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1955-07-12 第22回国会 衆議院 法務委員会 第35号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月十二日(火曜日)     午前十一時五分開議  出席委員    委員長 世耕 弘一君    理事 古島 義英君 理事 三田村武夫君    理事 馬場 元治君 理事 古屋 貞雄君    理事 田中幾三郎君       椎名  隆君    長井  源君       林   博君    松永  東君       生田 宏一君    神近 市子君       細迫 兼光君    淺沼稻次郎君       佐竹 晴記君    戸叶 里子君       細田 綱吉君    志賀 義雄君  出席政府委員         警  視  長         (警察庁刑事部         長)      中川 董治君         総理府事務官         (自治庁選挙部         長)      兼子 秀夫君         法務政務次官  小泉 純也君         検     事         (刑事局長)  井本 臺吉君         法務事務官         (人権擁護局         長)      戸田 正直君  委員外出席者         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小林 貞一君     ————————————— 七月十二日  委員横井太郎君辞任につき、その補欠として牧  野良三君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  法務行政に関する件  人権擁護に関する件     —————————————
  2. 世耕弘一

    世耕委員長 これより法務委員会を開きます。  本日は、法務行政に関する件、及び人権擁護に関する件について調査を進めます。質疑の通告があります。これを許します。佐竹晴記君。
  3. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 まず法務省の刑事局長お尋ねをいたします。前回、本年四月に行われた徳島市の選挙関係して、投票用紙のすりかえをいたしました事件が起っておりまして、お尋ねいたしましたところ、由利武雄外二十一名の不正の事実が上って、取調べ中の旨の御説明がありました。その後十分お調べを願ったことと存じますので、その事件の全貌を御説明いただきたいと存じます。
  4. 井本臺吉

    井本政府委員 お尋ねの点につきまして概要を御説明申し上げます。  最初に、本件について起訴になった事実をごく簡単に申し上げます。第一が由利武雄関係ですが、由利武雄徳島市役所衛生課書記であり、     〔委員長退席古島委員長代理着席昭和三十年四月三十日に旅行されました徳島市の市会議員選挙に際しまして、同月三十日の投票当日徳島佐古第一投票所において、翌五月一日開票日徳島市の第二開票所において、選挙事務補助者と果て出入していたものであり、山内安高は右の選挙に立候補して落選をした者、それから由利直衛深谷政一、この両名は山内安高選挙運動者であったわけでありますが、(一)由利直衛由利武雄、この両名が共謀しまして、昭和三十年四月三十日徳島市南佐古町九丁目佐古第一投票所投票事務従事中に、同市の選挙管理委員会所有市会議員選挙投票用紙五十枚を盗み取ったものであります。  それから(二)山内安高深谷政一は、共謀の上で昭和三十年四月三十日の徳島市鮎喰町一丁目二百十一番地の山内安一方におきまして由利直衛から同人が盗み取りました徳島会議員選挙投票用紙約五十枚を盗んだ品であるという情を知りながら交付を受けて贓物を収受したものであります。  (三)由利直衛由利武雄山内安高深谷政一、この四名が共謀の上、そのうちの由利武雄昭和三十年五月一日徳島市庄町五丁目加茂名小学校内の徳島市第二開票所におきまして開票事務従事中に、山内安高の氏名を記載しました市会議員投票用紙約四十三枚を投票中に混入しまして、もって投票数を増加したものであります。  それから第二の事実、前坂正七由利直衛昭和三十年四月三十日、先ほど述べました佐古第一投票所におきまして、投票用紙五十枚を窃取し、現に徳島地方検察庁におきまして捜査中であるということを知りながら、昭和三十年五月二十日ごろから二十八日までの間、阿波郡林町岩津百七十七番地の自宅の二階に泊らせて犯人を蔵匿したものであるというのが第二の事実であります。  それから第三、浜利喜雄、これは徳島市の選挙管理委員会事務局選挙係長であります。この浜利喜雄は部下の市役所書記三名と共謀しまして、昭和三十年五月一日、先ほど述べました第二開票所におきまして、昭和三十年四月三十日施行市会議員選挙開票軍務従事中、市会議員選挙投票約五十枚を抜き取りまして投票数を減少し、なお浜利喜雄徳島職員組合連合会書記長を兼ねて、連合会出納事務並びに金員の保管などの事務を担当する者でありますが、昭和二十八年六月、徳島市幸町徳島市役所内徳島職員組合連合会事務所におきまして業務保管にかかる組合所有の金の中から一万円を着服横領したものであります。  第四、米延保之須本文武、これは徳島市役所書記でありますが、この両名は共謀の上、昭和二十六年四月中旬徳島市役所内の選挙管理委員会事務局におきまして、同委員会委員長谷光次保管にかかる昭和二十六年四月二十三日施行市会議員選挙投票用紙約百枚を盗み取ったものであります。それから(ロ)昭和二十六年四月二十三日徳島中央通三丁目富田小学校内徳島市会議員選挙第三開票所におきまして、開票管理者三橋幸一保管にかかわる選挙投票用紙百枚を盗み取ったものであります。それから被疑者貴志恭次、これは徳島市役所書記でありますが、昭和三十年四月二十四日富田小学校内の第三開票所におきまして、同年四月二十三日施行徳島会議員選挙開票事務従事中に徳島会議員選挙投票二枚を抜き取りまして、もって投票数を減少したものであります。それからなお米延保之貴志恭次、これはそのほかの郡磯吉なるものと共謀いたしまして、昭和二十九年六月上旬ごろ徳島市役所内選挙管理委員会事務局におきまして、徳島選挙管理委員会所有選挙関係負担金のうちから三万円をほしいままに着服して横領したものであります。  それからさらに須本文武は、その他の市の書記共謀いたしまして、昭和三十年五月一日第三開票所におきまして、市長選挙開票事務従事中に、市長選挙投票を約二十四枚を抜き取りまして、もって投票数を減少したものであります。  それから第五の事実、辻八郎は、選挙管理委員会事務局書記でありますが、本田稔共謀いたしまして、昭和三十年五月一日、徳島市役所内の第一開票所におきまして、昭和三十年四月三十日施行徳島市会議員選挙開票事務従事中、徳島市会議員選挙投票二枚を抜き取りまして、もって投票数を減少したものであります。  それから第六の事実、坂野茂樹は、徳島市の選挙管理委員会書記でありますが、昭和三十年五月十七日施行の板野郡土成町町会議員選挙に際しまして立候補したのでありますが、坂野茂樹真実土成町に居住していないために、同町には選挙権がないのにかかわらず、同年一月中旬ごろ、右町役場におきまして、選挙管理委員会事務局書記に対しまして、同町宮川内字見坂八十五番地に居住する旨虚偽の事実を申果立てまして、選挙人名籍登録方を申請し、補充人名簿登録をなさしめて、虚偽登録をしたものであります。  なおこの登録に基きまして坂野茂樹は、同年五月十七日土成町町会議員選挙に際しまして、真実選挙権がないのにかかわらず、右のごとく選挙人名簿選挙人として登録されておるのを利用し、同町平間小学校平間分校の第五投票所において詐欺の投票をしたものであるというのがただいままでにこちらに報告になり、それぞれ公判請求もしくは略式請求をした事実であります。  なおこの捜査に関連いたしまして、岡山の刑務所から徳島市の選挙管理委員会に引き渡された投票用紙のうち、約二百二十数枚がいかようになっておるかはっきりしないというので、検察庁におきましても、この点についていろいろ取調べをしておりますが、現在のところでは二百二十数枚の不足があったということが絶対的のものであるということも確認はできがたいし、なおこの点についての捜査は引き続き努力中でございますが、現在のところでは、この問題については合理的な解決はいまだできておりません。ただいま申し上げた九人の公判請求、二人の略式請求以外の者につきましては、いずれも犯罪の情状その他酌量すべき点があるというので起訴猶予処分になっております。
  5. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 それでは引き続きお尋ねをいたしますが、徳島市の選挙管理委員会事務局長郡磯吉が逮捕された旨当時報道されております。ところがただいまの御答弁によりますと、第四の事実のうちで米延、岸などが郡磯吉共謀して市役所内の事務局負担金三万円を横領した旨ただいま御説明がありました。ところがここに急に郡という名前が出て参りましてよくわからないのでありますが、郡磯吉は、事務局長でもあるし、主要な人物であります。これの役割をいま少しく詳細に知りたいと存じます。郡はこの三万円関係だけであるか。それともそのほかに不正投票ないしは選挙用紙抜き取りに何か関係があったのではないか。それらの件をいま少しく詳しく承わりたいと存じます。
  6. 井本臺吉

    井本政府委員 郡磯吉という方は、徳島市の選挙管理委員会事務局長でありまして、犯罪事実につきましては、われわれのところに参っている報告では、先ほど申し上げましたように、米延保之、岸と共謀の上で、昭和二十九年六月上旬ごろに、徳島選挙管理委員会事務局におきまして、郡磯吉業務保管にかかわる選挙管理委員会所有の金三万円をほしいままに着服横領したものであるという事実だけでございます。この事実につきましては、検察庁といたしましては、横領金額が非常に多いというわけでもなく、被害を全部弁償して引責辞職しており、また改悛の情が認められるというので、これは起訴猶予するのが相当であるという結論に達して起訴猶予処分にしております。
  7. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 ただいまの御報告を承わりますと、本年四月の選挙並びに五月の選挙においていろいろと同種犯罪が繰り返されております。ことに市役所吏員がこれを行なっております。しかもそれは本年初めて行われたのでなくして、二十六年の選挙の際にも同種事件が行われておったことが、ただいまの御報告によっても明白であります。してみれば、二十六年の選挙、今年の選挙、引き続いて、かような同種事件が繰り返されておりますことはまことに遺憾のきわみであると存じます。ことに二十六年の選挙は、当時の事務局次長米延、同選挙係の須本が犯し、今年の選挙におきましては、市の吏員が主となってやっておりますが、いずれもこれら公職にある者がかような選挙用紙抜き取りあるいは不正の投票をするなどといったようなことを犯しておりまして、かようなことがもし繰り返されますならば、民主政治基礎は根本から破壊されるのではないかということを私どもは非常におそれるのでございます。二十六年の選挙の当時においていま少しく取締りを厳にいたしましたならば、本年の選挙等においてかような事態を起すことなくして終っておったものと思うのでありますが、二十六年の選挙の際に、何でいま少しく徹底的な調査検挙等を行わなかったのでありましょうか。今回の選挙において初めてそういったような事態取調べのついでに出てきたというのでありましょうか、その辺の消息をいま少しく承わりたいと存じます。
  8. 井本臺吉

    井本政府委員 犯罪につきましては、われわれといたしましては、不正が行われた場合にこれを検挙処分することに全力を尽さなければならぬことは当然でございますけれども、なかなか証憑が集まらないのでございます。今回の事件もわれわれのところに本年の五月十二日に妙な投書が入りまして、市の選挙に際していろいろ投票増減の疑いのある事実があるということがわかって、それからだんだん手をつけて犯行が発覚して参ったわけでございまして、二十六年の選挙の問題も、この関係者がこれは公職選挙法違反としてはすでに時効にかかっておりますために大した犯罪にもならぬだろうというふうにおそらく考えたのではないかと思いますが、自白したのでありますけれども、われわれといたしましては、公職選挙法違反としてはすでに時効にかかっておりますが、これは刑法犯窃盗罪であるということで、かような犯罪はゆるがせにできないということから厳重にこれを取り上げまして公判を請求したということになるわけであります。さような事情でかような犯罪については、今後とも十分取締りを厳重にして、被疑のある場合にはこれを検挙して行くことに全力を尽しては参りますが、なかなかこの検挙のきっかけがつかめませんので、さような被疑の点からさような点が従来検挙できなかったのでございます。事情はさようなことでございます。
  9. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 当委員会ですでに問題になっております生田代議士関係いたします問題についてこれは考えてみますならば、はなはだしく不当なる選挙干渉と申しますか、が行われたと見ざるを得ない事態であります。ちょうど中川刑事部長もお見えのようでありますから、この際警察にも承わっておきたいと存じますが、生田代議士選挙関係については全く不当なる干渉を行いまして、何ら嫌疑の——ないというのは語弊がありますが、生田代議士関係の問題は、すでに当委員会において問題になっております通り、全く捏造された虚偽の事実によりまして、しかも不当に生田氏の旅館等捜査を加え、これは全く私は選挙干渉と見るよりほかはない。そういったような事態を引き起しまして、もって当委員会においてすでに審議を進めておりますような不当なる事態を引き起しております。かと思えば、今度は市の吏員であるとか、あるいは選挙管理委員会事務当局人々はあるいは用紙抜き取り、あるいは今度は不当なる投票をあえて行なっておる。投票用紙をすりかえるなどといったようなことが行われておりまして、全く徳島におけるところの選挙は紊乱の極に達しておるものと言っても差しつかえがないと思います。こうしたことは警察当局が十分その取締りの任を尽さなかった結果ではないかと考えざるを得ないのであります。ことに生田代議士関係問題等については県当局相当にこれに関係があって、これらの事態を追及しなければならぬのでありますが、これに対しましていろいろと口実を設けて逃げを張っておる実情にあるとしか思われません。警察においていま少しく選挙の公正に行われることについて十分なるお取締りを敢行せられますならば、かような事態が起らなくて済んだのではないかと思うのでありますが、警察当局のお考えをこの際承わっておきたいと思います。
  10. 中川董治

    中川(董)政府委員 ただいま佐竹委員から御意見がありました通り警察活動がほかの犯罪捜査でも当然そうでありますけれども公職選挙法違反事件捜査等について厳正な態度をとる、別言しますと、非常に常識的に言いますと、行き足らないところがあってもいけませんし、行き過ぎてもいけない。両方、行き足りないことがないと同時に、行き過ぎがないように、申すまでもないことですが、厳正な捜査をすることによってわれわれの責任を果すべきである、こういう点の御意見は全く同感でございます。不幸にして徳島県におきまして、当委員会でも御指摘がありました山田と称するある民間の方のにせ情報を基礎にして捜査が進められてきた、こういう事件及びこれに関連する事件並びに被疑者処分上の問題につきまして、当委員会からも御指摘がありましたし、われわれは当委員会の御指摘も感謝しながら、さらにわれわれ警察当局立場からしまして、先ほど申しましたごとく公正な捜査が行われるということを確保するために、第一線ではやっておりますことでございますけれども、この公正確保を期するために、この関係調査を鋭意進めて参つたのであります。私の方といたしましては、過去の不都合なことにつきましてはそれぞれ行政的な監督方式も講じまして、ことに本件の問題につきましては、県の最高責任者でありますところの本部長行政上の処置訓戒等処置を講じたのでありますが、その他関係の向きに対しましては、関係職員で仕事のやり方等について不適当なことのある者に対してはそれぞれ処分をする、処分と同時に、警察活動の適正を確保するために、関係職員勤務等につきましても適正な考慮を加えまして、選挙公正確保のために警察が国民の期待に沿う、こういう根本的の態度を維持するために鋭意努力いたしておるのであります。  この際つけ加えて申し上げますが、本件徳島県内における犯罪捜査に関連し、ことに選挙違反捜査に関連し、いろいろ当委員会の御指摘その他につきまして総合的に報告することを約束しているわけですが、これが現在いろいろと私の方でも鋭意調査いたしまして、あるいは職員懲戒処分をする、あるいは転勤等処置を講ずる、こういう方法を、りっぱな捜査活動をするような保障のために講じおるのでございますが、その調査のうちで、山田何がしという人物誣告被疑事件という刑事事件があるのでございます。この事件につきましてはただいま地元検察庁におかれまして捜査されておりますので、これにもちろん警察当局は協力しておりますが、そういった状況の一応のめどがつきました機会に、総合的に私どもの長官から御報告いたしたい、こう考えておるのでございます。繰り返し申しますが、私ども警察活動といたしましては、佐竹委員から御指摘ありました通り警察活動公正確保を期せないと、国会でお定めになりました法律趣旨が具現できませんので、こういった点につきましては鋭意心を砕いておるのでありますが、御指摘徳島関係につきましては、少くともわれわれの立場から申しましても、捜査やり方等について相当反省考慮を加える点がありますので、こういった点のないように、それを保障するための措置、さらにそれを積極的によくするための教養はもちろんでございますが、そういった点についてほんとう責任を持った努力をいたしたい、こういう努力を続けておるのでございます。
  11. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 この際自治庁選挙部長がお見えでございますので、自治庁お尋ねをいたしておきたいのでありますが、徳島におけるところの今回の不正投票等について、本日自治庁からも文書をもって御報告いただいております中に、やはりただいま刑事局長のお答えになったと同様の点が記載されておりますので、自治庁にもこの報告が達し、お認めになっておられることと存じます。そこで承わりたいのでありますが、自治庁の御解釈といたしましては、かくのごとき不正の投票は当然無効であると考えますが、いかがでございましょうか。
  12. 兼子秀夫

    兼子政府委員 お答えいたします。この徳島市の選挙不正事件は、われわれといたしましても非常に驚いた事件でありまして、はなはだ遺憾に存じておる次第であります。なおお尋ねになりました選挙の、不正の手段によって入手いたしました投票用紙を不正に行使した投票効力の問題でございますが、その投票は当然無効でございます。
  13. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 この点について選挙の一部無効の確認を求める訴訟が提起されておるやに聞くのでありますが、いかがでございましょう。
  14. 兼子秀夫

    兼子政府委員 まだ訴訟は出ておらないのではないかと思います。現在われわれが承知しております範囲におきましては、市の選挙管理委員会に対しまして異議申し立てが現在進行中の模様でございます。
  15. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 かくのごとき問題について異議が出ましたときに、地方選挙管理委員会といたしましては、異議が成立しないとして却下するのがほとんど通例になっております。ところが本件のごときは選挙事務関係をいたしておりまする市の職員自身が犯した、しかも犯罪まで犯したところの不正の投票ないし正当なる投票抜き取りでございますので、抜き取りの場合において言えば、百票なら百票抜き取ったならばその百票の及ぶ範囲内においては一部選挙の有効無効は当然に起って参ります。さらに投票をした側において不正なる投票が加わっておるといたしますならば、百票投票したとするならばその百票の及ぶ範囲内においては、当然その一部の当選有効無効の問題が起ってくると存じます。しかもそれが選挙に直接携わっておる人々の犯した案件によってそういう事態が出たといたしますならば、選挙管理委員会といたしましては、すみやかにこれを取り上げて、すみやかにその一部無効を宣言し、再度の選挙を行うべきであると考えますが、自治庁においてはそういったような指導をなさっておるかどうか、また本件事案関係いたしまして選挙の有効無効がどれだけの範囲内に影響するものであるか。私の聞くところによれば、わずか四票の差で当落がきまった部類があるようであります。さすれば、二十数票とか三十票とかあるいは百票あたりの票数が動いておるといたしますならば、それが直ちに選挙の有効無効に影響いたしますることは当然でございますので、それに対して自治庁といたしましてはいかなる指導を与えておるか、これを承わりたいと存じます。
  16. 兼子秀夫

    兼子政府委員 お答えいたします。不正の手段によりました投票したものの効力の問題は先ほど申し上げましたが、今回のこの四十七票が不正の手段によって投票が混入されておるようであります。これにつきましては、二十六年に判例がございまして、高松高裁判例でございますが、不在者投票につきまして、判例があるようであります。潜在無効にして、その関係の部分につきましては当選無効の判決が下されておるようでございます。私ども見解といたしましても、同様な見解を持っております。なおこの選挙管理委員会職員がかかる不正なる事件を引き起して、選挙管理委員会異議申し立てを受け付けて裁決をする適格性を欠くのじゃないかというような御趣旨の御意見も、ただいまの御質問のうちに含まれておったと思いますが、これにつきましては、御承知のごとく法律上はやはり現在その当該選挙管理委員会におきまして異議裁決をし、さらに府県の選挙管理委員会において訴願をするというような法律制度に相なっておりますものでありますから、そのような手続をとらなければならないと考えております。
  17. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 私のお尋ねいたしたいのは、異議申し立てがありますと、選挙管理委員会は大がいその異議を却下するのが例であります。そこで県の選挙管理委員会へ持っていく、また却下される。そこで訴訟の提起となって有効、無効が争われて、裁判所において初めてほんとうにその白黒がきまるというのが例であって、選挙管理委員会というものは何でもかでも却下することをもって本能とするかのごとき状態にあることがはなはだ遺憾であると考える点であります。ところが本件事案はその選挙関係いたしました吏員かくのごとき不正なる投票に関与しておるのでありますから、こういった問題等については、すみやかにこの異議処理し、異議を入れて、選挙無効を宣言し、再度の公正なる選挙をするように導くことが適正ではないかと考えるが、あなたの方のお考えはどうかという点であります。
  18. 兼子秀夫

    兼子政府委員 御意見非常にごもっともだと存ずるのでございますが、この法律的見解につきましうはわれわれは指導をいたしておりますが、裁決の内容をどうするということになりますと、それぞれ独立性を持っておりますので、そこまでは申し上げかねるのでございます。われわれといたしましては、このような事件処理につきましては、できるだけ早く処理をしてもらいたい、選挙の権威を実地においてすみやかに回復してもらいたい、かような希望を持っておりまして、先般も委員長見えましたときに、そのことを要望いたしまして、近く結論が出るということを言っておる次第であります。
  19. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 法律的指導をすれば必然的にその法律上不当なる処置の行われておる点も是正することに努力することが当然の義務じゃないか。もちろん裁決自体に関与せよというのではありませんが、かくのごとき不当なる投票用紙のすりかえなどが行われて、民主政治を破壊しようとするがごとき危険をここにかもしております以上は、自治庁といたしましても、かくのごとき害悪を一日も早く取り除くだけの義務があると私は考えます。従いまして旧来の選挙異議の場合におけるがごとく何でもかんでも却下してひっぱっていって、訴訟にならなければ、もなわち裁判所の判決によってでなけすればその不当不正が是正されないといったようなことは、この際厳に慎しんで、自治庁といたしましても善処せられてしかるべきではないかと思うのでありまして、本件問題等についてはすでに検察当局においても起訴処分等がなされており、本人等もすでにその罪悪を是認いたしておるようでありますから、異議事案についてもすみやかに善処せられんことを私は要望してやみません。
  20. 生田宏一

    生田委員 関連して直接取調べをされました検察庁責任者の方にお尋ねしたいと思うのですが、投票用紙を不正に加えて不正に抜いたという事実で起訴がされておりますか、その山内高名義の四十三名の投票を混入したという事実については、その混入した票というものは、投票の中からそれを取り出して、これがそれであるというような証拠が固まっておるのでございますか。また四十票でございますか、それを取り出した、その取り出した票につきましては、これが取り出した票であるという物的証拠が固まっておるのでございますか。その点をちょっとお尋ねいたします。
  21. 井本臺吉

    井本政府委員 的確に四十三票混入したものがこれであるという証拠は集まっておりませんが、本人の供述とそれから実際の投票の中で同一筆蹟のものが相当多数ありまして、それとあわせまして本人の自白が的確なものであるという証拠といいますか、心証を得て起訴処分になったように聞いております。
  22. 生田宏一

    生田委員 取り出した方はどうですか。
  23. 井本臺吉

    井本政府委員 取り出した方の関係は、本人の自白並びに四囲の状況から、さような取り出されたものであることは間違いないという心証に達しまして起訴処分をしたように聞いております。
  24. 生田宏一

    生田委員 今のお話でありますと、投票を混入したということと取り出したということだけは、これはもう心証上間違いない、こういうことだそうでございますが、それで起訴をされることは十分だと私もこれは是認いたしますが、しかし選挙の問題は一枚一枚の投票を数えて当落がきまっていくのですから、本人が取り出したというその取り出したのが何という人間の名前を書いた票を取り出したか、あるいは一人の名前を書いたものを五十票取り出したのか、あるいは数人のものを取り出したのか、あるいは新聞で拝見しておるのですが、白票とか無効票を四十枚取り出したというようにも聞いておるのですが、その点についてははっきりした結末が出ておるのでございましょうか、それをお尋ねしたいと思います。
  25. 井本臺吉

    井本政府委員 抜き取りました投票処分したように報告を受けておりますので、おそらく何のだれがしの票をどれだけ抜き出したということははっきりしていないのじゃないかと考えます。
  26. 生田宏一

    生田委員 そうするとこの投票のすりかえ事件によって有権者が投票した数字とは全然違った結果に選挙投票の発表がなされておる、こう考えても間違いないでございましょうか。お取調べをなすった結末です。
  27. 井本臺吉

    井本政府委員 ただいま申し上げましたように、抜き取りました票がだれの票であるかということははっきりいたしておりません。挿入いたしました票は特定候補者の票であるということははっきりしております。従って幾ら減って幾らふえたか、ふえた方は四十三票ですが、それははっきりしております。減った方がだれの票が減ったかということがはっきりしておりませんので、結局総計におきましてどれだけ増減したかということは、検察庁といたしましてははっきりしておりません。
  28. 生田宏一

    生田委員 選挙管理の方の責任者の方にお尋ねしたいのですが、私は検察庁の方でされましたものが真実取調べであると信じて大体間違いないと思うのです。そうなりますると少くとも四十三票の札が混入され、また四十票の札が抜き取られた。そこで八十三票というものはまさしく正しい票でないと疑っていい、あるいはそれは投票無効の類に入る札と考えていいわけであります。その八十三票の及ぼす影響については、あなたの先ほどの御答弁によれば、当選無効の判例があるということなんですから、すでに選挙無効の異議申し立て徳島選挙管理委員会に出ている。それがいかなる判決を言い渡されるかはわかりませんが、徳島選挙管理委員会異議申し立てをし、そして行政裁判に訴えて参りましたときは、もはや事実ははっきりしておるのですから結論は出るはずなんです。その八十三票の及ぼす影響の範囲内においては当選無効という結論が出ると思うのですが、選挙管理委員会のお考えはいかがでございましょう。
  29. 兼子秀夫

    兼子政府委員 非常にデリケートな問題だと思うわけでありますが、一応は生田さんのおっしゃるようにその入りました票と出しました票とを足したもの、すなわち八十三票でありますが、われわれの報告では八十七票になるようでありますが、その数の範囲内においておっしゃるような結果になるのではないかと考えられるわけであります。ただその場合に考えてみなければならないのは、あとから取り出したという事柄の経緯でございます。初め四十七票を入れたというのは確かに不正の手段によって入手した票を入れた、もう初めから悪意であるわけでありますが、あとの取り出した方はちょっと事情が違うようでありまして、数が合わなくなったから困ったという関係で、いわば消極的の犯罪、意思は追い詰められてやったように見受けられるのであります。事柄は非常に悪い事柄でありまして、委員長も先般来ましたときには、票を合わすということは絶対にしてはならぬと平素極力言っておいたんだと言っておりましたが、われわれとしても非常に困った問題と思っておるわけであります。そのような状態で犯された事件でありますので、アトランダムに有効の票を抜き取ったプロバビリティが多いか、あるいは無効の票を抜き取ったプロバビリティが多いかということが最後に問題となるわけでありますが、普通の考え方でいきますと、どちらかといえばそのような傾向も考えられるのではないか。無効の票あるいは白票がありますればできるだけそういうもので数を合せるということが心理として考えられるわけであります。しからば四十票だけ白票なり無効票があったかという問題になるわけでありますが、これはすでに証拠はなく保証の限りでないわけであります。ですから議論といたしましては先ほどおっしゃったようなことが最大の限界であり、いま一つは私が今申し上げたような事情考慮して最終的にはいかに裁判所がお考えになるかということになるだろう。私個人の考え方は今申し上げたような次第でございます。
  30. 生田宏一

    生田委員 今のお話を承わっておりますと、選挙投票が有効か無効かという問題を離れて、こういう考え方もある、ああいう考え方もあるというような、あなたの感情といいますか感じといいますか、そういうことをあなたはお述べになっておるにすぎないのであって、厳然たる事実は、わしが当選者だ、こう主張する人もおるのです。その主張に対しては無効の投票を破棄したかもしれないということで、わしが当選人であるという主張に対しては私は対抗できないだろうと思う。もしあなたがかりにそれを判決を下したと考えてみて、そうしてそれが対抗できるとお考えになるのでございましょうか。私は根本方針として、白票であるかあるいは無効票であるかということは、本人が申し出ておるだけであって、刑事局長の話を聞いていても、もう処分してしまったのだから物的証拠は何もない。だから有効票をやったかもしれぬし、あるいはとっさの間であるから無効票もまじっておったかもしれぬ。それらの点については真偽のほどはわからぬ。本人が正直に供述をする以外にない。本人がいかに正直に供述をしても、またその名前を書いた票を一々四十票なら四十票点検したわけではありませんから、これも神ならぬ身であってみればわからないはずであります。そのような二つしかない事実をもって、そうしてこれは無効票だけあるいは白票だけをやったものとして、その選挙の当選の無効を主張する人に対してそのような不確かなことで対抗できるような、それを却下するというようなことができるかどうか、それを私はあなたからお聞きしたい、     〔古島委員長代理退席、委員長着席〕
  31. 兼子秀夫

    兼子政府委員 本件につきましてはすでに御承知のごとく、異議申し立てかありまして事件が係属中でございますので、最終的には裁判所の裁判官の心証、あるいは訴願の段階でありますればその関係委員の心証の問題になると思うわけでございます。先ほど私が申し上げました点は、感じを申し上げたのではなくして、理論的にその可能性があるということを申し上げた次第でございます。
  32. 生田宏一

    生田委員 それではお尋ねしますが、あなたは先ほど言われておった通り徳島選挙管理委員会委員長である谷光次君は、今から四、五日前に東京へ参って五日間ほど滞在をされて、あなたの方へいろいろ御相談に行ったらしい。そうして徳島へ帰って、七月の八日に徳島新聞に自分の帰来談を語っておる。自治庁選挙関係の当局にいろいろ御相談した結果は、選挙をやり直す必要はない、このままでよろしいのであるということを談話で発表しておるのです。谷君はまじめな人でうそを言う人とは私は思われないのですが、しかも選挙管理委員会委員長であって、この問題で東上して自治庁へ行って相談されたということですから、当然根も葉もないことを言うはずはないと私は思う。今のあなたの見解で、佐竹先生に対する御答弁では、選挙は当然無効なんだというお話でありますが、私の質問に対しては、こういうプロバビリティもあり得るという、すでにごまかしたあなたの御答弁なんですが、私に御答弁をされたことがあなたの真意なのか、先ほど判例佐竹委員に御答弁されたことが真意なのか、また長谷君には、こういうことでまた選挙をやり直す必要はなかろうということをお話しになったことが事実か、あるいは谷君がうそを言っておるのか、どちらがほんとうなんですか、これはあなたが答弁すべきことなんですから、ちょっとお答えを願いたい。
  33. 兼子秀夫

    兼子政府委員 先の方の問題でございますが、佐竹委員にお答えいたしましたのと生田委員にお答えいたしました点は、私は同じことを答えておるつもりで申し上げたのであります。と申しますのは、八十三票ですか八十七票ですか、そこまでプロバビリティがあるというのは議論として八十七票の数字の限界まで行き得る可能性がある。ただそれをどう見るかということは、われわれが承知しています現在の事案の内容では果してどういうことになるか、あるいはそれ以外に事実があるのかもしれません。裁判なり訴願の手続の過程でそれは判断される問題だと思うわけであります。それから法律的の問題につきましては、これはわれわれといたしましては当選無効になる、そのおそれが大きいということは谷委員長にわれわれは見解は述べてございます。
  34. 生田宏一

    生田委員 大体今のでわかりましたけれども、一つ法務次官がお見えになっておりますから非常にいい機会でありますのでお聞きしておきたいのですが、最近選挙法の改正を行います機運が強いのですが、選挙管理委員会の権限をいま少し拡張して、そうしてもう少し選挙の民主化をやろうではないか、こういう意見が政府部内にもあるやに承わっておるのですが、そうなりますと、選挙管理委員会というものを従来のようなこのような野放図な、非常に秩序の保てないような選挙管理委員会では、権限の強化どころか縮小しなければならないことになるのですが、もし権限の強化をはかって民主選挙というものを徹底したいというならば、選挙管理委員会に対する指導監督といいますか、再教育といいますか、あるいは終戦直後の人事が今もって続いてきておって、人事の渋滞があるというような点に大いに留意をして、権限を拡張するならば拡張するように選挙管理委員会をもう少し飛躍せしめて、もっと高いものにして、実力のあるものにしていくというようなことが必要でなかろうかと思うのですが、この点についての御意見をお漏らし下されば仕合せだと思います。
  35. 小泉純也

    ○小泉政府委員 選挙投票不正事件を契機として、ただいま生田委員から選挙管理委員会の構成、機構、権限その他について御意見を承わったのでございますが、現在のところ法務省におきましては、具体的に選挙法の改正という問題と取り組んでいないのでございまして、いろいろな話題には出ておりまして、今後選挙管理委員会の権限をいかにするかというようなことが当然問題になってくるとは私も考えております。そういう具体的な問題の研究が始まりました場合には、ただいま述べられました生田委員の御意見をそういう席上にも貴重なる参考としてお取次いたしまして十分善処をしたいと考える次第でございます。
  36. 生田宏一

    生田委員 私は関連質問で発言をお許しを願いましたので少しく逸脱する感もあるかも存じませんので、あらかじめお許しを願いたいと思うのでありますが、この間の当委員会理事会で、先ほど佐竹委員からも御質問がありました、本委員会が人権じゅうりんとして取り上げておる虚偽の情報に基く逮捕事件につきましては、参考人あるいは証人として関係者をお呼び願うことをお願いしておきました。私は四、五日前に郷里へ帰っておりまして、実は私としては大体私が存じません事情を郷里で聞かされて参ったのであります。それは私の関係する松山一忠という弁護士が、山田義明の依願を受けておりまして、たまたま私の事件で松山弁護士に会いましたところ、山田の心境とかいろいろの真相を私は松山一忠弁護士から承わりました。しかし当人の一方的に言うことですから、その言を私は全部信じておるわけではございませんけれども事件の究明には確かに山田義明の申し立てを聞いてやることが事件解明の一番近い道であるということを直感して帰ってきたわけでございまして、相願えますならば、十六、七日ごろに山田義明を当委員会の参考人もしくは証人いずれでもよろしゅうございますが、お許しを得まして当委員会へ呼んでいただいて、本人の主張をよく聞いていただけましたならばと存じますので、これは委員長から明日なり明後日なり、最近の理事会にお諮りを願いまして私の申し入れをお取り計らい願いたいと存ずすわけでございます。
  37. 世耕弘一

    世耕委員長 生田君にお答えいたします。さきの理事会で本問題が話題になりました、ところが生田委員は御不在であったので次回に生田委員理事会に御出席の上、その御意見を聞いた上で決しよう、こういうふうな申し合せになっております。いずれ近く次の機会に理事会が招集されまするからその席において決定いたしたい、かように考えておりますから御了承を願っておきます。
  38. 古屋貞雄

    ○古屋委員 一点だけ関連して兼子部長にお伺いしたいのですが、二月の衆議院の総選挙選挙の啓蒙運動に使った費用はどのくらいでありましょうか。そしてその方法は主としてどんな方法でやっておったか伺いたい。
  39. 兼子秀夫

    兼子政府委員 お答えいたします。今手元に詳細な資料を持たないので記憶いたしておりますことにつきましてお答えをいたしたいと存じます。二月の総選挙につきましては、いわゆる啓蒙費といたしまして、解散が昨年の十二月中旬にきまったわけでございますが、そのときに五千万円の宣伝費を決定いたしております。二月一日から告示になりまして、二十六日が投票日であったわけでございますが、その期間中の経費といたしまして、選挙費用の算定に関する法律で公営費と事務費等がきまっておるわけでございますが、その中でいわゆる宣伝啓蒙に関する経費は約一億円弱入っておる次第でございます。なお初めの五千万円につきましては、これは予備費から支出されたのでございますが、そのうち三千五百万が主として府県でございます。それから大きな市等には行ったと思いますが、主として地方に参りましたのが三千五百万、一千五百万が中央の経費でございまして、そのうち五百万が放送、民間放送等がございまして、三十九社だと思いますが、これに対します放送の——スポット放送と申しまして、キャッチ・フレーズを二十秒とか三十秒あるいは短かいのになると十秒、一日一回約三十日間にわたりまして各放送局でやったのでございますが、そういう宣伝方法、これは字句等の関係がありまして、公明選挙連盟に委託をしてございます。その中で一部簡単な漫画か何かの映画も作っております。それから他の一千万円は中央の直接の宣伝費でございまして、出版物その他映画の製作費とか、そういうものでございます。それからあと二月総選挙に入りましてからの経費につきましては、各府県で従来やっておりますような出版物、ビラとかポスターとか、それから懸垂幕、講演会、それから広報宣伝車を回す、あらゆる種類の宣伝方法に使っておるわけであります。なお先ほど申し上げました五千万円の啓蒙費のうちでテレビあるいはラジオの民間放送を全面的に使ったのは、この前の総選挙が初めてでございます。
  40. 古屋貞雄

    ○古屋委員 公明選挙運動という運動の実施者はどんな団体か、あるいは個人か、その選定はどちらでやっているのですか。
  41. 兼子秀夫

    兼子政府委員 公明選挙運動と申しますと、これは非常に幅が広いのでございますが、われわれがいう公明選挙運動、これは御承知のごとく役所の予算をとってやっておりますし、それからまた役所の下部機関として都道府県市町村の選挙管理委員会もやっております。それから民間団体として、御承知のごとく公明選挙連盟があるわけでございますが、これは直接には下部機関はないわけでございます。ただ関係団体の方々のお集まりを願い、約四十くらいの団体の方にお集まり願っておるようでございます。そこでいろいろと御相談をして各団体の実施に移していただく、そのおもなる団体は、青年団の連合会、それから婦人団体等が主たる構成メンバーのようでございます。  それから各地方選挙等でわれわれが困った点が若干ありましたのは、地方団体で公明選挙運動をやるんだ、こうみずから名乗りをあげられまして公明選挙運動をやっていただいた、これは非常にけっこうだと思うわけでありますが、それと選挙運動と非常に近いのが中にはあったということが実際問題として非常に困った実例でございます。
  42. 古屋貞雄

    ○古屋委員 その効果はどういうふうに考えられているか。今私どもは実際に選挙をやっておりますのに一つも効果がないと思うのです。これだけの莫大な金と労力を費しながら効果がない。ことにただいま御答弁がございましたような地方の実施しておる団体が、一政党に片寄ったり、一候補者に片寄った例もたくさんございまして、私ども非常に不平を持っておるのですが、どうでしょう。効果はどんなふうにお考えになっているのか。今後もこういうことを継続していくのかどうか。というのは、実は私は山梨県ですが、選挙違反はあげれば何ぼでも出てくるのです。これは法務省の政務次官がいらっしゃるから聞いていただきたいのです。私は宮本検事正に、どうですか、検挙してもらいましょうかといったところが、やればやるほど何ぼでもあるので、自分の方はやらないのだ、検事の数も足りないし、刑務所の数からいっても収容できないから仕方がないということを公然と私に答弁しておる。実際もそうなんです。私は公明選挙を百万べんやっても今のようなことでは選挙違反を防ぐわけにいかないと思う。どんな厳罰を課してもだめです。従って今までのような公明選挙に対する啓蒙運動というものはない方がいいと思う。そこで私承わっておるんですが、現実に検事正の方でひっ縛っても、調べる方はもう能力の限界に達しておる。入れる拘置所もない。現に私のところは平野君だけでも幹部、専務長以下百何十人引っぱられたが、平野君一人だ。保守党の諸君にたくさんあるが途中で押える。私はこれを考えて、こういう選挙をしておれば、日本の政界の郭清、世論政治というものは全く行われないと思うのでありまして、実はただいま同僚佐竹委員から御質問がございましたので、私は公明選挙運動あるいは選挙に対する啓蒙運動の今までのやり方に対して大反省をして、そして新たな見地からこれが対策を講じなければやっていけないという感じを持っていますので、その効果がどうであったか、今後もかようなことを継続する考えであるかどうか、根本的に反省し直して、そして新たな方法を講ずる考えがあるかどうかということだけを御答弁願いたい。
  43. 兼子秀夫

    兼子政府委員 まず第一に効果の点でございますが、われわれはやはり相当効果があったのではないかというふうに考えております。しからば、従来よりも選挙違反事件がふえたのはどういうことかということになるわけでありますが、相当民衆の協力も得られ、そのような捜査活動が活発になったということも一つの原因ではないかと思うわけであります。  なお、今後引き続きやるつもりかというお尋ねでございますが、われわれといたしましては、これはやはり当分の間国民の政治教育というような観点からも、選挙の粛正ということは手をゆるめるわけにはいかないと存じております。なおただわれわれが痛感いたしておりますのは、現在の選挙法が日本独特の法体系になっておりまして、根本的にはさような面につきましてもやはり大きく反省すると申しますか、選挙法そのものについても研究いたさなければならない、かように考えておる次第であります。
  44. 古屋貞雄

    ○古屋委員 選挙違反はつかまるやつがばかなんだ、間違ってつかまっているので、運が悪いということを国民が考えておる。これじゃいかに処罰したり、あるいは選挙の啓蒙をやってもだめだと思うのですが、根本的にもう少し新しい構想のもとに啓蒙するという方法についてお考えはないでしょうか。私は相当あると思うのですが、その点はどうなんでしょうか。
  45. 兼子秀夫

    兼子政府委員 選挙はそのつどだんだんと態様が変っていくわけでありまして、また公明選挙の運動で有権者にいかに呼びかけるかということにつきましても工夫をしていかなければならねと思っておる次第であります。なお御意見等ありますれば、一つお聞かせ願えれば非常にけっこうだと思います。
  46. 古屋貞雄

    ○古屋委員 私の申し上げたのは、効果が全然ないというんじゃない。使っている金の割合に効果が上っていないのだ。従って私の要望したいのは、莫大な金を使われているにかかわらず、一方では勝てばいいというような気持で非常にげすな選挙運動をやる、片方で間の抜けた公明選挙運動などやっておってもその効果がない、でありますから新しい見地に立って、選挙様相が変ってきておるのですから、どうか十分御研究願って、効果があるようにしていただきたいということです。これを要望申し上げて私の質問を終ります。
  47. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 それでは引き続いてさらにお尋ねいたします。自治庁選挙部長に対してお願いをしておきました全国における選挙管理上問題となった事案はどういうものであるか、これを書面にしたためて報告を願いたいということをお願いいたしておいたのでありますが、ただいまここへ配付されました「選挙事務管理上問題となった事例」と題しますものがその答えでございましょうか。
  48. 兼子秀夫

    兼子政府委員 前回の委員会で御要望のありました資料が、ただいまお手元に配付しておる印刷物であります。その末尾に表がついておりますが、前回の地方選挙におきましては千百二十五件が異議申し立てあるいは訴訟事件となったのでありますが、今回はそれがただいまのところ三百二十六件という報告に接しております。事件の件数そのものは減ったようでありますが、中身につきましては、おもなるものを個別に前の方に書いてございます。  一番初めのところに衆議院の総選挙に関するものといたしまして、投票用紙等の隠匿に伴う投票開始時刻遅延の件、少しややこしい名前をつけておるのでございますが、静岡県藤枝市の事件で、選挙人名簿投票箱のかぎを入れたふろしきが隠匿されて、一時間投票がおくれたという事件であります。それから氏名等の掲示を誤まった事件が数件あります。これは全国区参議院議員の選挙で、佐野市の氏名掲示を誤まった事件によりまして、われわれといたしましてはその点は十分に注意をいたしておるのでございますが、今回の衆議院の総選挙におきましても、やはり若干この事件があったのでございます。富山県の高岡市、大阪市東住吉区、滋賀県野州郡兵主村、愛媛県伊予郡岡田村の四件であります。それから立会演説会告知用ポスターの掲示を誤まった事件、これは二件ございます。  それから選挙公報印刷過誤の件、これは候補者の公約をAの候補とBの候補と間違えて印刷をいたしまして、配布いたしてから発見をしてすぐに刷り直しをして配布し直したのであります。  次は詐偽投票の件、長崎県対島上県郡佐須奈村で、これは相当の暴風雨で投票する者が来ないという関係で一投要所の人が他の者にかわって投票をした事件であります。石川県河北郡森本村の事件は、これも詐偽投票で、二票を偽造行使した事件であります。  次は選挙公報掲載申請書受理拒否の事件でございます。秋田県と愛知県と鹿児島県にあったわけであります。このうち鹿児島県の一件が現在訴訟が係属中でございます。  次の地方選挙につきましては、開票終了後投票効力を再審査した件、これは長野県更科郡川中島村県会議員の選挙でこのような事件があったわけであります。  二番目の投票箱開披等に伴う紛争事件、これは皆様方御承知と思いますが、大阪府松原市で起りました事件でありまして、府会議員の選挙でございますが、候補者が二人ありまして、その開票成績がシーソー・ゲームであったので、有権者が多数詰めかけて興奮をしておった、そしてたまたま開票中無効投票処理いたしておりますときに、その表につけた紙を破ったのを投票用紙を破ったという観覧者からの声が上って、そのために紛争が大きくなって選挙会が数日間開けなくなったという事件でございます。  三番目は同時選挙において投票用紙の交付順序を誤まった事件徳島市でございます。次は党名誤記のまま氏名を掲示した件、秋田県大曲市、市会議員選挙でございます。  次は不在者投票の受理、不受理の決定を忘失した件、青森市の県会議員の選挙でございます。  次は無資格の立候補者の当選無効の件、茨城県行方郡の県会議員の選挙でありまして、検察庁より本籍地の町長にあてた既決犯罪通知に誤まりがあった、そのために立候補資格のない者が立候補をしたという事件であります。  その次に書いてございますのは今回の選挙で大きな問題となりましたものでありまして、一つは仙台市長選挙でございます。これは候補者が三名でございまして、当選の効力に関する異議申し立てがあったのでありますが、証拠保全の申請が出まして、裁判所において全投票を開きまして検証いたしました結果、総数よりもその開きました票数がふえたという事件であります。これは現在訴願の段階に相なっております。  いま一つの事件は先ほど佐竹委員生田委員からお話のございました徳島市の市会議員選挙投票用紙抜き取り事件であります。  以上が大体衆議院及び今回の地方選挙を通じまして問題の起りました事件の概要であります。
  49. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 選挙関係についてはただいま御報告を承わりましたことによって大体了承いたしました。なおただいまの自治庁選挙部からの御報告についてはさらに検討を要するものがあると存じますけれども、これはまた適当な機会に譲ることにいたします。  協定の時間が大へんおくれまして恐縮でございますが、本日特に会議をお開き願いました第二の事件でございます栃木県氏家町における人権問題につき、過般来人権擁護局に対して直接地方のこれらに関係のあります方々並びに私より法務省にお願いをいたしておきました件について、その後法務省としてはいかなる御調査をお進めになっておられますかを、この際中間報告でけっこうでございますから御報告を承わりたいと存じます。
  50. 戸田正直

    ○戸田政府委員 氏家町の人権問題につきましては、過般氏家町町政振興会の方々から、佐竹委員の御紹介によりまして私の方に直接調査の依頼がございましたので、その後宇都宮の地方法務局に調査さしておりまして、ただいままでの調査によりますと、被害者及びその証言関係者はほとんど全部調査を終ったという報告でございました。なおこれを整理いたしまして、次に加害者側関係について、詳細に調査いたしたい、かように考えておりまして、その節人権擁護局から直接係官を派遣して調査いたしたいと考えております。
  51. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 そういたしますと、ただいままでいわゆる被害者側を一応調べた、次いで加害者の側について直接に取調べをする、こういうお話でありますが、今まで被害者側をどういう範囲において、大体どれだけの人員で、どういう係によってお進めになったか、ここで公表のでき得られます範囲内においてどういう事実があったかを、おかまいがない程度で御報告願いたいと存じます。
  52. 戸田正直

    ○戸田政府委員 お答えいたします。その前に大体事件の概要を申し上げませんとちょっとよくわかりませんかと存じますので、申告になりました事件の概要をまず申し上げたいと思います。  氏家町の町政振興会から、「暴政の町氏家町の様相」と称する印刷物によりまして申告がございました。申告の内容は、「本年二月の知事選挙、引き続き行はれた総選挙に敗退した栃木県自由党小平派(中央では吉田系に属してその連絡は尾関義一氏が当っている)は如何なる手段を以てしても反対派即ち栃木県自由党船田派、民主党、左右両派社会党その地反小平的勢力を粉砕して失墜した勢力を回恢」回復の間違いじゃないかと思いますが、「回恢するの方針を以て四月の地方選挙戦に臨んだのである。従って小平派の拠点の一である塩谷郡地区では氏家町を中心に既に数年前から元代議士大門恒作、参議院議員佐藤清一郎、氏家町長矢澤高佳氏等が総帥となり、その腹心小林義雄氏を県会議員候補に、矢澤高佳氏を三度町長候補に擁立し、小林氏は医師の立場を悪用し、矢澤氏は現役町長の地位を乱用して町民の基本的人権を侵害し、更らに生活権までも奪ふ等の言語に絶する行動を敢てし、暗黒の町氏家、暴力の町氏家、権力の町氏家を現出するに至ったものである、以下事実に基づいて情を具し法務委員会の審議を煩はし公正なる英断を仰ぐ次第である」以下事家が記載されてありまして、これを要約いたしますと、大体十七点くらいになるかと存じます。町政の各般にわたった問題が起きておりまして、第一が県会議員立候者への干渉、二が県議候補に対する圧迫、三が候補者に対する圧迫、四が部落全部を村八分にする暴挙、五、反対職員に対する辞職強要、六、選挙事務所使用に対する圧迫、七、大谷女医に対する人権圧迫、八、町長候補者に対する圧迫、九、矢澤町長暴行事件、十、町会議員佐渡旅行に関する件、十一、脅迫による選挙運動、十二、職権乱用の人権圧迫、十三、矢澤土木町政の工事内容、十四、矢澤町長の議会無視、十五、生活権を圧迫する事例、十六、婦人会に対する矢澤町長の意図、十七、加藤婦人会長に辞職強要、かなり事件が広範多岐にわたっておりますので、非常に調査に困難をいたしておるのでありますが、今までに被害者及び証言関係者、大体二十名くらいを調査したかと存じます。詳細の点につきましては、近く私の方へ一応宇都宮法務局から資料を持ってくることになっておりまして、実はけさ急遽電話によりまして、どの程度の調査をしておるかということを照会いたしました結果、被害者とそれに対する証書関係者をほとんど全部調査したというだけの報告でございまして、詳細につきましてはただいまのところまだ資料がございません。近く資料が私の方へ届けられることと考えております。
  53. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 そうすると宇都宮法務局において被害者関係約二十数名のほとんど全部を調査して、その調査を了した。近く法務省にその報告があるはずだ、それを整理して今度は加害者側の調査に移るんだ、それには法務省が直接係官を派して調査を進める考えである、こう承わりましてよろしゅうございます。
  54. 戸田正直

    ○戸田政府委員 先ほど申し上げましたように、被害者の方はほとんど調査が終りましたのでこれを整理いたしまして、加害者側の調査に移るのでございますが、大体今までの調査によって人権侵犯事件の重点もほぼわかったかと存じますので、それらの点について本省から直接係官を派遣して調査をいたしたい。ただ技術的の面がありますので、これを全部、加害者は一人残らず本省で調べる、こう固く申し上げるのではございませんので、いろいろ技術の点から向うの法務局の職員を補助させる場合、あるいは法務局の職員だけでさせる場合もございますが、人権擁護局が中心になって調査をいたしたい、かような考えでございます。
  55. 佐竹晴記

    佐竹(晴)委員 ただいま調査中でございますから、それ以上あまり深く掘り下げてお尋ね申し上げることは無理かと存じます。法務省が誠意を持ってお調べを進めていただいておりますことに対して、私ども満足いたしますと同時に、どうかこの問題はただいま戸田人権局長の説明もありました通り、その題目を並べただけでも容易ならぬ事態が積み重ねられております。まさに暴政の町氏家といって過言ではございません。今日の世代においてかくのごとき非民主的な、かくのごとき暴政の町が今なお存在するというがごときは断じて許されないところであると存じますので、どうか法務省におきましては徹底的に、そうして果敢にお調べをいただきまして、国民をして安んじてその生活につくことのできますように、これ以上さらに十分の御調査をお願い申し上げまして、本日のところはこの程度で私の質問を打ち切ります。
  56. 世耕弘一

    世耕委員長 本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもってお知らせいたします。     午後零時四十九分散会