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1955-07-06 第22回国会 衆議院 法務委員会 第31号
公式Web版
会議録情報
0
昭和三十年七月六日(水曜日) 午後一時四十五分
開議
出席委員
委員長
世耕
弘一君
理事
古島 義英君
理事
山本 粂吉君
理事
三田村武夫
君
理事
古屋 貞雄君
理事
田中幾三郎
君
椎名
隆君 高橋 禎一君 林 博君 松永 東君
眞鍋
儀十君
小林かなえ
君 横川 重次君
猪俣
浩三君
神近
市子
君
淺沼稻次郎
君 細田 綱吉君
委員外
の
出席者
専 門 員 村 教三君 専 門 員 小木 貞一君 ――
―――――――――――
七月五日
委員高木松吉
君
辞任
につき、その
補欠
として眞
鍋儀
十君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 同月六日
委員中村高
一君
辞任
につき、その
補欠
として吉
田賢一
君が
議長
の
指名
で
委員
に選任された。 ――
―――――――――――
本日の会議に付した案件
売春等処罰法案
(
神近市子
君外十八名提出、衆 法第一四号) ――
―――――――――――
世耕弘一
1
○世
耕委員長
これより
法務委員会
を開会いたします。
売春等処罰法案
を議題とし、本日は
提案者
の
逐条説明
を聴取し、しかる後
委員各位
の
質疑
に入りたいと存じま す。
神近市子
君。
神近市子
2
○
神近委員
ただいまから
売春等処罰法案
を
逐条説明
申し上げます。 第一条。
本条
は、
売春等処罰法
の
目的
を
規定
するとともに、この
法律
によって保護される法益を明確にしたものであります。すなわちこの
法律
は
売春
及び
売春
をさせる
行為等
を
処罰
することといたしておるのでありますが、これらの
行為
を
処罰
するゆえんのものは、
売春
をさせる
行為等
は人間の
性倫理
にもとるものであり、これらの
行為
の放任は
社会
における
風紀
の
紊乱
を招く重大な原因となる。またその反面において、
婦女
をして
売春
という醜業に従事させしめる、すなわち、
婦女
をしていわゆる白色奴隷化させるという
婦女
の
基本的人権
の最大の侵害とも目されるべき事態の発生を招くことになる、かような重大な
弊害
を生ずるということにかんがみたものであります。そしてこのような重大な
弊害
をもたらす
売春
及び
売春
をさせる
行為等
を
処罰
することによって、
風紀
の
紊乱
を防ぐとともに、
婦女
の
基本的人権
を擁護し、ひいては健全な
社会秩序
の
維持
に寄与しようということが、この
法律
を提案する
理由
なのでありますが、同時にこの
趣旨
を第一条において明確にこの
法律
の
目的
として
規定
したものであります。 なおここで付言いたしたいことは、この
法律
においては、
売春
及び
売春
をさせる
行為等
の
犯罪
をいわゆる
刑事犯
、
自然犯
、すなわちそれ
自体
において道徳的に悪いとされる
行為
を
内容
とする
犯罪
と考え、いわゆる
行政犯
、
法定犯
、すなわちそれ
自体
においては道徳的に無色な、いな、場合によっては道徳的によいとせられる
行為
を
内容
とする
犯罪
とは考えていないことであります。従って
売春
及び
売春
をさせる
行為等
は、この
法律
ができたから悪い
行為
となったというのではなく、もともと道徳的にも許されない悪い
行為
であったのが、この
法律
ができたことにより
刑罰
が加えられることになった、かように考えなければならないのであります。 第二条。本
条は売春
ということについての
定義
を
規定
したものであります。この
定義
は、いわゆる
売淫
の実態にかんがみ、特に
風紀
の
紊乱
の防止と
婦女
の
基本的人権
の擁護の二点に重点を置いて考えたものでありまして、第一に一、
婦女
が、第二に、対償を受け、または受ける
約束
で、第三に、不
特定
の
相手方
と、第四に、
性交
する、かかる四つの
要件
を具備したものを
売春
と
定義
したのであります。従って、
婦女
が対償を受けもせず、または受ける
約束
もせずに不
特定
の
相手方
と
性交
した場合は、
売春
とならないのであります。また、たとえ対償を受け、または受ける
約束
をして
性交
した場合であっても、その
相手方
が
特定
の者であるならば、やはり
売春
にはならないのであります。従って、対償を受け、または受ける
約束
があるならば、
性交
の
相手方
はだれでもよいという建前のもとに
性交
する
行為
が、
本条
の
売春
に該当することになるのであります。 なお、ここに「対償を受け」といいますのは、
性交
の前に対償を受ける場合のほかに、
性交
の後に対償を受ける場合も含まれ、かつその対償は、直接または
間接
にその
売春
を行なった
婦女
に帰属するものでなければならないのであります。また、ここに「対償」とは、いかなる形式のものにせよ、
性交
と密接な
相関関係
を持つ対価として給付されるもので、その
内容
は、単に金銭に限られず、広く
経済的効用
のあるものを含むものと解するのであります。 そこで、
本条
の
売春
が成り立つに当っては、その
婦女
は
特定
の
相手方
と
性交
したのか、それとも不
特定
の
相手方
と
性交
したのか、その
婦女
は
現実
に
性交
の対償を受けたのか、または
現実
に
性交
の対償を受ける
約束
をしたのか、等々のことにつき、
種々
の事実認定を経なければならないことになるのであります。 第三条。
本条
は、
売春
をした者またはその
相手方
となった者に対する
刑罰
を
規定
したものであります。第一項は、
売春
をした者またはその
相手方
となった者に対する
刑罰
の
規定
であり、第二項は、
常習
として
売春
をした者に対する
刑罰
の
規定
であります。 「
売春
をした者」とは、第二条に
規定
する
売春
の
行為
を行なった
婦女
をいい、「その
相手方
になった者」とは、第二条に
規定
する
売春
の
行為
を行なった
婦女
の
相手方
となった
男性
をいうのでありますが、
本条
において
処罰
の
対象
となる「
相手方
」たるためには、その
婦女
が第二条に
規定
する
売春
の
行為
を行う
婦女
、つまり「
売春婦
」であることを、
性交
のときに認識していなければならないのであります。 次に、
本条
においては、
未遂罪
に関する
規定
を設けておりませんので、
本条
の
処罰
の
対象
となるためには、いずれも
行為
が
既遂
となっていることを必要とするのでありまして、
行為
が
既遂
とならなければ、
本条
の
処罰
の
対象
とはならないのであります。すなわち、この点について申し上げますと、
売春行為
というものは、第二条の
定義
にもありますように、
性交
という
行為
と、対償を受けまたは受ける
約束
という
行為
とが必要なのでありまして、これらの二つの
行為
が密接な
相関関係
をもってともになし終った段階、この時をもって
既遂
とするのであります。
拘留
は、
刑法
第十六条に
規定
してあります
通り
、
期間
は一日以上三十日
未満
であり、
拘留場
に拘置されるものであります。また、科料は、
刑法
第十七条に
規定
してあります
通り
、十銭以上二十円
未満
、ただし、現在では、
罰金等臨時措置法
によりまして、五円以上一千円
未満
となっております。 第二項の「
常習
」とは、反覆して
売春行為
を行う
習癖
をいうのでありまして、かかる
習癖
のある者につきましては、特に重く
処罰
する必要がありますので、
常習
として
売春
をした者に対しては、六箇月以下の
懲役
または三万円以下の
罰金
というように、重く
処罰
したのであります。 この際、
常習
として
売春
の
相手方
になる
男性
、たとえば、常に遊廓に行っては女を買うというような男、このような者も第一項の場合と比較いたしますと、
厳罰
に処す必要があるのでありますが、何分にもかかる
男性
の把握は、現行の
証拠法
におきましてはきわめて困難でありますので、やむを得ず、この際その
必要性
を認めつつも、
処罰
の
対象
から除外した次第であります。 なお、
本条
の罰は、第四条以下の罰に比べますと、はなはだ軽くなっているのでありますが、これは
売春
の罪を犯す
婦女
につきまして、その
犯罪
の動機及び
理由等
を調査いたしますと、
家庭
の
貧困等資本主義的経済組織
のあわれむべき
犠牲者
とも目される者とか、
封建的家族生活
の
犠牲者
と目される者とかが概して多いのでありまして、これを普通の
刑法犯
、例えば窃盗とか詐欺とかの
破廉恥罪
と同視するのがはなはだ酷であると思われるからであります。それをもって考えてみますならば、
売春婦
に対しては、
懲役
とか
罰金等
の
刑罰
を加えるよりは、
保護観察等
、いわゆる「
保安処分
」をもって臨み、
家庭環境
の
調整
、
職業補導等
をはかるべきでありますが、一方いわゆる
売春婦
の
一般刑法犯罪者
への転落はきわめてその率も多いことにかんがみまして、
刑罰
による
一般予防
を重視し、前述のごとき
刑罰
をもって臨むこととしたのであります。しかしながら、
立法者
の
立場
といたしましては、この
規定
があるために苛酷なる取扱いをも是認することにはなりますが、やはり、何ゆえその
婦女
が
売春婦
になったかということをよく考えていただき、
刑罰
を科したことによってかえってその
婦女
をさらに悪化させることのないよう、
実行機関
の細心の注意を希望するものであります。この
立法者
の
趣旨
は、
売春
に対する特殊な
幇助
または
売春
を強制するような罪に対しましてきわめて重い罰を科していることによっても、御承知願えるものと考える次第であります。 第四条。
本条
は、
売春行為
を
幇助
する
売春
の
周旋
、
売春
の
周旋
を
目的
とする
勧誘
及び
売春
を行う
場所
を提供する
行為
を
処罰
するための
規定
であります。すなわち。第一項は、
売春
の
周旋
及び
売春
の
周旋
を
目的
とする
勧誘
をする者に対する
刑罰
を、第二項は、
売春
を行う
場所
を提供する者に対する
刑罰
を、そして第三項は、これらの
行為
を
常習
として行う者に対する
刑罰
を、それぞれ
規定
いたしております。 「
売春
の
周旋
」とは、
売春契約
の
成立
を
目的
とし、その中間に介在して
契約
の
成立
のためにする
行為
、すなわち、
売春
の
意思
を持って適当な
相手方
を求める
婦女
と、
売春
の
相手方
になる
意思
を持って適当な
売春婦
を求める
男性
との間に入って、その
婦女
と
男性
とを媒合させる
行為
であり、「
売春
の
周旋
を
目的
とする
勧誘
」とは、
売春
の
周旋
をするために、口頭によるといなとを問わず、人を誘う
行為
、すなわち、
売春
の
意思
を持って適当な
相手方
を求めている
婦女
のため、街頭において
通り
かかりの
男性
に対しそで引きし、その
男性
に
売春
の
相手方
となる
意思
を発生させて、その
婦女
とその
男性
とを媒合させる
行為
をいうのであります。 これらの
行為
は、第二項に
規定
する
売春
を行う
場所
を供与する
行為
とともに、第三条に
規定
する
売春罪
の
共犯
に該当するものと解せられるのでありますが、これらの
行為
は
悪性
がはなはだ強いと考えられますので、
独立罪
とし、
本条
において
規定
いたしたものであります。 なお、
常習
として、
売春
の
周旋
、
売春
の
周旋
を
目的
とする
勧誘
及び
売春
を行う
場所
を提供する
行為
をした者に対しましては、
刑罰
を加重する必要がありますので、第三項において、
刑罰
を加重する
規定
を設けたのであります。第五条。
本条
は、
婦女
を欺き、もしくは困惑させ、または
特殊関係
による
影響
を利用して、
婦女
に
売春
をさせるような
行為
を
処罰
するための
規定
であります。 右のような
行為
は、第三条に
規定
する
売春罪
の
教唆
または
幇助
に該当する場合が多いと考えられるのでありますが、必ずしもこれに該当しない場合も考えられ、また、
教唆
または
幇助
に該当するとしても、
売春罪
の
共犯
として取り扱うことは、刑が軽きに失するおそれがあると思われますので、特に
本条
において
独立罪
として
規定
したのであります。
特殊関係
による
影響力
を利用して
婦女
に
売春
をさせるということは、
婦女
の
意思決定
に重大な
影響
を与えることのできるような特殊な
関係
にある者が、その力によって
婦女
に
売春
をする
意思
を生ぜしめ、そして
婦女
に
売春
をさせることでありまして、最近における
売春
の形態としては、かかるものが相当多いと思量されるのであります。たとえば、
特殊飲食店
の
経営者
が、その
雇傭人
である
婦女
に対し強制的に
売春
をさせたり、
会社
の役員が、その
会社
の使用人である
婦女
に対し、顧客の接待上無理やりに
売春
をさせる、こういったものがこの場合に該当するのでありまして、
本条
に
規定
しております親族、業務、
雇用等
は単なる例示にすぎす、その他にも
婦女
の
意思決定
に重大な
影響
を及ぼすような
関係
のもの、たとえば
師弟関係等
が考えられるのでありますが、かかる
関係
のすべてを利用して
売春
をさせた者を
処罰
の
対象
にする
趣旨
であります。 なお、第一項の
規定
と
刑法
その他の
法律
との
関係
について申し上げますならば、まづ、
婦女
に
売淫
をさせた
者等
の
処罰
に関する
勅令
第一条の
規定
との
関係
であります。すなわち、この第一条の
規定
は、「
暴行
又は
脅迫
によらないで
婦女
を困惑させて
売淫
をさせた者は、これを三年以下の
懲役
又は一万円以下の
罰金
に処する。」というものでありまして、この場合、
暴行
または
脅迫
の事実がありますれば、
刑法
第二百二十三条の
規定
との
併合罪
をもって論ぜられたのでありますが、
構成要件
上、
婦女
を困惑させて
売淫
をさせた場合だけに限っている点、はなはだその範囲が狭いといわざるを得ないのであります。この点、「
婦女
を欺き」と「特殊な
関係
を利用して」とを入れた
本条
の方がずっと妥当なものであると考えるのであります。次は
刑法
との
関係
であります。
刑法
第百八十二条は、「
営利
ノ
目的
ヲ
以テ淫行
ノ
常習ナキ婦女
ヲ
勧誘シテ姦淫セシメタル者ハ
三年以下ノ
懲役
又ハ五百円以下ノ
罰金ニ処ス
」とあります。これは、いわゆる「
淫行勧誘罪
」であります。また、
刑法
第二百二十五条は、「
営利
、猥褻又
ハ結婚
ノ
目的
ヲ
以テ人
ヲ
略取シ
又
ハ誘拐シタル者ハ
一年以上十年以下ノ
懲役ニ処ス
」とあります。これは、いわゆる
営利誘拐罪
であります。
本条
につきましては、主として
刑法
のこの二カ条との
関係
が考えられるのでありますが、
刑法
第百八十二条は、「
婦女
ヲ
勧誘シテ姦淫セシメタル者
」でありまして、これは、
婦女
に
性交
する
意思
を生ぜしめて
性交
させた者ということで、
本条
にはなはだ以ておりますが、単なる
性交
は、第二条の
定義
にもあります
通り
、
売春
ではありませんので、
構成要件
上、
本条
と
刑法
第百八十二条とでは、異なっているのであります、従いまして、
婦女
に第二条の
定義
にありますような
売春
をさせたときは、
本条
の
適用
があるものと考えられるのであります。次に
刑法
第二百二十五条の場合は、
婦女
を
略取
または誘拐することが
構成要件
でありますので、
婦女
をかかる状態において
売春
をさせた場合には、
刑法
第二百二十五条との
併合罪
をもって論ずることになるものと考えられるのであります。 次は、第二項であります。第二項は、
婦女
を欺き、もしくは困惑させ、または
特殊関係
による
影響
を利用して、
婦女
に
売春
をさせる
行為
をした者が、その
売春
の対償の全部もしくは一部を受し、またはその対償の全部もしくは一部の提供を要求し、もしくは
約束
したときの場合でありまして、かかる場合は、
売春
をさせる
行為自体
まことにけしからぬものであるのに、さらに搾取ということが加わるものであり、これはその
罪質
まことに許しがたいものと考えまして、一年以上十年以下の
懲役
または五十万円以下の
罰金
というきわめて重い
刑罰
を
規定
いたしたのであります。 しかし、この場合にはいろいろな
態様
が考えられますので、以下その若干の
態様
とこの第二項との
関係
につき述べますと、第一に、
売春
の
相手方
から
売春婦
に対償が渡され、
ボス
がその
売春婦
から搾取する場合、この場合は、直ちに第二項の
規定
が
適用
されるのであります。第二に、
売春
の
相手方
から直接
ボス
に対償が渡され、
ボス
がその対償の全部もしくは一部を
ふところ
に入れた場合、この場合におきましては、
婦女
がその
売春
の
相手方
と対償を受ける
約束
をしていたとき、
婦女
があとでその
ボス
からその対償の一部をもらったとき、または、
婦女
と
ボス
との間に、その対償の
分配
、
ボス
が対償の全部を
ふところ
に入れる場合を含めて、その
分配
についての
約束
があったときにのみ、第二項の
規定
が
適用
されることになるのであります。と申しますのは、第二条に
規定
いたしました
売春
の
定義
というものが、
婦女
が対償を受け、または受ける
約束
で不
特定
の
相手方
と
性交
することとなっておりますので、少くともその対償が
婦女
に直接または
間接
に帰属する結果が生じなければならないからであります。従って、その
婦女
が
性交
はしたが対償を受ける
意思
が全くなく、しかも実際に対償を受けなかったというような場合は、
売春
とはならないのでありまして、かかる場合において、たとい
ボス
が相手の
男性
に対して対償を要求し、かつ、対償を収受したとしても、第二項の
規定
をもってしては、その
ボス
を
処罰
することはできないのであります。かかる
ボス
は、
極悪無比
の者として、この第二項の
処罰
の
対象
からはずすことは、
人道
上もどうかと思われるのでありますが、その
婦女
が
売春
をしたことにならぬ以上いかんともいたしがたいのであります。しかし、大がいかかる場合は、
ボス
とその
婦女
との間に、
事前
に対償の
分配
についての
約束
があり、前貸金の
返済
、食費、
衣粧料等
の立てかえ金の
返済等
というような
名目
のもとになされることが多いと思量されるのでありまして、かかる
事前
の
約束
に基く
返済
の
名目
の場合は、やはりこの第二項の
罰則
が
適用
され、従って、かかる
極悪無比
の
ボス
を
処罰
するために新しく
犯罪
の
構成要件
を定めなくても、あまり実害はないものと考えられる次第なのであります。 第六条。
本条
は、
婦女
に
売春
をさせることを
内容
とする
契約
の
申し込み
または
承諾
をした者に対する
刑罰
を
規定
したものであります。元来、
婦女
をして
売春
をさせるようなことを
内容
とする
契約
は、公の
秩序
または善良の風俗に反する事項を
目的
とする
法律行為
でありまして、民法第九十条の
規定
により、無効なものでありますが、最近の
婦女
に
売春
をさせるための
人身売買事件等
をみますと、かかる
契約
の
申し込み
または
承諾
が相当行われており、しかもこれらの
行為
は、
婦女
の
基本的人権
を無視した
人道
上も許されぬ
行為
でありますので、ここに
処罰
の
規定
を設けたものであります。
本条
では、右のような
契約
の
申し込み
または
承諾
をした者が
処罰
されるのでありますが、ただ、
婦女
がみずから
売春
をすることを
内容
とする
契約
の
申し込み
をした場合、及び自分が
売春
をすることを
内容
とする
契約
の
申し込み
を受けて
承諾
した場合は、
本条
の
処罰
の
対象
とはならないのであります。 なお、
本条
の
構成要件
は、
婦女
に
売春
をさせることを
内容
とする
契約
の
申し込み
または
承諾
でありますので、
現実
にその
婦女
が
売春
をしたかいなかは、この
犯罪
の
既遂
、
未遂
とは
関係
がないのであります。すなわち、その婦人が、
契約
の
成立
後、
売春
をすることを拒絶したため、
契約
の履行が不可能となっても、本犯の
成立
には
影響
がないのであります。 また、
婦女
に
売淫
をさせた
者等
の
処罰
に関する
勅令
の第二条は、
本条
と同
趣旨
のものでありますか、
契約
をした者とありますので、その
点本条
の方がより妥当なものであると考えるのであります。 第七条。
本条
は、
営利
の
目的
で、
売春
を行う
場所
として使用される
施設
を
経営
し、またはかかる
施設
を
管理
する者に対する
刑罰
を
規定
したものであります。このような
施設
の
経営
または
管理
ということは、
売春
の
幇助
とみなされるものでありますが、
売春
を助長し、または促進させることになるこのような
施設
の
経営
を
営利
の
目的
をもって行なったり、あるいは
管理
したりすることは、
社会秩序
の
維持
のためにも最も憎むべきことでありますので、特に
独立罪
として
本条
に
規定
し、
厳罰
をもって臨むことにいたしたのであります。 なお、
本条
は、第四条第二項に
規定
いたしました
売春
を行う
場所
を供与する罪にも該当するものでありますが、
営利
の
目的
をもってかかる
施設
を
経営
するという点において、非常に
悪性
が強いと認められますので、特に刑を加重した
本条
を設けたのであります。 また、かかる
施設
の
経営
または
管理
をする者が、その
施設
において、
婦女
に
売春
をさせた場合には、第四条の
売春
の
周旋罪
または第五条の
売春
をさせる罪との
併合罪
ということが考えられるのであります。 第八条。
本条
は、
売春
を行う
場所
として使用させる
施設
を
営利
の
目的
をもって
経営
する者に対し、
種々
の
財産的便宜
を供与する者に対する
刑罰
を
規定
したものであります。このような者は、
売春施設
の
経営
の罪に対する
幇助者
でありますが、
社会秩序
の
維持
のために最も憎むべきものであり、かつは、その
悪性
のはなはだしく強い
売春施設
の
経営
を
幇助
するということも、また大いに憎むべき
行為
ではありますから、ここに
独立罪
として
規定
いたしたのであります。 第九条。
本条
は、両
罰規定
でありまして、第六条
売春
をさせる
契約
)、第七条(
売春施設
の
経営
又は
管理
)及び第八条(
資金等
の供与)の
犯罪
について、その
行為者
を
処罰
するとともに、その
監督的立場
にある
法人
または人をも
処罰
するための
規定
であります。 第六条から第八条までの
犯罪
は、その性質上特に
行為者
を
処罰
するとともに、その
監督的立場
にある
法人
または人をも罰しなければ、かかる
行為
を防止することの徹底が期せられないと考えられますので、特に
本条
を設けたのでありますが、なお、これらの
犯罪
の悪質な点を考慮いたしまして、
免責規定
を設けないことにいたしたのであります。 第十条。
本条
は、第三条第二項または第四条から第八条までの
犯罪
には、いずれも
懲役刑
と
罰金刑
とを
規定
しておりますので、これらの
犯罪
につきましては、
情状
によりまして、
懲役刑
と
罰金刑
とを併科することを
規定
したものであります。 これらの
犯罪
に対しましては、その
情状
により、体刑と
財産刑
の両方を科することが、より一そう
処罰
の効果を上げ得る場合があると考えられるのであります。
附則
第一項。
附則
第一項は、この
法律
の
施行日
に関する
規定
でありまして、この
法律
は、
公布
の日から起算して三カ月を経過した日から
施行
することといたしました。 この
法律
の
施行
を延期いたしましたのは、現に多くの
地方公共団体
が設けている
売春取締り
に関する
条例
との
調整
並びにこの
法律
において
規定
いたしました
売春
及び
売春
をさせる
行為等
を現に行なっている者の転向または転業のための機会を与えようといたすものであります。 現在多くの
地方公共団体
が設けております
売春取締り
に関する
条例
は、
種々
さまさまでありまして、この数多い
種々
さまざまの
条例
が存在している際に、
売春等処罰法
を即日
施行
というようにいたしますと、
法律
と
条例
との一致しない部分につきまして、その解釈並びに
運用
に関し、
種々
の困難と混乱とを生ぜしめるおそれがありますので、この
法律公布
後三ヵ月の
猶予期間
中に、各
地方公共団体
におきましては、出来得る限り、
条例
を整理されまして、この
法律施行
後も残すものは残し、この
法律施行
の際に
廃止
するものは
廃止
いたしまして、
法律施行
の際、直ちに円滑なる
運用
が見られるように取り計らっていただきたいのであります。
附則
第二項。
附則
第二項は、
勅令
第九号の
廃止
及びこれに伴う
経過措置
を
規定
いたしたものであります。 本
法案
は、
勅令
第九号の
内容
を全部吸収して
規定
いたしましたため、
勅令
第九号はもはや必要がなくなりましたので、これを
廃止
することにいたしたものであります。従いまして、
勅令
第九号が
廃止
される以前において、
勅令
第九号の各条に
規定
した
行為
を行なった者に対する
罰則
の
適用
につきましては、
勅令
第九号の
廃止
後も、なお
従前通り
、
勅令
第九号の各条の
規定
による
罰則
の
適用
をするという
経過措置
を
規定
いたしたのであります。
世耕弘一
3
○世
耕委員長
これにて
逐条説明
は終りました。 次に本案の
質疑
を行います。
質疑
は通告に従ってこれを許します。
椎名隆
君。
椎名隆
4
○
椎名
(隆)
委員
二、三お伺いしたいと思います。この第二条に
規定
いたしました
売春
の
定義
の中には「
婦女
が対償を受け、又は受ける
約束
で不
特定
の
相手方
と
性交
する」ということに相なっておるのでありますが、そういたしますと、この中からは、いわゆるオンリー、昔は
ラシャメン
と言ったのでありますが、今はオンリーと言います。それとめかけ、いわゆる二号と言われておるのでありますが、これは除きますか。
猪俣浩三
5
○
猪俣委員
この第二条に
売春
の
定義
がありまして、この
売春
なるものは唯一の
構成要件
からできていると説明した
通り
であります。その中に
構成要件
の一つとして、不
特定
の
相手方
と取引するということになっておりますから、そのオンリーと称するのがいわゆる不
特定
の
相手方
と見られない各種の状況がありますならば、本罪には触れない。そのめかけと称するものが、やはり不
特定
と見られない場合には、つまり
特定
したものだということになれば本罪にはならぬと思いますが、ただオンリーと称し、めかけと称しましても実はオンリーにあらずして、ツー、スリーなんというのであれば、これまた一がいに名前だけでは言えない。まためかけと称しましても、土曜、日曜、月曜みな違うというようなことになれば、これまた名前だけでは言えないのでありますが、要は不
特定
であるかどうか、これは具体的事実に即しまして裁判所の自由なる心証によって決定することになるのじゃないか、こういうふうに考えております。
椎名隆
6
○
椎名
(隆)
委員
そうしますと、
特定
しておればいいのだということになると、毎日々々一人づつ
特定
しておる場合はどうでありますか、これは
売春
になりますか、なりませんか。
猪俣浩三
7
○
猪俣委員
そういう
特定
という意味を、それは取引する瞬間には
特定
するに違いない。
特定
しない幽霊みたいなものとは取引できません。だから
特定
、不
特定
ということをいかなる意味にするか、これは
社会
通念によって解決するよりしようがないと思います。だから毎日相手が違うようなものは、われわれ
提案者
として所期する、それは
特定
したとは考えられません。
椎名隆
8
○
椎名
(隆)
委員
日本から
売春
をなくしましょうという衆参婦人議員団から出しておるものですが、この中に正しい男女
関係
確立のためにということが言ってあるのですが、もしかりに正しい男女
関係
の確立のためだとすれば、めかけも除かなければならぬし、オンリーも除かなければならぬと思うのですが、どんなものでしょうか。
神近市子
9
○
神近委員
そのことはもちろんでございます。そうしてそのためにはいろいろ審議したことでございますが、この条文の中にめかけを含めるということが
法律
作成の技術上非常にむずかしい。それよりは民法の重婚の罪の多少の字句の改正というようなことになれば、その
目的
を達せられるのでないかという結論に来たのでございます。といいますのは、今の
規定
は、重婚の罪は、戸籍上に二
通り
に登録してあるという場合のみをとがめているのでございまして、事実上の重婚はとがめられていない。それからもう一つの困難は、お互いによく存じておりますように、妻が精神的あるいは生理的に結婚生活の継続が不可能であるという場合に、おばさんともあるいは二号さんともいわれるような人が家族の中におりまして、かえってその家族に都合がよい、あるいは子供たちも幸福になっているというような場合があるのでございます。そういう場合のことも考慮いたしまして、それはいろいろ御意見が出ておりますけれど、あの民法上の
規定
を多少変えまして、妻からの親告罪か何かということにならないかというようなことで、わざとこの中から一応除いたのでございます。
椎名隆
10
○
椎名
(隆)
委員
売春婦
とめかけ並びにオンリーとは、
風紀
を乱す点についてはどっちがどっちだと思いますか。
猪俣浩三
11
○
猪俣委員
御存じのように
売春
を悪と見ての立法でありますが、さればというてこれをどの範囲まで
売春
と見るか、これはいわゆる
基本的人権
との調和上、やはり考慮を払う限界というものがなければならぬのであります。もちろん、めかけ、オンリーと称しても、あなたのおっしゃる
通り
一種の
売春
に違いない場合が多々ありましょう。しかしながらここに
特定
、不
特定
といたしましたのは、やはり人権尊重という範囲におきまして、公共の福祉上やむを得ざるものだけを取り締るという一つのしぼり方として不
特定
というものを出したのでありまして、まあ限界を不
特定
というところでしぼるというところに持ってきたのであります。御説の
通り
、めかけやオンリーなんと称する者にも、
社会
風教上、本案の
対象
になる者以上に、はなはだ不都合な者もあると思いまするけれども、一応不
特定
というところに限界を置きまして、人権の保障との調和をはかったというふうに御理解願いたいと思います。
椎名隆
12
○
椎名
(隆)
委員
この
法律
ができると、結局、今まで無理して遊び歩いたいわゆる淫売買いに行っておった連中が、
法律
ができたがために、
処罰
されてはつまらぬ、毎晩々々遊びに行くならば少しくらい無理してもめかけを持った方が得だというふうな考えになることはありませんか。
猪俣浩三
13
○
猪俣委員
この
法律
がめかけ奨励法になるようでは大へんでありますが、そこは結局この
法律
ができましてからの行政機関の取締りと更生と倫理教育――私どもは、この
法律
だけで
売春行為
が一挙に世の中からなくなるとは思っておりません。更生
施設
と教育活動、
保安処分
、三者一体になりましてこの人類悪と戦わなければならぬ、その一つの突破口として本法を制定したものでありまして、これがめかけ奨励案にならぬように、他の
保安処分
及び教育活動、この方向を十分やらなければならぬと思うのであります。
神近市子
14
○
神近委員
椎名
さんの御心配はごもっともだと思うのですけれど、これは、水と、人間の感情生活は私は違うと思います。ここでせきとめられたからめかけになる、そう安直に水の流れを変えるようなものではなくて、この
法律
の出ました効果によりまして、たとえばそういう
習癖
を持っていた人が、子供に対しあるいは自分の家族に対し、友人に対し、多少の感情の抑制ということを学ぶようになるだろう、そうして私どもはその学ぶことを望んでいるわけでございます。ですから、あなたのおっしゃるように簡単に、こっちをとめられたからこっちにいくというようなことはないと信じております。
椎名隆
15
○
椎名
(隆)
委員
世の中はなかなかそういうようなわけにいかぬのでありまして、今も
猪俣委員
がおっしゃられたが、この
法律
ができたら
売春
がなくなるなんて考えたらこれは大ばか者であります。ちょっと調べたのですが、結局集娼制度を圧迫すれば散娼になる。わが国におきましても慶長の十七年、庄司甚右衛門が徳川幕府に、吉原というところに集娼させてもらいたいということで、全国の敵娼――江戸時代でございますから江戸の散娼を集めて、とりあえず作ったのがあの吉原なのであります。ところがあまり吉原が栄えていかぬ、これじゃしょうがないというので一時夜間の営業を禁止した、夜間の営業を禁止するといわゆる水茶屋あるいは湯女、矢場など散娼制度になって現われて、かえって集娼制度よりも
弊害
が多くなったので、また夜間の営業を許すようになった。大正六年当時救世軍あるいは廓清会がいわゆる公娼制度に対する何といいますか、足らないところを何とかうまくやって、公娼をある程度まで助けようじゃないかという運動が非常に多くなった。しかしながらこれを少くするということはできなかった。どのような方法をもってしてもできなかったのが、敗戦という結果に基いてマッカーサー司令部からがちゃんとやられたのが公娼制度の
廃止
なんです。公娼制度が
廃止
せられたために、現在のようにいわゆる散娼が各地至るところに散らばっているのです。この散らばっているものをして、さあ、この
法律
ができたからといって、一ぺんにというようなことはおそらく私はできなかろうと思うのです。ただ私たちの一番心配することは、この
法律
ができましたら、ちょうど未成年者禁酒法とかあるいは未成年者禁煙法、最近には食糧
管理
法などは
法律
があってもないのです。生き長らえて残骸をさらしている。食糧
管理
法は時たま取締りをいたしますけれども、結局あってもないと同じような状態であります。この
法律
ができたら、さあとやってみても実際はおそらく実効というものは私はなかろうと思う。しばしば言われておりますが、フランスとかあるいはイギリス、欧米ではすでに全面的に禁止している、全面的な禁止の規則ができたからといって、娼婦制度が消えてなくなってはいないのです。どうしたならばこの残骸を最低限度にとどむることができるか。政府としては全面的に否認する
法律
を作っても、果してその
法律
が実行できるかどうか憂うるのです。むしろ国民全般に順法精神をなくすようなことがあっては、わずか五十万程度の人間のために八千五百万の人間に、
法律
はいかに作っても実行のできないものだというような観念を与えたとするならば、私はむしろその方が大きな損害じゃないか。こういうふうに考えるのですが、そういう点どういうように考えておりますか。
神近市子
16
○
神近委員
椎名
委員
のいろいろの御杞憂はよくわかります。そして日本で今まで徳川時代からの売笑禁止制度が失敗したということもよくわかります。ですけれども、私どもが何よりも考えていただきたいことは、なるほど六十万の婦人に関することでございますが、このまま一体おいてよかろうかということ。そして公娼制度を存置するということは、これは世界的にいっても恥かしいことで、トルコとコスタリカだけが今公娼制度が残っております。そしてほとんど半公娼制度が残っているのは日本。そしてわれわれ日本が近い将来必ず国連に加入するという場合が考えられますから、その国内態勢をある程度整えておかなくちゃならないということが一つ。これはこの前犬養健氏が法務大臣の時代に強く主張されたこことでございまして、ともかくできることからやらなければならないということ。それからこの一つの
法律
で、すごく効果を発現しようということは、これは望めないことは、お説の
通り
でございます。しかし私どもはどこかに橋頭堡を立てて、そこからいろいろの付属法を作る。今日すでにございます四つ、五つの
売春
に関する、あるいは人権に関する、あるいは児童保護に関する
法律
の実動力、柱をここに立ててあげなければならないということ、それから付属法が逐次実施法に、あるいはたとえば外郭の婦人の団体なんかが今日この立法をすごく望んでいられる、そういう方々の協力体制も必ず私は実現するということを信じております。その方法につきましては、私ども多少自信も、それから計画も持っておりますけれども、これは
法案
の審議にあまり
関係
がないことなので、今御披露は申し上げません。しかし逐次この態勢が整うということ。失敗いたしましたのは、なるほど食管法なんかの失敗を今御指摘になりましたけれども、児童保護法に関する成功の面も、また見落してはならないと思います。初め児童福祉法が立法されたときに、日本に今までないようなこういう
法律
を作っても、何の役にも立たないんじゃないか、今まで子供はほったらかしておって大きくなってきたんじゃないかというような御意見があったということを伺いましたけれども、あの児童福祉法が立法されますと、
社会
にその協力態勢が非常に広範に広がって、ともかく多少今日見るべき成績を上げているという点も、御勘案いただきたいと思います。私ども決してこれだけでこの実施面――今すぐに問題になるだろうと思いますのは、実施面におきまして警官その他の末端の公吏との
関係
とか、あるいはこれに対してどういう特例法があるかというようなこともきっと問題になると思いますけれども、この一本ですべてが律せられるということは考えておりません。まずこの全国を風靡している悪風と、そして民族の将来にとって嘆かわしガンを残す性病の面に、
風紀
の面に、あるいは勤労精神の喪失の面、これに何とか一つ方向を与えて、ここからいろいろのことを考えていただきたいというような意味でございます。
古屋貞雄
17
○古屋
委員
椎名
君の御質問に
神近
さんから御説明申し上げましたが、補足いたします。問題は性道徳の確立であり、倫理の確立でなければならないのですが、現在のような情勢になっておりますると、一般の方たちは
売春
をするということは悪いものであるという認識が非常に薄いのです。ことに日本の過去の封建制時代の思想にとらわれて、家のために娘が売られていくのは、これは家に対する自分の奉仕である、犠牲であるというような、基本人権から考えますれば、非常に誤まった考え方が相当日本にあるわけであります。しかるに国が
刑罰
においてこれを罰する、これは悪であるということの教育が今まではっきりしていないのです。一方において教育が行われ、一方において
社会
保障制度が行われ、両々相またなければならないのでございますけれども、まず最初に考えなければならぬことは、かようなことは悪いことであるという認識を一般国民にはっきりと与えることが一番大事なことであります。その点において、各地方地方の公共団体の
条例
に基いて
処罰
いたすことの
規定
は不十分ながらございますけれども、少くとも国の
立場
から、かようなことは悪いことだという認識をまず国民に与えることは、私はこの法の
目的
にしてねらいの非常に大きなところだと思うのであります。従いまして、この
法律
が行われて、ただいま
猪俣
さんからも御説明申し上げたように、これによってかような弊風、かような状況が完全に食いとめられ、改められるとは私どもも考えておりませんが、一番大事なことは、国民一人々々にこれは悪であるというはっきりした性道徳の確立があれば、これが解決の一番近道である、これが一番中心でなければならぬ。しかしながら、くどいようでありますが、ただいま申し上げましたように、国の
法律
として、これは悪であるという一つの――教育の方面においては、基本人権の尊重ということで律されておりましょうが、他のいろいろの
犯罪
、あるいは他の
社会
悪に対する制裁と比較をいたしますときに、その非常に大きな比重から考えましても、これを
処罰
しなければいかぬのだという一つのはっきりした国の確立された
意思
表示というものがなければならない。そういう意味において、この
法案
はどうしても皆さんの御審議をいただいて通していただきたい。そうして実施面においていろいろと欠陥がございましたならば、改めて、一方においては教育、一方においては
社会
保障、こういう面と相まって完全にやっていきたい。 ことに順法精神の問題が非常に御懸念のようでございます。御質問のような点については相当考慮を払わなければならないと存ずるのでございますが、これは他の経済統制に基く取締りの
処罰
というような問題とは趣きを異にしまして、ただいま提案しておりますこの
処罰
法案
が通過して実施されますならば、さような統制違反に対する
処罰
法などと比較いたしまして、それほど
法律
が行われない、順法精神に
弊害
を来たすようなことはないように私どもは考えておるのであります。 ただし一方におきましては、御承知の
通り
、独身者の性の解決について非常に大きな問題がここにございます。これはもちろん日本の現在の経済事情においては
家庭
が持てない、夫婦生活を営むだけの経済
維持
が困難である、しかし一方においては、性の解決をしなければならぬというせつない人間の要求でありまする重大な問題が伏在いたしております。伏在はいたしますけれども、過去のこうした問題の経験に徴しますと、やはり独身者がこういうちまたに出入りする
弊害
よりも、むしろ妻帯者が出入りすることの
弊害
が多いという統計から考えましても、私は、教育面において、また一方においては日本経済の復興する過程において、ある程度までこれは実施ができるのではないか、かように考えておりますために、この点御了解をいただきたいと思います。
椎名隆
18
○
椎名
(隆)
委員
この
法律
が、性道徳の確立だ、あるいは倫理の確立だということになってくると、結局めかけも入れなければいけないし、オンリーも入れなければいけない、中途半端な
規定
だと私は考える。ことに
婦女
子が貧乏のために、あるいはうちの犠牲のために身を売って一時の窮乏を助ける……。結局政治の貧困で貧乏だということになってきておりますが、こういうことは統計をお調べになっておわかりかどうかわかりませんが、貧乏のためにああいうところへ身を沈めたのと、自分自身がぜいたくをしたさに身を沈めたのと、パーセンテージはどの程度になっておりますか。
神近市子
19
○
神近委員
これはいろいろ調査がございます。私が今頭に入れておりますのは鹿児島県の場合の二千五、六百件の調査でございまして、その約半数が貧困のため、それからあと三十何パーセントが虚栄心だったり、あるいは楽をしたい人であったりというようになりまして、あとごく少数が特殊の、夫が失業した、あるいは子供がある妻のケースとか、そういうふうなものでございました。それで比較して貧困が多いということは事実でございますけれども、一般に考えられているほど、あるいは流布されているほど貧困が大多数の
理由
とはならないように感じました。明日また私は別にちょっと参考にしておるものがございますから、今はその鹿児島の例で申し上げましたけれど、あとまた持って参りましてお答えをいたします。
猪俣浩三
20
○
猪俣委員
椎名
委員
の先ほどからの御質問は、実は本法の非常な盲点でございまして、われわれといえども大いに悩んでいる点であります。しかしこれを克服しなければわれわれの明日というものは明るくならぬという決心のもとにこの提案がなされたものでありますが、第一にこの
法案
の中、心は
椎名
さんもごらんになった
通り
、
売春
をした
婦女
子及びその
相手方
というものは
拘留
とかあるいは
罰金
とか、ごく軽微な、
罰金
も千円以下のもので処遇いたしておりまするし、彼らを食いものにするような連中に対して
厳罰
をもって臨んでいる。それですからこの
法案
の中心がどこにあるかは御了解いただけると思うのでございますが、それならば
売春婦
及びその
相手方
は
処罰
しないでいいじゃないかという御議論はあるかもしれませんが、
椎名
さんも弁護士であらせられるので御理解いただけるかと思うのでありますが、その一つは
売春
それ
自体
というものは悪だという、
自然犯
だという考えを強からしめる刑事政策でもあるのでありますが、なおまたこのわれわれがねらい定めておりまするところのいわゆる業者、これを捜査をいたしますときには、この
売春婦
及びその
相手方
、この者が
犯罪
だということになりませんと捜査は非常に困難をきわめるのであります。さような意味においてやはりこの
売春婦
及びその
相手方
も
処罰
しなければならぬという結論に達したのであります。これは結局
家庭
裁判所あたりの
保安処分
あるいは厚生省あたりの更生
施設
と両々相待ちまして、かような
売春婦
等の救済はまたすみやかに考えなければならぬものと思います。なおわれわれが政治上の一つの観点から見るならば、かような
法案
を出すことによって、今まで政治の貧困をカムフラージュいたしました点が、白日のもとにさらされまして、今度はこの
売春
がどんどん
処罰
せられるということに相なりますならば、これは政府としてもほっておくことができない。ここに
社会
保障制度というものがだんだん完備の道に向うであろう。今まで政策の貧困を、この哀れな
犠牲者
の自給自足によってごまかしてきた。それをごまかし切れない点に追い込んで、国家の政策の大転換を来たさせなければならぬ。今まで放置されましたる貧乏に対しまして、これが救済の手を国家が差し伸べなければならぬように追い込む一つの
法案
でもある。今あなたの御質問によると貧乏のために転落する者ということですが、これは労働省の婦人少年局の統計でありますが、生活苦のために転落した者が調査の五七%を占めておる、好奇心、虚栄心、甘言、友達の
勧誘
等の動機による者が四%ないし八%、自暴自棄、
家庭
不和、強姦、失恋などというのが一%などでありまするがゆえに、やはり大部分が生活苦にあるということはお説の
通り
だと思うのでありますが、さればといってそれを国家の他の
施設
、他の政策において救済せずして、哀れなものたちの貞操を売ることによって自給させることによってごまかしていくというところが、われわれが徹底的にこの
法案
を通してもらわなければならぬという熱意に燃える動機でもあります。どうぞそれを深く御理解していただきたいと思います。
椎名隆
21
○
椎名
(隆)
委員
私もでき得る限り
売春
の
行為
により生ずる
弊害
を少くしたいというのが念願なんです。この
法律
に根本から反対するのじゃない。でき得る限り世の中を明るくしたいというのは、これは何人も持っている
意思
だろうと思います。何とかして日本におきましても明るい
社会
を作るのには、やはりこういう制度を作ることが望ましいとは思いまするが、しかしながらこの
売春等処罰法
をもって完全なものだとは私は考えていないのです。もう一歩突き進めて、さらに研究しなければならぬ点がありはしないか、これを考えている。政治の貧困、政治の貧困とよく言いますが、政治の貧困貧乏ということは、ちょうど仁徳天皇のときから貧乏はつきものなのです。高き屋に登りて見れば煙たつ、あのときから貧乏ということははっきりわかっておる。しかも歴代の権威者、為政者が貧乏を駆逐しようと思いましても、今に至るまで貧乏の駆逐ができない。それで今悩んでいるのです。結局この
売春
も、人皇四十五代聖武天皇の天平年間から初めて
売春
というものができて、七十二代白河天皇のときに非常に旺盛をきわめた。それから平家が没落するに及んでいわゆる
売春
というものが全国的に広がっていったのです。その当時水辺にいたものを遊女、山の中にいたものをくぐつと言っていたのですが、結局鎌倉時代になりましてから遊女になった。
売春
に対する取締りとしては、吾妻鑑を読みますと、里見義成というものがまず
売春取締り
の別当になった。結局その当時から
売春
がいけないというのでおそらく取締りができたのだろうと思う。しかしながら現在に至るまでもその取締りというものはできなかった。何千年かの歴史に徴して見ましても、
売春
制度を絶滅するということはできない。洋の東西を問わず、あるいはいかなる時も、いかなるところにも、人間が集団するとなれば、
売春
というものは当然つきものなんです。これを一挙にして根本的になくせしむるということはおそらくできまいと思うから、でき得る限りその惨害から救い得る方法、どういうふうにしたならば一番よいかということを考えてやらなければならぬと思う。しかしこの前も厚生次官が来て話してくれたのですが、
売春
法ができまして、三カ月の
期間
を置いてから執行するのだということになりますと、――業者なんかは私はどうなってもいいと思う。先ほど
猪俣委員
もおっしゃられた
通り
、女を食いものにしておるということは、これは男としてもあるいは業者としても、人間としては私はくずのくずだと思っておる。業者はどうあろうとも、その六十万あるという人間がわずか三カ月間のうちに救われるかどうか、これが私は非常に心配なんです。ところがこれは
神近
先生もおそらく御承知でございましょうが、明治維新のころにイギリスから日本へ東洋遠征艦隊というのが来ておる。そのときにはインドに寄り、中国に寄り、安南に寄って、船乗りに女はつきものですから、どこの港へ行ってもまず第一に女を掘り出したのですが、インドといい、中国といい、安南といい、いずれもひじ鉄砲を食わせている。ところが日本へ来てみますと日本の女は非常に歓迎した。だから東洋遠征艦隊は、日本はオアシスだ、オアシスだ、これなんです。今度の戦争に負けてから後もそうです。戦争に負けてから後にオンリーという連中、よそから勧められたか、自分から突き進んだか、これは新聞紙上で御承知だろうと思いますが、むしろ日本の女自身が――もっとも日本の女は非常に異人さんが好きなんです。異人さんには突き進んで身をまかせておる、こういうような状態なんです。
基本的人権
の保護だ、
基本的人権
の保護だと側から一生懸命教えてやっても、女自身が現在の程度では、自分の身を進んで兵隊さんにまかしているというのが実情であります。
法律
が
適用
されてからこの六十万の人間をどういうふうにしたら一体救えるのでしょうか。明治維新のころにも横浜に岩亀楼という遊女屋があった。そこにいた喜遊という女郎さん、これがアメリカの人間に身をまかせるかまかせないかということが大きな問題になったときがあります。そのとき、「露をだにいとうやまとのおみなえしふるアメリカにそではぬらさじ」と言ってぴしっと鉄砲を食わしたのです。私はこういう女が日本にほしいのです。たとい自分は遊女をしておっても、アメリカ人から好まれて、どうだと声をかけられたときに、アメリカさんいやでございますと言ってひじ鉄砲を食わした、こういう気魄のある女をまず作らなければならない。それは、先生あたりは一生懸命やっておられるでしょう。(笑声) この間も厚生省から紅露政務次官が来たときに、六十万の人間に対して更生
施設
に入っておる者はどのくらいあるかと
猪俣委員
から突っ込まれたようですが、九百七十五名だというのです。その予算額が幾らかというと二千五百万で、地方でもって二割出すからちょうど三千万、六十万のいわゆる娼婦がいるのに
法律
を作ってかりに全部のパンパンが釈放せられたということになってくると、町に酌婦がはんらんして、あしたからどうして食っていくことができるか、この前
委員
会で新宿へ視察に行った。私が行ったのは夢園という家だ。二十二、三の美人さんがおりました。一体どのくらいの収入があるかと聞いたら、三万円あると言う。女で三万円はいい方だ。それで家へどのくらい送るかと言うと、一万三千円家へ送っておる。兄弟は五人おる。あなたが働かなかったらどうするかと言うと、小さい子供だけで、親は働けないから、一万三千円送って家でもって生活をやっておる、こう言う。もしその女がこの
規定
によってやめたとすると、一体どういうふうな方法で生活していくか、この
法律
が
公布
されて三カ月たつとやめなければならない。そういう
立場
にある女も相当あるものと私は信じておる。それに対する生活は一体だれがどういうようにして保障するか、こういう
法律
はできましたが結局またもとのパンパンに返らざるを得ないということになりはしないか、これを私は心配しております。
神近市子
22
○
神近委員
椎名
さんがよく学問しておいでになるので大へん驚きました。まあいろいろ御意見はございますけれども、仁徳天皇の時代からわれわれが売笑をしていたというようなことは、これはあの時代あたりまではまだ柴垣制度やなんかがあって、自由
社会
の末期であると私どもは見ておりますので、あの時代の売笑という制度はちょっと当らないと思います。でも自由
性交
というものは行われていたということは言えると思います。 それから、いろいろ御返事することがたくさんあったと思うのですけれども、あまり話が楽しかったものですから(笑声)つい聞き落してしまって、問題点をここへ記録しておりませんでした。アジアに白人が来て、そうしてインド、ビルマ、あちらで振られて、日本に来て日本で大へん歓迎されたということもおそらく私は事実だと思います。今日私どもがどうしてもこれを作りたいのは、国家の体面上――まあ体面ということはそう実質的には私は考えていないのですけれども、まずどうしても体裁としてなくちゃならぬ。というのは、この間アジア会議がインドにあったときに、参議院の人がおいでになった。それから日本の婦人団体がメッセージを送りまして、そうして日本も民主主義になりましておかげさまで婦人がいろいろ活動を始めました、
売春等処罰法
もそのうちにできるつもりでございますというようなことを言いましたところが、そのメッセージを読みましてアジアの婦人たちがびっくりした。われわれは日本はアジアにおける非常に進歩した国家としてそのあとについていくつもりで仰いでいた、ところがその問題はまた解決していないのか、われわれはもうすっかり解決していたんだと思っておった。まああきれたというようなことで、笑われたというのはこれはほんとうでないのですけれども、実態としてはそういう状態でございます。それで、これは体裁上からも国にそういう
処罰
法があるということはぜひ必要だ。これはさっき国連の
関係
等についても申し上げました。アジアの諸国の中でも婦人の人権に関する考え方の上でわれわれが最も劣っておる。私はそうありたくないということも考えます。 それから私ここでそのパーセンテージを申し上げたのは、婦人少年局の方は貧困者の数がちょっと高くなっております。それは調査においでになるとよくわかると思うのですけれども、子供をかかえた貧困未亡人、これが最も
社会
の同情を引くということをちゃんと女の人たちは心得ておる。それで私がわざわざ鹿児島の調査を申し上げたのは、その方が実態に近いと考えたからでございます。それは明日ちゃんと持って参ります。 それで貧乏ということは事実でございますけれども、この間の放送のときにも吉原あたりの業者の人たちが、
社会
がほうっておくからわれわれが貧乏な人たちに雨宿りをさせて上げるんだということをおっしゃったそうです。大へんうまい表現で私はなかなか上手だと思って感心したのですけれども、ともかくわれわれが雨宿りの
場所
を作ることができないから、ああいう搾取をなさる人たちにまかせておいていいかどうか、私どもはなるほどありがとうとは言えないと思うのです。こういう搾取の実態がひどいもので、この間おいでになったときに月に三万円かせぐ女があったというお話でしたけれども、私のところに投書が来ておりますのは、新宿でございまして、やはり一日に楼主が大体三万から四万のもうけがございます、ここに一軒あると同時に吉原にも同じような家を持っております、こういうことが書いてありました。それからこの二十六年でありましたか、新潟の原長栄という次席検事がおいでになって、新宿のある一人の業者が問題になったときに――あのときの報告は御調査の結果だと思うのですけれども、年間の税金が二千六百万円でした。そういうことを考えますときに、現にもうすでに一日三万から四万、私はこれを国会議員の歳費の高に比較したのですけれども、ちょうど閉会期の月給高であります。ともかく一日ですよ。それで吉原の方にも同じような店がある。そうすると約七・八万から十万の利得が一日上っている。女の方は三万円というのは一月の収益です。搾取は非常に高度になっている。大体一日千円のうちで二百二十円が女の手取りでございます。これは私どもいろいろ調査しました結果です。そのうちから化粧をし、美容室に行く。それからげたを買い、たびを買い、着物を買い、子供に送金するというような率になっております。一時にそれを収容できる
場所
はございません。なるほど厚生省の案を聞きましても、それはできません。ですけれど先例がございます。こういう
法律
ができたというときにはさっとほかの方に引くのです。そしてどうしても擁護しなければならぬ人たちは、大体千人に一人という率が前に出ているようでございます。それで思ったほど来られないということです。保護をする
施設
が六十万すぐ入れるような保護はできない。必要がないということは、十五国会の参議院の議員立法のときにも同じ論拠が出ておりました。それくらいでございます。
古屋貞雄
23
○古屋
委員
補足いたしたいと思いますのは、やはり問題が
基本的人権
の問題になって参りますから、私ども申し上げたいのは、
社会
は動いていると思うのです。毎日進歩して参っております。ことに長い間日本のかっての教育が
基本的人権
を無視して一つの強い者とか、あるいは一定の地位におります者に対して自分の身命を犠牲にいたすことが、一方においては非常にとうといことだというような思想が長く日本には教育され、流れてきておりますところに戦争のああした原因を作り、敗戦の今日の民族の苦しみが生まれておる。こういうことから考えました場合に、一応どこまでも基本人権を尊重するという建前をもっていかなければならない、と同時に憲法に保障された最低生活の保障という問題が国民にはあるのであります。今お話のような個人が同じ仲間の個人を――今の御説明を非常に善意に解釈して、困る人を救っておるのだという御解釈を願いましても、個人が個人を助けるということの前に、国が個人の生活を保障するという憲法の精神にのっとりまして、
社会
保障制度の確立の上からこれをながめなければならない。従ってこの
法律
が実施されることによって生活に翌日から困ります問題、即その人々をどうするかという切実な問題がここに提供されて参りますことは、一方においては基本人権の尊重という面、一方においては封建制度の思想的な面を考えますならば、この
処罰
法が制定されることは一つの思想的な革命であると思うのです。基本人権を尊重するという
立場
から考えますならば、一つの革命なんです。でありますから革命の場合にはこれに伴う
弊害
が起るでしょう。混乱もございますが、それは一時の過程的な問題であって、一定の過程の経過によってはやはり本道に復すべきものだ、かように考えますときに、多少の混乱や
弊害
はございましても、正しい国民の生活に大事な基本の線にその
処罰
法によって
目的
がまとまってくるという見通しにわれわれは立って、この
処罰
法の提案をいたしたわけでございます。従いまして御説の
通り
これに基いていろいろの
弊害
は生じましようし、いろいろ御希望のように国民の心がまえというものが変って参らなければならない、かように考えますけれども、何にいたしましても、国民の生活上に困っております問題については、一方においては現在のいろいろの制度の根本的改革も必要となってくるでしょう。それはまたかような
処罰
法によって促進されると私は考えるのでございます。また一方御説明がございました日本の御婦人の
関係
でございますが、これをいろいろ歴史的に見て、日本の御婦人が外国の人あるいは男に
売春
をするということは、一方においては村人、親族の人から非常に奇特な行いである、非常にりっぱな行いであるというように推賞をされた時代がございますし、ある場合にはそういうふうな義侠的な、一人が犠牲になって多数の人を救ったのだというような考えを持たした時代がございましょう。しかし現在のような
基本的人権
の尊重を基礎にした教育制度のもと、進歩された現在の日本の教育のあり方から考えますと、やはりそういう考え方は徐々に薄らいでいく、その薄らいでいきます日のすみやかならんことを私は希望いたします。そういう点から考えましてもこの
法律
がいろいろの面において
社会
の欠陥、思想的な欠陥、さような悪を助長することを
処罰
することによって、正道に導き得る一つの近因ともなり遠因ともなり、相当の力があるものと考えておるのでありますが、なお民族的な
関係
から考えましても、今私どもが非常に憂えるのは、日本の民族は三千年以来他の民族から圧迫を受け、しいたげられたという歴史はなかったので、植民地化され、あるいは植民地的な扱いを受け、一種の優越的な民族から圧迫を受けて長い間苦しめられた他の民族と比較すると、日本の人たちは民族的の考え方が非常に薄い。しかし私はただいまお説のように、日本の男よりも異人さんが好きなんだというこういう考え方を持つことが、民族的の誇りということに対して考え方が間違っておるし、考え方が薄いのだ、こういうことを考えますと、かつては日本の女が外国人に対して一番サービスがよかったという時代は――根本的にありますことは封建的な、いわゆる他人のために犠牲になることがうるわしい、りっぱな行いであるというふうに考えられた誤まった考えから出発しておると私は思う。しかし最近、民主憲法が制定されて今日まで
期間
としては非常に短かい。けれども非常な進歩と申しましょうか、変化を来たしております。日本の現状におきましては、少くとも
売春
に対する目安をはっきりといたす時期がもう到来しておるのではないかともかように考えておるのでございまして、御
質疑
ごもっともでございますけれども、要は結論は一体この
法律
が制定されることによって、現在の
社会
を明るくする方面また国民の生活の安定の方面に方向が向われていくということに相なることでございますから、その点多少の御議論あるいは多少の修正、いろいろのこともございましょうけれども、一応さような点を十分お考えを賜わりまして、とりあえず――完全なものではないと私ども考えておりますけれども、御協力を賜わりまして、通過をさせていただきたいと思います。
椎名隆
24
○
椎名
(隆)
委員
仁徳天皇時代の問題になると、萬葉集にあるのです。萬葉集に、天平二年の十二月、太宰権帥で大伴という人が上京する際に、遊行女婦から歌を二つ贈られているのです。そのときは純然たる淫売になっていたのです。先ほども申し上げました
通り
、この
法案
が
通り
ましたら、三カ月間経過してから執行する。六十万あるという人間を、五十九万五千人は削ってしまっているのでしょう。五十九万五千人の人間は、保護も何もしなくても自分のうちに復帰できると仮定して、あと五千人残る。この五千人が、かりにうちへ送金一万円ぐらいずつやっているという場合に、毎月一万円ずつ送らなければ生計が立たないという
基本的人権
、これを尊重しなければならないということをかかえていて、あすの生活のことを考えると、
基本的人権
ということも一つも価値がない。食わなければ生活ができない、食わなければ餓死せざるを得ない、そういう
立場
にある人間も考えなければなりません。
法律
が執行せられる、この
法律
の執行によって多くを労役場に留置することが
目的
ではない。そうすると、六十万人のうち少くとも五千人程度の人間は救ってやらなければならないと私は思う。厚生省のように駅前に三、四人くらいずつ人間を出して、東京に出てきた人間の相談に応ずるというのは――海岸あたりに行くと、自殺する者はちょっと待てという看板が出ておる、それと同じように、あんなものは何らの価値もないのです。
現実
に金がなければ生活が成り立たない。どういうふうにしたならば金が得られるであろうというそのときに、ただ単純なる相談だけでは食ってはいけない。そういう女が六十万人のうち私は少くとも五千人くらいはあると思う。この
法律
が執行せられたら、この五千人を助けてやれる効果が一体あるのかどうか。この
法律
を執行しまして、ただ労役場に留置する人間だけをふやすのが
目的
でないとするならば、その点も考慮しなければならないと思うが、その点に対する考慮ができているのか、できていないのか、これを聞きたい。
神近市子
25
○
神近委員
議員提案でございますので、予算面で予算のつくことがわれわれ発案できなかったということは御了承いただけると思います。ちょうど私どものこの
売春等処罰法
を援護するかのように、最近厚生省の案が、婦人センターを作るとかあるいは補導所を作るというような二、三案が発表されました。それでこの間、厚生次官、政務次官をお呼びしていろいろおただし下さったのですが、私どもはなおその点で、川崎厚生大臣の御意見とこの計画とを聞いてみたいというふうに考えているのでございます。さっき申し上げましたように、この
法律
ができまして、救護が必要であるということになりますと、今日この
法案
を早く作ってくれといって、私どもは全国からつつかれまして、いても立ってもいられないほど矢の催促を受けているのですけれども、そういう団体にも私どもは何らか保護を――たとえば森屋東先生のごときは、こういう婦人たちを、一人が一人を預かるという運動をしようというようなことをおっしゃったことがございましたけれども、これは私反対でございます。やはり個人の力というものは限りがございまして、
社会
あるいは国家的にこれは救済しなければならないと思います。この国家と民間との協力体制を急速に作るということも考えられます。それからもう一つは、政府の計画を促進していただくということも考えられます。私は五千人くらいの救助ができないということはないと思います。それからきのうあたりちょっと伺いますと、大体ああいう
施設
は、民生
委員
と始終相談いたしまして――非常に貧困であっても生活保護費を受けるという手続その他を、ああいう制度があるということさえ知らない人たちがございます。そういうような面でも極力これを手伝って、生活保護を受けるということも考えていいのではないかと思います。
猪俣浩三
26
○
猪俣委員
提案者
から
椎名
委員
に今度はお願いがあるのですが、われわれとしても、
売春
に陥りましたこの人たちを救済しなければならぬということがこの立法の
目的
でもあり動機でもあるわけですから、これを放任しておく
意思
はさらさらないのであります。そこで、先般も厚生省、労働省の各大臣に来てもらうように言いましたが、次官が出て答弁したはっきりした答弁でもなかったと思いますが、しかしながら厚生次官の答弁によりましても、八億円の予算を計上しておる、それが通れば何とかなるというのであります。また、この
売春
制度なるものを相当研究しておる人の案によりますと、二十億あるならば全部相当完全に救済できるという計算ができておるのであります。そこで、あなたも現内閣の与党の議員でありまするし、この
法案
それ
自体
がとにかく一歩進めた新しい文化革命の一環であるという御認識がありますならば、われわれもこの哀れな
犠牲者
を放任するというような
意思
は一つもないのでありまするがゆえに、わずかな予算ですから、どうぞ一つ与党をまとめ政府にも働きかけていただきたい。私は、八億の金があれば何とかなるという訴えを聞きましたときに涙が出たと言いましたが、その意味であります。何千億という軍事費、ことに先般衆議院を通過しました軍人恩給では、大将、中将の階級を復活せしめて、その恩給を増してやるために二百億近く一挙に増額されている。それから見まするならば、この人生の落伍者でありまする哀れな人たちに対して、わずかその十分の一か百分の一でいいのですが、そういう金が作り出せない。それが作り出せないということから、逆にこの
法案
に反対だというような論法というものはさか立ちしていると思うのです。われわれはそれを打破するためにまずこの
法案
をどうしても通過させる、通過したからやむを得ず政府が軍人恩給以上に予算を計上する、そうせざるを得ないように追い込まなければ、百年河清を待ってもこの
法案
はできません。それでは貧乏でなる者をどうするというのでは、あなたのおっしゃる天智天皇ですか、それ以来の悪習が改まらないことに相なります。そこで、今古屋議員が言ったように、これは日本の終戦後の土地革命に相当する文化革命だと私は考える。ここに過渡期においていろいろの問題が起るでございましょうが、それを突き抜けなければ人類の進歩は実現しない。いろいろ悩みながらそこに到達したのであります。 なおまた、
椎名
委員
に対してはなはだ子供じみたたとえを申しまして失礼でございますけれども、生活難のためにやるのだ、だからそれを
処罰
してどうするかという議論は、一面含蓄ある議論で、われわれはそこに悩みがあるのでありまするけれども、理屈から言うならば、もし生活難ということを唯一絶対の
理由
にして
処罰
してはならぬということになりまするならば、現在の
刑法
の大半は
刑罰
を課してはならぬという議論ができてくる。石川五右衛門が言いました。浜の真砂は尽くるともどろぼうの種は尽きないという千古の名言を残しておる。だからいかに
法律
を作ってもどろぼうは絶えない。絶えないからそんなものをつくってもだめだという議論は私はできない。やはり
刑法
から窃盗犯を除くことはできますまい。石川五右衛門氏がなくならぬと言っている。そうして現在もなくなりません。しかしこれはたゆまざる一種の悪に対する人類の闘争であります。幾多の困難をしのいでこの規範を掲げて世の進歩を促進せしめていかなければならぬ、私どもはそういう観点に立っておりまするので、どうぞ
椎名
委員
の御質問まことにごもっともでありまして、最初私が申し上げましたように、この
法案
の盲点でございます。これは相ともにいかにしてこの
売春行為
をなくするかについては、先ほど申し上げましたようにこの
法律
だけではできないことは明らかであります。
保安処分
、更生
施設
、教育活動から三位一体のあらゆる活動をやる、それにはどうしても中心は予算でありまするがゆえに、その方向には一つ御協力をいただいて、鳩山内閣は保守党のうちでも進歩的な内閣と言われている、だから私はこの内閣でこれができないと、あと
社会
党の内閣になるまでこれはストップされるというふうに、鳩山内閣に期待をかけておるのでありますが、同じ民主党の
椎名
委員
におかれましても、どうぞ政府を鞭撻されまして、こういう哀れな
売春婦
を救済する方向の予算を、それも一千億、二千億じゃないのです、わずか八億、十億、こんなことは私はただたちにできると思う。その御努力をしていただきたい。その努力はあまりなさらぬで、かわいそうだから
処罰
してはならぬということばかりをおっしゃると、われわれ少し文句が出てくるのであります。どうかその御尽力をお願いしたい。
椎名隆
27
○
椎名
(隆)
委員
八億か十億でできるということは、私は大して高い金ではないと思う。むしろ八億、十億程度ならばみんなで一緒になって政府の方に食い下って、決して私は差しつかえないと思う。ただこの
法案
だけを通すことがびっこなんだ。予算と相まって初めてこの
法律
を通すべきだ、私はこういうふうに考えている。救うことのできない人間が、この
法律
ができたがために留置場に留置されなければならないという憂き目を見させたくないという私の信念を一つ。それからこの
法律
が通ると、今度は人権じゅうりんの問題が頭をもたげてくると私は思う。たとえば新婚の夫婦がたまたま旅館に泊った場合、あれは
売春
の嫌疑ありといって取り調べる、あるいは正当の夫婦が旅館に宿泊した場合、
売春
の嫌疑ありというので取り調べる。あるいは道を歩いている場合でもおそらくそうだろうと思う。特に若いおまわりさんが、この
規定
ができたならば、おもしろ半分にそういうことをやらないとは言われないのです。人権じゅうりんの問題と
売春
等の
処罰
の
規定
とが年中けんかしなければならないというジレンマに陥ることがないかどうか、その点も私は心配していますが、
猪俣
さんどういうふうにそれはお考えになりますか。
神近市子
28
○
神近委員
それは私多分
椎名
先生と食堂かどこかでもお話ししたことがあったと思うのです。若夫婦あるいは住宅のために結婚できないような、別居結婚をしている人たちをやられるのじゃないかというようなこと、これは私、今のような風潮は、やはり戦争後起きたことだと思うのです。こういう形態、
売春
形態は、行きずりの人でもちょっと旅行して泊りに行く、そういうようなことから誘発されたので、私は何もそこを慎しまなくちゃならぬというそういう倫理的な考えからだけでなく、自分のうちにいて差しつかえのない人なら、何も一泊旅行して消費をして歩く今のような風潮はそう必要がないと思うのです。そういう事例もだいぶん減ってきやしないか、これも一つのねらいでございます。これは道徳的なねらいはないのですけれども、われわれが不必要な柄にない浪費をしているということの反省も必要だし、もう一つ警官の行き過ぎ、それもさっきちょっとお話しいたしましたけれども、これは外国の事例や何か見ますと、そういう場合に警官を罰する
法律
があって、そういう動機で行なった者は、そういうことがたび重なる場合にはリコールができるような
規定
がある。こういうこともやはり考えのうちに置いていいと考えます。それでいつか私はこのことでどの程度人権じゅうりんということが問題になるかと思いまして、厚生省の性病予防の係の方にお尋ねしたことがあります。性病を明らかに持っている、それを治療をやらないという場合に強制的に治療をさせることは一体人権じゅうりんにならないかということ、それは人権擁護局との間に話し合いがついて、いてそれは人権じゅうりんにならないという見解をともかく
調整
してあるというようなお話しで、私がその厚生省の方にお伺いしたのは、こういう場合の人権じゅうりんがどの程度まで善意のものであったらば許されるかという限度を知っておきたいというつもりでございました。明らかにこれは
売淫
らしいというような場合に誤まって――その境、継ぎ目というものは非常にむずかしいと思うのですけれども、そのくらいのあやまちは、疑われてもしかたがないというような
立場
の場合は、これはやむを得ないだろうと考えます。
椎名隆
29
○
椎名
(隆)
委員
そうするとこの
法律
が実際効力を発揮しても発揮しなくても、一応形式的に、作ればいいのだということになるのですか。
猪俣浩三
30
○
猪俣委員
さような意味の立案じゃありません。ただあなたが今申されましたように、人権侵害問題は御心配のようにわれわれも心配があると思います。しかし私ども第一回以来法務
委員
として人権侵害問題に対して今日まで戦って参りした者として一言お答えいたします。この
法案
が人権侵害のような
弊害
を伴うことに対しては非常に心配しておりまして、できました暁には、取締りの官憲に対して十二分にそのけじめの教育はつけたいと思います。また人権じゅうりんはなくても、今の捜査技術は進歩しております。誠意を持って捜査に当る執行官があります際には、人権を侵害しなくてもこの
法案
の相当な取締りが実現して効果を上げるであろうことを私どもは信じて疑いません。実際はできた際の取締り官憲に対する信義いかんにかかわりますが、十二分なる注意を与えるとともに、彼らが誠意を持って
法案
の
趣旨
を理解して、なおまた外部の諸勢力がこれを応援いたしますならば、この
法案
が人権侵害なしに、しかもこの取締りの実効をあげ得るものという確信を持っておるものでありまして、ただ形だけ備えていれば実際はどうなってもかまわぬというような意味では全然ないわけであります。なおこの
法案
ができました際には、有識者、警官だけにまかせずして、みな協力して、そうして
社会
悪の撲滅にいい意味において協力してもらう、そういうことになるならば、私は
弊害
少くして取締りが実行できるんじゃなかろうか、こういうふうに考えております。
椎名隆
31
○
椎名
(隆)
委員
今日の私の質問はこの程度にして、またいずれさしていただきたいと思います。
世耕弘一
32
○世
耕委員長
三田村武夫
君。
三田村武夫
33
○三田村
委員
今日は
質疑
を申し上げるのではありませんが、
椎名
委員
の
質疑
に対する
提案者
の御答弁を拝聴いたしておりまして、
法案
審議の進行上
委員長
に一言希望を申し上げておきたいのであります。ただいま
椎名
委員
と立案者の
質疑
応答を伺っておりまして、ますますこの
法案
の重要性を感じた一人でありますが、
猪俣委員
、古屋
委員
のお説の
通り
確かに文化革命の一環であり、また従来常に深刻な問題として取り上げられながら、遂に救済の手を差し延べ得なかったいわゆる
社会
の落伍者、この一群に対する救済の手を差し伸べる突破口となることも私は十分了承できるのであります。従いまして今
猪俣委員
の御説明の
通り
ただ文化国家の体面としてこのような立法を考えるだけでなくて、文化国家として持つことの恥辱である
社会
生活の落伍者、これをどのようにして救い出すか、つまり厳粛な一つの大きな事柄としてわれわれは真剣にまじめにこの問題を取り上げたいと思うのであります。もとより逐条の御説明を伺ってみましても立案者の法文の形態、その
内容
についての御苦心のほどよくうかがわれるのであります。従いましてこの
法律
が世に出たときに立案者のねらっておられるいわゆる文化革命の一環として、さらに
社会
の落伍者に対する救済の突破口として実効あらしめるために、われわれは立法の府として、さらに国政最高の機関たる国会の権威において十分に
内容
を充実せしめたいと思います。従いまして先般
猪俣委員
から厚生省、労働省に対する御
質疑
もありましたけれども、言葉ははなはだ失礼であるかもしれませんが、ただ労働省の政務次官とかあるいは局長の御意見を伺っただけでは私は本案実施後の諸般の措置について不安なきを得ないのであります。でありますから、この
法案
の
内容
審議と並行いたしまして今
猪俣委員
、古屋
委員
お話の
通り
、政府全体の責任としてこの問題を解決するためにも、
猪俣委員
のお言葉ではありませんが、私の属しております鳩山民主党内閣の一人といたしまして、新しい国作りのせめてもの一ページを書き出そうとする今日の政府に対して、十分な決意ありやいなやということを確かめておきたいと思うのであります。その点から
委員長
にお願いするのでありますが、同じ問題を同じ国民の代表の府として審議に参加しなければならない他の
委員
会もあるのでありますが、先般閣僚議員の
社会
労働の
委員
の一人から、私に対してプライベートの
立場
で今
法務委員会
で
売春等処罰法案
が審議されているそうである、これは世論の焦点になっている、われわれも関心なきを得ないので、どうか一つ合同審議の機会を作ってくれというような申し出も私は聞いております。まことにもっともな意見でありまして、当
法務委員会
におきましても十分この立案者の
目的
に沿うべく審議を促進したいという
立場
から、
委員長
におかれまして適当に御考慮願いたいことが一つであります。いま一つは、先般申しましたように、
法案
成立
後の諸般の国としてなすべき対策も非常に重要でありますがゆえに、その審議の際は文部省の責任者である文部大臣、労働省の責任者である労働大臣、厚生省の責任者である厚生大臣、さらに本案を
刑罰
法として直接取り扱わなければならない法務省の法務大臣、警察庁の担当大臣、でき得べくんば内閣最高の責任者である総理大臣にも出席していただいて、十分各般の審議を進めたいと思うものであります。しかるべく
委員長
においてお取り計らい願いたいことを申し上げておきます。
世耕弘一
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○世
耕委員長
三田村君にお答えいたします。御
趣旨
はよく了承いたしました。
委員長
において適当に善処いたしたいと思います。 次回は明七日午前十時より開会いたします。
売春等処罰法案
について参考人より意見を聴取することにいたします。
委員
諸君の御出席を特にお願いいたします。本日はこの程度にて散会いたします。 午後三時三十八分散会