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1955-03-28 第22回国会 衆議院 農林水産委員会 第2号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年三月二十四日       井出一太郎君    白浜 仁吉君       松浦 東介君    鈴木 善幸君       中馬 辰猪君    足鹿  覺君       稲富 稜人君  が理事に当選した。     ————————————— 昭和三十年三月二十八日(月曜日)     午前十一時八分開議  出席委員    委員長 綱島 正興君    理事 井出一太郎君 理事 白浜 仁吉君    理事 松浦 東介君 理事 鈴木 善幸君    理事 中馬 辰猪君 理事 足鹿  覺君    理事 稲富 稜人君       赤澤 正道君    安藤  覺君       五十嵐吉藏君    伊東 岩男君       石坂  繁君    大森 玉木君       加藤常太郎君    楠美 省吾君       笹山茂太郎君    野原 正勝君       原  捨思君    本名  武君       青木  正君    足立 篤郎君       大野 市郎君    川村善八郎君       助川 良平君    塚原 俊郎君       赤路 友藏君    淡谷 悠藏君       井谷 正吉君    石田 宥全君       楯 兼次郎君    芳賀  貢君       伊瀬幸太郎君    川俣 清音君       佐竹 新市君    中村 時雄君  出席国務大臣         農 林 大 臣 河野 一郎君  委員外出席者         農林事務官         (大臣官房長) 安田善一郎君         食糧庁長官   清井  正君         専  門  員 難波 理平君         専  門  員 岩隈  博君         専  門  員 藤井  信君         専  門  員 徳久 三種君     ————————————— 三月二十八日  委員椎熊三郎君辞任につき、その補欠として安  藤覚君が議長の指名で委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  農林水産業に対する基本施策に関する件     —————————————
  2. 綱島正興

    綱島委員長 これより会議を開きます。  十一時半まで休憩いたします。     午前十一時九分休憩      ————◇—————     午前十一時三十九分開議
  3. 綱島正興

    綱島委員長 これより会議を開きます。  農林大臣よりごあいさつをいたしたいとの申し出がありますから、これを許します。
  4. 河野一郎

    河野国務大臣 今回重ねて農林大臣に就任いたしましたので、今後よろしく御協力をお願い申し上げたいと思います。  この機会にちょっと一言了解をお願いいたしたいと思うのであります。それは委員会のお集まりにあたりまして最初に私がこれから農林行政をどういうふうにしてやつて参りたいかということを申し上げまして、皆様方の御批判なり御協力なりをお願い申し上げますことが順序かとも考えますが、御承知通り議会は、内閣が成立当初に開会せられましたので、明年度予算提出もまだできないで、せっかくただいま編成中でございます。従いまして議会におかれましても、来月半ぽ議会明年度予算提出の際に、政府からあらためて総理大臣施政方針演説を行うことに御了解を得ておる次第でございます。そういうわけでございますので、私といたしましても、総理大臣施政方針演説がありまして後に、明年度予算が決定いたしました上で、あらためて私の考え方を申し上げて、皆様方に御批判願いますことが順序考えますので、本日はごくあらましを申し上げまして、皆様方の御批判を願いたいと思います。なおまた現在予算編成中でございますので、多年練達堪能の各位からいろいろ御意見なり御注文なりを伺うことができますれば、せっかく幸いと考えておる次第でございます。  そこでさしあたりまして、私の考えといたしましては、基本的に従来とかく世上誤解もあるようでございますから、この点については特に一つお聞き届けをいただきたいと思うのでございます。第一には米麦その他主食の増産について私が非常に熱意を持たないというような誤解が一部にあるようでございますが、私は決してそういう考えを持っておらないということが第一でございます。ただ私の考えといたしましては、従来のあまりに米麦重点農林省施策ないしは予算の組み方が偏重し過ぎておった点があるのではなかろうか。これは世界情勢もしくはわが国内食糧に対する非常に強い要求の度合いからして、当然かくあらわばならなかったと思うのでございますが、今日の世界の大勢ないしはわが国内農村のあり方からいたしまして、農家経済を安定せしめる上におきましては、米麦はもちろんのこと、その他養蚕にいたしましても、畜産にいたしましても、農家経済を安定確立させる上におきまして、多角経営の基礎の上においてやって参ることが必要ではなかろうか。そういう意味におきましてとかく従来養蚕蚕糸業もしくは畜産—増産の方は十分に意を用いられておりましたが、価格の安定の方面に力を尽すようにしていかなければならないのではなかろうかというふうに考えておるのでございます。さればと申して、決して食糧増産に意を用いないというようなことは考えておらないのでございますから、その点は御了解を願いたいと思うのであります。  とりわけお聞き取りをいただきたいと思いますことは、今一番大事なことは、今申し上げまするような意味合いにおきまして、国民生活の安定ないしは農家経済の確立の上から参りまして、農産物の価格を安定せしめるという方向に持っていきたい。もちろん生産費中心にして考えなければならないことは当然でございますが、そういう意味からいたしまして、国民生活の安定、農家経済の安定、この二つを同時に可能ならしめることは、どうしても生産費引き下げ重点を置いて考えなければならないのではなかろうか。生産費合理化引き下げないしは価格の安定、流通過程の改善という方向に相なるべくは重点を置いてやつて参りたいというふうに考えて、せつかく明年度予算編成に当りましても、それらの点に許される範囲の意を用いまして現存十分努力いたしておる次第でございます。いずれ予算ができ上りました際に一々また御批判、御検討を願いたいと思いますので、本日はごくあらましを申し上げまして御了解を得たいと思うのであります。なおお尋ねがありましたならば、それに対してごくあらましのことをお答え申し上げることで御了解を得たいと思います。  簡単でございますが、一言あいさつを申し上げます。
  5. 芳賀貢

    芳賀委員 議事進行。ただいま農林大臣からごあいさつがありましたが、今日の会議の日程は、われわれの承知しておるところによると、三十年度の暫定予算に関連して、農林施策に対する概要の御説明をあわせてお願いしたいということになっております。その点から委員長から大臣にお伝え願いたいと思うのであります。
  6. 河野一郎

    河野国務大臣 ちょっと申し上げます。三十年度の四月、五月の暫定予算は、御承知通り編成方針を純事務的にいたしまして、平たく申し上げますれば、前年度の予算の十二分の二を組んだというでございまして、この中にはほとんど御説明申し上げますようなことが入っておりませんということは、予算総会大蔵大臣からごあいさつがありました通りでございまして、取り立てて私からここに御説明を申し上げるようなことがありませんので、またお気づきの点で御質問がありますればお答えを申し上げますということで御了解を願いたいと思う次第でございます。言い落しましてまことに申しわけございません。
  7. 綱島正興

    綱島委員長 委員長からちょっと大臣お尋ねをいたします。昭和三十年度暫定予算概要という文書が参っておりますが、これは大体農林省からお出しになったものでしょうね。
  8. 河野一郎

    河野国務大臣 お答え申し上げます。それは委員長さんと政務次官との間に、いろいろそういうふうなお話し合いがありまして参考の資料として差し上げたものじゃないか、とこう考えます。
  9. 綱島正興

    綱島委員長 さようでございますと、大体これを御説明願つたものとして了承してよろしゅうございますか。
  10. 河野一郎

    河野国務大臣 けっこうでございます。
  11. 綱島正興

    綱島委員長 ではいかがでございますか。これは説明受けたことにして御貿問をいただいたら……。   「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  12. 川村善八郎

    川村(善)委員 大体暫定予算の問題については、説明書を見ますとわかりますが、きょうは、それ以外のことが質問できないかどうか……。
  13. 綱島正興

    綱島委員長 そんなことはありません。
  14. 川村善八郎

    川村(善)委員 関連して質問ができるということでございますか。
  15. 綱島正興

    綱島委員長 そうです。
  16. 川村善八郎

    川村(善)委員 よろしゅうございます。
  17. 綱島正興

    綱島委員長 そういたしますと、どういたしましょうか、十二時十分くらいまでやって、正一時から大臣が必ずここへ見えるというのだから……。
  18. 芳賀貢

    芳賀委員 委員長、一応これを説明してもらって……。
  19. 河野一郎

    河野国務大臣 お答え申します。これを朗読してもけっこうでございますけれども、今申し上げた通りでございますから、私がここで申し上げたことに御了承願ってけっこうでございます。
  20. 足鹿覺

    足鹿委員 では速記録に載せておいてもらおう。
  21. 綱島正興

    綱島委員長 今の答弁速記録に載っておりますから……。  それから一時間の持ち時間は中途になりますが、通告がございますから質疑を許します。足立篤郎君。
  22. 足立篤郎

    足立委員 ただいま大臣のごあいさつの中に、増産対策についていかにも自分が冷淡なような誤解を受けておるが、そうではないのだという御弁解を伺いました。大臣は去る十二月に御就任になりまして以後、こういうことを言われたことはございますか。すなわち食糧増産対策のために、土地改良その他今まで政府補助金をたくさん出している、これはばかばかしいことだというようなことを言われたことがありましょうか。もしかような御発言をいかなる機会であるとは言いながらおやりになったとするならば、増産対策に冷淡であるというような誤解があるとおっしやいましたけれども、これは誤解ではなくて、正解といわざるを得ないと私は思う。まあこういった御発言をなさった機会に、今おっしゃった生産費引下げをしなければならぬというようなことも言われておるようでありまして、政府補助金を出すことによって決して百姓はよくならぬのだ、農家みずからが創意工夫、努力によって生産費引下げなければならぬ。これによって初めて国際競争にも耐え得るし、真に農民生活も安定し得る。日本農業の発展もあり得るという理想論をおっしゃっておるように私は記憶いたしております。こういうふうな御構想で今後の農政基本をやって行かれるとするならば、日本の置かれている、特に日本農村が置かれている地理的、気象的な条件、あるいは宿命的な人口問題、零細農であるというような問題、こういった問題とからみ合せました場合、果して大臣のおっしゃるようなお考え日本農民が真に自立できるかどうか、食っていけるかどうかということについてのお考えを、はっきり伺っておきたいと思います。ただいま申し上げた通り大臣はこういうお言葉を吐かれたことがあるかどうかということと、同町に生産費引上げの問題について今お話がございましたが、これをもう少しかみ砕いて、大臣のお考えを向いたい、この二点が第一の質問であります。
  23. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほど私が申し上げましたように、今足立さんのお話でございますが、私の申し上げましたこと全部を御了解いただきませんで、そのうちの一部分ずつをおとりになると、そういうことが言葉の中に入っておったことがあるかもしれないと思います。しかしそ、れは前後の言葉を全部おとりいただくと、そういう結論にはならないと私は思うのであります。どこまでも土地改良をして増産をすることが、生産費引下げの一番大事な要素であるということにつきましては、長年私も農村関係いたしております者といたしまして決して見落すわけはないのであります。また先ほども申し上げました通りに、今までの国際情勢ないしは国内情勢からいたしますれば、増産をしたことがばかばかしいことである、増産一途に集中したことがばかばかしいことであるというような考えは、私自身持っておりません。世界的に食糧が足らなかった、幾ら買おうとしても買えなかった。ないしはまた国内の人口と生産関係から申して、食糧増産は絶対の要求であるという場合におきまして、あらゆる施策をこの一点に集中したことが、決してばかばかしいことであるとかむだなことであるとかいうようなことは、絶対に私は考えたことはございません。従いまして今申し上げますように、生産費引下げには土地改良というものは絶対にやらなければならぬものである、これが生産費引下げの第一の前提であるということは、決して私は見落そうとは考えません。でございますから第一の点については、そういう意味において御了解願いたいと思うのであります。  第二の点につきましては、生産費引下げには、ただいま申し上げましたように、土地改良による増産、ないしはまた生産資材引下げによるところの生産費引下げということで、生産費引下げることに努力して参らなければなりますまい、こう考えておるわけでございますから、御了解願いたいと思います。
  24. 足立篤郎

    足立委員 生産費引下げのもう少し詳しい具体的な構想を伺いたいと思ったのでございますが、これはなかなか議論の分かれるところでありますから、いずれまた機会を得て詳しく伺いたいと思います。何だか私どもは、今までいわゆる河野放言と称せられるものから受けている印象は、農家自分で裸になって努力しなければならぬのだ。ここへ百姓を追い込んでこそ初めて農村の自立ができるのだというような、乱暴きわまるお言葉を吐かれたように私ども印象を受けている。でございますからこれを打消すためには、農林大臣はもう少し詳しく、具体的に、どういう方法をもって生産費引下げて行くか、それによって農家生活安定をはかって行くかということについて、お話がなければ私はうそだと思う。単なる一片の弁解ですべてが了解できる問題ではないと思います。  この問題はあとに譲りますが、こういったいきさつから申しまして、十二月末に民主党内閣がお出しになった予算大綱に、期せずして補助金大幅削減という問題が浮かび上ってきた。でありますから私どもは、この大臣放言がまさにこれ事実になって、数字になって現われたというふうに感じたわけなんです。ですからこれは河野農林大臣の真意であろうと、だれしも全国農民考えたわけです。五百億でしたか、補助金を打切ろうという予算大綱をお立てになった。これはおそらく今回の年度予算においても同じ構想で行かれると思います。わずか二、三ヵ月でこの基本的構想が根本的にくつがえるということは考えられない。この大幅の補助金削減を全予算の中でやろうという構想をお立てになった場合に、農林省関係で具体的にどのような補助金削減をやる腹であったか、こういった各省関係削減数字を積み上げて、五百億というような数字が出たの、たろうと思います。もしそうでないとするならば、全く目の子でいいかげんな数字発表したということになります。でありますからこの構想をお立てになったときに、ああいう発表を選挙前におやりになったこの場合に、農林省としてはどのような補助金削減をおやりになろうとしておるのか、今おっしゃった増産対策に決して冷淡ではないという言葉の裏、つけのためには、この補助金削減はやるけれども、今大臣みずからおっしゃったように、土地改良その他生産費引下げのための積極的な施策をやっていくのだという、はっきりした御答弁をいただきたい。一月の中旬でしたか、各県に流れて来ました通牒によりますと、客土事業などは、今まで三割の補助をしておったのを二割に削減するというようなものが出ております。期せずしてこういったことが一致しておるわけでありまして、何となく農林大臣は、今後の日本農政をつかさどるにあたりまして、補助金をどんどん切っていくのだ、そうして農民を裸にしてしまうのだという印象を与えておる。ですからこれは具体的に御説明がないと、そうでないという否定の青葉だけでは私は了承できませんので、特に補助金削減の問題についてお話を伺いたいと思います。
  25. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいま足立さんのおっしゃったのは、何をどういうふうにおっしゃっておるのか、私にはわからないのであります。決して五百億補助金を切るとか、それに農林省がどういうふうに協力するとかいうような相談を受けたことはない。閣議でも私は休んだことはあまりありませんが、そういう話を聞いたことはないのであります。従って農林省当局でそういう話をしたこともないのであります。今の客土の話は別でございますけれども、そのほかに五百億の補助金を切って、そうして何で積み上げたとかなんとかいうようなことは全然存じませんので、お答えの仕方がありません。決して私はそんなことは考えておりませんから、御了承願いたいと思います。
  26. 足立篤郎

    足立委員 私の申し上げたことは、十二月二十七日の日本経済新聞相当大きく取扱われておる、民主党内閣予算大綱における補助金打切り政策についての記事であります。これはごらん願った上でまたお話し合いをいたしたいと思っております。しかしいやしくも、政府としてこういう政策発表になっておる以上は、農林大臣が御存じないというはずはない。私はそれでは言い方を変えまして、この補助金削減するということは、農林大臣は全然お考えになっていませんか。
  27. 河野一郎

    河野国務大臣 日本経済新聞に出ておったということですが、それは今ここであらためて申し上げておきますが、全然そういうことはありません。私は前にお答え申し上げたように、そういうことは閣議相談になったこともなし、農林省がそれに関係して発言したこともなし、われわれの関する限り政府としては事案無根でございます。あらためてはっきり申し上げておきします。全然ございません。私の記憶違いかと思って事務当局に聞いてみましたけれども、そういうことはないのであります。閣議でそういう話が出たことはありません。あれば私は意見を述べるはずでありますけれども、ございませんから、誤解があるといけませんから、この際御了承願っておきます。  それから補助金の問題についての考えをこの際申せ、こういうことでありますが、これにつきましてはいずれ本予算の際にあらためて申し上げますが、先ほど申し上げました通り農林省予算全体といたしましては、私は私の考えを持っております。その考え先ほど申し上げましたように、農林省の前年度の予算につきまして、こちらの方のある程度の金はこっちへ回した方がいいのではなかろうかということはやってみたい、こう考えております。従って農林省予算全体が、今申されますように、何百億補助金が減額になるというようなことは今私は考えておらないのでございまして、これは皆様の御期待に沿いますように—河野農村を裸にしてしまうのではなかろうか、裸どころかそんなことは決して考えておりませんから、ひとつ御心配なく御了承願いたいと思います。
  28. 足立篤郎

    足立委員 今の記事の問題は水かけ論になりますから申し上げませんが、十二月二十七日の日本経済新聞に出ておりました。私どもはこれを信じて御質問申し上げたのです。  今のの補助金の問題でありますが、たとえば農業補助金のごとき、大蔵省筋あたりでは、これは一時的に普及宣伝するために補助金を出すのだ、すでにパラチオン剤のごとき、相当危険なものでありますが、全国農民がこれを使うことになれて、しかもその効果を認識している。こういう段階になれば補助金は切ってもいいのだというような相当強い意見があるようであります。この補助金を打ち切るかどうか、削減するかどうかということに対する農林大臣のお考えにあわせて、これは具体的なこまかな問題ですが、全国農民相当大きな関心を持っております農薬に対する助成をどう取り扱われるか、伺っておきたいと思います。
  29. 河野一郎

    河野国務大臣 これは長年農林行政に御心配を願っております足立さん、ことに昨年まで与党としていろいろ御心配願いましたことでございますから、よくいつも御承知通り大蔵当局はいつでもそういうことを申します。あれを切ろうとかこれを切ろうとか申します。そこで先ほども私は、皆さんからいろいろ御注文なり御意見なりを承わりまして、そうして農村のためにどうやることが一番いいか、そういう個々の問題につきましては、地方的な事情もございましょうし、いろいろな点もありますから、これについては私もせっかく努力してみたいとごあいさつを申し上げたことでございまして、今の農薬の点につきましては、私は生産費引き下げ見地から申しまして、肥料、飼料、農薬、農機具、これらの引き下げについては今後引き続き力を尽していきたい、製造家に対して協力も願わなければならぬでございましょうし、ないしはまた政府施策として、必要があればこれも考えなければならぬでございましょうし、要は生産費引き下げ見地から申しますれば、肥料と同様に農薬の点については考えていかなければならない、こう考えておりますから、いろいろ具体的な問題につきましては、いずれまた御協力なりお知恵を拝借する場合があろうかと思いますが、どうかひとつ御支持、御協力願います。
  30. 足立篤郎

    足立委員 食糧政策につきまして御構想を伺いたいのです。河野農林大臣はかねて統制撤廃論者であると私は信じておったが、民主党内閣でいろいろ論議されました結果、予約買付制というふうに話が変ってきているのでありますが、その経過と農林大臣の今後の対策につきましての基本的な点だけをお伺いいたしたいと思います。また予約買付制度をもしおやりになるとすれば、これは少くとも田植え前に米価発表される必要があると思う。そうして農民が安心して、了解づくで買い入れの予約政府はとらなければならぬ、かように思いますが、米価についてのお考えもあわせて伺っておきたいと思います。
  31. 河野一郎

    河野国務大臣 かねて私の食糧、特に米についての考えは申し上げたこともあるかもしれませんが、ただいまお尋ねでございますからあらためて申し上げます。米の取扱いにつきまして現在やっておりまする供出制度が、このままではもうどうもならぬということにつきましては、おそらくどなたも御意見はないことと私は思うのであります。しからばこれをどういう方向に持っていくかということにつきましては、これを中心にして考え方が三通りあると私は思うのであります、二通り考えることも妥当であるかもしれませんが。第一は、極端に専売の方向に持っていくか、ないしはまた現行制度で参りまして二重価格を徹底して、そして生産費を十分に償って、全く農家の得心のいくような価格で買い上げ、さらにこれを消費者要求する価格に引き合うようにしていく二重価格制度をとるか、ないしはまた自由販売方向に持っていくか、このいずれかの方向を定めて、その方向に合うように順次段階を経ていくべきものなりと私は思うのであります。従いまして、この三つの方向考えます際に、どれも一ぺんに飛躍してその結論に達するということは、なかなかむずかしいというふうに考えるのでございます。そこで私は、結論自由販売方向に定めまして、それに到達しますまでにすべての準備を整えていきたい、こういうことなのでございます。でありますから、その準備期間を、今の供出制度そのままで準備完了まで待つか、ないしは準備完了まである一つ施策を講ずるかということになってくると思うのであります。そこで準備完了までいろいろ問題もありまするし、やらなければならぬことがありまするから、その間、今までの供出制度では妥当でないと考えまするので、皆様にかねて申し上げました予約買付制度という—名前が適当であるかどうか知りませんが、今新聞等に順次出ておりまするような施策をしていきたい、こう考えておるわけであります。そこで御指摘になりました予約買付をいたすにつきまして、価格の決定を早くしなければいけない、これはもちろんその通りでございまして、なるべく早く—なるべくと申して決して六月、七月と申すのではございません。植付前に、ないしはまた予約買付予約をする前に価格の決定をしなければ予約ができないのでございますから、一応七月末くらいまでにはどうしても予約完了を見たい、従いまして予約の開始いたしまする前に価格の決定をしなければいけないと考えておりますから、価格の決定は早急にしなければいけないと思うわけでございます。しからば価格の決定はどうするかということでございますが、これはあらためて価格を形成する皆様初め大方の委員諸君の御意見を承わりまして、実は御承知通りに、この予約買付制度政府としてとって参ろうという結論に達しますまでに、米に関する権威のある方々にお集まりを願いまして、十分御懇談を願って一つの示唆をちょうだいいたしましたので、その示唆に基いてやっていきたい、こう考えておりますので、この中に示されておりまするような価格の形成については、十分に意見を尊重いたしましてやつて参りたいと考えておるわけであります。
  32. 足立篤郎

    足立委員 ただいまの予約買付制度につきましてきょうの新聞を見ますると、大蔵省筋からやはり相当強い反対が出ているようであります。その根拠は、結局こういう中途半端な政策では政府が配給の責任だけを持って、買付は予約ということでいきますと、勢い米価を不当につり上げざるを得なくなるだろう、消費者価格を据え置くとするならば、そこに二重価格の問題が起ってくる、財政負担の問題が起ってくるということから、相当強い反対が出ているということが報ぜられておりますが、私は、これは筋道からいって当然考えられることであるというふうに思いますので、こういった意見に対して農林大臣はどういうふうにお考えになっておるか。予約買付制度が、今まで新聞にちらほら出ておりましたような制度で、ほんとうに配給の責任を政府が持って万全を期していかれるものかどうかという、御自信のほどを伺っておきたいと思います。
  33. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいま御指摘になりましたように、大蔵省方面にどういう御意見があるか、また民間にどういう御意見があるか、いろいろ御意見もあることと思います。また、かたがた政府としてもまだ閣議決定をいたしておりません。おりませんけれども、しかしこれは閣議で決定いたします際に御異論があるとは私は考えておりません。大体の了解は得ておるのでございますし、今の文相、松村前政調会長も、これに参画して御決定を願ったことでございまして、党議としてはすでに大体の御了解を得ておることでございますから、わが党としてはこれについて御意見はないことと考えております。従って閣議の決定に支障があるとは考えておりませんので、大体この方向でやって参りたい、こう考えております。
  34. 足立篤郎

    足立委員 今お答えがないのですが、この制度で農林大臣は完全に責任を全うできるかどうかという自信のほどを伺いたい。
  35. 河野一郎

    河野国務大臣 これはわが党で決定をいたしまして農林大臣はこの政策でやれと言われます以上、私は農林大臣をいたしております以上は、責任を持ってやるつもでございます。
  36. 綱島正興

    綱島委員長 ちょっと足立さんに申し上げますが、十二時十分までということですし、大臣は何か約束があるのだそうですから、正一時からやることにしましょうか。  それでは午前中の会議はこれで終りまして、午後一時より再開いたします。    午後零時一十三分体感      ————◇—————     午後一時十二分開議
  37. 綱島正興

    綱島委員長 午前に引き続きまして会議を開きます。  大臣に対する政疑を続行いたします。
  38. 足立篤郎

    足立委員 先ほど私の質問途中で打ち切られましたので、継続してお伺いいたします。先ほど予約買付制度の問題につきまして、大臣は、大蔵省の反対があっても、党議でもきまっておるし、閣議でも必ず決定してこれを断行する自信がある、またこの制度で食糧の需給あるいは配給の責任を持つことができるという意味の御答弁をなさいましたが、この御自信の裏には、予約買付制度をやってみても、米価関係農民が飛びついてこないというような場合には、配給の責任が持てないはずでありますが、自信があるとおっしゃる以上は、何か強権発動というようなことをお考えになって確実に米をつかむという御自信がおありなんですか。
  39. 河野一郎

    河野国務大臣 この予約買付制度と申しますのは、私が今さら申し上げるまでもなく、足立さんも御承知通りに、前吉田内閣当時に、自由党の内閣のもとに食糧議会をおつくりになりましたときの御決定が、私は予約買付制度であったと思うのであります。これはわが国の大方の権威者がお集りになりまして、まずこれでいくのが一番よかろうということで御決定になりました方針でありまして、従いまして、私としましては、先般私がお願いいたしました食糧懇談会の際にも、自由販売に行く過程としては、まずこの方法をとるのが一番よかろうというような御意見もありまして、いろいろそれこれ御懇談いたした結果、こういうことがよかろうということで御決定になりましたことを、私も御意見を尊重いたしましてそう決心をしたことでございまして、今御指摘のようないろいろ御懸念もあると思いますが、それらの点につきましては、農業関係団体の方面におきましても、全力をあげてこの方針でいこうじゃないか、これに協力してやろうじゃないかということで、農業関係団体一致して、非常な熱意を持って御協力下さることのように承わっておりますし、また私のお目にかかりました各団体のそれぞれの責任者の方々もそういう御意見でございますので、私としましては、何を申しましても、非常な困難のこととは存じますけれども、これよりほかに行くべき道はなかろうというようなことで、私一人が幾ら力んでもできるわけのものでもございませんけれども、各方面のそれぞれの責任の地位におられます方々が御協力下さることでございますし、御示唆もあることでございますので、ぜひ私としてはやってみたい、こう考えておるわけでございますから、御了承をいただきたいと思います。
  40. 足立篤郎

    足立委員 私は経過を伺っておるのではなくて大臣は責任を持って断行するという意味のことをさっき強くおっしやいましたから、断行されれば今申したような事情も考えられる。もちろん用意周到なお方ですから、こういう点もお考えになって、責任を持っておやりになるのだ。委員会や学者の責任を問うておるわけではないのです。これにはもちろん米価との関係が不可分の関係になってくると思うのです。これは大蔵省だけではなく、心配しておる向きは多いと思うのですが、実際どの辺でこれをまとめていくといいますか、基本的に持っていこうとしていらっしゃるのか。当然農林大臣が責任を持ってこの政策をおやりになるのですから、その心がまえを伺っておるのです。ただ自信がある、自信があるとおっしゃいますけれども、もちろん予算的措置その他はまだ計数的にははじけないと思いますが、今申したように、もしもこれに応じないような場合には、強権発動というようなこともお考えになっておるのかどうかというような最後の線をお伺いしておるのです。
  41. 河野一郎

    河野国務大臣 私はただ経過だけを申し上げて御答弁にかえたのではないのでありまして、そういう経過をたどっておることでありますし、各方面の方々がそれぞれ御協力下さることでありますから、そういう準備構想のもとに実行ができる。従って私としてはこれをやる、こう申し上げたのでございまして、ただ経過を申し上げたのではないのでございますから、その点は御了解をいただきたいと思うのであります。なお今いろいろ御指摘のことでございますが、強権発動、強権発動とおっしゃいますけれども農村に向って強権発動という言葉は、なるべく私は差し控えたいと思うのであります。そういうことで政治はやるべきものでないのであって、すべて納得づくでやっていきたいと考えておりますから、その点はひとつさように御了承いただきたいと思います。
  42. 足立篤郎

    足立委員 河野農林大臣は、最近の新聞にも談話等ではっきり発表されておるのですが、米は断じて統制撤廃すべきであるということを非常に強く打ち出されておる。従って、私は察するに、こういう予約買付制度というようななまはんかな制度が成功するとは、大臣みずからお考えになっていないのではないか。過渡期としては、こういう制度もやってみる必要がある。自然にこれが不成功に終ると言うと語弊がありますが、そのままずるずると自由販売に行って、統制撤廃に行けば—大臣はまあ腹の中ではそういう計画でいらっしゃるのではないかというふうに思うのですが、ほんとうの腹はどうですか、ぶちまけておっしゃっていただけませんか。
  43. 河野一郎

    河野国務大臣 それは非常に思い過ぎと申したらしかられるかもしれませんが、私はかねて申しております通りに、私は自由販売論者であります。自由販売論者でありますけれども自由販売をいたしますまでには、どうしても準備が要ります。これは足立さんも御承知通りだと思います。それには第一に単位協同組合の育成強化、これが非常に準備の万全を期さなければなりません。そういうことでありますから、これが失敗したらずるずると行って—その方はずるずると行っても、準備の方ができなければ何としてもいけないのですから、その準備には十分意を用いていきたい。こういうことを申し上げてどうかと思いますが、大蔵省方面では、早く自由販売に移行したらどうかという御熱心な御意見と、私はかねて了承しております。閣内でもそういう意見が非常に多いのでございますが、責任の衝におります者といたしましては、ただ簡単に自由販売ができるものではないのでありまして、それには米価の維持ができますようにいろいろな準備が入り用である。さらに急激な暴騰をしないようにするために、消費者のためにもまた準備が入り用である。こういうような準備に万全を期さなければならないのでございますから、その準備期間が一体どのくらいでできるか、これはもちろん予算関係もございましょうし、繰越米の準備関係もございましょうし、また協同組合の担当をしておられる方々の御協力関係もございましょうし、そういう面で準備をなるべく早く済ましていきたいとは考えておりますけれども、その準備には大方の御理解がなければできません。また御納得がいかなければなりません。そういうすべての御理解御納得がいった上でなければ、軽々に自由販売にすべきものではないということは私も考えておりますので、これが自然のうちに失敗したらばそっちへ行くというようなことは毛頭考えておりませんから、その点は御了解願いたいと思うのであります。  また今お話のように、予約ができなかったらどうするかということでございますけれども、あらかじめできないことを前提にしてかかるわけには参らぬのでございまして、これは各団体の首脳部その他農村の代表の方々が、ぜひこれに協力してやろうという非常な御熱意で、御賛成をいただいておりますので、私は必ず成功するものと確信しておるのであります。ただし価格の点は御指摘の通り非常に重大であります。従って価絡の決定につきましても、これら団体の代表者または衆参両院の代表の方々等お集まりいただきまして十分なる御検討の上で、適正なる価格の御決定を願うということに考えておりまして、お前の腹づもりはどうだどうだという御意見でございますが、私の腹づもりできめべきとことではないのでございまして、今申し上げますように、それぞれの権威の方々のお集まりを願って御決定を願って、この方策で成功して参りたいと考えておる次第でございますから、御了承いただきたいと思います。
  44. 足立篤郎

    足立委員 先ほど私が補助金削減の問題でお伺いしたところが、全然聞いたこともないというような御答弁で、あれではどうも水かけ論になりますから遠慮しておったのですが、十二月に民主党内閣ができましてから、河野農林大臣出現以来、たびたび新聞発表お話等で一連の記事が出ております。私も今材料を持って参りましたが、十二月十二日の読売新聞に、米の統制撤廃問題その他につきまして河野さんがお話になっていらっしゃいます。これを見ましても、石黒忠篤流のやり方はぼくはどうかと思うというような批判から始まりまして農地改良費には一千億円近い金を使っておる、これは結局米が高くついて、せっかくつくってみても引き合わなくなるのじゃないかと、こういった土地改良事業、補助事業について非常に批判的な言葉を吐かれた。なおさっき申し上げましたように、十二月二十七日の日本経済新聞にもトップ記事に、そこからもごらんになれると思いますが、五百億円削除という記事が、これは大蔵省の発表のようでございますが、出ております。なお三月二十二日の日本経済新聞に荷見さんとの対談でいろいろおっしゃっていらっしゃいますが、たとえば土地改良予算のごときも、私の考えは、農業政策を平常化して、予算に余裕があればむろん土地改良もやりますというようなことを言っておられるようであります。つまりさっき大臣が御答弁になりました、土地改良生産費引き下げる重要な要素である。いわば第一義的にお考えになっているというようなお話でございましたが、今までのこういった談話の新聞記事を拝見いたしますと、少しどうも違うのじゃないか。きょうおっしゃっていることと、今ここで読み上げた点ももう明らかに違います。それから三十年度に予定されている土地改良費を、三十一年度以降にずらして考えることもできるということもおっしゃっていらっしゃる。もちろん前後の関係はあります。たとえば減税や住宅建設といった問題で、一兆円の予埠にはめ込めば、ことしは一兆円で縛られるから、土地改良費ははみ出る。従って三十二年度にずらす。つまりことしの土地改良費が減るのだということを、もうここではっきりおっしゃっているわけであります。これが食糧増産のために、しかも農家経済を安定にするために、生産費引き下げる最大の手段として土地改良考えているのだ。さっきの御言明が正しいとするならば、これは最も優先的に取り上げるべき問題であって、こういったほかの政策によってずらされてはみ出されてくるべき性質のものではないと考えますけれども、どうも少し大臣のおっしゃっていることが違うんじゃないか。なおまた二月十三日の日本経済新聞に、災害復旧費につきましても、これは大蔵省の発表でありますが、三百億円以内に圧縮をする。災害を圧縮してなくなるのならけっこうでありますが、災害復旧費を圧縮されたのではたまりません。これは農林大臣直接の責任問題ではありませんが、やはり民主党内閣の性格を物語るものであると考えます。なお今回提出されて、本日討論を予定されている暫定予算の中にも、食糧増産対策費の公共事業費のごときは、直轄事業のみに対する費用を組んでおるわけでありまして、県営や団体営については組んでいないようであります。一昨年やはり暫定予算を私どもの手で組んだことがありますが、この場合には団体営、県営等も含めて暫定予算を組んだ先例があるわけであります。にもかかわらず、今回の暫定予算につきましては、団体営、県営をはずして直轄事業だけを組んだというところに、今申し上げた十二月以来一連の民主党内閣考え方補助金削減考え方が、現実にこの予算になって現われてきたのじゃないかということを心配いたしましても、私はこれは決して筋の通らぬ話じゃないし、私ども心配だけじゃない、かように考えます。この点につきまして農林大臣の御所見が簡単に伺いたい。もう時間もありませんし、ほかにも質問がありますから、もし長々と御答弁下さるならばけっこうですが、委員長にこの点は一つ時間外にしていただきたいと思います。
  45. 河野一郎

    河野国務大臣 お示しのうち、大蔵当局が申したか申さぬかしりませんが、この点は一つ御引用をごかんべん願いたいと思うのであります。また私がお話した話の中でも、先ほども申し上げましたように、多少誤解のある点もあります。私は今その中で御答弁申し上げておく必要があると、私の責任を持てると思いますことは、今年度の予算編成は、御承知通り一兆のワクの中でやりたい、これはそういうふうに内閣としてきめております。ただしことしの下半期におきましては、拡大均衡の方式で行こうということも大体閣議了解事項となっておりますので、明年度予算におきましては、ある程度ことしの予算の一兆を上回って予算を組むような段階になるだろうということも了解になっておりますので、御承知通り土地改良費等につきましては、一年ででき上るものもむろんございます。ことしぜひ上げなければならぬものもむろんございます。しかし着手年度が一年遅れましても、その完成年度をその所期の目的を達成するように完成すればよろしいという考え方もできると思いますので、そういうふうなことで、もし一兆のワクの中に入らない場合には、明年度の約束をして、明年度において十分それを補うようにしていくということによってもよかろうじゃないかという趣旨の考え方から申したことは、私ははっきり自分でもそう考えておりますから、そういうふうに申したということが申し上げられると思うのでございまして、これはいずれ近日のうちに本予算を決定いたしまして、皆様方の御審議を願うことでございますから、その際に予算がどういうふうに編成されておるかということについて、一つ御検討をいただくことにして御了解願いたいと思うのであります。
  46. 足立篤郎

    足立委員 畜産問題についてお伺いいたしますが、河野さんは畜産には非常に御造詣が深い大先輩でいらっしゃいます。いろいろとまた新機軸をお考えになっていらっしゃるようですが、たとえば畜産団体の統合等につきまして、いろいろ新聞にも出ておりますし、法案も出るのじゃないかというようなことも出ておりますが、どういうふうな御構想を持っていらっしゃるか。私どもも、今まで中央で畜産団体がたしか二十近くあったと思いますが、こういったものが地方に手足を持たずに、中央だけでこういう団体を組織しておるということは、いろいろ弊害があるということも知っております。従ってこれを統合してすっきりしたものにしていこうというお考えにつきましては、私どもも賛成するものでございます。その御構想一つこの機会に御発表願いたいと思います。
  47. 河野一郎

    河野国務大臣 お話通りでございまして、ぜひ今非常にたくさんありまする畜産の団体を、何とかして一本もしくは簡単に整理統合ができれば一番けっこうではなかろうかと考えておることはその通りでございますが、ただここで私の考えを申し述べろということでございますれば、これも大ざっぱな考え方でございますけれども、指導と奨励をするものを一本別に立てて、経済行為を行うものについては今の協同組合の筋を使っていくということが、すべての農業団体についていいのではないかという考えを持っているのでございましてそれに多少の例外は含まれるかもしれませんけれども、大体そういうふうにして参りたい。ただしこれは特殊の農業についてそういうふうに考えているのでありますから、そういうふうに御了解願いたいと思います。
  48. 足立篤郎

    足立委員 ただいまお話のありました経済行為については、農協系統を一本に利用していくといいますか、そういうお考え、これも一つのお考えと思いますが、今問題となっていますたとえば乳価問題などは、資本家側との対立の問題で紛争を起しているわけですが、この畜産関係経済行為を行う団体というものに加工その他を行わせて、一方的に資本家の言い分に屈服しなければならなぬような今までのやり方を根本的に改めようというお考えはございますか。また乳価の裁定の問題、酪農振興法にも盛られているわけでありますが、これが今までの経過ではほとんど動いていないようでございますけれども、この解決について農林大臣はどういう御用意を持っていらっしゃるか。またえさの値下げの問題、これも密接不可分の関係にあるのでございますが、現在の乳価が安い、飼料が高い、これをどういうふうに解決していこうというのか。目安だけでけっこうでございますから、御答弁を願いたい。
  49. 河野一郎

    河野国務大臣 乳価につきましては御指摘の通りでございますので、いろいろ苦慮努力してみましたが、現在の政府の与えられています権限と申しますかによっては、今日以上に目的を達することがなかなか困難でございまして、議会が開会せられたことでございますから、明年度予算もしくはこの議会を通じまして、特に乳価の安定につきましては皆様方の御協力を願いたい。せっかく今準備中でございます。どういう構想でというお尋ねになると思いますが、これにつきましてはまだはっきり確定はいたしておりませんけれども、大体の私の見当といたしましては、ある一定の国内産の酪農製品の買い上げをいたすことができるようにいたしまして、乳価の安定を期するようにしていきたい。そのほか牛乳の処理につきましては、高温殺菌の施設をもう少し進めていきたい。これにつきましては明年度におきましてもある程度の補助金をとつてやっていきたいと考えておりまして、これを私の今考えております畜産団体にやらせるとかやらせないとかいうことは考えておりませんので、これは従来通りの農協を中心にしてやっていくことができれば、それでけっこうでございましょうし、それはその地方々々の実情に応じてやっていくべきものだ、こう考えておりまして、今の明治、森永を中心にした勢力下にありますものを育成していくというような考えは私は持っておりません。
  50. 足立篤郎

    足立委員 この問題は当面の重大問題でありますから、いずれもっと掘り下げて各委員からも御質問が出ると思いますし、私も質問をし、意見を申し上げたいことがあります。たとえば学童給食と酪農地帯とを結びつけて高温殺菌でなま乳の消費を固定していくという行き方も、ぜひ必要ではなかろうかと思っております。  次に砂糖専売制であります。農林大臣は、御就任当初非常な勢いで、十二月十二日の新聞にも出ておりますが、砂糖の専売を考慮しているということでいろいろおっしゃっているのであります。ところがその後だいぶ方針がお変りになったようで、どういうふうに変ってこられたのか。また現在の砂糖は一体高いのか安いのか。原糖の輸入価格に比べて中間搾取が非常に大きいといわれておりますが、どういうふうに御認識になっていらっしゃるか。それを引き下げるとすればどういう手をお打ちになる。どの程度下げるか。また本年度の輸入量はどういうふうにお考えになっていらっしゃるか。こういった点につきまして今までのお考えの経過、今後の対策につきましてお伺いしたいと思います。
  51. 河野一郎

    河野国務大臣 誤解があるといけませんから申し上げておきますが、専売制をやるということは申しておらぬのであります。これはその当時からたびたびお話を申し上げております。専売でやるということも一つ考え方でないかとお話したのでございまして、しかしその後の経過はこういうわけでございます。専売ということが新聞その他に伝わりましたので、各地の砂糖の小売業者から非常に強い反対がございました。そのためにその実情を調査いたしました結果、これはいたずらに専売制度をとる必要はない、目的は砂糖の配給ではなくして、製造の過程において非常に大きな搾取があるのである、これを壟断させることが適当でないということからいたしまして、この点について考えればわれわれの目的は達せられるのであるということに私は考えたのでございます。そこで現在考えておりますことは、まだ閣議の決定にもなっておりませんが、大体この議会に私たちとしては皆様方の御審議を願いたい、もしくは閣議の決定をして—これは農林省と通産省と、しいて申せば大蔵省にも関係のあることでございますが、関税の税率ということも考えているようでございますが、私といたしましては、国民生活を安定せしめる意味からいたしまして、砂糖の価格を安定せしめる必要がある。これはすでに足立さんも御承知通り、砂糖の価格がすぐにさつまいもの価格に影響して参ります。そういうわけでございますので、私としては、ただこれを通産や大蔵の考えだけでおまかせするわけには参らないと考えますので、どの辺に砂糖の価格を安定さしたらよろしいかということを第一に考えるのでございます。そういう意味からいたしまして、もし可能であるならばまず八十円前後のところに安定さしたらばいいのではなかろうか、こういうふうに考えるのであります。そういたしますと外糖との関係がどういうふうになって来るか、こういうことになります。でありますから外糖をなるべく安く入れて、そうして砂糖の価格を八十円程度に安定するような施策を講ずればよろしいのだ。その中間の利益が出て参りますれば、その利益は政府の方でこれを取ることにいたしましてその利益を国民生活の安定に振り向けていく。たとえば、私の申しますことが少し申し過ぎになるかもしれませんが、御承知通り食管会計等に繰り入れていくということも一つ考え方ではなかろうかと考えているのでありまして、これにはいろいろ御意見もございますが、大ざっぱに申し上げますと、私のごとく粗雑な考えでございますけれども、その見当に考えているわけでございます。
  52. 足立篤郎

    足立委員 時間がありませんから、最後に一点お伺いいたしますが、肥料問題でございます。硫安の値下げにつきましては、大臣は非常に御熱心におやりになったようですが、一体幾ら下りましたか。いつから下るのでございましょうか。
  53. 河野一郎

    河野国務大臣 これはほかの肥料は別でございますけれども、硫安については新聞に発表いたした通りになっているわけであります。限月は今ちょっと失念しておりますから、事務局から……。
  54. 安田善一郎

    ○安田説明員 お許しを得まして補足してお答えを申し上げます。  硫安につきましては、限月価格一かます当り三月—六月は八百三十円、七月を八百二十一円に値下げをいたしました。これはメーカーから元卸への卸値段でありましてあとに申します肥料と同様に、農協の努力、また市町村長、農業委員会等の御尽力を得まして、末端価格もこれが励行できるように相当強い指導をお願いいたしておるわけであります。過燐酸石灰につきましては、最近燐鉱石の価格の騰勢が見られますけれども、企業合理化によって克服をいたしますることにお願いすることといたいまして、三月以降平均一かます当り五円値下げするように、従来の全購連とメーカーとの予定価格引き下げをお願いいたしたのであります。第三番目に、カリ質肥料につきましては、農林省におきまして、二月一日以降の販売標準価格を一かます当り、塩化カリ元卸におきまして七百七十円、卸におきまして七百八十五円、小売におきまして八百十五円、硫酸カリ元卸におきまして九百三十五円、卸におきまして九百五十円、小売におきまして九百八十円を設定をいたしまして、これを越える不当な価格の出現を厳重に防止することにいたしました。その場合に末端におきまする小売価格は、一月当時の実勢価格に比しますると、一かます詣り百円というかなり大幅な値下げになることになっております。石灰窒素におきましては、電力事情の慈化等の条件を増産、製品の合理化等の措置により克服することをお願いいたしまして、本年の一月以降各月一かます当り五円ないし十二円の引き下げをおのおのの段階におきましてお願いすることになっておるわけであります。
  55. 足立篤郎

    足立委員 肥料議会のあることは大臣ももちろん御承知なんでしょうが、この問題は審議会にお諮りになりましたですか。大体肥料需給安定法によりまして法的根拠ができ、生産費その他も調査いたしまして農民の納得の行く肥料価格にしようというのが法律の趣旨であります。肥料議会は従来値段の決定には諮問に応じておるわけであります。今回は、どうも私どもが聞いている範囲では、肥料議会におかけになった様子がないように思うのでありますが、これでは米価議会を無視して米価をおきめになるのと同じような結果ではないかと思いますが、その点はいかがでしょうか。
  56. 河野一郎

    河野国務大臣 これは私があまり申しては恐縮でございますけれども、御承知通り肥料議会できめられました価格は最高価格でございましてこの価格よりも上ってはいけない、高くなってはいけないが、下ることはむしろ当りまえだ、事情がよくなればよくなるだけ下げていくことは当りまえだ、こう考えて私は審議会に諮らずにその指導、処置をいたしたことでございまして米価とは全然趣きが違うと考えておりますから、御了承いただきたいと思います。
  57. 足立篤郎

    足立委員 この肥料の価下げの問題につきましては、足元から烏が飛び立つようにおやりになったような形跡があるようですが、一刻も早くこれの値下げをすることはけっこうだと思う。全国農民も喜んでいることと思います。これはあるいは誤伝ですかどうですか、誤伝ならばお取り消し願いたいのだが、メーカーの代表に対して大臣は値下げを詰め寄られて、とにかく二月二十七日までには値下げを決定しなければ意味はないのだというようなたんかを切られたこともあるようでありますが、何か二月二十七日までに値下げをしなければならぬような意味の理由があったのですか。また選挙運動に際しても、大臣みずから街頭に立ってあるいは立会演説会で肥料問題を相当選挙運動に利用なすっておるといううわさも聞いております。利益誘導になるかどうか知りませんが、民主党としては農民には肥料をという金看板を掲げて、まるで肥料をただくれるような看板、そうして今安田さんの説明は安田さん独特の説明でつかみどころがないのですが、下ったのはたしかわずかのはずです。このわずかの値下げでこの金看板と引きかえては全国農民はたまったものではないと思うのでありますが、この点はどういうふうにお感じになっていらっしゃるのでしょうか。
  58. 河野一郎

    河野国務大臣 何も二月二十七日までにということを考えません。そういうことを申しませんが、ただ私は、従来とかく安い肥料—安い肥料といいましても、選挙の前だけお題目を並べるだけで、そんなことをやったためしがないじゃないかというようなことをよく言われますので、私は決して選挙を目当てに下げろどうのということではございませんけれども、御案内の通り肥料の取引は相当先物取引をいたしますので、時期をおくれますと春肥の肥料に間に合いませんので、一日も早くこの価格を決定する必要があるということでまとめたわけでございますから、この点は御了解願いたいと思うのであります。今お示しのように、わずかばかりしか下らぬじゃないかとおっしやいますけれども、これはもちろん今まで肥料議会等において、農村の代表として皆さんが十分に御努力いただいて妥当な最高価格をおきめになったのでございますから、それよりそんなにひどく下るわけではないのでございまして、しかし肥料事情がよくなればなっただけ下げるように下げさせて参りたいということで努力を払ったのでございまして、それらの点につきまして御了解を願いたいと思うのであります。
  59. 綱島正興

  60. 川村善八郎

    川村(善)委員 河野農相はごあいさつの中にも、また足立君の御質問に対しても、自分農業政策その他についてはずいぶん誤解を受けている点があるから、この誤解を何とか解くようにしてくれ云々のお話がありましたが、ひとり農林行政ばかりでなく、水産行政に対しましてもそうしたような誤解か真実か、非常な不評を買っておることは事実でございます。これは御承知でもございましょうが、一月二十二日に札幌の泉盛という男から河野農相並びに前谷水産庁長官を職権乱用、漁業法の違反で告訴をしておるのでございます。このことは違反になるか、あるいは職権の乱用かはお取調べいただかなければはっきりわからないのでありますけれども、少くも北洋の母船式サケ・マス漁業と、カニ工船漁業に対しては納得がいかないような点がありますので、これを御質問いたしたいと思います。が、誤解を解く意味におきましても河野農村から親切丁寧にお答えを願った方がよいのではないかということをまず前提にいたしまして、質問を申し上げたいと思うのであります。  御承知通り昭和二十九年度の母船式サケ・マスの許可は七社で七母船、さらに独航船が百六十五隻をもって操業したのでありますが、その成績はまことに良好であったのであります。ところがそれが昭和三十年度に至りましてから相当の数が出願をされたことと思います。私の調査ではカムチヤッカの東海岸におきましては十社、十四母船、カムチャッカの西海岸におきましては五社工船の許可の申請がありまして、独航船も五百隻以上の要望があったということになっておりますし、さらにカニ工船も七社で八母船を申請したということになっておりますが、これは事実かどうかということがまず一点。それからこの申請に対しまして、水産庁では十二月の三十日に発表いたしましたのは、カムチャッカの東海岸に八社で十一母船、独航船は二百八十四隻、カムチャッカの西海岸におきましては、大体二社で二母船、独航船を五十隻許可するという発表があったように新聞やその他で私は伺ったのでありますが、これらも事実かどうか。それからさらに昨年度から倍以上の船を出すいうことに相なりましたのは、資源の関係や何かを調査の上でやったのだろうと思いますが、その理由はどうかということをまずもってお伺いいたしたいと思うのであります。
  61. 河野一郎

    河野国務大臣 今お示しになりました出願の数等につきましては、今私ちょっと失念いたしておりますから、あとで調べてお答えいたしますが、多分川村さんのお話通りではなかろうかと思います。これは調査をしてお答えをいたします。それから許可したものにつきましても、今お示しの通りと私は考えます。これも今手元に資料を持っておりませんから、あとから申し上げます。間違っておりましたならば訂正することとして、大体それで御了承願います。  この機会に私から申し上げておきたいと思いますが、今お話通りに、前年度に比べて、今年度と申しますか、昨年末に許したのは、独航船は二百何そうで、倍以上になっております。それはどういうことか、また調査の結果そうしたのかというお等ねのように拝承いたしますが、これは前年度の実績に徴しまして、事務当局で十分検討いたしました結果、そのくらいの独航船をやっても差しつかえなかろうということでございましたので、私も、資源の関係もございますけれども、とれる魚を妥当な程度に許すことがよかろうということで、現在水産資源の少い、食糧も少い際でありますから、なるべくとって来て、そうして価絡の引き下げになればけっこうだというようなことで、それをそのまま了承したのであります。
  62. 綱島正興

    綱島委員長 ちょっと御注意しますが、そろそろ時間ですから、そのおつもりでどうぞ。
  63. 川村善八郎

    川村(善)委員 今大臣は、本年度いわゆる三十年度は二十九年度より倍近く許可する方針になったのは、事務当局が十分調査の上で、三十年度はこの程度にすることがしかるべきであるということで許可する方針立てたというお答えでございますが、私も自由党内閣のときには、ほとんど毎日のように水席庁へ行って、水産長官にいろいろ話をし、また懇請もしたのであります。現にここに清井前長官がおりますが、大臣の言われることとはまったく相違しております。今そのことは時間の関係上指摘いたしません。いずれ機会を見て私は十分この問題を指摘しますけれども、おそらく長官が腹の中で笑っていることははっきりしておる問題であります。そこでこの問題についてなおお伺いしますが、聞くところによりますと、その当時申請書が出ておらなかった、母給も確定しておらなかった、こういうものに対しても許可する方針をとったということを聞いておりますが、これは私の調べた範囲ではその通りであります。それはもちろん大臣といたしましては、水産庁の事務当局がその程度でよいと言ったようなことであるから、その許可の方針をとったとおっしゃられるのでございましょうけれども、実際は申請してない会社にまでも許可の方針をとったということは明らかでございます。この点も時間がありませんから次会にこれを追及いたしますけれども、とにかく大臣の言われる、水産庁の事務案がそうであったからということで許可の方針をとったということについては、私は疑義をはさむものでありますし、資料等も持っておりますけれども、とにかくこの問題はあとでまたいずれお答えのある時機がありますのでこの程度にしておきます。  私二、三法律的な解釈から申しますが、第一に、許可方針をとった会社の中で、母船式漁業取締規則の第四条の第一項の第一号の該当者がないかどうか、これは私の調べた範囲ではあります。すなわち「申請者が漁業に関する法令を順守する精神を著しく欠く者である場合」これは許可しない、こうなっております。それから同じく第五号に「その申請に係る漁業と同種の漁業の許可の不当な集中至るおそれがある場合」この二つの場合であります。これは会社の名を申し上げることはいたしません。すなわち大臣の腹には十分あるはずです。そこでこの問も委員長が時間がないから早く切り上げろということでありますから、これらも会社の名は申し上げませんけれども、そういう該当会社があるのじゃなかろうかと私は想像いたします。ないとすれば突っ込んでお話申し上げますけれども、とにかくこの二点はどうか。それからさらに許可しない場合、申請者を許可しない場合の中に、第四条二項にこうなっております。ただ大臣の権限あるいは長官の権限だけでこれを退けることができないような規定になっております。すなわち第二項には、「農林大臣は、前項の規定により不評可の処分をしようとするときは、あらかじめ、当該申請者にその理由を文書をもって通知し、当該申請者又はその代理人が公開の聴聞において弁明し、且つ、有利な証拠を提出する機会を与えなければならない。」こうなっております。これは昨年も私が突っ込んだ問題でありますが、それを水産庁ではやつておらぬ。大臣はこれをやらなければならぬ義務の規定になっております。いわゆる許可しないという方針をとった場合、その申請者またはその代理人にこの機会を与えなければならぬというふうになっておりますが、先ほど申し上げましたように、十四社十八船団も許可申請があったのに、十三船団許可する方針をとったのであるから、その他の許可をしなかった会社に対してそういう機会を与えたかどうか。もし与えないとすれば今後その機会を与えるかどうか。この点をお伺いいたしたいと思います。
  64. 河野一郎

    河野国務大臣 いろいろ詳しく条文を指摘してお尋ねでございますが、私不敏にしてそういうことをあまり深く研究いたしておりませんので、いずれよく事務当局意見を徴しまして、次の機会お答え申し上げることにいたします。  ただ、この機会一言了解を願っておきたいと思いますことは、御承知通り現在わが国の水産行政は、たとえば以西におきましても非常に数が多過ぎまして、何とか整理をしなければいけない。それからまた北の方におきましても、今御指摘のように、非常に多くの希望者があるというようなことでございまするし、またマグロ、カツオにおきましても同様、鯨におきましても同様、そのようなことでございますので、これに一つ方針方向をきめて指導して参ることが私は適当であろう。また畜産におきましては明治、森永がありますように、水産におきましては御承知通り大会社が三社と申しますか四社、五社と言うてよろしいかわかりませんが、いずれにしても大会社が数社あるわけでございます。これらの間にいろいろ摩擦もありまするし、紛淆する場合もありますので、これを何とか円満に指導して行くことが適当ではなかろうかというようなことを私は考えまして、そこで私の考え方は古いかもしれませんけれども、これをひとしく平等に扱って行くか、しからざれば戦時中に扱いましたように、水産統合をいたしました線に基いていぐ方がよかろうか、このいずれをとるべきかということに私は苦慮したものであります。そこでこれを戦時中にとりました方向に持って行きますと、はっきりその線にばかり行きますと、現実を無視した状態にもなりますし、さらにまた今申しますように、出願したものをそれぞれ—たとえば鯨で申しますれば、今御承知通り二社が行っております。これに対して他の社から出願した場合にどうするかという問題が起るのでございましょうし、たとえば以西の問題につきましても、今のままで置くわけにはいかない、これをある程度整理していかなければいけないという問題も起るでございましょうし、かたがた勘案いたしまして、私といたしましては戦前にとりました方向をある程度取り入れてそうして戦後において起ってきた現象をなるべく是正していくようにしていったらどうだろうかというようなことを考えたのでございます。従いまして北の方において、たとえばサケ、マスの場合にはどうか二の場合にはどう、そのかわりそういう会社が戦後において以西に進出した分については、ある程度、以西の方を整理していったらどうだろうということを基本的に考えていたしたわけでありましてこの私の考えが間違っておりましたらば、しかるべく是正して参ることに決してやぶさかではございませんが、何か一つ方向を持ちませんと、どうもうまくいかないように考えますし、かたがたその製品につきましては、いずれも海外に輸出しなければならないものでございますから、これら国内生産につきましては、なるべく円満協調のできるような方向に行くことがいいのではなかろうかという考えのもとにいたしたのでございますから、これにつきましては、有力なる川村委員の御発言でございますし、また今後におきましても十分御意見を尊重して参りたい、こう考えておるわけでございます。
  65. 川村善八郎

    川村(善)委員 農林大臣お答えは、そういう法令があるかどうかということもわからないが、とにかく水産行政について円満な方法をとるために戦前の問題を勘案し、さらに現在もよく調査した上でそういう措置をとったということでございます。けれども、少くも不備な点がはっきりありますので、その点はやはり考えなければならないのではないかと私は考えておりますから、いずれ機会を得て、これを論じたいと思います。  さらに四十七度線の問題は、これはたびたび申しておるのでありますが、これらについても漁場拡張の問題でずいぶん不平がございます。それから、母船の許可、方針をとった中に、某会社と某会社と共同でやつた。昨年は実績社であるけれども、その実績社が三船団しか許可を受けることができなかったということで、ずいぶん不平が起きております。そうしたような点も十分農相はお考えになっていただきたい。あなたのお言葉通り、水産行政の円満を期す、そうして大増産をして皆さん方に満足していただくということは、当然とるべき手段だと私は考えておりますが、四十七度線の問題と母船の許可について、悪い点があったならば是正をする、あるいは行政の考え直しをして漁業者に親切にしてやるというおつもりがあるかどうか、この点を最後に承わりたいと思います。
  66. 河野一郎

    河野国務大臣 御指摘の四十度線の問題につきましては、川村さん等の御意見もおありのことはたびたび伺っておりますので、この点につきましては十分に調査をいたしまして近日のうちに何とか御希望に沿うように、他の摩擦等も十分調整いたしまして善処いたしたいと考えておるわけでございます。ただいまお話のように、水産につきましては、各会社の間に無用な、不当な競争とか意見の相違とか不平とかいうことがありますことは、結局所期の目的を達成するゆえんではないのでございますから、これらにつきましては民間の有力な方々の御意見を十分尊重いたしましてかたがた各会社の間の不平などがありましたならば、十分これを承わりまして、私といたしましても就任日も浅いのでございますけれども、十分各方面の御意見を承わりまして、そういう不平のあります点につきましては、調整に努力をしておるつもりでございますけれども、今後も一段と努力いたしましてそういうことのないように普処して参りたいと思いますから、今後も十分御意見をお聞かせ願えれば大へん仕合せと思います。どうぞ御了承願います。
  67. 綱島正興

    綱島委員長 川村さん、実はわが党の持ち時間が約束より十分ばかり過ぎておるので、鈴木さんもちょっとお聞きしたいとおっしゃっておるから、あなたの質問はこの次にして下さい。鈴木委員
  68. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 党の持ち時間もございませんので、一、二点だけお伺いしたいのです。それは油の問題でございます。大臣も御承知のように、関税定率法で重油あるいは原油等が現在関税がかからないという臨時の措置を講じておるわけでありますが、これが三月三十一日をもって御承知のように切れるのでありますが、これに対しまして、漁業経済が非常に逼迫しております現状にかんがみましてこれを引き続き一カ年間延期をされる御措置をとられる御方針であるかどうか伺いたい。
  69. 安田善一郎

    ○安田説明員 漁業用石油に関しまする従来の免税関係の法律につきましては、これを従来通りとして、できるだけ早く期限を延長いたしまするように大蔵省その他関係庁と協議中でございます。
  70. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 河野農林大臣肥料の値下げの問題と同じように、漁業経費の三割以上を占めております漁業用燃油の値下げの問題につきまして非常な関心を持っておられて、過般の選挙に当りましても、トン当り七百円程度の値下げを行うとか言っておられます。また通産大臣も、この点につきましてしばしば二、三千円の引き下げを各地で言っておられるようでありますが、この漁業用燃油の価格引き下げにつきまして、何らか具体的な構想を練っておられますかどうか、それをお漏らし願いたい。
  71. 河野一郎

    河野国務大臣 これは先般発表いたしました通り、平均トン当り七百円の値下げを元売りにおいていたさしたわけございますが、決して私はこの七百円だけでよろしいと考えておりませんので、これは十分調査をいたしまして、さらに適当な処置をとりたい、こう考えておるわけでございます。これにつきましては十分善処いたしたいと思うのであります。これはすでに七百円の値下げを決定しておるわけで、ございましてその点は御了承願いたいと思います。
  72. 鈴木善幸

    鈴木(善)委員 私どもは油の価格の問題につきましては、トン当り一万二、三千円程度が妥当な価格である、こう考えておるのでありまして、先般の七百円の価下げの問題は、全国の平均価格を一応トン当り一万五千五百円程度に押えられて、それから七百円引き下げる、こういうような御方針であったようであります。この平均価格一万五千五百円という価格につきましては、相当各方面から疑義を持たれておるのでありまして、漁業者は実質的な値下げとは考えていないのが現状であります。従いましてこれにつきましては、今大臣もおっしゃったように、抜本的な石油の価格政策を打ち立てる必要がある、こう考えるのでありまして、いずれ時間をちょうだいしまして、十分この点につきましても政府の御方針をただしたい、こう考えております。
  73. 河野一郎

    河野国務大臣 今のお話通り、これをA重油で考えるかB重油で考えるかということで違いがありますが、さしあたりA重油について考えてその措置をとる、こういうことでございますが、なお私としましてもこれで十分と考えておるわけでけないのでございまして引き続きこれらにつきましては、十分検討した上で処置をいたしたいと考えておるのでございますから、今後とも引続き御意見をお述べいただければけっこうだと考えております。
  74. 綱島正興

    綱島委員長 淡谷委員
  75. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 さっき農林大臣足立委員に対する御答弁の中に、これからの農政について、主食増産に偏重しないでもっと多角経営重点を置く、あと農家経済安定のために肥料、飼料、農薬、農機具等の価格引き下げ考えておるというようなお話がございましたが、この際に基本的な問題を一つお伺いしたいと思います。  日本農業が一体自由企業として見られる立場にあるものか、それともなお政府の保護助長を必要とする企業であるか、そういう点について一つ根本的な農林大臣のお考えを伺いたいと思うのであります。
  76. 河野一郎

    河野国務大臣 今お話の両方だと私は思うのであります。これは自由企業でもございましょうし、保護助長も必要な企業だと考えております。
  77. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 どうもそういう御答弁では納得がいかないのです。やはり保護助長をすべき性格が残っておるとすれば保護助長は必要だと思うのでありますが、両方だという意味は、将来その保護助長をやめて自由企業として存続し得るように育成するお考えなのでございますか。自由企業であるのに保護助長を加えるのは、矛盾した二つのものが同居する形になりますので、私はそれは御答弁としては取りがたい。
  78. 河野一郎

    河野国務大臣 農業と申しましてもいろいろございますから、これを一つにまとめて、これは自由だとかこれは保護が必要だとか、それからまたそのときの情勢によりまして、これを保護しなければならぬ状態も起って参りましょうし、しなくてもいい場合も起って参りましょう。また国土の関係から申しましても、北海道から九州まで、寒いところから相当暖かいところまでございまして、いろいろ違いもございますから、一言でこれを右か左かとお尋ねがありましても、右でもあるし左でもあるとお答えしなければならぬ、こう申し上げたわけでございます。
  79. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 私は別段空理空論をもてあそぶつもりはございませんが、今度の暫定予算を拝見いたしますると、冒頭において従来の予算を踏襲することが書かれております。この従来の予算を踏襲する場合に最も大事なことは、災害予算につきまして当委員会でいろいろ御審議がありました場合に、農林省農業に対する意見と大蔵省の農業に対する意見とがはっきり食い違っておったことであります。従ってこの災害予算は、特に補助金などの取り扱いにつきましては、補助をすべしという農林省意見と、補助はすべきではないという大蔵省の意見とが食い違ったままに、うやむやの問に組まれたという実態があるのであります。それをもしそのまま持ち越されるならば、これは新しい暫定予算が、なお結着を見ていない大蔵省と農林省日本の現在の農業に対する考え方がはっきり食い違ったままに細まれておるように解釈されまするが、その点はいかようにお考えでありましょうか、お伺いしたいと思います。
  80. 河野一郎

    河野国務大臣 現在のままでは補助していかなければならぬと私は考えております。
  81. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 それでは一つお伺いいたしたいのでございまするが、この暫定予算を見ました場合に、先ほど足立委員が触れられておりました公共事業、それからさらに国営のさまざまな事業についての暫定予算は細まれておりますけれども、一体団体の事業に対して補助金をはっきり打ち切られたという真意はどこにございましょうか。特にこの予算案の四ベージにあります補助費の問題の説明には、非常に苦しいような形がはっきり出ております。すなわち、補助費は、前に申し上げました災害復旧事業補助金、鉱害復旧事業補助金を除き、原則として暫定予算には計上せず義務的なものであって、特に四、五月中に現実に国からの資金交付を必要とするものに限り計上することといたし、と書いてありますけれども、これはやはり原則としては、団体に対する補助も計上はしないのだが、その性質によっては計上するという意味でございましょうかどうか。この点をお伺いしたい。
  82. 安田善一郎

    ○安田説明員 一応暫定予算編成方針は、閣議の決定に従いまして農林関係も組むこととなったのであります。すなわち人件費、事務費その他のものにつきましては標準予算ないしは前年度の実行予算を基準として二カ月分を組む、しかし季節性があるものにつきましては直轄事業を除いても組む必要があるのではないかという議論がございまして、早急に本予算を組む方針のもとに地方交付税交付金の方を三カ月分計上することにしまして、補助事業で最小限度のこともある程度はできる、しかし各省の一般会計としては組まないという建前で組んであるのであります。補助金にはなお政策が入る場合もあり得るがということも事務的にはございましたが、結果においては必ずしもそういう意味ではございませんで、本予算を早急に組むということでございます。
  83. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 農林大臣にお伺いしたいのであります。今の係の方の御答弁の中にも閣議決定に基いてという言葉が入っておりますから、大臣はよもや大事な閣議に欠席されたのではないと思いますので、御承知だろうと思います。そういたしますと、やはり原則として組まないというところに非常な無理があると思います。特に日本農業が、はっきりおっしやる通り、まだ補助段階にあるのであるとすれば、この災害のあとを受けた農村に対する補助予算の計上は非常に大事な問題でございますが、それを、苦しいから地方交付税の交付金を何とかかんとかするという形で基本的な補助金計上の線をお取り上げになったのは、農林大臣として一体どのようなお考えでありましたか、お伺いしたい。
  84. 河野一郎

    河野国務大臣 その点ならば私お答えいたしますが、補助費をやめるということは考えておらないのであります。補助費の中にもこういう考えがあるのであります。何年も補助されて、ものにならぬものはやめたらどうか、何年やったらそれはものになるだろうか、そういう点については見解の違う場合があるのであります。一ぺん組んだら補助金はどこまでもいかなければならないということは間違いであるというような意見もありまして、補助費を組むということになりますと、いろいろその間に本予算の際にそういう点を明確にして組もうじゃないかというようなことがありまして、それを一々—ご承知通り、組閣早々でありまして暫定予算提出するのにもそう時日がございませんし、一々仕分けすることができませんから、そうして今申し上げたようなことでおこう。こういうふうにいたしたのでありますから、御了承いただきたいと思います。
  85. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 どうも私にはますますわからなくなってくるのであります。さっきから数回にわたって大臣は、前の予算を踏襲して十二分の二を計上したと再三言われておりますが、すでに継続事業となっておりますものを暫定予算のときには削るということは理由にならぬのではないか。特にさっきの御答弁では、一カ年くらい休んでもまたあと継続すればできるのじゃないかというお答えがありましたが、これはとんでもない話でありまして、ことに水田の多い日本農業においては、一カ年休むということは前年度の事業を全然だめにしてしまうという場合もございます。従ってこれは継続事業に対する補助金だけでもそのまま踏襲して出されるような御意思があるかどうか、あるいはがんばられるつもりであるかどうか。
  86. 河野一郎

    河野国務大臣 私の言葉が足らなかったための誤解だと思いますが、たとえば土地改良事業で、現在工事中のものを休んでしまってそうして来年一ぺんにまとめてやればよいじゃないかということはそれは考えておりません。そうでなく、新規の事業において、たとえば今年度完成するものがあります。それを消極的に考えますと、前年度通り予算を組むといたしますれば、当然それによって新規の事業が新しく相当の個所が始まるわけであります。その新規の事業が始まります場合に、着手年度を一年おくらしてもいい場合があるじあないかと思うということを私は先ほど申し上げたのでありまして、決してそれを一年休んでおいて、来年になってまた始めればいいじゃないかということを申し上げたのではないので、そういうように御了承いただきたいと思います。  それから今の点でございますが、補助金をどれもこれを全部やめてしまうということは考えておりません。従って補助金の中で整理できるものとできないものとあるだろう、それから新たに補助を始めた方がいいものもあるだろう、そういうこともございますから、そういう点を勘案してやらなければなりません。そこでそれらの点につきましては、本予算の場合にはっきりした点をきめてやる。でありますから大体地方交付金を三カ月分早めて渡しておくということにしようじゃないか、こういうことにいたした、こう御了承願いたいと思います。
  87. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そういたしますると、この団体の行います事業に対する補助金でも、原則としては暫定予算には計上しないが、四、五月中に現実に国からの資金交付を必要とするものに限っては計上することになるのでありますか。その点がどうもあいまいだと思います。これは必要ではあるが、正直のところ大蔵省の横やりでおやめになったのじゃないですか。その点をはっきりお伺いしたい。しばしば農林省と大蔵省との間には予算措置をめぐって対立のあることは知っております。この点は一つ率直に御答弁を願いたい。
  88. 河野一郎

    河野国務大臣 御指摘の通りに大蔵省で予算編成いたしておりますから、大蔵省の折衝の過程におきましてまだ取りまとめのつかないものを計上することの困難なことは御了承の通りであります。従いましてわれわれの方といたしましては、十分主張は主張として通さなければなりません点がございますが、それを早く打ち切って早くまとめるという場合には、たとえば一例をあげますれば、保温苗しろの場合などは一番そのいい例だと思います。そういう点がございますのでこれをあとまわしにした、そういう場合がございますから、そういうふうに御了承願いたいと思います。
  89. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 保温苗しろの話が出ましたのでなおさらはっきりいたしますが、特に保温苗しろの補助金につきましては、非常に大蔵省との間に意見の食い違いがあったと思います。これは時期の問題で、本予算で組むと申しましてももう時期がない、もう出なければどうにもならない予算なんであります。そのための暫定予算でありますので、現実に必要なものをなおがんばって農林大臣は出されるような御決意はございませんか。
  90. 河野一郎

    河野国務大臣 これはあまり詳細は私も了承しない場合がありますけれども、保温苗しろの場合には現実に政府補助金を交付いたしますのは、六、七月の候に交付すればよろしいことになっておるそうでございます。そういうことでございますので、実際実施は確かにお話のようにすぐに今この四、五月の暫定予算中にやらなければならぬことでございますけれども政府として補助金を交付いたしますのは七月ごろ例年交付することになっておるそうでございますので、そこでわれわれの主張を十分大蔵省に了承せしめまして決定した方が妥当だろうというふうな祐置からあとまわしにした、こういうことでございます。しかもその決定は決して七月までならないということで、早く、われわれといたしましては五月には予算を通していただくように考えておりますので、一日も早く本予算提出いたしまして、本予算のワクの中でこれを交付できるようにしていただければ大へんけっこうだというような意味でございますから、御了承いただきたいと思います。
  91. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 少し納得がいかないのですが、特に災害地関係補助金など六、七月に出されたのではとうていこの事業の実施はできません。私は、河野大臣ならもっと率直にお答えいただけると思って質問しておるのでありますが、結局は大蔵省との間に考えがまとまらないということじゃないのですか。あしたは大蔵大臣にも御出席願うつもりでございますから、きょうは一つ農林大臣としてはっきり御所見を伺いたいのですが、単に補助金だけの問題ではなく、二十九年度分の農業の所得の査定につきましても、若干は大蔵省と農林省との間には食い違いがある。われわれは昭和二十九年度の農業所得の査定につきましては、奨励金の千円が基本米価に織り込まれておることと、反当収量が過大に見積られておることと、必要経費が過小に見積られておること、この三点から実際の所得に対する課税がずっと農村においてふえておるように調べて参っておるのでございますが、その一点は実際にどうなっておりますか。農林大臣からお伺いいたします。
  92. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいま御指摘のようなことがあるだろうと思いますので、ただいま各地に督励いたしまして、十分実情を調査中でございますから、いずれ申し上げます。
  93. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 農林大臣は根本的にお考えを改めていただきたいと思いますのは、農業というものは時期を大半にするものであります。特に課税などはもう時期がないのです。今十分に取り調べておりますということでは間に合わない、農業というものは、大臣もいろいろ御経験もあるようでございますが、時期を失ったら一カ年はだめになってしまう。そういう点で一体具体的に課税がどれくらいふえておるか、おわかりになっておりませんか。おわかりになってなければそれでよろしい。
  94. 河野一郎

    河野国務大臣 今お話の点が、先般来議会で問題になっております新潟その他東北地方におきます不当課税の問題だろうと思いましてお答えをしたのでございまして、この点につきましては、大蔵省の各地の税務当局の態度につきまして今調べておる、こう申し上げたのでございます。
  95. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは決して新潟だけの問題じやなくて全国におけるケースです。たまたま米作地の最も多い新潟がその第一の声を上げただけにすぎない、やはりこれは全国的な規模における不当課税の問題として早急にお取調べを願いたいということを申し添えておきます。  なおあまり時間も与えられておりません。もう一、二点お伺いしたいのでありますが、農林大臣農家経済の安定、多角経営すなわち日本農業の将来に対して非常に深遠な構想を持っておられるように考えておりますけれども、この農家経済の安定、多角経営、これに対する基本的な方針は、農産物の価格安定というところに重点を置かれておるらしい。しかもその価格安定は生産費の合理的な引き下げというところに具体案を持たれておるように伺いましたが、そうすると農産物をもっと引ぎ下げようというところにあるのじゃないかと思う。この点を一つ確かめておきたいのでございます。
  96. 河野一郎

    河野国務大臣 それはそうじゃございません。農業経営を多角化しまして農家の収入を増す。それを増すためには価格を引き上げて増すということではいけませんから、価格は現状において、相なるべく安定するように考慮いたしたい。それに先だって一歩前進して生産費引き下げをはかつていきたい、そして価格の安定を得ましたならば……(「現在が低いのですよ」と呼ぶ者あり)今私が申しましたのは、農家経済の安定、確立を主にいたしますから、生産費引き下げて、そして農産物の価格引き下げてしまつたのでは何にもなりませんから、そういうことではないのでございまして、農家経済を安定するということに重点を置きましてそれに協力するために価格の引き上げの方向でなしに、生産費引き下げ方向をもって農家経済安定の目的を達成したい、こう申しあげておるのであります。
  97. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そうすると農産物の価格は維持していきまして、生産資材価格引き下げによって農家経済を安定させるというような建前のようであります。これは基本的な声でありまして、この暫定予算概要の六ページを見ましても、この(ロ)のところに、「輸入食糧は三十年度需給計画の推算によりまして米麦を合せて百十一万三千屯」という数字が出ております。この輸入する食糧というものは、特にこの米麦価格が内地の米麦価格に比べましてどのような比例になっておるかをお伺いしたい。
  98. 清井正

    ○清井説明員 ただいま御賛同がありました暫定予算の中の数字でございますが、これは申すまでもなく四月、五月に内地に到着をいたし、あるいは四月、五月の間に買付をする予定の米と麦の総量でありまして全体の計画とは一応切り離された形になっておりますから、それを御了承願いたいと思います。なお価格の問題でございますが、申すまでもなく二十九年の当初予算におきましては、御承知通り外国から入りました食糧と内地の食糧との価格差につきましては、外国から入って参ります食糧価格の方が比較的高いという見通しのもとに、九十億円の繰り入れを価格差補給金として予定をいたしておったのでございますけれども、その後の外国食糧の値下りの状況によりまして、むしろそれを繰り入れをせずに、主として小麦の価格の値下りが非常に大きいのでございますが、逆に内地の食糧と同値に見ることによりまして、かえつてある程度の利益が食糧管理特別会計においては出る、こういう形になって参ってきておるのでございます。その総金額はまだ判明いたしておりませんが、相当金額の利益が逆に特別会計に出るということになっておるのでございます。その後最近の買付状況の個々の数字を当つてみましても、小麦につきましては最近若干上りぎみでありますが、米、大麦とも相当価格の下落傾向を見ております。そこで内地の食糧と比べまして、そういった意味におきまして安くなっておる状況であります。
  99. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 清井長官の御答弁農林大臣もお聞きになっただろうと思います。私はこれは長官に対する質問はあとにいたしますが、あなたなんかもう安い食糧が入るとわかつておつて、これで食糧会計の予算の赤字を見ようという気持ではなかったかと私は思われる。外国の食糧日本食糧よりも生産の方法において、安くつくことははっきりしているのです。酪農についてもいろいろお考えを述べられましたけれども、酪農の生産費価格につきましても、日本の酪農生産物が輸出ができないというほど外国産が安い。日本生産物は現実において高い。とくにふすまその他も飼料用として何とかするということを聞いておりまするが、こういう処置がはっきりできておりませんので乳価問題が起つて参ります。これは遠い将来の見通しは第二といたしまして、米価議会などにおきます話もりあますけれども、さしあたり乳価をこのままにしておいて農家経済安定ができるとお考えでございましょうか。現実に乳価の引き上げを何とか処置をするというお考えがありますかどうか、お伺いしたい。
  100. 河野一郎

    河野国務大臣 今の乳価のことでございますが、先ほど足立さんにもお答えいたしました通りに、乳価がこんなに下つてはいけない、これは何とか上げることを考えなければいけないということで、—これは御案内の通り四十円を割りまして、三十七、八円というところまで下つてきたのでは仕方がない。どうしてもまず目見当としては四十円以上に乳価の安定をしなければ、とうてい酪農振興ということは期待できないと考えまして、これにつきましてはこの議会で必要な法的処置をとりたい、こう考えております。
  101. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 そういたしますと、乳価については、生産資材の値下げ以外に引き上げる方針であるということを確認してかまいませんか。念のためにお伺いしておきます。
  102. 河野一郎

    河野国務大臣 引き上げ、引き下げ、どうなるか知りませんが、安定をする目標を今申し上げたのでありまして、現在は異常な下落でございますから、これは上げていかなければならない。適当な妥当な価格に安定させる必要があるだろう、こう考えております。生産費引き下げについては今後一段の努力を払つて参りたい、こう考えております。
  103. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 なお詳しいことはまた別にお伺いいたしますが、基本的な考えとして日本農家生活が安定し、また日本農業が安定するためには、肥料、飼料、農薬、農機具等の価格引き下げだけではできぬと私は考えております。根本になりますのはやはり農業の経営一般の改革であつて、現在のような零細な経営の形では、とうてい外岡の食糧あるいは外国の生産物に対する対抗はできない、その場合に大きく取り上げられまするのが土地の問題でございます。終戦以来とられましたあの土地政策によって非常に零細化いたしました土地、これを何とか新しい構想のもとに経営の面を打開させるような考えはございますかどうか。これは日本農業安定の上で、特に酪農などが入りますと、平均七反九畝なんという狭い土地ではどうにもならぬと思うのでありますが、こういう土地問題に対する農林大臣のお考えをお聞きいたしたい。
  104. 河野一郎

    河野国務大臣 これは御指摘の通り、根本的にそういう方向考えなければならないと思いますけれども、ただ単に農林行政だけでできることではないと私は考えます。たとえば人口問題についても考えなければならぬでございましょうし、国策として農業人口をどのくらいに押えるかということも考えなければならぬでございましょう。そういう諸般の条件を十分国策として御決定を願う際に、われわれとしては基本的なことは考えていかなければならぬと思います。ただわれわれ農業研究者として考えます場合には、今御指摘のような方向にむろん考えていかなければなりません。私どもはそういう検討は行なっておりますけれども、これは単にここだけできめられない、こういうふうに考えております。
  105. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 いかにも御答弁通りだとは思いまするが、やはり日本農業政策を、国策としてはっきり打ち出すためには、農林大臣がしつかりしなければどうにもならぬと思う。あなたがそのような弱気であつては、閣議において農林大臣に負けてはしようがないですから、強気を出してもらいたいと思うのです。私は日本農業改革の基本的な線として、土地問題と農村金融問題を取り上げたいのですが、承わりますと、農地を担保にして金融等のことも考えておるように見えまするが、この点はどの程度考えが進んでおられるかお伺いしたい。
  106. 河野一郎

    河野国務大臣 これも大ざっぱに考えておりますことは、なるべくこの国会で御審議をいただきたいと考え準備いたしておりますことは、先ほど申し上げましたように、農業経営の多角化、合理化のために必要な資金を農家が得るのに、むろんほかの方法でも出すことにいたしておりますけれども、それにつけ加えて土地担保の金融措置を考えてみたらどうだろうかというふうに考えております。
  107. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 先ほどお答えの中にも、土地問題に関連して人口問題がございましたが、根本的に申しますと、非常に土地が狭い。ところが最近自衛隊の演習地として、完成している耕地までも引き上げようという意思が所々方々に現われておりますが、一体農林省は防衛庁からどれだけの土地を求められておりまするか、その点を伺いたいのでございます。
  108. 河野一郎

    河野国務大臣 お答えいたします。今資料がちょっと手元にございませんし、また私それについては深く聞き及んでいませんから、調査いたしましてからお答えいたします。
  109. 淡谷悠藏

    ○淡谷委員 これは前の自由党内閣のときから継続したケースでございますが、防衛庁が農林省の手を経ないで、直接耕地に出向きまして、買収官と称する者に土地ブローカーのまねをさせまして、勝手に地元で土地売買のケースをきめて、それからあらためて農林省に事後承諾の形で承認を求めてくるケースが非常に多い、これは即刻今まで自衛隊が使つております演習地の面積、さらにこれを買収しようとしております計画を、農林省の手元ではっきりまとめ上げられまして特に日本農業を改革しようというような大きな抱負を持っておられるようでございますから、その障害にならぬように、これは即刻おやり願いたい。繰り返して申し上げますけれども、災害を受けました農村はもちろんのこと、農業というものは、一ヵ月、月を誤まりますともう救うべからざる事態に陥るということを十分念頭に置かれまして、時間も制限されておりますので、これで切り上げますけれども、十分なる答弁一つ新しい機会にまた願いたいと思います。
  110. 河野一郎

    河野国務大臣 今の、防衛庁等が土地を買収するとか、農林省の手を経ずにやるとかいうようなことは、絶対にいたさせぬようにいたします。これは必要な処置も場合によればとるようにいたしますし、もしそういうことがありましたらば、遅滞なく御指摘をいただきましたらば、私としても必要な処置をとりますから、どうかそういうことで御了承をいただきたいと思います。その他御指摘のありましたことにつきましては、十分承りまして善処いたしたいと思います。
  111. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいまの淡谷委員質問に関連する範囲内において若干質疑を行いたいと思います。第一点は、三十年度の暫定予算の性格でありますが、これは要綱を見ましても、一応前年度の方針を踏襲して、しかも政策を加味しないで、単なる骨格的な事務予算であるということは大臣も証明されたわけでありますが、ただその問題の中で公共事業あるいは食糧増産費に関しては、国営の直轄事業だけが経営の経費として予算に出ている。それから道営、県営あるいは団体営であるとか、特に小規模の土地改良等の事業に対しては、この分の継続費というものは全然計上されていない、ここに問題があるのです。特に、その直轄事業費以外の継続事業費に対して暫定予算の面に計上しないということは、これはむしろ政策的なものがここに含まされているのではないかということが問題点だと思うのです。単純なる事務的の試算の上に立った経費の計上ではなくて、特に直轄事業費以外は暫定予算に計上しないというところに民主党のいわゆる政策的なものがあるのではないかということが、これは非常に問題点になると思うのです。むしろこれは、地方において、この点に対しては不安が必要以上に増大されておる。先ほど農林大臣は、この継続事業費は団体営あるいは県営事業等に対しては、この費目に計上はしておらぬけれども、そのかわりに交付税交付金のような形でこの分だけは三カ月分を計上してあるのでということを関連して言われましたが、これはこの継続事業費に盛られておらない分に対しては、含みとしてこの交付金等を三カ月出してあるのだからして、地方においてはこれを適当に勘案して処理してもいいというような、そういう含みがあるかどうか、この点に関してはもう少し明快になされた方がいいのではないかと思うわけであります。
  112. 河野一郎

    河野国務大臣 これは先ほどからお話し申し上げた通りでございまして決してその間に政策的なことがあるとかいうようなことはないのでございます。これはもう近日のうちに本予算の中に明確に現われることでありますから、どうかそういうことで御了承をいただきたいと思います。決してそういうふうな政策的にこれから落したというようなことはございませんから、御了承いただきたいと思います。
  113. 芳賀貢

    芳賀委員 そういたしますと、これは中断にならぬということを明確にされたわけですね。継続事業を中断されるのではない、そうですか。またはそういう安心を与えるという積極的な御意図があれば、今までどういうような連絡を—地方庁等に対して、これはそういう不安ではないのだ、当然本予算の中において継続費というものは計上されるのであるからして、いささかも不安を持たないでやつてくれというような連絡がすでに行なってあるのですか、その点を今の時期において明らかにしておく必要があるのです。この暫定予算関係も、一説には、六月もまた暫定予算になるのではないかというような、そういう説も流布されておる。そうなると、時間的な空白を多分に持つということは、これは非常に地方に対しても、食糧増産の上からも悪影響がある。ですから継続事業費を特に直轄事業以外は計上しなかった理由というものを明らかにしておく必要がある。その必要は認めておると思うのですが、どうですか。
  114. 河野一郎

    河野国務大臣 御指摘のようなこともあると考えまして、実は前内閣閣議におきましては、四月一カ月だけを暫定予算にして五月分からは新しい明年度予算の十二分の一を組んだものを暫定予算として五月分に出していくようにしたい、こういうふうに国会の方に御連絡申し上げたのであります。そうすると今のようなことが御疑念が少くて済んだと私は思うのでございますが、たまたま各党のお集まりの際に、そうでなしに、四月、五月を暫定予算で、今のままで出せ、こういう御要求がありましたので、政府といたしましても、それならやむを得ないから四月、五月は、今言う通りに全然政策を加味しないで月割りで出そうじゃないかということに落ちついたのでございます。ただし、今御指摘の点は、先ほど私が申し上げました地方の、団体の交付金、補助金等につきましては、これはいろいろ大蔵省の予算編成とこれは何も今年と限つたことではないと思います。毎年あることで、これはどういうふうに処理しよう、こういうふうに処理しようというふうになかなかきめにくい点もありますし、私の方もむやみに大蔵省の意見に応ずるわけに参りません点もございます、そういうわけで、早急にきめかねる点もありますから、そこでそういうものについては交付金を六月まで、ニカ月に一カ月ふやしたものを回しておく、どうせ四月の初めには明年度予算編成されるのであるから、そこで方向もきまつてくるのであるから、そういう処置をとろうじゃないか、これは、私は決して理論的にそれがいいとか悪いとかいうことを申すのではありませんが、何しろ選挙早々に暫定予算を組まなければなりませんし、さらにまた議会はすぐに開かれるというようなことで、これは従来の例から申しますれば、すでに昨年の秋から予算を組んでおってそれをそこに暫定予算として出すという場合といささか異にいたしまして、全く昨年の十二月から選挙管理内閣で、選挙で飛び回っておりました。そして選挙が済んだならば今度は予算を組むというようなことに当面せざるを得ない事情になりましたので、いろいろな点について御疑問やら御疑念があることと思いますが、私といたしましては、農村のために最善を尽して参りたいということからこういう点が生れてきたということ等についても御考慮いただきたい。なお、地方庁関係のそれらにつきましての事務的な扱いにつきましては、説明員から説明させることにいたします。
  115. 芳賀貢

    芳賀委員 ただいま、暫定予算編成方針に対して民主党は四月、五月を可分なものにして出したいと思っておつた、ところが野党に四、五、一括すべきであるという意見があったのでこうなつたということを言われた。これは非常に詭弁だと思いますがどうでしよう。野党の要請によって四月、五月が一括出されたというが、これは特にわが党の場合においては了承できない御発言だと思います。
  116. 河野一郎

    河野国務大臣 私は野党と申し上げたのではないのでございます。各党の国会対策委員長会議か何かでそういうふうにきまって、その要求に応じてそういうふうにかえた。これはその通りで、私は決して詭弁を申し上げたり、わざわざ申し上げるのではないのでございますから、御了承いただきたいと思います。
  117. 芳賀貢

    芳賀委員 経過は非常に事実と異なるということだけを指摘しておきます。  本論に入りますが、そういたしますと、この直轄事業以外の分に対する継続事業費等に対しては、おおむね前年度の予算を踏襲したい意向を大臣は持っておる、これがただ暫定予算の面に計上されておらないので非常な、必要以上の不安がかもされておるので、これに対しては地方庁等と十分連絡をしてその不安を一掃し、本予算出した場合においてはすみやかにこの疑念を一掃するというように確認して差しつかえないですね。
  118. 河野一郎

    河野国務大臣 私としての考えは今お話通りでございます。しかし、予算編成上のことでございますから、その通りに結果が参るか参らぬか、参るならば今ここではっきりお答えできますけれども、それらにつきましては本予算提出機会まで御猶予をちようだいしたいと思います。
  119. 芳賀貢

    芳賀委員 農林大臣が、かかる問題に対して非常に周到慎重なる配慮を持つた答弁をなされた理由がおおよそわかったわけで、これ以上追究はしません。その次に、国民生活の安定と関連を持たせて農民生活の安定をはかる、農産物の価格安定をはかりたいということを言っておりましたが、これはわれわれとしては農産物の価格の中に占めるところの生産費引き下げを大幅にやりたいという考えは非常に是認される点であります。しかしただこれはこれだけをやれば事足りるということではないと大臣考えておられると思います。ただ問題は非常に生産費引き下げということを誇大に宣伝されておるような向きがあります。たとえば肥料の値下げにいたしましても、先ほど安田さんからお話があったけれども、これはたとえば六百万の個々の農家にした場合、硫安が一かます五円下つた場合においても、平均八かますくらいしか使つておらぬ。四十円くらいしか、農民の硫安を使う面から来るところの生産費の低減にはならぬわけです。ですから、このくらいの範囲において生産費引き下げが大幅に行われておるというような事例をあげられるということは、これはいささか軽率ではないかと思うのです。特にこの際、大臣が非常に大きく宣伝された硫安の価格値下げの折衝の経緯、あるいは決定された問題等に対しては五円、最終的には、肥料年度末においては七円ですが、ただこれは先ほども御答弁がありましたが、現在の肥料需給安定査法によるところの措置はもちろん、政府が正当なる生産費の調査を行なって、いわゆる国内消費分だけ、総生産量のバルク・ラインの範囲内における生産費を加重平均方式で算出し、そうして原案としてこれを肥料議会に提示して答申を求めるというような結果になっておる。だから一番基礎をなすものは、農林、通産当局が中心となつた、政府の責任における硫安価格生産費がいかに適正妥当であったかどうかということが、この原案の中において十分盛り込まれておらなければならぬわけです。ですから結果論的に言うと、この答申がなされて一応肥料価格が決定された。それ以後において河野農林大臣のいわゆる政治的な手腕によって、この最高販売価格なるものが、たとえば五円引き下げが行われたという場合には、これはただ政治的な意図によってそういうことがやられたら、たとえば政府原案の中において、あるいは答申案の中においてまだ不当なものがあった、不当利潤があるということが発見され、それを根拠にして、農林大臣はメーカーに折衝されたかどうか。その具体的の根拠—今後も肥料問題等に対しては、相当大幅な引き下げをやりたいということを言明されております。われわれもこれには最大の期待を寄せておるわけです。メーカーと折衝するような場合において、ただ河野農林大臣の政治性だけを根拠にして折衝するか。あるいはまた今日の肥料安定法ができた直後における生産費の調査等に対しては、まだ不備な点が多々あるわけですから、この内容を十分当局が調査を行つた場合においては、生産費の費目の中においてこのような欠陥があったとか不当性があったということが逐次発見さるべきであるというふうに私たちは見ておるわけです。ですからいずれを根拠にして、今までも、また今後においても、価格引下げに対する努力をなさるか、その根拠をお示し願いたいと思うわけです。
  120. 河野一郎

    河野国務大臣 私の政治性というようなことで価格が上つたり下つたりするものではないと私は思います。もちろんこれは昨年価格の答申がなされまして後に生産状況が好転しつつあるということを私は自分の根拠に置きまして、価格引き下げの折衝をいたしたのでございます。また今後にお場きましても、政府におきましては十分増産に対して最大限の協力をいたしまして、従来五カ年計画であったものは三カ年計画に変えさすというようなことについて、大いに生産の増進増強をはかりまして、そうして価格引き下げをしていきたい、御指摘の通り硫安を五円下げても仕方がないじゃないか。決して私は五円で生産費が下る、五円下げたならばこれで米の生産費に十分に寄与したというふうには考えておりませんので、先般も私の所期の目的通りにはなりませんでしたが、来るべき七月の肥料議会等におきましては、さらに私は大幅の引き十げを—今御指摘の通り、その後の価格形成の調査等によりましていろいろわれわれとしても、事務当局もまた考えさせられる点もございますので、調査の厳密を期しまして、妥当な価格出していきたい、いくことによって相当に硫安の価格引き下げに可能であるというかうに考えております。
  121. 芳賀貢

    芳賀委員 大臣は何か考え違いをしておられるわけですが、私どもは決して、たとえば三円であつても五円であつても、この肥料等の生産資材の値下りが行われておるということを、そういう必要はない、少しぐらい下つても何にもならぬというような思想は持っていないわけであります。ただコスト要素に対するいろいろな客観的な情勢が変つてきた場合においては、政府政府の責任において生産費等に対する調査を行なってすみやかに肥料議会等に答申をして、正しい法的な根拠に基いた価格を決定するということが当局の義務であるというふうに考えておるわけであります。ただいまの御答弁の中にも、その後肥料事情というものは非常に好転してきた—好転してきたということは、この肥料生産費、いわゆるコスト要素が非常に変つてきておる。値下げ要素が非常に大きく出ておるということをあなたは言っておるわけです。そういう場合においては、時を移さず具体的科学的にこれを調査して、成案を得た場合においては、何も七月まで待つ必要はない。随時随所にこれを開くことができるわけです。ですからそういう作業を今進めておるかどうかということを科学的具体的に……。それからまた好転したというその内部的な事情というものはどうあるかという事例を二、三あげてもらいたいと思うわけであります。
  122. 河野一郎

    河野国務大臣 御承知通り肥料の取引は相当先物の取引をいたしております。かたがたまた農家の需要度の関係からいたしましても不安定にするわけに参りません。そこで肥料議会等におかれましては、諸般の情勢を慎重に考慮せられまして御決定になることと考えております。政府またこれにこたえて、十分将来の見通し等も立てまして、適正な価格を決定されることと思うのであります。そこでたまたま肥料議会第一回のことでございましたこともあると思います。また元来申せば渇水期でございますから、減産になるべきはずのものが、今年は増産されておることが調査の結果わかったのでございます。そういうことでございますから、私としましては相当の値下げをしてしかるべきものだということを申したのであります。でございまして、今申しますように、今将来は始終やるか—始終むろん調査をいたしておりまして異常な状態が起れば審議会を開いてやつていただくということがむろん妥当なことだと考えますが、相なるべくは業界においても、特に肥料価格が常に不安定の状態に置かれて先物取引が非常に動揺するというようなことも必ずしも妥当ではないと私は考えますので、今申し上げたような御等分を申し上げたのでございます。
  123. 芳賀貢

    芳賀委員 関連質問ですから長きにわたるということは考えなければならぬと思いますが、問題は、この焦点を非常にあなたはぼかしておる。具体的に肥料の値下げを行うという根拠があるならば、それを農林大臣の責任において示すべきであるというのが私の指摘なんです。それをあなたはなさつておらないわけです。それから硫安の値下げ折衝の場合においても、たとえば肥料議会の工藤会長が辞任するというような場面もあったようなことを承知しておるのです。ですからもちろん投出仮死価格の範囲内においてメーカーが自主的に引き下げをするということはけつこうな話でありますが、値下げをする場合においては、やはり値下げができるという基礎的な根拠があつて初めて値下げができるわけなんです。ですからそういうような具体的な択拠があつて、なおその生産事情に対してこれが値下げを行うことに非常に右利な条件がある、そういう場合においては、その具体案を作つて肥料議会に諮問をするというこの仕事は、当然行うのが当局の義務であるということを私は指摘しておるわけであります。そういう用意というものには当然ある程度の時間的なものは必要でありますが、ただ大臣とあるいはメーカーとの話し合いだけによってこの問題を処理する、そういう考え方はやめて、あくまでもやはりガラス張りの中で、こういう点はこれだけコストが下るべきである、—これはすでに今日政府が調査権を持っているのですから、非常にやりやすいのです。ですからそういう点は十分勉強をなされて、明朗なる生産費引き下げに対する大臣の今後の行動をわれわれは期待しておるわけですが、そういうふうなお考えでやられますか。
  124. 河野一郎

    河野国務大臣 御意見通りに、十分尊重いたしまして善処いたします。
  125. 芳賀貢

    芳賀委員 次に農林金融の問題ですが、農地担保等の金融の問題は研究中であるということは今聞いたわけです。それより当面した問題、たとえば農業手形の貸し出しに対する運営の問題、この問題は民主党内閣ができた後において非常に情勢が変つてきておるわけです。これは御承知のことと思いますが、日銀の政策委員会方針をきめまして、今までは農手全体の一応の目途は共済金の八割程度ということでこれを押えておった。ところが今後は、農村における金融の引き締めをやるために、内地府県においては三割、北海道においては五割程度ということで、農手のワクの圧縮をやらしておるわけです。昨年な大体ピーク時には二百八十億くらいになっておつたと思いますが、これは前年度に比べて大よそ百十億くらい、このワクを圧縮するというのが今のお考えであるというふうに考えるわけです。ですから農地を担保にして金を借りたいというように、毎年毎年農業生産に対して金融というものは不可分のものなんです。あなたの言う硫安の五円値下げで再生産に必要な融資がどうなるかということは、むしろコストの上における影響が甚大であります。なぜ農手を圧縮しなければならぬか、圧縮することも可能であるような状況というもの、農村における金融情勢の中においてそういう異変が今すでに出てきておるかどうかということも勉強なさつておると思いますが、これは当面の問題として非常に重大でありますからして、この農手を中心にした今年度の金融措置をいかにするかということに対する御所信を承わつておきたい。
  126. 河野一郎

    河野国務大臣 ただいまのお話は前会においてもお答えを申し上げたと思うのでございますが、決して必要なものを切り詰めたのではないのございまして大体あの程度の数字農村の需要にこたえ得るという過去の実績に徴してやつたのでございまして、もし農手のワクをふやさなければ応じられないという事態が参りますれば、その御希望に沿うように善処いたすつもりであります。さよう御承知を願います。
  127. 芳賀貢

    芳賀委員 これは大臣、論議の余地はないのです。今までもそれで十分であったということにはならぬ。特にこの農手の場合は、中農以下の農民層に対して、十分なる配慮が届いておらないわけなんです。ですから米麦あるいはそれ以外の畑地、農産物等に対しても、農手を通じたところの金融上の十分なる配慮というものは、いかなる政府のもとにおいてもぜひ行わなければならぬというふうに私どもは信じておるわけです。それを今までの自由党内閣以上に圧縮するというような根拠は、これは農林大臣としても意に反するようなことになる、私は老婆心ながら申し上げたいわけです。十分地方の実情を御研究なさって、これは当面した問題として非常に大きい問題ですから、直ちに善処されたいということを私は特に進言しておくような次第であります。
  128. 河野一郎

    河野国務大臣 お答え申し上げます。日銀の政策委員会でやつておることですから、幸い農村の事情に非常に粘通して刈ります荷見君も委員としておることでありますから、御趣旨のほどを十分伝えまして御期待に沿うように私もできるだけ努力をいたします。
  129. 綱島正興

  130. 赤路友藏

    赤路委員 私の方から水産問題について御質問を申し上げたいと思います。  河野農林大臣はかつて日魯漁業社長でもあられ、北洋漁業特に北洋鮭鱒についてはきわめて精通されておるいわゆるヴエテランであるという前提の上に立って御質問申し上げますので、御答弁を願いたいと思うのであります。  先ほど川村委員からいろいろ御質問がございましたが、そういうような問題を含めて、今度農林大臣が御就任になってから、北洋漁場の開発のためにまことにあざやかな行政措置をとられた。この点については一応敬意を表するのであります。少し古い話になりますが、この北洋におきまするところの母船カニ漁業でございますが、この母船カニ漁業が大正九年ごろに始まりまして、昭和五年には大体十九船団ほど出漁をしておったようであります。当時におきまするところのカニカン詰の製造高が大体四十万箱、担当大きな外貨の獲得に寄与したと思うのでありますが、その後これを一つの頂点にいたしまして出漁しておった船が漸滅をしておる。十七年にはもちろん太平洋戦争というような事態も起こつたのでやめましたが、一番最後には、十九船団出ておつたものが七船団程度しか出ない、こういうふうに漸減してきておつたことは御承知だと思うのですが、それはどういうことからそういうふうに漸減しなければならなかったのか、御記憶があったらちょっと前提になりますのでお聞きしたいと思います。
  131. 河野一郎

    河野国務大臣 そういう古い話は私もよく存じませんので、多分資源の保護もしくはその他北洋における日ソ関係等も十分勘案いたしましてそういう処置に出たものと考えます。
  132. 赤路友藏

    赤路委員 期待しておったような御答弁がないのですが、これは古い話でありますのでやむを得ぬと思います。鮭鱒につきましては、御承知通り戦前は公海自由の原則というこの原則の上に立って、およそ無制限といっていいような形で操業してきたわけなんでありますが、当時におきましては、大体十九船団から二十船団出ておる。戦後の状況を見てみますと、御承知通り操業海区というものが戦前と違つて制限を受け、そうして昭和二十七年には三船団、独航船が五十隻、昭和二十八年は同じく三船団で独航船が九十二、調査船が十二で、合計百四、二十九年度は七船団で独航船が百六十、調査船が三十四で百九十四隻、こういうふうに大体漸増をたどつておるわけなんでありますが、今度三十年度に至りましては、農林大臣は一躍十三船団にこれをおふやしになった。独航船が三百三十四、調査船が五十八、合計いたしますと三百九十二隻という非常に大きな増加になるわけなんでありますが、ここに考えなけれげならないことは、この戦前公海自由の原則頃の上に立って操業が無制限にできた当時において、十九船団もしくは二十船団であった。これは当時においてもやや過剰な状態でなかったかと私たちは記憶するのでありますが、今日十三船団を出すということになりますと、船の装備なりあるいは現在の機動性あるいは漁獲能率、そういうものは戦前の船とは雲泥の相違があると思う。従って北洋における鮭鱒の資源の維持という立場から考えた場合、この十三船団出したということが妥当であるかどうか、この点をお聞きしたいのであります。もしも妥当であるとするなれば、その理由を一つお示し願いたい。先ほど川村委員に対する御答弁では、これは事務当局で検討をして、その程度なれば大丈夫であるというから出したのだという御答弁であったと思いますが、私が前提に申しましたように、何と申しましても北洋における漁業のベテランである大臣答弁としては、これはいささか納得がいきかねるので、この点明快に御答弁を願いたい。
  133. 河野一郎

    河野国務大臣 大へんおほめの言葉をちょうだいいたしましたけれども、私は魚をとる方はあまり得手ではないのでございまして、大体どのくらいの船を出したらよろしいか、独航船の数はどのくらいでよかろうかということにつきましては知識もございませんので、それらはいずれも技術的に事務当局意見によっていたしました。独航船の数が多いとか少ないとか—これは非常に御希望が多いことでございますから、その多い御希望の中からむしろ制約してそういう結論に達したというふうに考えております。
  134. 赤路友藏

    赤路委員 そうおつしやられると、この点について何も御質問申し上げる点はなくなるわけでありますが、御承知通り人工孵化放流をやつておりますが、これに毎年相当な経費を入れております。今度の暫定予算の中にも九百四十四万二千円入っておる。この放流の今までの尾数なのですが、大体二億尾を標準にしてやつておるようでありますが、二十九年度漁獲いたしましたものが大体二千万尾、放流いたしましたものが二億といたしまして、今までの通説と申しますか、検討した状態から見ました場合、放流の一割どまり、そうなって参りますと、二千万尾は日本が当然みずからの国費をもって孵化放流をしたものをそのまま回収したということになろうかと思う。そこで十三船団出る本年度の漁獲目標というのが一応問題点になろうと思う。おそらく四千万尾はとるだろう、こうなって参りますと、資源関係から参りまして少し濫獲という線が一応表に押し出されてくる懸念がある。従ってこれらに対しては、当然人工孵化放流について大福に国費の方を引き上げなければならないというような事態になるのじゃないか、こう考えておりますが、この点御答弁願えましようか。
  135. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほども申し上げますように、あまり深い知識もございませんが、沖取りで取ります魚は、必ずしも孵化放流する魚と同じ魚ということでもないのではなかろうか。ことにオホーツク海の方で取る魚は、こちらで放流した魚はほとんど関係ないのじやなかろうか。従いまして、専門的なことは技術者からお聞きいただきませんと、私にはお答えが無理でございますけれども、大体戦前は日魯漁業のカムチヤツカの陸上を基地にしたもの、もしくは北千島を基地にしたもので相当の漁獲を上げておつた。これが今日ではその処置ができませんので、多少沖取りの方に、流し網の方に力を入れて取つてもいいのじゃないかというようなこと等を勘案して、事務当局、技術者の意見がそういうことになつたのではなかろうか。実は私は非常に不注意なことかもしれませんが、ごく大ざつぱに考えまして決定いたした次第てございますから、さよう御承知を願いますと同時に、将来御指示、御注意のありまする点で、われわれとしても考えなければならぬ点がありますれば、私は謙虚な気持で御協力願つて、変えて一向差しつかえない、こう考えますから、さようご了承願いたいと思います。
  136. 赤路友藏

    赤路委員 特に北洋につきましては、外交上の問題がからんで参りますので、注意しなければならないのではないかと思うわけであります。もう御承知かと思いますが、昨一九五四年十二月のソビエトの漁業という雑誌の中に、海洋学術調査研究所の方で発表をいたしておる文章がございます。こういうことを言っております。「鮭鱒資源の枯渇は、北洋いおける鮭鱒漁業の発展に伴い年々累積した一連の芳ばしからぬ事実がその原因をなしておる。根本的には沖合いにおける鮭鱒の濫獲であるが、とりわけ産卵期に遡上するため河口に向って来遊する親魚の濫獲である。かくて樺太マスとサケの自然生産は急速減少するに至った。特に最近数年間における濫獲と不法漁撈は目に余るものがある。この障害を急速に除去するとともにこういうようなことがソ連誌に載せられておる。しかもこれが昨年の十一月なのです。このことはおよそソ連関係者の、特に漁業に関係を持つ官民の一様の考え方であると見て妥当ではないかと思うわけであります。そういたしますと、本年度の漁業で心配になりますのは、漁区が十マイルまで拡大されたということ、二十マイルの線まで近接したということ、それから船団がふえたということ。すでにソ連でこういうような見解を持つとするなれば、この六月からの操業に相当な危険性を考えなければならない。これをこのままで手放しで政府としては放置しておくわけにいかないのではないか。もちろん最近ソ連との国交回復と申しますか、これらの点が鳩山総理大臣によっても大きく打ち出されておつたし、これに期待をかけるものではありますが、なおそれにしましても相当このごろもたもたしておるようであるし、時期的には私はこのままでは間に合わないのではないか。北洋における操業というものは、これは日本の水産にとっては非常に大きな収獲である。おそらく今年度は二百億円程度のものは一漁期にあげるのではないかと思う。そこで何としても安定操業をせしめるということのために、何か政府の方で、ソ連側に対して親善使節を出すなり、この操業前に何か打つ手を考えておられるかどうか、その点をお聞きしたいのです。
  137. 河野一郎

    河野国務大臣 非常に有力なる御示唆をちょうだいいしましてありがとうございました。今さしあたり、まだお話のようなことは考えておりません。おりませんから、さつそく外務大臣とよく話し合いまして、適当に考えておきたいと思います。
  138. 綱島正興

    綱島委員長 赤路委員に御注意しますが、自由党が先ほど十五分間よけいにやつたのですが、あなたの方も大体それに近い、もう一、二分ですが、簡単にやつていただきたい。
  139. 赤路友藏

    赤路委員 もうあと一分ぐらいです。簡単にやりますから。今大臣は、政府の方としては一応外務大臣と御交渉を願つて考えていただく、そこでこれは政府にのみ依存しておったのではどうなるかわからない。民間側の方でこの点については相当重大関心を持っておる。そこでもしも民門代表が行きたいというような場合は、農林大臣としては一体どういうふうにこれに対して対処されるか、その点ちょっとお聞きしたい。
  140. 河野一郎

    河野国務大臣 お答え申し上げます。外交上のことで私は具体的にわかりませんけれども、私が今申し上げた通りに、政府がこれについて云々ということは、むろん民間も含めてのことでございまして両々相まって適当な方法をとることが妥当であろう、こう考えておりますから、その点は、なおまた別の機会にいろいろ御示唆があれば、十分承わって善処いたしたいと思います。
  141. 赤路友藏

    赤路委員 今度はひとつぐつと方向をかえまして朝鮮海域の問題ですが、朝鮮海域における李承晩ライン、これは非常に大きな問題でございまして御承知通り在来これに依存しておりました漁業者は、特に小型船の零細漁業者は、現状ではもう破滅の段階に追い込まれておるのでありますが、政府の方では日韓会談について相当努カをしていただいていると考えております。しかしながらすでに漁期も迫つておることでもありますので、何とかここらで本問題にもピリオドを打たなければならないのではないか、これに対して農休大臣はどういうふうにお考えになっておるか、これも外交上の問題ではありますが、特に漁業には深い関係がありますので、農林大臣の御見解をお聞きしたい。
  142. 河野一郎

    河野国務大臣 お示しの通り、外交問題で解決する以外にしかたがないことでございまして、いろいろ外務省に注文はいたしておりますけれども、はかばかしく参りませんことははなはだ残念に考えておりますが、ただ私がこの機会に申し上げておきたいと思いますことは、先ほど川村さんにお答えいたしましたように、これは具体的に名前を申し上げて申します。日魯漁業その他大洋漁業、日本水産に対しましては、北洋漁業の方に母船の許可をいたしました。決して代償とは申しませんけれども、そういう意味合いで以西底びきの今のシナ海における底びきについては、これを引き揚げるようにということで、今水産当局がおりませんから詳しい数字はわかりませんが、たしか日魯漁業が十組、日水、林兼が五組ずつというものの許可の取り消しをするように、そうしてこの方面から引き揚げをするようにいたしているわけでございまして、その他そんなものを下げても仕方がないということがあるかもしれませんが、大体こちらとしてもこういう有力な会社のものからなるべく引き下げさせまして、一般のものに経営が合理化するように処置をとつていきたい、こういうふうに努力しているわけであります。
  143. 赤路友藏

    赤路委員 非常に適切な手を打っていただいているようでありますが、この日魯なり大洋なり日水なりという大きい会社を引き揚げて、そうして小さい会社に以西底びき関係をやらせる、以西底びきは小さいといってもまだいいと思う。問題はあそこのサバ漁業に依存している、もうほとんど小さい生産というか、生業というか、三十トンクラスから五十トンクラスくいの船の業者、これがやはり神奈川、千葉、静岡、鹿児島、長崎等を含めて相当大きな数に上っている。これらが大きな行き詰まりを来たしている。従ってむしろ私たちの立場から言わせますならば、以西底びき業者も問題ではあるが、より以上今日困っているのはこの零細な業者なんです。もしも本年度の漁期までにこの問題が解決つかないとするなれば、この連中をどうして救済してやるかということが一つの大きな問題点になるだろうと思います。そこでわれわれといたしましては、ここでどうしても思い切つて、この問題にまつ裸になって取つ組んでいただいて、この漁期まで是が非でも解決をつける努力をしてもらいたい。もしも今大臣のおっしゃるように、どうも現状がはかばかしく行かないということでは、おそらくこの漁期まで解決つかない。解決つかないとすると、この漁場に依存しているものが今日まで約二年まるまる非常な窮状に追い込められる、これをどういうふうに救済していくかということが問題になる。この点非常にこまかいことになると思いますので、これは御答弁を求めません。水産庁当局も出ておりませんので御答弁は求めませんが、こういうかなりやつかいなケースがあるということを大臣は十分御了承の上、この点について水産庁とも十分な御検討置きを願いたい、これだけ要望いたしまして質問を打ち切ります。
  144. 河野一郎

    河野国務大臣 わかりました。
  145. 綱島正興

    綱島委員長 次は川俣委員
  146. 川俣清音

    ○川俣委員 私は二、三の点についてお尋ねしたいのですが、その前に私どもが尋ねます基本的な態度を明らかしておきたい。  それは、前吉田首相を独裁政治家として攻撃を展開し、打倒した功労として民主党内閣が生まれたと思うのです。われわれもまた吉田内閣打倒のために非常に奮闘したのだが、われわれと同様というか、あるいはそれ以上熱心であったのは河野一郎君だと思うのです。そこで、なぜ吉田内閣打倒のためにわれわれ同様に河野君が奮闘したかというならば、おそらく独裁政治家として批判をしたのは、国会が国権の最高の機関であるという点を無視して諸政を行なつた点にあると思うし、またこのことが官僚的であり、反民主的な思想家であったというところにわれわれと軌を一にしたものだと思うのです。国会が立法の最高の府であると同時に人民主権の代行的行動の機関であり、主桁存民の代理的行使の職能を有しているという、この国会を無視したところにわれわれが攻撃を加えたと思うのです。少くともこういうふうに攻撃に参加した河野君は、従来ありましたような吉田内閣の轍を踏まないであろうことだけは期待していいと思うのです。その点から一つ質問する。  そこで今本予算が出ないのだから、農林政策を述べる時期ではない。こう言われましたけれども河野君は長い間野党をやっておられて苦労をともにしたのであるから、大綱方針が決定する前に、農林委員会の意向を聞きながら行政を受け持つというのが、私は本来の立場だと思うのです。少くともそういう立場であると私は理解しておる。そこで、本来でありますならば河野農政についてわれわれも意見を述べたいし、また意見をただしたいのだけれども、きょうは時間がないからそれを省くのです。それで暫定予算についてだけ質問をするのです。  そこで、米麦偏重がいけないとこう言われるのですが、今まで米麦偏重あったという見方のようですが、一体どういう点が米麦偏重であったのか、この点一つ。在来のやり方が米麦偏重であった、これを多角経営に直していかなければならぬというように聞えるのですが、そうすると米麦偏重であったというのは、どこを押して米麦偏重であったと言われるのか。
  147. 河野一郎

    河野国務大臣 これは私がお答え申し上げなくとも、川俣さん自身がどうお考えになるか。あなた自身も、私と同じように考えておられたのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
  148. 川俣清音

    ○川俣委員 それでは、米麦偏重だと言われるからには、法律上あるいは制度上米麦偏重であったのか、あるいは予算的措置において米麦偏重であったのか、これはどつちをさして言われるのか。あるいはともどもにさして言われるのか。もしも法律的な偏重であったとすれば、どの法律が相当するのか。あるいは制度上偏重であったとすれば、どういう点が偏重であったのか。あるいは予算的には、このくらいの予算でよかったのが、それ以上出ているから偏重だ、こう言われるのか。こういう点を、あなたが偏重だと言われるあなたのお考えでけつこうです。
  149. 河野一郎

    河野国務大臣 たとえば蚕糸につきましても、蚕糸の予算ももう少し余裕があればふやしておかなければならないものも、米麦生産重点をおいて、その方に第一詮議をして回されておつたのではなかろうか、こう考えております。
  150. 川俣清音

    ○川俣委員 たとえば今の蚕糸問題、これは足りなかったということは言えると思うが、米麦偏重であったということにはならない。米麦ですら、なお予算上、制度上不十分であったのです。それ以上蚕糸業に対してはさらに不十分であったということにはなると思うのですけれども米麦偏重であり過ぎたために蚕糸業を軽んじたということにはならないと思うのですが、どうなんですか。
  151. 河野一郎

    河野国務大臣 今のお話通り考えます。
  152. 川俣清音

    ○川俣委員 たとえば積寒法というのがある。これは五年の時限法で、五年間にこの目的を達成しようということでできておる法律ですが、しかしながら目的達成に至っておりませんで、わずか一八%程度よりもまだ実施を見ていない。七二%残っておるというような状態です。こういうのをもって米麦偏重であったとは言いかねるのじゃないかと思うのですが、この点はどうなんです。
  153. 河野一郎

    河野国務大臣 そういう積寒法のようなものを米麦偏重の一例には、私はいたしたことはありません。考えてもおりません。
  154. 川俣清音

    ○川俣委員 それではあらためてお聞きいたしますが、蚕糸業米麦との比較を見て、これですぐ米麦偏重だという前の御答弁では不十分だ。あなたの言われるように、ごもっともだ、こう言うのですけれども、こういう例がたくさんあるのです。私はどうも予算上偏重であったのではないと思う。なお足りなかったのだと思うのですが、この点はどうなんですか。おそらくそうだと思いますけれども……。
  155. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほどお話になりましたように、米麦についても十分ではなかったかもしれませんが、蚕糸についてはより以上十分でなかった。これは言葉をその通りとれば、米麦の方が足りないながらも幾らか多かったということで、足りない予算でございますから、足りないならば同じように足りなくして参りたいというのが私の考えでございます。
  156. 川俣清音

    ○川俣委員 足りないならば足りないままに公平に分けるということでありますならば、それは政策ではございません。少くとも必要なものについてはあらゆる犠牲を払って、あらゆる了解をつけて財政負担を講ずる、国費を投入するということが、私は行政長管としての任務ではないかと思う。自分の思わぬことはやる必要はない。やろうとすることであるならば、あらゆる困難を踏み切ってやるところに大いに今日の農林大臣が期待されておる点があると思うのです。やらない大臣だったらだれも期待しません。大いにやるだろうという期待なんです。あの農林大臣なら大蔵大臣に負けないでおそらくやるだろうと期待されておる。この期待が誤まりであるならば、これは天下にわれわれもそうはできないのだということを明らかにすることがいいと思う。私どもはそう思っておる。そこでお尋ねする。少くとも今まで米麦偏重であったということは、他と比較してであつて、なお今日足りない点がある。さらにこれに対してはもっと力を入れていかなければならないのだという趣旨であることを明らかにしていただきたい。
  157. 河野一郎

    河野国務大臣 国家全体の予算を勘案いたします場合に、川俣さんと私と意見が違う点があるかもしれません。たとえば社会政策の費用と米麦生酢の費用と、どちらを重しとするかというような点を考えてみますと、どちらも思いし、どつちにするわけにもいかない。しからばどつちも十分にやつて、そうして税金は幾らとつてもよろしいか、それもいけない。減税もしなければなりませんし、社会保障費も十分にしなければいけませんし、米麦生産についても十分にしなければいけませんし、農村の各種の補助金についても十分にやらなければいかぬ。これを勘案して分配することが政治であろうと私は思います。さらに諸般の情勢を勘案して考えました際に、ここに私の考えます問題は、多角経営を推進して農家経営の安定を期していく。従来わが国の国家の要請として、米麦生産は国家の至上命令であるということくに考えられました時代と今の時代と、今日は多少趣きを異にいたしまして、農家経営の安定のためには多角経営を推進していくということに重点を置いて参りたい、こういうふうに申し上げたのでございまして、その点は一つ御理解をいただきたいと思います。
  158. 川俣清音

    ○川俣委員 今の御答弁の中に、国務大臣として全体の財政計画に参画することと行政長官としてその任を負つておることと、これけ町立させなければならぬと同時に、やはり行政の長官としての任務を重視しなければその職責が全うできないと私は思うのです。そういう点でお聞きしておるということを念頭にして次の問題の御答弁を願いたい。  先ほど暫定予算編成に当って、ごく事務的なものだけ、純事務的なものだけを計上して政策的なものは一切抜いた、こういう御答弁でありましたが、そのまま了解してよろしいですか、あるいは付加することがございますか。
  159. 河野一郎

    河野国務大臣 大体今御指摘の通りですが、全然その通りで例外はないかということになりますと、多少例外はあるかもしれませんが、主としてそういうものであります。
  160. 川俣清音

    ○川俣委員 純事務的というと、法律に基いてその法律のままを執行する内閣の責任として、暫定予算を組むのが当然だと思う。憲法七十三条によりますれば、法律を誠実に執行するのが内閣の任務になっておる。従って法律ににあるものを予算の面に計上することが純事務的であると、私どもはそう理解しますが、河野農林大臣はそういうふうに理解されないのでありますか、その点をお伺いいたします。
  161. 河野一郎

    河野国務大臣 大体そういうことでございましょう。
  162. 川俣清音

    ○川俣委員 大体そういうことだとしますれば、もしもこれに漏れておりますことは、大臣の責任になるというふうにお考えになりませんか。
  163. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほども申し上げました通り、例外はあると申し上げたのでございまして、これはあまりそう詰めておつしやいましても、政治でございますから、多少のゆとりはあるものと私は考えます。
  164. 川俣清音

    ○川俣委員 例外というのは、百分の一とか百分の二とかいうものが例外だと思います。過半以上、七、八割を占めるというようなことは、例外ではないと私は理解する。そこでお尋ねいたしますが、当然法律上予算を組まなければならない法律が幾つもございます。たとえば農業改良助長法によりますと、「この法律は、能率的な農法の発達、農業生産の増大及び農民生活の改善のために、」これはやはり多角経営のために「農民農業に関する諸問題につき、有益、適切且つ実用的な知識を得、これを普及交換して公共の福祉を増進することを目的とする。」ということで改良助長法が制定されております。しかもこの二条には「農業に関する試験研究を助長するため、都道府県及びその他の試験研究機関に対し、左の各号に定めるところにより、補助金又は委託金を交付する。」とこうなっております。この法律に従って予算が組まれておりますかどうか。
  165. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほど申し上げました通り、多少の例外はありますが、それらは全然金が使えないでやめてしまうということは考えておりませんので、むろんその施策を継続して参ることに支障のないようにはできておるわけであります。
  166. 川俣清音

    ○川俣委員 施策に支障のないということと、法律にあることを誠実に実行するということとは違います。いやしくも法律にある範囲内のものは、予算に組まなければならないのが内閣の責任だと思う。憲法の条章において責任を課しておることすら実行できないということになりますと、これは吉田内閣と同じようなことになる。そこで私は前に前提を置いておる。あなたは少くともそういうことはやらないだろう、われわれと一緒に攻撃に当つた人であるから、そういうことはやらないであろうと期待しておる。ところが組んでない。そればかりではありません。たとえば畜産ども、集団酪農地域の設定に当る調査、これらも多角経営一つ基本になるものであります。河野農林大臣は大いに意気込んでいる点じやありませんか。せつかくこれらの法律ができたのでありますから、法律に従って、予算の額はあえてここで論じませんが、これの施行の責任を負うべきである。これを廃止するのならば別でありますが、少くとも四月、五月の暫定予算にこれを組むことが、責任を果すゆえんだと思う。果してそれを実施るにいたしましても、法律上当然予算に組まなければならぬと思う。組んでないのはどういうわけですか。
  167. 河野一郎

    河野国務大臣 大体ただいま申し上げた通りで、われわれとしましては、暫定予算でございますので、この程度で運用して参れるということでやつておるわけであります。
  168. 川俣清音

    ○川俣委員 純事務的に言うならば、当然予算を組まなければならぬ。これは予算の項にもある。あなたの説明の中にもある。大蔵省で出し予算の中にも、義務を負つておる補助金は必ず出すことになっておる。
  169. 安田善一郎

    ○安田説明員 純事務的と言っておりますのは、常用語でございまして、四月、五月の暫定予算でございますから、法律上の義務も負つて、本予算と合せて必ず実現ができるように、その中の最小限度を組んだという意味でございます。従いましてお話農業改良普及事業等の事業費においては、御配付を申し上げて御審議をお願いいたしておりまするような経費も計上してありますが、人件費及びその事務費等については、先ほども申し上げましたように、地方交付税交付金において、一般は二カ月の暫定予算の組み方でありますが、これを三カ月分を組むことによりまして、なお必要に応じまして資金運用部資金等の借入れをもちまして、早々に本予算を御提案申し上げればそれで済むという、予算全体の扱いに歩調をそろえまして取扱つてあるわわけでございます。
  170. 川俣清音

    ○川俣委員 それは大臣から答弁があるならば別ですよ。行政官が法律にあることをなぜ組まないのだ。組まないという政策を打立てれば別ですよ。法律にあるのだけれども政策暫定予算の中にこれを組まないという基本方針を打出しておるのならば別ですよ。その政策がない限りにおいて—そういう補助金暫定予算に組まないのだということを政策で打出して、そうして組まないというのならば、これはわかります。純事務的というからには、組まなければならぬはずである。組まないということは一つ政策じゃないか。だれがきめたのですか。組まない、という方針を事務官がきめられるか、行政官がきめられるか、一体きめられるという法律上の根拠がありますか。
  171. 安田善一郎

    ○安田説明員 ただいまも申し上げましたように、純事務的というのは、法律上または予算上の正確なる用語ではございませんので、常識的な説明をしたのだと思います。事務当局がそういう政策を作くつたということを申し上げたというのは、誤解でございまして暫定予算をいかに組むかという閣議方針に従いまして組んであると申し上げましたので、私も大臣を離れて別個に答弁を申し上げておるのでございませんので、農林大臣と一体となつた補足を申し上げておるわけでございます。
  172. 川俣清音

    ○川俣委員 これはおかしいですよ。事務当局は少くとも純事務的にこういう予算を組んだのだが、閣議決定によって政策的な意味から削られた、これならば話はわかりますよ。あくまでも純事務的だというならば、やはり当然法律に基いて予算編成をして来なければならないはずです。一応行政官は法律に基かない行為はできないのです。鳩山内閣の公務員であると同時に、一般的な公務員ですから、法律に従う行為を行わなければならぬはずです。法律の行為を逸脱した公務員というものはあり得ないはずです。政策がこう変ったのだから別だと、言われるのならば、これは別ですよ。純事務的だというのならば、純事務的に公務員として、これらの法律に従つた予算編成の仕方をしなければならぬはずである。内閣の方斜がそうじゃないのだからそれは削られましたというのならば、これは事務的に返事したらよろしい。そこで事務管の返事ではいかぬのじゃないか。大臣答弁を求めておるのに、買つて出て、答弁にならない答弁をしておる。大臣どう思いますか。
  173. 河野一郎

    河野国務大臣 それは非常に川俣さん声を高くしておつしやいますけれども、川俣さんのおっしゃることにも誤解があると思う。そうじゃないのです。こういう予算を組もうという閣議決定をして、それを事務当局が、その閣議決定の方向に従ってこういうものを組みましたと、こう申し上げているのです。決してこういう予算を組むのが政策とは—これは私は政策と申さないので、事務の取扱い上の指針を閣議できめたんだ、こういうことなんです。従ってその閣議決定の方針に基いて事務当局がそれについて案を作つた、こういうことでございますから、その点は一つ了解願いたいと思うのでございます。
  174. 川俣清音

    ○川俣委員 それは違うのです。法律にあることを予算の上に表わすことが憲法七十三条に基くところの国務の行為だ。それを変えようとするならば、政府みずからの責任において、国会の承認を求める等の政策的処置に出なければならぬはずだ。その処置に出られるのならこれは別問題です。内閣が責任を持って政策を変更する。前の内閣にあったことを変更する、あるいは法律を将来改変する、そういう政策を打ち出されておるならば、これは別問題です。純事務的な処理をしたと、こう言うから問題がある。おそらく予算の中にもこうなっておると思う。暫定予算には政策的な諸費用を排除する。法伴にあることをやらないということは政策です。改変するということは政策政策です。実行しないということは、これは実行予算を組むときの一つ政策ですよ。法律にあるものを忠実に執行していかなければ義務が、憲法七十三条によってあるのです。それを変更しようとするならば、これは変更できないわけじやありません。内閣がかわるたびに政策が変更されることは、これは当然なことです。私は政策が変更されることを拒んでおるのではないのです。純事務的だというからには、当然予算を組まなければならないのです。この基本的態度を明らかにしていただきたい。
  175. 河野一郎

    河野国務大臣 よく了承いたしました。あなたのおっしゃるように、問題のないものだけ、いわゆる法律用語ではないでしょうが、問題のないものだけをこの中に入れたんだ。これはたとえば大蔵当局が、入れたならばそれを少し削りだいとかいっておるが、農林当局、私としては削ることは不賛成だ、もしくは国会の方面においてそういうことは了承が困難だというような、問題を残す点についてはあと回しにしたんだ。そういう問題がなかろうと思うもの、すなわち前年度予算において、しかもこれが絶対に必要不可分なものであるというものは入れたんだということを純事務的と申し上げておるのでございまして、かたがたまたそれと同時に、地方のものにつきましてはやめたと申すのでは決してないのであります。やめたとするならば、今あなたのおっしゃる通り、やめるならばやめるで、なぜ政策を変更したんだからやらないのだ、こういうことになりますけれども、やめたと申し上げているのではないのでありまして、これの予算組み入れについてはいろいろ国会等においても御意見もございましょうというものについてはあと回しにした、こういうことなんでございまして、そういうふうに御了解願いたいと思います。
  176. 川俣清音

    ○川俣委員 それは大臣一応もっともなようにも聞える。たとえばベース・アップとか地域給的なものはさかのぼって支給することは可能です。しかし試験研究というようなものは、四月、五月に予算の大綱が示されていなければ、あるいはこの法律に基いて予算を組むんだという態度がきまっていなければ、試験研究なんてできるものじゃございません。たとえば土地改良費に対する最終の決定等も、すでに四月、五月に用意しなければ、こういう基本方針立てておかなければ実施面ができないのです。そこで予算の額は少額でありましても、やるんだという大綱を四月、五月の暫定予算の上に載せておく。これは実施においては、不足であるからして、本予算においてさらにこれをバツク・アップするんだという態度が出ておりますならば何ら異議は申しません。全然組んでいないということは、実施されるかどうかということについて疑念が出てくるのは当然なことです。
  177. 河野一郎

    河野国務大臣 お答え申し上げます。御指摘の点ごもっともでございます。私もそういうふうに考えました。考えましたが、何分時日が非常に切迫いたしておりまして、意見の一致したい点がいろいろ出て参ります。そういうことで、政策的な問題につきましては、これを載せますと、またこれについての御審議を願う上におきまして、これはやめてしまえとか、これはふやせとかいうことになりますから、これはあと回しにいたしました。ただし御指摘のようなことはむろん考えなければなりませんので、その点についても、勇敢にやらなければいけないということも私は考えました。しかし何を申しましても、時日もありませんと同時に、かたがた明年度予算は、われわれといたしましては、おそくとも月半ばまでにはぜひ編成したいということを考えておりまして、それと同時に、多年の習慣でございますから、御承知通り大蔵省からわれわれの方に査定をしたものを回して参りますものは、もう月がかわればすぐに私は来ると思います。それに対してわれわれは復活要求をするという従来の慣行もある程度とらなければならぬと考えております。そういうようなことで、地方におりまする人たちもしくは今のような試験研究に従事しておられる人たちには、明年度予算のあり方につきましては、これは非常な変則のことであります。これがこういうばかなことなしに、解散その他内閣の更迭等がなければこういう事態はないことでございましょうが、たまたま政治情勢がこういうことになりましたので、非常に変則ではございますけれども、地方におられまする人、研究その他に従事しておられまする人は、明年度の予算編成をごらんになって、ある程度の含みで事業の方向がきめていただけるのではなかろうかというようなこと等を勘案いたしまして、そうして地方におきましては地方長官の権限で進められますようにニヵ月の予算に対して三ヵ月分の交付金を入れておくということに実は努力したわけなのでございまして、これにつきましては、予算が通過するのは六月になるではないかということになりますと、またそこに問題がありますけれども、われわれとしましては、一応五月に予算がなるべく通過いたしますようにということの含みで、そういう処置をとったのでございます。決してこれは万全とは考えませんけれども、それらの点を十分考慮いたしまして、予算編成は一日も早くでかしあげまして、これが地方に行き渡りまして、大体この見当で予算に組まれておるのだなということがわかれば、それに対して地方長官が善処していただける、そういうふうなことを考えて、実は交付金の方は三ヵ月組んでおくということにしたわけなのでございます。これを今お話のように、なぜ早くきめてしまわなかったか、幾ら少額でもなぜそれに載せておかなかったかというお話でございますけれども、これは事情に精通しておられる川俣さんは、載せますと、ついそのままで大蔵省はあとは逃げたがるものでございますから、あとから増額するということはなかなかむずかしい。一ぺん一月、二月、月割りで組んでしまいますと、それを本予算の方に、今度は増額はなかなか困難なものでございますから、ついそこはこういうがんばり合いというようなことになっておくれておるのでございますから、その点につきましては、せっかく農村のために協力しておるということで御了解いただければ大へん仕合せだと思うのであります。
  178. 川俣清音

    ○川俣委員 せっかく努力をしておるというのであるから、これ以上ほんとうは追及したくないのです。これはおそらく農林大臣は、大蔵大臣と一戦を交えない限りにおきましてはその職責を達成できないという自負を持っておられると思うから、あえてほんとうは尋ねたくないのです。だけど今まで大蔵省のやり方を見ておりますと、これは大臣、ちょっと答弁はむずかしいかもしれませんが、項が落ちて、ないものは、新しく項を立てるということは非常にむずかしい。項目の中にちょっとでも載っておりますると増額はかなり楽であります。今までそうです。たとえば農薬の場合であろうと、あるいは健苗育成の場合でありましょうと、幾らか項に載っておりますると、その増額は決して困難でありませんけれども一つもない項を新しく起すことについてはなかなか容易ではない。そこで私は、少額でもいいから、これは将来実施するんだ、こういうことで載せられないことはなかったのじゃないか、こういうことなんです。
  179. 河野一郎

    河野国務大臣 御指摘のことは十分注意をいたしますが、実は私は大蔵当局に対してこういう最終的な了解を得てあります。それは、従来のように一方的に大蔵省の査定に甘んずるわけには参りません、私は私の農林業政策の基準もございますから、従って私が自分でどうしてもこれはやらなければいかぬと考えるものについては、農林省の全体のワクについては、一兆円のワク内において予算をおさめなければなりませんから、これについては十分財政当局と私は協調いたしますけれども政策の面につきましてはどうしても農林省をお預かりする私として、この費目、この項が落ちては困るというものにつきましては、大蔵当局意見よりも優先して私の意見を取り上げて閣議は決定を願わなければ困るということの了解を得ておりますから、御指摘のようなことがありましたらば、私は十分善処できる確信を持っております。その点こういう席でなくても、川俣さんから御注意いただきましたならば、そういうことについて十分善処いたす確信を持っておりますから、どうか御忠告いただければけっこうでございます。
  180. 川俣清音

    ○川俣委員 ちょっとくどくなるのですけれども、せっかく法律に交付するという義務を負わしている規定なんです。大蔵当局も、国が持っておる義務については予算を計上するという建前をとっておられる。この暫定予算説明書の中においても、補助費については、義務的なものであって、特に四、五月中に現実に国から資金の交付を必要とするものに限り計上するという、義務を課せられておるものは計上することを本来としておる。従ってこういう義務的なものくらいは、少くとももう少し載せられなかったはずはないのじゃないか。やはりどうも大蔵省に押されぎみでありますと、将来を案ぜられる。河野農林大臣は大いに約束をしておると、こう言うけれども予算説明にあるようなことですら載っていないということになりますと、果してどうかという疑問が出てくる。それでお尋ねしている。しつこいようだけれども、これは重大だから……。
  181. 河野一郎

    河野国務大臣 そういう御指摘のようなことにつきましては、そういう心配のないようにすることができると私は思っております。決して今言う通り切ってしまったんだから載せられなかったのだろうということではないのでありましてこれは申し上げますように、全部の点についてはそういう取扱いをしたということでございますから、今ここに載ってないものは全部切ってしまうつもりじゃないかというようなことは毛頭考えておりません。たとえば今法律に載せてなければならぬとここに書いてあるものを、法律の廃止の手続をとらないで、そうして予算に載せないというようなばかなことをするはずはないのでございますから、この点はだんだん御説明申し上げた点で御了解をいただきたいと思うのでございます。
  182. 川俣清音

    ○川俣委員 そう了解したいのだけれども、実際は法律に載っておるものを予算に載せないということは吉田内閣の非常に悪いことだったのです。これが一番悪かったのです。これくらいはあなたはやるであろうと大いに期待しておったのです。ここに同僚として一緒におって、川俣君大いにやれやれと言って扇動したくらいだから、少くともこのくらいのことはやらなければならないと思っておった。そういう意味から言っておるのです。
  183. 河野一郎

    河野国務大臣 今後十分注意いたしまして御指摘のようなことのないようにいたします。
  184. 川俣清音

    ○川俣委員 次に吉田内閣が多年にわたって行政を行いましたために、非常に綱紀が紊乱しておる。特に農林関係におきましては批難事項も非常に多い。おそらく就任と同時に大いに粛正をしようとお考えになったろうと思う。あるいはときこは利権の府と見られた。そうい疑惑すらあったのでありますが、大いに粛正をやろうというお考えであったろうと思うのですが、これは内閣ができたばかりでないとなかなかやれぬものです。あなたも一年、二年やっておりますと、今度はなかなか困難になって参りますが、就任早々であるからすみやかに粛正をやるべきであると思いますが、その点どうです。
  185. 河野一郎

    河野国務大臣 お話通り考えまして、私も長く農林大臣をやっていようとは考えません。長くなりますと、ついそういう点に陥りやすいのでありますから、あまり長くならないうちに私もやめたいと思っております。なおまた御指摘の点につきましては、時々ひとつ御注意いただいて外から十分監督していただきましたならば、勇敢に実行するつもりでおりますから、御注意願いたいと思います。
  186. 川俣清音

    ○川俣委員 私は特にこの際指摘しておきます。一番事業を多くやっておるのは農地局関係です。これは出先機関を相当持っておる。大いに粛正を要する点が多々あると思う。たとえば請負契約の場合におきましても、特定な二、三の業者を指定することによりまして、十人を指名したというようなことから競争入札になった例もございます。これは大いに粛正を要する点だと思います。綱紀の粛正は断行されると思いますが……。
  187. 河野一郎

    河野国務大臣 私も多少その点について、何とか考えなければならぬのじゃなかろうかと考えまして、せっかく事務当局に改善と申しますか、改革と申しますか、考えるように言うてありますが、これは農林委員会の方からも今までの点について十分御検討のあることと思いますから、こういうふうにしたらよかろうという案がありましたならば、お示しを願えれば私は実行します。今まで通りで必ずしも全部が悪いとは申しませんけれども、直さなければならない点もあるのでございましょうし、また直してよくなることも非常にあると思いますから、お気づきの点がありましたならばぜひやりたい。とりわけ資材の購入等につきまして農林委員会等で十分御意見がありましたならばお聞かせ願いまして、どういうふうにしたらよくなるであろうというようなことも十分お聞かせ願いましたならば、それらの点につきましては御協力をいただきまして、改善をして参りたいと思っております。
  188. 中村時雄

    ○中村(時)委員 今まで農林大臣お話を聞いておりますと、非常に生産費価格というように生産費ということが盛りたくさんに出てくるのですが、じっと見ておりますと、生産費価格というよりも、流通過程における価格構成を取り上げておられるように感ぜられるのであります。そういう意味におきまして、たとえば今の食糧問題の一点をお聞きしてみたい。食糧問題に対しまして、今までの予約制度ということを考えていらっしゃるようですが、私は資本主義としては当然自由販売というものが正しいと思う。しかしこれまでの過渡的状況として、予約制度の方式を打ち立てるのだというようにおっしゃいますが、もしかりに予約制度で数量が集まらなかったときの態度、それはおそらく何とかの一つの権利の履行になる。あるいはその団体が責任を持つか、こういう行動になって行くと思うのですが、これに対して一つ……。
  189. 河野一郎

    河野国務大臣 先ほども申しました通りに、やみ売りをどんどんやってしまえば別でありますけれども政府以外に売り渡すことはできないということは、その通りに私は残していいのではないかと思っておりますので、予約でできないものも、出来秋になれば政府の方に集荷できる。その際にこれもお話がありましたが、強権発動をするかしないか、強権発動は私はしたくない、私はこういう考えで、どこまでも理解と協力を得てやっていきたいと考えております。
  190. 中村時雄

    ○中村(時)委員 経済には経済としての流れがあります。それを政治の力で押えようということはなかなかできない。依然としてやみ米は出てくるわけです。それからもう一つ飛躍いたしますと、少くとも食糧庁長官がおっしゃいましたように、現在外米が入ってくるのは、これは地域によって違いますが、おそらくトン当り八千五百円くらいで入ってくるのではないか。そうすると、基本米価が九千二百円としますと、そういう安い米をたくさん政府の権限をもって輸入することができるとすれば、これによって価格をセイブできるわけです。そういうような一つの疑義が出てくるわけですが、それに対するお考え方は、どうであるか、もう一ぺんお伺いいたします。
  191. 河野一郎

    河野国務大臣 価格の何ですか。
  192. 中村時雄

    ○中村(時)委員 価格を押えることができるということです。
  193. 河野一郎

    河野国務大臣 それはやはり価格についてやろうとすれば抑えることはできると思います。しかしそういうことについては、十分考慮しなければならないと思っております。
  194. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうしますと、これは悪い意味における推察になるのですが、今言ったように予約買付制度をやると、実際に供出数量が足らない。そうすると言ったように外国の食糧をどんどん入れる、こういうふうな方式が一連として成り立っていくのですが、これに対して流通経済の過程としては当然これでもいいわけです。しかし農村の経営、生活防衛ということからくると、この問題との間にギャップが出てくるのですが、これに対してどういうふうにお考えになっておりますか。
  195. 河野一郎

    河野国務大臣 これは非常にめんどうな話でございまして今の農業経営の中にやみ売数量、やみ価格というものがどういうふうに入っているかということは、今の労働賃金を構成します場合のように明確に出てきていないと私は思うのです。ことに東北、北陸地方の米作地につきましては、ほとんどやみ価格がないということになりますから、非常にめんどうな問題になります。そういう今お話のような筋は筋で、一つの筋でありますけれども先ほどお答え申し上げましたように、直ちにそういうことを軽々にやるというわけにはいかないということはその意味で申し上げたのでありまして、どこまでも農家の理解と納得と協力の上に立ってやつていきたいと考えているのでございます。これは私がここでしゃべるだけではございませんので、幸いこれには農業団体の先輩、有力なる方々が非常に協力をしてやろう、一連の動員をしてやろうということでございますから、そういう方法でいきたいと考えております。
  196. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そこまでいきますと一つ流通過程からひっくり返って、生産費価格の構成の問題に入るのです。今農農林省生産費調査をやっているのですが、その生産費調査に対して項目別にこれを検討しなければ、これをもってほんとうの生産費構成ができ上るかどうか、私は非常に疑義を持っている。これはおそらく事務当局でも良心ある方はみな疑義を持っていらっしゃると思います。この款項目では経済調査しかできないはずです。その観点からして少くとも生産費価格というものをあくまで堅持することになれば、今までのパリティ計算との問題、もう一つ生産費に伴ってでき上ってきた構成の問題、この問題との関連性をどう考えているか。
  197. 河野一郎

    河野国務大臣 御指摘の通り生産費調査は、前年の生産費で翌年の米の予約買付をするわけでございますから、その点からだけ指摘しても、妥当公正なものではないことになるわけであります。そういうことでございますけれども農業経済の関連性からいたしまして、その間に従来もいろいろな要件が加味せられておりますように各種の条件を加味いたしまして、まず比較的妥当な価格出していくより仕方がないのじゃなかろうかと考えております。
  198. 中村時雄

    ○中村(時)委員 そうすると、おそらくその価格の構成は再生産に基く一つの観点が出てくるわけです。その再生産に基くところの価格のもとで、たとえば先ほどおっしった肥料の値下げの問題とかそういう問題が通産されてくる。先に肥料を安くするという問題だけを取り上げてこれを舞台の中心しぱんと打ちますと、その次の目的である生産費の問題がまだはっきり出ていないから、たとえば選挙に利用するのじゃないかとか、いろいろ誤った考えカになって現れてくるわけです。この点に対する今後の御注意願いたいと思う。
  199. 河野一郎

    河野国務大臣 それは全く一つ考え方と思いますが、私が今申し上げましたように、必ずしも従来のように生産費主義生産費主義と申しましても妥当な生産費が出るかどうか。しかも日本農村の実情から考えましてその生産費が平均生産費になるわけでございますから、これは当らない人が多く出るということでございますし、ただいま申しましたように、米の場合につきましては前年の生産費で翌年の予約価格をきめていくということになりますから、これは決して生産費主義ではなくなる。今お話のように次の再生産の費用をこれで考慮していくことになるわけだろうと思います。そういうことでございますから肥料の値を下げるとか生産費合理化をするというようなことで、そういうふうに合理化されるからこれで下げてよろしいのだということに考えていくことが早計であるということは私も全く同感でございます。従って今申し上げますように、各種の条件を取り入れて一般経済状態の趨勢等も勘案いたしましてきめるベきものだと考えているのでございます。しかしこれは各種各様の方々にお集まり願って、妥当なところにきめていくということにはまた一つの妙味があるのではなかろうかと考えているのでありまして、必ずしも一つの算術計算で出てくるもので扱うべきものではないと考えております。
  200. 中村時雄

    ○中村(時)委員 それからもう一つ生産費が出たついでですけれども先ほど河野農林大臣は、砂糖の問題に対して八十円ということをおっしゃいました。それに対し、原価計算—これは生産費でなく原価計算になるわけですが、原価計算としておそらく河野さんがお知りになられる問題でなく、食糧庁の長官から出ている問題だろうと思いますが、一体どういう建前でこういう原価計算をやられたのであるか。  どこから削り出しても少くとも八十円という計算はできないと思いますが……。
  201. 河野一郎

    河野国務大臣 ちょっと申し上げます。誤解がありますから申し上げます。今のは原価計算でも何でもないのです。そこらのところに砂糖の価格をきめましたならば、サツマイモの値段その他等々も考えまして、妥当な価格ではなかろうか。従ってそれだけ今の原糖を安く輸入をいたしまして、これを製糖業者に払い下げをいたしまして、その差額は政府が取って、そうしてこれを私の胸算用では食管会計にでも入れて赤字を埋めたらどうであろうかと、これはまあ裏話まで申し上げてしまいますが、誤解がありましたから申し上げるのでありますが、八十円に砂糖の値段をきめて、そうして砂糖屋がそのままふところに入れてよろしいというようなことを考えているのじゃないのでありますから、その点は誤解のないうらうにひとつ願いたのであります。
  202. 中村時雄

    ○中村(時)委員 今おっしゃったことは、結局超過利潤をどうするかという問題が出てきますが、これは詳しいことはあとの機会に譲ることといたしまして、もう一つはイモの値段との関連によって合理化するということになれば、外国の米の値段と関連して日本の米の問題を考えなければならぬということになりますが、こういう価格の構成の問題はいずれかの機会に譲ることといたしまして、別の角度から金融の問題をちょっとお伺いしたいと思います。それは現在農民から単協に貯金をして入ってくるわけですが、これが大体二分三厘で入っている。それから単協から信連に二分七厘、逆に信連から中金には四分五厘で入っている。ところが今度は農民から単協に出すのが、これを定期にいたしました場合に、六ヵ月といたしますと大体五分一厘。単協から信連が六分、信連から中金が七分、こういうふうになっているわけです。ところがこれが逆に今度中金から信連に貸し出しするのが幾らかというと一割一分、信連から単協に入って行くのが一割一分五艇、それから一般に貸し出させているのは一割二部取っているわけです。これだけの利ぎやをもってやっておりながら、ほんとうに中金というものは経営困難であるという打ち出し方をしているわけです。そこで農林漁業金融公庫あるいは特別会計等の下請をやりながら、それによって大半持っているという状態が今の中金の状態になっているわけです。その詳しいデータは幾らもあり、出ておりますから御説明いたしますが、こういう農村に対する還元のできないような行き方を取っている中金に対して、何か一つ考えを持っていらっしゃるかどうかお聞きしたい。
  203. 河野一郎

    河野国務大臣 お答えは要らぬとおっしゃいましたが、初めの点についてちょっと申し上げておきます。決して私はサツマイモと砂粒の値段を考えるから外米外麦と内地米の価格関係をというようなことに推論はいたしておりません。これは全然別個に、たとえば砂糖の値段のきめ方を適当にいたしませんとサツマイモの値段がこれによって非常に大きく作用を受けますから、サツマイモの値段を適当に維持いたしますには砂糖の値段をこの辺にきめるのがよかろうということに持っていきたいというのでございます。さればといって原糖の輸入を高く輸入してよろしいということにはならない。従って外米外麦はなるべく安く輸入するために全力を尽します。それが安く入つたからといってそれが内地米の価格決定に影響するとは考えておりませんから、よろしく御了解願います。内地米の売買価格の決定はおのずから日本国内経済事情によってきまるのでございます。さらに農家生産者の手放れ値段は農家経営によってきまるのでございまして、そういうことは全然そういうことと関係なくきまるべきだと考えておりますから、その点は御了解願いたいと思います。それからただいま御指摘の、中金を初めとした一連の信連の金利の問題でございますが、それは私も実は不注意で先般までよく承知をしていなかった。ところが農村の金融問題を取り上げて研究を始めましたときに、その話を私も指摘されまして、実は驚いたのでございます。どうしてそういうばかなことになっておるのたろう、どうしてそうしなければいけないのだということを初めて気がついたのでございます。しかし、これは他の銀行の金融との関係がありまして、いろいろめんどうなことがあるそうでございます。そうでございますからといってそのままでよろしいものではないと私は考えておりまして、そこは一貫したる協同組合運動の精神にのつとつて、独得に農村金融に寄付してもらわなければ困るというようなことを私は考えておるのでございます。何分今日の信連は一般経済界、金融界との関連が非常に密接になっておりますし、また町村合併に原因をして市街地信用組合吉と村の信連との関係が起つてきておりますことも御承知通りでございます。それぞれ考えまして、この農村の金融につきましては、何とか一つ特別な考慮を払つていかなければならないのではなかろうかと考えますけれども、今しからばという結論は出ておりませんので、これらについて御考慮、もしくは御指導がいただけますれば非常にけつこうだと考えておる次第であります。
  204. 中村時雄

    ○中村(時)委員 最後に二点だけ、ずっとくだけまして競馬のいわゆるのみ屋の話ですが、河野農林大臣はのみ屋を廃止するということで、私もこれは大いに賛成なので、あくまでやらなければならないということで実態調査もやつておるわけです。これに対して河野農林大臣はほんとうにやる意思を持っておるかどうか。
  205. 河野一郎

    河野国務大臣 もちろん私は同感でございます。
  206. 中村時雄

    ○中村(時)委員 最後に今の信連との関係なんですが、これを早急にやっていただかないと、各県における県信連が正常な立場における金融機能をやらないという点がたくさん出てきておるのです。その点についても早急にやつていただきたい。私どももデータを集めておりますから、そろえてあるものだけは差し上げますが、これを要求いたしておきます。
  207. 河野一郎

    河野国務大臣 承知いたしました。
  208. 綱島正興

  209. 稲富稜人

    稲富委員 私は先刻川俣委員質問に関連しまして二点たけ大臣にお伺いしたいと思います。先刻から質問応答を聞いておりまして、要するに河野農政に対する根本的な問題であるのでございますが、どうも農業対策基本をどこに持っていくかということに、私たちは河野農林大臣考え方と非常に意見の違う点もあるようでございますが、これは時間もございませんのでまたの機会に譲るといたします。ただ先刻の質問応答を聞いておりますと、従来の米麦偏重の農業対策というものを何とか切りかえなければいけない、こういうような御説明があったように承わるのであります。これは食糧対策と密接なる関係があるのでありまして、日本の自立経済立てる上からして、日本食糧対策をできるだけ自給自足態勢に持っていく、こういうねらいと、依然として外米に依存するのだということ、ここに大きな変りがあると思うのであります。河野農林大臣が今日急に、米麦偏重のこういう農業対策を切りかえなければいけないのだ、こうおっしゃるのは、今日余剰農産物の導入等により日本農業世界農業の一環に持って行こうという関連性があつてそう言われるのではないか。この点私は日本農業の上から大きなる不安を感ずるわけでありますから、一つはっきりしていただきたいと思います。
  210. 河野一郎

    河野国務大臣 お答えいたします。今の点は、全然私はそういうことを考えておりません。たとえば食糧を海外から輸入いたします場合におきましても、米にいたしましても、麦にいたしましても、なるべく近くから輸入すべきものだ、遠くから輸入すべきものではない。水分も相当に多いものでございますから、なるべく近くから持って参る。できれば戦前のように朝鮮米、台湾米に依存していければ一番けつこう。しかしこれもそういう事精が許さぬでございましょうから、さらに中共米も入って来るでございましょうし、タイ、ビルマの米も入って来なければならぬでございましょうし、カリフオルニアの米も入れる場合もあるでございましょうというのでございまして、決して余剰農産物と今私の考えております政策との間には関連性は絶対ないということを御理解いただきたいのでございます。これが第一でございます。  第二といたしましては、私は農家経済の確立という点に重点を置きまして、そうして戦後も数年経過いたしまして、他の産業が一般にそれぞれ各個々の経済自立の点に重点を置いて助長の政策がとられておりますときに、農家としても農家の収益を中心にした、たとえば農業経営の面から申しますれば、単一な経済よりも多角経営の力が収益が多かろう、経済の根底が深くなるだろうということは、私が今さら申し上げるまでもないことでございます。しからばそういう点において手が抜かれておつたかと申しますと、戦時中に抜かれておつたことは、私が申し上げるまでもないことでございます。その戦時中に抜かれておつた惰性が、戦後食糧が国際的不足、国内的な不安という面から、この方面に引き続き強くその施策が続けられて参りましたけれども、戦時中米麦に非常に重点が置かれた経済政策が、戦後にわかに転換する時期に参りませんでした。そこで、今やようやく国際的に価格が下落しております際でもございますし、国民といたしましても不安感がだんだん薄らいできているときでございますから、私は供出制度も切りかえていいのではなかろうかというふうに考えまするし、その一連の施策として農業経営の合理化の面から参りまして、養蚕の奨励もしていいのではなかろうか、畜産の奨励してもいいのではなかろうか、その他くだもの、花類、輸出農産物等につきましても農家の収益の上において寄与する面があるならば、そういうものを一連の面において指導していっていいのではなかろうかというふうに考えるのでございまして決して食糧増産政策的にもうやめてしまうんだ、必要かない、安い外米、外麦による方がいいんだからやめてしまうんだというような考え方ではないのでありまして、あえて米麦を捨てろということではないのでございまして、わが国の米麦地帯につきましては依然として米麦生産に専念していただいて、これの生産費引下げ等につきましては、あくまでも協力申し上げる。そこでたとえば農業薬品の点等についても、できるだけやつていかなければならぬということは、私は決して考えを変えようと思っておらないのでございます。ただ米麦生産するのに多少の困難性があつても、そういう方面に力を入れられておりました地方等につきましては、たとえば畜産に変つたらどうか、入植者につきましては、雑穀を作るというようなことよりも畜産重点を置いて飼料作物の方に変つたらどうかというような点については、だんだん変りつつありますけれども、これらについては一つ変えていったらどうかということを考えておりまして、決して御指摘のような点は考えておりませんから、御了解をいただきたいと思います。
  211. 稲富稜人

    稲富委員 御承知通り自由党内閣時代に、やはり自由党内閣ではそういう立場ではなかったんだと言われましたけれども、やはり余剰農産物の導入等によって日本農業が少からず圧迫をされたということは、農業関係する者がひとしく遺憾に思った点でございます。ことにただいま言われましたように、外国米というものが日本生産価格よりも安くなってくればくるほと、日本農業としてはますます外国から食糧がたくさん入って来ることに不安を感ずるわけでありまして、この点はただいま河野農林大臣の言われますようなことでありまれば、せめて予算面に対しては、少くとも日本農業が外国から食糧の入って来ることによって庄迫を受けないように、十分なる注意を持っていただきたい。ことに外米が安くなるし、たくさん入って来る時期に、こういう日本農業の切りかえを言われるということは、ますます不安を大きくするものだと思いますので、この点は農林大臣言葉としては非常に影響のある言葉でありますので、こういう点に対しましてはよろしく御注意をなさつて、少くとも農民がそういう不安を感じないような方法をとつていただきたいと思うのです。  さらにこれに関連して農家経済の洲題でございますが、先刻からもお話がありましたが、今日農家経済の一環といたしまして、農村に対するいろいろな政策が行われております。ことに従来農村の米の供出等に使用いたしておりましたかますでございますが、このかますの生産の方は、単作地帯等におきましてはわらによって生産する。これが農家経済を保持する非常に大きな役割を占めておつたのでありますが、最近巷間伝えるところによりますと、このかますの使用を廃して麻袋を使用するようにするという、麻袋業者の猛烈なる運動が政府等になされておるということを聞きまして、その生産地は少からず不安を感じておるわけであります。これに対する大臣としての考え及び計画等がありましたならば、一つこの機会に明らかにしていただきたいということをお願いしたい。しかもそういう麻袋の使用等は、これは農家経済に大きな影響を及ぼしますので、そういうことをやらないようにわれわれは希望を申し上げ、これに対する大臣のお考えを承わりたいと思います。
  212. 河野一郎

    河野国務大臣 最初の御忠告、まさにつつしんで承わつて今後注意をいたします。  それからただいま御指摘の、包装用のわら工品を麻袋にかえるというお話しでございますが、その点につきましては、私はもちろんそういうことを考えたことは全然ございませんし、そういう陳情もあまり受けたことがないのでございます。何かの間違いか、もしくは事務当局にそういうふうなことを話し合つておるような向きがあるために、そういう誤解を招いておるのかもしれませんけれども、これは私はこの機会にはっきり申し上げておきます。絶対にそういうことはいたしませんし、また皆様方の御決議でもありましてぜひ変えろということがあれば、これはむろん私は変えないということは申しません。しかしこの点につきましては、いろいろ誤解がありますから、私一存でやるということはいたしません。これはあなたの地方だけでなしに、全国農村に、たとえば寒冷地帯等についてはいろいろありましようし、または近県にもそういう地帯があります。これは全国的にそういうふうな不安を来たすようなことがありますことは、非常によろしくないことでありますから、私は決して農林大臣の一存で、どういう陳情がありましても、そういうことをいたすことはいたしません。これは皆様方の御了解があって御同意があればいたしますけれども、そうでなければいたしませんということをここに言明いたしますから、その点は御了解願いたいと思います。
  213. 綱島正興

    綱島委員長 これで質疑を終りまして、特にこの際お諮りをいたします。昭和三十年度暫定予算概要と題する農林関係暫定予算についての説明書でございますが、これは農林大臣より説明があったことといたして記録に採録することに御同意願えますか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  214. 綱島正興

    綱島委員長 しからばさようにいたします。  明日は午前十時半より開会することとし、今日はこれにて会議を終ります。     午後四時三十三分散会      ————◇—————