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1955-03-31 第22回国会 衆議院 農林水産委員会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年三月三十一日(木曜日)     午後一時三十一分開議  出席委員    委員長 綱島 正興君    理事 井出一太郎君 理事 松浦 東介君    理事 鈴木 善幸君 理事 中馬 辰猪君    理事 足鹿  覺君       赤澤 正道君    安藤  覺君       伊東 岩男君    池田 清志君       石坂  繁君    臼井 莊一君       木村 文男君    笹山茂太郎君       野原 正勝君    原  捨思君       本名  武君    松浦周太郎君       山本 勝市君    足立 篤郎君       助川 良平君    塚原 俊郎君       松野 頼三君    松山 義雄君       山本 友一君    赤路 友藏君       有馬 輝武君    井谷 正吉君       石田 宥全君    石村 英雄君       楯 兼次郎君    伊瀬幸太郎君       川俣 清音君    佐竹 新市君       中村 時雄君    日野 吉夫君  出席政府委員         農林政務次官  吉川 久衛君         食糧庁長官   清井  正君  委員外出席者         外務事務官         (欧米局移民課         長)      種谷 清三君         大 蔵 技 官         (主税局税関部         鑑査課長)   木谷 忠義君         農林事務官         (農地局管理部         入植課長)   和栗  博君         農林事務官         (農業改良局         長)      小倉 武一君         林野庁長官   柴田  栄君         農 林 技 官         (水産庁次長) 岡井 正男君         農林事務官         (水産庁生産部         長)      増田  盛君         通商産業事務官         (通商局次長) 大堀  弘君         通商産業事務官         (鉱山局長)  川上 為治君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君         専  門  員 徳久 三種君     ————————————— 三月三十一日  委員安藤覺君、石坂繁君、大森玉木君、楠美省  吾君、山村新治郎君、川村善八郎君、淡谷悠藏  君及び芳賀貢辞任につき、その補欠として松  浦周太郎君、山本勝市、臼井莊一君池田清志  君、赤澤正道君、山本友一君、石村英雄君及び  有馬輝武君が議長指名委員に選任された。 同日  委員池田清志君、臼井莊一君松浦周太郎君、  山本勝市君、有馬輝武君及び石村英雄辞任に  つき、その補欠として楠美省吾君、大森玉木君、  安藤覺君、石坂繁君、芳賀貢君及び淡谷悠藏君  が議長指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  小委員及び小委員長選任  食糧に関する小委員会参考人出頭要求の件  国有林野整備臨時措置法の一部を改正する法律  案(篠田弘作君外九名提出、衆法第一号)  農林水産業に対する基本施策に関する件     —————————————
  2. 綱島正興

    綱島委員長 これより会議を開きます。  発言の通告がございますのでこれを許します。石坂委員
  3. 石坂繁

    石坂委員 私は人口、食糧問題に関連いたしまして、いわゆる農村の二三男対策及び移民国策についてお尋ねをいたしたいと思います。  まず第一に、いわゆる二三男対策の問題でありますが、これは現在農村において非常な深刻な問題となっておりますことは周知の事実であります。現在耕すに土地なく、求むるに職がなくというような多くの青年は、現在及び将来の不安に非常におびえておるのであります。これは適切なる解決をいたさなければならぬと思いますが、これについては農山村においての雇用の増大をはかるというようなこと、そのために北海道なりあるいは内地の国内開拓等事業を効果的に促進するというようなこと、あるいは開発青年隊増強の問題なり、さらにまた根本的の問題といたしましては、現在均分相続に対する改正の問題、この相続の問題はむずかしい問題だと思いますけれども、こういうことに慎重な考慮をめぐらして解決いたさなければならないと思います。産業開発青年隊関係につきましては、建設省は、三十年度予算に十一億三千万円あまりの予算を要求いたしておるそうでありますが、農林省といたしましては、このいわゆる二三男対策につきまして、どういう方策を持っておられるのであるか。それをまず伺いたいのであります。
  4. 吉川久衛

    吉川政府委員 農林省におきましては、農村の二三男対策として、ただいま外務省と協力しまして、海外農村の二三男を誘出するという考え方で、ただいま諸般の準備をいたしております。昨年度におきましても、移民の選考とか、あるいは訓練とかいうようなことを担当いたしまして、移民の問題を取り扱って来たのでございますが、本年度はもっと積極的な施策を行いたいと目下準備中でございます。それから国際農友会に委嘱をいたしまして、アメリカ農業の実態に触れる機会を与えまして、アメリカ農業の新しい農業経営方式等を勉強をして帰って参りましてから、日本国内入植地に対する開発あるいは新しい営農の導入というようなことで、海外移民と相まって、国内移民の問題についても本年度からもっと積極的な施策をとりたい、かように考えております。
  5. 石坂繁

    石坂委員 政務次官が、在野の時代から海外移民の問題に非常に御熱心であったことは私もよく承知いたしております。海外移民の問題につきましては後刻お伺いいたしますが、それだけでなしに、国内的に講ずべき二三男対策につまして、農林省関係でただいまの御答弁ではあまりに政策が貧困であると私は思いますが、これから国内的にも、いろいろやろう、こういうお言葉があったようでありますが、国内的に打たれる政策というものは、どういうことを農林省では今考えておられるか、お尋ねいたします。
  6. 吉川久衛

    吉川政府委員 ただいまは農林省が直接担当いたしております問題を申し上げたのでございますが、政府として考えることになりますと、農林省だけではできないので、建設省その他の各省ともっと緊密な連携をとって行う施策が多々あるのであります。たとえば国土総合開発をいたしまして、電源を開発して農村工場を誘致して、そこに石灰岩等を処理する繊維工場等を建設することも一応考えております。こういうところに農村の二三男を吸収するということも考えられますし、また治山治水の問題を強化いたしまして、河床の整理によって相当耕地の造成ということができます。こういうところへ、先ほど申し上げましたアメリカ等農業経営参考にして、新しい営農をやるような入植地を設定するといようなことも、農村の二三男対策に資するものと確信いたしまして、ただいま検討をしておる中に入っているわけであります。また具体的にはもうすでに取り上げられておりますところの愛知用水の問題とか、あるいは北海道泥炭地開発とか、秋田の八郎潟の干拓とかいうような問題も、これらの考え方の一環として取り上げておるわけであります。
  7. 石坂繁

    石坂委員 ただいま大体の構想を伺ったのでありますが、何をおきましても、開墾、干拓等による耕地増大とあわせて、各種産業への農村人口の吸収ということが非常に切実な問題となって参りますが、それらの問題につきましては、具体的にはいずれ他の機会に具体的の問題についてお尋ねいたすことにいたしまして、この人口問題、二三男対策解決の他の一つの面といたしましての移民問題について若干お尋ねいたしたいと思います。御承知の通りに大東亜戦争を契機といたしまして、日本海外移民は閉ざされて参りましたが、南米に対する移民が開けましたのは昭和二十七年の暮れからであります。昭和二十七年の十二月二十日衆議院本会議におきまして海外移民促進決議というものが議決せられておりますが、同年の十二月二十七日にさんとす丸でわずか十八家族、五十四名ではありましたけれども戦争後初めてブラジルに向け出航いたしましたときに、私ども日本移民の前途に大きな明るい希望が見えた喜びを感じたのであります。越えて昭和二十七年度計画は、大体一万人の計画をしておったようでありますけれども、私の調査するところによりますと、実際は二百五十二家族、千二百二名だった。二十九年度計画移民は、二八年度の年末に外務省移民白書なるものを発表いたしまして、七千人を送出するということをいっておりましたが、いわゆる一兆億の予算で圧縮いたされました結果、実際は五百四十家族、三千三百八十三名、そのほかに昨三月三十日に出帆予定のもの及び四月十四日に出発する予定のものを合せましても六百二十四家族、三千八百六十一人、こういう程度にすぎないのであります。しかるに第一次鳩山内閣重光外務大臣になりましてから、この海外移民の問題が非常に大きく取り上げられまして、外務省は十年間に四十二万人を中南米に向って送出する、こういうようなことを発表いたしておられるのであります。これはわれわれといたしましては、まことに国策上喜ばしいことであると考えておりますが、この十年間に四十二万人、これは送出する実際面から申しますと、昭和二十八年、二十九年の実績に徴しましても、なかなか容易に実現されない問題ではないかと私は心配いたしているのであります。ぜひこれだけのことをやっていただきたいのでありますけれども実施面においては容易でないということが考えられますが、これに対する政府具体的計画及び送出方法等についての所見をお伺いいたしておきたい。
  8. 吉川久衛

    吉川政府委員 本ぎまりになっているわけではございませんが、お話通りただいままでの実績は、当初計画のようなわけにいかなかった。従って今後もいかないであろうというお見通しをなさるのもごもっとだと思いますが、御案内通り日本の今日までの状態では、輸送の点において非常な隘路がございました。今度はこの問題を克服して、もっと多数の移民を送れるような施設を拡充したいということをただいま検討いたしております。船の問題につきましても、また送出機関にいたしましても、あるいは受け入れ等機関にいたしましても、もっと積極的な施設を拡充強化したいと考えております。ことにお説の通りに、移民によってわが国の農村の二三男対策あるいはわが国人口問題の解決が完全にできるとは思いませんけれども中南米等移民いたしました人々の働きによりまして、かの地に新しい産業を植え付けて、後進地域住民の社会的経済的な地位の高揚に非常に貢献をいたしております。そのためにただいまのところ、中南米では、日本農業移民に非常な期待をかけている現状でございます。そこで社会的、経済的な地位が高揚された中南米住民が、日本移民に対する感謝の念からも、その他いろいろの関係日本の商品を求めることがだんだんと強くなってくるような感じを私ども受けております。こうすることによって国内企業振興となって輸出が発展をいたします。中小企業振興によってここにも相当失業人口を吸収することができる。かように考えて参りますと、移民人口問題の解決ということは非常にむずかしいことではありますが、そのことによって失業人口相当数吸収することができる、かように考えますので政府といたしましては、ただいまのような求められている時期にできるだけ多くを誘出できますように、今までと異なりましたもっと積極的な施策を具現していきたいと考えておりますので、ただいまお話構想を実現することはそう困難ではないと考えております。
  9. 石坂繁

    石坂委員 私も現在の日本人口状況、ことに毎年百万人、百五十万人の自然増加を見ている現在の日本人口が、移民だけによって全面的に解決するとは思いません。従って人口問題の解決方策といたしましては、移民と並行いたしまして国内多種産業を起して、これに人口を吸収する、あるいは先ほどお話のように、国土総合開発等によってそちらの方に就業人口を吸収する各種政策を設けあわせ進めなければならないと思うのでありますけれども、しかし一面中南米日本に非常に好意を持って、多々ますます日本移民を歓迎している現状におきまして、政府が十年間に四十二万人の送出をするということを一応決定しておられるようでありますことは、私は非常にこれを心強く感じます。しかるに従来の移民隘路というものは、受け入れ側にもありましたけれども送出するわが方といたしましての隘路は、船腹の問題と資金の問題であります。ただいま政務次官の御答弁では、いろいろ計画を立てているというお話でありますけれども、過去の実績から申しまして、年間そうたくさんの人が船に乗れない。乗せるだけの船腹がないのです。かりに政府計画、十年間に四十二万人と申しますと、それを平均いたしますと四万人余りはどうしても送らなければならぬ。しかるに二十八年、二十九年の実績は先ほど申し上げた通りであります。昭和三十年度政府の一応の計画は、私の仄聞いたすところによりますと、一万二千人を送るという計画であるやに聞いておりますが、それらの船腹をどうするかという問題を具体的にお示しを願いたい。  もう一つの問題は、計画移民には政府から渡航資金を貸与されるということは、これは適切なことでありますけれども、それ以外の移民は十五万円ないし三十万円の携行資金を必要といたしております。しかるに今までの多くの移民は主として農家であります。農家のおもなる財産というのは農地であります。これを処分することが即急にはなかなか困難でありまして、携行資金がなかなか整わない。そういう理由のために出発まぎわになって、合格した人が取り消してくるケースが始終あるのであります。こういうふうな資金面関係船腹関係についての、政府の具体的な計画を伺いたいのであります。
  10. 吉川久衛

    吉川政府委員 輸送船の問題については外務省当局の方から答えていただきます。  お説のように、移民に応募して訓練を受けて、いよいよ出かけようというまぎわに断念をする者もあり、また応募はしたいが、土地の問題が解決しないので思いとどまるというような例は相当にあることを承知いたしております。これらの問題について私どもはこの国会において農地担保金融制度というものを創定をいたしまして、そうしてこの問題を解決したいと思っております。御案内通りに、土地を手離して何がしかのお金をつくっていかなければならないという場合に、足元を見られて土地をむちゃくちゃに安く処分されるというようなことが問題になるのでございますが、これは農地担保金融を扱うところの機関あるいはそれを補助するところの農協等機関によって、本人が安心をして立っていかれるようなめんどうまでこの制度で見ていきたい、かように考えております。
  11. 種谷清三

    種谷説明員 ただいまの船の問題についてお答えいたします。当初一万二千人を予定いたしましたときに外務省が考えました船腹計画は、七はいの貨物船をそれぞれ五百人ずつ乗せ得るように改造するということでございます。現在大阪商船が持っております移民船は五百人乗りが二はい、九百人乗り一ぱい、それらの船がそれぞれ年間約二・五航海をいたしまして、年間の全船腹は四千七百人であります。これにオランダのロイアル・インターオーシャン・ラインズという船会社がございまして、これが日本中南米の間を往来しておりますが、この会社の船が毎月一ぱいずつ出まして、年間に三千八百人を輸送する船腹を持っております。合せまして、現在の利用し得る船腹年間に八千五百人であります。私どもは、できるならば日本人の移民輸送はことごとく日本船によりたいという考えで、一万二千人から四千七百人を引きまして足りない部分は、日本貨物船移民船に改造して使うという計画を立てたわけであります。そういたしまして、一ぱい改装費用を二億円と見積りまして、その必要なる資金十四億円を余剰農産物資金に求めた次第であります。その後この関係が必ずしもはかばかしく参りませんで、と同時に、この七はいの移民船をつくるという計画が、その後の検討によって修正を加えられました。その理由は、第一に一万二千人の輸送力を確保するだけの資金の調達がなかなか困難であるということと、今日のように貨物移民とを合せました貨客船という形で送ることが、運賃コストを下げることに障害があるという事実が、だんだん研究の結果われわれに認識されてきたわけであります。つまり貨客船は第一に貨物部分が多いために、乗せる移民の数がおのずと制限される。それとあちこちで貨物を載せたりおろしたりいたしますので、航海日数が非常に伸びる。つまり年間回転数がはなはだしく低下するということからいたしまして、どうしても一人当り運賃コストが高くなる。純経済的見地からいえば、移民を向うに送りましたならば、帰りには荷物を積んで帰るということが経済的であるわけであります。移民輸送運賃ということからいたしますと、結局たくさん乗せることができ、そうして回転の早いということが運賃を安くすることになるのでありまして、運賃が高いということが、今日移民政策一つの大きなガンであります。たとえばサントスまで一人当りおとな運賃が十一万三千円であります。通常六人ないし七人の家族を連れて参りますと、それだけで五十万円くらいの借金は背負い込むわけであります。現地に参りましてしし営々と努力をいたしましても、五、六十万円の借金を返すことは実はなかなか容易ならざることでございまして、移民のかの地における経済的自立を促進するということからいたしましても、運賃は何とかして最小限に引き下げたいということが、実は私どものかねての宿願であったわけであります。運賃をいかにすれば最も安くすることができるかという観点から今日移民船の問題をまた検討し直しておるわけであります。まだ成案を得ておりませんが、現在考慮中のところは、大阪商船が持っておりまする高砂丸というかって台湾航路に就航した船でありますが、これを純移民船に改造いたしまして、約一千人の収容力を持ちまして、年間回転数が四・五航海、四千五百人の収容力を持つ、そういう純移民船をつくりたい。そうしてはたしてその運賃が幾らになるかというようなことをただいま検討いたしております。まだ成案は申し上げる段階には達しておりませんけれども最小限一万二千人の船腹昭和三十年度において確保する。この場合はオランダ船をもちろん含めてでありますが、来年度におきましては、一万二千人の船腹を確保し得るようにいたしたいというふうに考えております。
  12. 石坂繁

    石坂委員 船腹増強及び船賃の低下ということについてのお話は一応了承いたしましたが、その具体的計画はまだ発表の段階に至っておらないというお話でありましたので、その点はこれ以上追究いたしませんが、これに関連して伺っておきたいことは、例の移民借款の問題であります。これは私の承知いたすところによりますと、吉田内閣の末期、昨年の十一月ごろだったと思いますが、アメリカの三銀行から千五百万ドルの借款の話が成立したように承わったのであります。しかるにその後ごく最近の新聞によりますと、このアメリカ側の三銀行から、日本政府においてこの借款を受け入れる具体的の準備ができたかどうか、その具体的の方針を示すように、アメリカ側から問い合せが来たということが、つい一週間ぐらい前の日本新聞に出ておるのでありますが、この移民借款成立したのに今日なおその終局的の話がまとまっておらないというようなことだといたしますれば、これははなはだ遺憾に考えるのでありますが、この点についての成り行きはどういうふうになっておるのか、これを明らかにしていただきたい。
  13. 種谷清三

    種谷説明員 アメリカの三銀行から借りまする千五百万ドルの点につきましては、ただいま石坂委員の申された通りでございます。簡単に申しますとチェーズ・ナショナル銀行、ナショナル・シティ・オブニューヨーク銀行、バンク・オブアメリカ、この三銀行がそれぞれ五百万ドルずつ、合せて千五百万ドルを五年間年間三百万ドルずつを日本移民事業のために貸す、こういうことでございます。この話し合いは、金利の問題を除きましてだいぶ前に三銀行側日本政府との間には了解がついておるのでございますが、さてこの千五百万ドルを受け入れる機関、組織の問題、その資金をどういうふうに運営するかということにつきましては、実は政府部内におきまして事務当局の間にまだ意見の一致を見ておらぬ点がございますので、アメリカ側にも明確な返答をなし得ない状況にあるわけであります。外務省といたしましては、この資金は全部ドル資金でございまして、海外において使うことができるものであります。私どもといたしましては、ぜひ移民受け入れ基盤を外国において拡大し得るような用途に使いたい、一兆予算の御時勢でもあり、この千五百万ドルはぜひ受け入れて有効に使いたいと考えております。
  14. 石坂繁

    石坂委員 この移民借款受け入れ態勢において外務省大蔵省との間で、外務省会社方式でやる、大蔵省公社方式でやるというようなことで意見がまとまっておらないということは、新聞紙上にも伝わっておりますが、かようなことによって遷延していくうちに、この借款が不成立に終るというような懸念はないのでありますか。
  15. 種谷清三

    種谷説明員 実は御指摘のありましたように外務大蔵両省事務当局間におきまして、この千五百万ドルの受け入れ機関構想につきまして食い違いがあることは事実でございますが、最近数日間の折衝によりまして大いに歩み寄りをいたしまして、私どもは近く意見の合致を見るのではないかというふうに楽観的に予想いたしておりますが、もしこれが何ヵ月も延び、今回の予算本国会におきまして成立を見ないような場合には、アメリカ側からやめようじゃないかという話し合いが来ることは絶対にないとは申し上げられない。できるならばこの国会成立を見まして、アメリカ側の不信を招かないようにいたしたい。ぜひ最近の機会にこの話し合いをまとめたいというふうに私どもは念願しております。
  16. 石坂繁

    石坂委員 この移民借款成立については、このことも速急にかつ適切なる御努力をお願いいたしまして、ぜひ実現するように希望いたしますと同時に、私どもといたましては長い間、外務省の今の移民課だけでは不十分だ。従いまして少くとも外務省移民局の設置を見る程度のことは必要であるということを要望して参ったのでありますけれども、これは他の機会外務省の他の方にお尋ねいたした方が適当だと思いますので、ただわれわれはその点を強く要望いたしておるということをこの際申し上げておきます。  なお移民問題といたしましては、従来主として農業移民をやったのでありますけれども、この範囲を拡大する必要がある。すなわち漁業、鉱工業移民というようなこと、さらにまたいわゆるプラント輸出というようなことを大きく押し出すべきであるということを考えております。かような問題について今外務当局での計画がおありになるのかどうか。
  17. 種谷清三

    種谷説明員 ただいま石坂委員の御質問になりましたことは、私どもでかねて企業移民という言葉をもって計画をいたしておるところであります。企業移民と申しますのは、海外における日本企業に従事するために渡航する資本家経営者技術者及び労務者を総称する意味でございまして、ただいま御指摘のありました通り、従来の南米移民農業移民を中心としたわけでありますが、戦後におきましては、特に工業化の機運が非常に高まりまして、たとえば農業におきましてももちろん手でやる農業もございますけれども、機械を使って大規模に企業としてやる農業中南米には進歩しておるように思われるのであります。工業につきましては特に有望でありまして、たとえば現在ドイツ、イタリア等から呼び寄せの形でもって中南米に渡航いたしております移民は、その七、八割がいわゆる工業ないし企業移民であり、技術者がその大部分でございます。外務省といたしましても、今後は農業のみにとどまらず、工業、鉱業、農業、漁業等海外における有利なる企業をできるだけ助成いたしまして、それによって日本移民を安全に確実に、かつ大量に吸収していくという方向に大いに努力をしていきたいというふうに考えております。
  18. 石坂繁

    石坂委員 移民の範囲を拡大するという点についてなお企業移民あるいはプラント移民等についてすみやかな実現を見ることを希望いたしますが、同時にひとり中南米のみならず、東南アジア方面においても、地域的にも拡大する必要があると考えております。この点についても、この後の当局の御努力を期待いたします。しかるに最近ブラジルから、コチア産業組合の方から、独身移民千五百人を三年計画で呼び寄せたいということで、下元専務理事が来朝中であるということが伝えられております。なお本願寺派の方からも、仏教徒である青年を向うに誘出したいというような計画があるやに伝えられておりますが、このコチア産業組合からの招致移民及び本願寺派の仏教徒に対する招致移民と、外務省で今まで計画しておられる四十二万人のうちの本年度の一万二千人とは、全然そのらち外になりますか、関連がありますか。また、もしらち外だといたしますれば、今の二つの別途の移民について外務省はどういうふうな処置をとろうとしておられるのか、それも伺いたい。
  19. 種谷清三

    種谷説明員 コチア産業組合の移民は、私ども計画のらち内でございます。本願寺の移民につきましては、私はただいまのところ承知いたしておりません。
  20. 石坂繁

    石坂委員 もう一つ、二つお聞きしておきたいのですが、今まで移民送出についての実際の取扱いは、御承知の通り日本海外協会連合会が直接外務省の委嘱を受け、各地の海外協会が募集、選考等をやって参っておりますが、各地の海外協会は、古い歴史がある協会も昨今成立いたしました協会もはなはだ微力であります。ことにこの種の団体は営利団体ではありませんので、非常に資金に苦しんでおる、現に先日兵庫県の海外協会理事者のごときは、自分のポケット・マネーを払って事務を遂行しておるというような陳情を、私はわが党の政調会で受けたのであります。私も長い間熊本の海外協会に関係がありますので、それらの内容はよく承知いたしております。しかるに先ほど配付されました外務省の書類によりますと、日本海外協会連合会に対しましては、三十年度の要求額一億八千万円となっておりますが、現実には地方海外協会が移民送出には大きく働いているのに、その経営はすこぶる困難であります。はなはだしきに至りましては、今申し上げましたように自分のポケット・マネーをもって協会の運営をやって行かなければならないような状態である。こういうふうな現実の状態に対しましては、ひとり中央の連合会のみならず、各府県の海外協会に対しまして、その育成強化について当局相当の援助をされてしかるべきであろうと私は考えますが、これに対しましてはどういうお考えであるか。
  21. 種谷清三

    種谷説明員 ただいま海外協会連合会に対しまして一億八千万円というお話でございましたが、実はその一億八千万円は、海外協会連合会のみならず地方海外協会及び現地の受け入れ機関に対する補助金も全部含めたものでございまして、来年度におきましてはただいまの数字の中に、はっきりは記憶いたしておりませんが、約二千万円の地方海外協会に対する補助金を含んでおります。なお農林省予算におきまして、私どもと打ち合せた上で地方の海外協会の募集選考等の事務に対しまして、農林省農林省として別個に海外協会に対する補助金を計上しております。
  22. 石坂繁

    石坂委員 先ほど配付を受けました外務省移住参事官、三月二十一日付の中には、当面の重要施策の三に、日本海外協会連合会の強化という見出しで、要求予算一億八千万円と出ているのですが、今の説明と少し食い違ってはおりませんか。
  23. 種谷清三

    種谷説明員 御指摘通りでございますが、これは私がただいま御説明申し上げました通りに読みかえていただきたいと思います。
  24. 石坂繁

    石坂委員 今外務省側の答弁によりまして、農林省が別途に地方海外協会に対する援助の予算を計上しておられますのを私は見落しておりましたが、その点について、農林省側ではどうでしょうか、御説明願えませんか。
  25. 和栗博

    ○和栗説明員 御質問でございますが、御承知の通り農業移民に関しまする国内の募集選考なりあるいは移民選出前の教育は、農林省が担当して実施いたすことになっておりますので、地方海外協会へこういった募集選考に関連する事務をお願いする関係上、それに要する補助金を農林省予算に計上してただいま要求中でございます。
  26. 石坂繁

    石坂委員 私ども昭和二十七年十二月の第一回の移民の募集選考について、県外事課と協力してやっておりますが、地方海外協会に対する補助は三十年度から新たに計上されますか。
  27. 和栗博

    ○和栗説明員 二十九年度まではいわゆる行政募集と申しますか、政府なり県を使っての募集でございましたが、三十年度からは地方の海外協会を使って募集いたしますので、三十年度からということになっております。
  28. 石坂繁

    石坂委員 その点はよくわかりました。最後にこれは特に政務次官に対する要望なり質問でありますが、先ほど政務次官は、外務省と協力して移民問題に努力しておられるというような趣旨のお言葉があったのでありまして、私ははなはだ意を強くいたしております。しかしながら従来の実情から見ますと、かような席であけすけに申し上げますことが適当であるかどうか、いささかちゅうちょいたしますけれども移民の募集その他移民の選出に関しまして、外務省農林省の間の意見が必ずしも一致せず、仕事の上の協調が必ずしも円滑にいっていなかった点があるように私ども少くとも感じておるのであります。かような点について、吉川さんはさようなことはなかったと答えられるでありましょうが、しかしわれわれがさような感じを受ける、少くともその感じさえも一掃されますように、この後十分なる御努力を願いたいと思います。  なお、私は移民関係全般についていろいろ注文いたしたいのでありますけれども、大体以上におきましてきょうは私の質問は打ち切ります。
  29. 吉川久衛

    吉川政府委員 石坂委員が御心配になっておられるような、農林省外務省との間においてはなはだ不円滑な点があったことは、私もこれを承知いたしております。しかし国策として移民問題を取り上げなければならない今日、さようなことがいつまでも続いているということでは、この重要な案件を解決することに非常に困難が生じて参りますので、ただいまその調整に私直接当っております。御懸念の点も近く解決いたしまして、一本になって御納得の行く強力なる施策をいたしたい、かように考えております。
  30. 木村文男

    ○木村(文)委員 ただいまの石坂委員の質問に関連いたしまして、念を押しておきたいのでありますが、現在の政府のとっておられまする海外移民は、主として農業移民に重点を置いているということは、移民課長からも御説明がありましたので、まさにその通りであると思います。しかしながら、もしかりにそうだとすれば、その移民ということは根本的に考え直さなければならぬのではないかという観点から、これはおそらく重大な質問になると思います。やがて私はこの点について、詳細にわたって私の資料を提供してお尋ねしたいと考えておるのでありますから、一点だけ念を押しておきたいのであります。  それは私も過去においてこの仕事を担当したことがあるのでありまして、従いまして私の見解は、少くとも現在の日本移民は、終戦後における移民でありますために、一つは、外交官としての日本の大きな使節であるというようにも考えなければならぬ性質を持っておると思うのであります。いま一つは、農業移民をかりにいたすにいたしましても、もしその素質が非常にいかがわしい者が多く移民されるということになりますと、将来の日本の発展の土台をなす、人口問題解決の一端でもある移民の道の上に、頓座を来すおそれなしとしないと私は考えます。そこで私は言葉少なに簡潔に申し上げますと、現在は一体主務官庁はどこにあるのか。行政的には別でありますが、この行政を運営するに当って主務官庁は外務省なりや農林省なりや、これをはっきりしていただきたい。私の現在までに調べた間における情報によりますると、予算の面からいっても、事務管掌の面からいっても、外務省がこれを主として担当しているやに私は承知しておるのであります。しかしながら先ほどからの御答弁によりますると、政務次官が非常に重大な発言をされた。それはいろいろ支障を感ずるゆえに今後の国策遂行のために、何とかこれを一本化しなければならぬために、みずからその衝に当っているということを発言せられたのでありますが、私は政務次官がどういうような見解のもとにこれを一本化せんとするか、これが第二点。  第三点は、これはさらに重大であります。私の私見を加えます。外務省が少くともこの農業移民に関する問題について、一体主務官庁として行政的な当を得るものであるかどうか。いたずらに今日のような日本の窮迫した状態においてなわ張り争いをさらりとやめて、最も行政の運営が可能なる、その責任を持てる、しかも海外協会が地方支部を持っておるとしても、実際関係しておるものは農業団体関係者が多いのであります。こういうような面からいっても、私は農林省を主務官庁として認めて、事務的な渡航の手続あるいは素質の調査、こういった面は外務省がこれを担当して、実質的な農業の面の方は最も大切でありますから、この点は農林省にまかすという方法をとったら、最も妥当ではあるまいかと考えておる一人でありますので、この三点について、政務次官の政務官としての強い御発言を要求したいのであります。
  31. 吉川久衛

    吉川政府委員 ただいまの御質問の第一点は、全く同感でございまして、移民は国民外交の一つであるということを私も痛感をいたしております。従って移民の質問等については、過去において大いなるあやまちを犯しておることを、すなおに認めないわけには参りません。今後はこの点に十分留意をすべきであると考えております。  次に所管の問題でございますが、私が先ほど申し上げましたのは、主管を一本にするというのではなくて、これはそれぞれの主張を一つに統一するという意味合いであることを御了承願います。ただいまのところは外務、農林の共管のような形になっております。それぞれ予算を持っておるというようなやり方をやっております。しかしどちらかといえば、ウエートは外務省にあるのが現状でございます。これについてどうしたらいいかということについて、私はただいま政務官同士で折衝をいたしております。これは何とかしてそれぞれの主張を一本にまとめて行きたい。主管を一本にするということになりますか、あるいはそうではなくて、技術移民等については、たとえばプラント輸出、いわゆる企業移民、そういうような問題を考慮いたしますと、通産省もこれに一枚加わらざるを得なくなるのでございます。こういう問題等もそれぞれ考慮に入れただいま折衝をいたしておりますから、この点は御了解を願いたいと思います。農林省の主管にすべきであるかという最後の御質問につきましては、これは私の従来の主張を申しますと——政務官としよりは私個人の考えもあわせて申し上げたいと思いますが、私個人の考え方としては、移民外交は外務省がやるべきである。それから農業移民の募集、選考、また入植地における指導、さようなことは農林省がやるべきではないか。企業移民等については通産省に一役買ってもらわなければならないのではないか、こういうことを私個人としては考えておりました。それで政務官といたしましては、関係政務官等の間で目下折衝中でございます。方向といたしましては、それぞれの主張を一本に統一したい。かって自由党においても政府並びに党においてこのに大へん御努力をなさった歴史等もございますので、さようなことも私ども大いに参考にいたしまして、それぞれの主張の一本化のために努力することを申し上げておきます。
  32. 木村文男

    ○木村(文)委員 石坂委員の質問に補足するというより私は念を押しておきたい。これは小さい問題でありますが、先ほど移民が渡航するに当ってことに農業移民がどうもどたんばにおいて渡航を差し控えるというような向きが、土地の問題であるとか、いわゆる資産の整理といいますか、そういうような問題のために非常にある、これは私もよく知っております。それは事実その通りでありますが、先ほどの政務次官のお答えは、農地担保金融制度を設ける考えで、これを適用させたいといいような御発言がありましたが、(「それは重大だ」と呼ぶ者あり)これは重大とは思いませんか、これが一つ。  さらに、何のために重大であるかといいますると、一つは——あるいは今の自由党の松野さんの重大だという意味と私のそれとは違うかもしれませんが、私は一つこういう意味なんです。それは永住性を非常に喪失するおそれなしやということです。移民した後において、担保にして金融をやっていざこざがあって、一体これは完全なる移民の——先ほど申し上げた素質の問題にも関連するが、これを適用するということが、完全なる移民政策の意味からいって妥当な政務次官の御発言であるかどうか、これが一つ。  もう一つは、政府が非常にめんどうを見る、こういう御発言があった。これに対して、政府がめんどうを見ても、移民の数が現在ぐらいの程度であれば、そうしてまた現在数ぐらいのいざこざぐらいであればこれはまだいいけれども、一兆円のワク内において事務経費を、しかも一番人件費の節減を要求されておる今日、こういったような今日において、さらに人員をふやすような、また事務的な煩瑣をしなければならぬようなこういうお世話が、果して可能なりやどうか。もし可能とすれば、しからばどういうような方法によってこれをやろうとするのか、この三つの問題について一つ答弁を願いたいと思う。
  33. 吉川久衛

    吉川政府委員 農地担保金融というのは、具体的にここで申し上げますとまた大へん時間がかかるのでございますが、その土地を担保に入れて、そうして金を貸してその金で行く、そのために、その土地の問題の解決があとに残るというように御理解下さると、それは確かに問題が残るのであります。そうではなくて、農地担保金融機関というものができますと、土地をすっかり処分をして向うへ立ちたい、こういう方に対する融資の機関、そういうこともできる融資の機関でございますから、そこで土地の問題が一応解決するわけなんです。金は借りる、そうしてその土地は国あるいは金融機関が取り上げるわけです。そうしてしかる後に、移民が出かけてしまった後に、この土地を自己の機関がその責任においてこれを処分するのでございますから、向うへ行って永住性を妨げるのでなくて、土地の問題がきれいに解決しているから、かえって永住性を強める、こういうことになりますので、その点は御懸念はないのじゃないか、こういう考え方でございます。  それから政府がいろいろの世話をするということに人員を要して、むだな金がかかるのではないかと申しますけれども農地担保金融機関は別な独立の機関を設けるのではなくて、ただいま考えておりますところによれば、農林漁業金融公庫の一部として取扱いができるようにする、そうしてその下請は農協等に協力をしてもらうというような考え方でございますから、そのために多くの人員を増強してむだな人件費を使うようなことは極力避けるという考え方でございますので、この点御了承を賜わります。
  34. 松野頼三

    ○松野委員 一言だけ……。私は長い間御答弁を聞いてもおりますけれども、大分食い違いがあるので、一々ここでただす必要はありません。ただ、農地担保金融というのは、お宅の方の制度要綱というものがただいま配ってございますが、第一の目的は、農業政策の基盤である農地を維持するということがお宅の方の農地担保金融の目的なんです。あなたのおっしゃるように、移民のための目的とは違う。ほかに何かあらためて案でもお出しになるのですか。ところがあなたの御答弁を聞いていると、ほかのことはある程度がまんできますが、農地担保金融というのが海外移住を全部解決するようにおっしゃるが、金額は幾らになっているか。先ほどの御説明を伺っていると、外務省は八千人、お宅は一万五千人、これは外務省は八千人はこれこれのことができたときに初めて移民ができるという御答弁なんです。あなたの方は一万何千人、まるで目の前で同じ政府の中でこうも食い違って、黙って聞くことはずいぶん実はがまんが要るのだ。おまけに、ただいま出ております農地担保金融であなたが海外移住は解決しますというのは、選挙のときの公約なら別ですが、目の前にいる委員諸君だって、与党の諸君の中でさえ御異論があるようなことをとうとうと答弁されるというのは、私は委員会として多少侮辱を感ずる。あなたも同じ委員だったからがまんしていますが、お宅の方は海外移住の移民のために使うという一項目をお入れになるか、ならないか、これだけでけっこうです。くどくどしい答弁は要らぬ。
  35. 吉川久衛

    吉川政府委員 松野委員のお尋ねごもっともでございますが、私の申しましたのは移民全部についてこれを適用するというのではなくて、いざこざが起きて、そのためにどうしても行けないというのがいつも一船に二、三人は出てくるのであります。そういうような問題はこれで解決をしたいということを考えて、その下請は農協等に協力してもらうという形でございますから、あるいはこの資金を使わないでも、そういう方面で処理できるのではないかと期待をいたしております。
  36. 松野頼三

    ○松野委員 きょうはあえて論議はいたしませんが、この法案をよくごらんになると、これは償還期限もあるし、金利の問題もあるし、いろいろあるのだ。あなたのおっしゃるように、現在の移民の困窮はそこではない。処分の中で一番困っているのは、担保でやって、あと利子の払い、償還の払いが残るから、これを適用するということは詭弁であって本旨ではない。お宅の方であらためて農地担保金融の問題が出たときまで保留するから、それまでよくお考えになって、それに合うようにしていただけばけっこうだが、改めてなかったときにはこの速記録に応じて質問いたしますから……。
  37. 赤路友藏

    赤路委員 私は水産問題について質問をしたい。特に政治的な解決を要するものについては、大臣の御出席がありませんので抜くことにいたしまして、行政面についてできるだけ簡単に五、六点御質問をいたします。  まず第一は日韓会談についての善後処置でありますが、二十八日の委員会で大臣の御答弁を聞いていますと、日韓交渉ははかばかしく進んでいない、こういうような御答弁があったわけでありますが、この答弁を聞きますと、朝鮮海域に従来依存しておった漁家の諸君は、おそらく大きな落胆をするだろうと思う。非常にこれに対しては期待をかけておったわけなんです。この漁期までに日韓会談が開かれ、それぞれの問題点が解決しないということになりますと、当然この海域に依存しておった在来の漁家の諸君の生活安定ということを考えてやらなければならない。これについても大臣は、生活安定については十分努力をすると言っておられるのですが、水産庁としては何か保護政策としての具体的なものを持っておるかどうか、この点を一点お尋ねしたい。
  38. 岡井正男

    ○岡井説明員 お答えします。日韓会談が再開されることを希望するのは、われわれ事務当局並びに業界こぞっての一致した意向でございますが、この問題については外務省も鋭意その方向へ向って努力中でありますので、外務省と緊密な連絡をとって、一日も早くその実現方を促進いたしたいと考えております。なおその間の他の点につきましては、ただいま御心配いただきましたように、最近も拿捕事件がございましたが、それは海上保安庁とも十分連絡いたしまして、従来の方針を変えることなく、なおこれに対してできる限りの配船をいたしたい、かように思いまして事務打ち合せ中でございます。
  39. 赤路友藏

    赤路委員 少し私のお尋ねするのと答弁が違っておるようです。もちろん今次長の御答弁のありましたような拿捕されたものに対する対策等は十分立てていただかなければならぬと思いますが、そうでなしに、あれに依存しておった漁家の諸君が、過去二ヶ年にわたって李ライン等の問題のために出漁ができない、今日すでに破境に陥っておる漁村すらもあるという実情にあるのに、それらに対して何か対策を考えておるかということでございますので、いま一度御答弁願いたい。
  40. 岡井正男

    ○岡井説明員 行政措置で当然いけるであろう点がいけなかったものについての行政処置いかんというお尋ねでございますが、これは今までにおきましてもサバはね釣等がいけない場合にマグロ、カツヲ釣の兼業の臨時許可を与えることによって一応業者の苦痛をやわらげてきた次第であります。この点につきましてなおわれわれとして交渉が完全に推進しない間におきましては、同様の考え方で相なるべく御趣旨に沿うようにいたしたいと考えております。
  41. 赤路友藏

    赤路委員 ただいまの御答弁で了解いたしました。解決つかないときは、なお在来とってきた方式によって行政的な面で保護をやっていきたい、こういうふうに了解いたします。次に現在進行しておるやに承わっておりますところの日中漁業の交渉でございますが、これはもちろん政府代表が行ったのでなしに、民間から代表が行っておるわけでありますが、承わるところによりますと、新華東ラインというような線で一応協定がつくように聞いておるのでありますが、これに対してどういうふうに水産庁としてはお考えになっておるか、この点を承わりたいと思います。
  42. 岡井正男

    ○岡井説明員 民間代表によってなされつつある日中懇談の模様につきましては、じかに私の方がタッチいたしておりません関係上、情報も先生方が新聞でちらほらごらんになる以上に的確に詳しくは承知いたしておりません。しかし従来の不法拿捕その他の事件が民間代表の折衝によりまして将来明るくなるということは非常に喜ばしいことでございますので、われわれとしても外務省とよく連絡いたしまして、民間代表が話をつけた以後の措置については、相なるべくは民間代表がもたらされた結果のスムーズに操業できるように考えていきたい、かように考えております。
  43. 赤路友藏

    赤路委員 民間代表が行って話をつけたあとの措置については考えていきたいということですが、今度の日中交渉に行っておられた方々のいろいろな階層もありますが、大体以西底びきを主体にいたしております。従ってあの海域に依存しておられる業者の諸君の気持はわかりますが、ただ私が一つ申し上げておきたいのは、これが一つのケースになって、自後の東南諸国との協定等の場合、障害になるようなことがあってはならぬ、そういう点を十分お考えになっているかどうか、この点をお聞きしたいわけです。
  44. 岡井正男

    ○岡井説明員 その点は全く同様の感じを持ちまして、出発されるに当りまして、過去において役所で相当そういう関係にタッチしておられるような方方も交えて、将来他国との漁業交渉に支障なからしむるための、いろいろの交渉上の段取りにつきましては、十二分に留意して民間代表が折衝中でございまするので、今直ちにどういうふうな点がどうなるかというところまでは申し上げるわけにはいかぬ、かように考えております。
  45. 赤路友藏

    赤路委員 この問題はその程度で了解をいたしておきます。  それからこれといささか関連がございますが、昭和二十七年七月調印されました日米加漁業協定についてでありますが、この漁業協定の附属書に、明らかに西径百七十五度で一線を画して、それよりアメリカ側の方、あるいはカナダ側の方へは魚種を限って操業をしない、こういうことになっております。当時私たちはこれに対して反対をいたしたのでありますが、これは明らかに公海自由の原則をみずから踏みにじっておる、みずからこれを放棄しておる、こういうようなことが一つの原因になって李ライン問題も起り、またフィリピンなり、インドネシア等におけるいろいろな区域の拡大という問題も起ってきていることを考えなければならぬと思う。従ってこれは御答弁できなければ答弁は求めませんが、水産庁としてはこれを改正する意思があるかどうか、この点をお聞きしたい。
  46. 岡井正男

    ○岡井説明員 あれは議論をすれば長くなると思いますので、私どももその点は避けたいと思いますが、日米加のあの線を引いた考え方と、他国が目下主張している沿岸優先的な主張とは若干その間にずれがあるわけでございます。それはまたいつかの機会に申し上げてみたいと思います。とにもかくにも他国でその線だけを利用して、その線に含まれた奥深いいろいろな点をはずして日本に不利なような責め方をしているということは、まぎれもない事実でございます。従って日本といたしましても、将来あの条約を改訂する機会が来ました場合に、より有利にいたしたいということは十二分に考えております。従いましてそれがための資料といたしましては、鮭鱒のいわゆる回遊経路がどういうふうに交錯しているかという点を一日も早く把握することが、より日本に有利な資料と考えますので、その資料収集に現在も極力努力をいたしております。やがて来るべき交渉の際には、おそらく科学的な資料を持ち寄って、それが中心点に論議されて有利に展界するかいなかということに相なろうと思いますので、その点は十二分に注意いたしております。
  47. 赤路友藏

    赤路委員 ただ私の心配いたしますのは、まだいまだに日韓会談が再開されない、李ラインの問題もわからない、こういう事態であります。魚族の維持保存という意味において一線を画することが正しいのだということになると、当然これはまた李ラインというものをそういう意味合いから向うから持ち出されると認めざるを得ない、こういうことを心配しますから、この点特に御注意おきを願いたい。これだけでございます。  次に政務次官にちょっとお尋ねいたします。もし政務次官の方で御答弁がむずかしいようでしたら次長でもけっこうでございますが、水産金融の問題でございます。水産金融について特に申し上げたいのは、私どもの方の調査によりますと、現在まで大体八年以上を経ております老朽船といわれるものが、大小合わせまして大体一万六千隻という数に上っておる。なおまた七年以上で機関の非常に古い、新しいディゼルエンジン等に切りかえなければならぬだろうと思われるものが一万四千隻に上っておる。当然これらのものは代船建造なりあるいは機関改装なりがなされなければならないと思う。こういう面に対しては、私は当然金融の措置を考えてやらなければならないのではないか、こういうふうに考えるわけであります。一つは沿岸漁業が非常に不振に陥っておる。できるだけ行動範囲が拡大されていかなければならぬのが現在の沿岸漁業の状態なんです。ところが金融面に行き詰まって、これらのものがほとんど更新されていかない。これが一つの大きなガンになっております。もう一つは、沿岸漁業がだんだん枯渇してくることのために、できるだけ沖合いへ出て行こうとすることのために漁船の大型化ということが、今日非常に大きく取り上げられ進んでおるのであります。これらに対する在来の金融関係を見てみますと、まことに遺憾であると私たちは考えておる。二十九年度の農林漁業金融公庫の漁船建造に対しまする融資総額は十五億円。この十五億円がすでに昨年十月で全部一切が貸し出し完了になっておる。しかも二十九年度相当厳格な審査を受けた結果、なお農林漁業金融公庫の手元に残されておる全然借り出し得ないものが金額にいたしまして約十五億円あるわけなんです。しかも農林中金の方では、やはり二十九年度押え押えて来て、なおかつ四億というものがそのまま残留している。予定の、最初の原資の約倍以上の要求額がある。こういうような状態でこの老朽船の代船建造すらも遅々として進まない、こういうような状態にある。これに対しては、当然私は大幅な融資措置をとってもらわなければならないと思うのでありますが、そういうような御意思をお持ちになっておるかどうか、この点を一つお聞きしたいと思います。
  48. 吉川久衛

    吉川政府委員 お話通り最近のわが国の漁業の施設の問題は、だんだんと施設状況が変って参りました。それに即応するところの対策がおくれておるということは私どももこれを認めます。そこで農林省は、従来農林漁業金融公庫あるいは農林中金、開発銀行等を通じまして、漁業資金の確保をはかってきたのでございますが、まだきわめて不十分でございますので、将来は一層の努力を払いたいと思います。御参考までに申し上げますれば、三十年度の公庫の対漁船融資要求額は、昨年に比べまして大幅に増額をすることにいたして、五十億を目下要求中でございます。二十九年度の十五億に対して大幅な増額要求をいたしておることを念のために申し上げておきます。
  49. 赤路友藏

    赤路委員 ただいま政務次官から、非常に大幅な融資要求額を出しておることを聞いて心強く思います。いつも要求だけは大きくなされておりますが、大蔵省は常にこれを切ることは御承知の通りであります。少くとも昨年度の十五億を相当上まわる程度に御努力を願いたい。農林省の中で、何か水産庁はこぶのようにひっついていて、いつも軽視されておるおそれがありますので、そういう点十分政務次官においては御留意の上、この予算だけはぜひ一つ要求を貫徹するように御努力を願いたいと思います。  水産庁次長にお尋ねいたします。沿岸漁業についてでありますが、もう私のようなしろうとが説明するまでもなく、日本の漁業人口の大半は沿岸漁業に蝟集しておるのでありますが、最近のこの沿岸における魚族の枯渇のために、零細業者の生業そのものが成り立たないという現況にあるのでありますが、この原因につきましてはいろいろあろうと思います。戦後食糧が非常に不足しておったために、むやみやたらに機船底びきを許可して、これらによって乱獲をされたということ、いま一点重大な問題は、在来水産庁予算の中では、沿岸の魚族の維持保存という面がややもすると軽視され欠けておった。二十九年度において初めて築いそ予算が組まれた。この築いそ予算にいたしましても、当初一億四千万円の要求に対して、わずか二千七百万円しかなかった。これがしかも瀬戸内のみに限られておったというような状況なんです。沿岸漁業は何も瀬戸内だけではないのであって、これはもう全国的な問題でありますので、本年度これらに対してはどういうような対策をお持ちになっておるか、お考えをお示し願いたいと思います。
  50. 岡井正男

    ○岡井説明員 沿岸の対策といいますと、金融関係を初めといたしまして、小さいながらも数が多いので、一々御説明申し上げるのもいかがかと存じますが、ただいま具体的な御質問のございました築いそ施設のごときは、一応当初瀬戸内海をモデル、ケースといたしまして、零細な漁民が固まっている瀬戸内海でまず試みにやって、その結果を見つつ全国の同種の沿岸で、資源枯渇しているような海面へ普及したいという考えでおりましたが、やはり想像したように、瀬戸内海沿岸の各府県の漁民層は非常に喜んでおるし、また成積もいいようでございますので、明年度は他へも及ぼすように予算要求もいたしておりまするし、これはどうしてもわれわれの力でいかぬところは、むしろくろうとである赤路先生などにも応援をしていただきたい、かように考えております。
  51. 赤路友藏

    赤路委員 おそらくブロックの築いその予算であろうと思いますが、何ぼ要求されておるか、もうここではお聞きいたしませんが、今日の政府の方針からいくと、こんなものはまた相当削ってくるだろうと思う。そこでこの点は今日の沿岸漁業の実態から見て、ぜひ一つがんばって、相当な沈下ができるように御努力を願いたいと思います。  いま一点お尋ねしたいのは、今まで小型底びき機船の整理に伴って、これらを沈船して魚礁としておる、その効果は相当上っておることは、次長の方でも御承知だと思うのでありますが、なお本年度単に小型底びき船だけでなしに、中型底びき船の大型のものを沈船せしめるということのために、これらに対して在来のような買い上げと申しますか、補助と申しますか、そういったような形においてやるという意思があるかないか、この点を一点お聞きしたいと思います。
  52. 岡井正男

    ○岡井説明員 中型の底びきの廃船も利用したらどうかというお話でございますが、その点はブロック的な築いその様式と古船を沈める様式と二通りのうち、いずれの方がいいかということになりますと、今までの調査研究部の資料によれば、ブロックの方がむしろいいわけでございます。それで中型船の廃船にするかどうかも、必ずしもこちらの方がいけないというようにブレーキをかける意思はございませんので、たとえば配置転換によって全然廃船になった、しかもそれが老朽船であるという場合には、それを利用するということは非常にけっこうでございますが、そうでなく、中型船が配置転換によって不要になった場合にも、運搬船としてなお命脈をつなぐようなもの、あるいは他に利用できるようなものである場合には、国として考えた場合にむだであるというような面が出まするならば、むしろそれは地元漁民の総意に従うべきだ、かように考えておりますので、この点は一つなお十分に研究いたします。
  53. 赤路友藏

    赤路委員 研究をいたしますということでございましたが、今の御答弁から推察いたしますと、使用にたえない老朽船あるいは廃船は、そういうふうな措置をとってもよい、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  54. 岡井正男

    ○岡井説明員 けっこうであります。
  55. 赤路友藏

    赤路委員 次にいま一点。もうあとわずかですから一つお願いします。浅海増殖と内水面関係でありますが、日本の海岸線は一万マイルに及ぶ長い海岸線を持っております。この海浜を十分生かして使うということが当然考えられなければならないと私は思う。この海岸線を生かすということは、とりもなおさず海藻であるとか、あるいは貝類であるとかいう沿岸の零細漁家の家族労働を十分活用せしめる、こういうような意味合いからもこれは大きく取り上げられなければならないと思いますが、在来の水産庁内の予算構成を見てみますと、非常にこの点が軽視されておるように思いますが、本三十年度においてどういうようにこれを生かそうとしておるか、構想がございましたら一つお聞かせ願いたいと思う。
  56. 岡井正男

    ○岡井説明員 お答えします。いわゆる沿岸といいますか、零細漁家の家族労働をどういうふうにあるべきかというように受け取ったわけでございますが、私の受け取った通りといたしますならば、一例をあげまして、瀬戸内海などが資源枯渇して行き詰まっておるが、その中で漁民部落で、なかんずく手がたいという行き方をしておるところを見ますと、家族労働をもって島畑のいわゆる段々畑などに非常に努力しておる、いわゆる漁業を半分あるいは七割にして、あとが農業関係で三、四割をまかなっておるというような、家族総出の労働提供による一家の経済というものが非常に確かなように思います。従いましてそういうふうな土地のないようなところは、できればいわゆる簡易な加工奨励をするというような点も考えられるわけでございまして、この点はわれわれも水産試験場の研究普及員を通じまして、ローカルで最も適当だと思うようなところにはそういうふうな実地指導もさせたい、かように考えております。その他いろいろ考えられるわけでございますが、一つ残念なことには、漁村の副業というものが案外にうまくいかないという点は、われわれは将来の漁村をどう持っていくかということについての一つの大きな課題でございまして、これらも内部的にはいろいろ考えておるわけであります。
  57. 赤路友藏

    赤路委員 これらの点は追って三十年度予算の審議の過程を通じてまたお聞きすることにいたします。  内水面関係でありますが、御承知の通り昔は淡水魚というものは大体農村の蛋白給源になっておったように思うのでありますが、最近農作物の育成のために化学肥料が非常に普及され、あるいはまた化学工業の発達に伴って汚濁水が放流される。こういうようなことで非常に全国的に淡水魚が激減しておるわけでありますが、これらに対する内水面漁業に対する施策というものが相当欠けておるのではないかと思う。この点についてどういうようなお考えをお持ちになっておるか、この点お伺いをしたいと思います。
  58. 岡井正男

    ○岡井説明員 むしろこの点は全国的に大きな問題であるにかかわらず、世論として盛り上ってこないというのは、私も自分でふしぎに思っているのですが、これを分析してみますと、大体内水面漁業に従事している者の八、九割まではいわゆる農業関係者でございます。従いまして、一方において米の増産を考える、その派生的な一環としての農薬から悪影響を来たして内水面の資源が枯渇するということでございますので、たまに陳情がありましたのを見ますと、それは専業者の部類でございます。そうして他の兼業をして、いわゆる農業を七、八割やり、間々内水面に従事してこれを生活の補給にしているという面におきましては、これは両方いいことは世の中にないものだというあきらめを持っているのではないかと思います。これは農林省の内部的な問題でございますので、われわれもこれをどういうふうに持っていくかということについては、内部的にも十二分に相談いたしたい、かように考えております。
  59. 赤路友藏

    赤路委員 汚濁水問題ですが、この問題は単に内水面だけでなしに、沿岸の浅海漁業者の面に非常に大きな影響を及ぼしている。従って水産庁としては、この汚濁水防止に対して何か立法措置を講ずる意思があるかないか、この点をお聞きしたいと思います。
  60. 岡井正男

    ○岡井説明員 過去においても水産庁だけで水質汚濁問題についての単独法を企画したこともございましたが、これは通産省も関係を持ち原産省も関係を持ちしますので、もし政府提案でこれを出すとすれば、単独に農林省だけで旗上げをするというようなことではうまくいかぬのではあるまいかという考え方をいたしております。なお御示唆に従いましてそれらの方面とも横の連絡を十分にいたしまして、この問題についてはどこの局においても悩みを持っているようでございますので、一つこれも研究させていただきたいと思います。
  61. 赤路友藏

    赤路委員 次に、私は調査研究のことについてお導ねしてみたいと思います。漁業の計画生産ということは、これは陸上の諸産業と異っておりますので、非常にこのことは至難であると思います。しかしむずかしいからといって、これが放置されておっていいということではないと思うのであります。水産庁として水産行政を担当する上から参りますなれば、一つ計画性を持って、その計画の上に乗って、その基本線に従って水産行政というものが末端までおろされていかなければならぬ、こういうふうに私は考える。だとするなれば、少くとも過去における、あるいは現在の各方面にわたる調査が十分なされ、資料が正確に把握され、その上に乗って初めて水産行政というものは計画性を持って遂行される、かように考えるわけであります。ところが今までの水産資料を見てみますと、こう言っては何ですが、実にずさんきわまると思う。だから水産行政がそのつど行政に陥りやすいんじゃないかと思います。一例をとって申しますと、瀬戸内海です。先ほどもちょっと触れたようですが、現在あの海区に小型底びき船が一万四千隻ある。在来一万六千隻あったものが、小型底びき船の整理によって二千隻整理された。この一万四千隻の小型底びき船で、はたしてあの海区の魚族が乱獲にならないかどうか、この点は瀬戸内海に関連を持つ十一府県の業者の諸君が非常に関心を持っておるところなんです。ところが行って調べてみると、これは基本線が出てない。ある諸君に聞いてみると、一万ぐらいでなければいかぬだろう、あるところで聞いてみると、いや七千隻ぐらいだ、いや現在の状態でよかろう、みんな勘で話をしておる。そこで水産指導所の方へ行ってみると、調査はやっておる、やっておるが十分な調査ができない。こういうような調査が十分に行われないで、勘で行政をやろうとするから混乱が生じてくる。水産行政の基本である調査ということが、相当正確に、しかも精力的になされていかなければならぬと私は思うのです。今日調査資料課というものがあって、非常に努力していただいておりますが、私たちの手元にも調査資料課からの資料はほとんど来ない。課長にやかましく言うてみると、どうも財源がございませんという話です。そういうようなわれわれの手元にすらも調査資料が来ないようなことでやっておるから、水産行政というものはそのつどの行政に陥って、一貫性のある、計画性を持ったものが積み上げられていかない、こういうように思いますので、これらの点は今後十分御研究を願いたい。これは特に政務次官にお願いをしておきたいのですが、どうもこれは日本人全体の癖だと思いますが、勘で仕事をしようとする。これはやはり数字を正確に握る、こういうことでなければねらぬと思います。特にこれは農業統計にしてもそうなんですが、あの農地統計にしましても、固定した異同のない——異同のないといってはあれかと思いますが、それすらもなかなか握れ切れないというのが現在の状況なんです。特に海を相手とする仕事ですから非常に至難です。むずかしい。むずかしいだけにそうしたものにこそ最も大きく重点を置いて、正確に数字を握ってもらいたい。どうも今までの予算の出し方等を見てみますと、目に見えるものには予算を出すが、目に見えないものにはほとんど予算措置をしていない。これでは私はほんとうの水産行政というものは成り立っていかないと思う。特に私のやかましくいいたいのは、一万海里という長い海岸線を持ち、どこを見ても大海に囲まれている日本では、特に現在においても日本の漁業というものは世界一なんです。しかも現在の日本輸出を見てみた場合、第三位が水産物の輸出なんです。非常に大きく外貨獲得に貢献しておる。これはまだまだ伸びる余地がある。ところがそういう面になかなか手が伸びていない。ぜひこれらの面に対しては、十分ウエートを置いて御研究願いたい。もうこの点については御答弁は求めません。希望条件だけ述べさせていただきます。  最後に伺いたいのですが、二十八日に、私は北洋漁業の本年度操業の危険性について、河野農林大臣に御忠告申し上げておいたのですが、たまたま二十八日に根室地区においてカニ漁業船が四隻拿捕された。こういうような私の心配しておった点が、現実の面に事実としてすでに現われてきたかのごとくに思うわけなんです。そこでこの二十八日、大臣に御希望申し上げ、大臣も外務大臣とよく相談をして行きたいと言っておられましたが、母船鮭鱒の操業時期が六月ですから、それまでにはぜひ親善使節をソ連の方に派遣するように、こうした事実が現実に出て来ておるのだから、このまま放っておいたら大へんなことになりはせぬかと思う。その点一つ次官の方でも大臣と御相談願って、また業界の諸君の意見等も十分お聞き願って、その上で速急に対策をお立て願いたい。これを御希望申し上げておきます。  それから水産庁の方に北洋漁業について一点だけ御意見を伺いたいのでありますが、北洋漁場は台風の墓場ともいわれておりますし、魔の海ともいわれておる、非常に気候の激変するところなんですが、それだけに各地の気象通報をとる場合、やはりその方の道の者が相当母船に乗っておって、気候の変転に従って操作をするということが当然考えられるべきじゃないか、現在までの母船操業の母船には、気象台の台員が全然乗っていない、そこに一つの欠陥等がありはせぬかと思いますが、中央気象台等の職員を乗せてこれら不慮の災害を防止するという方法をとる御意思はないかどうか、この点をお聞きしたいと思います。
  62. 岡井正男

    ○岡井説明員 これは冷害対策調査は別個に官庁船を出して調査をやっておりますし、これはやはり継続いたしたいと思います。なお御説の母船に乗せてと言いますが、母船は漁業をやることに精一ぱいでありまして、そういう余地はないのではないかと思いますが、もしそういうことを実現したいと思えば官庁船の調査船とかもしくは監督船の方でそういうことをプラスした作業をやらすということになりますが、これは今すぐに今年の漁期からは実現できないと思います。将来の課題と思います。将来の課題といたしまして、いい御示唆としていただいておきます。
  63. 赤路友藏

    赤路委員 ただいま次長の御答弁によると、海洋調査とおっしゃっておるのですが、北洋に対しては定点観測を以前のようにやっていないのです。これは復活していない。定点観測が以前のように復活した状態下なれば、今おっしゃることは私も納得が行くのです。ところが定点観測自体がああいう形において復活をしないで、そのまま単なる時期的な調査ということになっておる。南方と違って北洋海域というものは非常に気候激変がある。私は洞爺丸事件にしてもそうだと思う。あそこのあの気流の谷というものを定点観測をやらないために正確に握っていない。それがああいう結果を越したこれまた一つの原因だと思う。こういうことを将来心配するから、少くとも母船に対して一人くらいは、そういう技術者を乗せることは、災害を防止するという意味からでもとっていただかなければならぬのではないかと考えるわけなんです。もちろんそれは母船といえどもそれぞれ作業船でありますが、しかしながら二人くらいは乗せ、その程度の設備はやってしかるべきだと私は考えます。答弁は求めませんが、一つ十分御研究置きを願いたい、こういうふうに思います。     —————————————
  64. 綱島正興

    綱島委員長 かねて御依託を受けておりました小委員の任命は、公報で発表することに申し上げておきましたが、時間の都合等もございますので、ただいまここで皆さんの御依託によって小委員を任命いたすことにいたします。  食糧に関する小委員       安藤  覺君    石坂  繁君       笹山茂太郎君    松浦 東介君       大野 市郎君    松野 頼三君       松山 義雄君    足鹿  覺君       石田 宥全君    佐竹 新市君       中村 時雄君    久保田 豊君  林業に関する小委員       井出一太郎君    大森 玉木君       野原 正勝君    本名  武君       中馬 辰猪君    塚原 俊郎君       松野 頼三君    有馬 輝武君       石村 英雄君    伊瀬幸太郎君       川俣 清音君  水産に関する小委員       赤澤 正道君    加藤常太郎君       白浜 仁吉君    原  捨思君       川村善八郎君    鈴木 善幸君       塚原 俊郎君    赤路 友藏君       石村 英雄君    佐竹 新市君       日野 吉夫君  農業及び漁業災害、補償制度に関する小委員       伊東 岩男君    石坂  繁君       木村 文男君    原  捨思君       足立 篤郎君    助川 良平君       鈴木 善幸君    赤路 友藏君       足鹿  覺君    伊瀬幸太郎君       稲富 稜人君  畜産に関する小委員       安藤  覺君    楠美 省吾君       野原 正勝君    本名  武君       足立 篤郎君    大野 市郎君       川村善八郎君    井谷 正吉君       有馬 輝武君    稲富 稜人君       中村 時雄君  蚕糸に関する小委員       五十嵐吉藏君    井出一太郎君       笹山茂太郎君    松浦 東介君       助川 良平君    中馬 辰猪君       松山 義雄君    井谷 正吉君       楯 兼次郎君    川俣 清音君       日野 吉夫君  なお小委員長は、  食糧に関する小委員長松浦東介君  林業に関する小委員長川俣清音君  水産に関する小委員長鈴木善幸君  農業及び漁業災害補償制度に関する小委員長足鹿覺君  畜産に関する小委員長野原正勝君  蚕糸に関する小委員長中馬辰猪君  以上の通り指名いたすことにいたします。     —————————————
  65. 綱島正興

    綱島委員長 これより本委員会に付託になっております国有林野整備臨時措置法の一部を改正する法律案を議題といたしまして提案者の説明を求めます。篠田君。     —————————————    国有林野整備臨時措置法の一部を改正する法律案   国有林野整備臨時措置法の一部を改正する法律   国有林野整備臨時措置法昭和二十六年法律第二百四十七号)の一部を次のように改正する。附則第二項中「昭和三十年三月三十一日」を「昭和三十三年五月三十一日」に改める。     附 則    この法律は、公布の日から施行する。     —————————————
  66. 篠田弘作

    篠田弘作君 ただいま上程せられました国有林野整備臨時措置法の一部を改正する法律案の提案理由の御説明をいたします。  現行国有林野整備臨時措置法は、去る昭和二十六年六月二十三日に施行せられ自来今日までに約十四万町歩の国有林野を売り払い、また交換面積におきましても国有林野五千三百町歩、民有林野九千六百町歩に達し、大きな実績を示したのでありまして、本法の施行実施は地方公共団体の財政確立並びに農山漁村経済の振興に寄与するところ多大でございまして、本法の継続実施に対する要望がはなはだ強いのであります。他方国有林野のあり方といたしましても、民有に移すべきものはこれを払い下げ、国有林野の合理的経営を一段と強化する必要もございますので、本法の適用期間をさらに三ヵ年延長いたさうとするのが、本法案提出の理由であります。  なお本法案は議員提出でございまして、提案書として民主党の安藤覺君外五名、自由党篠田弘作外三名、計十名の提案になり、賛成者として民主党三十五名、自由党三十名、合計六十五名の署名をもってここに本法案を提出いたした次第でございますが、御承知の通り国有林野整備臨時措置法は本日をもって失効する運命にございますので、すみやかに御審議の上、本法案の成立にぜひとも御賛成を賜わりたいと存ずる次第でございます。
  67. 綱島正興

    綱島委員長 御質疑がございましたら、簡単にお願いをいたしたいと思います。
  68. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 林野庁長官にお尋ねいたしたいと思いますが、本法案によって処分されました既決分の件数並びに面積、さらに未決分の件数並びに面積をお知らせ願いたいと思います。
  69. 柴田栄

    ○柴田説明員 お答え申し上げます。林野整備によりまして、契約をいたしました件数は、総体で売り払いが二千五百二十五件、面積にいたしまして十三万七千九百四十五町歩でございます。なお交換の口数は合計いたしまして百四十四、国有林側の分といたしましては五千三百三十三町歩、民有林側といたしましては九千六百町歩、以上のようになっておりますが、成立しなかった件数と申しますと、実はこれは申請に基いて処理いたす筋合いではないのでありまして、国有林野整備臨時措置法の趣旨によりまして国有林野を整備するという場合に、売り払い可能の対象を一応国有林側で調査いたしまして、それに対しまして地元あるいは縁故者、法律に規定しております順位に従いまして交渉を進めまして、今日まで完了いたしましたのが以上ということになっております。そこでしいて申し上げますれば、当初に適地調査を完了いたしましたのが約十五万一千町歩でございまするが、そのうちでただいま申し上げましたような数字が実際に契約ができたわけでございます。そのほかに約五千町歩というものが今後の町村合併促進法に基きまして売り払いを大体予定いたし、折衝をいたしておるものでございます。その残余が一応地元のその後の資金の手当その他の関係からお断わりになった分、あるいは御希望に合わなかった箇所で、最初から話の成立しなかったもの、こういうようなことに相なるわけでございます。従いましていわゆる不成立という問題は、実ははっきりいたさないということになるわけであります。
  70. 石田宥全

    ○石田(宥)委員 概要はわかりましたが、この整備臨時措置法によってて処分されました案件については、全国至るところにおいて払い下げを受けた側でいろいろ紛争を生じ、払い下げを受けたものが、その趣旨や条件に反するような再処分などをいたしまして、町村または部落等に各種の紛争が起っておるようでございまして、大体私どもの承知しておる範囲においては、その件数はきわめて多いのであります。林野庁では大体その実情はおわかりだと思いますが、そういう紛争等に関する概要を御説明願いたい。
  71. 柴田栄

    ○柴田説明員 国有林野整備といたしましては、国有林側としての整備は一応ほぼ目的を達したということになりますが、その半面に整備法によりまして売り払いました林野に関しましては、地元の御管理によりまして一層よりよい管理経営をしていただく、こういう目的をもって実は払い下げをいたしておるわけでございますが、正直に申し上げますと、その後の結果におきましては、御指摘のような問題が相当起っておるという点を率直に認めざるを得ないのでございまして、まことに遺憾に考えておるのであります。その主たる問題は、やはり買い受けていただく場合の資金の問題——私ども交渉を続けております際に、資金は大丈夫だというお話を聞いておりますが、真に資金の手当ができていない、あるいは直ちに切って売って資金の調達をしようというような御計画等があったというような問題等もありまして、その後木材価格の値下り等のために、最初買い受け側で予定しておられるようなわけに参らなかったういうための紛争等が起っておりまして、この点は非常に遺憾に存じております。これはさらに反省いたしますと、私どもの調査あるいはその後の指導が十分でなかったという点は率直に認めざるを得ないのでございますが、何にいたしましても、最近のように非常に材価の変動かつ下落傾向にあります際に、やはり経済問題をめぐって今後もある程度のごたごたが起り、あるいは村の財政につきましても問題が起りはしないかということを心配しておる次第でございます。
  72. 綱島正興

    綱島委員長 その他にはございませんか。——しからばこれにて質疑を打ち切りまして採決に入ることに御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  73. 綱島正興

    綱島委員長 しからば採決に入ります。
  74. 井出一太郎

    ○井出委員 議事進行について。ただいま伺いますと、すでに本会議も散会になったようでございます。従いましてこの委員会が討論採決をいたしますということも、本法案の趣旨からいたしましていかがなものか、こう存じます。従いまして理事会を開いて、もう一度その善後措置を御協議いただきたいと存じますが、委員長においてよろしくおとりはからいを願います。
  75. 綱島正興

    綱島委員長 ただいまの井出委員の動議に皆様いかがでございますか。賛成の方は御起立を願います。     〔賛成者起立〕
  76. 綱島正興

    綱島委員長 理事会を開いて考え直すという動議は不成立
  77. 中村時雄

    ○中村(時)委員 委員長はこの問題を取り上げることを一応諮っておきながら、こういう発言を許すから、そういうことになる。そうしたことは大いに慎しんでもらいたい。
  78. 綱島正興

    綱島委員長 採決いたします。ただいま議題になっております国有林野整備臨時措置法の一部を改正する法律案に賛成の方の起立を願います。     〔賛成者起立〕
  79. 綱島正興

    綱島委員長 起立少数。本案は否決となりました。(拍手)     —————————————
  80. 綱島正興

    綱島委員長 これより質問を続行いたします。川俣委員
  81. 川俣清音

    ○川俣委員 この際改良局長に一つ聞いておきたい。農事試験場におけるいわゆる種類の新種を発見するには相当の期間を要すると思います。いわゆる最近の気候状況に応じまして品種の改良が非常に盛んであります。これらの品種の改良は短年月では目的が完成できないと思いまするけれども、さよう考えておられませんかどうか。
  82. 小倉武一

    ○小倉説明員 品種の育成からその改良ということになりますと、数年ないし十年余りかかります。
  83. 川俣清音

    ○川俣委員 そのためにかって財政法を改正しようとして国会に提案されたことがございます。それは新しい国会になりましてから継続費というものを認めない建前をとっておりましたのを改めて、継続費を認めようという財政法の改正が行われました。この財政法改正の継続費の根拠といたしまして、農林省から、品種の改良と試験事業等は継続的な経費を持たなければ目的が達成できないのであるからして、継続費を財政法の中に入れてほしいという提案の説明がなされております。従いましてこういう試験研究というようなものは、継続費として年々予算を継続的に組みたいという考え方が、かつて農林省にあったはずでありますけれども、今なおその考え方でおられますかどうか、その点伺いたいと思います。
  84. 小倉武一

    ○小倉説明員 試験研究が育種というようなものを含めて考えますと、御承知のように、計画的な、また長期的な仕事でございますので、どちらかと申しますと、継続的な部類に属すると思います。
  85. 川俣清音

    ○川俣委員 本来でありますれば、財政法改正の場合に、継続費として認めてもらわなければ非常に試験研究というようなものは不安定であるということから、わざわざ改正せられたのでありますけれども、法律を改正しながらあまりこれをお使いになっておりませんのは、どういう理由ですか。
  86. 小倉武一

    ○小倉説明員 私財政法の関係はよく存じませんけれども、実際問題としては、育種の関係は年々大きく変動しておりませんので、今のところはほぼ所期の目的を達成しておるのであります。
  87. 川俣清音

    ○川俣委員 そういうことになりますと、本来であれば、継続費として予算を確定しておくことが必要なのであるけれども、一面から言うと、国会の財政上の審議権を犯すおそれもあるので、現実的には継続費的予算の捻出方をいたしておる、こう了解してよろしゅうございますか。
  88. 小倉武一

    ○小倉説明員 育種といったような試験研究に属することは、ほぼそういうふうに従来措置いたしております。
  89. 川俣清音

    ○川俣委員 そういたしますと、少くとも継続費的な予算を本来といたしておりますならば、四月、五月の暫定予算の中になぜこれをお組みにならなかったか。農林省が伝統的に試験研究は継続的な性質のものでなければならないと主張し、法律改正まで迫っておりながら、四月、五月の暫定予算にこれをお組みにならなかった理由をこの際明らかにしていただきたい。
  90. 小倉武一

    ○小倉説明員 もちろん国立の試験場、研究所等の人件費等については、これは組んでおります。育種というのは、国立の試験場でいたすことになっておりますので大筋はほぼそれで達成できると存じます。一部地方の試験場に委委託的に出しておるものがございます。この点についてお尋ねのような問題が生ずると思いますけれども、これは二ヵ月の暫定予算で地方交付金で十分まかなえる、かように存じております。
  91. 川俣清音

    ○川俣委員 これは国の試験は四月、五月に組まなければならない。しかもそれを完成させるために委託試験を指定いたしておる。指定するということは、当然経費を国が負担するという責任を負っておるはずだと思う。これを平衡交付金で見るということになりますと、継続費の意図と違いますよ。交付金ういうものはそういうひもつきができるかできないか、今でも問題になって、疑問になっているでしよう。継続費の観念と交付金の観念とは違うですよ。これは単なる補助金と違いますよ。地方財政を見てやるというような恩恵的なものではない。これは国の基本方策として、いわゆる新種発見のために、あるいは耐寒性のために、あるいは耐熱性のために、あるいは耐病性の新品種を作り上げる、そのことが日本農業を発展させ、増産に寄与する大きなゆえんであるといって、指定して試験研究さしておる。これは交付金でまかなえるといって指定しておるのではありません。農業改良助長法によりますと、補助金を交付するとある。義務を負っているでのす。金額の義務はあるいは負っておらないかもしれぬ、あるいはときには金がないのだ、いつ交付するというような期限がないのだからういうのは詭弁ですよ。試験研究というものは、前年から計画がされ、これが季節に応じて即時実施されなければできないものなんです。あとでさかのぼってもう一ぺん春になってくれい、そのときになって試験をするなんて逆戻りは気候はできない。太陽はこれをさか立ちさせるわけにもいくまいし、左巻きさせるわけにもいくまい。どんな人だって西山に没する日をまさか食いとめることもできなかったことは、これは歴史に明らかなんです。それを、期限があるのを、おくれてからもう一ぺん四月にさかのぼって試験研究してくれなんていっても、できるものじゃありません。どういうわけで組まなかったか、もう一度御答弁願いたい。交付金なんでとんでもないことですよ。
  92. 小倉武一

    ○小倉説明員 組まないという積極的理由はございませんので、内閣の方針で、義務的な経費でも義務教育の補助負担と申しますか、それ以外は、特に地方公共団体に対するものは組まない、こういう方針がございまするので組まなかったのでありまして、もちろん改良助長法の関係、この法律の趣旨は、非常に広く申し上げますれば一種の義務的な費用とも言えますけれどもいわゆる義務費ういうよりはむしろ普及事業なりあるいは試験研究なりについて国が助成をするという政策を鮮明にしておく、こういう意味では広い意味での一種の義務経費でございます。しかしさしあたっての問題といたしまして、これを交付金でまかなって、後にしかるべく処置をする、こういうこともできるのでございますし、そうやることが今の農業改良助長法に違反になるとは思いませんので、もちろん早く組めばそれに越したことはございませんけれども政府の方針でさようにいたしておるのであります。
  93. 川俣清音

    ○川俣委員 これは政府の方針でやったということになりますと、事務当局から言うと、事務的にはこの予算を組むのは当然だったけれども政策的にこれを削られたと、こう理解してよろしいですか。
  94. 小倉武一

    ○小倉説明員 予算編成の方針と申しますか、そういうことはもちろん政策に関することでありますので、そう言えばまさに川俣委員の御説の通りでございます。その方針に従って措置いたしましても、試験研究に特別の支障は生じない、かように私どもは判断いたしたのでございます。
  95. 川俣清音

    ○川俣委員 予算説明並びに大臣の説明によりますと、純事務的なものは組んであるけれども政策的なものは一つも組んでいないのだ、こういうことですが、これは明らかに政策を加味せられて削られたと、こういうふうに理解してよろしゅうございますか。
  96. 小倉武一

    ○小倉説明員 個々のものを四、五月の暫定予算に一部載せるか載せないかということも判断してやったならば、これは確かに政策の加味ということになりましょうが、初めからそういうことを審議せずに、特別の例外以外は載っけないということでございますので、そこに個々の問題について政策的な判断を加えられた、こういうふうには考えていないのでございます。
  97. 川俣清音

    ○川俣委員 それはどうも改良局長の答弁はおかしい。というのは、これはこの前の補助金の整理のときに、大蔵省はなるべくならば交付という文字を予算編成の上から削りたい、これは義務を仰せつかったような結果になるので、義務的な法律はこれを義務的でない法律に改正したいという意見が述べられておるのです。現行法は義務があまり強過ぎると主張されている。それで改正を要するというのが財務当局意見なんです。それじゃおかしいじゃないですか。改正を要する、あまりに義務が強過ぎるから改正を要するというのに、それは義務を仰せつかっているのじゃないというような解釈を農林省みずからがとるのはおかしい。財務当局自体がこれは義務的な法律でこれを改正したい、こう言う。これはおかしくありませんか。大蔵当局がこれを義務的に負担を負わせられるということは困る、それで改正したい、こういっておる。それをあなたは義務的じゃないと、こういうのは——財務当局は義務的だ、それで改正したいというのに、あなたはそれは義務的じゃないというのはおかしいじゃないか。財政当局みずからがこれは義務的だから改正したいといっている。これは速記録を見てごらんなさい。これをあなたは義務的じゃないというのは、どこから解釈したのですか。財政当局ですらこれは義務的なので改正したい、こういっているのです、あなたのような解釈なら、大蔵当局はそんなにあわてなくていいのじゃないかと思う。
  98. 小倉武一

    ○小倉説明員 国が補助金や負担金を出す法律上の根拠としましては、表現はいろいろございまして、これはただ予算の範囲内でできるという表現もございますし、今の助長法のように、交付するといったようなことを一方的に宣言したような格好になっているのもありますし、あるいは明らかに負担しなければならぬ、しかもその仕事の内容が国家的であるといったような場合には、はっきり義務的な費用といっております。そういった、法律的にも義務的なものと、ただ補助できるといったような規定のちょうど中間みたいなところに位置しているのが改良助長法の規定ではないかと思うのであります。しかも仕事の性質から見ますと、協同農業普及事業といったような字に現われておりますように、国と府県とが共同してやるという建前になっておりますので、この共同の、国と府県とでこういう仕事をやろうという一種の契約ができましたならば、法律の補助率に基く金額を交付する、こういう義務が初めてそこで生じて参るのではないかと思います。法律はただそういうことを内容とする一般的な政策を宣言している、そういう意味で確かに一種の義務でございますけれども、法律上やかましい意味の義務というには考えられないのでございまして、それは協同普及事業をやるという申請が県から出て参りまして、農林省でそれについての必要な金額を割り当てる。こういうところで初めて義務という問題が生じて参る、かように考えております。
  99. 川俣清音

    ○川俣委員 先ほどにさかのぼるのですが、継続費的な内容を持たなければならないといってあえて主張して財政法を改正せられたのです。しかもその財政法改正も、国会の審議権を拒絶するような結果になるから継続費的なものは必要ではないのだということで、木村禧八郎君は執拗果敢にこの継続費は否認しておる。それをなお強調して、試験研究などというものは継続費的な意味を持たなければ成り立たないのだと言って強調せられておる。しかも改良助長法を説明している。こういうふうに義務を負っていかなければ試験研究はできないのであるから、ぜひとも継続費を認めてほしいということをるる陳弁して、財政法に継続費を認めることに改正が成り立っておる。しかし、継続費があるからといって、継続費をとることがいいか、悪いかということは別ですが、本来試験研究というものはそうあるべきものだということ、法律に書いていようと、そういう必要があるという建前をかってからとっておられる。それを今になって、法律で書いてあるけれどもこうだ、ああだ。何のために試験研究のために継続費が必要だと主張されたのか。この継続費という観念は、年度々々によって予算がかわるというようなことであるならば、試験研究が不可能になるという主張なのです。数ヵ年通算されていなければならない。継続費としなくても、毎年責任を負うからあえて継続費の必要はないのだけれども、継続費的な性質を持ってその予算を組んでおるのだ、これで初めて説明がつくのです。あとでやるからいいなんというのでは、何も継続費の必要はなかったと思うのですが、その当時主張したのは誤まりですか。私はそれは誤まりだと思わない。従ってその意をくんで国会はあえて財政法の中に継続費を認めたものだと思うのです。もう一度御答弁願いたい。
  100. 小倉武一

    ○小倉説明員 農業のような産業についての試験研究でございますから、試験研究については継続費的な部分相当多いのであります。継続費的に予算を組んでいただくというようなことが非常に都合のいい部面が多いことは御承知の通りであります。しかし現在のところ、またこれまでも試験研究について財政法上の継続費として組んだことはございません。しかし事柄の性質はどちらかと申しますと年々改造々々ということで、いつ切られるかわからぬということでは長期的な試験研究もできない、これも御説の通りでございます。しかし今年のような特別な事情でございますれば、これがたまたま暫定予算に載らないということが試験研究に重大な影響を与えるということはなかろうと存じます。
  101. 川俣清音

    ○川俣委員 継続費的なものということは経費を安定させていくという意味なのです。従って暫定予算の中に組まないということは——一体六月になってどうなるかということは、国会の審議を待たなければ言明できないことでしょう。本予算の中に組むのだということは役人や内閣の言うことであって、国会はどうなるかわからないじゃないか。そこまで干渉することは、必ず組んでくれるであろうということは、国会の審議権を無視することになる。組む組まないということはあなたの言うことでなくて、こちらの言うことですよ。おそらくそれだけ理解を持っておれば組むであろう、あなたはそう言うかもしれぬが、それはあなたがそう考えるだけであって、試験所は必ずそう考えるかどうかは疑問なんです。国会の意思決定を待たなければならない。事務的に継続費的経費を組むならば、試験研究というものがそういう本質を持つならば、少くとも暫定予算に組まなければならない。ここに組んであることが事務的に試験研究を助成していく、また精神的にも助成していくゆえんだ、あなたはそうお考えにならなければ、今後、試験所を鞭撻督励する上に大きな支障があるのではないかと思のです。新しい局長でありますからあまり質問することは少し遠慮申し上げましてこの程度にいたしますが、これは試験所を鞭撻督励する上で大きな支障になりますよ。これを挽回する御意見はございますか。
  102. 小倉武一

    ○小倉説明員 試験研究は研究者が安心して研究する——特に府県でございますから、そういう観点からいいますれば、一時でも予算が不安定な状況にあることは好ましくないものだということは御説の通りであります。ただ私ども、川俣さんも御指摘通り事柄の継続性、重要性ということを確信いたしておりますので、よもや予算から落ちるということもなかろう、こういうふうに考えております。その意味で研究者もわれわれあるいは国会を信頼して研究を進めてくれる、こう思っておるのであります。
  103. 川俣清音

    ○川俣委員 そんな熱意のないことだったら、事務的にさえきまらないものを予算に組むかどうかわかりませんよ。実際そんなことじゃ不安で組めませんよ。このことは試験所ばかりではなくて、土地改良区の採種田を作る。この採種田についても初めから予定して組まなければならぬ。これだけは交付金でいいではないかというかもしれませんけれども、交付金の分配が一体どうなるかという見通しがないですよ。金額は相当なものになるかもしらぬけれども、採種田の補助が来るか来ないのか疑問なんです。あるいは一方から補助金が打ち切られるのだということでこれも打ち切られるかもしれぬということになると、もはや採種の作業に入らなければならぬのに、本予算を組んでから採種田をもう一ぺん作り変えるなんということは実際できないことなんです。採種田がうまくいきませんと、去年の北海道の冷害を見ましても、種もみで非常な苦労をされたじゃないですか、非常な経費をかけられたじゃないですか。わずかな補助金を削られることによって国費を浪することになる。だからこれは信用してあとでやってくれといっても、そう信用できない。とにかく暫定予算でも少いものを組んだ、あとで本予算でもう少しふやしてやるというならほんとうだが、暫定予算でも組まないで、本予算でバックしてやろうといったって、これは不安だということになる。試験所が不安だったならば、その普及指導に当っている普及員はもちろんのこと、その実施面に当っている農民だって、これは不安ですよ。これは大いに心得てやってもらいたいと思う。これは御注意だけで、これ以上は責め立てません。  そこで次の質問に移りまして、食糧庁にお尋ねしますが、大臣は昨年の暮れの作況指数から判断いたしまして、減収加算をしなければならないという主張をしておられるのです。また時の民主党の内藤政務次官は、大臣が言明したからには、あの大臣は実行力がある人だから、必ず間違いなくやってくれる。これ以上委員会に引っぱり出さないでも、大丈夫と言ったことは必ず実行する男だからと太鼓判を押して信頼させたわけです。大臣も、おれがやると言ったならば必ずやると言っておられるのですけれども、いつ実行なさるのですか。
  104. 清井正

    ○清井政府委員 ただいま御質問の減収加算の問題でございますが、これは先般の国会でも私御説明申し上げましたが、御承知の通り当り百四十円の計算をいたしまして、その当時から大蔵省と折衝を続けておったのでございますが、その当時まだ話がつかず、引き続き今日まで折衝を続けておりますけれども、いまだに話がつかないという状態であります。私どもといたしましては、ひとつ九分通り組みたいと思いますけれども、残念ながらまだ決定の段階に至っていないのであります。この問題につきましては、至急結論をつけたいと思って目下折衝いたしておる最中でございますから、御了承願いたいと存じます。
  105. 川俣清音

    ○川俣委員 これは食糧庁長官の単なる責任ではないと思う。大臣が再び農林大臣になられた以上、おそらく前のことを実行しようと思って就任されたと思うのです。前のことが実行できないようであったならば、おそらく大臣になることを拒んでおられると思うのです。責任を果せないのだったら、農林大臣でなくて別なところに回してくれといったことになるのだと思います。再び就任されたということは、国会における言明を実行されるものと私どもは期待をしてよろしいと思うのですが、長官はこの言明を裏切らないような措置を講ずるために今後どれほど努力されるつもりですか。
  106. 清井正

    ○清井政府委員 ただいま御説明申し上げました通り、その問題につきましては、私どもといたしましては、全力をあげて大蔵省と折衝いたしておるのでございます。しかしながらまだその問題について、残念ながら結論を得ないのでありますが、私といたしましては当初御答弁申し上げた通り、できるだけその成果を上げるように今後折衝して参りたい、こう考えております。
  107. 川俣清音

    ○川俣委員 その点もし実行しないというと、農林大臣の食言問題が起きる。なお大蔵当局にも農林大臣をして食言させるような結果になると、これは重大な結果になります。このことを警告しておいたはずなんです。従いまして、私は全努力を払っておりますというようなことだけでは済まされない問題だと思うのです。少くともあなたがこの言明をした農林大臣のもとに食糧庁長官を勤めておる以上は、大臣に食言をさせるというようなことになりますと、ともどもに責任を負わなければならぬ結果になるだろうと思う。農林大臣に食言をさせるということは重大なことですよ。ですから、これは食言というような結果になりますと、当然食糧庁長官の責任も非常に深いと私は思いますから、食言にならないようにお努め願いたいと思いますし、食言した場合は、おそらく責任をとられるものとそう信じて私の質問を打ち切ります。
  108. 綱島正興

    綱島委員長 鈴木委員
  109. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 私は石油の問題、特に農林漁業用燃油の確保の問題につきまして政府にお尋ねをいたしたいと思うのであります。通商局長や鉱山局長もまだお見えになりませんから、まず大蔵省の関税部の方にお尋ねをいたしたいと思うのであります。政府は、昨日衆議院の本会議の議決によりまして、六月まで石油に対する関税の延期の法案を提案になりまして、これが決定いたしたのであります。今まで毎年一年ずつ延期をいたして参ったのでありますが、今年に限り六月までの延期にとどめました理由はどういうことであるか。この点をまずお尋ねしたい。
  110. 木谷忠義

    ○木谷説明員 お答えいたします。重油、原油の関税の免除でございますが、三月末日をもって切れることになっております。それにつきまして四月以降をどうするかということにつきましては、さしあたり三月だけ延長したいということで、政府から法律案をこの国会に提案しております。衆議院を通りまして、きょう 午前参議院の委員会通りました。この法案が成立しますれば、四月、五月、六月、三月間は現在通りといいますか、従前通り免税が延期になるということに相なることと思います。従来一年間免税した例もございます。また昭和二十八年には参議院の緊急集会がございまして、ほんのわずかな期間だけ延ばして、あと八月一日から翌年の三月末まで延ばしたという前例もございます。今回三月だけ延ばしたといいますのは、税制関係の改正法律案を七月一日から実施したいということを大蔵省の方で考えておりますので、それとあわせまして、税に関係する法律案の本格的なやり方として七月一日から実施したい。そういう意味合いをもちまして、三月だけ暫定的に延ばしたのであります。
  111. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 ただいまの御答弁で、七月から実施予定の税制全般の改正とにらみ合って、とりあえず六月までの延期にとどめたという御事情がわかったのでありますが、私どもは今日までの政府部内の空気からいたしまして、単なる、ただいま御答弁になったような事情だけでなく、石炭対策あるいはまた財源を確保する意味合い等からいたしまして、三十年度の本予算編成の際における財源等とにらみ合せて、今回限りそのような短期間の延期にとどめたのではないかということを一般に心配をいたしておるのであります。そこで大蔵当局においては、七月一日から全般の税制を扱う場合に、この重油、原油に対する関税は、引き続きこれを免税するような方針を堅持されてそれに臨まれておるのであるかどうか。全然そういう腹構えが今できておらぬのであるかどうか、その点をお尋ねしたいと思います。
  112. 木谷忠義

    ○木谷説明員 お答えいたします。原油、重油の関税の問題につきましては、燃料の総合対策と申しますか、各方面から目下検討中でございます。あるいは石炭対策等もあることと存じますが、そういうふうな各方面のことを総合勘案しまして、その上で成案を得たいということで、目下関係各省と折衝打ち合せ中でございまして、成案を得次第、法律案として出したいということに相なっております。
  113. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 だいぶお考えがはっきりして参ったのでありますが、さらに念のために重ねてお尋いしたいのであります。それは総合的な燃料対策の一環として、特に石炭の対策としてこの問題を考えておられるのが主であるか、それとも予算編成の際における財源——七十億によるというこの財源を確保するためということに主たる重点があるのであるが、この点を重ねてお尋ねしたいと思います。
  114. 木谷忠義

    ○木谷説明員 石油の関税につきまして、石炭対策として、石炭の保護というふうな意味を主にして改正するか、改正と申しますか、免税を打ち切るか、あるいは財政方面を主とした考えから免税を打ち切るか、どちらの考えかというお話でございますが、関税の面から申しますと、ある場合には保護関税といいますか、生産保護という面もあり、また一方から見れば、それによって関税が設けられて、関税収入があがってくれば、その面からまた財政収入ということも生まれる、いずれを主かということは、そのものにつきまして両方の面がございますので、どちらともはっきり申し上げかねる場合もあると思います。
  115. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 そこでこの場合は一体どちらが主になって、今までとって参りました臨時措置を再検討なさっておるのであるか、その点を明確にお聞きしたい。と申しますことは、石炭対策でありますれば、これは石油類の関税問題とは切り離して、別個の立場から検討すべきものである、私どもはさように考えておるわけであります。また保護関税というような考え方であるといたしますならば、国産油が現在占めております数量等から勘案いたしまして、全体の重要産業の生産費引き下げに直接響くような大きな影響力を持ったところの石油類に対する関税は、非常に比率の低いわずかの国産油保護というようなことでとらるべき政策ではない、こういうように考えておるわけでありまして、この点は政府が住宅対策あるいは社会保障対策等に対する公約を実行するための財源確保の観点からもっぱらねらっておるのであるかどうか、そういう点を明確にお伺いしたいということであります。
  116. 木谷忠義

    ○木谷説明員 ただいまのところ各省と打ち合せ中でございまして、どういうことを主にしてこういうふうなことに相なるかということは、ちょっと申し上げる段階にまだ来ていないのでございまして、はなはだ遺憾でございますが、なお研究を続けたいと思います。
  117. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 あなたにそういうような基本的な問題をお尋ねすることそれ自体があるいは無理かもしれませんが、ただ私がここで申し上げておきたいことは、この石油類に関する関税免除の問題を再検討する考えの中に、石炭対策等のためにこれを取り上げておるという考え方がもしもありといたしますならば、これは日本の燃料政策に対する重大な問題であります。特に農林、漁業用の油、漁業用の燃油に関しましては、現在ほとんど石炭を使用しておるところの船はございません。全部重油と石油を使用いたしておる。従って全然石炭の増産あるいは価格安定対策に関係のない漁業者にそういうしわ寄せ、犠牲をしいるということは、これはとうてい現在の漁業経済では負担し切れない大きな犠牲に相なるわけでありまして、さような観点からも、少くとも漁業用の燃油あるいは農林用の石油類につきましては、この関税がたといかけられるように相なりましても、特別な配慮をする必要があるんじゃないか、こういうことを私は申し上げたいのでありますが、その点どう考えておりますか。
  118. 木谷忠義

    ○木谷説明員 漁業と申しますか、水産の方で使う重油、石油の関税がかかることになると、その方面へのはね返りが大きくなるということでありますが、その点は私らも十分承知いたしております。しかしこれを今どういうふうにするかということについては、先ほど申しましたように、目下検討中でございまして、ちょっと申し上げかねるのであります。
  119. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 水産庁当局にこの際お尋ねしておきたいと思うのでありますが、現在の逼迫した漁業経済の実態からいたしまして、現在でもA重油で政府の平均価格として示されております額でさえ、一万五千五百円というように非常に高い価格でありまして、漁業経営はやっていけないような非常に高い価格に相なっております。生産費の三割以上を占めるこの石油の価格の高騰に直接結びつくところの関税の問題は、水産行政の面からいっても非常に重大な問題であると考えておるのであります。 そこでこれから七月までの間にこの関税の問題もあらためて再検討することも政府では考えておられるようでありますが、水産庁当局は今日の漁業の実態から見て、政府部内の結論を出すまでの間、いかような態度で折衝に臨まれるか、その御決意のほどを一つお示しを願いたい。
  120. 増田盛

    ○増田説明員 お答えいたします。ただいまの漁業用燃油に対します関税の賦課問題に関しましてはまことにごもっともなことでございまして、私どもといたしましても、幸いにしてここ三カ月の猶予期間がございますので、この期間を利用いたしましてあらゆる努力を払いたい、かように思っておりますので、どうぞこの点に関しましても今後委員の方々の一そうの御協力をお願いする次第であります。
  121. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 それでは関税の問題はこの程度にいたしまして、十分漁業の実情を御認識いただきまして、従来とってこられたような方針を堅持されて進まれることを強く御要望だけを申し上げておきたいと思います。  そこで水産庁にお尋ねをいたしたいのでありますが、先般政府の勧告に基くものでありますかどうかわかりませんが、石油関係業者の間で自主的な措置として値下げの措置をする、それはA重油にてトン当り七百円の値下げをするということを政府の方に申し出があり、政府はこれを了承されたというようなことが伝えられておるのでありますが、このことについて、七百円の値下げについて、水産庁当局は、現在の漁業経済の実態から見て妥当なる値下げであるという意味合いでこれを了承されたのであるかどうか、この点をお尋ねいたしたいと思うのであります。
  122. 増田盛

    ○増田説明員 七百円の値引き額の妥当性でございますが、この点に関しましては、率直に申し上げまして、私どもの希望といたしましては、もう少し下げ得られないかどうか、こういう点に関しまして通産当局に申し入れておったのであります。しかしながらこの値引き額の基礎になります生産コストというものを水産庁はもちろん、あるいは通産当局にいたしましても、われわれの求めに応じましてはっきり提示できる態勢にないのでありまして、私どもといたしましても、もう少し下げてもらいたいという主張もしたのでありますが、結局いろいろな折衝の結果、現在は統制価格でないのでございまして、やはり結果的に申し上げまして、業界の自主的なとりきめによりまして価格の値引きをする以外に方法がない、こういうことになったのでございます。従いましてこの七百円というものに関しましても、あるいはこれを地区別に検討して参りますと、やはりいろいろな問題が出てくるのじゃないかということでございまして、私どもは七百円をまっこうから取り上げるのではないのでありまして、地区別に出て来ましたいろいろな漁港別の価格を基礎にしまして、それを私たちの立場から再検討してみたい、かように考える次第であります。
  123. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 ただいまの生産部長の御答弁によりましても、今回の業界自粛による七百円の値下げは、政府側として十分納得したものでない、ただ現在自由販売の形であって、業界側がこの程度の勉強がせいぜいであるというような形で持ってこられたので、やむを得ないものとしてこれを了承したというような工合に私ども受け取れるわけでありますが、また現在の政府が抜本的な対策がありながらとらないで、業者にまかしておる限りにおいては、それ以外に方法はないじゃないかというように私どもは思うのであります。私どもは、すでに解散直前の国会におきまして、衆議院及び参議院の水産委員会で決議をもって、石油の輸入外貨の割当を、水産業協同組合法に基いて設立されておるところの漁業団体にすることによって適正な石油価格を打ち出すことができるという抜本的な対策について、政府に注意を換起し、これが実行を求めておったのでありますが、このこともなさずに単なる業者の自粛、協力に待つというようななまぬるい態度である限りにおいては、今生産部長がお話になったことしか期待できない。このことは初めから私どもも予見いたしておったところであります。大体この七百円の値下げという問題にいたしましても、全国の平均価格をA重油でトン当り一万五千五百円に押えて、それを基準として七百円下げる、こういうことでありますが、全国平均価格が一万五千五百円であるというこれ自体にも、実はわれわれは多大の疑問を持っておる。一万四千円、一万四千五百円程度で現に購入しておる漁業組合すらもあるわけであります。従いまして、一万五千五百円ベースを基礎とした七百円の引き下げということが、はたして実効を期待できるかということについては、私ども非常な疑問を持っておるわけであります。ただいまもお話がありましたように、各漁港別、漁業根拠地別にその価格をはっきりと押えて、実効のあるような措置をとるということについては、特に官庁及び漁業団体の監視制度を強化していかない限り、その実効はほとんど期待できないのではないかと考えておるでありますが、水産庁はどういう工合にこれを考えておりますか、その点をお伺いしたい。
  124. 増田盛

    ○増田説明員 発表せられました平均価格一万五千五百円の問題を中心にしまして、最後に監視機構の点まで述べられたのでありますが、通産当局の御説明によりますと、相当多数の根拠地を調べまして、その結果の現在価格の加重平均が一万五千五百円ぐらいになる、こういうお話であります。従いまして、この基礎は現実に存在します各基地別の一月及び二月の価格でございまして、これが第一に問題になるだろうと思うのであります。さらにこれに対しまして、今後これを全部一律に七百円値引きをするというのではないのでございまして、いろいろな方法によりまして、結局石油業界の話し合いによりまして、個別にこれらの値引額をきめまして、その値引きした額の価格の平均がやはり七百円になる、こういうような考え方で通産省当局の説明がなされておるわけであります。従いまして、全国幾ら少くとりましても、標準価格の基本になる漁港はやはり百ぐらいはあるわけでありまして、百ぐらいのこの基地を中心にしまして、さらにその末端に存在します相当大きな漁港、こういう範囲まで広範にこの価格を取り入れますと、この価格の把握あるいは今後の値引きの実効というものに対しましては、相当厳重にこれを見守っていかなければならないと考ておるわけであります。ただいまの御説にありました通り、この問題に関しましては、水産庁のみではなかなか十分でないのでありまして、やはり漁業協同組合を中心とされました漁業界が中心とりなまして、この協定価格の確実な実行を守っていく、こういうようにならなければならないと思うのであります。この点に関しましては全く御説の通りであると思うのであります。現在この監視機構等の問題に関しましても、まだ通産当局と結論には達しておりませんけれども、それに対しましては私どもの方から申し入れを行なっておりまして、近くこの問題に関しましては双方の打ち合せをいたすことになっておる次第でございます。
  125. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 これは各漁港別、根拠地別に石油小売り業者と漁業協同組合なり、あるいは大口の漁業者なりが自主的に価格を協定をするということでありますか、それとも二月現在の全国平均一万五千五百円ベース、それは港によって違うと思いますが、その当時把握した価格を基礎として、個々にこれだけの価格で協定をしろということを政府がそこに介在をして指導しながら適正な価格で協定をさせる、こういうような仕組みでありますか、いずれのような措置を具体的にはとるのであるか、その点をお尋ねしたいのです。
  126. 増田盛

    ○増田説明員 ただいまの御質問に対しましては、通産当局のお答えの方がいいと思うのでありますが、私どもの聞いておるところによりますと、今回の値下げ措置は業界の自主的措置でありますから、従いまして、この価格に対しまして具体的な決定の仕方は、あげて業界、詳しく申し上げますと、全石協にまかせる——まかせると申しますと、語弊がありますが、その業界の決定そのままである、こう考えております。
  127. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 おそらく増田生産部長の御答弁は裏表のない、ほんとうのところをお話になっておるものと思うのであります。そういたしますと、石油業者の一方的な自粛に期待するという程度でありますれば、とうてい私どもは実効が上るものとは期待ができません。そこでこれはいかにも民主党内閣の農林漁業に対する生産費の切り下げの有力なる政策としてとったようにいうておりますけれども、これは単なる当時の選挙中の宣伝にすぎない。肥料については五円、漁業用の油について七百円、これを引き下げるんだという、ただ選挙目当ての宣伝に使ったというだけであって、実効はほとんど期せられないのではないかというように私ども思うわけでありまして、全国の漁業者もこのことを非常に不快に実は思っておるのでありまして、ほんとうに現在の窮迫せる漁業経済の実態を政府が認識し、これに対して同情するというあたたかい気持があるならば、もっと政府がなし得るところの対策を、国会がすでに決議をもって政府に要求しておるのでありますから、それをまじめに取り上げるべきであって、このような宣伝目当てのいいかげんな、実効のあがらない政策は、これはごまかしであるというように予算でも批判いたしておるのであります。そこでさらに私は、この案の内容をつまびらかにいたしますために、お尋ねしたいのでありますが、対象となる漁業者を小規模漁業であるといっておるのでありますが、一体この小規模漁業というのはどの範囲を示しておるのであるか、水産庁でおわかりになりますれば御答弁を願いたい。
  128. 増田盛

    ○増田説明員 小規模漁業の範囲は経過的にはいろいろあったのでございますが、現在の取り扱い方に関します通産当局の了解と申しますか、話し合いの結果によりますと、大体御存じの通り一般の海面漁業に使用されます重油、石油の額は年間に八十万キロリットル程度でございます。それに対しましておおよそ半分に近いものが大口の取り扱いでありまして、現実には相当安く取引されておる、残りの大体半分程度のものがこれ以外の割合高い値段で取引されておるのではないか、小口扱いその他を含めまして割合に高い取引をされておる。従いましてこれを下げるのがねらいでございますので、いろいろ議論はあります。漁業別に議論はありますけれども、結果といたしましては、この協定価格によって漁業者が申し入れをいたしました場合におきましては、数量の制限なくこの価格で買い入れる、こういうことになりまして、実は小規模業者という規定の仕方をそう厳密に規定しなくてもいいということに現在なっております。
  129. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 しかしながら厳密に規定しなくても、結局石油業者との間に価格を協定するだけでありますから、漁業協同組合なりを対象とすることには間違いないと思いますが、その点いかがですか。
  130. 増田盛

    ○増田説明員 お尋ねの、特にこういう配給ルートの対象が、末端におきまして漁業協同組合になりますことは望ましいことでございますが、しかもさらに全体を通じまして、全漁連から単協に至るまでの間の系統の燃油の確保並びにその集中的な取り扱い方に関しましては、私どもも従来通り努力いたすつもりであります。しかしそのほかに御存じの通りに中小漁業者あるいは中小資本の団体におきまして個別に取引されております段階がありますので、そういうものも従来高く買っておった向きに関しましては、全部小規模漁業者、こういうことに一応考えております。
  131. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 私がお尋ねいたしましたのは、漁業協同組合が全部各単協ごとに一元的に価格を協定し、それを油屋から扱うという意味ではございませんで、協同組合法に基く団体交渉の形で組合員漁業者全体にかわって油屋と七百円値下げについて団体交渉権の形で価格をはっきりさせる、こういうように持っていかれるつもりであるかどうかということをお尋ねしておるわけであります。
  132. 増田盛

    ○増田説明員 団体交渉による協定価格の実現、あるいはこの協定価格に対してまた別個の価格をきめるという点までは、今回の措置としては考えておらないのであります。しかし今回の措置以外に、当然に協同組合といたしまして交渉の結果より有利な価格を決定するということは妥当なことである、かように考える次第であります。
  133. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 私が申し上げておりますのは、同じ漁港、漁業根拠地におきましても漁業者の大小、あるいは購入いたします数量、あるいは支払いの関係、そういうものによって一様ではないのであります。従って何かそこに漁港別に一定した価格がきめられるのでなければ、現実に七百円下げてもらったかどうかということがはっきりしないということになると思うのであります。そこでそれをするためにはどうしても漁業協同組合あたりが団体交渉でもして、漁港ごとにはっきりした価格を協定しないと実効があがらないのではないかということから、そのような御措置をとるのかどうかということをお尋ねいたしておるわけであります。
  134. 増田盛

    ○増田説明員 今回の措置といたしましては、私どもといたしましてそこまでは考えてはございません。しかしながらその反面におきまして、ただいま御指摘通り販売条件によりましてこの価格がいろいろ分れてくるのでございまして、この販売条件に関しましても、私どもの方から現在これをできるだけだれにでもわかるようにはっきりして、しかもそこに漁業者に有利な幅を持たせたいという含みで交渉いたしております。
  135. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 鉱山局長がお見えになったようでありますから川上さんにお尋ねいたしたいと思います。解散になりますあの国会におきまして衆議院、参議院の水産委員会が、漁業用燃油の量及び価格の両面からこれを確保いたしますために決議をあげまして、政府にこれが実行を要請いたしたことは御承知の通りであります。あの決議を受け取られまして、政府としてどのような御措置をおとりになったか、現在あの決議の趣旨を尊重される意味合いで政府努力をなさっておるのであるかどうか。まずこの点をお尋ねいたしたいと思うのであります。
  136. 川上為治

    ○川上説明員 私どもといたしましては、衆参両水産委員会におきまして決議されました趣旨につきましては、もちろん尊重いたして、それ以後いろいろ検討して参ったのであります。しかしながら全漁連に外貨を割り当てるという具体的な問題に関しましては、いろいろ検討をいたしましたけれども、現在におきましてはいろいろな関係から、やはりこれはよくないというふうに私どもといたしまして考てえおるのであります。しかしながらそれかといって、特に小規模漁業者向けの重油の価格が高いということではいけないので、何とかしてこれを引き下げなければならぬということで、先般来農林省ともいろいろ相談をいたしまして、また石油業界の協力も得まして、たしか二月二十五日でありましたか、キロリットル当り大体七百円程度引き下げるということにしまして、また数量につきましても一定の数量をきめて、それを各地区ごとに値段をきめて販売するというような措置をとることにいたしたわけであります。そしてこれは四月一日から実行することになっておるわけでありまして、私どもの方としましては、先ほども申し上げましたように、もちろん委員会の決議は尊重いたしますが、尊重いたしました結果、いろいろ考えて、値段を引き下げることが一番大事だと考えまして、今申したような措置をとったわけであります。外貨の割当の問題につきましては、これはいろんな理由から、現在漁連に対しまして直接割当をするということは非常な困難を起す問題もありますので、今申し上げましたような措置をとったわけでございます。
  137. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 ただいまの川上さんの御答弁では、決議の中に盛ってあります全漁連に対するところの輸入外貨の割当ができないから、それにかわる措置として、業界の協力を得て七百円引き下げの業者の自粛措置を講じさせることになったという御答弁でありますが、それに関連してお尋ねいたしたいのは、各漁港別、根拠地別にその価格を七百円引き下げる場合に、具体的にはどういう工合にしてその価格を決定されるのであるか、これが一点。それから、今回の自粛措置ではA重油だけに限られておるようでありますが、小規模漁業者と零細漁業者対象としての措置であるならば、当然軽油、灯油等も考えなければならぬのであります。これを、A重油だけに限られました理由一つ承わりたい。
  138. 川上為治

    ○川上説明員 具体的な措置につきましては、もうすでに石油協同組合の連合会の方から七百円——これは全国平均でありますので、北海道におきましてはある程度——七百円よりも低いと申しますか、千円程度になるのでありますが、そういう値引きになる。静岡県等におきましては七百円にはならないで五百円程度かと思っておりますが、そういう具体的な価格をきめて通知いたしております。これは公取との関係もありますので、私どもの方としましては公取とも相談をいたしまして、それでやってもよろしいということでやっておりますが、ただ、今の地区別の価格につきまして、業界で作りました案と、私どもあるいは農林省の方で相談しております考え方とが少し違っている点もありますので、これにきょうさらにいろいろ是正をしてもらうように話をしておるわけでありまして、通知いたしました石油の団体からの価格は、若干各地区々々によって違う点が出てくるものと考えております。そういうふうに地区別の、たとえば北海道の小樽地区においてはA重油の規格何々についてはどの程度の基準価格ということでいくわけであります。そしてその基準価格を各販売業者が守るように行政指導するわけでありまして、これは前の委員会におきましても再々申し上げましたが、この販売業者と元売業者すなわち石油の輸入業者との関係というものははっきりしておりますので、もしその地区においてそれを守らないようなものが出た場合におきましては、その系統の元売業者の外貨資金を締めるということで、まあ罰則的な措置をとるわけでありますので、私どもの方としましては、そういう外貨割当の面において調整をいたしますから、これは相当強く考えられていいのではないかというふうに考えておるわけであります。それからA重油だけに限ってその他のものについては何ゆえにやらなかったかという問題でありますが、B重油につきましても実はこれに準拠していろいろ考えておりますが、ただA重油とB重油というのは、どちらかと申しますと、A重油は非常に高くてB重油は低くありますので、B重油についてはA重油ほどナーバスに考える必要はないのではないかというふうに考えるのでありますが、いずれにしてもB重油についても、A重油に準じて今後いろいろ考えていきたいというふうに考えております。ただ、軽油とか灯油というものについては、別に私どもの方には御要求もございませんので、軽油、灯油については水産関係でどの程度ほんとうに使っておりますか、大した数量でもないのではないか、むしろこれは農村関係の方が多いのではないかというふうに考えますが、しかし農村関係と申しましても、そうよけい使っておるともわれわれは考えておりませんが、この数字については農林省とわれわれの方とに数字の食い違いがあるようでありまして、農林省相当大きな数字を持って来られておるようでありますけれども、私どもの方はどうもそんなに多くはないようだというふうに考えておるわけであります。この点は将来の問題としていろいろ研究をしていきたいと考えております。
  139. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 そうしますと各漁港別に価格をきめます場合には、単に業者の自粛だけに待たずに、通産省もその価格に個々に当られて、そうしてこれが妥当な価格であるというところでその価格をきめられる、こういうことでありますか。これが第一点であります。つまり通産省は価格決定に当っては、あくまで行政指導であるけれども相当強力に適正な価格を決定させる、こういうことであるかどうか。  それから軽灯油の問題でありますが、これは小規模漁業者、こう打ち出しております以上、当然零細な軽灯油を使う漁業者を十分考えてやる必要があるわけでありますが、鉱山局長は御承知かどうかわかりませんが、十トン未満の漁船は現在日本には六十万トンあります。無動力船は別でありますけれども、ほとんど軽灯油を使って動いておる漁船でありまして、相当の量に上るわけであります。水産庁等の資料は決して誇大なものではなくて、漁船の隻数等に基いて算出したものであると思うのでありまして、大漁業者は、五大会社を初めといたしましてまとまった相当の数量でありますので、従来からA重油で一万四千円あるいは三千円前後で購入いたしておりますが、一番困っておりますのが漁業協同組合の傘下にありますところの中小漁業者であるという観点からいたしまして、政府の方でも七百円の引き下げは小規模漁業者を対象としたものと思うのでありますが、その精神に立つ限りにおいては、当然軽灯油についても考えるべきであると思うのであります。この点についてどうお考えになっておりますか。この二点をお伺いいたします。     —————————————
  140. 綱島正興

    綱島委員長 ちょっとその前に、この際特にお諮りいたします。食糧管理方式の改正問題につきましては、すでに御承知の通り、現在緊急に解決を要する問題でありまして、今国会におきましても、従来通り食糧小委員会を設けて、これが対策について検討を加えることにいたしたのでありますが、食糧小委員長からの要望もありますので、食糧問題について、食糧の生産、消費、流通に関係ある者、学識経験者等を参考人として出頭を求め、その意見を食糧に関する小委員会において聴取することにいたしたいと思いますが、これに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  141. 綱島正興

    綱島委員長 御異議なしと認めます。  なお、参考人の人選、意見聴取の日時等につきましては、委員長に御一任願いたいと思いますが、御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  142. 綱島正興

    綱島委員長 御異議なしと認め、さよう決しました。     —————————————
  143. 綱島正興

    綱島委員長 質問を続行願います。
  144. 川上為治

    ○川上説明員 行政指導の問題でありますが、行政指導はなかなかむずかしい問題でありますけれども、一番いいのは、どうしても法律のバックがあることでありますけれども、漁油の関係につきましては、先ほど申し上げましたように、特約店あるいは販売業者、元売業者という一連の系統が非常にはっきりしておる。陸上のものと比べますとその点は非常にはっきりしておるという点からいたしまして、比較的やりやすいということで、相当これは強力に行政指導すればその実効は上るのじゃないかというふうに考えております。特に元売業者についての外貨を切るという問題が致命的な問題でありますので、そっちの方から締めて参りますれば、その点は私は比較的よく行くのじゃないかというふうに考えております。  それから地区別の価格につきましても、通産省が相当これに関係するのか、単に七百円という平均価格を出して、地区別のものは業者にまかせるのかというお話でありますが、これは先ほど申し上げましたように、われわれの方としましては、地区別の価格までタッチしておるわけでありまして、現にこの前業界の方から案を私のところへ持って参りましたときも、ここのこういう価格はどうか、こっちの価格はどうかということで、修正もさしておるような状態でありますので、私の方としましては、地区別の価格につきましても十分監督し、行政指導をして行くというふうに考えております。もちろんその価格につきましては、農林省とも相談をいたしてきめるわけでございます。  それから灯軽油の問題なんですが、私は実はそういう漁船関係で灯軽油が非常に使われておるということは、実は初めて聞いております。農村関係の灯軽油については、これは脱穀用の灯軽油とかそういうもので相当使われるように聞いておりますが、水産関係について相当使っておるということは、実は私はきょう初めて聞いたのであります。灯軽油につきましては、大体量的には私の方としては確保されておる。同時に特に灯油については、石炭との競合関係というものはほとんど今考えておりませんので、比較的私の方としましてはこの量はよけいに見ておるくらいに配給をいたしておるつもりであります。従って価格につきましても、重油と比べますと、重油ほどに上っておるということはないのじゃないか。大体ガソリンとかあるいは灯軽油というようなものにつきましては、大体そうむちゃな価格になっていないのじゃないかというふうに考えおります。これはもちろんもっと調べた上で御返事いたしたいと思うのでありますが、今そういうふうに考えておりますし、価格についてもそうむちゃな価格ではないのではなかろうか、量も十分確保されておるのじゃないだろうかというふうに考えておりまして、しかも水産関係の灯軽油は大したものではないと考えましたので、特別な措置をとっていないわけでございます。
  145. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 漁業用燃油の問題は今川上さんもおっしゃるように、量の問題は御尽力によって大体現在確保されておるわけであります。問題は価格でございます。軽灯油につきましては、御調査の上で御研究を願いたい、こう思うわけであります。今回の七百円の値下げは、業界の漁業者の間でもこの程度の値下げでは不満足である。また国会側といたしましても、私ども昨年来本問題を取上げておりますのは、一昨年の秋ごろの価格に比しまして二千円ないし二千五百円の暴騰を来したまま、量的には行政指導によって確保されたが、価額は横ばいになった。二千円ないし二千五百円上つたまま横ばいの状態でございまして、これではとうてい漁業経済はやって行けないというようなことから、国会でもいろいろこれが検討を加えて来たのは、鉱山局長も御承知の通りであります。しかるに今回の七百円程度の値下げでは、とうてい漁業者の満足する価格ではない。それがFOB価格が上つたとか、あるいはまたタンカーその他の輸送費が高騰したとか、あるいは賃金その他が値上りを来したとかいうようなことであれば、この二千円ないし二千五百円の値上りが横ばいになってもやむを得ないと思うのでありますけれども、さような高い価格にくぎづけされておる理由を、われわれは遺憾ながら発見することができないわけであります。現在の国際石油の価格からいたしまして、また国内のデフレ傾向からいたしまして、二千円程度の値下げが当然行われていいのではないか。こういう観点に立ちますならば、今回の七百円の値下げというものは、水産業界に高まって来たところの石油業者に対する批判、特に漁業組合の系統団体が全漁連を先頭として、外貨割当を受けるのでなければ、抜本的なこれに対する改善策はないという強い主張がなされたのに対するところの、現状を糊塗する一つの業者の商略的な今回の態度ではないか。政府もまたこれをちょうど総選挙の機会で、肥料の五円引下げと符節を合わせて、これをいかにも漁業者に対する大きな福音であるかのごとき宣伝をしたのではないか。実際の現在の漁業経済の実態からいたしますならば、七百円程度の引下げではとうてい漁業者は満足できない、こう考えておるのであります。鉱山局長はこの程度の値下げで満足をなさっておるのであるかどうか、これをお尋ねいたしたいと思うのであります。
  146. 川上為治

    ○川上説明員 七百円程度がいいかどうかという問題につきましては、私どもの方としましてもいろいろ計算をいたしまして、大体この程度が現在においてはいいのではないかというふうに考えたわけでございます。と申しますのは、最近やはりタンカー等につきましては上っておりますし、また従来のたとえば物価庁時代の価格、これは私当時物価庁の第三部長をやっておりましたので、自分で価格は扱っておりましたが、その当時の価格と比べますと、販売方法についても、持ち込みで現在はやっておるというような関係等もありますし、それからその後金利とかそういうものが相当高くついておる。それから貸し倒れが最近相当多い。そういう危険性というようなことを考えますと、大体この程度がいいのじゃないかというようなふうに考えて、決して私は満足しておるとかしていないとかいうことを申し上げるわけじゃありませんが、通産省としましては、この程度がいいのじゃないかというふうに考えたわけでございます。もちろん物価庁のあった時分と違いまして、現在各企業者の方からこまかいデータをとるということもなかなかむずかしいし、またそういう権限を持っておりませんので、私どもの方としましては、実際原油の価格が幾らか、あるいは重油の価格が幾らかということはわかりますけれども、それ以上原油の精製費が幾らかかっておるか、あるいはその販売経費が幾らかかっておるかという点になりますと、非常にこれは調査もむずかしいし、そういう権限もありませんので、私どもとしましては、私どもが物価庁でやっておりましたときの価格も一応参考にし、当時の販売経費なりそういうものも一応参考に見ていろいろ検討いたしました結果、大体現在におきましてはこの程度がいいのじゃないかというふうに考えてやった措置でございます。
  147. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 その点は、消費者の立場にありますところの漁業者の要求とは大分大きな開きがございまして、現実に全漁連等が幸いにして外貨割当を政府から受けられて、これを系統団体の手で販売をするということになれば、A重油で一万三千円程度で配給できるという具体的な数字等から見ましても、石油業者は、今鉱山局長が言われましたようないろいろな理由を口実にいたしまして、現在の価格を固持いたしておるわけでありますが、さような意味からいたしましても、漁業者の系統団体に全体の四%にすぎないところの二十万トン程度のものを現実に扱わしてみて、そうして適正妥当な価格をもって販売されるようにすることがなぜ一体悪いのであるかこれが高いとか安いとか、そういうような議論をするよりも、過去において農業団体とともに石油類の元売り販売をやった実績を持つところの協同組合法に基く系統団体に扱わせることがどうして悪いか。通産省は単なる商権擁護の立場を固持しておるのではないか、こう私ども指摘せざるを得ないわけであります。一体川上さんは、昭和十四年当時に重油類が非常な強い規制を受けておった当時、漁業用の燃油のその当時の全体の消費量が三十五万トン程度であった際に、五万トンも戦前の全漁連がこれを扱っておったという過去の実績を御承知になっておられますかどうか、この点をお尋ねいたしたいと思うのであります。
  148. 川上為治

    ○川上説明員 全漁連が過去におきまして元売り業者のような仕事をされていましたことは私ももちろん聞いております。しかし輸入業者としては、全漁連は一ぺんもインポーターではなかったのではないかというふうに聞いております。その点は、もちろん元売り業者として仕事をしていましたことはわかるのでありますけれども先ほど一万三千円というお話がありましたが、その中身については実はいろいろわれわれの方でも聞いたわけでありますが、なかなか納得のいかない点も多々あるわけであります。こういうところで申し上げるのはどうかと思いますけれども、全漁連の出しました資料については、われわれは相当これは検討すべき点が残っておるというふうに考えておりますし、またそれ以上の資料を要求いたしたこともあるわけなんですが、なかなか満足した資料はいただいておりません。  それから私は決して商権擁護をやっているわけではないのでありまして、やはりだれが輸入することが一番いいかということをいろいろ考えましてやっておるのでありますが、現在重油の輸入業者は全国で二十数軒に及んでおりまして、しかもその数量が相当細分されております。もちろん非常に大きな商社は相当大きな割当を受けておるのでありますけれども、あまり割当を受けていない業者が相当多数あるわけでありまして、そういう業者は船をつかむのにも自分だけでつかむこともできなくて、いろいろ一緒になって頼んでおるとか、あるいはそういうことに類したことをやっておりまして、これは外貨割当の問題からいいますと、もっと業者の数を整理して、強力なものをある程度残して、そして自由競争さした方がいいのではないか。それが通産省で現在言っております商社の強化という点からいいましても、非常にいいのではないかというふうに考えておるほどであります。それに、現在重油そのものにつきましてはふえる一方ではないのでありまして、石炭との関係からだんだん減らされていくというような状態にありますので、そういうところに全漁連とかあるいはその他のものをさらに認めていくということは非常に問題が起きますし、同時にまた、現在の輸入業者もタンク施設を持ち、それから販売関係のいろいろな施設を持って、従業員もかかえてやっておりますので、全体のワクがだんだん減る一方、さらに輸入業者の数がふえるということは、私の方としましてはどうかと思っておりますので、やはりこの際外貨の割当を全漁連にすることはどうかというふうに考えておるわけであります。それに、全漁連がもし外貨の割当を受けるということになりますと、これは鉄鋼関係とかいろいろな方面に波及することは火を見るよりも明らかであります。そうなりますと、外貨の割当に非常な混乱を起すという問題が出ておりますので、私どもの方としましては何とかして量の確保と価格の方で御協力申し上げたいというふうに考えておるわけでございます。
  149. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 ただいま川上さんのお話でありますと、全漁連にもし外貨の割当をするならば鉄鋼その他の業者からの要求も防ぐことができない。ひいては外貨制度の混乱を来たすというような御意見がありましたが、これは私は納得がいかないわけであります。この外貨の割当につきましては、必ずしも輸入業者でない技術者の面につきましても通商局はこれを行なっておる事実がたくさんございます。たとえば大豆の輸入等に対して外貨の割当をいたします場合に輸入業者のほかに技術者にも外貨の割当を現実にやっておるのでございます。そういうようなことで漁業者の団体、特に戦前元売りの実績を持っておった、しかも協同組合法という法の裏づけによって国の監督指導を受けておる、しかも主要な生産資材である油を共同購買するというようなことは、組合の最も大きな事業であり、そういうものを使命として生まれた漁業組合の系統団体に対してそういう取扱いをさせるということは、決して他に波及するものではない。鉄鋼関係等が前に元売りの業務をやっておった実績があるとか、そういうようなものが実績を持っておったということは私ども聞いておりません。そういうものと一緒に扱うことそれ自体が、口実を設けてこれに取扱いをさせることを避けようとするあなた方の考えではないか、こう私は指摘せざるを得ないわけであります。戦前五万トン以上の油の元売りをやっており、元売りをやっており、元売り業者と対等の立場で油の販売をやっておった全漁連、さらに中央水産業会が占領後におけるあのような閉鎖機関の指定を受け解体されずに持続しておれば、これは当然他の石油業者と同じように外貨割当を要求したであろうし、政府も当然与えたと思うのであります。それが占領政策によって農業団体、漁業団体の中央団体が解体されて、そして協同組合法の制定に時日を要したために非常なブランクをそこに生じて、そのことが今日に至っておるということでありまして、私は漁業協同組合が、ちょうど農業協同組合におきまして肥料等の生産資材を共同購買するという事業が大きな主体的な事業でありますと同じように漁業経費の三割以上を占めるこの漁業用燃油の共同購買事業として、元売り業者と同じ立場においてこの事業を行なうということは当然の要求であり、政府もそのようなめんどうを見ていくべきものだと考えておるわけでありまして、その点鉄鋼業者が作っておる任意的な団体、その他のものが作っておる協会のようなものとは本質的に違うということを、私は指摘せざるを得ないのでありますが、もう一ぺんその点についての鉱山局長の御所見を承わりたいと思うのであります。
  150. 川上為治

    ○川上説明員 かつて元売り業者としての実績があったということは、先ほども申し上げましたように私も知っておるわけでありますけれども、やはり輸入業者というのは、特に石油につきましては国際的な商品でありまして、系統なりあるいは品質の問題とか、いろいろ非常に複雑なむずかしい問題がありますので、私はやはりもちはもち屋にまかしてやった方が一番いいのではないかというふうに考えておるのでありまして、果して全漁連が外貨をもらいまして、その他の輸入業者と比べまして非常に有利な輸入ができるかどうかという点につきましては、私は相当な疑問を持っております。先ほども申し上げましたように、全漁連の方に対しましても、われわれの方からどういう方法で、どういう価格で、どういう販売方法でおやりになるのかということもさんざん聞いていたわけですが、私どもの方としまして十分満足できるような回答は受けておりません。そういう関係もありますので、私はやはり輸入についても、もちはもち屋にまかしてやった方が一番いいのではないかというふうに考えておるわけでございます。もちろん漁業関係の方々の、どうしても外貨が欲しいという気持はわかりますけれども、やはり全体としてながめてみましたときに、私どもの方としましては、やはりもちはもち屋にまかした方がいいのではないかというふうに考えている次第であります。
  151. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 それでは角度を変えて川上さんの真意をお尋ねいたしたいと思うのでありますが、全漁連が外貨の割当を受けても直接輸入せずに、それをもって専門の輸入業者を使って代行させて輸入させる、つまりもち屋の専門的技術だけを利用してやるというような方法で進める場合には、これを認めてもいいというお考えでありますか、その点をお尋ねしたい。
  152. 川上為治

    ○川上説明員 その問題につきましては、これは結局輸入業者についての外貨割当の問題について相当の混乱を起しますので、私どもの方としましては、やはりそういう制度もよくないというふうに考えておるのであります。  それから特にこの際申し上げておきたいことは、大体製品輸入というのがだんだん減って、原油輸入になっていくのでありまして、これは外貨面からいいましても、どうしても原油で入れた方がいい結果になるわけでありますので、われわれの方としましては、だんだんそういうふうに持っていきたい。この二、三年のうちには、おそらく重油の大部分は原油として入ってくるだろう。原油として入ってきてそれを精製して精油として販売されていくということになるだろうと思うのでありますが、そういう点を考えますと、やはり私はこの全漁連に対しましての外貨割当につきましては、十分そういう点も考えていかなければならないと思っておるのであります。
  153. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 A重油の製品としての輸入の問題でありますが、これは昨年の一月から六月までの間の大蔵省の主税局の調べによりますと、十六万五千キロリットルくらい入っております。その価格もトン当り八千円台の価格として入っておるという実情でありまして、私ども鉱山局長指摘されるように、この傾向が急速に変わるものとは考えておりません。現在の国内の精製の設備その他から考え、またいろいろな面から考えまして、ここ一両年の間にそう急速に変るものとは考えていない。そういうことからいたしまして、私はどうもあなたがいろいろな口実を設けて、国会委員会の決議の趣旨を実行する御意思がないように思う。今までのような不誠意な態度でありますれば、私ども国会の院議をもちまして政府にこれを要求いたしたいと考えておるのでありますが、一体委員会決議でなくて、もっと権威のある国会の院議として決議されました場合に、これを忠実に実行される御意思でありますか、それともそういうものは無視しても現在の行き方を固持される考えでありますか。その点をお尋ねいたしたいと思います。
  154. 川上為治

    ○川上説明員 私どもはこの委員会の決議につきましても、また院議につきましても、もちろん十分尊重いたしまして、極力その意に沿うように持っていきたいと考えます。しかしながらやはりこの問題につきましては、いろいろの点から判断をしなければなりませんので、単に全漁連の方に外貨を割り当てれば、それでいろいろな問題が解決するとは考えておりませんので、あらゆる角度からこの問題は研究して、いろいろな方面に混乱なりそういったことが起らないようにしたいと私どもは考えております。
  155. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 川上局長とは大分この問題で前から話し合いをいたしておるのでありますが、どうも納得が私どもいかないのであります。  通商局からお見えになっているようでありますが、私どもは、今日わが国の水産輸出昭和二十七年度におきまして年間八千七百万ドルに及んでおり、昭和二十九年度のきょうまでの累計は、おそらく一億ドルを突破する輸出額に上っておると思うのであります。これは日本輸出貿易の面からいたしましても、非常に重要な産業であり、日本の国際収支の上に大きな役割を果しておると私どもは考えておる。そこで前々国会でありまするが、輸出産業振興法を制定いたします場合に、この輸出産業振興対策の一環といたしまして、どうしても原材料を有利に安く輸入するために、水産物の輸出によってかせいだドルの一部を、水産漁業用の原材料の輸入のために使うということを、条文の中に一項目打ち出して提案をいたしたのであります。しかるに当時私ども与党でありましたが、いろいろ外貨制度の面等から話し合いがございまして、特に通商局長においでを願って、行政措置でも十分そのような措置がとれるから、輸出産業振興法の中からその条文だけは削ってほしいという特別な要請があって、行政措置でこれを実行するということを確約の上で、その条文を削った経緯があるわけであります。そういうようなことでありまして、私どもは今日川上局長とは見解を異にするのでありますけれども、漁業者の系統団体に外貨割当を——その必要量の四%程度に過ぎません。決してその四%程度の外貨を割り当てたところで、輸入業者が困るとか、業界が混乱するとか、それはあくまで口実であります。その程度の外貨を割り当てることによって、今日油業者が非常に自分らの利益を追求しておる、漁業者の立場を考えない、この行き方を牽制をする、是正をする一助になれば、それで目的は達するのであります。全体の漁業用の八十万トン、百万トンの油を全漁連の系統団体が全体を扱うというのではありません。わずか四%程度であります。これによって妥当な、適正な価格ができまして、漁業経済が改善され、安定するということであれば、これは政府として当然とるべき措置であると思うのであります。さようは考えから、私は通商局の方にお尋ねするのでありますが、日本の国際収支の上に非常に大きな役割を果しておる漁業に対し、この漁業の、農業の肥料に相当する一番重要な生産資材に対して、漁業団体に外貨を割り当てることが、今日のあなた方のとっておられる外貨制度上非常に困るとか、あるいは違法であるとかいうようなことがありますならば、御見解を一つ承わりたいと思います。
  156. 大堀弘

    ○大堀説明員 ただいまの御質問にお答え申し上げたいと思います。輸出用の原料の問題についてのお話でございましたが、私どもとしましては、水産品の輸出も非常に伸張いたしておりまして、これはまことにけっこうなことでありますので、この振興のためにはできるだけの援助をいたしたいと考えておりますが、この輸出用の原材料につきましては、その加工貿易制度というようなものもございますし、また輸出用の原材料につきましては、輸入割当の際に原料の確保について、本年度も十分のワクを組み入れておるわけでございます。しかしながら石油の問題になりますと、需要の範囲が非常に広範にわたりまして、現在の制度を変えまして、一部の部門に対して外貨を需要者に直接割り当てるという制度を実施いたしました場合には、あらゆる面にその制度が響いて参りまして、外貨割当制度の上に非常な混乱を来すおそれが多いと考えておるわけであります。この問題につきましては、前々から皆さん方の御意見も私ども十分承わっております。必要なる重要水産業方面に対して、適正な値段で十分に確保するようにという御趣旨はごもっともで、まことに御同感でございますが、外貨の割当をさかのぼりまして需要者に広げて参るということは、現在の情勢から参りますと、ある意味では逆行になる次第でございます。と申しますのは、外貨制度を国際経済の情勢をにらみまして逐次改善して参っておりますが、方向といたしましては、やはり外国為替というものは、輸入契約をし、物を入れ、為替を取り組む人に対して為替の割当をするというのが原則でございまして、私どもとしましては、日本の貿易も次第に戦前の状態に回復して参っておりますし、貿易の正常化の線に沿いまして、できるだけ外貨はそういった方向に運用して参るのが方向だと考えます。従いまして需要者の方へ割当いたしますということは、特に石油につきましては非常に需要が多く、範囲が広いものでございますから、一個所にそういう例外的措置を認めますと、全体として非常な混乱を生ずることをおそれまして、私どもとしましては、この石油の確保のために、外貨の割当についてそういう新しい制度をとるということについては、あまり適当ではないのではないかと考えておる次第でございます。
  157. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 今の通商局次長さんのお話でありますが、輸入業者以外の実需者に外貨の割当をしては混乱を来すというお話でありますが、あなた方は石油の場合だけそれを固執なさっておるじゃありませんか。ほかの大豆等の場合には、現に実需者に対しても外貨の割当をしておる。なぜ石油だけについて外貨の割当を漁業団体にすれば、混乱するかということを、私どもは理解するのに苦しむのであります。これはあくまで現在の石油元売り業者、石油輸入業者、こういうものを一方的に擁護しようとすることしかわれわれは理解できない。この点を私は先ほどから繰り返し申し上げておるわけであります。大体この水産物の輸出は非常な勢いで伸びて、今日わが国でも第三位に位するくらいの大きな外貨獲得の役割を果しておるのでありますが、漁業者の経済が石油業者の横暴から、一方的な利潤の追求から、経営が非常な危殆に瀕しておる。そういうような生産者のもとが枯れて、果して日本輸出が伸びるかどうかということであります。だから単に右から左に物を輸出しておる連中だけにそういう貴重な外貨の割当をして、ほんとうに輸出のもとをつちかって働いておるところの生産者を殺してもいいということは、貿易政策としていかがかと私どもは思うのであります。先ほど申し上げましたように、この全漁連の系統団体は、戦前におきましては元売り業者と同じ立場で油の配給をやっておった実績を有しておる。またそういう使用資材の購買事業を大きな使命として生まれておる。これは法律に基く団体であります。そういうようなことを十分理解がいきますならば、この際全漁連等に割当をすることは無理はないんじゃないか、当然のことではないか、こういう工合に私は考えるのでありますが、あなたは一体、日本の漁業を今のような非常に苦しい経営のまま放置しておいて、日本の水産物の輸出ひいては日本の貿易の振興になると考えておりますかどうか、その点をお尋ねいたしたい思います。
  158. 大堀弘

    ○大堀説明員 私ども通商局といたしましては、全体の外貨の運用をしておりまして、個々の物資につきましてはそれぞれの所管の局と相談をして、またその局に主としてお願いしてやっておるケースが多いのであります。石油につきましては鉱山局の方が実は主体性を持ってやっておられるわけでありますが、私どもの立場から申しますと、為替の割当というものは、為替を取り組んでいく人に為替を割当するのが本来の姿でございまして、その方向に行くべき事柄であると思います。ただ今お話の御趣旨は私どもよくわかるのでありますけれども、これは為替の割当の問題以外の、むしろ配給の問題なり価格の問題が中心になって参ることではないかと考える次第でございます。
  159. 鈴木善幸

    ○鈴木(善)委員 ただいまの次長さんのお話で大体原因がどこにあるかということはだいぶわかって来たのでありますが、どうもやはり問題は川上さんのところにあるようであります。そこでこれは政府全体の責任として措置すべき問題でございますから、日本の重要な輸出産業である漁業生産の担当官庁である水産庁も、国会の決議及び漁業団体の要求が至当なりとしてこれを強く通産省に要求しておるはずであります。このままでいってはどうにもならぬというこの原局の立場も十分総合勘案されまして、政府全体として適正な措置を講ずるということでないと、鉱山局だけの立場あるいは通商局だけの立場では国家のためにならないんじゃないか、私はこう考えるわけであります。大体川上さん御承知の通り、この油の問題に対する漁業者の要求というものは死活的な要求であります。甘く考えておりますと、これはとんでもない事態に発展すると私は思う。かつて戦前に伍堂卓雄さんが農林大臣兼商工大臣をやっておりました際に、この油の問題でとうとう農林大臣をやめたじゃありませんか。こういう工合に漁業者にとっては、農民の肥料と同じように非常に重要な死活的な問題であります。十分問題の重要性を御認識いただきまして、私は重ねて善処されることを要求して私の質疑を終りたいと思います。
  160. 赤路友藏

    赤路委員 関連して。鈴木委員から詳細にこの問題については御質問があったわけですが、川上鉱山局長の御答弁の中に相当重要な示唆があるので、この点について一点お尋ねいたします。現在重油の輸入はここ二、三年後には原油として入って来て、精油してこれが出されるのではないかというような示唆があったのでありますが、鉱山局長としてこの面を担当しておられる方の言葉として、私はこれを信頼しなければならぬと思うのですが、これに関連いたしまして、そういうことになるとなおさら現在の価格というものが問題になろうと私は思う。そこで今までの御答弁の中から聞いて参りますと、平均価格の一万五千五百円、これを押えるためには各地区別に相当調査をされたということなんです。問題はこの一万五千五百円という平均価格が正しいものであるかどうか、この点に対する御検討が十分なされたかどうか、この価格の面については、御答弁の中にはなかなか販売経費その他いろいろな経費等の捕捉が十分しがたいというような御答弁があったようでありますが、一万五千五百円というこの価格が正しいという線が十分検討されないで、七百円下げたらいいのだということではどうもおかしいと思う。それで特に将来原油で入って来るとするなればなおさらのこと、この段階において少くとも平均価格の一万五千五百円というものが妥当であるかどうかということは、行政担当の川上さんの方では十分検討していただかなければならない、こういうふうに思いますが、これについて何か御答弁がありましたらお聞きしたいと思う。
  161. 川上為治

    ○川上説明員 平均一万五千五百円のこの価格につきましては、私どもの方としましては、これは詳細に十分調べたかという点につきましては、必ずしもそういうことを申し上げるわけにはいかないのでありますけれども、われわれといたしましてできる限りの手を尽して調査はいたした価格でございまして、これは地方の通産局を通しましていろいろ調査もいたしましたし、また特約店の方から特約店として調査もし、いろいろ手を尽して大体平均価格これくらいというふうに見ておるわけでございます。しかしこれは先ほども申し上げましたように、われわれとしましては、調査についての十分な権限と申しますか、あるいはかつてやっておりましたようなそういう手足も持っておりませんので、その点についてあるいは若干これはその違いもあるかもしれないと思うのでありますけれども、われわれが今まで手を尽して調べたところでは、今申し上げましたような価格になっておるわけでございます。それから将来その重油は原油に変っていくという問題につきましては、通産省としては精製設備を極力増強して、そうして原油を入れて精製して販売するということが、外貨の節約の面からいいましても、あるいは国内における雇用問題等からいたしましても、どうしてもそれが必要であるという従来の方針を現在におきましてもそのまま踏襲しておりまして、最近精製設備が非常に近代化すると同時に一面におきましては相当ふえておりますので、一方重油全体の数量につきましては、石炭との関係等からそうふやすわけにはいかないという点からいたしまして、この製品がだんだん原油に切りかえられていくということは、これはやむを得ないことではないかと考えております。外貨の面から見ますと、原油を入れた方が得であるということは、はっきりした数字もあるわけでありますが、それかといって原油だけで精製して販売いたしますと、独占価格になるおそれもないこともありませんので、価格の方面におきましては、われわれはどうしてもある程度統制なりチェックなりをしていきたいというふうにも考えておりまして、現に現在いろいろ研究いたしております。おそらくこの次の国会に出るのではないかと思いますが、重油の消費制限に関する法律、消費規制に関する法律を出しまして、特にその値段が上りました場合においては、それを法律によって押えていくというようなことも考えておるわけでございます。
  162. 赤路友藏

    赤路委員 もう時間もありませんので、あまり申し上げませんが、今のお話の中の消費制限に関する法律案を休会明けにお出しにるなという御意思はよくわかりました。そういう措置も当然とられなければならぬと思いますが、それとともに値段が不当につり上げられた場合、それを押えていくということもおっしゃったように思うのですが、そうなってくると何といっても今出されております二万五千五百円という値段が果して妥当であるかどうか、正しいものであるかどうかということが、あくまでも私は基本になると思うのです。そこで今の御答弁では、十分でないが、できる限りの努力をして調査をしたというお話でありますので、これは現在の機構としてはごもっとものこととも一応考えます。そこで、そのできる限りの努力をして調査された数字的な資料はお手元にございましょう。
  163. 川上為治

    ○川上説明員 その資料はきょう持ってきておりませんが、もし御必要であれば、私の方からその数字は差し上げたいと思います。
  164. 赤路友藏

    赤路委員 それでは鉱山局長の方から、この一万五千五百円の基礎資料を当委員会の方へお取り寄せ願いたい。
  165. 綱島正興

    綱島委員長 それでは口頭で達しておきますが、結果だけでなく、その関係資料をできるだけ精密なものを用意して、すみやかに当委員会に提出して下さい。  次会は来月四日午前十時、その次は五日午前十時より開会いたします。  本日はこれにて散会いたします。     午後五時五十五分散会