○
戸叶委員 私は
日本社会党を代表いたしまして、ただい
議題となっております
売春等
処罰法に対しまして心からなる
賛成の意を表するものでございます。
この
法案はすでに多くの
議員から述べられました
通り今回で第五回目でございます。しかしこれまで
提出せられましたときと環境が非常に異なっているのでございます。今日この
法案を
通過させてほしいという世論は全国に高まり、
婦人団体の涙ぐましいところの運動が行われ、また青年の方々からはこの
法案を
通過させよという非常に激励の言葉を私は受けているのでございます。さらに過ぐる十五日におきましては、ぜひともこの
法案を通してほしいという一
婦人の犠牲さえあったのでございます。この
婦人は
反対と思われる人、あるいはまた
賛成の人にまでも強力に働きかけまして、この
法案を早く通してほしいというので、その運動に出かけて参りましたが、遂に熱心のあまり脳溢血で倒れました。しかしこの
婦人が意識を回復いたしましたときにまず言われたのは「審議未了でありましたか」こういうようなまことに胸を打たれる言葉であったのでございます。さらに「正義が通るような世の中に早くしていただきたい」この言葉を私はとうてい忘れることができないのでございます。このような
法律の運命を持っておるにもかかわらず
反対の方方があるということを考えましたときに、私はまことに残念でたまりません。特に
反対論者はこう言っております。まず第一にこの
法案を通しても更生施設がないからたくさんの
売春婦の人たちがすぐに路頭に迷うではないか、こういうことを言われているのでございます。全くその
通りでございまして、私
どももこの更生の問題を考えないのではございません。けれ
ども同時に考えられますことは、政治というものによって一歩々々世の中がよくなって行くのでございます。そう考えましたときに、私
どもはまずここに見られることは、たとえば今日失
業者はちまたにあふれておりまするけれ
ども、そのごく
少数の人しか職につくことができませんし、また結核患者ですぐ病院に入らなければならない人が百三十七万人あるにもかかわらず、二十万ベットしかないという
状態でございます。しかるにこの
売春婦の問題だけに対しましては、完全な救護ができないから、まずそういうような理屈をつけながら何ら手を下そうとしない。
売春そのものに対しての
反対をしているということはとうていその人たちの中に見出されないのでございます。この
法案を通すならば、かえってそういう人たちに対する対策としての予算がとりやすいではございませんか、なぜその点を考えられないのでございましょうか。厚生大臣の言われたことは、この
法案が
通過するならばただちに予算的措置を考える、こうはっきりと
答弁せられておることを見ましても、私
どもは心配はないと思うのでございます。さらにまた
法務大臣が言われましたことは、多くの人たちが支持され、そうしてまた
議員の皆さん方から
提出せられた、りっぱな
議員の方から
提出せられたのであるから私はこの
法案の
通過を望みますと、はっきりこの
委員会で言われておるのでございます。にもかかわらずこの
委員会に臨んでおりますと、なお
反対論者があることを私はまことに残念に思うのでございます。もしこの
法案に悪い点があるならば、その悪い点を指摘してそうして修正をして、この
法案の
通過のために
努力すべきであると思うのでございますが、何らその
努力を払わずして、いたずらにこの
法案が悪い悪いと言うだけで、私
どもはどこが一体どう修正されていいかということさえも語られておらないという点をまことに残念に思うものでございます。世間では今日民主党、自由党はまことに不思議な政党だと言っております。それは多くの人たちが陳情に参りまして、一人々々の
議員に当ってみますと、この
法案はぜひ
通過しないと困ったものだ、
売春は
社会悪であるということを一応きめることがなぜ悪いのだろうか、
日本が国際
社会に入るにもこの
法案は必要だ、こういうふうな積極的な
意見を説かれておるのでございます。ところが今日この
委員会で見ますように、さて党を背景として立たれる方はそこに
反対の
意見を出されておるのでございます。一人一人の
意見が
賛成でありながら、しかもその
法案に対しまして
反対というふうな線が出てくる、こんな類例はあまりないでございましょう。これを考えてみましたときに、私が先ごろ聞かされたことは、ある人たちはいわゆるこの
法案を通してほしいという陳情者に対しても
賛成をし、また赤線を残してほしいという
業者に対しても
賛成をした、こういうふうな両方サインをした人さえたくさんあると言って聞かされたことが事実でありはしないかということを疑わざるを得なくなってきたのでございます。また先日、この制度をなくすことは、年をとった人よりもむしろ青年にとって気の毒なことではなかろうか、こういうふうな
意見を言われた人もございました。私は先ごろ中央大学の若い学生さんの前でこの問題について問題を提示いたしました。ところが集まった若い青年が異口同音に言われたことは、なぜこの
法案が
通過しないのですか、この学生の
会議の決議としてもぜひこの
法案の
通過を望むと言って、私はかえって激励せられてきたのでございます。こういう点から考えてみましても、お年を召した方方の、青年に対してこの制度を残しておいた方がよいのではないかというような同情的
意見は、かえって青年にとって迷惑であるということを私ははっきりここに申し述べておきたいのでございます。また聞くところによりますと、今日何か
審議会というようなものをここに作ろうとしていられるということを聞いているのでございますが、これは私は
自分たちの
責任をこの
審議会に転嫁しようとするのではないかと思うのでございます。
売春処罰法を通すべしという世論があまりに高まっておりますために、この世論に対して何らかの返事をしなければならない、ここでうまく
審議会をつくって体をかわしてそうして逃げようと苦慮した結果こういうふうな
考え方を出されたのではないか、こう考えざるを得ないのでございます。私は天下の公党であるならば、もっと正々堂々とはっきりこの制度を認めたい、
業者を支持したい、こう言われるならば堂々とその
意見を出されるべきであって、いたずらに
審議会にその
責任を転嫁しようとするような態度は、まことにひきょうな態度であるといわざるを得ないのでございます。
日本は今国際
社会の仲間入りをしてだんだんに国際的の地位を確保しつつあるのでございます。にもかかわらず相変らず
日本は
売春国であるという汚名を着せられ、そうしてその汚名を取り除こうともしません。その人たらは、私は口ではいかに
文化国家の建設を唱えても、決して
文化国家建設に当る資格がない、こう言わざるを得ないのでございます。今日ここに超党派で出された
法案が何ら修正もされないで、そうしてある人たちがいわゆる応対をしながらうやむやにされるということは、全く国会の審議権を軽視するものでありまして、どんなに弁解をしてみましても、どうもその方々の態度というものに対して私は不明朗なものを感ぜざるを得ないのでございます。
今日盛り上ってきているところの進歩的な人たちあるいは
婦人青年は、かたずをのんで今日のこの
委員会の結果を見守っております。もしこの
法案が否決せられるようなことがありましたならば、その人たちの憤りというものはさらに倍加せられまして、この
法案が
通過されるまであくまで目的貫徹のために戦うということを強く誓うでございましょう。この
法案に
反対する方方はどうぞもう一度胸に手を当ててようくお考え下さいまして、恥かしくないような
結論をお出しになるためにも、今からでもおそくはございません、どうぞこの
法案に
賛成されることを心から希望をいたしまして、私のこの
法案に対する
賛成の討論にかえる次第でございます。(拍手)