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大野(市)
委員 それではやがて来月の半ばには出るはずと聞いておりますので、その節にまた十分に
一つ御
意見を承わりたいと思います。
さてさようなる形におきまして
農村の
現状が—われわれとしてはさらに経済安定を、あるいは
経済向上を望みたいと思うものでありますにかかわらず、このたびの本
会議において、あるいは
予算委員会において、さらに本
委員会におきましても、数人の代表の
諸君から
農業の
課税の
実態に対しましていろいろなる
意見を申し上げて、これに対する討論が行われているのでありまするが、私考えまするに、いずれもその根本的な問題の
理解がいまだ足らぬのではないか、かようなる
見地から
農業の
課税の問題に対して触れたいのでありますが、この点は当面の
主管庁でありまする
大蔵御
当局並びにこれがいわゆる
農村経済の
基本の問題になりますので、
農林御
当局には特に御
理解をいただきたい。そこで、なぜすでに三月の十五日が
確定申告の最後の日でありますにかかわらず、三月の二十日ころから
国会で取り上げられたかという問題から入りませんと、問題の核心に触れることができない。これは実は三月の十四日に
米作一本であり、しかもいわゆる
積雪寒冷単作地帯の代表的な
新潟県においての
農業会議主催の
農業課税対策大会というものが開かれまして、その席上で血を吐くような
農村の
課税に対する叫びが行われて、幾つかの
決議事項が決議せられたのであります。これはちょうど二月は
選挙のさなかでありましたし、三月になりましてもいまだ中央にこれらの問題を取り上げて持ち込む、いわゆる技術的な時間の
余裕がなかったのでありまして、そのために
確定申告の日を非常にずれて問題が
国会に持ち込まれたのでございます。ここで
確定申告の
期日の問題に触れざるを得ない、普通にどの
職業におきましても、
納税が
国民の義務であるから、それは国法に基くところに従ってそれぞれの
納税をするのでありまして、いずれの
職業においても
摩擦はあるのです。ですから
摩擦がよそはないのに今度だけできたということはあえて申し上げませんが、実はその内容を見ますると、われわれとして
国会においてこれを取り上げて、大いに
税務当局の事務的なる御処理に対して、政治的な
考慮をお願いせざるを得ない十分なる資料と
実情を用意しておるわけであります。
一つ御判断をいただきたい。すなわち、米だけで暮しを立てている
積雪寒冷単作地帯の
現状をまず頭に浮べていただきたい。いまだ雪が消えておらぬ。すでに十一月の末、十二月になれば雪が降り積る。こんな悪
条件のもとに
食糧増産をやらざるを得ないのでありまするので、その収入に対して税の負担というものは、全国的な計数以上に敏感にこれらの
地帯に対しては
影響力があるのであります。毎年の
実例を見ますると、この点に対しては、
税務当局も
相当配慮をせられておった傾向がある。それは
新潟県の南蒲原郡中之島村というような、供米だけで五万石を越しまする、一県以上の量を
一つの村で出しまする、いわゆる
米作村の
実例をまず述べます。そうすると二十七年度などではいわゆる
農林省新潟統計調査事務所の米の
収穫量の
発表から見まして、二十七年度が
実収高六万三千二百八十九石、これが
税務署で
農業所得算定基準に使いました
数量は六万九百六十二石と、逆に少く見て
配慮をしてくれておったのであります。二十八年度におきましても、
農林省統計が六万二千七百八十六石と
実収高の
報告がありまするのに対して、二十八年度の
税務署の
農業所得算定基準は六万百四十八石という姿で、この
農村の
過労労働に対しまして報いておられたのであります。しかるにかかわらず二十九年度は、
農林省が六万九千七百六十三石を
発表いたしましたのに対して、
税務署では七万一千七百五十八石を
農業所得算定基準にいたしたのであります。ただ一例でありますが、全国一の
米つくりの村でありますから、私は特殊なる例でない、
米作一本の実に貴重な
実例であるというのであえて申し上げたわけであります。かようなるわけで、いわゆる毎年の
考え方のうちでその米の
経済供出石数、つまりお米の方がよく売れるので、麦やその他のものを
主食の、いわゆる
保有米のかわりに食べて、
保有米をむしろ
超過供出にまわしておったわけなんです。これらの
実態を勘案されたので、二十七年、二十八年においては、さようなる
一つの
生産数量の
算定そのものがしんしゃくせられておったのであります。ところが今年はさようなることを一切
考慮しないで、それらの
農林省の
収穫統計以上のものを
税務当局が決定をして、これをもって
農業所得算定基準として押しつけて参っておる。ここに私は大きな問題がある。この点で前申しました、たとえば七万石という
数量に対して、三千六百三十四石が
表通の
購入量並びに今後買い入れて食いつなぐ
予定数量であります。これらは
農協の組織から買い入れをいたしますので立証が可能なのであります。かような
実態がありますにもかかわらず、
税務当局の
実収高の計算において本年特に過大であるのであります。しかもこれらがその村全体の形で見ましても、二十七年の
所得税が九百八十四万円でありましたのが、二十八年は
凶作で六百二十一万円、しかるに二十九年の
税務署の押しつけて参ります金額は、驚くなかれ四千七百八十九万円が
所得税額の
総額でありまして、二十六年は多少
凶作の点も一部にはあったようでありますが、二十七年度に比較すると四八六%という
税額の非常なる
増加になっております。
そこでこの村におきましては、
自主申告をして千四百八十七万円の
自主申告まではいたしたのでありますが、このような
実態のままで放置せられておきますと、御
承知のように
税務の面においての
過小申告の問題も出てくる、それに対してさらに日歩の問題も出てくる、いろいろな問題がこれに応じて出てくる
実情でありまして、私はこれらの
実情を申し述べて、どうしてもこの際、御
当局はもとよりでありますが、
大蔵大臣の
政治的考慮によりこれらの問題の解決をはかって、
農村の
生産意欲が増強されますような
国策をおとり願いたい。
さらにこれらの問題に対しまして、
新潟県全体の
供出の総量が二割一分ふえておりますのに対して、
平均価格が下ったので手取りの
供出代金は一割しかふえておらないという
実情であります。さらにもっと極端な例を申し上げますと、中蒲原郡の庄瀬村というところでは、総収量ですから
供出量と
保有量を足したものでありますが、二十八年、二十九年においてはほとんど差がないのであります。そういう
数字であるにかかわらず、
供出の
代金は従って同じでございますにかかわらず、
所得課税総額は二倍となり、
所得税の
税額は三倍半にはね上ったのであります。あるいは四倍にはね上った白根町の
実例もあるのでございます。これらの問題をくるめまして、一体いかようにこの問題をお考えなさるか、さらにもう
一つの問題は、
確定申告の三月十五日の時期でありますにもかかわらず、非常な厖大な
税額の相違が出ますために
折衝に手間取りまして、
確定申告の
期日までに
自主申告の
余裕のなかった地方がたくさんに出て参ったのでありますが、これらのものはいかようにして救っていただくか、
農協の
人たちが一軒々々の
農家の
自主申告を書いて下さるのが
農村の
実例であります。ことしの例は、
選挙などという特殊な
事情もありましたために、非常に
折衝が難航をきわめて、
確定申告の三月十五日までにその
自主申告さえ書き込む
余裕のない羽目に陥られた地方がたくさんあります。これらを放置しておかれますることは、非常に税の問題で将来とも長く禍根が残るのでありますが、これらに対して
農林御
当局では、その同じく行政庁である
大蔵当局にいかなる御要求をなさり、並びに
大蔵当局においては、これらの問題の是正策としていかようなる御用意があるか、この点を承わりたいと思います。