○入江
政府委員 一般職の職員の
給与に関しまして、去る七月十六日報告及び勧告を行いましたが、その概要につきまして御説明申し上げます。
人事院は昨年七月十九日今回と同様に
国会及び
内閣に対しまして、一般職の職員の
給与に関する報告を行なったのでございますが、御
承知のように、年年は俸給表改訂の勧告はこれを留保いたしまして、報告のみにとどめた次第でございます。その後人事院といたしましては生計費、民間
給与その他公務員の
給与に
関係のある諸条件等につきまして引き続き調査、研究を行なって参ったのでございますが、今回これらの調査、研究の結果に基きまして、昨年と同様俸給表改訂につきましての勧告はこれを留保することといたしまして、期末手当及び勤勉手当につきましては、これが増加の勧告を行うとともに、さらに昇給原資につきましてその十分な確保について要望いたした次第でございます。
次に報告及び勧告の順に従いまして、以下簡単にその概要の御説明を申し上げます。
第一に報告についての概要を申し上げます。まず公務員
給与の実態について申し上げますと、一般職の
給与法が適用される公務員の
給与は、
昭和二十九年一月から平均
給与月額一万五千四百八十三円として実施されたのでございますが、その後職員構成に変化等がございましたので、この点を考慮いたしますと、前に述べました平均
給与月額は一万五千三百円となります。ところが本年一月においてはこの平均
給与月額は一方六千二百円となっておりますので、これと対比いたしますと、この一年間において昇給、昇格等により約五、九%の上昇を見たことになります。なお今年七月における平均
給与月額を推定いたしますと、おおむね一方六千五百円になるものと
考えられます。
次に民間
給与につきまして昨
年度中における基準内
給与の動きを申し上げますと、本年の調査によりますと、年間三、八%の上昇を示しており、労働省の毎月勤労統計調査における毎月きまって支給する
給与では三、五%の上昇となっております。さらにこの上昇率を職務の
段階ごとにながめてみますと、昨年と大体同じように、下位の職務から上位の職務になるに従って漸次増加の傾向を示しております。すなわちその増加率は大体中級係員以下一・五%、上級係員三・四%、係長クラス五・五%、課長以上九・七%と相なっております。また現行の公務員
給与と民間
給与との比較をいたしますために、人事院は常用従業員五十人以上を雇用する全国の事業所のうち約四千の事業所を選定いたしまして、公務員とほぼ同種、同等と認められる従業員約十三万人を抽出いたし、本年三月の民間における基準内
給与を調査いたしたのでございますが、その結果によりまして、公務員の職務の級ごとに比較してみますと、三級以下は四・七%、四級から七級までは八・九%、八級以上では一二・四%とそれぞれ公務員の方が低位にあることが認めれれたのでございます。しかしてその本年三月における官民の
給与の較差は昨年三月におけるそれと比べてみますと、わずかではございますが縮小されたことと相なっております。
さらに以上述べました民間
給与の動きにつきまして、本院の調査に基きましてその
内容を検討いたしてみますと、次のような事実が明らかと相なりました。
その第一点は、基準内
給与の年間上昇率が、
昭和二十八
年度においては九・五%であったものが、昨
年度においては三・八%と大幅に減少いたしているということであります。
その第二点は、昨
年度においては、いわゆるベース・アップによる
増額がきわめて僅少であったということであります。すなわち前に述べた三・八%の上昇率のうちには、ベース・アップによる分と昇給等による分とが含まれているわけでございますが、このうちべース・アップによる分は、二十八
年度において四九%であったものが、昨
年度においてはわずか〇・七%と激減しておりまして、またベース・アップを実施した事業所数も、同じように
昭和二十八
年度の四一・五%に対しまして、昨
年度は六・七%とこれまた激減いたしておるのであります。
第三点は、公務員の期末・勤務手当に相当する民間の特別給の増加が見られるということであります。すなわち、その基準内
給与に対する割合は、
昭和二十七
年度においては二・〇四カ月分、同二十八
年度においては二・一九カ月分、それが昨
年度におきましては二・二六カ月分となっておりまして、前に述べました基準内
給与の上昇に比較いたしまして、その増加が目立っておるのであります。
なお、時間外手当の支給状況をみますと、この一年間において特に減少の傾向が見られておることも、昨年中における一つの特徴と見ることができます。
以上は、民間
給与の最近における動向と、民間
給与と公務員
給与との比較について申し上げたのでございますが、次は標準生計費について申し上げます。標準生計費につきましては、本年三月の独身成年男子の東京におけるものを昨年と同様一人一日当り栄養摂取量二千四百六十カロリーといたしましたが、家計調査による食品の摂取
状態等を反映させて算定いたしました結果、月額六千六百円となりました。この
金額は、昨年に比べまして二十円の増加となっております。しこうして、この標準生計費に相当する
給与を支給することを適当といたします十八歳
程度の公務員の平均号俸は、一般俸給表の三級四号でありまして、その手取額は六千五百十九円でありますので、ただいま申し上げました標準生計費とおおむね見合っているものと思われる次第であります。
そこで以上述べましたように、公務員の
給与が昨
年度中に昇給昇格等によりまして、ある
程度改善され、民間
給与との較差が多少とも縮小されたことは認められるのでございますが、なお現在における公務員の
給与が、民間の
給与に比較いたしまして、相当低位にあることも事実でございます。しかしながら一方、最近一年間における民間
給与の動きにつきましては、すでに申し述べましたごとく、年間上昇率の大幅な減少、特にベース・アップによる上昇率の減少がまことに顕著であります。他方失業者の増大、賃金支払い状況の悪化等
給与決定に
関係のある諸条件は、今なお依然として改善をみせていないのでございます。また公務員の現行
給与が実施された昨年一月以降の物価について見ましても、全般的におおむね停滞の
状態を示しております。
以上を総合勘案いたしますと、単に民間
給与との現在における較差をもって俸給表の改訂を行うことは、この際必ずしも当を得た措置とは認められませんので、俸給表の改訂につきましての勧告は、昨年と同様さらにこれを留保することといたしました次第であります。しかしながら、民間における特別給の支給
状態につきましては、すでに述べましたように、最近漸騰の傾向にあるのにかんがみまして、公務員の期末手当及び勤勉手当につきましては、これを
増額する必要があるものと認めた次第でございます。
以上で一般的な
給与の報告の説明は終ったわけでございますが、次に、昇給原資確保の要望事項について御説明申し上げます。
昇給制度の適正な運営を確保いたしますことは、申すまでもなく、公務能率の維持向上をはかるためにも欠くことのできない条件であると
考えられますが、国家公務員の職員構成の現状を見ますと、終戦後における新規採用者が全公務員の五割以上も占めております実情でございますので、この現状からいたしますと、昇給昇格に要する原資の確保につきましては、特に考慮を必要といたされるのであります。従って、この点につきまして特段の配慮がなされるよう要望いたしました次第でございます。
最後に勧告の
内容につきまして申し上げます。すでに報告のところにおきまして申し上げましたごとく、公務員の期末手当及び勤勉手当に相当する民間の特別
給与は、公務員のそれに比べまして相当上回っているとともに、最近漸騰の傾向にもありますので、この際公務員の十二月における現行支給率、すなわち期末手当及び勤勉手当を合せた支給率一・二五カ月分を〇・二五カ月分
増額いたしまして、一・五カ月分とすることを妥当と
考え、このように改訂することを勧告いたした次第でございます。
何とぞ十分な御
審議を賜わりまして、その趣旨が達成せられますようお願い申し上げる次第でございます。