○戸田政府
委員 本日この御
質問のあることを予定いたしておりませんので、記録を持って参りませんでしたから多少の誤まりがあるかもしれませんけれ
ども御了承願いたいと思います。この問題に対しまして、これは神近さんの前でこんなことを申し上げるのはどうかと思いますが、実は先般の毎日新聞におきまして、神近さんの談話として
人権擁護局のM事務官が売春業者にだまされた、そうして職務を越えた
関係にある、そうして
事件をうやむやにしたというような記事を出されまして、私ははなはだ遺憾だと思っております。どうしてかような一方的な御意見を出されて、
人権擁護局の
人権擁護の仕事をする上に非常に大きな支障を来たしたことを私は実は非常に残念に思っております。
この
事件を簡単に申し上げますと、多分昨年の六月ごろであったかと記憶しておりますが、片山という旅館
——これは神近さんの言葉によりますと売春業者ということを言われておりますが、私の方の
調査では旅館業でございまして、売春業者ではございません。この片山という未亡人の家にありました時計が紛失いたしまして、これをさっそく
警察に届けまして、三日ほどいたしましてこの時計がなくなったということが小さい町ですから近所の者に知れ渡った、ところが
本件の問題になっておりまする石川隆司と申します少年が
——かように断定いたしますことはどうかと思いますが、話のついでに申しますが、盗癖が従来あったようで、その前に幾多の実例がございますものですから、そこで友だち同士の話で君時計を取ったんじゃないかというようなことを言われたので、実は取ったということを言ったわけです。そのとき聞いた子供がさっそく片山のおばさん、石川の子が時計を取ったようだよということを言われたので、そのことを
警察に届けたのであります。そこで
警察ではその事情を調べたいというので家に参りましたところが、隆司の父親、峰吉と申しますが、これは人夫をしておりまして、これは当時出ておって家におらなかった、そこで姉に話をしてちょっと聞きたいことがあるからということで姉の了解を得て
学校の
先生に、多分二人でございましたかに来ていただいて、そうして実は調べた、ところが取ったということで、どうしたかと言ったら畑の中へ棄てた、さっそく棄てたという畑を調べたのですが、時計が出てこないのでどうもはっきりぜぬというので、わずか一、二時間の調べでそのままはっきりせぬということで出したのであります。そこで問題は、これが非常に広がって、石川の子が時計を取ったんじゃないかということで問題が非常に大きくなった、こういう
事案でございます。それから話はあるいは前後するかもわかりませんが、先ほど手錠の話が出ましたが、これも私の方の
調査の結果では、手錠を見せておどかしたという事実は私の方の良心的な
調査においては現われておりません。これははっきり申し上げてよいと思います。これは当時の
学校等の目撃者がおりますので、私の方で慎重に
調査いたしました結果はさような事実はございません。そこでこの問題の投書がいろいろ問題がありまして、この問題を持って参りましたのは先ほど神近
委員の言われた尾高ハツ、夫の名前は忘れましたが、駐留軍に勤めておる人
たちです。これはどういう
関係か知りませんが、この問題を非常に大きく取り上げたのであります。一つの正義感、かように見れば決して非難すべきものではないと思いますが、どういう理由がわかりませんが、尾高夫妻がこの問題を非常に大きく取り上げた、そうして
東京の法務局の方に陳情に参ったのであります。そうして私の方では、
東京法務局におきましては、さっそくその
事件を取り上げました。いろいろ尾高等の話によると、埼玉の役所
関係じっだめだ、どうしても
東京で調べてもらわなければだめだというようなことで陳情に参ったそうであります。そこで
東京法務局が
調査いたすことになりまして、
東京法務局の第二課長、それから先ほど
お話がありました宮崎事務官、浦和の法務局の課長、事務官の四名が、子供の問題であるので
人権擁護上これは慎重にしなければならぬというので、非常な熱意をもって両法務局において共同
調査をいたしたのであります。その結果私の方の
調査によりますると、子供に対する
警察側の調べ方としてはややどうも妥当でない節もあるのではないか、こういうような事実が認められましたので、
警察に対して私の方で口頭勧告いたしまして、そうしてその結果処分猶予の処置をいたしたのでありまして、決して
人権擁護局がこれをなおざりにして何もしておらないというような事実は何もない、ところがこのいろいろな
調査に関連して、尾高及び被疑者の石川の方においては、どうも法務局の調べは
自分たちの思う
通りにならないというので、どうも法務局がなれ合いになっておるのじゃないかというようなことを再三に言ってこられました。おそらく神近
委員の方に参ったのもさようなことで参ったのではなかろうかというふうに想像いたします。従って神近
先生が尾高あるいは石川等の話を一方的に聞かれて
人権擁護局——実際は法務局でございますが、
人権擁護局の事務官がどうも職務を越えた怪しい
関係にあるんじゃないか、かような御想像をされて意見を出されたのじゃないだろうかというふうに私
どもの方は想像しておるのですが、この
事件につきまして先ほど申しましたように、
警察側としては子供の調べについてはもう少し慎重であってよかったのではないかという気がいたましす。また
学校側においてももう少し慎重な態度がほしかったのじゃないか、かようなことは私
どもも考えておるのでございますが、神近
先生の考えられるような
人権擁護局の職員
——これは新聞の間違いか、神近
先生のお考え違いと思います。法務局の職員がさような
関係もございませんし、さような不公平な処置を決してしておらないということを、これは新聞等に公表されておりますので、将来私
たちが
人権擁護の仕事をしていく上にこの点をはっきりさしておかないとならないと存じますので、あえてこれは申し上げて、あるいは多少失礼を申し上げているかもしれませんが、この点は一つはっきりしていただきたい。そして神近
先生なりまた申告人等の言うことと私の方の
調査とは全く違っております。そこでもしできますならば
法務委員会においてすべての
関係者を呼んでお調べ願わないと、この食い違いは、どうも
人権擁護局の職員が怪しいのだかというお考えであるならば、とうてい私は公正な
判断を申し上げることができない、かように存じますので、この問題をもしあくまでも重大問題として取り上げられるならば、一つ
法務委員会において
関係者すべてをお呼び願ってお調べを願わなければならぬのじゃないか、かように私は考えております。
それから石川、尾高等の考え、これもこの際御参考のために申し上げておきますが、結局においては損害賠償を払えということであります。そこで法務局及び
人権擁護局の措置としては、損害賠償を取ってやるということはこれは少し
権限を越えるのでございます。そこでそういう問題は訴訟等において国家賠償を請求されたらどうかということでありますが、何とかしてこれを話し合いをつけてくれということで、せっかくのあれで、ある程度の示談に持ち込んだこともあるのであります。ところが尾高あるいは石川等においてはそういう場合は出てこないというようなことで示談に容易にできなかったということになっております。
それから
学校に子供が行けなくなった、これはきわめて重大な問題であります。これはほかの先ほどの問題以上にむしろ私はこの方が問題であると思います。教育を受けられない、この方が
人権擁護上私の方は実は重大問題だと考えておったのであります。ところがこれもすっと調べておりますと、尾高夫妻と申しますか、尾高さんの方でこの
事件が解決するまでは子供に
学校に行かないようにとめられておるということであります。そこでこの問題については法務局においても非常に努力いたしまして、どうか
学校に行くように、また
学校側においてもこれは非常に努力しております。しかも
先生が数回にわたって頭を下げて、どうか
学校へ出てくるようにということで再三手を尽しております。ところが子供が言うのには、
学校に行かないで働くと、八百屋の手伝いをすると一日十円になる。だから
学校に行かないのだ。そこで
学校の
先生は、十円は私が出すから来てくれということで、数日十円を出してきてもらったのでありますが、また来なくなったのであります。そこでいろいろ調べてみますと、
学校へ行かないように、尾高のおばさんが行くなと言われたから行かないのだ。しかしその後私
ども心配ですから、さらにいろいろ
調査し、また
学校に行くように注意いたしたのでありますが、近く行けるようになった。どういうことかわかりませんが、少年の姉の言葉によりますと、ようやく行けるようになりましたから最近に
学校に出るということでございまして、その後の経過は実はまだ詳細に調べておりませんが、その程度まで実は私の方で
調査いたしました。決してなおざりにもいたしておりませんし、私の方の申し上げることとおそらく神近
先生のお考えになったこととは非常な相違があるであろう、かように考えております。
そこできょうの程度は詳細のあれを持っておりませんから、ただ記憶の程度で私は申し上げたので、多少の間違いがあるかもわかりませんが、間違っていましたら後ほど訂正いたしたいと存じます。私の方としては誠心誠意
——この問題については決して私は
人権擁護局が怠慢であった、処置が誤まっておったと言われるそしりは受ける覚えはないと私、考えております。しかしわれわれの力にも限界がありまして、必ずしもこれが万全な処置であったとは決して申し上げられませんが、少くも良心的な気持をもって
調査いたしたつもりでありますので、もし食い違いの点等について納得いきません場合は、これは
関係者をお呼び願ってお調べになる以外には道がないのじゃないか、かように思います。