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1955-04-27 第22回国会 衆議院 本会議 第13号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年四月二十七日(水曜日)  議事日程 第十二号   昭和三十年四月二十七日     午後一時開議  一 国務大臣演説に対する質疑     ――――――――――――― ●本日の会議に付した案件  国務大臣演説に対する質疑     午後二時三十八分開議
  2. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) これより会議を開きます。      ――――◇―――――
  3. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 国務大臣演説に対する質疑に入ります太田正孝君。     〔太田正孝登壇
  4. 太田正孝

    太田正孝君 私は、ここに自由党代表して鳩山内閣施政方針に対し質問いたします。  問題の第一は外交問題である。問題の第二は、内政、特に予算中心とする民主党公約についてである。問題の第三は、現下の低迷せる政局に対処する政府政治信念についてであります責任ある答弁鳩山内閣総理大臣重光外務大臣と一萬田大蔵大臣とに要求するものであります。  第一の外交に対する質問は、責任外交の堅持と二元外交根底とに分けて聞く。  いやしくも一国の外交が十分の準備をし責任をもって遂行すべきことは言うまでもありません。しかるに、現内閣が無準備、無方針思いつき外交をしつつあることは周知の事実である。(拍手)すなわち、重光外務大臣の不用意なる渡米計画が先方から体よく拒絶されたことは、外務委員会の戒告となったほど、国家のため遺憾きわまることであります。(拍手世界のいなか者と笑われ、赤ゲット外交の醜を天下にさらしたものであります。(拍手)また、鳩山内閣総理大臣が、ソ連に対して樺太、千島の返還を要求しないと言い、問い詰められて、これを要求すると改めるなど、あしたに述ぶるところゆうべに異なる、駅も及ばずという言葉のごとく、千里を走る馬も鳩山首相言葉に追いつかないのであります国民は、あしたの新聞に載せられたる政府考えが、ゆうべ新聞に異なっているところを見て迷いつつ、暗い気持にならざるを得ないのである。これまさに思いつき外交のいたすところである。ぐらぐら外交である。秘密外交を排するのはよい。しかし、あけっぱなしの公開外交がかくのごときものであっては断じてならないのであります。(拍手)そこに外交に対する内閣責任があるからである。  なお、政府責任外交を堅持すべき意味において、内閣の意図する外交調査会のごときに対しても、われらはにわかに賛成することができない。それも白紙で外交根本方針を論議するなうばともかく、鳩山内閣共産主義国に対する外交方針を単独に勝手に策定した後に外交調査会に入れというがごときは、まさしく事の本末を転倒したものであります。(拍手)しかも、満州事変前の外交調査会失敗については、鳩山内閣総理大臣自身よく知り抜いておるはずではないか。要は、外交名実とも内閣責任をもってすべしというにある。  ここに現実責任問題としてただすべきことは、中共貿易に関することであります。今まさに、両国の代表が、熱心にその貿易伸張発展をはかり、新たに協定を結ばんとするとき、政府はこれに対していかなる態度をとらんとするか。中共側代表者は、特に日本政府がこれを保障する義務と責任とをとるべきことを第一義とすると言っておるではないか。しかるに、この重大問題について、重光外務大臣外交演説一言旨だに触れておらないのである。  一体中共貿易促進は、鳩山内閣選挙における一大宣伝であった。外交についての公約であった。この日中貿易問題に重大な関心を持つアメリカに対しては、重光外務大臣演説によれば、親善と友好と了解が深められておるというからには、何で今日まで態度をはっきりしないのであるか。政府としては新貿易協定を保障する責任をとるかとらないか、即刻答弁できるはずである。また、もしわが方の代表者民間の者であり、政府の関知せざるところであるというのならば、一体鳩山内閣中共貿易促進はいかなる点にねらいを置いているのであるか。協定外になるという決済問題、品目問題をいかにせんとするか。国民のうちには、政府中共貿易促進公約を喜び、これに踊った者も少くない。しかし、その後アメリカ態度を案じて少からざる不安を感じ、来日せる中共側工場施設等の視察を断わったものさえある。現実に大阪、名古屋地方などにその例を見る。国民の期待を裏切ることもはなはだしい。また、これが国営貿易を主体とするからには、中共政府にいかなる影響を争うるか。すべては責任外交を堅持すべき立場から政府の意図をただすのである。  次に、さらに深刻なる二元外交根底についてただします。現内閣外交方針は、外交について政治経済とを異なるものとし、政治的見地から共産主義は排撃するけれども、経済的見地から貿易促進するというのである。しかし、かように簡単に政治経済とを分けたり、軽々しく二元外交が運べるものではない。論より証拠世界を見渡せば、東に台湾海峡に不穏なる雲がただよい、西にパリ協定に対するソ連の冷厳なる動きがある。とりもなおさず、民主国家共産国家との冷たい対立であります鳩山首相は、第三次世界戦争の発生をおそれて平和外交を提唱している。その言やよし。インドのネール首相も第三地域論を叫んでいる。その声やよし。問題はその実現にある。われら、ここに思想上、宗教上の無抵抗主義の是非を言うので一はない。問題は俗界の俗事たる政治処理である。  一体鳩山内閣二元外交は、選挙のとき中ソ外交を強調して国民の歓心を買い、防衛問題の予算処理に当り、アメリカとの渡り合いをつけんとして、心ならずも二元外交に移行したのである。しかも、その対米交渉が幾多のつまづきと譲歩とによって辛うじて妥協を見たことは、なまなましい事実ではないか。そのよって来たるところを知るがよい。言葉を変えて言えば、外交目的達成は、内に養われたる政治経済文化の力があってのことである。イギリスが、自由主義国と親しく交わりつつ、ソ連とも話し合い、中共日本以上の貿易をしているのは、これをしもかりに二元外交と言うならば、イギリスにはこれをなし得る力があるからである。ここに力という。鳩山首相は力の政治を排すると言うが、それは現実には戦う武力を排することを意味するものと信ずる。政府防衛力増強国防会議を開かんとするのも、戦う力でなく、守る力を意味するものに違いない。力はそればかりでない。重光外務大臣が、外交演説の終りに、徐々に国の力を内外に対して築くと言うのは、文化の面もあるが、主として経済力増強にあると思う。敗戦ドイツ西ヨーロッパのきびしい天地にあって外交上の地歩を高めつつあるのも、その経済力発展がものを言い得ることになったからであります日本は、敗戦後十年、今に経済自立にいそしむとはいいながら、真剣に実力を養うこともせずして、理論上の二元外交をいかに実現せんとするか。  さらに、政治経済と異なるというが、自由主義国共産主義国に対する貿易においてココム体制をとり、共産主義国への輸出を制限し、しかも日本みずからそのココム体制の一員となっている事実を何と見るか。また、鳩山内閣総理大臣反共主義を強調しているが、目に見、えざる思想の輸入は甘い政治家予想以上に国内に浸透しつつある事実に目を光らさねばならぬのであります。  さらに、二元外交推進に力なき結果は、極東における貿易の伸展をかえって阻害しているのではないか。すなわち、中共貿易は、第一次鳩山内閣の組閣以来五カ月にもなっているのに一向にふるわない。皮肉にも自由党内閣のときより減退している面もあり、またわが方の輸出品目を増すと唱えながら、いまだ一品だに増さないのであります。(拍手)しかも、自由党内閣の強調した南方圏貿易については、重光外務大臣外交演説にも、その発展を吹聴し、賠償問題の解決を急ぐと言いながら、本年度予算賠償関係費を減額するがごときは、不誠意というか、不用意というか、これに対する答弁ありやなしや。  究極するところ、問題は二元外交にある。もしくは中立外交にある。一貫性なき外交にあります。そして、現実に、自由主義陣営に対しても、共産主義陣営に対しても、上げも下げもならぬところへ来ているのではないか。あえて政府思いつきでない二元外交推進実行力と方途とを問うのであります。(拍手)  第二の点は内政問題であります。これを一兆円予算規模公約実現とに分けて聞きます。  一萬田大蔵大臣財政方針は、堅実主義のもとにデフレ政策をもう一年続けて地固めをするということに尽きます。そのもう一年続ける考え自由党内閣時代考えと同じであるかいなかに問題があります。なるほど、一般会計の一兆円の規模は同じであるが、総合的財政金融施策としては相当に異なるものがあると言わねばならぬ。何となれば、昭和二十九年度は、一兆円予算のほかに、最初からすぐ使える一千二百億円の繰越金もあり、この意味において、現実には一兆一千二百億円の幅を持った予算であったことを銘記すべきである。加うるに、国際収支が好調となって三億四千四百万ドルの黒字を示し、特に輸出増加に伴う政府資金散布超過もあって、これが一体となっての施策によってこの一年間を過ごしてきたのであります。しかるに、現内閣のもとでは、一兆円の予算以外に、かかる巨額の繰越金予想されず、国際収支財政演説にある通り好調を期しがたく、特需また必然的に先細りとなり、財政投融資増加四百二十七億を考えのうちに入れても、財政金融を通じてのデフレ現象は一段と強化することになるのでありますデフレの強化であります。ウルトラ・デフレ、超デフレと言ってよいのであります。しかも、予算国民経済の実態に沿うべきものとすれば、国民所得は重要なる対照指標であり、経済審議庁長官代理演説によれば、四%程度増加し、六兆三千二百億円程度を予定するというにかかわらず、大蔵大臣は一切これを顧みんとせず、しゃにむに形式上の一兆円予算を固執しているのであります。かくては、日本経済堅実を目ざすというよりも、不況を目ざす不況予算であると言わねばなりません。(拍手)  世に、一兆円予算の呼び名に心理的影響があると言う者があります。それは自由党内閣時代意味するデフレの表象であって、本年度予算に対しては、一歩前進せる超デフレ心理的影響あることを期さなければならないのであります大蔵大臣は、インフレ的景気対策を厳に戒めておるが、われらとて断じてインフレ政策を支持するものではない。ただ、現在以上のデフレに導かんとする不況政策をおそれるのであります。(拍手)一般的に耐乏はがまんするとしても、今日以上の超耐乏は、がまんする力も乏しいのである。倒産日に次ぎ失業月に増すの現状を基底として考うべきではなかろうか。  もし、それ、この不況方針をもってすれば、われらは、昭和五年の深刻な喝デフレ状況を思い、ぞっとするのであります。(笑声、拍手)一萬田蔵相師匠役ともいうべき当時の大蔵大臣井上準之助氏が金解禁政策により日本経済破綻に陥れんとし、幸いにして次に立てる大蔵大臣高橋是清氏により救われ、いわゆる呼び水政策をもって経済破綻を取り戻したことは、当時の閣僚であった鳩山内閣総理大臣のとくと知られるところであります。(拍手)特に、当時井上政策失敗したのは、アメリカにおける世界的。パニックを初め国際経済情勢悪化によるとも申されますが、大蔵大臣は現在の国際経済の推移を何と見られておるのであるか。アメリカイギリスドイツ、フランスを初めスカンジナヴィアに至るまで、経済界に対し警鐘を打ち、貿易維持振興に深い注意を払いつつ施策おさおさ怠りないではないか。  一萬田大蔵大臣は、わが国のデフレを俗耳に入りやすいように山登りにたとえ、今八合目まで来ている、ここらで国民に牛乳でもやると言われたことがある。それが国策として住宅を建てることだとも言われたが、この一兆円予算による超デフレ不況政策をもってすれば、あたかも八合目で、これまでついてきた強力もやめる、あるいは食べようとするむすびも取り上げる、従って頂上をきわめられず、あるいは再び七合目以下に下るということになるのであります。(拍手)われらの憂いはここにあります国民の多数、特に有権者の七割に当る農漁民中小企業者など保守関係人たちは、この超デフレ不況政策に不審を持たざるを得ないのであります。それとも、一兆円予算といっても、一般会計から地方財政専売益金三十億円をぶち込んで一兆円になることを擬装したごとく、ゆとりのあるものであるか。われらとしては、その他政府財政投融資の問題も考えつつ、どうしても政府提案のままの超デフレ政策には賛成しかねるのである。(拍手)われらとしては、インフレを排するディスインフレの線を守リつつ、国民生活に明日の明るみを見せてやりたい。要すれば、呼び水による拡大均衡への堅実な歩みをとるべく、やがて富士の頂上をきわめんとするものである。大蔵大臣所見いかん。(拍手)  次に問題となるは、選挙に当り国民公約せるところを実現せりやということである。鳩山首相は、国民生活の安定と向上とを念として、その実現に努力したと言って、特に住宅問題と社会保障問題と減税問題とをあけています大蔵大臣も、これを裏打ちするごとく、特に三項目を説明しています一体自由党内閣時代と同じ一兆円予算でありながら、どうして本年度に特にこれらをやり得る財源を生み出し得たか。減税自然増収なり間接税増収によるとしても、他に大きい財源はない。各省における庁費等節約も知れたものであり、防衛分担金の削減は防衛庁費の増額となってしまい、鳩山首相が公言したごとき民生の向上に対しては、ただの一円だに振り向けられなかったのであります。(拍手)加うるに、住宅建設はその多くを民間資金に待ち、社会保障は、失業対策費増加不況の進展に応じ得るか問題であり、健康保険における赤字の解決は後日に譲られ、わずかに国庫の負担を増したにすぎず、結核対策に至ってはほとんど顧みられないのであります。  一兆円を一升ますにたとえれば、各省大臣公約したものは一升五合以上、二升にも上ったのである。それが概算における各省復活要求となり、血眼たなって大蔵大臣に求められたことは、何よりの証拠ではないか。(拍手)されば、財政演説においても、住宅社会保障防衛関係の費目に限り数字をあけたにすぎず、その他は抽象的の説明をしているにすぎない。あぶり出しをしても数字は出てこないのであります。(拍手)出ないはずであります。結局公約の一升五合は一升ますには入れられないからであります。因果はめぐる。公約を実行されず、実行したとしても、形ばかりのものであるか、しからずんば公約をゆがめたものであります政府、特に予算編成者にその責めが少くないと信ずる。もし公約実現したというならば、一兆円中何を削除して何を増したかを全面的に相関的に明示すべきである。  しかも、予算編成方針としては白々しくも総合経済六カ年計画の構想に沿いつつ立案したと言い、詳しいことを知らないであろう鳩山内閣総理大臣施政方針演説にも、その出発の第一年として諸般の施策を三十年度予算に具体化したと読ましめているのであります。(拍手)同じ一兆円の予算に、そんな手ぎわのよいことができるはずはありません。あれほど計画経済を強調し、自由党を非難してきた民主党自立六カ年計画が未熟きわまるものであることを見ては、ただただあきれ返るのほかはないのであります。もし一億円も予算であり一円も予算であるというようなことを言うならば、われ何をか言わんやである。(拍手)そして、拡大均衡などとりっぱな口をたたきながら、産業合理化近代化にはほとんど新たに予算化されているものはないのであります。(拍手)特に寒心にたえないのは、経済地固め農林漁業に向けらるべきにかかわらず、デフレをしのぐべき数字予算化されず、中小企業対策も形ばかりのものにすぎない。いかにも公約との開きがあまりにも大きいのであります。だまされた選挙民こそ気の毒と言わねばなりません。(拍手)  私はこれをタコ上げにたとえたい。選挙に当り、民主党内閣は、大きなタコ国民に示した。しかし、タコ地上にある。これを空に上るべき糸――財政裏づけができず、公約はむなしく地上にあって空に上り得ないのである。世にタコ配当言葉があるが、これは食べるタコでなく、上げるべき力のないタコである。タコ予算であります。(拍手)空には、皮肉な五月の風が、国民の愁訴となり、われらの非難となって吹いているのである。  もう一つつけ加えたいのは減税問題である。問題は自然増収を見合いにしてのことであるが、その自然増収経済活動裏づけを要するのに、もろもろの経済指標が横ばいをしている上に、一萬田大蔵大臣による不況政策をあえてせんとして、果してこの財源を満たし得るかである。もし予想通りにいかないときは、われらは予算上の歳入を得んとして税務官吏による誅求となることをおそれるのであります。(拍手)また、減税財源として間接税を高め、酒飲みや甘党をねらっていますが、それは大衆的影響もあり、一方に節約資本蓄積を説きつつ、他方に酒を飲め砂糖をなめよと消費を奨励するごときも、現内閣の力の入れんとする新生活運動との矛盾を感ぜざるを得たいのであります。(拍手)われら自由党としては、減税消費に向わしめず、ひたすら貯蓄の増強に向け、事業の活発化とからみ合せて一千億円の減税を行わんとする立場から、鳩山内閣施策をはがゆく感ずるのであります。(拍手)  質問の第三は、政局の安定に対する政府信念である。これも一般問題と国会運営とに分けて聞きます。  事あらためて申すまでもなく、この特別国会は、互いに血の出るような選挙をしたあと、鳩山内閣公約中心として論議するのが使命であります。そして、折り目を正し、きまりをつけるのである。質問の第一、第二を通じて述べた通り、われらの見るところをもってすれば、外交思いつきの無責任きわまる態度であり、口先ばかりの二元外交自由主義陣営に対しても共産主義陣営に対してもことごと破綻を生じつつある事実はおおうべくもないのであります。また内政に至っては、表面健全財政の名のもとに、その実、超デフレ政策をもってし、国民不況を強要せんとするものであり、選挙に当って、あれをやる、これもやると大ぶろしきを広げて公約せるものは、ほとんど実現されなかったのであります。(拍手)究極するところ、世にいわゆる政局不安の根源は鳩山内閣外交内政における全面的失敗にあると信ずるものであります。(拍手)  しかるに、鳩山首相は、施政方針演説において、主力を民主政治運営に置き、きわめて抽象的言辞を並べ、国家国民のため、よりよい政治実現すると言うがごときは、何らみずからの失政を反省するごとなく、顧みて他を言うものと言わねばならぬのであります。(拍手)しかも、鳩山首相は、新聞紙上伝うるごとく、政局にして行き詰まったならば解散すると言うがごときに至っては、よく口にする謙虚なる態度でなく、言語道断のことであります。(拍手)この際、鳩山内閣総理大臣は、国民のために、国民に対して、政局安定上いかなる態度に出んとするか。  もう一つ、卑近なる国会運営についてもただしたい。鳩山首相は、施政方針演説において、あくまでも謙虚な態度で臨むと言う。しかるべきことであります。しかるに、官房長官国務大臣たらざる官房長官の輩が、予算問題について野党修正いかんによっては解散するかもしれぬと言うがごときは、不謹慎きわまることではありませんか。(拍手予算に対する公約実現が問題となっておりまするとき、それこそ政府当局者は謙虚なる態度で弁明すべきにかかわらず、いまだ一言も論議せざるうちに解散をもって迫るごときは、旧憲法時代ならいざ知らず、民主政治の確立せる今日これを口にすることは、鳩山内閣総理大臣演説にある、権力をふるって独善に陥るものではありますまいか。(拍手)これこそ暴力にもひとしいものであり、民主政治をゆがむるものと信じます。財界といわず、一般国民といわず、政府公約無視デフレ政策を案じているとき、しかも解散による予算の不成立が長期にわたり深刻なる影響国民に与うるとき、解散責任を負いつつなお暴言をあえてせんとするか。近ごろまことに不愉快なことであり、国会運営のために鳩山内閣総理大臣の真意をただすのであります。(拍手)  以上の三点に対する質問は、複雑なる国際情勢下において外交の進路を案じてのことでありますデフレにあえぐ国民生活を憂えてのことであります外交内政推進する政治運営の健全なる解決を求めんとするからであります。すべては国民のためにである。国民に対してである。その国民のために国民に対して行動するのが、われら健全なる野党の存在であり、使命であります。あえて弁を好むものではないとつけ加えておきます。(拍手)     〔国務大臣鳩山一郎登壇
  5. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 太田君の御質問お答えをいたします。  太田君の質疑の第一は二元外交についてでございました。二元外交というのは一体どういう意味なのか私にはわかりませんけれども、二つの相反しておる主張に基く外交ではありませんアメリカを初め自由主義国家協力関係を堅持しつつ、そうしてソ連中共との国際関係を正常化したいという希望とは相矛盾するものではないのであります。(拍手とも世界大戦を避けたいという根本希望から出ておる二つやり方なのであります。(拍手アメリカとの関係は、ソ連中共との国際関係を正常化せんという企てのために少しも悪化はしておりませんから、御心配御無用でございます。(拍手ソ連中共国交を調整して、そして貿易を増進していきたいというこの日本希望に対しては、アメリカ十分了承をしております。もしも、そういうことをやらないで、自由主義国家との協力ばかりに努めておって、共産主義国家とはつき合いをしない、貿易をしない、戦争状態終結未確定のままでいいという状態にほうっておけば、ちょうどあなたが好きだった枢軸国家枢軸国家でない国家二つに分れたその時代と同じじゃありませんか。(拍手)あなたは、そのときには、戦争を鼓吹して、枢軸国家の群に入って、一生懸命で戦争をやったじゃありませんか。(拍手)きょう熱心に議論を聞いて私はその昔を思い出したのであります。もしそういうような態度をとれば、今日の冷戦は――今日は冷たい戦争ではありますけれども、もしもソ連中共との国交を調整しないというようなやり方でいけば、ほんとうに冷戦が熱戦になるおそれがあると思うのです。それだからわれわれは心配しておるのです。私どもがやっておることは、世界第三次大戦を避けたいという熱望の余りこういうことを申しておるのであります。御了解を願いたいと思います。  政局の安定についてどういう考えを持つかというお話でありましたが、先刻、参議院において、三木君の発言に対してどういう考えを持っておるかというようなことを聞かれました。私は、三木君の保守党の合同のその考え方は当然だと思っておるのでありまして(「そういうことを質問していない」と呼ぶ者あり)保守合同ができればけっこうな話だと思っております。参(「質問していない」と呼ぶ者あり)いや、政局の安定についての質問があったと思いましたが、聞き違いですか。私は聞き違いはしておらないつもりであります政局の安定についてはいろいるのやり方があるでありましょうが、なるべくつまらない争いをやめていきたいと思います。  他は関係閣僚から答弁をしてもらいます。     〔国務大臣重光葵登壇
  6. 重光葵

    国務大臣重光葵君) お答えいたします。  外交根本問題につきましては、今総理大臣からお答えがありましたわけでありますから、私から特に申し上げせん。私は日本本位独立自主外交をやることに努めておるつもりでございます。(拍手)  それから、日ソ交渉は、これまた発表の通りでありまして、すなわち間もなく本交渉がロンドンにおいて行われることに相なっております。これを申し上げます。決して上げも下げもならぬようになっておるわけじゃございません。(拍手)  それから経済問題は、東南アジアの経済問題等が着々進んでおりまして、成績をあげておるつもりでございます。  以上をもって私のお答えといたします。(拍手)     〔国務大臣一萬田尚登君登壇
  7. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答え申し上げます。  まず第一に、予算規模についての御質問であったと思うのであります予算規模をどういうところに置くかということは、結局そのときにおける国の経済の力並びに国際的な経済の動向、これらを特に見るとともに、さらに、現実的には、一体その国のそのときにおける税の収入はどれくらいだろうか、こういう点を考えなくてはならぬと思うのであります。そういうふうな状況からいたしまして、内外の経済の分析につきましては、私は、先般の財政演説で詳しく申し上げておいたと思いますので、ここに繰り返しませんが、そういう内外の情勢の検討、税の収入の状況等から見て、どうしても三十年度予算を一兆円に組むことが適当であるという分析の結果できたのでありまして、何も二十九年度に一兆であったから三十年度もまた一兆にするとか、そういうことではないことを特に申し上げておきたいと思うのであります。(拍手)  なお具体的に若干御質疑がありましたから、それにお答えますが、たとえば、お前一兆円の予算を組んである、昨年一兆円の予算の場合は繰越金の支出も国庫からたくさんあったじゃないか、それからまた、国際収支の上において出超があったから、そこからも金が出たんじゃないか、それでよほど市場資金を緩和してうまくいったのだ、ところが本年はそういうことがないじゃないか、そういうお話でありますが、昨年度にそういう金が出たために、金融的にいえば、日本銀行は一生懸命になって資金を引き上げまして、日本銀行の返した金はやはり千九百――ちょうど財政から出た金は大体やはり日本銀行に引き揚げられるという努力をしている。そうして物価の騰貴を抑制していく、輸出を奨励していったその結果がまたああいうふうになって、こういうふうになっている。(笑声)この三十年度におきましては、むろんこれをなかなかそういう調整できる予算じゃない。この予算一でも、やはり私の考えでは、七百億から八百億くらいの散超に、まあ国庫の何が出るのであります。それでほんとうに収支を整えた上には、また日本銀行はやはり若干そういう金を引き揚げる方策をとらなくてはならないという状況に今あるのです。しかし、いずれにしましても、繰り越しがそれだけ少いという点は、私は唯々として認めねばならぬと思う。そこで、融投資を昨年よりも約四百億円ぐらい減らしまして、設備資金をこの方面から出しておるのであります。この設備資金が出るということは、これに倍する運転資金が当然市場にいる。それで、市場から見れば、日本経済から見れば、昨年に比べてことしが特に経済上困るということは何にもないと私は思う。(拍手)いわんや、今貯蓄奨励の運動を国民的に展開をいたしまして、そうして民間資金が非常にふえるという前提に立っておる。いわゆる蓄積資金がふえる。しかし、ここで金利も下らなければならぬ。資金もゆとりができるから、資金を借りる人も円滑にいく。そうすると、事業もできる、雇用の機会も増大する。こういうことが今後の機会に予定されておるのでありまして、決して今度の予算の結果が非常に大きなデフレを招来するとも、しいて考えなくていいと私は思っております。  なお、今度の予算公約との関係であるのでありますが、これはできるだけ一兆の予算の範囲内において公約実現に私といたしましては努めたつもりをいたしております。ですから、まず特に重要と思われます住宅につきまして、それからまた減税もやっておるわけであります。それから社会保障関係についてもできるだけの配慮――しかし、何分にも御承知のように貧乏な国でありますから、一挙にすべてのものが総花的にずっといくことはやはり困難であります。できるだけそういう方向をとりつつ、今後においてその実現を期していくということは、私はある程度やむを得ないだろう、かように考えておるわけであります。  なお、六カ年計画との関係でありますが、この関係につきまして、六カ年計画におきましても、初めの三カ年は日本経済地固めをしていく、そうしてその後において拡大にいこう、こういう考えが構想の基礎になっております。特にこの初年度におきましては経済の安定を主として考えていこう、こういうふうになっておりまして、こまかい点についてはいろいろとありますが、基本はそこにあるのであります。その精神に沿って予算を組んであるのでありまして決してこの六カ年計画に沿わないというわけではないのであります。  なお、こういう施策をやる過程におきまして、中小企業その他いろいろと特別に社会的に力の弱いところにしわが寄って、困る人が多くできるじゃないか、こういうふうな点があるから、今回の予算というものについていろいろと難点がある、こういうふうな点もお話があったと思うのでありますが、それもむろん私は何も否定するわけでありません。そこで、こういうふうな従来のデフレ効果から、なるべくそういう人に少しでも手を差し伸べて助けていこう、こういう意味から、先ほど申しましたような、いろいろと社会政策的な施策を打ち出しておるわけであります。なお、中小企業につきましても、今回は、資金面におきましても、できるだけ多くの資金をそちらに回してやることも、これは予算の投融資のと乙ろをごらん下されば十分おわかりになるのでありまして、金額として相当ふえておることを申し上げておきます
  8. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 伊藤好道君。     〔伊藤好道君登壇
  9. 伊藤好道

    ○伊藤好道君 私は、日本社会党を代表して、鳩山内閣施政方針に関し、総理大臣以下関係閣僚に対して若干の質疑を行いたいと思います。  総理を初め、外交財政経済等に関する鳩山内閣方針には、どうも一貫性がなく、思いつきの、出たとこ勝負の傾向がありまして、つかみどころがないのでありましてそれぞれの問題なり施策なりをいかなる順序段階を経てどう進めていくかについて具体的な根拠、筋道をわれわれに与えておりません。(拍手)第一次組閣以来依然としてやりたい希望や念願をただ羅列するにとどまっておる次第であります。(拍手)     〔議長退席、副議長着席〕 私は、まず、こんなことでいいのかというふうに総理の所信を伺っておきたいのでありますが、引き続き、そういう状態を前提にいたしまして、重要な点だけを取り上げて、以下質問せんとするものであります。  私の質疑の第一は外交政策に関してであります。  鳩山総理は、組閣以来、しばしば、アメリカとの協力を保ちながらわが国と中ソ両国との貿易の拡大ないし国交の回復をはかりたいと言明されております。われわれは、これを全面講和の達成、自主中立の立場から歓迎するにやぶさかでありませんが、しかし、第一次鳩山内閣の生誕以来五カ月になりますが、この総理の公約は一向に進んでおらぬ、解決の見通しを持つことができないというのが実情であります。一昨日の総理の施政方針演説も、この点について一歩も進んではおりません。これは一体どこに原因があるかと申しますならば、前国会における政府の言明によれば、わが国と中ソ両国との関係の好転は、アメリカ合衆国の許す範囲においてこれを行うと言っておられるようであります。私は、問題の根本はこの総理及び外相など政府首脳部の考え方にあると思うものであります。  われわれの考えでは、アメリカとも中ソ両国とも仲をよくし、通商を発展させることは、しごくけっこうなことでありますが、その目的は、申し上げるまでもなく、日本国民日本国家のために絶対に必要であるからこれを推進しなければならないのであります。この基本的な立場から見ますならば、米ソとの関係をよくするためには、その目標を達成するまでの過程において、今日の国際情勢のもとでは、両者はいずれにせよ今対立する両陣営をなしているのでありますから、アメリカとの間にも、中ソ両国との間にも、一時的な摩擦や対立が起ることのあるべきは当然な次第でありまして、それを乗り越えて、忍耐と努力とによって話し合いを進め、もってその目的を達成しなければならないと信ずるものであります。(拍手)そして、その場合におけるわが国にとっての有利なる条件は、われわれ日本国民の平和に対する熱意、経済生活向上に対する信念、アジアにおける日本の特殊な立場、そのすぐれて発達せる経済文化、技術等の問題でありまして、日本外交は、これを国際的に理解させ、認識させることによって初めて推進されるのであります。(拍手)  ところが、鳩山内閣は、困難ではありますが、われわれの進まなければならないこの当然の道、われわれのとるべき正当なる方針について確たる理解と信念を欠いており、従って、言うところの目的も達成される見通しを一向与えておらないのであります。たとえば、政府は、過般重光外相が唐突なる渡米をアメリカ側から拒否されておりますが、その際の政府の示したろうばい振りは天下周知のことであるのであります。(拍手)これは、ただ単に、重光外相の渡米要請が国際慣例を無視して、軽率、不用意であったという問題ではありません政府日本の独自の立場、日米間の基本的関係に対する認識を欠いていることを示すものであり、明らかにアメリカ日本に対していかに考え、いかなる態度に出ておるかということの好個の事例であります鳩山内閣アメリカをいかに考え、いかなる態度をもって対しているかの端的な証拠であります。そこには独立国日本としての日本人の持つべき信念態度を遺憾ながらわれわれは少しも見ることができないのが実情であります。(拍手)  日本国民生活を安定させ、自立経済を再建し、進んで独立と平和をかちとる、いわゆる自主中立の道は、決して安易なものではありません。われわれの多大なる忍耐と努力を必要とし、確固不動の独立国家としての信念と方策を必要とするのでありますが、われわれは、それ以外には八千六百万の日本民族の進むべき道はないという深い理解の上に立って、あえてこの道を、大胆に、慎重に、かつ計画的に進まなければならないと考えるものであります政府は、重光外相の渡米に対する先方の拒否問題に対しまして、一体どう考えておられるのか、これに対し今後どういう措置をとろうとするのか、さらに、そんなことで米ソ両陣営と国交の調整ができると考えておられるのであるか、私は総理の所信をお伺いいたしたいのであります。  鳩山内閣外交政策は、ただ単にアメリカとの間に問題を起して暗礁に乗り上げたばかりではありませんソ連との間にも、国交調整のための会議の開催地問題につき蹉跌を来たし、その予定地だったニューヨークをとりやめてロンドンにしたことは、これまた内外あまねく知るところであります。これは単に会議の開催地のよい悪いの問題てはありませんし、また開催地は先方の要請により変ったということだけの問題ではありません。先方からはわざわざ日本の首都である東京でもよろしいというように申して来たのに対しまして、日本の方からわざわざこれをやめて、他国の首都において開かなければならないという理由は一体どこにあるのか。(拍手)この点については、日本国民了解することができないのであります。世間では、それは日本政府アメリカ側に気がねをしているのではないかといううわさがあります。われわれは日本人としてそんなうわさを信じたくありませんが、このような独立自主態度を欠いたふらふら腰では、日ソ国交の調整というような困難な問題の解決をわれわれは今鳩山内閣に期待することはとうていできないのではないかと憂えるものであります。(拍手)総理の所信をお伺いいたします。  さらに、今日日中貿易の増大を阻害する根本原因がココム・リストの制限にあることは両国関係者の一致した意見でありますし、さらに、今度の日中貿易交渉において緊急な決済問題、支払い協定の問題等が、政府の積極的な態度によってのみ解決される政治的問題であることも、まぎれもない事実であります。そこで、私は、政府一体ソ連との国交調整についていかなる見通しと対策を持ってこれを推進せんとするものであるか、また中国貿易増大のためにいかなる方針を持っておるのか、ココム・リストの制限撤廃についてあるいは緩和について、アメリカ政府交渉を開始する意向があるかどうか、支払い協定の問題についても、政府はいかなる打開策をもってこれに対処せんとするものであるか、総理及び外相より明確な答弁を求めたいのであります。  次に、私は、第二点として財政経済問題について伺います。  政府提案昭和三十年度予算は、各方面に多くの問題を蔵しました近年まれに見る悪い予算であることは、私は定評のあるところであると思う。私はその点について四、五お伺いいたします。  第一に、この予算は、鳩山内閣の大きな看板であった防衛分担金を減らして住宅社会保障に回すという政策を完全に裏切ったものであるという点であります。本年度防衛関係費の総額は、御存じのように、前年度と同じ千三百二十七億円でありまして、分担金は名目的には日本側の計算で百二十五億円削減されているようであります。しかし、政府の当初の防衛庁費八百億円案は、アメリカ側の要求によって六十八億円ほど増加しました上に、実に百五十四億円に上る大きな予算外契約を予定しておるのでありまして昨年度における同じく予算外契約を含む防衛庁費八百二十二億円に比べますと、実質的には二百億円程度増加になっております。(拍手)そればかりではありません。四月十九日に発表された分担金に関する日米共同声明によれば、この上にさらに防衛庁費の二十九年度からの繰り越し分二百二十七億円をも使用することが、はっきりとしるされておるのでありますから、日本側の防衛費の規模はおそらく千二百億円をこえるものと思われる。従いまして、防衛関係費の総ワクは昨年度と大した違いはありませんが、その中でわが日本の負担する経費は大幅に増加しておるというのが偽わりない実情であります。われわれは、それゆえに、鳩山内閣公約とは正反対に、防衛関係費を増加させた反面、しわを内政関係費に寄せて、これを削減したものであると断定せざるを得ないのであります。  その上に、われわれの見のがすことのできないのは、防衛関係費の総ワク自体が、今度の日米共同声明によりまして、今後一そうふくれ上ることが必至であるという事実であります。すでに新聞の伝えるところによれば、政府は、本年度において、陸上自衛隊二万二千名増員、海上自衛隊四千名増員、警備艦四隻の建造に着手、航空自衛隊四千七百名増員、ジェット機の国内生産準備に着手する、こういうような工合に、三十年度計画を完全に実施することになりました上に、予算外契約によって五十億円に上るジェット機の国内生産を予定しており、合計航空機百七十機を三カ年間に国内で生産する計画を本格的に始めたといわれております。これははたして事実でありますか。また、日本の再軍備が、このように質量いずれにおいても飛躍的な増強を見まして、日本の原水爆の基地化が現実の問題となろうとしておりますときに、総理はさきの原水爆についての御声明をどういうふうに考えておられるか、お伺いをしたいのであります。  また、防衛庁関係費のうち、さらに施設費等の経費は、前年度より二十七億円増額して八十億円足らずとなりまして、その大部分がアメリカ軍飛行場の拡張になるんだと聞いておるのであります。この問題は、土地の補償問題等、国民生活にも非常な影響がございますので、まず、その具体的な内容、すなわち、どの飛行場とどの飛行場をどのように拡張するかを明らかにされたいのであります。防衛庁長官に要求します。  このように、分担金を減らして内政面に回すという総理のたびたびの言明は、これで完全にほごになっておりますが、この重大な食言について、総理はいかなる責任をお感じになっておるか。さらに、この分担金削減交渉において、政府が自国の予算編成に対し安保条約や行政協定のもとで独立自主態度をとらなかったために、防衛関係費を通じアメリカ日本予算編成にくちばしをいれ、いわゆる内政干渉的な事態を惹起いたしまして、本年度予算はいわゆるひもつき予算であるという印象を広く強く国民に与えておりますが、政府はこれに対してどういうようにお考えになるか、総理及び蔵相より所信を明らかにされんことを要望いたします。また、政府はこの際安保条約、行政協定の改訂交渉を行う意思があるかどうか、これもお伺いいたします。  なお、国民が分損金をめぐる日米の折衝に関連いたしましてこのような疑惑を大きく持っておりまするときに、政府交渉に関する会議の議事録を発表しないと言っておるようでありますが、これは吉田秘密外交の轍を踏まんとするものではなかろうか。外務大臣はどういうわけで秘密にされるのか、御説明を願います。  さらに、日米安保条約におきましては、日本防衛力の強化は、自衛力漸増という、いわば抽象的原則の域を出ませんでしたが、今後の共同声明では、三十一年度以降は自己の資力のより大きな部分を防衛目的のために振り向けると、より具体的にうたっております政府は、今日このような再軍備の義務を負ってしまって、果して今後日本経済の再建と国民生活の安定をはかるという確たる信念を今なお持つことができるかどうか、この点について所信を御披瀝願いたいのであります。(拍手)  財政における第二の問題は、本年度経済推移のうちにおきまして、この財政を施行する結果、日本経済がどういう影響を受けるかという点であります。昨年度においては、一千九百億円程度散布超過がありました。これが一兆円予算デフレ影響を緩和するに役立ったことは、今さら申すまでもございません。ところが、本年度は、そうした散布超過は、政府側の概略の説明を聞きましても、せいぜい八、九百億円前後でありまして、この間散布超過の減少はほぼ一千億前後に上りそうであります。従いまして、今年度財政を実施する結果は、このままでは相当のデフレ的傾向が現われてくると思われるのであります。そうして、それが一般の見方でありますが、政府は果してそういうふうに考えておられるかどうか。もしそうであるとすればそれに今日の日本経済は耐えられると考えておられるかどうか。もしそうでないとするならば、いかなる対策をお持ちであるか。蔵相より答弁を求めます。  第三には、公約実現の観点から本年度予算を見ますと、まず有名な四十二万戸の住宅建設公約があります政府は、一般会計、資金運用部資金等の財政投融資を含め、昨年度より百四十億円増額しておること、住宅公団の設立、融資準則における住宅の順位引き上げ、税制上の優遇措置、住宅融資保険制度の実施等によって目的を達成するように述べられておりますが、いずれもきわめてあいまいであって、かつ内容はお粗末のようであります。聞くところによると、政府の予定では、国が直接間接めんどうを見る住宅増加数はわずかに二万五千戸程度、改築を加えましでも五万五千戸に満たず、二十五万戸程度のものは民間の建設にまかせられておるということであります。作る家の内容といたしましても、六坪半の家が多数あり、家賃の安い公営住宅ではなくて、家賃の高い公団住宅増加の大半を占めておるといわれております。(拍手政府一体どういう人々を対象にして家を建てるのであるか。また、こういう数々の、たくさんの措置によって、それぞれどれだけの家が建つ計画になっておるのであるか。それらの点について明確なる御答弁を求めます。  失業対策の拡充にいたしましても、昨年度においては完全失業者は六十二万人、失対の吸収人員十七万人でありましたが、本年度は、これは通産当局のお考えでは、失業者は八十二万から百万くらいに上るであろうと見ておられるようであります。失対吸収人員は、この問わずかに二十二万人ですから、六万人ふえたにすぎない。二十万人からの失業者の増加に対しまして六万人の吸収増の程度では、失業者の状態は本年度において前年度よりかえって悪化するようにわれわれは考えざるを得ない。(拍手)これらについて労働大臣はどう考えるか。  最後に、減税の問題でありますが、政府案によりますならば、月収二万円未満の親子四人の勤労者は百十一円減税されるということである。他方、月二万円の同じ配当所得者は、五%の源泉徴収率の引き下げによりまして一千円、すなわち約十倍程度減税になるようであります。これは、政府の説明によれば、資本蓄積のためであると言われておるようでありますが、低額所得者、すなわち勤労大衆の税を軽減するという政府当初の言明に対しまして、はっきりとそれを裏切ったものであるとわれわれは断ぜざるを得ないのでありますが、大蔵大臣の所見を伺います。  財政の第四の特徴は、このような内政費を削減するという、要するにこういうような中において内政費が全面的に削減されるという事態について、各関係閣僚は十分認識しておられるかどうかを、二、三の例をもってお伺いいたします。農業関係費、公共土木事業費、災害復旧費等の圧縮、失対以外の厚生関係費の全面的な削減、結核対策費の削減、健保の赤字や遺家族援護に対する糊塗的なごまかし政策、地方財政ますます激化する窮乏化、みな比々としてこの例でございますが、特に農業関係費の圧縮につきましては、アメリカの農業恐慌による余剰農産物の受け入れを促進せんとする政府態度と相待ちまして、鳩山内閣一体日本農業の育成政策、食糧増産政策を完全に放棄したのではないかとわれわれは疑うものでありますが、これらの点に対する関係大臣の所信を承わりたいのであります。(拍手)  なお、この際これに関連して質問いたしますが、新聞紙の報ずるところによれば、農林省は、現行の小作料を一挙に四倍程度に引き上げるとともに、土質によって格差を設けようと考えておられるようであります。ただ、この問題は経済上、政治上きわめて重要でございますので、特別国会の開会中はこれを公表せず、国会が終了してから法制化をはかるというふうに伝えられておりますが、果して、耕作権を否認するような、このような行為を政府考えられておるかどうか。これを行おうとする理由は一極どこにあるのか。行うとして、これを特別国会のあとまで引き延ばすということは、明らか  これを政府のお得意のことではありますが、国会を軽視し、民主政治を抑圧しようとするものではないかとわれわれは信ずるのであるが、農林大臣の所見はいかがでありましょう。(拍手)さらに、この際、アメリカの余剰農産物買い入れ問題につきまして、その条件、見通しについて政府の所見を承わりたいのであります。  第五には、本年度予算において、政府は、予備費を食いつぶし、物件費を切り下げる等、ほとんど財源をあさり尽しまして、辛うじてつじつまを合せておりますが、毎年の例にならいましても、また本年の長期気象観測によれば、ことしは特に冷水害の起る可能性が多いといわれておるようでありますが、このことを考慮いたしますならば、補正予算の提出は不可避であると考えられる。ところが、これに対する財源の見通しはほとんどございません政府はさきに百五十四億円の予算外契約を予定して、実質的にはすでに一兆円予算のワクをくずそうとしておりますが、さらに、予算規模関係する専売益金、三十億円ほどでありますが、これを歳入からはずして、いきなり地方に移譲したり、地方道路税を新設しながら、これを一般会計に計上しなかったり、いろいろな手を使って飾り立てまして、そうして体裁だけは一兆円の予算を作ろうとしておりますが、実質的には、われわれはすでに一兆円のワクそのものがくずれつつあると断言せざるを得ないのであります。(拍手)もしそうであるといたしましたならば、本年度予算は、すでに申し述べましたように、いろいろな事情からデフレ的様相を呈して進行するでありましょうが、その中には早くもインフレ的要因をはらんでおると言うことができるのでありまして、その無性格さ、その一貫せる方針の欠如につきましては、全く驚き入るのほかありません。こんな事態で、明年度予算一体どうなるのか。いや、当面の補正予算一体どうするのか。私は、日本の将来の財政をも見渡して、大蔵大臣より明確な答弁を求めたいと存じます。  諸君、政府のこのような内外の諸問題に対する重大な失政の結果、御存じの通り政局は、選挙後わずかに二カ月たったばかりで、はなはだしく不安な様相を呈して参っております。総理はこの時局を一体どう切り抜けようとされるのか。三木民主党総務会長の過日の談話によれば、保守提携か合同か、その形は問題でない、保守勢力の結集によってこれを行おうとするようであります。これに対し、鳩山総理は、定例の記者会見において、私も保守協力しなければ一歩も前進できないところまで来たことは認めている、私はいい相続人さえあればいつでもやめると語っておられるようであります。  そこで私が総理にお尋ねいたしたいのは、鳩山内閣が過般の総選挙におきまして、保守合同については当分これを実行しないと約束されたということであります。これは総理もまだ御記憶に新たなはずであります。総理は、一昨日の施政方針演説において、民主政治のあり方について述べておられます。それはきわめて抽象的なお話でありましたが、自由党に対する今さらのおせじらしい友愛精神論や、保守合同の暗示的言説では、日本民主政治は確立されないと私は信じます。(拍手民主政治の鉄則は、総選挙において、率直、正直に、政府も政党もみずからの政策を公約すること、この公約選挙後政権をとれば必ず実行するということ、選挙公約しないことは、内外情勢の根本的変化でも起きない限り実行はいたさない、私はこの三点に尽きると信ずるのであります。諸君、百八十五名の少数与党で政局の乗り切りが困難であるくらいのことは初めからわかり切っております。それを今になってお気づきになるとすれば、陽気のかげんか、どうも政府の頭もどうかしておられるのではなかろうか。気づいたかのようにふるまって事実は保守合同にここで転進されようとするのであれば、総選挙に対する手前、民主政治根本をじゅうりんする陋劣なる態度であると私は信ずるのであります。(拍手)総理が、一歩も前進しないところまで来たと、せっぱ詰まった言い方をしておられるようでありまして、そのことは、総選挙直後の今日、保守連携、保守合同をやろうとするかのように思われますが、果してそうであるか。政局に処する総理の信念を伺いたいのであります。しかし、もし総理がそういうふうにするのだと言われるならば、総理はここでも公約違反を犯すことになることだけは、日本国民全体が十分に承知しておるということを御記憶願いたいのであります。  民主党の岸幹事長は、この点に関連いたしまして、憲法調査会、長期防衛計画審議会、公職選挙法審議会の三大機関を内閣に設け、これを中心に民自両党の合同を進めたい、すでにこのことについては自由党に対し非公式に申し出で、了解を得ておるのであって、国会が再開されれば直ちに交渉を開始する、合同の目標を特別国会の末期に置くという談話を発表しておられるようでありますが、総理はこのような事実に対して承知しておられるのか、どう対処されようとしておるのであるか。この話は、たとえば憲法調査会については、われわれの記憶では、さしあたりこれを民主党内に置くということは国会で言明されておるのでありまして、この言明と矛盾しております点にも問題はございますが、この三大機関を設立して公式の軍隊建設、軍備の急速な拡充、革新派抑圧のための小選挙区制の施行をやろうということでありますならば、鳩山内閣こそはまさに再軍備一辺倒、保守反動のきわみの政府とわれわれは断言せざるを得ないのでありますが、総理は果してこのような道をお進みになろうとしておられるのであるか、御答弁を要求いたしまして、私の質問を終ります。(拍手)     〔国務大臣鳩山一郎登壇
  10. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 伊藤君の御質疑に対して答弁いたします。  外交方針について第一の質疑がありましたが、むろん政府独立自主方針でやっております独立自主方針でないために、渡米拒否の問題やロンドンの問題が起きたのであって、行き詰まってしまったというようなお話でありましたが、決して、私は、渡米の拒否の問題も、あなたの考えるようには考えせん。また、ロンドンにきまったことも、何も米国の意思によって動いたというようなことは絶対にございません独立自主方針でいっております。  それから、分担金の削減についてでありますが、御承知のように、防衛庁費、自衛軍の漸増ということは、これはいろんな条約によって協定されておるのでありまして、あるいは安全保障条約、あるいは行政協定、あるいはMSA問題等によって約束がしてありますので、自衛力を漸増する費用は持たなくてはならぬのであります。自衛力を漸増すれば、それに応じて分担金を削減するということになっておりますから、自衛軍が増強されれば分担金が減る、こういうような話し合いになっておるものですから、自衛庁費や……(発言する者多く、聴取不能)その分担金をほかの費用に流用しようというのでありまして、決して間違いではないのであります。  最後に、政局の不安についてお話がありましたけれども、政局の不安をどうやって取り除くかということについては、いろんなことが考えられます。私どもも、二つの政党が協力していくのには、政党が生命とする政策について協力をしていくのが一番よいと思いましたので、協力のできるような政策があるのならば片っ端からやっていきたいと思ったのであります。それを、再軍備をしたいがためこ――再軍備をしたいというような腹でもって保守合同するというようなことは、ただいま思っておりません。  憲法を改正したいという希望は、たびたび申しましたごとく、私は憲法は改正したいのです。したいけれども、それはすなわち再軍備だ、軍備の増強だ、これに連結しているのだというような誤解がないようにしていただきたいと思います。(拍手)     〔国務大臣重光葵登壇
  11. 重光葵

    国務大臣重光葵君) お答えいたします。  最近行われました防衛分担金の問題、これについて双方の合意いたしましたことは全部発表いたしました。議事録は存在いたしておりませんから、この点を申し上げます。  それから、日ソ交渉の問題について、交渉地のことがございました。これはいろいろお考えもございましょう。ございましょうが、日本として、つまり私どもの考え方といたしましては、この交渉を成果あらしめるためには、中立的の地位にあり、しかも世界の平和の事業の殿堂の所在地ということがいいと思って、ニューヨークということを申したのであります。そのことについては向うも異議はなかった。日本の欲するところでいいということであったのであります。そこで、それで決定をしていると思った。ところが、また、向うからはそれに対してほかのところを申し入れて来た。ゼネヴァかロンドンかでやりたい。そこで、こちらもそういうことに、ごだわる必要がないと思って、ロンドンがいい、こういうことにきまったのであります。そこで、日ソ交渉が、間もなく、遠からず始まる手はずになっておることを御報告申し上げます。  それから、中共貿易のこと、について、でき得るだけ貿易の増進をはかるということはもちろんであります。そこで、ココム・リストのお話がありましたが、これもできるだけ拡張をしたい、こういう方針で進んでおりますが、これは今急にこれが実現するような情勢はございません。  さようなことで、私の外交の御質問に対するお答えを終ります。(拍手)     〔一萬田国務大臣登壇
  12. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 御質問お答えを申し上げます。  まず第一に、今回の三十年度予算日本経済に与える影響であります。どういう影響を与えるかという御質疑であったと思います。今回の予算を組むに当りましては、日本経済の見地からすれば、この経済地固めをもう一年――前一年デフレ政策がとられたのでありますが、今日の経済の実態を見ますときに、もう少し地固めをする必要がある。同時に、地固めも、言いかえればデフレ政策も二年に及ぶ。そうしますと、どうしてもここで、それから生ずる支障もいろいろ生ずる。そこで、デフレ政策の効果を――相当効果も上った面もあるのでありますから、その効果を、そのデフレによって特に支障を生じたところを取りのけていく方向に若干の力を入れよう。それが具体的に言えば減税並びにその他の社会的施策予算に出しておるわけであります。そうして、同時に、しかしそれだけではいかないので、やはりどうしても日本経済をよりよくするいしずえが、この地固めのうちに含まれていないと悪い。そういう意味におきまして、この地固めをしつつ、かつ将来日本経済が十分国際競争に耐え得るような素地を作っていく、そういうものを入れてあるのであります。これが、いろいろ見方もありますが、投融資をふやしてあるわけでありまして、同時に、単にこういう場合は金額ばかりではいけないのでありまして、その金額をいかに重点的に使うかという点に考えを及ぼさなくてはならないので、今回は、そういう意味において、特に石炭、鉄、肥料、こういうところに重点を指向しておるわけであります。そういう面に対する資金はよほどふえておるのであります。  そのような意味合いと同時に、この予算をやると非常に困りはせぬか、こういうことも質疑のうちにあったように思うのでありますが、しかし、他面、そういうふうにすることによって物価は安定する。むろん、若干生産コストが下るという形において物価が下ってきます。そうしますと、ここにどうしても預貯金というものがふえてこなくてはならない。その預貯金がふえる施策をとっておるわけであります。そうしますと、金融はどうしてもここで従来に比べて楽にならざるを得ないのでありまして、資本の蓄積ができる。すべて経済考える場合は、単に財政ばかりを考えてもいかないので、財政と金融というものをよく調整をとる。むしろ財政は締って、そうして金融でもって金融本来の使命を弾力的に果し得るという状態が私は一番望ましい。こういうふうに思っておりまして、そういう姿が今後漸次現われて来るのであります。そういう意味でありますから、今後、来年以降において大へんなことになりはせぬかという御心配は私はないと思います。  それから、一兆円ということについていろいろ御議論もありまして、たとえば専売益金のうちから三十億を地方財源に充てたじゃないかとか、あるいは地方交付税としておるではないか、いろいろ申されるのでありますが、これはすべて地方の財源にいたしておるのでありまして、これは何も一般会計を通さなくてはならぬという理由にもならないのでありまして、別に私はそういう細工までして何も一兆円という形にとらわれておらないのであります。なせ一兆にしなくてはならないかということは、もう少し大きな基本的な政策でということだけを御了承願いたい。(拍手)     〔国務大臣西田隆男君登壇
  13. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) 伊藤さんにお答えいたします。御説のように、三十年度におきましては八十万人以上の労働人口が増加いたしますので、これを全部吸収することは困難と考えております。従って、失業者が約二十万人くらい増加するという考え方のもとに失業対策を立てております。おっしゃるように、労働省に計上されております失業対策事業費では一応五万人、かようになっておりますけれども、そのほかに、今まで緊急就労対策事業費として建設省に計上されておりました分が、今度は道路事業整備費として四十一億円増加になっております。鉱害復旧事業費は四億二千万円増となっております、従って、この三つを合せますと、九十四億円の失業対策事業費としての一応の経費を計上いたしておりまして、これで二十万人の――今までの例からいきますと、十分な、約十四万人程度の失業者の失業対策事業ができて、完全失業者は二十九年度並みに押え得る、かような考えのもとに失業対策を立てております。(拍手)     〔国務大臣竹山祐太郎君登壇
  14. 竹山祐太郎

    国務大臣(竹山祐太郎君) 住宅についての御質問に対し、多少世間でも誤解がありますので、この際一応の輪郭をお答え申し上げたいと思います。  御承知のように、これまでの住宅の対策は公営と公庫の二つの組織でありましたが、今回新たにこれに公団を加えて三本立といたすことに考えております。この三本立で直接政府財政投融資が入りますものが十七万五千戸であります。約昨年の倍になっております。これに対して、もちろん政府のいろいろな金が約倍出ますけれども、そのほかに、公庫には、保険関係の会社から今日きまったものとしては約五十億の民間資金が加わります。ほかに銀行からも相当なお出してもらう計画に進めております。そのほか、土地の造成のために百万坪に対して約十億の金を使って宅地の造成をいたします。なお東京については、先般緑地五百万坪の開放をいたしました。なお、国有地数十万坪の現物を提供してもらうことも、これは決定をいたしております。  そのほかがいわゆる民間住宅の問題でありますが、この三種類の中で、今お話の中に出ましたが、公営が小さいというお話でありますが、今度この三本立にいたしますと、従来公営はいろいろなものがこの中に含まれておりましたが、一番大事な問題は、いわゆる低額所得者にこの公営を集中することだと私は考えまして、今まで少し程度のいいアパートをこの中で作っておりましたが、今度は、これはむしろ公庫または公団に移しまして、公営は極力低家賃のうちに集中をいたします。その結果、従来一番安い家賃は千円程度以上でありましたが、今回は、建築研究所の最近の研究で、一番安い簡易アパートで、ブロックで作りました分で、月八百円程度の家賃のものを六千五百戸思い切ってふやすことにいたしておりまして、こういう計画で、政府の負担率、すなわち財政投資の一番厚く行くところの公営の第二種は従来よりもふえております。そうして、今までのいろいろなアパートを公団の分に持っていきます。この中では、従来はやりませんでしたが、下を店舗にして上を住宅にするようなものは横浜などによい例がありますけれども、こういうものを都市に作ることが一番要求されておりますから、従来店舗に融資をいたしませんでしたけれども、これを融資の対象といたすことにもいたしております。なお、土地に対する融資もやることになっております。なお、労働組合その他会社のいわゆる産業労務者住宅というものを非常に大きぐ考えておりますし、また先般総評からもぜひ一つやってくれというお話でありまして、労働金庫、労働組合とも緊密な連絡を取って進めるつもりであります。  それから、その残りの民間住宅につきましては、五十億円の金融の保証をいたします。そのほかに、税制措置を講ずる等によりまして、このいわゆる民間自力建設は、従来の情勢とにらみ合せて十分行き得るものだと考えております。  以上お答え申し上げます。(拍手)     〔国務大臣河野一郎君登壇
  15. 河野一郎

    国務大臣(河野一郎君) お答えをいたします。  第一は小作料の話でございますが、これは新聞に出ておりましたことが違いますので、決して農林省は、今小作料の引き上げを軽々に考えてはおりません。たまたま新聞に出ましたのは、今年度の米価の決定を相談いたしておりまする際に、小作料をどうするかということが、参考に話が新聞に出たのでございまして、私といたしましては、小作料の改訂につきましては、専門委員をお願いいたしまして、しかもこれは、学識経験者、特に、私の考えますのは、利害関係を持たない学者等によって委員会を作りまして、その委員会の答申を待って決定すべきものだと考えております。なおまた、これを議会が済んでからやるというような、そういうインチキなことをする考えは持っておりません。  第二にお答えをいたします。余剰農産物の点についてお答えいたします。余剰農産物につきましては、決して無用なものを買ってくる考えもございませんし、また高いものを買ってくる考えもございません。あくまでも、わが国の国内需要とにらみ合せまして、必要にしてしかも低廉である場合に買ってくるのでありまして、アメリカの都合で売りつけられるというようなことは考えておりません。この点で御了解願います。(拍手)     〔国務大臣川崎秀二君登壇
  16. 川崎秀二

    国務大臣(川崎秀二君) ただいまの御質問の中に、防衛費膨張のために内政費、特に社会保障経費にしわ寄せが来ているのではないかというような御指摘がありましたが、さようなことはございません。むしろ、本年の社会保障経費は、失業対策費を含めまして一千六億となり、昨年に比べて五十一億も増加をいたし、わが国において初めて予算歳出総額の一〇%をこえるに至っております。(拍手)私は、これをもってしてもなお満足はいたしておりませんが、社会保険の強化を中心として現内閣社会保障政策は、一兆円というワクの中においては、他の経費に比べ大幅に前進していると考えるのでありまして、この点十分に御了承願いたいと存じます。(拍手
  17. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 防衛庁長官の答弁は以上でよろしゅうございますか。(発言する者多し)飛行場関係のことは、防衛庁の所管ではなく、労働省の所管とのことでありますので、労働大臣より答弁をいたすことにいたします。     〔国務大臣西田隆男君登壇
  18. 西田隆男

    国務大臣(西田隆男君) 所管が私の所管になっておりますのでお答えいたします。七十九億円という予算が計上されておって、昨年度に比しまして非常にふえておるではないかという伊藤さんのお尋ねです。昨年は、なるほど二十九年度で新しく行うものは五十二億円、しかし二十八年度繰越金が四十億円ございまして、九十二億円という実額になっております。本年度は昨年度に比較いたしますと十億円ばかり減少いたしております。その内容は、返還財産の補償、借料、漁業補償、中間補償等が六十二億円になっております。そして、飛行場の整備、土地買収費その他が十二億円計上されております。この飛行場の問題は、ジェット機の離着陸の最小限度の滑走路の延長を考えておるのでありまして、これも各地の事情の許す限りにおいて実行いたしたいと考えております。小牧は現在調査をいたしております。新潟も調査にかかりたいと考えておりますが、あとの場所につきましては、まだ決定いたしておりません
  19. 杉山元治郎

    ○副議長(杉山元治郎君) 防衛庁長官からは答弁はないとのことであります。  淺沼稻次郎君。   [淺沼稻次郎君登壇
  20. 淺沼稻次郎

    ○淺沼稻次郎君 私は、日本社会党を代表いたしまして、鳩山総理大臣施政方針演説並びに他の閣僚演説に関連して、政府の国政一般に対する施策について質問せんとするものであります。  第一次鳩山内閣は、吉田内閣倒壊のあとを受けて選挙管理内閣として成立をしたのでありましたが、一たび政権をとるや、権力を利用する選挙運動内閣と化し、一月再開明けの国会における鳩山総理の施政演説は、羅列的と思われるほど多くの公約をされたのであります。従って、第二次鳩山内閣は、一月解散国会における総理の演説並びに各閣僚演説の具体化を行うことが当然の任務であると私は思うのであります。     〔副議長退席、議長着席〕 しかるに、一昨日の総理大臣演説は、なるべく第一次鳩山内閣施政方針演説と関連性を避けて、民主主義の理念、友愛精神を説いて、顧みて他を言い、国民が聞かんとする重大な問題は幕を通して聞くかの感じがいたしまして、まことに遺憾とするところであります。(拍手)  鳩山総理大臣施政方針演説は、第一は民主主義のあり方、第二は外交方針、第三は国内問題と、三つからなっておりまするから、私もこの項目に従って順を追って質問をしたいと思うのであります。  質問の第一点は、民主主義のあり方に関してであります。総理は、口を開けば吉田自由党内閣の非民主性を攻撃し、力の政治を排撃し、これにかわった民主党政府は民主的に国政を運営することを強調しております。しかしながら、その具体策はいかがであるかと見ますと、いたずらに抽象的な言辞を弄するのみであって、全く具体的内容がないことが常であります。先日の施政方針演説もまたその例に漏れないものであります。  そもそも日本民主主義の基準は日本国憲法であります。憲法こそ民主政治運営のかなめであります。憲法に規定されておる諸条項を厳格に守って政治を行うことが民主政治の第一歩であります。(拍手)しかるに、鳩山内閣は、政権をとるまでは、吉田自由党内閣のほおかむり再軍備を攻撃して、憲法改正を主張しておきながら、一たび政権をとるや、あるときには現在の自衛隊は合憲なりとの強弁を弄し、あるときは憲法改正の意図は放棄せずと言明し、その一貫性を欠くことはなはだしいものがあります。すなわち、憲法を守るべき内閣が、ときには憲法を無視し、ときには憲法の改正を意図して、国民に民主主義のルールを守れと言うのは、少し無理ではないかと私は思うのであります。(拍手)よって、私の次の質問に対して、総理大臣は率直にお答えを願いたいと思います。  今、伊藤君の質問に対して、総理は、憲法は改正をするという所信を述べられたのであります。それならば、一体いかなる方式によって改正をするのか、それを承わりたいと思うのであります。少くとも、総選挙の結果は、両社会党、憲法改正に反対をいたしまする勢力が院内における三分の一を確保しておるのでありますから、院内の勢力をもってしては改正をするというわけには参らないと私は思うのであります。(拍手)さらに、総理大臣は、去る一月の解散国会の施政方針演説で、自主独立の達成のために憲法改正を認めざるを得ない、これがためには国会内に超党派的憲法調査機関を設けたいと述べられました。三ヶ月前に相当重要性をもって強調した重要問題を全然無視して、今回は一言半句も触れていないのであります。われらの了解に苦しむところであります。しかるに、最近は、内閣に憲法調査会の設置をせんとして、これを法文化しておるということを聞いておるのであります。事実であるかどうか承わりたい。ときには憲法調査会を国会の中に置こうとし、ときには内閣に置こうとする、こういうことは、鳩山内閣動揺の姿であるといえばそれまででありますが、いずれが真実であるか、承わりたいと思うのであります。  第二には、現行憲法には手を触れずに、一方自衛隊を増強しながら、従来の自説を曲げて憲法違反にあらずと主張されるつもりであるか、これも明らかにしていただきたいと思うのであります。  第三には、政府国防会議設置法案を用意し、自由党と折衝中と聞くが、これは明らかに内閣の上に内閣を作るものであり、軍備優先、軍国国家への道を開く結果を招来し、憲法の精神をじゅうりんする結果となると思うが、政府の所見を承わっておきたいと思うのであります。(拍手)  さらに、先ほど伊藤君の質問に対してお答えがございませんでしたが、日本民主主義達成の上に、与党には選挙法を改正して小選挙区制を採用する意図があるやに伺っております。従って、その総裁であり総理大臣でありまするところの鳩山総理は、小選挙区制に対していかなるお考えを持っておるのか、これも承わっておきたいのであります。  さらに、政府は、憲法改正調査会、あるいは国防会議選挙法改正調査会を、保守合同への政策的基盤として保守党間に折衝中と聞くのであります。はたしていかがなことであるか伺いたい。政権維持のために政策のやみ取引をなし、選挙の結果を勝手に変えるようなことは厳に慎しまなければならぬと思うのであります。  質問の第二点は、外交問題に関してであります。現在わが国外交の最大の課題は何であるかといえば、それは言うまでもなく独立の完成と平和の達成であり、それがためには、当面わが国のとるべき方策は二つに大別されると思うのであります。一つは、吉田自由党内閣以来続けて来た対米従属外交の清算であります。もう一つは、中ソとの国交回復であります。  まず第一の対米従属外交の清算という観点から、現政府の今までとってきた処置を見ますると、私はそこに吉田自由党内閣の対米媚態外交と何らの本質的差異を見出し得ないのであります。総理は、わが国外交の基調はアメリカ初め民主主義諸国との協調にあると言っておりますが、政府外交は、協調にあらずして、依然として従属以外の何ものでもないと断ぜざるを得ません。(拍手)  わが国は、昭和二十七年四月二十八日対日平和条約かその効力を発して独立をしたのであります。しかしながら、依然として日本アメリカの軍隊の駐留下にあるのであります。およそ一国が他国の軍隊によってその安全が保障され、他国の軍隊の駐留下にあることは、完全なる独立の国家とは言えません。他の軍隊の駐留下にある国は、その隷属になる危険性のあることは、歴史の示すところであります。そうしてその危険は、政府施策のところどころにすでに明らかに看取できると思うのであります。  最近、政府の対米従属性が最も端的に現われたのは、防衛分担金削減の交渉であります。この交渉において、政府は、予算外契約という手品を使って、前年度内の防衛費のワクという外観を装いながら、実はアメリカ側の防衛費増強の要求に屈服いたしました。これによって見れば、アメリカ側の防衛分担金というひものために、予算編成に対してアメリカからくちばしをいれられ、内政干渉をなし得る事実が明らかになったと思うのであります。以上の対米従属の責任は、政府の当然負わなければならぬ点だと思うのであります。特に、この問題解決に当り、重光外相の訪米を思い立ち、先方から拒絶されたことは、独立日本の権威を傷つける大失態であると言わなければならぬと私は思うのであります。(拍手)  翻って考えてみますと、防衛分担金のよってくる根源は、日米安全保障条約、行政協定にあるのであります。安保条約は、周知のごとく、わが国が占領下にあるとき締結された一方的なものであり、行政協定もまたそれに基礎を置く不平等な性格を有するものであります。従って、安保条約、行政協定根本的に改訂して、その不平等性を除去することが、対米従属性を払拭するために欠くべからざる方策であります政府に果して安保条約、行政協定改訂の用意ありや、総理の所見を承わっておきたいと思うのであります。(拍手)先ほど、この問題につきましては、伊藤好道君から答弁を求めたのでありまするが、これに対して答弁をしなかったことは、はなはだ遺憾に考えるのでありまして、私を通じて、もう一ぺん私は明確なる答弁を要求したいと思うのであります。(拍手)  もう一つの重大な問題は、原水爆基地の問題であります。一昨日、鳩山総理は、その施政方針演説において、第三次世界大戦を回避し、平和を維持することは、今、日本国民にとっては何ものにもかえがたい絶対の悲願である、と言われております。ところが、さきに、外人記者との会見において、アメリカに対して原水爆基地を拒み得ないと言明し、その後、国民の猛反撃を食ってあわてて言を左右にして、ごまかそうといたしました。しかるに、防衛分担金削減に応ずるアメリカ側の条件として、日本国内における基地の滑走路を拡大してジェット爆撃機の発着を可能にするという一項があり、政府はこれをのんだのであります。このジェット爆撃機は原水爆を搭載するものであるといわれており、明らかにさきの首相言明を裏書きしておると私は思うのであります。(拍手)私は、日本国民の意思を代表して、総理に、米軍が基地を原水爆攻撃の基地として利用することを承認するのか、拒否するのか、はっきり御言明を願いたいと思うのであります。  第二は、中ソとの国交調整であります。現在ソビエトとの国交調整は、交渉地はロンドンと決定され、いよいよ交渉は開始されんとしております政府一体いかなる方針をもってこれに臨まんとするのか。先ほどは、きまつたという報告がありましたが、伊藤君の質問に対して明確なる方針を示さぬのであります。われわれは、外交というものは一部政府の行政官によってやるものではないと思う。国民の支持があって初めて外交はほんとうの外交たり得るのであるから、ここで、私は、日ソ交渉が始まれば、日本はかくのごとき方針によって交渉をするのであるということを議会を通じて国民に訴えて、その先頭に松本大使を立てるのが政府のとるべき態度ではなかろうかと思うのであります。(拍手)この態度をとらないことを私ははなはだ遺憾に思うのでありますが、その基本的方針を示していただきたいと思うのであります。  ただ、これについて一点だけ私から伺っておきたいと思いますることは、鳩山総理が、さきに、ドムニツキー氏との会見において、領土については歯舞、色丹の返還のみを要求したといわれております。もし事実といたしますれば、それは重大なる失態と申さねばなりませんソ連による千島、南樺太の占領はヤルタ秘密協定に基くものでありますが、この秘密協定は、第二次大戦中の大国間のやみ取引の産物であって、わが国、われら国民の全く関知しないところであります。(拍手アメリカに対して沖繩、小笠原の返還を要求するとともに、ソ違に向っても堂々と祖先墳墓の地である千島、南樺太の返還を要求し、独立の完成を全うせんことを主張すべきであると私は思うのであります。(拍手政府は、日ソ交渉において千島、南樺太の返還を要求する決意があるかどうか、総理の所見を私は伺っておきたいと思うのであります。  次は中共との問題であります。現在進行中の貿易協定にからまる種々の難関は、結局のところ、日本が台湾政権を承認して中共政権を承認していないこと、ココムの制限があることに帰着するのであります。台湾政府承認が、平和条約作成当時のダレス氏の圧力によるものであり、アジアにおける現状からはおよそかけ離れたものであるということは、今日明らかになっておるのであります。また、ココムの制限については、日本は、西欧側の条件に比べても、なおより厳格な制限が課せられており、これはわが国の主権を不当に圧迫するものと言わざるを得ないのであります政府は、果してここで一歩進んで中共政権を承認し、ココムの不当なる制限を緩和し、あるいは撤廃する意図を持って交渉するかどうか、総理の所見を私は承わっておきたいと思うのであります。(拍手)  第三点は国内問題であります鳩山内閣は、総選挙に当っては、一兆円のワク内において、防衛費を削減して民生安定の予算増加することを公約いたしました。しかしながら、実際には、さように参っておらないのであります。  第一には、一兆円の予算は、外見上、形式的には九千九百九十六億であるが、歳入の面においては、当然に専売納付金に入るべき三十億円を国庫収入としないで直接地方団体に振り向けたり、歳出面では防衛庁費のうち百五十四億を予算外契約に計上しり歳出のワクからはずしておるのであります。すなわち、予算編成の技術のからくりによって体裁を保っておるのであります。実質的には一兆億を超過しておるのでありまして、ここに一つの欺瞞があります。  第二には、防衛庁費は昨年度並みに押えておると言っておるが、予算外契約百五十四億円を計上して、明年度及び明後年度の歳出を義務づけておるのであります。これ明らかに明年度並びに明後年度予算に対する制約であります。このような予算編成は、防衛費関係予算の優先編成を意味するものであって、再軍備予算であることを暴露しておると私は言えると思うのであります。(拍手)かって軍国国家たりし時代に、軍事予算優先の結果となりました。従って、今防衛予算優先の前例を開こうとすることは、ここでも私は憲法の精神をじゅうりんする結果になりはしないかということを憂えるのであります。  第三には、民生安定の費用が増額せられていると言うが、まず財政投融資を見れば、その投融資額は三千二百七十七億円計上されておるのであります。その民間産業に対する投融資を見るというと、鉄鋼、石炭、機械工業、硫安工業等の重要産業にわたって合理化計画を継続的に推進するものばかりであります。従って、その根幹を貫くものは、大資本、独占企業の立て直しというところに重点が置かれて、その結果勤労者の大量首切りが予想されるということをわれわれは知らなければならぬと思うのであります。これが国民経済全体としていかなるプラスが予定されておるか、少しも明確でないのであります。私が政府にお伺いしたい点は、本年度財政方針は、国民経済に好刺激をもたらす要因が少いのではないかということであります。従って金融の方面でこれを補う具体策並びに自立経済対策を用意すべきであると思うのでありますが、政府はいかなる対策を持っているか伺いたい。本年度財政投融資額によって各産業の雇用の現状が維持できるかどうか、その可能性をはっきりしてもらいたいと思うのであります。  さらに、鳩山総理は、住宅政策、社会保障、特に失業対策、所得税の減税、この三つをあげて、いわゆる公約実現に努めると言われておるのでありまするが、今竹山建設大臣からも話がありましたように、住宅建設については、政府責任を負うのは十七万五千戸であって、二十四万五千戸は民間責任においてやると言って、明らかに任を民間に転嫁しておるということをわれわれは指摘しなければならぬのであります。しかも、減税は、少額所得者に対する減税というものはほんの頭をさすった程度のものでありまして、あとは間接税で吸い上げるというのでありますから、ほんとうの意味における減税にはならぬ。これも私は一つの欺瞞であろうと思うのであります。要するに、予算のつじつまを合せたのみであり、現在の住宅不足、学校校舎の不是等に見られる国民生活に最低必要な施設の整備についても、失業対策、生活保護、社会保険等の社会保障についても、地方財政についても、今や全面的に経費不足になっている現状に対して、国家財政はこれらの現象をあとから追いかけているだけであって、しかも追いかけても追いつく見通しはないばかりか、逆にだんだん距離が離れてきておるというのが現状であろうと思うのであります。(拍手政府は、これに対して、経済六カ年計画を立てて解決すると称しておるが、実際に発表されだ本年度計画は、予算を作成してからこれに合せて作っただけの、全く無意味計画であります。従って、政府には長期的な計画性を持った対策もなく、ただ経費不足を迫っているだけであって、そこには何ら国民生活の安定のための政治もなければ愛情もないのであります。あるものは単に形式的な体裁でありまして、政治は官僚の行政技術に屈服をしておるのであります。  次に、民生安定の基本をなす食糧問題について、これをいかに解決するかということも大きな課題であります。これについては、食糧増産対策費の大幅軽減をやっておる。この点は伊藤君の指摘した通りであります。  以上申し上げました通りに、政府公約というものは、ただ予算的なつじつまを合せただけであります。そこで私のお伺いしたいのは、この前の、いわば解散国会における施政方針演説においては、これもやる、あれもあると言って選挙に臨んだ。そうして選挙に臨んだ結果、国民の投票を集めたのであります。投票を集めた結果、今度はやらないというのでありまするから、まさに投票を盗取した結果になりはしまいかと思うのでありますが、これに対する政府当局の考えを伺いたいと思うのであります。(拍手)  最後に鳩山総理に伺いたい。  第一点は、拡大生産の地固めも、民生安定も、国民の積極的協力なくしては実現が不可能でありますが、本年度予算編成のごとく、まず米国側の意見を聞いて予算をきめ、しかも公約実現とは形式的なものであるのでは、国民協力は期待はできないと思うのであります。そこで、政府は、この拡大生産の地固め、民生安定のためにいかなる方式をもって国民協力を求めるか、これをお伺いしたいと思うのであります。  第二点は、第二次鳩山内閣は、衆議院は百八十五名、参議院は定員二百五十名の一割に満たざる少数をもって内閣を組織いたしました。これでは、国会運営の面では行き詰まらざるを得ません国会運営にやっきとなっている姿は、まことに深刻なものを感ずるのであります。さきに、地方選挙のまつ最中、三木民主党総務会長は、大阪談話において、保守合同の必要性を説き、場合によっては民主党の解体、鳩山総理の引退も考慮されると言い、岸幹事長も共鳴されたやに承わっております内閣を組織して予算もでき上らず、総理の施政方針演説もやらないうちに、民主党の内部から内閣不信任的声があがったのでは、国民も驚かざるを得ないと私は思うのであります。(拍手)この三木声明は、総務会でも承認されたと聞きます三木声明に関する総理の所見を聞きたいと私は思うのであります。  少数政権で国会の運営ができないのは、組閣の当初からわかっておることであります。従って、組閣に当っては、最も政策の近いものに閣外協力を求めるか、あるいは閣内協力、すなわち連立政権を作ることも考慮さるべきであったと思うのであります。しかるに、この道を選ばず、少数政権として内閣を作った以上は、当然政策遂行のために解散予想されなければならないと思うのであります。民主主義のあり方を説く鳩山総理大臣として、現在のような日本政治情勢の中における憲政運用のあり方についてどう考えるか、伺いたいのであります。(拍手)  日本も、終戦十年、その再建方策も大別二つに分れ、資本主義か社会主義に集約され、政治保守か革新かの二大政党対立の時代へ移行しつつあると思うのであります。そうして、保守党間にも合同問題が具体化し、わが社会党陣営にも統一問題が具体化しつつあります。先ほど引例した三木談話並びに岸幹事長のこれに対する共鳴談話も、この時代の流れに対する捨て石とも思われるのであります。私は、憲政運用については、保守か革新か、二大政党の対立の時代を早く招来して、民主主義のルールに従って政権が移動されることが最も望ましいと思うのであります。(拍手)社会党内部の問題は、われわれ内部の問題として解決をいたしますが、保守統一に関する総理大臣の意見はいかがであるか、私は伺いたいと思うのであります。  これで私の質問を終るのでありますが、答弁いかんによっては再質問を留保いたしまして私の質問を終りたいと思うのであります。(拍手)     〔国務大臣鳩山一郎登壇
  21. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 淺沼君の御質疑に対して答弁をいたします。淺沼君は、民主政治のあり方について、まず第一に憲法改正の問題に触れられました。憲法改正については、憲法調査会を内閣に作りたいという考えを持っております。自衛隊増強は憲法を改正せずして可能かという質問がありました。現在の自衛隊の増強は、現在の憲法においてできると思っております。  小選挙区制について……。(発言する者あり)私が淺沼君の質問を誤解しておりますか。私は誤解していないつもりです。小選挙区制はいい制度だと思いますけれども、これも調査会によってきめてもらう以外にはないと思っております。  外交について、独立の完成というようなことを言われまして、分担金の削減交渉を見ると全くの屈従外交だ、独立の完成はこれによってはできないというお話でありました。(「その通り」)決してそんなことはないのです。(笑声)  自分を守る安全保障条約、行政協定は改正する意思がないか。安全保障条約、行政協定等は改正はしたいです。自分を守る防衛力を充実することによって、この二つの改正は実現できると思っております。(拍手)さっきこれについて質問があったのに返事をしなかったそうですが、これは失礼をいたしました。(笑声)陳謝いたしたいと思います。(「知らなかったか」と呼ぶ者あり)知らなかった、さっき。  原爆地として日本が利用せられることについて同意か不同意か明瞭にしろという話でありました。私は原爆地として日本が利用せられることは欲しません。  日ソ交渉のときに領土問題に触れるかどうかというような話でありましたが、これはもちろん触れます。千島、樺太について主張するのかどうかというような話でありましたが、これは、六月一日から会議が始まりますから、ただいまここで議論をしない方がいいと思いますからいたしません。(拍手)  中共政府を承認する意思があるかないかということでありましたが、ただいまのところ中共政府を承認する意思がないのであります。これはやはり、前の内閣において吉田君が、ダレスに対して国民政府を承認して中共政府は承認しないという手紙を出してあるそうでありますから、一度日本の国の総理大臣が約束したことは尊重した方がいいと思いますから、これはやはり現在のところ意思がないということを言うのです。将来、四囲の情勢の変化によって承認すべきものであれば承認するようになるかもしれませんけれども、現在においては、しいて承認を急ぐ必要はないと思っておるのであります。  それから、民生安定はできるだけ努めろ、そうして国民協力を得るよう努めろということでありますが、民生の安定は予算の示す通りできるだけ努めたのであります。(「できるだけね」と呼ぶ者あり)そうです。できるだけは努めたのであります。それですから、現在の予算を補正する意思はございません。これによって国民協力を得たいと思っております。  以上答弁をいたします。(拍手、「三木談話はどうした」と呼ぶ者あり)  あんまりだくさんの質問だから、つい一つぐらい落すものです。三木君の声明は、もとより当然な事柄であります。私の内閣のことだの、自分の党派のことを考えて、保守合同政治の刷新はできるものではありません。(拍手)     〔国務大臣一萬田尚登君登壇
  22. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) 私に対します質問のおもなものは、財政投融資が石炭、鉄鋼等のこういう重要産業に集中しておって、他の中小企業あるいは農漁業、そういう方面に対してどうも手薄じゃないか、従ってこれではなかなか苦しい面もできて、景気を刺激する要素も乏しい、そこで投融財政について金融を考えておるか、こういうようなお話であったかと思うのでありますが、私は先ほどもしばしば申し上げましたように、今後の日本の金融情勢は、資金も蓄積され、金利も下り、金融自体も円滑にいく、こういう意味でありまして、従ってこういうふうな情勢が経済としては望ましいのでありまして、財政はやはり国家消費でありますから、やはり財政はその規模をなるべく大きくしないで――すべてこれは国民の税にかかることであります。そして、今まで財政からいろいろ手を出して、そして経済を助けた部面が、経済自体の力でできるだけまかなっていけるという態勢が望ましいと思うのであります。従いまして、今後におきましては、財政と金融というものの調整、特に金融については弾力性のある正常の働きをしてもらいたい、こういう考えで臨むつもりをいたしております。(拍手
  23. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 淺沼君、再質問されますか。――淺沼君。     〔淺沼稻次郎君登壇
  24. 淺沼稻次郎

    ○淺沼稻次郎君 私がお聞きしようといたしました点は、憲法改正の調査会は、この前の国会においては議会に置くと言われたのであります。今総理は内閣に置くと言われておるのであります。およそ、総理大臣演説というものは、やはり議会に対する大きな約束であろうと私は思うのであります。この前の国会においては議会に置くと言いながら、今度内閣に置くと言うことは、これはどうも私は食言とも言えないのでありまして、何かこういう工合に変らなければならなかった情勢があるのか伺いたいのであります。ただ、私は、議会のことは議会がきめることであって、内閣の方から議会に対して、とやこう憲法の委員会をつくれと言うようなことは、これは不当であると、この前の施政方針演説のあるときから考えておったのでありますが、そういうことがわかっての御訂正であるか、これを一つ承わりたいと思うのであります。  それから第二点は、三木発言については了承されたということであります。それならば、もっと突っ込んで私は伺いたいのでありまするが、政局安定のためには保守合同が必要であるということを鳩山総理も認められ、それがためには、内閣の総辞職、民主党の解体も辞せない、こういうような意味であるかどうか、私は承わっておきたいと思うのであります。ただ上の方だけをさすっただけで答弁にするということは、私は受け取れないところでありまして、この点を明白にしていただきたいと思うのであります。いろいろ御議論もあるようでありまするけれども、憲政運用の根本になりまするならば、こういう点を明確にしていただかなければ、ほんとうに国民は迷わざるを得ぬという結果になろうと思うのでありまして、この点を私は明確にしていただきたいと思うのであります。  第三点は、大蔵大臣答弁でありますが、何だか講義を聞いているようでありまして、どうも私どもにはあまり納得が行き過ぎたような気がするのでありますが、私の聞かんといたしましたことは、財政投融資について、いわば合理化を約束しておる、鉄鋼とか石炭あるいは硫安工業、こういう方面に投融資がよけいになる、そうすると独占企業を育成することになって、結果から見れば大量着切りが約束されはしないか、これがわれわれの憂えるところでありまして、この財政投融資の裏には首切り、失業問題がひそんでおりはしないかということを聞いておるのであります。さらに加えて、もう一点はこの点であるということを申し上げますならば、財政投融資ばかりでなくして、今度の財政計画によって、現状の雇用を――各省の持っております、あるいは日本国民の雇用を維持できるかどうか、失業は増大しないかどうかということを私は聞いておるのでありまして、この点について明確なる答弁を願いたいと思うのであります。  理論は別といたしまして、答弁は具体的に願いたいと考えておる次第であります。(拍手)     〔国務大臣鳩山一郎登壇
  25. 鳩山一郎

    国務大臣鳩山一郎君) 淺沼君にお答えをいたします。  第一の、議会に憲法調査会を設けると言ったのを内閣に置くと言ったのは、意見を変えたかというお話であります。変えました。(拍手)これは情勢の変化でいたし方ないのです。あなた方の議席が三分の一以上をとられて、これではなかなか議会に設けたのでは憲法改正の案はできないだろう、そういう危険を感じたのであります。憲法改正の案を得るのには、どうしても民間からもよけいとらなくてはならないし、案を作らなくちゃならぬから、反対が多くては案ができないと思います。それで変えたのであります。(拍手、発言する者あり)議会が通るまでには情勢の変化がまたあるだろうと思っております。それを楽しみにしておるわけであります。  それから、私の保守合同についての決意でありますが、先刻申しました通りに、三木君の言ったことは常識に合った意見だと思っております。その通りにした方がいいと私は思っております。(発言する者あり)解党も辞しませんし、総辞職も辞さないということです。     〔国務大臣一萬田尚登君登壇
  26. 一萬田尚登

    国務大臣(一萬田尚登君) お答え申します財政投融資で鉄、石炭その他の重要産業について合理化をやれば、むしろ雇用の機会が少くなりはせぬか、こういう御質問であったと思います。これは、産業自体を合理化して、そうして健全化していくのでありますから、これは長い目と、ちょっとの目と、短かい期間と、こういう点は区別しなくてはなりませんが、特に、日本経済においては、日本経済貿易に依存するという見地からいたしまして、この貿易を振興する、これには、いい物が安くできなくては、どうしても日本経済全体の雇用がうまくいかないのであります。そういう意味におきまして、必ずしも合理化することがすぐに雇用の機会を少くすると解釈することもなかろうと思うのであります。(拍手)      ――――◇―――――
  27. 大石武一

    ○大石武一君 国務大臣演説に対する残余の質疑は延期し、明二十八日定刻より本会議を開きこれを継続することとし、本日はこれにて散会せられんことを望みます
  28. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 大石君の動議に御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 益谷秀次

    議長益谷秀次君) 御異議なしと認めます。よって動議のごとく決しました。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時十二分散会