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1955-05-09 第22回国会 衆議院 法務委員会 第6号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月九日(月曜日)     午前十時四十九分開議  出席委員    委員長 世耕 弘一君    理事 山本 粂吉君 理事 三田村武夫君    理事 馬場 元治君 理事 古屋 貞雄君    理事 田中幾三郎君       椎名  隆君    長井  源君       林   博君    生田 宏一君       船田  中君    横川 重次君       猪俣 浩三君    神近 市子君       細迫 兼光君    淺沼稻次郎君       佐竹 晴記君    細田 綱吉君       志賀 義雄君  出席国務大臣         法 務 大 臣 花村 四郎君         国 務 大 臣 大麻 唯男君  出席政府委員         警察庁次長   石井 栄三君         警  視  長         (警察庁刑事部         長)      中川 董治君         検     事         (刑事局長)  井本 台吉君         法務事務官         (人権擁護局         長)      戸田 正直君         公安調査庁長官 藤井五一郎君  委員外出席者         参  考  人         (警視総監)  江口見登留君         専  門  員 村  教三君         専  門  員 小木 貞一君     ————————————— 五月九日  委員北村徳太郎君及び八百板正君辞任につき、  その補欠として今松治郎君及び細迫兼光君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  参考人招致に関する件  人権擁護に関する件     —————————————
  2. 世耕弘一

    ○世耕委員長 これより法務委員会を開会いたします。  本日は人権擁護に関して調査を進めることといたしますが、議事に入るに先だちまして、参考人の決定についてお諮りいたします。本問題について警視総監江口見登留君を参考人とすそに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 世耕弘一

    ○世耕委員長 御異議ないようでございますれば、さよう決定いたします。  それでは通告順によりまして質疑を許可いたします。古屋貞雄君。
  4. 古屋貞雄

    古屋委員 われわれ国民は、憲法によって基本的人権尊重されることは明らかになっておりますので、しかも特に新憲法におきましては、個人の人権尊重特段に具体的に列記されまして、一段の尊厳を現実に事実の上に保護するということを国民に約束されておるのでありますが、最近の世相から考えましてまことに人権がじゅうりんせられておる。しかもそれは人権を保護すべき立場における官僚の手によって著しく人権がじゅうりんされておる、かような関係がございまして、その点について本委員会におきまして特に具体的な事実をあげて大麻国務大臣に御質問申し上げたいのですが、この前の国会において逮捕状並び逮捕請求をいたす場合に、司法警察官がこの規定を乱用いたしまして、著しく人権をじゅうりんしておるというようなことが相当議論になりました。本委員会におきましてもさような点について、逮捕状請求等につきましては検事の承認あるいは検事の手を経て履行すべきものであるというようなことが、相当議論がありましたけれども、当時特段な条件をつけて司法警察官にも請求することができるように改正をされまして、刑事訴訟法の百九十九条の第二項の中に特に「被疑者が罪を犯したことを疑うに足る相当な理由があると認めるときは、検察官又は司法警察員の」「請求により、前項の逮捕状を発する。但し」云々と書いて、その中に「(警察官たる司法警察員については、国家公安委員会又は都道府県公安委員会が指定する警部以上の者に限る。)」こういうことに改められたのでございますが、現実にかような事実が行われていないので、かような事実が行われておるかどうかを大麻国務大臣からお答え願いたいと思います。
  5. 大麻唯男

    大麻国務大臣 ただいまのお尋ねは、法にきまっております通りに、忠実にこれを実行いたしておるのであります。
  6. 古屋貞雄

    古屋委員 実は数日前の大阪警察署に行われた事件でございますが、捜索令状請求について巡査請求をされ、その巡査自身が疎明書調書を偽造しておるということの事実が新聞に報ぜられておるのでございますが、かような事実についてかような事実があったかどうか。それは具体的に申しますと、大阪大正署が、捜査令状要求に対して富川という巡査が第三者の参考人調書を偽造しておる、こういうことで畠山判事がこれを発見されましてそのまま却下された事件一つ。さらに大阪生野警察署捜査係杉本正太郎巡査が、やはり逮捕状請求につきまして添付いたしました捜査明書が、自分みずからが偽造したものであるということが明らかになった事実がある、かような事実については、かような事実があったかどうか、この点を承わりたいと思います。
  7. 大麻唯男

    大麻国務大臣 お答えを申し上げます。御指摘のようなことが遺憾ながらあったようでございます。令状検事で出しておりますけれども、ある巡査が間違いを犯しまして非常に不都合なことをやったようであります。そういう事実はあります。
  8. 古屋貞雄

    古屋委員 そうしますと、先刻国務大臣が実際に改正された刑事訴訟法百九十九条通り履行すると言われたが、さような点についてただいま御承認願ったようにさような手続きをしなかった。しかも二つとも巡査逮捕状請求手続きをしておる。こういうことになりますと明らかに百九十九条に違反した手続をさせておる。これに対して、監督立場からどういう責任をとるか、一つ答弁を願いたい。
  9. 大麻唯男

    大麻国務大臣 こまかい事実の点については、恐縮でございますが詳しい政府委員が参っておりますから、それから御説明を申し上げさせたいと思います。
  10. 古屋貞雄

    古屋委員 私はただ手続上の問題の御質問をしておるのでなくして、監督の地位に立っております大臣が、かような責任をどう考えるかという、責任の態度を承わりたいのであります。なおこの二つだけではないのでありまして、日常実務家としてかような関係に携わっております私ども経験によりますと、ほとんどこれが行われておるという関係になっておる。しかもそれが巡査部長くらいの方たちが、特段な自己の利害や感情ためにこういう手続をされるという事実があるのです。これは私は非常に重大な案件であると思う。と申しますのは、かようなことをされますならばわれわれ国民には自由も人権もほとんどないわけです。巡査部長巡査ぐらいが勝手に自分感情でこういう疎明書を偽造して裁判所に持っていく、幸いに本件につきましては非常な何と中しましょうか、経験を積んだ係りの畠山判事が、眼光紙背に徹する立場から発見をいたしたからよいようなものでありますが、発見をしなかった場合においては市大な問題になります。われわれは安閑として国民生活ができないような、むしろ一般社会における世相からくるいろいろの刑事事案よりももっと大きな脅威を私どもは感ずるわけです。従いましてこれに対する総元締めである、監督をなさる大麻大臣は、これに対してどういうお考えを持っておるか、これを承わっておかないと、国民のわれわれといたしましては——われわれの人権を守られない。さような点から一つ明確な御答弁を伺いたいと思います。
  11. 大麻唯男

    大麻国務大臣 仰せ通りでありまして、全く不都合千万なことであると考えております。これはまさに現在においてはあり得べからざるような不都合であると考えております。それで厳重に処置をいたしますとともに、再び起らないように万全を期さなければならぬと思っておるのでございます。そういう不都合な処置をいたした者に対しましてあいまいな処置をしておくということは、仰せ通り官紀をみだるもとでありますとともに、私どもも、言葉は適当でないかもしれませんけれども、そういうことに対しては一種の非常な憤りを感じます。それでこれを厳重に処分をして、再びかようなことが、わが警察界から跡を断つように処置したいと考えておる次第でございます。
  12. 古屋貞雄

    古屋委員 大臣の御決意を承わりまして、そのお言葉は全部御信用申し上げるわけにいきませんが、さような御決意でこれに対する是正をしていただきたい、かように感じるのでございますが、一体こういうような事実の起きまする原因は、警察官そのものに対して論功行賞と申しましょうか、功を急ぐため警察官がかような無理をされるという点に一つ原因があると思うし、もう一つ感情でかようなことをやるという場合もあるだろうし、重大な問題でありますが、実務的にかような事実について、その原因並びに経過などについて御調査されておる事実があるかどうか、ございましたらその御報告を願いたいと思います。
  13. 大麻唯男

    大麻国務大臣 厳重にやっております。ただいままでいたしております調査処置方法等につきまして、もしお許しがあればここに詳しい政府委員が参っておりますからお聞き取りを願っておきたいと思います。
  14. 古屋貞雄

    古屋委員 なおこれは細迫委員からも申し出があると思うのですが、これを同じような調書偽造が、大分と心得ておるのですが、検察庁の検事がこれをやっておる、こういうような報告を受けておったのですが、その点を一つ明らかに調査をして、当委員会へ御報告を願いたいと思います。この点は具体的に何年何月何日に何という検事がかような参考調書を偽造したということは明確になっておりませんが、少くとも疎明書を偽造したのだ、こういう事件が後ほど細迫委員からも申し出があると思いますが、刑事事件捜査過程においてやられて公判に回りまして、公判で弁護士から追及されて明らかになったという事件らしいのですが、この点も調査をされまして委員会に御報告を願いたい、これは要望いたします。  それからもう一つお尋ねしたいのですが、被疑者逮捕いたしまする場合に、被疑者が果してその本人であるかどうか確認をいたした後に逮捕状をもって逮捕すべきだ、かように私どもはかたく信じておるわけなんですが、これも新聞で御承知通り北海道警察に起りました白鳥警部殺人事件被疑者として、大学生でありまする植野光彦だと称して光彦にあらざる者を十数日勾留をしておったという事件、これは本人でないということが本人友人並びに親戚の者、あるいは父親などから確認をされまして釈放されておるのですが、これをただ釈放しただけでこのまま放任するということになりますと、これは重大問題だと思うのですが、かような捜査について特定な白鳥警部殺人被疑者として逮捕状を出しておる。本人認定をはっきりやらずに他の者を被疑者なりと認定してやられておる。かような関係はこれまことに国民人権をじゅうりんすることはなはだしいものだと信じますが、白鳥事件被疑者として逮捕されました元北大生植野光彦、これに対する十数日間の勾留をいたしまして先月の二十八日に釈放が行われておるのですが、この事実についてはいかなる理由で、いかなる事情に基いてかようなことになったのか、かような事実があったかどうか、まず御答弁願って、ございましたらばどういう事情で、どういう関係においてかような経過になったかの御説明を願いたいと思います。これは大臣でなくてもけっこうでございます。
  15. 石井栄三

    石井政府委員 私からかわってお答えいたします。ただいま御指摘の、かねて指名手配中の植野なる人物に間違いないと思われる者が四月十四日に東京都下において逮捕されたのでありますが、ただいまお話の通り捜査当局といたしましては、被疑者逮捕に当りましてはその本人に間違いないという確信のもとに逮捕をするのでなければならぬことは、申すまでもないところでございます。警察といたしましては、この植野なる人物はかねて手配の写真に照し合せまして、その人相、特徴等全く合致いたしておりますので、本人に間違いはないという確信のもとに逮捕をいたしたのであります。逮捕と同時に植野なる人物友人、さらには面識のある者数名にいわゆる面通しをしていただきました結果、本人に間違いはないということでありましたので、これを北海道捜査本部の方に移送いたしたのであります。札幌に到着後におきましても、地元において本人をよく知っておるという者にさらに二、三面通しをしていただきました結果、本人に相違ないという証言を得まして、さらに警察といたしましては真実を確かめるべくあらゆる努力を重ねて参ったのでありますが、日がたつうちに一部の人からどうも本人によく似ておるようであるが、若干違うような点もある、あるいは別人ではあるまいかという説をなす者が一、二出て参ったのであります。そこでさらに警察といたしましては、あらゆる角度から慎重検討を加えました結果、最終的には植野と称する人物の両親の面通しもしていただきました。また身体検査令状もとりまして身体検査もいたして、身体上の特徴等についての検討も十分に加えたのであります。その結果遺憾ながら本人でない、間違いであったということを発見するに至りまして、四月二十八日に釈放をいたしたのであります。植野らしき人物に対してまことに申しわけない御迷惑をかけたということに対しましては、衷心より恐縮に存じておる次第であります。私どもといだしましては、こうした間違いを起しまして関係者に不当に御迷惑をおかけするということは全く申しわけないことでありまして、人権尊重すべきことは申すまでもないことでありますので、そうした間違いの絶無を期すべく最善を尽したいと思っておるのでありますが、今回の場合弁解がましく聞えるかとも思いますが、終始本人黙秘をされた、本人氏名住居も一言も触れられなかったということは、真実発見することの時間的に手間取った一つ原因になっておるのではないかと思うのであります。本人氏名住居等をお漏らしいただきますならば、もう少し早くその間違いであったことを発見し得だのではなかろうか、かように思っておるのでありまして、その点御了承を願いたいと思うのであります。要するに本人でない者を間違って逮捕をしまして十数日間勾留をいたしましたということは、何と申しましても申しわけないことでございますので、そういうことの今後再び起らないように捜査に当りましては慎重の上にもさらに慎重を期するという心がまえでおることを申し上げまして、御了解得たいと思うのでございます。
  16. 古屋貞雄

    古屋委員 ただいま人違いを受けた本人黙秘権を行使しておったのでということを申しましたが、これは国民に与えられた権利でありまして、黙秘権を行使するのは当然であります。それを前提として捜査をされるのが司法警察官の職責だと思う。さような弁解は私どもまことに受け取れないのでありますが、一体黙秘権を行使されたかり間違ったという理由で、その責任を回避するというようなお考えがあるのかどうか、国民は当然に黙秘権行使権利を持っております。その権利行使圧したのですから、それを前提として被疑者認定をはっきりいたしましてからでないと逮捕状要求ができないわけであります。ここに私は著しく人権が無視されておるという一つ前提が生まれて参ると思います。かような点についてどういうぐあいに——一体ほかの国民黙秘権を行使した場合にも、やはりそういうことによって人違いであったからということで弁明をなさるお気持があるかどうか、私はむしろさような点に触れずに非常に失敗であったということなら承認されるのですが、さようなことを一つ弁明理由にされておるということならば、反省がまだ行われていないし、監督官立場から厳重にこれか今後再び繰り返されない保障がなければ、国民生活というものは全たく安定しないわけです。むしろ治安を保護すべき警察が、進んで国民に不安を与えるという結果になりまして、私は単なる弁明で済むべき事件じゃないと思う。一体国民黙秘権があるのかないのか、あることを前提として御答弁なさったのかどうか、その点どうでしょうか。
  17. 石井栄三

    石井政府委員 ただいま私の申し上げましたのは、本人が終始黙秘されたために、私ども真実発見がそれだけ遅れたということを申し上げたのでありまして、黙秘権の認められておりますことは十分承知をいたしております。またそれの尊重さるべきことも十分に承知をいたしておるのでありますが、真実発見するのに御協力をいただ、意味において、本人自分はかくかくの人物で、かくかくに住まうものであるということをお漏らしいただいたならば、真実発見がより早くできたであろうということを希望として申し上げたのでありまして、そのことによって私どもの起しました間違い、誤りの責を免れようという気持で申し上げたのではないことを御了承願いたいと思います。
  18. 古屋貞雄

    古屋委員 私はそういう弁明を承わりたくなかったのです。しからば逮捕状請求をせなんだらいいじゃないか、冷静に人権尊重する立場から考えますならば、逮捕状請求をなさらずに、さらに認定に対する捜査を進められて、確定して後にすべきだったと思う、これが捜査の順序だと私は思います。白鳥警部事件なるがゆえに、何とかしてでっち上げなければならぬというところに、われわれ国民人権かいつもじゅうりんされておるわけであります。人権問題の大部分が、むしろ人権を保護すべき方の立場に多いということを統計から考えますときに、私は非常にゆゆしき問題だと考えるのです。この点についても大麻国務大臣はどうお考えになっているか、決意を承わりたいと思います。
  19. 大麻唯男

    大麻国務大臣 今仰せ通りでございます。非常に悪いと思っておるのであります。何といっても、どういう理由であったにしましても、間違ったのでございますから、これはその御本人に対しておわびを申し上げなければならぬし、社会に対しましてもおわびをしなければならぬ事柄でございます。それが黙秘権がどうとか、こうとかということも、それはいきさつをただ正直に申し上げただけのことでございましょうが、それだからこっちの間違いを起したことが何だか理屈づけられる、そんなものじゃないだろうと考えております。これはもうきれいにおわびを申し上げて、再び間違いのないように当委員会を通じて私はおわびを申し上げたいと思います。また御本人に対しましてもおわびをしなければならぬわけであります。本人だけじゃありません、社会公共一般に対してまことに済まぬことをしてしまった、こういうふうにおわびを申し上げておく次第であります。政府委員もそういうことを申し上げておるわけでございますけれども、ただ正直にありのままを申し上げたものでありますから、ちょっとそれでもって責任のがれをするようにお聞えになったかもしれませんが、それは本人の御意思でない、これは私がおわびを申し上げます。
  20. 古屋貞雄

    古屋委員 大臣のお気持はわかるのですが、しかし私の申し上げていることは、そんな簡単な答弁だけで済む事件ではないと思うのです。逮捕状を出されたために、それがため人命を失った事件がたくさんあるわけであります。身に覚えのないものでありますから逮捕状を出されましてもこれが証明をいたしまして、身のあかしを立てるべく国民立場から考えて参りますならば、今のような軽率に逮捕状を出させるために、それがために若い人たちが驚きまして、身を投じて死んでいるような事件があるのです。生れて初めて警察に引っぱり出され、刑事からかれこれいじめられる、それに耐えかねて死んだ事件がある。おそらくあとから人権問題で他の委員からも本日御質問がたくさんあると思いますが、さような事件についても司法警察官方たちが何でもないとお考えになったことが、多くの人命を失う原因を作っているというようなことがあるわけです。これは重大な問題と私は考えておるわけです。  そこで、ただいま大臣から御答弁がございまして、申訳ないということでありますが、進んで今度はかようしかじかに具体的に改めるんだという御方針があるはずであります。それを私は承わりたい。  もう一つ答弁をいただくことがあります。これは石井警察庁次長でけっこうでございますが、大阪におきまする生野署の問題と大正署の問題、これらの責任者を今どう処罰をしておるか、これは大阪の朝日新聞を拝見いたしますと、関係者が寄りまして座談会をいたしておるのが新聞に載っておりますが、それを拝見いたしますといろいろの意見がこれに載っております。従ってこれに対する責任を現在どういうぐあいに具体的に追究されておるか。それからさようなことが再び行われないように、国民が安心して警察を信用することができまするような処置を、どう具体的におとりになっておるか、なろうとするならばどういうようにおとりになるか明確に御答弁を願いたいと存じます。繰り返して申しますが、生野署杉本正太郎巡査大正署宮川巡査、この二人は係判事から偽造調書であることを発見され、逮捕請求を却下されております。これは明らかな事実であります。その前もかような事実があったということを畠山判事佐々木判事から新聞に発表されております。従いまして、たまたまこの二つが具体的な事実となって行われたのですが、その前にも却下されて、そのまま新聞にも載らずに不問にされたことも明らかな事実になっております。従いまして、かような事実に対して、どういう御処置をおとりになっているか、今後絶対にかようなことが行われないというような方法を具体的におとりになっているかどうか、おとりになっておりますならば御発表を願いたい。これは植野に対する北海道におきます警察署処置に対しても同様でございますので、その御答弁を願いたいと思います。
  21. 石井栄三

    石井政府委員 大阪に発生いたしました不祥事件につきましては、先ほど大臣からお答え申し上げました通り、全く不都合きわまることでございまして、私どもとしまして衷心より恐縮に存じております。捜索差し押え許可状請求に当ってにせ調書を作るというがごときは、その行為自体がすでに刑罰法規に触れる行為でもるのみならず、警察捜査手続の書類がそういうふうに軽率になされたということは、警察に対する国民の信頼を失墜することはなはだしいものでありまして、まことに遺憾しごくに存じておるところでございます。大阪市警察本部におきましては、今回起りましたこの不祥事案につきまして、第一回の事案である大正署の問題につきましては、当面の責任者である宮川巡査に対しまして減給、自分の二、一カ月という処分をいたしておのでありますが、この処分は私ども考えるところでは、はなはだ軽きに失下ると思うのであります。事案重大性にかんがみますならば、もっと重い懲戒処分に値いするものではなかろうかと考えておるのであります。第二回り事案につきましては、大阪市警当局におきましては、事の重大性にかんがみまして、目下慎重事実の真相を糾明しまして処分方針を決定したい、こういうふうに申しておるのでありまして、現在のところまだどの程度の懲戒処分をいたしたか報告に接していない状況でありますが、おそらく相次いでこうした不祥事案が起ったということに対しましては、大阪市警の幹部といたしましても、その事の重大性を十分に認識しておることと思いますので、その懲戒処分その他の措置につきましては十分徹底した措置をとるものと信じておる次第でございます。  私ども中央当局の者といたしましては、たまたまこうした事案が最近において——大阪市警においてのみ起ったことではありますけれども、そしてまたおそらく全国他府県においてそんなことはあり得ないと常識的には考えるのであります。またそう考えたいのでありますが、不幸にして一カ月余の間に大阪市警管内においてこうしたことが二回も起ったということにかんがみまして、事の重大性にかんがみまして、全国府県に対しましてさっそく大阪のこの二つの事例を参考としまして、他山の石とし、こうした不祥事の絶対に起らないように注意を喚起いたしたのであります。その措置は五月七日付をもちまして措置いたしておるのであります。およそ捜査に当る者といたしましては、あくまで人権尊重を基本的理念といたしまして、厳粛なる気持をもって捜査の公正を期するということを根本の心がまえとしなければならぬことは申すまでもないところでありまして、捜査の便宜のためには手段を選ばないといったような考え方は根本的に排除さるべきものでおると思うのでおります。そうした点を強調いたしまして、あらためてこの際警察の職責の自覚を促し、今後再びこの種の不祥事案を起すことの絶対にないように部下の指導、教養、監督の徹底を期するように通牒を発したような次第でございます。御了承を願いたいと存じます。
  22. 古屋貞雄

    古屋委員 ただいま通牒一片を出してこれが再犯を防ぐというようなお話ですが、こういうことの御調査が行われているでしょうか。私どもの方で調べたのによりますと、警部さんが刑事係の巡査自分の印鑑をまかしておいて、その印鑑を使ってどんどんやっておる。大体私どもの長い経験でございますが、犯罪を捜査するのが非常に優秀であって表彰をされたような刑事さんが、刑事をやめて一般普通人となってから後に、刑事犯人として被疑者として調べられたり処罰を受ける例がたくさんある。私どもはしばしばそういう事実にうち当りますが、優秀な刑事であった人が刑事の地位を離れると、今度は自分の地位が転倒したのか刑事被告人として処罰を受けておる。こういう例が多々あります。これは法規を軽視する一つの習性があるようで、人権に対する考え方が一般のわれわれ国民と違って、普通人以上に人権を擁護尊重する観念を持たなければならぬのに、それを逆に軽視するような弊害が多い。従って地位が刑事さんである場合にはそのままで通りますけれども刑事の地位を離れた場合に、あべこべに自分刑罰法規にひっかかりまして処罰されておる。こういう例が多い。こういう観点から考えますと、人を縛ることを日常茶飯事のごとく考えておる刑事さんたちが法の尊厳、人権尊重に対して非常に軽視しておるのじゃないか。こういうことについて第一線に働いておるこういう刑事並びに司法係の方たちに対しては、特別な反省であるとか教育とか指導ということをおやりになっておるのかどうか。それをやらないで、人を縛ることを茶飯事のごとく考えられて簡単にやるということの弊害が、ここに本件のごとき問題を生む一つ原因になったのではないかと思うのであります。従いましてさような方面の反省並びに教育指導を特別に司法警察官についてはやられておるかどうか、この点どうでしょう。
  23. 石井栄三

    石井政府委員 ただいま御指摘の点はまことに同感でございまして、警察官の教養はひとり刑事捜査に当る者のみならず、全警察官に対しましてきわめて重要なこととしまして、力を入れて、あらゆる機会にあらゆる方法をもちまして教養の徹底を期しておるのでもります。学校教養あるいは日常の職場を通じての一般教養の両面を通じまして、あらゆる方途を講じて教養の徹底をはかっておるのであります。学校教養の体系ばここであらためて申し上げるまでもなく、昔に比べますならば、現在の教養機構制度がきわめて整備されて参っておるこきは御承知をいただいておると思うのであります。特に捜査に当る者の教養につきましては、そうした学校におきまして、あるいは刑事の特別参加的な教養等にも重点の一つを置きましてやっておりますことはもちろんのこと、平素幹部が常に部下の指導に当るに際しまして、人権尊重その他捜査に当る者の基本的心がまえにつきましては、機会あるごとに強調徹底をはかっておるのであります。にもかかわらず数多い警察官の中にこうした不祥の事件を起す者がいまだに跡を断たないということは、まことに申しわけのないことであり、また教養の徹底しないということを私どもは反省しなければならぬかと思っておるのでありまして、今後ともさらに一そう力を入れまして、そうした点の教養の徹底をはかりまして、間違いの再び起らないように努めて参りたい、かように存じます。
  24. 古屋貞雄

    古屋委員 大麻国務大臣にこれは要望でございますが、私ども刑事訴訟法の百九十九条の改正をいたしますときに、特に司法警察官中公安委員会において指定した警部でなければならない、こういうようなことをいたしましたのは、本日御質問申し上げたような弊害が従来ございまして、それを繰り返されては困るということで、これは当委員会では相当論議をされて改正された法律なんです。従いまして私どもが心配したことが如実にここに事実となって現われて参りました。かような事情がございまするから、先ほどまことに申しわけない、再びかようなことを繰り返さぬよう注意するというようなお話がございましたが、この点については、一つかようなことが行われないような万全の処置をおとり願いたいことを要望申し上げます。  それからこれは井本刑事局長がいらっしゃるのでお尋ねしたいと思うのですが、ただいま御質問申し上げたような両巡査調書偽造事案は、これは刑罰の法規に触れると私は思うのですが、刑事局長のお考えはどうでしょう。
  25. 井本台吉

    ○井本政府委員 事案の内容を具体的に存じておりませんが、聞くような事案でございますれば刑法の虚偽公文書作成行使罪に該当すると存じます。
  26. 古屋貞雄

    古屋委員 やはりこういう事案は判事さんから告発でもなければ捜査はなさらぬものでしょうか。ただいまのような、明らかにこの事実があるということを警察関係の方が御承認になっておる。従いましてただいま御答弁のございましたような刑罰に触れる典型的な事案だと私ども考えておるのです。しかもそれが非常に国民生活に重大な影響を及ぼす事案である。普通の、生活に困ってどろぼうをしたとか、あるいは思想上の関係で、けしからぬからその人間の行動を観察するとかいうような個々の事件と違いまして、国民全体に及ぼす人権じゅうりんの大きな不安を与える問題なんです。従いまして告発がなければ捜査に着手しないのか、それともかような事実が明らかになった以上は捜査に着手なさるかどうか、お尋ねいたしたい。
  27. 井本台吉

    ○井本政府委員 本件の逮捕状発付につきましては検察官が関与しておりませんでしたので、検察庁といたしましては当時その事情を存じなかったのでございます。しかしながら先月二十日に、この事実につきまして大阪警察本部の方から連絡がありまして、この事実を知るに至りましたので、大阪地方検察庁といたしましては、直ちに小村検事を主任といたしまして、この事案を虚偽公文書作成行使事件として捜査手続に出まして、現在その捜査を続行中でございます。もちろん連絡その他によらなくても、かような事実があると検事確信いたしますれば、捜査するのが当然であると存じます。
  28. 古屋貞雄

    古屋委員 さような御答弁を承わりまして、まことに私どもも安心いたしたのでありますが、かような事件については、申し上げるまでもなく厳罰に処していただいて、国民の不安を取り除いていただきたいことを要望申し上げまして私の質問を終ります。
  29. 細迫兼光

    ○細迫委員 さきに古屋委員がちょっと言及をいたしましたが、古屋委員の取り上げましたおもな問題は、警察職員の調書偽造問題でありますが、なお奇怪なことといたしまして、検察官の調書偽造問題があるのであります。これは大分県の菅主事件で、大分地方裁判所で公判が進行中の事件であります。被告はすでに三年近く勾留せられて続行せられております。爆発物取締法の違反事件で、被告は坂本某外数名であります。被告の署名及び拇印が検察官によって偽造行使せられておるという問題であります。これは裁判進行中に裁判長から発見せられたもので、この問題につきまして検察庁の責任あるお方から御答弁を願いたいのでありますが、御調査になっておるでありましょうか。どうでありましょうか。もしいまだしでありまするならば、さっそく御調査に相なって、その当事者の氏名、その他事件の内容を御報告いただきたいと思うのでありますが、いかがでありましょうか。
  30. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ただいまの御質問に対しましてお答え申し上げますが、いまだかかる偽造事件ありとの報告を受けておりませんから、従ってすみやかにこれが報告を求め、しかる上で当委員会に御報告申し上げたいと思います。
  31. 細迫兼光

    ○細迫委員 ではぜひその御報告をお願いいたすことにいたしまして、次には団体等規制令違反の問題で最近長谷川浩という共産党の人が逮捕せられたという問題でありますが、果して長谷川浩君であるかどうかはわかりませんが、この問題について若干の御質問をいたしたいと思うのであります。  まず藤井長官 に一つお尋ねをいたしますが、前の松本三益君たちの事件から想像いたしますと、呼び出しをかけたが出てこない、そこでおそらく出頭しないという罪ありとの嫌疑に基いたものと思われるのであります。松本三益君の事件から想像いたしますると、その出頭を命ぜられましたそもそもの問題は、いわゆる鬼怒川謀議事件と申しますか、鬼怒川におきまして何か集会が行われて、そのことについて取調べがしたいということがきっかけのようでありました。このいわゆる鬼怒川会談の問題なるものは、たしか二十五年の問題です。もう五年前の問題でありますが、いまだ何か御職業柄鬼怒川問題について聴取その他のお取調べの必要が現在ありますでしょうか、お尋ねいたします。
  32. 藤井五一郎

    ○藤井政府委員 お答えいたします。現段階において鬼怒川問題について何ら調査もしておりません。
  33. 細迫兼光

    ○細迫委員 ではもう鬼怒川問題についての調査は必要なしという段階に来ておる、こういう御答弁だと理解してよろしいでありましょうか。
  34. 藤井五一郎

    ○藤井政府委員 暴力主義的破壊活動をなす団体のかっての行動なり、将来の行動については調査いたしますので、それの必要な範囲内において、場合によってはあるいは調査する場合が生ずるかもしれませんが、現在は調査していないように私ども思っております。
  35. 細迫兼光

    ○細迫委員 では今の御答弁は、私が指摘しましたように、今日としてはもはや調査の必要なしと考えておられるものと理解して間違いないようであります。しかるにこの長谷川浩君と目せられる人が逮捕せられておるのでありますが、これは検察官の請求に上る令状によるのではないかと思うのでありますが、検察庁の責任ある方の御答弁を願いたいと思いますし
  36. 井本台吉

    ○井本政府委員 逮捕状請求は、警視庁の係官の方からやっておるように聞いております。
  37. 細迫兼光

    ○細迫委員 それでは果して今の御答弁通りであるかどうか、警視総監答弁願います。
  38. 江口見登留

    ○江口参考人 本件は団体等規正令の第十条第三項によりまして、いわゆる不出頭の容疑によりまして警視庁から検察庁を通じて全国指名手配をしておったものでございます。
  39. 細迫兼光

    ○細迫委員 御承知のように、この問題はすでに同じ案件の問題が裁判進行中でありまして、すでに被告人松本三益君の事件で、第一審におきましては無罪の判決が下されておるのであります。この問題については、警視庁では非常に身を入れておられるようでありますから、十分な御調査がすでにあると思うのであります。松本三益君の問題のみならず、直接この団規令の問題のみならず、同種類の政令三百二十五号違反の問題などにつきましては、すでに最高裁判所においても免訴の判決が出ておることも御承知でありましょう。それは法律上の解釈におきまして最高裁判所と地方裁判所で別な御意見を持たれることは勝手でありますが、しかしおよそ常識はずれのことをなさっては、警察の威信を高めるゆえんではないと思うのです。今藤井長官が言われたようにもう取り調べる必要はない段階に来ておる問題について、五年前のことをほじくりまわして、しかもその実質上の問題は不出頭というたけで——ほかに警察の労をわずらわさなければならぬ問題はたくさんあるはずです。こういうことの全国手配にずいぶんお金を使っておられると思うのでありますが、われわれ納税者としては、はなはだ迷惑です。今別に役にも立たない問題に血道を上げておられる。まだ不出頭罪を糾明して懲罰しなくちゃならぬ、逮捕しなくちゃならぬという御意見をずっと持続せられるつもりでありまするか、どうですか。お答えを願いたい。
  40. 江口見登留

    ○江口参考人 警視庁といたしましては、先ほど中しましたように全国手配をしておきまして、四月二十八日に福岡県警察本部員から被疑者の身柄を引き受けまして慎重に取調べを行なって、翌日の午後五時に東京地検に事件を送致いたしたわけであります。ただいま地検において取調べ中でございますが、松本三益氏事件に関しましては、お話の通り第一審判決では無罪となったのでありますが、これはまだ現在検事控訴中のものであります。今回の捜査に直ちに関係がある、あるいは同様なことになるというようなことは申し上げる段階にないと考えます。
  41. 細迫兼光

    ○細迫委員 検察庁でどういう取扱いをなさるか刮目してその進行を見たいと思うのでありますが、逮捕状には御承知のように期限がありますが、この五年間に一体何回逮捕状請求なさったのでしょうか。
  42. 江口見登留

    ○江口参考人 半年ずつ切りかえて参っておりまして、引続き最近まで参っておるわけであります。
  43. 細迫兼光

    ○細迫委員 これにはずいぶん費用がかかっておると思いますが、一体どれくらい捜査の費用をお使いになっておりますか。
  44. 江口見登留

    ○江口参考人 全国手配中のものでございまして、全国的にどのくらい経費がかかっているかというような計算はちょっと簡単にはできにくいと思いますし、また本件だけを切り離して、この事件について幾らかかったかというような計算は、ちょっとむずかしいのではないかと考えております。
  45. 細迫兼光

    ○細迫委員 花村法務大臣、お聞きのような状況でありますが、藤井長官のお話によりましても、すでに調査の必要はない段階に来ておると認められる状況であります。まだこれは捜査して、起訴して裁判を求めていかなければならぬ性質の問題とお考えになっておるでしょうか、どうでしょうか。これはさきにもちょっと申しましたが鬼怒川というところで会談をしたその内容が聞きたいということで出頭命令を出され、その出頭命令に従わないということで懲役十年以下の不出頭罪というものが成立した、こういうのです。これは私どもは、事情を聞きたいというのが本根じゃなくて、懲役十年以下に該当する犯罪をここにつくり上げて逮捕しようということがねらいであった事件であると思っておる。これは第一審判決でもはっきり申しておるのでありますが、すでに当時は、この目標になった人々は住居不明でありました。三日や四日の期間でもってその出頭命令が届こうとも常識上は考えられない。すでに七月の三日か四日ですか、出頭命令が出されて、七月の八日には不出頭という犯罪が既遂状態になった、こういう検察官の主張なんです。三日か四日の期間において出頭しなかった、それで十年以下の懲役に該当する犯罪が既遂になった、こういう主張なんです。出頭命令には、もしこの期間に出頭できなくてもできるだけ早く出てこい、こういうような文句もあったようです。しかるに検察官の方では、七月八日には既遂であったという御主張であります。これらのことを考えてみましても、ここに十年以下に該当する犯罪というものをつくり上げて、もってお前を処罰してやるというのがねらいであった事件だと私どもは見ておる。こういうのを一体司法当局としては、将来も続けて追及し七いって逮捕していくという態度を妥当なりとお考えになっておるかどうか、御意見のほどを拝聴しておきたい。
  46. 花村四郎

    ○花村国務大臣 細迫委員の御主張のごとく、事犯が起きてから大分長くたっておりますので、この辺で何とか考えたらどうかということも、これは考えられないこともないと思いますが、どうも人情から申しますと、さような考えも浮いてこないわけではございませんが、しかし御承知のように、一たん団体等規正令に違反し、そうしてそれが犯罪となりました以上は、その犯罪行為ありし当時の法律で処罰すべきものと、その後にできた破防法の附則で規定しておりますので、その法律を曲げてどうするというわけには参りませんので、気持気持として、法律を適正に適用していくという面から考えますと、まことに遺憾ではありますが、細迫委員仰せのような方向に進むことは不可能であると申し上げるよりほかないと思います。
  47. 藤井五一郎

    ○藤井政府委員 さっき細迫委員から申されましたが、私どもは何も強制権はなく、ただ調査しておるのでありますから、逮捕とかなんとかいうようなことは私どもには全然関係がない。それで、先ほども申しましたように、現在においてはそんなことに逮捕捜査はやっていない。権限はありません。調査ということならば将来起るかもしれません。過去のことについての調査、そういう意味で申し上げたのですから、誤解のないようにお願いいたします。
  48. 細迫兼光

    ○細迫委員 藤井長官のお言葉でありますが、私は誤解はしていないのです。まだ調査の必要がある段階であるかどうかということをお尋ねいたしたのに対して、将来あるかもしれないが現在調査していない、こういう現実の事実を御答弁になったと思うのです。それを私は、調査の必要がない段階に来ていると私は私流に理解しているわけです。誤解はありません。  花村法務大臣 の御答弁でありますが、まことに遺憾でありまして、いわば不出頭罪の一厘事件とも申すべきものであります。これをあくまで追及するということは、ほかにねらいがあるのではなかろうか、これは私だけではなく、国民全体の疑惑であると思います。法違反の事実があれば、これをあくまで徹底的に追及するということだけが、必ずしも法務の職にある者の権威を高めるゆえんではないと私は思うのでありまして、大臣もこれを在野法曹たらしめたならば、必ずや同意見だき私は確信して疑わない。やはり野におけレンゲソウという感じを持つのであります。どうか重箱のすみっこをほじくるというような態度でなくて、おおらかに法務大臣としての大きな度量ある態度を将来とっていただきたいことをお願いいたしまして、私の質問はこの程度で今日はとどめたいと思います。
  49. 三田村武夫

    ○三田村委員 ただいまの細迫委員の質疑に関連して一、二点お尋ねしたいのです。  長谷川浩氏の逮捕に関連した細迫委員の御質問、並びに政府当局の御答弁を伺っておりますと、二つの疑問が出てくるのです。一つは、細迫委員も言われますように、満五年もさきに出された逮捕状を今あらためて執行する必要があるかないか、この疑問であります。もう一つは、行政監査と申しますか、当委員会が最初、委員会開会の当初に、国政調査に関する態度を一応きめたのでありますが、そういう立場から申しますと、逮捕しなければならない必要のあるものを、一体満五年間もどうして放任したのだ。この二つの疑問が出てくる。ただいま藤井長官は、今の段階では調査の必要がないと御答弁がありましたが、同時にまた、調査の必要が生じてくるかもしれないという御意見でありましたが、これは思うに、こういう事犯というものは、徳田球一君以下いわゆる日共潜行幹部の調査ないし捜査活動だけでなくて、破防法に規定されましたように、いわゆる破壊活動というものが現実に存在するならば、同じようなケースがしばしば出てくると思われるのであります。その場合に、従来の実績にかんがみて、逮捕の必要ありとして逮捕状を出し、せっかく努力されながら、しかも相当の国費を使いながら、五年間も逮捕されないで、ほとんど逮捕の必要性を失ったときにきて逮捕し、大騒ぎする、一体どういうことかと言いたいのであります。私は帰り新参で、今までの経過は詳しく承知いたしておりませんが、私の知る範囲においては、かくのごとき日共の破壊活動調査ために相当の立法的措置も講ぜられ、さらに相当の予算も要求されておるはずであります。しかも五年間これがそのまま放任され、藤井長官のおっしゃるように、ほとんど調査の必要のなくなった今日これを捕える。私冒頭に申しましたように、二つの面から非常に大きな疑問があるのであります。一体どういうわけで五年間、せっかく捜査活動が行われておるにかかわらず、これが逮捕されなかったか、お伺いいたしたいのであります。  なお御答弁を伺う前に、この問題を取り上げる私の気持を一言つけ加えておきますが、法務大臣のおっしゃる通り、法というものは一つの権威でありますから、その事案が果して法律上どのように判断され、どのように決定されるかは、裁判権に関する問題であります。やがて明らかになると思いますか、少くと本国政監査という立場から見ますと、一体五カ年間どういうわけでほっておいたのだ。これは徳田球一君以下の問題だけでなく、また別な言い方をいたしますと、必ずしも共産党に関する事案だけでなくて、こういうことがあり得るとするならば、一体警察及び公安調査庁の機能というものはどういうものだ、こういう大きな疑念と不安が出てくる。そういう意味合いから一つ率直に御答弁願いたいと思うのでありますが、これは昭和二十五年六月六日追放指令が出ましてそれ以後の事案逮捕状が出たのはその七月何日でありましたか、ほとんど満五カ年たっている。警察庁の次長もおられますし、幸い公安調査庁長官の藤井さんも、警視総監もおられますから、その辺の事情を率直に明らかにしていただきたい。そういたしませんと、ここで法律を審議し、あるいは予算を組んでこれを議決いたしましても、意味はない。その点一つすなおな気持で御答弁願いたい。
  50. 花村四郎

    ○花村国務大臣 調査の必要ありやいなやは別問題としまして、とにもかくにも団体等規正令に違反をしたという犯罪事実が明確に相なって参りました関係から、要するに逮捕状が出たわけでありますが、先ほども申し上げましたように、気持としては、五年も経過しているのであるから、何とかしてやりたいものだというような、いい意味における気持も起きないわけではないのですが、しかし法律の命ずるところに従って忠実にこれを順奉していくということになりますと、やはり逮捕をせざるを得ない。もし逮捕もせぬということでありますと、むしろその法律をなぜ適用しないのかと言うて、また強いおしかりが出てくるであろうことも、これは想像するにかたくないと思うのであります。従いまして検察当局としては、あくまでも法律の命ずるところに従って、忠実にその義務を履行してきたということでありますが、しかし五年間逮捕ができなかったということは、これは逮捕をしなかったわけではない。先ほども警視総監が言われたように、多くの費用をかけて、そうしてあらゆる努力を傾倒して捜査の最善を尽してきたのでありますが、遺憾ながら早く逮捕の状況に至らなかったというようなことでありますので、どうも時効にでもかかりません限りにおいては、やはり法律の命ずるところに従って逮捕を進めていかなければならないことは当然でありますので、そういう意味において御了承を願いたいと思います。三田村委員気持はわれわれにもよくわかっております。
  51. 三田村武夫

    ○三田村委員 私は、今法務大臣が御答弁されたようなことを伺ったのではない。私は今長谷川治君を逮捕することの当不当をここで問題にしておったのではない。なるほど逮捕状が出ているのだから、法律の規定に従って逮捕されることは、当然の職務行為でしょう。逮捕の当不当は、やがて権威ある機関が決定しましょうが、私が今問題にしたのはそうではない。およそ逮捕というものは必要によってやる。逮捕状が出されたときは、必要があったのでしょう。五年もたてば、逮捕の必要がなくなる場合もあり得るのです。その点先ほど細迫君の質問に対して私は同じような気持がいたしますが、私がここで問題にするのは、逮捕の必要ありとして逮捕状が出てからすでに五年になる。五年間一体どうしておったかということなんです。これは花村法務大臣責任じゃないから、花村法務大臣から御答弁を伺おうとは思いません。責任のある御当局から伺いたい。そのための立法的な処置もやっておりますし、予算もちゃんと組んである。そういうことをやるなら、国政の最高機関としての国会が予算を審議し、法律を審議して、そのための活動に遺憾のない態勢をとっても意味がないということを私は申しておる。これは新しい事犯が起って来て、またその事犯追及のため逮捕状を出しても、五年間もまだ逮捕できないということでは意味がない。どこに一体欠陥があるのか、どういう次第でこれが五年間も逮捕できないのか。これは共産党の事件であるから申し上げるのではない。どの事件でも同じことですが、警察というものは、新しい機能を持って相当整備されてきておりますし、警視庁も同様であります。予算も莫大なものになっている。人員の面からいったって、かつての警察の二倍以上になっている。かっての特審、今の公安調査庁という機関もあります。それだけ整備した機関をもって、十分な予算をもって、なおかつ五年間も逮捕ができなかったということは、どこに欠陥があるかということなんです。これは私が申し上げるのではなく、この委員会へで細迫君の御発言に対する当局の御答弁を伺った方は、おそらく同じ疑問を持つだろうと思う。五年もたった今日逮捕する必要があるかという疑問が一つと、一体五年間何をやっていたか、この疑問があると思う。どうぞ一つ、法務大臣からではなくて、直接その事務を担当しておられる責任者からすなおな御答弁を伺いたい。
  52. 江口見登留

    ○江口参考人 私からとりあえずお答え申し上げますが、私ども第一線の警察をあずかっておる者といたしまして、次から次へと事件が起るのでありまして、できるだけすみやかに前に起った事件が落着を見たいというのが、われわれの本心でありますが、私どもの力と申しますか、われわれの同僚の力が至らず、五年間も逮捕できなかったことは、はたはだ申しわけないことと存じております。私ども気持といたしましては、先ほど法務大臣からもお答えいたしました通り考えでございますので、御了承願いたいと思います。
  53. 三田村武夫

    ○三田村委員 この席でこの機会にこれ以上追及をやめますが、私の申し上げたことはどうぞすなおにお聞き取り順いたい。また別の機会でお尋ねする場合もあるかもしれません。関連質問でありますから、これだけにしておきます。
  54. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 先ほど政府委員の方から、白鳥事件に関連して植野間違い問題についての御答弁がありました。確信を持ってつかまえたと言いながら最後にその確信てがくずれおります。ね。一体どういう点を確信されてやったんですか。それから最後には、石井次長が、こういうことを言われましたね。もう少し早く本人でないということが確認できれば釈放もできたけれども、何分本人黙秘権を行使して自白しないので——何も言わないのでおくれたと申しました。これは先ほど古屋委員からも黙秘権のことについて言われました。その点は繰り返して申しませんが、そういうことを言われると、こういうことになりはしませんか。本来証拠としてはならない自白、人をつかまえておいて、その強制のもとで自白によって事を明かにしようということをされたわけになりますね。その点御答弁願います。
  55. 石井栄三

    石井政府委員 先ほどお答えいたしました通り本人黙秘されたため真実発見がおくれた。そのことに対して私ども責任を免れようという気持で申し上げたのでないことは、御了承いただきたいと思います。本人氏名あるいは住居等をお漏らしいただくならば、それだけ真実発見が早かったであろう、そういうふうに御協力をいたたげたならば、今回の本人に御迷惑をかける度合いが少くて済んだであろうということを希望として申し上げたのでありまして、そのことによって私ども責任を免れようという気持で申し上げたのでないことは、先ほど古屋委員の御質問の際にお答えしたのでありまして、その点御了承願いたいと思います。  なおただいまお尋ねの当初において確信を持って逮捕したという点でございますが、これはかねて指名手配のありました写真があります。この写真に照し合せまして、植野らしき人物であるということをまず確かめたのであります。しかしそれもただ単に一回植野らしき人物を見かけて、それが写真に酷似するからということだけで、直ちに植野なる人物に間違いないというふうに断定をいたしたのではないのでありまして、その後しばしばそうした確かめる機会を積み重ねまして、その結果間違いあるまいという自信を得まして逮捕いたした、こういうつもりで逮捕したのであります。
  56. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 あなたがそういうことを言うから、大麻国務大臣が、弁解がましいことを申しまして済みませんと言っているじゃないか。あなたがまずいことを言ったと思われるから、大麻国務大臣弁解がましいことを言ったといってあやまっている。相変らずそれを繰り返されるでしょう。そう量見だからこういう事件が起るんですよ。そこで白鳥警部射殺事件というものには被告が大ぜいおります。これが今日まで接見禁止三年以上になっております。本人は否定しているにもかかわらず、事件関係あり、こういうことて傍見禁止になっております。しかもつかまえてみてから、ほかに罪名を十ほど加えて十一の罪名でやっている。これはもしほかの点が黒星ならばこの点でやってやろうということになりますが、こういうことがあることを事実御存じかどうか。接見禁止で三年もはっきりしないものを置いている。そうしてそのあげくに今度の植野間違い事件ということが起っているのです。こういう点について、なぜこの被疑者釈放されないのか。この事件は要するに白鳥警部という警察官が射殺された事件で、警察は両院にかけても捕えるというので、人間違いまで起してやられることにたると、結局これは警察の面子を保持しなければならないというのではないでしょうか。この点はどうお考えになりますか。
  57. 石井栄三

    石井政府委員 警察が面子にとらわれて、また捜査の便宜のために手段を選はず、あらゆる策を講じて捜査逮捕、検挙に当るということは厳に戒むべきことであることは、先ほど大阪事件関係で御答弁申し上げたときにも私申し上げたところでございます。決して、そうした捜査ためには手段を選ばずといった気持では毛頭やっておらないつもりでおります。この点は御了承願いたいと思います。
  58. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 最近、名古屋で松川事件の第一審の裁判長に対して脅迫状を送った云々の問題で、警察官が、被告人が黙秘権を行使するならばこうしてやると言って、くつでひざの上に上ってこれを踏みにじって、頭をむしった事件がありました。これを検察庁では取り上げておりません。従って、裁判所の方で準起訴処分にした事実は御存じでしょう。こういうことさえあるのですよ。あなたのところにそういうことはちゃんと報告が来ているでしょう。あなたの言われることは、あまりに白々しい答弁と言わなければなりませんね。この白鳥問題に関連して、どうしてそんなに未決を長く接見禁止して置いておくか。私どもが前に治安維持法でやられたときも、接見禁止は長かったです。長かったけれども、これは三年とはかかりません。あれほどの大きい本件と言われたものでも……。そうして本人が否定する事件についてこんなに長く置いておく。私どもの、前も——戦争前の時代に、天皇制が非常に権力を振って陰惨な行刑が行われておった時分に、こういう数え歌が東京拘置所の中でありました。「三つとせ、未決の長いは共産党、二年、三年上り坂」というのがあったのです。私なんかも実は六年半の未決をやられておった。当時そんならんぼうなことをやった。今日はそんな乱暴なことはやりませんと言われるが、ほかの罪名を十もつけて、何かひっかけてやろうということにしておいて、接見禁止をやる、こういうことになっております。こういうことになると重大な問題だ。そういう事実があるということを花村法務大臣はどうお考えですか。接見禁止を早く解いてやるということに対して花村法務大臣の御意見はいかがでしょうか。
  59. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ただいまの御質疑でありますか、なるほど接見禁止には相なっておるようでありますが、その禁止たるや、それば裁判所でやられることでありますので、検察庁といたしましては、何らの関係を持たぬわけでありますから、御了承願います。
  60. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 花村法務大臣関係ないと言われますが、そういう事実があることについて、これを妥当なりと法務大臣として考えられるかどうかということをお伺いしたいのであります。
  61. 花村四郎

    ○花村国務大臣 その妥当なりやいなやは、ただいま申し上げましたように、もっぱら裁判所の所管に属する事柄でありますので、従って、裁判所の権限に属することを法務大臣として適当なりやいなやの批判をすることは控えたいと存じます。
  62. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 私は次に江口警視総監に伺いたいのです。警視庁に……。
  63. 古屋貞雄

    古屋委員 関連して、市大問題ですから……。接見禁止の請求検事がしているではないですか。その点はいかがですか。したではないですか。したからこそ判事がやるのであって、判事みずからがやるということはないのです。請求することがいいか悪いかの問題、その点の御答弁を……。
  64. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ただいま古屋委員の言われたように、なるほど検察官の方で接見禁止の請求はいたしております。しかしそれを許すか許さぬかは、もっぱら裁判所の権限に属することでありますから、従って最終の決定権は裁判所にある、こう申し上げたのであります。
  65. 古屋貞雄

    古屋委員 裁判所で決定することは当然でございますが、一体三年も接見禁止を要求するのはどういう理由でおやりになっているのか。それが人権じゅうりんだということを申し上げたのであります。その点どうですか。それから、なお裁判所が決定をいたしましても、検事ばみずから進んで取り消しの要求もできますので、裁判所はさような処置をとれない。その理由なんです。今志賀委員からの質問の重点はそれで、植野の問題もさようになる。不確認でやっているのにかかわらず……。その他の問題につきましても、これに関連しているところに質問の要旨があると思うのです。人権じゅうりんに対する関係、従いまして、ただいま御答弁願いました裁判所の決定に対する問題、三年もの間さような要求をしなければならぬ理由、さようなことは人権じゅうりんになるのではないか。いわゆる本人の意思に基かざる長い勾留によって事実に対する自白を求められる手段、取扱いというものがありはしないかという点がわれわれの疑問とするところであります。それからなお、その御答弁によって、理由のいかんによっては検察官はみずから進んで接見禁止の取り消しの要求もできる。従いまして、一度決定されましても、現在においてさような必要がないことになりますならば、それは取り消し要求ができますから、さような点を十分考慮されての検察庁の御処置でなければ人権じゅうりんになる疑いがある。従って、不実の供述を強いる事実が生まれてくる、こういう点の御質問を申し上げたのであります。
  66. 花村四郎

    ○花村国務大臣 事案によりましては、接見禁止をなし得る旨の規定がございますので、たといその期間が長いといたしましても人権じゅうりんには相なりませんことは、これは古屋委員の方がよく御承知だろうと思います。しかし、かくのごとき長期にわたる接見禁止は、私どもは好ましからざることであると存じます。なるべくそういうことなしに事案を推し進めていくということが、最も望ましいことではあると存じまするが、しかし望ましいことであるにもかかわらず長期にわたっておるということから考えても、これはよほど必要欠くべからざる事情があるのではなかろうか、とこう私は思います。しかし、いかなる理由でその接見禁止をしておるかという報告に接しておりませんが、その起訴事実が多いこと並びに勾留中逃走せんとした事実のあること、なおその関係者が逃走中のため取調べの進行ができぬというような事情がつけ加えられておるようでありますから、こういう諸般の事情かり多分やむを得ずかかる方途に出ておるものとこう私は考えておりますが、こういう障害がすべて除去せられて行くという方向に進んで行けば、一日もすみやかに接見禁止のごときことは解かれるであろうことは、申し上げるまでもないと思います。なるべく一日もすみやかにそういうものの解かれることを私どもといたしましても、心から念願をいたす次第であります。
  67. 古屋貞雄

    古屋委員 実はしっこく私どもが申し上げるのは、植野の問題のときに親族や親が自分の子供の植野でない、さような確認をしてもまだ疑っておるという態度に出ますと、これは意識的であると考えざるを得ない。その僕達においての今の三年の勾留なんです。ただいま花村法務大臣のおっしゃられたように、実際接見禁止をして自白を強要されましても、これまた規定に基きまして、これは不当の長い勾留による自白でありますから、証拠力がないと思う。従って私どもから考えますならば、少くとも起訴されている事案が幾つもあるといえども、三年も今の世の中で接見禁止までする必要があるかということは、これは重要な問題だと思います。従ってその問題につきまして、私ども申し上げることは、ただいま私どもが御質問申し上げたような警察処置あるいは大分の裁判所で発見されました検事処置、こういうようなことが具体的に現われておりまするから、われわれといたしましては、人権を擁護しなければならぬ立場、これを結論から申しますならば、重要な司法に対する国民の信頼を維持したいというのがわれわれの念願です。従って感情によって接見禁止をやられたり、あるいは面子にこだわって人違いのものを勾留したり、あるいは感情にとらわれて逮捕すべからざるにもかかわらず逮捕しなければならないというような調書を偽造するということが問題なんです。従いましてさような関係で実はしつこく食い下って御質問申し上げておるのですが、われわれは共産党の支持者であるからとか、共産党の関係であるからというわけじゃございません。要はわれわれが司法の信頼を国民からつなぎたい、信頼の失墜をおそれておるからでございます。従いましてその点について十分な御考慮を賜わりまして、法務大臣の今お答えになりましたようなお気持が部下の検事を通じて現実に現われていただくことを要望いたします。
  68. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 今の白鳥事件植野君に間違えられたことについて大麻国務大臣から深くおわびをしたい、当人のみならず国民全体に対しておわびをしたいと言われたが、そのおわびを具体的にはどういうふうにやっていかれるつもりか。現に弁護人である杉之原舜一君から検事高木一君、及び北海道警視志村留治君を告発しております。これについて大麻国務大臣は今おられませんが、どういうふうに具体的におわびということを表明されるつもりか。本人も非常に迷惑をこうむっております、心理的のみならず、物質的においても。こういう点についてはどういうようにされるつもりか、その点を関係政府委員からお答えいただきたい。
  69. 石井栄三

    石井政府委員 大臣本人並びに国民の皆さまにおわびを申し上げたいと仰せられたお気持は十分わかるのでございますが、私たちも部下として同感でございます。それを具体的にどういう形でお現わしになるかということにつきましては、私まだ大臣から直接お聞きをいたしておりません。従いましてその点は何とも申し上げることはできないのでありますが、そんたくいたしますに、私は警察全職員に対しまして、将来捜査の重要性にかんがみまして、捜査の仕事に当る者の心構えにつきまして十分認識を新たにするように、大臣から十分われわれに対して注意を喚起され、そして今後再びこうした問題を絶対に起さないということによって、国民の皆さまに対しておわびをすることができる一つ方法ではなかろうかとお考えになっておるのではないか。これは私大臣の御心境をそんたくして申し上げておるのであります。
  70. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 大臣の意図をそんたくして言われるといいますけれども本人が否認しておることについて、逃亡のおそれあるとか何とかいうことを言われておるのでありますが、この点については白鳥事件関係者として、これを即時釈放するように法務大臣からやっていただきたいのであります。逃亡の理由云々ということは理由にならないのであります。
  71. 花村四郎

    ○花村国務大臣 先ほど私のお答え上たことは、逃亡のおそれがあると申し上げたのではありません。逃亡しようと企図して、そしてその企てが成功しなかったという意味のことを申し上げたのであります。
  72. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 この問題については弁護人の方からもなおやっておりますが、白鳥事件について法務大臣はまだよく御存じがないようであります。どうもめちゃくちゃな検挙をやって、十一も罪名をつけるのですから迷惑なことであります。そんな検挙について逃亡を企てたとか何とかいう因縁をつけてやられたのでは、国民自分人権をどうして守ることができますか。法務大臣、その点について……。
  73. 花村四郎

    ○花村国務大臣 どうも質問の趣旨が混同をいたしておるやに考えられるのですが、植野光彦に関する件でありますが、これについては今申されたように、弁護人から告発がありましたので、従って泉川検事を主任検事として、ただいま取調べが進行中であります。それから村上国治に対する接見禁止の問題でありますが、これについては先ほど申し上げたように、逃亡のおそれがあるのではない、逃亡をしようと企図して、そうしてそれが失敗に終ったというような要素も加わって、要するに接見禁止をさせられておるのであります。こういうわけですから誤解のないように御了承願います。
  74. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そうすると、確実に逃亡をさせないような身柄引受人があったら釈放されますか。
  75. 花村四郎

    ○花村国務大臣 その点は、やはり直接取調べの衝に当っておる検察官があらゆる観点からその事件をながめて、そうして先ほど申し上げましたような接見禁止に関する要素が解消されたというような事態に進んで参りますれば、これはやはり接見禁止を解くという方面に強く考えられるのじゃないですか。その点は、現場におる検察官ではありませんから、私がここでどうこう申し上げるわけには参りませんが、多分検事にしても、しいて接見を禁止しようという意図があるわけでないことは明瞭であると私は申し上げていいと思うのです。しかしそれをやむなくやらなければならぬ。なるほど三年というのは、私ども考えても長きに失する。むしろ驚くような気持もしないわけではないです。在野法曹四十年、そういう問題に携わってきた私どものとうとい体験からいえば、それはわかるんだが、しかしそれだけはっきりわかるだけに、やはりやらなければならないということは、そこによほどのやむを得ざる事情が伏在しておるのであろうこともまた私は考えられると思う。でありますから、そういう好ましからざる要素がことごとく除去されていくということであれば、これは接見禁止などあすにも解かれるであろうと私は思いますし、また解くべきであると信ずるわけであります。そういうわけでもありますから、あなたの心配されるのも御無理もないことではあろうと思いまするが、一つそういう悪条件を解消することを——被疑者がその気持になってそれを表わしてもらうということが一番いいんじゃなかろうか、こう思うのです。検察当局の方としてもあなたの言われる気持尊重して、そういうことはなるべく早く解きたいという方向に進むように、また私からもよく担当検事の方へ申し上げておきます。
  76. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 悪条件を本人が逃亡を計画して云々という点にだけおいておられますが、最初から申し上げました通り白鳥警部は女出入りの非常に多い人で問題のあった人であります。ああいうような射殺の仕方というものは、しろうとではできません。おまけにCICに行って帰りにやったのでありますから、これは明らかに何人かが仕組んで射撃の名人がやったということも、国民の健全な常識から判断すればわかりますね。そういうところで、警察の方で面子及びでっち上げの意図があるとさえ思われるようなところに悪条件があるのだということを考えられないで、被告人の方ばかりに悪条件を押しつけられるのは、国民として、はなはだ迷惑です。あなたはなるべく接見禁止を解くと言うが、私がさっき申し上げたのは釈放なさいということです。同時にそういう方にも花村法務大臣が努力せられることと了解して、私は次に進みます。  次に長谷川浩君の問題でありますが、先ほど法務大臣古屋委員及び細迫委員に対しての御答弁では、どうもこの団体等規正令違反事件なるものについては、偽わりのないところ法務大臣はもてあましておられるようであります。もてあます原因は何かというと、日本の法律体系にない、憲法で明らかに法律は遡及しないという原則があるにもかかわらず、破壊活動防止法の附則第三項で従来の例によるということでこれを処罰するように規定しているわけであります。こうなってくると、あの団体等規正令は占領法規であるから、これを廃棄するといいながら、結局本文ではない附則でもってこの占領法規が生かされてくることになっておるのであります。今度の、花村法務大臣が閣僚であるところの鳩山内閣がアメリカと防衛分担金を折衝して、結局これがとんでもないものを押しつけられた結果になった。日本の予算審議権というものは結局はアメリカの指図のままに、独立国の事実はどこにあるかということになる。この問題もそれと同じことです。憲法ではっきり規定しているにもかかわらず、それを踏みにじるような、それも破壊活動防止法の附則にあるようなことでもって、法律に明記してございますから、万やむを得ません、こういう御答弁でははなはだ納得いかないのであります。一体憲法の第三十九条の規定「何人も、実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。」あの附則はこの原則に反しておるのでしょう。その点御見解はどうでしょう。
  77. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ただいまおっしゃられた団体等規正令が生きておるという御意見は、これは間違いでありまして、これはもう廃棄になっております。しかしその法律の存在した当時に犯した犯罪については、その当時の法律によって処罰をする、こういう附則がただいま言われたような規定に相なっております関係上、これが問題になってくることは明瞭でありまするが、しかしそれに対する非難は、それは法務大臣でなくて、あなた方議会で負うべきものじゃないですか。議会で作った通りに、われわれは議会の命にこれ服従して一生懸命その法律適用を正しく推進しておるわけですから、その法律を作られた人に対してあなたの非難は当るが、法務大臣に対する非難は私は当らぬ、こう思います。
  78. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 当時私は追放されておりましたから、こういう法律に対して何らの責任はありません。しかもその当時確かに花村法務大臣は議員でありましたね。そうするとあなたは責任を持たれるということを今言われるわけですね。私には責任はない。あなたに責任があると言われたが、私には責任がありませんよ。無法な追放を受けておりました。あなたは議員だった。つまりあなたに責任があるということを言われる、しかも他の反対した議員に対してまでも誹謗されることになりますが、それでよろしいか。その点を御答弁願います。
  79. 花村四郎

    ○花村国務大臣 私はただいまその責任がだれにあるかということを論じたわけじゃない。あなたが、そういう附則でやるのはどうもけしからぬじゃないか、法務大臣けしからぬじゃないかというお話であったから、その非難は法務大臣でなくて、議会できめた法律を法務大臣は適正に適用しておるのであるから、その非難は当りません。こういうことですから、責任がだれにあるとかないとかということを論じておるわけじゃありません。
  80. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 では、ただいま法務大臣答弁されたこと、これは速記録によって一つ明らかにしていただきたいと思います。議員に対する侮辱を含んでおると私は思う。また当時議員でなかった私に対する侮辱も含んでおると思います。後日速記録を調べてもう一度問題にしていただきたい、かようにお願いいたします。
  81. 世耕弘一

    ○世耕委員長 了承いたしました。
  82. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 次に不出頭罪を構成すると先ほど江口警視総監でしたか言われましたね。そこで伺いたいのでありますが、出頭しなかったら一体どういう実害があるのでしょうか。被害法益は何でありますか。
  83. 江口見登留

    ○江口参考人 不出頭であることによりまして、団体等規正令に基く各種の調査ができにくくなるということと、現実の問題としては、告発がございましたので、それによってそういう容疑が成立するのではないかということで手配がされたものでございます。
  84. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 いや、私の言っているのは、実害はどういうものがあるかということですよ。被害法益は何ぞやという問題です。
  85. 江口見登留

    ○江口参考人 調査がしにくくなるということでございます。出頭することによって各種の調査をするということになっておりますのに、出頭されなかったがためにその調査が進まないという実害があるといえばあるのではないか、かように考えます。
  86. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 時間の関係上また午後続行することにして、政府委員に御出席願うようにしていただきたいと思います。
  87. 世耕弘一

    ○世耕委員長 志賀君 にお諮りいたしますが、だい厚時間がたちましたから、それでは一旦休憩して午後……。
  88. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 あとはそう長く時間はかからないと思います。
  89. 世耕弘一

    ○世耕委員長 それでは午前の会議はこの程度にとどめまして、午後は一時半まで休憩をいたします。     午後零時五十一分休憩      ————◇—————     午後二時十六分開議
  90. 世耕弘一

    ○世耕委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  人権擁護に関し質疑を続行いたします。志賀義雄君。
  91. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 午前中の最後に、江口警視総監は、出頭しないことによってどういう実害があるかという私の質問に対して、調査権が侵された、こういうふうに答弁されたが、一体何を調査するものであったか、これを藤井公安調査庁長官にお尋ねしたい。
  92. 藤井五一郎

    ○藤井政府委員 私の方といたしましては、当時まだ特審局と言っておったときですが、おそらくはやはり暴力主義的破壊活動をなす疑いのある団体の実態並びにその行動を調査するのが目的じゃなかったかと想像いたします。
  93. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そうすると当時は共産党が暴力団体だという認定のもとにやったのですか。
  94. 藤井五一郎

    ○藤井政府委員 認定じゃありません。疑いのある団体だと思っでやったのであります。現在も私ども調査対象になっております。
  95. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 当時公表されたところによりますと、松本三益君の公判の第一審で明らかになったことでありますが、鬼怒川において共産党の幹部が会合した云々ということ、これを調べるために出頭を命じたということになっておるのでございますね。
  96. 藤井五一郎

    ○藤井政府委員 実ははなはだ相済みませんが、私当時のことを存じません。
  97. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それではどなたが知っておられますか。——藤井公安調査庁長官も知られないし、江口警視総監も知られない、これで今日何が何だか関係責任者もわからないような状態で長谷川浩君の事件が起っておるわけであります。そこで当時の公判の記録、ことに昭和二十八年十月十五日第九回公判における裁判長及び弁護人の当時の特審局の係官に対する尋問及び反対尋問によりますと、鬼怒川会談という情報があったから調べた、ところがその情報なるものはメモで受け取った、そのメモは焼いて捨てましたというのですよ。証拠物件になるものをなぜ焼いたか、こういうふうにさえ聞かれておるのであります。さらにではどこでやったのか実地検証をしようと特審局の人に言うと、どこだかわからないというのです。どこを実地検証しようにも場所もわからない、何があったかもわからない、こういう全たく架空としか思えないことを理由として出頭を命じたのです。こういうことになっております。私が申し上げたことについてどういうふうに判断されますか、その点を御答弁願いたいと思います。
  98. 藤井五一郎

    ○藤井政府委員 今申し上げたように、当時どういう理由で特審局がどういう態度をとったか私たちは存じませんが、現在において長谷川浩氏を逮捕しようということをわれわれは主たる目的にしておりません。先ほど申し上げたように暴力主義的破壊活動をなす疑いのある団体の実態並びにその行動を調査するのが、われわれの任務の一つでありますから、長谷川浩氏を逮捕するためにそう全力を注いでいるわけでもありません。われわれとしてはなるべく皆さんに出てきていただきたいと思って念願しておるだけであります。
  99. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 私は公安調査庁長官に今何をやっておるのかということを伺っておるのじゃない。ここで公安調査庁の存在理由を宣伝されることはお控え願いたいと思います。というのは、あのときになぜあれをやったか、昭和二十五年の六月六日にわれわれを追放して、七月三日に出頭命令が来ております。これは当時の法務総裁から来ておる。ところが追放されてからちょうど二十日だって朝鮮の戦争が起ったのです。御承知通り共産党はできてからことしの七月十五日で三十三年になります。共産党の全歴史を通じて平和を守り、戦争に反対してきた、これが朝鮮戦争をアメリカ軍が起すのにじゃまになるから、あのときにやったというのが真相であります。そういう政治的意図でやるからこそ、鬼怒川会談というような全然根も葉もないことで出頭を命じた。調査権を侵されたというが、調査すべき対象はその当時すでにないのであります。つまり何でも自分考えてこれでひっかけてやろうと思ったことが原因なのであります。そればつまり戦争をアメリカ軍が起すについてじゃま者をやっつけるというところに原因があるのであります。こちらに原因はちっともない。私は当時共産党の中央委員でありましたので、出頭を命ぜられ、私は出ていって鬼怒川会談のことを聞かれたが、てんで話が架空のことであります。こういうことで調査権を侵されたというなら、官庁は何をやってもよろしい、人権をじゅうりんしてもよろしい、こういうことになるのであります。しかもその証拠物件になるようなメモをなぜ焼いたか、こういうことまで裁判長に問われておる。判決の中にもそういうことがどうしても出てくるのであります。だからこれは全然実体のないことなのであります。こういうものを五年たった今日調査権が侵されたからということで長谷川浩君といわれる人物を今警視庁に検事の方で勾留して、きょうがその勾留更新の請求日になっておりますが、こういうふうに全然架空のことで調査権が侵されたというのは、人権じゅうりんもはなはだしいものであります。ここでちょっと花村法務大臣にお伺いしたいのでありますが、御承知通り昨年造船汚職事件である政党の幹部が検察庁から呼び出された。これを逮捕しようとしたときに指揮権を発動しましたね。一方ではこういう事件があるのです。そして吉田前首相は決算委員会にたびたび呼び出しを受けております。議院における証人の宣誓及び証言等に関する法律の中には「正当の理由がなくて、証人が出頭せず、若しくは要求された書類を提出しないとき又は出頭した証人が宣誓若しくは証言を拒んだときは、一年以下の禁錮又は一万円以下の罰金に処する。」こうなっております。これは呼び出しを七回繰り返したのに出ておりません。それでとうとう告発されております。しかし吉田前首相が出頭しないため逮捕して取調べを受けているということはないのです。ところが今言ったような架空なことに基いて出頭しないから調査権を侵されたというようなことを言って、長谷川浩君 なる人物を現に勾留している。すべて日本人は法のもとに平等であるという憲法の規定に反して、こういう不公平なことが行われております。この点について花村法務大臣はどういうふうにお考えになりますか。
  100. 花村四郎

    ○花村国務大臣 刑事事件はやはりおのおの特性を持っておりますので、同じ刑事事件であるからといって一様に論断するわけにはいきません。やはり犯罪の性質、内容あるいはまたいろいろの情状等によって違って参ります。従いまして逮捕についても、逮捕しなければならない事案もあり、あるいはする必要のない事案もありまして、それは事件の性格あるいは事情等によっておのずから異なって参りますが、しかしなるべく逮捕というようなことはなさずに捜査が進め得らるることでありますならば、そうすることが一番適当であろうと思います。しかしそういう方法によって捜査を進め得ない場合においては、逮捕もまたやむを得ないと申さなければならぬと思います。
  101. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 午前中藤井公安調査庁長官は、今日もうその問題は調査していない、また今日その長谷川浩君なる人物についてはもはや何もやっていないと言われましたね。また花村法務大臣も午前中事実これはもう早く出てもらいたいと思っていると、こういうふうに言われましたね。在野法曹四十年の尊い経験ということも言われたのでありますが、そういうふうなことから見るに、もはや今長谷川浩君なる人物を何も勾留しておく必要はないことなのであります。調べなければならないことは一体どういうことがあるのか。事件によって異なると言われますけれども国民感情からみてごらんなさい、造船汚職とかそういうことは非常に国民の憤激の種になっております。花村さんが今度法務大臣になられたのも、これは自由党でなく、民主党に属しておられたからであります。あなたの前に属しておられた自由党はいかがですか、造船汚職という問題があったからこそ、かつて絶対多数であったのが第二党になり下ったでしょう。これは国民感情の現われであります。こういう事件については勾留もせず、証人として呼ばれても出頭しないのをほったらかしておいて、そういうものは別に逮捕勾留しないでよろしい、こういうふうに言われる。今のように架空なものについて調査権が侵されたといって、逮捕勾留して、それをさらに更新しなければならないか。これはあなたが国民感情に正当にこたえられる意味で、重ねてもう一度質問をいたします。
  102. 花村四郎

    ○花村国務大臣 志賀委員は架空な事実だということを言われるのですが、それはあなたの見方で、検察当局から見ればあなたの見解とは全然異なっております。でありますからあなたの見方においては、あるいは架空であるというような見方をせられるかもしれませんが、しかし検察当局からいえばさような見方は誤りである、こういわざるを得ないわけであります。もちろん根拠なくして人の身柄を拘束するというようなことのでき得ないことは当然のことでありまして、身柄を拘束するにはするだけの法律的根拠に基いてやっておるのでありますから、その点は一つそういう意味に御了承を願いたいと思います。  それから吉田前総理等に関する——等という言葉を、今あなたいろいろ言われましたから用います。等に関する問題について逮捕せないのはいかぬじゃないかという御意見でありましたが、それは逮捕する必要なしと認めておりまするので逮捕をしないわけであります。しかしこの種事件に対しては昨日も多分質問があったのでありますが、ただいま捜査を進めておりますので、従ってその内容に立ち至ってここで詳細申し上げることができないのでありますが、ただいまその事件は公正なる見地に立って捜査を進めております。
  103. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 法務大臣は、私が主観的に架空というけれども、検察官の方ではそうではないと言われました。私ばかりでなく裁判官も架空だといっているのですよ。つまり第一審の判決に、「前記被告人の追放令違反及び団体等規正令違反は単にその犯罪の嫌疑があるというにすぎず、前記情報——前記情報というのは鬼怒川の情報であります——を裏づける直接かつ具体的な証拠が何一つ存在しなかったことは前記証拠により明白であって、」というようにある。検察当局も、公安調査庁の前身である特審局も何らの証拠を出しておらないのであります。だから私は架空だと言っている。私個人の主観を申したのではありません。また裁判官の第一審だけの問題ではなく、その証拠がないことはこれは事実であります。私はこの事実に基いて言っているのであります。吉田前総理がああいうふうに何度呼び出されても出ない、これを身柄を拘束せず在宅取調べを行なっておるくらいであります。しかも他方ではなぜこのような証拠もないようなものを逮捕勾留してやっていかなければならないか、どう考えてもこれは不公平だと言うのであります。あなたは不公平と考えられないのでありますか、その点をもう一度繰り返して質問いたします。
  104. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ただいま志賀委員の言われたのは松本三益にかかる一審判決を援用されたのですが、しかしこの一審判決に対しましては検察当局におおいて不服ありとなし、ただいま控訴をしておるわけでありますから、従って裁判所の意見に従うわけには参りません。なおここは法廷じゃありませんから、何も法廷闘争をやる必要もありませんが、先ほど申し上げた通りでありまして、何度繰り返されても結局同じことだと申すよりほかに方法はありません。
  105. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 私は第一審判決を主として取り上げておるのではございません。ここは法廷ではございません。私の申すのはその場合にも、検察庁でも、また警視庁でも当時の特審局でも、情報を裏づける何らの物的証拠を出さなかったという、この事実があるということを申しておるわけであります。その点から不公平ということが生まれてくる。その不公平云々ということについては御答弁がないのであります。それではその点もう少し詳しく申しましょう。  サンフランシスコ条約ができて例の占領法規が廃棄されるときに、団体等規正令、政令三百二十五号のうちプレス・コード違反に関する事件、それから海外渡航の旅券に関する件、この三つだけはこれを除外しておって、これは当時の共産党関係のものが団体等規正令、プレス・コード違反にひっかかっておるのでありますが、つまりこれだけを釈放せずに、またこれだけを特に破防法の附則で残しております。こういうことになって参りますと、明らかに共産党員の関係する事件だけはこれを除外しておって、政治的意図でもってやっておられるであります。そういうふうに判定するよりほかしようがありません。またそうでないというならその理由を承わりたいのであります。こういうような不公平なことをやっておることについてどうお考えでしょうか。その点をお伺いします。
  106. 花村四郎

    ○花村国務大臣 あなたがどういうふうに解釈しようが、それはあなたの御自由でありまするが、要するにあなたの見解と私の見解とは違います。従いまして見解の相違であるというより仕方がありません。
  107. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 どう違いますか。
  108. 花村四郎

    ○花村国務大臣 あなたの言われるような見解ではないということです。
  109. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 見解ではなくて吉田前総理は身柄を拘束されておらない、これは事実であります。そして長谷川浩君は、松本三益君の事件と同じ事件でもってつかまっておって、身柄を拘束されて、本日勾留を更新されようとしておるのも事実であります。そのことについて私は伺っておるのであります。当時でも正当の理由なくして今のように逮捕状を出したのでありますが、これは勾留しなければ調べられないものではないと思うのです。もはや新たに調査する必要も何もないことなのでありますが、このことについて現に長谷川浩君は弁護人の面会さえ拒絶されそうになった。長谷検事が係でありますが、これが弁護人に会わせなかった。それで仕方なく青柳弁護人でありますが、東京検察庁の次席検事に会ってやっと許可を取った。こういうことになりますと弁護人をつけることさえ非常に困難なことになってきておるのであります。こういうことのないように一つやっていただきたいと思うのでありますが、その点についてはどういうふうにやられるつもりでありますか。
  110. 花村四郎

    ○花村国務大臣 先ほどから何度も申し上げましたように、事件によって逮捕すべきかいなかというようなことが異なって参りますので、従ってその事件ごとにこれはきめなければならないことでありまするから、甲の事件逮捕しなかったという理由をもって、乙の事件逮捕せざるのが適当じゃないかということは言い得ないと思います。でありまするから、やはり必要に応じて逮捕もし、逮捕もしないということになるわけですから、それは要するに事件のいかんによって違いもしますし、また事件の内容、状況等によっても決せられるのでございますから、一がいに一律的にどうというような判定はできないと申し上げるよりほかございません。
  111. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 弁護人の面会に妨害を加えた事件についてお尋ねしたのですが、その点はどうですか。
  112. 花村四郎

    ○花村国務大臣 弁護人の面会に対して妨害を加えたという事実は、私ただいま初めて聞いたのですが、どこでどういう妨害を加えたとあなたは言われるのですか、それを具体的に詳細に言うてもらいたいのです。日時、場所、その方法
  113. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 それは一昨日、五月七日のことでございます。弁護人が長谷検事に、長谷川浩君なる人物に対する面会を申し入れたところ、言を左右にしてどうしても面会させなかったのであります。それで青柳弁護人は、実は私の方にも用件がありまして、そのために数時間おくれて私も非常に迷惑した、こういうことがあります。それで仕方がないから、ついに東京検察庁の田中次席検事のところへ行って、こういうことでは困ると言ったら、大へん失礼しました、こういうふうに言われたのです。それでとうとう田中次席検事の方から長谷検事の方へいって面会させたのであります。こういうふうに長谷検事が時間を長引かせたりなんかすると、実際非常に困って、私までが迷惑を受けるようなことになるのであります。弁護人と面会する権利までも、そういうふうに制限を現場の検事がやるということのないように、あなたはどういうふうに処置をとって下さるか、それを伺いたいのです。
  114. 花村四郎

    ○花村国務大臣 接見の否定は取調べの事情によってするのでありまするが、大体において申し込めば直ちにこれに応じなければならぬということに相なっておるのでありまして、大体は直ちに応じておるようでありますが、それを応じなかったというのは、何か事情があろうかとは存じまするが、なるべくいかなる事情があろうとも申し込めば直ちにこれに応ずるようにさせたいものだ、こう私も考えております。
  115. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 そういうふうにさせて下さるのですね。
  116. 花村四郎

    ○花村国務大臣 承知しました。
  117. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 最近のニュース映画によりますと、長谷川浩君なる人物が羽田におりてから警視庁に入れられるまでのところが出ております。両手錠をはめて双方から自由を拘束するようにして、警官が非常な敵心を現わしたような調子でもってこれを背中からこづいておる。映画を見た人たちがみんな、何というひどいことをするのかと言い、現場におった新聞記者諸君でさえ、その点については、ひどいことをするものだ、涙がこぼれるようであった、こういうふうに言っております。こういう点について江口警視総監は、そういうことをしていいものかどうか、あなたは映画をごらんになったかどうか、どういう感じを抱かれたか、もし見られなければ、ただいま申し上げたような事実についてどういうふうに考えられるか。
  118. 江口見登留

    ○江口説明員 私は映画は拝見いたしておりませんが、羽田の空港に着きまして警視庁に護送する間の警察官の態度についてのお話をいろいろ伺いましたが、私どもといたしましては、決してそういうことをさせた覚えはございませんが、たまたまその映画にそういうふうに写っているというならば、これは映画を見ましてからまた私もお答えいたしたいと思いますが、できるだけわれわれいたしましては、大勢のヤジウマもございますし。そのヤジウマから本人を守るという意味も多分にあったということを御了承願いたいと思います。
  119. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ヤジウマから守るために、長谷川君なる人物の背中をこづくのですか。ばかばかしい。それから今日もう調査する必要がないといわれておるのに、長谷川浩君の家に七十三才になるお母さんが一人おられる、警官が二十名か参りまして、家宅捜索をやっております。家宅捜索の令状を、何だかわからない、読まないうちにどやどや上っていって、そうして立会いもやらないうちに捜査をやっておるのです。そういうことを警視総監の方としてはどういうふうにお考えですか。あなたの指示される者がやっておるのでありますが……。
  120. 江口見登留

    ○江口説明員 六日の日に捜索をしたことは事実であります。令状をちゃんと見てもらいまして、立会人もつけてやったつもりでございますのに、何かお間違いじゃないかと思います。
  121. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 事実はそうなんです。  なおこれは松本三益君が警視庁におりましたときのことであります。長谷川君といわれる人物にもそういうことがあるんじゃないかと非常に心配しておりますが、科学調べ室というものが警視庁にございますか。
  122. 江口見登留

    ○江口説明員 そういう名称のものはありませんが、いろいろ薬品などについても鑑識をする必要がございますので、それに類した仕事をやっているところはございます。
  123. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 私の科学調べ室というのは、そういう化学の方面じゃございません。特別の装置を施して、そこに入れられた調べられる人間は何も見えないけれども、隣室からその一切の表情から何からわかる、透視するような設備を持ち、特殊の集音装置を持ったようなところに入れ、換気装置も不十分である。そういうところで松本三益君は調べられておった事実があります。そういう部屋の有無、及び長谷川君をそういうところで調べられているかどうか、この点についてお答えを願いたい。
  124. 江口見登留

    ○江口説明員 特別にそういう細工を施した部屋というものは持っておりません。ただときどき、たとえば面通しをする必要があるとか、本人の様子を見てもらうとか、面識ある者に本人であるかどうかということを見てもらうという際に、あるいは窓を開けたり、鏡で見てもらったりすることはありますけれども、そういう特別の装置を施した部屋は警視庁に持っておりません。
  125. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 現に松本三益君がそういう部屋に入れられて非常に不利益をこうむっております。さらに松本三益君がつかまったときには、見張りを四人立て、そうして明らかに寝ている本人がわかるような工合にして寝息をうかがう、そうしてそれを逐一報告したという事実があります。そういうことで今度の長谷川君も調べておられるというようなことになると、これは大へんなことであります。松本君のときにそういうことがあったのであります。そういうことは一つやめてもらいたいのであります。その点についてはどういう処置をとられますか、またそういう事実の有無。
  126. 江口見登留

    ○江口説明員 前、松本三益氏のときにそういう事例があったようなお話でございますが、その事例は私はただいま聞いておりませんが、現在の長谷川浩氏については、非常に本人も冷静な気持でおりますし、警視庁に対する待遇上の不満を訴えるというようなことはみじんもございません。その点御安心なさっていただきたいと思います。
  127. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 今特に警視庁のことについて触れましたが、これは私ども昔から警視庁にしたたかな経験を持っておりますから、警視総監の美しい言葉だけを信用するわけに参らない。論より証拠。そこでその点について十分今後とも注意していただきたいのでありますが、何もそういうふうに注意をしていただいて、長くあそこに置いてもらうことをこっちが希望しているんじゃございません。先ほど来申しましたように、これは一日も早く釈放ということをこちらは願っております。今申し上げたように、こういうことで、長谷川君の場合にも、また松本君の場合にも、非常に人権のじゅうりんをはかるようなことを、逮捕されてからも行なっておるのであります。  そこで最後に私は花村法務大臣にお聞きしたいのでありますが、午前中以来、自分の弁護士をやった長い経験気持からすれば、こういうものは一日も早く釈放した方がいいという気持がある。ただ遺憾なことには、法務大臣といういすにすわっておられるためだけでひっかかっておられるように私ども見たのであります。これは細迫委員に対する御答弁でも明らかにそのように見えました。どうして共産党の幹部だけをああいうふうにつかまえるのだろうということは、先ほど申しましたように、これは国民感情であります。あなたもその国民感情に通ずる面を一面にあるいは多くの面において持っておられると思います。あなたのお計らいによって——勾留のなには検事総長が指揮するのでありますが、あなたの方から言われる権限を持っておるのであります。こういうものは一日も早く釈放して、そして取調べについては不都合がないようにしてもらいたい。あなたは一つ一つ案件について云々と言われましたけれども、事実立ち小便をしたというようなものまでも一々逮捕勾留することは非常識だということは何人もわかります。午前中から明らかになった通り、今日では長谷川君の事件について江口警視総監も特審局を引き継がれた藤井公安調査庁長官も、一体何が問題であったかわからないような事件逮捕勾留が続けられている。その点において私は法務大臣が一日もすみやかに釈放措置をとられるように、各監督せられる官庁に言っていただきたいと思うのであります。その点についてどうか御尽力願いたい。
  128. 花村四郎

    ○花村国務大臣 その事件の人のいかなる人であろうと、また事件がどういう事件であろうとも、人、事件等によってへんぱな処置の行わるべきものではございません。あくまでも正当かつ妥当なる態度で進みたいと思います。
  129. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 御承知のようにプレス・コード違反事件が免訴になりまして、大勢としてこの不出頭罪というものはもうつじつまの合わないもてあましものになっていることは、午前中から政府委員の方々の御答弁でも明らかに看取できるのであります。ですからこういう事実をも参酌して、なるべくすみやかにへんぱな処置のないように釈放を、私は当局にも要求しておるのでありますが、ここでもそういう点について御努力を願うことにして私の質問を終ることにいたします。
  130. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 ちょっと関連して一点だけ法務大臣にお尋ねします。さっき質問者の言葉の中にもありましたが、鬼怒川会談なるものは荒唐無稽なものである、何らそれを裏づける内容がない、そういう主張であり。しかもそれは松本三益氏の事件についての判決を見ますると、判決の中にはっきり出ておる。前記情報を裏づける直接かつ具体的な証拠が何一つ存在していなかったというふうな文句がところどころ出てきておる。これだけでも検察官として、は実に重大なる黒星だと思う。さような荒唐無稽なことをもととして起訴する。しかもこの判決に対して検察官はその荒唐無稽なることをみずから認めておる。なぜならば東京地方検察庁の検事正代理田中万一氏がこの判決に対して控訴をしております。この控訴趣意書を調べても、鬼怒川会談が何ら存在しない、そういう証拠がないのだという裁判所の認定に対しては、これは事実誤認しておるということを一言も書いていない。これは法務大臣も弁護士上りであるから御存じでありましょう。今の控訴審は覆審制度じゃない続審制度である。しからば控訴において控訴申立人が争われておらない事実は、これはもう確定的なものだと考えてもいいわけだ。新しい証拠が出ざる限り。しかも控訴の制限の中には刑事訴訟法の三百八十二条には、事実誤認があってその誤認が判決に影響を及ぼすと思う場合には控訴の理由があることが書いてある。ですからもしこの判決が、鬼怒川会談のごときは荒唐無稽だという言葉を使いませんけれども、何らの実存したという証拠がないのだと判断された際に、これが事実の誤認であるならば刑事訴訟法第三百八十二条にまさに適合したものであって、裁判官がこの認定をしたことは、そもそも判決全体に影響を及ぼしているのです。それならば刑事訴訟法第三百八十二条に従って、まさに鬼怒川会談は存在しなかったという判決に対して、まっこうから証拠をあげて控訴すべき筋合いだ、それをしなかった理由はいかなる理由でありますか、それを御答弁願いたい。
  131. 花村四郎

    ○花村国務大臣 一審の判決はあるいは見る人によっては適当だ、こう思われる人もあろうと思いまするが、検察当局の見方によれば承服できがたいものであると認定をいたしまして、そうして控訴の申し立てをしてありますることは御承知通りであります。しかるにその控訴提起の内容が悪いような非難もあられましたが、この点については私がとやかくと弁解がましいことを申さずとも、公正なる控訴審において裁断を下してくれることであろうと思いまするので、高等裁判所の裁判にそのいいか悪いかは待ちたいと思います。
  132. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 そういう点じゃないのです。御存じのように控訴はいかなる原因でも無制限にはできないということは御存じの通りで、しかも覆審制度でなく続審制度になっている。相当控訴の理由がしぼられていることはあなたも御存しの通りで、そこに控訴するには理由づけがなければならない。理由つかぬものは棄却されます。その控訴の理由というものの中に、この原審の鬼怒川会談というものが荒唐無稽であったということを内容とするような判決に対しては、これは重大なるこの判決に影響を及ぼした事実であろう、認定であろうと思う、これに対して一言半句もこの長い控訴趣意書に触れておらない。そうなれば続審制度の建前から、これは控訴人が認めたことに相なる。すると控訴裁判所がこの点について審理しません。もしこれを控訴人が申し立てたる、あるいはまたそこに、判決言い渡し後に明白なる何か新たなる証拠でも入れた場合ならばいざ知らず、しからざる限りにおいてはとにかく続審でありますから、控訴人が申し立てざるようなことを、事実について控訴審が徹底的に調べるということはないはずである。これはあなたは御存じであろうと思う。しかるにこの検事の控訴趣意書の中に、一体鬼怒川会談が証拠がないという判決に対していかなる不服をしたか、私は書いてないと思う。これが第一の控訴の理由でなければならないと思う。裁判官の全判決文を読んでみると、結局こういう判断、証拠のないような逮捕状を正式に出すことのできないような、そういう被疑事実がないようなことで、それを召喚に応じないというので、刑罰に処するということは憲法違反だということは、この判決の趣旨であります。それですから鬼怒川でさようないわゆる行政調査の必要なような、事実疑いがあったかどうかということが重大な問題なのだ。それがないにかかわらず、かような逮捕監禁したというようなことなら、明らかに人権侵害もはなはだしいではありませんか。人権侵害の疑いを少くとも受ける、判決にかように明確に出ている。検察庁にしてもし人権侵害、人権じゅうりんの疑いを少くとも避けんとする努力があるならば、この判決に対してまっこうから反撃を食らわすべきものは、この鬼怒川会談が荒唐無稽の事実のごとく主張した点にかからなければならぬと私は考える。これについて、何がゆえにそれに対して明確なる、自後の証拠でも何でもいい、判決の証拠でも何でもいい、それをつけて控訴しなかったか、控訴しない以上は控訴審においてこの点は審理されざるものと思う。この三点書いてあるようであるが、それは主として法律議論であります。事実関係についてはほとんど触れておらぬ。法律議論である憲法解釈の問題が控訴理由にされておる。そうすれば原審のこの判決は、事実に関する限りは鬼怒川会談なんというものば何ら有力な証拠のないでっち上げのものであることを検察庁は認めておりながら、なおかつ控訴した。ただ法律の議論を戦わすだけで控訴したとわれわれは考えざるを得ない。一体かような控訴というものが許さるべきものであるかどうか、御意見を承わりたい。
  133. 花村四郎

    ○花村国務大臣 鬼怒川会談が無稽のものであるという裁判があったのに、その点に関する控訴をやらぬのはけしからぬじゃないかというような質問のように受け取れましたが、私はまだその控訴状を見ておりませんから、いかなる内容が含まれておるかは知りませんが、しかし検察庁としては、第一審判決に対して不服の部分に限り控訴をしてあるわけでありまするから、その不服申し立ての限度において裁判をやってもらえばいいので、猪俣委員から見られて、こういう点も申し立てる方がいいじゃないかというような御意見は、これは御意見として承わっておきまするが、検察庁は検察庁として、独自の立場において必要なる事実について控訴を申し立てておるのでありまするから、その申し立ての範囲において控訴審において裁判をして下されば、それでけっこうだと思います。
  134. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 これはあなたがけっこうじゃないと言ったってそうなる。続審制度だからそうなるのだが、そうすると鬼怒川会談というものは何らの証拠もないでっち上げであるということ、それに対してはあらためて裁判してもらわぬでよろしい。そうするとそれは認めているわけですね。そういうことになりますね。
  135. 花村四郎

    ○花村国務大臣 それは認めておるというわけじゃありませんね。
  136. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 それはおかしいな。先ほど述べたように、その問題が人権じゅうりん問題にしろ、世論に訴える問題にしろ、最も重大な問題なんです。季たそれがわれわれの最も危惧するところである。ある政党のある人間を何とかしてしゃばと隔離したいというような場合には、根も葉もないことをでっち上げてそれで逮捕する。そんなことが許さるべきことですか。それでは憲法もなければ刑事訴訟法もない。徳川時代よりもまだ暗黒じゃありませんか。これは、いやしくも基本的人権何ものたるかを考え立場にある人間にとっては、最も重大なことだ。また共産党の諸君が非常に反撃を加えている根本理由もそこにある。志賀君の最初の質問はそれじゃありませんか。何にも根も葉もないことで、朝鮮事変が始まるということでつかまえる、その手段にやったのだ、そういう事態が十二分にできるじゃないか。それがしからざるならば、堂々と控訴のときに、そこに生命をかけて検察庁としては黒白を争わなければならぬ問題だ。法律議論なんというものは第二の問題だ。それは学者にまかしておいてもよろしい、あるいは最高裁判所の判決にまってもよろしいが、最も重大なる検察庁の控訴理由はそこになければならぬ。しかるにそれについて何ら控訴しておらぬというところに、われわれが疑惑を生ずるのです。そうすると第一審の、全たく根も葉もないことで出頭を命じたということを、検察庁自身が自認したことになるのじゃなかろうか。さようなことであるならば、わが国の基本的人権、自由のためにこれは実に重大な問題だと考える。現に長谷川君がやられておる。奇怪しごくのことでなければならぬ。それはあなたの答弁のように、控訴趣意書に書いてあるだけで裁判してもらえばそれでよろしいんだというようなことは、大へんな問題です。もう少しよく考えて御答弁なさらぬと、法務大臣、えらい問題を起す。そんなことは、あなた、ないと思う。しかしそれだとおっしゃればそれまでだ。そうすればわれわれは、根も葉もないことで、共産党弾圧のために、この法令を悪用して人権をじゅうりんしたものなりと認めざるを得ません。そんな法治国なんてありっこない。だから何らかの理由がおありであろうと思って、私は老婆心であなたに質問している。どういうわけで控訴理由にそれを入れなかったか。これは御存じのように、判決後生じた新しい証拠でも、これは証拠として展開できるはずだ。新しい証拠でもある見込みがあって控訴なさったのか。控訴趣意書に書いてあるように、ただ法律議論だけで、意味は全たくないと思う。逮捕するに至った原因。今公安調査庁の答えられたように、謀議行為的疑いがあるからやる、それが最も重大なことなんだ。その点について、検察庁は全然裁判所の判決に服している形になるじゃありませんか。  私は最後にお聞きします。そうすると、鬼怒川会談について判決で何らの証拠が存在しないと断定されても、検察庁としてはそれはやむを得ないという理解のもとに立っておられるのか。
  137. 花村四郎

    ○花村国務大臣 鬼怒川会談は虚構の事実であるということを重ねて言われたんですが、この点に対する答弁は先ほど申し上げた通りで、変りません。それからなお、控訴状に記載してなき事項は、これは一審におけるその事実を認めたのじゃないかという御意見でありましたが、記載してないからというて、認めたということには私はならぬと思います。そうして控訴裁判所で控訴申し立てをした事項については裁判してもらえるではないかということを言うのはどうも間違いであるかのごときお話でありましたが、これは法律上当然なことで、当然でないことをやろうということが間違っているんですから、法規にのっとって処断してもらうということよりほかに方法はないと申し上げていいと思います。でありまするから、この線に沿うて、高等裁判所の裁断を受くることは、私は決して間違いではないと信じます。
  138. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 花村大臣は新任の方で、この当時の責任者でないのでありますから、私もあまり質問を繰り返したくないのですけれども、しかしあなたの大臣のときに、すでに現在いま一人の長谷川浩という人の問題が起っておる。そこで私どもはやはりあなたに質問しなければならぬ。あなたは私の質問に対してまっとうからの答弁をなさっておらない。私の言うことは、たとえば判決にこういうことも書いてある。ことに現行犯でもなく、また裁判官の令状を求めるに足りる犯罪の証拠もなき事実において、その犯罪取調べのため捜査機関が被疑者に対し出頭を要求し、これに応じないものとして刑罰に処することが許されるならば、前記刑事訴訟法第百九十八条及び憲法三十一条により保障されたる犯罪容疑者の出頭拒否権は正面から否定されるのみならず、こういう判決の理由になっておる。ですから、刑事訴訟法の三百八十二条に事実の誤認があって、その誤認が判決に非常に影響を及ぼすものは、これは控訴して争わなければならないことが書いてある。ですから、これは世論の上からいっても、法律の建前からいっても、もし鬼怒川会談ということが全然証拠もない——ないというこの判決が不当なものであるならば、それを第一の控訴理由として争わなければならないじゃありませんか。なぜそれを争わぬのか。争わぬとすれば、今の控訴制度は覆審制度じゃない、続審制度だから、この事実を認めたことになるのじゃないかということをあなたにお尋ねしておるのです。  それからなお、あとの答弁をあなたは誤解している。判決後に新たなる証拠が現われたならば、それも控訴の理由になるということが刑事訴訟法に書いてあるから、今からでも遅くない、何か鬼怒川会談があったという新しい証拠があるならば出せばいいじゃないか、こういうのが私の議論です。それも出さぬということになると、鬼怒川会談というものは荒唐無稽のものだということを裁判所で確定されてしまうのではないか、それでよろしいのかという私の質問なんです。まあ、あなたがそれに対して答弁いたされなければやむを得ないのですが……。そうすると、われわれとしては、本件の松本三益氏の事件もしかりであり、長谷川浩氏の事件もまた実に奇怪なやり方であると申し上げざるを得ない。それだけ申し上げておきます。
  139. 花村四郎

    ○花村国務大臣 猪俣委員が言われる第一審判決の争点は、検察当局と見解の相違があろうと思います。検察当局は、鬼怒川会談が事実あったかなかったかというよりも、むしろ出頭を何ゆえせざりしかという点について争点を集中しておるのでありますから、この点についての論争をすることによって事足れりという見解のもとに控訴をしておるのではなかろうか、私は今この趣意書を拝見してこう思うのであります。でありまするから、猪俣委員の言われることは、要するに争点についての見解の相違があるのじゃないか、こういう結論に到達することであろうと存じます。
  140. 猪俣浩三

    ○猪俣委員 花村大臣も、あなたの部下のやられた控訴趣意書をよくお読みになって、しかる後に次回に御答弁願わぬとあるいは御無理かも存じません。もっと頭を冷静にして、そうしてよく下僚と御相談の上で答弁願ってもよいじゃないか、私が突如として出したものですから。しかし今の御答弁は、控訴の趣意書と非常に違った、矛盾した答弁になるのです。控訴の趣意書の第一点が最も力点を置いているのは、あの特審局で呼び出したのは犯罪の捜査の呼び出しではなくて、行政目的のための呼び出しである。それを裁判所では捜査の目的のための呼び出しのように誤認したのだ、こういうことが力点になっている。ですから検察庁の重点は、結局はさかのぼって特審局が、鬼怒川会談のような暴力破壊行動をやるおそれのある事実、それがあるということで特審局が呼び出したのだ、そういう行政目的のために呼び出したのだということが、呼び出しの目的である。しかるに裁判所では、犯罪捜査考え違いをしているのだというところに力点があるのです。ですから、今のあなたのような議論を展開していくと矛盾したことが起ります。しかしこれはよくまた法務大臣御研さんの上で、次回にでも御答弁を願いたい。そしてこの田中検事正代理の出した昭和二十九年九月三日の控訴趣意書なるものは、わが国人権擁護の上からエポツク的な趣意書だ。これに対して適切なる、周到なる御研究を願いたい。そうしてなおあわせて、第一審の判決理由をよく熟読して、法務大臣の意見を確立していただきたいと思います。私はこれは重大なる矛盾を含んでいると思う。かようなことがみだりに行われ——もう現にやられている。とても自由だの人権だのはちの頭もありません。これはよく御考慮願いたい。私は質問はこれにとどめますが、なお一点、長谷川浩氏は、いつが勾留期限でありますか、それをお尋ねいたします。なお勾留の期限が来たならばそれを更新なさるのかなさらぬのか、もうすでにしてしもうたのか、それを明らかにして下さい。お尋ねのついでに、今長谷川浩君についても、さきの答弁で、公安調査庁も何かわけのわからぬようなことを言ってしる。どなたもおわかりにならぬようなことを言っている。しかも最もよくわかっている裁判所では、鬼怒川会談なんというものは根も葉もないものだと言っている。しかるにかかわらず、同じ理由逮捕されましたる長谷川浩君を勾留の更新をしなければならぬとするならばいかなる理由があるわけであるか、それを明らかにしてほしい。
  141. 花村四郎

    ○花村国務大臣 猪俣委員の御質問にお答えします。長谷川浩の勾留期間満了は本日であります。従いまして、更新するやいなやは目下研究中であります。
  142. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 私は、午前中の古屋、志賀両委員質問に関連いたしまして、一点お伺いしたいと思います。この委員会報告された人権侵害並びに人権侵害類似の報告事件は多々あるのでありまして、このほかにも全国を通じて多数あるであろうと考えるのでありますし、また本日ただいまも、なおこれらの行為が行われておるのではないかと深く憂うるものでございます。  そこで、古屋委員の午前中の質問に対しまして大麻国務相は、非常に申しわけない、関係当事者に対しても、国民に対しても、申しわけないから謝罪をする、こういうことを申されましたが、一体その謝罪するという内容はどういうことでございましょうか。ただ頭を下げて、どうも済まなかったと言えばそれで済むとおっしゃるのですか、その内容を一つお伺いしたいと思います。
  143. 大麻唯男

    大麻国務大臣 申し上げたように、まことに相済まぬと思って、おります。でありますからして、その関係者にはよくそれを戒め、それから、これから再びそういうことがないようにするということが私はおわびする唯一の方法であると考えております。
  144. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 それでは当事者を戒めて、あるいは減俸その他の処置をするということで、あなたのおっしゃる国民に対する謝罪ということは済むのでありますか。先ほどはあなた自身がまことに済まないことだとおっしゃったから、あなた自身が責任をとるのであろう、私はこう考えておった。しかもあなたは、各当事者に対して、国民に対してと申されましたが、各当事者に対する責任は、越権行為であれば、限度を越えておれば、民事上の損害賠償あるいは国家賠償の問題も起ろうと思います。しかし、これは被害者の請求を待って初めて論ずるのでありますから、私はこれは関与はいたしません。しかし、国民に謝罪するということは、政府のとった処置が惑いから、これに対して政治的責任をとるということでなければ、私は意味をなさぬと思う。あなたの責任の限度、態様、そのことについて私はお伺いしたい。ただ謝罪をするという、もみ手をしてあやまるというような、そういうことを私は言っているのではない。ここは政治上のことを論議するところでおりますから、あなたの政治上の責任をいかにとるか、これを私はお伺いしたい。
  145. 大麻唯男

    大麻国務大臣 いやしくも責任者衷心から、これは悪かった、こう考えまして、その関係者たちをただし、そうして再びあやまちをしないように、国会の法務委員会の席上においておわびをすると申し上げた、それが私は非常に大きな謝罪だろうと思っております。それが責任をとるゆえんだろう、かように考えております。私は、ただ口先、だけで申し上げておるのではありません、しんからそう思っておりまして、再びそういうあやまちをさせない、こういうふうに処置をとりたいと真剣に考えておるのでございます。それを申し上げたいと思います。
  146. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 人を殺して、どうも悪かったといって、謝罪では済みません。やはり判決を受けて、それに対する制裁を受けるのです。窃盗をしても、あやまっただけではなかなか許されない。法律がこれに制裁を加える。政治上のことについて過失なり責任があれば、政治上の責任はやはり形においてとらなければ、その人の任務は済まないと私は考える。あなたはただ頭を下げてあやまればいいと言われるが、そういうことを聞いてほんとにする人はおそらくなかろうと私は思う。ですから、あなたが責任をとるのか、あなたの下のどの程度まで責任を負うのか。私は次の質問に移りますが、当局としての責任を今後どうとるかということをお伺いしたい。
  147. 大麻唯男

    大麻国務大臣 先ほど来申し上げております通りに、ただおわびをすると口先だけで言ってあやまれるものではない、それは私だってわかりますけれども、そういうあやまちを再びせしめないようにする、そしておわびするとこの席で申し上げた以上は、それで私は大ていお許し願えると思うのです。
  148. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 具体的におっしゃらずに、あやまれば許して下さるであろうとおっしゃるのですが、それで済むか済まないか、これは委員各位の御判断におまかせいたします。それではこれからこういうことが起らないような方法をいかにとるか、先ほどの警察当局のお話では、訓示をしたり、反省を求めたり、あるいは減俸その他の処置をとる、こういうことでありましたが、しかしこれだけでは、全国に起っておるところの人権じゅうりんというものを阻止することはできないと私は思う。なぜなら、これは人間がやっておるのではない。権力というものがやつでおるので、人がやっておるのではないのですから、権力に対する制限を加えるという何らかの制度なり措置をとらなければ、やはりこういうあやまちを繰り返すと思うのです。取調べのときに、刑事なり検察官なりが、書記官と二人で調べる、そういうことをやるからこういう問題が起るのであって、しかも、こういうことをされた、ああいうことをされたということを外へ行って言っても、証拠がないから、そういうことをしないと言えばそれで済む。でありますから、このことを繰り返さない、人権の擁護をけるためには、この権力に対してブレーキをかける、もしくは制限を加えるという方法一つとして、検察官の取調べ、警察官の取調べに当っては、必ず弁護人をつけるとか、あるいはまた補佐人をつけるとか、公平な三者の立ち会いでも置かなければ、とうてい権力に対する制限というものはむずかしいだろうと私は思う。こういうことについて、将来ほんとうにこういうことを阻止するのならば、こういう制度でも、何かはかの方法考えなければならぬと思いますが、法務大臣のお考えを伺いたい。
  149. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ただいまの御意見、まことにごもっともなようではありますが、しかし、今の法制下においてはちょっと困難であると申し上げるより仕方がありません。
  150. 田中幾三郎

    ○田中(幾)委員 この点についてはそうあっさりとおっしゃらずに、もっと真剣にお考えにならぬというと、こういう事件がふえてきたならば、法務大臣なり公安委員長の首がふつ飛ぶようなことがあるかもしれませんから、どうか一つ十分御研究を願いたいと思います。
  151. 志賀義雄

    ○志賀(義)委員 ちょっと関連しまして。きょう勾留期限が切れる問題でありますから……。  先ほど、長谷川浩君なる人物勾留更新を請求するやいなやまだ検察庁において未決定だということでありましたが、刑事訴訟法の第二百八条第二項に、「裁判官は、やむを得ない事由があると認めるときは、検察官の請求により、前項の期間を延長することができる。この期間の延長は、通じて十日を超えることができない。」とある。十日を越えることはできないということは、更新をするわけでありますが、検察官の方においてやむを得ない事由があって勾留を更新せられたとすれば、どういう理由があるのでありましょうか、その点について御答弁願いたい、
  152. 花村四郎

    ○花村国務大臣 その法文の解釈の「事由」というのはいろいろありましょう。事件の内容によって異なりまするからどうこうとはここで申し上げられませんが、しかし、多分、長谷川浩に関する問題についてお聞きになろうという意味に私は思いますが、それは、先ほどの答弁のように、目下研究中であると申し上げた通りであります。
  153. 世耕弘一

    ○世耕委員長 生田宏一君。
  154. 生田宏一

    ○生田委員 過般行われました数々の選挙において、徳島県に発生した人権じゅうりん、選挙取締りの不公正、人命擁護等について二つほどお尋ねをしなければならないことがございます。その一つは衆議院選挙のときに、徳島県の警察本部が、虚偽の情報に基いて三名ほどの人間を逮捕いたしました。取調べを続けておりまするうちに、虚偽の情報に基くものなることが判明をいたしました。徳島の検察庁は、事件の内容がはっきりしてきましたので、容疑者を釈放して、虚偽の情報を提供した者を逮捕して調べるように、こういう意見を出されたように承わっておりますが、警察の本部の方ではついに勾留を更新して、満期二十二日取調べをいたしましたが、ついに三名は事実無根なることが判明をしただけで釈放をせられました。その間に第三者の民間人が事件に容喙をして、あるときは署長の部屋で夜分に署長と同席の上で被疑者の取り調べをした。また同じ民間人が、夜陰二度留置場のかぎをあけさして、勝手に容疑者を引っぱり出して、いろいろな情報連絡をつかむためと称する行動をとり、また容疑事件について供述をすみやかにするようにというような勝手なことをいたしました。このことはすべて明白になった次第です。そこで徳島県警察本部では、警務課長が監察官の主任になってこの事件の、取り調べをいたしましたし、検察庁自身も、その衝に当った警察官、容疑者、虚偽の情報を提供した者、またはこの事件に介入をして物議をかもした第三者の民間人等について、逮捕しあるいは取り調べをいたしました。そうして警察本部長は徳島県議会においてその真相を遂に発表せざるを得なかった。そういうような不実が起きておるのでありますが、警察国務大臣である大麻大臣のところへそのような報告が来ておりますか。来ておりましたならば、そのてんまつについて御説明を承わりたいと思うのです。また法務省関係の方では、徳島の検察庁がこの事件を逆な立場で取り調べをいたしておりますので、その取り調べの内容の御報告がふりましたならばこれも承わりたい、こう思うのでございます。
  155. 大麻唯男

    大麻国務大臣 お話の通りのようでございます。担当いたしております者が参っておりますから、お答えいたさせます。
  156. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 ただいま生田委員の御指摘事件は、徳島県におきまして起りました。その当時の状況等につきましても、大へんよくないことでありますので、私どももよくこういった関係事情を聴取いたしましたので、その事情等のあらましを申し上げたいと思います。  御指摘がありました通り、過般の衆議院総選挙に当りまして、違反情報を得ました徳島県の警察におきましては、その情報をまず得たのでございますが、その情報を一片の情報だけで捜査を進めるということは大へん危ない場合が多いのでございますので、これは各警察ともその情報の確実性という点については慎重に検討する、こういう態度をとっておるのでありますが、徳島県警察のそういった態度が慎重さを欠いたのではなかろうか、こういう疑いを私どもは持ちまして、大いに事情を調べたのでございますが、最初得た情報につきましては、係官をかえましてそれぞれ三回にわたって事情を聞いておるのでございます。その他のいろいろな点について慎重な手続ないしは関係の向きの連絡等も行なっておったのでございますが、だんだん捜査が進捗するに従いまして、三回ほど念を入れたとは申しながら、その情報につきまして疑義を生じまして、だんだんそれを調べて参りましたところが、最初の情報提供者が虚偽の情報を言っている、こういう容疑が明らかになりましたので、その最初の情報提供者に対しましては、刑法の誣告の罪の容疑でこれを警察におきましても逮捕いたしまして、そういった関係のいわゆる虚偽の情報によって人の自由が束縛されるという点につきまして検討を加えたのでございます。さらに御指摘のございました警察署長室におきまして拘束しております被疑者が、ある民間の方と会っておる、こういう事情等につきましても私ども聞きまして、その間の事情も調べたのでございますが、その会われた方は早く陳述を言うようにという趣旨のことをおっしゃったようでありますが、そういったこと等につきましても適切を欠く、こう認められる節が多いのでございます。それから留置場で拘禁中の被疑者に対しまして民間の方が看守のおるのを退けて会っておる、こういう事実も御指摘事情がございました。そこで徳島県警察におきましては、そういった関係の人間を監察官をして十分検討を加えしめて、その行為等について過失があった点、職務怠慢であった点の解明に努めておりまして、現在もその解明のもとにそれぞれ必要な処分等につきましても一部実施しておる、こういう状況でございます。いろいろ御指摘のように、こういった捜査に当りましては、情報がありましても、その情報に基くについてはあらゆる角度から検討を加えまして、場合によりましては怨恨その他の私情によって情報を提供することも少くありませんので、こういった点の慎重な解明ということはまことに御趣旨の通りでありますので、そういった点はひとり徳島県警察だけに限らず関係者がもっと真剣に考え、こういった点をこういう機会にさらに徹底するように努力しておる次第であります。
  157. 花村四郎

    ○花村国務大臣 大体ただいま中川刑事部長が申し上げた通りでありますが、なお人権擁護局においても取り調べておりますから、人権擁護立場から説明の必要がありとおっしゃられるならば局長をして説明させます。
  158. 生田宏一

    ○生田委員 警察の方では、これについて何か当事者の処分はいたされましたでしょうか、それをちょっと承わりたい。
  159. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 ただいま申しましたように、この関係者の過失、故意、職務怠慢という点につきましては、慎重に検討を加えまして、それぞれ処分をしておるのであります。その処分の状況は内容等によりますが、内容に基きまして懲戒委員会を開きまして、それぞれ必要な処分を講じておるのであります。
  160. 生田宏一

    ○生田委員 その処分の内密を……。
  161. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 その処分の内容を現在講じておる、こういう点は私どもはよくその事情承知しておるのですが、その内容の詳細について目下向うに照会しておりますので、参りましたらお答えいたします。
  162. 生田宏一

    ○生田委員 それではお尋ねをいたします。山本警察本部長の県議会に対して行いました報告でございますが、その内容を拝見してみますと、二月二十一日に板東義明という男が情報を提供した。その板東の申すところによれば、生田の選挙事務所における森達雄という男が、橘という男に選挙運動資金として、買収資金として十万円の金を渡した。二十七日になればその中から二万円私にくれる約束になっておる、そのような情報を岡地という刑事を通じて提供した。ところがその情報がきわめて真実性があるので、選挙投票前であるけれどもこれに着手せざるを得なかった。なお着手せざるを得なかった理由として、板東という人間が、投票の二十七日が済めば二万円を手渡されることになっておる。そこでせっかくれた板東を犯罪人として取扱わざるを得ないので、やむを得ず、二十一日に情報の提供を受けておるので二十三日に本人を招致して調書をつくって、それを基礎にして二十四日捜査を開始した、こういうのですが、これにあやまちございませんか。
  163. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 御指摘になりました事案の要点は、山田という人間が、岡地その他関係者三人でありますが、巡査部長警部警部補、こういった人間につきましてそういう情報の提供があった。それから最初の提供は巡査部長であったけれども、それに不審を抱いて、人をかえて三人聞かしめた。それから事件を強制処分に着手する直前には、別に、逮捕処分をする以前に捜査を実施した、こういう点の報告を受けておる点については間違いございませんが、それ以外の分ですね。たとえば最初板東という人に罪が及ぶのでこうころしたとかいう点について、県議会におきまする報告があったという点は、私は承知しておりません。
  164. 生田宏一

    ○生田委員 それでは二十一日に情報を受けて二十四日捜査に着手するまでの間に何か裏づけの捜査がありましたか、あれば一つお示しを願いたいと思います。
  165. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 その点の状況は、最初情報を得た人間だけの報告によることなく、別の人をかえて、捜査員をかえて情報提供者に事情を聞いた、こういう事柄と、それからその情報に基いて強制処分するのに、逮捕という重要行為をするに先立って、もちろん捜索も重要でございますが、捜索することによって事を処理していこう、捜索によってその情報そのものをきっと裏づける証拠はございませんでした。ただしそういったことについてその情報真実ならずやと推知できるような資料を得た、こういう点の状況は調べておりますが、それ以上の証拠はございませんでした。
  166. 生田宏一

    ○生田委員 それで私はお尋ねをするのですが、山本君が発表したことですから間違いないと思うのですが、板東義明という男が情報を提供したが、この板東には橘から二万円を差し上げることになっておる。それでもし投票の二十七日に二万円の金が手渡された後にこれを検挙するならば、情報提供者に対しても犯罪人として取り扱わざるを得ない。これがかわいそうであるから選挙投票前の事前の検挙等もいたし方なくやったのだ、こういうことに山本君が説明をしておるのですが、どうでございますか。こういうことはあなた方が取締りの前線の担当者となって考えてみたときに、これは合理性のあることなんですか、合理性のないことなんですか、私はこれはどうしてもふに落ちぬのですが。板東なにがしという男は、理髪と美容の商売をやっておるのですが、自分が経営しておる店の徒弟に対して昨年強姦罪を犯して今二年半の執行猶予中です。そうして岡地という刑事とはきわめてその事件以来逆に緊密な状態になった。そうして常に警察に出入りをしておることも、これは隠すことのできないことなのです。そのような市民としてもきわめてどうかと思われる条件を備えておる男です。その男の持ってきた情報に対して、警察がどこが信用ができるのであって、どうしてそれへ信を置いたのであるか。また裏づけをやって見ても、確たる裏づけはないと今あなたはおっしゃったんだが、しかし二十七日になれば二万円の金をその人間が手渡しをされるのであるから、かわいそうだからそれは先にやったという考え方は、どうしても私は理屈に合わないと思うのです。これはおとりの事件じゃないかと私は思っておるのです。助けてやるのならば、柏原君その金はもらってはいけない、もらえば犯罪者になるんだから——これはすでに予約をしておるのですから犯罪は成立しているのです。その人間がかわいそうであるならば、その金をもらってはいけない、それは断われと言って親切に教えてやるのが警察の態度だと思うのです。ところが漫然と流しておいて、そうしてもらわれちゃ困るというお話は、私は親切な態度ではないと思う。しかもそれが選挙投票前の四日に事件に着手しなければならない理由とは私は考えられない。しかもこれは計画的に控造せられた情報に基いた逮捕、ある意味ではこれを選挙干渉です。大きな選挙干渉ということが結果づけられるのに、一人の人間が犯罪を犯そうとしておる、それに忠告も与えずに漫然と二十七日まで流しておいたならば、その男が犯罪人になる、警察に情報を提供したかわいいやつだから先に検挙しよう、僕はこの意味がわからないのですが、果してそうならばおとりを使った柏原——これは板東という男ですが、そういうことになるのですが、その事実についてはお取調べになったことがございますか。
  167. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 具体的に御指摘の山本君が県議会において報告した報告事項のうちで、もらうことを約束した人がかわいそうであるから早く検挙した、こういう言動等につきましては、県議会の話の要点等に至る点は、まだ私の方で未調査でございますので、そういった点はよく調査してみたいと思います。お話の趣旨を拝聴しておりますと、そういった言動をすることはふに落ちませんから、さらに調査して参りたいと思います。  それから最初の情報提供者が御指摘のようにおとり罪になるか、またおとり的であるかという点につきましては、私どもはそういう容疑を持ちますし、地元の捜査機関も、警察におきましても、検察庁におかれましても、その誣告の容疑がある、こう認めまして、これは警察におきましてこれを逮捕いたしまして、その謹告の点につきましては十分捜査したのであります。これは捜査進行中と私理解しておるのでありますが、それでそのにせ情報を提供したと申しますか、最初の情報を提供した者の状況等もほんとうに捜査を進めるという建前で警察も検察庁におかれましても進められておるのであります。
  168. 生田宏一

    ○生田委員 それから柏原をお取調べになったのは何月何日でございましたでしょうか。そうして柏原を逮捕せられたのは一回でございますか二回でございますか。
  169. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 最初の情報提供者がいろいろ姓名が変っておりまして、私どもは山田と理解しておりますが、以前板東という姓を唱えたこともあるように聞いておりますので、それを同一人であるという前提でお答えをいたしますが、情報の提供を受けましたときに、その情報の状況は人をかえまして三回なされた、私の方の調査ではそういうふうに理解しております。それから、それは事前の話でございますが、その情報が不確実な情報であった、ことに虚偽である、こういう容疑を持ちましてからは、誣告の罪の容疑によりましてこれは強制処分に付しましたが、その捜査に着手した日はちょっと今記憶しておりません。強制処分にいたしましたのは、まず逮捕いたしまして……。
  170. 生田宏一

    ○生田委員 それは一回ですか、二回ですか。
  171. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 逮捕ですか。逮捕はずっと留置しておりますので、一回が引き続いております。謹告罪容疑事件として一回やっております。ただしお示しのような、以前の他の刑法犯、強姦、ああいった事件についてはもちろん別にやっております。
  172. 生田宏一

    ○生田委員 それではお尋ねいたしますが、柏原に対する処分は、まだ未決定ですか。あるいは処分決定済みでございますか。
  173. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 柏原被疑者につきましては、捜査はそれぞれ進めております。これは警察の捜索、検察の捜索、それぞれ刑事訴訟法手続通り進行しておりますが、最終決定は検察庁でございますので、その点まだ正確に私から申し上げることはできません。
  174. 生田宏一

    ○生田委員 検察関係の方にお尋ねいたしますが、虚偽の情報を提供した謹告の罪に当る柏原という男については、処分が決定いたしておりますか、いかがでございますか。
  175. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ただいま中川刑事部長も申されましたが、山田義明というのに対しましては目下捜査を進めつつあります。  それから先ほど私があやまちだというので取り消したのでありますが、これはあやまちでなくて、名前の書き間違いでありまして、久米敏夫というのはやはり本件の亀田昇に面会すべく、警察の留置場へ無断で入っていったという事件が派生的に起きまして、そうしてこれに対してはすでに起訴してあります。これだけ御報告申し上げます。
  176. 生田宏一

    ○生田委員 板東とか柏原とか山田とか、たくさんの名前のある男ですが、私はこれに対する処分が、すでに不起訴処分だという決定をされたということを郷里の新聞で見ておるのですが、間違いございませんか。
  177. 花村四郎

    ○花村国務大臣 まだ処分決定には相なっておりません。
  178. 生田宏一

    ○生田委員 それではお尋ねをいたしますが、いろいろちまたの情報、それから私に入ってくる情報、そういうものがたくさんあるのですが、本件についてはその柏原という男と、それから徳島市の国警の東署の幹部たちの間には、かなり忌まわしい風聞がちまたに流れておる。特に風紀に関する問題では乱脈をきわめておる、こういうことが入ってくるのです。真偽は知りません。その事実は、徳島県の検察庁の方で、関係者の取調べをされたときに、柏原という男が自己を守らんがために、そのような乱脈をきわめた内情を供述しておるということが耳に入ってきておるんです。そこのところの真偽のほどはよくわかりませんが、これは本件に対する心証上非常に大切なことでございまするので、真相をよく御調査を願いたいと思うのです。特に柏原と称する夫婦の関係、柏原ないし柏原の妻の関係も、警察官との問でかなりのうわさが出ておりますので、真偽は存じませんが、これもよくお取調べを願いたいと思うのであります。  それから私がお尋ねをいたしたいのは、本件に着手しましたのは二月二十四日の払暁でございました。そして一番に家宅捜索に参りましたのは、その森君の働いている候補者である私の宿所、私が宿泊をいたしておる宿屋の検索を午前六時にしたのです。ところが私と森君との間には何も選挙違反の容疑は浮んでおりません。その浮んでいない候補者の宿泊している宿屋の検索を第一番にやったということは、これはいかなる事実に基くものでしょうか、これをお尋ねしたいと思うのです。
  179. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 最後の御質問の捜索の点ですけれども、御指摘事案は柏原——われわれは山田と言っておりますが、山田の供述といいますか、山田が言った事柄が中心基礎になりまして、それに基きまして捜索、差し押え、それから関係者逮捕、こういう事項が行われております。それが御指摘のように、当該事実は虚構の情報であったということが後ほどわかったのでありますが、それに基く捜索でございますので、その捜索の根本がゆらいだということになります。その起訴も山田何がしの供述を中心にした起訴でございますので、同様に逮捕、捜索を含めて、その全体の捜査が、少くとも結果的には不確定な捜査であったということになるわけでありますが、その一環として今の捜索の問題が現われたような次第であります。
  180. 生田宏一

    ○生田委員 ただいまのでは、ちっとも私の宿所を捜索しなければならない因果関係が出てこないんです。しかも第一に着手したのは、私が泊っている宿屋、そうして私の居室、宿屋の主人の帳場、これを検索、捜索したのですが、どういうような当然性があってこのような捜索をしなければならなかったか。その理由を承わりたい。
  181. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 ちょっと私は取り違って恐縮でございますが、関係者のその情報に基く行為が行われる個所についての捜索の点についてお答えをしておるのでありますが、ただいまの点については私聞いておりませんので、調べまして……。
  182. 生田宏一

    ○生田委員 それを私はお尋ねしておるの百です。事件関係者でない私の家宅捜索をなぜしたかということ、しかもそれが第一番にされた。本人逮捕本人の家宅捜索、また選挙事務所の家宅捜索以前に、それに先だって、何も事件関係のない私の家宅捜索をなぜしたか、その理由を私はお聞きしておるのです。
  183. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 ただいまの点は、至急調べましてお答え申し上げます。
  184. 生田宏一

    ○生田委員 ちょっと申し上げておきますが、実はこの件につきましては、私は山本本部長に三月一日お目にかかっておるのです。そうしてこのことについて私がお尋ねをしたのです。山本君は非常に困った顔をせられて、それにお答えになったのは、森達雄という人間の住所がわからなかったから、候補者のあなたと宿屋で同宿をしておるのであろうという推定のもとにあなたのところへ家宅捜索に行くことを許容した、こう言うのです。森達雄という男は徳島県の信用組合の理事長をしておるのであって、徳島市内に宿舎があって、市内にある私の事務所に毎日通ってきておるのです。私が宿泊をしておる宿屋の前には、選挙始まって以来国警の人が張り番に立っておるのですから、だれがここで寝泊りしておるかどうかはすべて明白な事実なんです。自分の家へ毎日々々帰っておるのは知っておるのです。また一流人物ですから、その事実がわからなくて選挙の取締りができるはずはないのです。私は何か意図があって、柏原の虚偽の情報をこれ幸いに利用して、裏づけもせずに事件に着手する。その着手の第一が、候補者である私の選挙運動の中核に飛び込んで来た。やってみたところが何も出なかったので、あわてて選挙事務所を家宅捜索をする、本人逮捕する、こういうことになったと私は今もって確信しておるのです。山木君に会ってみても、山本君はちっとも私を納得させる話をしていない。また森君も橘君も亀田君も、事件関係者はすべて面識のない人間同士であって、何らそこには話をしたこともない人間なんです。これは間違いの事件ですから、すぐにおおきになったらよかろう、こう言ってぼくは忠告したんですが、どうしても国警の本部ではそれを聞かない。何かそこになくてはならぬと思うのです。私はこれは大麻大臣にお伺いをいたしますが、ほんとうにあなたの方では選挙の取締りにつきましては、誠心誠意公平なお考えでやっておられたものであるかどうか。今回の選挙の取締りの状況を見てみますと、むしろ戦前派的選挙干渉のにおいがするのです。私にはそう考えられる。たとえば選挙の投票が近づきました一週間くらい前から、尾行をする刑事諸君は、運動員がだれか人と立ち話をしておると、お前だれと話していたか、だれそれと話をしていたのと違うか、やそんなことはない、だれそれ派の選挙に携わっておると大へんなことになるからよく注意しておくがいい、こういう話です。私はその人をあげることができるのですが、そういうことが各所において行われておる。そうして選挙運動のほこ先といいますか、それを、折っておいて、運動員が働けないように家に閉じ込めておいて、その反面には、これは偶然そうなったのか、故意にしたのか私は知りませんが、たとえばだれそれ候補者の選挙事務長が収監をせられた、その女房が収監せられた、その兄弟が逮捕せられた、そういってデマを飛ばされた。私がその被害者です。そういうことが偶然の事実であったかどうか知りませんが、私はほんとうに選挙が公正にできておったとは、私の徳島県では考えるわけにいかぬのです。もし大脈大臣がほんとうに公正におやりになったというのであれば、私は大臣からその御所見を承わりたいし、またあなたがそのようにお考えになっておったにもかかわりませず、部下がそれを聞かなかったということならば、私は厳重なる処罰をもって臨まれたいと思うのです。御所見を承わります。
  185. 大麻唯男

    大麻国務大臣 先ほど来生田さんのお話を伺って驚いておるような次第でございます。私は誠心誠意今度の選挙は公明選挙が行われるように、楽しい選挙で終るようにと願っておりました。それからまたそれに近いものが実現されるであろうと思っておりました。しかし今日あなたのお話や事実を伺ってみまして実に驚いておるような次第で、なるほどそんなことがあったかと思って、自己の不明を実は痛感いたしておる次第でございます。思うにこういう弊害があったというのは、これは私今お話を伺って気がついたことでございますが、公明選挙とか公平な選挙とかいうことは、政府が野党諸君を極端に圧迫するとか干渉するとかということをためなければいかぬ、そればかりに重点を置いたために、今お話のような人権じゅうりんというか不都合というか、その前にワイズでない、実にばかな情報をほんとうに受けてやったという愚かしさというものが伴っておるように思うのでございます。これはとくと一つほんとうにまじめにきびしく取り調べまして、断固たる処置をしなければならぬ、かように考えておる次第でございます。
  186. 生田宏一

    ○生田委員 法務大臣にお尋ねするんですが、私は検察庁が本件にとった態度というものは、非常に公平な処置だと思って実に敬意を表しているんです。というのは、この事件を着手せられて間もなく白だということが明々白々になって来た。そこで徳島の地検では、たしか植村検事が担当検事ですが、容疑者を早く釈放をして、情報を提供した者を逮捕して誣告罪で調べるのがよい、こういうことを逮捕後一週間前後に警察の方へ通知をしておられるそうです。そこで地検の方がお取調べになったのは、事件関係者及び取調べをした警察官に対しても行なっておるんです。そこで関係調書は私はできていると思いますので、先ほども前の質問者が言っておりますごとくに、これは刑法百七十二条で誣告の罪は実にはっきりしているんです。別にこれは親告罪でもございませんが、これに対して警察本部長も虚偽の情報だということを認めておる、また地検の方においてもこれが虚偽の情報であるということをお認めになっておる。虚偽の情報に踊らされたということを根拠にしていろいろな意見が述べられている。ただ残っておりますことは、これに対する処分といいますか、そのようだ誣告の罪を犯した人間の処分が残っておるだけでございます。そこでこの処分があいまいにせられるならば、これは将来ゆゆしい問題だと思うのです。というのは、柏原が今もって処分されないのは、もう取調べはほとんどできているに違いないと思うのですから、柏原が処分せられないのは、柏原とくされ縁ができている警察刑事関係者、それらとの間がどうしても柏原を処分するわけにいかぬのであろう、こういう町のうわさが飛んでいるわけです。そこでこの際警察は虚偽の情報に踊らされたという不明の責任というものはとっていただかなければなりませんけれども、訓告の罪を犯した者をこのまま漫然とおくわけにはいきますまいと思います。いわんや留置場に侵入をしで、容疑者といろいろな話をしたとか、あるいはまた署長室で署長立会の上で容疑者に自白を強要した、それがためにその容疑者は腹立ちまぎれにうその自白して五万円もらった。追及すると、実は腹立ちまぎれに言ったところのうそであったということで、これもおじゃんになりました。そういう事実があるのです。そういうことを犯した久米という人間に対しては、住居侵入ですでに処分をしております。略式で八千円の割金になっております。その住居侵入になった原因は、留置場へ入ったということなんですが、留置場へ入ったのは本人が酒一升五百円で買って行って、そこの当直の野口という巡査に飲ませ、またそこに居合せた大塚とかそれから篠原という巡査に飲まして、そして酒を飲んだそのあげく、上司も了解しておることだからというので、野口巡査に合かぎを持たせて、野口巡査が監房のかぎをあけてその容疑者を引っぱり出して、何か連絡することはないかとか、あるいはもうこんなところへいつまでも入っていることはないから早く出た方がよかろう、こういうような不届きな所業を行なっておる。そのことは、徳島警察も明らかに酒を一升飲んだ事実も認めておるし、また署長室ではまんじゅうとピースを久米という人間が持って入って、容疑者にピースを二本のまぜている。そのものをだれとだれが食ったかまでは私は調べておりませんが、容疑者がピースをのんだことは間色遅いない。本人がちゃんと調書にも供述しておりますから、そういうことは間違いない。しかしながら、その久米の罪は久米の犯した犯罪であって、これは官紀紊乱ではありますけれども、しかし大きな刑事行政からいえば、これはむしろささいな問題である。虚偽の情報によって選挙干渉に近いようなことを行たったというふうなその方の過失の方が大きいだろうと思うのです。その久米の方はすでに処分が行われて、看守の了解を得て入ったのだけれども、しかしながら署長の承諾を得てなかった、これが住居侵害になるというので、八千円の略式の命令を受けておるのてす。そのような牽強付会な処分をしておるのです。これでもって一応世人の批判を免れることができると考えて、そうして虚偽の情報によって選挙を撹乱し、当局をして選挙干渉にあらずやというような所業にも及ばしめた、こういう問題についてはいまだ処分をせずにおるわけです。すみやかにこの処分をされることが好ましいと思うのですが、この処分をきれるおつもりであるかどうか。またそれによって踊らされた警察官の問題についても、どのような処置をされるのであるか、この二つ処分がきまりませんことには、今後の選挙というものが公平に取締りができないと私は考えますので、その処置についてはお二人の大臣はどのようなお考えでおられますか、これを承わりたいと思います。
  187. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ただいまの事案については、これは単純な誣告とも思えませんので、従って慎重を期して取調べを進めておりますが、ただいま御質問中にありました官紀乱の点につきましては、もし事実とするたらば、これはゆゆしい問題であると申し上げてよろしいと思いますので、二の点は徹底的に調査をいたしてみたいと思っております。
  188. 大麻唯男

    大麻国務大臣 関係警察官処置につきましては、事実をよく取り調べて、そうしてきびしく処置をするつもりであります。
  189. 生田宏一

    ○生田委員 もう一つ、私は人権擁護ではなしに人命擁護のためにどうしてもお尋ねしなければならぬことがおるのです。それば過般行われました徳岳県知事選挙において、徳馬市の津田町に大津市右衛門という男がおりまして、これはちょうど大麻国務大臣くらいの年配の人で、昨年の暮軽い脳溢血になった。そうして津田町の漁業組合の専務理事を退いて専心自宅で療養中の男でした。ちょうど肥満したタイプも年配も大麻大臣と同じくらいで、しかもその脳溢血は相当程度遊んだ脳溢血で常に両手がふるえており、立ち居につきましては、家人の手を借りなければ起きたりすわったりすることがなかなか困難の状態でありました。その男に饗応の容疑でありますか、買収の容疑でありますか、私ははっきり存じませんが、違反容疑が浮んだ。そこで四月二十八日にこれを逮捕いたしました。そのときに家人は、お見かけの通りの老人であって非常に危険な病状であるから在宅のまま取調べをしていただきたいと言って嘆願をしたのでございますが、逮捕に参りました警察官は、これを強制逮捕して、そうして徳島東署の留置場に入れたわけです。二、三日取調べをしました結果、二日目でありましたか三日目でありましたか、払暁の五時ごろに同房の人が容体があらたまったことを発見して、ゆすってみましたがものを言いません。驚いてこれを当直り看守に告げたのですが、十一時ごろになって医者に見せております。そうして病状の悪いことを医者から告げられるや、十二時に家人にこれを通知して、そうして午後になって本人を自宅に引き取らせたのです。それでかついで帰ったのですが、その老人は、朝監房で病状が悪くなっておるということを発見して以来、自宅にかついで帰られて死亡いたしますまで、遂に一言も発せずに死亡いたしました。容疑について取り調べるのはもちろんでありますが、そういう危険な状態にある病人を在宅取調べを許さずして警察で取調べをして、そうして板の間の上で毛布一枚で、そのまま寝かしておいた。この事実は私が東京に来ました後に電話連絡で聞いたことですから、さらに詳しい情勢は刻々私の手に入るはずでございますが、この簡単な事実を見ましても、いかに人権の擁護ができていないか、人命が粗末にされているか。また取調べの警察官が、ある場合には感情的になって事件を処理をしておるということも考えられるのですが、これに対してはあなたの方に御報告があったでございましょうか、あればその事実について、なければないでそのことを承わりたいと思うのです。
  190. 中川董治

    ○中川(董)政府委員 ただいまの事故でございますが、その点は第一報がきわめて最近ございましたので、私は大へん重要なことと思いましたので厳重にその事故を詳細に調べるよう関係のものに話しておるのでございまして、その調査が終りましてから事情を明らかにしたいと思います。
  191. 生田宏一

    ○生田委員 私は、今の大津市右衛門の死亡事件につきましては詳報がまだ入っていないそうでありますから質問を保留しておきますが、特に私は警察処置についてその意を得ないと思いますのは、大ていの選挙違反につきましての事件というものは、新聞に書くものでございます。この件だけはうまく新聞を押えておったらしいのですが、最近小さい日刊紙に少しこのことが出ておるそうでございますが、そのことを押えるということが私はすでにいかぬと思う。  それからもう一つは、これは何と抗弁しても警察の取扱いに確かに粗暴のきらいがあったことは免れないと思うのですが、死亡をいたしました大津については、むしろ警察としては深甚の弔意を払うべきだと思うのですが、おそらくその挙に本出ていないと思います。そのようなことをよく考えてみますと、どうも人権をじゅうりんするということを何とも思わないのが、今日の警察官の選挙取締りの実情なんではないか、こう思うのです。私は委員長に特にお願いしたいのは、本件についてはたくさん私は事実をまだ知っておりますが、単にこの法務委員会で質疑が出たということでなく、また当局からその措置について責任がある御答弁を得たいというわけではなく、それ以上に現地について調査団を派遣していただいて、そうしてそのことによって、今後におけるこの種のあやまちがないようにしていただきたいと思いますので、委員長のお取り計らいをお願いしたとい思うのでございます。なおこの両件とも、質疑につきましては保留をさしていただきまして、またあらためて情勢の変化によりましては質疑をさしていただきたいと思っております。
  192. 世耕弘一

    ○世耕委員長 お答えいたします。生田君のただいまの御希望、御意見等に対しましては慎重に取り扱いたいと思います。あらため理事会等も開きまして、さらに協議を遂げてお諮りいたします。  次に佐竹君。
  193. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 前回、「人権擁護の組織と活動状況」と題する資料を頂戴いたしました。その際ただちにお尋ねをいたしたいと考えておりましたが、ちょうど時間の関係等でそれができもせず、その後日曜、祭日等が重なりましてやや時間を経たのでありますが、この点戸田局長から御答弁をいただきまして十分でありますので、この資料に基いてまず二、三の点をお尋ねし、その余法務大臣等にもお尋ねを申し上げたい点がございますので逐次御質問いたしたいと思います。この人権擁護の組織と活動状況の二枚目の裏に(一)公務員による侵犯事件千二百四十八件、(イ)警察官等によるものが六百七十三件(ロ)教育職員によるもの百六十二件、(ハ)刑務職員によるもの三十二件、(ニ)税務職員によるもの五十八件、(ホ)その他の公務員によるもの三百二十三件とございます。かくのごとく警察官や教育職員やあるいは刑務職員、税務職員等が、その公務に当るに際し人権を犯した案件としてかような数字があげられておりますが、しかし検察官による侵犯が少しもあげられておりません。これはただいま申し上げましたその他の公務員によるもの三百二十三件中に含まれておるのでありましょうか。それとも検察官の人権侵犯事件というものは、人権擁護局においては一回も問題にたらなかったのでございましょうか。もし問題になったことがあるとするならば、その件数とその主たる事例、内容等をここに明らかに願いたいと存じます。
  194. 戸田正直

    ○戸田政府委員 ただいまのお尋ねは、検察官による人権侵害が(一)の(ホ)のその他の公務員によるもの、この中に含まれるかどうかという御質問でありました。これはこの中には含んでおりません。この「その他の公務員によるもの」というのは、主として地方公務員でありまして、検察官による人権侵害は、入れれば(一)の(イ)の警察官等によるもの六百七十三件の中に含まれるのでありますが、私どもの方で取り扱いました事件の中で、検察官による事件というものは、従来あまりございません。おそらくこの中にもあるいは一、二件はどうかと思いますが、数字をあげるほどのものはないと存じます。
  195. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 警察官の侵犯事件については、その事例と内容等について、またその措置についていろいろと報告計が出されておりますし、またこの委員会においてもいろいろと問題にされております。ところがただいま承わりますと、検察官に関する関係はほとんどないとおっしゃるのでありますが、しかしそれは人権擁護局としては検察官に対しては遠慮がちであって、事実手が出ないからこういったようなことが擁護局においては問題にならないというのではございませんでしょうか。
  196. 戸田正直

    ○戸田政府委員 人権擁護局も法務省の一局であります。検察庁と同じ屋根の下におりますけれども、事人権擁護に関する——しか本公務員による人権侵害というものは、人権侵害の中で最も重大な問題でございますので、加害者が検察官であるということによって、従来私どもの方では毛頭差をつけておりません。
  197. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 私どもが実際体験したところによると、警察官人権侵犯も相当でありますが、数は少いにしても検察官がかなり問題にされた例は少くないと思います。しかるにほとんどこれが問題にされない。これはおそらく人権擁護局といたしましては手が出ないのではないかということが一般に見られるところであって、ただいま仰せのごとく人権擁護局もりっぱな一つの局であって、対等の立場にあるとはおっしゃるけれども、そういった存在こそ検察当局にもきらわれて、その気持がやがて人権擁護局をたくしろ、予算を減せ、この局を削ったらよろしいといったような気持になってたんだん現われておるではないか、こう憂える向きがおるのであります。もし真に人権擁護を憂える向きがあるといたしますならば、これら検察の行動についても、独立の局として、その実際の威力を発揮するだけの組織と実力を持たなければならぬと考えます。ただいま戸田局長はお口においては平等である、かようにおっしゃるけれども、実際においてはさようではないのです。また他面これを考えるのに、検察官においてもし問題となるといたしますたらば、その上長官でありまするところの、法務省においては刑事局長あるいは検察当局におきましては検事正、あるいは最高検の部長、あるいは次長、あるいは検事総長といったような上の人々があって、これらの監督があればそれで十分であって、その手を経ることによってそれらの問題は解決されて、人権擁護局の何らお手を借る必要がないというのが実情ではなかろうか。もし検察当局に、その職務行便について不当な点があっても、それら上官の手によって適当に監督をすることによって処理ができていて、そういったような関係についてはほとんど人権擁護局というものはいらないではないか、かように見られる向きがあります。この点についてはいかがでしょう。
  198. 戸田正直

    ○戸田政府委員 御質問にお答えいたします。確かに人権擁護局の機構及び予算がきわめて貧弱でありますことは御質問通りであります。従って、そういう面から非常に人権擁護の仕事が困難を来たしておりますことは仰せ通りであります。ただ従来検察庁の上に検事正があり検事総長がある、あるいは刑事局長があるということによって、われわれがそれによって威圧された、あるいは事件を抑えられたというような実例は、はっきり申し上げて一つもございません。それはこの事件の中に、先ほど申しました公務員の六百七十三件、こういう事件は、これは侵犯事件が行われたと確定した数字ではございませんで、これは一応申告ないしは情報によってわれわれが受けた事件が六百七十三件であります。もし検察官に対する人権侵害の申告、あるいは新聞等による情報によって認知しますれば、私の方はこれを取り上げざるを得ませんので、当然この数字の中に現われてくるのでございますが、警察官と比較して、大へん恐縮ですが、警察官による侵害事件に対しては、申告等が非常に多いのでございますが、検事に対する申告がほとんどございません。というようなことで、決して私の方が——機構が小さい、または予算が少いというようなことで仕事はやりにくいことは事実であります。特に行政機構のつど人権局の縮小問題があげられたことも事実でございます。そういうようなことで、仕事のやりにくい面はございますが、検察庁あるいは検事局等から仕事を押えられるというようなことは毛頭ございません。
  199. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 警察官の問題について、ただいま仰せのごとくかなり申告が出ている。ところが検察官の方においては申告がない、こうおっしゃいますが、それはやはり機構の問題がそうなっているのではないか。検察官については、その行動について上司に相当の申し出をいたしますと、直ちに適当な処理があって、これに対して、たとえば人権じゅうりん等のことがあるといたしますならば、部内において適当にこれを処理するだけの道は開けているのではないか。もしそうだといたしますと、そういう状態が十分に充実されて参りますと、士官の監督権行使によって人権擁護局などというものはいらなくなってくる気持がされます。ところが、警察官についてはそうではない。たとえば、警察に対して上司に訴える。たとえば巡査が悪いことをいたしまするので警察署長に申し出る、あるいは警察署長があまりよくないから警察本部長に申し出る。こういったような工合にやってみるが、なかなかそれがうまくいかない。そこで警察庁にたよっておったのではしょうがないからということで、別途法務省の中にあるところのこの人権擁護局をたよって、これに訴え出てくる、申告をしてくるという向きが自然に生まれてくるではないか、かように考えられます。そこで警察官に対しまする関係において特に中古が多く出てくるというのは、やはり一つの態様をなしているものと思うのでありますが、それは部内の上司によるところの監督権行使によって十分処理できない程度のものであるか、それともそういった監督権とは全く別途に、人権擁護局というものが別に存在するところの独立的な必要な理由というものがあるのか。私は主として人権擁護局というものが何がゆえに存在しなければならぬか、それからほんとうに存在しなければならぬとずると、何がゆえにもっとこれを拡充しないか、そうしてもっと威力を発揮せしめることによって検察官によるところの人権じゅうりんを根絶せしめるだけの組織がどうしてできないものであるか、こういうことを常に考えるがゆえに、こういう見地に立ってお尋ねを申し上げるのでありますが、警察官に対する問題はその上司の監督権行使によって満足しないで、法務局の人権擁護局に訴え出てくるというのは、一体どういう態様のものであって、そうして大体においてそれがどういう工合に処理されているか、その態様の状況を一つ承わりたいと思います。
  200. 戸田正直

    ○戸田政府委員 特別公務員による侵犯、これは主として警察官が大部分であります。この侵犯事件の態様の分類を申し上げますが、これは大きく分けて逮捕に関するもの、勾留に関するもの、捜査押収に関するもの、自白強要に関するもの、暴行陵虐に関するもの、武器使用に関するもの、その他というふうに、大体この程度に分類いたしております。そこで二十九年度の事件を受けたのと処理状況を申し上げたいと思います。受けました件数は先ほど申し上げたように六百七十三件でありますが、そのうち逮捕に関するものは九十七件、勾留に関するものが十六件、捜査押収に関するものが四十四件、自白強要に関するものが九十七件、暴行陵虐に関するものが百三十九件、武器使用に関するもの、これはピストルでありますが、四件、その他二百七十六件というふうに分類されております。これに対する処理状況を申し上げますと、非常にこまかくなりますが……。
  201. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 大体の見当でけっこうです。
  202. 戸田正直

    ○戸田政府委員 その処理としては、告発をいたしました事件が三件、勧告をいたしました件数が十二件、和解が二件、処分猶予が百二十九件、非該当百六十六件、所管庁移送十件、移送が二十五件、中止が三十一件、指示が六件、その他十三件というような処理情況になっております。今申し上げましたのが合計で三百九十七件でございます。これが私の方では第一種事件といいまして、人権侵害事件として調査を要するという事件であります。第二極事件として、申告がございましたが、申告を十分聞きまして、侵犯事件として調査するまでもないという事件が二百四十四件ございます。これが大体処理状況のあらましでございます。
  203. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 ここにおいて法務大臣にお尋ねをいたしておきたいと存じます。警察官に関するものと検察官に関するものとは、ただいま承わりますところによっても共通の点が多いのであります。たとえば逮捕勾留、捜索、自白の強要、暴行などといった点は、これはやはり警察官が調べる際においても検察官が調べる際においても同様です。しこうして検察官が一段教養が高いのでありますから、これは過失のないということは私どもといえどもこれを認めます。しかし私どもが日常法廷において実際に当っておるところによれば、検察官等が法廷においてすらも目にかどを立てて被告をどなり散らす。証人に威嚇的言辞を用い、それから少々気に入らぬ証言でもありますると「ちょっと待て、あとで調べる、帰ってはいけない」などと判事や弁護人のいる前でも平気でやっておる検察官が何と多いことでありましょう。この状態は、われわれを別にした別の調べ所においては、これに警察官と何も異ならない調べ方をやっておるのだなという気持を、私どもは日常にもう深く胸に刺される思いで体験を続けております。ところがこういった案件について、同じ法務省系統でありまするところの検察当局事件人権擁護局に持って参りましても、これはとても問題にならないと思う。ところが警察に関する問題になると、法務省に持っていったら、他の官庁であるというような気持で相当やってくれるだろうというのに、検察官のただいま申し上げました逮捕勾留、自白の強要、暴行とかいうことに関する問題はほとんど問題にされない。ところが私は毎日のようにそれを体験しておる。それをだれも告発もしてこなければ申告もしてこない。それで警察に関するものがかように言ってくるというのは、やはりこれは機構の問題だと思うのであります。かりに同じ省内におっても今の検察庁系統——いわゆる法務省といったらほとんど令部検察関係でございましょう。そうして人権擁護局などといったら、言いにくいのでございますけれどもあたかも盲腸的存在である。その本尊が盲腸的存在のお調べなどはまっぴらこめんだ。これは問題にされないので、逆にそんなところに持っていってもしょうがない、そんな力におすがりするものはないでしょう。若い検察官の行き過ぎなんかを十分に押えるためにはやはり独立した、戸田局長が最初におっしゃったような、検察当局といえども気がねなしに調べることができ、またほかから申告をしてその信頼にこたえ得る組織と存在が必要である。もし法務省内に置いていかぬということならば、日本弁護士連合会のどこかの一つの部局なら部局のようなところに置いて、その理事会なら理事会に扱わせる、予算は国家から補助する、何かしらこういうことについてお考えになるようなお考えは、法務大臣といたしましてはないでしょうか。もしこれを同じ法務省内に置くといたしましても、それは御承知のごとき状態で、事あるごとに予算を減そう、人員を減そう、部屋のすみに押し込める、追い込もうというような気持できておりましたから、これは検察官の行き過ぎなどについて押えるなどという方法はごうまつもその能力を発揮することができないと存じます。この人権擁護局というものが存在をし、警察に関する関係においてはただいまおっしゃるごとく、現実に六百七十三件というものを持ってこられて相当の効能を発揮している。だがこの六百七十三件の中には検察官に関するものはほとんどない。ないけれども、それなら実際事件がないかといえば、弁護士をやっている各位たれ一人ないと信じているものはない。従って聞えない声を聞いてやる、言わない声を察知してやる。このことが何よりもわれわれは必要だと思います。ややともすると警察官も同じでありますが、たとえば検察なら検察におきまして、部下のやったことについて抗告などいたしましても、士長長官は検事正にある限りこれは抗告の通ったためしはおりません。そこで何かしらそういったことについてはけ口を設ける、ほんとうに人権を擁護してやるだけの道を講じてやる必要はなかろうか。法務大臣はこれに対して何と考えるか、これを承わっておきたい。
  204. 花村四郎

    ○花村国務大臣 佐竹君のお話、ごもっともの点もあろうと存じます。しかし検察官の人権じゅうりんの事実があまりにも少いというお話でしたが、これはわれわれの体験からいたしまして、も少いのは当然で、警察官と検察官と同じに見ることはどうかと考えます。それはやはり検察官の方が少いのは当然じゃないかとこう私は考えますが、しかし法務省内における局部の関係で、気がねをしているのではないかというような御説もありましたが、そういうことは絶対にないと申し上げてよろしいと思いますが、しかしいかに検察官でありましても人でありまするから、従ってあるいは落度もある場合もあり得ると存じまするから、そういう人権のじゅうりんの事実がありましたらば、その聞えざる声を一つ佐竹さんのような有力なる在野法曹の人から聞かしていただけば、これは一番いいのじゃないか。ことに人権擁護の面に対しては非常な情熱と正しい見解を持っておられる、在野の第一人者であるとしてわれわれも敬意を表している一人でありますから、そういう事実がありましたならば、決して御遠慮はいりませんから、ぜひその聞き得ざる事実をあなたの品を通して聞かせて下さるということでありまするならば、おのずからその面に対する新しく正しい進路が開かれていくのじゃないかと考えます。私があるいは不敏であるかもしれません。検察官に対しましての人権じゅうりんの事実はあまり聞いておりません。従ってやはり事実が少に現われておるのだな、こう私どもとしてはうなずけるのであります。しかし、あるいは私の目の及ばざる点もあるかもしれぬと思いますが、大体われわれの同僚としても、われわれと同じ意見を持つ者が多いと申し上げていいと思います。しかし不当な点がありましたならば、一つ御遠慮なくおっしゃって、指導と御鞭撻を願えれば、検察事務に対する大きな貢献であり、これをひたすらお願いをしてやまぬ次第であります。
  205. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 警察官と検察官との間に重大なる差異があることは、御説の通りであります。警察官は何といっても過失が多い。しかし検察官は教養も高いし、訓練も経ておる。従って検察官において誤まりの少いことは御説の通りであって、冒頭から私もこれを認めております。しかし、さりとて先ほど人権擁護局長のあげられたほど、それほどほとんど皆無に近い状態であるともいわれない。従ってそこには、何か機構の組織及び運営において欠けるところがあるではないか。そこで法務大臣にお尋ねいたしたいのは、この人権擁護局というものをどうなさる御所存であるか。このままでいいと思うのか。もっと拡充せられたらどうか。それともまた、日本弁護士連合会などといったような、別途に遠慮なく国民から即時に訴えて御相談に行きやすい、そういった方面にこれを移して、そしてそれに補助金を与えるとか、何かそこに新工夫というものはなかろうか。私のお尋ねいたしたいのは、人権擁護局の将来をいかにするかということに対する大臣の御見解であります。それを承わることができれば幸いであります。
  206. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ただいまの佐竹君の御質問、なかなかとうとい御質問でありまして、ごもっともであろうと存じます。私も人権擁護に関する施設の拡大強化に対しましては、決して人後に落ちるものではありません。しかし、そうかといって、わが国のまことに乏しい予算の面から、こういう方面に多くの費用をつぐことができるか、こう申しますれば、やはり理想と現実とは一致しない面があることをまことに遺憾に思うのであります。しかしそうかといって、現在の制度のもとで必ずしもできないという意味には私ども考えません。今の優秀なる人権擁護局の人々の全能力をあげて、この方面に貢献させますならば、私は、その成果の見るべきものがある、こう申し上げてよろしい。従いまして、ただいまのところは今の機構をいじくるというようなことは考えておりません。
  207. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 私が切望いたしますところのものは、この人権擁護局というものを、ぜひとももっと強化していただきたいというのが趣旨であります。質問はかえって逆の面からお尋ねをいたしたやの感がありまして、ときにはなくてもいいのじゃないかといったふうに聞えられてはなりませんので、この言を付加いたしておきます。この人権擁護局は今日のような貧弱なものではいけない。もっともっと何かしら増強していかなければならぬと熱望いたしておりますので、十分この点をお聞き取りおき願いたいと思うのであります。  次いで大臣にお尋ねをいたしたいのは、例の指揮権発動について、大臣のお考えをこの際承わっておきたいと考える次第であります。これは、今回第二次鳩山内閣が成立をいたしまして、法務大臣御就任に際し、第一回の法務委員会において即時お尋ねをいたしておきたいと希望いたしておりましたが、ただいま申し上げまするがごとく、前回時間の都合で発言をすることができなかったものですから、おそくなってやや時期おくれの感がいたしますが、法務大臣の所見をただしておきたいと思います。私の考えますところでは、いわゆる指揮権発動は、検察庁法第十四条に基くものでありますが、この検察庁法なるものは、検察庁の構成、その職務、権限を規定した法律でございまして、この検察庁法という法律に基く指揮権の発動でございます以上、その指揮権発動は検察官の職務行使に対する監督権の発動であって、検察官としての職務行使自体に行き過ぎがあるとか、過誤を犯しているような場合に、それを是正するためにのみその発動があり得るものだと考えております。ところが先般の犬養法務大臣の指揮権発動は、検察官としての職務行使に行き過ぎもなければ過誤を犯したと見るべき何ものもございませんでした。その検察官の正常なる職務行使を阻止しようといたしましたことは、私はもってのほかであると思うているのであります。それのみでなく、ある事件の容疑者を逮捕してはならないという指揮権を発動することは、他面においてその事件によって被害をこうむった者に対する人権をじゅうりんしたまま放任してよろしいということになります。つまり人権じゅうりんを擁護ないし黙認したという結果になりますので、断じてこれは許さるべきものではないと考えますが、内閣もかわったことでございますし、新しい法務大臣におかれましては、この指揮権発動に対していかなる御見解を持たれているか、この際承わっておきたいと考えます。
  208. 花村四郎

    ○花村国務大臣 佐竹君のお説まことに傾聴に値するものがあると存じますが、御承知のごとくこの問題に対しては異論の存するところでございますので、私としては前任者のなしたる行為ですでに終結を告げておりますこの問題に対して、とかくの批判は今日避けたいと存じます。さような意味であしからず御了承願いたいと思います。
  209. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 私のお尋ねいたとたいのは、前の大臣のやり方のよしあしではございません。ただいま私の申し院げた検察庁法十四条に対する私の所見は、時の前後にかかわらず、別に取り扱いの当事者の甲乙にかかわりません。これは純理論であって、こうあるべきだと信ずるのでございます。もしそれ再びこの鳩山内閣のもとにおいてああいったような事態が起きたときに、花村法務大臣といたしましてはいかなる処置を講ぜられるのであるか。そのあなたの検察庁法十四条の解釈に関する所見を承わりたいのでございます。
  210. 花村四郎

    ○花村国務大臣 要するに本問題に対しては異論の存するところでありますが、特に佐竹委員のお説に対して傾聴に値するという言葉を使っておりますから、まあ一つその程度で御了承を願って、もしああいう事実が起きた場合には法務大臣はどうなさるか、こういう御質問でありましたが、そういう仮定の事実の上に立ってここで断ずることは、結局前任者の行なった行為の是非論に関係を持って参りまするので、こういう意味において私はここでその批判をすることを避けたいと思います。しかしあくまでも公正なる立場に立って、断固として検察庁法を運営していくという意味においては、人後に落ちないことをはっきり申し上げておきます。
  211. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 明確には仰せられませんが、しかし傾聴に値するということだけは御肯定、ただきました。しからばさらにいま一つそれは傾聴に値するかどうか、一つお聞きを願いたい。あなた自身のやり方について私は伺いたい点がございます。それは犬養法務大臣のもとに補佐役として指揮権発動の衝に当った清原事務次官を、今回最高検の次長検事に昇進せしめられたのはあなたの御人事であります。すなわち、認証官として栄進せしめその待遇を厚うするということは、認証官となるということは、それら軍吏の方々にとっては非常な栄誉であります。非常な栄進でありますることは私の申し上げるまでもないところである。いかなる心底によって、この指揮権発効の補佐役をかくのごとく重用されたかという点であります。われわれの考えるところによれば、信賞必罰は昔から唱えられておるところであります。指揮権発動をあえていたしました当時の法務大臣は、自責の念に耐え得ずしてみずから辞任なさいました。当時事務次官として指揮権発動をお手伝いなさいました、しかも自分はとてもやれないというのでありましたならば、職を賭して、おやめになったでありましょうが、おやめにならずにその犬養法務大臣を助けて、それを完遂されました。そうしてりっぱに次官として指揮権発動に協力なさって、その指揮権発動を遂行されたのであります。もしもこの補佐役が指揮権発動はいけないということであったならば、おそらく今日職にとどまってもいないでありましょうし、またあなたがここにさらに認証官として栄進せしむることもなかろうと、かように考えます。しかもその事務次官は、犬養法務大臣がおやめになりました後も、なおその指揮権発動を是なりとしてこれを堅持いたしました後任の加藤鎌五郎法務大臣をさらに助けて、その指揮権発動の効力を維持強行なさいまして、それに協力をせられたことはあなたも御承知通りであります。私ども当時、その後大いにその後任の加藤法務大臣に対して、あなたかそれを受け継ぐことの責任というので追及をいたしたのでありますが、そのとき女房役といたしまして清原氏はどこまでもこれを助けて、そうして前の法務大臣のおやりになったことを維持強行するに協力をなさったのであります。その清原次官が今回あなたのもとにおいて大いに用いられ、さらに栄進の栄に浴せしめられたということは、現法務大臣においても指揮権発動の功を認め、そうしてこれを栄進せしめたものと一般より解せられてもけだしゃむを得ないというのが、今東京における法曹のもっぱらのうわさであります。私も今、日本弁護士連合会の常任理事をいたしておりまして始終最高の弁護士のものと会合いたし、本日もある席でいろいろとお説を承わり、私どもも申し上げたことでありますが、寄るとさわるとこの話が出ております。それは私が一個の意見をここに述べるものではない。常に在野法曹の中に、花村さんは在野法曹から出ておそらく指揮権発動などについてはまっこうから反対すべき立場であられなければならぬのに、その当時これを助けて補佐役として、女房役として、さらにその後任大臣の補佐役として、女房役としてこれを強行せられたその人を、さらに今度は栄進せしめて重用なさっておるが、これは一体どのようなものであろうか、大臣のほんとうの所見を聞きたいと言う者が多いのであります。在野法曹の私ども考え方が間違っておるかどうか。あなたの人事行政に対して別に容するというのではありません。あなたは私のただいまの指揮権発動に対する法律の解釈、つまり所見に対して傾聴に値するとおっしゃるのでありますが、さらに一歩進んで私のこの説にもまた傾聴に値するものがありとなされるでありましょうか、これを承わっておきたしと存じます。
  212. 花村四郎

    ○花村国務大臣 指揮権の発動が妥当であったかどうかということは、相当各方面からも論議をせられておるのでありまするが、その議論たるや区々であって、いずれもやはり異論のありますることは御承知通りであります。しかも前任者の行なったことでありまするし、それはすでに過去の事実として、何と申しまするか終りを告げておるわけでありますから、ことさら後任者の私が寝ている子供を起すように、すでに過ぎ去った事実をとらえてここでその責任がどうのこうのというようなことは、これはあまり適当なことでないと存じまするので、先ほど申し上げたように、その是非についての批判は差し控えたい、こう思うのであります。  そこでただいま申された清原次官の次長検事転任の問題でありまするが、御承知のごとく検察官もやはり裁判官に準ずるものであって、身分の保障のあられますることは佐竹委員も御承知だろうと存じます。従いましてその身分保障の見地から考えますると、みだりに免官しあるいは左遷をすることができぬというようなことに相なっておりまする関係上、転任する場合においては、好むと好まざるとにかかわらず、やはり栄進と申しますか、多少前よりもよい方面に異動せしめてやらぬければならぬということに相なりまする関係上、これはなかなかむずかしいのでありまするが、しかし清原君を次長検事に転任さしたことが果して栄進といえるかどうか、栄進というてもいろいろありましょう。低い栄進もありましょうし、極度に高い栄進もありましょうが、栄進としいていえば一番低い方じゃないですか。むしろ横すべりで、これはあまり栄進の中へ入らぬじゃないか、私はこう見ておるのです。従いまして、今の岸本次官は認証官の次長検事から次官に来たのですから、私はむしろ次長検事よりも次官の方が高いと見てしかるべきものだ、御承知のように昔の次官というのはやはり相当に高く買っておられたので、まず次官をやると大がいは検事総長になるか、大審院長になるか、大臣になるか、あるいはまた控訴院長になるかという最高の地位に進んでいった。これは段階ですから、そういう意味から考えると戦後におきましては多少低く相なった感じがありまするが、私はむしろこれは高むべきものである、昔のようにやはり大次官制度をしく方がいいじゃないか、しくわけじゃありませんが、大次官制度といったような気持で次官を取り扱う方がいいのではなかろうかという気持で、今の岸本次官は大いに優遇したつもりです。従いまして、これと反対に岸本次官の抜けてきたあとへ行ったのでありまするから、相当優遇ともいえないんじゃないか、私の気持としては優遇させたとは考えておりませんが、しいていえばいくらか優遇でしょう。が、しかしそれも指揮権発動に関する責任を考慮に入れてやったわけではないことだけは、はっきり申し上げておきたいと思うのです。その責任が果しあるものか、もしありとするならば大臣にあるのか、あるいは次官にあるのか、検事総長にあるのか、あるいは第一線の検察官にあるのか、これはなかなかむずかしい問題で、これは一朝一夕にきめるわけにもいきますまいし、そうして外部から見た責任観念とまた内部から見た責任観念とやはりいろいろありまして、これは一がいに論ずるわけにもいかないと思うんです。それじゃお前内部における責任のありのままの姿を言うたらいいじゃないか、こうおっしゃられるかもしらぬと思うんですが、内部は四部でまたそういうことは口外できぬような事情もありまするので、そういり内外の事情等を慎重に考慮して考えるときに、責任追及の観念に立ってこり人事の異動はやるべきものでないという私の考え方から、そういう意味を離れて人事の異動をやったのである、こう率直に申し上げてよろしい。
  213. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 大臣は認証官の問題について何か御観念がないようです。在野法曹四十年と誇られるだけあって、宮中へ行って御飯をもらおうがもらうまいがそれが何だというお気持が胸にわいておるようでして、あるいはその気持が正しいかもわかりません。が、しかし官吏はそうじゃないんです。これは認証官は高いものですよ。そしてまた給料をこれからお帰りになって一つお調べになってごらんなさい。次長検事と次官と給料は一緒のものかどうか、横すべりになっておるかどうか、認証官と認証官でないものがどれだけ違うか、これは官吏にとって大へんな栄誉なんです。私どもはそういう栄誉を置くことがいいか悪いかそれは論じません。と同時に、今の説に対してはなかなか言いにくい口もられた点もありますので、私も遠いたしましょう。人事に関しては何かしら言ったように聞えてもよくありませんから、私も遠慮いたしましょうが、しかしただいま指揮権発動に何にも関係はないんだ、別途切り離してやったんだ、こういう御答弁でございますので、これは了承いたしました。だがしかし、やはり物事は信賞必罰というものがあって、それをかりに責任問題でないにいたしましても、そういう非常に重大な問題について女房役として補佐役をやったような人は、そういう地位から少し別の地位へかわってもらう、そういうようなときに前にやったことに報いるような、前に認証官でないような者が今度認証官に栄進するようなことについては、やっぱり考慮すべきではないか。瓜田にくつを入れず、李下に冠を正さず、何にもおれは悪いことをしないからそんたこと考える必要はない、こう言う者と、やっぱりそういう者について考慮してよろしいという説とがあって、人事などというものは微妙な問題でございますから、在野法曹の中にもいろいろと説をなしております。それらの人々の意見もまた一つお聞きおき願いますことが何らかの参考になるのではないかと、私はその点だけは一つお願いをいたしておきたいと思います。  最後に、今日は何か会があるそうでありまして、なるべく簡潔にというお話でございますので、私は打ち切ることにいたしますが、ただ先ほどこれも問答が尽されておったようでございますけれども、私非常にふに落ちない点が一つあります。それは例の長谷川浩さんの逮捕の問題であります。これによると団規令はなくなったが、そのまま当時の法律で処罰するという法律をあとで作ったんだ、これは国会が作ったんじゃないか、だからそれを忠実に私どもは実行するまでだ、こういうふうにおっしゃっておられたのですが、もう一度それを確かめておきます。それでよろしゅうございますか。
  214. 花村四郎

    ○花村国務大臣 ただいまの認証官の問題は、どうもいろいろ御親切なお言葉をありがとうございました。私も法務省へ入って何が一番珍しかったかといえば、やはり見たこともない認証官ですから、これに興味を持ち深い関心を持って見たり聞いたりしておりますので、佐竹君の御心配になるようなことは、まあないと申し上げて御安心をしていただきたいと思います。  それから今の問題でありますが、これは前にお答え申した範囲を出でません。
  215. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 私はそれでは改まって一つ承わっておきたいと思いますが、法律を忠実に守ろうというならば、法律の解釈をまた忠実に守らなければなりません。松本さんの事件と今度の長谷川さんの事件とは根本から違うというならば別です。ところが同じケースの事件です。そして同じ種類の逮捕状たんです。そして松本さんのは忠実に法律を守る裁判官がこれは無罪であるし、これはつかまえちゃいかぬといって放しました。裁判官が最も忠実に法律を解釈し、最も忠実に無罪なりと言い、しこうしてこれを拘束することはいけないといって放しました。ところが検事は、おれは法律を忠実に守るのだ、その法律を忠実に守る趣旨においてこれはどうしても有罪である、控訴をするのだ、これをとつつかまえておきたいが、しかしどうにもならぬ、残念だ、こう言うております。これは法の前に判事が忠実でしょうか、検事が忠実でしょうか、これを一つ承わっておきましょう。
  216. 花村四郎

    ○花村国務大臣 この問題についてはもう午前中から論議がかわされまして、何回も答弁をいたしておりますから、それを一つ速記録でごらん下さればわかろうと思いまするが、しかし裁判官でありましても、御承知のごとく人間でありまするので、落度も誤まりもあることは当然であります。しかるがゆえに裁判官のなしたる裁判に対して、控訴もできれば上告もできるという救済方法を認めておるわけでありまするから、一審の判決があったからといって、必ずその判決を守らなければならぬというものじゃない。むしろそれに服従できぬ場合においては控訴、上告ができるという道を法律がやはり考えて、認めておるわけでありまするから、それでただいま主張された問題に対しては、第一審の判決に対しては不服なりと認めて検察官が控訴をしてありまするから、従ってその是非については控訴審の裁判が裁断を下してくれるので、その裁断を待つべきものである、こう申し上げるよりほかに申しあげることはございまん。
  217. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 私はそこでお尋ねをしたいのです。これは釈迦に説法でございますが、あなたは在野実に四十年、私も三十七年ばかりやっております。それで私の方が少々、三、四年後輩であります。けれども法廷で論議を戦わし続けて来たことはあまり変りはないと思います。それは私が申し上げずとも大臣よく御承知通り、なるほど控訴は許す。控訴は許すけれども、無罪もしくは執行猶予の判決があった場合には、検事いかに不服なりとして上告するといえども釈放しなければならぬという規定がありましょう。この法律の精神はこれはどうですか。もしそれに一たん無罪なりあるいはそこに執行猶予の判決があった以上、事のいかんにかかわらず釈放しなければなりません。だから松本さんは釈放された。同じケースなんです。またこれをやってみても同じことになることはさまっております。がしかし、それはまた他の判事だから違うかもわからぬとおっしゃるかもしれません。しかしいやしく本松本さんに対してそういう扱いが、もうここに既定の事実として一つ出て来たとすれば、判事の解釈とそれから刑事訴訟法という法律の存在を無視することなしに、忠実にこれを見て——松本さんに対しても、これは無罪なりあるいは執行猶予になった、それで釈放したのだ。これは同じケースの事件なんだから、またこれをたたき込んで判決を待って釈放するなどということは、いかに共産党に対してでもよくない。虚心たんかいに広い気持でやってごらんなさい。そういう広い気持がある限り、共産党の人といえども決して国を乱すような考え方は持たないと思う。およそ物事に無理があるところに必ず反発があります。経済問題なら経済問題について非常に無理があるから、経済理論を戦わして反発しようとする。法律に無理があろところには必ず法律的に反撃があります。法律をもって立っておる者は、あなたのおっしゃる通り法律にきわめて忠実でなければならない。しこうして判事がそのように忠実に、無罪にして釈放すべきものだとした。そうして無罪の判決を言い渡したときには、検事がいかに不満、不服があっても釈放しなければならぬということが刑事訴訟法の精神だ。とすれば、それを松本氏に与えるならば、その情は、他の同じケースの人に与えるということが、これが法の情ではないかと私は思う。法をもって立つ者はあまり理論にこだわってはいけません。ここには多少の情を与えてこそ私は法が生きるのではないかと思う。いかがでございましょう、大臣、これはあまりかた苦しく、とやこう申し上げるのじゃありません。大臣のお腹一つて、情を及ぼして長谷川さんはお出しになったらどうでしょう。これをもしさらに十日たたき込むということになれば、これは何ものか別途の考えによってやっておるものとよりは解釈できない。私どもの政党は共産党と一線を画しております。けれども、法の解釈をする場合には、法の前には平等であります。法の解釈にはまた忠実でなければならないが、その運営には情がなければならぬと思います。大臣、いかがでございましょう。大臣の、これこそ指揮権一つでできることでございますから、こういうところへこそ指揮権を発動なさった力がよろしい。これをもし十日間延ばすということであれば、それはその刑事問題の運営に過誤がある。こういうときにこそ私は、もし検事がおやりにならなければ、検察庁法十四条を発動して、これは釈放すべしという命令を出してしかるべきじゃないかと思います。私はこれを言わんがために、伏線と申しますか、先ほどの問題を本別の観点から出したわけだったのでありますが、私の気持のあるところを御理解賜わるならば幸いであります。
  218. 花村四郎

    ○花村国務大臣 佐竹委員の熱情あふるる御意見に対しましては、どうも多少私の気持も動かされざるを得ないような気分がいたすのでありまするが、しかし原則として、なるべく拘束なしに捜査、取調べを進めて行きたいものだということは、これはまあ当然なことでありまして、もちろんやむを得ざる事情あるがために、やはり身柄の拘束をせなければならぬということに相なるのでありまするが、しかしその身柄の拘束も、これはもちろん事件そのものの性格にもよりますことは言うまでもありませんが、ただその事件そのものばかりではございません。御承知のように被告の四囲の事情、状況等をあらゆる角度から検討して、そうして捜査に支障があるかないかというようなことを考えた上で身柄の拘束をするわけですから、同じような事犯であっても、甲の場合に検束しないから乙の場合に検束しちゃけしからぬという論は、これは私は当たらないと思います。その人の過去に持つ事情あるいはその他、同じ犯罪でありましても、犯罪の価値あるいはまた行為の段階等々もやはり考慮して決定せなければならぬのでありますから、一がいに、同一事件であるからそれを同一に扱えという論は私は傾聴するわけには参りませんが、しかしただいま申し上げましたように、あくまでも原則の立場に立って、すべての事件をなるべくその原則の方向へ持って行くように考えるべきであるという点においては、私は終始一貫変らないのでありまするから、従って長谷川浩君の問題に対しましても、さような見地から十分検討をしていぎたい、こう考えております。
  219. 佐竹晴記

    ○佐竹(晴)委員 大臣のお気持は私もよく理解できます。とにかく第一線に立っておやりになっておる方でございますので、その御意見もよく尊重をせられなければならぬでしょう。従いましてよくまた、それぞれ責任を持って担当の衝に当っておられます方々とともに、私どもの意のあるところもおくみ願いまして、この法の運営について万違算なきを期せられますように私はお願いをいたしまして、私の質問を打ち切ります。
  220. 細迫兼光

    ○細迫委員 関連して。大臣質問いたしますが、それは松本君に対する控訴も、したければなさったがいいでしょう。また長谷川君の問題も起訴なさりたいならなさったがいいでしょう。問題は長谷川君の勾留問題です。さっきからお話がありましたように、私も午前中からこの問題を申し上げております。大体お考えも進んでおるだろうと思うのです。きょう中に何とか御決定なさらなければならないでしょう。勾留は御承知のように——ことにその更新でありますから、一応の逮捕は許されるとしましても、勾留の更新です。逃走のおそれあり、あるいは証拠の隠滅のおそれがある、こういう場合に限られておることは御承知通り。第一、証拠の隠滅という問題につきましては事案が不出頭罪、これは今さらどうにも動かすことのできない不出頭ということは万人の認めるところであります。今さらこれは隠滅しようにもしようのない問題であります。しからば一体何をお調べになるのか。問題はないのです。不出頭ということは、これは既定の事実であります。いい悪いは別としまして……。ただもう一つの問題は逃走のおそれということです。同じ事案につきまして春日正一君が釈放になりましたが、ちっとも逃走しておりません。いつでも出て参る。また松本君もここにおります。いつでも出て参ります。逃走いたしません。こういう顕著なる事実の上に立って、続けて勾留をやって行こうということは、問題の根本的な性質はるる申しましたから重ねませんが、いかにもこれは常識上不穏当であります。ことに聞くところによれば、勾留状に裁判官の印判がほしいといって出されましても、東京地裁の裁判官はこぞってこれを避けた、印判をつくのは私はいやだといってみな拒否した、回避した、そこで仕方がない、ある責任者が一人押したそうですが、その押したことでも部内でだいぶ問題があるそうです、検察官が勾留更新の申請をなさっても、あるいは場合によっては裁判官によって拒否せられるかもしれません、そうなればこれはもう検察官の面目は地に落ちるということに相なります。そういうことは私どもとしましても歓迎しないことです。どうかここは午前中から論議しましたことで重々御了解でありましょうが、あえて勾留の更新は求めないという御決心がすでについたかどうか、だいぶ時間がたちましたから御見解を承りたい。
  221. 花村四郎

    ○花村国務大臣 先ほど重ねて申し上げた通りであります。
  222. 世耕弘一

    ○世耕委員長 本日はこれにて散会いたします。次会は明後十一日午前十時より開会いたします。  なお人権擁護問題等に関しまして専門員から調査報告等がありますが、次会に譲ります。     午後五時三十五分散会