○
柴田(栄)
政府委員 昨年の春、五月十日の突風によりまする
風倒木の
処理を、二十九
年度を
主体として進めて参りました際に、御
承知の
通り九月の二十六日に特に強烈に
北海道地方に襲来いたしました十五
号台風によりまして、ほとんど未
曽有に近い
北海道の
森林の
風倒被害を生じた次第でございまするが、現在までに判明いたしておりまする
風倒被害の概況は、
国有林におきまして十五
号台風によりまするものが、約五千万石、五月
台風の四百七十万石近い量と合計いたしまして五千四百五十万石余という莫大な
風倒被害を生じた次第でございます。その他に
大学演習林あるいは
道有林、
鉄道防雪林、
民有林等を合計いたしますると、十五
号台風によりまして
北海道全道における
森林被害は、
風倒木として五千八百五十余万石という膨大な
被害があった次第でございます。五月
台風と合計いたしますると実に六千三百五十万石余ということに相なっておりまするが、その後の経過あるいは
調査の
進展等につれまして、さらに精査の結果は
相当量の
増加と相なるような
事情にもございまするので、順次的確な
調査をいたしております。これが判明次第また御報告を申し上げたいと存じておりまするが、さしあたり概算いたしましたただいまの
数字の
処理につきまして、直ちに
計画を進めて今日に至っておる次第でございます。何分全道にはわたりまするが、詳細に
調査いたしますと、非常に局地にかたまっての
被害であるという
関係上、極力短時日にこれを
処理いたしたいということで
計画を進めましたが、やはり
最小限度三ヵ年を要するということに相なりまして、一応現在といたしましては、
昭和三十一
年度をもって
処理完了を目途に
計画を進めておる次第でございます。大
部分が
国有林に集中せられておりまする
関係上、
国有林の
処理が順調に進みますれば、ほぼこれが
処理は可能であるという
見通しのもとに、
国有林にその
処理の
計画を集中いたしておる次第でございます。
国有林におきましては、
被害と同時に直ちにこれが
処理に着手いたしまして、二十九
年度におきまして一応千四十万石を
処理するという
計画を立てました。この
計画はまだ正確な集計はいたしておりませんが、ほぼ順調に
完了いたしまして、所によりましては多少より以上に進捗しておるという
事情にございます。さらに三十
年度に二千三百八十万石
程度を
処理することによりまして、三ヵ年間にこれを
完了するという
計画のもとに現在進めておる次第でございます。
従いまして、これが
計画の
概要につきまして簡単に御
説明を申し上げたいと思いますが、これは先ほ
ども申し上げましたように、
場所の
関係からいたしまして、
主体的には
輸送とあわせて
需給の
関係からいたしまして、なかなか
処分が円滑に参らない等との
関係もございまして、先刻御
説明申し上げました
目標数字は大体全体を、二十九
年度に二〇%、三十
年度、三十一
年度にほぼ四〇%ずつという
目標で進めておる次第でございます。これに
関連いたしまして、
北海道におきまして生
立木で売り払いを
予定いたしておりましたものは、極力これを
風倒被害個所に
伐採計画を切りかえまして、全体の
伐採の
調整をするという
方法をとった次第でございます。二十九
年度におきましては約六二%に生
立木処分を圧縮いたした次第でございます。三十
年度におきましてはさらに
圧縮度を強くいたしまして、三四%まで圧縮いたし、三十一
年度におきましても、ほぼ三十
年度と同様ぐらいまでは生
立木売り払いの
計画を圧縮する
予定でございます。しかしながら
地域的な
労務消化あるいは特殊の
事情等の
関係から、完全な切りかえは不可能な面も出て参りまして、以上のような
計画が
現状におきましては
最大の
計画と私
どもは考えております。さらに
風倒木を一時
処理することによりまして、
北海道の
需給とにらみ合せまして、
内地への
消化を
相当に考えられなければならないといたしますると、
内地市場におきまするエゾマツ、
トドマツの
需要に
関連いたしまして、同じような性質の
樹種、すなわちモミ、ツガ、
松等を
主体といたしましては、
需給の
混乱を生ずる危険もございますので、
内地のさような
樹種が
生産されるところにおきましては、同じ生
立木を極力
伐採を抑制いたしまして、全体の
調整を考えた次第でございますが、これまた
地方の特殊の
事情あるいは
労務消化等の
関係、
市場の
情勢等をにらみ合せまして、三十
年度におきましては百三十万石だけ伐出をいたすことにいたしたのでございます。三十一
年度におきましてもほぼ同様の
措置を講ずる
予定をいたしております。かようにいたしまして全体を通じまして
風害木、生
立木を合せまして
伐採関係を考えてみますと、二十九
年度におきましては
広葉樹は大体過不足はございませんが、
針葉樹用材を総計いたしまして、約四百万石の
増加ということに相なるのでございます。さらに三十
年度におきましては、
針葉樹におきまして
用材九百四十万石、
広葉樹用材百万石、合計いたしまして千四十万石の
増加、三十一
年度ごおきましてもほぼ同様の
見込みでございますが、これで
北海道について考えますると、
北海道全体の
国有林の
伐採量の
風害木の占める量は、約半分、五二%ということに相なる次第でございます。それが三十
年度におきましては
風害木がほとんど
主体になりまして、八〇%は
風害木処理によって当てられる、こういうことに相なる次第でございます。そこでこれが伐
出処分の
方法でございまするが、従来
北海道は比較的直営
伐採売り払いが少く、
立木売り払いが多かったのでございますが、何といたしましてもこの膨大な
生産を一時にいたすということになりますと、
需給調整上の問題とかあるいは伐出のための
資金融通の
関係等からいたしまして、極力国費をもって
利用可能の
程度まで多く進めなければならないという
考え方からいたしまして、二十九
年度におきましても、当初
計画に比較いたしまして、
立木処分を
相当減少いたしまして、
直営生産に切りかえて参ったのであります。三十
年度におきましてはさらに
直営生産の量を
増加する、三十一
年度におきましても一そう
増加をはかる、大体
立木処分量は不変で、
増加いたすものは
直営生産によって売り払いをいたすという方針で進めて参ることに
計画をいたしておる次第でございます。
これに
関連いたしまして、
北海道内におきまする
木材の
需給の
見通しを考えてみますと、
北海道内におきまする三十
年度の
需給は、大体におきまして
需要量が
針葉樹におきましては
各種用途別の
必要量を集計いたしまして約千四十万石前後、
広葉樹で七百二十万石前後、合計いたしまして千七百五十六万一千石という
需給推算の
数字を得ておるのでございます。これに対しまして、
風倒木処理によります
国有林の
供給予定量が
針葉樹用材におきまして約千三百七十万石、
広葉樹用材におきましては約七百万石、合計いたしまして二千六十四万
有余ということに相なるのでございます。かように
需給を推計いたしますと、三十
年度におきまして三百三十一万
有余という
余剰の材を生ずる次第でございます。これをそのまま
北海道に放出いたしますれば、必ず大きな
混乱を生ずることは当然でございますので、これを極力
需給調整に
利用いたし、
価格等も
内地、
北海道との
混乱を避け、あわせて合理的な
利用を考えるという見地からいたしまして三百三十一万
有余の
処置を考えたのでございます。そこで
風倒木処理に伴いまして、将来資材の急激な
減少と年伐量の急激な
減少に対応いたしまして
需給の
調整をするために極力
道内の貯蔵をも考えるということを第一段として
計画いたした次第でございます。
そこで
長期にわたりまして貯材いたしますためには、腐朽あるいは
虫害等を防止できるということが最も必要な
観点でございますから、そのほぼ完全な
方法といたしまして
水中貯材という
方法が現在におきまして最も完全である、しかしながら
水畜場等の
関係からいたしましてなかなか大きな量はいろいな
観点から困難なのでございますが、極力いろいろな障害を解決いたしまして、三十
年度に一応
水中貯材を
計画いたしておりますのが五十三万石でございます。それから
陸上貯木場の売り払いを考えまして循環を考えつつ、なおやや
長期にわたって
貯材可能な
貯木場のフルの
利用によりまして百十三万七千石、合計いたしまして甘六十六万七千石というものを後
年度のために
道内に貯蔵いたしたいという
計画をいたしておるのであります。さらに残りの約半分の百六十五万石につきましては、
内地への
輸送販売によりまして
消化をいたしたい、こういうことで
輸送販売を
計画いたしておる次第でございます。すでに実行に着手いたしておりまするが、現在の
市況、あるいはエゾ、
トドマツに対します
内地の従来の
市場あるいは
需要の
趨勢等からいたしまして、その
用途、販路の急激な拡張はなかなか困難でございます。これらを勘案いたしまして、現在、一応九月までに
輸送販売をいたす
目標を八十万石といたしまして、各
需要地を当りまして具体的に売り払いの
契約を進めておる次第でございます。
下半期におきましても、できるだけ
輸送販売をいたしたいのでございますが、
下半期には
海上輸送が
相当困難な港も出て参りますので、現在におきましては、
需要の
趨勢とにらみ合せまして、下期は六十万石を
予定いたし、さらに来
年度へのつなきとして
港頭貯材を三十五万石ということでこれが
消化を
計画いたしておる次第でございます。この
計画に対しまして、現在まで進んでおります具体的な
輸送販売予定は、
場所といたしましては、大体
市場の
考え方は、その
需要地におきまして加工
消化するということを
目標といたしまして、製品によってさらに大
市場への
輸送販売ということは一応極力考えないようにということで
相談をいたしました。これは一時に大
市場に
製材製品等が集中することによりまして、
需給の
混乱を生じないようにという
考え方で実は進めた次第でございます。そこで
対象地域といたしましては、現在、
日本海岸では青森、秋田、山形県の酒田、新潟、伏木、富山、舞鶴、それから
太平洋岸では満水、名古屋、和歌山、塩釜、
東京横浜、大阪、ここを
対象として一応御
相談をいたしております
数字が七十六万九千石でございます。これは国におきまして
着港まで
輸送いたしまして、
舷側渡しということで
契約を進めることにいたしております。すでに四、五月分といたしましての約十七万石につきましては、
三井船舶、飯野海運、川崎汽船、
日東商船の四社に
指名競争入札を数回繰返した結果、落札いたしませんので、さらに最も近い会社と折衝を続けまして、今日四、五月分が決定して
輸送に入っておる次第でございます。
この際
市場の
情勢を簡単に申し上げますと、極端な
金詰まりと
市況の不活発のために、すでに船の入りました
地方におきましては、その
地方の
市場を
相当圧迫いたしており、将来を見越して必要以上に弱気になっているという
情勢がございます。このままで参りますと後半期に
相当混乱が予想されるのであります。
市場の
消化の
情勢とあわせまして、買い受けに対しまする
資金の
保証等の
関係からいたしまして、
金詰まりが非常に深刻に現われて来ておるので、今後の
処理はなかなか楽観を許さない実情でございます。
一面新しい
需要の動向についても、対処する
考え方は十分いたしておるのであります。その
一つといたしまして、三十
年度特に国が大きく取り上げられております
住宅対策との
関連でございますが、今日約四十二万戸の
住宅建設計画を見まして、これに要します総量は約千四百万石に相なるのでございますが、そのうちすでに
一般建築用として従来から千二百万石
程度考えられておるのであります。今日まだ具体的な
計画までは入りませんが、あるいは
公党住宅の
増加あるいは
公社住宅の
増等を考えますと、一応増として
予定せられますものは二百十七万石
程度というふうに考えておるのであります。その後さらに
住宅建設計画が進展し、あるいは
増加されまして、
風倒木がもし使えるようになるといたしますれば、先刻申し上げました
内地輸送の現在の
計画量にあわせまして、
道内に貯蔵いたそうという
計画のものをただちにこれに振り向けることができるのであります。さらに現在の
計画では、来
年度に
生産を
完了しようというので
伐採に着手いたして、山元で進行いたしておりますものが約三百万石になっておりますので、繰り上げて
需要が出るということになりますれば、本
年度において
最大六百三十万石
余需要に応じ得るという切りかえ態勢をとっておることも御了承を願いたいと思うのでございます。
なお
風倒木処理に
関連して、私
どもの最も大きな考慮を要する問題は当面
虫害の
対策でございますが、
風倒被害地域は、現在
調査いたしておりますところでは約二十一万
町歩にわたっておるのでございます。一部
生産を進めますと同時に、できる限り全般にわたって
虫害防除を施す
計画をいたしておりますが、何といたしましても特殊な
地形等の
関係上、全
地域に
虫害処理の困難な場合もありまして、現在は約百十七万六千
町歩にわたり、主として人力による
防虫剤の散布を
計画いたしております。さらに、なかなか人の入り切れないような
地域に対しましては、飛行機、
ヘリコプター等を
利用いたしまして、極力
虫害防除に努力する考えでございまして、
予算といたしまして二億五千六百万円を現在計上いたしております。もうすでにこれが
防除には着手いたして、現在ではやや順調に進んでおるという
状況でございます。
また、現在最も神経をとがらせておりまするのは、御
承知の
通り北海道は
降雪期から急激に
乾燥期に入ります
関係上、
融雪時期の
森林火災は最も大きな
森林被害として、常々万全の
対策を講じて参っておりまするが、
風害被害に伴いまして、
末木枝条等が集積する
関係上、一
たん火を起しますれば、その
被害はちょっと予測できないような
状況も考えられます。従って、林内の
火気取締りは、場合によりましては、
公営地区等に関しましても、節を限って入山を禁止するというような
処置まで、
警察当局等と連絡をとりまして現在徹底的な
処置を講じておる次第でございます。現在まで、幸いにほぼ万全な
対策が講ぜられて参っておるというふうに考えておる次第でございます。また、
地域によりましては、非常に大面積に集中して
倒木を起しました結果、
融雪期におきまする
水害等も非常な危険がございましたので、各
河川支流、
渓沢等の
融雪水の流下に対しましては、極力これを円滑にいたすように、
相当事前に
処置を講じまして、今日まで
水害被害の
防除は大体でき得たというふうに考えておる次第でございます。何分にいたしましても、未
曽有の大
被害と、
北海道を
中心といたしまして、全国的に
木材、
薪炭等、
森林資源の枯渇の今日、これが
利用の
最大を期するとともに、
跡地の更新につきましても万全を期さなければならぬ、かように考えて、総動員をいたしまして、
職員等も
内地から一時的に
北海道に
相当配置転換をいたし、
労務につきましても、東北を
中心として一時的な
配置転換を考えて
処理をいたしております。さらに地元の
余剰労力あるいは
炭鉱労務者等にも呼びかけまして、現在のところ、仕事の面では大体支障なく取り迎んでおるというつもりでおりますることを御報告申し上げる次第でございます。