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1955-03-31 第22回国会 衆議院 文教委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年三月三十一日(木曜日)     午後二時二十三分開議  出席委員    委員長 佐藤觀次郎君    理事 赤城 宗徳君 理事 伊東 岩男君    理事 坂田 道太君 理事 竹尾  弌君    理事 辻原 弘市君 理事 三宅 正一君       杉浦 武雄君    藤本 捨助君       山口 好一君    久野 忠治君       永山 忠則君    島上善五郎君       野原  覺君    小牧 次生君       平田 ヒデ君    小林 信一君  出席国務大臣         文 部 大 臣 松村 謙三君  出席政府委員         文部事務官         (初等中等教育         局長)     緒方 信一君         文部事務官         (大学学術局         長)      稻田 清助君         文部事務官         (管理局長)  小林 行雄君  委員外出席者         文部事務官         (大臣官房総務         課長)     田中  彰君         文部事務官         (大臣官房会計         課長)     内藤誉三郎君         文部事務官         (社会教育局         長)      寺中 作雄君         専  門  員 石井  勗君     ————————————— 三月三十日  委員大西正道君辞任につき、その補欠として木下  哲君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  文教行政に関する件     —————————————
  2. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 これより会議を開きます。  文教行政に関する件を議題といたします。前会に引き続き文部大臣に対する質疑を行います。野原覺君。
  3. 野原覺

    野原(覺)委員 文部大臣に対しまして若干の問題についてお尋ねをいたしたいと思うのであります。第一点は教育の二法律についてでございます。教育の二法律というような法律文化国家を標榜する日本に適用せられておるということはきわめて遺憾なことであると思うのでございますが、大臣は基本的にお考えになられて、あの法律教育基本的人権を侵害するものであり、世界どこの文化国家を見てもない法律悪法である、こういうように言われております点から申しましても、あの二法律は好ましくないとお考えになっておるとは思いますが、一体基本的にこれをどうお考えになられるのか、承りたいと思うのであります。
  4. 松村謙三

    松村国務大臣 お答えを申し上げます。あの法律が出ましたときは、占領行政から移り変りのときでありまして、やはり激動期で、ああいうものを必要とする事態であって今日に及んでおるわけだろうと思います。現在の状態におきましても、さきに申しました通りに、教育制度中立性という事態が安心できるような事態をぜひかもし出したい、そういう事態が参りましたならば、あの二法律は不要になることと存じますので一日も早くそういうふうに安心ができる事態が来ることを心から念願いたしておるわけでございます。ただいまはこれを直ちに変改する意向は持っておりませんが、そういう日が早く来ることを切に希望するわけであります。
  5. 野原覺

    野原(覺)委員 二法律というようなものは本来望ましくないという御見解のようでございますが、しかしそういうお考えをおとりになっておられながら、なお今日直ちにこれを撤廃する意思がないと仰せられることは、やはり今日の日本には制定の必要があるということであろうかと思うのであります。そこでどういう理由に立って制定の必要があるとお考えになっておられるのか、今日教育中立性がどう一体侵害せられておると大臣はお考えなのか、私は松村文政に期待するところが大きいものの一人でございまするから、承わりたい。
  6. 松村謙三

    松村国務大臣 私は就任日が浅うございまして、教育界の実情を十分存じてはおりませんけれども教育界があの法律制定したときからは漸次安定をして来ておることとは思いますが、まだ今直ちにあれを解く段階に達しておるというふうには考えておりません。しばらく今後の趨勢を見て考えましてもおそくはない、こういうふうに考えております。
  7. 野原覺

    野原(覺)委員 まだ問題があるんだから、しばらくは経過を見なければならぬ、こういうことのようでございますが、実は大臣も御承知のように、あの二法律をお出しになられた責任者大達文部大臣は、あれを出されたときにこういうことを言われたのであります。教育中立性教員諸君 によって侵害せられておるから、この二法律を出すのだ。そこで侵害せられておる具体的なものは何か、それを示してもらわなければ困ると私ども質問いたしますと、その侵害せられておる事実はここにこれだけあると言って、二十四の具体的な事例出したのであります。この二十四の具体的事例が二法律制定しなければならない必要性なんだ、こういうことがありましたから、時の文部委員会はたくさんの班をこしらえて、全国にわたって直接調査にも参り、その他参考人も東京に呼んで聴取いたしてみますと、責任者大達文部大臣が二十四の事例として出されたその事例は全く事実無根あるいは事実を捏造したものである、針小棒大に作り上げたものだということがはっきりして参りました。従って現在の松村文部大臣としてはまだ問題がある、こう言われるのでございますけれども、まだ問題があるというのは、具体的にどの点なのか、私はこれは一日も早く、日本の名誉のためにも、こういう悪法は撤去しなければならぬと思うのです。従って大臣としてはどの点がまだ問題があるのか、これを一つ明確に御説明願いたい。
  8. 松村謙三

    松村国務大臣 私はどの点ということを指摘いたすのではございませんけれども教育中立性が今確立をいたして、そういう法律がなくてもよろしい。こういうことを認める場合にはできるだけこれは早くやめたい、こう思うのでありますが、今後私どもは、ただいま申したように、教育中立性につきまして、お互いにもうこれでやっていけるという見当ができましたら、すみやかにああいう法律はやめたい、こういうふうに考えておることを申し上げておきます。大達君がどういうことでやりましたかは別といたして、その当時あれだけ議会で論議を尽して通過いたした法律案でもございますし、今後慎重に考えて措置をいたしたいと思います。
  9. 野原覺

    野原(覺)委員 今直ちにどうこうということはできないので、適当な機会に、しかもその適当な機会とは、すみやかな機会に、教育中立性が侵害せられておるかどうかということを再検討いたしましてこの二法律には対処したい、こう受け取ってよろしゅうございますか。
  10. 松村謙三

    松村国務大臣 ほんとう教育中立性が確保せらるることが一日も早いことを私どもは念願いたしております。そういう場合にはもちろんそういう運びにいたしたいものだと考えますが、今はまだいつということは申し上げかねます。
  11. 野原覺

    野原(覺)委員 いつということでなしに、こういう法律は望ましくないと大臣も仰せられておるのであるが、どこに一体問題点があるのかという点について、私の質問に明確に御答弁がないわけです。従って一体ばく然と教育中立性が侵されておるのかどうか、今日この二法律を適用した結果、今日の教育界だけでなしに、国民全体に一体どういう影響を与えておるかということを大臣としてはすみやかに再検討をして二法律に対処すべきではないか、私はそういうように先ほどからの大臣の御答弁を承わっておるのでございます。そうでなければならぬと私は大臣の御答弁から考えるのでありますが、いかがでしょう、この点は重大ですから……。
  12. 松村謙三

    松村国務大臣 大体同じことかもしれませんけれども、現在このままでは私はまだ直ちにあれを改廃する意思はございません。ほんとう教育自主性と申しますか、中立性が確保せられたと思いますときには、すみやかにこれを改廃いたしたいこういうふうに考えております。
  13. 野原覺

    野原(覺)委員 私は直ちに改廃せよと要望しておるのではございません。改廃すべきであるかどうかについて再検討をすみやかにすべきじゃないかということを言っておるのです。この点が御了解できませんか。
  14. 松村謙三

    松村国務大臣 よくわかりました。その点につきましてはこれから私どもが尽そうと思います。繰り返して言うことですが、教育中立性が、ほんとうにどこから見ても、内閣がかわっても大臣がかわっても、これで動かぬという基礎を得ますならば、こういうようなものはすみやかにやめたい、こういうふうに考えておりますので、お尋ねの一々事実をあげよと仰せられるのとは多少違いますかもしれませんが、私はそのように考えておるわけでございます。
  15. 野原覺

    野原(覺)委員 委員長がはなはだ時間を制限しておるので、委員長に対して私は不満にたえぬのでありますが、しかし進行の都合もございますから、できるだけ協力したいと思います。  文教予算重点が今事務当局からプリントで出されておるのであります。義務教育振興として三、施設費公立文教施設として、新制中学老朽校舎戦災復旧、不正常授業解消等、それぞれの数字をお出しになって——これはまだ説明を聞いておりませんから、私の質問があるいは的はずれになるかもしれませんが、一体このような数字を出されて、こういう項目要求をせられておるというこのことは、これは文部省としては、昨日大臣方針の中で御説明になられたように、老朽危険校舎の問題、あるいは不正常授業解消の問題については特に努力をするという立場で、何ヵ年かの年次計画を立てられた数字であるのかどうか、ただ単に本年はこれだけだ、来年はどうかわからぬというような、計画性のあるものであるのかないのか、その点を御説明願いたい。
  16. 松村謙三

    松村国務大臣 お答えいたしますが、そういう年次計画を立てているものもありますし、いないものもございます。たとえば老朽校舎の問題のごときは、これはやはり大体年次をきめてやりたいと思いまして、大体四年計画ぐらいでこれを一つなしくずしに改築しよう、こういうことでただいま要求をいたしているわけでございます。
  17. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 野原君にちょっと申しますが、大臣予算委員会の関係があるので非常に時間を急いでおられるのであるから、それでそういう予算のことについてはあと説明があった後に質問していただきたいと思うのです。まだほかに通告が四人もあって、三十分よりどうしてもおれぬという文部省の方のあれでありますから、そういう予算のことについては、小林管理局長も来ておりますから、あとでやっていただきたいと思いますが、どうですか。
  18. 野原覺

    野原(覺)委員 できるだけ協力をしたいと思いますけれども、しかしこの予算の点について私はただ単に質問しているのではなしに、実は施設費に関してはこれは重要な文教行政の大きな内容でございますから、尋ねているわけなんです。今日校舎が建たないために、しかも地方財政が非常な危機に見舞われておりますために、これが大きく問題になっていることは、文部当局が御承知通りなんです。そこで老朽校舎については四年計画として本年は二十億、その他については御答弁がなかったのですが、こういうものははっきりした年次計画の上に立たれて当らなければ、絶対に解消できない。ただ本年は十億だ、十五億だ、こういうふうに偶発的な要求であってはならないと考えますので、お尋ねをしておるのでございます。その他の項目はいかがですか。大臣答弁がむずかしかったら、事務当局の方で、年次計画の中に新制中学その他も入っているかどうか、一体何ヵ年計画であるかということを御説明願いたい。
  19. 松村謙三

    松村国務大臣 それらのことは後ほど事務の方から御説明申し上げることといたしまして、私の重点を置いておりますのは、今お話老朽校舎とか戦災校舎というようなものの復旧重点一つ置きますことと、それから学術振興の点についてこれは特に力を入れて何とか相当にやってみたいという考え努力をいたしておるのです。どこまで奏功しますか知りませんけれども努力をいたしておる。ことに化学、こういう面について今日いろいろ特殊の研究が行われておりますから、これを助長するということは、これはこういう資材の乏しい日本の将来には非常な利益を与えるごとと存じて、そういうところに予算を取りたいと努力をいたしておるわけでございます。それと、この社会教育の方面において今日何とか力を尽したい。それから育英、私立大学、こういう点に重点を置いてやっております、なかなか財政困難の今日でございますから、できるだけ重点的にこれらの目的を達成いたしたいと考えてやっている、こういう考え方でございます。それからもう一つ、いわゆる生活改善の運動を文部省でとりたいと思うておりますが、これは別に、先般も申したようなわけで、団体でやり、それを助成してやるということならば、必ずしも文部省予算を取りませんでも、文部省がいろいろのお世話をやいてその目的を達してもよろしい、こういうふうに考えてやっております。詳しいことはあとから一つ事務から御説明いたしまして、どうか私に対する質問だけを先にお願いを申し上げたいと思います。
  20. 野原覺

    野原(覺)委員 それでは予算に関しましては、大臣の御都合もあるようでございますから、後ほど事務当局説明を承わった上で質問いたしたいと思います。  そこで私は実は大事な点についてお尋ねいたしたいと思うのでございます。それは、選挙のときに民主党教科書無償配給について公約をされておったようであります。一年生の算数、国語に関しては本年度からこれをただで出したい、こういうことでございましたが、いろいろあちらで大臣が御答弁になられて、そうして私どもにはっきりして参りましたことは、本年度教科書に関しては、一年であろうと何年であろうと無償配給はなさらない、こういうことだそうでございますが、その通りでございますか。
  21. 松村謙三

    松村国務大臣 これは民主党公約というところではございませんけれども前任大臣が一時そういうふうな考えを持っておいでになったことは事実でございますが、何分暫定予算を組んで、そうしてあらゆる補助とかなんとかいうものをみな原則的にはずすということになりましたために、前内閣のときの予算閣議決定にもこれは載せることができませんで、それで私も実は先だっても日教組の諸君にも、できるだけの努力はするつもりだということを申し上げて、努力をいたしたのでございますが、すでに時期もおそいし、それからもう一つは、本予算に組んでと思うておりましたけれども、それもだんだんやってみますと不可能のことでございまして、遺憾ながら今年度においてはそれを実行することはできません。しかしながら、ほかでも質問がございまして、それならばこれであの何は破棄するのかという御質問もありましたが、ことしはそういうわけでいたしませんけれども、あの法をいつまでも眠らしておくというような考えはございませんで、今後ぜひあの法律が復活いたして、そうして学生、ことに貧窮な学生にあまねくそういうことができますように努力いたしたいという考え方は捨てておりません。
  22. 野原覺

    野原(覺)委員 前の安藤大臣は盛んに御宣伝をなさっておるのに、大臣がかわったらこれが実現できないというところから、国民は、今日の松村文相教科書無償配給反対だからこれが出されていないんたろう、こういう受け取り方をしておるのであります。従って私はこういう問題は、同じ政党内閣大臣でございますから、前の大臣があれくらい強力な御主張をなさっておった問題が、一本どういうわけで全額削除になって、暫定予算にも本予算にも要求せられないことになったのか、来年になれば考えるということでございますが、来年のことを言えば鬼が笑うのでありまして、これまた全くうなぎのかば焼みたいなにおいを発散させるだけにしかすぎない。私はこの点は実は民主党内閣文部当局に対して非常に不満に思う一点でございます。  時間がありませんから急ぎます。もう一点で、あと同僚議員辻原君に譲りたいと思いますが、文部省には中央教育審議会その他教育課程審議会等、たくさんの審議会が置かれておるのでございますが、念のために御質問いたしますが、幾つ審議会がございますか。
  23. 田中彰

    田中説明員 ただいま文部省設置法によって成規審議会としてございますものは、十七でございます。
  24. 野原覺

    野原(覺)委員 その審議会委員任命は、どういうような基準によって、どなたが任命することになっておりますか。
  25. 田中彰

    田中説明員 任命権者文部大臣でございます。それから任命手続きとしましては、審議会によりましては特定の団体代表者の中から出るようになっておるのもあります。一般的にはその程度でございます。
  26. 野原覺

    野原(覺)委員 審議会を十七も置かれておることは、私は何も反対はいたしませんが、こういう審議会をこのくらいたくさん置いたということは、結局文部行政というものを、広く国民意見を聞いて民主的なものに持って行きたいという願いからであろうと思うのでありますが、間違いありませんか。
  27. 松村謙三

    松村国務大臣 私からお答えいたします。それはもちろん公正に民主的に考えることは当然でございます。しかしながらその委員会を一々、どういうものでというようなことを民衆に諮るわけにもいきませんので、もちろん大臣責任者として、その趣旨に従って選任するということで従来もあったでありましょうし、これからもさようであるべきだと考えております。
  28. 野原覺

    野原(覺)委員 そこで実はここに一つ問題があるのです。それは社会科改訂についてでございますが、小学校、中学校の社会科という最も大きな教科改訂が四月から実施されようとしておるわけであります。ところがこの社会科改訂実施をめぐりまして、聞くところによれば、社会科改訂に関する審議会だけでなく、広く全国の有識者東京大学教育学教室を初め、しかも現場の教師ことごとくがこの改訂に猛烈な反対をしておるにもかかわらず、一部の文部省視学官というかお役人さんが、非常に強硬な態度改訂実施をやろうとなさっておられる。一体これは文部省審議会を設けられた趣旨から考えてもいかがかと思うのでございますが、この辺に対する大臣の御所見を承りたい。
  29. 松村謙三

    松村国務大臣 それにつきましていろいろのお話も承りましたから、十分調査もいたして、事はもうあすからの実施に迫っておりますので、私どもとしましても、よく調べてみたことでございます。その結果といたしまして、大体この答申、それからそのあとの何からみましても、大そうこの点において手続が間違っておったとかというようなこともありませず、またあの点はどこかということか知りませんけれども、大体妥当なことで、日本のこの制度に、いわゆる政治概念を与える、すなわち、日本政治の現在の憲法において許されたその政治機構概念を与えるということは、別に私は間違いでないと思いまして、にわかにこれを差しとめまして、四月からの旋行を延期するというようなことはいたさないということにいたしたような次第でございます。どうぞこの点は御了承をお願いいたしたいと思います。
  30. 野原覺

    野原(覺)委員 四月から直ちに文部省考えておるような、第五次でございましたか、その改訂実施はいたさない、こういうことにしたのでございますね。
  31. 松村謙三

    松村国務大臣 すでにそれは課程指導の書類を配り、すでに用意をいたしておりますし、しかもそれには手続及びその内容も見ましたが、現在の政治機構をそのまま、憲法に書いてある通りに述べるということは、これは教育根本法からしましても当然であろうと考えまして、これを四月から施行するという従来の方針を変更をいたさないことにいたしたのでございます。
  32. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 大臣の時間の御都合もあり、あと辻原君もおりますし、また時間の打ち合せもありますから最後にして下さい。
  33. 野原覺

    野原(覺)委員 これは大臣に対する質問じゃないけれども委員長大臣の御都合と言われるが、どういう御都合かしりませんけれども参議院委員会だろうかと思いますが、実は衆議院の文教委員会としては、これが二回目。従ってわれわれがこの委員会質問しなければ、教育の実体というものをつかむことすらもできない。それにもって来てたった十分か十五分しか経過しないのに、質問者を押えるような方向にばかり委員長がまわるということはいささか了解できかねる。わが党の委員長だけれども、以後御注意願いたい。
  34. 松村謙三

    松村国務大臣 ちょっと私からお願い申し上げておきますが、参議院文教委員会に出るためではございません。三時半から参議院予算総会態度決定の会が始まりますので、三時半にはぜひ出なくてはなりません。その三時半の前にちょっと下打合せがありますので、それで時間の窮屈を感じておるのでございます。どうかそういうおつもりで御了承願います。
  35. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 委員長から一言申し上げますが実は文部大臣も非常に前々からの約束でございまして、われわれはできるだけ委員の方に、十分な発言をお願いしたいと思いますけれども、実は御承知通り予算委員会お話もありまして、向うの方からやかましく言われておりまして、決して押えることではないことを御了承願いたい。一人だけでなく、あとからの発言通告もありますから簡単にお願いします。
  36. 野原覺

    野原(覺)委員 これで終りたいと思います。いずれ私は時をあらためて、自然休会の後にでもまたゆっくりお伺いしたいと思います。  社会科改訂に関しては、大臣が詳しく御承知でないかと思いますけれども、私は社会科改訂に関する審議会委員諸君の御意見を、文部省一体どこまで取り上げられたのか、実は不可解にたえないものがあるのであります。聞くところによれば、今日文部省が四月一日から実施しようとしておるものに対しては、審議会の大部分の諸君はそれに反対であるし、全国教育界だけでなしに、識者がこぞって問題があると指摘しておるものを、なぜあわてて教科書もまだできていないのに、指導要領出して、四月からその実施を急ごうとするのか。私は今日の文部当局の、あえて大臣とは申し上げませんよ。文部省事務当局首脳部諸君が、全く民主教育方向と逆の方向に行くような感じがする。従ってこの問題は重要でございますから、私の要望を申し上げますと、四月実施をすみやかに中止をして、もう少し広く国民の世論を聞かなければならぬ。教科改訂は、東京大学教育学教室は、海後さんを先頭に全員反対しておるじゃありませんか。これをかって戦争中、教学局思想課長をしておられたそうでございますが、視学官の、私は名を申し上げる、責任者は小沼さんですが、そういうような特に問題があると人々から思われやすいような、戦争前の教学局におられた人々が、広く今日の識者反対を押し切って強行するというようなことは、私は日本教科改訂のためにこれは問題があると思うのであります。従ってどうか教育行政民主化について深いお考え方を持っておられる松村大臣としては、すみやかに事務当局意見をも徴されまして、四月から社会科改訂実施しようとするこの行き方を、もう一度再検討されんことを要望申し上げまして、残念ながら私の質問を終ります。
  37. 佐藤觀次郎

  38. 辻原弘市

    辻原委員 時間の制限を受けましたので要約して申し上げたいと思います。一昨年から大臣の御所見等を承わっておりまして、非常に今までと違った文部委員会の空気を私は感じておりますので、この点は大臣に敬意を申し上げたいと思います。  第一にお聞きいたしておきたい問題は、これは大臣もしばしば新聞記者団との会見、あるいは一昨日の指導方針の中にも触れられましたが、最も重要な、大臣がいかなる教育理念に基いて行政を行おうとしておるかという点であります。その点でここに先般新聞紙上で発表せられておりました大臣教育理念についても、私は拝見をさせていただきましたし、また一昨日のお話の中に、あくまでも教育基本法を中核として教育行政を遂行したい、こういう話であったのでありますから、もちろんこのことは当然でありますけれども、自由党内閣当時におきましては、しばしばこの点に問題をかもしております。と申しますのは、教育基本法が示す教育目的教育方針というのは明らかでありまして、これは民主社会における健全な社会授業を育成するという一言に尽きるだろうと思うのであります。ところがこれに対してかって十六国会に教育勅語の問題について論争を巻き起したことがあるのであります。と申しますのは、今日といえども教育勅語の持っておる性格、精神というものは、教育政策上まことに重要だと申された大臣がおったのでありますから、この点われわれはその見解に賛成をすることができないということを強く申し上げて参りましたけれども、今なお全国にこの論議がかもしました一つの風潮というものが残っておりまして、私は、大臣が新教育の理念は、あくまでも教育基本法の精神を逸脱しないという、この明言は非常に重要性を持っておると考えておりますから、あらためて今後の大臣のとられる教育理念というものは、この精神から逸脱しないものであるということを明言願いたいのと、いま一つは従来教育勅語の精神云々と申されたこの御意見に対して、大臣は人の意見だから私は知らぬとおっしゃられては困るのでありますが、私たちの考えるところは、少くとも教育勅語が持っておる時代的背景、その理念と、新憲法から出た教育基本法の理念というものは、おのずから教育目的教育方針が異なるものと考えておるのであります。その点私の意見に御賛同いただけるか。教育勅語に対して、今なおやはり今日の社会といえどもその精神は大いに顕彰してしかるべきものである、こういうふうな御見解をお持ちなさっておるのか、その点を参考に承わっておきたいと思います。
  39. 松村謙三

    松村国務大臣 私はしろうとでございますから何か考え方に違いがあれば御叱正を願いたいと思いますが、私は今後日本民族のあり方というものは、世界の人類のどの民族と伍しても尊敬を受ける品性と良知、良能を備える、そういう国民性をつくりあげるのが大切であろうと考えます。この基礎のもとに初めて民族を愛し国を愛する心持も価値もまた出てくるわけでございまして、私はそれにやはり国を愛し民族を愛するという気分に沿うことが必要であると考えます。こういうことが大体教育の根本の理念であろうと思います。教育勅語につきましてあれを全般的に今の教育に当てはめようということは、どなたも考えていないのではなかろうか。しかしながらあの中に含まれております友愛の精神、あの中に一々列挙はありませんがそういう意味においては、ほんとうに今世界の人類の尊敬を受ける品性をあの趣旨において養わるべき条項も多いのでありまして、教育勅語の中に含まれたすべてがいかぬと私は否定できないと考えます。しかしあのすべてを復活して教育方針にしようなどというようなことは、おそらくはだれしも考えていないことじゃなかろうか。私ども考えておりますことは、今申したような点であって、それを反動的に昔ながらのところに返そう——という世の中には進歩があります。この進歩に沿うていかなくちゃなりませんから、私は政治のことは覆水は盆に返らないものだ。そこでお互いの政治的の力をもって、またいろいろ専門的な頭で、この時代に、この次の時代に適する教養はどうすればいいかということを考うべきものであろうと思うのでございます。こういう点に一つほんとう教育方針を定めて、そこに中立性を持たせて、国民がそれによっていくことができるということになりますならば、これは非常にいいことであって、ぜひお互いにそこまで持っていかなければならぬのじゃなかろうか、こういうふうに考えておる次第であります。
  40. 辻原弘市

    辻原委員 突っ込んだ問題はまた次会に譲るといたしまして、大体においてお考えになっている点がわかりました。特にこの問題について私が大臣に申し上げておきたいのは、今大臣が最後に教育勅語の問題について御説明がありましたが、今大臣お話にありましたような点はきわめて常識的であります。ところがこの常識的な御発言がそれぞれ国民の間に受け取られる場合には、往々にして誤解を招くのであります。というのは、われわれが教育基本法あるいは教育勅語と、こう総括的に取り上げた場合には、その枝葉末節と申しましてはちょっと差しさわりがありましょうが、中味はばらばらの個個の問題、あるいは徳目という問題について、いいか悪いか論じているのではありませんが、言いかえてみれば、それ自体をもって、教育勅語全体をもって国民一つの基盤として、そういったいき方が是認されるかどうか。それに対して取ってかわったものが教育基本法であるというようにわれわれ今日まで了解しているわけでありますが、だから全体として教育勅語を称揚するがごとき見解をお持ちなさっては、これは大臣が今言われましたような、時々刻々教育をもって社会の進歩に寄与するという考え方はとうてい推進していくわけには参らないのでありますから、そういう意味合いをもって、あくまで個々の徳目についてはこれはだれも否定するものはないのであります。しかし全体として推し進めるという立場は、やはり教育基本法を置いて以外にないのだ、これは今後の教育政策遂行にあたって明確にしておいていただきたい点であります。  第二にお伺いいたしたい点でありますが、これは今も同僚野原君からも触れられておりました社会科改訂の問題であります。今申し上げました教育勅語等を推奨されました向きから起ってきた一つの傾向として、ともかく社会科はあきたらない。何かここに従来戦前にやっておったような徳目を中心にした道徳教育というようなものを、この際やる必要があるじゃないかということはしばしば論議が蒸し返されて参ったのでありますけれども、この点は一つよくお考えをいただきたいと思うと同時に、大臣の御見解をはっきりさせていただきたいのであります。というのは、この社会科改訂の中に、あるいは地理、歴史の復活の問題を取り上げ、あるいは修身科の復活の問題を往々にして取り上げられて今日に至っておりますけれども、少くともこの修身科を復活して道徳教育をやろうとする人のねらい、あるいは地理、歴史を復活してやろうとするねらいの中には、非常に近視眼的な考え方が入っているということを私たちは発見するのであります。というのは何も公民教育、あるいは国民の徳性を養う、社会人としての徳性を養うというような問題は、修身科一課目によって目的を達成せられるものでもなければ、あるいは日本の風土、地理といったものから日本人の徳性を養うということも、地理、歴史それ自体だけで養われるものではないのであります。そういう反省をもって社会科が生まれたことは大臣も御承知通りでありまして、われわれとしてはそういう総合的な立場で国民の徳性を養う教育をやっていくことが正しいという考え方は今日変えるわけには参らないのであります。部分部分をとらえてみますといろいろ足らざるところもありましたし、社会科がある形に片寄って社会科本来の目的を達していない点もありまするが、部分の問題は是正することは当然でありますけれども社会科としての目的本質は見失わないように今後努力していただきたい。だからその中で特に修身科による道徳教育等の復活をかりに大臣がお考えなさっておるといたしましたならば、これはとんでもない皮相な考え方であると申し上げざるを得ないのであります。従ってどうか一つこの点よくお考えいただくと同時に、明日から始まりますけれども現在この社会科改訂になお今後検討を加えなければならぬという点の多いこともお考えなさっておるようでありますから、特にその根本的なお考えについて大臣の見解を承わりたいと思います。
  41. 松村謙三

    松村国務大臣 幸い大へん必要なことをお聞きがございましたからこの際率直に申し上げておきたいと思います。  先刻からのお尋ねは、非常に大きな誤解を双方に含んでいるのじゃなかろうかと私は思うのです。なぜかなら、私どもは先刻申したように、こういう手段を講じて漸次昔ながらの世界に変えていこうという、その段階を今やっているのだという誤解をお持ちになっているのじゃなかろうかと考えるのでございます。これはきっぱり申しておきますが、私どもはさような意思は毛頭持っておりませんのみならず、私どもの所属をいたしております党派におきましても、今の日本の国を昔ながらのところにひっ返そうという考えは持っておりません。憲法の改正をしようということも、戦時中に向うがつくったものだから、全体を検討することが必要であることは、われわれが選挙にもよく申し、その通り考えておりますが、それは旧憲法へ返そうなどという、そんな反動的の考えを持っておるものではございません。教育のことにいたしましても、世界が変っておる、その変っておる世界に適応する人間を作らなくちゃならない、それを作って、この日本を尊敬を受ける国家としたときに、日本を愛し、日本を守って行くという心が出るのは当りまえでございますから、そういう意味合いから申して、私どもは新しい意味の国を愛し、新しい意味の民族を愛する、これは当然のことでありまして、これは皆さんも御異存ないことと思いますが、教科書の課程にいたしましても、日本の歴史、日本の民衆、文化のずっと進んできた道を説明するのには御異存もなかろうかとは思う。日本の国に生まれて、日本の祖先が何をしておったかわからないということではなりません。地理にいたしても同様だ、こういうふうに私は考えます。それから修身といいますか、これも今のこの世界に立って恥じない人を作るのには、アメリカあたりのように宗教の力で品性を養い得るならばよろしいでしょうけれども日本では宗教にはそれだけの力がないということになりますと、やはり教育の上からいってそれだけの品性を涵養するということも必要だ、こういうような意味にとりますならば、これは御納得も行き、御協力も願えると思うのでございます。これを反動的にいま一歩進み、次は一歩進める、こういうような考えとお考えになりますならば、それは許しがたいことでございましょうと思いますけれども、そんな考えはわれわれは毛頭持っておりませんことをここに申し上げまして、そしてともにわが教育ほんとうの姿を打ち立てたいとお願いをするわけでございます。
  42. 辻原弘市

    辻原委員 反動的な考え方を持っておるのではないから御安心願いたいということでありますが、これは単に言葉だけで安心のできる問題ではないのでありますから、今後われわれはさらに詳細にこの点は大臣ともいろいろお話し合いを申し上げたいと思います。  ただ今の大臣お話の中で、修身料を独立させることによって品性の陶冶を行い得る、そういう御説明がありましたが、これはほんとうにそうですか、そういうことをおやりになるのですか。
  43. 松村謙三

    松村国務大臣 私の今申したことはちょっと過ぎたかもしれません。独立したものという意味ではございませんで、社会科のうちでそれらのことも採り入れて教えるのは悪くはない、こういう程度に申したことと御了承を願います。
  44. 辻原弘市

    辻原委員 今のお話ならよくわかるのでありますが、社会科の中でその目的を果すようにしたい、修身科は復活をいたさない……。
  45. 松村謙三

    松村国務大臣 さようであります。
  46. 辻原弘市

    辻原委員 次に教育制度についてお話を承わりたいと思います。これは私は常に大臣がおかわりになるごとにお伺いをしておる問題でありますが、戦後十年の間に新しい学制に対していろんな意見が巻き起りまして、中には新学制を変えたらどうかというふうな極端な意見もときどき起って参るのでありますが、大臣の御所見としては、現在の六・三・三・四の学制をなお存続強化しようというお考えで文政に当られるおつもりであるのか、あるいはこの学制について何らか検討を加えなければならぬという強いお考えがあるのか、あるといたしましたならば、どの部分に検討を加えられるおつもりであるか、先ほどちょっと予算の御説明の中で触れられておりましたが、私立大学振興を特に強調したいというお話でありました。これはちょっと猪突的でありまして、私はいささか了解ができなかったのでありますが、今申し上げました学制についての根本的見解、変えるという考えはないか、そういう考えでなくして、ますます強化をしていきたいという強いお考えであるのか、この点を承わっておきたい。
  47. 松村謙三

    松村国務大臣 これはまだ省としてきまったことではございませんから、そのつもりで、私の所見としてお聞き取りを願いたいと思います。今既成の事実になったこの学制をにわかに変えることは困難であろう、ただ今日においてはこれをまたこの上散漫に限りなく延ばすということは、よほど考慮を要すると私は考えております。大体大学の制度はどこまで行くのか。たとえば大学院が今十五あるそうでございます。これがずっと普遍しますと、大学の上のさらに大学ができることになる。また短期大学も必要でありますが、短期大学を無制限にしますと、今度大学の下にまた一つできるという形になる。大体学校の教育制度がどこへ何するのかということは、これは慎重に考えなくちゃならぬと思う。そこで大体の構想といたしましては、何とかして全力をあげて内容の充実をはかるのが今日の急務でなかろうかというふうに考えているのです。それはもちろん大学院にしましても、短期大学にしたって、絶対にこれで許さぬという意味じゃございませんけれども考え方の傾向としては、そういうふうに内容の充実というところに全力をあぐべきでなかろうかという考えを持っておるのでございまして、これだけを申し上げておきます。
  48. 辻原弘市

    辻原委員 かえるお考えはお持ちなさっていないように承わりました。ただ問題点としては、大学制度についてやや検討をして参りたいというふうに承わりましたが、それでよろしゅうございますか。
  49. 松村謙三

    松村国務大臣 そうです。
  50. 辻原弘市

    辻原委員 次に同じ教育制度であります。一昨日も質問があったように記憶するのでありますけれども、再度お伺いしておきたいのでありますが、教育委員会制度であります。この教育委員会制度の問題をめぐりまして論争が三つにわかれていると私は考えているのであります。それは、現在の教育委員会制度を根本的に否定しようという考え方、いま一つ教育委員会制度は根本的に存続しなければならぬ、ただし地方教育委員会は廃止しようという考え方、いま一つは地方教育委員会を廃止した場合にその教育行政の権限を市町村長の手にゆだねようとするお考え、大体この三通りがあると思うのであります。大臣が以前所属をされておりました改進党におきましては、二十九年の大会でありましたか、党の方針として、教育委員会制度は存続する、地方教育委員会は、これは実情にそぐわないから廃止をしたいという方針を確定せられておったように私は記憶するのであります。その後民主党が発足いたしましても、中核としてはそのお考え方はかわっておらないと思うのでありますが、この三つの動きの中で、私はそのまん中のお考えがおそらく大臣のお考え方であろうと考えますが、いかがでありますか。
  51. 松村謙三

    松村国務大臣 この問題は非常に重大な問題であり、そうして一種の政治問題ともなっております。それでありまして、私も一つ十分に研究をいたして自信をもってやりたいと思いますので、事は重大でございますから、きょうここでこういうふうにするということを申し上げる段階にまで達しておらぬのでありますことを御了承願いまして、もう少しかすに時日をもってしていただきたいと思います。
  52. 辻原弘市

    辻原委員 もちろんこの重要な問題を今日ただちに明言せよということは、いささか酷であろうかと存じますが、少くともこれは従来相当長期にわたって検討されて、そうして当時の改進党におきましても私は結論を出されたものであると把握しておりますし、各党々々におけるこの問題に対する見解も、今や明瞭であります。また実情から申し上げまして、地方教育委員会発足以来、もちろんこの教育委員会があるために多少の利便はありますけれども、果して制度としてそれを強調して存続していかなければならぬという特段の理由も私どもには見当らないのでありますから、大臣のお考え方も改進党当時のお考え方を変更されることはよもやあるまいと私は考えておりますので、どうか一つそういう点に立って十分な御検討を願っておきたいと存じます。  時間がございませんのでなお二、三の問題を簡単に尋ねておきたいと思いますが、教科書問題でございます。この教科書問題はしばしば各委員会においても取り上げられておりますが、聞くところによりますと、大臣所属の民主党におきましては、何か新語でありまして、私どもは了解に苦しむ言葉が近ごろあっちこっち新聞等に出ております。民編国管でありますか、こういう新造語が続出しておりまして、一体中身はどういうものかと私どもはつかむのに骨が折れておりますけれども、よく見ておりますと、何か検定制度を否定をして、国定の形に教科書を、一元化するような、そういう考え方がかなり強く出ておるように私どもは見受けるのであります。一体これに対して大臣はそれを肯定されておるのかということについて伺っておきたいと思います。  なおもう一つは、これは参考に大臣のお考え方を承わっておきます。一体現在の教育の中で教科書の価値をどうお考えになるか。教育というものは教科書を中心としてやられていくのかどうか。その点について一つお伺いをしておきたいと思います。
  53. 松村謙三

    松村国務大臣 これは何だかかんだか——一度国営民編ですか、あれも一つ内容をゆっくり聞いてみたいと思っておりますが、実は時間がありませんでまだ聞いておりません。ただ常識的のことですけれども、今日のあの教科書の雑多な形は、ずいぶんむだが多いと思うのでございます。これをある程度、今お話のような窮屈にならない、国営だとか何とかいうことにならない程度において何かもう少しやり方があるのじゃないか。これはやはりお互いに研究すべき大きな題目であろうと思っておりますので、これを一つよく調べてやってみたいという熱意でありますが、こういう際ですから、まだ詳しいことを聞くこともできませず、また皆さんのお考えも聞きたいと思っておるようなわけでございまして、その程度で御了承願いたい。教科書の重大な価値については、これはもう申すまでもないことでございまして、できるだけ価値の高い教科書を得たいものと思うております。その意味においてある程度の競争も必要かとも思いますけれども、やはり両方合わせて最善を期したいと思います。
  54. 辻原弘市

    辻原委員 またわれわれもこの問題については、現在非常に乱発される教科書の中でいかがわしいものもありますし、価格も高い、あるいはこれを現地で採択してもらうためのいろいろの運動、こういうものに対しては何らかの方法を講じなくちゃならぬということも考えておりますので。協力するにやぶさかではございません。しかしそれがあるからといって、検定を国定の方向に持っていくということは本質的に違うということだけを一つ大臣に御把握を願っておきたいと思います。私が申し上げました教科書を国定にして一本にまとめてやろうとする人のお考えは、これは教科書中心主義の教育をやろうとする全く新教育考えに合わない人の間違った考えであるということを指摘しておきたいと思います。教育教科書によってやるのではございません。教育教育者を通じての総合的な人格形成というところにあるのでありますから、あくまでも教科書は価値がなければならぬけれども、しかし教育のための一つの手段、道具であります。そういう点、検定、国定というものをお考えの場合の重要な要素として大臣も御勘考願っておきたいと思います。  次に簡単に伺いますが、給食の問題であります。制度の重要性については、先般三宅委員の方からお話がありました。これはまたいずれ機会をあらためまして考えを述べたいと思いますが、ただここでお伺いしておきたい問題は、最近一ヵ年におきましても、給食を実施することによって中毒症状を起した件数が、ここに統計が出ておりまするが、脱脂粉乳だけで十校に余る学校の学童が中毒症状にやられておるのであります。さらにその他いろんな副食物から下痢など、いろんな被害を受けましたものが四件ございまして、合計十四件、それに未確定で私も調査を完全にいたしておりませんが、福井県、鹿児島県の問題を入れますと十六件の中毒症状によって、給食問題の中で私は大きな問題を投げかけておると思うのであります。これらの中で脱脂粉乳の問題が起り、しかし幸いに生命に関する域には至らなかったので、問題は社会的にまで大きく発展をいたしておりませんけれども、しかしこれは給食制度実施する上においてまた教育を遂行する上において放置できない問題だと思いますが、これらの問題発生に対する責任の所在というものはどこにあるのでしょうか、その点を承わっておきたいと思います。ちなみに申し上げてみますると、脱脂粉乳の製造元は雪印の八雲工場であります。十校すべて雪印なのでありますが、この責任は一体製造した雪印にあるのか、あるいはこの給食を管理する国にあるのか、文部省にあるのかこの点を明確にしておいていただきたい。私将来こういう問題が頻発するならばこれは社会正義の建前上も、かような粗悪なと申しますか、十分吟味を入れないようなものが学校給食の中に用いられておることは、これでは食生活の改善と言われるものでもありませんし、給食制度の遂行は地から崩れ去ることになりますから、場合によれば、もしこの中の父兄が立って損害賠償を要求した場合には、だれが支払うことになりますか、この点を承わっておきたい。
  55. 小林行雄

    小林政府委員 学校給食の中毒事件についてのお尋ねでございますが、ただお尋ねの中にありました、先般起りました雪印による中毒事件については、これは国内産ミルクの中毒事件でございます。それ以外の中毒事件は、大体脱脂粉乳につきましては、御承知のように輸入の粉乳でございます。脱脂粉乳は、国内産たると、あるいは輸入のミルクであるとを問わず、御承知のように、厚生省の方で食品衛生法に基いて検査をいたしておるのでございますが、しかし従来必ずしも完璧な検査が行われていなかったようなこともあったかに見えまして、まま中毒事件が起っておるのは大へん国として遺憾なことと思っております。ことに子供たちで非常な迷惑をかけ、また子供たちの父兄である一般の方々にも非常な心配をかけておりまして、これは国としては非常に申しわけないことと思っております。この食品の検査につきましては、大体御承知のように厚生大臣の方で都道府県知事あるいは保健所というようなものを通じて検査をする。ことに国内産のミルクについては、そういったルートを通じて検査をするということになっております。しかしいずれにいたしましても、単に厚生省が所管であるとかいうことではありませんで、学校給食の指導官庁といたしまして、文部省としてもまことに遺憾なことと思っております。
  56. 辻原弘市

    辻原委員 責任の所在だけを言ってもらえばいいのです。内容はわかっておりますから、どこに責任があるのか。かりに父兄が訴えた場合、その損害賠償をだれがやるかということだけを聞けばいいのです。
  57. 小林行雄

    小林政府委員 検査についての責任は、厚生省にあると思っております。
  58. 辻原弘市

    辻原委員 そうすると、こういう問題が発生したときには、検査をやる厚生省だけにその責任があって、実際の給食を推進していく文部省にも責任がなければ、これを製造した当該工場、会社にも責任がないということになるのですが、もしそうだとすれば、私は検査をする側の手落ちがちょっとあった場合に、製造会社は、人命に関する問題が発生しても知らぬ顔をしておるということは、何か制度上に欠陥があるのではないかということも心配いたしますので、この点本日明確にお答えができなければ、いずれかの機会にでも、一つよくお考えなさった上でこれを明らかにしていただきたいと思います。  それから大臣もお急ぎになるようでありますから、他の問題は省きまして、最後に社会教育についてのみお伺いしておきたいと思います。大臣教育行政の力点の中で社会教育を非常に推奨されております。私も全く同感であります。ただし予算を見ますと、大臣のお姿が社会教育に関してははなはだみすぼらしいように受け取るのであります。というのは、七千万円の予算要求されている。おそらくこれは公民館運営のあれだろうと思いますけれども社会教育を重視せられるとするならば、何と言っても今日中心になっている公民館の問題だけでも積極的に解決せられなければならぬと思いますので、これはもう少しお考えをいただいて——公民館中心の社会教育の分がどうなっているかは、私が申し上げなくてもおわかりだろうと思いますので、積極的にお取り上げを願いたいと思います。同時に新生活運動を党の方でお取り上げなさっているようでありますし、それを文部省の方でも推奨せられているようでありますが、だんだんとその新生活運動の内容を昨今来聞いて参りますと、単に生活改善にどうもとどまるんじゃないかというふうに私は受け取るのでありますが、もしも文部省でこれを担当推進されていくとするならば、もっと違った面が——新生活運動と銘を打たずとも、社会教育の中でやっていく点があるんじゃないか。われわれが一番危惧するのは、青少年の頽廃的な娯楽あるいは図書出版物、映画演劇、こういうものに基く堕落の傾向であります。これを救うのはやはり明るい健全な文化面を育成していくということになければならぬ。そういう面でより力を入れていただく点があってしかるべきものだと思います。一昨日私どもは歌舞伎の観賞をいたしましたが、私は感心をする前に、果してあの古典芸術を見てわかる人が何人あるだろうか、また見れる者が一体幾ばくあるだろうか、こういうところにも今日の日本の文化運動の貧困さを私は物語るものがあると思う。そうでなくして、だれしも見られ、楽しめるような健全な娯楽、健全な文化というもの、これこそを文部省が新しい社会教育の大きな分野として取り上げていかなければならぬ。この点を大臣が新生活運動と銘を打たずとも、もっと社会教育の面で健全な文化の育成ということに骨を折られるお考えがあるかどうかを最後にお伺いいたしまして、他の問題はまた次回に譲りたいと思います。
  59. 松村謙三

    松村国務大臣 全く御同感でございまして、生活改善だけの面の新生活運動というようなことでは、せっかくやろうというのには現代にふさわしくないと思っております。やはりそれも必要でありますが、それとあわせて今申す文化の面、お考え通りのことを考えておるのでございまして、そういうふうにできますように努力をいたしたいと考えております。  なお給食の問題についてのお話がございましたが、個々のできごとによって責任の所在は違うかもしれませず、決して文部省がその責めを避けるものではありませんで、今後よく注意をいたしたいと思います。  それから先日三宅さんの申された給食と食生活の改善とを結びつけたお考え方は、これはきわめて大切だと思いますので、できるだけ早い機会に、皆さんのこの会で非公式にやっていただきますか、また別の会をつくってやりますか、一つ三宅さん等とも御相談をいたしまして、これは早くやりたいと思っておりますから、それだけを申し上げます。  実は私きょうだいぶ迫っておりますので、これでお許し願えましょうか。
  60. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 文部大臣が今言われましたように参議院予算委員会に出席される時間が来ましたので、大臣に対する質疑はきょうは打ち切りまして、あと続けたいと思います。なお大臣も非常に御多忙でございますけれども、今後はゆっくり当委員会においで下さいまして、委員の方に十分満足いくように御説明されんことを委員長から特にお願い申し上げます。  なお質疑を続けます。小牧次生君。
  61. 小牧次生

    ○小牧委員 大臣がおられませんので、文部事務当局の方にお伺いいたします。三つの点について簡単にお伺いいたします。  まず第一点は、女子教職員の産前産後における補助教員の問題でありますが、御承知通りこれにつきましては産前産後を通じまして十六週間の期間が与えられておるわけでございますが、地方における実情は必ずしもその通りに行われておらないわけでございまして、そのために女子教員は非常な無理をいたしまして、異常産やあるいは産後におけるいろいろ病気を併発いたしましたり、またそのために教育内容が非常に低下せられておるといったようないろいろな欠陥が指摘されておるのが実情であります。従いまして今日における地方自治体の財政の窮迫という面から、そういう女子職員の地位を脅かすというような点も指摘されまして、この問題の合理化のためにはどうしてもその産休の期間補助教員を設置いたしまして、女子教員の身分を保護すると同時に、教育の低下を防ぐという措置が必要であろうと考えますが、この問題に対する御見解をお伺いいたしたいのであります。
  62. 緒方信一

    ○緒方政府委員 女子教員の産休補充の問題でございますか、御指摘の通り労働基準法によって定められております休暇をとることになっておりますけれども地方財政の関係からいたしまして非常に窮迫いたしておりますので、その措置が十分にいっていないという実情があるように承知いたしております。文部省といたしましてもいろいろ操作をいたしておるのでありますが、各府県でもいろいろな工夫をして何とか大体の措置はされておるようでございます。多くの県におきましては何らかの工夫をして、先ほどお話もありましたように、そう女教員がからだの上で無理がいかないようにということと、さらにまた教育に穴があいて教育内容が低下することのないようにということをやられておるようであります。その方法といたしましては、そのつど臨時補充の職員を任用するとか、あるいは定員の中に含めてそれを運用してやるとかいろいろな方法があるようでありますけれども、しかしながら先ほど御指摘もありましたように、地方財政が御承知のような状況でありますので、必ずしも十分でないように考えております。この問題につきましては、私どもといたしましても今後よく地方と連絡をいたしまして、実情に即する方法を考えなければならぬと思っております。ただ申し上げられますことは、先ほど申しましたような手段で、地方におきまして現実に教員を代替のために任用しておるというところにつきましては、国庫負担法によりましてその支出も二分の一は現に国庫が負担をするということになっております。今後私どもも十分研究をいたしていきたいと思います。
  63. 小牧次生

    ○小牧委員 一応わかりましたが、さらに私がお伺いいたしたいのは、今お考えのような点を進めまして、そういった場合に定数のワクのほかにそういう数字を設けるということを法規的にはっきりされる御意思はないかどうか、この点もう一度お伺いいたしたいのであります。
  64. 緒方信一

    ○緒方政府委員 現在の国庫負担金の算定におきましても、その要素は一応含めておるわけであります。しかし教育給与費は府県が第一に負担するわけでございますから、先ほどから申し上げますような実情が起っておることは国も認めております。ただ産休職員だけにつきましてワク外の定員をとるということは、予算の実際上の問題としましてなかなかむずかしい問題であろうと考えております。現在もその要素は含んでおるのであります。実際に地方に置かれた場合には、それに対しましては実績負担の原則に基きまして、義務教育国庫負担法の原則に基きまして半額は国庫が責任を持っておるということは先ほど申し上げた通りでございます。
  65. 小牧次生

    ○小牧委員 それから第二点。御承知通り高等学校の教職員におきましては、恩給の問題についていろいろ不合理な点があるようでございます。その中で二十四年以前のものとそれ以後のもの、これに非常に区切りをつけまして加算の問題で不合理な点があるのでございますが、これについていかなるお考えであるかお伺いいたしたいのであります。
  66. 緒方信一

    ○緒方政府委員 ただいま高等学校の教員につきまして御質疑がございましたけれども、なお今の問題はほかの学校につきましてもいろいろな問題があるのでありますが、文部省といたしましても、従来恩給局等といろいろ折衝いたしておりますが、恩給法の問題は非常にむずかしい問題でございまして、急速に解決はなかなかむずかしい問題でございます。
  67. 内藤誉三郎

    ○内藤説明員 ただいまの問題ですが、二十四年一月十二日に教育公務員特例法が出ましたので、それまでは教員を全部国の官吏として扱っておる、ですから加算が小中学校の場合には百五十分の一、高等学校については三百分の一ついておるだけであります。ところが恩給法の建前から申しまして、官吏はいわゆる国家公務員が対象になりますので、昭和二十四年一月十二日以降は地方公務員になつっしまったのであります、今まで官吏であった者はその恩給法が適用になるのでありますけれども、地方公務員に恩給法の適用をすることが困難なわけでありますから、そこに問題があって、この問題を解決することになると地方公務員をまた国家公務員に戻さなければならぬというような問題とからんできますの、事務的には困難な問題であります。
  68. 小牧次生

    ○小牧委員 第一点と第二点の問題につきましては文部当局の御努力をお願い申し上げたいのであります。  続いて第三点は、御承知通り、今日地方公共団体か赤字で非常に苦しんでおる、これに対処するために地方財政再建促進特別措置法案が準備されておるわけでございますが、これに対するいろいろな問題がたくさんあるわけでございまして、教育財政の面から私は非常に憂慮にたえない点が多々あるわけであります。私地方議会に長く席を持っておりまして、文部省やあるいは自治庁が大蔵省に対して非常に力が弱いのではないかということを常々言われもし、また感じても参ったのでありますが、この法案の内容をいろいろ調べて参ります場合に、さらにこういう傾向が強くなって現われてくるのではなかろうかということを憂慮する一人であります。今日地方財政は非常に窮迫いたしておりますので、これをすみやかに救済いたしまして再建しなければならないということはもとより当然の問題でございますが、そのために府県財政の大きな比重を占める教育財政にしわ寄せが参りまして、現在におきましても教職員の定員の削減、あるいは昇給、昇格の財源の削除とか、あるいは諸手当の減額など、今日地方におきましては、非常に困難な場面に立たされておるのが現状でありますので、さらにこれに拍車をかけまして、その方にしわ寄せが来るのではなかろうかということが憂慮されるのでございます。このような点に関しまして、文部当局におかれましては、この法案との関連において、いかなる見解を持っておられ、いかなる見通しを持っておられるか、お伺いいたしたいのであります。
  69. 緒方信一

    ○緒方政府委員 現在の制度におきましては、申し上げるまでもなく義務教育の教員の給与につきましては都道府県などがこれを負担いたしましてその実支出額の二分の一を義務教育費国庫負担法によって国が負担をする、こういう建前でございます。従いまして、いつも問題になりますことは、国の負担と地方の負担に屈する部分とのバランスがうまく取れるかどうかという問題で、かりに国庫負担金の予算におきまして教育の必要を充足する予算が取れましても、府県の方の負担がそれに伴いませんと、今お話のようにいろいろな支障が起るというような実情でございました。その点がいつも問題になっておるわけでございます。この点は私ども自治庁ともよく相談をいたしまして、実は昨年もよく打ち合せをいたしたのでありますが、国庫負担金の予算と同じ方法で地方財政計画考えてもらいたい、こういうことで両者あわせた財政計画を作るということがその食い違いをなくする方法であろうと考えております。従いまして、三十年度予算はこれからきまるわけでございますが、そのときにおきましては、やはり地方自治庁とよく連絡を取りまして、よく折衝をいたしまして、同じような方法で両者食い違いのないようにいたしたい、その点に努力をいたしたいと思います。基本的な問題はこういう点だろうと思います。  地方財政の再建整備につきましては、根本的に申しますと、地方が給与負担をするのでありますから、地方財政が健全化するということが、その意味から申しましても、非常に望ましいことであろうと思います。しかし地方財政を健全化する方法といたしまして、再建整備の方法につきましていろいろな方法が考えられるわけでございますが、その点につきまして、今御指摘のようないろいろな問題がその過程において起るかと存じます。これはまた、具体的にその法案の審議につきまして、自治庁の方ともよく協力をしていきたい、かように考えております、     —————————————
  70. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 次に文教行政に関連して、昭和三十年度文部省関係予算について説明を聴取いたします。内藤会計課長
  71. 内藤誉三郎

    ○内藤説明員 お手元に配付いたしました「文教予算重点」、これを一応まとめましたので、これについて各項目を御説明申し上げたいと思います。  まず文部省予算のうちで一番大きな地位を占めておりますのは義務教育費の問題でございます。本年度千百九十億のうち、約七百億を占めておるのであります。  その一が人件費の分といたしまして、義務教育費の国庫負担金の給与費でございます。これがただいまお話がありました、教員の俸給の二分の一を負担するという負担金の分であります。来年度は児童、生徒が合せて七十七万ふえますので、この七十七万の児童、生徒に対応する教員の増加を来年度見込んでおるのであります。同時に、ただいまもお話がありました場合の政令一〇六号というのがございまして、富裕な県は一定の限度で国庫負担を打ち切っております。そこでこの富裕県の分のうちで東京、大阪、神奈川のように平衡交付金を一文ももらっていない団体と、比較的富裕団体として、地方税収入と交付税とが半々である場合、その場合少しでも地方税収入が多い県を比較的富裕団体と申しますが、この県が全部ひっかかるのでありまして、文部省といたしましては、比較的富裕団体は政令にひっかけないように、すなわち実績の二分の一を支出できるように要求しておるのであります。この額が相当額に上っております。この点が来年度予算の中で一番大きな問題の一つとなると思います。  次は設備費でございます。設備費のうち、一番目の義務教育費国庫負担金の教材費というのがありますが、これが十四億でございます。これに義務教育費国庫負担法の中で、給与費と並んで、小中学校の理科の設備の関係の図書、その他の教材が含まれておったのですが、(2)と(3)にありますように、学校図書館の方は別に法律ができましたので、そちらの方に三億、それから理科の方は、理科設備について四億、こういうふうに前年度きまったわけであります。そこで義務教育の国庫負担の教材費は、原則として図書館の図書と理科の関係を除きまして、その他の教材費というわけでございます。これを増額するように要求しております。学校図書館も理科も、前年度は十年計画で完成するという計画でございますが、これを五ヵ年で一応完成したいというので、予算要求いたしております。  次に建物の関係でございますが、建物につきましては、特に新制中学は前年度一人当り 〇・七坪でございましたのを、一・〇八坪に基準を引き上げましたので、この分が相当坪数がございます。ことに本年度百万、来年度は七十七万もふえますので、公立女教施設には、特に新制中学老朽校舎戦災復旧、不正常授業解消等、これらに重点を置いておりまして、大体十ヵ年の計画でありますのを、五ヵ年に縮めたい。最後の二部授業等の解消、いわゆる不正常授業の解消につきましては、三ヵ年で解消したいということで、ただいま予算要求をいたしております。  それから義務教育の問題で、人件費、設備費、施設費のほかに、特殊な問題として、ここに三つほど特に掲げてありますが、特殊教育と僻地教育と学校給食、この三つを重点として取り上げております。特殊教育の分につきましては、盲ろう児童の就学奨励法が前国会で成立しましたので、ただいま五千万円組んでおりますのは、盲ろうの児童に教科書を無償でやる分、それから盲ろうの学校給食を、貧困者六割程度に無償でやる分、その他寄宿設備等を見込んで、合せて五千万円、二分の一補助で組んでおるのでございます。来年度は特に児童福祉施設との関連もありまして、生活費一切を見るように考えておるのであります。  その次に特殊教育の場合には、精神薄弱、身体不自由の子供がなお全国に三%ぐらいおると言われておるのですが、この特殊学級をつくるように、その設備費の増額要求をいたしております。それから僻地教育の関係では一億一千万そこに上っておりますが、このうち大きなものは職員の住宅が約一千万、それから一億は、僻地の児童生徒のための集会所が組まれておるのであります。この僻地教育につきましては、特に来年度は教員の住宅を増加することと、僻地の集会室の建築費をふやすこと、さらに設備、無灯部落等が非常に多いのでございますので、自家発電の設備費と、それから救急箱のような医療の関係の設備を充実してやりたいというので、そういうものを新たに要求しておるのであります。  それから次の学校給食ですが、これは小麦の半額とミルクの利子補給合せて十七億五千万円、十七億が小麦の半額、五千万円がミルクの利子補給、この十七億五千万円を食管特別会計の方に繰り入れしておりまして、文部省としてはこの学校給食を推進するために、給食室と給食の設費を補給するということで、五千万円組んでおるのであります。これは特に学校給食を大幅に推進したいという考え方から、現在四百五千万の児童が受けておりますのを、六百万程度に引き上げたいというので、この建物と設計を大幅に増額いたしたい、同時にもう一つ、給食をやる場合に困りますのは、各学校は任意でございますが、やっておる学校につきましては義務的になりますので、生活保護法の適用を受ける者だけではどうしても救われない準保護児童がございまして、これが生活保護を受けておるとほとんど同数くらいございます。これは現職はPTAなり市町村でめんどうをみておりますが、この準保護児童に対しまして無償でできるような措置を講じたい、それに伴う予算を新たに要求しておるのであります。以上が義務教育費の関係では文部省予算重点でございます。  その次が学術振興でございますが、国立学校運営費では現在三百億ほど予算に計上されておりますが、この中で来年特に重点を置いておりますのは、教官研究費系統の増額、学術用の設備の更新充実、それからそのほかに、東京大学における原子核研究所の増設費それから七十四インチの天文台の望遠鏡の継続あるいは生産技術研究所のロケットの研究その他重要な研究がこの中にも含まれておるのであります。  次の科学振興は、科学研究費と在外研究員、民間学術研究団体の補助等を含めまして約十億予算に計上されておりますが、これも先ほど大臣お話がございましたように、特に重点を置いて大幅な増額要求をいたしておるわけであります。  次に国立文教施設でございますが、これは公立文教施設と並んで文部省予算では相当大きな地位を占めておるものでございますが、特に国立の文教施設は、大学病院、研究所、付属学校等を含めまして十九億ではあまりに少いので、とりあえず戦災復旧老朽校舎の改築等緊急に整備をするのを大体百億くらいにまとめまして、その三ヵ年計画要求しようというのでただいま要求しておるわけであります。  それから次の勤労青少年教育でございますが、これは定時制の高等学校と通信教育の充実と青年学級の充実、この二本建てで要求しておりますが、定時制の高等学校及び通信教育につきましては、先般特別法が制定されましたので、ただいまのところ、設備と通信教育に要する経費を約一億ほど計上されておりますが、これも勤労青少年教育に特に重点を置きまして、相当大幅の増額要求をしているのであります。来年度は、できますならば建物の方の補助もいたしたいという考えでただいま折衝しております。  次に青年学級でございますが、青年学級は全国に一万数千ございまして、非常に堅実な歩みを続けておるのですが、この面におきましても補助があまりに少いので行き悩んでおりますから、さらに増額いたしまして青年学級の振興をはかりたい、こういう趣旨でございます。  四番目の産業教育振興でございますが、これは約八億ですが、これは、主として高等学校でございますが、高等学校の産業教育の設備を充実することが第一でございます。第二は、前年度から建物の経費が二億三千万円ほど入っておりますが、建物をさらに整備する。設備の中には水産学校の実習船がやかましく言われておるのであります。そのほかに中学校については、せめて一郡市に一校ずつ指定校を作りたいというので、これも大幅な要求をいたしております。  それから五番目の育英及び学生援護事業でございますが、大体三十九億ほど現在予算に盛っておりますが、育英につきましては、来年度は特に単価の引き上げをいたしたいというので、できますならば人員も増加したいのですが、現在人員については大学二〇%、高等学校か三%でございますが、単価が大学は二千円、高等学校七百円になっておりますので、できるだけ単価の増に重点を置いて予算折衝をしておるわけでございます。  それから次に私学振興でございますが、私学振興につきましては、共済組合に助成するものと、私学振興会に出資金を出すという二つの問題があるわけであります。共済組合につきましては、事務費を全額国が負担しておるのであります。それから同時に長期給付の十分の一を国庫が補助しておりますが、これを健康保険並みに百分の十五に引き上げたいという要求出しておるのであります。できるだけ共済組合の掛金を低くする趣旨ございます。  それから私学振興会の出資金に、今までに約二十四億ほど政府が出資しておりますが、そのうち四億は短期融資でございますので、長期融資は二十億になっております。そこで五十億まで行けば何とか私学で運営できるということになっておりますので、五十億ですから残り三十億になりますが三十億を二ヵ年で十五億ずつを要求したいということで相当これも大幅な要求でありますが、要求しておるのであります。  それから次に共済組合の事業費でございますが、ここにあがっておりますのは国家公務員の学校の先生、文部省の職員を含めた共済組合の国庫負担金でございます。しかし今後できますならば、公立学校の共済組合に対して助成をしたい、昔は義務教育の教員については、府県の負担額の半分を国庫で負担しておったのですが、これが平衡交付金に入ってしまいましたので、各府県の財政調整に非常に困りますので、調整金程度を国から補助していただきたいという要求出したのであります。  八番目の教育委員会の経費ですが、ここに五百万と出ておりますのは、これはほんの事務費でございまして、このほかに地方財政の方で見ておりますのは、特に地教委の分として約三十億ほど地方税制計画に織り込んでおるわけでございます。そこでこのうち地教委で一番弱い点は専任の教育長がいないということもございますので、専任の教育長を国庫補助にしたいという要求をいたしております。  それから社会教育の関係では、来年度は特に図書館、公民館、博物館の施設及び設備の充実、先ほど申しました青年学級の充実、及び松方コレクションの建築、その他社会教育上必要な特に放送、映画、そういう方面に重点を置いて要求いたしております。  それからユネスコと文化財保存事業でございますが、ユネスコについては大体前年度予算を踏襲しまして、ユネスコの国内委員会の協力国に対する助成等が新たに出ておるのであります。文化財保存事業につきましても、大体前年度に比べまして相当大幅な増額要求をいたしておるのであります。以上でございます。
  72. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 予算に関して文部当局が大蔵省と予算折衝をされるためにきょうは都合が悪いそうでございますので、次会に譲ることとして……。
  73. 野原覺

    野原(覺)委員 いろいろ都合があって事務当局としても来年度数字をプリントでお出しになれないかと思いますけれども、来年度の大蔵省に対する要求額は文部委員会くらいにはお示しになられたらどうか、このように思うわけです。文部委員会は超党派的に予算の上においては協力しているわけでありますから、私どもこれから自治庁なり大蔵省にいろいろ要求したいと思う。だから早急に委員長を通じて委員に来年度数字をお示しあらんことを要求いたしておきます。委員長からしかるべく御配慮願います。
  74. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 今の野原君の要求に賛成したいと思いますが、文部当局どうですか。
  75. 内藤誉三郎

    ○内藤説明員 今予算折衝段階ですし、もうそろそろ内示のある段階でございますのでしかも政府部内のことでございますからして、できるだけごかんべんいただきたいのです。ただ文部予算については、野原先生に非常に骨折っていただいておりますので、もう少し固まりかけたところで御相談したいと思いますから、お許しいただきたいと思います。
  76. 佐藤觀次郎

    佐藤委員長 本日はこれにて散会いたします。     午後四時十四分散会