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内田政府委員 ただいまの御質問にお答えいたしますためには、われわれ
入国管理局といたしまして、
密入国の問題をどういうふうに扱っておるかという全般的な角度からお答えいたしませんと、十分に御納得がいかないと存じますが、実は先般こちらの
委員会におきまして、
相当広いろいろな角度からその問題についてお答えいたしましたのですが、ごく簡単にかいつまんで申し上げます。
われわれといたしましては、これは国際的な一般の原則でもございますし、大体
日本に入国する者は、旅券と査証を持ってきておらなければ困るということを当然の原則といたしておるわけでございます。しかしながら、こちらでも再三問題になっておりますように、従来、この間まで
日本国民であった
人々、しかも偶然に敗戦という
機会によりまして、家族が別れ別れになってしまったというような者につきまして、何らかの人道的な考慮が払われなければならないということは、私
ども自身も十分
考えておるところでございます。実際一般的な原則の問題と、人道的あるいは人情との問題をいかにして調和していくかということは、われわれの業務の一番苦慮しておる点であると申し上げても過言ではないのでございます。ただその際に、これは今の原則とからむ問題でございますが、われわれといたしましては、現行犯でつかまった者はやはり原則として帰すということにいたしておるわけでございます。これも国際慣行が第一の理由でございますが、そのほか実質的に申しましても、現行犯でつかまった者をさらに区別いたしまして、その中で許可する者をえり分けるということはなかなか困難でございますし、またそれをやりますことによりまして、かえってわれわれのやっておることが公正でないのではないか、何か特殊の
連絡があるとか運動したとかいうことによって、左右されておるのではないか、こういう印象を与えますことは、はなはだわれわれとして心苦しいことでございますのみならず、対外的信用の観点からいたしましても、おもしろくないことだと思っておるわけでございます。
それからもう
一つ、少し話が飛びますのですが、
密入国というものは御
承知のように、非常にポテンシャルな危険性をはらんでおる問題でございますので、
密入国の阻止ということは、遺憾ながら今まで不十分でございますが、この上とも
努力しなければならないことでありますのみならず、現在におきましても、海上保安庁等が非常に少い施設、人員におきまして、一生懸命
努力しておられるわけでございます。また
警察も
警察で陸に上った直後等につきましては、いろいろ報奨金などを出しながら現行犯をつかまえるのに苦労しておられる。そういう
状態におきまして、中央の法務省に問題を持ってくるとどんどん許可されてしまうということになりましたのでは、現場においていろいろ苦労をせられておる
方々の
努力を全く無にしてしまうということになり、ひいてはこういう
密入国の問題が非常にルーズになっていくおそれが多分にあるわけでございます。
それからもう
一つ、集団
密航の場合には、大体今現行犯でつかまる場合にはそうなのでありますが、ほとんど例外なしにブローカーが介在しております。それでこのブローカーたちは、もちろんその手数料というようなものは初め取っておるのでありましょうが、成功報酬のような形になっておる例が多いようでありまして、結局われわれが現行犯でつかまえた者までも許可していくということになりますと、そういうブローカーたちを喜ばせるというような結果にもなるわけであります。われわれができるだけ
密入国というものを阻止したいという根本の
方針と矛盾するような結果にもなるわけであります。そういうような
関係によりまして、現行犯でつかまった者については、その場合たまたまその方が女であるとか
子供であるとか、あるいはおとなの場合もありましょうが、とにかくそういうことの区別をいたしませんで、原則として退去という線を出しておるのはそういう理由からでございます。それでおとなが逃げてしまって
子供だけが残ったというのは、実は最近たまたま起った
一つの極端な例なのでありまして、普通の場合は、大体おとなも
子供も
一緒につかまっておるのでありますが、ある
一つの例は、まさに先ほど
次官からもおっしゃいましたように、おとなたちは逃げてしまって
子供だけ三十人ほど残されておるのがつかまったというような
事態が起ったわけであります。これは人道的に
考えますと、御説のようにいろいろ気の毒なこともあろうかと思っておりますが、しかし、ただいま申しましたような、こういう入国管理をいたします基本的な建前から申しまして、現行犯でつかまった者についてそう寛大な処置はとり得ないのではないかとわれわれとしては
考えておる次第でございます。