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1955-06-29 第22回国会 衆議院 法務委員会 第29号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十九日(水曜日)     午前十時五十八分開議  出席委員    委員長代理理事 三田村武夫君    理事 古島 義英君 理事 山本 粂吉君    理事 馬場 元治君 理事 福井 盛太君    理事 田中幾三郎君       椎名  隆君    高橋 禎一君       長井  源君    林   博君       牧野 良三君    生田 宏一君       船田  中君    横川 重次君       猪俣 浩三君    神近 市子君       細迫 兼光君    細田 綱吉君  出席国務大臣         法 務 大 臣 花村 四郎君  出席政府委員         警  視  長         (警察庁刑事部         長)      中川 董治君         検     事         (刑事局長)  井本 臺吉君         厚生政務次官  紅露 みつ君         労働事務官         (婦人少年局         長)      藤田 たき君         労働事務官         (職業安定局         長)      江下  孝君  委員外出席者         検     事         (刑事局刑事課         長)      長戸 寛美君         厚生事務官         (社会局生活課         長)      今村  讓君         判     事         (最高裁判所事         務総局家庭局         長)      宇田川潤郎君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 六月二十九日  委員木下哲君辞任につき、その補欠として細田  綱吉君が議長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  売春等処罰法案神近市子君外十八名提出、衆  法第一四号)  人権擁護に関する件     —————————————
  2. 三田村武夫

    三田委員長代理 これより法務委員会を開会いします。  委員長が本日都合により出席できませんので、私がその指名により委員長の職務を行います。  本日は、まず人権擁護に関する件を議題とし、徳島市において起った選挙違反取調べ事件について調査を進めることといたします。本件については法務省及び警察庁よりいまだ報告がありません。なぜ報告がおくれているか、いつごろ報告ができるかを明確にしていただきたいと存じます。  まず法務省井本刑事局長より報告を求めます。
  3. 井本臺吉

    井本政府委員 徳島における山田義明関係誣告事件につきましては、先般私から、法務省におきましても、その問題を重要視しなければならぬということで特に刑事課長現地に派遣した旨お話しした次第でございます。その後現地徳島地方検察庁からある程度報告が参っておりますが、その調べの経過について、書面の上だけでは満足できない点もあり、また現地に参りました課長報告も、さらに捜査をしなければならぬということでありましたので、数カ所の点を指摘いたしまして、現地調べをするように申してやったわけであります。その後、この問題につきましては最高検察庁におきましても非常に重要な問題であるという点について関心を持ちまして、特に徳島地方検察庁並び高松地方検察庁にこの事件取調べ方を指示してございます。高松地方検察庁におきましては、津田検事現地に行って調べておるわけでございます。この事件が非常におくれておりますのは、刑法の誣告罪の関係事件になるのでありますが、事件の一番の問題であります山田義明という人の供述その他に非常な問題がありまして、その真相がどこにあるかなかなかわからないような状況のようであります。しかしながら全般といたしましてある程度結論が出る段階に近づきつつありますので、われわれといたしましては、おくれてはなはだ恐縮でありますが、一日も早く結論が出ますよう、鋭意取調べをしておるというのが実情でございます。捜査内容につきましては、現在の状況では非常に微妙な点がございますので、もしお許しを得ますればこの程度でしばらく御猶予を願いたいと存じます。
  4. 中川董治

    中川(董)政府委員 この徳島県の虚偽情報に基くところの捜査並び徳島東警察署におけるところの被疑者が拘引せられて房に入った、こういったことと並びにこれと関連いたしまして、当委員会において御指摘がございましたが、徳島県の警察全体の犯罪捜査といった点について全体として検討する必要があるとわれわれ考えまして、この両事件はもちろんでございますけれども、この両件並びにそれにからんで徳島県の捜査全体についてこれは大いに検討する必要がある、こういうふうに考えまして、私どもといたしましては、四国の高松管区警察局がございますので、その管区警察局長みずからあるいはその部下をして監査せしめるとともに、わが本庁からも職員を派しまして、徳島県の警察内部にいろいろな不始末の点があるじゃないか、こういう容疑のもとに、ここで事情を聴取いたしまして、厳重に調べたのでございます。それで、こうずっと調べて参りまして、大体あそこの捜査が好ましくない、こういう点は見当がついたのでございますが、一番問題になりますのはこのにせ情報を作った山田義明という人でございます。この山田義明誣告被疑事件というものが刑事事件となるわけでありますが、この誣告被疑事件捜査を究明することによって、また事犯の判明する面もあろうかと思うのでありまして、その誣告被疑事件の究明を大いにやっていただく。これは警察はもちろん責任がありますので、警察も大いにやるべきだと思いますが、また現にやらすように処置しておりますが、何といたしましても事件に関連して警察関係職員も出て参りますので、厳正公平を期していただく意味におきまして、検察庁の方で厳重にお調べを願って、その検察庁の御捜査の結果を待って、その事情が判明することによりまして、全般の、その事件を含めて徳島県の警察関係職員の不届きのかどを、われわれといたしましては今後そういうあやまちを繰り返さないという意味におきまして、厳正に処置いたしたい、こう思っておるわけであります。それでこういうことがわかりまして以来日夜調査を続けておるのでありますが、ただいま申しました誣告被疑事件関係部分相当重要な部分だと思いますので、その部分の今言ったような捜査が困難だという事情がもちろんございますが、そういう関係になっておりますので、まことに恐縮でありますが、その関係が一応のめどがつきましてから、全体としてのわれわれ警察として今後本事件類似のものを繰り返さないように処置いたしたい、こう考えますので、もしお許しを得ますればそれまでしばらくお待ち願いたいと思うのであります。
  5. 生田宏一

    生田委員 井本刑事局長中川刑事部長お尋ねをいたしますが、本件は当委員会において取り上げられましてからもう一カ月を越えておるわけです。調査についてはなはだ微妙な点があるので時間がかかる、重要な問題として取り上げておるので慎重にやっておるというお話ですが、私の考えるところによれば、この事件関係している者は、徳島警察本部徳島東署岡地という巡査田上という巡査と、この部下報告を受けて、それを信じて検挙に着手させた捜査主任古川警視東署藤山署長、第二捜査課長、これだけが大体の関係者だと私は思うのです。そうして警察部外者として山田義明という人間がたった一人いるわけですが、日本の警察の秩序からいいまして、部内捜査でありますれば、事件はおそらく二日、三日あればわかるだろうと思います。にもかかわらず、本件徳島地方検察庁誣告被疑事件として、人権じゅうりんがあるものとして取り上げられましたのは三月の末でありますから、ちょうど本日をもって満三カ月になるわけです。その間徳島地方検察庁もまた徳島警察本部もこの問題についてはち早く一方は捜査に着手し、一方は監察員を設けて真相を究明したはずでありますから、もう真相というものは、とつくの昔に出ておるのではないかと思うのです。ただ問題は、山田義明取調べに当っての供述と、それから山田義明と直接の関係がった岡地田上巡査の間における供述食い違いがあるのではないかと思うのですが、これが単なる民間の被疑者ではなしに、警察部内の人だということになりましたら、これはもう取調べになられましても事情が違ってきて、真相というものがすぐ把握できる。どちらが間違っておるか、どちらが間違っていないかということが判明すると思いますが、それにもかかわりませず、ただ微妙であるとか、あるいは事情が複雑であるとかいうことで取調べができないということは了解できないのです。いわんや大体刑事事件にしましても勾留期間は二十日、二十二日をもって大体取調べを完了するというのが普通の常識ですが、この事件に限って不拘束でやっているのです。それで部内者がほとんどである、部外者はたった一人という関係で三月もかかってまだ結論が出ないということは、むしろこの事件の解明をなるべくおくらしておるのではないか、こういうようにしか私は受け取れないのです。報告すべき事情が具体的にどの程度までいっておるのか、あなた方の方でお差しつかえのない程度はむしろお漏らし下さった方がいいのではないか、こういうふうに思うのですがいかがでございますか。
  6. 井本臺吉

    井本政府委員 現在の調べ内容を詳細に申し上げますと、御理解が願えると思うのでございますけれども、先ほど申し上げましたように非常に徴妙な点がございますので、詳細な点は御容赦を願いたいと思います。ただこれだけは申し上げていいと思うのでありますが、この関係の重要な被疑者の一人が供途が常ならずといいますか、毎回調べるたびに言うことが違っておるわけであります。しかもその前歴等調べますと精神病ではないかというような事情も多少うかがえるのでありまして、まともな人間がまともにやった行為であるか、あるいは頭に欠陥があってやったものであるかということになりますと、これが典型的な精神病者でありますればだれが見ても間違いないのでありますが、最近精神病学界でもいろいろ問題になっておりますように、常人精神に異常のある者との差が非常に少くなっ参りまして、一見常人行為のごとく見えて実は頭に欠陥があるというような例がいろいろあるようでございます。本件につきましても重要な関係者についてさような点が問題になりまして、何回も検討しておるわけでありますが、最近その者につきまして精神鑑定を求めて、一体精神的にどの程度欠陥があるかということの結論専門家から得たいというので検討しておるというような事情が、一番調べがおくれておる事情であると思います。
  7. 中川董治

    中川(董)政府委員 私ども関係警察職員はもちろんのこと厳重な監察の処置を講じておるのでありますが、こういうことが言えると思うのであります。結局山田義明なる人物が情報を提供して、その情報買収関係であった、こういうふうに認められてこれに基いて捜査が進展した。その結果その山田情報というものが虚偽であったということが今日明らかになっておるわけです。それでその山田情報を取り上げるに足る相当理由が、——程度の問題ですが、全く精神病者であるという状況がわかったにかかわらず、そういうことをやっておるならば警察捜査としてはまことにいけない、それ以外のもっと悪い方法であればなおさらいけない。ただしそういう問題が山田情報を基礎にして捜査を進展せしめたのでございますが、結果において間違った捜査でありますので、いずれにしても警察職員責任がある。その責任程度山田情報いかんによって比較的軽い場合もあるし大へん重い場合もある、こういう点が問題の要点におちつくのであります。その点を究明することが、われわれ警察規律の厳粛を期する意味におきまして最も重要でありますので、でき得るならその関係がより明確になったときに発表したい。大まかに申しますと、にせ情報でありましたので、責任のあることは間違いないと思いますが、責任程度が、信ずるに足りる状況いかんによって差異が出てくることも考えられますので、その点の調査を進展せしめる。これはのんべんだらりとやっておってはいけませんので、大いに進展せしめる。これがたまたま山田義明誣告被疑事件捜査がそれを解明するのに非常に役立つと考えますので、検察庁の方でも非常にお急ぎになっておりますので、われわれも検察庁調査に協力いたしまして、この事件を解明して、われわれといたしましては、こういう不始末なことが再び起らぬように、こういう角度から厳重な処分をいたしたい、こう考えます。
  8. 三田村武夫

    三田委員長代理 生田君に申し上げますが、お聞き及びの通り本件法務当局においても、警察当局においても、まだ捜査及び調査が完了していないようであります。この問題は当委員会でも相当論議されておりますし、なるべく正確な調査及び捜査の結果を報告していただきまして、その上でさらに審議を続行いたしたいと思います。さらに法務警察当局に申し上げておきますが、御承知のようにだいぶやかましい問題になっておりますし、世上疑惑に包まれておる事件でありますから、できるだけすみやかに完全な捜査及び調査を進めていただいて御報告願いたいと思います。大体いつごろ御報告がございますか。委員会審議都合もありますので、その点大体の見当でもよろしいが、ここで明らかにしていただきたい。
  9. 井本臺吉

    井本政府委員 実は先ほど申し上げましたように、鑑定を求めておりますので、われわれの努力だけでは片づかない問題になっておりますが、そう長く時間がかかるとも思いません。二十日もあればある程度結論に達するのじゃないか、そう考えております。
  10. 中川董治

    中川(董)政府委員 検事が中心になって法務省でお調べになった誣告被疑事件真相が明らかになりましたとたんに、私どもとしては行政処分をいたしたい、こう思っております。
  11. 三田村武夫

    三田委員長代理 生田君に御相談いたしますが、他の案件審議都合もありますので、本件はきょうのところはなるべく一つ簡潔にして、この程度でとどめていただきたいと思うのであります。
  12. 生田宏一

    生田委員 一言言わしていただきたい。刑事局長お話では二十日間あればというお話だそうですが、そうなりますと、会期が七月一ぱいと大体見られるようでございますから、そうなれば会期中に御報告がいただけて、事件に対する考え方もつけてやっていけると思いますので、七月二十日までには御報告がいただけるでございましょうか。なおまたその点につきましては、国警の方にも七月二十日までに御報告がいただけるようでございますか。それだけお伺いいたします。
  13. 三田村武夫

    三田委員長代理 委員長もそのように了承しております。
  14. 生田宏一

    生田委員 はなはだ恐縮でございますが、実はそれで申し上げるのは何でございますが、私個人にでございますが、法務委員会における私の発言なり、またこの事件についての追究なりはこの程度でおいてもらいたいという要請があるわけであります。そういうことが個人的にあるのです。ということはこの事件はもうこの程度で済ましてもらいたい、こういう考え方であると私は想像しておるわけです。そのような考え方徳島現地にありますならば——これた検察庁関係ではありません。むしろ検察庁の方はこの事件は何とか結論をつけられるとお考えになっておるようでございますが、警察関係におきましては必ずしもそうではないようでございますから、その点に私は一まつの疑問を持っておるわけです。それで特に二十日間ということであれば、七月二十日あたりまでには御報告を願いたいということをお答え願いたい、こう思ったのであります。そのお返事をいただきましたならばけっこうだと思うのですが、委員長はなはだ恐縮でございますが、委員長からその答えを聞いていただきたいと思います。
  15. 三田村武夫

    三田委員長代理 委員長から申し上げますが、生田君の方へ個人的にどのようなお話がありましたかそれは存じませんが、当委員会といたしましては公正に厳正に調査を進めます。御了承を願います。
  16. 生田宏一

    生田委員 それならば、当委員会としては一週間とか二週間という短期間でこの問題を処理してもらいたいという意味ではございませず、当初この問題が出ましてからは一カ月以上経過しているわけでございますから、また事件が発生してからは三カ月もたっておるわけでございますから、これは決してそんなに性急にお願いするわけじゃございません。一旦人権じゅうりんとして取り上げて、五月、六月、七月と三カ月もの間そのままになって会期が終るということになりましたならば、いつも言っていることでございますが、こういうことは取り上げてみても竜頭蛇尾に終るのであって、こういうことであれば別に取り上げなかった方がよかったということをしばしば同僚議員からもお話があるように、私もそういう例を見ておるわけでございますから、人権じゅうりんとして取り上げたならば、いずれにしましても会期中には何らかの目鼻をつけるように委員会運営をはかっていただくことが大切だ。また従来における竜頭蛇尾に終った、そういうことを繰り返さないためにも、委員会の権威がそこにあるわけでありますから、会期中に何とかこの問題についての一応の結論はつけてもらいたい。そういう考え方のもとに七月二十日に報告書をいただけるということならば、はなはだけっこうだ、こういうのでありますが、会期中に結末がつくように運営を下さるならばけっこうでございます。その点いかがでありましょう。
  17. 三田村武夫

    三田委員長代理 生田君の発言了承いたしました。法案審議都合上次に移ります。     —————————————
  18. 三田村武夫

    三田委員長代理 次に売春等処罰法案議題とし、質疑を続行いたします。質疑は通告に従ってお許しいたします。猪俣浩三君。
  19. 猪俣浩三

    猪俣委員 売春等処罰法案は今国会ではどうしても通過せしめたいという提案者の熱望なのでありますが、必ずしも形勢楽観を許さざるようなものがあるのではなかろうか。だれもこの法案の趣旨に反対する者はありません。売春行為を是なりとする人は良識ある議員でないと思うのであります。そして何とか処置しなければならぬことはこれまた統計が示すところでありまして、労働省婦人少年局の発表によりましても、転落いたしました婦女の年令はまさに十九歳から二十四歳までの者が六四%を占めておるという、そうして中には十四、五歳の女の子まであるというに至りましては、容易ならざる社会現象であり、これは何としても絶滅をはかるべき事案であることは何人も認めらるるところであろうと存じます。ただこの労働省統計を見ましても、その転落原因生活苦にある者が五八%、その他いろいろの原因はありますが、大部分婦女生活苦からきておるということも統計の示すところであります。さればかような生活苦から転落する者に対して、それだけを処罰しておつてこれが防止できるかということが反対者の有力、絶対なる論点じゃなかろうかと考えられるのであります。そしてこれはまた一がいにそんなことはと退けられない社会的要因を持っておりますし、また傾聴に値する議論でもあるかと存じます。そこで何人も売春に賛成する者はないにかかわらず、なおかような意味において売春法の成立にちゅうちょするというようなことは、一にかかって売春的行為絶滅、最大の要因婦女生活苦からの転落を阻止することにある、あるいはすでに転落した者を更生せしめることにあるということに論点は尽きておると思うのであります。そこで私どもはこの点につきまして厚生省並び労働省から適切明快なる所信を伺いたい。中にはかようなことに便乗いたしまして、ひそかに業者等から運動せられて、これに反対する者なきにしもあらず、さような人たち反対理由を抑止いたしますにも、厚生省労働省の諸君が最も明確なる線を打ち出していただきたいと思うのであります。これはたゆまざる文化闘争の一環として私どもは推進いたしておりますので、政府当局におかれましても現代の世論がここまで発展してきた以上は、これに対する対策をあらかじめお立てになっていることだと存ずるのであります。そこでまず第一に今転落女性に対して厚生省はいかなる手を打っておるのであるか、これが第一点であります。  その次に、なおこれは順を追うてお尋ねしたいと思いますが、本法が成立した際において厚生省はこの転落女性救済更生にいかなるところの具体的方策をもって臨まれるのであるか、相当詳細なる御所見を承わりたい、こう思うのであります。  そこで第一点、現在一体厚生省はこの転落女性に対していかなる更生方法をおとりになっておるか。私ども厚生関係はあまり詳しくありませんので、それを一つ御説明いただきたいと存じます。
  20. 紅露みつ

    紅露政府委員 ただいま猪俣委員より転落女性を現在厚生省はどのように保護しているか、こういうことのお尋ねでございますが、現在はこうした転落女性を収容いたします施設が全国で十七カ所ございます。大体七百人程度を収容しております。これは都道府県直営のものもございますし、それから救世軍矯風会東本願寺等社会事業団体に委託をしているものもございます。収容者更生につきましては職業の問題がございますし、住宅の問題がございます。その他いろいろ困難なことが多いのでございますが、相当数はここで独立する力を得、また結婚をするというような気分にもなる、あるいは親元に帰す。こういうふうにしかるべくその個人々々によりまして身の振り方をつけておるわけでございます。この施設に入りました二十九年度の総入所者の数は九百七十五名でございました。それから総退所者が一千九人でございます。数字に食い違いがございますが、これは時間のずれでございます。そして今申し上げましたように、退所者は就職をしたり、あるいは親元に帰ったり、結婚ができたというように、相当な効果をこれはあげておると信じます。経費につきましては、本年度は二千五百万円を厚生省としては計上いたしております。これは都道府県におきまして二割、国家が八割ということでございますので、この施設に使いまする費用の二千五百万円は、八割に相当する額でございます。  それからお尋ねの第二点でございますが……。
  21. 猪俣浩三

    猪俣委員 ちょっと待って下さい。売春女性が五十万人あるという際に、八百人や九百人収容したということでは、話にも何にもならぬと思います。そこでお尋ねいたしますが、昭和二十一年十一月二十六日に厚生省社会局から、婦人保護要綱というのが出ておる。これは古い話でありますが、これが一体現在どういうふうに実施せられておるか。私どもよくわからぬのでありますから、お尋ねいたすのであります。それには転落防止保護指導といたしまして、生活保護末端機関である民生委員、特に婦人民生委員の活動を促して、やもめ暮しの方や、その他一人暮しをしておる婦人に対して、隣人の有機的社会環境を作って、身上万般相談指導を行う、そして生活保護の徹底をはかって転落を阻止する、かような要綱が発表されておる。そこでこれは今から七、八年前であります。どのようにこれが実施されておりますか、御説明願いたい。
  22. 紅露みつ

    紅露政府委員 ずっとさかのぼってのお尋ねでございますが、その面につきましては、民生委員の系統を動員いたしまして、この対策に当らせておるのでございますが、今年度におきましても、厚生省といたしましては、世帯更生運動の予算というのを初めての試みといたしまして、計上いたしたわけでございます。これが修正をも加えまして、これから御審議を願うのでございますが、修正をも含めまして、一億円になっておるわけでございます。こういうことで、これはただに転落する女性を救おうということだけではありませんけれども世帯更生せしめるということは、もう一歩でその家庭が没落する、そういうときには、大がい娘を売るというような事態も生まれやすいのでございまして、このことは、これによって相当程度食いとめ得る、そういう心持をもここに大きく取り入れて、今年度は世帯更生運動というものを、十分な額ではないと存じますけれども、新しい試みとして、これだけ窮屈な予算の中から計上いたしましたので、重点を置いて、厚生省がここに力をそそいでおるということにつきましては、御了承をいただきたいと存じます。
  23. 猪俣浩三

    猪俣委員 なおその実施要綱の点については、転落婦人の収容治療施設更生保護施設として、婦人寮を設置し、これを拠点として婦人転落防止更生保護を総合的、有機的に実施する、かように要綱がなっておりますが、これが現在どういうふうに実現しておりますか。
  24. 紅露みつ

    紅露政府委員 これもこれで十分であるとは思っておりません。非常な貧弱な施設で不満足ではございますけれども、それに相当するものがただいま申し上げました十七施設に該当するわけでございます。
  25. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうするとあなたが先ほどおっしゃった十七カ所というのは婦人寮の意味ですか。
  26. 紅露みつ

    紅露政府委員 十七カ所ございますのですが、それがそういうものに該当するわけでございます。
  27. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、この婦人寮の現在の経費はどのくらいかかっておりますか。
  28. 紅露みつ

    紅露政府委員 その十七カ所の施設につきましての経費は、ただいま申し上げました本年度におきましては、厚生といたしましては二千五百万円を計上いたしまして、府県におきましてこれに二割を加えて、それで運営をいたしておるわけでございます。
  29. 猪俣浩三

    猪俣委員 なお婦人福祉施設婦人寮の要綱の中には、その事業として相談指導ということと、それからいま一つの大きな拠点は、公園、盛り場、駅などに随時指導員を派遣して、家出早々の婦女と、転落寸前にある婦人の発見に努め、これに対して適当に相談指導を加えるということがありますが、これは最も大切なことであると存じます。ただし過般来新聞に発表されたところを見ますと、現に私どもも痛感するのであるが、上野駅あたりは無警察状態であります。そこで厚生省としては、この要綱に盛ってありますこの条項を、現在いかに実施されておりますか、御答弁を願いたい。
  30. 紅露みつ

    紅露政府委員 駅前等の繁華なところと申しますか、非常に危険区域だと存じますところには、駅前には相談所のございますところもありますし、また指導員を派遣いたしまして、ただいま仰せになられましたような転落せられ、誘惑にかかるというような状態の人を見つけて、これを救護するというようなことはいたしておるのでございます。
  31. 猪俣浩三

    猪俣委員 まあ、いたしておると言われましても、あなたとしてはそれ以上しようがないかもしれませんが、いたしておる実情を今村課長、何かわかりませんか。もっと具体的に、いたしておるだけではわからない。現在いたされておらないんだから……。いたしておるというのをそれ以上責められませんけれども、われわれ皆さんを責めるわけではないんだ。これは歴代保守党内閣の絶対責任だ、一厚生大臣や次官を責めるわけではないんだが、いかにでたらめであるかを明らかにしてもらいたい。自分らのなすところをでたらめにしておいて、法律の成立だけを食いとめようというやり方に対して、私はここに痛烈に反省してもらわなければならぬ。五十万人もあるというのに、八百人や九百人収容しましたということは答弁にならぬ。しかしそれはあなた方を責めるわけじゃない。そこで一体上野駅やその他盛り場なんかは、厚生省はいかなる人間をどの程度派遣して、いかなる補導をされたか具体的に御答弁を願いたい。
  32. 今村讓

    ○今村説明員 ただいまの御質問にお答えいたします。たとえて申しますと、横浜の駅前に県立の婦人相談所というものがございます。横浜駅で警察官が家出娘あるいはそのほかの非常に転落する危険性のある人間を見つけますと、それを婦人相談所へ連れてくる、婦人相談所は職員四、五名ございまして、そこへ入れまして、その間に身元の調べあるいはその後の身の振り方、それから職能判定をやりまして、それぞれ職安なりあるいはじかに県が持っております婦人収容施設に入れるというような事業をやっています。それから東京駅、大阪駅につきましても、府県の民生部の方から二名ないし三名を出してやっております。ただもちろん予算的な制約がございまして、非常に手薄であるということは存じておりますけれども、現在やっております段階としましてはこの三カ所だけでございます。
  33. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは今直ちに御答弁がむずかしいなら後刻でもいいです。今私の質問いたしましたことに対して統計的な数字を明らかにしていただきたい。何駅で何人をいかように補導し、それがどういうふうになったか、それを、あとでよろしゅうございますから、当法務委員会へ御提出願いたいと思います。  なおこれを見ますと、これは労働省の問題になるかもしれませんけれども、やはり厚生省要綱に書いてありますが、職業指導というようなことを活発にやるように書いております。授産事業が今具体的にどういうふうにやられておるか、厚生省の御所管のことだけについて御答弁願いたい。
  34. 紅露みつ

    紅露政府委員 厚生省といたしましては、授産所などにおきまして職業を授けるということもいたしておりますが、その経済的な面からいたしまして、先ほど申し上げました世帯更生運動、そういうもののほかに母子福祉資金の貸付というものもございますし、また仕事を習う間は、その母子福祉資金のうちから特にそうした意味の貸付もあるわけでございます。  それからついでに申し上げさせていただきますが、住宅等におきましても、母子住宅というものが今年初めて、御承知の通り八千三百戸ではございますが、これもやはり転落しようとする方たちへの一つの大きな力になったのではなかろうか、かように考えておるわけでございます。
  35. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこで先ほど申しました第二点に移りたいと存じますが、この法案も御存じのように売春する者自体を処罰することに重点は絶対に置いてありません。これは必要やむを得ざる限りにおいての軽微なる罰金とか拘留とかいうものにしておりまして、その主眼点は婦人の肉を売ることによって利益をむさぼるという文化国家として実に許すべからざる業者に対して徹底的な弾圧をしてもらいたい、そういうことが中心点であることは御存じだと思うのでありますが、やはりこの法案が実施いたされますならば、現在各所に働いておる者が働けなくなることは事実である。そこで今までのような安易な考え方ではできない状態になる。われわれもまたねらいはそこにある。哀れな婦女子に社会保障の貧弱をしわ寄せさせるような歴代内閣の政策に対して、何としてもここに突破口を作らなければならぬというのが本案提案の中心課題であります。それでこれが成立いたしました暁におきまして、どうしてもかような婦女子に対します救済、更生、あらゆる施設が必要となってくるかと存じます。もう厚生省におかれましては、さようなことも予測せられまして万般の対案をお作りとなっておると思う。これはもちろん実現は予算化されなければだめでありますが、構想だけはお持ちであろうと存じますので、その点について私どもの安心のできるような、あるいはまた皮肉に言いますならば、反対論者に口実を与えないような、しっかりした厚生省の御計画をここで詳細に発表していただきたい。これは私は特に今日は社会保障制度に熱心な川崎大臣から答弁していただきたいと存じましたが、御都合でおいでになれなかった。しかしそうそうたる名次官がおいでになっておりますから満足いたしますが、そのかわりあいまいな御答弁でなく、私の期待にそむかぬようなしっかりした御答弁をいただきたい。この法案が通過いたしました際に、この転落女性をいかに更生せしめ、彼女らの生活をいかに安定せしめるか、これは構想でありまするがゆえに、予算ということを頭にお入れにならぬでもいいと思いますが、予算を頭に置いた御答弁でもよろしいのです。とにかく厚生省の現在お持ちになっている企画について御発表願いたいと思います。
  36. 紅露みつ

    紅露政府委員 ただいまお話のように、売春というものが処罰法だけで完全な効果をあげ得るとはもちろん考えられないところでございまして、それにはこの法案の中にさえも保護政策を取り入れていきたいというような御意向もあったほどでございますが、遂にそのことはできなかったようでございますが、これと並行いたしまして保護対策が講じられなければならないということは、つとに私どもも考えておるところでございます。いろいろな構想をもって今検討を進めておりますが、今ここにはっきりしたものを示せと仰せでございましても、そこまではまだ行っておりません。そこでこれは相当な予算も必要とするであろうと存じますが、私どもの大ざっぱなと思しますか、骨子だけの考えを申し上げてみますと、やはり地方府県におきましても、ある一半の責任は負うてもらって協力をしてもらう、こういうような考えも持っておるわけでございます。どのように金が要るかということは、猪俣先生深く御研究でございますので、御想像なさっておられると存じますけれども、かりに五千人収容いたすとしますと、今私ども考え方では、八億円くらいの予算が要るのではなかろうかというふうに考えておるわけでございます。一万人とすればその二倍でございますが、これはやはり国だけでは相当困難ではなかろうか、かように考えております。  具体的にどんなふうかということでございますが、今申し上げます通り固まってはおりませんが、さりとて何も考えていないであろうというおしかりもつろうございますので、ざっと申し上げてみますと、イ、ロ、ハと三つくらいに分けて収容をいたしたい。収容の形でございますが、第一番は婦人保護寮でございますが、身体または精神欠陥があって、そのため通常の職業につき、または通常の家庭生活を行うことの困難と認められる者を長期にわたって収容し適当な授産その他の作業を与える、第一にこういうものを考えております。  その二には婦人更生寮でございます。これは性行上相当の教護を要する者を収容いたしまして、通常社会へ復帰に必要な生活の訓練、教養を与え、かつ職業能力を付与する、こういうふうに相当重い者であります。  その次の三でございますが、婦人ホーム、これはおおむね通常社会への復帰可能な程度の者を収容いたしまして、適当な生活指導者の監督のもとに、寮外に職場を求めましてそこに通勤をせしめる、これが一番軽い人たちでございまして、割合に短かい期間内に一般社会に復帰できる、かように期待をかけられる者でございます。それから先ほどお話に出ました主要駅前に婦人相談室、これは各府県に設置をしてもらいまして一時ここにたまり、そこからただいま申しましたようなそれぞれの施設に送り込む、こういうぐあいにして参りたいと考えております。  ただいろいろ考えておるのでございますが、結論に到達しておりませんので、この機会にいろいろ申し上げることはかえって混乱を招くかと存じます。しかしこの法案が通過いたしまして実施されるということになりますならば、厚生省といたしましては一応それに間に合せる態勢を整えるつもりで努力をいたしておる次第でございます。
  37. 猪俣浩三

    猪俣委員 鳩山内閣は厚生政務次官婦人の方が任命せられておるので、ちょうどの好機だと思うのであります。これはあなたも同性の一人といたしまして、しかもあなたの次官就任中の最大の問題だと考えます。これがうまくいきますならば、あなた自身は婦人活動において輝かしきエポック的な名声をとどめられるでしょう。その意味におきまして、紅露政務次官の徹底的なる御活動を願いたい。  今五千人収容で八億円ということでありますが、自衛隊の費用などの予算審議に対して聞きますと、はなはだ妙な感じを受けるのです。自衛隊の費用のことを聞いてごらんなさい、何百億円というのが単位です。しかるにこの最も大切な日本の人口の半数以上を占めておる婦人の問題、婦人の問題のみならず男性の問題でもある人類の大きな文化的闘争費として、八億円でももう国だけではまかないきれないような御説明、まことに文化国家といたしましては涙が出るくらい私どもは悲観するのであります。元大将や中将の恩給を復活するだけでも数百億円というものが直ちに可決される、しかるにこの婦人更生せしめますところの、当然やらなければならぬ社会保障的な費用がまことに貧弱である。紅露政務次官がここに画期的な構想を練られまして、一つ婦人団体と協力されまして、そんな八億だの十億だのということなしに、あなたの在任中の最大の成果といたしましてこれをものにしていただきたい。ことに鳩山総理は婦人には相当やさしい方のように聞き及んでおります。花村法務大臣も有名な奥さん孝行の方でもあります。川崎大臣だって有名な、悪くいえばサイノロジーみたいな方であります。これは悪いことではない。いいことだと思うのです。この内閣はこの売春法を通すのに最も適切な内閣だと信じております。どうぞその意味におきまして、予算もうんと一つあなたの力でとるように御努力を願いたい。私はこの内閣で実現できないと、あと社会党の内閣までだめになってしまうかと思う。そうするとそこにまた何千人、何万人の犠牲者が出てきます。その意味におきまして、私はもう少し具体的な構想がもうおできになっておるかと考えたのでありまして、いささか失望いたしましたが、なお望みを捨てません。やはり婦人のことは婦人でございますがゆえに、あなたが中心となって、どうぞ最もしっかりした構想をお作り願いたい。そして五億だ十億だなんというけちな考えでなしに、やろうと思えばこんなのは幾らでも出る道があるはずです。ですからこの売春法が成立した際におけるこれらの婦人更生について徹底的に御構想を固めて、すみやかなる御活動を願いたい。  なお最後にあなたにお聞きしますが、あなたはこの売春等処罰法に御賛成であるか反対であるか、御賛成ならば政府部内においていかなる活動をなさっておるか、その所見を承わりたい。
  38. 紅露みつ

    紅露政府委員 私はもちろん婦人の立場におきまして——と申しますか、そうすると男子の方々は反対のようでございますが、そういう意味でなく、ひとしお身近に感じた問題といたしまして、前からこれに賛成をいたしております。しかるがゆえに、まだ結論には到達しておらないといえども、このような構想をもって検討を進めておるのでございまして、申し上げました通りどのようなものができ上るか、なるべくおしかりを受けないようなものを、本法案が成立いたしました暁にはこれに間に合うように対策を立てておきたいと、かように考えておる次第でございまして、繰り返して申し上げますが、私はこの処罰法に賛成でございます。しかし政務次官としての立場は、政府部内がどういうふうになりますか存じませんが、一婦人議員紅露みつといたしましてはもちろん賛成でございますことを申し添えて、お答えといたします。
  39. 猪俣浩三

    猪俣委員 次に労働省に対する質問をいたしたいと思います。これも二点ありまして、一つは現在この転落女性に対して労働省はいかなる対策を立てておられるか、それを第一に承わりたいと思います。
  40. 藤田たき

    ○藤田政府委員 私ども転落女性に対しまして非常に深い関心を持っております。私がまだ局長になりません昭和二十三年のころでございますが、そのときに婦人少年問題審議会というものが設けられましたが、その当時から労働省におきましてはこの問題に非常な深い関心を示しまして、いろいろ調査をいたしましたり、啓蒙をいたしたりして参ったわけでございます。今日お手元に差し上げてあると思いますところのいろいろの啓蒙資料は、そのときからずっとかかりまして、今日に至りますまでいろいろと調査研究して整えて参ったものでございます。私どもはそういった面、すなわち調査の面においてまた啓蒙の面においてできる限りのことをいたしておるわけでございます。現に今年も六月十日から七月十日まで売春問題特別活動のときを設けて、いろいろと座談会、講演会、新聞への発表等々いたしておりますが、これは決して今年初めていたしましたわけではございませず、去年も一昨年もこの問題をいたしておるわけでございます。それからまた先生方にはとくと御承知でいらっしゃいます通り、売春と人身売買というものは非常に大きな関係がございますので、これもずっと前から、もうこの六年ほど人身売買の調査と啓蒙をいたしておるわけでございます。初めにおきましては予算が取れませんものですから、いろいろな調査でもって浮び上って参りました数字とかケースというものを捕えまして、資料調査というものをいたして参ったのでございますが、この二年間はわずかではございますが、人身売買の資料の調査費が与えられましたものでございますから、資料調査ではなくて、たとえば九州地区における、あるいは東北地区における、そして今年は関東、信越地区における調査をいたしておりますが、その調査と申しますものも、転落してしまった、人身売買の対象になってしまった人を捕えるのであっては手おくれと存じますし、またそれは資料調査の方でなすことができるものでございますから、たとえば東北において、九州において去年、一昨年いたしましたことは小学校、中学校における長期欠席児童、それからまた中学を卒業いたしましたが、三年間にわたってはっきりとしたところの職業についておらない人たち、そういう者を対象といたしまして、その実態を調査し、その調査の結果を、たとえばここに持っておりますような年少者の不当雇用慣行と題したパンフレットを、各官庁それからまたこの問題について関心を持って下さっている方、関心を持っていただかなければならない方々にお送りいたしておるようなわけでございますから、わずかではございますが、そういったことを——これは労働省の中でも婦人少年局だけの仕事について今御説明申し上げておりますが、ほかのところはまたほかの局長にお願いできると存じますが、そういったような調査、啓蒙ということを一生懸命にいたしておりますが、何しろ予算的な制約を受けておりまして、思うだけはできておらないような状態でございます。  それからまた先ほど婦人少年問題審議会というものが昭和二十三年からこの問題と取り組んだと申しましたが、その後、この婦人局少年問題審議会というものは、ここにいられますところの神近委員が会長となられまして、この問題と真剣に取り組まれまして、労働大臣からこの問題に対する諮問がございましたのに対して、売春問題というものは速急に解決されなければならない、たとえば昭和二十二年でしたかの次官会議決定以来の、赤線区域の黙認ということもやめられなければならない、独立したところの法律が設定されなければならない、適当な世論の啓発がなされなければならない等々のことに関しまして答申をいたしまして、歴代の労働大臣もこれに対して所信を示されたわけでございます。そのほかに現在いたしております活動といたしましては、御承知の通り全国に四十六の婦人少年室がございますが、婦人少年局婦人少年室は売春問題または人身売買問題に対する取締り機関ではございませんので、それに対して直接の行動をすることはできませんけれども婦人少年室に対して非常にいろいろな問い合せがありましたり、かけ込み訴えがございまして、昭和二十九年度だけを取り上げましても三百一件の売春婦また人身売買の対象になった人たちからの訴えがございますので、そういった人々に対しましてできるだけのことをいたしておるわけでございます。婦人少年室長またその補佐の方——去年私どもの方でわずかに一千名ではございますけれども婦人少年室の仕事に協力をし、援助を与えるところの協助員というものが設けられましたが、この協助員と申しますものは、人身売買また売春というものに対してできるだけの協力援助を婦人少年室長に与えるということになっておりますので、わずかの人間ではございますが、この人々が涙ぐましいところの活動によりましてできるだけのことをいたしております。先生方のお手元に差し上げましたところの不当雇用慣行に関する参考資料などにも出ておりますように、たとえば長崎から北海道に、北海道から岩手に売られたところの少女に対しまして、婦人少年室長が自分の身銭を切りまして追っかけ回し、東京まで連れてくる、そして東京から長崎まで送り帰すというようなことをいたしておりまして、こんなことは決して自慢にはならないことでございまして、もっと予算をたくさん取って、ほんとにこういう人たちを徹底的に援助しなければなりませんが、今日までできる限りのことをいたしておるのであります。  それからまたすでに、これはあとの御質問に対してお答えする方がいいかと思いますので今省かせていただきますが、たとえば未亡人に対しまして、家政婦になりたい人たちに対しまして家事サービス研修所または職業補導、内職補導というようなことを計画いたしておりますが、これはやはり売春婦に陥るということが未亡人の中にもなきにしもあらずでございますので、そういう人々に対する対策について今いろいろと講じておるところでございます。
  41. 猪俣浩三

    猪俣委員 今までの婦人少年局の活動につきましてはわかりましたが、もちろん心あってもいろいろと金が足らずしてできなかった、私も婦人少年局に勤めておる人を知っておりますが、実によくやっておりますけれども、何しろ金がないという苦悶の状況のようであります。  そこでこの売春法が通過いたしますと、婦人少年局といたしましても具体的にその更生施設厚生省とともにはからなければならぬと思いますが、就職あっせんとか職業補導というものは労働省の管轄でもありますので、そこで藤田局長は専門家ではあられますが、この就職あっせん、職業補導、その他、転落女性更生について、今までよりもより一そう、この法案が通過した際の用意としてどういう構想をお持ちでありますか、具体的に御説明いただきたいと思います。
  42. 藤田たき

    ○藤田政府委員 私どもでは、売春等処罰法が一刻も早く通過いたしますことを今までも願っておりましたものでございますから、私どもといたしまして女子就職助成資金というものを、この二年来実は予算に計上いたしましてお願いをしておるわけでございます。しかしながら売春等処罰法がまだ通過をいたしておりませんし、また売春問題対策協議会の方の結論も出ておりませんので、まだいただく段階にはなっておりませんが、構想として申し上げたいと思いますのは、先ほど猪俣委員からも仰せになりました通り、売春婦に陥る多くの女性が貧困のゆえでございますので、私どもといたしましては、たとえばあの家には何だが売春婦の仲介人なんかがよく出入りしておる、そして人身売買の対象になりそうだと思うようなところに協助員などにもしげく出入りしてもらいまして、そういうことを発見いたします。また自分のからだを売らなければ何としてもやっていかれないからといって、そういうかけ込み訴えに参りました者、また私どもで発見いたしました者、あるいは警察その他で発見いたされました方々の中で、たとえば義務教育を受けておりますとか、それからまたそれよりももっと大事なことは働く意欲を持っておるところの人たち、そういう働く意欲は持っておるけれども身を売らなければならないという境遇にあるような人たちに、たとえばその危機を逃れるためのお金を貸してあげる。また就職するためにいろいろと仕事を求めている間の生活をするためのお金、それからまた何か仕事を覚えなければ就職できませんですから、その仕事を覚えている間の、そういったような就職の助成金というものをぜひそれに適当するところの人たちに与えたいと願っておりまして、これもまたわずかであるとおしかりを受けるかもわかりませんけれども、国家の費用といたしまして三億数千万円、全部で五億円ですかを去年もことしも計上いたしましてお願いいたしましたが、これはまだ機が熟しておらないのでいただけなかったようなわけでございます。このためにこの売春禁止法が成立いたしました暁は、きっとよほど受けやすいような状態ができるのじゃないかと思っております。  それから先ほど厚生次官から今具体的にいろいろとおっしゃることはおできにならなかったというお言葉がございましたが、私どもといたしましてもただいま売春問題対策協議会の方にはかっておることでございまして、詳しく申し上げますことは差しさわりがございますので申し上げられませんが、この売春問題対策協議会においていろいろと話し合っておりまするところの、ことに売春婦に転落するおそれあるもの、事前に発見されたものや、それからまた売春婦になりまして、病膏肓に入っている人は、先ほど厚生省のおっしゃいましたような所に入れられなければなりませんでしょうが、そうでないところの人々ですぐ職業につくことのできる人はすぐ、それからまた訓練、補導をしなければならない人たちには補導、訓練を与えるというような、そういったところの措置、すなわち就職させて健全な独立生活をさせるように助長するところの処置を考慮をいたしておるわけでございます。それからまたそういう人たちが幾ら職業の観念を得ましてもやはり衣食住に関するところのあるいは人権の思想に関するまた勤労観の涵養、情操の教育等々においても絶対にそういう教育を受けなければならないと存じますので、文部省や厚生省やその他のお役所といろいろと協力いたしまして、そういう点にも私どもの啓蒙の面を持っていきたいと存じておりますし、それから幾ら法律ができましても、幾ら更生施設ができましても、やはり人間の心というものが変らなければこれに対してよい結果というものは生まれるものでございませんので、男性の方々に対して、また女性であって自分の子供というものを守るためには赤線区域というものが必要であるなどというような間違った考え方を持っておる、そういった女の人たちに関して、また人権思想というものを持たないでいたずらに自分の身を落してしまうというような人に対して十分な啓蒙活動もいたしたいと思っておりますが、まだ具体的にいっておらないところが相当ございますので、御了解いただきたいと思います。
  43. 猪俣浩三

    猪俣委員 ちょうど法務大臣も御出席になっておりますので、先般私の質問に対して、二十七日に売春審議会が開かれる、そこで相当結論が出るはずであるというような御答弁があったかと存じます。二十七日の模様についてお聞かせいただければ幸甚と思います。
  44. 花村四郎

    ○花村国務大臣 前会に申し上げましたごとく、二十七日に開かれたのでございまして、その際法務大臣としての意向もお願い申し上げておいたのでありまするが、たまたまその審議会に列席した長戸課長がただいま臨席しておりますから、詳しい事柄は長戸課長から報告させることにいたします。
  45. 長戸寛美

    ○長戸説明員 本月二十七日に小委員会を開催いたしました。主題といたしましたのは、保安処分と刑事処分に関する第三次要綱案、未然の転落防止策事後の保護、更生対策に対する要綱案、これをそれぞれ議題に付しまして検討いたしたのであります。次会は来月六日というふうになっておりますが、先ほども問題になりましたように、最も重点を転落防止と、事後の保護更生策に置いておりますので、その点についてなお議論が出尽してないということで、さらにそれを検討することになっておるわけでございます。
  46. 猪俣浩三

    猪俣委員 これは審議会の委員責任でありますから、法務省にとやく申しても始まらぬとも存じますけれども、どうも審議会なるものに対して、私ども不審にたえない点がある。実に長い間審議をやっておられる、おそらくこの審議会の審議くらい長い審議はない。それは幾ら審議なさってもよろしいかも存じませんが、物はほどほどということがある。というのは審議に名をかりて、事を糊塗して、先へ先へと送っているのではないかという批判があるのであります。さように見受けられる。私どもは実情は存じませんが、もっとうがったものは、法務省は魔よけとしてこういう委員会を作って、そこで自分たちのまっ正面の責任を回避しているのだ、避難所なんだ、そこでこれはだらだらやらしておいて、法案審議というものは何となく握りつぶしていきたいのだと言う。これは今の鳩山内閣ばかりではない。今までの吉田内閣なんかは、露骨にそういう態度を示しておった。花村法務大臣の御所感は先般聞きました。相当お力を入れていただいておるようにも聞いております。そこで先ほども言ったように、この内閣でできないと、これは社会党内閣にならぬ限りあきらめなければならぬというような気分さえ起るくらいなのでありますが、これはやはり法務省審議会に対しましても督促していただいて——これは議論をやって延ばそうと思えば幾らでも延ばせる問題を含んでおります。しかし私どもの直観はそんな問題ではないと思う。今断行する意思があるのかないのかという問題にかかっておる。それに不満があるなら、私は幾らでも太刀打ちします。そんなことはもうわかり切ったことです。全部のあらゆる学者から、その道の達人が調べ抜いている問題なのであります。ただ断行するのかしないのかという一点にかかっておる問題なのであります。そこでこれは法務大臣にお願いいたしますが、どうぞこの審議会を督促していただいて、慎重審議はしなければなりませんけれども、もうすでに法務委員会でも、この売春法案が議員提出で審議されておるのでありますから、相なるべくは、審議会の結論を急いで出していただきたい、こう思うのでありますが、一体いつごろからこの審議会の相当まとまった意見が出るお見通しでありますか。世上審議会にあらずして、これは不審議会だという声もある。さような点につきまして法務大臣のお見通しを一つ伺わせてもらいたいと思うのです。
  47. 花村四郎

    ○花村国務大臣 審議会が本法案を引き延ばす意味でやっておるのではないかというお話がありましたが、私の見るところにおいては絶対にかかることなし、こう申し上げてよろしいと思います。そこで法務省といたしましては、たびたびその結論を求めておるのでありますが、慎重審議をせられる結果としていまだにその結論が出て参りませんが、しかし結論の出るのはいつごろであろうかというお話でありましたが、これは予測することはできないばかりでなく、御承知のように重要な法案でありますだけに、あらゆる観点から十分に慎重なる審議を願うという意味において、私どもがいたずらにただその結論を出すことのみにきゅうきゅうとしてその請求をいたしますこともどうかと考えますので、いつごろになりますか、それははっきり申し上げられませんが、議員立法も出ておりますような情勢にも相なっておりますので、審議会の各委員も学識経験のある世のあらゆる権威者でありますがゆえに、そこは時代の流れをくんで、しかるべき時期に結論を出してくれるのではなかろうかと私はすべての信頼をかけておるような次第でございます。
  48. 猪俣浩三

    猪俣委員 法務大臣の御所見としてはそれ以上の御意見を求めることは無理かと存じますので、やめます。十分御好意ある御態度で臨んでおられることを確信して、なお一段の御努力をいただきたいことを要望してやめておきます。  なお最高裁判所の方々に、これは純然たる手続の問題、あるいはまたさような手続をとることが是であるか否であるかというような御意見の問題になると思いますが、実は昨年、売春等処罰法案議員提案として出す際に、売春婦に対しまして普通の刑事裁判所で処罰せずに、これを家庭裁判所に回して家庭裁判所の審判に付することが適当でないかというような意見から、衆議院の法制局ともいろいろ打ち合せをいたしましたが、何しろ予算を伴うことでもあり、そうなかなか早急に手続法も困難でありますので、今回はそこまでいかなかったのでありますが、ただ最高裁判所側の多年の御経験から御所見を承わりたいのは、かような——もちろん転落婦人と申しましてもピンからキリまでありまして、まことに生活苦のためにやむを得ず、心ならずも泣く泣く売春婦になったという者もありましょうし、しからざる者もありましょうから、一がいには言えませんけれども、大体的に見てこの転落女性のごときは真に更生をはかろうとするならば、家底裁判所の審判手続に付した方か適当かと存ずるのでありますが、最高裁判所の御所見はいかがでありましょう。
  49. 宇田川潤郎

    ○宇田川最高裁判所説明員 この問題につきましては、売春問題対策協議会でも問題になりまして、売春婦に対するいわめる保安処分——刑事処分にあらざる保安処分を講ずる司法機関は家庭裁判所が適当じゃなかろうかというような御意見があったのであります。お説のように家庭裁判所の性格からいって、売春事件につきまして売春婦を保護するという面についてはあるいは地方裁判所よりも家庭裁判所の方が適当だという考えもあるわけでございますが、家庭裁判所の設立の理念は、家庭の平和の維持とかあるいは少年の育成というような問題が主で創設されたのでありますので、その理念から多少はずれるのじゃないかというような疑義もございまして、これに反対する者も最高裁判所内に相当あるわけで、いまだ結論を得てないような次第であります。また現場の裁判官の一部には売春婦があまり家庭裁判所に出入りすると、家事調停あるいは少年審判の方にも悪い影響があるのじゃなかろうか。従ってこの問題については慎重に研究して結論を出してほしいというような希望もあります。また現在家庭裁判所は家事審判あるいは調停あるいは少年審判が軌道に乗ったばかりでございまして、今また売春事件家庭裁判所が背負い込みますと、とうてい家庭裁判所の健全な育成ができないのじゃないかというような不安もありまして、現場の方では相当これに対する反対の声もある。もっともこういうような売春婦に対する保安処分家庭裁判所でやるようになるならば、人員の点、予算の点で大幅に政府当局でお考え下さればできないことはないと思うのでありますけれども、今申しましたように、理論的にも多少売春事件をやることはどうかというような疑問もありますし、また家庭裁判所の少年審判、家事調停審判をようやく育てておる現場あるいは私ども事務当局としては、売春事件をかかえ込むことには非常な不安があって、今のところ賛成の結論に達してないと申し上げるよりいたし方がない、こう思います。
  50. 猪俣浩三

    猪俣委員 今の御所見は二つあると思う。一つ家庭裁判所に売春事件を取りまぜることは裁判所法の立法目的にはずれておるような考えがあるという。それから実務に携わっておる人たちから相当反対——不安な意味における反対がある。そこで私は第一点の目的、理念の問題につきましては、これは立法目的を修正すればできることであるのみならず、さればというて本来の目的と全く違ったこと——それは幾ら修正可能といえども限界があると思うけれども、私は本来の目的と全く違ったことじゃないと思うのです。少年の審判なり家庭の審判なりとこの転落女性の審判とがより高次の目的においては一致しておるものである。だから今の家庭裁判所の目的をより高次な目的に振りかえればこれは十分筋の通ったことになると考えます。ですからその議論はあまり承服できないと思うのでありますが、第二点の家事調停なり少年審判なりに従事せられておる方々が、それが今やっと軌道に乗っている際に、異質的な、またあまり色彩の違い過ぎたものが審判の対象になってくると、今ようやく軌道に乗った家庭裁判所本来の仕事が混淆するようなおそれがあるという、その第一線に立っていられる方の御意見は相当拝聴しなければならぬかと思うのであります。そこで私ども、よく皆さん方の御意見を聞かぬと実が熟さぬ点もあるのでありますが、第一線の諸公がやり得る自信があるならば、やはり家庭裁判所の問題とするということが、婦人人権擁護の上においてもほんとうに適切であり、——婦人、子供と言えば女の人が怒りますからそういう意味ではありませんが、少年審判所、家庭裁判所というのは、広く言うならやはり一種の婦人の人権問題を含んでおる裁判所でありますがゆえに、この転落女性についての審判も、普通の刑事裁判所でなしに、ここで少年をあたたかく審判するような態度でもってしていただきたい。なぜなら、われわれがこの売春婦を処罰するゆえんのものは、それ自体が目的でなくして、さような売春婦をあやつっている者を突くことが目的でありますけれども、ただそれ自体を放任するということも筋の通らぬことでありますがゆえに、売春婦自身に対しましても軽度な処罰をすることになっておりますが、それも家庭裁判所でやって下さるということになりますならば、婦人人権擁護にまことに適当じゃないかと考えております。これは今大体御意見のあるところを承わりましたけれども、最高裁判所におかれましても、衆議院においてこういう熱意を持っておる委員もあることを頭に入れていただいて、もう少し実際的に、理念的に御検討願いたいと思うのであります。そしてなお詳細なる御所見を承りたい。たとえばこの売春問題が家庭裁判所に取り上げられるということになると、どういう弊害が出てきて、どんな混乱が起るというのであるか、もっと具体的に、実際問題として私どもにお教え願いたい。今のあなたの説明では、ちっと感情問題というのですか、めんどうくさい、変なものが出てこられては工合が悪い程度のことに感ぜられる。そんなことだと共同責任者の一人としての判事としてはなはだ怠慢と申さなければならないし、勇気がないと申さなければならない。進んでこの売春婦を説得するくらいの家庭裁判所の判事としての努力、実力がなければいけないと存じます。家庭裁判所こそがほんとうに身の立て直しの一つの重要なポストだという認識がようやく世上に出てきている際でありますから、なお一段とそれを躍進せしめる上においても、このむずかしい問題をみずから背負われるだけの意気込みがなければならぬと存ずるのでありますが、局長におかれましても、なお周到なる御研鑚を願いたい、これだけにして私の質問を終りたいと思います。
  51. 宇田川潤郎

    ○宇田川最高裁判所説明員 猪俣委員のお説ごもっともと思います。秋には家庭裁判所の実務会同もございますので、その際とくと協議いたし、また最高裁判所といたしましても慎重研究いたしてみたいと存じます。
  52. 細田綱吉

    細田委員 現在売春行為は非常に広範な害毒を流しており、数も多くなっておるということは御承知の通りであります。そこで、この問題について現在はどういう法律でこれを取り締られておるか。特にこの売春行為について重要に考えなければならぬことは、転落するか弱き女性を営利の目的で紹介したりあるいはまた誘拐したりする人たちのことで、これが社会悪の第一のものである。職業関係の罰則規定もございますし、あるいはまた刑法上の問題もあるかも存じませんが、現在これらの問題について、取り締られている法規は何と何であるか、この点を一つ伺いたいと思います。
  53. 花村四郎

    ○花村国務大臣 お答え申し上げます。刑法の第百七十四条及び第二百二十四条ないし第三百二十八条の諸規定であります。それからなお婦女に売淫をさせた者等の処罰に関する勅令、昭和二十二年に出ております。それから、第三といたしまして性病予防法、第四といたしまして児童福祉法、第五といたしまして風俗営業取締法、第六といたしまして労働基準法、第七といたしまして職業安定法、第六十三条、第八といたしまして地方自治団体が制定した条例でございます。これは多分五十六カ所の自治団体で制定しておりまするが、以上の諸法令によって取り締られておる次第でございます。
  54. 細田綱吉

    細田委員 かなりたくさんな法律でこれを取り締っておるわけですが、しかし結果は、これらのがんじがらめになっておるべき制裁法規のもとでだんだんふえて行き、また数も減っていかないので、そうしたことを職業化するような人がちっとも減っていかない盲点と申しましょうか、原因はどこにあると政府は見ておるか、この点を伺いたい。
  55. 花村四郎

    ○花村国務大臣 要するに、取締り法規もただいま申し上げましたごとく数が多いのでありまするけれども、果してその法規によって十分に取り締り得るかということを考えてみますると、やはり取締り当局のいろいろの機構、あるいは取り締る人の数といったような関係からして、徹底的に取り締ることができぬということが一つ、そうしてまたとかくこういう売淫行為は地下にもぐってやっておるというような関係から、取締りの対象としてはなかなか困難があるということが一つ、さらにまた取締りについても時代の流れをくんで、やはりそこに適当に取締りをやっていかなければならないというような事情もある。たとえば一例を申し上げますれば、進駐軍を相手とするパンパンのごときは、国際関係もありますので、場合によっては目こぼしもありましょうし、またその取締りについても国際関係を顧慮して、やはり時の流れに沿うて、無理のいかないようにしかるべく取り締るというようなこともありましょう。その他こまかいことを申し上げますればいろいろあるのでございますが、ただいま申し上げましたように取締り法規は相当あるけれども、その取締り法規が徹底されぬというようなところにやはりこの売春行為取締りに関するむずかしさがある、こう申し上げてよろしいと思うのであります。
  56. 細田綱吉

    細田委員 法務当局がそういう考えであったら、これは幾ら法律をこしらえても何にもならぬ。大体地下にもぐっていない犯罪というものはない、みんな地下にもぐっている。地下にもぐっているから捜査が困難だということは、これは意味をなさない。それから進駐軍を相手にといっても、そういうことを承知でやる人たち——これはみな承知でしょうが、そういうような人たちの中で特に家庭上困ったとか、あるいは行くところがなくて転落してしまったとか、誘拐されたというようなそういう人たちに、この国際問題なりとしてしわ寄せすることは非常な間違いである。特に最初おっしゃったように関係者がどうも取り締りにくいというようなことをおっしゃっておるのですが、そういう関係者によって取締りを二、三にすべきものではない。刑法条文があれば、これは断固としてやるべきである。どうも法務大臣のおっしゃることは私にはふに落ちない。それらたくさんあります取締り法規を如実に実行していこうとするならば、今の三点あげられた点ではこれは少しも納得がいかないし、またどういう法律をこしらえても、これは空文化してしまう。刑事局長もおられるのですが、いま一度刑事局長の御意見を聞きたいと思います。
  57. 井本臺吉

    井本政府委員 大臣が先ほど取締りが非常に困難であるという点を申されたわけでありますが、およそ犯罪関係個人的な被害の事件につきましては、被害者がおりますから、被害者から簡単に証拠がとれるわけです。ところが個人的な被害のない事件、たとえば涜職犯罪でありますとか選挙犯罪でありますとか、一例をあげまするとさような事件につきましては、相対の両方が犯罪者でありまして、それらのものを検挙しますのは取締り官憲としては非常な手数がかかるわけであります。この売春犯行におきましても、大体が男女の相対の問題でありまして、両方とも犯罪者ということになりますので、犯罪者は一般の国民道徳といいますか、社会的にいろいろな害悪が及ぶという点でこれを取り締っていかなければならぬということになると思いますけれども、具体的に個々の犯罪を検挙するということは立証上非常に困難な点があるわけでございます。さような観点からいたしまして、取締り官憲が従来ありまする法律を自由に駆使いたしますれば、幾ら立証が困難であっても、ある程度の取締りができるわけでございますけれども、犯罪にはおのずから軽重がありまして、もっと凶悪な殺人犯でありますとか強盗犯でありますとか、まずわれわれはさような犯罪を検挙しなければならぬということになりまして、逐次その他の犯罪に及ぼすということになるわけであります。この売春犯罪についても、現実の取締り官はずいぶん苦労しておるようでありますが、何分にも取締り官憲の手不足というような点から、ある法律を全部駆使できないというのが実情ではないかというふうに私は考えております。
  58. 三田村武夫

    三田委員長代理 本日はこの程度にとどめ、次会は公報をもってお知らせいたします。これにて散会いたします。     午後零時四十六分散会