○大森
説明員 御要求がございましたので、私から
監察部で
監察をいたしました結果につきまして、御
報告を申し上げたいと思います。その前にお断わりをしておきたいのでありますが、実は
農業共済制度の問題につきましては、農林省から地方に流れております国費の中でも、
相当大きな部分を占めておる重要な施設でございまするし、なおその運用につきまして、とかくのことがあるやに聞いておりましたので、実は昨年四月から九月にわたりまして、私
どもの方の
名古屋管区監察局と岐阜の地方
監察局で、とりあえず両県の
監察をいたしたのであります。その結果、一応いろいろの
問題点が出ましたので、これを取りまとめて実は農林省の方へ
お話をしようかというふうに考えたのであります。本来私の方の仕事のやり方は、
監察をやりまして、いろいろ重要な
改善点を発見いたしましたならば、これを主務官庁の方に勧告するという建前になっておりますので、名古屋、岐阜の問題につきましても勧告をすべきか、一応考えたのでございます。しかしながら何分にも両県のことでございまして、この
制度は
全国にわたっておりますので、
全国的のいろいろの
事情を
調査をいたしませんと、その両県のみの結果から一応の
結論なりあるいは勧告の
事項をきめるということは、不適当ではないだろうかというふうなことを考えまして、本年の二月から
全国の
監察局を使いまして
調査をいたしておるのであります。その結果が近々中央の方にも参ることになっております。これが取りまとめができましたならば、
全国的の
資料に基いた一応の
監察局の勧告の内容が決定し得るのであろうと思っておるのでありますが、しかし御要求もございますので、両県の
監察をいたしました結果の
問題点のみを、一応中間的にこの席で
お話をしておきたいと思うのであります。
監察をいたしました対象は、
愛知県におきましては県庁と
共済組合連合会の本部、これはもちろんでありますが、支部を十七、市町村
農業共済組合を四十九、それから市町村の
部落代表者あるいは農家、こういうものを百四十七名、それから岐阜県におきましては支部を五、市町村
農業共済組合を三十三、農家を百、大体この程度の
監察をいたしたのであります。この
監察で重点的に考えましたのは、
制度は一応りっぱな
制度があるのでございますが、これが
末端の
共済組合では、実際どのような
災害補償事務を行なっているのだろうか、また農村ではこの
災害補償制度をどういうふうに取り入れているのだろうかというふうな実態を把握するということに重点を置いてやったのであります。従いまして、そのためには県内のできるだけ多くの支部、
組合に対して
調査を実施するという方法をとったのであります。しかしながら
共済組合は御
承知のように、農産物の共済、蚕繭の共済、家畜の共済その他任意共済等も含んでいるのでございまして、こういうものの全部の
調査をいたせばよかったのでございますが、人員の関係あるいは経費その他時間等の関係もございましたので、結局
昭和二十八年産の
水稲と麦に限定をいたしまして、そのうちでも
水稲に重点を置いて
監察をするという結果になっているのであります。その点を御了承願います。
監察結果の
問題点として、
調査の結果出て参りましたことは、第一に組織を
指導監督、
運営状況についての問題であります。
結論だけを申し上げますが、県の
指導監督は、私たちが
調査した結果から見ますと、必ずしも徹底しているとは認められないのであります。両県でも
愛知県の方はある程度よくいっているようでありますが、岐阜県の方はややこれに比較しては劣っているというふうな結果が出ております。
連合会の本部と支部でありますが、ともに
損害評価委員会の組織は、非常に形式的なものになっておるのであります。なおその上本部からの支部並びに
末端組合に対する
指導も、必ずしも活発に行われているとはいえないというふうな、一応
結論的な見方が出ております。
次に
末端の
共済組合でございますが、この
末端の
共済組合長には、
農協の
組合長、市町村長の兼務が問題に多いのであります。この兼務の問題につきましては、一がいにその兼務が適当であるとか不適当であるという
結論は出し得ないと思いますが、この兼務に従っていろいろの弊害も認められるのでありまして、一つの
問題点であることには間違いないと思うのであります。
次に
組合職員の素質なりあるいは職員に対する給与なりについて考えてみますと、素質は必ずしも非常に良好であるとも申せられませんし、また給与の点におきましても、
組合によって非常に違っているのでありまして、実に種々雑多であります。かような点にも問題があるのじゃないかと考えております。
次に
組合の
損害評価委員の人員の構成でございますが、これは
調査の結果によりますと、最少四名、一番多いのでは七十五名、こういうふうな大きな差があります。また
部落の利益を
代表する
部落の生産
組合長、
実行組合等でありますが、これが問題になっている場合もかなり見受けられるのであります。これも先ほどいろいろ御議論がありましたように、問題になる点ではないかと思うのであります。
次は共済引き受けの
状況でございますが、
水稲につきましては、引き受け面積は、ほとんどこの引き受けの場合に実態
調査というものをいたしておらないようであります。その結果実態と引き受けの帳簿上の面積というものは、必ずしも一致していない。その結果、結果的のことでございますが、供出対象面積と大体一致しているか、あるいはそれに接近した数字で一応帳簿上きめているのじゃないかというふうな点が見られるのであります。また
連合会に
報告いたします引き受け面積と実際の
組合の引き受け面積が相違をしておるというふうな、これは一つのずさんな事務の例かもしれませんが、さような例も多々見受けられたのであります。
次に基準収穫量でございますが、これは農林省でおきめになっております評価要領というものにも示されておるのでありまして、その
通りしなければならないのでありますが、これを正確に算出し、決定しておるという事例はきわめて少いのじゃないか。多くは県反収に合うように逆算によって算出しておるのじゃないかというふうなことが認められたのであります。単に形式的な数字が掲げてあるというふうな結果になるのじゃないかと考えておるのであります。
次は、共済
掛金、賦課金の徴収の
状況であります。この徴収につきましては、本来は告知書によって各
組合員から徴収するのが建前でございますが、こういうふうな正式の方法をとっておるものはきわめて少い。大部分は
組合が
部落を通じまして共済
掛金、賦課金を徴収しておる。本人の方はあまり
御存じないというふうな実情がかなり見受けられたのであります。また
組合で前年度の
共済金から差し引いて共済
掛金なり賦課金を取っておる。また
組合で立てかえまして
連合会に保険
掛金を納入しておるというふうなものが多かったのであります。これは先ほど
検査院から
お話になったことと大体同じような結果が出ております。
次は、
損害評価の実施の
状況でございますが、
水稲につきましては、
連合会本部は、農林省の
査定目標のワク内で支部別に
査定指示を与えております。結果的には、
連合会の
損害評価は、
末端の農家からの順次積み上げによるものではなくて、逆に
政府の方からワクが与えられまして、そのワクにはめ込んで下までずっと及んできておるというふうな形が多いのであります。考え方によれば何だか一種の補助金のような
運営に堕しておるというふうな印象も受けたのであります。今申し上げましたのは
水稲でございますが、麦につきましても大体同じような結果でございます。その結果、
水稲、麦ともに
連合会の支部段階では、多少の例外はございますが、本部の指示
通りの評価を行なっておりまして、独自性というものがほとんど認められておりませんが、ただ町村間の均衡ということについては、供出割当等をかなり考慮に入れられまして、いろいろな考慮をお与えになっておるという
あとが多分に見られるのであります。それで適正に
損害評価を実施したという例は、
調査いたしました結果から見ますと非常に少いのでありまして、一応これを数字で申し上げますと、
水稲では
愛知で二九%、岐阜では一二%、この程度がまあ適正な
損害評価を実施しておるのじゃないか。それから麦につきましては、
愛知が二〇%、岐阜が九%、大体この程度の
組合が適正な
損害評価を実施しておったようだと結果的には判断されたのであります。また
組合の
損害評価の野帳は非常に信用がないと申しますか、
連合会の決定に合せて
あとから作られたという形が多いようでありまして、中には原始記録もないようなものが
相当にあったようであります。かようないろいろな事例が
調査の結果出ておるのであります。
なお、評価に
関連いたしまして、不適正な事例といたしましては、
損害評価なんかも全然行なっておる形跡がないというふうな
組合が、麦について
愛知では三件、岐阜では二件発見されております。また
連合会の決定を有利にするために、
組合の評価を故意に
水増しをしておるのではないか、先ほ
どもいろいろ御議論がありましたが、そういうふうに認められたものが
水稲におきましては
愛知で二件、岐阜で三件ありました。麦では
愛知二件、岐阜三件、こういうものがそれに当るのじゃないかというふうに考えておるのであります。また
連合会の決定に合せまして
組合の評価を過大に
水増しをしたと認められるようなものもございまして、これらはいずれも評価に関する不適正な事例ではないかと考えておるのであります。
次は、
共済金の
支払い状況でございますが、共通的の問題といたしましては、
組合員に対する
支払いの公示というようなものはほとんど行われておらない。非常に不徹底である。多くは
組合が
部落を通じて
共済金を支払っておるというふうな
事情でありまして、この
組合の
支払いの公示なんかはほとんど無視せられておるというような事例があります。また
組合の農家に対します
支払いは非常に時期がおくれておるというふうなことが一般的に認められたのでありますが、またそのほかに
共済金の
支払いにつきましては、
共済金を反別割りの評価書
通り支払っていない。一応評価書によって
組合に
共済金が回って参りますが、それとは全然別個の標準で
組合に払っておるのではないかというふうな事例が認められたのであります。これを
調査した結果数字的に申しますと、
愛知では
水稲二十三件、四七%、麦二十六件、五四%、これらがどうも評価書と実際支払ったものが違っておるのじゃないかという結果が出てくるわけであります。岐阜では
水稲二十四
組合、七二%、麦十九
組合、五九%、こういうふうな結果が出ております。このような場合には大部分のものが二重帳簿を作っておりますので、表面から見ますと非常にきれいになっておりますが、実際は二重帳簿なんかを作ってこれを隠蔽しておるというようなところが多いのではないかというような
感じを受けております。また
共済金から、
掛金でありますとか賦課金、寄付金、
部落費等を取りまして、これを別の用途に使用するために、
掛金、賦課金、寄付金等の差し引きを行なった
組合、
部落がかなり多いのであります。全然
組合のことには関係のないようなことにその金を使っておるというような事例も出ております。まあ大体
調査をいたしました結果、
問題点と見られるようなものは以上のようなもので、ございまして、これは今
全国的に
調査をいたしておりますので、あるいは
全国的の
調査の結果は、また広範囲の
問題点があるいは出るのではないかというようなことも考えております。
最後に、これらの
調査を通じまして一応考えられることを申し上げておきたいのでありますが、この
調査は
愛知、岐阜の両県のみに実施したものでございますから、とらえました事象は直ちに
全国的に普遍性があるものだというふうに
結論するのはいささかはやまっておるのではないかと考えるのでありますが、これらのうち、単に両県のみの局地的のものとして片づけられないものがあるんじゃないかということを
調査の結果印象を受け、
感じさせられたのであります。
調査によりますと、引き受けから
共済金の
支払いに至るまでの過程におきまして、不適正と指摘し得る事例は少くなかったのであります。
共済金の総花的な配分でございますとか、あるいは他目的使用、またこれら不当処理を正常化するために擬装になみなみならぬ苦心を払っておるという
点等が、共済
制度の趣旨徹底、完全実施はまだなおいまだしというような
感じを与えることになってくるであろうと思うのであります。特に
共済金の配分に関します不当処理は、重要な問題と思われるのでありますが、これらの問題はいろいろと複雑な原因があるでありましょう。ある
組合では、規定
通り組合で配分を実施しようといたしましても、農家の
部落代表から反対をされまして、やむを得ず別途の方法で
共済金を配分したというようなことを申しております
組合長もあるのであります。この場合に考えられますことは、農家の方では
共済金の
制度は、これは共済と申しますが、
保険制度よりは補助金なんだ、当然均等にもらう権利があるのではないかというようなことを考えておられるんじゃないかという印象を受けたのであります。本
制度の趣旨の達成、完全な
運営というものがいかに困難であるかということが、今日までの
調査を通じまして非常に痛感をしたのでありますが、それだけに農林省から
末端組合に対する監督を厳重にするということ、あるいは場合によっては
制度も
相当考慮しなければならぬじゃないかというような点も一応今までのところ中間的に考えておりますが、まだ最終的にその
結論を申し上げる段階に至っていないということを御了承願いたいと思います。
私の御
報告は以上の
通りであります。