○松村国務大臣 ただいま議題に供せられました各案の提案理由を説明いたします。
第一に
博物館法の一部を改正する
法律案でございますが、この
博物館法はわが国の博物館の健全な発展をはかる目的で、去る
昭和二十六年十二月に制定され、翌二十七年三月から施行されたものであります。この法律の制定を契機として、博物館の建設と内容の整備は著しく促進され、特に専門職員である学芸員の資格を定めたことによって、従来欠けていた博物館の
教育活動は著しく充実されるとともに、博物館資料の活用によって国民の実生活の向上にも大きな役割を果してきたのであります。
しかしながらさらに各種の博物館の振興をはかり、学芸員の充実を期するためには、その後の状況にかんがみ、現行法の一部を次のように改める必要が生じたのであります。すなわち、この
法律案の改正の骨子は、従来の学芸員の資格付与講習を文部大臣の認定
制度に改めることであります。従来の講習は、学芸員の資格取得の道を開いたものでありますが、わが国の博物館の実情に応じ博物館職員の学芸員資格取得の便宜をはかり、学芸員の充実を一そう促進するため、文部大臣の認定
制度に改めようとするものであります。
なお、この改正に関連して、現行法を整備する必要から、その他二、三の点について所要の改正を行うものでありますが、博物館の振興をはかり、わが国の社会
教育活動を助長するため、何とぞ十分御審議の上御賛成下さるようお願い申し上げます。
次に、
昭和二十七年九月三十日以前に
給与事由の生じた旧
財団法人私学恩給財団の年金の
特別措置に関する
法律案について、その提案の理由及び大要を御説明申し上げます。
私立学校教職員の福利厚生をはかるため、私立学校教職員共済組合法により、
昭和二十九年一月一日に設立されました私立学校教職員共済組合は、旧
財団法人私学恩給財団の権利義務を承継し、同財団の支給していた年金を支給すべき義務を負つているのであります。しかし同財団の年金のうち、
昭和二十七年九月三十日以前に
給与事由の生じたものの年金額は、加入期間十五年で一万二千円というきわめて低い額であります。これらの年金受給者は、わが国の
学校教育の上において、多年にわたり大きな貢献をしてきた人々でありまして、この年金の願を増額することは、私立学校教職員共済組合法制定の際における「私立学校教職員共済組合は、私学恩給財団の既年金受給者に対して、本法案の施行後、なるべくすみやかにその受給額の増額
措置を考慮すること。」という参議院の付帯決議の御
趣旨に沿うものであり、かつこれら年金受給者の熱望にこたえるところでもありますので、
政府はここに本
法律案の立案上程いたした次第であります。
次に本
法律案の大要を御説明申し上げます。
第一は、私立学校教職員共済組合が支給義務を負う旧
財団法人私学恩給財団の年金のうち、
昭和二十七年九月三十日以前に
給与事由の生じたものについて、
昭和三十年四月分以降、その年金額を一般の社会保険における年金額と均衡を失しないよう、二倍半に増額することにいたすものであります。
第二は、国家公務員共済組合法に基く共済組合の年金の若年停止の
制度にならい、年令満五十歳に達するまでは、その増額分について支給を停止することにいたすものであります。
第三は、この年金額の改定により増加する費用は、私立学校教職員共済組合が負担するものとし、その費用は、私立学校振興会が助成するものといたします。なおその助成の
方法等については文部大臣が定めることにいたしております。
以上がこの
法律案を提案いたしました理由とその大要でございます。次に、
日本学校給食会法案について、その提案理由および大要を御説明申し上げます。学校給食が、発育期における児童の心身の健全な発達に資する
教育的効果は、まことに顕著なものがあり、かつまたわが国現下の食糧事情に関連して、国民の食生活の改善を促進する具体策といたしましても、適正な学校給食の
実施は、今や等閑視できない国民的要望であると信ずるのであります。
このような重要な意義を有する学校給食の
実施に関する基本法とも申すべき学校給食法が昨年制定され、わが国の学校給食
制度が一応法的に確立し、その安定を見ましたことは、まことに御同慶にたえない次第であります。学校給食を適正確実に運営し、その効果を最も能率的にするためには、学校給食の用に供せられる莫大な量に上るところのいわゆる学校給食用物資を吟味選択し、さらにこれらの物資を現地の需要に応じて円滑迅速に供給して、学校給食の運営上支障なきを期さなければならないのであります。ここに
政府は、学校給食用物資の公正な全国的供給機関を特殊法人として法制化することが焦眉の施策であると
考え、この法案を上程いたした次第であります。
次に、この法案の大要を御説明いたします。
第一に、この法律により日本学校給食会を設立し、学校給食用物資の買い入れ、売り渡しその他供給及び学校給食の普及充実に関する業務等を行うことを目的とする特殊法人といたしました。なお財団法人日本学校給食会は、この特殊法人の成立の日に解散し、その権利義務は、特殊法人日本学校給食会が承継することにいたしております。
第二に、役員については、文部大臣が任命することにいたしておりますが、この役員には、給食会の目的を達成するために、必要な広い知識と経験を有する人を当てたいと
考えております。
第三に、業務につきましては、前に述べましたように、給食会は、学校給食用物資の適正円滑な供給、学校給食の普及充実に関する業務等を行うものでありまして、給食会が学校給食用物資を供給する場合には、必ず文部大臣の指定する者に対して供給しなければならないことにいたしております。
なお、学校給食用物資の売り渡し価格については、その適正を期するため、文部大臣が認可いたすことにしております。
第四に、給食会に対する監督につきましては、文部大臣がこれを監督することとし、必要に応じて報告を求め、または事務所および学校給食用物資を保管する場所に立ち入り、必要な検査を行い、もってその適正な運営を期したいと思います。
また、学校給食用物資には、ミルク等農林省
関係の物資も予想されますので、農林大臣も、給食会に対して随時報告を求め、または必要があるときは、文部大臣に監督上の命令を発することを求め、またこれらの物資の売り渡し価格の認可等については、農林大臣の同意を得ることにする等、農林大臣とも十分協力の上、給食会に対する監督をして参りたい所存であります。
第五に、この給食会に対しては、出資金の
制度をとらず、事務費を
補助することにいたしたいと
考えております。
次に
公立小学校不
正常授業解消促進臨時措置法案につきまして、その提案の
趣旨と内容の概要を御説明申し上げます。
戦後の異常な人口増加に基く
小学校の児童数の増加は、全国的に見ますと、
昭和二十九
年度及び三十
年度はそれぞれ前
年度に比して約五十万人に上っております。さらにこのような自然増のほかに、人口の都市集中等に伴う児童の増加も著しく、そのため多くの
小学校においては二部授業や廊下、昇降口使用等の不正常授業が行われております。これら
小学校の不正常授業を解消するため、
政府は従来から単独起債を認めるとともに、所要の国庫
補助金を計上して
小学校校舎の整備に
努力して参りましたが、現在行われている
小学校の不正常授業を解消するためには、戦災復旧等により解消できるものを除いて、現在約三千教室を整備しなければなりません。のみならず、
小学校の児童数は増加の一途をたどり、また人口の都市集中化の傾向により、都市における校舎不足は今後相当長期間継続するものと思われる等の事情がありますので、これに伴う教室の整備もいたさなければなりません。もとより
小学校の施設の建築に要する経費は、原則として設置者たる市町村が負担することになっておりますが、市町村の事業には
中学校の整備や危険校舎の改築等の事業もあり、独力で不正常授業の解消をはかることは困難な実情にあります。以上の実情にかんがみ、従来の
予算措置による
小学校不正常授業解消の国庫
補助をここに法制化して、不正常授業の定義、国庫
補助の範囲等を規定し、もって適正に
小学校不正常授業の解消を促進いたしたいと思います。これがこの
法律案を
提出する理由であります。
次に
法律案の大要を申し上げますと、第一に、この法律により国庫
補助の対象となる不正常授業を定義して、二部授業その他校舎の不足による不正常な授業とし、詳細は、政令で規定することにいたしております。第二は、国庫
補助率でありますが、
予算の範囲内で三分の一以内ということにいたしております。第三は、国が
補助を行うことができる建築の坪数を、政令で定める児童一人当りの基準坪数までの不足坪数といたしております。そのほかに、
補助金交付の取り消し及び停止並びに指示、監督等所要の規定を設けております。
最後に
危険校舎改築促進臨時措置法の一部を改正する
法律案につきまして、その提案の
趣旨と内容の概要を御説明申し上げます。
公立学校の危険校舎のうち改築を要するものは、現在小、
中学校及び
高等学校を合せて百数十万坪に上っております。学校施設の建築に要する経費は、原則としてその設置者が負担することになっておりますが、今日の
地方財政の現状では、これらの危険校舎を独力で改築することはきわめて困難な実情にあります。そのため、第十六回特別国会において
危険校舎改築促進臨時措置法が制定せられ、義務制学校の危険校舎の改築については臨時に国が
補助を行うことにな
つたのであります。
しかしながら、
高等学校の危険校舎についても、その発生の原因は義務制学校の場合と同様の事情にあり、かつその主なる設置者である
都道府県も財政が窮乏している実情でありますので、
昭和三十
年度から、公立の
高等学校の危険校舎につきましても、その改築に要する三分の一以内を国庫より
補助することとし、そのため今
年度の
予算案には義務制学校と合せて総額二十億円が計上されております。よって
危険校舎改築促進臨時措置法の一部を改正し、新たに
補助対象として
高等学校並びに盲学校及びろう学校の高等部を加えることといたしたのであります。これが
法律案を
提出する理由であります。
なお、この
法律案は、以上の理由に基き、現行法に所要の改正を加えることを内容とするものであります。以上各
法律案の概要を申し述べましたが、何とぞ慎重に御審議の上、すみやかに御可決賜わらんことをお願い申し上げます。