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1955-07-29 第22回国会 衆議院 法務委員会 第44号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月二十九日(金曜日)     午前十一時二十四分開議  出席委員    委員長 世耕 弘一君    理事 山本 粂吉君 理事 三田村武夫君    理事 馬場 元治君 理事 古屋 貞雄君       椎名  隆君    長井  源君       林   博君    松永  東君       小林かなえ君    横川 重次君       神近 市子君    島上善五郎君       佐竹 晴記君    細田 綱吉君  出席政府委員         警  視  長         (警察庁警備部         長)      山口 喜雄君         法務政務次官  小泉 純也君  委員外出席者         議     員 濱地 文平君         警     部 海老原 毅君         判     事         (最高裁判所事         務総局総務局総         務課長)    磯崎 良誉君         専  門  員 小木 貞一君         専  門  員 村  教三君     ————————————— 七月二十八日  委員徳安實藏君及び吉田賢一辞任につき、そ  の補欠として益谷秀次君及び矢尾喜三郎君が議  長の指名委員に選任された。 同月二十九日  委員迫兼光辞任につき、その補欠として島  上善五郎君が議長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政に関する件  閉会中審査に関する件  委員派遣に関する件  請 願  一 戦犯問題の解決促進に関する請願林唯義    君紹介)(第五三号)  二 湯沢裁判所新築に関する請願根本龍太郎    君紹介)(第一〇五号)  三 同(田中織之進君紹介)(第一〇六号)  四 戦犯問題の解決促進に関する請願(上林山    榮吉君紹介)(第一七〇号)  五 同(愛知揆一君紹介)(第二一六号)  六 借地借家人組合法制定に関する請願(武藤    運十郎紹介)(第二〇五号)  七 新宮地区検察当局者等職権乱用に関する    請願濱地文平紹介)(第二五七号)  八 供出刀剣の賠償に関する請願赤城宗徳君    紹介)(第三一三号)  九 岐阜地方家庭裁判所庁舎建設促進に関す    る請願(楯兼次郎君紹介)(第六三一号) 一〇 福島家庭裁判所庁舎建設促進に関する請願    (鈴木周次郎紹介)(第九六三号) 一一 同(粟山博紹介)(第九六四号) 一二 鷹巣町に簡易裁判所設置請願石田博英    君紹介)(第一〇三六号) 一三 戦争受刑者早期釈放に関する請願(平田    ヒデ君紹介)(第一一二四号) 一四 戦争受刑者早期釈放に関する請願(助川    良平君紹介)(第一一六五号) 一五 戦争受刑者早期釈放に関する請願粟山    博君紹介)(第一五〇一号) 一六 戦争受刑者早期釈放に関する請願(山下    春江君紹介)(第二二六七号) 一七 売春等処罰法制定促進に関する請願床次    徳二君外十名紹介)(第二五二九号) 一八 憲兵隊押収物件返還に関する請願大村清    一君紹介)(第三一六四号) 一九 売春等処罰法制定促進に関する請願床次    徳二紹介)(第三二二二号) 二〇 宇部市に山口地方家庭裁判所宇部支部設    置の請願田中龍夫紹介)(第三四九二    号) 二一 売春等処罰法制定促進に関する請願外一件    (池田清志紹介)(第四二三〇号) 二二 農民の均分相続に関する請願笹山茂太郎    君紹介)(第四二五四号) 二三 売春等処罰法制定促進に関する請願(中馬    辰猪君紹介)(第四三〇〇号) 二四 出所戦犯者住宅あっせん等に関する請願    (中原健次紹介)(第四三七一号) 二五 三本木市に青森地方裁判所支部設置請願    (三浦一雄紹介)(第四三九五号) 二六 刑事訴訟法の一部改正等に関する請願(中    川俊思君紹介)(第四三九六号) 二七 憲兵隊押収物件返還に関する請願高津正    道君紹介)(第四四八九号)     —————————————
  2. 世耕弘一

    世耕委員長 これより法務委員会を開会いたします。  本日の日程に追加いたしまして、法務行政に関しまして調査を進めます。発言の通告がありますのでこれを許します。長井源君。
  3. 長井源

    長井委員 私はここ一両日非常に署名な三重県津市の橋北中学校生徒水難事件に関しまして、法務当局の御意見を拝聴したいのであります。この水難事件はすこぶる著名でありますから、いずれ報告がくると思いますが、一応先にそれを伺っておきたいと思います。
  4. 井本臺吉

    井本政府委員 昨日夕方われわれのところには、簡単な電報の報告が参っております。その報告によりますと、本日というのでありますから、七月二十八日の午前十時五分ごろに、津市中河原地先海岸におきまして、津市立橋北中学校学年男女生徒約三百七十八名が、同校校長さんの沢野敏郎以下二十名ほどの先生引率されまして、水泳訓練中に、四十三名ほどが遭難して、うち三十六名が溺死した事件が発生したので、津検察庁次席検事以下数名の検事並びに事務官が直ちに現場におもむきまして、現場調査いたしました結果、その海水浴をいたしましたところは、一般の大衆の海水浴場として使用されていないところでありまして、遭難があった近所はみぞがあって非常に深いところもあり、かつ流れが早い状況下にあったにかかわらず、監督教職員が十分に監視をして自分の尽くすべき職務を尽くしておったかどうかという点について、相当の検討を要する点があるということを認めましたので、検察庁といたしましては、刑法の業務上過失致死事件というように一応考えまして、引き続き取調べを開始したということでございます。その取調べの結果につきましては、迫って報告をするという趣旨の電文で、それ以上の詳しい事情はわれわれの方にはまだ判明しておりません。
  5. 長井源

    長井委員 法務省に達した報告では、まだ遭難原因についてはわからないというわけですね。
  6. 井本臺吉

    井本政府委員 ただいま申し上げましたように、引率教職員監視等に、過失があったのではないかという嫌疑をもちまして、その調べを始めたというので、断定的な結論はまだ出ていないのであります。
  7. 長井源

    長井委員 警察庁の方に参りました報告並びにその原因等がわかっておりましたら、一つこの際聞かしてもらいたい。
  8. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 ただいままでわかりました事柄をお話申し上げますと、事故が起りました時間は二十八日午前十時五分ごろであります。場所はただいま法務省からお話のざいましたように、安濃川の河口、津海岸の北端より約三百メートル南寄り地点でございます。通称文化村地内といっておるところであります。遭難者は、死亡いたしましたものが全部で三十六名でございます。原因につきましては南から北への潮流と突然の大波に巻き込まれて、沖合いに標示してあります危険標識区域外に流されて深いところに落ち込んで遭難したものと認められますが、なお原因につきましては引き続き取調べ中でございまして、本日午前十一時から現地関係者が集まりまして、実地調査をいたしておる状況でございます。従いまして原因につきましてはなお現在引き続き調査中でございますので、こうだということを確定的に申し上げるのは差し控えたいと思います。  現場状況について申し上げますと、現場は終戦後駐留軍海水浴場として使用しておったこともありますが、現在は一般人にはあまり利用されておらない場所でございます。その沖合い五十メートルの地点赤旗標識を立てて危険であるということを標示をいたしまして、その沖合いに至るまでの間、南北に幅約百五十メートルを水泳訓練区域といたしておるのであります。南北百五十メートルの水泳訓練区域のところを南五十メートルを男子の専用、北五十メートルを女子専用にしておりまして、中間の五十メートルの区域男女とも禁止区域に指定しておったのであります。従って今回事故が起りましたのは、北の女子区域事故が起りました。従って死亡いたしました者も全部女子生徒である、こういうことになっております。  危険区域標識地点は水深約一・二〇メートルのところを実測して設置したものであるということです。当時の気象状況は特に特異なものはございません。全般の状況は普通であったのであります。警察といたしましては直ちに署員を非常招集いたしまして救助活動をいたしたのでありますが、この水泳につきまして警察にただいままでに若干わかっておることを申し上げますと、津の市教育委員会では水泳を習っておかなければいけないということで、各学校に対して水泳指導をするように指示をしておったのであります。現場におきましても橋北中学校のほかに二校が交互水泳を実施するように市の委員会に届出があったのであります。市の委員会では現場調査しました上で、危険のない場所と認めてこれを承認いたしたのであります。そして赤旗標識をもちまして危険区域に出ないようにしておったのであります。市委員会では訓練中の現場を視察いたしまして、赤旗区域から出ないように重ねて注意をしておったということであります。水泳時間につきましても、 午前九時から十一時までの間が適当であるということでありまして、事故が起りましたのは十時五分ということになっております。先ほど言いましたように、現場一般海水浴に利用されておらないところでありまして、一般の人が海水浴をしますのは、さらにそれよりも南方千メートルくらいの海岸を使ってやっておったのであります。なお同校海水浴は十八日から始めまして、事故の起りました昨日は最後水泳訓練の日であって、遭難当時指導に当っておりました先生は十九名ということであったのであります。なお救助に当りました警察官消防団等は、警察官が二百四十名、消防団員が約百名、日赤の救護班三十一名、津の医師会救護班七十五名、以上が出ましていろいろと救助の手当をいたしたのでありますが、不幸にして多数の犠牲者を出した次第であります。
  9. 長井源

    長井委員 まだ詳しい報告が参っておりませんでしょうから御無理かも存じませんが、遭難当時は十九名の教師がどういうふうなことをしておったか、どういう位置におったかということはわかりませんか。
  10. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 ただいままでのところは、そこまでの報告が参っておりません。遭難当時の教師のおりました位置がどうであったかということは、まだ入っておりません。
  11. 長井源

    長井委員 なお遭難を発見いたしましてから以後とりましたところの処置について、新聞等の報ずるところによりますと、私は現地に詳しいものでございますが、わずかに二分くらいで三重大学の付属病院の距離にあるのであります。渡辺病院長は、病院に通知のあったのが一時間後であった、もう少し早く知らされたらば、こんなこともなかったものをという新聞記事を見ましたが、その救助に関する方法として何か御報告はありませんか。
  12. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 詳細につきましては、まだ参っておりませんが、警察も直後にすぐ連絡を受けるということでなく、若干時間が経過しておるようであります。警察も、どうも病院とか救急車なんかが出ておるようだが何だろうということで事態を調べたのが実情でございます。
  13. 長井源

    長井委員 現在のところ、それ以上こちらでは事実はわかっておらぬと思いますので、お尋ねしても無益だと思うのでありますが、実は濱地代議士のごときも私と同様でございますが、私ども伊勢の海に育ちました関係から、実は観海流を正課として覚えまして、私自身は観海流教師免状を持っておるわけでございます。そしてその水泳地域は、ただいま遭難のありました地域がほとんど限られた水泳訓練場でございますので、私どもとしては十分この海面その他を存じておるわけでございます。ことに岩田川という川がありますが、これは現地より少し隔たった陸続きの川でありますが、この川の向うがいわゆる有名な阿漕浦であります。この阿漕浦海水浴場もここと同様の状況にありますが、今から十年くらい前に、京都から参っておりました小学校海水浴生徒が、約二十名くらいだと思いますが、ほとんど同様の原因遭難をいたしておりまして、大へんな問題になったのでございます。その後も二、三今日まで新聞に伝えるところのよう原因遭難をいたしておるのがあるのでございますが、私はこの漕難事件を耳にいたしまして実に驚いたことは、津は海岸であり海水浴場でありますので、学校校長以下その指導者たちは、いずれも海になれておるはずでありますし、危険もわかっておるはずであります。また潮どきもわかっておるはずであります。それにもかかわらずかくのごとき大事件を引き起したということは、これは教師責任問題だと私は考えざるを得ないのです。この間これに対して考える余地がないのでございます。現にこの朝日新聞その他にも地図が出ておりまして、御承知でございましょうが、伊勢の海は非常に遠浅でありまして、     〔委員長退席山本(粂)委員長代理着席〕 はるかに姿が見えなくなるくらい、引き潮のときなどは沖へ潮が引くのでございますが、海岸のすぐのところは常に少し掘れるのでございます。ことに贄崎と申します一般海水浴場にいたしておりますところは、岩田川の砂の関係でこのことが比較的少くてよい海水浴場でございますけれども、現在遭難のありました中河原方面阿漕方面はこれは常にあるのでございまして、このことは教師においても、十分承知をいたしておらなければならぬところであります。それで、潮のかげんというようなこともございましたが、このときの潮は、新聞によりますると上げ潮でありますので、引き潮のときとは違いまして、沖合いに流されるということはまず少いところの潮のかげんでございます。それですから、そういう場合に水浴をいたしますときには、その穴のあるところを、教師がまず先に行って、ここは危ないということを示して、それから向うが遠浅になっておりますから、その深くなっておる場所を警戒する——われわれが水練の訓練をいたします場合でも、必ず初心者たちにはそうするのであります。そういたしませんと、ことに女の子などは、一たんぺちゃぺちゃと喜んで海の中に入っていくのでございますが、そこで急激に穴のようなところにぶつかりますと、足を浮かしてしまいましたら、それが最後で、その向うにはいかに浅瀬がありましても、浮んでしまいまして、それが遭難のもとになっておる。京都小学校生徒遭難のときも、同様なのでございます。別段荒い波が来たとか、特別な理由があったのではない。きょうの新聞に報ぜられたときと同様のことで遭難をいたしておるという経験——そんなに昔話でない、戦時中であったか、戦後であったか、とにかくこの十年くらいの間に、これも相当多数の遭難があったのはそのそばであります。そういうことは、津市に奉職いたしております教師は、体操の教師は申すまでもありませんが、他の教員も十分存じていなければならぬ問題なんです。それを不注意にも、想像いたしますると、子供を放してやって、しかも訓練最終の日でありますから、多少の泳ぎも覚えていたはずであるにもかかわらず、かような不始末をいたしましたことは、私は、これは実に教員責任問題だ、こう考えざるを得ないのであります。そこで教員責任問題となりますれば、文教方面におけるいわゆる文部省に大きな責任があるわけでございますけれども、私は、本件は、今日までの他の各種の引率教師の無責任な行動から遭難をいたしましたところの事例にもかんがみまして、単に文部省行政罰、その他今後は注意するんだとか、通達を発したとかいうような、そういう問題でこれは解決つく問題でない。それで、おそらく現地検察庁もその点については活躍をしておるものと思います。警察も動いておることとは思いますけれども、私はこの際、われわれの後輩である教育者を責めるような格好になることは心ならぬことでございますけれども、四十名に近い、子供をなくした親の心になって追究せざるを得ないのであります。どうか警察当局におかれても検察当局におかれても、これからは注意するということだけでこういう問題は解決のつく問題でないので、これはその責任を十分にとったという姿を見せない限りは、これはとうてい跡を断つことのできないものであります。それで私はこの法務委員会を通じまして、強く本件に関する責任者刑事訴追を要求するのであります。ことに最近の教育者教育界状況を見ますと、少しは反省の色もないということもございませんが、ことに私の県三重県などにおける教育者の現況を、私教育界の先輩として見ておりますと、実に驚くべき意外なことを多々発見するのであります。これが結局今日のような重大な過失を起すことになる。このことが軽々に過ごされて、もとより自分はこういうことを望んでおったのではないとか、自分は直接の責任があるのではないとかということで、こういう問題からのがれるということになりましたならば、これはもうとうていかくのごとき不祥事の跡を断つことができない、こう私は深く憂慮いたしておりますので、われわれ同僚とも相談いたしまして、その原因探究につきましては委員会においても取り調べるつもりでありますが、検察当局並びに警察当局におかれても、ぜひともこれが原因探究に十分尽され、そして責任者に対しては厳重な刑事処分をしていただくということを、私はこの際強く要求いたしておきたいと思うのであります。なおこの善後措置につきましては今後もこの問題が続けられるものと思いますので、検察庁なり法務省の取扱いに関しましては注目して拝見いたしておりますが、とりあえず事件自体重大性にかんがみまして、万遺憾なき急速なる原因探究責任の追究ということに御尽力をお願いいたしたい。私は選挙地盤でも何でもないのでありますけれども、郷里といたしまして存じております海と、それから水泳教育、この三つに関連しまして深く残念に思いますので、この質問をした次第であります。どうぞただいまの趣旨を十分御了承下さいまして御処置をお願いしたいと思います。
  14. 小泉純也

    小泉政府委員 ただいま長井委員から切々としておっしゃいましたことは、法務当局といたしましても、そのお気持、並びに今後の対策につきまして、全く同感でございます。御要望の通りすみやかにその原因究明責任の所在を明らかにいたしまして、全国の教職員に対する戒めともいたし、将来再びかくのごときことが起らざるよう政府といたしましても格段の努力と注意をもって対処いたしたいと存じます。
  15. 三田村武夫

    ○三田村委員 関連して。先般紫雲丸事件が当委員会で審議の対象になったことがありますが、そのとき私は一言申し上げたのですが、当事件も同じ観点から意見を申し上げて、当局の御意見を伺っておきたいと思うのであります。  こういう事件が起りますと、従来よく職務上怠慢がなかったとか、十分なすべき手続を踏んでおるとか、あるいは十分監督の手を尽したとか、こういう言葉でのがれやすいのであります。近ごろ、御承知の通り、あまりにも人命が粗末にされ過ぎております。毎日の新聞を見てもそうでありますが、紫雲丸事件でわれわれはまだあれだけ痛々しい記憶を持っておる。その上また四十何名の人が、しかも何らの責任のない人の命が失われたということは耐えがたいことであります。法務委員会といたしましては、所管違いであるかもしれませんが、事人命に関する限り関心なきを得ないのでありますから一言申し上げたいのでありますが、一つこういう際には、従来の捜査方針と申しますか、態度から十歩も百歩も前進されて、世間で何て大がかりだというくらいの態度で臨んでいただきたい。ただ所管検察庁が、従来やってきたような慣例で現場の検証をするというだけではなくて、この問題をとらえて、こういう悲惨な事故の跡を断たしめるためには徹底的な態度で臨んで、あくまでも原因を追及していただきたい。われわれも昔刑法の一ページも習ったのですが、原因のないところに結果はないのであります。この四十名のとうとい人命がどうして失われたかというその原因が必ずあると思う。この原因の追及ということは、単なる行政上の弁明や釈明で終るものではないのであります。事人命に関することです。しかも本人には何らの過失がない。監督者がついていてやっておるのでありますから、監督者責任があるにきまっている。あくまでも刑事上の責任にまでつながるものでありますから、大いに徹底的に、大がかりに捜査陣を張っていただきたい。世間の納得の行くように、こういうことが再び起らないように、当局も真剣な態度で臨んでおるのだという態度をお示し願いたいのであります。この機会にそれを強く申し上げて検察警察、両当局の御意見を伺っておきたいと思います。
  16. 井本臺吉

    井本政府委員 私どもも御意見全くごもっともだと存じます。本件につきましては、現地でも非常に緊張して調べを始めておるようでございますが、なお御趣旨の点を現地に伝えまして、一そうこの事件原因究明に努力いたしまして、御期待に沿うようにいたしたいと考えます。
  17. 椎名隆

    椎名(隆)委員 警察庁の方にお伺いいたしますが、これは津の市内の中学校に対して市の教育委員会から永泳を学ぶようにという通牒があって、橋北中学もやるようになったのですか。
  18. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 私の方に参っております報告はさように書いてございます。従って現場におきましては、橋北中学のほかに二校が交互水泳訓練を実施しておったようでございます。
  19. 椎名隆

    椎名(隆)委員 そうしますと、津市の橋北中学水泳をやるのがことし初めてだったのですか。
  20. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 その点ははっきりいたしておりません。おそらくさようではないと思います。
  21. 椎名隆

    椎名(隆)委員 そうすると、紫雲丸事件にかんがみて少くとも水泳をやらせなければいけないとするならば、市の教育委員会水泳専門先生を頼むのが普通だと思います。私たち中等学校時代水泳を学ぶときには、今まで中学校水泳先生がいなかった場合には、新しい水泳専門先生を頼んで教えていただいたのが普通なのであります。市の教育委員会においては水泳専門教師を頼んでいたかどうか、その点については報告がありませんか。
  22. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 その点はございません。ございませんが、場所につきましては委員会で相当詳細に現場調査の上、いろいろ赤旗の表示などをさせて水泳指導をしておるようであります。教師の点についてはただいまのところは報告がございませんのでわかりません。
  23. 椎名隆

    椎名(隆)委員 水泳場所は、いずれも一応場所調べ赤旗を立てておるのが普通であります。しかしこの橋北中学の十九名の先生の中にいわゆる新しい専門水泳先生がまじっておったかどうか、その点はわかりませんか。
  24. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 いまだ報告に接しておりません。
  25. 椎名隆

    椎名(隆)委員 水泳をやるときには、大体中等学校ではいわゆる独泳のできる、一人で泳いでも差しつかえないという上級生が何名かおって、そうして危険区域の方に出てはいけないといって張り番をしておるのが普通であります。もしかりにそういうような組織で赤旗を立てておる近辺並びにその周辺に入ってはならないということで、橋北中学校上級生でいわゆる独泳免状を持っておる生徒がいて監督していたならば、おそらくこういうことはなかっただろうと思います。そういうような点に対する報告はまだ来ておりませんか。
  26. 山口喜雄

    山口(喜)政府委員 まだ参っておりません。
  27. 椎名隆

    椎名(隆)委員 今回の事件は市の教育委員会通牒に接して学校側水泳をやっておったということから、市の教育委員会にも非常な手落ちがあると思うし、また学校側にも今回の事件には非常に手落ちがあるやに考えられますので、どうぞ厳重に御調査されるよう切にお願い申し上げます。
  28. 山本粂吉

    山本(粂)委員長代理 次に、本日の日程に掲載されております請願二十七件を議題といたします。なお請願審査に関しましては最高裁判所当局より出席して説明をいたしたいとの要求がありますので、国会法第七十二条第二項の規定によりこれを許可いたしたいと思いますが御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  29. 山本粂吉

    山本(粂)委員長代理 御異議なしと認めさよう取り計らいます。それでは請願審査を行いますが、請願審査紹介議員の御出席になっておるものにつきましては、その紹介説明を聴取し、紹介議員の御出席になっておらないものにつきましては、その内容は文書表によってすでに御承知のことと存じますから、直ちに関係当局意見を聴取いたしたいと存じます。  これより、日程第七は検察行政に関するものでありますので、これを議題といたします。まず紹介議員の説明を求めます。紹介議員濱地文平君。
  30. 濱地文平

    濱地文平君 私の紹介にかかる検察職員の職権乱用に関する問題でありますが、これはすでに文書をもって詳細に説明してありますから、ごらん下さった方はおわかりであろうと思いますが、もしこれが事実なりとしたならば、これはゆゆしい問題であると思うのであります。官紀紊乱の全国的なゆゆしい大きな問題として取り上げるべき性質のものであると思うのであります。しかしながら、また一面から考えてみますと、ささいなことも大きく考えていたずらに当局に迷惑をかけるような人物もなきにしもあらずでありますから、うっかりと直ちにこれを信じてやるということはできないだろうと思うのですけれども、私の知っておる範囲におきましてはこの請願者、つまり被害者として請願しておる本人福田三代太君は、かつて警察官吏でありましたけれども、非常に常識のある穏健な人物であります。この常識のある穏健な人物がかくのごとき激越なる口調をもちまして、検察官の職権乱用に対まて詳細漏らさざるところの理由を説明しておるとなってくると、必ずしもこれを一笑に付するわけにいかないと思うのであります。このときにおきまして、当局といたしましても、また国会といたしましても、これはどちらが事実であるかということにつきまして、被害者として請願した人の立場、あるいはまた職権を乱用したと称せられる人の立場、これはどちらにしたところで両方ともの立場をはっきりと鮮明にして、そうして初めて民衆に対して事実を明らかにして安堵せしめる責任があると思うのであります。よって十分御調査御検討せられまして、もしこの事実がありとしたならば、これはゆゆしき官紀紊乱であると思いますから、徹底的に善処していただきたいと同時に、またこれが言うほどの問題でないとしたならば、検事及び警察官吏のために汚名をそそいでやる必要もあると思うのであります。何分にも徹底的に御善処下さらんことをお願いいたしまして紹介の任を解く次第であります。
  31. 山本粂吉

    山本(粂)委員長代理 次に政府当局の説明を求めます。
  32. 小泉純也

    小泉政府委員 ただいま濱地議員より御紹介のありました新宮地区検察当局者等職権乱用に関する請願につきまして、今日まで当局調査いたしました本件に関する事情を御説明申し上げます。本件請願者福田三代太が和歌山地方検察庁に対して告訴、告発した事案は、塩見四郎、谷畑与三郎等八名を犯人とする森林窃盗、同幇助、詐欺、同未遂、横領、有価証券偽造行使、印章偽造、証憑隠滅、背任及び威力業務妨害等十種の罪名にわたる延べ二十四個の犯罪事実にわたっておりますが、同地検新宮支部において、この告訴、告発事件を捜査中、さらに昭和二十八年六月二十八日大阪高等検察庁に対しまして、新たに谷畑与三郎及び谷畑新一について詐欺未遂の事実ありとして告訴して参ったのであります。これらの事件のうち、和歌山地方検察庁新宮支部が受理した塩見四郎及び谷畑与三郎等八名にかかる告訴、告発事件については、同庁において昭和二十九年七月十九日中止処分、すなわち犯人の所在不明の理由によりこれ以上捜査を継続し得ないための中止処分、または不起訴、すなわちある事実については犯罪とならず、ある事実については犯罪の嫌疑なしとの処分に付し、他方大阪高等検察庁が受理した谷畑与三郎及び谷畑新一の両名にかかる詐欺未遂告訴事件は、当時和歌山地検新宮支部で捜査中の前記告訴、告発事件と一連の関係があり、むしろその事件の根幹ともなるべき事案であることにかんがみまして、これを和歌山地検に移送することなく、直接同高検の検事を主任とし、慎重取調べを進めたのでありますが、その結果、これも昭和二十九年十一月九日に至り、犯罪の成立を認めるに足るだけの証明なく不起訴処分に決したのであります。  これらの多数の告訴、告発事実の基礎ともいうべき事案の概要について多少御説明申し上げたいと存じますが、およそ次のような次第であります。すなわち、本件請願者福田は、昭和二十七年八月ごろ尾崎某より和歌山県東牟婁郡下の山林立木を買い受けたのでありますが、その後昭和二十七年十二月中旬ごろ、この尾崎の仲介によって塩見四郎に対しまして、この立木を二百五十万円で売却するという契約をなし、本件福田は二十八年二月までに五回にわたりこの塩見から九十万円を受領していたのであります。しかしながら、この十二月中旬に本件福田と塩見の間に結ばれました契約には、込み入った条件が付されており、さらに、その後二十八年一月には、その条件の内容も変更されており、こういう複雑な事情が錯綜しておりますので、さきの契約が売買契約の予約であったと見るべきか、売買の本契約であったと見るべきか、あるいはまたこの立木の集団についての所有権は依然として本件福田に帰属して、いたものとみるのが相当かなどの点につきまして、業界の慣習その他に照らして困難な問題を腹蔵しておったのでございます。  その間にあって、昭和二十八年二月中旬、谷畑与三郎は、この立木について所有権を有するという塩見から百九十五万円で買い取ったのでありますが、谷畑自身は、塩見と本件福田との間のただいま申し上げましたような複雑な事情を詳細に知らなかったため、問題の立木は自己の正当な所有に帰したものとして、二十八年六月中旬ごろから八月中旬ごろまでの間、塩見四郎とともに同立木集団の素材約四百石を山から搬出したのであります。これに対しまして本件福田は、その立木は自分の所有に帰属するものであるから谷畑与三郎及び塩見四郎等の行為は森林窃盗であるとなし、冒頭申し上げましたように和歌山地方検察庁に対し、この事実を含む多数の事実について告許、告発をいたしたのであります。  他方谷畑与三郎及びその息子新一は、その立木は塩見から適法に買い受けたもので、同人等の経営する会社の所有に帰しておるとの見解に基き、裁判所に対し、右の立木及び素材の所有権の確認訴訟を提起——この民事訴訟はいまだ係属中——したのでありますが、これに対しまして、本件福田は、谷畑親子はこの立木の所有権が塩見にも移っておらず、自然塩見から所有権の移転などということもあり得ないことの事情を知りながら、ことさらに裁判所に虚偽の事実を主張し、誤まった確認判決を得、それによって福田の立木及び素材を騙取しようとしたものであるとなし、詐欺未遂の告訴を大阪高等検察庁に提起したのであります。そこで大阪高等検察庁におきましては、これらの立木及び素材をめぐる事情を捜査し、あらゆる観点からこれを検討いたしたのでありますが、その結果によりますと、本件の立木、素材の所有権はやはり本件福田に帰属し続けていたものと認めるのが相当であるが、高度の法律知識を有せず、かつもっぱら塩見を相手方として行動していたにすぎなかった谷畑親子について、当時塩見が本件立木、素材の所有権を取得していなかったものであるという事情を知っていたと認めるに足る証拠がないというのであります。従いまして、谷畑親子につきましては、詐欺の犯意がなく、犯罪の嫌疑がないとして不起訴処分とされたのでございます。  他方、塩見自身につきましては、本件福田との取引の経緯から見まして、福田から本件立木、素材の所有権の移転をいまだ受けていないことを承知していた疑いがありますが、同人は昭和二十九年一月ごろから所在不明となり、その点について同人を取り調べることができない事情にあるのであります。従いまして、和歌山地検新宮支部におきましても、塩見が本件福田所有の素材を搬出窃取した事実及び塩見が福田所有の立木、素材を自己の所有と偽わり谷畑親子をだまして金員を詐取したという事実等につきましては、同人の取調べをなし得ぬ以上、その犯罪の成否は断定し得ない関係にありますので、これらの件につきましては、塩見の所在の判明するまで起訴を中止する処分にいたし、以後継続してその所在を捜査いたしておるのであります。以上の捜査過程におきましては、地検、高検を通じ、きわめて詳細、綿密な取調べ検討がなされ、その間本件請願のごとき、告訴、告発人に対する圧迫、あるいは検察官の職権乱用等があるかのごとき疑いを差しはさむような事実は、一点も存しておらないのでありまして、正当な捜査であり、かつ、正当な処分であったと申し上げざるを得ないのでございます。  なお、福田は別に法務大臣及び検事総長に対し、この捜査に関係ある検察官数名を懲戒処分に付すべき旨の陳情書を提出しておるのでありますが、この陳情は後に取り下げられておることも付言いたします。
  33. 山本粂吉

    山本(粂)委員長代理 何か御質疑はございませんか。
  34. 濱地文平

    濱地文平君 ただいまの御説明は一方的の御説明として私は承わっておきたいと思いますが、そのお調べはだれによって調べられたものであるか、ちょっと承わっておきたいと思います。
  35. 井本臺吉

    井本政府委員 現地検察庁の係員か主として調べたものと思います。
  36. 濱地文平

    濱地文平君 この告発人福田の言い分を見ますと、検察当局及び警察当局にいかにお願いをしましても、職権を乱用して圧迫をして、そうして片方の告発せられておる者とはあるいはごちそうをともにしたり、そのほかのことがあると福田が言うておるのでありますが、御当局調べはその片方の告発せられた方面からのお調べだけでありまして、事実において福田からのお調べはないように思っております。それですからほんとうに公正にお調べするのでありましたならば、もっと違う方側から実情をお調べにならぬと片手落ちになるのではないかと思うのでありまして、もしこれが片手落ちであっし、福田というのは正真正銘のまじめな人間であり、ほんとうに職権を乱用されて圧迫せられて、こういう目に会っておるのだとしますと、今のよう当局処置では一方的処置でありまして、彼らのために苦しめられておる良民はだれに向って苦しみを訴えてよいかわからぬことになっていくのであります。ですからこれにはすでに検察当局及び警察当局は悪いことをしておるのである、そうしてわがはいを圧迫しておるのである、こういってその調査をして下さいといっておるのでありますから、告発せられておる人に聞いたって何ら権威はない。違う方面からよく御研究をして下さって、そうして正しきものなら正しきものなり、間違っておるものは間違っておるものなりということをはっきりと納得するようにしてやっていただきたいということを、いわゆる民主主義政治下における民衆の声の代表として私は申し上げておきたいのであります。何分にもその点におきましては、十分御考慮を願いたいし、また私は今後の推移につきましては、十分これを監視いたしまして、あくまでも訴えるものは徹底的に訴えたいと思います。このことを申し上げておきまして、私の紹介責任を果す次第であります。     —————————————
  37. 山本粂吉

    山本(粂)委員長代理 次に日程第二、第九ないし第十一はいずれも裁判所の庁舎に関するものでありますので一括して議題といたします。当局意見を求めます。
  38. 磯崎良誉

    ○磯崎最高裁判所説明員 請願四件のうちの青森県の五所川原支部と秋田県の湯沢支部につきましては、三十年度予算におきましてその庁舎の基礎工事とコンクリート打ち工事のできますだけの処置ができております。三十一年度予算におきまして残る工事の予算を獲得いたしまして、三十一会計年度末までには両庁舎は完成することになっております。  次に福島家庭裁判所の庁舎につきましては、庁舎がすでに相当古くなっておりまして、地元側から改築の御要望もあります御趣旨はきわめてごもっともと存じますが、ほかになお戦災の庁舎が多数残っております。福島は古くなっておりますけれども、なお修繕を加えまして、しばらくは使えるというふうな状況でありますために、順序があとになっておりますけれども、これにつきましても、順次予算措置を講じまして、地元の御要望に沿うように努力いたしたいと存じております。
  39. 山本粂吉

    山本(粂)委員長代理 何か御質疑はございませんか。——なければ次に移ります。     —————————————
  40. 山本粂吉

    山本(粂)委員長代理 次に日程第十二、第二十第二十五はいずれも裁判所の設置に関するものでありますので一括議題といたします。当局意見を求めます。
  41. 小泉純也

    小泉政府委員 第十二の鷹巣町に簡易裁判所設置請願について申し上げます。ただいま問題になっております秋田県北秋田郡鷹巣町に簡易裁判所を設置されたい旨の請願趣旨は十分了解いたしました。秋田県北秋田郡は全郡大館簡易裁判所の管轄になっているのでありまして、交通その他の不便の事情は了解されるのでありますが、予定区域内の事件数も現在のところでは比較的僅少であるばかりでなく、本請願は第十六回国会の参議院で採択された同郡米内沢町の請願と競願のかたちとなっており、かつ、国家財政上の制約もきわめてきびしい現状でもありますので、早急に希望に沿うことは困難かと思われますが、最高裁判所とも協議いたしまして、なお十分研究いたしたいと存じますから、さよう承知をお願いいたします。  次に山口宇部市に山口地裁宇部支部等設置の請願でございます。裁判所支部の設置に関する事項は、最高裁判所の権限に属しておりますので、本請願趣旨を最高裁判所に伝達し、十分の考慮を煩わすことにいたしたいと存じますので、さよう承知をお願いします。  次に三本木市に青森地方裁判所支部設置請願でございます。裁判所支部の設置に関する事項は、最高裁判所の権限に属しておりますので、本請願趣旨を最高裁判所に伝達し、十分の考慮を煩わすことにいたしたいと存じますので、さよう承知をお願いします。
  42. 山本粂吉

    山本(粂)委員長代理 何か御質疑はございませんか。——なければ次に移ります。
  43. 山本粂吉

    山本(粂)委員長代理 次に日程第十七、十九、二十一及び二十三はいずれも売春等処罰法制定促進に関するものであります。これを一括議題といたします。当局意見を求めます。
  44. 小泉純也

    小泉政府委員 売春問題、人身売買等の問題につきましては、政府といたしましても、これが社会風致上黙過し難い現状にあるのにかんがみ、早急にこの問題に対する総合的対策を樹立する必要があるものと考え、前内閣の方針を踏襲し、前内閣当時設置された売春問題対策協議会の早急なる結論を求めて参ったのでありますが、近くその最終結論が答申されることと相なっておりますので、これらの意見も十分尊重し、また衆議院法務委員会における今回の決議に基き、新たに売春対策審議会が内閣に設けられた場合には、これらの意見もあわせて十分検討し、すみやかに総合的施策を樹立いたしたいと考えている次第であります。
  45. 山本粂吉

    山本(粂)委員長代理 何か御質疑はございませんか。——なければ次に移ります。     —————————————
  46. 山本粂吉

    山本(粂)委員長代理 次に日程第一、第四、第五、第十三ないし第十六及び第二十四はいずれも戦犯に関するものでありますので、一括して議題といたします。政府委員意見を求めます。
  47. 小泉純也

    小泉政府委員 ただいま議題となりましたものは、全部巣鴨刑務所在所戦犯者の釈放等に関する請願でございますので、一括してこれに対する当局の見解を申し上げます。  平和条約の発効に伴い、日本政府に移管された巣鴨在所者九百二十七名、その後モンテンルパ、マヌス等から巣鴨に送還された者は二百十七名でありますが、これらの人々は平和条約の規定により、わが方の勧告と関係国の同意とによって出所を許されることとなっておりますので、政府は従来から機会あるごとに関係者に対して全面赦免の勧告を行うほか、個々の人について一回ないし数回の仮出所または赦免、減刑の勧告を行い、熱心に出所の許可を求めて参ったのであります。これによりまして、中国関係九十一名、比国関係五十六名、仏国関係四十二名はすでに全部解決し、現在は米国二百十名、英国八十名、オランダ百三十三名、豪州百四十九名及び極東関係七名、合計五百七十九名となっております。戦後十年を経た今日なおこのように多数の同胞を戦争犯罪人の名のもとに拘禁することを余儀なくされておりますことは、国際平和を念願する政府といたしましてまことに遺憾に存ずるところであり、本人の苦悩はもちろん、家族の困窮に思いをいたしますとき心からの同情を禁じ得ないのであります。  わが方の熱望にもかかわらず、関係国が容易に全員の釈放を許可してくれないのは、多くはそれぞれの国の政府が自国民の世論の動向をおもんばかって全面釈放をちゅうちょしているものと想像されるのでありますが、昨年米国政府は仮出所適格性取得期間の短縮を認め、さらに最近では従来大統領が保有していた仮出所減刑の決定権を戦争犯罪人仮出所委員会に移譲する等相次いで緩和措置をとるに至り、これによって去る五月三十八名が仮出所を許され、その後もほぼ定期的に数名ずつ出所を許されているのであります。そのほか、最近一、二の国におきまして日本人戦犯釈放の機運が高まってきているように考えられる向きもありますので、政府といたしましては、この機会を逸することなく、条約による正式な勧告及び勧告を裏づける追加資料の送付に努めるほか、従来の諸方策をさらに強力に推進して、在所者及びその家族の窮迫せる実情を宗教その他の民間諸団体を通じて全世界の人々に訴える等、戦犯釈放に関する世界の世論を喚起するとともに、関係国の日本人戦犯に対する国民感情の緩和をはかり、もって請願の御趣旨に沿い、全戦犯の早期釈放を実現するため最善の努力をいたす所存であります。
  48. 山本粂吉

    山本(粂)委員長代理 何か御質疑はございませんか。——なければ次に移ります。     —————————————
  49. 山本粂吉

    山本(粂)委員長代理 次に日程第二十六を議題といたします。本請願刑事訴訟法の改正に関するものであります。政府当局意見を求めます。
  50. 小泉純也

    小泉政府委員 刑事訴訟法第二百六十条を改正して告訴人等の請求により不起訴理由を告げる場合には必ず書面をもってしなければならないとせられたいとの御趣旨はごもっともでありますが、場合により口頭で告げる方が意を尽し、告訴人等の納得の得られる場合もありますので、現行法は告知の方式につき特別の規定を置かず、場合により適宜の方法を取り得ることとしているのであります。従って現在これを必ず文書により告知すべきことと改正することは考えていないのであります。しかしながら御趣旨については十分研究したいと存じます。  なお本請願中後半の部分の御趣旨が不明でありますが、いわゆる人権じゅうりん事件については裁判所に不起訴処分の当否の審査権があり、また一般には検察審査会において不起訴処分の当否の審査をし、不起訴処分を相当でないとするときは、検察庁の長に勧告をすることができることとなっておりますので、御希望の点はこれにより十分満たされているものと考えておる次第でございます。
  51. 山本粂吉

    山本(粂)委員長代理 何か御質疑はございませんか。——なければ次に移ります。     —————————————
  52. 山本粂吉

    山本(粂)委員長代理 次に日程第六を議題といたします。本請願借地借家人組合法制定に関するものであります。政府意見を求めます。
  53. 小泉純也

    小泉政府委員 借地人及び借家人に対する地主及び家主の立ちのき要求や賃料値上げの請求は、もしこれが不当なものであれば、借地法、借家法、地代家賃統制令等の規定によっても認められないところであり、その他の点については、借地人及び借家人の権利は現行法令のもとにおいて強力な保護を受けており、借地人または借家人がその共通の利益を擁護するため団体を結成し、その代表者等が構成員たる借地人、借家人の委任を受け、その代理人として借地、借家の条件等に関し地主、家主と交渉し締約することは現行法のもとにおいてもなし得るところであります。現在の情勢のもとにおいては、請願趣旨ような特別の立法をするのは適当でないと考えるのであります。
  54. 山本粂吉

    山本(粂)委員長代理 何か御質疑はございませんか。——なければ次に移ります。     —————————————
  55. 山本粂吉

    山本(粂)委員長代理 次に日程第二十二を議題といたします。本請願は農民の均分相続に関するものであります。政府当局意見を求めます。
  56. 小泉純也

    小泉政府委員 法務省所管に関する事項についてお答えいたします。法務省におきましては、法制審議会において民法の改正について目下検討中でありまして、農家の相続に関しましても、本請願で指摘されているような点をも含めて十分に検討されることと考えております。
  57. 山本粂吉

    山本(粂)委員長代理 何か御質疑はございませんか。——なければ以上をもって質疑を終了いたします。     —————————————
  58. 山本粂吉

    山本(粂)委員長代理 次にお諮りいたします。本日の請願日程中第一ないし第五、第七ないし第二十一及び第二十三ないし第二十七はいずれも採択の上内閣に送付すべきものと決定、その他のものはその決定を留保いたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  59. 山本粂吉

    山本(粂)委員長代理 御異議なければさよう決定いたします。  なお報告書の作成等は委員長に御一任を願います。     —————————————
  60. 山本粂吉

    山本(粂)委員長代理 この際閉会中審査に関する件についてお諮りいたします。閉会中審査事件といたしまして、一、裁判所法の一部を改正する法律案、二、裁判所の司法行政に関する件、三、法務行政及び検察行政に関する件、四、人権擁護に関する件、五、交通犯罪に関する件、六、戦犯服役者に関する件、七、売春問題に関する件については閉会中もなお審査を継続するためその旨を議長に申し入れたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  61. 山本粂吉

    山本(粂)委員長代理 御異議なしと認め、さよう決定いたします。  なお申入書の作成については委員長に御一任を願います。なお閉会中審査事項等については字句の修正等必要な事項がありましたら、委員長に御一任願うことにいたしたいと存じますので、御了承願います。  この際、委員派遣承認申請に関する件についてお諮りいたします。すなわち、先ほどお諮りいたしました閉会中審査の申し出が議長において許可になりました場合は、その調査事項につき現地委員を派遣して調査いたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  62. 山本粂吉

    山本(粂)委員長代理 御異議がなければさよう決定いたします。  なお、派遣委員の人選、日時等の諸般の手続は、委員長に御一任を願っておきます。  本日はこれにて散会いたします。     午後零時三十一分散会