○帆足
委員 自動車の
輸出が特に、
中国に対して多少許されておりますが、かんじんの
部品の幹出が許されないように聞いておりますし、
日本のトラックが非常に大量に向うで動いているのですが、やはり
部品が
輸出をされない。鉄道の
部品も
輸出されない。世界が平和になりまして、
朝鮮は形だけの対立は残っておりますけれ
ども、まさかトラックや戦車で戦争をするという気持はないのではないか。それをするくらいならお互いに水爆でやるようなことにもなるのですから、そういうときに、こういうトラックだとか大型バスだとか
自動車の
部品だとかを戦略物資などと言って、この狭い、パチンコばかりしている国が半分野たれ死にしかかっている状態をほったらかしておくということは、まことに悲惨なことだと思うのです。
アメリカから少々援助してもらうからといっても、
アメリカに基地を貸すことは
アメリカの便宜のために貸してあるのだから、資材でもいただけばけっこうなんで、恩に着せて貸しておけばいいので、もう占領時代も過ぎましたから、お互いに互恵平等で、
アメリカが
日本を利用するかわり
日本も
アメリカを利用する。何も
日本だけがお世話になっているのではなくて、
アメリカの青年たちにもずいぶん
日本の娘がお世話をし過ぎるくらいしましたし、基地も貸しましたし、騒音にもずいぶん迷惑をこうむりながらお世話をしたのですから、もう敗戦の
税金は払ったと思うのです。従って、資本主義の
立場に立ちましても、お互いに助け合うのだったら平等の
立場で助け合えばいいのですから、基地を多少貸してやるなら、それはそれとして、北アジアにこういうものを出してやりたい。原爆、水爆の時代にこういうものを戦略物資だなどと言うのは、
アメリカの上院外交
委員長あたりの無学な徒輩が言うくらいのことであろう。無学だというのは、先般
日本からおもちゃや自転車を
中国に出したらよかろうという重大声明をしました。自分の出している
ココムの規定も知らないでおいて、すでに自転車もおもちゃも許可されているのです。そんな許可は何にもならないということも知らないで大演説をしたという無学な徒輩の影響下に
日本がおっていいものであろうか。十年前は英鬼米鬼だと言って大いに闘争をして、数百万の青年を殺しておきながら、今は
アメリカをマドンナとかなんとか言って、保護者であるがごとくふるまう。しかし英鬼米鬼なんて言った時代の思想が間違っておったことは事実です。同時に、
アメリカを保護者だとか神様だとか言うことは、それにも劣らぬあいまいな思想です。どこの国も平等で、そして話し合いでもってお互いに利害を比較考量して、自分の利益を主張しようとするなら、相手の利益もよく考え合って交際するのが、
国際的常道だと思うのです。こういう点について私は
日本重工業の諸君の努力が足りないと思うのです。かつては六百万トンの鉄を作りながら、大学教授に一台のダットサンも差し上げておらぬ。末弘厳太郎さんがニッサンの大型
自動車を運転しているのをわれわれは驚異のまなこで見た。これが唯一の事例なんです。大学教授に一台のダットサンも与えずして、六百万トンの鉄をなぜ作ったかといえば、時代錯誤の軍国主義にだけ使っておった。そのために
日本の重工業は大衆に少しも親しまれていない。三菱重工業の社長といえば、まず小学校の生徒からも敬愛の念をもって見られるようなりっぱな仕事をしている。しかるにだれからも尊敬されていない。それは心がけが間違っているからです。実業の任務は国民に奉仕することだという単純な真理を忘れてしまって、そしてこういうような手段のための手段になってしまっておる。
日本重工業の大部分が主として戦争の手段に使われていたということだったと思うのです。従って、私は、
日本の
輸出振興、
日本の産業
振興というものは、心がけを改めて、すなわち封建的爬虫類から近代的な人類になって、人間の実業、人間の資本主義、人間の経営者、こういうふうになれば、
自動車の売れ行きもおのずから販路が開けるのではないかと思います。
二十年前でしたか、第一相互の社長の矢野恒太という人が、近ごろ百姓がぜいたくになって自転車に乗っておる、自転車に乗っておるだけならいいけれ
ども、ゴムぐつをはいておる、ゴムぐつをはいておるだけならいいけれ
ども、土曜日の午後などうしろにビールを二、三本ぶら下げて乗っておると言っておりました。私はこういうような思想が
日本の実
業界にはまだ残っておると思う。自転車は百姓に乗ってもらうために作るのだし、わらじをはくかわりにくつをはいてもらうことは、非常に文化的、能率的な進歩であって喜ぶべきことである。近ごろ農民はゴムぐつをはくようになったと言って凱歌を上げるべきであるのに、まことに嘆かわしいことである。二宮尊徳のはき違えをして、そういうことを言っておりました。こういう思想が
日本の実
業界に根深くあったのが、
日本の重工業の発展を
阻害した
一つの原因だと思う。最近ミキサー、電気洗たく機が流行し始めておる。私など、文化人と称しながら、やっと去年の秋女房に電気洗たく機を買ってやった。ところがこれは、最新のすばらしい機械だけあって、最初の一週間ぐらいは使い方がよくわからないためにまごまごしておったが、このためにねえやさんがどのくらい助かっているか知れない。すべての台所に一台のミキサー、一台の電気洗たく機があれば、私は命が四、五年延びるのではないかと思う。なぜ
日本の重工業は奮起して、すべての国民に一台のミキサー、一台の電気洗たく機、そしてすべての活動する者には一台の
国産自動車というような、熱意と腕力をもって御努力なさらないか、まことに不思議だと思っております。そういう点において、せっかくこういう
参考人としておいで願い、御
意見も承わったのでございますから、一段と
日本の重工業を平和のために積極的にお使い下さるように、そしてそれが、南北を問わず、アジア諸国民のサービスのために
日本の重工業が万丈の気焔を上げ得るように、もう少し
業界の方々に、ヒューマニズムというか、人間性に徹して、全従業員が社長の話に対して涙を流して傾聴するような哲学と気魄を持って進まれる、そういう態勢でなければアジア諸国に
日本の商品が売れるということは困難だろうと私は思います。旧来のような軍国主義の思想を持って、
自動車工業をいつでも戦車に切りかえるというような下心を持ってやったのでは、インドのネールも、インドネシアも
中国も受け入れないと思うのです。そうではなくして、この重工業の力を人間の幸福のために使うという哲学か毒あってこそ、私は
日本の重化学工業の
輸出振興ということが可能であると思います。こういうことを
参考人の方に申し上げてもまことに恐縮でありますが、所見を述べまして、また御感想でもありましたら伺っておきたい。