運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

1955-07-27 第22回国会 衆議院 内閣委員会 第48号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月二十七日(水曜日)     午前十時二十七分開議  出席委員    委員長 宮澤 胤勇君    理事 高橋 禎一君 理事 辻  政信君    理事 床次 徳二君 理事 江崎 真澄君    理事 高橋  等君 理事 森 三樹二君       有田 喜一君    大村 清一君       林  唯義君    保科善四郎君       眞崎 勝次君    松浦周太郎君       松澤 雄藏君    大坪 保雄君       小金 義照君    田中 正巳君       田村  元君    福井 順一君       船田  中君   茜ケ久保重光君       飛鳥田一雄君    石橋 政嗣君       櫻井 奎夫君    下川儀太郎君       田中 武夫君    渡辺 惣蔵君       鈴木 義男君    田原 春次君       中村 高一君    矢尾喜三郎君  出席国務大臣         法 務 大 臣 花村 四郎君         国 務 大 臣 杉原 荒太君  出席政府委員         内閣官房長官 田中 榮一君         警察庁長官   石井 榮三君         調達庁長官   福島慎太郎君         防衛政務次官  田中 久雄君         防衛庁次長   増原 恵吉君  委員外出席者         議     員 古井 喜實君         検     事         (訟務局次長) 青木 義人君         専  門  員 安倍 三郎君     ――――――――――――― 七月二十七日  委員長井源君、松岡松平君、櫻井奎夫君及び下  川儀太郎辞任につき、その補欠として有田喜  一君、松澤雄藏君、渡辺惣蔵君及び田中武夫君  が議長指名委員に選任された。 同日  委員松澤雄藏君及び渡辺惣蔵辞任につき、そ  の補欠として池田正之輔君及び櫻井奎夫君が議  長の指名委員に選任された。     ――――――――――――― 七月二十六日  兵庫県小野市の地域給引上げ請願吉田賢一  君紹介)(第四五七二号)  同(田中武夫紹介)(第四六二五号)  大阪府北八下村の地域給引上げ請願古川丈  吉君紹介)(第四五七三号)  三重県上野市合併地区地域給指定に関する請  願(中井徳次郎紹介)(第四六二六号) の審査を本委員会に付託された。 同日  奈良奈良合併地区地域給引上げ等陳情  書(第四〇一号)  公務員給与制度確立に関する陳情書外一件  (第四〇二号)  国家公務員に対する寒冷地手当及び石炭手当の  支給に関する法律の一部改正に関する陳情書  (第四  〇三号)  青少年に有害な出版物等排除に関する陳情書  (第四五二  号)  茨城県下妻市の地域給指定に関する陳情書  (  第四七〇号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  国防会議構成等に関する法律案内閣提出第  一〇〇号)  憲法調査会法案清瀬一郎君外四名提出衆法  第三一号)  調達庁に関する件     ―――――――――――――
  2. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 これより会議を開きます。  国防会議構成等に関する法律案並びに同法案に対する江崎真澄君外七名提出修正案一括議題としてこれより討論に入ります。通告がありますので順次これを許します。石橋政嗣君
  3. 石橋政嗣

    石橋(政)委員 私は日本社会党を代表いたしまして、ただいま議題となっております国防会議構成等に関する法律案並び自由党提出修正案反対意見を述べんとするものであります。  反対理由の第一は、いまさら言うまでもないことでありますが、この法案が明らかに憲法に違反するという一事であります。この法案根拠法規たる防衛庁設置法違憲法律である以上、それは明瞭なのでありますが、さらに同法によれば、この国防会議国防基本方針防衛計画大綱、あるいは防衛出動可否等を審議するというのであり、これは言葉なり行為としては、ある種の人たちにとってなつかしいものであるかもしれないけれども、全く日本国憲法の許さざるものであることは言を待たないのであります。政府はすでに本年度三万の自衛隊を増強し、陸、海、空合せて二十万になんなんとする自衛隊を完成せんものと試みているのでありますが、これが質、量の両面から、もはや一点の疑いもない違憲行為であるにかかわらず、さらに、その罪を累加させようとしているのであり、われわれの断じて容認できないところであります。政府憲法を何と心得ているのか。憲法第九条をもう一度思い起すべきであります。総理自身在野当時にあっては自衛隊違憲論をひっさげて、吉田内閣を激しく攻撃したではありませんか。それを一たび政権にありつくや、手のひらを返すごとくに変節し、自衛隊法防衛庁設置法ができ、自衛目的のためならば、自衛のために必要な限度において、兵力を持ってもよろしいという主張議会において通ったのだから、憲法第九条はそのままでも、自衛隊憲法違反ではないと言うに至っては、全くあいた口がふさがらないのであります。これ以上の無節操、これ以上の詭弁が一体あるでありましょうか。議会における過半数の意見によって憲法の解釈がどのようにでも変るものならば、何も複雑な手続を経て憲法改正を行う必要はもはやなくなるでありましょう。さしずめ都道府県は地方公共団体ではないとして、知事の公選を廃し、官選を断行すること等は易易たることとなり、憲法軽視、いな憲法無視もここにきわまれりと断ぜざるを得ないのであります。  なおこのような主張にはいま一つ矛盾のあることをわれわれは忘れるものではありません。それは、自衛目的のためならば、兵力を持ってもよろしいと称しながら、反面、だからといって近代的な兵力を無制限に持ってよいというのではないとして、みずから限度を設けていることであります。財政経済上の理由に基く限度ならともかく、自国の力だけでは絶対防衛できない現代にあって、自衛のために必要な限度などというものがあり得ましょうか。もし自衛のために兵力を持つことが許されるとするならば、自衛目的を持つ限り無制限に許されると解釈しなければつじつまが合いますまい。ともあれ憲法違反の事実に目を閉じ、耳をおおわんがためにはかかる詭弁を用いる以外にすべのないことは察するにあまりあるものの、これを容認することは絶対にできないのであります。  一歩を譲り、本法案審議に応じ、検討を加えるといたしましても、かかる無責任なそして自主性のない法案が他にあるでありましようか。  政府、特に民主党は、改進党の当時から、次のような理由に基いて、国防会議には民間学識経験者を絶対に入れなければならないと主張し続けて参りました。  その理由の第一は、内閣総理大臣権力の抑制のために必要だというのであります。御承知通り自衛隊法により内閣総理大臣は、旧憲法下の天皇の統帥権にも比すべき権力を持つこととなりました。そこでその権力の過度の集中を抑えるため、特に防衛出動可否については、これを内閣のみの権限にゆだねるべきではないというのであります。すなわち学識経験者を入れた国防会議でなければ、国会の承認は、緊急の場合は事後となりますので、反対閣僚は罷免されることとなり、自衛隊総理専断によって自由に動かされる危険があるというにありました。理由の第二は、防衛計画のごときものは長期にわたり、かつ一貫した永続性を必要とするから、内閣の更迭によって異動しない構成員を加える必要があるということであり、第三は、防衛計画の樹立、防衛産業等調整計画大綱の決定についても、学識経験者を入れ、各省を超越した成案を得るようにすべきだというのであったと思います。  この論はまた閣僚のみをもって国防会議構成することは、一種のインナー・キャビネットであり、ここで首相が議長となって審議するのであれば、それは閣議を根本的に変えるものではないという論につらなるものであると思うのであります。しかるにどうでありましょう。自由党から修正案なるものが提示されるや、一夜にしてその信念を翻し、民間人を入れても入れなくても大して変らないと言うに至っては、全くあきれ果てたことといわざるを得ないのであります。われわれのごとく、国防会議違憲立場をとり、これをアメリカ隷属機関なりと認める者からすれば、確かに五十歩百歩、大した変りはないのでありますが、政府にとって民間人を入れるか入れないかは単なる修正というがごときものではないと思うものであり、あまりにも無責任な、信念のない態度にぼう然とするものであります。民間人を入れるか、入れないか。これこそ法案名称国防会議構成等に関する法律の示す通り、この法案の生命ではないでしょうか。それを簡単に引っ込めてしまうありさまでどうしてあなた方の自称する日本防衛熱意とやらの一片をこの法案に認めることができましょう。  要するに拙速を尊ぶ理由の第一は、過ぐる四月、アメリカ防衛分担金の削減の交渉に際して、防衛に対する熱意の表明として約した国防会議設置を、どのような形であれ実現すればよいのだと考えているものと断定せざるを得ないのであります。  事実、アメリカに対する公約を果す意味において設置されるこの国防会議なるものは、設置後も、アメリカの意向を無視しては何事も決定し得ないかいらい的存在にすぎないといえます。それは、アメリカの同意なしには国の予算をすら編成できないという現状においてはしごく当然のことかもしれませんが、われわれはその自主性のない国防会議存在価値を認めないのであります。  ちなみに、防衛計画大綱議題とした場合を想定してみましょう。御承知通り防衛庁の第九次防衛計画案にも明らかな通り日本兵器の四割までをアメリカ供与兵器に依存しているのであります。これは杉原長官の本委員会における答弁にも明らかであります。すなわち長官は、日本MSA協定に基いて装備品等供与アメリカから相当受けている。これは事実であります。従いまして今後長期計画を立てていきます場合にも、このアメリカ側から供与を期待し得る程度等が非常な関係を持つことは否定できませんと、明確に答弁しております。このような状態下にあるとき、防衛計画大綱を作成するときに、事前にアメリカ承認を得ずして果して作成することができるでありましょうか。特に長期防衛計画のごときは、もしアメリカ承認を得たとしても、アメリカ本国の政策の変更に応じて変動せざるを得ないことに火を見るよりも明らかなところと申さねばならないのであります。事実この点についても杉原長官は、はっきりと次のように述べております。すなわち「アメリカ側といたしましても財政その他の関係で、日本に限らず外国に対して一体どれくらいの軍事援助ができるかということは、これは毎年の予算できまることでございます。向うといたしましても実はそうあらかじめ先々までのことを言い切るようなことはないわけです。」と自主的な計画等はとうてい作り得ない、日本の従属的な立場を、みずからはっきりと暴露しているのであります。総理は、防衛六ヵ年計画はいまだ研究中であり、国防会議ができれば、なるべく早く作りたいと言っているのでありますが、この発表がおくれているのは、一にかかってアメリカ側の事情によるというべきでありましょう。  ともあれ、今や日本自衛隊アメリカの用兵たること、日本防衛に関するすべての機構、訓練、計画等アメリカの掌中にあることは、与党議員といえども、客観的にものを見る目と良心を持つ限り、認めざるを得ない冷厳な事実であり、軍事顧問団を通じ、あるいは直接的な形での支配介入のきびしさはすべての面で顕著になりつつあります。  政府はこの事実を幾らかなりとも国民の目から隠蔽せんがため、すなわちいかにも国防会議なる日本機関によって審議され、決定されているかのごとく装わんがために、どのような形であれこれが設置を急いでいるものを考えざるを得ないのであります。これ拙速を尊ぶ理由の第二であります。われわれはこのような自主性のない国防会議なるものをどうして認めることができましょうか。  最後に、違憲性をたな上げにして再び検討を加えるとき、この法案のずさんさに目をそむけるわけには参りません。それはこの法案のどこに軍事独裁危険性を防止する具体策が述べられているかということであります。事務局長といえば、内閣総理大臣官房にわずか四十数万円の予算をもって設けられるにすぎず、自衛隊に対する最高指揮監督権を有し、国防会議議長任ずる総理を直接補佐する一人のスタッフも事務局にいないというのであります。もし過去において、国民戦争にかり立て、敗戦に導いたあの軍の専横を再び望まないとするならば、国防会議にこそ政治優越の最も具体的な方途を講じて置くべきでありましょう。  アメリカ国家安全保障会議国防上の最高会議でありますが、その事務局国防省にあるのではなく、大統領に直属しております。また情報調査の総元締めである中央情報局は、これまた統合幕僚会議に設けられている機関ではなく、国家安全保障会議に直属し、最も重要な、しかも最も確実視さる情報がこの会議において披露されているのであります。だからこそ大統領の統轄するこの会議が、軍の専断を押えることができるのだということを知るべきでありましょう。この法案のどこにそのような周到な注意の片りんがうかがわれるでありましょう。国家安全保障にとって、世界的な広い視野を必要とすることは今や常識であります。もしどうしても国防会議が必要ならば、その設置は、この要請にこたえるべきものでなければならないはずであります。文民の優位を力説する政府が、かかる事務局に甘んじ、そのすべてを防衛庁に依存するがごときは、矛盾もはなはだしいといわねばならないのであります。  以上、非常に簡単に申上げたのでありますが、われわれはまず第一に、憲法違反のゆえをもって本法案反対するものであります。なお検討を加えてみても、本法案に一貫するものは、無定見と自主性喪失のみであることを知るとき、どうして賛成することができましょう。再び祖国を滅亡に追いやるであろう芽をつみ取り、国の安全と国民生活を守るためにも断固反対するものであります。  これにて討論を終りますが、何とぞ委員各位の御賛同を得ますようお願いいたします。
  4. 宮澤胤勇

  5. 田村元

    田村委員 私は自由党を代表して、ただいま議題となりました国防会議構成等に関する法律案につきまして、若干の意見を申し述べ、修正案及び修正案を除く原案に賛成をいたさんとするものであります。  わが国は、今や独立国家として国際社会存在し、あらゆる面においてその自主性を保持しているのであります。ところが国民の一部には、なおわが国他国従属国であるかのごとく卑下し、かつ祖国の自尊心を失い、はなはだしきは祖国の繁栄、民族の防衛すら拒否せんとするの思想が見受けられるのは、まことに情ないことと申さざるを得ないのであります。最近ソ連邦におきましても、日本国独立国とみなし、両国間の国交回復のための日ソ交渉が行われているという事実は、先ほども申しました通りわが国自主性を完全に了承いたしているからであろうと確信いたすものであります。  しかしてわれわれは完全な独立国家ではありますが、自国防衛に関しましては、残念ながら欠くものがあるということを認めなければなりません。たとえばわが国憲法戦争を放棄いたしておりますので、自衛のための戦力を有するだけでもなかなか意見が多く、そのために外国軍隊に依存いたさなければなりません。このようなことできびしい国際社会の中にあってどうして安閑と暮すことができるでありましょうか。また世界が急激に平和の方向に進んでいる一つ現象面だけをとらえて、わざわざ国防体制を強化することもあるまいとの意見をなすものもあります。これはどろぼうが減少したから戸締りをやめようの愚言にひとしいものであって、われわれは国防体制の強化によって戦争を防止し得ると信じているものであります。  世界の平和は、はなはだ遺憾なことではありますが、力関係の均衡によって保たれているのでありましてわが国も国連の集団安全保障の精神より、その一翼をにない、集団安全保障の権利を主張すると同時に、その義務をも果すべきであると考えます。しかしてわが国の場合は他国と異なり、憲法上よりも自衛すなわち自国防衛のみを心がくるのみにて事足りるのでありまして、その点は厳守いたすべきでありましょう。自由党内閣におきましては、日米安全保障条約を尊重しつつ、憲法並びに国家財政の許す範囲内において、きわめて自然に着々と自衛力の増強に努力いたして参ったことは諸君よく御承知通りであります。鳩山総理は、かつて在野時代にきわめて急進的な憲法改正論者であって、当時吉田内閣防衛思想に対して激しい批判を加えてこられたのでありますが、今やその考えを改め、自由党の理論を信奉せられるに至ったことは、邦家のためまことに欣快に存ずる次第であります。  今般議題となっております国防会議構成等に関する法律案は、実を申せばいささかずさんぎみであることは事実であります。それでありますから、われわれはもっと十二分に審議し、必要な修正を加えてその完全を期したかったのでありますが、何分にも巧遅より拙速をとうとばなければならないような情勢下にありまして、一部修正にとどめざるを得ませんでしたことは、残念に存ずるとともに、今後あらゆる機会を通じて改正の線に進みたいと考えているものであります。そこでこのたびの修正部分でありますが、政府原案民間議員採用規定いたしておりますけれども、これはわれわれのどうしても容認いたしかねるところであります。まず第一の問題として、現在の責任制内閣民間議員存在との不合理であります。民間議員の言動に対して、政府はどのようにして責任をとるべきであるかという点に関する総理以下の御答弁も要領を得ませんし、また理論的にも疑義を有せざるを得ません。第二に、しからばよし第一の疑義を解消いたしたとしても、なおどのような人を加えるかということになりますと、やはり政府の御見解は遺憾ながらはなはだあいまいであります。われわれは旧軍人の台頭を拒否し、軍需産業資本との悪結托を恐れなければなりませんが、旧軍人民間議員にしてはいけないという規定をすれば、憲法違憲のおそれもありますし、しかして規定をしなければ採用という事態も起り得るのでありまして、これらの理由により民間議員規定の削除に賛意を表するものであります。  なおまた原案によりますと、機密漏洩禁止規定はありますが、罰則規定が見当りません。ただ単に機密を漏洩してはいけないというだけの規定で、どうして機密保持ができるでありましょう。諸外国は互いに相手国軍事的機密を探ろうと、スパイまで使って狂奔いたしておるのであります。このような国際情勢下にあって、わが国国防会議もよほど慎重に機密を保持いたさなければならないことは自明の理であります。このように考えたとき、果して民間議員を加えて機密保持の万全を期することができるでありましょうか。まことに危険千万と申さざるを得ないのであります。この意味におきましても、われわれは民間議員を加えることには遺憾ながら同意できないものであります。  結論として、この法案に対してはずいぶんと批判もございますが、わが国の置かれている実情にかんがみ、とにかく防衛庁設置法にも明文化されている国防会議のこととて、とりあえずこの成立を急いだ次第でありまして、鳩山総理並びに杉原防衛庁長官におかれましても、これで一安心という安易な安心感をお持ちにならないで、現実への問題に対するわが党の態度をよく御理解になると同時に、きびしい自己批判をしていただきたいのであります。防衛六カ年計画があるのかないのかわからないような政府態度は、国民の疑惑を招くことでもありましょうし、また国防会議事務局の充実と整備等もまことに急を要するものと考えるのであります。  ここに所感をいささか申し述べて、本修正案並び修正案を除く原案に賛成し、私の対論を終る次第でございます。(拍手)
  6. 宮澤胤勇

  7. 矢尾喜三郎

    矢尾委員 私は社会党を代表いたしまして、国防会議構成等に関する法律案に対しまして、反対討論をいたすものでございまして、また自由党が提案いたしました修正案に対しましても反対をするものでございます。以下その反対理由を簡単に申し述べたいと思うのであります。  わが国独立国である以上は、自衛は当然必要だということは、申し上げるまでもないのであります。しかしながらその自衛たるや、もはや日本の国におきましては、戦力によらないところに国民の大きな希望があり、再び日本の国が戦争に引きずり込まれないということを念願しておるのであります。しかるにもかかわらず、今日提案されましたる国防会議構成を見ますと、少くとも私たち吉田内閣以来積み重ねて参りましたる憲法違反の上に累積いたしましたる自衛隊、その防衛体制から、この国防会議法案が上程されておるのでございまして、あくまでも憲法を擁護するという建前から、この国防会議に対しましては、反対をしなければならないと存ずるのでございます。何の役にも立たないのであります。今日の日本国防というものはただ単に兵隊をふやす、武器を増強する、そんなことをやっても、きのうも鳩山さんが言っておられた日本最小限度防衛をする。最小限度とは何であるか、水素爆弾一発落されてしまったら、こっぱみじんにつぶされてしまうじゃありませんか。私たちはそういうことも考える。少くとも今日の日本防衛体制というものは、ここに重点を置かなければならない。また日本を守るということは、ただ単に武力によって攻めてくる外敵を守るということが、日本を守るということではない。今日の日本の一番大きな、いわゆる防衛体制を整えなければならないのは、始終口に言われる間接侵略である。自由党や保守党の人に言わせると、いわゆる戸締りのない家とか国とかいうものはないといって、戸締りを忘れた社会党などといって攻撃しておる。しかしながら戸締りを忘れるも忘れないも、もうすでに日本の国内に盗人が右からも左からも入ってきておるという現実をわれわれは忘れては、日本防衛計画というものはすることはできないのでございます。私たちはいかに日本の国が、今国防会議をこしらえて、日本の自主的な防衛体制を打ち立てるというておられますが、杉原長官みずから、あなたの良心の中には、今日の日本の国において、果してどれだけの軍備を整えることができるか、自衛体制を整えることができるかということをお考えになりますならば、ジェット機一機をこしらえるにしても、あるいはB52とかあるいはB48というような飛行機を一台こしらえるにしましても、日本の今日の財政状態としては、とうてい負担することはできないでしょう。そうするならば、今日の日本の今後進んで行く道は、自主的なるところの軍隊をこしらえて、そして日本を守っていくか、あるいは永久に日本の国はアメリカ援助のもとに、アメリカ従属国として、日本防衛体制を打ち立てるか、二つ一つを選ぶか。私たちはすべての国民生活の安定ということを中心としたところの、いわゆる方策を打ち立てるかという二つ一つを私たちは選ばなければならない状態に追い込まれておると思うのでございます。私たちはそういう意味におきまして、今日戦力中心とした、戦力基礎としたところのこの国防会議に対しましては、あくまでも反対をするのでございます。  またさらに、自由党修正案として出しましたところのこの国防会議に、民間人を加えないということに対しまして、これは今日の状態基礎といたしましても、もはや存在的な意義はないと思うのでございます。総理大臣を長とし、閣僚五人を委員として、何の国防体制を打ち立てることができましょうか。私たちはそういうことを考えますと、この国防会議をいわゆる保守の統一の段階の具に供されておるということを見のがすことができないのであります。  私たちはそういう立場におきまして、戦力基礎としたところのかかる国防会議憲法違反であるという立場において、あくまでも反対し、これを百歩譲って、この国防会議を内容的に検討いたしましても、民間人を加えないということに対しましては、断じてわれわれは首肯することはできない。将来に対するところの日本の独裁政治を許容するものであるという大きな根源を、自由党修正案において私は含んでおるということを大きく申し上げまして、この案に対しまして反対をいたす次第でございます。
  8. 宮澤胤勇

  9. 保科善四郎

    ○保科委員 私はここに日本民主党を代表いたしまして、国防会議構成等に関する法律案並び自由党修正案に賛成をいたしまして、社会党の所論に反対討論をなさんとするものであります。  元来われわれ日本という国に住んでいる以上は、国家の安全と存続とを保持することは、われわれ国民の基本的な重大使命であると存ずるのであります。これすなわち国防であって、この使命を政府行為によって、再び戦争の惨禍の起らないように達成せねばならぬと考えるのであります。しかしこの国防における平和維持の要請は、わが国はこれを憲法の前文に明記いたしておりますから、必要になったというだけではございません。もっと現実的に見まして、これは原水爆時代の脅威に立つ世界人類のすべての念願であり、責務になっておると考えるのであります。  今日まで審議して参りましたこの国防会議構成に関する法律案は、実にこの重大にして困難なる使命をいかにして達成するかということに至大の関係を持つ法案なのでありまして、日本国民の運命に重大なる影響を与えるものであると思われるのであります。これは社会党の諸君も御同感であると存ずるのであります。国防会議の必要性につきましては、世界各国、特にわが国関係の深い民主主義諸国においては、すでに構成せられておることは御承知通りであります。わが国の公正にして指導的な新聞の社説を見ましても、ほとんど一斉にその必要性を強調いたしておりまして、もはやこれはわが国の世論であると申すことができると存ずるのでございます。しかるにいまだ憲法上の疑義がありとしてこれに反対するの議論があることはまことに遺憾にたえません。それらの議論をする人々は、これを要するに、自衛隊を持つことが違憲だというところに結びつけまして国防会議違憲性を述べておるのであります。これは自衛隊国防会議との関係考え違いをして、国防会議本来の性格を曲解しておる所論と申す以外にはございません。国防会議というものは、自衛隊を持とうが持つまいが、国家が本質的に要求しておるものであります。たとえば、わが国憲法に—皆さんがこれを平和憲法だとして大いに尊重しておられる憲法に、「平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。」こういうことを書いてありまして、この場合に、一体どの国家が果してほんとうに平和を愛好して、その公正と信義とに信頼することができるかということ、これが問題になるわけでございます。しかしてそれらの諸国家とどういう関係を結び、そのほかの国々に対してはどういう立場をとるべきかということも自然に問題になるのであります。しかしてそのような国々の態度、政策はいかように変化を遂げていくか、あるいはまた国際情勢がどういうように変りつつあるか、あるいはまたその変化と動向に応じ、またこれを予測してわが国国家の安全と存続とを保持するために、いかなる手段を講ずべきか等、いろいろと根本的なことを慎重審議するのが、すなわちこの国防会議の第一の使命、任務と存ずるのであります。  国防会議の審議事項としては、国防基本方針とか、防衛計画大綱とか、防衛産業と一般産業との調整計画大綱とか、出動の可否、こういうようなものを審議することになっておりますが、ものごとの本末先後から申し上げますれば、明らかに国防基本方針というのが第一義的なのであります。たとえば、防衛出動可否を論ずるようなせっぱ詰まったような事態に、いかにして持っていかないようにするかという国防施策を考えることが、もっともっと根本的に大事なことであると信ずるのであります。ところが、わが国は日米安全保障自衛力の創設の方が先にできてしまって、国防会議がおくれて提案をされましたために、国民の一部に、国防会議自衛隊ができたから必要になったなどというような疑問を起させたことは、まことに遺憾と申さなければなりません。しかしながら国防会議の一部にすぎない自衛隊の本質に突っ込んでいただくならばかかる疑問も氷解することと存ずるのであります。  次に、自由党江崎君外七名提案の民間議員削除の修正案につきましては、政府案は内閣責任制をくずすのみならず、機密保持上欠陥ありとするにありまして、政府案の有する広く民間の識見の高い練達の士を擢用し、その知識経験を大いに善用して国防会議の内容の充実をはかるとの利点を失うこととはなりますが、これは内閣総理大臣会議運営の基本的態度いかん並びに事務局の強化、特に視野の広い優秀達識の人材を専任することによって補うことができますので、国防会議本来の第一義的使命と性格が変るとは絶対に考えられません。これで発足いたしましても私は大丈夫であると信ずるのであります。むしろこの複雑困難なる国際的情勢に対処いたしまして、いたずらに議論に時日を空費して国防会議の発足をおくらせることがより失うところが多いと信ずるのであります。  時あたかもジュネーヴの四国巨頭会談のあとを受けまして、世界情勢は再検討を要するの時期になって参っておると思います。大きな変化が来るかあるいは来ないか、それ自体が大問題でありまして、政府当局にとってはきわめて大きな課題が課せられておると考えます。私は政府がこの機微なる国際情勢に対処して、国家安全保障世界平和のためにその施策を誤まらざることを熱望するものでありまして、それがためにも総理大臣の重要なる諮問機関として、政府の要請による原案並びに自由党事務局強化を条件とした修正案に同意をいたしまして、社会党の所論に反対するものであります。  以上をもって討論を終ります。(拍手)
  10. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 これにて討論は終局いたしました。  これより採決に入ります。  まず江崎真澄君外七名提出修正案について採決いたします。本修正案を可決するに賛成の諸君の起立を求めます。
  11. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 起立多数。よって修正案は可決せられました。  次に、ただいま可決いたしました修正部分を除く原案について採決いたします。これに賛成の諸君の起立を求めます。
  12. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 起立多数。よって修正部分を除く原案は可決せられました。従って原案修正議決すべきものと決しました。  この際お諮りいたします。ただいま修正議決すべきものと決しました本案に関する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。
  13. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 御異議ないものと認め、さよう決しました。  暫時休憩いたします。     午前十一時九分休憩      ————◇—————     午前十一時二十三分開議
  14. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。
  15. 高橋禎一

    高橋(禎)委員 この際憲法調査会法案を日程に追加し、その審議を進められんことを動議として提出いたします。
  16. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 ただいま高橋提出の動議のごとく決するに御異議ありませんか。
  17. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 さよう決します。  憲法調査会法案議題とし、まず提出者より提案理由の説明を求めます。古井君。
  18. 古井喜實

    ○古井喜實君 憲法調査会法案につきまして、提案の理由とこの法律案の概略を御説明いたします。  申し上げるまでもなく、現行の日本国憲法は、昭和二十一年、すなわちわが国の主権が連合国最高司令官の制限のもとに置かれておった当時に制定されました。ことにその立案は同司令部の示唆と指導のもとに、きわめて短時日の間に立案せられましたことは、世間周知の事実であります。わが国が主権を取り戻し、国民が自由の立場に置かれました今日におきましては、日本国民の手によって自主的の憲法を得たいという声は近時ますます高くなってきております。ものでありまして、その長所はあくまでもこれを尊重し、擁護しなければならないものと信じますが、しかし、現行憲法が施行されましてから今日に至るまでの経験にかんがみますときは、わが国情に照らし検討を要すべきものが多々あることも、これまた認めなければならないところと存じます。  ここにおきまして、国民立場に立って自主的に現行の日本国憲法を全面的に検討いたしますことは、独立完成の上から申しても、きわめて緊要なことであると考え、そのためには有力なる憲法調査審議機関を設けることを必要と考え、ここにこの法律案提出した次第であります。  この法律案は、かような趣旨に基き、国会議員三十名以内、学識経験のある者二十名以内、合計五十名以内の委員をもって組織する憲法調査会を設け、これを内閣に置くことといたしております。  この調査会は、特別の諮問を待つことなく、自主的現行憲法検討を加え、関係諸問題を調査審議し、その結果を内閣及び内閣を通じて国会に報告することを所掌事務といたしております。  また、調査会には会長一名、副会長二名を置きますが、いずれも委員の互選によることとし、さらに調査会に専門委員及び幹事を置くことができることといたしております。この調査会の運営に要する経費は、すでに本院を通過したる本年度予算案に計上されております。  以上が本法律案提出理由並びに法律案の内容の概略であります。何とぞ慎重御審議の上、すみやかに御可決あらんことを切望いたします。
  19. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 本案に対する質疑は次会に譲ります。     —————————————
  20. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 次に駐留軍基地問題について調査を進めます。質疑の通告がありますので、順次これを許します。茜ケ久保君。
  21. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 調達庁長官に、今問題になっております飛行場関係、特に立川の問題を中心にお尋ねいたしたいと思うのであります。  その第一点は、七月二十一日の読売新聞、七月二十二日の朝刊三多摩版等に、東京調達局長はこういう談話を発表しているのであります。それは「本日東京地裁から地元による立ち入り禁止の仮処分が却下されたが、これにより当局の立ち入り調査についてもその合法性に疑義がないことを立証せられたわけであります」とあるが、裁判所の決定は、この仮処分申請は、行政事件訴訟特例法の規定するいわゆる執行停止の仮処分によるべきで、一般民事仮処分申請は許されないから却下するというだけのものであって、決して調達庁が立ち入り調査をすることの合法性をうたっていないのであります。従いまして、ただ単に立ち入り仮処分申請の却下が、調達庁が立ち入ることの合法性を認めた却下でなくて裁判上の手続による却下であることを、故意に東京調達局長は、いかにも調達庁の立ち入りが合法性であるかのようないわゆる誤まった、ためにする宣伝をしている、そういうことにわれわれはとらざるを得ないのでありますが、これに対しまして調達庁長官はどのような御見解をお持ちか、お示し願いたいと思うのであります。
  22. 福島慎太郎

    ○福島政府委員 調達庁の立ち入りに対する地元の仮処分申請に対しまして裁判所の決定があったわけでありますが、それの決定の仕方に関連いたしましてただいま御指摘のような御議論があるわけであります。この御議論の点は私もごもっともだと思います。ただ私どもの申しておりますのは、政府としては、立ち入りの場合には政府から立ち入りの意思を知事に通告いたしまして、知事からその公示ないし告示がある。問題となっております町長の公示という問題はあるけれども、立ち入り権が設定されたかどうかということは、知事の公示をもって足りるのである、そういう見解を持っているわけであります。これに対して、仮処分によって反対論の主張というものが要求されておるわけであります。従って、その仮処分の決定がいずれかにありました場合は、私どもとしては、仮処分の決定申請がありましても、それがあるまでは立ち入り権の行使ができるという考え方もあり得るでありましょうが、仮処分の手続が進行中であれば、これを待つべきであるということで、待っておったわけであります。それが、裁判所の方の理由は、確かに御指摘の通りでありますけれども、仮処分の裁判所における手続が、とにもかくにも却下になりまして、現在では進行しておらないということになるわけでありますから、前にさかのぼって、行政府の解釈として持っておるところの立ち入り権によって、入ってもいい事態になったという意味を申し上げたわけであります。裁判所の決定に対して合法性が認められるとかなんとかいう言葉使いについては、若干の疑義もあると思いますが、合法的に入れる立場になっておるからという意味で申し上げたのだろうと思います。私が直接申した言葉でございませんので、その辺の消息は若干あいまいでございますけれども、裁判手続が進行中に、幾ら権利が設定せられておるからといっても、あとでいかように裁判所の決定が出るかわからない時期に、その権利を行使するのは少くとも妥当でないと考えておりましたが、裁判手続が存在しなくなりましたので、入れる事態には一応なったという意味で申し上げたのであろうと思います。なおつけ加えて申し上げますならば、そういう入れる事態になったからといって、すぐに入ろうというふうな考え方を持っておるわけではないのであります。そういう裁判所の決定もあった事態であれば、なおさら説得その他の交渉に全力をあげなければならないというつもりでおるわけでございます。
  23. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 ただいま長官のお答弁によりますと、私どもの方で、提起いたしました仮処分の申請の却下が、必ずしも当局の立ち入りを裁判の結果として合法化したということにはとらぬという御答弁でありますが、新聞その他によって地元民に与える影響は非常に大きいのであります。地元民は、この裁判によって、当局がアメリカの要請による基地拡張に非常な重点を置かれていると考え、これに対する反対は強いのであります。地元の人たちは、裁判の結果がいかようにあろうとも、反対である立場は変りませんけれども、やはり一応裁判所が、自分たち反対は非合法であるという決定をされることは、今後実際に反対運動を続ける立場からも、精神的にも非常に大きな痛手だと思います。そういう際に、今長官の御答弁のように、その点が解明されて、地元民に発表されるならば、まだわれわれは了とする点もありますが、新聞に報じられた東京調達局長の談話は、そうでなくて、明らかに最初の申請の却下が、そのまま調達局長の立ち入りを合法化したということを主張しております。こういったことは、今後の運動に思わざる結果を招来する原因ともなりますので、一応この件に関しては調達庁長官の御答弁を了承いたしますから、長官として、部下である東京調達局長や、その他出先機関に対して、今後このようなことのないように、一つとくと御指示を願いたい。そして、それでなくても、当局と地元の間にいろいろないざこざの起る本件に対して、今後そういうことのないような処置をとっていただきたいと思うが、いかがでございましょうか。題は執行停止になるまではやれるという建前になります。やれるという建前になっているという意味が、合法性があることを証明されたという言葉づかいになったのであろうと思いますけれども、しかし御指摘の点私にはよくわかります。なお先ほど申し上げました通り、立ち入り権があることになったからといって、すぐさま強制立ち入りを敢行するんだという必要はないのでありまして、そういう法律上の解釈その他で少しでも政府側の立場が支持せられているというような材料があればあるほど、われわれとしては権利がかりにあったということになりましても、直ちにこれを行使するという考え方になることなく、あくまで説得の努力をさらに強化してみるべきだと考えておりますので、当分全力を上げて話し合い、交渉という面に努力してみたいと考えております。その際御指摘の点など頭に入れてお話をしたいと考えます。
  24. 中村高一

    ○中村(高)委員 関連して。長官答弁はよく意味がわかるのでありますが、東京調達局の通達を今茜ケ久保君から説明をされたのでありますが、仮処分が却下になったというので、すぐにこれに立ち入り調査権が裁判所で認められたんだというふうにすりかえて通知を出すことは、私はよろしくないと思うのであります。その通りに、仮処分が却下をされたことは明らかなことでありますから、そういうことを言うことはかまわないけれども、その仮処分の内容をすりかえて、あたかも今まで問題になったおった、たとえば町長が告示もしないで、あるいは通達もしないで、そういうことをしなくても立ち入り調査権が一切許されたんだというようなことを言わんばかりの、たぶらかすような通達を出すことは、私はよろしくないと思う。今調達庁長官はその点についてはよくわかっているような答弁でありますけれども、東京調達局から通知をされたものには、長官の言うようには書いてないんです。もうこれで一切がっさい立ち入り調査権が発生したかのような通知を時を移さず出すということは、役所の通達としてはまことにごまかしの通達だと思いますから、そういう点については明確にして堂々とやらなければ、そんなことはじきにはっきりすることでありまして、私は自分で行ってあの通達というものは事実に反する通達である、却下になったことは却下になったのだが、一切がっさい測量の権限が発生したかのように裁判所からそのようなことまで許されたようなことを通達をすることは、間違いであるということを私ははっきり言っております。なおあの判決に対しては抗告の手続も弁護士団がいたしておるのでありまして、調達庁が、訴訟手続をして確定するまでは待つというこの趣旨は、裁判手続が確定するまでは待つという趣旨でなければならないと私たちは解釈をいたしておったのでありますが、もしこの判決があった場合に抗告手続をすればそれでまた問題はさらに上級審に移されただけであって、内容が確定したことでないことは長官もお認めになると思うのであります。裁判手続をする以上はこの結果を待つという長官の御趣旨からいたしますならば、確定するまでは待つということは裁判を尊重するという建前の従来の立場とかわりがないと思うのであります。抗告をしたことによって問題の解決はさらに上級審に移ったということに事態が変更されて参りましたが、調達庁としてはこの場合どういう態度をおとりになりますか、はっきりしておいていただきたいと存じます。
  25. 福島慎太郎

    ○福島政府委員 御指摘の点の前の方でありますが、これは却下になったからといって調達庁の立ち入り権ができたというわけではないというお話のようでございましたが、これは調達庁としては、裁判以前において立ち入り権があるという考え方を、政府の解釈としてはとっておるわけでありまして、それに対して仮処分の申請があり、却下があったわけでありますから、従って立ち入り権というものはあるということに、前の状態に戻るわけであります。却下があったということによりまして、立ち入り権という問題は、抗告という事態その他もございますけれども、いささかはっきりしたということだけはいえるわけであります。なお従いまして却下があったからといって立ち入り権ができたわけではないというわけには参りませんので、立ち入り権というものの主張政府はいたしておるわけであります。それが主張し得る事態に戻っておるということで、立ち入り権は、この却下という事実によって、行使しても差しつかえない事態になったという意味でございます。言葉の足りない点がございましたならば、誤解のないようにはいたしたいと考えております。  なお将来抗告の手続その他があった場合にその裁判終結を待つか、こういうお話でございますが、第一審の決定が公権の行使であるために仮処分の対象にならないという第一審の判決でありますので、従来の私どもの仮処分の決定を待とうといっておりました初めのときとは若干事情が違っております。これがまたその第一審裁判所の指摘します通り執行停止の申請という手続をとるべきであるということになっておるわけでありますので、こういう執行停止の手続というものの処置が開始されるということになれば、裁判所のいっております通りの裁判手続が始まるということになりますと、また違うわけであります。裁判所の対象にならないといっております手続が、再び開始されるということになりますので、初めの仮処分申請がありましたときに、その決定まで待とうといった事態と若干相違いたしております。しかしながら再三申し上げております通り、当面は当分の間全力をあげて説得なり交渉に努力をするのだといっております次第もございますので、抗告手続が終了するまでするかしないかということになりますと、裁判の内容の関係で若干事態の違っておりますこともございますので、前通りだということを申し上げるには、もう少し研究さしていただきたいと思いますが、しかし実質的には申し上げました通り、多少でも政府側と申しますか、調達庁側が有利な事態に立ち至ったならば、強権発動といったような思想にこだわることなくなお説得のために努力をさらに倍加すべきだという考えでございますので、時間的には当分の間そういう努力をいたそうと考えております。抗告終了までどうするかということについて御返事はいたしかねますけれども、実質的には御返事を申し上げるのと変らないような事態に持っていきたいと考えて、努力しようと思っております。
  26. 中村高一

    ○中村(高)委員 裁判所の方では行政事件であるから行政事件の特例法に基く手続をしてこいというような判決で、民事訴訟手続によるべきものでないというので、地元の方ではさらに行政事件の特例法に基く手続で、この執行の停止を求める準備をいたして、数日中に提出をされることになっております。そうするとこれはまた新しい事態に進んでくるりでありますが、裁判所でも手続が違ったのであるから別の手続をもって、行政事件に対しては行政事件に対する手続でこいという指示があったのでありますから、裁判所の言う通り、その指示に基く手続が行われる。そうしますと、これも仮処分と同じように、裁判所が実地に審理をして判決をしてくるだろうと思うのでありますが、新しい事態が出て参りまして、行政事件に対するそういう手続が提出されたということになりましたならば、やはりその結果をお待ちになることが私たちは当然だと思いますけれども、政府の方はどういうふうにお考えになりますか。
  27. 福島慎太郎

    ○福島政府委員 裁判所の指示の通り、裁判所が行政訴訟による執行停止の手続をすべきであるという判決がありましたわけで、地元の方でその指示通りの手続が行われるということになりますれば、私どもといたしましても、これは行政訴訟上の執行停止の手続でありますので、仮処分と法律上の性格も違う点もあるだろうと思いますので、行政訴訟による執行停止の手続の性格に従いまして処置をいたしたいと思います。ただ原則的にその決定があるまで事実上の仕事を開始するかしないかというような点の明言をいたしたいのでありますけれども、なお執行停止という手続が始まりまして、一応の事態を見定めまして、たとえば執行停止の手続というものが仮処分同様、早急に結論の出るべき筋合いということにはっきりいたしました場合に、待たないということは穏やかでないと私も思います。これがまた相当手間のかかる問題であるということになって、数カ月以上要するというような問題になりました場合には、執行停止の訴訟中にはどういうことをするのが妥当であるかという問題があると思いますので、十分検討いたしました上で、妥当な処置をとりたいと考えております。
  28. 中村高一

    ○中村(高)委員 私たちも直接この問題で呼び出しを受けたりなどして行っておりますから、事実もよく知っておりますが、私たちはできるだけ合法手段の許されるものは全部やる、そうして暴力的なことなどは極力避けるということに持っていって、そうしてそのうちに何らかの打開の道が開かれることを私たちも希望しておるのでありますからして、法律の範囲内において許される住民の意思というか、異議というかそういうものに対しては、尽されるだけのものは尽さしてやるということが、私は政府の執行者としての当然やらなければならぬことだと思う。まだ残りがあるのに強行するというようなことは避けなければならない。法治国でありますから、その合法的な手段として許されるものはあらゆる手段をとらせて、その上に住民との話し合いをつけるというようなことこそ、私たちは必要なことであって、訴訟手続も入口でけられて、これは行政法上の手続をとれというのであるから、その手続もとる、合法的な手段を尽せるだけは尽そうというこの態度に対しては、政府が中途半端な態度をとってこれに挑戦的なことをやっても問題の解決はとても私たちはできないと思う。長官の御存じの通り、他の四カ所の飛行場に比べてあそこは町のまん中に滑走路が入ってくるという特殊な地帯でありまして、他の飛行場と趣きを異にいたしておることも十分に知ってもらわなければならないし、しかも東京都のような日本の最も入口の稠密しておりますところにジェット機を飛ばすとか、あるいは大型の輸送機用の飛行場を作ること自体に、私たちは無理があるということを考えて、当初の設計を変えるべきだという根本的な考えも持っておるのでありますけれども、今ここまできてそういうことができるかできないかも私たちは疑問だと思っておりますから、合法的な手段を尽せるだけ尽させるというそのくらいのことに対しては、私は政府は焦燥な気持でやっては失敗する、また不測の事態も起るというようなことに対しても、十分に考えてもらわなければならないと思っております。訴訟手続も残ることなく十分に尽させるという態度だけは私はとっていただきたいと思いますけれども、この際長官の御所見を聞いておきたいと思います。
  29. 福島慎太郎

    ○福島政府委員 どうせこういう拡張事業でありますので、地元の反対というものは当然にあるはずでございます。これがいわゆる条件闘争と申しますか、補償の額その他についての反対になり、交渉になり、あるいはかえ地あるいは転作等の問題についての反対となり、交渉となるということはその場合に反対がなくてすらすらいくというほどのんきに考えているわけではございませんので、そういう面につきましても、われわれも十分な対案を用意してかからなければ、またそういう反対に対して十分なる対案ができないようでは、これは飛行場の拡張というようなことはできないのだというふうな考えも持っておるくらいであります。そういう条件闘争になり、あるいは法廷における闘争になるというようなことは、われわれとしてはむしろそういう事態は回避すべきではないと考えております。ただ今日までの事態のように、ただ反対と申しますか、場合によりましては実力による反対というような事態は、われわれとしては考えられないという立場をとっております。地元の反対というものが実力による闘争ということに興味を持っておるという点が、法廷闘争になり、あるいは条件闘争になるということがはっきりいたして参ります場合には、十分にこれを尊重してわれわれもこれに対して法廷戦術闘争を避けるといったような態度はとるべきでないと考えております。ただ今日におきましては、実力による反対という点の色が衰えておると申しかねるものでございますから、一方において実力闘争もやり、一方において法廷闘争もやる、その場合に、法廷闘争を尊重するかということになりますと困りますので、実力闘争というものを全部お取り下げ願えば、法廷闘争で大いにやるということに全然異存はないのであります。
  30. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 法務大臣が来ておるので先に法務大臣にお伺いたします。それの調達庁の立り入り禁止の仮処分の訴訟に当りまして、法務省から国を代表して答弁書が出ております。これによりますと、国は立ち入り調査ができなくなることによって飛行場の拡張は妨げられ、そのため国内に大規模の内乱、騒擾、外国の武力侵略の生ずるおそれがある、こういうことを書いておる。これは私はまことに重大なことを法務省当局は言っておると思うのであります。この五つの飛行場拡張がいわゆる拡張不可能となった場合に、どういう関係で大規模の内乱、騒擾が起るか、あるいはまた外国の武力侵略のおそれがあるか、法務大臣の責任ある御答弁を私は伺っておきたいと思います。とんでもない話だ。はっきり答弁されたい。
  31. 花村四郎

    ○花村国務大臣 私は実はまだその答弁書をよく拝見しておりません。(「怠慢だ」と呼ぶ者あり)大体これは法務大臣の名前になっておりますが、法務大臣が直接関係してやることはないのです。あなたは実際上の手続関係をお知りにならぬから、この書面を見てまっ正面に受け取られると思うのですが、いつのときでも法務大臣が国家を代表して当事者にはなるのだが、実際は法務大臣そのものが関係していることはいまだかつてないと申し上げていいと思う。でありますから、従ってこの案件も今までの例にならってきております。従って私がこの争訟事件に直接関係しているのでないからただいま事実通りに申し上げたわけでありますから、従って大して御立腹になる筋のものではないと思います。そこで、そういう答弁書が出ておるようでありますが、これは見方によることでありまして、あなた方の方からいえば、そういう事実は絶対にないと見られるでしょうが、しかし法務当局として細心の注意を持ってその推移をながめる場合には、やはりこういうことも一応考えられると申し上げてよろしいと思う。
  32. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 私は法務大臣の答弁はまことに重大だと思う。五つの飛行場の拡張が妨げられた場合に、ただ単にそういうことが考えられるというだけで、大規模の内乱や騒擾あるいは外国の武力侵略があるということが言えるかどうか。私どもはこれはただ単なる見解の相違じゃないと思う。こういうことを国の責件者が公文書で答弁書を出しておいて、ただ単に見解の相違だということで逃げるべきものでないと私は思う。とんでもないことでありまして、私はことによっては法務大臣の重大な責任問題だと思う。あなたがこれを直接御承知になっておろうとおらなかろうと、法務大臣という一つの資格においてなさった裁判所の答弁書であります。その中に、こともあろうにただ単に立川の飛行場拡張ができなかった場合には——しかもそれが大規模とわざわざ書いてある、大規模の内乱、騒擾または外国の武力侵略の生ずるおそれがあるということを書いている。私の今の法務大臣の答弁では絶対承服できません。どこに、どういう関係で内乱が起る危険があるか、あるいはまたどこがこの飛行場の拡張に反対した場合に、どこの外国が武力侵略する危険があるか、はっきりお示しを願いたい。
  33. 花村四郎

    ○花村国務大臣 とかくこういう問題に対しましては、あなた方も御承知でしょうが、共産党が相当内部に入りまして、そして撹乱工作をやっていることは争われざる事実なんです。こういう点をあなた方はどう見られるか。見ようによってはやはりこういう重大なことの起り得ることを予想して、それに対する万全の処置を講じていかなければならぬというような気構えをすることが一体どうして悪いか。共産党でもおどっておらぬとするならば別ですが、御承知のごとく、破防法の対象は共産党になっておるのですから、従ってそういう破壊活動の対象になっている団体の党員がこういう争いの中に入っております場合には、やはり相当の今までの例にかんがみましても、(「憲法違反だ」と呼ぶ者あり)やはり注意をしなければならぬ。こういう建前に出発をいたしまして、そうしてこういう言葉を使ったと思うのであります。しかしこの書面によりますと、武力攻撃に対する安全を保持するに支障を来たすおそれなしとしない、こういう文句になっておりますから、そう何もこういう文字を直ちに取り上げて、そうしてその重大性を持たせる必要はなかろうと私は思います。
  34. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 今の共産党問題は別にやるとして、法務大臣、そうしかく簡単にこんなことを一笑に付すべきじゃないと思うのです。皆さん方は、だれか、いわゆるあなた方と対照的な立場の者が何か言うと、非常に事重大にお考えになっている。今も、たとえば共産党に対して何か重大なことをおっしゃいましたが、あなた方に対照的な立場にある者のことに対してはまことに事重大であるかのような言葉をお使いになって、自分の方でこういうことをやっておるとこれは問題にすべきではないということをおっしゃる。これはまことに身勝手と思うのです。私どもが何か別の意味においてこれに類するようなことをかりにやったとすれば、あなた方はそれこそ得たり賢しと一般的にえらい扇動をなさる。これが通例です。自分で言ったことについては、こんなことは問題でないとおっしゃるが、私は字句だけじゃないと思うのですよ。言葉じりじゃないのですよ。これに対して私は、ここで法務大臣がそのような逃げ言葉をおっしゃるならば、また別の機会にどうしてもこれは問題にしなければならぬと思う。これもただ単なる何か私文書的な御通知ならいざ知らず、裁判所へお出しになる、国を代表しての答弁書という形式においては、やはり許せないと思うのであります。  さらにただいま破防法の例を引いて共産党に対して——私はこれは共産党のいい悪いは別として、共産党というものは合法政党としてあなたの方でもちゃんとお認めになっている。その共産党の活動に対して、破防法は共産党を何か目的としてお作りになっているということをおっしゃいましたが、共産党をもしその国に存続することのできない政党とお認めになるならば、これは当然非合法にすべきであって、合法的に認めておきながら、いわゆる破防法その他の法律で合法政党をいかにも取り締るあるいはこれを撲滅するような御言辞がありましたが、これは私は一共産党だけではないと思うのであります。いわゆるあなた方の立場と相異なった政党ないしは政党の活動に対しては、今後も破防法によってこれを対象としておやりになる意思があるようにお伺いしますが、この点を一つ法務大臣、責任ある御答弁をここでお願いしておきたいと思います。
  35. 花村四郎

    ○花村国務大臣 共産党のみを対象にして破防法ができておるという意味ではありません。破防法の対象として、そのうちに共産党もその対象の一つになっておる、こういう意味でありまして、なっておるからというて非合法にしなければならぬという理屈は私は少くとも出てこぬ、こう申し上げてよろしいと思います。  それからこの書面は答弁書であるからして、なるほど考えようによってはどうも裁判所に出す答弁書は、これはなかなか重要なものだ、こう見られることも一つの見方でしょうが(「何でも逃げるな」と呼ぶ者あり)しかし訴訟事件の事実の真相あるいはその争いにかかる事実を究明するというような意味のもとに出される答弁書を、何もそう大きく特に取り上げて扱われなくてもいいと私は思うのですよ。今日まで裁判の上で答弁書も幾ら出ておるかわかりませんが、その答弁書を少くとも国会に引き出して、そうして国会の問題にするというような事例は私はいまだかつて聞いたこともないし、見たこともないのですから、まあ重く見られることもこれはけっこうでもあるし、重く見られることもこれは間違った見方じゃありませんが、そう何もこれを取り立てて言わなくてもいいじゃないか、こう私は考えます。
  36. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 法務大臣は大へん御自分勝手な御答弁をなさっていらっしゃいますが、これを今私が問題にいたしますのは、法務大臣も御承知のように、立川初め五つの飛行場の拡張によって多くの農民や付近の住民が生活権を奪われ、ひどいところになるとほとんど生存権さえ奪われるような実態があるのであります。そういった実態を無視して、国はアメリカの要請によって飛行場を拡張しようとしておる。そこでいわゆる生活権あるいは生存権までも脅かされる住民は、まことに重大な関頭に立たされて懸命な反対を続けております。そうして、自分の生存権を主張する一つのよりどころとして裁判ざたに持っていったのであります。そういう内容を持っておる裁判に際して、国の代表者である法務省がこういう内容を盛り込んだ答弁書を出すということは、私は穏当でないと思うのであります。そこに私は問題があると思う。これはただ単なるそういう言葉が羅列されておるならまだ了解しましょうけれども、今申し上げましたような内容を含んでおる裁判に際して、このような字句をお使いになり、いかにもそこらで反対をしておる諸君が国の内乱、騒擾を起す原因を作ったり、あるいは外国の武力侵略を起させるようなそういう原因を作るような印象を与えて、私に言わせれば、これは法務大臣が善良なる国民をある大きな威圧をもって脅迫しておるのじゃないかと思うほどのショックを、私は受けたのであります。花村法務大臣はなかなかにこにこしたいい顔つきをしていらっしゃるが、しんはなかなか容易ならぬと思う。全く善良な国民を陰でドスを突きつけておどしておるような感じを受けましたので、問題にしておるのでありますが、私は、法務大臣が今のようにしごくあっさりとお片づけになる以上は、私の追及は絶対にやめることはできません。暑いですから夜になった方が早く審議がしやすいが、私はどこまでも追及しなくちゃならない。もう少し誠意のある御答弁をなさる御意思があったら、そうした関係住民の実態を考慮に入れて、私はこの問題に対する責任のある御答弁がいただきたい、こう思うのであります。
  37. 花村四郎

    ○花村国務大臣 住民のために、あらゆる熱意を傾倒されてお骨折りを願っておりまする茜ケ久保委員の御心情に対しては深く敬意を表する一人でございまして、住民の生活苦を思われるその心情は私もあながち変っておるというわけではございません。よくわかるのでありますけれども、しかしまた反面において国家の重大なる事柄であり、少くとも国家公益に関する事案であることに思いをいたしますときに、これまた住民の生活のみにこだわっておることもできませんので、従ってそこにはやはり相いれざる面が出て参りまして、まことにどうも遺憾であるとは存じますが、茜ケ久保委員の御真情のあるところは十分に考慮をいたしまして、そうして善処をすることにやぶさかならざるものでございます。
  38. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 だいぶん前とは違った御答弁でございますが、少し茜ケ久保委員もおほめにあずかって恐縮でございます。  そこで法務大臣に最後に申し上げますが、いろいろ法務省の立場や大臣のお考え等もございましょうけれども、公文書の中にこのような国を代表して使う言葉としては、いわゆる一部の内乱、騒擾、外国の武力侵略という言葉を使ったことは穏当でないから、以後注意するくらいの誠意ある御発言があってしかるべきと思うが、この点いかがでございましょうか。
  39. 青木義人

    ○青木説明員 法務省の訟務局の担当者として答弁書を記載しました気持を御説明申し上げまして、御了承願いたいと思います。  この答弁書の記載の仕方は、若干言葉が足りない面があったかと思いますが、私たちこの答弁書を記載する際の気持は、具体的にこの土地について提供できなければ直ちにこういう結果が招来する、こういう意味で具体的に申しているつもりはないので、ここに安全保障条約第一条を参照と書いてありますように、駐留軍の駐留並びにその駐留軍のために使用さす土地の提供を、一般的に安全保障条約の第一条に記載されてございますその目的をここに取り出しまして——その通りの文句でありますが、それをここに引き出しまして、提供がなければ安全保障条約の履行ができない場合も出てくるのじゃないか、こういうふうに抽象的に記載したつもりなのでございます。具体的にこの土地について提供できなければすぐこの結果が招来する、こういうつもりではなかったのであります。その点若干言葉が足りなかったかと思いますが、私たちこの答弁書を作成いたした者といたしまして、さような気持でこれを作ったのでございますから御了承を願います。
  40. 花村四郎

    ○花村国務大臣 茜ケ久保委員の御説もまたあながち御無理であるとは私申しませんが、しかしこういう文句を答弁書に使わなければならなかったというのでもありませんし、使ったからといってこの答弁書の価値が著しく上るというのでもありませんし、またこういう文句を使ったことによって裁判所の心証がよくなるというのでもありませんから、あえてこういう言葉を使う必要もないと思います。私は率直に申し上げればそう言っていいと思います。でありますから、こういう少くとも、波紋というほどにもいきませんけれども、反対意見の出るような文句を使う必要もない、また使わなければならぬというのでもありませんから、今後はこの字句の使いようについても、なるべくそういう反対意見を聞かぬような文句を使うということが適当であろうと思いますので、さような見地に立って善処をいたしていきたいと存じます。
  41. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 大分法務大臣苦しい御答弁でありましたが、大体この辺で了承いたします。今後このようなことのないように、どうぞ一つ御留意を願いたいと存じます。  続いて調達庁長官に御質問をいたします。花村法務大臣の御答弁をお聞きになったかと思いますが、どうもお役所というものは書いたあとで御弁明なさるのが常であって、少し勝手な字句の使い方をなさることが多いと思うのであります。それで東京調達局長が立川の関係者に配付されました文書の中に、こういう文句を使っていらっしゃる。一々字句のことを言うようでありますが、問題がこのように大分緊迫して参りますと、思わぬ事態を招来する原因ともなりますので、やはり私どもはこれを問題にせざるを得ないのでありますが、こういう言葉を使っていらっしゃる。一部に反対のための反対をしている人々がいて、各自の御意見がゆがめられたり、圧迫されたりしていることもあるやに聞いております、こういうことを言っていらっしゃる。私どもに言わせると、ほとんど大部分が反対であって、一部特殊な業者の諸君あるいは土地ブローカー的な諸君が調達庁のお言いつけを聞いておる。これは私そう確信しておる。しかも行政の長である町長並びに議会が全員一致で反対を決議しておる。いつか長官は、地元の意見というものは、市長あるいは町長、知事等の意見をもってそれが地元の意見の代表だという御答弁をなさっておられる。これははっきりおっしゃっておる。その長が、地元の意思を反映する、あるいは最も重要に考えておる町長さんがあのような反対を続けていらっしゃる。しかも町議会も満場一致反対決議をしておる、町をあげて反対しておるものに対して、一部の者のためにする反対だ、そうして大部分の者をゆがめた方向へ持っていっているかのような印象を与える字句を使っていらっしゃる。花村法務大臣の御答弁によると、これもあるいは大したことではないとおっしゃるかもしれませんが、この東京調達局長のこういった公文書というものは、この立川の緊迫した状態から見ては決してゆるがせにできないと思うのでありますが、長官といたしましては、この東京調達局長の公文書の通り、立川の反対はほんとうに一部の者の反対のための反対であるとお考えか、あるいは全町こぞっての反対とお考えになるか、一つ率直なる御答弁をお願いしたい。
  42. 福島慎太郎

    ○福島政府委員 その東京調達局長の文書なるものは、実を申し上げますと、まだ見ておりませんので、よく調べましてからまたお答えすることにいたしますが、御指摘のありました砂川町その他については一部の反対であるか、全町をあげての反対であるかというお話でございますが、これは飛行場の拡張といったような問題を持ち出しましたときに、喜んで歓迎してくれるということは、私ども経験がございませんし、反対があるのは当り前だということ、これは私も再三申し上げておるくらいでありまして、反対はおそらく関係者すべて反対であろうと思っておるのであります。一部だけの反対だとは思っておりません。ただその反対の方法につきまして、われわれの考えておりましたような道路上の立ち入りとかいう場合に、これを実力で阻止するというようなことになりますと、場合によっては、実力をもって、適法性を欠くような方法をもって反対するということになりますので、そういう方法をとってでも反対をするということに全部の人の意見が固まっておるのだということであれば、前申し上げましたように法廷における争いというものもあり得るわけです。また条件上の争いということもあるわけです。私どもも飛行場が日本存在する必要がないという性質の反対に対しては、これは負けるわけには参らないという立場をとっておりますが、条件上の闘争で私どもが満足できるような対案が出せなければ、これは負けることもあり得るという考え方はたびたび申し上げておるわけでありますが、そういう意味において反対ということが、われわれが話し合いになれる方法で反対になってこられる限りにおいては、われわれとしても十分にこれに対処して交渉もしてみよう、そういう問題を解決できなければ、われわれの方の主張が通らないということもあり得るというふうに考えておるくらいであります。従って反対はほとんどすべての人でありましょう。しかしながらそのすべての人の反対というものが、ちょっと言葉がどぎつくて恐縮ですけれども、場合によっては違法性のある反対行動をとってでも反対するんだということに全部がまとまっているかどうかということになりますと、若干疑問じゃないか、これは全部じゃなかろうと私は思わざるを得ない。ほかに争いの方法があれば別であります。従いまして今日まで行われたような反対の方式というものが全部の人の賛成を得てやっておるかどうかということになりますれば、私自身も、反対はあるであろうが、違法性のある方式をとってでもあくまでやるんだという反対の方式というものを全部が全部考えているわけではあるまいという考えを持っていると申し上げざるを得ない。しかしながら申し上げました通り、これが条件上の交渉になり、あるいはその他の適法な交渉、それの反対がいかように強くてもこんちくしょうという態度はとりたくないと考えております。
  43. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 福島長官答弁はどうも回りくどいところへもってきて焦点をぼかす可能性が多分にあるのであります。今の答弁もその通りで、私が聞いておるのは方法ではございません。方法のいかんは別として、地元町民の反対というものは、河崎東京調達局長が指摘しているように一部の反対であるか、あるいはほとんど全町をあげての反対であるか、私はその反対の方法を論じてはおりません。基本的な問題なんです。今聞いておると、長官はそれを何かぼかしておいて方法論でごまかそうとなさるのかどうか知りませんが、方法論に重点を置いていらっしゃる。私は方法論を言っておりません。砂川町の反対というものは、あの基地拡張に対して一部の反対とお考えか、全面的な反対とお考えか、この点を二、三の言葉で率直に御表明願いたいと思います。
  44. 福島慎太郎

    ○福島政府委員 河崎局長の文書を私は読んでおりません。しかし河崎局長の申しておりますことも、砂川町の今日までの反対活動というものはという、全部の人の反対ではないというふうに言っておるのだと思います。抽象的に、反対というものはということを申しておるのではなくて、河崎局長といえども、今日まで行われてきた反対運動というものはということであります。従いまして、その限りにおきましては、私どもも実質的に飛行場を広げられて田畑を取り上げられてはかなわぬという意味において、反対というものはすべての関係者にあるであろう、その意味におきましては全町をあげて反対であるということは了承いたします。しかしながら今日までとられた反対運動あるいは反対方法というものは、河崎局長も取り上げておりますように、一人残らずの賛成を得てやったものかどうか、その点は私も疑問だと思う、こう申し上げたつもりであります。
  45. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員長 官の御答弁はどうしてもつけ足りがつかないと終らぬようでありまして、私はそのあとのことは聞いておらぬのであります。これはいずれまたあとで問題にいたしますが、そうしますと長官もおっしゃるように、砂川町民はほとんどあげて反対であるということになりますと、いかように御弁解なさろうとも、私は、河崎東京調達局長のおとりになった処置というものは穏当でないと思うのであります。たとい方法論についてお触れになったとしても、いかにも一部の者が反対をするがためにやっておるのであって、お前さん方は自分の意見をゆがめられたりあるいは圧迫を受けてやむなく反対をしておるのだというような——これは方法論ではありませんよ。明らかにそうとれることをお示しになるのは私は非常に遺憾だと思う。これまた福島長官は、今後もおそらくこういう折には何とか御弁解をなさろうと思うが、いかに弁解をなさっても、あるいは最後にこれがどうなるかは別として、私どもはあくまで反対であります。反対でありますけれども、その反対理由も、問題をいろいろな点に転換しないようなことをやっていきたいと思う。その意味において、こういった文書等によってこの運動のあり方がゆがめられるような結果になっては困るから申し上げるのであって、その点においてあなたのいわゆる優秀な出先機関である東京調達局長に対しては、今後そういうことのないように一つ十分な御処置を願いたいと思うのでありますが、それもやはりまた御弁解なさっておぼかしになるか、あるいは局長に対して今後の取扱いに慎重の上にも慎重を期するような処置をやっていただけるかどうか、それを一言お伺いしたいと思います。
  46. 福島慎太郎

    ○福島政府委員 先ほど申し上げました通り河崎局長の文書というのは、実は私読んでいないのでいささか僭越でもありましょうが、どういうふうに読みましても、今日までの反対運動というものはという意味に書いてありますことは間違いないと私は思います。しかしながら慎重にやれとおっしゃる御意図はよくわかります。今後ともできるだけ慎重にやって参りたいと思います。ただ、これはつけ加えるようでどうも恐縮でありますが、私どもはいかような反対がありましても、その反対が、日本防衛は必要ない、飛行機は必要ない、飛行機は一台も飛ぶ必要はない、従って拡張は要らないという反対でありましたならば、これはいかような御反対がありましても、私どもの立場としては争わざるを得ない。しかしながら、生活上の問題になるではないか、取り上げられた田畑はどうなるか、立ちのき先はどうなるか、補償額はどうなるかというようなことに対しては、これはわれわれにその対案がなければ頭を下げざるを得ないという観念を持っておりますことを重ねて申し上げておきます。
  47. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 七月二十日の各新聞に、福島長官の談話として次のようなことが掲載されておりました。立川が拡張されれば羽田を返還する、さらに五飛行場が拡張できれば三十幾つかの飛行場を返還する、こういうことが発表になっております。これは一つのいわゆる利益誘導の形があるのでありますが、これは今やこの五飛行場の拡張問題が、ただ単に五飛行場の関係者だけでなくて何かしら全国的な反対機運の醸成に一つの大きな役割をするわけです。そこで福島長官のこの新聞発表というものは、いわゆる立川が拡張できれば羽田空港を返してやる、またあと四つの飛行場も同時に拡張できれば、日本の三十幾つの飛行場を返すという意味のことをおっしゃって、いかにも全国的な責任において五つの飛行場を拡張させるような内容を含んでおると思うのであります。従ってこれは非常に重大なことと思いますが、このことは、そういった意図があるかないかは別として、ただ単に調達庁長官としてのお考えであるか、あるいはアメリカ当局からはっきりそういった意思表示があってやったものか、この点をお伺いしたいと思います。
  48. 福島慎太郎

    ○福島政府委員 立川の拡張が完了すれば羽田が返ってくる、純然たる民間国際飛行場になるということは、アメリカ側との話し合いは済んでおります。従ってアメリカ側との話し合いも確定しておるわけであります。その他の飛行場につきましては、もう少し拡張問題の事態が進展いたしませんと具体的には固まらないと思いますが、抽象的にはそういう面の話し合いをすでに始めております。なおアメリカ側が承諾するかしないかということは、話し合いを始めておるという限度におきましては固まっておらないという御指摘もあるいはあるかとも思いますが、しかし飛べなくなってしまう飛行場を、そうむやみにいつまでも費用をかけて確保しておくとは考えられませんし、また日本政府立場としても飛行場として提供してある土地であります。これが滑走路が短かくて使えなくなってしまう、飛行機が一台も飛べないという事態になった暁には返せというのは当然でありまして、その他の飛行場の問題は部分的には——羽田その他の話し合いは済んでおります。その他の三十ばかりの飛行場については済んでいないのが多いわけでありますけれども、これは申し上げておりますような方向で片づくべき筋合いのものと考えております。  なお、立川の問題に関連して、そういう全国的な問題を取り上げるのは利益の誘導であるというお話であります。これは利益の誘導ではないので、事実の指摘であるわけであります。
  49. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 このことに関連しまして警察庁長官にお伺いしたいのでありますが、私は今までも何べんお聞きしてもいつもその場限りといっては語弊があるかもしれませんが、適当な御答弁で、私どもの立場からいうとごまかしていらっしゃるのですが、きょう私が問題にしておりますのは、立川の問題が相当尖鋭化して参りまして、今の長官の御答弁で伺いますと、そう急に強硬な態度に出るということはないようでございますが、しかし、といいましてもやはり結論的には強行する御意思のようであります。となりますと、立川の問題はそう簡単に参りませんので、どの点が実力抗争となるか、どういう点が合法闘争となるか、これはなかなかむずかしい問題でありますけれども、相当大衆動員のされる事態は予測されるべきではないか。そのうちこれがどのような具体的な事実になって現われるかは別として、相当の大衆動員がなされまして、当局と緊迫した状態があり得ることは考えられます。私の経験からもそうでありますが、そういうときに際して地元の警察署長さんが何か先般地元新聞に、今までは黙っておったが、今後一つ相当厳重な警戒態勢を取って、事あらばおっとり刀でかけつけて地元住民をふんづかまえてもやむを得ぬような発表をなさっておるのであります。これは地元の治安を担当される署長さんとしては、あるいはこれは正直に言ってやむを得ぬこともわかりませんが、先ほど来たびたび私が繰り返して申し上げておりますように、事は非常に重大な地元民との関係でありまして、たとい幾人か大衆動員がなされましても、調達庁長官さん初め当局に対して危害を与えたり、あるいは測量が実際できるかできぬか、そこのところの判断はむずかしいのでありますが、実力でぶちこわしたりあるいはけがをさせたりしたり、あるいはまた本気でやろうとなさればできるような状態でも、福島長官はどうお考えかしらぬが、どっちかというと調達庁のお役人さんも、役人としてやむなく仕事はなさっていらっしゃるが、基地の拡張には反対だろうと思うのです。そうしますと、自分のやっていることに絶対の自信がありませんから、できればやりたくないが、仕事の上でやらなければいかぬというので大衆が来てわあっとなると、それをいいことにして自分の仕事である測量をみずから放擲されるようなことはないとも限らぬと思うのであります。こういったことまでも大衆動員の結果の実力抗争と見て、警察当局で厳重な取締りというよりも、力によってこれを圧迫するようなことをされますと、まことに迷惑するのでありまして、この点は非常にむずかしい点ではございますが、長官も新しくおなりになって、新聞を見ると民主的警察の具現を身をもってなさんというようなことが載っておりましたが、まことにけっこうであります。そうした意味においてこれは要望ということになるかもしれませんが、一つ今後立川だけではなくて、全国的におそらくほうはいとして起るであろう基地問題に対しまして、できる限り地元民の要望等も御研究いただきまして、どうか一つ一方的な処置をなされぬように、適正な御処置を私は心から要望してやまぬのであります。私は決して立川の現地の署長さんの新聞発表を種にして本日は文句を言おうと思ったのではございません。しかしこういったこともあらかじめ御考慮願っておそらく相当緊迫するであろう今後の事態に、ほんとうに民主警察としてのその姿のままの態度をおとり願いたいと思うのでありますが、ここで一つ長官のこういうことに対する御所見を承わっておきたいと思います。
  50. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 この基地問題に関しまして、地元の住民の方々が強い反対態度をとっておられることは、私ども警察の立場からいたしましても、これはまことにもっともなことであると考えておるのであります。従いまして警察といたしましては反対運動そのものに対して干渉したり介入したりというようなことは厳に慎しんでおります。ただ反対運動が行き過ぎましていわゆる不法事案を発生するということになりますならば、いかに切実な地元民の要望の熱するあまりと申しましても、治安維持の立場にある警察といたしましては、これを黙認するわけには参らないというふうに考えておるのであります。新聞にただいまお話のありましたような記事が最近出たということでございますが、ちょうど例の仮処分申請が却下になりました当時、私も新聞で、この機会に警察は従来と違って今後この問題に対しては断固たる態度をもって臨むぞというような記事が出ておるのを見まして、果して警察関係の者が新聞にしゃべったのかどうかということを実は私自身確かめてみたような次第であります。警察といたしましてはあれを契機として従来と何ら変ることなく、先ほど申しました通り、この問題に対しましては、反対運動そのものに対しましてはあくまで冷静な態度、不介入、不干渉という態度を堅持したいと思うのであります。ただ実際問題といたしまして、反対運動が行き過ぎのあまりいわゆる不法事案を発生するという事態になりますならば、これは治安維持の任務を担当する警察といたしまして放任するわけに参らない、取締りに当らなければならぬ、こういう態度は仮処分の却下になった前とあとと何ら違いはないのでありまして、それを契機に警察が特に取締り態度を強行にしたというようなことは何らないという点を御了承いただきたいと存じております。  なお私ども希望といたしましては、この問題はできるだけ当事者間におきまして円満平穏裡に話を進めていただきまして、問題が平和裡に解決することを心から念願をいたしておるのであります。警察が実力行使をしなければならぬというようなことはまことに不幸なことであります。絶対そうすることなく、事がスムーズに解決されることを心から念願をいたしております。
  51. 茜ケ久保重光

    ○茜ケ久保委員 最後にもう一点伺って同僚に渡します。長官は円満に話をするということでありますから、けっこうであります。できるだけ慎重な態度で話をしていただきたいと思う。しかし現在の態度は、話がつかぬ場合には最後の伝家の宝刀を抜こうということでやはり腰に一本差さっておるのです。それではやはりいかぬと思うのです。これはおそらく長官がほんとうにあの飛行場が拡張できなければ日本防衛なり自衛ができない、これは八千万民族の将来の存亡にかかるのだという確信がありますならば、これは当然関係者を説得できると思うのです。私が先般国民を見殺しにしてもアメリカの要請を受け入れるかと聞いたら、あなたはアメリカの要請ではないとおっしゃった、これは苦しい答弁だと私は思う、その気持はわかるが、アメリカの要請でこの飛行場が日本を守るという言葉を使っていましたが、実際においてはアメリカの前進基地としての飛行場だと私は思う。これは福島さんが何と弁解なさってもこれは具体的な事実が証明しておる国防会議法案審査や防衛三法の審査、そういうことをずっと続けて参りますと、いわゆる日本におけるアメリカの軍事基地というものがどんなものか、これはもうはっきりおっしゃらないでも、大体全貌がわかってくるのであります。そこに私はやはり長官としても、国としても非常に苦しいものがあると思うのであります。先ほどのように、ほんとうにこれこそが日本を守る全国民の最低のものであるということであれば、国民も納得するであろうと、たとい農民も自分の土地を失なってもがまんができる面が出てこなくちゃならぬと思う。にもかかわらず、このような反対が続けられ、また今後もますます盛んになっていくということは、やはりこれは福島長官の腹の底にもこれだけの自信がないのだと思う。従いまして、私は一つ絶対に土地収用法等を発動してアメリカの飛行場拡張に、日本の善良な農民や国民の血を流したり、あるいは生存権を剥奪するということをなさらないで、あなた方があくまでもそういう自信を持っていらっしゃるなら、その自信と確信に立脚して、どこまでも説得してやっていくという態度を堅持してもらいたい。どうしても皆さんが説得できない場合には、これは説得されない当事者が悪いのではなくて、皆さん方にその能力がないということだと思う。実際上この問題は、法務大臣の指摘するように安保条約違反であり、一福島長官責任をとっておやめになるくらいは非常にやすいと思う。そのくらいの腹と確信を持ってやらなければこの問題は解決いたしません。私どもは今申しますように絶対にこんな問題で農民を泣かしたり、あるいは農民を死の渕に追い込むようなことは反対でありますから、私どもは残念ながらやはり対策を講じなければならぬと思うのであります。どうかくどくは申し上げませんが、福島長官日本人としての民族的良心立場から、この五つの飛行場の問題だけでなくて、あらゆる日本内地にあるこの基地問題に対して、今言った立場信念を持って御対処願いたい。そうして絶対に土地収用法のごときものをおやりにならないで、もしどんなに努力しても納得がいかぬという場合には、納得しない農民や関係者が悪いのではなくて、政府のやること自身、あなた方がなさること自身がやはり民族的良心にかけて間違っておるのだという御反省のもとに、良識ある善処をなさっていただきたいと思うが、これに対する長官の、これこそ日本民族的な良心にかけての御答弁をお願いしたいと思います。
  52. 福島慎太郎

    ○福島政府委員 鳩山内閣の進退の問題は御答弁申し上げませんが、私の進退の問題は、私としてはこれについて最善の処置をとりたい。できなければ進退を決してもいいと考えております。なおでき得る限り説得をして、説得ができなければこちらが悪いのだと考えてやめろというお話でありますが、さようにも考えております。と申しますのは、先ほども申しました通り、争いと申しますか、抗争というものは、取り上げられた後をどうしてくれる、生存の方法をどうしてくれる、移転先の問題がめどがついておらないのではないかという実質的な反対に対しましては、われわれとしては支障のない解決案を提示しなければならぬと考えております。政府側として、そういう点について農民もしくは住民の反対があるのは当りまえでありますから、出てきました反対に対して、われわれが満足な答案を書けないようなことでは説得能力がないか、あるいは事態そのものがそういう説得の土台がないものであるということは認めなければならぬ。ただ現在の反対のように—そう申すと若干極端になりますので御異論があろうかと思いますが、日本には防衛努力は要らない、飛行場は要らない、飛行機は一台も飛ばなくても差しつかえないということで、だから立川飛行場は拡張反対であるということになりますと、これはわれわれとしては、幾ら説得しても、向うがその立場をとり続けるということにかりになりましても、このような説得ができないからといって負けたという立場はとれない。この面においての争いであるならば、収用法の措置その他も考えなければならないと思います。しかし先ほど申しました生存権の問題、事実上の対案はどうできるかいう性質の反対になる場合には、われわれの方で負ける場合があり得ると考えられます。現在の立川問題に関する交渉は、何が何でも話はしないと町長さんのお話もありますので、そこまでいかない事態においては、私も私の責任においてあくまでがんばるが、事と次第によっては収用法も考えなければならぬという態度をとっていくということになる。お話の趣旨はよくわかります。同時にまたお話のございましたような趣旨で、地元の人にもお話をしていきたいと思います。茜ケ久保さんから私に対してお示しのありましたことは私も服膺したいと思います。しかし同時に私にお話し下さいましたことと同じようなことを地元の方にもお話しおきを願いたい。
  53. 辻政信

    ○辻委員長 代理石井長官はよそへ出なければならぬそうでありますが、まだございますか。——櫻井君。
  54. 櫻井奎夫

    櫻井委員 警察庁長官が時間の関係で帰られるそうですから、私は新潟飛行場拡張の具体的な問題について福島長官にお聞きしたいのですが、その前に警察庁長官にお尋ねしたい。去る六月三日の内閣委員会におきまして、前の齋藤警察庁長官に、こういう基地問題についての一般的な警察の態度ということについて御答弁をいただいております。それは御承知通り、今基地問題をめぐって非常に両者の間に危険な対立の状況が各地に見られるわけでありますけれども、その際地方の警察がやはりそういう反対人たちの動向を盛んに探っている。これは前の齋藤長官の話だと、地元のそういう人と警察が連絡を密にしてそういう人たちの意向を承わることは何ら差しつかえないというようなことを言っておられますが、それはあくまでも表面的な理由であって、実は名前も告げない警察官がいろいろな形で、形を変えまして盛んにそういう基地の周辺に出没しているという事実がある。齋藤長官のやめた直後においてもまだ絶えないわけです。そういうことは地元の警察が自主的にやっておるのか、あるいは警察庁長官がそういうことを知っておられるのかどうか、もう一度これを確認をいたしたい。
  55. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 前長官がどういうふうにお答えになりましたか、具体的な詳しいことは私存じておりませんが、方針といたしましては前長官当時と私になりましてから何ら変らないと思います。警察の態度は先ほど茜ケ久保委員にお答えしたと同様でありますので、省略させていただきますが、基地反対運動そのものに対しまして警察は不介入、不干渉という態度は堅持をいたしているつもりであります。反対運動について、ある特定の人について、特に反対運動の中心になっておるような人について、これを調査するといったようなことは、私どもの方から何ら指示をいたしておりません。またそういうことをすべきものではないと考えておるのであります。
  56. 櫻井奎夫

    櫻井委員 長官態度はよくわかりましたが、しからば具体的に新潟の場合は、基地のすぐ周辺に新潟大学の農学部というのがある。これは基地が非常に近いために授業にも差しつかえますし、事実上実験もできないという状況です。そこで学生はこぞってこれに反対しておるわけですが、そういう学生の身元を調査したり、あるいは思想調査しておる事実があるわけです。しかしそれは長官はあなたの方針でないとおっしゃいますから、長官の言を信頼いたしますが、今後かりにもそのような具体的な事実が事実としてあった場合には、これは明らかに長官の方針と違うのであるから、あなたは長官として適当な御処置をなさる決意があるかどうか、そのことを一点お伺いしておきます。
  57. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 先ほどお答えいたしました通り反対運動をしておるある特定の人をとらえて、その人のいわゆる思想調査をするとか、どういう理由に基き反対をしているかといったようなことを調べるというようなことは差し控えるべきで、それは行き過ぎであると私は考えておるのであります。ただこうした問題の適正な解決のために、警察といたしまして、こうした反対運動の動向に絶えず全般的な注意を払っておるということは、これは警察の治安維持の任務に当る立場として、将来それが不幸にして不法事案を発生するような事態に発展していきはしないかどうかという見地から、これを大きくながめておるということはお認めいただきたいと思うのであります。そういう全般の動向を知るための一つの方法といたしまして、この反対運動と申しますか、そういった基地問題の全般をよく周知しておられる方に、全体の実情がどういうふうになっておるかということをお聞きをする。そしてそれをわれわれの参考の知識といたす。場合によってはこれを関係調達庁当局の方々にもお伝えして、現地の状況はこういうふうであるから、こういう点でこういう施策を講じたならば円満に解決するのではなかろうか、また地元の要望にこたえる道ではなかろうかというようなアドヴァイスをする材料になる場合もあろうかと思います。そういう意味で、いい意味においての基地問題についての全般的な動きを警察の立場においても承知しておく、こういう意味で適当な人に全般の状況をお聞かせ願う。そういう意味でそうした人々に警察官が接触をするということは、あるいは現地において警察の一つの心構えとしてやっておる場合があろうかと思うのであります。それと、先ほど申し上げました点とはいささか趣きを異にすると思いますので、そういう点は私どもは十分注意をしたい、かように考えております。
  58. 櫻井奎夫

    櫻井委員 大体の御趣旨はわかりましたが、私が特に長官にはっきりここで念を押したいことは、そういう警察の立場から全体の動きをごらんになることは差しつかえない。しかし警察官が変装をして個人の家に上り込んで、こういう基地反対運動なんかやっておったのではお前ためにならないぞというような言辞を吐いておる事実があるわけです。こういうのは明らかに行き過ぎだ。もしそういう事態が今後もありとすれば、あなたは警察庁長官として、そういうものに対して適当な処置をとられるかどうか、私はこのことを聞いておるのであります。
  59. 石井榮三

    ○石井(榮)政府委員 警察官が身分を秘匿したりあるいは変装してまである特定の反対運動をしておる者に近づいて、反対運動をすることがためにならぬぞというような言辞を弄するというに至っては、これは明らかに行き過ぎであります。先ほど来たびたび私が申し上げております通り反対運動そのものに警察は不介入、不干渉の態度を堅持すべきものであるということを、私は第一線の警察官の諸君にも指示をいたしておるのでありますから、従ってそういう行き過ぎの行為が末端の警察官にありましたならば、厳に注意を喚起いたしまして、処置すべきものは処置するようにいたしたいと思っております。
  60. 櫻井奎夫

    櫻井委員 ありがとうございました。私もう少し聞きたいのですが時間がないそうですからまた機会を見まして伺うことにいたします。  それでは続いて福島長官に、全般的な問題につきましては同僚茜ケ久保君の方から質疑がございましたし、長官のそれに対する態度も判明いたしましたので、私は主として新潟の基地の問題につきまして具体的に二、三お聞きをいたしたい。この新潟基地は立ち入りの期間が、知事の方に申し入れられておった期間は五月十三日から八月十日までになっておったわけです。それが最近に至りさらに一カ月延長されて九月十日まで立ち入り期間を延長された、その理由はどこにあるのでありますか。
  61. 福島慎太郎

    ○福島政府委員 これはもうおわかりをいただけておると実は思うのですが、そういう希望を知事の方にお願いいたしましたが立ち入り権の設定がまだできませんので、従いましてできなかった部分につきまして、あとへ延びた、そういう都合であります。
  62. 櫻井奎夫

    櫻井委員 この二十五日に仙台の調達局長の福間という方と知事が会見をしておる。これはあなたの部下でございますから、仙台の局長から長官に会見の内容についていろいろ報告があったと思うのでありますが、この会見の内容は御承知でございますか。
  63. 福島慎太郎

    ○福島政府委員 詳しいことは、まだ本人が上京いたしておりませんので聞いておりませんが、知事にお目にかかったということ、それからまた調達庁側としては立ち入りの公示の催促をしておる。しかしながら知事との間に確としたお話し合い成立まで行かなかったというところだけ一応聞いております。
  64. 櫻井奎夫

    櫻井委員 新聞の報ずるところによりますと、知事と福間局長との会見の結果が書いてあります。これによると知事はこういうことを言っておる。私が県会で反対にも限度があると答弁してから、一般に公示も間近であるとの観測が強くなり、これによって反対機運がかえって強くなってきた。私は国会議員のときは、安保条約の調印に賛成したが、知事としての立場は違う。反対の実情を見ると、事態はむずかしい様相になってきたので、公示について結論を出すことはできない。県民の反対が強いとともに、四巨頭会談で平和の曙光が見えてきた現在、軍備を進めることについても反省する必要がある。これらの事情を了承していただきたい、これが知事が福間さんに語った談話ということになっておるのでありますが、この知事の態度は私はりっぱだと思う。かように知事は現在の瞬間においても、まだあなた方の言うように公示を承知しましたという段階には来ていない、こういうふうに、この知事の態度はおそらく今後も変らないと思うのでありますが、こういうふうに知事が終始反対をして、この期限の九月十日までもこの態度を改めなかった場合、あなた方は自治法の百四十六条によって、知事に職務執行の命令を下すことができる、あるいはまたそれに従わなかった場合には知事を罷免することもできるわけでありますが、こういう手段を考えておられるかどうか。知事があくまでも公示しなかった場合、最後にはこういう自治法の百四十六条の方法等もあえて辞さない、こういうふうに考えておられるかどうか、あなたの御心境をお伺いしたい。
  65. 福島慎太郎

    ○福島政府委員 国の事務でありますので、知事は地方の自治体の長であると同時に、国の機関という面も備えておる、従いまして国の通告を法律によりまして知事としては執行しなければならない。定められておる命令を執行しないということになると、自治法の、御指摘になりました条文の関係が出て参ることは事実であります。しかしながら自治法ができましてから、国から知事に業務命令というものはいまだかつて出たことがないのです。私はその点はどうしようかということも、私だけで考えてはおります。そういう事態にならざるを得なくなった場にどうするかというようなことは、今あれこれと考えてはおりますが、私だけで知事に業務命令を出せるかどうかちょっとわからない。おそらくは政府の上層部において決定してもらわないといけないことだと思いますから、業務命令を出せるかどうかということは確信がありません。しかしながらそういう事態になれば、私としては業務命令を出してもらう必要があるということを、政府の上層部に意見の具申をするかどうかということを、今考えておるところであります。しかしながらこれはまだそういう事態が差し迫りましてからの問題でありまして、まだ私自身も結論はございません。御指摘になりました九月の十日までに知事がやらなかったらどうするかということになりますと、わかっておりますことは、もう一度期間を延長いたしまして、それまでにやれ、こういう話し合いをすることになるだろうと思います。
  66. 櫻井奎夫

    櫻井委員 これはあなたの方の伝家の宝刀としてあるわけですが、しかし先ほども申しましたように、知事は個人として反対しておるのじゃない。市会の決議あり、県議会の決議あり、そういう決議がある以上は、知事がそういうものを無視してできるわけはないのであります。そこにもしもこういう法律を発動なさったならば、これは全国最初のケースとなりますし、これは実に重要な問題——おそらくこういうことをやったら、これは鳩山内閣の命取りになりかねない大きな問題を含んでおる。そういうことについて、あなたもまだ腹がきまっておられないようでありますが、これは実に慎重に御考慮願わないと、あなたの首のすげかえになる問題であるかもしれないし、鳩山内閣の土台骨をゆすぶるような問題になるかもしれない。そういう点は一つ十分お考えおきを願いたいと思うのであります。  次に知事の方からいろいろ条件を持ち出しておるというようなことも聞いておるのですが、あなたは先般新潟県においでになって、知事とお話になっておるわけでありますので、知事の条件というものがあるのかないのか、お漏らしを願いたい。
  67. 福島慎太郎

    ○福島政府委員 これは知事さんとの間にいろいろなお話をしておることは事実でありますが、格別条件ということではない。そのお話をいたしました事柄が解決すれば、拡張の方の措置をどんどん進めるという前提としての話になっておるわけではないのです。たとえば第三次拡張の分の処置を早くしてくれ、それをしてくれない以上は、四次拡張ということは、別に賛成しているわけではないが、やれといったってできないではないか、こういうお話がありますが、それは第四次の拡張があろうとなかろうと、第三次の拡張をして接収いたしましたところに、金を払うということは当りまえのことでありますので、われわれも全力をあげて解決をしたいということをいっておりますので、そういう第四次の拡張というものが、知事さんの御決意においてもしスタートする事態がある場合において、これらの事柄がなされていなければ、やろうと思ってもできないではないか、そういう意味で知事さんからお話し合いがあったということは事実であります。さりとてそれをやったから、第四次の拡張の分は知事が承知するのだということにはなっていないのでありまして、前提ではありますが条件ではない。そのうち最も重要なものは、第三次の拡張問題の処置をどうするかという点でありますが、これは私どもも、かりに四次の拡張がない事態におきましても処置しなければならない問題でございますので、大体知事さんの御満足のいくような処置をいたしたつもりでございます。第三のうち、これは二カ所に分れておりますが、一カ所については、契約の完結を督促いたしまして、またわれわれの方の条件を若干ゆるめまして、お話し合いを促進させまして、大体この方の解決はめどがついております。もう一つの地区につきましては、第三次の拡張の分の値段について話し合いがつかないから、今日まで売買契約ができなかったわけです。知事さんとの話し合いに基きまして——これはちょうど滑走路それ自体の地面に当りませんから、滑走路の拡張ということは、われわれも最小限度やらなければならぬということでありますが、それ以外の施設については、少し足りなくてもがまんしてほしいという態度を、アメリカ側にとるべきだと考えました。それでアメリカ側に談判して、これに私の全責任においてアメリカ側に取りやめさせるからというお約束を知事さんといたしまして、アメリカ側とかけ合いまして、これはやめさせたわけであります。従って買収を取りやめて返すということで、知事さんとのお約束を果したわけであります。従って地元の諸君にもそれを通告したのでありますが、これはどういう風の吹き回しですか、やめられては困る、買ってもらわぬと都合が悪い、こういう反対になりまして、われわれの方としては、接収反対だから取りやめてしまえば、何も文句はないだろうと思って、きれいさっぱり取りやめてしまった。ところが今度は買えという反対運動になりまして、予算の方を落してしまいましたので、今四苦八苦しているところでございますが、これは反対の方角が違うのですけれども、買えという反対であれば、私どもとしては第四次買収という問題もあとに控えておりますので、何とか算段をして買おうか、その場合には、われわれの方で最初につけた値段でかんべんしてくれ、それはそれで仕方がないということになっておりますので、予算措置さえできますれば、また逆に戻りまして、はなはだ妙な話でおかしいのでありますが、拡張を取りやめてはけしからぬという反対もあるのだということになるわけです。これは何とか予算措置をいたしまして、買収することの御希望に沿うようにいたしたい。知事さんもそういうことに変更してくれというお話でございましたが、いろいろ知事さんとのお話し合いに基きます案件の処置をいたしております。しかしこれは知事さんのお立場もあるので、私から明瞭に申し上げることはできないのですが、前提になる案件であることは間違いありません。条件ではございません。
  68. 櫻井奎夫

    櫻井委員 今取りやめたのを買ってくれということが、拡張を取りやめてはならないという反対運動になるというふうな解釈をしておられます。それはちょっと問題が違うと思う。しかしそういうのは派生的な問題ですから、私はここで議論しようとは思いませんけれども、御承知の新潟基地の拡張についての地元の状況は、おそらく長官はいろいろな情報を逐一とっておられるので、先刻十分御承知だと思うのでありますが、最近地元の部落で、拡張する滑走路に当るところに、反対同盟の事務所を作りまして、それは村の各戸から一人以上の、女の人もあったし老人もあるようでありますが、各戸一人以上の者が集まって、全部で整地をし、そして村有林の用材を切って、ここに反対の事務所といいますか、橋頭堡とでもいいますか、そういうものを作ってやっているというのが現在の実情なんです。そうすると、これは事態がだいぶ進んで参っておりますので、この新潟基地の拡張というのも、これは立川以上に紛争が起るのじゃないかというふうに非常に懸念するものでありますが、この場合も、先ほど長官は同僚の茜ケ久保君の質問に対して、説得のために全力を尽してやるということをおっしゃっておりますから、私はそれを信頼しておりますが、どうか無用の混乱を起して犠牲者を多数出す、こういう処置のないように、そういう事態が起らないように、あなたはこの問題に対する最高責任者でございますので、特に私はそういう点について慎重な態度をとられるように御要望申し上げて、知事に対する告示の問題、あるいは地元のこういう大きな反対気運の問題、こういうものを十分認識されて、軽挙妄動なさらぬように、そういう点を特に私は御要望申し上げて私の質問を終ります。
  69. 辻政信

    ○辻(政)委員長代理 田中君。
  70. 田中武夫

    田中(武)委員 だいぶ時間もおそいようでありますので、簡単に御質問したいと思いますから、端的にお答え願いたいと思います。私が長官にお伺いしたいのは、兵庫県の青野原のことでありますが、この件については、実は本会議の緊急質問を申し出ておったのですが、その機会を得なかったので、委員会においてお尋ねしたいと思います。  その前に若干基地の問題についてお考えをお伺いしたいのですが、現在アメリカの駐留軍の駐留は安全保障条約において行われておるわけなんです。ところが現在七百三十三ヵ所ですかの軍事基地がある。安全保障条約の目的を越えた基地拡張が行われているのじゃないか、こういうふうにすら思うわけであります。この基地拡張の原因はアメリカ兵器の発展、これによってその使用上の必要から行われているものであって、いわゆる安全保障条約の目的である日本の安全という上に立って行われているものでないというふうにも考えられるのでありますが、いわゆるアメリカ安全保障条約の目的を越えて基地の設定並びにこれの拡張、こういうようなことについて少し無理を言ってきているようにお考えになっていられないか、どういうふうにお考えになっておられるか、お伺いしたいと思います。
  71. 福島慎太郎

    ○福島政府委員 御指摘の点ごもっともな御疑問だと思いますけれども、アメリカのいわゆる日本における基地七百幾つというお話でございましたが、これは七百幾つありましたことは確かに平和条約発効当時ありました。現在では六百幾つになっております。漸減の傾向をたどっております。なお六百幾つありましても、これは行政協定による施設区域を設定するということになりまして、どんなに小さいものでも、電信柱一本建てる場合でもその用地というものを施設区域にする。これが一つの基地として六百五十の中に入る。こういうことになりますと、ピストルの射撃場もありますし、ガソリン・ステーションもあるということで、六百幾つある大部分というものは非常に規模の小さいものであります。規模の大きいものはもう人目についております程度で、これが六百も七百もあるというわけではないのであります。求解除は非常にしょっちゅうあるのでありますが、それと同時に新しい、今御指摘のありました兵器その他の変更といったような関係もあったわけであります。また追加その他もありますので、年中いろいろ案件が絶えないのであります。私たまたまほかに必要もありますので、先般統計をとったのでありますが、アメリカ側の、私の委員長就任以来施設特別委員会に提案されました設置要求というものが、ちょっと数は正確ではありませんが、五百九十幾つ、かれこれ六百ありました。これに対しまして先方の要望に同意いたしましたものは、この数ははっきり覚えておるのでありますが、百二十七であります。従いましてアメリカとしては五つ要求してきてやっと一つ通るという程度でありますので、そういう数の関係からだけでは正確な結論は出ないという御議論もあると思いますけれども、従来ありましたものはどんどん減っております。減ると申しましても、これが自衛隊に肩がわりするという減り方もございますので、現実に地方の居住者諸君に的確な影響を与えているかどうかということになると、減っているだけ全部が現われてくるわけではございませんが、真近でごらんになる、たとえば東京都内あるいは横浜市内というところの状況をごらんいただければ、接収建物がどんどん減少しつつあるということは、これは事実でございます。減少しつつあるということは申し上げられますが、将来にわたってふえつつあるものは、今申しましたように、五分の四は断わっておる現状でございますので、かたがたまたこれは新聞記事だけでお話し申し上げることもいかがかと思いますけれども、陸軍関係が非常に減っておる。現に陸軍の司令部が朝鮮へ移るというようなこともありましたくらいで、安保条約の目的を越えて基地がふえつつあるという事態にはなっておりませず、また将来もしない決心で仕事をしておりますことを申し上げておきたいと思います。
  72. 田中武夫

    田中(武)委員 ただいま長官は、安全保障条約の目的を越えてはいない、こういうふうに言われたのですが、安全保障条約の駐留目的は、日本の安全の保障だと思うのです。そうであるならば、現在日本の安全の保障のためにこれほど多くの基地、ないし今問題を起しておるような基地の拡張ということが、ほんとうに必要であるのかどうか。もし必要であるとするならば、一体そういうような状態がどこに起っておるのか。長官はどういうふうにお考えになっておりますか。
  73. 福島慎太郎

    ○福島政府委員 安全保障条約の目的ということになりますが、これは日本防衛のためにアメリカ軍が駐留する。陸軍が七、八万おるわけであります。七、八万の陸軍が駐留するということは、日本防衛を分担しておるアメリカ側として日本防衛条約によって義務があるわけでございます。防衛を分担しておるものの目的の範囲内であるかということになりますれば、日本防衛というものをどういうふうに想像してよいか私もわかりませんけれども、陸兵が七、八万ということは限度を越えておるとは言えない。七、八万の陸兵に対します施設というような問題が過剰に行われておれば問題になるわけでありますが、その意味におきましては、ただいま合同委員会その他の関係で基地の整理その他も相当に進捗しておりますので、別段過剰な施設をアメリカ側に持たしておるというふうに私は考えていないのであります。また共同防衛目的を逸脱して基地拡張が行われておるということでありますが、これは最近基地拡張というものはそうむやみにあるわけではないのでありまして、この問題になっております飛行場の拡張というもの以外にはそうさしたるものは実はない。飛行場の拡張と申しますものが防衛限度を逸脱しておるかどうかということにせんじ詰めればなると思いますが、この飛行場を拡張しませんと、ほかに使える飛行場がなくなるということになる。滑走路はいずれも短かい。従いまして安保条約によって米国の軍隊、特に空軍が駐留いたしておるということが認められます以上、飛行機が飛べる—これはアメリカの希望する通り全国至るところで飛べるというわけには参りますまいが、ただいま拡張しようとしておりますような、全国数カ所で飛行機が飛べるというように何とか設備をしなければならぬという問題は、その他のところは飛べなくてもしかたがない、飛行場そのものは次第に廃止されていくであろうということになると思いますが、数ヵ所だけは飛行機が飛べるようにしなければならないということは、過剰な防衛施設とは考えておりません。
  74. 田中武夫

    田中(武)委員 私の申し上げておるのは、飛行場の拡張、これが日本防衛目的でなく、アメリカ兵器の発展といいますか、こういうところから来る、アメリカの使用上の目的である、こう私は申し上げておるのです。時間の関係もあるから、また今度の機会にこういうような点についてお聞きしたいと思っております。  次に、お伺いしたいのですが、安全保障条約の前文には、このような状態を暫定的な措置として、とこううたっておるのでございますが、自主性がなく、ずるずるとアメリカに引っぱられているような、こういうような状態を一体いつまで続けていくと考えておられるのか、いわゆる安全保障条約前文の暫定措置ということをどのように解釈しておられるかをお伺いいたしたいと思います。
  75. 福島慎太郎

    ○福島政府委員 その点につきましては、全般的には果して私からお答え申し上げて適当かどうかという疑問もございますので、私の所管いたしております仕事の窓口からのみの御返事になりますが、さよう御了承をいただきまして、暫定的という点でありますが、私どもも陸軍の引き揚げとか、そういう問題の処置に今かかっておるわけであります。先方も、新聞に参謀総長の談話も出たくらいでありますし、また陸軍の司令部が朝鮮に越したくらいでもありますので、そういう配備の状況は変ってくると思います。これからかなり根本的に変るのではないか、従いまして条約の前文に暫定的とうたわれておったということと現実の事態とは平仄が合っておると考えております。  また自主性がなくてということであります。全般的の面につきましては私が御説明申し上げてもいたし方がないのでありますが、少くとも調達庁責任の範囲内、施設特別委員会の任務の範囲内におきまして、先方の六の要求に対しまして一を与えておりますという現状におきましては、ずるずるとアメリカに引きずられてすべてとられておるというような事態とは毛頭考えておりません。われわれもわれわれの立場によって、六百のうち五百は先方にわれわれの立場を了解させておると考えております。
  76. 田中武夫

    田中(武)委員 安全保障条約の前文に「平和と安全を増進すること以外に用いられうべき軍備をもつことを常に避けつつ、」こういうようにはっきりうたってあるわけなのですが、何回も言われている言葉ですが、現在国際的には平和への努力が続けられておる、先日行われた四国巨頭会談においても、いわゆる力の外交から話し合いの外交へ進みつつあるということは肯定せられると思うのです。こういうような事態にあってなお飛行機の基地を拡張するとか、軍事基地を増設するとか、こういうことは、先ほど申しましたこの安保条約の前文の平和と安全を増進すること以外に用いられ得べき軍備を持つことを常に避けるということに反しておるとお考えにならないかどうか。の責任ではないのでありまして、ジェット式の飛行機になるということは世界の趨勢であるわけであります。従いまして民間の輸送機ですらジェットになるかもしれない、いわんや軍用飛行機はすべてジェットになるというのが今日の状態であります。それで日本においては飛行機が飛べなくなるというので大あわてにあわてて、せめて数カ所でも飛べるところを作りたいというのが現在の飛行場問題の実態でありますので、しわの寄るところには確かに拡張ということでありますけれども、国全体の問題として考えますときに、これを単純に飛行場拡張と言い切れるかどうか、私どもはむしろ飛行場を整理して数を減らす処置であると考えておるわけでございまして、これらの点が安保条約の目的に反しておるとは考えられないわけであります。
  77. 田中武夫

    田中(武)委員 飛行場の拡張とかあるいは基地の設定の場合に、土地や施設を取り上げるときに、現在では土地収用法の例外規定といいますか、特別立法の長い名前の法律で、いわゆる切り捨てごめん的な収用が行われていると思うのですが、あれについてはどのようにお考えになっておりますか、なぜ特別に土地収用法以外の法律を必要とするのか、お伺いいたしたいと思います。
  78. 福島慎太郎

    ○福島政府委員 駐留軍の用に供するための特別措置法という法律でございますが、これは法律は確かにありまして、駐留軍の用に供するという場合に地元との話し合いがつかなければ、事と次第によっては収用法を適用して強制収用することができるというのが眼目であります。しかしながら特別措置法がありましても、今日までその例が絶無とは申しませんけれども、強制収用をして土地を取り上げて米軍の用に供したという事例は非常に少いのであります。そういう措置法があるということは、米軍の用に供する場合にはすべて収用法によって強制収用するのだということではないのでありまして、米軍の用に供するという目的で土地の取得をはかった場合に地元との話し合いがつかない場合、万やむを得ない、しかも政府の要望が正当なものであると認定される場合に初めて第三者たる収用委員会の決定によって処置を行うことができるということになっておるだけでありまして、決して特別措置法というものは切り捨てごめん的に収用によって土地を確保できるという、そういうできのいい法律ではないのであります。そういうことになっておれば基地拡張でこれだけ苦労することはないのでありまして、容易に収用手続などでできるものではない、今日まで七百幾つの基地をこしらえた際に、これは占領中にやりましたものが大部分でありますので、収用法もへちまもなかったじゃないかと言われればそれまででありますが、収用の手続によって土地を取得したという事例は実質的にはほとんどないと申し上げていいくらい、中には値段で話し合いがつきませんので、双方とも値段を固執してしようがない、なれ合いで収用手続をして、収用委員会に値段をきめさせようというようなことでやりました収用の事例などはあります。しかしながら無理やり収用法によって土地を巻き上げてきたという事例は非常に少い。今度の飛行場関係についてやらざるを得ないという事態に追い込まれつつありますので、非常に苦慮しておるわけであります。今日まで特別措置法とかあるいは収用法がものをいった事例は、なれ合いを除きますとさようにたくさんはないのであります。
  79. 田中武夫

    田中(武)委員 えらい時間をとりまして恐縮ですが、もうしばらくお願いします。時間がないので質問が断片的になるのですが、先ほど長官の言葉に出ておりましたけれども、例の日米合同委員会及びこれに基く分科委員会等の運営といいますか、会議の内容が今日まであまり明らかにせられていなかったのであります。これにつきましては、なるほど規則の上、すなわち行政協定第二十六条ですか、日米合同委員会は形式的には一対一になっておりますが、実際は力によって一方的に運営できるのじゃないか、われわれはこういうような危惧を持つわけなんですが、今日日米合同委員会及びこれに基く分科委員会等の会議の内容を公表するというようなことはできるのかできないのか、どういうようにお考えになっておりますか、お伺いいたしたいと思います。
  80. 福島慎太郎

    ○福島政府委員 合同委員会ないしは施設委員会は形式的には確かに一対一であります。しかしながら力関係で一対一の関係ではなくて、押されておるだろうというお話でありますが、これは先ほど申し上げましたように、向うが六百出しておるとき百くらいしか通らないという状態でありまして、決して押されておるとは考えておらないのであります。相当に成績のいい機関であるという確信を持っております。  またこれの内容について公表をするかどうかということでありますが、この決定は私どもが合同委員会でやりまして、それですぐ日本側の義務になってアメリカ側に土地を提供してしまうということにはなりませんので、合同委員会で合意の一歩手前まで参りまして、それから閣議決定をしてもらいまして、その上で初めてアメリカに提供なら提供という正式の合意が成立するわけであります。閣議決定はすべて公表されております。その面におきましは日米合同委員の決議は公表されておるわけであります。その経過その他公表されておるかどうかということになりますと、これは必ずしも自動的に公表はいたしておりません。しかしながら問題が起りますたびに、その地元には内容を通報いたしております。また関係の地方府県には、アメリカの言って参りましたことはすべて通報いたしております。利害関係者には公表されておると同様な処置がとられておると思っております。なお公表その他の点につきまして改善すべき余地があれば、これは別段秘匿しなければならないという関係はないのでございまして、必要がございますれば公表の問題はさらに改善をいたしてもよろしいと考えております。
  81. 田中武夫

    田中(武)委員 本会議の時間との関係もございますので、一般的な問題につきましてはなお聞きしたい点もあるし、見解の相違の点も多々あると思いますが、これでおきたいと思います。  ただいま長官がお答えになりました御答弁の上に立って一つはっきり言っていただきたいのですが、兵庫県の青野原が米軍の爆撃演習地として使用せられるというようなうわさがあり、またそういう申し入れが現にあったというようなことで、地元においては大へんこれに対して大きな関心と、また反対の意思と不安な目をもって、その行方を見詰めているのですが、そういうような申し入れがあったのかどうか、あったとするならばどういうふうに御処理せられるか、はっきりとお答え願いたいと思います。はできない。閣議の決定がなければ日米の正式合憲は成立しないという関係になりますので、私がこれに自分の判こを押す意思がないのでありますから、これはどう間違いましても、私がいる限りは始まりっこないのであります。私どもが首になりますれば別でありまして、そのときにはまたかわった方にお尋ねをいたただきたい。私さしたるえらそうなことを申し上げるわけではないのですが、手続の関係によりまして、判を押すのではなく、これはとにかく横文字で自分で手をとってサインしなければいけないのですから、私としては爆撃演習場になるということは考えられないと相当確信を持って申し上げられると思います。
  82. 田中武夫

    田中(武)委員 長官の今の力強い言葉はよく承わっておきます。私が最初安全保障条約の目的なんかを持ち出して御質問をして青野ヶ原に及んだのは、爆撃演習地が日本防衛目的に必要かどうか、安全保障条約に違反しないかということをお伺いしたかったのでありますが、今の長官の御答弁で、この点はなお長官の決意を強く固めていただくようにお願いいたしまして、次に入りたいと思います。  青野ヶ原は、御承知のように、現在七十四戸の入植者があります。しかも平和に耕作に従事している中に七十五町歩の既耕地がありまして、そのほかの土地も耕地に最適の土地です。中にあります三十カ所のため池は付近の二百八十町歩の灌漑用水となっているわけであります。これが旧陸軍の演習地となった明治二十一年に、灌漑用地の必要から付近の住民がその土地に立ち入ることを認めるという当時の兵庫県の内海忠勝知事の立ち入りの確認書というようなものが現在まだ小野の市役所には保管してあります。また一方同地区には小野市立の河合中学校もあるわけであります。また国立青野ヶ原療養所がありまして、三百六十名の安静を必要とする結核患者が現在入院しております。それに六十か七十ほどの通院者がいるというのが青野ヶ原の実情でございます。現在青野ヶ原は行政協定の第二条第二項ですかによる提供地区になっているのですが、ここ数年間にアメリカは二、三度しか使っていないわけです。現在自衛隊が演習地としてこれを若干使っているようなんですが、先ほど申しましたような状況の土地であり、ことに中には安静を必要とする結核患者が三百六十名もおりまして、自衛隊の演習自体でも相当療養上に大きな悪影響を受けているし、付近の住民も相当な迷惑を受けているわけです。行政協定第二条第三項には「合衆国は、施設及び区域の必要性を前記の返還を目的としてたえず検討することに同意する。」こういう規定もありますので、今長官が言われました爆撃演習地として申し込んできても、これは現在断わるつもりでいるのだ、それをもう一歩進めていただきまして、現在読み上げました行政協定第二条第三項の規定に基いて、これを解放していただくというか、そういうことについて検討を申し入れる、あるいは解放してもらようなことを申し入れるような余裕を持っておられるか、またそのようなことについてお考えになっているかということについてお伺いしたいと思います。
  83. 福島慎太郎

    ○福島政府委員 青野ヶ原の陸上演習場につきましては、アメリカ側の使用度数が非常に少いということは御指摘の通りであります。従いまして私どもはこんなに使っていない演習場ならば返せという交渉はずっと前からやっております。それを陸軍が使わないから空軍が爆撃演習場に使いたいということを言ってきたわけでありますが、その空軍を断わるということになりますれば、しからば、陸軍が使うことになるかといえば、おそらくなりますまい。しかも陸軍はこれから帰ろうという時勢でありますから、使わぬ演習場であれば返せということになるわけであります。これからその点の交渉の度合いを高めて参ろうと思います。実はこの青野ヶ原が一番目立っておりますが、ほかにも演習場関係では二、三あります。この返せということはかなり前から熱心に私も交渉しておりまして、御承知のように、妙義山の解除のときに、二つ三つおまけをつけて妙義山の解除を目立たさないようにということで使ったのであります。妙義を急いだので間に合わなかったのであります。そのうちに空軍の爆撃演習地の話が起りまして、この爆撃演習場も全然なしというわけにもいかないと思いますので、海の中かどっか早く探したい、その上で青野ケ原の方は交渉したい。現に私が判を押さなければこれは通りませんがそんななまいきなことを言わなくても、そうなれば解除の交渉ということになってくると思います。
  84. 田中武夫

    田中(武)委員 最後にこれは質問というよりか、要望を申し上げておきたいと思います。先ほどから長官にいろいろと私の質問に対してお答え願いましたが、ことに青野ヶ原が米軍の爆撃演習地、ことに陸地における日本に初めての演習地になるということは、われわれとしても考えておりませんし、これは当然長官としても、日本国政府としても断固として断わるであろうと確信を持っております。それだけでなく私のお願いしたいことは、なお進んで先ほど申しましたような状態にある平和な土地であり、またこれの利用については利用価値の大きなところでありますので、ぜひとも今おっしゃったように、解放のできるよう御努力していただきますように切にお願いしまして、私の質問を終りたいと思います。
  85. 辻政信

    ○辻委員長代理 本日はこれにて散会いたします。次会は公報をもってお知らせいたします。     午後一時三十九分散会