○渡部
政府委員 愛知用水
事業につきましては、
昭和二十四、五年ごろからこの
計画が地元で進められておったのでありますが、
昭和二十七年に愛知用水土地改良区という改良区から土地改良法に基きまして専業の概要を定め、地区内の三分の二の同意をとってこの
計画を国営として採択するようにという申請が愛知県から出てきたのであります。その後この
計画につきまして詳細なる調査を進めて参りました。しかしその当時の
計画では、従来の土地改良法に基きますものが国営を主にしておるものでありましたので、それに県営、団体営の
計画を立ててみますと、経済効果は非常に出るけれ
ども非常に大きい
計画になる。国営だけでありますと百数十億で済みますが、団体営、県営を合せますと二百七、八十億もかかる、同時に木曽川の水を利用する発電施設あるいは工業用水、上水道等を合せますと三百億を越える金であります。そこで
財政投融資のワクの
関係で
計画が伸び悩んだのでありますが、一昨年から農業開発について外資導入をやるという話が出ました。世界銀行のガーナー氏がお見えになったときにそれを取り上げて、昨
年度の夏に至りまして世銀から数名の調査団が派遣されまして詳細調査した結果、経済的に十分成り立ち、世界銀行としても融資の対象になる
計画であるから、詳細の
計画を立てるようにという話があったのであります。それに基いて
計画を立てまして、この春
農林省から清野技術課長を世銀に派遣し、さらに詳細な打ち合せをいたし、四月になりましてデフリーズ及びドール極東部長が見えまして、さらに詳細の打ち合せをいたしました結果、大体の
計画については世界銀行として融資ができるから、融資を受け入れる態勢を早く
日本としてはととのえるべきであるということを言い残して帰ったのであります。世界銀行の
関係はそういうわけでありますが、世界銀行は約一千万ドル、すなわち三十六億
程度、
日本内地で手に入らない機械類等のみしか貸さない、あとは
日本側で円
資金をまかなわなければならないということになっておりましたので、昨年来余剰農産物の交渉に当りまして二百十四億のうち三十億を農業開発に回し、そのうち二十四億五千万円を初
年度愛知用水に回すということで、これも話がつきましたので、本
計画に基き借款の主体である愛知用水公団の
法律を
提出したゆえんであります。
本
計画の概要は先般愛知用水
事業計画概要というものをお手元にお届けいたしております。ずっと前でありましたので、お手元にない分はただいま
政府委員室に取りに行っておりますので、しばらく御猶予願いたいと思いますが、御
説明申し上げます。
これは木曽川の上流、長野県西筑摩郡の御嶽山のふもと、王滝川に沿いまして王滝村と三岳村との村境の牧尾橋という所にダムを作りましてこの水を引きまして中間十数個所の発電所に水を補給し、発電の強化をしながら岐阜県の兼山という所で、現在これは兼山発電所があるダムであります。そこで水を取り入れまして岐阜県を通じ愛知県に入りまして名古屋の東側を
通り知多半島の末端に行く
計画であります。この地帯は地域内の水田が約一万六千町歩あります。そのうち河川によって灌漑せられておるものはわずかに一五%であります。ため池によって灌漑されておるものが七二%であります。揚水機によって水を補給しておる水田が五%、自然の降雨等でやっておるのが約七%を占めておるのであります。ほとんどがため池によってまかなっておると言っても過言でないのであります。そういうところでありますから、水田のみならずこの
地方におきましては
相当肥沃な大地があるのでありますか、水不足の
関係で開墾可能地であるにもかかわらず開墾ができない、あるいは水がちょっと来れば陸稲なり野菜なりうんとできるのが、水が少いからできない。あるいは知多半島に入りますと、そういう農業状態だけでなしに、半島の末端の師崎町等では二千人に一個の井戸しかないほど水が欠乏しておるのであります。農業用水のみならず途中で発電所を起し、さらに各市町村の上水道それから名古屋中京地帯では、工業の発展のために工業用水が非常に欠乏しかかっておるのであります。工業用水では、主として自家用の井戸によってまかなっておる部分が
相当大きかったのであります。これをあまり掘り過ぎるがために地盤沈下を起すとかあるいは水量不足になる。そうかといって川からひく水道は名古屋市ではすでに一ぱいになっておるというような
関係がありまして、工業用水についても
相当な要望が出ておるのであります。
一般的な概況はそういうふうでありますが、
計画の内容に入って申し上げます。
まずとびらをあけていただくと最初に図面がついております。その次のA概説のところの二番目のパラグラフを見ていただきますと、木曽川の支流、王滝川の牧尾橋地点に、有効貯水量六千三百万トンの貯水池を新設する。図面を見ますと、三浦貯水池の下に王滝川という川がありまして、その下の牧尾橋貯水池という所であります。その支流を上っていきますと福島でありまして、木曽川の本流に沿って出るのでありますが、鉄道線路に沿って矢印のついておるのが木曽川であります。そうしてずっと下流に至りますと今渡発電所がありますが、その次に兼山発電所というのがありまして、兼山で取り水をいたすのであります。そうして黒い線がひっぱってあってぽつぽつの点が打ってある所、それが受益地帯になるのでありまして、一万六千四百五十町の水田の用水補給と、二百六十九町の開田、一万六千二百五十七町の畑地灌漑を行いまして、米十八万六千石、麦十万六千石、そのほか蔬菜、果実等を増産すると同時に、下流の町に工業、上水道用水を補給するのであります。
これが大ざっぱな話でありまして、次に
計画の詳細について申し上げます。
四ページのC
計画であります。一の要旨は、現在の木曽川の水は下流において農業用水、上水道及び工業用水に使用されますが、その約四〇%が無為に放流されているのであります。これを上流に貯水池を設置することによりまして、水資源の合理的利用をはかろうというのであります。その途中で、下流十四ヵ所の発電所の出力を増すと同時に、上水道、工業用水もあわせて農業水利のほかに補給するのであります。
その次に農業
関係の概要を申し上げますと、用水の補給を受ける水田が一万六千四百五十一町歩、開田が二百六十九町歩、畑地灌漑が一万六千二百五十七町歩、開畑九十四町歩、合計三万三千七十一町歩と九千四百万トンの水を補給していこうというわけであります。
その次に工業用水、上水道は、半田市のほか四市十八町村の上水道用水及び名古屋市、刈谷市、知多郡の工業用水もあわせて補給するのであります。上水道は千七百万トン、工業用水は二千八百万トン、合計四千五百万トンを配当いたしまして、三十数万人の人口をうるおしていくということになります。
発電
計画は五ページの表でありますが、新設発電所で年間三千四百四十万キロワット・アワー発生し、下流の既設十四発電所によって六千二百六十万キロワット・アワー、合計九千七百万キロワット・アワーを発生するということになっております。
その次には
工事の概要でありますが、まずダムは牧尾橋に作る。その流域面積は三百四平方キロメートル、満水位は八百八十メートル、これは水平線から八百八十メートルでありまして、約八十メートル弱の高さになります。総貯水量は六千九百万トン、有効貯水量は六千三百万トンであります。ダムの型式はロックフイル・ダムでありまして、従来のコンクリート式のダムに比べて非常に経費が節約でき、この種の大
規模のダムとしては
日本で初めてであります。そのために大きな石を処理し、あるいは粘土を処理するに必要な機械のために世銀から金を借りようということになっております。新聞等で見ますと、電源開発の美幌ダムもロックフイル式にやっていくということでおります。なお欧米の最近のダムは、その経済性からほとんどロックフイル・ダムに変ってきております。われわれの当初牧尾橋でコンクリート・ダムで計算したのと今度のロックフイルで計算したのと、約二十億近くの経費の節約になります。堤高は河床から七十八メートル、堤長が二百六十三メートルとなります。取水施設は最大三十五トンを毎秒流すという施設になります。下流の導水施設は兼山地点から幹線の末端師崎町まで百十五キロメートル、それに横に出ておる支線千五十九キロメートルということになっております。
発電所は出力一万四千キロワットの発電所を作ります。
上水道、工業用水は先ほど御
説明いたした
通りであります。
六ページのE
事業費について申し上げます。
事業費は直接
事業費として合計三百億余円要ります。そのほかに公団事務費として二十億九千八百万円、合計三百二十一億二千八百万円を必要とすることになります。そのうち外貨で三十六億円、円貨で二百八十五億円ということになっております。しかし当初買った機械が
工事が
完成すると売れますので、註に書いてありますように
工事用機械を売り払う残存価格を評価しますと約十九億になりますので、実際の
事業費は三百億から十九億を引きました二百八十一億になります。これが国、県、農民、電気会社の負担の対象になる金額になります。
その次に効果と費用の負担額の表でありまして七ページであります。詳細はそれぞれの項目があとに出てきますが、総論を申し上げますと、この
事業をやることによりまして年収入は、農業において四十八億円、電力において三億五千万円、水道において四億五千万円、合計五十六億の年収入の増加になります。これらの収入を上げるために、年経費は農業において二十五億円、電気で千二百万円、水道で一億二千万円、合計二十六億七千八百万円かかります。従って粗所得といたしましては農業で二十二億、電力で三億、水道で三億、こういうことになるのであります。この粗所得で消化のできる範囲内に
事業費をつけなければならない。この収入でどれだけの
事業ができるかという計算をいたしましたのが、妥当投資額であります。農業は六分でこの粗所得を資本還元いたしますと、二百六十二億の
事業費まで負担できる。電力は九分で計算いたしますと二十五億の
事業費まで負担ができる。水道は六分の金利で還元しますと三十七億まで負担ができる。合計三百二十五億の費用までは十分採算がとれるということになるのであります。従いまして前の表の
事業費の合計三百二十一億、公団
事業費を合せて三百二十一億ということになっておりますが、それから十九億を引きますと、約三百億がこの妥当投資額に按分して負担されなければならないということになりますので、約二十数億の純益が上ってくる、こういうふうにお
考え願いたいと思います。そこでこの妥当投資額に按分しまして、前の方の各
事業の費用を農業、電力、水道等に按分しておるのが、費用負担金の表であります。
まず水路の負担でありますが、妥当投資額から農業専用施設を引きまして、あるいは水道の分については、妥当投資額から水道末端の給水施設等の水道の専用施設を引きまして、その費用に按分して水路の共通部分の費用を区分しますと、水路につきましては、農業で九十三億千二百万円、水道で四億七千万円の負担をしなければならないということになります。
次にダムでありますが、ダムは農業、電力、水道全部で負担することになりますので、妥当投資額からそれぞれの専用施設を引きまして、さらに水路の分担金を引きまして、その残額で按分いたしましてそれぞれの持ち分をきめますと、ダムの費用六十二億は農業で五十億、電力で九億、水道で二億五千四百万円という負担になるのであります。これを総計いたしますと、
事業費二百八十一億を農業では二百二十七億四百万円、電力では十八億五千四百万円、水道では三十五億を負担せねばならない、こういう計算になるのであります。これをもとにいたしまして、国の負担あるいは県の負担、地元の負担というものを計算して参っております。
それから八ページであります……。
〔「区切りのいいところでやめて午後やったらどうだ。」と呼ぶ者あり〕