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戸田説明員 先ほどの
説明は非常に不十分でございました。ただいま
佐竹先生からの御
質問もございましたし、後ほどまた詳細の点につきましては書類をもってお示しいたしたいと存じますが、ただいまここで
人権擁護局の
活動状況につきまして
概略のところを申し上げます。
先ほどの
説明の点に少し不十分の点がございましたのでつけ加えておきますが、
人権擁護委員会に課が
三つございまして、一課、二課、三課ございます。一課は
一般行政と
人権擁護委員の
運営に関する
仕事を主といたしております。二課はいわゆる
人権侵犯事件、
事件の情報の
収集、
調査、これを主としていたしております。三課におきましては
人権擁護思想の
普及活動、これもまた非常に重要な
仕事でありまして、主謀において
啓蒙活動をいたしております。
人権擁護局の
仕事を大別しまして、
人権侵犯事件の
調査処理と
人権思想の
普及活動、それと先ほど申しました
人権擁護委員の
運営、この
三つが主たる
仕事であります。
そこで今までの
活動状況の
概略を申し上げますと、
昭和二十三年できました当時の
人権侵犯事件の数は、
人権擁護局というものが非常に特殊な新しいところでございますし、
人権という
考え方が十分に
国民に理解されておらなかったというような
関係から、
全国で取り扱った
事件がわずかに四十八件であります。その後
人権擁護局の
活動並びに
人権擁護委員の
活動によりまして、漸次
人権思想というものが普及せられて来て、それに従って
人権侵犯事件等も逐次増加して参った次第であります。
昭和二十四年におきましては五千七十六件の届けを受け付けております。
昭和二十五年におきましては五千六百九十二件、
昭和二十六年におきましてはさらに倍加しまして一万五千六百八十九件、
昭和二十七年には、二万七百五十七件、
昭和二十八年においては二万九千百四十四件、
昭和二十九年度におきましては、さらに数を増加いたしまして、四万二千二百八十六件という数になっております。もちろんこの四万二千二百八十六件というものは、全部いわゆる
人権侵犯事件というものではございませんで、その中には、法律相談的なものがかなり多く含まれております。これは
人権侵犯事件というものがまだ
一般国民に真に理解されておらないというような点もありますし、また
人権擁護局の
啓蒙活動というものが、困っておる場合にはいろいろ問題を持って来なさいというような
活動もしておりまする
関係もありまして、法律相談的なものがこれにかなり多く含まれております。しかしいずれにしましても、
事件を取り扱った
件数は先ほど申し上げたような数になっております。そこで
昭和二十九年の四万二千二百八十六件の内訳を
概略申し上げたいと存じます。この
人権侵犯事件を大きく分けまして、
公務員による
人権侵犯事件と、
私人による
侵犯事件、この
二つに分けられるかと思います。
公務員による
侵犯事件が千二百四十八件でございます。このうち
警察官等によるものが六百七十三件、
教育職員によるものが百六十二件、
刑務職員によるものが三十二件、
税務職員によるものが五十八件、その他の
公務員によるものが三百二十三件というふうになっております。それから
私人による
侵犯事件が四万一千三十八件でございまして、そのうちおもなるものを申し上げますと、
人身売買事件が二百二十五一件、
村八分事件が百十九件、
差別待遇事件が五百十五件、私刑いわゆるリンチでございますが、これが二百十七件、
酷使虐待が四百二十七件、
労働権の侵害が五百三十三件、
強制圧迫が千七百四十八件、残りがその他ということになっております。これが今までいたしました
侵犯事件の
活動状況でございます。さらに
啓蒙活動につきましては、ただいまここに
数字を持っておりませんが、昨年度二十九年度に行いました
全国の
啓蒙活動の
行事といいますか、
討論会、
座談会、
講演会、映画、
法律人権相談所、こういうおもなる
行事だけで約五千六百件を越えているかと思います。
先ほど
古屋先生から
民間団体と
予算の点につきまして御
質問がございましたが、
人権擁護局の
所管としまして、
民間における
人権擁護運動の
助長ということが入っておりますので、
民間の
人権擁護関係機関と
協力するような
建前、
協力といいますか
助長、援助するというような
建前になっております。ただいま
民間における
人権擁護関係の
有力団体といたしましては、
弁護士会における
人権擁護委員会と
自由人権協会、私の
承知いたしまする範囲では大体
全国的な
活動をされております
人権擁護の
民間団体としては、この
二つだけで大体よろしいのではなかろうかと
考えております。この
機関とも常に連絡をしあいまして、できる限りの
協力をいたしておる次第でございます。
それから
予算の点でございますが、それにつけ加えまして、先ほど
機構を申し上げましたので、
人権擁護局の
職員についても申し上げたいと思いますが、
人権擁護局の
職員はただいま十三名であります。一課、二課、三課に分けまして十三名ということになっております。局でございます以上、この中には給仕もタイピストも含まれており、もちろん
局長も入れまして十三名ということになっております。しかしほかから兼任というようなことで四名ほど借りておりまするから、十分な
仕事にはなりませんが、四名ほど実際には借りております。それから先ほど申しました
地方法務局、これが四十九庁ございますが、これの実
人員が、昨年より少しふえまして二百十一名ということになっております。この中に
事務官が百四十六名、雇が五十五名ということになっておりますが、これまた兼務の
事務官二十四名、雇十八名というものがこれから引かれるようになっております。この二百十一名が四十九庁にそれぞれわけられるのでございまして、一
庁当りにしますと、わずか数名の
職員ですべての
人権擁護の、先ほど申し上げた
侵犯事件の
調査、
処理、
啓蒙活動、それからそれに付置されております
人権擁護委員のお世話とか、
協力というような
仕事もすべて含まれておりまして、このわずかな人数によって、
人権擁護の
憲法に保障されましたきわめて重大なこの
仕事を負わされているような次第であります。
予算につきましても、ただいま
資料を持っておりませんが、これも
概略のところを申し上げますと、
人件費を抜きまして、本省の
予算が多分二百十五万くらいかと存じます。それから四十九庁の
地方法務局全部の
予算が、一千万を下って九百七十万かになっております。そうしますと、一局
当り二十万にならないかと存じます。このわずかな
予算、しかもこの中には
人権擁護委員の一人一年千円の
実費弁償金も含まれておりまして、すべてで今申し上げたような
予算でございます。きわめて貧弱と申しますか、非常に
不足な
予算と
人員によって、この重大な
仕事を負わされております。従って従来
人権擁護局の
活動についても、あるいはいろいろの
批判も耳にいたすのでございますが、われわれとしましては、この
不足の
予算と
人員で、しかも大きな
仕事を負わされておりまして、
憲法の最も大きな主要な
部分である
国民の
基本的人権の
擁護という、しかも新しい
仕事でございますので、きわめて謙虚に、慎重に
仕事をいたしておりますので、あるいはいろいろ
仕事の面において不十分であるとか、あるいはどうも
処理について迅速でないじゃないかというような御
批判もいただくかと存じますが、われわれとしてはできる限りの努力をいたしておるような次第でございます。