干誤解に基く点もありますので、一応私から全体の計画の概要をあわせてお答えを申し上げたいと思います。  お話もありましたように、今回は、従来のやり方である公営、公庫の制度に公団の制度を加えましたのは、公団は民間資金も集める必要もありますためで、これには、現在確定をいたしておりますものは、保険会社から約五十億の資金、それに銀行からなおこれに追加をいたすつもりでありますが、この公営、公庫の制度は従来通りであります。そこで、お話の通り、この三つを合せまして、政府の直接資金によってやります分が十七万五千戸、いわゆる民間自力建設の分が二十三万戸、増改築が一万五千戸はお話の通りであります。この政府の資金によりますものは前年度に比べて約倍額になっております。  なお、民間自力建設についての御心配がありましたが、大体二十万戸に近いものが従来の経験上できておりますが、今回は、この民間自力建設に対しましては五十億の金融処置と、それから特別償却を約四倍にいたします、こと、登録税、固定資産税の減税等、その他土地対策等もあわせて行えば、今の情勢上十分行き得るものと考えております。  なお、公営のやり方についていろいろ御心配がありましたが、この内容を申し上げますと、この中には一種と二種とありまして、二種は国家が三分の二の負担をいたします最も低家賃の住宅のものであります。今回、この分を戸数において約八千戸増加をいたしまして、これに対しましては簡易耐火ブロックのアパートを六千五百戸もふやしております。このアパートは、今お話の通り坪数は小さいのですが、木造と同じ内容を持って、一番新しい建設方式をとったアパートでありますので、むしろ従来よりは改善されていると思います。なお、全体を通じまして、中層耐火住宅、いわゆる耐火建築のアパートは、前年は一万八千戸でありましたのが、今回は三万五千戸にふえておりますし、全体の耐火率は三六%が昨年の耐火率でありましたが、今度の計画では五五%に全体の耐火率がふえております。  なお、いわゆる土地の問題について、何もおやりにならぬというお話でありましたが、前回も申し上げました通り、十億の金を使いまして百万坪の新しい土地造成を行いますほかに、さしあたり東京だけについても約五百万坪以上の緑地の開放をいたしますし、国有地の数十万坪の現物の提供もいたします等、土地に対しましては十分の処置をいたしておりますから、まずこれで心配はないとわれわれは考えております。もちろん、今計画は予算に基く計画でありますから、これは御心配もありますが、それぞれの地方の実情に応じて実行いたすつもりであります。  以上。(拍手)   [国務大臣川崎秀二君登壇]
  18. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) 平野議員の御質問お答えいたします。旧軍人恩給並びに遺家族援護につきましては、本予算におきましても十分考慮をいたしましたし、逐年これを強化いたしていく方針であります。ことに、予算編成の途上におきまして、民主党政調会よりも強い要求があったのと相待ちまして、ベース・アップの一部が実現をいたしました。いわゆる大蔵原案よりも、提出された本予算案は二十七、八億の増加となり、昨年度予算よりも実質上四十七億九千万円の増となっております。恩給受給資格喪失による当然の減少を除きましてもなお十三億の増加となっておることを、御承知おきを願いたいと思うのであります。もちろん、国家財政の制約からいたしまして、当初予期したような施策をいたし得なかったのでありますが、私は、ただいま御指摘の靖国神社の遺族大会でも、もし国家財政上十分の措置ができなかった場合においでも文官との不均衡是正は漸次これを実行する、その際の考え方としては下に厚く上に薄いようにすることが今日最も望ましいものであることを強調いたしまして、最低限、遺族のうち下士官、兵の公務扶助料の引き上げを言明したのでありまして、その考え方は今回の改正増額において貫いたものであることを申し上げておきます。(拍手)     〔国務大臣一萬田尚登君登壇]
  19. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答え申し上げます。  私の財政演説農業のことに触れてないという点について御批判がありましたが、実は大いに述べようと思ったのでありますが、ちょうど経審長官が経済演説をなされるので、そちらの方に譲ってあるのでありまして、この演説では、いかに鳩山内閣日本民主党食糧増産を中心として農業に留意をしておるかということが十分演説の中に示されております。御了承願います。(拍手)  なお、米麦の問題につきまして新聞にいろいろと出ておりますが、あれは事務的にああいう考えもあるという程度であるのでありまして、何も私の意見というわけではありません。予算には、米についても麦についても、大体二十九年度の生産者価格考えて計上いたしてあるわけであります。(拍手)     〔国務大臣三木武夫君登壇]
  20. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) 中南米の移民輸送能力についてお尋ねがございましたが、現在ブラジル丸・アメリカ丸、アフリカ丸三隻が就航いたしておるのでございますが、大体の輸送能力は約五千名であります。しかしながら、本年度の計画からいたしますれば、多少不足をいたすわけでございますので、就航度数を少しふやして、できる限り自国船によって移民を輸送したい考えでございますが、しかしながら、今年度は外国船に多少よらなければならぬ点があるかとも考えておる次第でございます。第十一次造船には移民船の新造は予定いたしておりませんが、いろいろな方法を考えまして、移民輸送に万遺憾なきを期したい覚悟でございます。(拍手)     〔国務大臣河野一郎君登壇〕
  21. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お答えをいたします。  土地改良につきましては、議会で私がお答え申し上げた通りでございまして、その予算上に多少前年よりも滅っておる部面もございますが、これは、御了解いただけますように、本年の予算の編成によることでございまして、特別に土地改良を減らすというような意思ではないのでございます。また、つけ加えて申し上げたいと思いますことは、愛知用水等の費用を加えれば、決して前年度より土地改良費が減っておることになっておりません。  第二の点について申し上げます。次三男対策につきましては、御承知の通り、これは、ただ単に農村対策としてのみ考えることではないのでございまして、一般の経済政策ないし、は人口問題等々を勘案してやっていくべきものだという意見を私は持っておるのでございまして、決してこれを農村として放擲するという考えは持っておりません。この点につきましては、これが対策の予算について、前年度より、わずかでございますが、ふやしておりますことについても御了解いただけると思うのでございます。  第三に、米麦の価格についてでございますが、これは、予約制度と関連いたしまして、いろいろ御指摘でございましたけれども、これは、たびたび申し上げますように、予約制度をいたしますにつきましては、基本的な価格考え方を十分農村に御理解をいただきまして、その御理解の上に立って、予約するに当ってこれだけのことを、たとえば減税をするとか予約奨励金を出すとかいうことだけ決定すればいいという考え方も、一つ考え方として私は考えられるのじゃないかと思っておりますが、いずれにいたしましても、米価審議会の方々のお集まりを願って、具体的にこれをどうするかということにつきましては、その御懇談の結果に基いてやって参りたい、こういうふうに考えておるのでございます。  お答え申し上げます。(拍手)     〔国務大臣川島正次郎君登壇〕
  22. 川島正次郎

    国務大臣(川島正次郎君) 地方交付金は、二十九年度に比べまして三十年度は百六十二億七千万円増加をいたしております。この中には農業団体の経費の一部も入っておるのでありますが、農業団体に対する直接の補助金が減額されました場合におきましては地方財政は非常な困難な立場になりますけれども、農業政策を重要視する意味におきまして、財政の許す限り団体の健全なる運用をいたすようにはかりたい、かように考えております。     〔国務大臣松村謙三君登壇〕
  23. 松村謙三

    国務大臣(松村謙三君) お答えを申し上げます。  教科書の無償配付は、財政関係もございまして、本年は昨年通りのままにいたすことにいたしたのであります。これは、公約と申していいかどうかはわかりませんけれども、これができなかったのは遺憾でございまして、できるだけ今後においてそういうことの実現できるようにいたしたいと思います。  それから、文教関係におきましては、大体、公約は、御批判は別といたしまして、私どもはその具現に努めたと考えております。お尋ねの文教施設費におきましても、ことに高等学校の面まで拡充して助成をすることができるようになりましたので、私は、公約は、文教はある程度具現できる、こういうふうに考えております。(拍手)     〔国務大臣石橋湛山君登壇〕
  24. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 平野君から御質問でありましたが、私の本年度予算に対する考えは、先般経審長官代理として述べました演説の中にはっきり書いてあります。平生私の主張しておることと何ら矛盾がないと確信いたしております。  なお、中小企業の問題のお尋ねでありますが、先ほどお話のありました相談所にいたしましても、昨年度予算には一文もなかったというのを、今年は三千万円もつけたのですから、相当大きなものでございます。それのみならず、財政投融資の方におきましても、御承知の通り、国民金融公庫の本年度の融資資源は四百六十二億、昨年度は四百五億です。それから中小企業金融公庫も二百十五億が二百四十億にふえる。とにかく、ふえております。これで私は大体中小企業に対する手は打てるものと確信をいたしております。どうぞ、その点は御安心を願うと同時に、なお一つ御協力をお願いいたします。(拍手
  25. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 平野君より再質問をいたしたいとのことであります。平野三郎君。     〔平野三郎君登壇〕
  26. 平野三郎

    平野三郎君 各国務大臣の御答弁は、全部私には全く満足しがたいものであります。国民を欺くにもほどがあると言わなければなりません。しかし、時間がありませんから、すべては予算委員会に譲りまして、一言だけ河野農林大臣お尋ねを申し上げます。  あなたは、今、愛知用水の分を加えればふえておる、こうおつしゃいましたが、ほんとうにそう思いますか。愛知用水というのは全然これはソースが違うのであって、これを加えれば土地改良費がふえておるというのは、実に言語道断であると思います。あなたのお考えは、もう明瞭に読売新聞に発表になっておる通りなんである。ただ、読売新聞記事は、新聞社の質問に対する答弁の形で出ておるのであります。これは大へんだということで、あとで反駁を加えて訂正をせられ、今またここでその通りのことを言われましたけれども、あなたがほんとうにそう思っているならば、なぜ勇敢にその通り言われないのか。少数党内閣であっても、真に国民の支持を得た政策をやるならば、決してやって行けないものではありません。ことに、われわれ自由党は、反対のための反対は毛頭考えておりません。あなたに協力したい気持を持っておりますが、そのようなばかな協力はできないということでありまして、ほんとう農林大臣として、あなたのおっしゃったようなお気持であるならば、この予算について考え直されんことを私は切望いたしますが、その意思ありやいなや、特に愛知用水の問題についてもう一ぺん明瞭に御答弁を願っておきます。     〔国務大臣河野一郎君登壇]
  27. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 重ねてのお尋ねでございますから、少し詳しく申し上げます。  土地改良の費用が生産費引き下げに重要でありますることは、すでに私の申し述べた通りであります。しかし、御承知の通り、土地改良は、その年にいたしましてその年にでき上るという事業はなかなか少いのでございます。でございますから、緩急を得て、一年遅れて来年にその予算がとれれば、それで間に合うという場合もあるわけでございます。でございますから、そういう意味において、絶対今年の予算の上に欠くことのできないものに重点を置いて予算の編成をいたしたのでございまして、土地改良費の多少の減額は、決して土地改良を私が見落すという意味で減ったのではないのでございまして、この点は御了解願いたいと思うのでございます。  そこで、つけ加えて申し上げますことは、愛知用水のことを言いましたのは、愛知用水はこれまた土地改良であると私は考えておりますから、それをつけ加えて申し上げたのでございまして他意はございません。(拍手
  28. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 阿部五郎君。     〔阿部五郎君登壇〕
  29. 阿部五郎

    ○阿部五郎君 社会党を代表して若干お尋ねいたします。   [議長退席、副議長着席〕 憲法に関連しておりますが、総理大臣は、過般の施政方針演説で、民主主義のあり方についてお話がございました。お互いに自由と人権の尊重が必要である、こういう御趣旨でありまして、まことにけっこうに存じます。しかしながら、その前提としては、お互いが双方とも対等の人間であるという共通の基礎が必要であります。政治におきましても、各派が議論を戦わせながらも相互に尊重することが必要であるとおっしゃいましたが、それには前提として双方ともに憲法を尊重するという共通の基礎の上に立ってでなかったならば、それを実現することはできないと思います。(拍手)  ところが、総理大臣は、近ごろ、時に現行憲法を軽視されるやの口吻を漏らされることがあるのであります。たとえば、占領憲法であって国民の意思ではない、あるいは、日本が独立すれば当然無効になるべきものである、こういうことをおっしゃったことがございます。そこで、これがもしわれわれの言うことでありましたならば大したことはありませんけれども、総理大臣のおっしゃることでありますから、人心に与える影響がはなはだ大であります。この際、私は、総理大臣にはっきり言明しておいていただきたいと思います。現行憲法がお気に入らないことはよくわかっております。しかしながら、それが正当に改正されるまでの間は、あくまでもこれを尊重なさる気持がありますかどうか、まずこれを伺いたいのでございます。そうして、もしそうでありますならば、どうぞお言葉をちっと慎しんでいただきたいと存じます。  次に、現行憲法は、申すまでもありませんが、成文憲法であります。英国のごとき慣習憲法でございましたならば、事実が変更され、たびたびそれが重なって慣習となりましたならば、おのずからにして憲法も変更を受けるかもしれませんけれども、成文憲法の特徴としまして、そういう柔軟性はございません。かりに、世論が変り、世の中は日進月歩でありますから、憲法が実情に沿わなくなったとしましても、それが正当に改正されるまでの間は、厳として憲法は不動でなければなりません。そうして、日本のごとく民主主義の発達の遅れた国においては、こういうかたい憲法が必要なのであると存じます。そこで、日本の憲法が成文憲法である限り、一時の世論の動向によってその解釈が正反対に変るがごときことは断じてあり得べからざることであると思うのでありますが、総理大臣は、世間の通論になったと称して、憲法の戦争放棄の規定を全く正反対に解釈されるに至りました。しかも、それが在野時代と政府を組織されてからとで裁然としてわかれたのであります。私は、総理大臣は何を根拠として、日本のこのかたい憲法といわれておる成文憲法を、世間の通論になったというので、どういうわけでこういう解釈ができるのであるか、その点を伺いたいのであります。  さらに、世論がいずれにあるかは、最後にこれを判定するのは国民投票によらなければなりません。単に、新聞記者の世論調査のごときもの、あるいは政府が何かの手段で世論を調べたというようなものをもってしては、判定ができないのは申すまでもありません。しかも、国民投票はそうひんぱんにやれるはずのものではありませんから、その間においては、国会の多数によりて、国論の、あるいは世論の所在を認定するほかはなかろうと存じます。ところが、総理大臣が御解釈になるがごとく、現憲法のもとにおいても、自衛のために軍隊を持つのは憲法違反ではない、こういう解釈をなさる、この見解というものは、決して世間にそう広く認められているものではございません。この国会内においても、われわれが反対であるばかりでなく、自由党の御見解も、現在の自衛隊はいまだ戦力と称する域には達していないからというのでこれを認めているのである。明らかに鳩山さんの御意見とは違うのであります。すなわち、鳩山さんの御意見は、この国会においては明らかに少数意見にすぎないのであります。にもかかわらず、総理大臣が、世論われにありと認定せられ、しかも世論が変っているから憲法違反ではない、こういうことをおっしゃるのは、一体何を根拠になさっておっしゃるのであるか、この点を伺いたいのであります。  これは私の想像にすぎませんが、総理大臣は、内心では今の自衛隊は憲法違反であると思っておられるのではないかと思います。しかしながら、それを改正しようとすればわれわれが反対してできないし、さりとて、自衛隊をやめるということになると、それはアメリカも許してくれまいし、御自身の本意でもない。困っておられるのであろうと思います。御心中はお察しいたしますけれども、さりとて、筋の通らない理屈を無理に押し通すのでは、民主主義のあり方を正すゆえんではないと存じます。(拍手)  次に、総理大臣は、去る二十七日、この議場で淺沼さんの質問に答えて安保条約は改正したい、日本が原爆基地に利用されるのは欲しない、かように言われました。安保条約は、総理のお考えによると、防衛力を強化していくことによって改正ができると言われるのである。そう思っておられるようであります。しかしながら、条約自身にはそう書いてはございません。条約自身には、第四条に、日本区域において国際連合その他の集団防衛措置ができたときにこの条約は効力を失うと書いてあります。すなわち、防衛力が強化されただけでは不足なのであります。その防衛力をもって日本が集団防衛機構に参加し、従って、東洋に事ある時分には、たとえば朝鮮事変が起るとか、台湾海峡事件が悪化するとか、こういう場合においては、その機構に入ったものの義務として、その事件に日本の武力をもって介入していかなければならないことになる。そういう機構に入ることによって安保条約は効力を失う、こう書いてあるのであります。  これによって私が思い当りましたのは、民主党を御結成なさったときに発表した政策の中に、安保条約はこれを改正して双務的なものにするという条項がございました。私は、安保条約では、こちらも防衛分担金を払うことになっておるから現に双務であるが、双務条約に変えるというのは何を意味するか、不審に思っておったのでありますが、総理大臣の御答弁を聞いておりますと、だんだん今は防衛力を増強していって、将来は東洋における集団防衛機構に参加し、日本も東洋における問題が起った場合にはそれに介入していくという義務を負う、すなわち、日本が守ってもらうばかりでなく、日本もまた他国を守る義務を負うというようなことをお考えになっておられるのではなかろうかと思うのでありますが、まことにこれはわれわれ国民にとってはゆゆしいことでございますので、総理大臣の御真意が承わりたいのでございます。  次に、日本が原爆基地に利用されることを欲しないと言われました。まことに私たちも同感でございます。ところが、過日成田君が指摘いたしました通りに、日米安全保障条約の第一条には、米国の陸海空軍を日本の国土に配備することを許与しておるのであります。陸海空軍を配備することを許与するというのは、すなわち陸海空軍のしかるべき兵器を持って配備することを許与しておることは当然であります。そうして、その兵器たるや、大砲でなければならぬ、機関銃でなければならぬという制限はございません。そうして、原水爆も現在では公然たる兵器でございます。さすれば、総理が欲すると欲しないにかかわらず、ともかく日本は原水爆の基地に利用されることを条約上の義務としておる、アメリカはそういう権利をすでに得ておるのである、こう言わなければならぬと思います。私は、総理が過般この問題で外国の新聞記者との間で話されてから、初めてこの点に気がつきまして日米安全保障条約の実に恐るべき性質に思い当りまして、りつ然としたので為ります。  総理大臣は、この議場において、成田君に答えて、アメリカ日本を原爆基地にするがごときことは絶対にないと信じておる、アメリカは軍艦があり、艦載機もあるのであるから、そんな必要はないのである、かように言われました。しかし、艦載機の大きさは制限を受けるのでありまして艦載機で何もかもできるのでありましたならば、重爆撃機というようなものは要らないわけであります。さらに、飛行機だって軍艦だってやはり基地は要るのであります。こういうことは子供でもわかることでありまして総理大臣がこういう子供だましのようなことをおっしゃるのはいけないと思います。(拍手)そこで、総理御自身が原爆基地に利用されることを欲しないとおっしゃるのでありますし、御自身は御安心なさっておるかもしれませんが、国民は安心はしておらない。非常に不安に思っておるのでありますから、政府の義務として、こういう条約は改正なさるか、あるいは別に原水爆を日本に持ち込むことはない旨を定めるところの交渉を米国となさる御用意がございますかどうか、伺いたいのであります。(拍手)  総理大臣が、自由諸国と共産諸国の双方と正常なる国交を回復することが平和を維持する上に有益であるとおっしゃられるのは、まことにけっこうと存じます。私たちもさように思うのであります。従いまして、今回ソ連との間で交渉を始められることに対しては、われわれも大いに賛成でありまして、その成功を祈っておるのであります。ところが、国交は自由諸国、共産主義諸国双方と結ぶのが平和に貢献するゆえんだとおっしゃいますけれども、事軍事に関しましては、全く従来のままで、自由諸国、いや、アメリカばかりに傾倒するということを少しも改めようとなさらないのは、どういうわけかと思います。一般の国交ばかりではありません。一般の国交について双方と交わるのが平和に貢献するのであったならば、軍事において一方にだけ寄りかかるということが平和に貢献しないということは、これはだれにも明らかなことであろうと思います。にもかかわらず、事軍事に関しては—外交においては一歩を進められましたけれども、事軍事に関しては、あくまでもアメリカに依存しようとなさるのは、一体どういうわけでございましょうか。さらにこの方面へも一歩を進められることを希望してやまないのであります。とにかく、以上の点を総理大臣御自身から承わりたいと存じます。  次に、外務大臣に伺いたいのでありますが、今までの交渉に至りましたいきさつはともかくといたしまして、六月の初旬から日ソの交渉が開かれることはまことに喜ばしいと存じます。ところで、この交渉に、日本側の要求といたしましては、領土問題、抑留者の帰還、通商協定、漁業権の問題、いろいろ日本側の要求は明らかにされております。しかしながら、交渉でありますから、向うの言い分もあろうかと思うのであります。そして、もしソ違側の要求が突然突きつけられましたならば、国民に対する刺激はおのずから強く、交渉の進行にも決して有益ではなかろうと思います。にもかかわらず、今までソ連がいかなる要請を日本に対して持っておるであろうかというようなことについては、いまだ国民として聞いたことがないと思います。そこで、外務省におかれては、国民に強い刺激を与えないために、できるだけ正確なるソ連側の要請をこの際国民に発表なさるのがよいのではないかと思うのであります。いかがでございますか。  次に、政府は共産主義諸国とも国交正常化なさるとおっしゃるのでありますが、その共産主義諸国のうちでも、ソ連と中共とは実に厳格に区別をなさっておられます。ソ連に対しては正常化をおっしゃいますけれども、中共とは単に通商をおっしゃるばかりでありまして、国家としてはこれを認めないという態度をとっておられます。これは、もちろん従来のいきさつもあることでありまするし、多少わからぬこともないのではありますけれども、過日ここで御答弁なさいましたときには、前総理大臣吉田さんがアメリカに手紙を出してあるからこれに拘束されるようなことをおっしゃったのであります。一体、条約を締結した場合においてさえ、国会でこれを批准するまでは、国民はそれに拘束されるものでもなく、政府も、その政府自身はともかくとして、次の政府は何らの拘束を受けないものでありまするが、前内閣の一片の手紙にそれほど御遠慮なさるというのはいかがなものであろうかと思うのであります。もし国際信義の上から多少しんしゃくする必要があるとおっしゃるのでありましたならば、それは私たちもわかるのでありますけれども、歴代政府とも、国内におきましては、いろいろと既成事実を積み重ねていって、それをいつの間にか形あるものにしてしまうのが常でありまするが、国交におきましても、将来日本が中国民衆との間に親善関係を結ばなかったならば日本民族の発展はないというこの大方針、大きな前途に思いをいたしましたならば、着々として事実を積み重ねていって国交を調整することが、今日の急務ではないかと思うのであります。それには、ちょうど今がよい時期でありまして、中共の通商使節団も参っておるのでありますから、今懸案になっておりますところの支払い協定の保証のごときは、まず第一着手として進んでなさるのが至当ではないかと思うのでありますが、いかがでありますか。  次に、経済問題について少しく伺いたいのでありますが、政府は経済六カ年計画を唱えられております。本年度は、初年度でありますのと、一兆円の予算ワクに縛られたからか、ほとんど、それについて、これを具体化する、実現させていくという施策の見るべきものはございませんが、それだけに、来年度、再来年度と後年度へしわ寄せが行って、後年度になるほど強力な経済規模の拡大の措置がとられねばならなくなっていくものと思うのであります。しかし、ここにわれわれが不安に思いますのは、この経済政策を遂行なさるとおっしゃいましても、政府はそう有力な手段を持っておられないということであります。生産設備を拡大させたり、産額を多くしたり、輸出を増進したり、こういうことを紙の上でプランとしてお出しになりましても、それを実業界に実行させるという強力な手段は今のところ持っておらないわけであります。わずかに持っておられるのが財政投融資資金の運用だけでありまして、大蔵大臣は、低金利政策をやることによって、その低金利によって産業の勃興を奨励なさるお考えのようでありますけれども、新聞によると、日銀の総裁も反対をしておるようでありまするし、石炭産業に対する金利の引き下げなどについては、開発銀行の総裁もそれを快しとしておらないようであります。とにかく、単に財政投融資を運用するのと、金利政策ぐらいで、まことに間接的な手段しかないようであります。それでよく計画を計画たらしめることができるであろうかと不安に思うのであります。  そこで、これを実行なさるについては、政府の方ではもっと具体的な施策がなければならないはずであります。困難ではあろうと思います。この資本主義の社会で、少し特別に産業を興そうとしましたならば、たとえば海運のごとく、特定の企業に利益を与ええることになり、それはひいては直ちに汚職事件を起したりするのでありまするし、またカルテルやトラストによって—政府は最近また紡績業に対して操短を勧告しておるようでありますが、そんなことをなさると、ややもすると、独占価格で、独占の上にあぐらをかいて消費者を苦しめ、また産業自身もそれに安心して合理化並びに近代化がおくれるというようなことにもなって来るのでありますから、まことに困難ではありましょうけれども、このままでは計画が何にもならない、単に紙の上のものにすぎないのでありますから、何らかの施策があろうと存じます。それで、重要産業に関して基礎的産業に関してはどういう振興策を持っておられるのか、この際御披瀝いただきたいのであります。特にその中でも、石炭だけはやや詳しく承わっておきたいのであります。どれだけの財政投融資をなさって、どれだけの合理化並びに増産を行い、合理化のために失業者がどれだけ出、その失業者は単に一般の失業対策をもってしては解消はできないことは明らかなのでありますから、特にそれに対しては、別にそれを吸収する施策があるならば、どういうことにするのか、それらの点を承わっておきたいと思います。  さらに、中小企業や、特に農業関係の産業につきましては、これまたまことに今困った状態になっております。現に、酪農振興法ができておりますけれども、あの法律ができて乳価は下るばかりであります。飼料が高いからというて飼料需給調整法を作ったのでありましたが、法律ができて、かえって飼料は上るばかりであります。繭や生糸につきましても、繭糸価格安定法があるのでありますが、少しも安定いたしません。すなわち、この状態では、政府が右へ向けようとしてやったことが、逆に結果としては左へ行くし、時の政府ばかりでなく、政治そのものの権威にもかかわるような状態になっております。これらの点について農林大臣は、このままでお置きなさるのでありますか、あるいは何らかの施策をお考えになっておられるのでありますか、どうか御発表願いたいのであります。  特に、最近輸出産業におきましては、日本の物資の価格の変動が非常に激しいから、外国においてこれらを原材料として事業をなさる方にははなはだ不便であるという点から、輸出が非常に妨げられておると聞いております。これらは、単に一時の施策をもってしては容易に価格を安定させることは困難であってもう根本的に輸出の窓口を一本化するぐらいのことをお考えなさらなければならぬのではないかと思うのでありますが、これらの点はいかがにお考えでございましょうか、お尋ねいたします。  次に農林大臣に伺いたいのでありますが、過日聞いておりますると、農林大臣食糧増産対策に不熱心であるのではなくて、従来は特に食糧危機に臨んで主食に重点を置いたけれども、これからは多角農業を奨励するのである、かようなお答えがあったのであります。もしさようであるといたしましたならば、農業関係に対する補助とか奨励とか、そういうものはこれからますます種類が多くなり、広範にわたり、多岐多様にわたっていかなければならないと存じます。にもかかわらず、現在政府がなさっておるのは、補、助金を簡素化し、これを整理し、打ち切る、こういう方向をとっておられるのでありまして農林大臣のおっしゃることとはまことに正反対ではないかと思います。真意はどこにあられるのであるか、まずこれを伺いたいのであります。  さらに、多角農業を奨励するということになりますと、予算の制限があるのでありますから、おのずから、食糧増産、特にそのうちでも土地改良のごときは、どうしてもおろそかになるおそれがあると存じます。現に本年度予算においてもそれが縮小されていることは御存じの通りであります。ところが、この土地改良は、従来のままでもはなはだ悪いのであってさらにもっともっと強化しなければならぬというのが私たちの考えであります。土地改良関係補助金が浪費されるということをよく聞きますけれども、それは主として政府の今までの政策に原因があるのでありまして三百町以上の改良でなければ国庫補助はしない、こういうことをいたしますから、地方土地改良をやりたい者は、面積が足らない場合においては面積の水増しをする、事業の予算を実に厳格に査定なさるものですから、その金額ではやれない。そこで盛りかけた設計をしていく、こういうようなことが予算の浪費の大きな原因になっておりますから、真に効果あらしめるためには、もっと小規模な改良事業にも国庫補助を行い、そして適切なる計画を認めるようにしなければならぬと思っておるのでありますが、どうも今回の予算において見ますると、全くそれに逆行するような御方針政府はとっておられるようであります。農林大臣の御所見はいかがでありますか。  次に、今回食糧管理制度を改められて予約買付をなされると承わりますが、これは先ほどからもたびたび質疑応答されておりますが、私がいかにも不思議なのは、いまだに価格をきめられないことであってそして予算上は昨年の価格をそのままで組んでおられるということ—農林大臣はいろいろおっしゃいますけれども—学識経験者に諮問してきめるなどとおっしゃいますけれども、結局これはずるずるで、このままで行くというお考え、すなわち、去年のままの価格をもって買い上げをしようとお考えになっておるのでなかろうかと思うのであります。もしこれより引き上げるのでありましたならば、農民には魅力があるので、契約当時に御発表なされるはずでありますから、このままでいくお考えではなかろうかと思うのでありますが、少くとも関西方面においては、それでは集荷が困難であると思います。単に見込みでありますから、私はもちろんその証拠をあげることはできませんけれども、私の見込みをもってすれば、私の狭い範囲の見聞でありますけれども、困難であろうかと存じます。そして、食糧の集荷が困難となりましたならば、これは過日来もたびたび問題になりました、いろいろ派生した問題が起って参ります。そこで、農林大臣に伺いたいのは、去年並みの価格で予約買付をやって、果して予定通りの集荷を特に関西においてなされる自信を持っておられるかどうか、その根拠がありましたならば安心ができるのでありますから、詳細に伺いたいと存じます。  次に、農地改革の問題でありますが、農地改革はいまだその終りを全ういたしておりません。全国に、面積におきましては大したものではないでありましょうけれども、たくさんの保有小作地が残っております。その保有小作地は多くの農民の間に分散されておりますから、小さい村でも小作をしておる農家は二百や三百は必ずあるのが、私らの方の関西方面の実情であります。そして、これが農村紛争のガンをなしている。何かこの土地問題、土地を差しはさんでの争いが起るといえば、根拠は多くここにあるし、さらにまた土地改良などを行おうとしましたならば、他人に小作させておるところの土地に、地元負担を負うてまで改良をする者はないのであります。土地の改良、すなわち農業の進歩発達を妨げておること多大のものがあるのでありますが、これをいつまでもそのままになさって、かえって今回小作料を引き上げようとなさっておるやに承わるのであります。これはまことに適当ならざるものと私は思うのでございまして、これはすみやかに小作地解消法案をお作りになって、保有小作地をすみやかに解消なさらなかったならば、将来の農村の発展が期しがたいと思うのであります。必ずしもこれは小作ばかりに売り渡せというのではありません。耕作適任者に渡すべきである。そして、一時みずから耕作するに困難な事情のあるものについては、公けの機関、たとえば町村とか農業委員会、それらのものがそれを預かって、それをまた適者に一時耕作させるというふうな制度にして、賃借権という権利を持ったもの並びに—所有権、賃借権並びに耕作権、この三つがこんがらかって存在するがごときことは、すみやかに解消しなければならぬと思うのでありますが、農林大臣の御意見はいかがでございましょうか。  さらに、もう一つ。開拓地として政府が買い上げ、さらにこれを農民に売り渡した分が、事実上開拓できないで、できない分はさらにこれを国に取り上げるということが行われております。国に取り上げられるのはやむを得ない場合もありましょうけれども、開墾ができないという理由が、その個人の労力、力をもってしてはできないのであって、機械力も進歩しておるのでありますから、より大きな力をもってすれば、たとえば国とか公共団体とかいうがごときものの力をもってすれば、浪費少くして開墾可能な分も相当あると思います。しかも、できないとして取り上げたものを、これを元の所有地主に売り渡すということ、返還するということは、最も至当ならざるもの、であると思いますが、これをいかに御処理なさるお考えでありますか。  時間がないそうでありますから、もう切り上げることにいたしますが、最後に、今町村合併が大いに進展いたしております。特に今回の地方選挙を前にして一時に進んだようでございますが、御存じの通り、町村合併促進法においては、ずいぶんたくさんの奨励策が明記せられております。合併したならば、その合併町村に対しては、合併目的を達成させるためには起債を許してやるとか、あるいは道路、河口、港湾、河川、水道、そのほか授産所その他の社会施設や、あらゆることについて、合併目的を達成させるように、国がそれに協力をしてやる、援助をしてやる、さらに県も同様の援助をしなければならないというような規定が堂々と法律に載せられております。ところが、もうずいぶん合併が実現しておるのにかかわらず、これらの点が今回の予算には少しも用意されておるとは見えないのであります。果してどうなっておるものでございましょうか。さらに、政府や県のみならず、国家機関であるところの国鉄や電電公社などもこれに対して協力をすると法律に明記されておりまするが、それらの国鉄や電電公社において、管轄を変えたり、あるいは電話局、電信局を移転したり、新たに建てたり、こういうようなことが必要になるのでありますが、それらの用意がいかになされておるのでありますか。合併をするためには地方民を納得させなければなりませんから、これらの奨励策というものが事実以上に誇大に地方民に吹聴せられ、それをもって合併に賛成させたり納得させたりしておるのでありますから、これをこのままにしましたならば、明らかに地方民を欺いたことになるのであります。いかなる用意が今回の三十年度予算に盛られておるか、お答えを願いたいと思います。  以上をもって打ち切ります。八拍手)     (国務大臣鳩山一郎君登壇一)
  30. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 阿部君の御質疑に対して答弁をいたします。  阿部君は私が何か憲法を尊重しないような御発言でありましたが、憲法を尊重することはもとより当然であります。阿部君は、憲法第九条が戦争を放棄している、それなのに自衛隊がある、憲法違反だというようなお考えのようですけれども、憲法九条は自衛のための兵力を否定はしていないのです。しかも、自衛隊法ができまして、直接または間接の侵略に対して防衛する任務を有するといって自衛隊ができておるのでありますから、これを憲法違反の法律だとして、自衛隊を否定するわけには参りません。国際紛争の解決のために戦争は放棄をしておるのでありまして自衛のためには放棄をするわけではありません。もしも自衛隊はなくていいというならば、侵略があったときに、阿部君はやはり兵力を持ってはいかぬと言うのですか。そんなばかげたことは考えられません。  第二は、原爆基地の利用についてでありますけども、これは安保条約第一条によって当然アメリカは利用ができるとおっしゃいますけれども、安保条約第一条においては、原爆の基地として利用し得るということは明記してありません。ただ軍隊を配備することができるとあるのでありまして、軍隊の配備と原爆の使用の基地と同じようにお考えでありましょうけれども、軍隊の配備ができるから原爆も所有ができると簡単に解釈するわけには私はいかないと思います。  他は私が答弁するよりは—日ソの交渉についてお話がありましたが、これは重光外務大臣から答弁した方がいいと思いますから、さようにしてもらいます。  これをもって答弁を終ります。(拍手)     〔国務大臣重光葵君登壇〕
  31. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 私に対する御質問は、第一点は日ソ交渉の問題でございました。日本側において交渉に当る希望を表しておりますが、ソ連の希望をも日本政府として日本国民に知らしたらよかろう、こういう御趣旨のようでございました。日本側の要望として、新聞紙上または議会においても論議のありましたことは事実でございまして、承知いたしておりますが、政府といたしましては交渉の内容については何ら発表もいたしておりませんし、またこれは当然のことでございまして、交渉開始前に交渉の内容にわたることが公然論議されるということは、相手方を利するものと思われます。しかし、そのことにつきましては、日本の一般的の立場については、むろんこれはわれわれもはっきりと交渉前においてもきめなければならぬ問題であります。しかし、さて相手方のソ連におきましては、いやしくも交渉に関することは、公的にも、私的にも何ら発表をいたしておりませんのみならず、推測すべき材料も入手ができませんことは、御推察にかたからぬことだと思います。  さて、次の問題は、日ソの関係と中共に対する関係との差を言え、こういうお話でございました。日ソ国交の回復は、戦前における国交を回復しようというので、これは筋道としてはきわめて簡単でございます。しかし、中共に対しては少しく趣きを異にしております。御承知の通りに、中共は今回の第二次世界戦争によって確立された政権でございます。日本は、第一、台湾の国民政府を中華民国政府として承認しておるいきさつがある。そのときには、中共政府は承認をしないという、いわゆる吉田書簡もございます。この吉田書簡の法律上の意義がどういう意義であるかということはしばらく別問題といたしまして、しかし、かような大きな政策の問題につきましては、すぐさま内閣がかわってこれを打ち切るというわけには参りません。これは国際信用上当然のことと考えます。また、中共は国際連合がまだ承認をいたしておりません。国際連合に属する多数の民主国もこれを承認しておらない関係がございます。のみならず、国際連合としては、御承知の通りに、朝鮮戦争以来中共を侵略者としてこれを取り扱っておるというような従来のいきさつもございまして、今後国際情勢が著しく変化をいたします機会を待たずして、日本のみが中共を飛躍的に承認までこぎつけるということは、国家の利益として今日は少し行き過ぎたことだろう、こう考えます。御承知を願いたいと思います。(拍手)     〔国務大臣一萬田尚登君登壇〕
  32. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お尋ねは、財政投融資がどういうふうに日本の経済の発展に役立つか、具体的に話せ、こういうことであったと思うのですが、今回の予算におきましては、一面日本の経済の地固めをいしたますとともに、将来の経済の発展の素地を築いていかなくてはならぬことは言うまでもありません。この将来の発展の素地を築くところに財政投融資をふやしていくのでありましてその財政投融資が約三千二百七十七億円、昨年に比べて四百二十億円以上ふえておることは、御承知の通りであります。これは、もう少し具体的に申し上げますと、開発銀行、これは主として合理化の設備資金を提供するのでありますが、これが五百九十五億、約六百億であります。これは前年度と増減はありませんが、しかし、これは非常に重点的に資金の配賦をいたすことにいたしておりましてその重点となるものが、石炭、鉄、合成繊維、石油化学、肥料、こういうところに重点的に施行していく。今後さらにこれの資金の量については検討を加えるのでありますが、今のところ少くとも百五十億程度は予定しておりまして、昨年度に比べますと五割以上の増加になるのであります。  なお、こういう過程において、同時に中小企業という方面については格段の配意が要るという考え方から、これに関して資金もふやしてありまして大体、国民金融公庫は、昨年に比べて五十七億ふえる。昨年の四百五億に対して今年は四百六十二億で、五十七億ふやしておる。中小企業金融公庫も、一昨年の二百十五億に対しまして、二百四十五億で、これも三十億ふやしておる。なお、商工組合中央金庫に十億の出資をいたしております。さらに、これをいざないといたしまして、民間から資金が入る。この二十倍の社債発行能力を持つに至ったことは、これも十分な資金の手当をしておるわけであります。なお、一般の金融はこの三十年度において楽になっていく、資金量もふえ、金利も当然下る傾向をとることは、私が詳しく申し上げるまでもないのでありまして、それは三十年度の預貯金の増加約八千億を見込んでおります。そうして、従来は日本銀行に多くの貸し出しを返金しておったのでありますが、日本銀行に返す金も非常に少くなって、今後は、集まった預貯金は当然産業資金に回る、こういうふうになるのでありますから、ここに金利も下る傾向をとるのは当然で、資金量もふえる、従って、財政が締ると同時に、経済活動が正常な民間の手に移って、そこに活動が開始される、こういうふうな形態を三十年度はとっていくのでありまして、将来について非常な工夫と努力が要るにいたしましても、どうも先はわからぬという状況ではないことは御承知願いたいと思います。(拍手)     〔国務大臣石橋湛山君登壇〕
  33. 石橋湛山

    国務大臣(石橋湛山君) 六カ年計画によりまして、ことに基幹産業の合理化をして、そこから生産費の低下をはかりたいという計画でございます。先ほどの御指摘の、その中の石炭について申しますと、大体、われわれの考えでは、現在の一人当りの生産高は、現在は十二トン半くらいでありますが、それを十八トン四分くらいに増す、かようなことにしまして、生産費を平均で二〇%低下あたりまで持っていきたいと思います。それには、むろん相当の投資をいたし、刺激を与えなければなりません。縦坑の開発その他で一年大体百八十億ないし百九十億くらいの投資を必要とする計算であります。その中で、国家財政投融資は、大体六十億ないし八十億円程度の財政投融資をしたい、これが計画であります。結局、最後の年になりまして、先ほど申しましたように、コストの下った炭で四千九百万程度生産をする。ところが、そういたしますと、これも、さっき御指摘のように能率が上りますから、四千九百万程度の生産をしましても、現在の就業人員が減ります。これも、見込みでは、全体で大体六万人くらいの人が減る勘定になります。それで、石炭の方面からの離職者につきましては、結局、すべての産業が振興して、そしてこれらの人たちがそれに吸収されるということが理想的でありまして、さような方向に持っていかなければならぬのでありますが、とりあえずは、やはり、鉱害復旧事業でありますとか、あるいは失業対策事業でありますとか、その他の公共事業を行なって、それらの離職する人を吸収するという方策を立てて行く計画で、本年度もその計画によって経費を立てられております。  次に貿易についてのお話でありましたが、貿易を一元化するということも、これは、紙の上では確かに一つの案でありますが、しかしながら、同時にやはり輸出入等ある程度の競争を必要とする。ただ、過当の競争がありますと、むだをしておりますから、そこで現在のやり方は、貿易業者を協調をさせまして、そして輸入にしても輸出にしましても行き過ぎの競争を防止する、場合によりましては、一本の買い取り機関を作る、あるいは一本の輸出機関を作るということもやる計画でございますが、しかし、お話のように、全部の貿易を一本にしてしまう、一元化するという考えは、ただいま持っておりません。  以上、お答えいたします。(拍手)     〔国務大臣河野一郎君登壇〕
  34. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お答えをいたします。  御指摘の通り、牛乳、卵等が非常に下りまして酪農振興法があるけれども効力がないじゃないか、また糸価安定法があるけれども、これが十分に効果がないじゃないか、飼料需給安定法があるけれども、十分な効力を発生していないじゃないかという御意見は、全くその通りでございますので、政府といたしましては、糸価安定法につきましては、本年度から、この議会を通じて、現在の補償費の三十億を倍額程度に増額いたしたいということも考えておりますし、飼料の需給安定法につきましても、特にふすまの対策について、四億三千万円ほどの、海外から輸入いたしますふすまを内地に向けて安く払い下げます場合の差損金の予算も組んで、目的を達成いたしたい考えを持っております、牛乳、卵等の酪農振興法につきましても、これは予算その他の裏づけがなかなか困難でございますので、これは別途この議会において御協議を願いたい法案について今準備中でございます。  次に、多角経営を主張するが、補助金を簡単にするということと矛盾するのではないかということでございますけれども、私は、今農林省予算の中に計上いたしております従来の補助金は、おおむね三百数十項目にわたっておりますので、この各項に分れておりますものを整備するということはいたして参らなければならない。これはその通りに考えておるのでございまして、また、かたがた、農業経営を多角経営に切りかえて行くということは、ぜひしなければならないことでありまして、これは今申し上げますことと決して矛盾をしないというふうに考えておるのでございます。  次に、土地改良費の中で、小団地改良事業という名前をつけておりますが、これは御指摘の通りのような実情に従来ありましたので、私も全く同意見でございまして予算はわずかでございますけれども、本年度から一億一千六百万円ほどの予算を本予算に計上いたしまして小団地の問題を片づけていきたい、ただいま御指摘のようなことを、これで何とか手をつけていきたいと考えて、予算を計上いたしましたわけでございます。  次に米価の決定でございますが、これは、たびたび申し上げまする通りに、米価の決定には生産費を基礎にいたさなければなりませんが、これを植付前に想定いたしますることは非常に困難でございまして、前年度の米の生産費を基準にいたさなければならぬような問題が一つ出て参ります。次に、収穫が一体豊作であるか兇作であるかという見定めもつけずに決定するということにも多少の困難性もあると思いますので、一応、予約集荷をいたしまする米価基本のものについては、前年度程度のものを考えてやったらどうだろうか。—これは決してまだ決定いたしておりません。これが遅れておるのはいかぬぢゃないかという御意見でございますが、これも御意見通りで、なるべく早くいたしたいと考えておりますが、今事務的にやっておりますことは、大蔵省との間に、この予約集荷に当って減税をどの程度にするか、集荷奨励費をどの程度にするかということを折衝中でございまして、これが決定いたしました上で—これは、この予約制度を実施いたしまするに当ってどうしてもきめなければいかぬことでありますから、確定をする。そうして基本となるべき米価につきましては、いずれ米価審議会のお集まりを願いまして、その懇談会等で十分御意見を拝聴いたしまして、どういう方法で行くかということはきめたい。しかし、これも決していつまでもほうっておくわけには参りませんから、この予約制度実施前にやらなければいかぬと考えております。  次に、小作制度並びに小作料のことについていろいろ御意見がございましたが、小作制度のことにつきましては、御意見のような実情もむろんございますことは、私も同感でございます。しかし、これらにつきましては、各方面の御意見、実情等も十分調査いたしませんと、軽々にこの際割り切った御答弁は申し上げかねますことを、はなはだ遺憾に思います。なお、小作料につきましては、これは、先般来申し上げました通りに、現在の小作料が数年間放擲せられておりましたので、その間に農産物の価格も非常に変動いたしまして、それに基いて固定資産税も変って参りまして、客観的条件が変って参りましたので、これらを勘案いたしまして、この結論を出さなければならぬのじゃなかろうかという一般の意見がありますので、これの決定につきましては、私といたしましては、先般申し上げました通りに、全然利害関係のない学識経験者等にお集まりを願って、その意見を十分参酌して決定をいたしたいと考えておることを、ここに申し上げます。(拍手)     〔国務大臣川島正次郎君登壇〕
  35. 川島正次郎

    国務大臣(川島正次郎君) 合併しました市町村に対して、どういう財政的の処置がしてあるかというお尋ねでありまするが、従来とも、合併しました町村の学校、病院、道路、水道その他の公共事業に対しましては優先的に起債を認めておるのでありまして、この方針は今後なお続けるつもりでおります。また、三十年度予算におきまして、地方財政計画の中へ、町村合併に伴う町村建設計画に基く単独事業費といたしまして、新たに四十三億万円計上いたしました。これらによりまして、従来できました新市町村の育成と、今後の市町村の合併を促進いたしたい、かように考えております。(拍手)     〔国務大臣松田竹千代君登壇〕
  36. 松田竹千代

    国務大臣(松田竹千代君) 町村合併に伴いまする郵政関係について、阿部議員にお答えいたします。  まず第一に考えられますことは合併の結果、新区域内において二つ以上の集配局で郵便物を扱いまするときには、その区分けであるとか輸送であるとかいうことに支障を来たしまするので、なるべくこれを一つに整備統合してやっていきたい。そして最も必要と感ぜられる方面から先に着手してやっていきたい、かように考えております。  第二に、局舎の改善の問題でございますが、これは、全国的に、非常に老朽、その改善を必要とするものが多いのでございますが、一気にこれを片づけていくことはとうてい至難と考えられます。従って、三十年度は三十五局程度を新築いたしたい、かように考えております。  なお、電話のサービスの改善につきましては、五億の予算をもちまして、まず五十二局の合併を完成いたしまして、それから市外回線を三千八百キロ程度増設いたしたい、かように考えておる次第でございます。  以上、御答弁申し上げます。(拍手
  37. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 西村彰一君。     〔西村彰一君登壇〕
  38. 西村彰一

    ○西村彰一君 私は、日本社会党を代表いたしまして、数項目にわたって鳩山内閣総理大臣及び関係国務大臣所信をただしまして議会を通じて全国国民諸君に知っていただきたいと思うのであります。(拍手)  先日来、政府施政方針演説及びこれに対する質疑をいろいろ伺っておりますと、わが国の八千八百万の国民の大半を占むる農山漁村民に対する事柄が、本日になってやや現われたのでありますけれども、非常に少いことを痛感するものであります。鳩山総理大臣は、農業はこれを育成しようと思っておるけれども、財政関係その他でなかなか思うようにいかないというようなことを申しておられます。私は、主として食糧農林水産業に関することについてお伺いをいたしたいと存じます。  鳩山内閣は組閣以来やがて半年になりますけれども、全国の農山漁村の人たちは、現内閣一体農業、林業、水産業というようなものをどういうふうに考えておるかということを非常に不安に思っておるのであります。これは、日本民主党が、まあ申し上げれば寄木細工のようなものでありますし、また、ややもすると、民主党は憲政会、商工党の後身のように思われておる点もあるのでありますけれども、また関係農林大臣などは、ややもすると米麦増産を軽んずるような言動を議会の外においてなされて、あとでこれを取り消される、こういうようなことがあり、(拍手)また、MSAの援助で、買う必要のないところの外国産の小麦がどんどん入って参りましたり、また、内地において牛乳や乳製品が相当洪水をいたしておりまするのに、幾ら政府に注意をしても、外国産のバターやチーズが市中にはんらんしておる。こういうような状態でありまするから、これは不安に思うのは私はもっともしごくであると思うのであります。(拍手総理演説におきましても、国民生活の安定について農林、水産、鉱業の生産と貿易を盛んにして消費生活を豊かにすると言っておられます。  そこで、第一にお伺いいたしたいことは、食糧政策に対するところの政府根本理念であります。総理は、いたずらに権力をふるって独善に陥ることなく、あくまで謙虚な気持で各派の意見に耳を傾けて国政の審議に当りたいと言っておられますが、本日の同僚議員の質問に対しては、必ずしもこれに該当しておらないということは、すこぶる遺憾に思うのであります。(拍手政府は、四十二万戸の住宅を確保するということを、えらく一枚看板に、ておられますけれども、農林、水産について、真剣に、かつ具体的に、生産及び貿易を盛んにするという根本方針が、この昭和三十年度予算に具体的に盛られておるかどうか、こういうことなのであります。貿易を盛んにするということは、国産品をできるだけ多量に外国に輸出するということでありまして、国内にたくさんあるところの乳製品や内地食糧を圧迫するような、外国からたくさんの食糧を輸入するということではないのであります。食糧増産に必要な土地改良とか開拓とか、あるいは指導奨励の経費を政府は減らしておらないように言われますけれども、農林省予算を見れば相当な減額を見ておることは一目にわかるのでありまして、これは詭弁に類すると考えられます。未墾の土地に多数の引揚者を追い込んでおいて、そうして食糧増産の責任を負わせながら、その後、予算がないからというので、これを見殺しにしておるような例が随所にあるではありませんか。(拍手)  また、増産には各種の補助施設のほかに、米麦その他の農産物の価格というものをはっきりきめていかなければならないのに、それらに対する価格を暫定的だというようなことに放任しておいて、そうして各種の補償を行なっておらないということも、これまたすこぶる遺憾なことであります。わが国食糧の自給度を高めるということは、万難を排してこれは進めていかなければならないことであります。食糧輸入のための外貨の支払いは、主食だけでも、昭和二十九年度においては実に四億七千四百万ドルに達しておるのでありまして、大蔵大臣は、昭和二十九年度において三億四千万ドルの出超があったといって自慢しておられまするけれども、昨年は比較的食糧が豊作であったために食糧の外貨支払いが少かったことによるのでありまして政府努力でも伺でもないのであります。国際貸借の見地から申しましても、また農家の経済を豊かにし、消費者の生活を豊かにする面から申しましても、経済自立の根本方針食糧増産にあるのでありまするが、一体政府は、食糧増産ということを、ほんとうにどういうふうに考えておるか。従来、食糧増産の五カ年計画とか十カ年計画というものがございましたが、これは大体一カ年に百五十万石とか二百万石の増産をするということを目標に掲げておりましたが、自立経済の六カ年計画においては、米換算これを九十三万石といたしております。これは、私は、食糧の自給ということを口にはいろいろと申しまするが、現内閣食糧増産を非常に軽んじておるところがかような数字に出てきておると考えるのであります。  食糧増産考えるならば、限られた土地において増産するのでありまするからして、申し上げるまでもなく、生産コストというものは加速度的に増加していく。そうすれば、生産要素であるところの農地の拡張と、その土地の改良というものは国家の責任であります。国家において全額を補償すべき筋合いのものであると考えるのであります。その補助金を大幅に減らしておいて、ただいたずらに農民増産をしいてしかもその責任を回避しておるというのが、現内閣態度であると私は思います。(拍手)計画の目標をいたずらに過大に見られては、農民こそいい迷惑でありまするけれども、国内米麦生産目標を一旦きめましたならば、それに向って—総合食糧増産というようなことでごまかしたり、外国食糧が安ければどんどん輸入して、全体としての国際収支のバランスを農山漁村民の犠牲において改善しようとしておるのも、これまた現内閣ほんとうの腹ではないかと私は考えます。(拍手)こういう点を、総理大臣一体どういうように考えておられるか。  先ほど来、米価の問題につきましてもいろいろ言われておりまするが、河野農林大臣は、予算米価をそのまま暫定米価と見ていこう、豊作であるか凶作であるかわからないから、こう言うのでありますけれども、こんなことで、農民に生産意欲、供出意欲を強調して、わが国食糧問題の解決がほんとうにできるかどうか、こういうことを私は危ぶむものであります。二言目には米価審議会に相談をしてと言われまするが、今まで米価審議会の答申がそのまま政府の案となったことは一回もないということは、皆様御承知の通りであります。(拍手)いずれにいたしましても、米価は常に一定の限度に抑制されてしまう。そうなれば、生産コストの引き下げのためには、肥料であるとか、あるいは家畜のえさ、飼料、農薬、農機具などというような主要生産資材を、これまた適正価格に抑制するということが、生産維持及び増産に絶対に必要なるところの保障と言わなければなりません。  また、畜産関係についても、これが増産に対してサイロをこしらえるとか、あるいは家畜の購入資金の利子補給をやるというようなことでもってお茶を濁して、飼料対策そのものに具体的の筋が入っておらないために、乳価の暴落を見て、現在、多数の農家は、せっかく買ったところの牛を二束三文で手放してしまう。また、大都市におけるところの乳牛業者も、極端な飼料高と乳価安でもって、いずれも重大なる危機に瀕しております。  政府は、国民所得が四%増加してきただの、また国民生活安定の徴候がぼつぼつ見えてきたというような勝手な御託を並べておられまするけれども、農山村及び都市中小企業者の実情は、決してそんななまやさしいものではないのであります。よろしく、政府は、声なき声を聞いて、世情のほんとうの根底を洞察することを忘れてはならないのであります。  また、水産関係におきましても、何ら積極的の施策を講じないばかりではありません。ビキニの水爆被害について、いたずらにアメリカに遠慮して、十分な補償の方策も、また今後の対策についても考えがございません。アメリカが提供したところの二百万ドル、七億二千万円は、単なる慰謝料だと言もれて、具体的補償については相手にされておらない。このことについては、後刻さらに農林大臣質問する考えでございます。  以上、農林水産業の生産を豊かにするという総理の主張はこれを一応よしとするも、その具体的の裏づけ、いな、これに対するところの現内閣根本理念というものが一体どこにあるか。経済保障といい、社会保障というからには、それは真の保障でなければならないのでありまして、考えてはおるけれども、金がないから、財政的の事情が許さないからということであってはならないのであります。ただ国家の要請によって責任だけを負わされて、結局苦しむところのものは農山漁村民であるということになります。現内閣は、施政方針演説において、すでに農林、水産の増産公約しておられるのでありますから、これを実行するがために、米価の決定、農民負担の軽減、肥料、飼料等の重要資材の価格抑制等について十分なる責任をとるところのお考えがあるかどうか。それとも、いたずらに自由経済の声に引きずられて、一部資本家ないしは企業会社に御遠慮なさって、さようなことは実際はできないかどうか。不必要にアメリカ政府に引きずられて、ただ自衛隊の増強をすることだけにきゅうきゅうとされて、八千八百万の国民の半分を占めるところの農山漁村民を経済的並びに社会的に防衛するということをお忘れになっておられるのではないか。(拍手)この点について、内閣総理大臣の責任のある明確なる答弁をお願いをいたしたいのであります。  第二には、農民の税負担の問題について大蔵大臣にお伺いをいたしたいと存じます。  農業所得税については、去る三月、予算委員会におきまして、同僚議員からも質問がございましたが、現在公平に見て農民の負担は過重であるということは何人も疑いません。単に納税の申告を納得ずくでやっておるかどうかという、そういう技術的の問題ではございません。現在、所得税に関しましては、給与所得と事業所得というものに分れておるのでありまするが、給与所得は、これは勤労所得であるからということで優遇されております。体、農業は事業所得に入っておりまするけれども、農業は事業であるかどうか。わが国農業の実情は、家族労働を中心とするところの真の勤労労働でありまして、私は農業所得については特別に考慮する必要があると考えるのであります。  現在、農業におきましても、青色申告については、専従者の親族に対しては、今回の改正においては年八万円を控除してこれを経費から差し引くというのが政府の案でありまするが、農家に青色申告などをいたずらにしいても無理であります。勤労所得の免税点は今度の改正で二十二万六千円になるのでありまするが、事業所得は十八万五千円ということになるのである。そこで、私は、農業というものが事業所得ではなく、給与所得と全くひとしいものであるならば、わが国農家の労働人員というものは大体平均をいたしまして二人半でありますが、その世帯主を除きまして、あとの一人半に対して、青色申告によって一人八万円、二人半でありますから十二万円になりますが、この十二万円を農業所得の場合に考慮いたしまして、十二万円の免税点を大幅に引き上げてやっていくところの考え方が大蔵大臣にあるかどうかということを、第一にお伺いいたしたいのであります。  また、もう一点は、従来、農業所得が、豊作のために、たった二、三万円くらい収入がふえたということでもって、税金が二倍にも三倍にもなるのでありますが、農業については特に累進税率を軽減して、農家の生産意欲、供出意欲を起りやすいようにしてもらいたいというのが第二点であります。  また、農家の固定資産税の評価につきましても、農家住宅は、申し上げるまでもなく、これは作業場であり、また家畜小屋であり、物ほし場で、あります。これらについて特別の考慮を払う必要が私はあると思います。また、農地についても、現在はその移動が禁止せられて、小作料も固定せられておるのでありますから、その評価額をみだりに改訂して、実際の負担を過重にするということも、われわれは反対であります。これらの点に対して、大蔵大臣農業課税に対する特別の措置に対するお考えを伺いたいのであります。(拍手)小作料を固定しておいて、固定資産税が上ったから小作料を改訂しなければならぬというようなことは、私は謀略であると考えます。固定資産税の実質的引き上げに賛成をせられたところの保守党の人たちの責任でもあると私は考えるのであります。(拍手大蔵大臣は、これらについて、農村事情を精査して、これを現実に考慮せられる考えがあるかどうかということをお伺いいたしたいのであります。  また、農業金融につきましても、大蔵大臣はだいぶ御自信のあるようなことを申しておられます。中小企業その他につきましては、相当な考慮を払われたようにも考えられまするが、農業金融については、現在の制度でもって食糧増産が可能であるかどうかということを、大蔵大臣にお伺いいたしたいのであります。農林漁業金融公庫においても、設備資金等については、ある程度のまかないができておりまするが、農家ほんとうに必要であるところのものは、春の肥料資金であり、あるいは農薬の資金その他の、ごくわずかな、しかもこれは半年かそこいらの短期の資金であります。これらについて日本銀行は、農林中央金庫の金を押えつけて日本銀行に引き揚げておりますけれども、かような意地悪なことをしないで、もっと農山村に対するところの資金源を昭和三十年度においては豊富にせられて、各府県で行なっておられるところの農業生産資金に対する利子補給、あるいは保険制度というようなこまかな施策に対して、大蔵省において助成をしていかれるところの考え方はないかどうか、こういうことを申し上げたいのであります。これに対する大蔵大臣の御意見を伺いたいと思います。  第三は、肥料及び飼料の問題であります。これはすでにたびたび問題になって、農林大臣からも御答弁がございましたが、     〔副議長退席、議長着席〕 去る二月、硫安一かます八百二十五円に対して、たった五円、はがき一枚ぐらいの値引きを行われただけでは、肥料問題の解決はできません。(拍手)私は、現在農林省予算の中に相当の補助金がございまするけれども、これはただ単に農山村に対する補助金であるとは考えておりません。これは、農民とすれば、経済的立地条件を無視して食糧増産を断行しておるのでありまするから、それに対する国家の補償金でありまして、考え方を変えまするならば、消費者はもっと米を高く買わなければならないのでありまするけれども、労働問題その他の関係がありまするので、安くこれを配給するから、消費者に対するところの補給金であるとも考えられるわけであります。いつも問題になります米価の決定について、一般物価の関係とか、国民生活、労働攻勢の立場から、再生産のための補償に十分なる米価の決定ができないということでありましたならば、前述のような生産に必要なるところの肥料、飼料のような資材については、価格抑制の方法を講じて国家において行政権の発動によってこれを処置していかなければならないと考えるのであります。食糧増産が今日のようにやかましくなかった時代におきましても、肥料統制法というものがありまして、米価と肥料価格との均衡を得るように、政府は肥料会社に対して行政権を発動し、場合によっては肥料価格の公定を行なってやって参ったのでありまするが、現在においては、米価だけいたずらに抑制されて、これに対する十分な補償はなくて、しがも肥料や飼料は一部会社や資本家がもうけほうだいであるということは、あまりにも片手落ちと言わなければならないのであります。(拍手)(「需給安定法ができた」と呼ぶ者あり)これも、需給安定法があるとか、あるいは酪農振興法があるというようなことでありますけれども、これらはいずれもただお題目を並べるだけでありまして、その財政的、経済的の基礎もございません。また、飼料の価格、肥料の価格についても、ただ腰だめでもって若干えさを売ったり買ったりしているだけでありまして、確たる基準がないのであります。かようなことであっては相ならないのでありまして、予算がなければ予算のないなりに、河野農林大臣は、もっと徹底的に、いずれ研究するというようなことでなくして、肥料や飼料について具体的な指示価格あるいは公定価格の制度を設け、行政権の発動によって、肥料会社にも十分なる監督を行うとともに、農村に対しても十分なる生産補償を与える、こういうことをお考えになるところの考え方がないかどうか。いずれ研究をするというようなことでありましては、かりに私が満足をいたしましても、全国農民は決して満足をしないと考えられます。(拍手)  第四は、主として病虫害等によりますところの農業災害の国家補償の問題であります。わが国農業経営はだんだん集約的になって参りまして、その経営が外国にも見られないほどに高度化して参りましたために、特に米麦作に対するところのいもち病その他の災害というものは非常に多くなって参りまして、年々五百億以上に上ることが往々にしてあるのであります。現在、建物、住宅の火災防止については、御承知のように消防の制度があって、早期にこれを発見して防火し得るところの制度になっております。しかも、その経費は、たといそれが個人の失火でありましても、あとになってガソリン代やポンプの修繕代を個人から要求するということにはなっておりません。また、措定伝染病でありますところのコレラ、ペストのようなものにつきましても、伝染病予防法によりまして、その経費は国家及び公共団体が負担することになっております。農業災害は、申し上げるまでもなく、まさに天災でありまして、いかに周到なる注意をもってするも自然発生を見てうっかりしておるというと、数日の間に蔓延して、取り返しのつかないことになることは、御承知の通りであります。われわれは、農業災害防除法というものを設けて、食糧増産に対するところの国家補償の見地から、病虫害の発生を見たときには、町村及び農業協同組合が直ちに農薬を入手してこれが防除に努むることとして、その所要経費はこれを国家において負担するところの制度を確立いたしたいのであります。本年度予算においては、災害防除の予算すら、二億八千万ほどでありまするけれども、逆に削減をせられておりまして、予備費もごくわずかでありまするから、いざ災害の発生ということになりますと、またいざこざを生ずることは火を見るよりも明らかであります。本年の天候状況は必ずしも順調でありません。  前述のごとく、農業が世界まれに見るほど集約的になればなるほど病虫害の発生は大きいのであります。九州地方においては、すでに麦に対して相当な被害があって、同僚の議員諸君はその善後処置に非常な苦心をしておられるような状態であります。病虫害が現実に現われてから農業保険によるところの多額の分担金を国家が負担するというような制度を改めて、農業災害防除法のごとき制度を確立するところの考え農林大臣にあるかどうかということをお伺いいたしたいのであります。(拍手)  また、食糧増産に特に重大なる関係のあるところの産米の集荷制度の問題でございます。これはすでに同僚の議員諸君からいろいろ御質問なされましたので省略をいたしまするが、事前の買付制度、予約買付制度というものを、一体農林大臣はどういうお考えでもって作られたか、こういうことに対してまだ御質問がないようであります。おそらく、これは、今よりもよくしよう、米をたくさんに入手のできるように、また食糧事情をよくしようというためにこれを設けられたことは間違いがないと思いまするけれども、米価は暫定米価であって、豊作であるか凶作であるかわからないから、とりあえず暫定米価で九千七百三十七円でいく、肝心のことは米価審議会で相談をしてきめる、こういうふうに言っておられまするが、農家は、すでに田植も始まりまして、ことしも豊作ということで非常に張り切っておるのであります。ここで考える以上に、農家は、いかなる方法、いかなる価格でもって粒々辛苦の米麦が買い上げられるかということに非常な関心を持っておるのであります。ただ思いつきでもって改善をせられて、大蔵省に相談をしなければ供出促進奨励金も思うようにはいかない、また免税の点もこれから大蔵省に相談をしてからきめる、こういうようなことであっては絶対に私はならないと思うのです。(拍手)そのくらいであるならば、そんなことをやるということを新聞に発表したり、あるいは考えない方がいいのであります。ただいたずらに農民を惑わして、また長年今までいじめつけられたような方法でもって、二束三文で米を強制的に買い上げられるのではないかという不安を、すでに農民はたくさん持っておるのであります。河野農林大臣は、予約買付制度をやられれば、米がうまく集まり、農民も喜んで、農家の経済が豊かになるというお考えであるかどうか、この点をはっきり議会を通じて農民諸君に知らしめていただきたいのであります。(拍手)  最後に、私は、第六でありまする、が、ビキニの水爆実験に関する被害の問題につきまして、外務大臣及び農林大臣にお伺いをいたしたいのであります。  一昨日、同僚の成田議員がすでに御質問になりましたが、答弁が非常に不徹底でございまするので、さらに突き進んで御質問をいたしたいのであります。いわゆる福龍丸の事件は、御承知のように、昭和二十九年の三月十六日に起りました。その被害の賠償について、政府は、本年の一月四日、米国政府に損害賠償として六百余万ドル、邦貨にいたしますと二十六億円というものを要求したのでありますが、その三分の一にも達しないところの二百万ドル、すなわち七億二千万円というものを慰謝料名義をもって受け取っておるのであります。しかして、これをもって対アメリカ関係が一応終了した、妥結したということになっておることは、遺憾しごくなことなのであります。しかも、政府は、その七億二千万円を一月四日にアメリカ政府から受け取っておきながら、これを日本銀行に無利息で預け入れて、それから無為にして四カ月を経過し、一昨日の四月二十八日になって、ようやくその配分を決定したという始末であります。その間、政府は、その配分がおくれたために、漁業者及び漁業流通業者が非常に困るだろうというので、二億三千万円の短期資金を預金部の運用資金から短期に融通いたしました。しかしながら、その期限は三月三十一日であります。三月三十一日にまだその配分がきまらなかったのでありますけれども、政府が世話をやいて貸した金であるから返さなければならないというので、強引にこれを三月三十一日に業者から引き揚げております。これがために、業者は、日本銀行には七億二千万円の無利子の金があって、当然もらうべき金であるにもかかわらず、それを横目でにらみながら、高利の、日歩二十五銭、三十五銭というような金を借りて、これを預金部に支払っておりました。しかも、七百九十万円に上るところの無意味な利息まで払わされておるというような状態でありまして、かようなことをして水産業者に水産の増産をはからせるというようなことは、これはもってのほかであると思うのであります。(拍手)そこで、私のお伺いいたしたいところの第一点は、外務省当局が、当初の要求において—マグロ漁業者は、水爆実験によって、福龍丸その他の実際の被害はもちろんでありまするが、一般の生産者のマグロの価格というものは非常に下ったのであります。百五日間の、下ったところの、その下落の著しい期間の損害賠償の十三億数千万円というものを、農林省を通じて外務省に要求したのであります。これは当然アメリカに対しても要求し得るところのものであるにもかかわらず、外務省は、これは間接の損害であるからということでもって、これをアメリカに対して要求をしなかったのであります。この点について、外務省の当局に重大なるところの過失がなかったかどうかということを外務大臣に伺いたいのであります。(拍手)直接汚毒は受けなかったけれども、これによって一時マグロの生産者価格というものが三割から四割の下落を見たのでありまして、これは、国際法上の慣例から申しましても、当然要求し得るものであります。現に、アメリカは、カナダのトレールというところにある溶鉱炉—これはアメリカの資本が若干入っておりますカナダ政府の溶鉱炉であります。この溶鉱炉の煙毒によりまして、アメリカの地域内の森林が非常に被害を受けて、その近所の畑地の地代も非常に下落をしたのでありまするが、アメリカは、これに対して、森林の直接被害はもちろん、地代の値下りの損害に対してもこれをカナダの政府に要求して、一九四一年に、それだけの損害賠償額というものを完全に受領したところの事例があるのであります。私は、思うに、外務当局が、単にマグロの業者が損害として一般の値下りまで虫よく要求しておるのだから、いいかげんでよい。—こういうようなことは、国際法上の慣例なりその他の事例について十分なるところの研究調査を行わないで、言葉を変えて申しますならば、マグロの業者や漁業者の立場というものを軽視して、外交交渉の上に重大なるミスがあったということを確信するものであります。(拍手重光外務大臣は、外務当局にさような重大な過失がない、こういうことを明言できるかどうかをお伺いいたしたいと思うのであります。  第二は、去る三月、参議院の水産委員会においても、水産委員の方々から鋭く追及を受けた点でありますが、政府は、生産者の価格の値下りはこれを認めないで、アメリカ政府に対してはこれを要求しませんでした。その過失、責任は免れないのでありまするが、外交不再理の原則といたしまして、これを再びアメリカに要求せよということは私は申しません。しかしながら、二十六億円というものは、日本政府がこれを認めてアメリカに要求したものでありまして、慰謝料として七億二千万しかもらわなかったから、あとは知らないというようなことが、一体できるかどうかという点であります。わが国憲法第十四条には、すべて国民は、政治的、経済的、社会的関係において平等であって、差別されてはならない、と明記されております。漁業関係者は、前記の差額十九億円をみだりに無視されるわけにはいかないのであります。現に、石川県の内灘においてさえ、進駐軍の演習におけるところの損害については、相当に広範な漁業者の損害が、日本政府によって賠償せられております。憲法第二十九条にも、「財産権は、これを侵してはならない。」、「私有財産は、正当な補償の下に、これを公共のために用いることができる。」と明記せられております。政府といえども、漁業関係のこの財産権を、アメリカからこれだけしかよとさなかった、アメリカから来たのは慰謝料だけだから、あとのことは知らないというようなことで、その責任を免れることは絶対にできないのであります。一昨日、西田労働大臣が、何事も事実を御存じなくして、まあ金を出すというようなことは、一応は出さないというような工合に言っておけば間違いがないというので、同僚成田君の質問に対して、出す考えはございませんというようなことを答弁されたのは、まことに笑止千万と言わなければなりません。(拍手)  以上二点について、外務大臣並びに農林大臣の率直なる御答弁をお伺いいたしたいのであります。  以上六項目にわたりまして農林漁業、食糧増産の重要性に対するところの政府認識を喚起しながら、政府の簡明にして誠意ある答弁をお願いいたします。もし不十分である場合においては再質問を留保して、私の質問を打ち切ります。(拍手)     〔国務大臣鳩山一郎君登壇〕
  39. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 西村君の御質問お答えをいたします。第一の御質問は、食糧問題についてでございました。私も、食糧自給度の向上につきましては、あなたと同じように必要なことだと思っておりますが、詳細なことは、実際のことを言うとよく知りません。それですから、所管大臣から答弁をしてもらいます。あしからず御了承願います。(拍手)     〔国務大臣一萬田尚登君登壇]
  40. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答え申し上げます。  農業所得に関しまして、給与所得では現在一五%の給与所得控除があるのでありますが、これは、雇用関係のもとに勤務することに伴いまして、必要経費を概括的に引き去る、こういう考え方から来ておるのでありますが、農業所得につきましては、実際の必要経費をすべて控除して課税所得の計算が行われておりますので、特に、私は、給与所得に比べて農業所得に無理な課税をしてあるとは、今のところ考えておりません。  なお、青色申告に要しまする帳簿書類等、現在極度に簡素化いたしております。なお、農業の場合は、毎日記帳を要する事項もないので、ぜひとも青色申告を普及することに努力いたしたい。この面から税負担が軽くなるようにと念じているわけであります。  なお、固定資産税につきましては、これは地方税で、自治庁長官からお答えがあると思いますが、固定資産税はむろん適正に行われていくと考えております。  なお、農業金融につきましては、先ほど総理からもお話がありましたように、農業がどんなに日本の場合において重要であるかは申すまでもないのでありまして、従いまして、これが振興のための農業金融の円滑化につきましては、政府としては万全の配慮をいたしておる次第であります。すなわち、農業に対します長期資金の融資機関としてすでに農林漁業金融公庫があるのでありますが、本年度におきましては、昨年度貸付実績額を上回りまして、昨年は二百四十九億出ておるのでありますが、今回は二百五十五億を貸し付けることにいたしておるのであります。なお、本年度からは、自作農の経営の基盤であります農地を維持して農家の経営の安定をはかりますために、農地を担保とする自作農金融制度を創設いたして、本年度において、その資金として二十七億を予定しております。さらに、農業に対します短期の経営資金の過半は、農中系統の金融機関によって行われておるのでありますが、農林債券の引き受け等につきましては、政府といたしまして常に格段の配慮を払っておるわけであります。  災害金融につきましても、従来ともそのつど必要な措置は講じておるのでありまして、すでに、昨年度の災害につきましては、百三十億円程度の融資を目途といたしましてその円滑な疎通に遺憾ないよう期しておるわけでありまして、農業金融に非常に重点を置いて考えておるということを御了承願いたいのであります。(拍手)     〔国務大臣河野一郎君登壇〕
  41. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 西村さんから農村関係の各般の問題についてお尋ねがありましたが、順次これをお答え申し上げます。  第一は、食糧を中心にした米の問題についてでございます。米の増産についてどの程度に熱意を持っておるかということでございますが、これについて、私はたびたび申し上げましたが、米の問題を考えます際には、価格の問題をどうするか、消費者価格はどうするか、生産者価格をどうするかということが第一に問題になります。申し上げるまでもなく、米価の決定は平均価格ということになりまするから、これを無制限に農村の負担において増産国家が要請するということは、ある程度私は考えなければならぬのではなかろうかということが、たまたま誤解せられまして、米を増産することに反対なんだろうということをおっしゃいますけれども、私は農家それ自体の経済のために相当の配意をしなければならないのではなかろうかと思うのでございます。今お話にもありました通りに、外国から食糧を買ってきて、為替をこれに引き当てるということは非常によくないから、国内で自給度を高めなければいかぬ、自給自足のできるようにしなければいかぬという御意見もありましたけれども、決して私はそれに反対するものではありません。反対するものではありませんけれども、私の考えますことは、農家経済の安定に重点を置きまして、農家の負担、農家の犠牲において食糧増産をただ要請することは考えたくないということにあるのでございます。(拍手)この点は御了解を願いたいと思うのでございまして、これは二重米価制度を徹底的に施行するという政党基本方針であれば別であります。私の政党は二重米価制度をとっておりませんので、この程度に私といたしましては配意をして参りたい、こう考えておるわけでございます。  次に、海外の食糧をみだりに持って参って、そうして国内の米価を圧迫する、食糧増産意欲を押えるというようなことは、たびたび申し上げました通り、これは全然考えておりません。(「事実はそうではないか」と呼ぶ者あり)事実は絶対そうではございません。なぜかと申しますと、米価の決定、麦価の決定に当って、海外の農産物の価格の下落は全然考慮に入れません。国内米価もしくは麦価の決定は、あくまでも生産費を考慮いたしまして、生産費に中心を置きまして、これに豊凶の度合いを加算し、国内の経済事情を勘案いたしまして決定するのでございまして、決して海外の農産物の価格の騰落は何らの要素になって考えるべきものではありませんことは、御承知の通りであります。  次に、肥料と飼料の問題について申し上げます。肥料、飼料につきまして何らの処置がないじゃないかということを仰せになりましたが、肥料につきましては、先般の値下げに当りまして一部肥料資本家の反撃にあいまして、所期の目的を達することができなかったことは、はなはだ私は残念に考えております。しかし、今日におきましては、すでに、肥料の製造業者におきましても、当時私が予定いたしました通りに、十万トンの増産が現実に実現いたしました。その結果、おそらく計数の整理をいたしてみなければわかりませんけれども、来たるべき六月の終りないしは七月の初めの肥料審議会におきましては、相当の価格の—硫安に対しましてはもちろん、価格の下落を見ることが私は可能であるというふうに考えております。これは、肥料の問題を論ぜられます際に、いつでも硫安を五円下げた、五円下げたとおっしゃいますけれども、現実にお考えいただきたい。硫安だけが肥料ではないのでございまして、石灰窒素、カリ、過燐酸、これらについて相当に値下げをいたしましたことにつきましては西村さんも御承知の通りと私は考えますから、どうか一つ公平にものを判断していただきたいと思うのでございます。(拍手)  さらにまた、えさにつきましても、決してえさが下っていないというわけではございません。また、予算におきましても、今年度予算に対して四億三千万でしたか、四千万の予算をもちまして、これによって、外国から輸入いたしまする、ふすまをそれだけ値を下げて国内に配給して国内のふすまの価格を下げていこうということにいたしておりまして、これによって相当の価格の引き下げを見ることが可能であるというふうに考えております。何分、えさにつきましては、国際的な価格がどうしても国内価格に強く影響いたしますので、今申し上げますように、ふすまについては、ふすま対策として四億数千万円の予算も組んでありますから、これによって相当の目的を達することができるのではなかろうか、こう考えております。  さらにまた、乳価初め畜産製品の下落についてでございますが、これは、西村さんも御承知の通りに、輸入いたしまする乳製品が一部横流れ等いたしましてそれがわが国内の酪農製品の価格を圧迫いたしておりますことは、はなはだ遺憾のことでございますけれども、これにつきまして適切な処置を講じまして、今後なるべくそういうことのないようにいたしますると同時に、われわれといたしましては、国内の酪農製品の一部買い上げ等の処置をいたすことに努力いたしたいと考えるのでございまして、これによって学童給食等について適当な処置を講じまして、何とか皆様の御期待に沿うように努力いたしたいと考えております。  次に、予約制度の問題でございます。予約制度につきましては、これは米価の決定がおそい、おそいという御意見がございますけれども、早い方がいいという考えもあると私は思います。しかし、従来の例から申しまして、これは大体九月ないし十月に集荷いたします前にきめられているのでございます。早くきめて、そして増産の意欲をそそるようにするということも、一つ考え方と私は思います。しかし、何分にも生産費の決定は、植付をしまして刈り入れるときまでいかなければ私はわからないと思うのであります。前年度価格できめるということも一つの方法と考えますけれども、豊凶の度合いもまた一つ要素になるのではなかろうかと思いますので、これについてはいろいろ御意見もございますから、どの案をとるかということについて、先ほど申し上げましたように、米価審議会等の有力な方々の御意見を尊重いたしまして決定して参りたい、こう申し上げたのであります。決してなおざりにしておるわけではございません。  なおまた、減税その他予約奨励費等につきましては、ただ大蔵省のごきげんをとっておるというようなことは断じていたしません。一定の農業団体等の御意見も拝聴いたしまして、各方面の意見を尊重いたしまして、これに対して財務当局の同意を得るために折衝いたしておるのでありまして、ただ御意見を承わって適当にやるというふうなことを考えておりませんから、しばらくおまかせおきを願いたいと思います。  それから、ビキニの話がありましたが、これにつきましては外務大臣からお答えをいただきたいと思います。私は、今いろいろお示しでございましたが、あまり専門にこれを勉強しておりませんので、もし外務大臣の御答弁で不十分でございましたら、別の機会に申し上げることにいたしたいと思います。御了承願います。(拍手)     〔国務大臣重光葵君登壇〕
  42. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) お答えします。ビキニの問題は、むろんこれは個人の重要なる利害に関係する問題でございますので、非常に慎重に取り扱う必要があり、また取り扱ったのでございます。当時、国内においてはむろんのこと、この問題は世界的の論議になった問題でございますので、外務省としても非常に重きを置いて取り扱った問題でございます。そこで、あらゆる方面から検討して、個人の損害申請申し出に対しては十分に注意を払ったのでございます。また、今お話のカナダ等の前例についても、むろん考究いたしたのであります。そこで、御意見の通りに、この問題は法律問題として取り上げて交渉いたしました。これはずいぶん議論をいたしましたが、結局、法律問題では解決のできぬことになりました。そこで、どういう解決の方法があるか。二国間で交渉して解決のできぬ問題は、法律問題については国際司法裁判所へでも持っていく方法かございます。しかし、国際司法裁判所に持っていって十分に目的を達するかという見込みをまたつけなければなりません。そして、また、いつそれが結着をするかということも十分検討を要する次第でございます。しかるに、一方、これを法律問題でなくして政治的に取り上げて解決したならばどういうことになるかということで、これは私の前任者の時代から考究もし、また交渉を進めておったわけでございますが、米国側は、前は百五十万ドルのオファーをしてこれを解決しようということでございましたが、私が就任した後に五十万ドルの増加申し出て、これで一つぜひ解決をしたい、こういうことに相なりましたので、この交渉はこの辺でまとめることが、被害者の全部の利益のことをほんとう考えてみても、まあよかろう、不満足ではあるけれどもが、この辺で一つ解決する方が、大局から言ってみても、被害者の利益の点から考えてみても、最善のことでないか、こう判断をいたして決定をいたしたわけでございます。私といたしましては、決してその額につい満足を表しておるわけでございませんでした。しかし、今申しますような事情で、最善を尽したと考えておる次第でございます。(拍手
  43. 西村彰一

    ○西村彰一君 自席からお許しを願います。
  44. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 西村君に発言を許します。
  45. 西村彰一

    ○西村彰一君 農業災害防除法に対する御答弁がございません。また、重光外務大臣の御答弁のうちで、第二段の差額をどうするかということについては御答弁がございません。遺憾しごくであります。     〔国務大臣河野一郎君登壇〕
  46. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) 農業災害に対する対策につきましては、御意見として拝聴いたしておりまして、今政府としては、そういう考え方もありまするし、また災害補償保険制度ということを今やっておりますので、これのいずれで行くかということにつきましては、せっかく委員会も開かれて研究されております。しかし、私は、今の西村さんのお考えにやや近い考えを実は持っておるわけでございますが、これは各方面の意見も十分尊重いたしませんと、軽々に決定するわけには参りませんので、この点でお許しいただきたいと思います。   [国務大臣重光葵君登壇〕
  47. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 賠償額の配分の問題等につきましては、実は私直接取り扱っていなかったものですから御答弁申し上げませんでした。しかし、賠償額の配分はすべて終了いたしました。そして、その配分額以外の額について一般会計予算からこれを支出するということはしないことに決定をいたしておりますから、そのように御了承願いたいと思います。
  48. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 小山亮君。     〔小山亮君登壇〕
  49. 小山亮

    ○小山亮君 私は、小会派クラブを代表しまして、施政方針関係しまして、外務大臣農林大臣及び運輸大臣質問をせんとするものであります。講和発効以来、日本のかつての交戦国との間の国交が逐次回復いたしまして、最近に至りましては、中共、ソビエトとの国交も回復する、やがて世界の全面的な平和が招来する光がだんだんに近づいてくるということを考えまして、私は皆さんとともに同慶にたえないのであります。しかるに、これに反しまして、終戦以来すでに十年になりますが、戦後、戦争犯罪人という名前を冠せられましで、いまだその自由を完全に拘束されまして、刑務所に拘禁され、精神的に肉体的に非常なる苦痛を感じて苦しみ悩んでいるところの多数のわれわれの同胞がございます。私は、この同胞の苦痛に対して、まことに同情にたえません。(拍手国民の大多数もまたおそらくこれに同感をしておられることであろうと存じます。家族の方々は申すまでもございません。関係の方々も申すまでもございません。日本国民全体がこの不幸な人々に対して非常に同情をしているということは、これは当然だろうと考えます。議会は、この国民要望にこたえまして、過ぐる議会において、院議をもって、戦争犯罪人をすみやかに釈放せよというところの決議をいたしました。従って、戦争犯罪人はすみやかに釈放の方向に進まなければならない。外務省は、この議会の決議を尊重して全力をあげてこの解決に尽さなければならぬはずであります。しかるに、今に至ってこの戦争犯罪人の釈放、ということが実現されない。国民の多数の中には、議会の決議があるにもかかわらず、国民要望があるにもかかわらず、これが実現されないということは、外務省がなすべきところをなさないのではないかという、外務省に対するところの強い疑惑の声さえすでに起っておるのであります。私は、この問題について、外務大臣に慎重なる御考慮を願いたいのである。  そもそも、戦争犯罪人という名前のもとに、かかる厳重なる、苛酷なる刑罰を加えられるということは、国際法上いまだかつて見ざるところである。また、実に世界において珍しい画期的な刑罰であります。死刑であるとか、無期徒刑であるとか、有期であるとかいうような、こういう苛酷な刑罰を加えるということは、いまだかつて国際法上ないことである。それゆえに、国民の多数は、これは戦争に勝った者、勝者が戦いに負けた敗者に対するところの報復的な刑罰であるとすら言っておる。私は、この問題に対しては、やはりそれに同感を禁じ得ない。なぜならば、この刑罰の根拠をなしておるところのものは何であるかといえば、ポツダム宣言の第十項と、極東軍事裁判条例の第五条、これによってこの処罰がなされているということに聞いております。そうすると、ポツダム宣言であるとか極東軍事裁判であるとかというものは、これは戦勝国が戦勝国との間にきめたのであって、戦敗国であるわれわれ日本人は一人も知らない。戦勝国間で取りきめられたところの一方的な規定で戦敗国を律する。しかも、その律するやり方というものは、占領治下において、強大なる武力の制圧下において、抗するに道なき立場に追い込んでおいて、そうしてこれを決定した。これは明らかな事実なのであります。そうしますと、私どもは、やはりこれは勝者が敗者に報いたところの報復的刑罰であると考えざるを得ない。もしそうでないとするならば、戦争があるたびに軍事裁判というものによって犯罰人が処罰されなければならないならば、昭和二十五年の六月から起ったあの朝鮮の動乱に対して、軍事裁判が行われて、米人かあるいは朝鮮人かのどちらかが裁判にかけられて戦争犯罪人ができなければならない。(拍手)しかるに、ドイツと日本だけがその刑罰を受けるということは、どうしても私どもはこれに対しては理解しにくいことなのであります。  また、その戦争の結果刑罰に付せられたところの人々というものは、おびただしい数に上っております。すでに処刑されたところの人々ですら、これは一方的な処刑でありますから、しかも強大なる武力の制圧下において行われたところの裁判である、断罪でありますから、これは抗するに道がない、従って、思いがけないような無実の罪で処分されておる人もあるだろうし、また、処分された多くの人々の中には、万の恨みをのんでこの世を去った人々もきわめて数が多いことだろうと私は思います。戦争後、ソ連、中共を除きまして、今日、死刑あるいは無期、有期、こういうような刑罪を受けたり、あるいはその中で釈放されたり、次第に人間が減っておりまするが、総数においてソ連、中共を除いて、処刑された者の数は四千二百四十六名、そうして、死刑されたり、あるいは、病没したり、あるいは釈放されたりした人々を除きまして、現在巣鴨に残って服役しております者は六百四十六名であります。私は、この問題について、皆さんのどうしても深い考慮を仰がなければならぬ、なかんずく、外務大臣に対して十分なる考慮を仰がなければならぬと思います。  外務大臣は、この問題については、われわれ以上に十分に承知されているはずなんだ。重光外務大臣は、終戦と同時にやはり拘禁をされて、そして、暗たんたる幽囚生活の中に、精神的にも肉体的にも苦しみもだえられたことであろうと私は思う。(拍手)そうして、釈放されたそのときの重光さんは、さぞうれしかったことだろうと思う。出てこられた時、重光さんは、まず第一に、新聞記者諸君に、自分たちは早くあの中に残っておる人を外に出したいということをはっきり言われておるのだ。(拍手)それなのに、今日まだその中におった人が外に出てこない。重光外務大臣が在野時代であって、自分の自由にならないときならいざ知らず、今日は、政府の外務大臣の重責をになわれ、この問題を解決されるときの、最も大切な、最も中心的な役割をされておる。(拍手)外務大臣は、二月就任以来、この戦犯釈放に対してどんな御処置をなさったか。前の外務大臣に比べて、あなたはどんな御処置をなさったか。さだめて懸命なる努力をなさって、戦犯釈放というものが大体曙光が見えるというくらいの御報告ができるはずなんだ。三カ月の期間というものは長い。その間に、あなたは何をしておいでになったか。私は、今日、重光外務大臣が、自分の苦痛から、体験から、現在巣鴨に残っている人々の身を考えて、どうかしてこれを釈放しようというほんとうの誠意があられるならば、そうしてまた、それに対して全力を傾けての努力をなさったならば、ちょうどこの機会はいい機会なんだ。全国民の前に、かような質問がございましたときに、重光さんはどうか、自分がこういうことをしたということを詳細に発表していただきたい。  戦犯の問題にからみ、私が外務大臣としてもぜひお考えを願いたいことは、講和締結以来、中国であるとか、フィリピンであるとか、フランスであるとかいう国々は、もう自分の国の戦犯を釈放しておる。そうして、最近はソ連、中共からも抑留者をどんどんと帰還さすような状態になってきておる。抑留者が中共から、ソ連からだんだん日本に帰ってくるに従いまして、かつては中共、ソ連に対して非常な激しい感じを持ったところの日本国民の感情も、帰ってくるたびごとに次第にやわらいで、中共、ソ連に対する日本人の国民感情は著しく好転しているではないか。しかるにもかかわらず、日一本と最も密接なる関係を持ち、さらに将来最も親善関係を結ばなければならぬというところのアメリカやイギリス、あるいはオランダやオースストラリアのみがその戦犯を釈放しないで、日本人の見ておる前で、われわれの見ておる前で、その精神的苦痛を与える幽囚の生活をさしておる。これが一体国民精神、国民感情に及ぼす影響はいかがなものでしょうか。(拍手)これで日米の親善関係がますます緊密になるでしょうか。これを率直に釈放してこそ、初めて日米の親善関係が緊密になれる。外務大臣であれば、なぜアメリカ大使なりアメリカの国にはっきりとそういうことを言って、戦犯釈放をすみやかにやれということをおっしゃらないのか。(拍手)就任以来の重光外務大臣交渉の経過、それを私はどうしても伺いたい。それから、もし戦犯釈放がなかなか容易にできないならば、関係諸国に特別な使節を派遣しても、よくこれを説得し、懇願し、すみやかに釈放できるような手続をおとりになったらどうか。また、今日まで国民的なかような要望があり、議会の決議があるにもかかわらず、釈放がなされておらないのは、何か国内的にもあるいは対外的にもこれを阻止するような力が動いているのじゃないか。もしそうであったなら、この際それを率直にここに御発表願いたいのであります。私は、今日、重光外務大臣が外務大臣に御就任になったがゆえに、この問題は外務大臣からぜひともはっきりとしていただきたい。これに対する明快なる御答弁をお願いしたい。  第二は、運輸大臣に対してです。  政府が今般発表されましたところの造船計画によりますると、本年は、政府資金百五十五億円をもって、新造船、定期船及び不定期船を合せて十九一万トンを建造する、しかも、その価格は、定期船はトン当り十二万円、不定期船は十万円、タンカーは七万円という御発表をなさいました。私はこの発表を見て失望にたえないのは、これは前年度も前々年度もやったことと同じようなしきたりでやっているじゃないか。計画造船、計画造船とおっしゃいますが、運輸省の計画された計画造船くらいその実無計画、無方計なものはございませんよ。その証拠には、どうか。昭和二十六年、第七次の造船はいかがですか。それ以来の日本の船の値段はどうですか。値段は世界一高い。世界有数に高い。作った船はどうだ。優秀船だ、豪華船だなどと言っているが、その素質の低劣なことは驚くべきものがある。一流造船所ならいい船ができる、こうおっしゃる。日本の一流中の一流の造船所が作りました船、豪華船が、それが、進水直後、港を出てフィリピンに参りまして、砂糖を積んでアメリカに行こうとした。行こうとして、砂糖を一ぱい積み込んで、いざいかりを上げようとしたら、いかりを揚げる電気の揚錨機がこわれてしまって、いかりが揚らない。仕方がない。いかりを切って、もう一度日本に帰ってきて、その積んだ砂糖をおろして、ほかの船に載せ、そうして、その船を、その造船所で数十日間修繕したという、驚くべき一流造船所ですよ。驚くべき高能率の船だ。(「どこの会社だ」と呼ぶ者あり)私は会社の名前は信用にかかわりますから申しません。またさらに、重貨物を専門に積むところの船を特に政府が融資して作った。その船が鉄材を揚げようとすると、今度は、荷物を上げ下げする、貨物船で一番大事な揚荷機が片っ端から痛んでしまって、十五日で荷役のできるところが三十日もがかっている。とうてい採算がとれない。それで揚荷機を全部やり直したというような事実すらあります。こういう船を第七次以来ずっと奨励して作らした。これが計画造船でしょうか。  一体日本の船舶は、ただ船を作るだけじゃだめなんで、この船をもって外国と競争して、国際競争に勝つて、どんな国とも運賃競争に勝たなければならないでしょう。そうしなければ外貨獲得ができないでしょう。それならば、世界でどの国と比べても一番優秀な船を作って、高能率の船を作ってしかも船価が一番安い船を作っていくのでなければ勝てっこないでしょう。ところが、日本の運輸省の指導方針を見ますと、日本の国が作るところの船は高いのです。同じ造船所が外国から注文を受けて作ってやるところの船はばかに安いのです。世界で一番船価の安いといわれているイギリスやドイツの船と比較して遜色のないくらい安い値段で外国なんかに売ってやる。しかも、支払い勘定というものは、三年の延べ払いであるとか、あるいは三年の分割払いであるとか、五年の分割払いであるとかいうところの条件を許しておって、日本にはそれは許さないで、しかも日本は高いのです。それでは、一体、競争しようと言ったって競争ができっこない。だから、第七次以降に作ったところの船は、どこの海上においても、外国の船と戦って全部負けたでしょう。だから各会社が赤字でしょう。その赤字であるために、船価が高いし、金利が高い。それがために、競争ができないということで、業者が運動して政府の融資金の七分五厘の利子を、利子補給して三分五厘にしてやったでしょう。三分五厘の利子補給にしてもらわなければ競争ができないのです。船が高いのです。そこで、はからずも、あの耳目を聳動させたところの造船疑獄事件というものが起ったでしょう。(拍手)これは起るべくして当然起ったのです。運輸省のやり方が、こんなばかな、無計画な造船をやらないで、安い船を作って、どことも競争のできる船を作るように指導したならば、こんな事件は起りはしなかった。繰り返し繰り返し、そのようなことをおやりになれば、またそんな事件が起りますよ。これは私は重大なことだと思う。  私は、この際に、三木運輸大臣に慎重に御考慮を願いたいのです。というのは、船はなるたけ採算のとれる船を作らなければいかぬ。荷物のたくさん積める軽い船で、そうして高性能の船で、安い船。第一次造船のときには、イギリスの船価というものがトン当り七万一千円、ドイツが六万五千円、これが世界で一番安かった。しかるに、日本の船価はどうですか。そのときには八万五千円ですよ。これだけ高くて、一体競争ができますか。そうして外国から注文した船は安いのです。なぜ安いかというと、むだなものは一切取っちゃって、ほんとうに実用的なものをやって日本のようにいろいろな注文をつけない。だからこういうふうに安くできるんだと言っておる。一体、客船と違う貨物船になぜそんなぜいたくな装備が要るのですか。荷物を積むだけなんです。乗組員が乗っているだけで、お客は乗っていやしない。そうして、最近のドイツで作った船も、イギリスで作った船も、中に入ってみれば、むだな装備は一つもないのです。ほんとうに中の装備は実用的なものなんです。日本の船は、非常に豪華な船を作っていますから、フィリピンへ参りましても、あるいはビルマに行っても、ビルマ人やフィリピン人がそれに乗り込んでみて、戦争に負けたのにこんなぜいたくな船に乗っているのだから、賠償金もたくさん出せるだろうと言って、なおさらに賠償金を要求しに来る。しかも、戦争に勝った国の船が、ほんとうに中を見れば、簡素そのものなんです。船内を簡素に作り、機械器具を整備して、少い人間で大きな船を自由に動かせるようにして、安い船でどんな運賃競争にもたえ、どんな世界不況が来ても、その船価が安く品物がよくて、その競争にたえ得られるようになってこそ、初めて日本の海運の振興はあり得るのですよ。これは私は中学生にもわかることだろうと思う。しかるに、運輸省の役人がわからぬというのはおかしい。高給をはんで非常なる地位におって、運輸省の役人がこれがわからぬか。わかってやらないとすれば、それはけしからぬ。わからぬとするならば、月給をやっておくのは惜しい。(拍手)  私は、この問題に対して質疑をしてみますと、第一流の造船所で作る船は高いという。二流造船所で作る船は安いという。それはなぜかというと、第一流造船所には、造船の研究機関があり、設備が優秀であり、あらゆる設備が備わっておる、職工も熟練したいい職工がいるから高いという。そうして二流造船所は安いという。私は、こんな間違った考えをどうして運輸省の役人がやっておられるか、実に不思議にたえない。というのは、イギリス、ドイツをごらんなさい。イギリス、ドイツは世界一優秀な設備を持った国なんです。その国で船価が世界一安い。優秀であればあるほど、船価が安く、品物のいいものが、短時日で大量にできる。これが優秀造船所でなければならぬでしょう。私は、この点は、今後船価を御設定なさるときに、運輸大臣によくお考えを願いたいと思う。  今までの貸し方であったら、どんなぜいたくな船を作っても—一流の船は十四億、十五億である。同じ一万トンの船が、十四億、十五億、中には七億、八億でありましても、幾ら船価が高かろうが安かろうが、その全部の船価の八割ずつ金を貸していったら、日本政府はたまったものじゃありません。高い船ができてしまってだめなのです。安い船を作らなければいけない。安い船を作るためにはどうしたらいいか。イギリスやドイツより引き下げるように努力しなければならぬでしょう。イギリスやドイツの船価以上に貸してはだめなのです。政府資金は、貸した以上戻してもらわなければならぬでしょう。ただくれるならばいいけれども、戻してもらわなければならぬ。それならば、イギリスやドイツの船価よりも安い程度に貸していきさえすれば—十九万トンというのは、これは何で十九万トンですか。私の言うようにしたならば二十五万トンできるのですよ。二十五万トンできましたら、今仕事がなくて困っている日本中の中流造船所、二流造船所、三流造船所全部船が行き渡りますよ。  そうして、また、今までの融資のやり方というものは、大財閥、大船会社、大造船所中心なんです。まず第十次の造船をごらんなさい。十七隻できた船の中で八隻が三菱の造船所ですよ。そういうようなことになれば、ほかの造船所は潤いませんよ。また、たった二十隻か二十五隻しかできない船を、自分の会社だけが、いかに大財閥であるからといって、政府の資金でこの船を四隻も三隻も一ぺんに取れば、ほかの船会社はみんな立ち行きませんよ。みんな参っちゃう。金があるやつは勝手に作ったらいい。これは国家の金ですから、機会均等に貸してやらなければならぬ。そうすれば、二十五隻の船を作って日本全体の造船所に行き渡って、その造船所に働いている職工はみな喜んで働き、食えるようになるのです。こういう点も十分に御考慮願いたい。  さらに、日本の海運政策上悲しむべきことは、日本には終戦後海運政策というものはないのです。海運政策というものは総合的なものでなくちやならないのです。船ができただけではだめなんです。港湾の設備であるとか、荷役設備であるとか、あるいは航路標識であるとか、これに関連するすべてのものができ上らなければ、日本の海運というものは盛んになりません。どんなに早く船を出そうとしたって、荷役設備が悪くて荷役ができなければ、船は幾日も幾日も滞在して、結局損をするのです。  また、過ぐる事件に洞爺丸事件というのがございました。あの洞爺丸事件というものは、これは私はいい反省だろうと思うのです。洞爺丸事件で、洞爺丸事件があったから、船員がけしからぬとか、あるいは鉄道の役人を処罰しろなんと言っておりますが、実にこれはこっけい千万です。これは責任はありましょう。ありましょうけれども、一体、洞爺丸は、しけのときに函館の港の中に入って、しけを避けなければならないのです。港というものは、しけをよけるための、逃げ込む砂漠のオアシスです。そこで休まなければならぬところです。休養しなければならぬところです。函館の港の中におれば、しけのために船があぶないのです。船があぶないから外に出るのです。港の中におらなくて、外に出て、あらしと……。
  50. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 小山君、時間がありませんので、なるべく簡単に願います。
  51. 小山亮

    ○小山亮君(続) そういうところにおれば船は沈没してしまうのです。それはなぜか。日本の港湾設備がゼロなんです。北海道の港湾設備をごらんなさい。どれも貧弱で、中に船が安心して停泊できるような港はないですよ。  こういう点から考えてあらゆる総合的な海運政策を樹立しなければ、日本の海運というものは振興しない。その見地に立って今度の造船計画をお立て下さらんことを運輸大臣にお願いいたしまして、私は、時間の関係上、ずっとしやベってしまいましたが、これに対する運輸大臣の御所見を伺いたいのです。  もう一つ簡単に農林大臣に伺いたい。先ほどからの御答弁を拝聴しまして、私はぜひとも伺わなければならぬと考えましたことは、農林大臣は、一月の二十四日の本会議において、社会党の足鹿議員の質問に対して、こういうことを言っておられる。私は多年農民の立場に立って巨大資本家の搾取と戦ってきた者であるということは諸君御承知の通りだということを言っておられる。私は、そのお言葉を聞いて、非常に心強く感じる。もしそういう立場で考えられるならば—昨年の暮れから、日本の酪農は、明治、森永のような日本屈指の巨大資本家の買いたたきにあって、乳価がなだれのように低落しておる。それに対して、もし農林大臣が巨大資本家を相手に、その搾取を阻止するために戦っておるとおっしゃるならば、ぜひ、今度は、この明治、森永を相手に、はっきりとした、あざやかな戦いを私はやっていただきたい。(拍手)  率直に申しますと、この低落しておりますところの乳価に対して、これを直ちに阻止する方法はいかなる方法もおとりになりますか。乳業者の持っている、余った製品を買い上げる、こうおっしやるが、それは明治、森永を助けることになる。もしあなたが乳を一般の生産者から買い上げるならば、その予算措置というものが出ていない。予算措置がなっていない。裏づけがない。裏づけがないようなことをおっしゃると、私は非常に不安に思う。ですから、もしそうならそうと、はっきりした対策をお示しを願いたい。  もう一つ農林省の中に—酪農を振興させますためには、農林省の中で、農地であるとか、あるいは、食糧であるとか、林野であるとかというこの部門で、互いに政策的な摩擦があって、なかなか酪農振興という方に向かない。その酪農振興を妨げるものは、むしろ、ほかになくして、農林大臣の管轄下にあるということになったならば、これは大へんなことでありますが、これに対するところの大臣の御所見を伺いたい。  これだけを伺いまして私の質問を止めますが、私は再質問いたしません、ら、どうかはっきりとした御答弁をお願いいたします。     〔国務大臣重光葵君登壇〕
  52. 重光葵

    国務大臣(重光葵君) 戦犯釈放の申題につきまして、ただいま熱烈なる御要望が私にございました。私はほんとうにごもっともだと思います。それのみならず、戦犯の戦争犠牲者に対する気持をこの壇上からよくお表わし下さってしかも国民的の感情をも十分にお述べ下さりたことは、私はむしろこれを感謝いたします。(拍手)私は、この戦犯なるものは戦争の犠牲者だ、こう従来から申しており、そう確信いたしております。そこで、この戦争の犠性者はどうしても救わなければならぬと私は思っておる。特に私が外務大臣の地位につきまして最も苦慮しておる問題が、この問題でございます。しかし、私は、それだからといって、ここに一々私のやりましたことを御吹聴申し上げる考えはございません。ございませんが、この目的を実現するためには、第一が相手国に向って十分こちらの意思を徹底せしめるということでございます。それは、在京の外国の代表者を通じることが第一、それからまた、おのおのその首都においてわが代表者をして十分熱意を持って申し込みをさせる、こういうことが第二でございます。しかし、ただそれだけじゃございません。これにつきましては、十分に世界的の世論、私はあえて正義の世論を起すことが特に必要だと感じます。さような方法をとるためには、いろいろな手段がございます。この手段は、いずれもこれを見のがしてはならぬことだと思います。それからまた、外国に人をやったらよかろうというお話がございましたが、外国には人をたびたびやっております。そして、最近では、更生保護審査会の有力な委員、この方面を担任しておる人を特派遣して、一人々々について、つぶさに各国に訴えて参りました。かようなことを今一々申し上げるのもいかがかと思いますが、しかし、さようなことについで、私はあらゆる努力をいたしたい。また、みずから進んでいたすつもりでございます。ただ、なおこういう手段もあるじゃないかということで、もしお気づきの点があったら、どうぞ一つそれは私に御通知を願いたいと思います。(拍手)私は、このことについては、ほんとうにあらゆる処置をとって遺漏なきを期したいと考えて実行いたしておるつもりでございます。お答え申し上げます。     〔国務大臣三木武夫君登壇〕
  53. 三木武夫

    国務大臣(三木武夫君) この方面に造詣の深い小山君から、計画造船についていろいろ参考になる意見を承わって感謝いたします。御承知のように、政府は、経済自立の六カ年計画を樹立いたしまして、船舶についても、将来の国際収支改善の見地から、今後六カ年の間に百三十万トン程度の商船を建造いたしまして、約三億七千万ドル程度の国際収支に寄与をしたい、こういう計画に基いて、今後計画造船をやっていくのでございますが、一方において、やはり国際競争力を強化しなければならぬわけであります。海運のごとき非常に競争力の激しい企業においては、国際競争力を強化しなければならぬことは御指摘の通りであります。それにはいろいろな方法がございましょう。いろいろ経営の面において合理化を徹底しなければならぬ面もございますが、今小山君の御指摘のように、船価の安い船を作る、しかも性能のいい安い船を作るということが、国際競争力をふやしていく上において最も重要なる要素であることは、全く同感でございます。そういう点で、従来砂糖のリンク制などがあって、外国船は安くて日本船は高いというような矛盾があったので、今後は、そういう矛盾を繰り返すことなく、砂糖のリンク制等によって外国の船舶を非常に割安に作るようなことは一切いたしません。輸出船舶も内地の外航船舶も同じ一つの船価の水準に立ってやっていくということで、今後の船主の選考に際しては、小山君の御指摘のように、できるだけ安い船を作る、しかも、それは、安いと申しましても性能の高いものでなくてはなりませんから、性能の高く、かつ安い船を作って、そうして、なるべくトン数をふやしていくということについて、今後特段の努力を払っていきたい所存でございます。お答えをいたします。(拍手)     〔国務大臣河野一郎君登壇〕
  54. 河野一郎

    国務大臣河野一郎君) お答えいたします。  小山さんの御指摘の通りに、牛乳もしくは乳製品の対策につきまして、昨年末以来政府はいろいろ努力をいたしました。しかし、その間にあって、明治、森永両巨大資本の乳製品会社が政府に全然協力をいたしませんで、このために非常に遺憾の点がありましたことを率直に私は申し上げます。しかし、これを、現在政府の持っております法律と申しますか、施策におきましては、いかんともする処置がありまんので、この機会に、実は、国会の協賛を経て対策を講じていくために、先ほども申し上げましたように、たとえば、中央金庫から金の融通をいたしまして、一部のたな上げをするようにいたしたのでございます。しかし、それをすぐに約束を破って—しばらくは下げるようにしないということでやったのでありますけれども、それをすぐに約束を破って値下げをするとかいうようなことがありまして、はなはだ遺憾の点があったのでございます。そういうわけで、私といたしましては、そのままでおくわけには参りませんから、この機会を通じまして、一般の酪農製品の買い上げをいたしまして、そうしてアメリカから入って参りまする学童給食分とこれを混合して、適正な価格にいたして、これを学童給食に回すということにいたしまして、需給の安定を期して、乳価の安定を期するという方策を講ずるつもりでございますから、御了解願いたいと思います。明治、森永を助けるとおっしゃいますけれども、これは決してそういう意図でなしにやりたいと考えております。  なおまた、高温殺菌は、昨年末から今年の春にかけまして、厚生、農林両省の間で完全に意見の一致を見まして、そうして高温殺菌の奨励をして、暫定的に牛乳の消費の増加を期する方策もとっておりますることは、御承知の通りであります。また、これにつきましては、本年度予算におきましても、高温殺菌施設をふやしますために、適当な方策—(「妨害運動がある」と呼ぶ者あり)妨害運動はあります。ありますけれども、その妨害の運動は除去してやるつもりでございます。  なおまた、省内に、牧野ないしはこれらの山林、畜産との間において摩擦があるというようなことについて御指摘でごいざますが、これは、個々の場合につきまして御指摘の点を適当に解決して参るつもりでございますから、御了承願いたいと思います。(拍手
  55. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これにて国務大臣演説に対する質疑は終了いたしました。      ————◇—————   アジア・アフリカ会議についての   高碕国務大臣の報告
  56. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 高碕国務大臣から、アジア・アフリカ会議について報告のため発言を求められております。この際これを許します。国務大臣高碕達之助君。     〔国務大臣高碕達之助君登壇〕
  57. 高碕達之助

    国務大臣(高碕達之助君)  アジア・アフリカ会議の経過について御報告いたします。(拍手)  昨年末、インドネシア、インド、セイロン、パキスタン及びビルマの五カ国は、インドネシアのボゴールに相会し、本年四月十八日を期してアジア・アフリカ会議を開催するために、二十五カ国を招請いたしました。その中には、イスラエル、朝鮮及び中国政府が招請されておりませんが、中共政府が招請されておるというような次第で、当初西欧各国では警戒的態度を持っておった事実があります。わが国といたしましては、本会議目的が政治、経済、文化の協力増進にある事実にかんがみまして招請を受諾いたしまして、私は代表として、四月十五日に東京を出発いたしまして、十六日にバンドンに到着したのであります。  私は、出発に先だちまして、外務大臣から、わが国会議に臨む基本方策といたしまして、国連憲章を尊重し、自由諸国の一員として国際平和推進に貢献し、関係諸国との親善関係を増進することに努め、世界的視野の中に会議を運営されるよう努力すべきことを申し渡されました。  会議は、到着の翌日から各国代表の非公式の懇談会を始めて以来、第一に経済協力、第二に文化協力、第三に政治問題—政治問題といたしましては、これを三つに分けまして、第一は基本的人権及び民族自決問題、第二は従属民族問題、第三は世界平和と協力促進、この三項目を討議することに相なりました。十八日と十九日の両日は本会議となりまして、首席代表が逐次演説を行うこととなりまして、私も、日本を代表いたしまして平和的民主主義国として再生したるわが日本が、あくまでも、平和に徹し、国連憲章の精神にのっとり、政治、経済、文化の各分野にわたって、アジア、アフリカの地域の友邦と手を携えて、世界の平和に積極的に寄与せんとする決意を明らかにいたしまして、後日あらためて平和促進及び経済、文化に関する提案を出すべき旨を予告いたしておきました。  かようにいたしまして、経済、文化はそれぞれ別の代表をもって小委員会を作りましたが、政治問題につきましては、首席代表にて、いずれも非公式、非公開に討議することに相なりました。  まず、政治問題の第一の基本人権につきましては、国連憲章の規定に言及することを避けて、そして抽象的に天賦人権思想によらんとするものと、現実的に国連憲章を支持せんとするものが二つ対立したのでありますが、わが国といたしましては、国連協力の方針に基いてその後者を支持して、結局会議は国連憲章に明示せられたる基本人権を支持することに決したのであります。また、連日紛糾を重ねておりましたパレスタイン問題につきましては、アラブ人の要望に共鳴いたしまして、国連の善処を要請する決議をいたしました。  第二の従属民族問題につきましては、これは植民地主義を排しまして、西部ニューギニアにからむオランダとインドネシアの紛争については、インドネシアを支持する決議を採択いたしましたが、たまたま、二十二日に、セイロンの代表から、古い型にかわる新しい型の植民地主義が脅威しておる、共産主義を阻止する、こういうふうな意味の発言がありました。また、トルコ、パキスタン等の九カ国はこれに同調いたしまして、精神的支配や浸透的手段による新植民主義阻止案を提出したのに対しましてインド、中共等がこれに反対をいたしまして、激論をいたしたのであります。これは容易に妥結することができませんで、これも二十四日の第三項目の平和促進問題起草委員会に持ち込むように相なったのであります。  第三の世界平和の協力の促進については、二十二日と二十三日に各代表が逐次演説をいたしまして、私も、国際緊張のもたらす危険を痛感し、原子兵器使用は人類を破滅に導くことと思いまして、正義と自由と安全の原則を基礎とせる世界平和を維持せんがために、国連憲章の精神にのっとり、その性質のいかんを論ぜす、戦争に導くおそれある事態のいかなる段階においても、武力の行使または武力を用いる威嚇をやめて平和手段によって解決をはかることを第一条といたしまして、第二条に、生活水準向上のために経済、文化の協力を促進し、共栄の実をあげることを、この宣言案として提出いたしたのでございます。かくて、一般の陳述が終りました後、私は決議起草小委員会設置について動議をいたしまして、それが採択されまして日本外十一カ国をもって小委員会が結成され、前記の第二項の従属民族問題も本委員会において討議されることに相なったのであります。わが代表といたしましては、日本の提案の平和宣言の内容にほかの国の希望する平和条項を追加されても、あくまで平和宣言として発表することを固執いたしましたが、これを単に決議案とするとの意見も出てこれは容易にまとまらなかったのでございますが、たまたま新植民地主義を含むがごとき表現に中共代表は強硬に反対して、小委員会は行き悩んでおったのでありますが、中共代表が、日本が固執しておるところの平和宣言のタイトルを全会一致で可決するなれば、自分は前記の反対の主張を放棄してもよい、こういう発言がありまして、ついに日本の主張が貫徹されて、国連憲章精神を尊重するわが主張が全部織り込まれた宣言案が可決されたのでございます。(拍手)  首席代表会議には、このほかに、大量破壊兵器禁止及び軍縮問題、そのほかに国連加入問題が審議されましたが、日本外七カ国が起草委員となりまして、大量破壊兵器の禁止を軍縮と分離して決議せんとするインドの主張と、これを並行せしめんとするものとの対立を見ましたが、わが国は、原子爆弾を受けた唯一の被爆国として特殊の立場において、強硬に軍縮問題と大量破壊兵器の禁止を並行せしめんとするパキスタンとトルコに同調いたしまして、わが方の主張を貫徹することを得たのであります。国連加入問題につきましては、南北ヴェトナムが多少問題を起しておりましてまた中共は朝鮮と蒙古の加入を希望しましたが、結局会議参加国のうちで未加入国の日本そのほか六カ国の加入を要請することに決議をされたのであります。  経済委員会は、十九日第一回会合を開きまして、翌二十日に実質的討議を終りましたが、アジア、アフリカ地域内において、日本は唯一の高度工業国であります。従って、わが方の趣旨はほとんど全部会議の報告に採択されました。わが方の提案の要旨としましては、経済開発と貿易の改善及び拡大、この二本立になっておりまして、経済開発のためには、工業化を奨励し、生産と雇用の増大をはかり、国際連合経済開発基金を設立すること、世界銀行の当地域における貸付の増大を要請いたしました。また、アジア、アフリカ諸国相互間で技術援助を強化すべきことを提案いたしました。また、貿易の改善及び拡大につきましては、原料、特産物の取引の安定、それから商品見本の交換の活発化、多角的貿易決済方式の採用等、具体的提案をし、できるだけ現実的の議論に引っぱっていったのであります。  経済委員会では、政治問題の討論の場合と違っておりまして、議論の紛糾することはあまりありませんでした。わが方といたしましても、日本の立場だけによらず、努めて他の地域の各国の経済的立場も考慮して、会議を引っぱっていったわけでありますから、他の諸国は非常に好感を持って迎えてくれたようであります。  文化委員会は、まず二十日に二十九カ国の代表をもって全体会議を開催いたしましたが、この委員会におけるわが方の提案は、アジア、アフリカ地域が古代文明の発祥の地であり、また現代文明の母体であることを想起いたしまして、この会議を契機として、学問、芸術、科学、技術、映画、演劇、スポーツ等、各般の分野において、地域内諸国間の文化の交流を一そう盛んにすることを提唱いたしたのであります。なお、わが方は、顧問団の示唆に基きまして、アジア・アフリカの文化賞の設定を提案いたしましたが、各国いずれもこれに多大の関心を示されまして、今後具体的方法を研究することに相なりました。  文化委員会は、各国提案を総合するために、日本外十一カ国をもって小委員会を組織いたしまして、これに勧告書の作成をゆだねましたが、小委員会は二十三日まで連日討議を続けた結果、知識の獲得、情報の交換、文化の交流、この三項目にわたって詳細なる具体的施策を列挙いたしました勧告書を作成いたしまして、これが文化委員会によって採択されたのであります。  文化委員会の討議は、全体会議及び小委員会を通じまして常に和気あいあい裏に進められました。アジア、アフリカ諸国においては、今なお、ややともすると日本の経済進出に対して疑惑の眼を持っております折柄、日本といたしましては文化協力を今日試みることが良策ではないかと存じます。  以上のような次第で、アジア・アフリカ会議は、すべての議題を終了し、二十四日夕刻に本会議を開催いたしまして、経済、文化の両委員会の勧告を含む共同コミュニケを採択するとともに、世界平和と協力に関する宣言を可決いたしました。  続いて二十数カ国の首席代表から謝意の表明がありまして、私も、主催国の労をねぎらい、会議の成功を祝って、はなむけといたしました  会議は、議長の閉会の辞をもって、七日間にわたる歴史的討論の幕を閉じましたが、その世界平和に対する貢献は甚大であったと存じます。(拍手)  最後に、衆議院が植原、灘尾両君をバンドン会議に派遣されまして、いろいろ御助言を得ましたことに対しまして、深く感謝いたします。(拍手
  58. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 本日はこれにて散会いたします。     午後六時四十五分散会