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1955-07-09 第22回国会 衆議院 法務委員会 第33号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月九日(土曜日)     午前十一時十五分開議  出席委員    委員長 世耕 弘一君    理事 山本 粂吉君 理事 三田村武夫君    理事 古屋 貞雄君       椎名  隆君    高橋 禎一君       林   博君    眞鍋 儀十君       生田 宏一君    横川 重次君       猪俣 浩三君    神近 市子君       細迫 兼光君    淺沼稻次郎君       佐竹 晴記君    戸叶 里子君       細田 綱吉君    志賀 義雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 花村 四郎君         文 部 大 臣 松村 謙三君         厚 生 大 臣 川崎 秀二君         労 働 大 臣 西田 隆男君  出席政府委員         警察庁長官   石井 榮三君         警  視  長         (警察庁刑事部         長)      中川 董治君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     緒方 信一君         文部事務官         (社会教育局         長)      寺中 作雄君         厚生事務官         (社会局長)  安田  巖君  委員外出席者         検     事         (刑事局刑事課         長)      長戸 寛美君         労働事務官         (労働基準局         長)      富樫 総一君         労働事務官         (婦人少年局婦         人労働課長)  谷野 せつ君         労働事務官         (婦人少年局婦         人課長)    高橋 展子君         労働事務官         (職業安定局雇         用安定課長)  松本 岩吉君         参  考  人         (警視総監)  江口美登留君         参  考  人         (警視庁防犯部         長)      養老 絢雄君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ――――――――――――― 七月八日  委員田口長治郎君及び畠山鶴吉辞任につき、  その補欠として小澤佐重喜君及び生田宏一君が  議長指名委員選任された。 同月九日  委員吉田賢一辞任につき、その補欠として細  田綱吉君が議長指名委員選任された。     ――――――――――――― 七月七日  沖繩人権問題調査に関する陳情書  (第三二六号)  売春等処罰法制定促進に関する陳情書外一件  (第三六〇  号) を本委員会に送付した     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  小委員会名称変更に関する件  小委員長選任  小委員補欠選任  参考人招致に関する件  連合審査会開会に関する件  売春等処罰法案神近市子君外十八名提出、衆  法第一四号)     ―――――――――――――
  2. 世耕弘一

    ○世耕委員長 これより会議を開きます。  本日は売春等処罰法案を議題とし、質疑を行いますが、質疑に入ります前にお諮りいたします。かねて設置いたしました交通禍防止に関する小委員会は、その名称交通犯罪に関する小委員会と変更し、小委員従前通りとし、小委員長には猪俣浩三君、最高裁判所機構改革に関する小委員であった小澤佐重喜君と入れかわりまして小林かなえ君を小委員とし、小林かなえ君を最高裁判所機構改革に関する小委員長にそれぞれ指名にいたしたいと存じますが御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 世耕弘一

    ○世耕委員長 御異議なければさよう決定いたします。     —————————————
  4. 世耕弘一

    ○世耕委員長 次に、売春等処罰法案について質疑に移ります。江口警視総監養老防犯部長をそれぞれ参考人と決定いたします。質疑の通告があります。これを許します。猪俣浩三君。
  5. 猪俣浩三

    猪俣委員 法務大臣お尋ねをいたします。今回のこの売春法案が通過いたしますれば、御存じのように売春をした女及び買った男を処罰するように相なっておるのであります。そうしますれば、ここに駐留軍基地関係売春行為ももちろん取り締られるわけでありまして、その違反者の中に外国兵隊が含まれることは当然であります。そこでこの売春の女を買った相手外国人に対して、いかに捜査を進め、これを処罰するのであるか。政府には、そのはっきりした決意があるかどうか。今日売春問題がようやく世論の支持を得まして、この通過が世論代表機関である各新聞に一斉に支持されているゆえんのものも、この基地周辺風紀破壊の事実に対して、ようやく国民がこの悪であることを認識したことが大きな原因でもあると存じます。それでありますから、徹底的にこの取締りを断行しなければ、この法律を立てました動機にそぐわないことに相なりますので、そこでこの外国人に対する捜査及び処罰につきまして、法務大臣及び警察当局の御所見を承わりたいと思います。
  6. 花村四郎

    花村国務大臣 猪俣委員の御質問、まことにごもっともであります。傾聴に値するものがあると存じます。しかし御承知のごとく、外国人に対する関係においては、国際関係も考慮せねばならないし、いろいろな事情もありますので、多少目こぼしのあったうらみもあるのでありますけれども、大体において今日まで取締りは励行をいたしておったと申し上げてよろしいと思うのでございますけれども、しかしだんだん時代も移り変って参りまして、ただいま猪俣委員の申されましたごとく、売春取締りに対する厳格なる態度をもって臨まなければならぬような社会風潮も強くなって参りましたので、取締り当局といたしましては、あくまでも社会正義の上に立って、そうして社会事情に沿いますよう、もちろん厳格なる取締りを励行していきたいと存じますが、その取締りの対象といたしましては、たとい外国人でありましょうが、あるいは日本人でありましょうが、法規の前には平等であるという観念に基いて、やはり徹底的に取り締っていきたいと存じております。
  7. 猪俣浩三

    猪俣委員 先般私のところへ訴えて参りました人があります。この人はやはり赤線区域営業をやっておる人でありますが、駐留軍兵士がその晩泊って、女をあげて遊興して、そのあげく放火をしたのであります。二十軒ばかり焼き払ってしまった。そしてそれはその男がやったことはほとんど明々白々になっておる。日本警察もこれを取り調べた。しかるにどうしたわけか、身柄をMPに引き渡してしまって、今日まで何のさたもないという事件が実はあるのであります。その被害者住所姓名も、加害者駐留軍兵士の名前も所属部隊も全部明白になっております。私は今これをこの場で公開はいたしませんが、おそらく法務省なり警察庁なりには報告が来ていると思う。そうしてその人が私に訴えて参りましたのは、MPに引き渡されているが、今日MPから出頭せよという命令が来ておる。それはその営業主と、その晩駐留軍兵士のお供をいたしました売笑婦——その女の待遇が悪かったので火をつけたというのですが、その二人をMPが呼び出しておる。これに出頭しなければならぬものであるかどうか、自分たちは出たくないのだ、出れば必ずうそ発見器にかけるということを言ってきているので、そんなものにかけられて、いやその男がやったのではございませんというような自白をさせられるに違いない。こういう心配があるが、行かないと縛られるものでしょうかという質問を私にやって参りました。私は、行く義務はない、こう答えた。これは日本警察が取り調べ、日本警察が抑留し、日本が裁判すべきものだと私は考える。これに対して公務にあらざる——まさか赤線区域遊びに行くのは公務だとは言われないだろう。いくらアメリカでもそんな公務はないと思う。公務じゃないとするならば、公務以外における駐留軍犯罪は、一体どういうふうに実際運営されておるのであるか、私は非常に疑問になってきた。行政協定あるいは行政協定に基く刑事特別法等を見ますならば、私は日本捜査権処罰権があるものだと考えておるものでありますが、これに対する法務大臣及び警察当局の御所見を承わりたい。
  8. 花村四郎

    花村国務大臣 ただいま猪俣委員の御主張に対しましては、いまだ報告を受けておりませんから、至急その真相を調査いたしたいと存じます。
  9. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 猪俣委員のただいまのお尋ねに対しましてお答えする前に、この席を拝借いたしまして一言ごあいさつをさせていただきたいと思います。私、今月一日付をもちまして警察庁長官を拝命いたした石井でございます。何分微力短才の者でございますが、皆様の今後格別の御指導と御鞭撻をいただきたいと思います。よろしくお願いいたします。  ただいまのお尋ねの点でありますが、目下当委員会において御審議中の売春処罰法案成立いたしました場合には、相手米人でありましょうとも、行政協定に基きまして当然警察庁といたしましては捜査ができるのであります。法の趣旨に基きまして、私ども法案成立の暁におきましては、厳正な取締りをいたす覚悟でございます。  なお先ほど具体的な事例についてのお尋ねでございますが、私ども目下まだその報告に接しておりませんので、詳細調査をいたしまして、こういう事案に対しましても、これまた行政協定に基きまして日本警察として当然捜査ができる建前になっておりますから、そういうふうにいたしたいと思っております。
  10. 世耕弘一

    ○世耕委員長 委員諸君にお伝えいたしておきますが、松村文部大臣は十二時以後他の委員会出席する約束があるそうでございますから、そのおつもりで御質問をお願いいたします。
  11. 猪俣浩三

    猪俣委員 この問題は、私に鑑定を求めてきた人の承認をまだ得ておりませんので、その被害者住所姓名及び加害者であります米人所属部隊及び姓名ことごとく明白に相なっておりますけれども、後日これは警察庁へ私から申告いたしますから、御調査願いたい。なぜこれを質問いたすかと申しますと、この売春法が通過いたしましても、かような放火犯についても、かように日本警察が無力であるといたしましたならば、こといやしくも外人に関する限りにおいては有名無実になってしまい、いわゆる基地周辺におきまするところの風紀を建て直さなければならぬとするわれわれの正義観が満足されないことが起るのであります。そこで私はお尋ねしたのでありますが、この事案所轄警察署もわかっておりますから、徹底的に調査していただきたい。自分が家を焼かれた上に証人に呼び出されることで戦々きょうきょうになって、見ず知らずの私のところに回り回って、つてを求めて必死になって質問に来た。うそ発見器にかけるぞというて通告してきたというのであります。かような被害者がかえってあべこべにMPから脅迫せらるるような現象が一つでもあるということは、日本の国権に関する重大問題だと私は考えております。この席上では明らかにいたしませんけれども、後刻御調査願って、場合によっては当委員会に御報告を承わりたい。そこで今法務大臣決意を聞きましても、違反したものは徹底的にやるという御決意でありますので、あと私どもこの法案が通過いたしました後の実績によってまた申し上げるより仕方がないと思います。それからなお一言法務大臣なりあるいは警察庁長官に確かめておきますが、この外国兵隊が遊郭へ遊びに来る、あるいは売春婦を買うというようなことは、公務とは認められず、公務にあらざるものは日本捜査権あり、日本処罰権ありと私は考えておりますが、法務当局警察当局はどういうふうに御理解しておりますか、承わりたいと思います。
  12. 花村四郎

    花村国務大臣 お説の通りであります。
  13. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 全く同感でございます。
  14. 猪俣浩三

    猪俣委員 実は松村文部大臣がお急ぎのようでありまするので、法務大臣は当委員会所管大臣でありまするから、御迷惑でももうちょっとお残り願いまして、文部大臣の方にお尋ねさせていただきたいと存じまするが、その前にもう一点だけ法務大臣お尋ねいたします。実は、この売春法案が提案せられますと、利害関係のあるところの、赤線区域あるいは青線区域と称せられておるところ、われわれからいえば脱法的な営業をしておって——これは警察庁にもお尋ねしなければなりませんが、全く脱法的でありまするけれども警察の黙認のもとに吉原とか新宿とかいうところに、いわゆる赤線区域というものがあるのでありますが、こういうところの業者相当反対運動を展開しておる。これはそれ自体は、彼ら自身の利害関係あることでありまするがゆえに、反対運動をすることもしかるべきことかとは存じます。しかしある大新聞記者の私にささやくところによりますと、相当の金がばらまかれておるやに承わる。もしかような国家生命にかかわるような重大問題、この法案審議いたしておりまする際に、かような業者裏口運動をやるというような行動がありまするならば、それもただの運動はやむを得ませんが、そこに金銭がもしばらまかれておるような事実があるとするならば、実にこれはゆゆしき大問題だと考えます。そこでさような事実が捜査当局において——とにかくそういう煙があるのであるかないのか、全く火のないところ煙が立たずといいますが、そういう事実は荒唐無稽なことで存在しないのであるか。もしそういう事実がかりにある疑いがあるならば、いかにこれを取り締るのであるか。なおまた今後、この法案成立間近くなるならば、あるいは委員諸君に対しまして、どういう脅迫がこないとも限らぬ。そういうことに対して警察及び検察当局はどういう処置をおとりになりますか。私は、現在そういう疑いがあるかどうかということと、あるとするならば、いかなる捜査をやっておられるかということと、いま一つ、あるいは現在及び将来にわたって、そういう金銭の伴うような反対運動、脅迫めいた反対運動が行われるとするならば、警察検察はいかなる態度で望まれるのであるか、その所見を承わりたいと存じます。
  15. 花村四郎

    花村国務大臣 ただいま猪俣委員の御質問になりましたうちで、業者反対運動があるというお話ですが、その反対運動はどこにあられますか、私のあえて関知せざるところでありますが、少くとも法務省関係においては、今日まで業者陳情もございません。従いまして、その反対運動の手も届いておらぬことも当然であると申し上げてよろしいと思います。  それから第二の、金がばらまかれているというお話でありますが、これも私は今日まで、幸か不幸か聞いたことがありませんが、しかし猪俣委員の言わるる金のばらまかれているということが、どこにどういうふうにばらまかれておりますか、もしそれが少くとも犯罪行為に触るるものであるといたしますならば、それは検察当局といたしまして、仮借なく法規に照してそれを処断することに、あえてちゅうちょせざるものであります。従いまして、もしさような事実が明確であられるということでありますならば、遠慮なく一つその材料を御提供願いたいことを、特にお願いいたしておきます。もちろん、こういう重大な法案に対しまして、反対運動と結びつけて金銭をばらまくがごときは、これは不当な行為でありますことは言をまたぬことであります。今日までの涜職問題も、とかくこういう法案を取り巻く涜職事件が行われて参りまして、議会方面における郭清の声も高いことは御承知通りでありますので、もしそういう行為がかりそめにもあるといたしますならば、それは政界革新意味において、徹底的に捜査を進めますことを、はっきりここで申し上げておきたいと存じます。しかしかくのごときことのないことを私は希望いたしますると同時に、多分それは一片の風説に終るのではないか、こう存じておりますが、風説に終ることを神がけてやみません。
  16. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 ただいま法務大臣の御答弁にありました通り、私ども警察当局といたしましても、もし反対運動の内容におきまして、犯罪と認められるような事態がありますならば、厳正な取締りを加えることは申すまでもないところであります。ただいままでのところそうした容疑も、具体的事実においては、私どもはまだ聞き及んでおりません。今後そういうことを耳にいたしました場合には、もとより当然厳正な取締り態度を堅持果て参りたいと思っております。
  17. 世耕弘一

    ○世耕委員長 猪俣君に委員長として一言申し上げておきますが、売春等処罰法案の直接の審議をいたしておりますのは、当委員会であります。同時に、もし今猪俣君がおっしゃったような問題があるとすれば、勢い当委員会委員諸君疑いの目が注がれるということは、およそ想像がつくのであります。私の信ずる範囲においては、当委員会の権威ある諸君は、かくのごときうしろ暗い行為は絶対にないと私は確信いたしております。何か大新聞の人から耳打ちされたというお話でありまするが、一笑に付すべき問題でもないように考えられるのであります。特にこの際本委員会委員諸君の中へそういう疑いの目が向けられておるのであるか、あるいは委員以外のことであるかというような点について、お考えがあればこの際明確にしていただきたいと思います。これは本委員会の名誉のために私は一言申し上げておきます。
  18. 猪俣浩三

    猪俣委員 これはもちろん、当法務委員なんぞにはさような運動をする者もおそらくないと思います。御存じのように、当法務委員会は終始一貫いかなる涜職事件がありましても、この法務委員だけは一人も、伝統的にこのような波に巻き込まれる者がなかったのは、これは法務委員会誇りとして——どもは第一国会以来やっておりますが、お互いに誇りとしているところであります。それは、ほとんど大部分が弁護士さんが多いので、法律のことがよくわかっておりますし、そんなことをやり得る社会的地位の人じゃありませんので、そういうような事実が当委員会に向けられておるとは考えられません。ただし私のこの質問は、今私が初耳で申し上げたのじゃないのでございまして、新聞にもさような疑いのあるようなことがすでに出ておる。たとえば毎日新聞余録にも、全国の業者から一千円ずつ運動資金を集めてやっておることが書いてあります。そこで私はさようなことがあるかないか、ないならば仕合せであるが、あってはならないから、法務大臣及び警察関係から十二分なる捜査の目を光らせておいていただきたいということを要望的に申し上げたのであります。当委員なんぞは毎日私が顔を合せておる人たちで、そんな疑いのある人は一人もありませんし、この売春取締法に根本的に反対していらっしゃる方はほとんど見受けられません。根本処置についても、私どもの非公式な雑談の間にも、ほとんど賛成なさっておられるのでありまして、そういう方々がこういうものに動かされるなんということは毛頭考えておりませんから、私の質問もそういう意味じゃありません。ただ、すでにこれは毎日新聞余録に出ております。私が先ほど耳打ちされたというのは、毎日新聞ではございませんが、とにかく多少のうわさが出ておりまするから、法務当局においても警察当局においても、いよいよこれが終末に近づくに従って私ども多少の懸念がありまするがゆえに、十二分なる監視の目を光らせてもらいたい。これがあるいはかえって予防的効果を発生するかもしれませんので、この質問をいたしたのでありまして、他意はありません。
  19. 世耕弘一

    ○世耕委員長 了承いたしました。  次に委員諸君にお願いいたしますが、本件は、非常に大きな社会問題を取り扱っておるのであります。さような関係から、各方面資料並びに意見を聴取することが本法案審議する上において非常に大切だと思いますから、いかなる方面の人といえども自由にお会いを願いたい。そうして公平な意見と重要な価値ある資料に基いて御審議下さることをお願いいたします。この意味において、いかなる立場の人にも御自由にお会い願う、この点について萎縮的な態度でこの審議を粗末に解決されぬことを私は特に切望いたします。今猪俣君からのお話もありましたでしょうが、この点を御了解おきを願いたいと思います。
  20. 猪俣浩三

    猪俣委員 それでは、法務大臣及び警察庁長官その他の方への私の質問を保留いたしまして、松村大臣、お急ぎのようでありますから、簡単にお尋ねいたしたいと思います。  申し上げるまでもなく、売春等処罰法案が通過いたしたといたしましても、この取締り法規それのみによって、売春社会的事実を絶滅せられるというような大それた考えはわれわれは持っておるものではございません。これは取締りと、性道徳に対する教育の徹底、及び更生施設保安処分、かかるものが三位一体をなして、全国民の努力によって、文化闘争として、しつこく長くこの闘争を展開しなければ、この社会悪は消えないのであります。その意味において、その最も中核となるものは性教育でなければならぬと私は考えますがゆえに、文部大臣の御出席を本案の審議に関して要求したのであります。趣旨はそこにあるのでありますが、この問題は文教委員会においても、しばしば論じ尽されておるのではないかと存じますけれども法務委員会といたしましては、文部大臣の御所見を公式に拝聴いたしたいので、質問をいたす次第であります。  戦後、エロ本エロ映画、ストリップ、実に青春期にあります子女を持っておる者には一日も耐えがたいような状態でありまして、これがほとんど無警察状態に放置せられておる。私どもしばしば時の政府に警告をいたしましたが徹底いたしません。ようやく近ごろ少し取締りが厳重になったようでありますけれども、これらの風俗壊乱の文書、図画、映画が、いかにわが国の青少年生命虫ばんでしまったか、犯罪動機の大半はここから出発しておるのじゃないかと私は痛嘆久しゅうしたのであります。これに対してその道徳建設中心省であります文部省は、一体今まで何をやっておったか、実に私は憤慨にたえない。これは松村大臣を責めるわけではございません。社会党内閣まで含めまして、歴代文部大臣というものは実に弱体であった。この意味におきまして、その道に対します厳粛なる大臣として尊敬せられております松村文部大臣は、この青少年純潔教育につきまして、いかなる具体的な抱負をお持ちでありますか、お聞かせを願いたい。これは国家百年の大計のために実に徹底的にやらねばならぬ問題だと思うのであります。私も多数の若い子女を持っておりますが、一日として安心をしておれません。一体こんな状態でよいのであるか。これに対して国家はいかに戦うか、具体的なる方針をお持ちであるか。はなはだ抽象的でありますが、学校教育において純潔教育をいかに進められておるか。社会、家庭における教育において、文部省指導者となって、いかに純潔教育を進められておるか。あるいはエロ本やその他の風俗壊乱の図書に対して、文部省教育的見地から取締り当局にいかなる進言を今までしてこられたものであるか、これらの点につきまして御抱負を承わりたいと存じます。
  21. 松村謙三

    松村国務大臣 今のお話は非常に要点に触れておりますので私も端的に申し上げたいと存じます。  大体文教の側がほんとうに事績が上って参りますならば、こういう法案の問題も日の目を見ずして済むかもしれませんが、今日の状態はそれと逆行いたしておる。お話悪書のことはただいまお話通りでございます。それからもう一つは、映画などの児童の心に食い入りますことも、これまたえらい影響を持つのでございますが、これらに対しまして歴代文部当局のお責めの言葉もございましたが、実際において文部行政の今日の許す範囲においては、この悪書をとめ、その他のことに監督権をふるう権限を全然持っていないのでございます。そこで昨今に至りまして、父兄の方々とかあるいは母の方々とか、社会的に悪書を駆逐して良書をすすめていかなければならぬとか、映画も悪いものを見てはならないとかいうことで、ようやく少しばかりいい方向に改善を見つつあり、それから出版業者の自粛というような点もありまして、幾分かずつ改善されておりますけれども文部省といたしましては、この風潮に乗って善導していく以外に方法はない。映画のごときも文部省推薦の依願を受けたものだけの検閲をいたしておりますが、これでもやはりある程度の効果は来たしておることと思うのでございます。  それから学生に対する性教育をどうしておるかということにつきましては、実はあけすけに申しますと、十分の効果は見ることができかねる。それはどういうことかと申しますと、この問題はいかにも教える先生そのものによって非常な差がありますので、そこに相当の苦心もありますが、しかし学校教育においては何と申しましてもある程度のことはできますが、最も今日までなおざりにされており、そしてぜひやらなくてはならないのは浮浪児と申しますか、不良の少年たち、これをやはり今日は多く警察の手で取り扱っていただいておりますけれども、これを教育の面において十分の指導をしなくてはならない、この点が最も重点であろうと心得まして、今度の社会教育の面におきましても、さらに次の機会において予算を十分に取りまして、こういう方面指導、訓育に力を尽したいと考えております。
  22. 猪俣浩三

    猪俣委員 文部大臣にはいま少しく実際の面につきまして詳しくお尋ねいたしたいのでありますけれども、お急ぎのようでありますので他日を期したいと思いますが、ただ大臣は現内閣におきましては相当有力な地位にあられる大臣でありますゆえに、私は一言お願いがあるのであります。どうぞ鳩山内閣の閣議といたしまして、このような青少年の劣情をあおるような、それによって金もうけをしておるような、その罪悪は売春業者と同じことです、出版業者映画会社あらゆるものに対して、憲法の基本的人権ということを、曲った妙な方面に自由ということを考えられず、これを公共の福祉に反するという点から厳重なる対策を鳩山内閣は立てていただきたい。申すまでもなく国家を滅亡せしめる手段は、武器よりも国民風紀を頽廃せしめることが最も有力であることは古今東西の歴史が証明いたしております。私どもはアメリカが日本に進駐して参りまして、幾多解放的ないい事実もありましたけれども、この風紀を頽廃せしめた責任は彼に追究しなければならぬと考えておる。誤まれる言論出版の自由から、実に大胆なる風紀を乱す行動を公然行なって、これがたあに日本青少年の魂が実に虫ばまれております。私は押しつけられた憲法なんということよりも、こういうことに対してもっと徹底的な対策を立てていただいて、その意味からも真の精神的独立をはかる方策の一環といたしまして、売春業者に対する制裁を強化することと並行いたしまして、風紀取締り、出版の取締り、エロ、ストリップの取締り映画取締り——ども社会主義者でありますけれども、かような自由というものは許されないと考えます。これに対しまして徹底的なる閣議の方針をおきめ下さるように、有力なる閣僚の一人である松村大臣に希望としてお願い申し上げまして、私は文部大臣に対する質問をこれで終ります。
  23. 古屋貞雄

    ○古屋委員 少し関連してお尋ねしたいと思います。ただいま猪俣委員から御質問がございましたが、私は特に、文部大臣は時間がないそうですから端的に申し上げますが、日本の将来を背負って立つ青少年の将来に非常に重大な関係を持っております軍事基地の子弟に対する対策について伺いたいのです。私は参考までに、北富士山ろくの保健所に私どもお願いしまして、昨年あそこで売春をしております売春婦の年令、学校の教育関係等を調査いたしました。これはその保健所の報告書ですが、その中にこういう重大なことがあるのでございます。二十八年の四月、五月、六月でございますが、売春婦の中に十六才未満の売春婦を四月は四名、五月は二十一名、六月は十七名を発見いたしました。これは保健所で検診をしたのですから、間違いない事実であります。この十六才未満の少女が売春を業とする場所に、誘拐されたと申しますか、いずれにいたしましても置いて、売春をしているというこの事実、この問題に対しては、文部省といたしましては重大な対策をすべきだと考えるのであります。さらに進んで北富士の基地におきましては、小学校の生徒並びにただいま申し上げましたような中学の生徒が、売春婦とお客さんである駐留軍諸君との連絡や客引きの仕事をして小づかいをもらっている。あるいはさらに使い走りをして金をもらっている。あるいは目の前で売春をされておる実情を見ておりまして、それがために日常のままごと遊びにこれを利用しておる。あるいは少し大きくなった十五、六歳の男子の青年はポン引きをやったり、ヒロポン患者になったりというようなことになって、非常に大きな弊害を現実に社会に流しておるわけであります。こういう問題に対する文部大臣の根本的な対策がおありでありますならば聞かしていただきたい。ことに十六歳以下の婦女でございますならば、義務教育の年限の適格者でございますから、すでに義務教育の学生としての修業を受けなければならない立場の者がここに醜業婦として働いておる。かようなことを考えますときに、これらの青年の将来のことを考えますときに、あるいは日本の将来の民族の立場から考えますときに、まことにゆゆしき問題であると私ども考える。教育上から考えますならば、最も重大な問題でございますので、これに対します御対策がありましたならば、ここでお示しを賜わりたいと存ずる次第でございます。
  24. 松村謙三

    松村国務大臣 猪俣さんの先刻のお話は私もしごく同感でございまして、このままにほうっておくことはできないと考えて、悪書の駆逐、映画などに対することは、ことに私の所管でございますので、ぜひお話のような対策を講じたいと考えております。  それからただいまお話の点でございますが、実は今日もこういうことを申して決して責任をのがれるわけじゃございませんけれども、実情を申し上げておきますならば、文部省といたしまして、これらの地方のできごとに対して直接の監督を行う権限を持っていないのでございます。たとえば鹿児島に起りましたあの松元事件などにつきましても何らの報告を受けない。新聞に出ましてから初めて地方の教育委員会の方へ電話なり電報なりで連絡をして実情がようやくわかる。そうしてこれらの措置は文部省の権限でありませんで、地方教育委員会の権限でございますので、そこに直ちに処置のできかねる面もございますが、従来ともそういう場合には地方委員会の方へ厳重な取締りをするようにこちらから勧告をいたすという程度にすぎませんで、これらもはなはだ遺憾でございますけれども、今後はさらに十分の注意をいたして、そのようなことが根絶いたしますように努力をいたしたいと考えております。
  25. 古屋貞雄

    ○古屋委員 ただいま文部大臣から御答弁ございましたが、私があえてしつこく質問いたしますゆえんは、日本には今七百数十カ所にわたる軍事基地があります。そして私が今説明申し上げた例は富士山の北富士だけなのです。七百数十カ所の軍事基地のうちの北富士の一小部分の範囲においても、ただいま申し上げたようなことが行われているのでありますから、全国的に申し上げますれば莫大な数に上ると思うのです。一方においては青少年問題協議会においてやかましくいろいろと対策を練っておるようでありますけれども、私はただいまの文部大臣の答弁では納得がいかないのです。ただ取り締るということじゃないのです。根本からこれを根絶するような策を持っているかどうかということを聞いているのです。私はこまかいことをお尋ねしているのではないのです。たとえば性道徳に対して、性教育、性倫理の確立に対して一体文部省はどういう考えを持っているかという方針、あるいは軍事基地に対するところの——そういうような義務教育の少年がそういうところに出入りするばかりではないのです。そこに身売りされて、そこに従事して売春をやっておる。重大な人道上の問題であり、日本教育上の問題としては重大な問題でありますから、これに対する対策を大臣はお持ちになっておらぬはずはないのです。持っていないというなら大臣の資格はありません。そこに大臣としてははっきりとした鳩山内閣の文教政策というものが打ち出されていなければならぬ。それを承わっているのでありまして、それはどうでありましょうか。現状に対する取締りを御答弁していられるようですけれども、そうじゃない。私は根本的にこれに対するところの文教府の政策はどうであるかということを承わって、しかも私どもが今審議いたしますところのこういうような処罰規定が、結局結論においては一方においては必要であるかないかという点まで私は御方針を承わりたいのです。委員から申されましたように、この処罰規定だけで一切を解決するものとは存じておりません。これは末の末です。根本は性道徳の確立であり、性倫理の確立であり、従って売春はどんな方面からどういう理屈をつけましても悪であるということの教育国民に徹底してなければ絶滅はできません。一番根本になるべき問題は、夫婦生活以外に、尊い人権が金の多寡によって、尺度によって売買されておるというこの姿、こういうことは人道上許すべからざる罪悪であるということを徹底的に国民に啓蒙し、認識させることが根本的な解決策だと思う。従ってそういうような根本的な大きな政策をお持ちになっておるかどうか。なっておればどういう方法でどういう考えでおやりになるかということを承わって、私どもは本処罰法の審議の貴重な参考にしたい。しかも支柱にしたい。従って文部大臣はこの処罰法に対してどういうお考えであるか、また絶対必要であるか、どうかという御意思も御表明願いたいと思います。
  26. 松村謙三

    松村国務大臣 お話の点につきましては、これはもちろんのことでございまして、性道徳の尊重ということについては今日まで義務教育の中にも織り込んでどの学校もやっていてくれるはずであります。ただそういう間を、基地の付近であるとかなどにそのようなことが起るのでありまして、これに対しても一面学校の一層の性道徳教育と、もう一つは地方の手においてそういうことのないように取り締っていくよりほかに道はなかろうと考えております。
  27. 三田村武夫

    ○三田村委員 先程委員長からお話のありました通り売春問題は今世論の焦点になっておるようであります。従いましてこの委員会におきましてもきわめて慎重な態度でこの問題の対策を考えなければならぬと思っております。私本日は各閣僚列席の上で、各般の資料をそろえて相当詳しい御意見を伺いたいと思っておったのでありますが、文部大臣急ぎのようでありますから、簡潔に、まず文部大臣の御意見を先に伺っておきます。先ほど文部大臣猪俣委員の御質問にお答えになりまして、本来は道義の高場、社会秩序の確立、いわば正しい政治秩序が確立されてこの問題も解決されることが望ましい。別な言い方をいたしますと、法もって臨むことはこの次だということをお述べになりました。私もその点は全く同感であります。私は特にここで各閣僚に対して一言申し上げて内閣全体の立場からお考え願いたいことがあるのであります。  実は私ちょうど十年ぶりにこの国会へ戻ってきまして、まだ返り咲きの一年生であります。きわめて経験が薄いのでありますが、二、三の法案に直面して感じたことは、たとえばこの委員会にかかりました少年院法の一部を改正する法律案、これも少年院から逃亡したいわば在監者でありますが、これを連れ戻すために強制力を用いて手錠をはめるという新しい一つ法律を加えたのであります。この委員会ではありませんが、地方行政委員会持ち込まれました警察庁発議の銃砲刀剣類等所持取締令等の一部を改正する法律案におきましても、近ごろ青少年が不良化して飛び出しナイフとかあいくちとかいうものをもって凶悪な犯罪を行う、だからこういうものの所持を禁止することが出てきたのであります。つまり御承知通り終戦後十年を経ましてわれわれは新しい反省期に来たのであります。そこの中に占領政策の惰性と申しましょうか幾多反省すべきものがありますが、それらの現われた現象を一々法律で手当をして参りますと、やがてまたわれわれは法律によってがんじがらめになるという事態の出現をおそれるのであります。もとより売春などという言葉すらわれわれは嫌悪したい気持には変りありません。どのようにしてこういういまわしい事態を取り除くかということはきわめて重要であります。基本的人権の立場から考えましても、あるいは道義、秩序、風紀上の問題からいたしましても、どうしても除かなければならない、解決しなければならない問題でありまするが、私も与党委員の一人といたしまして、法案成立の場合には共同の責任を考えます。ただ法律が通っただけで問題は解決すると思いません。けさ発表されました労働省の売春白書なるものを新聞で拝見いたしますと、全国に存在するもの約五十万とあります。この法律の施行と同時に、これは厚生大臣のお手元になだれ込むものだと思います。これはただ法律を作って予算的裏づけを持たず、この問題を軽率にもわれわれは考え得る立場ではないのであります。せっかく文部大臣、厚生大臣、労働大臣、あとで法務大臣も来られますから、具体的にそれらの問題を伺いたいと思いますが、一つ文部大臣におかれましても、今猪俣委員の御質疑また古屋委員の御意見にもありました通り、これは文教政策の根本に触れる問題であります。青少年の問題婦人の問題、何と申しますか、言葉に語弊があるかもしれませんが、紊乱その極に達したともいいたいくらいこのごろの風教上の乱れであります。それらの問題を文教の面からどう是正していくかということはきわめて重要であります。これは何も思想統制の方向に持っていくとか、あるいはたとえば映画にいたしましてもその中にはよいものもありまして、また検閲制度を復活してこれに制限を加えるというような意見を持つものではありません。どのようにしてこれを正していくかということは政治の一番大きな責任だと思います。ある政治学者の言葉ではありませんが、一切の社会悪は政治家の怠慢と無責任によるといわれます。われわれはその言葉こそわれわれが今日与党議員の一員としてともども考えなければならぬ言葉だと思います。けさの労働省の白書を見ましても、五十万の人々はどのような経路を経てこの道に転落してきたか、その調べた統計を見ますと、七割までは生活のためとあります。一度結婚生活を持ってその後にこの道に転落した者のその分類を見ますと、九割までは夫と死別したとあります。そういう立場の者、つまり社会の転落者と申しますか、あるいは落伍者と申しますか、別な表現をいたしますと、政治の貧困からくる落伍者に対してどういう手当をするかということは、私はきわめて重要な政治的課題であると思います。ただ法務大臣の所管だけではありません。また労働大臣の所管だけではありません。厚生大臣の所管だけでもございません。その根幹をなすものは文教政策にあります。つまり道義の高揚と申しますか、民族の正しい秩序を確立していくという方向になければならぬと思いますから、どうか一つ政府全体の責任でこの問題の根本的解決をお考え願いたいということを冒頭に申し上げておきます。  文部大臣に対しては今猪俣委員、古屋委員から御質問がありましたが、文部大臣は今の文部省の現状からいうと、権限の面において、機構の面において、制度の面においてまことに手の及ばないところがたくさんあると言われました。私もよく承知しております。それなら一つの根拠というものを統制という形から見るのでなくて、新しい日本のバックボーンとなるべき一つの中核と申しますか、新しい社会の秩序、道義の指向、その目標をどこに置くかということについて、経験の深い松村文部大臣は十分の御所見をお持ちと思いますから、一応ここでお述べ願っておいていただきたいと思います。これは変な言葉をつけ加えてお願いをいたしますが、ただ委員会の記録に残すということだけでなくて、その御発言は閣議に持ち返って、一つの閣議の方向を文部大臣自身が文教の面からリードして責任のある御処置を願いたいという立場から文部大臣の御所見をお伺いいたします。
  28. 松村謙三

    松村国務大臣 ただいまのお話はきわめて重大でございまして、今ここに具体的に申し上げる機会には達しておりません。ただ文部省の独裁というような反動的な面を避けて、それをなくして善良な指導が徹底して行われるような形が何とかして制度の上、法制の上にできないものか、こういうことをいろいろ考えております。これが以前のような形で反動的に戻るということになりますと、これは今日の時代の趨勢とはそぐわないものでありますから、そうではなくして、先刻からお話しのありました、たとえば悪書が悪いにきまっている、だれが見ても悪いというものだけは何とかしてその始末ができるようなことができないかということか、それから先刻お話しの、まだ義務教育範囲内におる人たちが不当にあのような売春などのようなことをする、それをずっと間接に、また間接のような形でしか取り締れないというような点は、何とかもう少し効果的にやれないかというようなことを考えておる次第であります。それから具体的に申しますならば、不良少年の教育ということは、国がうんと力を入れてやるべきものでないかと考えておるくらいのところでございまして、その他のことはまたの機会に申し上げます。
  29. 三田村武夫

    ○三田村委員 時間の御都合もあるようでございますから簡潔にもう一問伺っておきます。きわめて抽象的な言い方になりますが、私実は一番心配いたしますのは、法あって秩序なしという、こういう事態をおそれるのであります。法律は幾ら作っても、われわれが平和に幸福に生きていく社会の秩序というものがありませんと意味をなさぬ、民主主義のほんとうの美しい姿というものは法のないことを願うのであります。そういう立場からしても、政治の中心になるものは文教であります。この点は私が申し上げるまでもなく松村文部大臣よく御存じのはずでありますから、せっかくこの際文教というものを中心にして復古的な道義の高揚という意味でなくて、新しい社会の秩序の源泉になるものは何かということをお考え願いたいのです。この秩序が確立されて参りますと、つまり社会生活の秩序というものができて参りますと、映画の問題も、あるいはまた読み物の問題も、自然に社会の中に存在する価値がなくなるのである。どうかそういう点はまた別の機会に御所見を伺うこともあると思いますが、十分この問題についてお考え願いたいということを申し上げて、きょうの文部大臣に対する質疑はこれで打ち切ります。
  30. 世耕弘一

    ○世耕委員長 戸叶君、文部大臣は急がれておりますのでお含みの上御質問を願います。お気の毒ですけれども……。戸叶君。
  31. 戸叶里子

    戸叶委員 文部大臣がお急ぎのようでありますから、簡単に御質問申し上げたいと存じます。  ただいま他の委員も触れられましたように、私も先ごろの警視庁からの統計を見ておりますと、昨年の人身売買の統計で、被害女性の三分の一が未成年者と伝えられております。そして成人した女性は六百三十七人で、未成年が三百二人と言われ、最少が十六歳で平均が十八歳から九歳というまことに悲しむべき統計を示し、そしてさらにその一割までが小学校をさえ卒業していない、こういうふうなことが統計として出されているのでございます。これを考えてみましたときに、大体義務教育である小学校に行けない子供さんがいるということ自体が、非常に大きな社会問題でございますけれども、そういう人たちが学校に行けるようにいろいろな方法が考えられなければなりませんし、さらにまたこうした人身売買が行われ、そうして小さな子供たちでさえもそういうところで自分の身を売るというその精神を考えましたときに、昔から続いておりましたところの、自分がうちの犠牲になれば何とか済むのだ、ここで自分が黙っていればそれでいいのじゃないか、そういうふうな非常に古い考え方を持った子供がまだいる。そして今では社会にはいろいろな機関があって、いよいよ行き詰まったときには先生に相談するとか、あるいは社会事業団体に行くとか、そういうことも知らないばっかりに、そういうところへ落ち込んでいくというような場合もずいぶんあると思うのでございます。こうした点を考えて参りましたときに、私は先ほど文部大臣が、いろいろな事件が起きたときに、間接な取締りしか文部省としてはできないことが遺憾だというふうにもおっしゃいましたけれども取締りとかあるいはそういうことに対する注意も必要でございますけれども、もっと根本的にさかのぼって、どうしたならばそういうようなことをしないで済むような子供たちが生まれるか、そうした教育の基本的な態度をはっきりとこの際確立していかなければならないと思いますが、これに対しての何らかの構想をお持ちになっていらっしゃるかどうかを承わりたいと思います。
  32. 松村謙三

    松村国務大臣 今のお話しの一つは、不就学児童が戦後多くなってきておるということでございます。これにつきましては、文部省といたしましても地方の教育委員会などと話し合いをいたしまして、ずっとできるだけ努力を続けてこられたようでございますが、やはり依然として不就学児童が出て参りますのは、お話通り社会的の今日の状態がしからしむる点が多いと思いまして、厚生省とも打ち合せをいたし、また給食などの面においてもそれらのことをしんしゃくをいたしましてやって、その現象をなくしたいと努力をいたしておるわけでございます。それからそれらの人が多くからだを売りますことにつきましては、これは今お話しのような古い考え方もありましようし、そうでない点もありましょうが、それらについては先刻申し上げました青少年のうちのそういう不良的の傾向を持っておる人たち教育を与える施設を、国が何とかして力を入れてやることが一等効果的でないかと考えまして、その方針に従って今日研究もいたし、できれば次には予算をとってその面で努力をすることが今のお話しに対する効果的の方法でなかろうかと考ええおります。
  33. 戸叶里子

    戸叶委員 ただいまの御答弁で、不良的傾向に対する人の施設というものを来年度あたりでも考えていこうというような御答弁でございましたが、それは大体全国にわたってお考えになっていらっしゃるのでしょうかどうでしょうか、この点を伺いたいと思います。
  34. 松村謙三

    松村国務大臣 これはまだ具体的には申されませんけれども、最初といたしましては、都市のそういう不良の人たちの最も多い地区にまず始めたいと考えております。
  35. 戸叶里子

    戸叶委員 先ほども他の委員から触れられましたが、基地などにおきましては非常にいろいろな問題が起きておりまして、私は時間がないので省略をいたしますけれども、この間の参考人意見を聞いておりましても、立川などにおきましては、非常に小さな子供が、紙芝居を見るための小づかいがほしくて、縁の下に穴を掘って、そうして売春行為のようなものをして五円、十円とその代償を仰いでいた、こういうふうなことを聞いてみましても、結局これは大きないろいろな問題が起きて参りますし、また小学校、中学校、高等学校等の学生のまことに悲しむべき性行為等を見ましても、結局このような売春業者がおったり、あるいはまたそうした特飲街をよく見ている人、あるいはそういうところを通って通学する子供たちの中に犯罪が多いというような統計が示されておりますけれども、こういうことも御存じであろうと思いますが、いかがでしょうか。そうしてそれと同時に、やはりそういう面から考えても、こうした子供を刺激するような場所というものは早く取り除かれなければならないという結論をお持ちになっていただけると思いますけれども、この点についての御覚悟のほどを伺いたいと思います。
  36. 松村謙三

    松村国務大臣 今のお話しでございますが、これらのことを、その付近の義務教育の学校なり、高等学校なりに普遍的に起る問題とは私は心得ておりません。ほんの例外的の不良性を持っている者とか、また特殊の事情による者とか、こういうことによる次第でございまして、これは学校の面からも取り締らなければなりませんけれども一つは先刻申したそういう就学だとかなんとかをしない不良の人たちをどうして教化していくかという面からもやっていかなくちゃならぬと考えるのでございます。  それから最後にお尋ねの、そういう環境をなくするというお考え、それはそうなればそれにこしたことはございません。しかしながら日本日本の国の力で防衛がまだできない今日の段階においては、早くそういうことのないようにすることはもちろんでありますけれども、その間の過程といたしまして、そういうことのないようにこちらが努めるのが何でありますから、それを努めるように今日努力いたしているわけであります。
  37. 世耕弘一

    ○世耕委員長 戸叶君、神近君も関連質問の申し出があるのですが、実は文部大臣の約束の時間三十分が経過しておりますので、簡単に願います。
  38. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは大臣急ぎのようですから、最後に一点だけ伺います。今度の予算で新生活運動のために五千万円おとりになっていらっしゃるようですが、その中から幾分かこの売春をなくするためにお使いになる御意思はないかどうか承わりたいと思います。
  39. 松村謙三

    松村国務大臣 直接直ちにそれに対するような予算の使い方は今のところまだきめておりませんけれども、間接には青少年の訓育についてのいろいろの施設をやります。それが自然にそういう方面へも大なる影響を持ってくることを期待いたしているわけでございます。
  40. 世耕弘一

    ○世耕委員長 神近さんに御相談いたしますが、約束の三十分の時間が済んでしまったのです。それでせっかくですからあなたに御質問願うのですが、一問だけでとどめていただきたいのと、もう一つは非常に重大な問題であるから、文部大臣は機会あるごとに出て御説明があろうと思います。きょうばかりではないと思いますから、そのおつもりできょうは簡潔に御質問を願いたい、かように希望いたします。
  41. 神近市子

    神近委員 さっきからいろいろの方方の御質問を伺っておりましたけれども、私どもがきょう松村文部大臣に一番聞きたいのは、今提出されております本案についての大臣のお考えでございます。しかしそれはきょうは一度も出なかったのでございます。教育というものは間接的なものであって、そして警察あるいは裁判のような直接のものでないということはよくわかります。そして間接的な方面ではいろいろの委員方から松村大臣の御覚悟のほどを伺われたのですけれども、現実の問題としてはもう教育が非常に敗北していることは明らかなんでございます。この間の栃木県の鬼怒川温泉の上にあります川治温泉の記事を皆さんきっと御記憶になっている思います。あそこに特飲街が何年前かにできまして、そして初めはごく一部に片寄っていたのが、だんだん悪貨が良貨を駆逐するような状態で、学校の周辺をすっかり特飲街が取り囲んで、それでやむなく川治市では中学校を移転させた。今度は小学校を移転させなければならないというようなことになって、その予算の捻出に市が大へん困っているという記事があったのですけれども、この現象は川治だけではないのでございます。私ども昨年兵庫県に行きましたときに、学校の隣り合せに三百戸ぐらいの区画をしたすごいパンパン町があって、そこの子供もその学校に来ているし、ほかの子供はその町を通っていかなければならない、それである方はこれは兵庫県に対して警告をしなければならないとまでお考えになった事実があったのです。横須賀においでになっても同じことです。それで教育が間接的なことをいろいろ考えられているうちに、そういうものによってどんどん蚕食されているという状態でございます。それで私どもはどうしてもこれはほっておけないので、議員提案の悲しさで十分な予算をつけた理想的なものはできないが、しかし片方から考えて、立法が教育の一端をになうことができるという考え方からこの法案を提出したわけでございます。私が今日端的に松村大臣に伺いたいことは、この法案によって子供たちの教育あるいは社会教育に、売春が人間の常道でないということを打ち立てることによって、相当強固な教育を与えることができるという私どもの信念が間違っているかどうかということであります。その点を一度伺って私の質問を終りたいと思います。
  42. 松村謙三

    松村国務大臣 私政府態度がまだきまならない際に、個人としても政府の一員とても、この法案に対する賛否の考え方を今ここに申し上げる機会ではないと存じますが、ただ文教をあずかる者といたしまして、今お話のいろいろの点において遺憾の多いことは認めざるを得ません。従いまして文教の面からこれらのことを教育の力でなくする、それから今お話基地周辺のことなども、やはりわれわれの力でそういう影響を除くように最善の努力をいたすことはもちろんわれわれの責任でありまして、そのためには十分の努力をいたす考えでおります。
  43. 世耕弘一

    ○世耕委員長 委員諸君にお諮りいたします。西田労働大臣出席されておりますが、黄疸を治療のために休んでおられたのを、特に本日この委員会出席を要求して、ふるって出席されたのであります。ちょうどきょうは土曜日でまた治療のかかりつけの医者のところに行かなければならない事情がありますので、その点お含みの上御質問を願いたいと思います。——もし延期さしていただけるならば、御病気中の方で、ことに黄疸ということを伺っておりますから……。     〔「そうしましょう。人権の問題だ」と呼ぶ者あり〕
  44. 世耕弘一

    ○世耕委員長 委員諸君の熱意にこたえるために出てきていただいたのでありますが、それでは労働大臣きょうはどうぞお医者様の方にお運び下さい。
  45. 猪俣浩三

    猪俣委員 そのかわり病気がなおったら出ていただきたいと思います。
  46. 世耕弘一

    ○世耕委員長 それでは労働大臣にお願いいたします。どうぞ治療をなさって早くお元気になってこの委員会に出ていただくようお願いいたします。
  47. 猪俣浩三

    猪俣委員 川崎厚生大臣お尋ねいたしたいと思います。川崎大臣社会保障制度に造詣深く、かつ最も熱心な方であります。私どもはこの売春処罰法が実を結びまして、川崎大臣が厚生大臣にある間に成果をあげたいくらいに考えております。あなたに期待することはなはだ多大なものがあるのでありますが、そのおつもりで一つ御答弁をしていただきたい。  申すまでもなく売春処罰法の盲点は、取締りだけで一体この売春が絶滅できるか、あるいは身を売らなければならぬような経済的関係から、ここに落ち込んだ売春婦が統計上も相当多いのであるが、これらのものを一体ほっておいて、ただ処罰だけでいいのであるかという問題があるのでありまして、私ども提案者といたしましてもくどく申し上げますように、この取締り法だけで所期の目的を達するとは毛頭考えておりません。いな実はかような法案を通過せしめることによって、川崎大臣のような社会保障制度に熱意のある方に政府を動かして、多大なる社会保障費をとっていただいて、われわれが年来考えておりまする社会悪絶滅の十字軍を起したい。これがその突破口である。こういうような意気込みで今審議に当っておるものであります。そこで先般厚生省の紅露厚生次官に質問いたしましたけれども、まだ成案ができなかったのであるか、まことにたよりない御答弁で、わかったようなわからぬような答弁に済んでしまいました。そこで実は心配しておりましたところが、本日の朝刊に厚生省の方針が大体発表せられたようでありますので、これを当委員会におきましてもう一ぺん確かめたいと存ずるのであります。第一に今特殊婦人は五十万と推定せられておりまするが、さればというてこれ全部を収容したい、また生活保護をしたい——しなければならぬものばかりではないはずでありますが、厚生省におきましてはこの売春しておるやに見受けられる五十万人のうち、真に国家の手においてこれを引き取って保護をしなければならぬ、更生せしめなければならぬ人間はどのくらいあるという御推定でありますか、承わりたい。
  48. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 本法案が提出される以前より法務委員会におきましては売春問題に対する対策につきまして長年にわたり御研さんのことを承知をいたしまして、非常に敬意を払っておった次第であります。ことに今回は処罰法案が議題になりまして、先刻来よりも熱心なる御議論を承わり、また私は健康保険法等の直接所管法案をかかえておりまするために法務委員会に出る機会がなかったのでありますが、紅露政務次官からも厚生省のこの問題に対する考え方、対策というものにつきましては十分に皆様方に御説明を申し上げたはずだと思っておりますが、なお足りない分がありますれば、私からも十分に本日は御答弁を申し上げたい、かように存じておる次第であります。今回は議員立法ではありまするけれども、長年政府の部内におきまして売春問題対策協議会が設けられておるにもかかわらず、二十数回も幹事会その他の会を重ねても結論が出ないということで、議員の中から熱心なる御提案になりましたことは、その趣旨につきましては私も同感であります。生活保護というものが徹底をしておらないために、このような悲惨な現象が全国に見られるということが根本的な問題であろうということにつきましては御趣旨通りであります。  ただいまお話しの最後にありました御質問でありますが、けさの毎日新聞の報道を見られてのお尋ねであろうと思いますが、この記事の出所がよくわかりません。私の方といたしましてもこれが確実な成案を得たというので発表したものでもなければ、また「「売春婦保護更生要綱」を作成していたが、八日これが完了した。」ということにつきましては責任ある立場としてはこれを申すわけには参らないのであります。しかしながらもとよりこれらに対しまする十分なる検討はいたしておるのでありまして、記事によりますると警察当局が国会で表明した意見では年間五万人を送検する見込みである、こういうことが書いてあります。そこでこの五万人が全部厚生省の施設に入れなければならないということでありますれば、これに焦点を置いて問題の解決に当りたい、かように考えております。しからばその際における予算の組み方としてはどういうことになるかということになりますると、これを食費の関係に見ますると一人年四万八千円、これに五万人をかけますると二十四億円という数字になります。そこで国庫の補助をかりに八割と推定をいたしまするならば十九億二千万円という数字が一応出るのであります。しこうして収容施設の関係をどうするかということになりますると、一カ所五十人の収容寮をかりに作るということになりますれば千二百万円という数字が出て参ります。五万人収容として百二十億であって、二分の一国庫補助として六十億、十九億二千万円プラス六十億で八十億というのが今日新聞紙上に載っておる。厚生省の決定したと報道されておる記事の内容でありますが、われわれはもしそういうことに焦点を合わして対策をするとすれば、こういう数字が出るということについての一応の検討はいたしておった。しかしこれは今日まだまとまって対外的に発表するわけのものではなく、こういう一つの計算が成り立つ。もし売春法案が通ればそういうようなことも考えてみなければならぬではないかというふうに今日考えをいたしておるような次第であります。
  49. 猪俣浩三

    猪俣委員 私はけさこの新聞を見てまことに欣喜雀躍してきたのでありますが、今大臣の説明を聞くと何か幻滅を感じてしまったようなわけです。こういう構想をお持ちであるが、まだ外部に発表するには閣議の承認も得なければならず、いろいろのことで支障があるのかも存じませんが、大臣の今の御答弁でも一応かような腹案があることだけはわかったのであります。  そこでなお新聞記事をもとにしてお尋ねいたしますが、この今あなたの腹案として閣議が通るか、予算が通らなければわからぬにいたしましても、もうちょっと具体的にお聞きいたしたいことは、ここにありますように、この都道府県に婦人相談所というものを設けて、そうして鑑別、福祉、施設の三課に分れて司法行政その他から送られ、また自発的に相談にきた者に相談相手になる、こういう保護施設をやる、この構想は厚生省として今お持ちなのでありますか。これはだれかの思いつきで何人かがただこんなことを言っただけで、大臣としては責任を持たぬ構想でありますか、なおお確かめいたします。
  50. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 私もやはり常々こういうこと考えておりまして、厚生省部内で検討はいたしておることでございますけれども、私も大体こういう線に沿って措置をする方がよかろうと思っております。御承知かもしれませんが、大蔵省の今度の予算編成に関しまする態度といたしましては、婦人保護施設の予算二千五百万円を、実は初め落しておったのであります。しかし今日の実情からして、売春禁止法というものが将来成立すればともかく、その間において転落してくるところの最もみじめなる特殊婦人を収容する施設を存続させなければならず、むしろ今日の趨勢からいたしましてこれらを強化していくことが必要であろうということを主張いたしまして、本年は御承知のごとくこれらの費用を軒並みに削除し、あるいは補助費に大なたをふるったわけでありますが、強力に主張して残しまして、わずかではありますが、二千五百万円を計上いたしたわけでございます。しこうしてもし将来こういう禁止法案などが成立をいたしますれば、当然そこには大きな社会問題が起ってくるわけでありますから、その際において婦人相談所などというものを設け、あるいは保護施設については婦人保護寮、婦人更生寮、婦人ホームというようなものを作るという考え方は当然起ってくると思っておりまするから、この考え方の基本的なラインは私も同感であります。
  51. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうしますと婦人相談所の構想、及び保護施設として婦人保護寮、婦人更生寮、婦人ホームというような構想、これは現在において大臣自身がお持ちの構想であると承知してよいかどうか。
  52. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 さように御解釈いただいてけっこうであります。
  53. 猪俣浩三

    猪俣委員 今お聞きしますと、こういう構想を実現するには大体において八十億円ばかり金がかかる、こういうお話でありましたが、来たるべき通常国会に、大臣は現在持っておる構想を実現すべく閣議に諮り、あるいは予算を組み、そうしてその通過に努力するという御熱意が今あるのかないのか、その御所見を承わりたい。
  54. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 これは、売春禁止法が成立をいたしまするならばこういう構想があるということに相なっておりますが、それがなくてもわれわれとしては相当な措置をいたさなければなりません。しこうしてこの禁止法案の推移と相待ちまして、もとよりこの八十億の予算はそういう場合においては最低限の予算措置であろう、かように存じておりますので、そういう情勢に相なりますれば、当然社会保障政策の推進として要求すべきものだと考えております。
  55. 猪俣浩三

    猪俣委員 まことに明快なる御答弁で私ども安心いたしました。さすがであります。八十億円と申しますと大金のようでありまするけれども、一兆億円の現在におきましてはささたるものであります。私どもは今のあなたの御答弁を聞いて、もうあなたに御質問する点も少くなったのでありますが、要はあなたの決意いかんであります。私どもがこの売春禁止法を提案いたしまして、一等手ごたえのある反対論点はこういうところにあるのであります。それはまたもっともだと思うのであります。貧苦のために身を売るような者を、そのまま処罰だけしっぱなしでいいのかどうかということはもっともなる議論であり、また風紀上あるいは基本的人権保護上、肉を売らなければならぬような者を存在せしめ、しかもそれを営業として搾取する者があるというがごときことは許さるべきでないことは、少くとも良識ある国会議諸君みなお考えであろうと存じまするけれども、われわれがいつも窮しまするのは、それらを処罰しただけで一体いいのであるかという質問なんであります。  そこで、この法案は今までたびたび運命的にほんろうせられて参りました。その成立の日を見ないで今日に来たのでありますが、今婦人団体等が必死の勢いで、なおまた全国の世論がきゆう然としてこの法案成立を庶幾しておるのでございます。川崎厚生大臣はまだ青年政治家であられますが、あなたの将来においてエポック的な事業といたしまして、この売春禁止法案の通過に御尽力いただくのみならず、この通過の暁にはただいまあなたの構想としてお持ちになりまするこの哀れな婦人を救い上げることに全力をあげて御努力願いたいと存じます。これはあなたの政治生涯におきましてもまことに輝かしき一ページになるのではなかろうか。もしこれができないようであるなら川崎大臣は落第であります。あなたの政治家としての運命をかけておる。この八十億円くらいの金が取れない道理はないのである。幸いにして民主党におかれましてもまた自由党におかれましても、ことに党法務委員諸君はいろいろ技術的な点についは意見があるようでありますけれども、この禁止法案の精神に反対しておる方は一人も見受けないのであります。与党におかれましてもそうでありまするならば、大臣は断々固としてこれを断行していただきたい。一昨日も各業者の参考意見を聞きましたが、彼らは、自分たちは救世主だ、今自殺一歩手前の者をみんな救い上げてやっておるんだ、雨にぬれるやつに軒を貸してやっているんだ、かさを貸してやっているんだ、何が一体悪いんだ、こういうふうに開き直っております。これは彼らの無知のいたすところでありましても、さようなふうにも彼らは思っておる点もあるのではないか、世のためになるのではないかと思っておるのではなかろうかと思われる。これはまことに政治家の敗北であり、政治の敗北であります。この社会悪と戦うところの力が政治家になかったということに相なりますので、くどくは申し上げませんが、川崎厚生大臣はその政治的生命をかけてこれの実現に当っていただきたい。なおくどいようでありますが、大臣の最後の御決意を承わりたいと存じます。
  56. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいまだんだん御教示をいただきましたことにつきましては、けんけん服膺いたしまして実現に当りたいと思っております。すべて社会情勢の推移と国会の御審議の結果に待って重大な決意をしなければならぬことに相なるとは思いまするけれども、たといそれがなくても、年々この婦人の更生保護施設というものにつきましては格段の施策を講じて参りたいとかねがね考えておった次第であります。従いましてもし売春等処罰法案が両院を通過するというようなことになりますれば、その際における決意はさらに一そう深くいたしまして社会保障の万全を期したい、かように存じておるような次第でございます。
  57. 猪俣浩三

    猪俣委員 私の大臣に対する質問はこれで終ります。
  58. 世耕弘一

    ○世耕委員長 戸叶君。
  59. 戸叶里子

    戸叶委員 私は法務大臣と厚生大臣と労働省の方に簡単に伺いたいと思います。  まず法務大臣にお伺いしたいことは、現法務大臣は、かつてもこの委員会におきましてこの売春処罰法には御熱心に審議をせられたこともおありになり、そしてまた今回は大臣としてその責任の地位にいられるわけでございます。今日ほど各方面世論が高まって参りまして、この売春をそのままにしておくならば、これは日本にとってゆゆしき問題であり、そしてまた国際的に考えてみましても、各国から日本売春国だというような汚名を着せられておる。また先ごろインドネシアから来られた賠償使節団の人さえも私に非公式に言われたことは、日本はよくああいうものを許しておいて黙っている国だとまで私は侮辱的な言葉を受けたのでございます。こういうときに当りましてこの処罰法がいかに大事であるかということは、たといこれが満足なものでないにいたしましてもお認めになっていると思われますし、ここにございますところの陳情書ども、一日も早く通してもらいたいという全国の人たちからの要望であります。これはその一部にすぎなく、どんどん送られてくるような状態に置かれていることはお認めになっていて下さると思います。先ごろ、六月の二十五日のこの委員会で私伺っておりますと、今回この法案が提出されたけれども、私はなるべく早く通過することを念願とする、こういうふうにはっきり言われておりまして、私もこれを聞いておりまして非常に意を強くしたわけであります。そこで法務大臣といたしまして、そう御答弁になりましたことを裏づけする何らかの具体的な御援助なり何なりをしていただける御意思があるかどうか、これを伺いたいと思います。
  60. 花村四郎

    花村国務大臣 戸叶委員のお説ごもっともでありまして、すべて賛成であります。それで本法案が通過することに対して努力をするという裏づけはあるかというお話でありまするが、売春法に関する御質問があるということで法務大臣を呼ぶ出しますれば、何時でもすべてを投げ打って出て参りまして、そうして法案通過に対して陰に陽に努力をいたしております。通過するやいなやはこれは皆様方国会議員の方方の胸のうちにあるわけでありまするから、その点はおのおのの国会議員の方々がお骨折り下さることであろうと思いまするが、私といたしましては、やはり国会議員の一人としてあらゆる角度から通過するように心がけております。
  61. 戸叶里子

    戸叶委員 大へん力強い御答弁でございましたが、委員会に積極的においでいただくとともに、やはり閣僚の中でも直接これに非常に関係の深い大臣でおられますので、たとえば閣議においてこの法案の通過に対しての好意的な御発言をなさるなり、あるいは党内へ帰っての好意的な御発言というものが非常に大きな影響を与えるのでございますので、こういう点についても御努力願えるかどうかをお伺いしたいと存じます。
  62. 花村四郎

    花村国務大臣 議員立法でありまするから、もちろん閣議にかかることはありません。閣内において何か協力したらどうかというお話でありまするが、この点はさような意味において骨を折るような機会は出てこないと思いまするが、もしありとするならば、もちろん骨を折ることにやぶさかではありません。  なお党内においてということでございまするが、もちろん党の内外を問わず、機会がありますれば骨を折りたいと存じております。
  63. 戸叶里子

    戸叶委員 私ただいまの御答弁の中でもうちょっとお願いをしておきたいことは、閣内でこういう話が出るようなことがないと思うけれども、あったら努力する、これではどうもこの法案の通過を積極的にお望みになっているようには考えられないのでございまして、そういうふうな機会がなくとも、みずから進んで皆さんに話し合うような機会をお持ちになっていただきたい。あるいは閣議のあとででも皆さんにお話になっていただきたいということを念願するものでございますが、この点はくどいようですがもう一度御答弁を願いたいと存じます。
  64. 花村四郎

    花村国務大臣 ただいま私が申し上げましたのは、公けの立場におけるお話をしたわけでありまして、もちろん個人的立場においては、そのとき並びに場所のいかんを問わず本法案通過に対して熱意を持って働いておりますことだけは申し上げてよろしいと思います。
  65. 戸叶里子

    戸叶委員 御好意ある御答弁でありましたので、私は法務大臣が個人の資格でお話になりましても、やはり花村先生は法務大臣であると皆さんが了承して、そうしてこれに協力していただけるものと非常に心強く思っておる次第でございます。  次にお伺いいたしたいのは、人身売買並びに売淫強要の禁止に関する条約というものがこれまでたくさんできておりますが、その中には日本が署名をしたものも、署名をしないものもございます。ごく最近のものといたしましては、一九四九年の十二月二日に国際連合の総会によって承認されたところのこの条約が出ております。これはどういうのかと申しますと、これまでの条約、たとえば明治三十七年五月十八日の醜業を行わしむるための婦女売買取締りに関する国際協定とか、あるいは明治四十三年五月四日の醜業を行わしむるための婦女売買禁止に関する国際条約、大正十年九月三十日、婦人及び児童の売買禁止に関する国際条約あるいは昭和八年十月十一日の青年婦女子売買の禁止のための国際条約、こういうようなものを一つにいたしましての国際連合から出した条約でございますが、これはもう法務省の方で御存じでございましょうかどうでございましょうか。
  66. 花村四郎

    花村国務大臣 かかる条約のありますることは承知をいたしております。
  67. 戸叶里子

    戸叶委員 条約が批准になりますまでには、まずその関係の省と思われるところから外務省に、これを批准したらどうかというようなサゼスチョンがあって条約批准まで持ってくると伺っておりますけれども法務省の方でこれまで外務省の方にこの条約批准を申し出なかった理由、そしてまたもしも今までに時間がなかったとおっしゃるならば、すぐにこの条約批准をした方がいいということを外務省の方にお申し入れになる御意思がないかどうか、この点を伺いたいと存じます。
  68. 花村四郎

    花村国務大臣 条約の締結並びにその実施等に関しますることはことごとく外務省の所管に属しまして、しかも国際関係を考慮のうちに置いて進めて参らなければならぬというような重大な関係にありますので、さような事柄に対しては専門家でありますところの外務省にまかして、そうして善処をしてもらうということが一番適当な方途であると考えますがゆえに、法務省においてはなるべく差し出がましいことは控えるのが適当であると考えて今日までやってきております。
  69. 戸叶里子

    戸叶委員 法務大臣の御意向よくわかるのでございますが、外務省の方で批准をいたします前に、それに関係の省の申し入れなり何なりがあった上で私は批准をするように伺っております。その例は先ごろ婦人参政権条約の批准が国会でなされましたが、これが批准されるにもやはり労働省なりあるいは厚生省の申し入れがあって初めて外務省の方で取り上げられて、委員会に提出せられたのであります。こういう面から見ましても、やはり法務省の方から積極的に外務省に御相談になっていただくならば、出していただけるのではないかと思いますが、今後日本が国際連合加盟をしたいという希望も持っておりますときであり、日本の位置がだんだん国際的に高まってきているときでありますので、積極的にこれを外務省にお話になっていただけないかどうか、この点をもう一度伺いたいと思います。
  70. 花村四郎

    花村国務大臣 法務省と外務省との間において関係のあります事柄については、事のいかんを問わずお互いに折衝して参っておりますが、ただいま戸叶委員の申されましたような事柄はきわめて重大なことでありますので、今後とも外務省に対してよく折衝、協調をいたして、そうして最善の道を進めていきたいと存じます。
  71. 戸叶里子

    戸叶委員 それでは次にお伺いいたしたいことは、先ごろ私新宿のいわゆる赤線区域を歩いておりましたことろが、突然駐留軍MPと思われる自動車が中へ入ってきまして、交番で巡査さんをつかまえて、ともかくいやおうなしにこの車に乗れと言われました、おまわりさんは、何が何だかわからないので非常に戸惑っておりましたが、私がその運転手さんに、一体何の用事でおまわりさんを連れていくのかと言いましたら、何でもいいから、悪いことをしないから、五分間この人を乗せろという話ですので、私もそれ以上は何とも言えないで、黙って帰ってくるのを待っていました。そしてそのおまわりさんに、一体どこへどうして行ったのか聞きましたところが、一人の外国兵隊さんが一軒の売春宿に入ったのをMPが見つけて取調べに行った。ところがそれが駐留軍でなくして、国連軍の一人であったから黙って出てきてしまった、こういうふうなことを私は聞きました。これは非常に大きな問題だと思うのです。一体取締り当局としてこういう売春行為をさせること自体が条例で禁じられておりますときに、国連軍なり駐留軍なりは、あれは外国の人だから仕方がない、どの国にいたしましても、そういうことを黙認するというやり方はどうもふに落ちないと思いますが、この点はどうお考えになりますか。
  72. 花村四郎

    花村国務大臣 ただいま戸叶委員のおっしゃられた通り、まことに遺憾なことでございますが、しかし駐留軍との関係におきましては、御承知のように、国際関係もありますので、従ってその関係を考慮の中に入れて取締りを厳重にやっていくという方途を講ずるのが一番いいと思うのでありますが、そこの手心がなかなかむずかしいのでありまして、取締り当局といたしましても苦労が多いのでありますが、なるべく社会正義にのっとってこういう忌むべき行為はお互いに取り除いて、よい世の中を作るという一本の筋に向って進みたいと思うのでありますが、まあ日本兵隊さんも外国へ出ていって相当のことをやられたような話も聞いております。しかしそういうことがあったから現在わが国において許していいというのじゃありませんが、しかしそこが取締りの要諦でありまして、御心配のないように進めておることだけは、はっきり申し上げてよろしいと思います。しかしたまには目こぼしもあるかもしれません。そういう場合にはまた具体的事実をおっしゃって督励をいたしていただきますれば、幾らでも厳重な取締りをやることに対しては決してちゅうちょ、逡巡するものではありません。
  73. 戸叶里子

    戸叶委員 取締り当局の方にお考えを伺いたいと思います。
  74. 江口美登留

    ○江口参考人 私からお答えいたします。いわゆる赤線地域にMP警察官を乗せて連れていったというお話でございますが、私その事実は報告を受けておりません。しかし警察官としてもどんなことが起ったのかと思ってついていったのじゃないかと思います。ところが一軒のいわゆる売春宿らしいものに入ってそういう具体的事実があったということでございますが、しかし警察官といえども令状なしにいわゆるカフェーを営んでおるそれ以外の地区に立ち入るということは許されないことであります。行ってみたところが売春の問題であるということになりまして、カフェーのその奥の場所に踏み込むということはできない、万一そういうことをしてとがめられたら警察官は非常な処罰を受けます。おそらくその警官は事態がそういうことであったというので、あわてて引き返してきたのじゃないかと思います。
  75. 戸叶里子

    戸叶委員 そういうことがありますから、私は一日も早くこの法案を通さなければいけないと思うわけであります。そこで法務大臣は先ほど日本兵隊さんの例を引かれましたが、今日戦争が終りましてからもう十年以上もたっておりますので、お引きになりました例はあまり当らないのじゃないかと思います。もう一つの点で目こぼしの方もがまんしてもらいたいとおっしゃいますけれども、今日の状態では目こぼしの方が多いということをどうぞ認識していただきたいと思います。その点をお気をつけになっていただかなければならないということを私は望む次第でございます。  それから基地の問題でございますが、これは国際的な関係もあることだからお互いに道義的な話し合いで解決していく、これはまことにけっこうなことであります。そうしてその機関といたしましては下部に日米合同委員会というものが各地域にございます。ところが先ごろの参考人の御意見を伺っておりますと、その合同委員会を無視いたしまして、直接米国側が業者との間に風紀の問題は、この売春の問題は直接話し合えばいいというふうな態度をとられておるところがたくさんあることを指摘せられました。ことに立川などの地域におきましてはあの地域の子供を守るお母さん方が、どうかこの問題を日米合同委員会に取り上げてもらいたいと幾たびか嘆願いたしましても、それさえも取り上げられないで、子供の教育に非常に困ってしまう、こういうことを聞いているのでございます。従ってもっと基地の問題をよく御調査下さいまして、今お答えになったようでなしに、もっと積極的に、目こぼしを少くするように——どもは全然ないようにと思いますけれども、それはむずかしいことでございましょうから、今日のように目こぼしの多いというようなことのないようにぜひしていただきたいと思いますし、これは外務省の管轄になるかもしれませんが、日米合同委員会でこの問題を取り上げてもらわなければ、基地のいろいろな性道徳の頽廃ということが解決いたしませんので、もう一度これを取り上げてもらうべく外務省に申し入れをしていただきたいと思いますがこの点はいかがお考えになりますか。
  76. 花村四郎

    花村国務大臣 ただいまお話のありましたような事柄については常に日米合同委員会を通じてわが方の主張を強く申し入れまして、そうしてかかる不始末のないようにお願いをいたしておるのでありまするが、なお今後ともそういう方面については一そう意を注いでいきたいと存じます。
  77. 猪俣浩三

    猪俣委員 関連して……。警視総監にちょっとお尋ねします。昨日の公聴会で明らかにされたのでありまするが、吉原の赤線区域、あれは特殊飲食店とかなんとかいう許可を与えられて営業をやっておる。私ども先般視察に行きましたとき、二、三軒で、コーヒーを売るような構えでありますからコーヒーを飲むというので行ったところがない。それではサイダーを飲ませてくれ、それもない。そうして女の子がにやにや笑っておるのです。そこで昨日も業者が来ましたから質問いたしましところ、部屋を貸せるだけであと何も関係がないこういう答弁であります。私どもコーヒー店であって、女に下宿さして、その下宿している女が勝手に客を引っぱってきて、そうして売春をやっているかなんだかそんなことはこっちは知らない、こういう答弁でありました。それは東京都条例第三条に違反しないかという質問に対してそういう答弁である。ところが売春からよって生じた収益は四分六分に分けるのだそうじゃないかといって私に突っ込まれて、前後矛盾した答弁に相なってきたのであります。部屋を貸しただけで全然関係のない者が売春をやった金を受取って、それをプールしておいて、従業婦には四割、自分は六割とるというのは、どういうわけだという質問をいたしまして、おしまいにはだんだんボロが出たのでありますが、ただ私がお尋ねいたしますことは、その四割と六割という比率をきめたのは警視庁のお立ち会いできめたとか言っておる。(笑声)そこで警視庁のおえらい方が業者には組合をつくれ、接客婦にもやはり組合をつくれ、そうして組合の代表者が集まって、その肉を売って生じた収益の歩合をきめろ、そこに警視庁の役人と進駐軍の役人がお立ち合いで、その采配によって四分六分にきめてもらった、こういうのであります。これは実はきのう初めて聞いたわけではない。前から知っておったのでそれを確かめるべくく質問をしたところが、その吉原の業者の代表者が白状をいたしました。これはしかし江口総監を責める意味でも何でもありません。やむを得ざる警視庁の対策であったわけで、私ども承知しておったのであります。東京都条例第三条があるにかかわらず、いわゆる黙認という形であります。ところがこれはいろいろな意味において実に私どもは不都合千万であると思う。過去を責めるのではありません。将来に対しまする問題としてあなた方に質問しておる。養老さんにお聞きしたところがいや場所を貸しただけでというやはり吉原のおやじが言うのと同じことを養老部長はこの前の委員会で答弁しておる。それはそれでいいのです。私どもはやぼは言いません。そういうことになっておったんだが、さようなことは今度は断然許されないことだと思います。かような法律があるにもかかわらず、脱法をさして、しかも警視庁、取締りの官憲が歩合にまで入り込んできて、そうして見のがしておくというがごときことは、これはやぼに責めたてられれば重大なる問題であります。さようなことを過去において警視庁ではやっておいでになる。警視庁かあるいは東京都かあるはは内閣全体の了解の上でやったのかもしれませんけれども、さようなことから幾多の弊害を来たしておる。そこで私は今それを責めたてませんし、皆さんもいやそんなことはないなんて答弁をなさらぬ方がいい。そんな臭いものを隠すような答弁をなさると幾らでも私は追究いたします。それはやむを得ざる行為として私どもも了解しておる、しておるが私が今ここで質問いたしますのは、この法案通りますならば、吉原あたりに盛大に店を張っている業者相当の損害をこうむるでございましょう。彼らは今からそれを訴えておる。しかし私どもは終戦後の土地革命と同じような一種の文化革命なりとして、この過程においては被害を受けるものがあるに違いない。私どもはその覚悟で進んでもらわなければならないと思いまするけれども、しかしむやみに、不用意に彼らに打撃を与えることも人情としてしのび得ざるところでございまするから、私は歩合までもおきめになるくらい深入りした警視庁でありまするから、一つ業者をお集めになって、どうもこの売春取締法通りそうだ、そこで今からお前たちは覚悟をきめて、それぞれ身の振り方を考えたがよかろうという御指導が願えないものか。従業婦はむろんのこと業者に引導を渡していただきたい。いたずらに——本日の毎日新聞余録にあるように、業者一人当り千円ずつの運動費を集めてある落選代議士を通じて某政党の大物に持ち込んだなんということを書かれておる。この千円はみんなまたこの売春婦の肉を売った金から取り立てるに違いない。こういうばかげたことをやっておるのでありまするから、この際警視庁は一つ乗り出して、これは通りそうだ、いまから覚悟しろ、つまらぬ反対運動なんかやらぬで、早く転業する方に一つ覚悟をきめたらどうかといって御指導をしていただけないか。過去のことは責めません。そんな分配まできめたなんということは責めませんから、罪滅ぼしにその御指導をやる覚悟があるかないか一つお尋ねいたします。
  78. 江口美登留

    ○江口参考人 赤線区域取締りの問題でございますが、御承知のように都条例ができました際のいきさつは、終戦直後から東京の玄関であります有楽町、新橋、あるいは新宿とか上野、そういうところにパンパンが非常にはびこりまして、ポン引きが出る、売春宿が軒を連ねるといったように非常に風紀の乱れたときに、東京都といたしましても何とかこの状態を払拭しなければならないという輿論が強うございまして、都議会で二十四年に都条例ができたのでございます。都条令ができた際の速記録などを読んでみますると、やはりそういう方面における売春行為をまず第一に取り締るというのがねらいでございまして、当時婦人議員のある方が質問しておられまするが、都条例ができたからといって直ちにこの条例をいわゆる赤線地域に適用するのではなかろうなといってだめを押しておられます。これに対しまして東京都の理事者が、いずれは適用するかもしれないが、しかしそのためには数千人に上る従業婦の保護更生の施設あるいは婦人ホーム、そういうものが別に考慮されてからでなければ、いわゆる赤線地域にはこれは適用しないつもりであるということを答えております。つまりこの条例ができましたいきさつが、そういうところにあるわけでありまして、従いまして警察といたしましても、いわゆる黙認という言葉を使っていいかどうかわかりませんが、今日まで売春としては一般的に取締りをして参っておりません。それを数年前からなぜ警視庁は取り締らないのかということで、盛んに逆の意見が強くなってきたわけです。しかし今まで六、七年はずっと取締りもせずに参ってきておりますので、気持を百八十度転換して、今度から厳重にやるぞという態度には、警察官としてもなかなか気持の切りかえができないわけであります。従って、そういう方向に入るためには、本庁なりあるいは中央から何か特別の指示が出まして、方針が変ったのだ、これからうんとやれという特別の指示でも出ない限りは、気持の切りかえができないのであります。従って、この法案が通る前か、あるいは通ってから、本庁の方から、中央の方から、こういうような方法によってこの法律が施行されることになる、ついてはその善後措置として、こういうような方法をとれということをおそらく指示されると思います。われわれ第一線の者は、全国的な問題でありますが、その指示によってやるつもりでおります。
  79. 猪俣浩三

    猪俣委員 警察庁長官お尋ねいたします。今警視総監は、もっと上からの指示がないと困難だというあれでありますが、これは全国的の問題でありますが、私どもはこの売春処罰法案は通過せしめなければならないし、通過すると見ております。しかし業者は、ただいま江口総監が説明されたように、警察が黙認の形をとっておるから、自分たちに非合法なこと、悪いことをやっておるという観念がない。売春をあまり悪いことではないというように考える。その思想が最も妨害になるのでありまして、私どもはこの売春処罰法によって売春は行政犯ではない、自然犯であるぞという思想をぶち込むことが最も大事であると思うことが、この法案提出の一つ動機になっております。そこで全国の取締り警察に対しまして、この売春というものの悪であること、及び今から先ほど申しましたような身の振り方を考えたがよろしいということの徹底せる運動を起す意思がおありかないか、あるいはこれは警察だけではできない、やはり内閣なりもっと大きな官庁の指示がなければだめだというお考えであるかどうか、それもついでに伺いたいと思うのです。今、法務大臣はどこかへ行ってしまってお見えにならない。法務大臣にお聞きすればよいのですが、法務大臣がいませんから、あなたの所見を承わりたい。
  80. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 売春の悪であることは、私たちも十分承知いたしております。これが取締りは十分やるべきであるという気持には、皆様と変りはないのであります。現行法では売春行為そのものを取り締る法律というものが欠けておる、そういう意味から、今日こうして議員立法で御審議を熱心にお続けいただいておるわけでございますが、現行法のもとにおきまして、性病予防法、勅令九号、軽犯罪法、あるいは一部の地方自治団体の売春条例というようなものによりまして、全国的に売春取締りはやっておるわけでございまして、昭和二十九年の実績を見ますと、約三万四千名の検挙をいたしておるわけでございます。しかしながら、今朝来いろいろ拝聴いたしておりましても、るる御意見がありましたように、売春取締にはただ単に処罰をもって臨んだり、警察取締りだけではこの売春悪を完全に一掃することはできないのでありまして、警察取締りと並行しまして、そうしたことをやらざるを得ないようになる婦女子の転落の防止の問題、さらにはそうした転落した婦女子の救済施設の問題、こういったものが少くとも並行してなされることによって初めて目的が達成されるのではないかと考えておるのであります。私ども警察の立場としまして今日までとって参りました態度は、売春取締りはいわゆる人身売買といったような悪質な事犯及び文教地区あるいは住宅地区等、社会風教上悪影響のあるところからまずそういう売春の悪といったようなもののなくなることを第一義的に重点を置いて取締りをやって参ったというのが今日までの実情であります。さらに逐次手を伸ばして、いわゆる青線区域赤線区域といった方面にも、警察の力の及ぶ限り力を注いで参るという気持は従来とも持って参つたのでありますが、遺憾ながら力が及ばずして、そうした面に十分徹底した取締りができていないということは、ここに率直に認めざるを得ないのでございます。先ほど警視総監からお話しがありましたように、それでは私ども中央当局の者が、徹底的にやれ、赤線区域に至るまで徹底的に取締りをしろという指令をいたすならば可能であるというふうな御発言もあったのでありますが、先ほど来私が申し上げましたように、今直ちにそういうふうにすることが果して適当であるかどうか、またそうすることによって十分実効を上げ得るかどうかという点につきましては鋭意研究をいたしておる状況なんでありまして、今日まで御審議をいただいている法案成立するというようなことになりまするならば、私どもそうした方面取締りの徹底を期するのに非常に好都合である、かように存じておる次第でございます。
  81. 猪俣浩三

    猪俣委員 ちょうど大臣は川崎大臣しかおりませんが、これは閣議の問題になるかと存じますからあなたもよく聞いておいてやっていただきたい。  ただいま申しましたように、東京都を初め全府県に売春禁止の条例というものはたくさんある。こういう法令を作っておいて、しかるにかかわらず、今江口総監が言ったように、いや吉原はよかろうというようなことで。非常な脱法行為、悪知恵を彼らに警察がかえってつけておる。場所だけ貸したことにしている、そこに下宿したことにさしている。そして勝手にお客を食らい込んできたことにしている。そうして、お前たちは実際はカフェーなりあるいは特殊飲食店として許可してあるのだから、それを看板にしてやれという。こういう行為が実は不都合きわまると私は思う。私ども法律屋でありますが、実にこれはいかぬ。法令を作っておいて、取締り官憲が抜け道を教えて、見て見ぬふりをしている。それならば作らない方がいい。これが法令というものを蔑視する根本になるのでありまして、今日吉原の業者は悪いことをしているような頭がない。警察が四分六の分け前まで心配してくれている。そういう頭で存在しているのでなかなかこれは困難なのであります。そこでこれを抜本的にやりまするには、内閣はやはり強い方針を示しまして、この法律ができた以上は徹底的にこれを励行しなければならぬ。法律ができても、さっきの戸叶委員のときの質問じゃないが、いいかげんにお目残しがたくさんあちこちにできるようなことでは法律を作らない方がよろしい。法令の権威を失墜し、官憲の権威を失墜してしまう。これは一挙に絶滅はできないけれども、たゆまざる覚悟をもってこの法そのものの通り励行する熱意を示してもらいたい。事実に法が負けてしまう、取締り官憲が事実に負けてしまって法を弱めてしまうということが、大きくいうならば国家の威信にも関係するのであります。私は過去はとがめませんが、この法律ができた以上は、確固たる意思を持ってこの法律をそのまま励行する熱意をお持ち願いたい。これを重ねて川崎大臣及び石井警察庁長官に御意見を発表していただきたい。
  82. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 慎重御審議後本法案が両院を通過いたしまして法律として公布せられるということになりますれば、今回のことはことに画期的なことでありますから、従来終戦直後に公娼制度を廃止して、特殊喫茶店というものがこれにかわってできて、しかもそれが次第に今日御指摘のような姿に変りつつあるということははなはだ遺憾でありますから、今回法案がもし両院を通過して、法律になりました暁におきましては、もとより法治国の建前といたしまして厳粛にこれを実施いたすつもりでございます。
  83. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 この法律成立を見ました暁におきましては、私ども警察の立場におきましても忠実にこの法律の執行に当り、徹底した取締りを行いたい、かように存ずるのであります。
  84. 古屋貞雄

    ○古屋委員 今の戸叶委員猪俣委員の御質問に関連して石井長官と警視総監お尋ねしたいのですが、東京都の条例が今のような経過を経て実施されたのであるから、当分の間は寛大にする、しかも四分六のお世話をしたというようなこともあったということでありますが、ただ私ども見のがしてはならない重大な問題がここにあるのです。赤線区域青線区域ということで、都条例がありながら、これは厳密でなくても都条例にきめられた通り取締りをされていないというところに、私は非常に大きな問題があると思うのです。これは順法精神に対する問題が最も大きな問題なんですが、現に現行法として取り締らなければならぬ性病予防法の取締りがあるにかかわらず、これは見のがしておるということになる。この点が一番大きな問題になると思うのです。と申しますのは、一昨日の参考人の市川博士の説を承わりましても、その他の医者の説を承わりましても、今の検診制度ではとうてい性病伝染を防ぐわけにいかないということは常識なんです。従いまして赤線区域青線区域における一週間に一度くらいの検診では、毎日冷々公然と、法律がありながらあなた方の取締りの管下では性病の伝染をおやりなさいということを公表していることになるのじゃないか。私はそう思う。一昨日の池上参考人の説によりますと、自分の身をもって一日に六人の男を相手にしたという。一日に六人の男を相手にしたというような売春婦日本中に何万人かおって、しかも今のような取締り条例があるにかかわらず、その歴史的な経過がそういうことになって、あまり厳重に取り締らないことにするのだということでありましても、いやしくも現行犯であるその売春取締りを見のがすということで、その裏には、性病予防法違反を公然とやらしている。これを取り締らないということになっておる。この点が重大問題だ、私はそう思うのです。実は私は厚生大臣がおるところで厚生大臣に聞いてもらいたいと思っておるのですが、厚生省では性病の予防、取締りにどのくらいの予算を組んでどういうことをおやりになっておるか知りませんけれども、一方ではただいまのように、条例で処罰すべき現行犯をそのまま見のがす。その現行犯に表裏のようにくっついて——厚生大臣聞いて下さい。これは重大な問題です。あなたの方でおやりになっております性病予防法を御苦心の結果こしらえられて、性病予防をやられておるのですが、今お聞きのように取締りを緩和して公認をして、赤線区域は黙認の売春をやらしておる。その売春をやらせる、却それにうらはらになって性病が伝染されておるということが問題なんです。この性病は民族の興亡に関する重大な問題である。国を滅ぼす原因はここにあるというまで非常におそろしい病気である。従って性病予防法がここに厳存しておりながら、ただいまのような寛大な取締り——取締りというよりもむしろ黙認をしておいた結果、七年間に一体どのくらい性病というものが伝染したかということを考えるときに、私はこの怠慢はまことに重大な責任だと思うのです。まず第一にお尋ねしたいことは、一日に六人から五人の男を相手にし、その中には病毒を持っておる者があることは間違いないことである、医者の説明によると夫婦生活以外の性行為がいわゆる伝染の原因だと言っております。従いまして厚生省においてどんなにこういう性病に対する予防に御苦心を賜わりましても、処罰ばかりしても、その源をとらなければだめである。処罰をして源を取り除くという点において、ただいまのような取締りが行われておる。私は、この点に対してどういう責任をお感じになっておるかということを承わりたい。言いかえますならば、結論から申しますならば、なるほど東京都の条例はいろいろな経過を経たものでありますから寛大にするということ、今即時実施をやかましく厳重に取り締っていただかなくてもいいのだ、こういう希望はございましても、少くとも法律として処罰法規として制定されておる事実、その処罰法規をゆるがせにし、もっと申しますならば、われわれはそんな怠慢によって結果づけられた性病の伝染のおそろしかったことを今ここで振り返ってみますときに、大体取締り警視総監におきましても、ことに直接の関係をお持ちになっておる養老さんがいらっしゃいますから、部長さんの方からでもけっこうでございますが、大体そういうような性病の伝播のおそろしいことが行われておるということを存じないでおったのか、存じておったのか、まずこの点一つ。それから石井長官に対しましても、そういうような現行犯を見のがしておったということは、これに一体どういうようなお考えでおったのかということを私はまず承わりまして、次の質問に移りたいと思うのですが、これは私は重大な問題だと思うのです。ただ東京都条例はいろいろの経過を経ておるから、普通の処罰法規と違って寛大にしてもらいたいことはよくわかる。しかしその寛大にすることが即性病予防法の現行犯を今日まで七年間見のがしてきた。それがためにこうむった日本の民族、日本の青年、日本のお互いに及ぼした悪影響に対する責任というものは私は重大だと思う。従いましてそういうようなことが売春を見のがすことによって、表裏の関係を持った予防法というものに非常な害毒を流された事実、そういうことを認識の上で寛大な取締りをしてきたのか。ただいまにおけるそういうような伝染の行われた悪結果に対する責任をどう持つかという二つを私は承わりたい。
  85. 江口美登留

    ○江口参考人 もとより条例として制定されましたものの中には、そういう赤線地域の取締りは寛大にするというようなことは書いてございません。いろいろ複雑な事情がありまして、この条例を作ったのでありますが、しかし文字になりました以上は、その文字通り警察権を執行するのがもちろん当然のことだろうと思います。この点今まで行われていなかったことは、はなはだ法令軽視の面もあったようでありますので、はなはだ相済まぬことだと思うのでありますが、しかし事実の問題として私先ほどお話申し上げたような苦しい事情がございまして、その地域における売春だけは多少大目に見る。しかしその中でいやしくも人身売買、あるいは強制、搾取というようなことが行われれば、これはびしびしと取り締る。その結果いわゆる売春というものが、特に悪質なものが明らかになりました場合には、それらと関連いたしまして取締りをいたしております。ただ売春だけの取締りということはゆるやかになっておった次第であります。なぜ条例に書いてある通りに執行しなかったかといわれますれば、その点はまこと相済まぬことでございますが、その点はいろいろ事情がありましたことを御了承願いたいと思います。他の点につきましては、養老部長からお答えさせます。
  86. 養老絢雄

    養老参考人 売春と関連いたしまして、性病の問題が必ず出て参りますが、われわれ売春等の取締りに当りまして、性病のおそろしさということは十分考えまして、予防法の見地からもその規定の適用については十分これを実施いたすように努めておるのであります。従いまして売春婦等を検挙しました場合には必ず衛生当局と連絡いたしまして、売春婦につきまして検診等のことについては励行いたしております。ただこの性病の予防法の一般的な実施につきましては今日警察にはその権限がないのでございまして、衛生行政の所管になっておりますので、警察の方で売春取締り等に関連いたしました限りにおいてこうした規定の実施をいたしておりますけれども、性病に罹患しておられる者に対して検診ないしは治療を実施するようにこれを督励していく、指導していくというようなことはいたしていないのでございます。
  87. 古屋貞雄

    ○古屋委員 私の承わるのは売春取締りを緩慢にした、そのこと自体の反面には性病予防法におけるいわゆる二十六条であるとか二十七条のようなものが表裏のごとく並行していくわけです。従って現行犯ですから売春の現行犯をつかまえてみたら両方の現行犯が出てくる。それをやらなかったということに対してお尋ねしておる。ただいまのあなたの御答弁では励行しておるというのですから聞きたくなる。一体売春の現行犯を引っぱって病気があれば二つの併合罪がある。それを見のがしておるから、総監がおっしゃったように緩慢にやられて十分でなかったところに性病が伝播されてきたということになる、私は表裏の問題だと思う。医者の専門家に聞けば伝染病の源は大部分が売春の媒介によって行われておるのだということになるから私承わっておるので、この点はいかに厚生省で御配慮願って衛生取締りでやられましても、現行犯をつかまえることはあなたの方の御職掌であって、これを見のがしておるところに問題があるわけです。私はそれを申し上げておるわけです。こういう問題について当時お気づきならなかったなら別ですが、気づいておったということでありますれば現行犯を見のがしていたということになる、そうじゃないですか。その点承わりたい。
  88. 養老絢雄

    養老参考人 御質問の点はよくわかるのでございます。伝染のおそれのある性病にかかっております者が売春をやっていたというような場合にわれわれが売春取締りの上で逢着いたしました場合には、もちろん悪質なものについてはこの条文を適用いたしましてこれを立件送致いたしておりますけれども、何分通常の売春婦の場合には弱い女でございまして、これを立件して刑罰に当るようにするよりも病院等に入れまして、そうしてこれを治療せしめる方がむしろいいんじゃないかというふうな考慮をいたしまして、実際にはそのように警察がやっておるような事情でございます。
  89. 古屋貞雄

    ○古屋委員 私の申し上げておるのは、一昨日近藤春子さんが出てきてリンパ腺がはれて病気にかかっておるのにしいられて淫売をやったということを言っておる。あなたのおっしゃるように、寛大な処置をとって、これを病院に入院させるとかいう話は別ですが、今の売春をしいておるのを黙認しておるということが大きな弊害を社会に流したのだ、こういうことに対する御認識があったかどうかということなんです。これは弁明を言われなくてもよろしい、そういう御認識なくて今取締りを緩慢にしたというならばこれはもう問題はこれ以上追究いたしませんが、取締官として認識があるべきものだと私は思うのです。大体この規定は現行犯ですから、だから売春をやかましく取り締ればこれも一挙にして解決がついたのだ、今までほおっておいたことに対するお考えに対して承わって、今後はこういう問題については絶対に役立たせたい、こう思っておる。というのはこの間業者が出て参りますと、売春の歴史は古いのだ、そう簡単なものではないのだ、何千年以来の人間性に基く古い売春という歴史を持っているものであるから、そのうんのうをきわめてこれが対策を講ずるにあらざればどんな法律を作りましてもこれは実際の社会に適用されませんよ、こういう考えを持っている方があったのです。これは今言ったように皆さん方がこの前提として、こういう条例がありながら現行犯をやっておかなかったというところに順法精神に対する蔑視の観念がもう業者にあるわけです。それは今回のやかましいこの法律が通過いたしましても、結論の最後の取締りにおいて、今申し上げたように皆さんが忠実でなければ、また片方では順法精神がございませんから犯すことのあることが前提になっているわけです。それを私は承わっているわけです。これに対するあなた方のお心がまえを承わっておきたいのは、本処罰法が通過した後に、またこれと同じような、相手方は処罰を何とも考えていない、処罰されても自分たちは何とも思わない、違反行為をやりますということを暗にこの参考人としておっしゃっているわけです。そういう点を私考慮いたしまして承わっているわけですが、御所見いかがですか。
  90. 江口美登留

    ○江口参考人 先ほど私が御説明いたしました赤線地域等における売春婦取締りをゆるめていたという結果等によって、お話のような事例の性病予防法が軽視されてくるという結果が出てきやしないかというお話に対して、全くその通りだと思います。その取締りをゆるやかにした結果がそこに第二次的の結果として現われて、取締りを緩にしたという点が誤まりであったという点がある、その点についても大体誤まりを犯しているというようなことが言えると思います。この法案通りまして、方針がかわりまして徹底的にやるということになりますれば、御心配のような性病予防法の点も確保をされると思います。この法律が通れば、御懸念の点はだんだん減少していくのではないか、かように考えております。
  91. 古屋貞雄

    ○古屋委員 石井長官からも同様な御答弁を願います。
  92. 石井榮三

    石井(榮)政府委員 ただいま警視総監のお答えしたことは全く同感でございます。この法律成立後の暁におきましては、われわれ警察といたしましては徹底した取締りを行うつもりでございます。
  93. 古屋貞雄

    ○古屋委員 最後に私は要望でございますが、どういうような経過を経て都条例が制定されたかということにあまり取締官は政治的意図を持たずに、やはり制定された以上は、法治国であるから厳重に取り扱っていただきたい。ことに本件のごとき問題は、単なる窃盗とかいう問題でなく、民族に対する重大な問題でございますので、ただいまの御答弁を十分私ども信用いたしますが、どうかその点は努力をされて、本法案が通過せられました場合には、厳重に御適用されるように御努力を願うことを要望いたしまして両取締官に対する質問を終ります。
  94. 戸叶里子

    戸叶委員 厚生大臣大へんお待たせいたしまして申しわけございませんでした。時間がありませんから簡単にお伺いしたいと思いますが、先ほどの御答弁を聞いておりますと、もしこの法案が通った場合にはどういうふうな構想を持っていられるというふうな大へん私どもにとりまして心強い御答弁を聞かせていただいたわけでございます。ですけれども予算がもうすでに通っておりますので、当然この法案通りましたあとでは、追加予算として早くとっていただきたいと思うのですけれども、これがもう近々に通るように私どもも努力しておりますが、もし近近に通りました場合に、次の補正予算を組む前に何か厚生省としてもこの方面に充てられる、流用できるようなものなりあるいは予算なりがおありになると思うのですけれども、いかがでございますか。
  95. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 お答えいたします。ただいまの御質問でありますが、残念ながら今年の予算案といたしましては、更生保護施設に対して二千五百万円の経費を計上いたしただけでありまして、その他にこれに充てられるような余裕のある財源というものはないのであります。従って、もしこの法案通りまするならば、これは相当社会全般に対して与えるところの影響、並びにその後の措置に及ぼすことも重大でありますので、政府としては新たなる措置を講じなければならぬということに追い込められると思うのであります。
  96. 戸叶里子

    戸叶委員 これは厚生省の方の関係じゃないのでしょうか。家事サービスに対しての予算を組まれたり、あるいは職業補導所とか、家内職業補導機関とか、そういったものに予算をとっておありのようですけれども、こういうものを流用することはできないでしょうか。
  97. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 ただいまの予算は、自分としても労働省の予算だと思っておりましたが、政府委員に聞いてみたらやはりそうであります。
  98. 戸叶里子

    戸叶委員 その点は私ちょっとうっかりしておりました。  もう一点は、先ほど古屋委員からも述べられたことなのですけれども、厚生省の中に性病予防対策の課がございまして、性病予防を一生懸命にやっていらっしゃることはよく了承しておりますけれども外国などの例を見ても、また今日の日本状態を見ても、黙認検診制度というものは、結局性病予防の対象になっておらない、こういうことがはっきり示されておるわけでございますが、この点は厚生大臣御存じでいらっしゃいましょうかどうでしょうか、伺いたいと思います。
  99. 川崎秀二

    ○川崎国務大臣 もちろん存じております。従ってこの性病予防というものに対しても、厚生省は従来ともに強力な施策を行なってきたのでありまするけれども、御承知のように近ごろ、ことにこの三年ばかり前からの傾向として、しばしば論議されましたように、赤線区域に加えて青線区域というものがふえて参りました。この青線区域におけるところの性病の罹災というものは、非常に莫大なものだと思っておりました。私はこの委員会へ来ますまでは、実は専門知識を深くは持っておりませんでしたので、おそらく性病にかかるパーセンテージは、青線の方が多いのではないかということを思っておったほどでありますが、ここへ来て公衆衛生局長に先ほどから少しく予備知識を聞いてみますと、比率はほとんど同様だそうであります。従って強制検診というものを行なってはおりまするけれども、それに漏れるようなところもありまして、十分な措置が講ぜられない点があるかと思うのでありますが、それらについては今後十分留意をいたしまして、性病予防というものに対しては一そうの措置をいたしたい、かように存じておるような次第であります。
  100. 戸叶里子

    戸叶委員 赤線区域人たちのいいますことは、赤線区域があるから、いわゆる黙認制度で、そこで検診が行われるから性病予防になるのだ、こういうことをいわれているわけなんです。ただいまの厚生大臣の御答弁を伺いまして、結局この黙検診度どいうものが、決して性病予防の対象になっていないということがはっきりしたわけでございまして、この意味から申しましても、この売春というものの処罰法というものが、いかに大事かということをお認めいただいたと思いますので、どうぞこれに対しての御協力をお願いしたいと思うわけでございます。  まだいろいろございますけれども、いずれそのあとの問題はあらためて伺いたいと思いますので、きょうは厚生大臣に対する質疑を打ち切りたいと思います。労働省の方の関係できょうちょうど婦人少年局の局長代理が見えておられますので、簡単に二、三点伺いたいと思います。  まず第一にお伺いしたいことは、各県に婦人少年室という出先機関がございますが、ここへ転落前の相談をするような人たちが、一体今までどのくらい——いよいよもう自分たちがやっていかれない、何とかしてくれと言ってやってくるような人が、昨年の統計でけっこうでございますが、どのくらいあったかどうかということを伺いたいのと、時間を倹約してもう一つ続けて御質問いたしますが、それは、売春婦でとてもやり切れないから、何とかしてくれと言ってかけ込んだ人が、一体どのくらいあるか、この二点を伺いたい。
  101. 谷野せつ

    ○谷野説明員 各県の婦人少年室において取り扱いました今までの実績から申し上げてみますと、第一の御質問の点の転落前の相談でございますが、それが大体百五十くらいでございまして、転落後の相談も、大体百五十をちょっとこえている状態でございます。それに加えてちょっと御説明申し上げたいのでございますが、最近では売春防止の法案の問題がこちらで取り上げられましてから、とりわけ相談に参ります方が非常に多くなりまして、今までよりももっとたくさん来ていらっしゃる状態でございます。最近婦人少年室の室長会議をいたしました結果を伺ってみますと、一府県で一日に二人ないしは三人くらい相談に参っております。
  102. 戸叶里子

    戸叶委員 大体地域別にして、どこの方が多いとか少いとかいうことが言えますか。
  103. 谷野せつ

    ○谷野説明員 特に多いと考えられますのは、やはり九州の地区でありますとか、むしろいなかの地区に多いように伺っております。
  104. 戸叶里子

    戸叶委員 厚生省等で保護矯正の面をいろいろ考えておられまして、これはもちろん重要なことでございますけれども、やはりこの売春をなくするためには、抜本的な対策を立てられなければならないと思います。やはり労働省などでなされなければならないことは、どうして正業につけるかということに対しての、あらゆる努力がされなければならないと思いますけれども、こういう点に対して何らかの構想をお持ちでいらっしやいましょうか。
  105. 谷野せつ

    ○谷野説明員 労働省におきましては、何とかして売春をなくしたいと努力をいたしまして、今までいろいろ調査や啓蒙の活動もいたして参りましたが、特に子供が前借等をもって転落して参りましたり、また危険な環境におります女子の転落防止のために、いろいろな機関と連絡をとりまして、その防止の措置を講じて参りました。それからまた周旋、あっせんの途中で、いろいろ違法の問題がございました場合にはその機関に連絡をいたしまして、その措置をとるようにいたして参ったのございますが、特にこの啓蒙活動が行われました結果、先ほど御説明申し上げましたように、婦人少年室の窓口に相談にいらっしゃる方が大へん多うございまして、室長はこれは自分の問題であると考えまして、一生懸命業者の方の相談に乗りましたり、子供の将来の就職先について、かけ回って世話をしている状態でございます。また私どもは、この法案の進行に関連いたしまして、売春の婦女子をこれから正しい仕事につけますために、いろいろ考えて参りたいと思っております。特にこれからの問題といたしましては、仕事につきます人たち就職助成のためのの技能修得でございますとか、あるいは貸付金の制度でございますとか、それから今までの、婦人の、売春の相談に対してもっと答えられるような、婦人相談のための施設を拡充して、その機能を強めたいと思っておりますし、現に婦人少年局には出先機関といたしまして協助員の制度もありますので、その協助員の方々売春の問題につきましてもっと強力に働いていただきたいと思っているわけでございます。ただいま申し上げました売春の婦人の相談施設につきましては、今売春問題対策協議会で検討が進められておりまして、私どもとしてはそういう考えでございますが、この協議会の決定に待ちまして十分考えてこれにおこたえするようにして参りたいと思っております。  またこの席上をかりまして大へん恐縮でございますが、婦人少年局におきまして最近調査をいたしました資料を昨日新聞発表いたしましたので、ごく概略御説明申し上げることをお許しいただきたいのでございますが、調査いたしましたのは昨年の六月でございまして、調査の対象は全国の五十カ所で、業者が三百五十人、売春婦が大体六百名でございました。この調査をいたしましたおもな目的は、売春婦というのは一体どういうような人であるか、また最近戦後の集娼地区がどのようなものであるかというようなことについて調査をいたすことでございました。調査をいたしました結果知り得ましたおもな二、三の点を申し上げますと……。
  106. 世耕弘一

    ○世耕委員長 ちょっと御発言中でありますが、詳細な調査資料がおありでしたら、委員会資料としてお出し願えると非常に便利だと思います。
  107. 戸叶里子

    戸叶委員 私ちょっと伺いたいことだったのですけれども、御説明いただいておりますから、簡単に御説明していただきまして、詳しいことは資料として出していただくようにしてもらいたいと思います。
  108. 世耕弘一

    ○世耕委員長 どうぞ要点だけを御説明下さいまして、貴重な資料ですから委員会の方へ御提出を願いたいと思います。
  109. 谷野せつ

    ○谷野説明員 売春婦につきましては、その七割が経済的理由から転落しているということと、それから既婚者が四割で未婚者が六割という状態でございますが、夫のある者は一割という状態でございます。また業者につきましては大部分が何とかして生活の道を早く立てて転業したいというようなことを言っておりますのが三割ぐらいの状態でございます。
  110. 戸叶里子

    戸叶委員 時間がございませんから、またこの次の機会にしたいと思います。
  111. 世耕弘一

    ○世耕委員長 この際お諮りいたします。売春等処罰法案について社会労働委員会から連合審査会を開いてほしいとの申し入れがありましたので、この連合審査会を開会することといたしたいと存じます。開会の日時等に関しましては委員長に一任を願いたいと存じますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  112. 世耕弘一

    ○世耕委員長 御異議なければさよう決定いたします。  本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせいたします。これにて散会いたします。     午後二時十六分散会