○
原田政府委員 それでは御
指名によりまして
畜産に関しまする当面の諸問題につきましてあらましを申し
上げたいと思います。
まず第一番に
酪農の
事情、それからこれに関連いたしまして
乳価の問題、その
事情等につきまして申し
上げたいと存じます。
お手元にお配りいたしました
酪農に関しまする
飼料並びにこれに関連しました
えさでありますとか、その他の
価格の
状況等の
資料をごらんいただきますと、まず
最初の
ページに
乳牛頭数、
牛乳生産量及び
牛乳の
用途別消費量の
数字がございます。
乳牛の
頭数はごらんのように飼育の
頭数が二十七年に比較いたしましても、年を追いまして急激に
増加して参りまして、三十年におきましてはまだこれは
統計資料がまとまっておりませんので、推定でございますが、四十万頭ぐらいになるのではなかろうかというふうに一応推定されておるわけでございます。その隣りの
搾乳牛の
頭数でございますが、これも
増加して参っておりますが、特に
昭和二十九年におきましては非常にこの
搾乳牛の
頭数が
増加いたしまして、その結果次の欄にございます
牛乳の
生産量というものが四百九十五万石というような急激な
増加を示して参った次第でございます。この
関係が、昨年の夏以来かような
生産の急激な
増加というものに対しまして、
需要消費の方が、必ずしもこれと同
程度の勢いをもって
増加することにならなかったために、
需要供給の
関係の
均衡が破れて参りまして、そのために急激に
乳製品並びに
乳価の
下落という
現象が生じて参った次第でございます。
次の
ページをごらんいただきますと、これは
酪農関係物資の
価格の推移でございまして、まず
農乳価格一升当りというものの変遷がここに現われておりまして、ただいま申し
上げましたような
需給の
影響のために、昨年の五、六月ごろを頂点といたしまして、
市乳原料用と
加工用の
平均乳価が六十円から急激に下って参りまして、三十年の二月にはその
平均が四十九円という
状態になっておるわけでございます。これに比べまして、
牛乳の
小売価格の方は、必ずしも
原料乳価と同じ歩調をもって下っておらないというところにいろいろな問題を含んでおるというふうに
考えられるわけでございます。
その次に
バターの
小売価格、ふすまの
卸売価格というものが並べてございますが、
バターにつきましては、やはり昨年の
原料乳価の
下落並びに
乳製品に対する
需給の不
均衡というものがだんだん
影響して参りまして、
価格の
下落という
傾向が一応は出ておりますが、これまた必ずしも
原料乳の
値段の
下落の
傾向と一致しておらないという
傾向が現われておるわけでございます。次にふすまの
卸売価格でございますが、これにつきましては、
牛乳並びに
乳製品の
需給なり
価格なりというものとは
関係なく、ふすまという
えさ資源の
需給関係の現われといたしまして、
乳製品、
乳価等が下る
傾向を示しておりますさ中に、逆にその
価格が上って参るというような
現象を呈しておる次第でございます。
それからその次の欄に
乳牛の
購入価格が示してございまして、これはやはり
牛乳価格の
下落というものがだんだん響いて参りまして、漸次
価格の
下落の
傾向を示しておる次第でございます。
その次の
ページをごらんいただきますと、
飼料需給安定法による
飼料需給計画及び
実績というもの、これは
数字そのままでございますが、ここに二十八
年度、九
年度、三十
年度、三十
年度は
計画だけでございますが、一応表にしてございます。これにつきましては、後ほど
えさの問題の際にもう少し
内容的に申し
上げたいと思います。
それから一番最後の表に
主要飼料の
小売価格というものの主要な品目につきまして、最高、最低、
平均とまとめてみた次第でございます。かような計数から見ましても現われておりますように、現在の
日本の
酪農業というものは、一方において
需給の
均衡の問題から
価格の
下落という大問題にぶつかっておる。また他方、
えさの問題につきましては、これは
えさの
需給関係の現われといたしまして、必ずしも
牛乳の
価格の動きとマッチしておらない、場合によりましては逆に突き
上げて参るというような
現象さえ起きておる
状況でございますので、この
酪農業というものを今後いかに持っていくかということにつきましては、非常に大きな問題をかかえておる次第でございます。私
どもといたしましては、
酪農業のそういう苦しい
状態につきてまして、これに対して
施策を立てなければならぬということはもとよりでございますが、大きな方向といたしまして、
日本の
酪農業は今後どうあるべきかということにつきましても、十分に
考えなければならないというふうに思っておる次第でございます。
日本の
酪農業というものにつきましてよく
考えてみますると、大体
終戦後におきまして、
日本の
食糧事情というものを
考え、また
日本の
農業経営というものを
考え、また国民の
保健衛生という点から
考えまして、
酪農業が伸びる必要があるという
考え方から、急速にこれが伸びて参ったのでございますが、かような
一つのピンチにぶつかった
原因がやはりあるようでございまして、それは
日本の
酪農業というものが、大体の
傾向といたしまして
購入飼料というものに依存する
程度が相当高いということが
一つの大きなポイントであった。また
酪農業の
分布の
状態と申しますか、
乳牛の
分布の
状態が非常に
ばらばらになり、稀薄になっておる、これが
牛乳の
生産なり
処理、
加工なりあるいは
販売なりの面に一種の合理的でない要素を持っておる、これがいろいろな場合に不利な
原因になっておるというふうに
考えられるわけでございまして、これらの点を是正いたしますために、昨年国会で御審議をいただきました
酪農振興法という法律が制定になり、そのねらいの大きな
一つといたしまして、この
日本の
酪農業の
生産基盤を確立する面に向って
施策が講ぜられるということになっておるわけでございます。その
行き方の中心的な問題といたしまして、
集約酪農地域というものを設定いたしまして、そこに
乳牛を集約的に入れて参るということ、並びに
経営面の
合理化という
見地で、あるいは草地の
改良事業なりあるいはさらに
自給飼料の
増産の点なり、こういう点につきまして、国といたしまして
財政投融資というものをできるだけこれに集中的につぎ込んで、この
地域内における
酪農業を
合理化して、しっかりした
基盤の上に育て
上げるという
考え方を持っておるわけでございます。でありますが、
次にこの
集約酪農地域にかかわりませず、
飼料の
問題一般といたしまして、申し
上げたような
購入飼料の
依存度というものをできるだけ少くして、
自給飼料というものに重点を置くように持っていかなければなりませんので、その線に沿いまして
自給飼料の
増産という
施策を種々
考えておるわけでございまして、さような
行き方によりまして、
生産の
条件のうちの非常に重要な
飼料問題について
打開策を講じていきたい。でありますが、
自給飼料の問題だけでは片づきませんので、さらに
購入飼料の問題につきましても、
飼料需給安定法の適切な運用によりまして
購入飼料の
需給が安定し、従ってこれに伴って
価格がその
需給に応じ、安定した姿になるような
努力を別途いたしておる次第でございます。
さような
生産面につきまするいろいろな
努力をいたしますのと並行いたしまして、
流通消費の面につきましてもいろいろ
努力をいたさなければならない問題があるのではないか、かように
考えておる次第でございまして、まず
牛乳の
生産者の
販売の面につきましても、
酪農振興法によりまして
牛乳取引の
公正化をはかる
措置として
種々規定を設けられておるわけでございますが、さらに実体的に
牛乳の
販売組織というものを
共同販売の形にできるだけ強く持っていきまして、この
共同販売の
組織の力によりまして
原料乳の
販売価格その他の
取引条件を適正なものに引きつけて参る、こういう
努力が要るのではないか、かように
考えまして、その線に沿って指導を行なって参りたいというふうに
考えておる次第でございます。さらに
原料乳を受け入れました
乳業者側の面につきましても、その
処理なり
加工の
合理化という問題が残されておりまして、申し
上げましたように、
終戦後急速に発達して参りました
乳業のことでありますので、その
経営の規模なり
経営の
内容なりあるいは
施設の点なりあるいは
末端の小売
組織なり、それらの点につきまして、このままで果していいだろうか、いやこのままでは合理的じゃないのじゃないだろうかと
考えられる点がいろいろございますので、今後におきましては、こういう問題につきましても
合理化ということについて
相当努力をしなければならないではないかというように
考えておる次第でございます。
さような基本的な問題がいろいろあるわけでございますが、
現実の問題といたしまして、
先ほども申し
上げましたような
需給の不
均衡というものに対してどういうふうに対処して参るかということについて
研究をいたしました結果、まず第一番に、どうしても
牛乳なり
乳製品の
需要の
増大、
消費の
増大ということに力を入れることが効果的であるという
考えから、昨年の
年度途中におきまして、
牛乳の
消費の増進の一方法といたしまして
牛乳の
集団飲用の
促進ということを
考えた次第でございまして、
牛乳の
消費そのものを
個々ばらばらの
消費の
状態に置きました場合よりは、
学校なり病院なりあるいは官庁、
会社等のオフィスなどにおきまして集団的に
牛乳を飲むという面を
促進することによりまして、相当
消費が伸びるのではないかという
考えでございます。ただその場合に、やはりできるだけ
消費者価格というものが
合理化されることが必要であって、その
合理化されることと結びつきまして、
集団飲用というものがさらに
促進されるのではないかという
考えから、この
集団飲用というものと結びつけまして、
農業協同組合が簡易な
牛乳の
処理施設を持つことが適当であり、またその
処理施設をつくります場合に、国がこれに対して財政的な援助をすることが適切であるという
見地から、
財政当局とも打ち合せをいたしまして、九十二カ所分の
補助金を計上いたしまして、これが
実現に努めた次第でございます。ただこの場合に、簡易な
処理施設というものの
内容につきまして
厚生省方面の
食品衛生の
見地との調整の問題が起きて参りますので、これにつきましては、また別途適当な機会に詳細な
事情を申し
上げたいと
考えておる次第でございますが、一応そういうような
行き方でこの
施策を推進いたしました結果、
経費の成り立ちました時期が多少遅れましたこと、その他のために、九十二カ所全部を消化することは困難でございまして、結局
実績といたしましては、六十七カ所
程度に終ったのでございますが、ともかくもさような経過をたどっておるわけでございます。三十
年度におきましても、引き続きかような
集団飲用促進の
施設を補助することが適当であると
考えまして、二百七十六ヵ所分を
予算案に計上いたして、さらに本年はこの点を力強く推進して参りたいというふうに
考えておる次第でございます。
次に、
牛乳直接の問題と少し離れますが、
乳製品の面におきましても、
乳製品の種類によりましていろいろ
事情は異なっておるのでございますが、特に大
カンの
加糖練乳というものが品のさばきが円滑でありませんでしたために、これが相当市況を圧迫することになり、ひいては
原料乳価というものに
悪影響を及ぼす
状態になっておりましたので、この問題につきましていろいろ
打開策を
研究いたしたのでございますが、結局のところともかくも滞貨を一応
一般のマーケットからいわゆるたな
上げをする必要があるという
考え方から、特に急速にその
実現をはかる必要がありましたので、大
カン練乳約十万
カンにつきまして農林中金から二億円の融資を受け得る道を開いたのでございますが、いろいろな
条件の
影響を受けまして、
現実には十万
カンのたな
上げという
措置は
実現いたさなかったのでございます。しかしながらともあれさようなたな
上げの道を開くということは一応やってみたわけでございます。
次に
乳製品の
需要の
増大の問題といたしまして、大きく取り
上げなければならないというふうに言われました点は、
学校給食というものに対しまして
乳製品、特に
脱脂粉乳を向ける必要があるということが強く言われましてこの点について
文部当局ともいろいろ折衝をいたしました結果、
国産品の新しい
用途といたしましてまことに適切であるという
考え方から、三十
年度予算にこの
国産の
脱脂粉乳の
価格差の
補助金を六千六百万円計上をみるに至った次第でございまして、この点につきましては今後漸次
学校給食に対しまして
国産の
乳製品、特に
脱脂粉乳というものを漸次拡張して参ることが適当ではないか、かように
考えておる次第でございます。
以上のような
流通消費面につきまして
措置を講じて参っておるのでございますが、しからばこの
程度の
措置で
日本の
酪農業の合理的な
振興をはかる上において十分であるかと申しますと、決してさようには言えないのでございまして、今まで申し
上げましたような具体的な
措置は、その当時の
現実の
状況に即応して、ともかくも
打開の道を講じたという
状態でございますので、さらに突き進んで基本的な
施策を持たなければならないというふうに
考えておるのでございます。この場合この基本的な
施策というものにつきましては、他の
農産物等と比較いたしまして、
牛乳なり
乳製品なりというものにつきましてはいろいろ特殊な
事情、特殊な点がございますので、あらゆる角度から十分に検討を加えまして、これならやっていけるという具体的な
施策を握るために、なお
相当研究を進めなければならないという
状況になっておりますので、私
どもといたしましても、私
どもだけの知識にたよらないで、
関係各
方面の有識者の御
意見等を十分に伺いつつ、
目下研究を進めておるという
状況でございます。
以上
酪農に関連いたしました
事情並びにこれに対しまして私
どものとりました
措置の概要を申し
上げたわけでございます。なお
畜産の問題につきましては、いろいろ取り
上げて申し
上げなければならない
点等があるわけでありますが、最近この
酪農の問題と別途の問題といたしまして私
ども非常に憂慮いたしておる問題がございますので、それにつきまして
状況を申し
上げたいと思います。
これは
和牛の問題でございまして、現在
日本の
和牛というものは約二百五十何万頭という
頭数を示しておりまして、
日本の
畜産の中におきまして占めまする地位というものは相当重要な中心的なものになっておるのでございますが、最近この
和牛の
価格というものが急に
下落の
傾向を顕著に示して参りまして、そのために
和牛の
関係の
農家というものが非常に苦しい立場に追い込まれておる次第でございまして、この問題につきましていろいろ対策を講じなければならないという
状態に追い込まれておるわけでございます。何ゆえにさように急激に
和牛の
価格というものが軟化して参ったかということにつきてましては、諸般の
資料に基きまして十分にその
原因を突きとめなければ断定的なことは申し
上げられないのでございますが、ともかくもこれに対しましてこのまま推移することは、各
方面に
影響が非常に及ぶわけでございますので、これにつきまして何らかの
施策を講じなければならぬというふうに私
ども心配をいたしておる次第でございます。結局
和牛の実態といたしましては、一面においてはこれは
農家におきましていわゆる役畜として
農業経営上重要な役割を果しておるのでございますが、他面、肉牛といたしましてこれが
肉資源として
市場に出て参るわけでございまして、結局
和牛の
価格が
市場におきます肉の
価格と密接な
関係があるわけでございます。そういう点も
考え合せますと、ここに肉の
取引という問題につきましても、適当な
措置を講ずる必要があるのじゃないか、かように
考えられるわけでございます。この面につきましては、従来から
畜産物全体についても言われておる点でございますが、
取引というものが非常に近代的でないということを言われておるのでございまして、
和牛そのものなり、あるいは
肉畜なり、あるいは屠殺の結果出て参ります
枝肉なり、さらにそれが
末端に行きまして精肉として
取引される、この段階につきまして、これを
合理化する必要があるというふうに
考えておるのでございますが、いきなりこの
取引全体につきまして強力な
措置をすることはなかなか困難でございますので、私
どもといたしましては、ともかくも
枝肉の
取引が現在よりももっと
合理化されることが必要ではないか、こういう
見地から、これらについて
措置を講じたいと
考えておる次第でございます。三十
年度予算案に
生鮮食料品の
流通改善の
経費が一億円組んでございまして、その中の
相当部分につきまして
畜産物、特に
枝肉の
取引の
改善にこれを充当いたしたいという
考えでございまして、ただいまこれが
具体化について
研究を進めておるのでございますが、
一つの
考え方といたしましては、
冷蔵庫とこれに付属いたしまして
枝肉の
取引施設を作りまして、そこにおいて
需給の
状況に即応した公正な
取引が行われるようにという点に目をつけて、これが
具体化を
目下研究いたしておる次第でございます。さらに肉の
利用の面としましては、これは二十八年から取り
上げておるのでございますが、
農村におきます
食肉の
利用促進をはかり、また同時にそれを手がかりといたしまして、
肉畜の
取引が
改善されるようにという
考えから、二十八年から三十
年度にかけまして、約三十五カ所の
農村食肉利用施設の
補助予算を計上いたして、三十
年度がその三年目に当るわけでございます。これは
農村方面に
冷蔵庫並びに肉の
加工施設を作りました場合に、これに対して二割
程度の
補助金を出して参るという
行き方になっておるわけでございます。
次に
家畜の
取引の点につきましても、現在のありのままの
状況を見ますると、この問題につきまして、これを
合理化する必要があるのではないかというふうに
考えられますので、
家畜取引の
合理化につきまして、現在の
状態よりも一歩前進した何らかの
措置を講ずることが必要ではないかという
考えから、その
具体案につきましては
研究を進めておるという
状態になっておるわけでございます。
それから
和牛の
生産面のうち、特に雄の子牛の問題があるのでありますが、この問題につきましては、現在のように
和牛の
需給が悪くなりましてなかなかいい
値段で売れないということになりますと、さらにこれを屠場に引きつけて参りまして売りにかかる、そのために一そう
価格の
下落をはなはだしくするというような
現象も見受けられるのでございます。この問題につきましては、これは非常に技術的な面にわたるわけでございますが、今までのような
程度よりもさらにこれを
改善いたしまして、これを肥育して参るという
措置をとることによりまして、同じコストをかけながら質のよい肉がさらによけいとれるという
行き方によりまして、一方の
値下りの
傾向に対してこれを取り返して参るという
行き方があるのではないかというふうに
考えられるのでありますが、この問題につきましてはすでに技術的にも
相当研究が進んでおりますので、今後におきましてはこの方法をできるだけ普及させることによって
和牛問題解決の
一つの手段になるのではないかというふうに
考えておる次第でございます。
それから
和牛の
取引の
合理化の他の面といたしましては、現在の
状態では牛の
取引というものにつきましては、ほとんど
共同販売的な
行き方がとられておらない。そのために若干形勢が悪くなったというような場合に、非常にこれが
農家の手放す
値段に強く響き過ぎるという
傾向も見受けられますので、この問題につきましては、やはり
共同販売組織というものを確立することによって、
需給の
悪影響をまっこうからかぶるということを相当防止し得るのではないかというふうに
考えておるのでございまして、こういう問題につきましても、私
どもとしてもできるだけの
促進をはかる必要があるというふうに
考えておる次第でございます。
一応
和牛の問題につきまして、現在の
状態というものを申し
上げた次第でございます。