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1955-05-20 第22回国会 衆議院 文教委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月二十日(金曜日)     午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 佐藤觀次郎君    理事 伊東 岩男君 理事 並木 芳雄君    理事 坂田 道太君 理事 竹尾  弌君       稻葉  修君    纐纈 彌三君       高村 坂彦君    杉浦 武雄君       野依 秀市君    山口 好一君       永山 忠則君    河野  正君       島上善五郎君    野原  覺君       山崎 始男君    小牧 次生君       平田 ヒデ君    小林 信一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 松村 謙三君  出席政府委員         文部政務次官  寺本 広作君         文部事務官         (初等中等教育         局長)     緒方 信一君         文部事務官         (大学学術局         長)      稲田 清助君         運輸政務次官  河野 金昇君         運輸事務官         (大臣官房会計         課長)     梶本 保邦君         運輸事務官         (船員局長)  武田  元君  委員外出席者         調達庁次長   山内 隆一君         専  門  員 石井  勗君     ――――――――――――― 五月十七日  委員北村徳太郎辞任につき、その補欠として  米田吉盛君が議長指名委員に選任された。 同月十九日  委員三宅正一辞任につき、その補欠として水  谷長三郎君が議長指名委員に選任された。     ――――――――――――― 五月十七日  北海道大学に附属高等学校設置陳情書  (第一〇六号)  青少年育成強化に関する陳情書  (第一〇七号)  高等学校定時制教育及び通信教育に関する予  算増額に関する陳情書  (第一九四号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  学校教育に関する件     ―――――――――――――
  2. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  去る五月十三日当委員会議長委員派遣承認申請をいたしましたところ、議長議院運営委員会を開きまして、不承認となりましたのでこの際御報告申し上げます。     —————————————
  3. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 次に学校教育に関する件を議題といたします。  この際委員長より二、三点につきまして文部大臣より所見をいただきたいと思います。まず最近問題となりました修学旅行について、昨日も緊急質問がございましたけれども、本会議答弁ではなくて、率直に御方針が承わりたい。たとえば児童補償法のような問題で何とか処理をするとか、あるいは修学旅行のことにつきましては、これは学校責任はございますけれども文部省としては今後どういうような方法でやっていかれるかということの所見を、文部大臣から承わりたいと思います。
  4. 松村謙三

    松村国務大臣 お答えを申します。大体の考え方につきましては昨日本会議お答えを申したようなわけでありますが、これにつきまして昨日も申しました通りに、これを根本的に再検討をいたしたいと考えまして、今その用意をいたしておるわけでございます。広く学校先生方あるいは運輸交通経験者、いろいろな方面の方に一つ御相談を願つて、そして根本的の方針をきめたい。それはひとり修学旅行に対する安全の問題ばかりではございませず、進んで修学旅行の目的をもう少しきっぱりさして、そしてほんとう見学の実をあげるようにいたしたい、こういうつもりでやつて、それを速急に進めたいと考えております。その他昨日も申しました通り、旅行の期日でありますとか、またいろいろ指導の面においても変えたいと思います。それは修学旅行に行きまして、そしていろいろ風紀、規律の乱れということも時折非難を聞くこともございますので、こういう面等十分注意をいたしてやりたいというふうに考えておりますが、できるだけ一つ学校等の連絡を緊密にして実効をあげたいと思うております。  それから今のお尋ねの点でございますが、この間もここでお答えを申しましたように、また河野運輸次官からもお話がありましたように、今度の不幸な遭難の方々に対してできるだけその慰藉料といいますかに対して、十分のことをいたしたいと考えているわけでございます。それからこれに対する法規の問題に至りましては、これは十分研究をいたしたいと考えております。
  5. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 実は最近今度のいろいろな事故の問題について、責めが全部学校文部省側にあるような意見があるようでございますけれども、今いろいろな意見によりますと、この際修学旅行をやめたらどうかという意見も出ておるわけでありますが、私たち学校とか文部省責任ではなくて、交通事故運輸省の責任になると思うのでありますが、そういう点で文部大臣修学旅行を中止なさる御意思があるかどうか、ここではっきりと御答弁をいただきたい。
  6. 松村謙三

    松村国務大臣 昨日も中学校長会議がございまして、そこへ参りましたから、その際も申しておきましたが、今この事件のために学童が見聞を広めるその門を閉ざすという考えは毛頭文部省といたして持っておりません。どうかして安全性を確保いたして、そうして十分見学の実をあげるようなふうに修学旅行を改めてやつていきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  7. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 いま一点お尋ねしますが、この前政府方針として、新生活運動ということについて文部大臣からいろいろ御説明がございましたが、その後どういう結論になっておりますか。具体的に一つ説明を願いたいと思います。
  8. 松村謙三

    松村国務大臣 そのことにつきましては、今だんだん予算の進行中でもございますし、まず私ども考えておりますのは、各党に向って超党派的に一つ生活の改善、新生活運動を進めていきたいということに御同意を得たいと思うのでございます。その条件につきましては、先般も申し上げました通りに、白紙の上に立って、ただ日本の今日の生活を改善いたしまして、生活規制を与えるということを目標とした運動民間団体においてやつていただきたい、そこまでにいく世話は政府としていたしますが、その上は民間団体でやつていただきまして、やがてそれは国民の共鳴を得まして、大きな国民運動として実際の効果を収めたい、こういうことを目標といたしまして、それでただいま各党方面へそういう趣旨においての御賛同を願っておるわけでございます。まだそれじゃというお話もありませんけれども、私がただ個人的にお話はいたしておるのでありますが、それに対しては好意を持ってお聞き取りを願っている、こういうのが現在でございまして、これをまず基本にできましたら、それから進んで各階層の方へ政府として呼びかけをいたし、その手でやっていただきますことは、先般申し上げた通りでございます。今の段階はその程度であります。
  9. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 もう一つ最後に伺いたいのですが、先日悪書追放良書推薦という声があり、出版界雑誌界にも相当問題になっておりますが、そういう点について文部大臣の御所見をもう一ぺん伺っておきたい。
  10. 松村謙三

    松村国務大臣 これはおそるべきものがあると思います。悪書青少年に大きな悪影響を及ぼしておりますことは申すまでもないことでございます。それからもう一つ映画の面におきましても同様でございまして、今日映画を見る人の平均年令は十八、九才だといわれておりまして、従ってそれよりもずっと年のいかない子供たちが見る。それが子供たちには非常によくない映画などが現在の状態では遺憾ながらあります。世界の各国の例などを見ましても、英国のように家庭ががっちりとしておるところでは、やはりそれらの点は家庭少年映画を見るのを規制いたして、その弊を相当にためておるようであります。また国によっては、一定年令まで映画少年が見ることを禁止しておるところもあるようでございますが、ただいま私ども考えておりますことは、そういう禁止はできないだろう、そのかわりにいわゆる良書運動と同じように、映画をもよくいたす、こういうことに努めることが本筋であろう。幸いに本につきましても著作者出版者の間にも反省の声が相当にあがっておりまするし、社会婦人会、母の会その他各方面においてもこれが問題となっておりまして、文部省といたしましてはぜひこの風潮を指導いたしまして、そして悪書を駆逐するとともに、映画におきましても同様のことにいたしたいと思います。今度予算でお願いをいたしておりまする社会教育費のうちからは、この映画をよくするというようなところへその費用を使いまして、効果を上げたいと思うのでございます。きょう閣議において報告を受けたのでございますが、総理府に中央青少年問題協議会というのがございまして、この間意見を上申いたして参りましたのは、青少年に有害な出版物映画等の対策についてというのが出てきております。これらのことも資料といたしまして十分その実をあげたいと存じております。
  11. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 以上の三点は重要な問題でございますので、文相におきましてもぜひ実行されんことをお願いいたしまして私の質問を終ります。野原覺君。
  12. 野原覺

    野原(覺)委員 まず第一は教育財政についてお尋ねをいたしたいと存ずるのでありますが、最近都道府県教育委員会では、教職員給与の支給につきまして、昇給なり昇格というのがスムーズにいっていない、こういうことを教職員諸君から私ども聞くのでございます。従って地方府県昇給なり昇格というものの予算が十分に組まれていないのかどうか、その実態はどうなっておるのか。それを文部省はどう把握しておるかということについて承わりたいと思います。
  13. 松村謙三

    松村国務大臣 局長からいさいのことを御報告申し上げまして、なおお尋ねがありますれば私からお答え申し上げます。
  14. 緒方信一

    緒方政府委員 各都道府県におきます昇給昇格実施状況でありますが、最近の調べをいたしました状況を申し上げますと、本年の一月の昇給は、これは先月の調べでございますが、四十二府県実施済みで、四府県がまだはっきりしないという状況でございます。ただいまお話しのように国の予算暫定予算でありましたので、各県で当初組まれました予算には昇給財源を組まないものが相当あるように見受けているのでありますが、ただいま御審議中の国庫負担金予算におきましては、年間五%の昇給財源をつけておりますので、それに基きまして近く各府県におきましても追加更正が行われることを私どもは期待いたしております。このことにつきましてはまだ予算が御審議中でありますので、地方には正式には申されませんけれども、しかし政府原案がきまりましたときに、各都道府県予算給与主管課長会議をいたしまして、政府考えております予算原案につきましては、十分徹底をいたしておきましたので、各府県ともそのつもりで主管課長は帰っております。今後おそらく当初の予算に計上してない府県におきましても、これが計上されることであろうと私どもは期待いたしております。
  15. 野原覺

    野原(覺)委員 本年の一月までの昇給実施府県は四十二府県でいまだのところが四県だ、こういう御答弁でございましたが、この四十二府県昇給実施は、昇給の全面的な実施なのか、いわゆる昇給該当者が全部実施されておるという意味実施であるのか、それともその該当者の何%あるいは何割というふうに一部分だけ実施をせられたという意味実施であるのか、これはどうなっておりますか。
  16. 緒方信一

    緒方政府委員 これは各県につきまして実施状況内容につきましては一一わかりかねます。ただ御承知のようにただいまの給与法、国の給与法もそうでありますが、地方条例できめておりまする昇給方法といたしましては、大体国の例によっております。それで一定期間、これは俸給の級号によりまして期間が違いますけれども一定期間良好な成績で勤務いたした者は昇給することができるという規定になっておるので、それにならいまして各府県条例をきめまして実施をいたしておるわけでございます。従いまして各府県の個々の実施状況は、各府県の判断によってやることと存じます。その点につきましては詳細には私ども存じないわけでございます。
  17. 野原覺

    野原(覺)委員 昇給実施しない四県があると言われますが、それに対しては文部当局としてはどのように対処される御方針ですか。
  18. 緒方信一

    緒方政府委員 御承知のように市町村立学校職員給与負担法に基きまして、市町村立の小中学校教職員給与負担都道府県であります。それに対しまして国が義務教育費国庫負担法によって、支出いたしました額の二分の一を負担していくというのが現在の法律建前であります。従いまして昇給また給与の支払いの責任はあくまで都道府県にありますので、都道府県財政によりましてその昇給がきまるわけであります。ただいまの地方行政建前から申しまして、教育行政もそうでありますが、特に地方財政建前から申しまして、地方自主性があります。従いまして国から具体的に昇給をしろとか、してはいかぬとかいったようなことを指図をする建前になっておらないわけでございます。しかしながら教職員昇給がうまくいかぬということは、教育上にも問題でありますので、私どもといたしましては、これが円滑に実施されることを強く期待しておるわけであります。従いまして先ほど申し上げましたように、時々教育長会議給与主管課長会議等を行いまして、そういうときには強くそのことを希望しておるわけであります。先般も国の予算関係も話しまして、そのことを強く要望いたしておいたような次第であります。
  19. 野原覺

    野原(覺)委員 三十年度の昇給予算につきましては年間五%を見込んでおる、これが実績であろうかと思いますが、私どもこの前政令該当東京神奈川大阪の三都府県についてあなたに質問をいたしましたときに——実はあの三都府県は、文部省の方で定員なり単価についてのワクを予算に組んでしまつてからあとで押しつけていきましたために、昇給予算はわずかに二%もないという現状なのです。その他の府県は五%の昇給予算が組まれておりながら、政令に該当してその他の府県のしわを寄せられたこの三都府県は、昇給予算が二%である。実はこういう状況にあなたの方から押しつけられてしまっておる。このことに対しては文部省はどのように対処されようとなさっておるのか、承わりたい。
  20. 緒方信一

    緒方政府委員 政令に該当いたしません一般の府県に対します国庫負担の原則は、たびたび申しますように、実支出額の二分の一を国が負担する、ところがそれに対します例外としまして、富裕府県に対しては国が負担をする給与最高限度をきめる、こういうことになっておりまして、そのきめ方といたしまして定数の算定、それから給与単価、こういうものを押えておるわけであります。給与につきましては、この前も御説明申し上げましたように、国立学校平均給与基準にして給与をとつて、その政令基準にいたしておるわけであります。それで国立学校給与でありますので、昇給につきましても国家公務員の例に準じまして、二%の昇給を昨年の単価に加えた、こういうことで計算をいたしておるわけであります。これは義務教育費国庫負担法精神から申しますと、実支出額の二分の一というのが趣旨でありますので、その趣旨をなるべく広く実現することが理想でありますが、現在の地方財政実情からもうしまして、富裕府県につきましてはその最高限上度を押えられておる、しかし二十九年度の地方税制改正によりまして、政令に該当する府県が十七府県も出そうな形勢になりましたので、私どもといたしましてはこれが改正をはかりまして、三十年度においては東京大阪神奈川の三都府県だけにこれをとどめるということにいたしたわけであります。これは私ども考えといたしましては、国庫負担法精神に一歩近づけた、かように考える次第であります。
  21. 野原覺

    野原(覺)委員 三都府県の点につきましては、先般大臣の御答弁の中に、これは国庫負担法精神から考えても、きわめて望ましいものでないので、できるならば義務教育費半額国庫負担精神を全面的に生かしていくように努力したい、こういうことが申されております。従って私はこの点については、今後松村文部大臣の御努力と御善処に期待いたしたいと思いますから、これ以上は質問いたしません。  そこで大臣お尋ねをいたしますが、昭和三十年度の都道府県教育予算を私あちらこちら調べてみますと、昇給予算を組んでいない府県が現実に出てきておるようであります。これは私はゆゆしい問題であると思う。半額国庫負担によって国から半額を支出しておりながら、府県教育財政が貧困であるからというので昇給予算を組んでいない。このことがやはり教職員の心理に大きな影響を与えておる面は見のがすことができないと思う。こういう点について大臣としては、都道府県に対してどのように対処なさるお考えであるか。もっと具体的に申しますと、昇給予算を組んでもらいたいという実施方についての通牒を私は出すべきではないかと思うのでございますが、その御意思はないかどうかお尋ねをいたします。
  22. 松村謙三

    松村国務大臣 そういう事実に対しましては、私どもの方から文部省としての措置もとりましょうし、また自治庁責任者の方へも、そういうことの是正されますようによく懇談をいたしたいと考えております。
  23. 野原覺

    野原(覺)委員 そのことについては、ぜひともこれは大臣から実施についての御通牒を出して下さるように重ねて希望いたしておきたいと思うのであります。  次にお尋ねしたいことは、教育法律でございます。これはさきの国会におきまして、相当国民の批判と、いろいろな波乱を呼び、特に先般の国会における重要法律として、院の内外において論議の対象になった法律であることは、大臣も御承知であろうと思うのでございますが、この教育法律が今日実施をされておりまするために、現場教育にどのような影響を与えておるとお考えか。教育法律実施せられない前の教育実情と比べて、今日の教育というものは、実施せられたためにどのような影響を受けておると大臣はお考えであるか、これを私は尋ねてみたい。
  24. 松村謙三

    松村国務大臣 私はかねて申し上げました通り、あの二法律そのものをいいとは決っして思うていないのです。ただ今日のこの場合において直ちにこれを解くことはどういうものかと考えているわけでございます。文部省あたりの今日の状態というものは、何も文部省の権限を強めようというような考えは毛頭持っておりませんけれども修学旅行の苦い経験から申しましても、たとえば鹿児島県の松元事件のようなことから見ましても、文部省といたしましてこれに対して、何一つ直接の指令をすることができない状態になっております。これでほんとうに文教というものの刷新ができるかといいますと、私どもはそこに大きな遺憾を持つものでございます。従いまして、決して政府権力を増すというようなことはもちろん考えませんけれども、こういう点も安心ができ、そしてすべての教育上の事態が落ちついて参りましたならば、そのときは一日もすみやかにああいうものをやめてしまいたいと念願をいたしておるのでございますが、今これらの過渡期にありますから、文政全体とにらみ合せてこれらのことを取り計らいたいと考えているわけでございます。
  25. 野原覺

    野原(覺)委員 これは政府権力の問題ではないと私は思う。私は、あの教育の二法律現場教育にどのような影響を与えておるのか、それを一体どう把握していらっしゃるかということを尋ねたわけなんです。なぜそういう質問を私がするかと申しますと、私ども立法機関でございまするが、私は、法律をつくるということは、制定当時にのみ問題にすべきではなくて、むしろわれわれが作った法律実施されてから、一体どういうような影響を及ぼしていくかということを、私ども立法に当る者は厳重に注意していかなければならぬと思う。そういう立場で私はお尋ねしておるわけなんです。特に教育法律は、文部当局が提案をいたしまして、政府責任で制定しておるわけでございますが、あの重要な法律と言われた、しかも国民から相当指弾せられてきた法律が、一たん実施をしてみた、それが六十万の教員にどういう影響を与えているのか、学校教育にはどういう影響を今日もたらしておるかということを、私は、責任のある文部当局ならば、そのくらいなことは見守られていらっしゃらなければならぬと思う。だからお尋ねしておるのです。影響は何もございませんか。
  26. 松村謙三

    松村国務大臣 大体から申しますと、あの法律がありましても、今日あの法にひっかかるというような事態はそう頻発していないと私どもは見ております。ただこれによって教職員の方が何か威圧を受けるというような、精神的の面においての影響はあるかもしらぬと思います。それであるから、決してあれをいい法律であるとは思いませんが、過去の時代といたしましてああいうことを必要とする時代もあったのでありましょうが、先刻申したように、あらゆる事態をよくいたしまして、一日も早くこれをやめるといるような事態の来ることを希望いたしております。
  27. 野原覺

    野原(覺)委員 私がこの質問松村文部大臣にいたしまするのはちと酷じゃないかと私は考える。ということは、就任日も浅いのでございまするから、事務当局からの御報告等も十分なかろうかと思いまするので、私はこの際事務当局お尋ねをいたしたいと思うのでございますが、二法律実施せられましてから、どういう影響があるかについて綿密なる調査をなさったことがあるか、この点についてお伺いいたします。
  28. 緒方信一

    緒方政府委員 二法律一つは、教育基本法、いわゆる中正なる教育を確保いたしますために、これに対しまする第三者の教唆、扇動を処罰する法規であります。お尋ね趣旨は、現場教育内容にいかなる影響があるかということであろうと思います。これにつきましては、教育活動というものは御承知のように複雑多岐にわたるものでありまして、ただ普通の事務的な調査というようなものはいたしかねると思います。従いまして、私どもといたしましては形式的な調査はいたしておりませんが、現場教職員研究集会あるいは道府県指導部課関係会議というものを常にやつておりまして、現場関係者とは常に接触を保つておりますので、その影響等につきましては十分把握をいたしておるつもりであります。私ども考えといたしましては、この法律が出ました当初いろいろ誤解がございました。ただいま私が申しましたように、これはもともと教育基本法規定されておりまする、偏向教育を排除するための一つの手段として刑罰規定ができたのでありますが、何か新たな規制教育内容に加わったというような誤解もあったかと思うのです。しかしながら私どもといたしましては、この趣旨徹底に努めましたので、漸次この趣旨が浸透していっただろうと考えます。ただしかし一部非常に不自由であるという考え方があるとすれば、いろいろと教育の態度においていろいろな反省が起つておるのじゃないかと私は考えます。  それからもう一つの方の法律は、これは教育公務員特例法改正でありますが、これは政治活動制限禁止であります。そのことにつきましては、その間選挙等もございましたが、さしたる影響はなかったのではないかと私は考えます。これは新たな制限が加わったのでありますが、その制限に基いて教職員の行動が行われたと考えております。ただ一、二事件は起っております。
  29. 野原覺

    野原(覺)委員 問題は二点あろうかと思います。その一点は、教育内容として政治教育一体影響があるかどうか。これはもう局長はよく御承知のように、教員公民教育の重要な立場に置かれております。良識ある公民たるに必要な政治的教養はこれを尊重しなければならぬ、こういうことにされておるのでありますが、その公民たるに必要な政治的教養学童生徒に与える場合に一体影響があったかなかったかという問題が一つ。もう一つは、大臣が申されたように、教員の心理を圧迫しておる点があるかないかということは、この法を制定した特に文部当局としては、しょっちゅう考えておかなければならぬのではないかと思う。こういう点についてあなたは、調査は形式的であるからしなかったのである、こういうことを申されておりますけれども、この教育法律は、大臣もしょっちゅうお認めになっておられるように、だれが何と言っても悪法であることはいなめないのです。悪法とはつまり好ましい法律でないわけです。これが今日必要であるかの論議は私は今繰り返しません。従ってそれは今申しませんけれども、そういう望ましくない法律実施されているときに、これがほったらかしにされているのではないか。一体これが現場教育にどういう影響を与えておるかということについては、全くわれ関せずえんと申しまするか、等閑に付されておるのではないかという疑問を持つのでありますが、あなたのただいまの答弁を聞いても、残念ながらそれを認めざるを得ないと思う。しかしこれは押し問答になりまするから、私は具体的の問題を提起して、大臣並びに局長質問を続けたいと思いますが、教育法律実施をされてから今日まで、具体的に適用があったのが何件であるかお尋ねいたします。
  30. 緒方信一

    緒方政府委員 義務教育の中立性確保の法律の方の適用は、私の方では聞いておりません。それから教育公務員特例法改正法律、つまりいわゆる政治活動制限禁止に関しまする法律の方の適用は、今正確に適用があったことは二件報告を受けております。一つ大阪府下におきまする茨木市の市長選挙、これは今年の一月におきまして市長候補を積極的に支持したということで、中学校の教諭が戒告処分に付されたという事件一つあります。それからもう一つは秋田県の荷上場村というところで起った事件であります。ここで村長リコールの署名運動が行われました際に、同村の中学校の教諭二名がそのリコールに署名をしたということで、これは懲戒免の処分を教育委員会から受けた。それに対しまして、処分された二人が公平委員会に不利益処分の審査請求を行い、また裁判所に対しましては処分取消しの訴訟をしたわけであります。これにつきましてはその適用が行き過ぎであったということで、後に教育委員会でその処分を取り消したという事件がありました。私は具体的にはこの二件を聞いております。ただまだはっきりいたしませんけれども、今度の選挙におきましては、一、二の県に、これは公職選挙法の違反事件もあると思いますが、この公務員特例法の関係の違反事件もそれに付随してあるように聞いておりますが、まだ教育委員会の方から詳報がございませんので、申し上げる段階でございません。
  31. 野原覺

    野原(覺)委員 その場合、その茨木市の教育委員会なり、秋田県の荷上場村の教育委員会当局に対して御指導なり御助言というものをなさつてこられたことと思うのでございますが、いかがでございますか。
  32. 緒方信一

    緒方政府委員 私どもは、従来教育委員会法の建前におきまして、個々の事件につきまして直接そこの教育委員会に対しまして指導、助言をするということは、異例の事件の以外にはなるべく行なってきておりません。今まで直接勧告等をいたしましたのは、京都の旭ヶ丘のあの事件の際に、京都市の教育委員会に対しまして勧告をいたしたのが一つだと私は記憶いたしております。従いまして、今申しました今度の二つの事件につきましても、文部省といたしましては直接指導、助言ということについてはいたしておりません。これは報告を受けておる程度でございます。
  33. 野原覺

    野原(覺)委員 どうもただいまの答弁では私は了解できないのでございます。茨木市はおくといたしましても、秋田県の荷上場村の教育委員会のとりました措置は、裁判所でこれが執行停止の処分を受けて、しかも荷上場村の村の教育委員会が二ッ井町の教育委員会に発展解消をしたが、この二ツ井町の教育委員会は全面的に荷上場村の教育委員会のとった処分というものを撤回しておる。こういうことでございますと、教育法律というものが地方権力地方教育委員会によって乱用をされたところの極端な実例ではないか。だからこれはめったにない具体的な事例でございまするから、荷上場村教委がこの二法律の適用をしよう、こういうことが起った場合に、これは重大であるというので、私は文部当局としては調査をすべきではなかろうかと思う。もし二ッ井町にここが合併せられなかったならば、この二名の教員というものは馘首になったものである。社会的に葬られておるわけなんです。たまたまこの荷上場村の学校教員が結束をして、こういうことをわれわれが甘んじて受けることはできないというので、秋田の地方裁判所に提訴をした。地方裁判所が調べてみたらけしからぬというので、この執行停止の処分を受けたから救済せられたけれども、もしこの学校なり教員が提訴をしなかったならば、この教員は馘首をされて、これはもう社会的にひどい目を受けることになるわけなんです。そういう事態になっても、あなたは具体的なことには干渉しないのが建前であるから、これは指導も助言もしないのである、こうお考えですか。
  34. 緒方信一

    緒方政府委員 これは事態の判断によると存じますが、この場合私どもとしましては、事件が起きましたあとで報告を受けたようなことになっております。もちろんいろいろな事件が起きました場合に、地方から書面なり、あるいは出向いたりして助言を求められる場合もあります。これにつきましては当然適宜な指導、助言を与えるわけでありますが、しかし地方に起りました事件全部につきまして、こっちから一々指導、助言を与えるという態勢にはなっておりません。この事件につきましてもあとで報告を受けましたので、文部当局として指導、助言をする余地がなかったわけでございます。
  35. 野原覺

    野原(覺)委員 この関係者が文部省に行って、こういう事態は重大ですから、文部省からすみやかに調査委員なり何なりを派遣して調べてくれ、こういう陳情に参ったところが、君らがそういうことを言っても、文部省としては向うの教育委員会責任ある報告がなければ調査はしないのだとうそぶいておられる、こういうことを聞くのです。これはどうも教育法律実施をせられてから二法律関係をせられた方々の御態度、お考え方というものが、教員に対して圧力をかけることには非常に御熱心ではあるけれども教員の人権というものが非常に棄損をせられ、ひどい目を受ける、こういう事態に対しては、私は全く無関心な態度であるのではないかという気がしてならないのです。教育委員会報告がなければ文部省調査をしないのですか。これは大臣お尋ねをいたしますが、教育委員会報告がなければ調査には行かないということをあなたの省のお役人さんが言われたということであれば重大だと思うのですが、大臣はいかがお考えですか。
  36. 松村謙三

    松村国務大臣 お答えいたします。それは場合によることと考えております。私の大体の考え方は、先刻もお話通り教育基本法においては政治を教えなくてはならぬという規定がございます。従ってそれは正しく守つていくべきであろうと思います。同時にまた他の規定の中には政治の偏向があってはならぬといっておる。この面においても、また私どもは教職にあらるる人たちもその点を厳重に守つていただかなくちゃならないと考えます。そういう意味合いにおきまして、その考え方からして現在のあの法律を運用いたしまして誤まりなきを期したいと思うのでございます。
  37. 野原覺

    野原(覺)委員 私は今さら教育法律が悪法であるかどうかという議論をここでは蒸し返したくございませんが、このような法律というものは、権力者がひっかけようと思いますと、ひっかかるのです。悪意に材料を収集して悪意なる判断をいたしますと、これはひっかかるわけでございますから、どうか一つ文部大臣としては、何回もあなたが言われておりますように、好ましくない法律でございますから、しかも教育委員会というものは、法の微妙な運用の面においては、こう言っては失礼でございますけれども、私は必ずしも見識のある方々ばかりによって教育委員会が構成されているとは思わぬのです。そういう人によってこれがいじられますと、とんでもない悪い影響現場教育に与えまするので、地方権力機関によってこの二法律が乱用されることのないように、大臣としては今後ともこの注意方を一つ促して下さるようにお願いをしたいと思うのであります。その点について……。
  38. 松村謙三

    松村国務大臣 それはただいまお答え申し上げました通り、政治を正しく教え、そして政治の偏向の弊のないということを目標といたしまして、今御注意の点は十分私どもも気をつけまして、その運用を誤まらないようにいたしたいと思うのでございます。
  39. 島上善五郎

    ○島上委員 関連して。この秋田県の問題は、私どもこの法律を制定する際にそういう行き過ぎが起るのではないかと非常に心配しておったことが、現実に起ってきておるわけです。このような法の乱用によって教職員がその地位を奪われる、馘首されるということは、これは馘首される側にとっては大へんな問題なんです。直接対象にされる二名の教員にとって大へんな問題であるばかりでなく、他の教員にとってもこれは大へんな脅威だと思う。教職員にとってはこれほど大きな問題はない。私はこれに対しては、当然このような行き過ぎの事実にかんがみて、かかる行き過ぎを是正するための措置がとられてしかるべきものだと思う。今の大臣答弁はきわめてあいまいで、はっきりとこのような行き過ぎ是正の措置をとる御意思があるかどうかということがつかみとれがたいのです。この行き過ぎ是正の措置をこの事実にかんがみてとられるお考えであるかどうか、私はこれは非常に重大な問題だと思う。はっきりとした御答弁を承わりたい。
  40. 松村謙三

    松村国務大臣 秋田県の問題は別といたしまして、根本の方針を申し上げますならば、そういうことでもしも措置に非違の点がございましたならば、文部省の権限の許される範囲内においては十分に是正をいたして、運用の誤まりなきを期したいと考えております。
  41. 島上善五郎

    ○島上委員 私はその御答弁には満足できません。こういうような現実に行き過ぎがあるのです。私どもはこの法律審議する際に、きっとそういうような行き過ぎが起るのではないかという心配をした。法律自体ももちろん問題でございますが、この法律ができましたならば、地方々々によって保守的な色彩の強い教育委員が多数を占めている委員会においては、そういう行き過ぎがあるのではないかということを心配しましたが、その心配が現にこのように事実になって現われてきておる。私はこういうことをいいかげんにしておいたならば、次から次に起らないという保障はどこにもないと思う。そこでこういう事実が起っておるのですから、この事実にかんがみて、このような行き過ぎがないようにという是正の措置がとらるべきものではないかと思う。秋田県の問題は別としてと、これをことさらにそらして、抽象的な一般論で答えられておりますが、私はそういうことで満足できません。事実こういうような具体的な問題があったのですから、これにかんがみてかかる行き過ぎをしないようにという是正の措置は当然とられるべきだと思う。これは教員にとっては重大な問題だと思います。
  42. 緒方信一

    緒方政府委員 この秋田県の事案につきましては、行き過ぎがあって、懲戒罷免の処分は、御承知通り教育委員会におきまして後にこれを取り消しております。でありますから、その事態そのものはそこで落着しております。しかしお話の趣意は、こういう行き過ぎがないように全面的に指導の必要があるということと存じますが、このことにつきましては、先ほど大臣からもお答えがございましたように、私どもの方といたしましても、法律趣旨徹底にさらに十分な努力をいたして、間違いのないように適正な運用をはかっていくように十分なる努力をいたしたいと思います。
  43. 野原覺

    野原(覺)委員 秋田地方裁が執行停止の裁定を下したのは、記録によると三月二十二日と私は聞いておる。三月二十二日から今日まで約二カ月経過しております。従って私はこのような乱用がなされてはいけない、秋田県において起ったこの実例を示して、全国の教育委員会に対してこういう乱用をしてはいけないという通牒を出されたことと思うのでございます。あなた方は今日まで、たとえば官公労の佐久間事件に対しましても、あるいはその他いろいろな問題がございましたが、選挙でも始まりますと、間髪を入れず始終通牒を出される文部省でございまするから、通牒を出されただろうと私は思う。そういう通牒を出されておるとすれば、何月何日どういう内容のものを出したか、お示し願いたい。
  44. 緒方信一

    緒方政府委員 先ほど申し上げましたように、私どもは事後報告を受けたのでありますが、これにつきまして特別な通牒は出しておりません。しかし今後も法律の適正な運用につきまして、全面的な指導をさらに強化していきたいと考えております。
  45. 野原覺

    野原(覺)委員 大臣はこういう乱用をしてはいけないということを言われた。その大臣答弁について、同僚議員の島上氏が納得できないと言って質問したのは、いつもあなた方の答弁というものは、実は私に言わしめれば、口先だけなんだ。ほんとうにこういう乱用をしてはいけないという御意思があるならば、なぜ二カ月間もほつておくんですか。こういう事実があるんだから、こういうあやまちを繰り返してはいけないという通牒を当然文部省は出すべきじゃないかと私は思う。ほんとうにお出しにならなかったんですか。どういうわけで出さなかったのか、これは重大ですから、重ねてお尋ねいたします。
  46. 松村謙三

    松村国務大臣 それをお答えいたしますが、法の運用につきまして主管省が一々その指令を出すということも実際の問題としては考慮すべき場合が多いと考えます。なぜかならば、教育委員会は甲の県、乙の県によりまして、独自の考えで判定をいたすこともあるわけでございます。そこで一つの県の実例をあげて他の県にこうしてはならぬ、こういうことを申すことは、法の適正な運用を拘束する危険もありますので、そういうことが秋田に起りたということは、どこの県の教育委員会でも直ちに周知することでございますから、その判断にまかすことが適当じゃないか、こういうふうに私は思うのでございます。
  47. 野原覺

    野原(覺)委員 大臣お尋ねしますが、このような乱用を厳に指導立場にある文部省としては戒めなければならない。その場合にあなたは、これはどういう具体的な方法をもって今後乱用がなされないような御指導をなさるお考えですか。
  48. 松村謙三

    松村国務大臣 それはよく気をつけまして、広範な意味においての指導を私はいたし、絶えず注意はいたします。しかしながら甲の教育委員会がこうしたからこれはみんなもそれにならえとかならうなということを言っちゃいけないのでございまして、そういう意味合いから申しまして、なおその運営についてそういう御疑問がありますならば十分に注意をして、法の適正な運用を誤らないように今後いたしたいと考えております。
  49. 野原覺

    野原(覺)委員 ところが今日まで文部省から何か起りますと通牒都道府県教育委員会にしょっちゅう出されておるのです。たとえば自衛隊の募集に対して、学校教員が、こういうことはわれわれの所管外だというので非協力の態度をとった。ところがこのことはきわめて遺憾なことであるといって通知を出されたことがないかどうか。それから何か、その他教育法律とは私は申し上げませんけれども、たとえば選挙が始まったような場合に、教育委員会としては二法律もあることであるから十分これに違反することがないようにという通知を出されたことがあろうと思うのです。そういうようにある場合にはもう間髪を入れずに出されておる。ところがこの重要な二法律、しかも教員にとっては非常に心理的な大きな影響を与えておるこの二法律の適用に当って、たとえばこういう乱用をされては困るのです。これはもう明らかに困るわけですから、こういう乱用をすることがないようにという通知ぐらいは、私は二カ月も経過したことであるからとるべきではないかと思うのですが、私の言うことが一体無理なのかどうか。そしてこれはおとりにならなかったあなた方が正しいとお考えであるのか。それともそういう通知を出してはどうかと私が希望しておることがむちやな希望なのか。私は法の乱用を戒めておるわけですから、当然これはあなたとしては通知を出すべきではないかと思うのです。いかがでございますか。
  50. 松村謙三

    松村国務大臣 その法の運用について、甲の県の決定がただちに全面的に——秋田県にこういうことになったからさようにせよということは、これは申してはならぬと思いますが、全面的に法の運営を適正にしろ、こういうことは当然文部省といたしまして十分注意をして、その趣旨徹底するようにいたしたいと思います。それにつきましてこの選挙の際の注意などと、この法の運営に対する注意とは、これはおのずから違って参りますことは御承知下さることと思うのでありますが、大体そういうふうに考えているわけであります。
  51. 野原覺

    野原(覺)委員 私はこれ以上押し問答いたしましてもどうかと思いますから、この問題はこれで終りたいと思いますが、最後に私はこの二つの法律の適用に当っては、どうか地方教育委員会が不当なる実施をなされないように、乱用をしないように、今後とも厳重なる御注意方を大臣に要請いたしておきます。  そこでもう一点、これは大臣並びに調達庁当局に対して質問をいたしたいと思いますが、大阪市立大学の校舎返還についてでございます。実は大阪市内版の朝日新聞でございますが、参議院の文教委員会が十七日午後二時半から開かれて、そうして大阪市内杉本校舎の接収解除問題を討議したが、席上文部省の小林管理局長は次のように答弁をした。来月中には全面解除になろうと、その席上で言明をしたというのであります。これは一体そのように私ども期待をしてよろしいものかどうか。来月中には全面的に校舎を返還をすると文部省局長が参議院の分教委員会答弁をした。こういう簡単な小さな記事が出ておるのでありますが、そのように期待をしてよろしいものかどうか、調達庁当局にお伺いいたします。
  52. 山内隆一

    ○山内説明員 大阪市立大学の接収が長く続いたために、非常に教育上御不便をかけておりますことは、まことにお気の毒に存じておるわけであります。この解除の折衝も非常に長い間かかりまして、昨年の六月初めごろに、来年の六月になればもっとはっきりしたことが言えると思うということを軍が正式の会合の席上に話されて、同様の文書をもらったわけでありますが、それから以後は、その情勢は特別に表面的には変化いたしておりません。しかし最近の情勢では、やはりその当時軍が言われた来年六月末になればはっきりする、考慮すると言われた、その言葉通りに進んでおるものと考えております。なぜかと申しますと、今年の六月末までには軍の配備計画も相当に変更されることが最近に至って明らかになって参りました。それからいろいろ御不便を少しでも改善するために次善的の策でありますけれども、接収解除の地域に入り組んでおります接収地、これを解除して、少しでも便利にするようにという、いろいろの方面の御意向に従いまして、それを解除してもらうために代替施設を作るということについて、いろいろ国内的にも話し合って、大蔵省とも交渉して、実はその代替施設を作ることになって建設省がそれの建設準備に入っておるわけでありますが、しかし軍の方が建設の基本計画を出して、それに基いて建設省がこまかな計画を立てて作る予定になっていたものを、いかに催促しても基本計画が出て参りません。これは代替施設の建設にかかりましても、七、八月ごろでなければ代替施設が完成しないという見通しが一方ありますので、そうなりますとむだなことになりはせぬかという考え方からきておると思いますが、いかに催促をしましても基本計画を出してくれません。これは全面解除に重要な関係があるものと私ども考えております。この二点からしまして、六月末になりますれば、この全面解除について十分な考慮が払われるものと考えております。
  53. 野原覺

    野原(覺)委員 そうなりますと調達庁当局としても、大阪市内の全面的な解除、米軍当局からの返還というものは六月末に実現する、このように承わってよろしゅうございますか。六月末には全面的に返還される、調達庁当局としてもそのように見ておる、こう承わってよろしゅうございますか。
  54. 山内隆一

    ○山内説明員 六月末に全面的に解除するということは申し上げられないと思います。ただ先ほど申しましたような二つの理由から申しまして、全面解除について十分な考慮が払われるのではないか、かように信じております。
  55. 野原覺

    野原(覺)委員 そういたしますと六月末になれば全面的に解除してもらえるかどうかという事態が明らかになるという意味なんですか。それとも——これは大事な問題で、十年来米軍が学校の校舎を接収して、大阪市としても非常に困ってきた問題ですので、私しつこくお尋ねいたしますが、どういうことなんですか。事態が明らかになるということなのか、返還してもらえるということなのか、どっちなんです、はっきりと……。
  56. 山内隆一

    ○山内説明員 今の次善の改善策にっいては、先ほど申し上げましたようなわけで、軍みずから代替施設を作るようにということをいわれておりながら、基本計画は出してくれない。これは全面解除に関係あるものと、私どもは前から見ているわけであります。そこへさらに最近の情勢で軍の配備計画も相当変るのじゃないかということのある程度の軍の意向も聞いたわけであります。従って六月末になれば解除問題について十分に考慮を払ってもらえる、こういうふうに信じているわけでありますが、今ここで六月末に必ず解除になるということを申し上げることは、まだできないと思います。
  57. 野原覺

    野原(覺)委員 どうもはっきりしないのです。実は山内さんはよく御承知のように、あの校舎はかつてアメリカ軍が病院に使用しておったのです。病院の使用が終ったらこれは返還するというようなにおいを実は出しておったのです。そのように学校は受け取っておりましたところ、マリーンが突如として入った。しかも日米の合同委員会にもかけないで海兵隊が入ってしまったというようなことで、今市大はどういう考えを、学生なり教員諸君が持っておるかと申しますと、冨士山麓は地元民があれほどすわり込みをしようかといって騒いだ。騒げば何とか解決してもらえるのじゃなかろうか。われわれは今日までおとなしくして、しかも政府を信頼して、六月末にはどうだ、十月一日にはどうだと、ずるずる引っぱってこられて、一体どうしてくれるのだというのが、今日までの学校なり大阪市当局の実は非常な不満の声なんです。私はここでこれ以上しつこく申し上げませんから、もっと明確に御答弁をお願いしたい。  小林局長いらっしゃいますか。——小林局長はこう言っておるのです。六月に米軍の配備計画が完了する。その際キャンプ堺が全面的に解除になる公算が大きい。大阪市大ももちろん全面的に返還されることになると思う、こう言っておりますが、調達庁はこの新聞記事をお認めになるかどうか。その通りでございますということであれば、質問を終ります。いかがですか。
  58. 山内隆一

    ○山内説明員 新聞記事につきまして、今ここで私批評することは差し控えたいと思いますが、先ほどから申し上げました通り、私も大阪市大の解除問題は非常に早くから関係を持ちまして、そのいきさつから申しますと、まことに地元には相済まない、大阪市立大学には非常にお気の毒に存じておりまして、調達庁としてもあらゆる手段を講じて——これは国会委員会に現われたことは、おそらく七、八回にも達するものと思います。参議院の院議でも、決議されること二回にも及んでおります。そんな関係で、あらゆる努力はして参りましたけれども、なかなか今日まで見通しがはっきりいたさなかったわけであります。しかし先ほどから申し上げます通り、どこまでもこれは軍の配備計画に重要な関係のあることでございまして、六月末までには配備計画が相当変るだろうということの見通しはついております。従ってこの大阪市立大学の解除についても、今度こそは真剣に考えられるだろうと思っております。また私ども解除になることを期待をいたしておりますけれども、何としても現在使っている駐留軍のあることでありますから、その方の意思がはっきりしないうちには、まだこの席で六月末に解除になるということは申しかねる次第でございます。
  59. 野原覺

    野原(覺)委員 それは六月末には配備計画も完了するから、解除になるかもしれないというあなた方の主観的な憶測なのか。それとも、何か合同委員会でこの話し合いをした結果、米軍側がそういったような、言質とまではいかなくとも、内容の言葉を漏らしたことがないのかどうか、質問いたします。
  60. 山内隆一

    ○山内説明員 私どもはこの軍の考慮されるということに対しては十分の信頼をし、しかも解除になる可能性が十分あると考えておりますけれども、まだ正式にそういう言葉を聞いたわけでありませんから、六月末に解除になるということだけは、どうしてもここで申し上げるわけに参りませんことを御了承願いたいと思います。
  61. 野原覺

    野原(覺)委員 そうすると、合同委員会では米軍は、正式な日本側に対する返事としてはどれだけのことを申しておりますか。
  62. 山内隆一

    ○山内説明員 きのうの合同委員会でもこの問題は出たわけでありますが、合同委員会で六月末に解除になるということまではいっておりません。先ほど申しましたような意味の話はあったことは事実であります。しかしどこまても、やはり考慮するという言葉以上には出ておりません。しかし他のいろいろな客観情勢の変化といいますか、あるいは事情から、解除になるということを私どもは期待いたしております。こういうことは申し上げていいと思いますけれども、解除になるということはまだどうしても差し控えたいと思います。
  63. 野原覺

    野原(覺)委員 そうすると、米軍としては六月末までには考慮をするという返事を得ているわけですね。いかがですか。
  64. 山内隆一

    ○山内説明員 六月末までには配備計画の変更があるから、全面解除について考慮する、こういうような言葉に聞いております。
  65. 野原覺

    野原(覺)委員 それは最近の合同委員会でございますか。いつですか。
  66. 山内隆一

    ○山内説明員 きのうの合同委員会であります。
  67. 野原覺

    野原(覺)委員 私はこれで質問を終りたいと思いますが、私は本会議で御承知のようにこの問題を西田労働大臣質問をいたしております。今速記を調べてみますと、「現在までの交渉の結果によりますと、本年の十月一日までには解決について米軍側で考慮をするという正式な御返事を得ております。」これはこの国会の劈頭でございましたから、それから日がたっておって、きのうの合同委員会としては、十月一日というのが六月末まで前進をしてきている。だから六月末までには解決について米軍側で考慮をする。この正式な返事は取っているのだ。ここまでは言えるわけですね。
  68. 山内隆一

    ○山内説明員 今のお話の、変化として、最初は十月末までは必要である。それから後になって考慮しようという正式な表現でありまして、それから後になりまして、六月末という——去年の言葉ですから、来年の半ばにはもっとはっきりしたことが言えるだろうというような表現をいたしておりますが、去年の言葉として、来年の六月末になれば解除について考慮するという言葉は使っていないはずであります。
  69. 野原覺

    野原(覺)委員 いや、「十月一日までには解決について」——解除でありません。「解決について米軍側で考慮をするという正式な御返事を得ております。」これは速記です。今年の十月一日までには市大の校舎問題の解決について米軍側としては考慮をするという正式な御返事を得ている。これは緊急質問に対する答弁なんです。あなたの今の答弁を聞きますと、きのうの合同委員会では、実はその正式な返事としては考慮するということなんだ。それが六月の末なんだと申しますから、ずいぶん進捗をしましたねという確認をあなたに私が求めておるわけです。そのように受け取ってよろしいかとだめを押しておるわけです。これは簡単ですから、どうかはっきりとそこは御答弁を願いたい。
  70. 山内隆一

    ○山内説明員 当時のことはいろいろ論議をされたのでありますが、すでに今日になってみますと、私ども非常に明るい見通しがはっきりとしてきたように感ぜられますので、過去のことは過去として、現在の情勢では非常に希望が実現しそうであるという意味において御了承願いたいと思います。
  71. 野原覺

    野原(覺)委員 これで質問を終りますが、六月末までには考慮をするというところまでアメリカ軍は出ておるようでありますから、なお合同委員会等におきましては調達庁当局各位の御努力をお願いして私の質問を終ります。
  72. 坂田道太

    ○坂田委員長代理 竹尾弌君。
  73. 竹尾弌

    ○竹尾委員 私は持病のぜんそく病みでありまして、あまりものを尋ねるのが実はたいぎなんで、できるだけ質問を逃げたいと思っておりましたが、どうもやむを得なくてきょうまたお尋ねをいたします。問題は神戸の商船大学の施設整備にからみまして、これと関係のある神戸の海技専門学院の施設整備に関する件でございます。そこで大きく申せば、神戸の商船大学というようなものは、小さい一大学の問題かもしれませんが、少しもつれてきておる。そこでこういうもつれを何とか解いていただきたい、こういうことが私の最後の結論になりますが、その結論に到達するまでに二、三お尋ねをしたい、こういうことです。大臣はまだ当時の御事情をよく御存じないと思いますので、特に大臣をわずらわして御答弁を願うようなこともあるいはないかもしれませんけれども、これは文政、分教一般に多少関係がありますので、非常に恐縮ですが、もう少しその席にいていただきたいと存じます。この神戸の商船大学は、ちょうど私が文部委員長のときに議員立法でつくりあげた大学でありまして、再三申し上げますけれども、当時文部当局は実は反対というか、きわめて消極的であった。そこにおられる大学局長も当時の責任者だけれども、きわめて消極的であって、いまだにそういうことを局長がおっしやられておるかどうか真偽のほどはわかりませんが、神戸の大学は文部省の大学ではなくて、文部委員会の大学である、こういうことを言われたか、言われないか私はよくわからぬが、そういうようないきさつがあって、議院立法で大学をつくるなどという例は、空前絶後とは申しませんが、例はあまりないのだ。そこで大学当局としては、何と申しても議員が大学をつくったというようなことは、大学局長としては白星じゃない、黒星であります。そういうことで大学当局のお考えもいろいろありましょうけれども、一たびつくったものは文部省の大学に違いないのだから、この育成強化に当然当っていただかなくちゃならぬ義務を持っておる。そこで私も非常に無理をしましたので、予算などは——そこに社会教育局長もおりますが、この寺中局長が会計課長からひっくり返って昇格した当時でありまして、当時の会計課長は少し失言したのです。その失言がたまたま予算の獲得にわれわれとしては非常に大きなプラスをしてとうとう作ってしまった。そういうようないきさつがありまして、まあいろいろありますが、作った以上はどうしても育成強化してもらわなくちゃしようがない。そこで当時海技専門学院の主管局長である運輸省の山口局長に私ども非常に感謝するのですが、そういう関係であれば運輸省も大いに度量を見せて一つ協力しましょう、こういうことになって、あの大学ができたときに覚書をかわしておるはずです。すなわち当時の大蔵省の主計官である石動主計官とそこの稲田大学局長と当時の山口船員局長で覚書をかわして、海技専門学院は運輸省の所管として今後も存置して船員の再教育に当る、しかし大学当局としては海技専門学院と協調を保っていざこざのないようにやっていこうじゃないか、こういう覚書がかわされているはずなんです。そういういきさつがありますので、これは両者とも協調していかなくちゃならぬ。こういう精神は今も持続していただかなくちゃならぬのであります。この点につきまして変なセクショナリズムなどに堕せないで、文部当局運輸当局もこの大学の育成強化にまた海技専門学院が再教育の実を上げるように努力をしていただかなくちゃならぬと思うが、その点についてはもちろん努力するという御答弁に相違ございませんと思いますが、まず松村文相から一つお答えを願いたい。
  74. 松村謙三

    松村国務大臣 そのお話の問題につきましては、私も各方面からお話を承わっており、また今ずっとお話の経過も承わりまして、どうかそのときの趣旨に沿うようにと思っておりまして、運輸省の方にもお話を申しておるわけでございます。幸い河野政務次官がお出でになりましたから、河野さんから運輸省の御意向を一つ承わって、お話を願いたいと思っております。
  75. 竹尾弌

    ○竹尾委員 河野政務次官はあとでけっこうですから、もう少し私の意見を述べさせて下さい。よくわかりました。それはもちろん協調しませんなどということは一国の文部大臣が言われるはずはありませんから、それでけっこうだと思いますけれども、そこでこの問題が起って少しあわ立ってきたのは、私の記憶にして誤りがなかったならば昨年の夏ごろからである。そのときに海技専門学院の方でもあれを拡張強化しなければならぬという動きがあったわけです。しかしその動きが大学の強化に支障を来たすようなことがあっては困るので、そういういざこざが起ったときに、神戸の商船大学であるからこれは大学局長がみずから乗り出して調整に当らなければならぬと私は思ったのだけれども、そういう努力がされているかどうか、私はどうもそういう点に大学当局の一つの落度がありやせぬか、こう思うのです。これは稲田局長ちょっと耳が痛いかもしれぬけれども、私は少しひがみかもしれぬですが、これはどうも神戸商船大学などはどうでもよろしいというようなお考えがあるとは——もちろんそういう答弁をあなたはするはずはないが、どうも私の感じではそういうような点に欠くところがあった、こういうふうに観測するのですが、昨年の夏に少しあわ立って来たこの問題に対して、大学局長としてどういう御処置をとってこられたか、まずその点を一つお尋ねしたい。
  76. 稲田清助

    ○稲田政府委員 ただいまの点につきましては、創立以来運輸省の船員局とわれわれ文部省大学学術局が時に触れて往復いたしまして、いろいろお打ち合せをいたしております。もともと両省の間におきましては、将来この両施設を分けるかどうかということは、創立の際には一応未定で出発したのであります。ただだ当分の間一緒に同じ場所で運営をしよう、運営をする上において緊密な連絡をとろう、こういうことで計画を立てております。ただいまお話がありますように、運輸省におかれては、船員の再教育という点を一カ所に集めたい、あるいはそのほか教育上の見地から芦屋に中心を置いて、芦屋に集中したいというお話は、昨年の夏過ぎから承わりました。われわれとしては、そのために大学の整備がマイナスになることがあってはいかぬ、その点について運輸省において十分御考慮を願いたいということを申し入れました。設備あるいは人員あるいは教員の住宅等につきまして、大学側にマイナスのないようにというような点については原則的に両省の間に話が成立した、そういうようなことと見合いながら運輸省としては予算の提出を進められた、こういう経緯に記憶いたします。
  77. 竹尾弌

    ○竹尾委員 そこでいよいよ話が具体的になるので相当はっきり答弁して下さいよ。稲田局長は非常に答弁がうまいのだけれども、逃げることが非常にうまいのだが、はっきりしたことをときどきぼかすことがありますので、私も病身ですからあまり質問したくないのだから、明快簡潔な答弁をお願いしたい。  そこで神戸商船大学にマイナスになっては困る、ならない程度で運輸省とよく折衝をするのだ、して来たんだ、こういうことなんです。そこで問題は具体的になりますが、今海技専門学院の方で考えているのは、芦屋に御承知のように約八百坪ですかの敷地を得て、あそこに新しい校舎をたてて再教育をしたい、こういうことのように私は聞いております。そこで商船大学の方は、あれは局長調べになったでしようが、あのすぐ大学の前に千四百坪ですか、千数百坪の文部省の土地がある。大学の方ではそこに校舎を建てていただきたい、そういたしますれば、これは大学と学院が相協調してやらなければ再教育もなかなか実も上らぬのだから、実習や実験やその他の施設において、近い所に建ててお互いに交通の便も得るし、いろいろな点で便宜を得たい、こういう考え方のように私は聞いております。現在、芦屋には、設備は悪いでしょうけれども、再教育を受けている人々の宿舎ですか、寄宿舎のようなものもあると聞いているが、そういうことで、これは宿舎や何かはちよっいと離れておってもけつこうだと思いますけれども、いやしくも教育それ自体の設備、施設というものはやはり大学に近い方が、私はどちらに肩を持つとうことではございませんが、それの方が非常に便利である、それから交通の便も、芦屋の方に行きますと電車から降りて十五分かかる。こちらの深江の方の大学の方は五分で行ける。それから再教育の生徒、これは学生といいますか、妻帯者でもって神戸の市内から通って来るような人もあるというような点も考慮すると、校舎それ自体はやはり、深江の方が便利じゃないか、こういう工合に私は一応考えるのです。しかも、これはあとでまたお尋ねするかもしれませんが、専門学院の施設整備ですか、これは二千三百万円となっておりますが私の調べでは二千五百四十六万五千円になっておる。これはあとからお尋ねいたしますが、その中で用地の買収をまだやっていない——やっているかいないか、私はやっていないと思う。これは百三十何万円を計上しておりますけれども、しかも芦屋の方は、これは深江よりも坪は非常に高いんですね。坪約六千円かかっている。深江の大学の前なら、これは振りかえればただなんです。そういう点など、あれやこれや考えてみますと、どうしても校舎は深江の方に持って来た方がよろしいと私は思いますが、その点、まず大学の施設にマイナスにならぬようにしたいという局長の御持論から照らして、これは一体どちらがよろしいか、その点をお尋ねいたします。
  78. 稲田清助

    ○稲田政府委員 この点、文部省立場といたしましては、大学にマイナスにならぬようにという点が努力の一点であります。ただ、一面運輸省としては、再教育が円満に行われるという点について非常に熱心に計画をしておられる。この両者の立場があると思うのです。そこで私どもとしては、これにつきましては、一緒の方が教育上プラスだという意見も一部にある、また一部には運輸省のごとく、再教育というような教育の点と、また再教育施設を一カ所に集めることが教育上必要だという点を非常にお考えである立場と、これを考えてみました場合に、われわれとしてはプラスであるから、大学の方に海技専門学院をどこまでも引きつけようという主張は、これは途中で差し控えなければならぬと考えるわけでございます。それは深江に再教育の施設がありますれば、大学がそれを共用する点においては便利であろうと思います。しかし一面、運輸省の方は、芦屋に校舎を持ち、一部の教室を持ち、そこに再教育の新しい教室を建てる、そこで運輸省としては一つにまとまる、教員はこの間往復して授業をする、これはできることだ、こういう計画をされたわけでございます。従いましてどこまでも深江の方に校舎を建てなければならぬということは私ども主張しなかったのであります。そこで運輸省の方が全面的に芦屋に行かれる場合に、設備であるとか定員であるとかあるいは教員宿舎、そういうものを考慮して、大学側が急に困ることのないようにこの点を申し入れた次第であります。
  79. 竹尾弌

    ○竹尾委員 一部にはこういう説もある、一部にはこういう説もあると、こういう言葉ですが、私はそういうことをお尋ねしているのではないんで、大学局の責任者として、あなたはどちらの方がよろしいか。運輸省の方ではもちろん芦屋の方がよろしいという意見であるというのは、あなたの口を通じて言われたんですが、そういう運輸省のことを私はお尋ねしているのじゃない。あなたは大学の局長としてどちらがよろしいかということをお尋ねしているのです。はっきりそれをおっしゃって下さい。すぐ逃げてしまうから……。
  80. 稲田清助

    ○稲田政府委員 われわれの考えといたしましては、再教育施設をどこまでも将来大学に引きつけておくことが大学の教育にプラスになるとは考えていないのです。ただ当初これは一緒に出発しておりますから、分離することによって不自由が生じてはマイナスだ、そのマイナスを埋めていきたい、こういう考えであります。
  81. 竹尾弌

    ○竹尾委員 そうしますと、芦屋に移ると不自由が生ずるということをあなたは認めておるのですね。だからそのマイナスをどういうふうにして埋められるか。深江の方には必ずしも置かなくてもよろしい、これが局長の御意見のようですか、そうすると、芦屋に移ると不自由、つまりマイナス、これが生れてくるのです。そのときに、それではこのマイナスをどうして埋めるというお考えでございますか。
  82. 稲田清助

    ○稲田政府委員 つまりこれは、技術要員ないしそのほか守衛その他でありますけれども、多少そうした教員でない人的定員を、今まで両者一緒にいることによって融通をつけておった。これを全部根こそぎ持っていってしまうと、そこにどかんと人手の不足が生じますから、それでは困るから、当分置いていくなり、併用するなり、あるいは貸し借り勘定をつけようという話し合いが一つ、それから実験、実習の材料であって、運輸省の方の台帳についている物品、教材等も相当共用しておりますが、これはおれのものだといって全部持っていかれると、とたんに教育に差しつかえますから、それは大学と両方で話し合って、大学の教育に差しつかえない程度置いていってもらいたい。それからまた教員の住宅でありますけれども運輸省が二十二棟持っていて、文部省が八棟持っている。これは共管で、こみで入っている。二十二棟は全部おれのものだといって持ち出されると困りますから、これは両方の間で友好的に話し合おうということになっております。
  83. 竹尾弌

    ○竹尾委員 そうしますと、今までの話し合いによりますと、深江の方は放棄して、そうして芦屋の方に持っていくのだ、こういうように話し合いができているという結論になるようですが、そういうことでございましょうか。
  84. 稲田清助

    ○稲田政府委員 ええ、お話通りでございまして、再教育の方は芦屋に集中する、こういう点について話し合いができて、そうして運輸省が、この予算を今御審議願っている、こういう次第です。
  85. 竹尾弌

    ○竹尾委員 それでは、問題は具体的ですが、そういうような話し合いのでき始めたのは昨年の夏以後だと思いますけれども、そのときにあなたは、大学当局といろいろ折衝されたのですか、されないのですか。運輸当局とはやられたでしょうが、あなたの主管する大学の当局とはどうですか。
  86. 稲田清助

    ○稲田政府委員 学長とも再々お会いした記憶がございます。学長には学長の御意見もございましたし、われわれもまたわれわれの意見を述べまして、この問題につきましては、われわれと学長の間におきまして、意見の交換はずっと継続しております。
  87. 竹尾弌

    ○竹尾委員 そうしますと、大羽学長とあなたの間には、深江をやめて芦屋に持って行くというような話し合いはもうできてしまっておる、こういうことでございましょうか。
  88. 稲田清助

    ○稲田政府委員 われわれの方におきましては、その点はできたと了解しております。
  89. 竹尾弌

    ○竹尾委員 大学当局との間にはできた、こういうことのようですが、もしできれば、今のような問題が起らないのです。私もうっかりしておりましたけれども、最近こういうふうに両者がかなり激しいいがみ合いをやって、そうしていろいろ意見の具申をしている。こういうことが現状なんで、もしできておればそういうことはないはずなんです。そういう点は、私には実際はできていないのだというぐあいにとれるのですが、どうなんですか。
  90. 稲田清助

    ○稲田政府委員 大学の職員の中に多少反対な考えを持っている方があるのだろうとわれわれは思っております。従って先ほどから申し上げているように、大学側にもこの点についていろいろな意見がある、こういうことでございます。学長と私とは、文部省方針なりあるいはまた文部省の今後の予算の問題なり、そういう点については常に話し合っております。
  91. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 竹尾委員にちょっとお願いしたいのですが……。実は大臣は前々から時間がないので、続行はしますけれども教育委員会のことについて、並木君から大臣に五分だけ質問をしたいと言われるので……。並木君。
  92. 並木芳雄

    ○並木委員 ちょっと地方教育委員会のことで確めておきたいのです。来年改選が行われるのを前にしまして、地方教育委員会制度について政府として何らかの変更を加えられるのではないかという危惧のもとに、最近また非常に陳情を受けているわけでございます。そこでこの際、大臣として、現在の地方教育委員会制度をこのまま存続して来年の選挙に予定通り臨む方針である、あるならある、それとも、まだこれを検討する考えであるならばあると、そういう点を明らかにしておいていただきたいのです。
  93. 松村謙三

    松村国務大臣 そのことは、文教の非常に重大な点でございますから、今研究をいたしておるわけでございまして、これを来年の選挙ころまで継続していくということは申し上げかねます。しかしながら、それならどうするかということについては、事が重大でありますから、ただいま十分研究中であると申し上げるような段階にあるわけでございまして、具体的のものはまだ持っておりませんでございます。あるいはこのままでやることになるかもしれませんが、しかし、ただいまのところでは、研究中とお答えするより……。
  94. 竹尾弌

    ○竹尾委員 それではちょっと大臣に、結論の締めくくりを一つお尋ねをしたいと思ったのですが、逆になるけれども、政務次官がおられるから、どちらでもよいのですが、せっかく大臣おいでになりますから……。神戸商船大学の問題は、実際は一大学の問題で相当これは紛糾している。そこで、われわれは決議機関の一員なんで、そういう行政面にタッチする立場ではございませんから、そういうことをしてはいかぬと思っておったのです。ところが、運輸委員会なんかで大いにいきり立ちまして、絶対に芦屋でなくてはいかぬというようなことを言われておるとちょっと聞きましたが、こちらではこちらで、これはどうしても芦屋でなく深江でなければいかぬ、こういう非常に強い意見を持っている人が多うございます。そこで、結局大学も立ち専門学院も立っていくことが一番よいのでありますから、そういう点で、これは人事にもやがてからんで来るのです。人事、施設、そういうものを一緒にいたしまして、運輸省と文部省でよく話し合いをしていただきたいと思うのです。ところが大臣同士お二人話し合っても、これはいろいろ事務的な関係もございますから、まず、大学当局と専門学院の当局と、それから大学局長船員局長あたりが四者会談を開いて、そうして進めていただきたい、こういう強い希望を私は持っておるのです。ところが稻田局長は、今まで何回も会っているとおっしゃいますけれども、私の調べでは、一番肝心なところにはあなたは出て来ない、実際のところ。もう最後に、妥結に達したときがあるのですよ。そのときあなたと、船員局長と伊藤院長と大羽学長が会おうといって、そうしたおぜん立てまでしたことがあるのだが、実際はあなたは来やしないのだ。そういうことがあるから、これはどうもあなたばかりにまかせておくわけにもいかぬので、四者会談で一つ事務的にまとめていただきたい、こういう強い熱望を持っておりますが、その点大臣いかがでしょうか。
  95. 松村謙三

    松村国務大臣 よくお話を承わりまして——私ども運輸省と話を進めてもおります。どうか一つ河野政務次官からそれに対する考え方をお聞き取りを願いたいと思います。
  96. 竹尾弌

    ○竹尾委員 それでは大学局長質問を続行します。あなたはそうおっしゃる。海技専門学院としては、芦屋にいくことはもっともな話だと思う。しかしその説をあなたが全部うのみにしてしまっておるような結果になるのです。大学局長としては、あの前にあいている土地があるのですし、大学当局の大部分はそれの方がよろしい。それから専門学院の将来を考えてみても、専門学院一つでは学習も実習も欠けるところがあるから、一番近いところでやることは、だれが考えても常識的に一番いいと思うのです。しかしそれは今あなたのお説の通り——お説じゃない。これは出輸省の説なんで、運輸省の説をあなたはまるのみにしてしまった、こういうことなんです。われわれから考えれば、今の深江に千四百坪もあるのですから、そこでやることが一番よろしい、この点だけは私はそう思います。重ねてしつこいようだが、あなたは運輸省の説をそのまままるのみにしているのだから、あなた自身そういう考えでは大学局長は勤まらぬと思うのですがどうですか。
  97. 稲田清助

    ○稲田政府委員 私としては、この問題は船員教育審議会が運輸省に答申した線が教育的に帰結せられた考えで、それによりまして大学当局とも話し、運輸省当局とも話して参った次第でございます。
  98. 竹尾弌

    ○竹尾委員 あなたは故意に審議会の結論に責任をかぶせてしまっているので、そういうところが、これはほんとうにどうかと思うのですよ。あなた自身が責任者だ。その審議会はこれはおそらく諮問機関でしょうから、こうしてやらなくちゃならぬといえば、あなたの説が通るわけなんで、そういうところに私は大学局長として特に——ほかの大学にとってはそんなことはないのです。ずいぶん熱心なんだ。この大学に限ってこういうことをされる。その一例として、私はこの公けの席でそんなことを申し上げたくないのですけれども、この大学は御承知のように兵庫県と神戸市と大阪の府市と、それから船主協会などの寄付金で大半はもっている。それが汚職事件や何かで船主協会や何かからもなかなか寄付が出てこない。それから神戸市も兵庫県もなかなか出さない。だからこれは要らぬおせっかいで、われわれがそんなことをする必要はないんだが、私は当時の責任者として非常に責任を感じて、この病躯をひっさげてだれにも頼まれないで二回も神戸に出張って、いろいろ寄付金のことをお願いしている。局長はたった一回しか行かない。だから私はそういうことはどうも納得いかないというのです。  さらに神戸大学に第二法学部を作るという問題が起ったときに、これは兵庫県と神戸市で六百万円出すと寄付を申し込んできた。そういう寄付が、こっちの商船大学にはまだろくに寄付も入らないのに、両方に割れてしまうというと、それだけだって問題になる。あなたはそんなことはないとおっしやるけれども、ないとは言わせない。実際あるのです。両方に寄付がわかれてしまったら、三十年度の完成年度だって、非常なこれは遅延を来たす。そういうことを私は心配して、第二法学部はもう一年延ばしてくれと私はあなたに頼んだのだ。当時の内藤会計課長にも頼んで、一年くらい延ばしたっていいんだからと言った。それをそういうものを黙ってあげてしまっている。場合によってはこんなものちょんぎってしまってもいいんだ。全くそういうところが、僕は神戸商船大学に対する御配慮が足りない点だ、こういうふうに思うのです。その結果、こういうような事態をかもし出したので、あなただけの責任だとは僕は言わぬけれども、とにかくこういうようにがたがたしている責任の一端は負うていただかなければならぬと思うのです。  そこでこれは私の意見だが、私はまたもう一度お尋ねします。あなたはどうしても芦屋の方に持っていくことを了承しておるのでございますか。
  99. 稲田清助

    ○稲田政府委員 船員教育審議会でも検討されたようでございますが、とにかく高等学校を卒業した生徒を二十四時間教育で寮舎に入れて教育するのが商船大学の教育の特色で、またほかの再教育と異なりまして、運輸省でやっておる再教育は、すでに海上経験もあり、あるいは家庭を持った、年を取った人たちをやはりこれも二十四時間宿舎によって教育をする、そういうような寮舎の教育の特色から、全く同一の個所におりますよりは、多少距離をおいたところに寮舎の中心を置いて、そうして教員等の両方の融通等はつけ得る程度の距離に置くということが、この寮舎の教育の上において一番いいという結論を審議会でも出されましたし、私どももそれは道理があることだと考えもして、運輸省の今度の計画に賛成して参ったことであって、この点につきましては私はいまだにそう思っておるのであります。
  100. 竹尾弌

    ○竹尾委員 その審議会の答申にあなたは全責任をかぶせてしまうような格好で、審議会がそう思ったから自分もそうだ、こういうような考え方に私は非常な不満を感じておる。それでそうした芦屋に持っていくということからこういう問題が起ったのですから、今度は運輸省の当局の方にお尋ねいたしますが、専門学院は御承知のように二年の本科——あれは本科と申しましたか、二年制度があったはずなんで、その制度は、大学ができればこれは要らないであろうというような理由もあったのでしょう、とにかく募集をしておらない。官制だけは残っておるのです。そういう点はどうでございましょうか。  それからさらに、その二年の制度を生かしていくというようなことを、うそかほんとうか知りませんけれども、私ちょっと耳にしたので、そういうことになるとまたそこに一つ問題が起りはせぬかと思いますが、この二年の制度を復活するという御意思でございましょうか。
  101. 武田元

    ○武田政府委員 その点につきましてはそういう要望も多少あるように聞いておりますが、まだ検討中で方針としては決定しておりません。
  102. 竹尾弌

    ○竹尾委員 そこで今度ちょっと数字の問題ですけれども、この予算書の五百九十七ページに海技専門学院の施設整備費二千三百六十万三千円、こうなっておりますが、私の調べたところではこの額がもうちょっと多いのです。私は二千五百四十六万五千円、こういうふうに記憶しておりますが、これはどちらがほんとうでございましょうか。
  103. 梶本保邦

    ○梶本政府委員 私からお答え申し上げます。ここに載っておりますのはいわゆる官庁営繕費でございまして、新営に属する部分でございます。そのほかに暫定予算で御審議いただきましたものとしては百七十四万二千円、これは各所修繕費として出ております。それからそのほかに校費といたしまして移転費が十一万四千円組んでございます。それを合計いたしますと二千五百四十五万九千円、こういうことになります。従って新営と修繕と移転に要する事務費、それを合計いたしますと二千五百四十五万九千円、こういうことに相なります。
  104. 竹尾弌

    ○竹尾委員 それじゃ五百二十八ページですが、各所修繕費百六十五万五千円となっておりますね、これを私は少し尋ねたいのだけれども、尋ねるとあなた方少し返答に窮するような点もあるかもしれませんから、きようは私は遠慮しておきますが、そういたしますと、この二千三百万円というのはこれはもちろん三十年度の予算ですが、これだけで校舎の施設、用地の買収あるいは設備というようなことに間に合うのでしょうか。つまりこれだけではなく、さらに三十一年度も継続事業としてこの仕事を続ける、こういう気持でございますか。
  105. 梶本保邦

    ○梶本政府委員 これだけでは十分ではございません。
  106. 竹尾弌

    ○竹尾委員 十分ではございませんということは、まず本年度これだけ頭を出しておいて、さらに来年度から何カ年度の継続事業としてつくるのだ、そして本科も拡充して二年置くのだ、こういうふうに常識的にはとれるのだけれども、どうでございましょう。
  107. 武田元

    ○武田政府委員 ただいま私の了解いたしますところ、会計課長の今の間に合いませんというのは、新営費二千三百六十万円というのは私どもの要求しましたものの六割弱のものでございます。そういう意味において、私ども考えておりました希望には及んでおらないということでございますが、校舎その他につきましては、現在までに校舎の寮も改造して校舎の一部に使っておりますから、その分とこの新営とを合せてみれば、現在計画しております再教育には支障を来たさない。従いましてお話のように、さらにこれを拡充するということは、新たな計画をする場合には必要になってくると思いますが、現在の考えております程度では、この程度で教育をやって参れるものと考えております。
  108. 竹尾弌

    ○竹尾委員 そういたしますと、この二千三百万円、これに幾らかある期間に増額されるといたしましても、本年度限りでこういう予算は計上しない、こういう工合に解釈してよろしゅうございますか。
  109. 武田元

    ○武田政府委員 現在のところそういう考えであります。
  110. 竹尾弌

    ○竹尾委員 会計課長いかがですか。そういう気持ですか。
  111. 梶本保邦

    ○梶本政府委員 さようでございます。
  112. 竹尾弌

    ○竹尾委員 そこで私は、また深江との対比になるのですけれども、こういう一兆億円の緊縮予算を計上している現在におきまして、用地の買収費をとってみても坪六千円もかかる。こういうところにしいて校舎を建てなくちゃならぬような必要がきわめて切実にあるかどうか。これは運輸省の立場もありましようから、しいてどうのこうのという意地の悪いお尋ねじゃございませんけれども、どうも私はここに八百坪の敷地を得て、そこでなければ再教育できないというような考え方がおかしいんじゃないか、こういうような気持もするのですけれども、再教育自体は非常にけっこうです。これはもうやらなくちゃならない。その点をお尋ねいたします。
  113. 河野金昇

    河野(金)政府委員 一兆円の予算であるのにこういうようなことをやる必要がないじゃないかとおっしゃるのですが、金のことももちろんこれは非常に重大でありますけれども、この運輸省所管の連絡船の事故等にかんがみまして、金額の問題よりも再教育の問題にどうしても重点を置いて、ああいうような事故を防ぐために——たとえば親と子供と一緒に同じような教育をさせるということはどうかと思うのです。だからわれわれは再教育の目的を達成させるためには、やはり子供と分れておとなの再教育をした方がいい、こういう見地に立って予算の要求もし、一兆円の中からもまたそういう点を認められて承認を得たものであります。
  114. 竹尾弌

    ○竹尾委員 今紫雲丸の事件がいろいろ問題になっておりますが、予算に関する限り運輸省としてはこれはまことに幸いしたのであって、この予算の計上が紫雲丸事件に便乗しているという格好になっている。これは紫雲丸事件の起る前にすでに計上したのであるが、さらにその必要性を認められたということになっている。運輸省としてはまことに都合のいい、その意味では便乗できる事件でありましたので、河野次官の御答弁その意味で了承いたしますが、しかしその前にすでにこうした新営費を計上しておるわけで、二年制度でも復活するのじゃないかというにおいもするような予算のように私はとるのですけれども、その点もう一度そういうことはないのであるか、あるいはあるのであるか、承わりたい。
  115. 武田元

    ○武田政府委員 芦屋の方は現在の総坪数は約四千坪でございます。建物の坪数が千二百五十四坪ということでございまして、今度新営を計画するために必要な用地は四百坪でございます。そういう事情でございまして、再教育機関としては主体が芦屋になっておるものでございますから、われわれの立場としてはこの各種の施設を同一地域に確保いたしたいという考えでございます。なおこの施設を拡充するという計画は今のところ持っておりません。
  116. 竹尾弌

    ○竹尾委員 そこで今河野次官もちょっとお話になったようですが、現在再教育の人は妻子と離れて芦屋の寄宿舎にいるわけです。妻子と一緒になっている人はごく少いけれども交通の便利、不便利というようなことを考えると、深江の方がよほど便利だ、こういう考え方が私は強いように思うのです。あなた方の考えておられる敷地までは、おりてから十五分かかりましょう。あれは交通の点から言っても非常に不便なんです。ただ一つ運輸省があそこにああいうものを持っているが、これをがっちり固めて今後も維持していきたい、こういうことなんです。皆さんのお考え方は、深江に持っていくといつの間にか文部省に取られてしまいはせぬかという考え方があるいはあるのじゃないか。ところが、文部省としては絶対にそういう考えはないはずです。そんなことはないのでしょう。あらためて大学局長お尋ねします。
  117. 稲田清助

    ○稲田政府委員 考えておりません。
  118. 竹尾弌

    ○竹尾委員 そういうことは考えておりませんとおっしゃるのですから、そういう心配は一つもない。教育関係からすればこれはどうおっしゃられても深江の方が便利である。そして寄宿舎は芦屋の方にりっぱなものを建てればよろしいので、そうなった方がいろいろの面からよろしいのじゃないかということが、これは私の意見であるし、またそういうふうにお願いしたいのですけれども、大学当局としてはそういう考えはないのだ、こういう工合にとれるのですが、その点について河野次官に運輸省の立場からもう一度御答弁をお願いいたします。
  119. 河野金昇

    河野(金)政府委員 非常に妻子のある者のことに思いをいたされた質問だと思いますが、われわれ再教育をするのは、何も神戸なりあの付近に住んでいる船員のことだけ考えているのではありません。あの辺に住んでいる者からすれば、それは便利のいいところの方がいいかもしれませんけれども、むしろわれわれは全国の方々の船員をあそこに計画的に集めて教育をしたいと思っておりますから、むしろ一定期間は妻子なんかのわずらわしいのと離れて、そうして専心教育した方が、教育の目的にもかなうのじゃないだろうか、そういうような気持から、われわれはどうしても一カ所に集めて、そうして二十四時間教育をして、今後の交通事故等に対するところの責任も、そういうようなところから明らかにしていきたいとも考えております。
  120. 竹尾弌

    ○竹尾委員 私はその点においては次官と意見が一致しておると思う。そういう再教育をされる船員の方を、それこそ芦屋に全部集めて、そこにりっぱな寄宿舎を作っていただくのもけっこうでしようし、そういう工合にしておいて、教育だけはやはり大学ときめて近い場所でする方が、いろいろ便利がある、これが私の意見でもあるし、そうしていただきたいというお願いなのです。
  121. 河野金昇

    河野(金)政府委員 竹尾さんの御希望やら御意見もわかりまするけれども、やはり教育というのは、教室の中でいろいろな講義を受けたり実験をすることだけが教育でない。寝ることから起きることから、そういう間に船員としての精神教育等も加味していく上から、やはりわれわれは一カ所に集めて、二十四時間教育趣旨徹底させたい、こういうふうに運輸当局としては考えております。
  122. 竹尾弌

    ○竹尾委員 それは私らもそう思うのです。そういう寄宿舎は芦屋に全部置かれたらけっこうなのですよ。そしてそこで大いに次官の言われる精神教育学校以外の教育もされればいいのであって、芦屋にはそうした寄宿舎等を集中させて、そして学校教育を受ける校舎の方は、海に近い、しかも何といっても大学があそこにあるのですから、大学と協調を保ってやっていかれた方がよろしいのじゃないか、こう思うのです。
  123. 河野金昇

    河野(金)政府委員 現在でも芦屋の方は、もちろん寄宿舎もありまするが、教室等に使っているのも五百数十坪ありまして、新たに建てるのは約四百坪であります。だから同じ教室を、大学のそばに今度新築のやつを置き、それから旧校舎も置くというと、やはり寄宿舎だけでなしに、教室そのものも分散されてくるのでありまして、われわれはできれば寄宿舎も、現在すでに教室が五百坪ほどありまするから、ここに新しいものも作り、そして現在大学の中に残っておるところの図書館とか何かというものは、あるいは利用をお互いにし合ってもいいとは思いまするけれども、新たに建てるやつの方が少いのでありまして、運輸当局としては芦屋に作りたい。竹尾さんが先ほど来一生懸命大学局長に、いろいろ御親切なる御質問をされましても、大学局長自身もわれわれの方の審議会の答申等をも了解していただいておりますから、できればあまりここで——私も政務次官ではありまするけれども、やはり議員の一人でもありまして、こういうどこへ大学を置くというようなことを、あまり議員があっちだ、こっちだと言うことはどうかと思う。私もこんなことを竹尾さんと議論するのはいやでありますが、竹尾さんが最初松村文部大臣に結論をおっしゃって下さいましたが、できれば私たちもそういう竹尾さんのような人々のお指図によって、結論が出たところにすなおに従っていくことの方がよろしいのじゃないかと考えています。
  124. 竹尾弌

    ○竹尾委員 政務次官はさすがに民主党内の雄弁家と言われるだけに、答弁がなかなかうまいので感心いたしましたが、校舎の設置というようなことになると、運輸省の方にもいろいろ立場があるし、大学の方にもある。ところが大学局長運輸省の説の方に結果において賛成をされておるというようなことで、そこにトラブルが現在起っているのです。これは校舎をどこに建てるかということが、この問題の中心であると私は思います。そこで、それがそのようにきまってしまって、運輸省では予算までも計上しているのだということになると、これ以上私としても、御説の通り議員がそれまで深入りするのはどうかと思いますが、ただこれは議員立法でやったので、これは今でも文部委員会の大学なんかと言われるくらい、この大学だけは特殊性を持っております。ですから私は当時の立法の責任者の一人として、ある一面では強く主張しておりますけれども、しかしそれ以上は、これはわれわれのやるべき立場じゃないという工合にも考えておりますが、自分の説としては、やはり深江に校舎は建てるべきであると、この点だけはそう思うのです。図書館や何かも利用したらよろしいし、人事関係もうまくやったらいいのです。そこで校舎新築の敷地をめぐりまして、今専門学院と大学が、これはあとから聞いてみてちょっと驚いたのですが、相当深刻な争いをしているのですが、そういうところを当局として、一つうまく解決してほしいのですよ。もともとあの大学を建てるときに、われわれに要望してきた人が、今二つに分れてしまっている。これは実際問題として実に悲しいことである。それは実に熱心にその設立を要求された方であってそれが、それこそ筆舌に尽しがたき苦労をして、ようやく三十年度に完成するという、ここまできたのですから、ここで変なことをされますと、これは、国のためにも決してプラスにはなりませんので、その点よく当局としてもお考え願います。この問題は、ほんとうのところ敷地をめぐってさらに人事の問題にもなってくるのです。今まで今の大羽学長と協力してきました伊藤学院長、この方を大学としても実際ほしいのです。りっぱな人ですから……。それで次期の学長の選挙には、当然学長になられる方であると、私は今でも思っております。この人をこういうトラブルの中に巻き込むということは、私も忍びませんし、現に海技専門学院の方では、後任の院長まで実はきまっておったのです。それは局長さんも、私が申し上げるまでもなく御存じだと思う。だから私のお願いしたいことは、敷地の問題をうまく調整していただくと同時に、人事の方も一つうまくやっていただきたい。その点局長さんに特にお願いしておきますが、これには大学局長も異存ないでしょう。伊藤学院長をあの大学に——持っていくと言うと悪いが、そういうことには御異存ありませんか。
  125. 稲田清助

    ○稲田政府委員 大学の人事は大学自体で決定することでありましょうけれども、存じ上げるような人柄でもあり、御経歴でもあるので、そういうことを大学自身が決定すれば、もとより異存はありません。
  126. 竹尾弌

    ○竹尾委員 それは大学の自治できめることはわかっております。しかしその裏に大学局長がいるのだから、それは大学の自治であって、受け入れ態勢ができたら賛成するというようなことではまずいので、伊藤学院長を積極的に推薦するというようなお骨折りをする御意思があるかどうか、それをまず聞きたいのです。
  127. 稲田清助

    ○稲田政府委員 希望としては、そういう気持を抱いております。
  128. 河野金昇

    河野(金)政府委員 私はしろうとでありまして、そういう竹尾さんのおっしゃるような敷地の問題やら人事の問題がからんでいるようなことはよく存じませんけれども、こういうあなたの御意見があったことは私はもう忘れません。こういう問題はちゃんと記憶に残りますから、あなたの御趣旨に沿うように私たちも側面から努力をいたします。しかしこういう敷地の問題とか人事の問題をどうするこうするとここで言うことは、どちらもどうかと思うのでありまするから、あなたの御趣旨のあることはわかりますから、どうか人事に関することだけは論議しないようにしていただいた方がかえっていいのじゃないかと思います。しかしこの大学を作られたときの経緯その他にかんがみて、あなたがこの大学を育てていくことに対し非常に熱意を持っておられることには私も非常に感激しますから、われわれも海技専門学院がどういうふうに決定しようとも、大学がどうなってもいいというようなけちな考えは持たないで、ともどもによくなっていくように私たち責任を持って努力をさせていただきます。
  129. 竹尾弌

    ○竹尾委員 まことに御親切なお言葉で、大いにありがとうございました。人事のことや何かは実際こんなところで言いたくはないのですが、ちょっと言ってしまったからもう一言申し上げます。この伊藤院長さんは、かつての神戸高等商船学校の教授として長くおられまして、今の大羽学長の一年か二年下だと思いますけれども、大羽学長とも非常によろしいし、それからこの大学を作るときに非常に熱心に働いた方であるし、今の大学の中堅教授というのはみんな伊藤院長の教え子なんです。それと中堅教授がどうしても深江に持っていきたいという非常に強い要望を持っており、それがこの問題のきっかけになっている。ですから院長と若手教授がごたごたするというようなことも実に忍びないことなので、これは院長さんが機会があって大学に帰ればそういう問題も解消します。いろいろあるのですが、敷地の問題が深江に行けばこれは万事解決、万事オーケーだ。そういうことはちょっとできないような感じが私にはしますけれども、しかし最後に、この点についてなお一そう努力して御協議を願って、事務当局でスムーズにやっていただきたい。私個人としてはこれに容喙したくないので、なめらかにやっていただきたいということを強くお願い申し上げまして、この辺で打ち切りたいと思います。
  130. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 本日はこれをもって散会し、次会は公報をもってお知らせいたします。     午後一時十三分散会