○中川(薫)政府
委員 仰せの
通り、青少年問題の対策は大へん大きな問題だと思いまして、私
ども警察に関する面につきましても、日夜この問題の対策に苦心しております。青少年問題というのは、最後には犯罪という形において出てくる面があろうかと思いますが、本来教育、道徳各般、さらに
経済関係といいますか、失業の問題とか、そういうような問題がいろいろありますので、役所的に申しますと、一部局のみをもってしては問題を解決できないという根本的
性格を持っているかと思うのであります。こういう点もありますので、政府
機関としても、内閣に青少年問題協議会を設置されまして、文部、厚生、もちろん私
どもも加わっておるのですが、そういう各省の
関係者並びにこの面に関する学識経験者にお願いいたしまして、この問題の対策については、常時会合等を設けて協議、研究なさっていただいておるのであります。
まずお尋ねの犯罪現象でございますが、青少年問題の傾向を見るのに、犯罪の結果だけがすべてを現わすものでないという点を念頭に置きながら統計をとっておるのでございますが、私
ども警察当局といたしまして一応青少年の犯した犯罪、この数はわれわれの統計の上にずっと出てきますので、それから申し上げてみたいと思います。
青少年の犯罪の大勢を知るのには何といっても刑法犯が中心になりますので、刑法犯の傾向を見て参りますると、こまかい数字もございますが、大局的の御
質問でございますので、その傾向を一つ申し上げて御報告いたしたいと思います。犯罪
件数を数字で申し上げますよりも
パーセンテージで申し上げた方が、傾向の
説明に便宜でございますので、一応私
ども便宜のために
昭和十六年の犯罪を一〇〇として指数をとって参りますと、その後の青少年の刑法犯の事犯で警察が
事件を発見し、警察庁に送った
事件は、
昭和十七年一二六、
昭和十八年一一六、十九年142、二十年一〇三、二十年はご
承知の
通り終戦の年でございます。二十一年二一二、二十二年一九八、二三年一三六、二十四年二五〇、二五年三〇〇、二十六年三一五、私
どもの統計では青少年犯罪は
昭和二十六年が現在のところ一番高い年になっております。それから二十七年に参りまして若干減る傾向が出て参りまして、二十七年が二七一、二十八年が二三九、二十九年の方はこの分類でしておりませんので別な報告がございますが、二十九年は二十八年に比し若干減っている、こういう傾向でございます。
一口にこれを申せば青少年犯罪はふえる一方をたどり、二十六年を一番ピークとし、漸次わずかながら減少の傾向が見受けられてきた。それが全刑法犯の
状況でございまして、これが今までの日本の国の青少年問題の犯罪面における一つの傾向を知る数字だと思うのであります。
さらに最近のことに関連して申し上げてみたいと思うのであります。最近と申しますと本年は三十年でございますが、統計は一年を中心にして判断をすることが常でございますので、二十八年と二十九
年度の
関係の数字を申し上げまして御審議の御
参考に供したいと思うのです。二十八年と二十九年の刑法犯の少年——少年と申しますのは二十才未満でございますが、二十才未満の
件数は、
全国を通じ二十八年は十二万六千強のところ、二十九年は十二万強、従って六千件くらい全体としては減っている、こういう傾向でございます。
ところが刑法犯と申しましても犯罪の態様等がいろいろありまして、その傾向は犯罪の態様によってみないとにわかに判断しにくいのですが、全体が減っておりますので刑法犯の罪種はおおむね減っておるのでありますが、逆にふえている
事件を申しますと、わいせつの罪、これがふえている、それから殺人がふえている、それから強盗がふえている、強姦がふえている、こういう傾向でございます。従いまして殺人、強盗、強姦、わいせつの罪がふえておって、それ以外の罪種はおおむね減っておる。減っておる方が大きく作用しまして全体としては二十九年は二十八年に比し六千件ほど減っておる、こういうことでございます。
統計的に申し上げますと以上の
通りでございまして、最近は二十六年をピークにして非常にふえておったけれ
ども、全体として減る傾向が出てきた。ところが凶悪犯——ほかの犯罪でももちろん悪いのでありますが、青少年に対して最も残念に思われるような強盗、殺人、わいせつとかいった犯罪がふえておる傾向というのは、まことにわれわれ
国民としては残念な
状態であろう、こういうふうに
考えられるのであります。傾向につきましてはそれ以外の数字その他によっていろいろ各省の御検討もあろうと思いますが、傾向として犯罪面から見ればおおむね以上のようなところが大要でございます。
それで対策でございますが、対策は先ほど御
意見もありましたごとく、全般の国の施策の中の警察というものの役割を果すべく大いに努力すべきは当然であります。警察だけが一生懸命やるということも重要でございますけれ
ども、ほかの
官庁面と脈絡をとって総合的に解決した方がより効率的でありますので、先ほどの内閣に設置せられた協議会の決定に基くことはもとよりでありますが、常々文部省、厚生省、法務省、労働省、こういった
関係部局とわれわれはしょっちゅう
連絡を密にいたしまして、いろいろな施策を研究したしておるのであります。最近はいろいろ問題もたくさんございますが、覚醒剤によって中毒する、こういう
状況が看取できますし、これはひとり青少年だけの問題ではございませんが、青少年環境浄化という点からいえば看過できない重要な事項だと
考えまして、これは
関係各省と一致した
意見でございますが、
関係各省共同でこの覚醒剤問題という具体的問題を取り上げて、青少年を悪くする根源の重要な要素をなしておる覚醒剤を日本からなくしてしまう、こういう決意を持ちましてお互いに
事務的にいろいろ努力しておるのでございます。それで
関係各省の非常な御協力にもよりまして、われわれも覚醒剤所持違反はもちろんでございますけれ
ども、根本は密造等につきまして徹底した
調査を行いまして覚醒剤という災いをなくしたい、こういうように
考えておるのでありますが、これはひとりわれわれ政府部内にとどまらず、有力な政党等におかれまして非常に御熱心にやっていただくので、われわれそういう
方面の驥尾に付しまして、こういった覚醒剤事犯の消滅に今後も大いに努力して参りたいと思っておるのであります。
それからもう一つの具体的の問題について、これは非常にむずかしい問題でございますが、わいせつ
関係の出版物、映画等がありまして、刑法のわいせつ罪に該当すると認められるものにつきましては、これはわれわれ当然の義務として刑法のわいせつの罪としてどしどしやっておるのでございますが、刑法の罰条には当てはまらないけれ
ども、子供に見せたらどうもよからぬ傾向があるというような点もあるのであります。こういった点は、もちろん下手な立法をいたしますと立法の乱用という点もございますので、必ずしも立様ということをあまり現在のところ
考えないで、青少年問題協議会等におかれましても、
関係業者等において十分こういった問題につきまして御理解いただきまして、できることなら自主的に青少年等に害を及ぼすような出版物の類は御遠慮願うということが好ましい事態と申しますか、そういう形で権力ずくめでやるということでなしに、そういう気風を助長する、こういう点を、内閣の青少年問題協議会等におかれまして重要な議題になさって御検討中でございますので、そういう点につきまして
連絡を密にして、そういう不良文化財といっては失礼でありますが、不良な出版、青少年に害を及ぼすと思われるようなものにつきましての対策を、各省力を合せてこれをやる、これには何と申しましても役所だけの力ではだめでございますので、民間各団体の大いな努力を待ってしていきたい、こう思うのであります。それ以外にも、青少年問題は、広く言うと国の各層に通ずる問題でありますので、いろいろ対策もあろうと思いますが、問題が大きいだけに大きい対策もありますけれ
ども、具体的問題を取り上げて参らぬと進歩がおそい、こういうこともありますので、私
たちといたしましても、とりあえず覚醒剤の問題あるいは不良出版物を、必ずしも権力取締りということのみを
目的としておりませんが、でき得るなら自主的にだんだん、少くとも害があるような出版物については何か適切な方途について御
考慮をわずらわす、こういう点についていろいろ
関係各省とともに努力している次第でございます。