○川崎国務大臣 ただいま
お尋ねの問題は、わが国における社会不安の
事情並びに今日の社会
事情からいたしまして最も根幹に触れた御
質問だと思うのであります。
売春をなくそうということに対しては
趣旨は私は賛成であり、この
法案が通過いたしました後における措置につきましては、各種のことを想定いたしまして厚生省としてももちろん準備を進めているわけであります。検討を加えつつあるわけであります。しかしながら、これがどの
程度実際に取り締られて、そして送検されるかということにつきましては、法務大臣の御
答弁によりますれば、直ちにそう大きな変化はないであろう、こういう御
答弁のようであります。
法案が通過して、厳格にこれを実施する、
取締りも厳格であれば、それに対する救済保護の
施設も厳重にとり行うということになりますればとにかく、労働省の発表した
売春状況に対する白書によると五十万人もいるわけでありますから、これを一挙に救済措置をいたそうとしても、わが国の財政としてはとうていこれを保ち得る財政措置並びに経済措置はできないと言明しても私は間違いでないのではないかと思うのであります。
この問題と関連いたしまして、少し所見を述べさしていただくならば、社会保障制度が完備をしておらないからこういう状態になってきたことは事実であります。わが国の貧弱なる経済環境並びに社会保障制度に対する十分なる施策が行われておらないために、かような悲しむべき
事情が起っていることは事実でありますが、社会保障制度を完備させない経済
状況もまたあるのでありまして、その点はわれわれは敗戦下における特殊の
事情ということも割引をして
考えてみなければ、今日のこの
売春問題に対する基本的な問題にも対処できないのではないか、またかりに——
先ほど来花村大臣はきわめて抽象的にむしろ世界各国の
事情を申し述べられました。これは
戸叶委員などもそうでありますが、私なども最近数回にわたって海外へおもむき、かつその
方面の
事情も社会保障制度と関連をいたしまして多少は見ているものでありますが、一九四五年に社会保障立法が発案をされ、完成をされ、世界の模範国であるといわれるイギリスにおいて、
売春婦は逆にふえているというような実情がロンドンにおいて現われていることは、すでに各新聞報道によって報道されている事実を見ましても、御承知の
通りであります。こういうような実情もありますので、われわれとしては社会保障制度並びに社会
施設を完備することによって、こういうものをなくしたいという気持はもとよりでありますが、事実は事実として、諸外国における実情なども十分に見てみなければならぬということも言えると思うのであります。しかしただいま
お尋ねの点は予算と関連のあることでありますから、明確にお答えをいたしますが、先般国警が調査したところによると、この
売春処罰法なるものが
成立をいたしました後においては、年間五万人を送検する、こういうことであります。従って五万人を送検するということになりますれば、厚生省としてはこれに対する措置をいたさなければならぬ。それには先般来申し上げておりますように、
婦人相談所あるいは
婦人ホーム、さらにはその他の住宅
施設を設置をいたしまして、およそ八十億の予算が年間にとれればいいということになります。従ってこの
法案が七月三十日までに両院を通過して
成立をするということになりますれば、かりに一カ月置きましても九月から実施をされるということになって、あるいは
法律の従来の例は即日公布でありますから、即日公布となりましても、本年はまず半年間の費用の補正予算を急速に組まなければならぬ、その補正予算を組む財源は、今の政府には今年の予算に関する限りは余裕がないであろうというふうに、私は大蔵大臣ではありませんけれども、観測をいたしております。従いましてこの
法律が実施をされましても、それに対する完全なる救済
施設を整備をいたしますのは、当然
昭和三十一年度予算に厚生省予算として要求をし、これを実施することになると思います。その際におきましてはもとより、年間五万人というものが内閣において到達したる救済の最低限の人数であるということになりますれば、八十億は来年度予算において要求するつもりでございます。そういうような予算措置と、いま
一つの問題の点は、こういうような場合に家族の問題が起ってくるではないか、花村法務大臣が
法律の施行によってそう大きな混乱が起らないと言うのは、
取締り状況その他においてすぐ法を厳守して、しかもそれに伴って急速に検挙するという形で果して実施をできるかどうかということについてのお
考えであったと思うのでありまして、決して家族の問題というようなことについての御
答弁ではなかったと思うのであります。そういたしまするとこれはかなり重大な問題でありまして、家族の救済ということにつきましてはもとより生活保護法その他のものがありまするけれども、今日の生活保護の予算では十分カバーし切れるとは言いにくいと思います。