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1955-06-14 第22回国会 衆議院 法務委員会 第19号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月十四日(火曜日)     午前十一時三十七分開議  出席委員    委員長 世耕 弘一君    理事 三田村武夫君 理事 福井 盛太君    理事 古屋 貞雄君 理事 田中幾三郎君       椎名  隆君    高橋 禎一君       長井  源君    林   博君       松永  東君    生田 宏一君       横川 重次君    猪俣 浩三君       佐竹 晴記君    志賀 義雄君  出席政府委員         法務政務次官  小泉 純也君         検     事         (民事局長)  村上 朝一君         法務事務官         (矯正局長)  中尾 文策君  委員外出席者         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 本日の会議に付した案件  商法の一部を改正する法律案内閣提出第二七  号)  少年院法の一部を改正する法律案内閣提出第  四五号)     —————————————
  2. 世耕弘一

    ○世耕委員長 これより法務委員会を開きます。  商法の一部を改正する法律案議題といたします。本案は前会をもって一応審議は終了いたしたのでありますが、ななおこの際質疑通告がありますからこれを許します。猪俣浩三君。
  3. 猪俣浩三

    猪俣委員 今回の商法改正案にはわれわれ大した意見がないのでありますが、ただ解釈上事を明らかにする意味におきまして、二、三政府説明を聴取したい点があるのであります。  それは、この新株引受権改正案を急いで出された理由は、そのほかの理由もございましょうけれども現行商法規定に不備があって裁判上いろいろな差しつかえができるような判決が出るようになったからと思われるのであります。そこでせっかく今度改正する以上は、また再びかような裁判問題で混迷を来たすようなことのないように、解釈をはっきりさしていただきたいと思いまして、その意味において二、三お尋ねしたいと思うのであります。  それは二百八十条ノ二につきまして、その改正案の五号として出ております「新株引受権ヲ与フベキ者」というこの意味であります。この「新株引受権を与フベキ者」という中には、株主及び株主以外の者、この両者を含むものであるかどうか、それが第一点であります。
  4. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 二百八十条ノ二の改正規定の第一項第五号に「新株引受権ヲ与フベキ者」とありますのは、株主新株引受権を与えます場合は株主であり、また株主以外の者に新株引受権を与えます場合にはその者を含む意味でありまして、すなわち第二項との関係について御説明申し上げますと、第二項の株主総会特別決議によって株主以外の者に新株引受権を与えることの授権を得まして、その授権に基いて取締役会が第一項第五号に言う「新株引受権ヲ与フベキ者」としての株主以外の者に新株引受権を与える旨の決議をすることになるわけであります。
  5. 猪俣浩三

    猪俣委員 そこでこの五号の「新株引受権ヲ与フベキ者」には株主が含まれておる。これはただ株主とすればいいのか、あるいはAの株主に何株Bの株主に何株というように、取締役会でこれを特定しなければならぬものであるか、その点の御説明を願います。
  6. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 株主新株引受権を与えます場合に、Aの株主には百株につき五十株、Bの株主には百株につき三十株というふうに差別を設けて引受権を与えることは、株主平等の原則の上からできないわけでありまして、株主に与えます以上は、一定の比率に従ってすべての株主に与えることになるわけでありますから、Aの株主B株主という氏名を特定してあげる必要はないので、むしろ不要でありまして、株主に与える場合には株主に対しどういう割合で与えるということを規定すれば十分である、かように考えております。
  7. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると結局株主に与える場合には何株について何株というような基準を示せばよろしいということに御解釈になるわけですか。
  8. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 さようであります。
  9. 猪俣浩三

    猪俣委員 この株主の中には普通株主及び優先株主が含まれると思うのですが、優先株主関係はどういうことに相なりますか。
  10. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 優先株主につきましては、優先権内容として新株引受権に関する優先的地位定められております場合には、優先株主普通株主との間に差別が設けられることは当然であると考えます。
  11. 猪俣浩三

    猪俣委員 株主以外の者に新株を与えるという場合における表現取締役会決議内容ですが、どういう程度決議があればいいというふうに考えられるのであるか、そこを説明願いたい。
  12. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 株主以外の者に与えます場合には、第一項第五号の規定による取締役会決議は具体的でなければならない、つまり新株引受権を与えられるべきものを特定しまたは特定し得べき表現を用いなければならない、かように考えております。
  13. 猪俣浩三

    猪俣委員 二百八十条ノ二の一号に新株額面額面の別、二号には新株発行価額払込期日というのがありますが、五号にやはり「引受権目的タル株式額面額面ノ別、種類、数及発行価額」こうあります。そこで一号、二号及び五号の発行価額についての関係はどういうことに相なるのでありますか。
  14. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 発行価額につきましては、二百八十条ノ二の第一項第二号に定めますのは、一般的な公募価額定めるわけでありまして、第五号では新株引受権を与うべき者がある場合に新株引受権者に対する発行価額定めるという趣旨であります。すなわち商法の二百八十条ノ三によりますと、「株式発行価額其ノ他発行条件ハ発行毎ニヲ均等ニ定ムルコトヲ要ス」とあります。ただし書きとしまして「但シ新株引受権ヲ有スル者ニシ有利ニ之ヲ定ムル場合ハ此限ニ在ラズ」となっております。この本文の一般的に均等に定むる発行価額は二号にいう発行価額であり、ただし書きによって新株引受権を有する者に対して与える株式発行価額、これが五号に定められるわけであります。
  15. 猪俣浩三

    猪俣委員 そうすると、二百八十条ノ二の二号の発行価額と五号の発行価額とは違ってよろしいという解釈になるわけですか。
  16. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 ただいま読み上げました二百八十条ノ三の規定関係上、第二号の発行価額と第五号の発行価額とには差を生ずることはあり得るわけであります。
  17. 猪俣浩三

    猪俣委員 それから新株引受権株主に与え、なおまた株主以外の者にも与える、それでもなお株式の増資の充実がはかられないような場合はどういうような手続になるわけですか。
  18. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 新株引受権者がその回に発行する新株の全部を引き受けませんでした場合には、残りの株式については公募することになります。
  19. 猪俣浩三

    猪俣委員 その公募発行価額などはどういうことになるのですか。
  20. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 公募発行価額は第一項の第二号によって定め価額、すなわち適正な時価によりまして一般株主に均等に定め価額によることになるわけであります。
  21. 猪俣浩三

    猪俣委員 なおこれは確かめておきますが、前の委員の方々からも質問が出たと思うのでありますが、学者の公聴会あたり意見でもその点が問題になったのであります。二百八十条ノ二の二項、すなわち「株主総会ニ於テ株主以外ノ者ニ新株引受権ヲ与フルコトヲ必要トスル理由開示スルコトヲ要ス」ということが問題になっておると思うのであります。そこでこの「株主総会ニ於テ株主以外ノ者ニ新株引受権ヲ与フルコトヲ必要トスル理由」というのは、一体どの程度理由開示すればよいことになっておるのか。その標準かよくわからぬのですが、前にも御答弁があったと思いますが、簡単にお述べ願いたい。
  22. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 新株引受権を与うることを必要とする理由開示するのでありまして、なぜ新株引受権を与えるかという与える理由開示だけでは足りないのであります。与えることがなぜ必要であるかという理由総会判断を仰ぐに足るだけ詳細に説明する必要がある、かように考えます。
  23. 猪俣浩三

    猪俣委員 なおいま一点、今回の改正法によれば、取締役会決議によって株式引受権の有無を決せられることになっておるようでありますが、しかし定款にまた別段の定めができるということになっておる。そうすると、株主には引受権がないのだというふうな定款規定があってもこれは有効ということになりますかどうか。
  24. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 定款をもって株主新株引受権を排除することももとより可能であると考えます。
  25. 猪俣浩三

    猪俣委員 その場合に、この定款株主に与うべき新株引受権、これを剥奪する定款、これは登記事項でありますか、登記しないでもいいのでありますか。
  26. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 改正案におきましては登記事項となっておりません。
  27. 猪俣浩三

    猪俣委員 普通に在来株主新株引受権があるというふうに理解されておったことは大阪市立大学の実態調査によっても明らかであります。ほとんど各定款がそれを認めておるようであります。これは一種の株主に対する利益なんです。この株主に対する利益定款をもって剥奪する場合において、これを登記しないでいいかどうか。大体登記事項というのは、原則として株主利益に反するようなものをあらかじめ株主に不測の損害をかけない意味において登記させる、そういう趣旨が多分にあると思うのでありますが、この新株引受権株主から剥奪するようなことを登記事項にしなかった理由を御説明いただきたい。
  28. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 定款をもって株主新株引受権を全面的に否定することも理論的には可能でありますけれども、実際の会社運用等実情等から考えますと、この「定款ニ定ナキモノハ」とありますこの定款定めというのは、法律規定によるよりも株主に有利に株主権利を確保する定款定めということが、おそらくすべての場合さようであろうと考えますので、現行法におけるようにこれが定款の絶対的記載事項となっておれば格別でありますが、絶対的記載事項から除きました関係登記事項とする必要はない、かように考えたのであります。
  29. 猪俣浩三

    猪俣委員 新株引受権株主以外の者に多数与えるような行動会社がとったときに、いわゆる縁故引受というようなことが想像され、それによってある野心ある者が会社支配権を握るというような派閥行動をやらぬとも限らない、そういう弊害に対しまして、本法はそれを防ぐにいかなる用意があるのであるか、御説明いただきたい。
  30. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 株主以外の者に新株引受権を大量に与えまして会社支配権が従来の株主以外の者に移るということに対しましては、まず改正案の二百八十条ノ二の第二項におきまして、かような場合には必ず株主総会特別決議による授権を必要とするということになっておりますので、株主自己権利を適当に行使いたします限りさような事態は起り得ないということになるかと考えるのであります。たださような場合が起ることをあらかじめ予想しまして、株主定款定めるに当りまして、株主に全部の新株引受権があるという定款定めをすることもできるわけであります。そういう規定がありますれば、株主以外の者に新株引受権を与える余地がなくなる、かようなことになりますので、もとよりさような定款規定を置きますと、授権資本制の妙味とされております資金調達機動性を著しく、拘束することになりますけれども株主自己権利保全のためにかような定款定めるということでありますれば、さような道も開かれておるわけであります。
  31. 猪俣浩三

    猪俣委員 なお最後にこの二百八十条ノ二に一号から五号までいろいろの規定がありますが、これは時間的に同時にきめなければならぬものかぽつりぽつりきめておってもいいものであるか。二号の発行価額をきめるときに五号をきめておかなければならぬものであるかどうか、そういうことについての御意見を承わりたい。
  32. 村上朝一

    村上(朝)政府委員 第一号から第五号まで全部を同時にきめることは必ずしも必要はないのであります。たとえば第五号に書いてあります事項を、発行の日までに、後日きめるということも可能であります。
  33. 世耕弘一

    ○世耕委員長 他に質疑はありませんか。——なければ本案についての質疑は本日をもって一応終了いたします。なお本案についての討論採決は十七日金曜日の予定にいたします。     —————————————
  34. 世耕弘一

    ○世耕委員長 次に少年院法の一部を改正する法律案議題とし質疑を行います。質疑通告があります。これを許します。福井盛太君。
  35. 福井盛太

    福井(盛)委員 二、三の点について質疑を行いたいと存じます。  少年院法の一部を改正する法律案が議せられておるのでありまするが、元来この少年に対する法律というものはきわめて慎重を要するのでありまして、その重要性にかんがみられまして今日まで二十四年以来、数度にわたって毎年一部ずつの改正が行われておるのであります。その数度にわたる改正たびごとにいろいろの議論も起っておるようでありまするが、私どもはやはり特殊のこの少年というものに対する少年院法改正ということにつきましては、特段の注意を要することと存ずるのであります。その趣旨に従いましてだんだんと改正されてきておるようではありまするけれども、そのほんとう精神を離れまして、ややともするとその提案の事実が、あるいはこの少年院法の第一条に記載しておる家庭裁判所から保護処分として送致されたこの少年少女を保護収容して、そして矯正教育を与えることが目的であったにもかかわらず、少年院の創設後の改正傾向を見ますと、何となく少年刑務所に近づいてきているような改正点がないとは言い切れないのであります。そこで私は今度の例を見ましても、強制連戻し制度あるいは手錠ども必要に応じて用いてもいいというように考えておるのでありますが、これらの点を考えてみますと、何となく一般犯罪者に対する刑罰適用のような傾向が出てくるのではないかということを憂えるのでありますが、その趣旨はあくまでも矯正処分によって保護処分をやっていくという精神にのっとって、やられておるのかどうかということ、今後もその精神でもって持続されるのであるかどうかということを一応根本問題としてお伺いしておきたい。
  36. 中尾文策

    中尾政府委員 まことにごもっともなことでありまして、私たちといたしましても、少年に関する法律少年院法にそういうきつい面を盛りますことにつきまして、相当考えておったのでありますが、御承知のように少年年令が引き上げられまして、二十才ということになりましたが、なおそれをその後二十才を超えました者についても、まだ当分の間入れておける。極端な場合は二十六才まで入れておけるということになりますと、だんだんと入っております少年の質が変って参りまして、つまり幅が広くなって参りましたので、従来のように低年令少年を目標にして作られました少年院法だけではまかない切れない分ができて参りましたので、そういう部分についてはある程度厳重な措置を講ぜざるを得ないということになりますが、しかし根本はどこまでも、それでもって全部を塗りつぶそうというわけじゃございませんで、適当に個人的な事情によりまして、私ども処置をとっていくというだけのことでありまして、やはり少年をこちらとしてはどこまでも親の気持でもって矯正していきたいということでございます。
  37. 福井盛太

    福井(盛)委員 ただいまの御説明によりまして、あくまでも少年に対する保護矯正教育ということを目的としてやっておられるという点については了承いたしました。どうぞその趣旨を逸脱しないように、この法規全般について改正を試みられんことを希望いたす次第でございます。  次に私が第二点としてお尋ねしたいのは、この改正案に基く、いわゆる死傷手当金の問題でありますが、これは根本におきましては、国家が恩恵的に施すべきものであるというお考えであるか、あるいは国家としてはやはり義務的にそういうものに対して死傷手当を施すべき性格のものであるかという根本の問題について一つお尋ねをしたいと思います。
  38. 中尾文策

    中尾政府委員 どこまでもこれは恩恵的なものでございまして、見舞金のような性質を持っております。
  39. 福井盛太

    福井(盛)委員 それでけっこうだと思いますが、この死傷手当金支給範囲とか金額及び方法等はすべて法務省令に譲ってあるようでありますが、この点についてはすでにできておるかどうかということ、並びにお尋ねしたいのは、労働省災害補償額等を比較してあんばいされておるかどうか。私の方としてはなるべく多額に、そして範囲も広く、方法等についてもあまりむずかしくなくできるようにしていただきたいと思うのでありますが、この点について一つ伺っておきたい。
  40. 中尾文策

    中尾政府委員 まず私の方で今考えております要綱を申し上げますと、「矯正教育として職業補導をうけるに際して、」ということになっておりますが、それは主として職業補導を受ける場合ということになっております。支給の額は、労働関係補償のやり方を多少はしんしゃくいたしましたが、性質が全く違いますので、相当少額になっておりますが、死亡した場合は二万円、障害を残した場合の最高が二万五千円程度のつもりでおります。また支給方法死亡手当金は死亡したとき、障害手当金原則として退院のときに支給するつもりでおります。なお遺族の範囲配偶者、子、父、母を考えておりますが、このほかにまた祖父母で生計を一にしておったというような者も含めたいというふうに考えております。なお支給の順序といたしましては、死亡した者と生計を一にしておった者を第一順位にしたいというふうに考えております。
  41. 福井盛太

    福井(盛)委員 労働省災害補償額というものがあるようですが、これなど御参考になって比較し御決定になったのですか。
  42. 中尾文策

    中尾政府委員 実は算定の方法根拠は、非常にむずかしいわけでありまして、やはり基本金額考えまして、それにいろいろな条件を加味した実数を掛けていくという方法にしましたが、あまりこまかくやるとめんどうなことになりますし、なおかつ性質も違っておりますので、大体刑務所で、従来受刑者について、こういう場合の手当を出しておりますので、それを参考にいたしまして、それをやや下回る程度にきめたわけであります。
  43. 福井盛太

    福井(盛)委員 次に十四条の二の手錠の点についてお聞きしたいのであります。逃走のおそれのある場合使用するというのは、これはただ書き方でありますが、なかなかこれを見ただけではむずかしい問題なのであります。解釈によりましては、条文範囲が広くあるいはまた狭く考えられることもあるのでありますが、これを何とかもっと平易に書き現わせないものかどうかをお尋ねしたい。
  44. 中尾文策

    中尾政府委員 御趣旨はごもっともでありますが、私たちとして考えましたのは、こういうふうに書いておってもわかるのじゃないか、こう思いまして、この結果準用される条文が三つばかりございますが、ただそれだけの意味で私どもは簡単に書いた程度でございます。
  45. 福井盛太

    福井(盛)委員 こういう書き方は他の法律にもしばしば出てくるのですが、われわれ専門家もなかなかむずかしくなるのであります。これよりいい書き方はないと思いますが、なお一段とその点は御考案を願いたいと思います。さらに十四条の二の2の手錠の問題でありますが、手錠と申しますと、一般犯罪人に対するところの一つ方法であるのでありますが、これが緊急を要する状態にありては、少年院の長の許可を受けるいとまがないときは、少年院の長の許可を受けなくてもよろしいということになっておるのでありますが、この少年院の長の許可を受けなくてもいいということは、これだけでよろしいのか、後にやはり報告するような義務を負担させるようにした方がいいのではないかと私は思うのであります。この点についてのお考えを承わりたい。
  46. 中尾文策

    中尾政府委員 この点は非常に慎重にしなければならぬ点でございますが、事態によりましては、また場合によりましては、一々少年院長許可をとるいとまがないというようなこともございますので、そういう場合のやむを得ない処置として、こういうふうにいたしましたが、しかしこの後には、必ず直ちに少年院長に報告いたしまして、少年院長事後承認を求める。院長がそのときにいけないということになりましたならば、直ちにそれをはずさせるというふうに厳重な監督の規定をつくりたいと思っております。
  47. 福井盛太

    福井(盛)委員 了承いたしました。この十四条の書き方によりますると、在院者が逃亡したときは、少年院職員はこれを連れ戻すことができるとなっておるのですが、これは必ずしも連れ戻さなくて、そのままにしておることもあり得るのですか。
  48. 中尾文策

    中尾政府委員 これはなかなか微妙な問題でございますが、やはり建前といたしましては、全部連れ戻さなければならないというふうに解釈いたします。それは裁判が確定いたしておりまして、その裁判を執行するだけのことを少年院側は引き受けておるわけでございますから、自分たち判断だけで、勝手に取捨選択していいということは法律上出てこない。ただ実際問題といたしまして、この少年の場合は刑罰と違いまして、逃走した後に相当年数もたって、いろいろな状態で安定しておる、たとえば逃げました少女結婚生活に入って、無事に暮しておるということが数年後に発見されました場合には、これははなはだ困るのでありますが、そういう場合にはやむを得ず、形式上は職務を怠ることになりますが、見過ごすというような処置はとらざるを得ないのではないかと思いますが、しかし表面切ってそれがいいということは、法律上には盛れないことがあるわけであります。
  49. 福井盛太

    福井(盛)委員 よく事実の点につきましてはわかるのでありますが、これは旧法も同じような書き方に相なっておるのですが、何となく連れ戻すことができるという書き方だけであっては、連れ戻さないで、そのまま投げておいてもいいというふうに考えられるのですから、その点について質問したのであります。御趣旨はよくわかりましたが、これは連れ戻さなければならぬというようにはできないのですね。
  50. 中尾文策

    中尾政府委員 趣旨はそういうつもりでございますが、本来、当然執行する側としては連れ戻さなければならぬというのは、これは法律に書くまでもなく初めから当然でありまして、ただこの場合は、少年院職員にそういう権限を与えるという意味で、こういう規定を置いただけでございます。
  51. 福井盛太

    福井(盛)委員 了解いたしました。次に警察官に連れ戻しについて援助を求められることができることに相なっておりますが、御承知通り警察官というのは、ほんとう犯罪人もしくは被疑者に関して、必要なることを行うのが警察官の任務とされておりますので、どうも小さな少年などを取り扱うのにははなはだ不適当のように思うのです。従来警察官がこういう場合に援助を求められて手伝った場合において、不都合のような行為はありませんでしたか。
  52. 中尾文策

    中尾政府委員 まず事実を申し上げますと、少年が逃走いたしました場合に、あの数の少い少年院職員だけであとの処置をつけるということは、とうていできないことでありまして、ほとんど例外なく警察の方の援助を受けておるようなわけでございますが、警察の側におきましても、この少年の点につきましては非常に気を配っておりまして、少くとも私たち承知いたしました範囲内では、警察官がむちゃなことをしたというようなことは聞いておりませんし、なおその反対に警察の側からは、現在の現行法のようなことでは積極的に援助することはむずかしい。どうも今やっておることについては、法律上の根拠について自信がないので、もっと法律上はっきりしてもらいたい。そうすればわれわれとしても安心できるというようなことでございまして、警察側はその少年のことにつきましては、相当心を使っておるということは事実であります。
  53. 福井盛太

    福井(盛)委員 最後に一点お尋ねしたいのは、連れ戻しということでありますが、連れ戻しということにつきましては、もともと少年であって、普通の犯人とは違うのでありますから、法律上の問題もいろいろ含んでいると思うのであります。この少年院少年の逃亡ということは、既決とか未決とかいうようなものでないために、いわゆる刑法上の逃亡罪をもって処罰することもできないというような立場に立っておるのであります。でありますから連れ房状によって、連れ戻すということは、実際上なかなか議論も起ると思うのでありますが、これもやむを得ぬ事柄であろうと実は思うのであります。でありましてむずかしい議論も起るのでありますが、この連れ戻しということにつきましてはむろん逮捕、送致というような意味ではなくして、全くその元に返す、還元する、元に連れ戻すという簡単な措置である。これはいわゆる戒護という性質の延長と見るのが当然であろうと思いますが、そういうふうにやはりお考えになっておられるかどうかをお尋ねしたい。
  54. 中尾文策

    中尾政府委員 全く刑事事件で犯人を逮捕する、あるいは刑務所から逃げたものを逮捕するというような観念は全然ございませんで、一種の学校のつもりでおりますが、そこから出たものをもう一ぺん帰ってこいというようなやさしい気持で、またできるだけやさしい手段を使ってもう一ぺん帰ってこいというようなつもりでございます。
  55. 福井盛太

    福井(盛)委員 私もその点については御説の通りだと思うのでありまして、この点はあくまでも少年を戒護、保護、矯正するという趣旨に基きまして、いやな感じを与えないような意味をもちまして連れ戻しされることを私は切に希望するのであります。最近のごとく相当まだ若い年配のものが、大それた大犯罪を起すようなものがあるようになってきたということは、まことにいやなことでありまして、これらの点を考慮しますと相当の手を施さなければならぬことを思いやられるのでありますが、どうぞかれこれ思い合せられまして適当なる処置に出られんことを切望いたしまして私の質疑を終ります。
  56. 世耕弘一

    ○世耕委員長 次に三田村武夫君。
  57. 三田村武夫

    ○三田村委員 実は少年院法のもとをなすものは少年犯罪でありますが、近ごろ少年犯罪というものは非常に激増してきたような傾向がありますので、基本的な問題について少しお伺いしたい点があるのですが、これは法務当局だけの御意見を伺ってもどうかと思いますので、別の機会に文部当局、警察当局の御意見もあわせてお伺いいたしたいと思います。もし局長お手元に資料をお持ちでありましたら、その少年院法によって少年院に収容されている人員、年令別、犯罪種別等ありましたらちょっとお知らせ願いたい。
  58. 中尾文策

    中尾政府委員 昭和二十七年、二十八年、二十九年と調査をいたしましたものを持っておりますが、二十九年度全部申し上げましょうか。
  59. 三田村武夫

    ○三田村委員 二十九年現在でいいです。
  60. 中尾文策

    中尾政府委員 昭和二十九年の十二月三十一日現在でございますが、少年院に入っております総数は一万六百十七名でございまして、この内訳は初等少年院、中等少年院、特別少年院、医療少年院とございますが、初等が千五百二十七、中等が五千五百三十二、特別少年院が二千五百一、医療少年院が一千五十七になっております。  なお年齢で申し上げますと、十六才未満が千三十四名、十七才未満が千三百三十一名、十八才未満が千九百五十五名、十九才未満が二千三百五十六名、二十才未満が二千七百十六、二十三才未満が千二百二十五、二十六才未満は現在のところはおりません。こういうことであります。
  61. 三田村武夫

    ○三田村委員 今お伺いいたしますと、少年院に収容されておる被収容者の中には、年令の点から見ましても、十八才以上の者が相当数おりまして、犯罪行為の面から見ますと、少年という言葉で扱えない者も相当おると思います。犯罪の行為者としては、当然成年者と同じ行為能力を持ち、また社会的な影響においても、それ以上の行動の面における影響力を持っておる者がいるように思われるのであります。従いまして、この少年院法趣旨によって、今福井委員の御質問の通り、十分その矯正の趣旨に徹した取扱いをされなければならぬことは、もとより当然でありますが、しかし、それだけではなかなかこの目的が達せられないように思われるのです。大体今度の改正案を見ますと、逃亡という言葉を使っていいかどうかわかりませんが、少年院から出た者の手当、取扱いが中心になっているようでありますが、そういう場合にも二つの面があると思うのです。つまり狂暴性を持たない、犯罪性を持たない者、矯正の目的を十分達し得る者に対しての扱いと、少年院法の建前で少年院に収容しておるが、普通の在監者以上に狂暴な者も、実際の場合はあり得る。私は今その正確な記憶がありませんが、いつごろでしたか、先般少年院から四、五名の被収容者が集団的に脱走して、だいぶ騒がれたこともあるのですが、そういう場合の処置とは、おのずから違ってくると思われるのです。二段の面が一緒になって考えられているように思われるのです。従って、読みますと、同じ十四条の規定にしましても、前段と後段と違って、十四条の二の規定は、今福井委員が言われたように、手錠なんか用いられることになっているのですが、これは当然必要な処置だろうと思う。ところで、十四条に三項を今度加えられる在院者逃亡の場合の処置ですが、これなんか見ますと、私が申しました前段の場合、ただ、おるのがいやになったから出ていった、こういう者もあるだろうと思う。出ていってすぐ犯罪を犯すとかいう危険のない者で、何となくいやになったから出ていった、収容にそう強制力を用いておりませんから、そういう場合があり得ると思うのですが、そういう場合には——連戻状という言葉を使っておりますが、これは用語がやわらいでいるだけで、内容、性格からすれば逮捕状と同じなんですね。そういう場合の考え方はまた別になっていいと思うのです。たとえば後段として「十四条に次の三項を加える。」とありますその二、「在院者が逃走した時から四十八時間を経過した後は、裁判官のあらかじめ発する連戻状によらなければ、連戻しに着手することができない。」こう書いてある。これは非常に書き方はやわらかいですが、四十八時間経過した後は、裁判官があらかじめ連戻状を発するということが原則になっているのですか、その点お伺いしておきます。
  62. 中尾文策

    中尾政府委員 仰せの通りに四十八時間を経過をいたしましてあと連れ戻そうとする場合は、その連戻状を発付してもらわなければ連れ戻しができないことになっております。
  63. 三田村武夫

    ○三田村委員 これは在監者逃亡の場合と同じような趣旨ですが、少年院法の場合は夫確定刑期で、この少年院から逃亡したものでも逃亡犯は構成しないのじゃありませんか。
  64. 中尾文策

    中尾政府委員 その通りでございます。
  65. 三田村武夫

    ○三田村委員 そうすると少年院から逃亡したことそれ自体が犯罪になるわけじゃない。犯罪を構成していない者を連れ戻す。これは事実行為ですが、連れ戻す目的は矯正にある。これは前段申しましたように一律には言えません。非常に狂暴性のある者もありますが、そうでなく、ただ何となくいやになって出ていったという者があり得るのです。その矯正を目的とし、しかも犯罪を構成していないものでも、逮捕状と同様の性質を持っている連戻状によらなければ元の位置、つまり少年院に連れ戻すこともできないということは、処置として少し強制力が強過ぎやしないかという気がいたしますが、この点はどういうお考えでありますか。
  66. 中尾文策

    中尾政府委員 実は私たちの方といたしましては、むしろ慎重に丁寧にしようという意味で、こういう手続をわざわざ加えようと考えているわけでございます。つまり現在の様子でございますと、いつでも、何年たっても、どういう場合でも少年院職員が連れてくるというわけでございますが、しかし少年の場合は今おっしゃいますように受刑者の場合と違いまして、軽い意味で逃げているものもありますし、なおまた少年が社会へ出まして、一定の秩序の中に安定しているという場合がございました場合に、これを全然何らの要式行為を必要としないで、ただ少年院職員がいきなり連れてくるということよりは、むしろこれは外部のだれかの判断を加えまして、そして連れ戻すべきであるという処置をとってもらっておいて、それからそういう根拠の上に立って連れ戻すというだけのことでございます。別に逮捕状的なものを本人に示して出てこいというわけでなく、ただそういう根拠を得ておけば、あと少年院職員なり警察官がそこへ参りまして、やさしく説得して連れてくるということになるのでありまして、私たちの方では犯罪者扱いにするようなことになるというふうには考えておらないのであります。
  67. 三田村武夫

    ○三田村委員 私の申し上げたことは局長が述べられたのと多少違った意味があるのです。局長が今述べられた後段、少年院を出てあるいは数年あるいは数カ月を経て、すでに平和な社会生活を送っている、そういうものは実際は少年院の矯正の趣旨をすでに達したわけですからいいわけですが、そうでない場合は四十八時間と書いてあるから、どこかへ出ていっていなくなった、四十八時間すでに過ぎてしまった、三日、五日たった後に探してみたら親戚の家におった、あるいは親の家に帰っておった、友達の家で遊んでおった、そういう場合もあり得るわけです。その場合でも連戻状を持っていかなければならないかということなのです。それからその意味に加えて私は申し上げたいことは、さっき局長が言われたように大体少年院から逃亡した者を連れ戻す事実行為は警察官がやる。ほとんど多くはそうです。しかし警察官にあらざる者のなす場合も非常に多い。たとえば司法保護司とか、あるいはもっとやわらかい社会事業に従事しているような人の手をわずらわして連れ戻す場合もあるのです。そういう場合に私は、「裁判官のあらかじめ発する連戻状によらなければ、連戻しに着手することができない。」というのは、非常に窮屈だと思うのです。おそらくはこの立法の趣旨はそうでなくて、先ほど局長が述べられたように、少年院職員は非常に少い、実際の連れ戻しの事実行為は警察官がおもにやるんだ、その警察官が何らかの法的根拠がなければやりにくいんだという意見もあるので、この逮捕状にかわるような連戻状を必要とするような場合は、私はほとんどといってもいいほど警察官の場合だと思うんです。そうすると実際問題とにらみ合して、これを規制する場合の書き方としては、在院者が逃亡した時から四十八時間経た後に警察官がこの連れ戻しに当る場合は、裁判官の発する連戻状によらなければならない、こう書けばいいので、ここにあるように書いてしまいますと、実際もっとやわらかい、警察官の手を経なくてもいい連れ戻しの場合まで連戻状によらなければならない、こういう解釈が出てきはしないかとおそれる。ことにまだ年令的に非常に低い少年を対象にする場合は、こういう書き方がありますと、法文の解釈上四十八時間経過した後には、裁判官のあらかじめ発する連戻状によらなければ連れ戻しに着手することができない、こうなると非常に窮屈になるのではないか、こういう疑問が出てくるのであります。
  68. 中尾文策

    中尾政府委員 連戻状を必要とするようにいたします趣旨は、やはりその少年の人権を尊重しようというような趣旨から出ておるのでございます。なお本人が帰ってくる、つまり保護司とか父兄、あるいは汽車賃をもらって汽車で一人で帰ってくるというような場合もございますが、そういう任意に帰ってくる場合は別に連戻状は必要でございませんで、やはり連れ戻しというのは、本人の意思に反してこちらへ連れてくるという場合でございまして、別に自分で帰ってくる、あるいは親につき添われて一緒に帰ってくる、そういう場合につきましては本条は関係はないわけであります。
  69. 三田村武夫

    ○三田村委員 その点、私、わかっておるのです。局長のおっしゃる通りです。しかし書いておるところではそうは読めないのです。「四十八時間を経過した後は、裁判官のあらかじめ発する連戻状によらなければ、連戻しに着手することができない。」こう書いてある。これは警察官であってもだれであってもです。だから少年院職員の方が連れに行く場合でも、あるいは警察から、こういう少年院からこういう人間が二、三人逃げておるのだ、どこかその辺におったら連れに行って下さいませんかと保護司とかそういう人に頼むとします。そういう人が連れに行くときでも、この法文の解釈によると、それは連れ戻し行為ですから、その連れ戻しに着手するためには、裁判官のあらかじめ発する連戻状を持たなければいけないということになるのです。これは法文解釈上、そうなりはしませんか。
  70. 中尾文策

    中尾政府委員 実はそうならないのです。この少年院から逃げていきました者を連れ戻す権限を持っております者は、少年院職員と、それに依頼された警察官、これだけでございまして、それ以外の者は少年院から逃げた者を少年院に連れ戻すことはできない。それ以外の者がもしも連れてくる、暴力を用いて不法に本人をつかまえてくるといたしますれば、これは別の不法逮捕とか、そういう問題になるわけでございます。あとは保護司さんなり先生なり、だれか本人をよく知っている人が本人を説得して、少年院へ行くのにお前一人で行けなければ、おれが一緒に行ってよくおわびしてやるからといって、連れ戻すことはございますが、そういう場合はこの法律で申しておる連れ戻しではなくて、やはり本人の任意の復院ということになるわけでございますから、その点は問題ないと思います。
  71. 三田村武夫

    ○三田村委員 その点はその通りです。局長の言われることはわかるんですが、ある意味において強制力を用いて連れ戻し得るのは少年院職員警察官です。だからその前の局長の言われるやわらかい行為でなし得る場合は、裁判官のあらかじめ発する連戻状は要らないのです。ですから裁判官があらかじめ発する連戻状を必要とするのは、実際は警察官の職務行為の場合、あるいは少年院職員のなす連れ戻しに強制力を用いる場合でしょう。そうすればここで、警察官が逃亡した者を連れ戻しに着手する場合は、裁判官のあらかじめ発する連戻状によらなければならない、こう書けばいいのではないかという気がする。それでこういう書き方をしてしまいますと、司法保護司とかそういうような人がやる場合でも、これはそう悪質ではないにしても、ちゃんと法律に書いてあるから、連戻状を持っているか、こういうことも言い得る。これは逮捕状も何も要らないものを、そこへ行って連れてこいという場合に、強制力は用いなくともいいけれども、お前さん帰らなければいかぬということは、司法保護司とかそういう人でも、相当強いことを言わなければ帰ってこない者もいる。そういう場合でも「あらかじめ裁判官が発する連戻状」という言葉が出てくる。裁判官が発する連戻状がなければいかぬということは、連れ戻し行為をなし得る者は警察官少年院職員ということに限られてしまう。こういう形になりますと、局長御存じの通り、実際は事実行為としてそれ以外の場合が非常に多くあるんです。それならば事実問題に即して、その点ははずした方がよくはないかということです。つまり警察官が連れ戻しに着手する場合は、裁判官の発する連戻状によらなければならない、こう書けば、局長の言われるような、事実行為として少年院職員が連れてくる、あるいは保護司に頼んで連れてくる、こういう場合はこれからはずれてくる。私はこれで一つも不便はないと思う。ところが実際はそれと別のケースで、相当狂暴な、あるいはあすこにおるけれども、ほっておいたらいけない、呼びに行っても来はせぬという場合には、仕方がないから、警察官がその職務行為として連戻状によって連れてくる。そのときに狂暴性のある者は手錠もはめる。こういうかっこうになってくるのではありませんか。
  72. 中尾文策

    中尾政府委員 連れ戻しというのは、どこまでも本人の意思に反して強制力を用いて少年院に連れてくるという場合でございますので、そういう場合の手続といたしましては、やはり一定のそういう要式行為が必要であって、しかもその点について少年院職員警察官とを区別しない方がいいというふうに私たち考えるわけでございます。それ以外の場合は、やはりどこまでも法律上は本人の任意出頭ということになりまして、この連れ戻しという言葉からはずれておるわけです。従って警察官少年院職員が事実上連れ戻しをやるような場合がありましても、場合によってはその連戻状によらないで、昔の顔見知りだからというので説得、納得づくで本人を連れて帰ってきたという場合は、これはこの十四条で言っておりまする連れ戻しではないわけでありまして、私その点は使いわけはできるように考えます。
  73. 三田村武夫

    ○三田村委員 私はその点疑問を持っているのじゃない。それは局長のおっしゃる通りなんです。局長の言われる通り、実際強制力を用い得るのは警察官だけなんです。警察官だけだから、警察官だけの連戻状にすればいいのです。警察官援助を求められて連れ戻しの行為に着手する場合は、あらかじめ裁判官の発する連戻状によらなければならないと書けばいいと思う。それはどういう不便があるのか。これを読んだ場合にだれが読んでもそうなんですよ。警察官という言葉も何も出てきやしません。事実行為として連れてきた場合でも、「在院者が逃走した時から四十八時間を経過した後は、裁判官のあらかじめ発する連戻状によらなければ、連戻しに着手することができない。」連れ戻しという行為が一般の概念として逮捕状とか拘引状とかいう言葉を使っておりませんから、あくまでも連れ戻しです。局長のおっしゃる任意の連れ戻しも連れ戻しです。少年院法全体を見ますと、連れ戻しということは事実行為であって、逮捕状と同じような性質も持っておるのですか。それならば私は今局長の言われる事実行為をはずしておけばいいと思う。実際強制力を用い得るのは警察官だけですから、警察官少年院長から援助を求められて、これこれの人間が逃亡したから探して下さいと援助を求められて、強制力を用いなければならない場合にも、二つありますよ。本人を納得してすぐ連れてこれる場合もありますし、そうでなく、どうしても狂暴性のある者、犯罪を起すおそれがある場合には手錠をはめて連れてこなければならない、そのときには連戻状がいる、こういう建前じゃありませんか。
  74. 中尾文策

    中尾政府委員 逃走した者を連れて帰る場合に実力を行使しなければならぬ、本人の意思に反してもやらなければならぬということは、これは少年院職員の場合にも相当あるわけでございます。従って少年院職員警察官の場合とその区別をしない、連戻状の必要の有無ということについて区別する必要がないように思います。また連れ戻しというのは、やはりそういう本人の意思に反して少年院職員警察官とが少年院に連れ帰るだけがこの少年院法によりますところの連れ戻しでありまして、それ以外の事実行為というものはこの条文の連れ戻しというのとは別なことになっております。
  75. 三田村武夫

    ○三田村委員 それはその通りです。それはいくら議論を蒸し返しても同じことなんです。局長の言われることはよくわかっているのだけれども、こう書かなくても不便はない。この条文書き方を見てごらんなさい。この四十八時間経過後ということは、刑事訴訟法でも何でもあるのです。書き方は同じです。在院者の逃亡の場合も同じことです。こういう書き方をしますと、常に裁判官のあらかじめ発する連戻状ということが前提になってくる。何も前提にしておく必要はないじゃないかというのです。依頼を受けた警察官が連れ戻し行為に着手する場合には、裁判官のあらかじめ発する連戻状を必要とすると書けばいい。こういう書き方は必要ないじゃないか。これはいくら議論しても同じことですから、あとで懇談いたしますが、その点を申し上げているのです。委員長、この法案の内容については、私今福井委員の御質問に関連して、私の気のついた点を申し上げておきます。内容についてはこの程度で、この問題はあとで御懇談申し上げるといたしまして、私は少し少年院法を必要とするその前提の問題、青少年の不良化をどうするかという問題で少しお尋ねしたいことがあるのです。これは法務当局だけではちょっと足りないと思いますから、この質疑はあとに留保いたしまして、きょうの 午前中の質疑はこの程度にいたしておきます。
  76. 世耕弘一

    ○世耕委員長 三田村君にお答えいたします。政府側お聞きの通りでございますから、いずれよく御懇談願いまして、あらためて質疑をしていただきたいと思います。次に高橋禎一君。
  77. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 法律案について二、三局長にお尋ねいたしたいと思います。この少年院から逃走をした人というのは在院者ということになるのですか、ならぬのですか。すなわち少年院法における在院者というのはどこまでをいうのか、そこをはっきりしておきたい。
  78. 中尾文策

    中尾政府委員 少年院の実力支配下にある間は在院者ということでありまして、実力支配を脱すると同時に在院者ではないというような解釈をとっております。
  79. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 そうすると今のお答えによりますと、逃走をして少年院の実力支配と申しますか、その支配を脱した場合には在院者でない、こういうふうに伺っていいと思うのです。次にお尋ねいたしますのは、連戻状を発せられてそうして連戻状の執行として本人の意思に反して少年院に連れ戻すということは、少年院のいわゆる家庭裁判所から保護処分として送致をされた者の矯正教育を授けるというその中には入らないわけですか。
  80. 中尾文策

    中尾政府委員 連れ戻しということでございますか。
  81. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 そうです。
  82. 中尾文策

    中尾政府委員 やはり少年院に連れ戻しておかないと矯正教育ができませんので、それで矯正教育をいたすために、逃げている者を原状に回復いたすということでございます。
  83. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 今御答弁によりますと、少年院矯正教育をしなければならない、ところが実際の支配からすでに脱しておるのだから少年院に連れ戻して矯正教育をしようというふうなお答えですが、そうしますと連れ戻し行為自体というものは矯正教育のその内容の中には入っていない、全然別のものである、そういうふうなことになるわけですか。もう一度念を押しておきます。
  84. 中尾文策

    中尾政府委員 そのものそれ自身は矯正教育とは言えないかもしれませんが、しかし矯正教育に最も密接に関連を持った必要な手段だと思います。それはたとえば一つ少年院からほかの少年院に連れていくという、ただ連れていくというのと同じ程度の必要な手続であろうと思います。
  85. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 ここをはっきりしておきませんと、今度の改正案の第八条の二に「在院者矯正教育を受けるに際して」こういうような言葉がある。だから在院者ということをはっきりし、そして矯正教育を受けるに際してということになるかならぬかをはっきりしておかないと将来いろいろな問題が起るだろうと思う。そこで在院者ということについてただいま御説明がありましたが、連戻状を執行したらもう少年院の実力支配の中に入ったものとして在院者として取り扱うか、あるいはまたそれは少年院の実力支配の中に完全に入っていないので在院者ではないんだ、こういうふうな考えであるか。いま一つは連れ戻し行為自体がこの第八条の二の「矯正教育を受けるに際して」ということになるのかならないのか、そこを一つ明確に答えていただきたい。
  86. 中尾文策

    中尾政府委員 それは矯正教育ということにはならないと思います。それから連れ戻しに着手いたしましたら、これは少年院職員によって連れ戻しに着手になった場合には、もう在院者というふうに認めてよいと思います。
  87. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 どうもそこが私にはっきりわからないのです。少年院職員が任意に連れ戻す場合に——この法案からいいますと、四十八時間を経過して連戻状を持たないで本人を説得して、事実上一緒に少年院に行こうというような場合は問題外にしておきますが、四十八時間にまだ達しないうちは、連戻状なくして少年院職員なりあるいは少年院の長から連れ戻しについて援助を求められた警察官なりが連れ戻すことができるんでしょう。その連れ戻しをしておるときに、その連れ戻しを受けておる少年在院者と言えるか言えないか、これをはっきりしておきたい。今少年院職員がとおっしゃいましたが、職員も、少年院の長から連れ戻しについて援助を求められた警察官も同様だと思うのです。それが全く同様であるかどうか。そしてもうすでに連れ戻し行為に着手されておるわけですから在院者と言えるか。そこをはっきりしておきませんとあとで手当を与えるべきかどうかということについて非常に疑問が残ると思います。重ねてお尋ねをいたします。
  88. 中尾文策

    中尾政府委員 その点は区別をいたしまして、少年院職員が連れ戻しに着手した場合には少年院の実力支配の中に入ってくるというふうに解釈できますので、この場合には在院者と申せますが、警察官の場合には、ただ警察官が連れ戻しに着手したというだけではまだ少年院の実力支配に来たとは申せませんので、その場合には在院者ではないというふうに考えております。
  89. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 その区別をされるということには私は非常な疑問があるのです。少年院職員が連れ戻す場合には私は疑問がないと思いますが、少年院の長から連れ戻しについて援助を求められた警察官というのは、まあ少年院の代理者というか、少年院長の代行者として少年院職員と同じような立場に立って連れ戻すものであると思うのですが、それが区別されるということは、これはあとでまたお尋ねをいたしますが、非常に法律運用上差別ができて私は正しい見解ではないのだと思うのですが、そこをよく御研究なさってはっきり答えていただきたいと思うのです。
  90. 中尾文策

    中尾政府委員 なおよくその点は検討いたしてみますが、完全に少年院在院者というわけには現在のところ参らないと思います。今申し上げたように十分研究してみます。
  91. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 そこで連戻状によらない、すなわち法律案によります四十八時間を経過しない前に連れ戻しをする行為は矯正教育を受けるに際してといいますかあるいは矯正教育実施中といいますか、私のお尋ねしようとするのは第八条の二の「矯正教育を受けるに際して」という中に入るか入らないのか、そこはどういうふうなお考えですか。
  92. 中尾文策

    中尾政府委員 一たん逃げて実力の支配を脱しました者につきましては、四十八時間経過してもしなくても在院者ではないと思います。
  93. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 そこに私は疑問がある。逃げておるだけでこれは在院者でないという、そういうふうな解釈も一応成り立つのではないかと思うのですが、たとえば少年院職員によって連れ戻し行為を実行されている場合に、それは少年院の実力支配の中に入ったというお考えなのですね。少年院の実力支配に入っておるにもかかわらず、矯正教育をなさない少年というものがあるのかないのか。しかもこの矯正教育を受けるに際してという考えは、矯正教育を実施するというよりはさらに範囲が広いと私は思うのですが、少年院職員の手にある少年に対して矯正教育はいたしておらない、矯正教育関係のないものだというようなことが少年院法に出てくるということは、これは大へんな問題だと私は思うのです。私は何もやかましく論じてどうというのではないのですが、あとでいろいろ疑いが起ってはいかぬと思いますから、さらに念を押してお尋ねをしておくのです。そこを一つ明確に願いたい。
  94. 中尾文策

    中尾政府委員 つかまえたというだけの状態では、そして連れ戻しに着手しておるというだけの状態では本来の意味矯正教育とは申せませんが、しかし矯正教育と密接不可分の関係を持っておる意味で、非常に広い意味では矯正教育ということは言えましょう。
  95. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 私がそこを熱心にお尋ねするのは、八条の二のあとで出て参りますけがをしたりあるいはまた死亡したりするというようなことは、少年少年院を逃走して、連れ戻されるというような機会にそういう問題が相当起ると思うから、それについては何らの手当金を与えないのだということであっては、せっかくこの第八条の二を設けて少年院法改正されようとする法務当局のお考えとはどうもかけ離れた結果になるのではないか、そこを心配するものですから特にお尋ねをしておるわけです。
  96. 中尾文策

    中尾政府委員 手当金の問題でございますが、職員が何か故意過失によって少年に傷を与えたということによる国家賠償的な問題とは無関係でございまして、ただ中で本人が矯正教育を受けるときにこういう災害があったときに見舞金をやるということでございまして、私たちの方では矯正教育を受けるに際してということは、ほとんどすべての場合が職業補導を受けるときにこういうけがをしたり死んだりした場合というふうなことを考えております。
  97. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 もしそういうことをお考えになってこの第八条の二ができておるのでしたら、もっとその点を明確にしておかないと、私は将来手当金をめぐっていろいろと紛争が起ると思うのです。私、この条文をすらっと読みますと、そして少年院法精神から考えてみますと、少年院の実力支配のもとにある、すなわち連れ戻しの場合で申しますと、連れ戻しに着手した、あるいは連戻状を執行した、そういうときには、もうすでにこれは「矯正教育を受けるに際して」という、この中に入るべきである、こういうふうに見るのがすなおな見方だ、こう思うのです。そしてそういうふうな場合に、連れ戻し行為中に、けがをしたり、あるいは死亡したりするようなことが起る危険性が非常に私は多いと思うのです。それはもちろん国家賠償法等によるような、その職員に責任がなくても、たとえば自殺を企てようとするものもあるでしょう。あるいはまたその連れ戻しの執行に当って、さらに逃走しようとして、その瞬間にけがをするような場合もあるでしょう。少年院矯正教育をなす手段として、この連れ戻しということがきわめて重要な問題だと私は思うのです。その重要な問題を抜きにして、しかもこういうけがをするなり、死亡したりするようなことの起りやすいその問題を取りのぞいておいて、ただ少年院の中で日常生活をやっておる間に起ったものだけを問題とするということであると、法律条文を、そこをよほど明確にすべきである。しかしそういうふうにして範囲を狭めるということは、私は少年院法改正しようとされるきわめてりっぱな法務当局のお考え目的の大半は、そこで失われるのじゃないかと思うから、今おっしゃっておるような意味でなくして、むしろ私は先ほど来申し上げたような趣旨において、この連れ戻し行為に関して起った負傷なり死亡なりについてもやはり同様の手当支給すべきものであるという態度を明確にされた方が賢明だと思うのですが、所見をお伺いいたします。
  98. 中尾文策

    中尾政府委員 ごもっともでありまして、私たちといたしましても、少年少年院に入っておる、あるいは少年院に入ることに関連いたしましてそういう災害がありましたときには、できるだけ手当をしてやるということは、これは理想ではありますが、しかし予算の関係もございまして、この「矯正教育を受ける」という言葉を使うことにつきましても、非常に大蔵省あたりでは議論がありまして、これは解釈をきわめて狭くするようにということの了解で、やっと予算をもらったようなわけでありまして、少くとも現在のところは、やはり現在刑務所受刑者が作業によってこういう災害を受けたときに手当金をもらっているというような趣旨に——多少これは少年の場合は広く解釈すると申しますか、やはり根本考え方といたしましては、その程度のことから始めていきまして、将来いろいろ予算の点でだんだん私たちの希望が通るようになりましたら広げていきたいと考えております。
  99. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 そこのところは予算関係でえらく法務当局は消極的な態度をおとりのようですが、こういうことは職員が職務執行ということをよほど注意することになると私は思うのです。予算がない、あやまちを犯しては、これは国の財政の上からも大へんだ——そう多額のものじゃないと思うのですけれども、大へんだと思うくらいな気持をもって、そして連れ戻し行為中も、こういうふうな負傷をさしたり、あるいは死亡をさしたりすることのないような、反省、自粛した職務の執行をむしろ奨励することにもなると思うのです。そう大したことじゃないと思うから、そこははっきりとした態度をおとりになることが賢明である、こう思いますから、いま一度そこのところは十分御研究を願いたいと思うのであります。そこで今度は第二項の「死亡した者の遺族」この遺族というのはどういう範囲なんですか。
  100. 中尾文策

    中尾政府委員 ただいま考えておりますところは、配偶者、子、父母、なお生計を一にしているような祖父母というようなことにいたしたいと考えております。
  101. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 その遺族については、法務省令ではっきりされるのですか、あるいはされないのですか。
  102. 中尾文策

    中尾政府委員 そういうふうにいたすつもりでおります。
  103. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 先ほどお尋ねいたしまして、はっきりしないでそのままに進んだ問題は、少年院の長から連れ戻しについて援助を求められた警察官が、連れ戻し行為を実行する、そしてそれに着手した。その対象となっている少年在院者であるのかないのか、まだはっきりしなかったのですが、そこはどうです。
  104. 中尾文策

    中尾政府委員 私の考え違いでありましたので、前のことは取り消しますが、これは少年院職員が連れ戻しに着手いたしました場合でも、やはり少年院に帰って来る者は在院者とは認められないということでありまして、従って在院者でないということにつきましては、警察官の場合も、少年院職員の場合も同様に考えております。
  105. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 そこで第十四条の二の「在院者が逃走、暴行又は自殺をするおそれがある場合において、これを防止するためやむを得ないときは、手錠を使用することができる。」そうすると、逃走をして連れ戻し行為実行中は、この第十四条の二の運用に当ってはどういう関係になるのですか。
  106. 中尾文策

    中尾政府委員 これは在院者ということにはなりませんが、しかし実力を行使しなければならぬということの中に含まれる、必要なやむを得ない行為であると存じております。
  107. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 そうすると、在院者という言葉は使っているけれども、この逃走して連れ戻しをする対象になっている少年に対して、連戻状を執行したり、あるいは四十八時間経過しないその前において事実上連れ戻しをするというその間において逃走のおそれがあるとか、暴行、自殺のおそれがあるというような場合、そしてそれを防止するにやむを得ない、こう認めて、その場合には手錠を使用するというお考えなんですか。もしそういう考えであれば、在院者という言葉では先ほどの御説明は適当でないんじゃないかと思うのですが、そこはどうなんですか。
  108. 中尾文策

    中尾政府委員 やはり実力に訴えても本人を連れて来るということになりますと、もちろんその手段、方法につきましては、これは健全な常識で判断しなければなりませんが、やむを得ない最小限度の手段というものは講じられると思います。その手段の一つといたしまして、手錠を使用することもやむを得ないと思います。
  109. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 私のお尋ねするのは、在院者という観念が、手当を出す場合の在院者ということと、それから手錠を使用するときの在院者ということと違っておってはいかぬから、そこをはっきりお尋ねするのです。同じ法律でもって、手当を出すときには、それは在院者でないといい、それから手錠をはめるときは、それは在院者、こういったのでは、法律というものに対する信用が非常に薄らいでくるから、手当を出すときの在院者と、十四条の二の、手錠を使用するときの在院者ということを明確にしておかなければならぬ。ところが、前の方は手当は出さない。しかし後の方は、まあ必要なんだから、これは在院者として手錠を使うぞといったのではいかぬから、そこのところの見解をもう一度はっきりお答え願いたい。
  110. 中尾文策

    中尾政府委員 この十四条の二というのは、連れ戻しの場合の強制力の使用方法というものとは無関係なものであります。かりに手錠を使うことがありましても、十四条の二によって使うのではなくして、実力行使の中に含まれた、必要なやむを得ない手段というふうに考えております。
  111. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 この連れ戻しには全然関係がない、こういうお考えなんですね。
  112. 中尾文策

    中尾政府委員 さようでございます。
  113. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 そういたしますと、この連戻状の執行ということは、私まだよく規則を研究していないのですが、手錠をはめたりなどするようなこと、逮捕するようなこと、そういうことはどういうふうになるわけですか。そこをちょっと御説明願いたい。
  114. 中尾文策

    中尾政府委員 本人が抵抗をいたしますと、やはりそれに対してある程度の実力を使わなければなりませんので、場合によっては肉体的な圧力を加える、肉体の自由を奪うというようなことは、やはり連れ戻しというものの性質上やむを得ないだろうと思います。従って手錠あるいは手錠に似たようなものを使うというような場合も出てくると思います。
  115. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 その連戻状を執行する場合には手錠を使ってもいいという法律上の根拠は、どこから出てくるのですか。
  116. 中尾文策

    中尾政府委員 これは連れ戻しということの性質の中に含まれておると思います。
  117. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 これは少年法の同行に関する規定が準用されておるのですが、大体連戻状、同行状というのは同じような性質だと思うのです。そういたしますと、名前は非常にやさしい名前ですけれども、実際やることは、逮捕状で逮捕したときのやり方と同じだ、こういうことになると思うのですが、実際そうなんですか。
  118. 中尾文策

    中尾政府委員 できるだけそういうような殺風景な、殺伐な事情にならないように注意はしておりますが、どうしても本人が抵抗するというようなことになりますと、おのずからそういう場合も生ずることになると思います。
  119. 高橋禎一

    ○高橋(禎)委員 これはあまり長く押し問答したくないのですが、その点も私はいま少し研究していただいて、在院者であった者が逃走したというようなときに、それを連れ戻すために必要やむを得ないときには手錠でも使用できるんだというふうにはっきりして、しかも手錠を使用するときには、いろいろあとに出て参りますような慎重な態度でやらなければならぬということを明確にしておかないと、ただ性質上そういうことができるんだということに放置しておいて——しかも少年院職員の方々等は非常におとなしい方で、比較的国民も安心すると思うのですが、警察官援助を求めるその警察官というのは、非常にりっぱな方もありますけれども、間々当委員会において問題になる人権じゅうりん等の疑いのある行動が相当あるのです。そういうときに、いわゆる連戻状の本質から、これは手錠を使ってもいいんだというようなことだけを教えておいて、その使い方等については何も明確にしておかないと、ただ平素の警察官の、おとなの犯罪者を取り扱うと同じような状態でやる危険が非常にあると思うのですが、それらの点を法律において明確にしておくことが正しいのではないか、この点についての所見をお伺いいたす次第であります。そしてその他の問題については、後日いま一度お尋ねをいたしたい、こう考えております。
  120. 中尾文策

    中尾政府委員 なおよくこの問題につきましては研究をしてみたいと思います。
  121. 三田村武夫

    ○三田村委員 関連して。今の高橋委員との質疑応答の内容を伺っておって気がついた——というとおかしいんですが、こういう関係になるんじゃないですか。十四条の二、これは在院者に関する規定ですね。つまり逃亡した者に適用する規定でないということをはっきり説明されました。私もそうだと思いますが、その場合逃亡した者に連戻状をもって連れ戻し行為を実際に担当する警察官の職務行為、これは強制力を持つことはもちろんでありますが、その場合手錠をはめるとか、十四条の二に出ている逃走、暴行または自殺という、こういう事案のあった場合の扱いというものは、これは少年法と別個の問題になりはしないか、外に出てしまっているんですから。局長の御答弁を聞いておりますと、中にいる者はその在院者であって、逃亡してしまうと在院者じゃないのです。それで院に戻してくる場合も連れ戻し行為に強制力を用いる場合には連戻状がいるんですが、その他の行為には一般普通人と同じことで、もう一ぺん犯罪を犯した場合に、これはもう一ぺん家庭裁判に持っていくかどうか別にしまして、その場合は一般人と同じ扱いになってしまうのでないですか。
  122. 中尾文策

    中尾政府委員 それはなるほど一応社会に出てはおりますが、しかし本人の身分の関係から申しますれば、少年院に収容するという裁判所の判決を受けております。本人が勝手に逃げたというような状態でございますから、そういう点では、やはり少年院にどうしても法律上連れてこなければならないという関係にあるのでありまして、やはり普通人とはその点で違ってくると思います。
  123. 三田村武夫

    ○三田村委員 それはそうですが、高橋委員の質問と同じ趣旨から私は申し上げるのです。この逃亡者というものは、これは少年院に置かなければならない立場のものです。そうすると強制行為の継続中なんです。つまり別な言い方をすると、これもまた在院者なんです。たまたま少年院という建物の中にいなくなっただけで、在院者には違いない。在院者だから連れ戻してくる。今の死んだ場合、あるいはけがした場合の手当金とかいう問題について、局長はああいう御答弁をなさった、その点わかりますが、法律一つの決定があって、どこそこの少年院に観護している、収容しているというのは、あくまでも在院者なんです。逃亡した者は、在院という事実が中断しただけで、法律上の性格は在院者に違いない。そこを局長は混同して答弁されるものだから、聞いているとこんがらかってくる。出た者は在院者でないとおっしゃるなら普通人と一般だ、普通人と違わないじゃないかと、こう申し上げると、いやそうじゃない、それは法律の強制によって院に置かれたものだから、その性格は在院者であると、こういう答弁になってしまうんです。初めの手当の問題と、後段に説明されました法律上の身分関係とは別なんです。その点一つ整理して、あとで御懇談申し上げる機会があると思いますから御研究願っておきたいと思います。
  124. 中尾文策

    中尾政府委員 その法律少年院に入れておかなければならない状態にある者を在院者というふうに言った方がいいかどうか、そういうふうに言えるかどうかという問題、これは大事な問題でございますので、なお研究いたしたいと思います。
  125. 世耕弘一

    ○世耕委員長 他に質疑はありませんか。——なければ本案についての審議はまだ少し残っているように思われますから、その前に一応日を改めて御懇談願って最後の審議をして結論を出したい。かように考えております。特に本案少年保護という大きな目標のために立案された重要な法案でもありますので、ただに法務省ばかりではなしに、厚生省並びに文部省の方面からも一応意見をただす必要があるのではないか、かように考えまして、いずれ御懇談を願って慎重に審議をいたしたいと存じます。  本日はこれをもって散会いたします。次会は公報をもってお知らせいたします。     午後一時二十二分散会