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1955-07-18 第22回国会 衆議院 内閣委員会 第42号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月十八日(月曜日)     午前十時五十一分開議  出席委員    委員長 宮澤 胤勇君    理事 高橋 禎一君 理事 辻  政信君    理事 床次 徳二君 理事 江崎 真澄君    理事 高橋  等君 理事 森 三樹二君       大村 清一君    粟山  博君       山本 正一君    大坪 保雄君       小金 義照君    田中 正巳君       福井 順一君    船田  中君      茜ケ久保重光君    飛鳥田一雄君       下川儀太郎君    渡辺 惣蔵君       受田 新吉君    鈴木 義男君       中村 高一君    矢尾喜三郎君  出席国務大臣         外 務 大 臣 重光  葵君         国 務 大 臣 杉原 荒太君  出席政府委員         調達庁長官   福島愼太郎君         調達庁次長   安田  清君         防衛庁次長   増原 恵吉君         防衛庁参事官         (人事局長)  加藤 陽三君  委員外出席者         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 七月十六日  委員受田新吉辞任につき、その補欠として西  尾末廣君が議長の指名委員に選任された。 同月十八日  委員田原春次君、西尾末廣君、田村兄君及び松  岡松平辞任につき、その補欠として受田新吉  君、鈴木義男君、船田中君及び濱野清吾君が議  長の指名委員に選任された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  自衛隊法の一部を改正する法律中(内閣提出第  八一号)  防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第八二号)  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内  閣提出第八三号)     —————————————
  2. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 これより会議を開きます。  自衛隊法の一部を改正する法律案防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案一括議題として質疑を継続いたします。暑中の折から上着を脱いで質疑応答することにいたしましょう。下川儀太郎君。
  3. 下川儀太郎

    下川委員 重光外相は時間が非常にないそうでありますから、なるべく簡単に要約して質問いたします。御承知通り今まで内閣委員会は、自衛隊三法あるいは防衛六カ年計画等々に対しまして激しい論争をやって参りましみけれども、しょせんこれは外務大臣出席を求めて——防衛関係は結局のところアメリカとの関係が非常に重点的になっております。従いまして防衛計画を立てるにしろ、あるいは現実的な自衛隊の三法の問題にしろ、おそらくアメリカとの折衝の結果がそのような形となって現われてきたのだろうと刊は思うのであります。そこで今度の自衛隊増強、あるいはまた防衛六カ年計画、あるいは防衛分担金削減問題等々に関しまして、外務当局アメリカ側といろいろ交渉なされた経過並びに結果について、まだ内閣委員としては何らの御報告大臣から受けておりません。これについて一つ説明を願いたいと思います。
  4. 重光葵

    重光国務大臣 御質問防衛問題についてこれまでアメリカ側とどういう交渉があったかということでありますが、実は本委員会における議論の焦点を私は十分心得ていなかったものですから、どういうところに集中して御答弁をしたらいいかということをちょっと私心得かねますが、おそらく防衛問題についての対外関係アメリカとの関係ということになれば、具体的の問題は先ほど交渉のありました防衛分担金の問題に関連していることが具体的の問題でございます。その他の、それ以前の防衛の問題についての交渉は御報告するようなものはございません。しかし日本としては御承知通り安保条約による責任負担しているわけです。行政協定も動いているわけでございます。MSA協定もあるのでございますが、分担金の問題につきましては、御承知通りに、アメリカ日本防衛共同責任を持っているけれども、日本自身防衛力は十分でないという見地に立っていつも議論をし、また日本側要請をしてきているのでございます。これはいわば条約に基いている言い分でございます。そこでわが方においても防衛力増強はやるという建前で話をいたしている次第でございます。防衛分担金減額の問題も、結局その筋によって分担金減額という結果を見て妥結をしたわけでございます。そのいきさつ及び交渉の要点、内容は全部発表いたした通りでございます。そこでわが方においても自衛力日本独自の防衛力を作り上げていきたい、こういう考え方に立っているのでございます。国防会議法案も、前の防衛庁法案にすでに予期されている問題で、本国会において取り上げて具体化しよう、こういうことに相なっているわけであります。わが方といたしましては、さようなことについて将来具体的に防衛力増強ということをやろう、そしてそれがためにできるだけアメリカに対する防衛分担金等日本負担軽減しよう、こういう見地に立って話し合いをし、防衛分担金軽減を得たわけであります。その後はこの問題についてまだ何も話し合いはいたしておらないのでございます。しかし全般の建前は、さような建前で進んでいることを申し上げれば、大体御了解を得はしないかこう考えます。
  5. 下川儀太郎

    下川委員 防衛担分金削減鳩山内閣の公約で、これは多少とも果し得たという誇りを持っているかもしれません。ところが防衛分担金削減は、そのままであるならばアメリカにとって非常にマイナスですけれども、当然そのまま削減向うで許すことはないと思う。当然それらの代償として日本側がその防衛をどのように裏づけるか、どのように拡大するかというような約束がされなければなるまいと思うが、どのような約束をしたか、この点を一つ示しを願いたい。
  6. 重光葵

    重光国務大臣 その点は御質問の何はどういう点を要求されるのか私にはちょっと来ませんが、それは約束はございません。約束はございませんが、今申しました通りに、日本はまだ独自の防衛力が十分でないという見地に立って、そうしてこれを増強する、こういう考え方を表示したのでございます。
  7. 下川儀太郎

    下川委員 約束はされないとおっしゃいますけれども、これはあなたの方でいわゆる日米共同声明として四月十九日に出されたその妥結の中のいろいろな諸問題がございます。たとえば飛行場拡張約束、これは約束をしておらないとおっしゃいますけれども、小牧、あるいは新潟、立川、板付、あるいはその他の各方面飛行場拡張が、声明の中に載っております。これも私は約束一つじゃないかと思う。これを一つ明確にしていただきたい。
  8. 重光葵

    重光国務大臣 四月十九日の共同声明の中に飛行場のことがありますことは、むろんそれはここに書いてあるわけでございます。飛行場の問題は実はこの防衛分担金の問題に直接関係をしておらなかったのであります。飛行場拡張ということは、日本側アメリカ側要望する施設を提供する義務を持っておるので、ずいぶん前から、と申しますのは、鳩山内閣成立ずっと前から、これは要請をしてきておった問題でございます。そこでその問題についても日本側としては行政協定なり安保条約なりの責任を果すためにできるだけの努力をしてきておったのでございます。そのことがここに関連いたしましてうたわれておるわけなのでありまして、これは防衛分担金軽減に直接は関係いたしませんでした。しかしながらこれも防衛力増強一つ態様でございますから、その態様としてここにうたわれたわけなのでございます。
  9. 下川儀太郎

    下川委員 それはもちろん吉田内閣時代からのいろいろな折衝の結果がこういう際に現われたというふうにも解しますけれども、しかしやはりアメリカとの共同防衛立場に立つ場合は、防衛分担金削減されるとそのままやはり戦力が一応アメリカ側にとっても非常な影響を与えるので、勢い日本自衛隊増強、あるいは日本防衛力増強アメリカが要求してくるのは当然だと思う。ですから、今の飛行場拡張、あるいはジェット機国内生産、これも私はその中にうたわれておると思います。それとともに、自衛隊増強を今後非常に活発にやるような、そういうことを要求されたといわれております。しかし自衛隊増強約束するということ、これはもちろん自衛隊増強それ自体がいわば数字の上でなくて、あくまでも経済の裏づけが伴う、従ってこういう交渉の中において、国民経済ということをおそらく考えておられると思いますけれども、そういうことなしに、ただ単に防衛分担金削減するというだけで、向う約束づけてくる、あるいは義務づけられてくるということ、これは私非常に国民の感情を無視する、あるいは民族の自立経済を無視するというふうに考えるのであります。ジェット機国内生産の場合においても、やはりそれだけの経費というものを予算に組まなければならぬ。そういうことを考えますと、この妥結声明に盛られた内容というものは、削減はしているけれども、これだけのものをお前たちはやる義務があるというような、しいられた交渉の結果に私は見るのでありますが、その見解はいかかでありましょうか。
  10. 重光葵

    重光国務大臣 それは私はそういう御見解もあろうかと思います。しかし防衛力増強ということは、これも御承知通りに、安保条約を締結したときから、初めからあるのでございます。それをどこまで増強をすればみんなが満足するか、国内的に日本が満足し、また国際的にアメリカが満足するか、これは別問題でございます。別問題でございますが、日本側としては防衛力の漸増をやるということは、国内的にもまた国際的にもそれが必要であるとわれわれは見ておるのでございます。これは御議論がありましょう。しかしながら日本の現下の財政経済関係から見て、なるべく防衛費を少くして、そうしてほかの方面にこれを使いたい、もしくは金を使いたくない、こういうことは当然の日本側の気持でなければならぬと思います。それが防衛分担金の問題について一番むずかしい問題でして、これは今さらに振り返って詳しいことを申し上げるのもいかがかと思いますけれども、どうしても今年度はそう防衛費増強をやるわけにはいかぬ、あくまで経済緊縮をして現在のワクの中におさめなければならぬということで非常に苦労をしたわけでございます。そこで防衛分担金軽減ということも、それがためアメリカ側も譲歩をしたと私は思っておるのでございます。そこでここにあります通りに、今年は実に日本経済安定の成否を決する年であるから、これは一つ十分に防衛分担金負担も考えてもらいたいということでこれができておるのであります。     〔委員長退席床次委員長代理着席〕 そこでどれだけの防衛力増強すればアメリカ側も納得をするのか、こういう点につきましては、この交渉においては何も具体案はございませんでした。わが方としては経済の将来のことも考えなければならぬものだから、そう十分にはできぬけれども、できるだけの努力一つしてみよう、こういうことでこれが妥結をいたしたのでございます。
  11. 下川儀太郎

    下川委員 ところがこの共同声明の中に千三百二十七億の総ワクは認めるが、これは今年限りであるということが載っておりますが、そうしますと今年度限りであるということはいわゆる来年度は増すという意味なのか、それともこのワクをこれ以上減らしていくのか、これを一つ明確にお教え願いたい。
  12. 重光葵

    重光国務大臣 それはずいぶん他の委員会でも質問がございました。来年は増すという意味じゃないか、こういう質問もございました。これは増すとも増さぬとも、何もその点に触れておらないのでございます。この妥結はこれは今年限りの妥結である、来年は来年でまた別に話をしようじゃないか、こういうことなのでございます。従いまして防衛分担金軽減が今年通りにできるかできぬかということはそれはわかりません。またそれ以上にこれを軽減したいという希望日本側にはあるのでありますけれども、それは果してできるかどうかということは来年の交渉に待つよりほかにしようがないのでございます。
  13. 下川儀太郎

    下川委員 それは非常におかしな御答弁だと思う。ことし限りということは、やはり折衝の際にこれだけの防衛体制ではいけない。今年度は認めるけれども、来年度はもう少し増強しろというふうに私たちにはとれるのです。先ほどあなたがおっしゃった、一兆円のワク内において今後やっていきたい。しかしそうなってくると、勢い一兆円のワクをはずすことになってくる。こういう場合は、防衛費は今年度限りこのくらいにとどめるけれども、来年度はより以上に増強しようというアメリカ側立場が、この妥結声明書の中に盛られているんじゃないか。そうなると、いかほど一兆円のワク内で国内処理を求めようとしても、防衛費増強による日本経済破綻あるいは国内政治破綻、大きなジレンマが政府の中に起きてくるんじゃないだろうか、このように解しておるんですか、この点の見解はいかがでありましょうか。
  14. 重光葵

    重光国務大臣 さような御心配を持たれるのは、私は一応ごもっともだと思います。思いますけれども、この意味は今申し上げた通りに、これはことし限りの話し合いだ、こういうようなところでございます。そこで来年はそれ以上に防衛費を増さないんだという言質を、向うからとったわけではございません。しかしながら、それ以上に増すのであるということをはっきりこちらが約束したわけでもございません。これは来年の交渉に待たなければなりません。ただ方針といたしましては、来年の日本国情等も十分に考慮して、日本としては日本側希望が出てくると思いますから、その希望を達成するため交渉に十分に努力をいたしたい、こういうことを申し上げることはできます。さような状態であります。
  15. 下川儀太郎

    下川委員 防衛分担金折衝過程で、当然来年度あるいは再来年度分担金削減折衝というものがなされると思う。その際当然アメリカ側からすると、駐留軍撤退する、そのかわりに日本防衛力を高めるというような問題が、折衝過程において出てくると思う。先般も杉原長官にお聞きしたのでありますが、大体六カ年ぐらいたてば、駐留地上軍撤退させるだけの自信はあるということをおっしゃった。こうなると当然折衝過程において、そういう話も出されただろうと私は思う。ですからそういう話が出された以上は、今度の地上軍二万の増強、それに伴って駐留軍はどの程度撤退するか、あるいはまた今後日本政府としてこれだけの防衛計画があるから、そり防衛計画の期間にはこれだけの駐留甲撤退するというような折衝が当然はされなければならぬと思う。日本自立について、われわれは見解を異にしておりますけれども、あなた方の立場になると、あくまでも向う撤退してもらって、日本自立的な軍隊を作ることが主眼だろうと思う。当然そこに置きかえられてくるものは日本軍隊なんです。いわゆるアメリカに支配されない軍隊の創設が、おそらく保守側人たちの念願だろうと思う。そうなってくると、そこに出てくるのは、分担金折衝あるいはいろいろな問題の折衝過程において、駐留軍はいつ撤退するか、あるいはその計画をどういうふうになされるかということが必ず出てきておると思う。その点を一つ説明願いたい。
  16. 重光葵

    重光国務大臣 理論上はお話通りだと思いますし、そういうことになってこなければならぬと思います。そこで私は将来は日本防衛力増強して、アメリカ軍隊などは撤退してもらって、完全に日本独立体制というものをいたしたいと考えておるわけでございます。ただ私の今御説明申し上げたのは、この防衛分担金軽減が四月十九日に妥結をした。そのいきさつにおいて、それじゃどれだけ撤退するから日本側の方をどれだけ増強するか、そういう数字にわたって話し合いをする機会も、話し合いをしたこともなかった、こういうことを申し上げるのであります。
  17. 下川儀太郎

    下川委員 非常におかしな御答弁であります。しかしこれは当然政府の方でも、駐留軍撤退ということを言われておる。この委員会においても論議されておる。あるいはまた自由党の諸君も、あるいはまた民主党の諸君も、おそらくいわゆる保守的な立場に立つ防衛力を養うということ、これに対しては保守側は意見が一致しておる。ですからそれならば当然今日のような植民地的なああいう防衛でなくして、日本的な立場に立つ防衛ということが、おそらく吉田内閣時代からの考え方だろうと思う。ですから当然今日その計画あるいは交渉がなされておると、私は考えるわけです。たとえば今度の自衛隊増強地上軍二万の増強、それに伴ってそれでは、日本自衛隊はふやす、アメリカ軍はそのまま駐留しておる、これでは何にもならない。だから来年度また増強する場合、あるいは来年度防衛分担金削減がある場合においては、これだけの防衛力を漸増するというような、そういう裏づけられたものが日本から提示されると思う。それでなければ今後の交渉意味はないだろうと思う。ですから当然今度の交渉過程において、これだけ防衛力を漸増してくれれば、おれの方でもこれだけのものを減らすということの問題が出てきたと思うのですが、それが明確にならないというのはおかしい。もう一度伺いたい。
  18. 重光葵

    重光国務大臣 それは今申し上げました通りに、さような方向に進むのが当然だと私も思います。それで将来はさような考え方をもってはっきりとした計画に基いて交渉をしてみたい、こう思うのであります。しかしながら、そういうような数字にまでわたる交渉をするだけのまだ時期に達しておらぬ、また準備もない。ない場合において、これは一般論として防衛力増強するんだという意向をもって交渉するよりほかに方法はございません。そこでこの交渉ができた後に、具体的に計画を進めなければならぬ。それでまず必要な国防会議もこしらえなければいかぬ。防衛計画もこしらえなければならぬ。そこで将来のことは私もお話の筋に考えますが、私の説明はこれまでの話の報告であります。
  19. 下川儀太郎

    下川委員 どうも御答弁杉原長官と同じにあいまいであります。しかし今日議題となっておる自衛隊増強の問題、これも二万の増強をされる、そのかわりにアメリカ軍をどのくらい撤退せしめるか、こういうことだけは明確になっておると思う。それからジェット機生産が三カ年計画約束されておる。そういう場合においてやはり空軍に対する考え方、あるいは艦船等計画についても、いろいろと陸上あるいは海上、空軍増強計画、これがあなたの方から持ち出され、そこで防衛分担金削減その他の問題の解決が出てくるのではないかと思う。それがこっちの方は増強しっぱなし、向う撤退もしない、依然居すわりだということになると、非常に大きな問題になる。だから本年度増強に対してどれだけの撤退をし、どれだけ向うの方はマイナス立場に立つか、こっちがプラスの立場に立つか。もちろんこれは防衛の問題に関してのみであります。それが明らかに出てこなければならぬ。出てこずに、いわばその日暮しの生活のような、そういう立場交渉をやるとか、あるいは予算を組むということは、これは国民を侮辱するもはなはだしいと思う。そういう観点から、もう少し明確な立場に立っての御答弁をお願いしたいと思います。
  20. 重光葵

    重光国務大臣 私は、きわめて明確にお答えしておるつもりでございます。やり方については、いろいろ御批評はありましょう。私自身としても、決してこれが十分満足なものであるとは思いません。しかしながら、日本としてはまだ自衛隊性質そのものすらにも議論が従来あったような状態で、準備ができない。われわれの考えでは、現行憲法でもりっぱな防衛力を作り得るという考え方を持っておる。それを今後作ろうというのです。それを作った上では、私は、さような考え方米国側とも交渉をしたい、こう思っておるわけであります。そこで、今まではそこまで来ておらぬのだから、その問題は、具体的に数字をもって交渉することはできなかった、こういうことなんでございます。日本防衛力は非常に不完全であるという見地に立って、国内的にも国際的にもこれを増強するという考え方に立って、交渉が進んできておるわけであります。
  21. 下川儀太郎

    下川委員 この問題でありますけれども、その折衝過程において、日本側のいろいろな防衛の問題に関連して、たとえばアメリカ側は、日本がどの程度防衛の態勢が整ったならば、撤退してくれる。あるいはアメリカ側は、どの程度にまで日本防衛を要求しておるかというような、具体的な折衝があなたの方でなされたか。アメリカがどのように要求し、どのような要望があったか。あるいは、あなた方としては、今後の防衛計画の面からして、どのような要望向うの方に求めたか。これだけのものを自分たちの方で作るのだから、あなた方の方ではこれだけのものを引いてくれというような、具体的な数字に触れてまでの折衝を行なったか。これを聞きたい。
  22. 重光葵

    重光国務大臣 具体的の数字についての折衝はなかったということを、私はたびたび御説明をし、御報告をしておるわけであります。しかし私は、将来さような方向に、そう遠からず進み得ることと思います。私自身考え方は、この委員会、その他の委員会等において、国会の御議論も十分に頭に入れて、折衝をするつもりであります。しかし、今ここにその腹案内容については申し上げる段取りでないということは、御了承願いたいと思います。
  23. 下川儀太郎

    下川委員 私はこう思うのです。今日政府防衛六カ年計画なるものを立案中であると言われておりますが、今後立案するにしても、いろいろな今後の問題等を、ただ単に抽象的なやりとりだけでなくて、くどく言うようでありますが、数字をあげての折衝がなされなければ、今後の防衛計画の基本的なものができ得ないと思う。ばく然とした防衛計画では、何ら価値がない。アメリカとの折衝過程において、アメリカ側と十分こまかいところまで触れ合う。この程度はどうだ、この数字ではどうだというふうな数字的な折衝かなされて、初めて防衛計画が立案される。その数字を示さないで、ただ単に防衛分担金やりとりだけで、六カ年計画を立案するということは、もってのほかである。私は、そういう答弁ははなはだ不愉快であります。やはりもっと具体的に——秘密外交を徹底的に追及した鳩山内閣でありますから、過去における経過あるいは結果というものは大っぴらにこの委員会で発表してもいいと思う。これだけの数字を持っていってアメリカ側にこれだけ撤退要望した。そうしたらアメリカ側は、日本はこれだけの防衛計画をやれ。     〔床次委員長代理退席委員長着席〕 そうすればおれたちの方はこれだけの人員撤退をするというような折衝の面もあったということまで、具体的にここではっきりしていただかなければ、あなた方がお示しになろうとしている防衛六カ年計画なんというものは、いつまでたっても空のものである。そうして毎年々々増強される自衛隊その他の予算にしろ、あるいは人員というものは、全くむだにひとしいものだと考える。この点いかがでございましょう。
  24. 重光葵

    重光国務大臣 私は今述べられました折衝方法については、遺憾ながら御賛成申し上げるわけにいきません。私は防衛問題については、日本がまず独自の自分自身防衛力をはっきり編み出すべきだと思います。それをアメリカと相談をして、どれだけの防衛力が要るかということをやりとりしてきめるべき問題ではないと私は思う。私は自分ではっきりときめて、きまったものをもってアメリカ折衝するのが順序だと考えております。
  25. 下川儀太郎

    下川委員 そうなると、せんだって同僚議員飛鳥田議員がこの委員会杉原長官質問しておりましたが、その質問中に、アメリカ側との折衝経過について井口大使からあなたのところへ報告書がきている。その報告書内容に、防衛六カ年計画アメリカに提示したという言葉が載っている。この点については、杉原長官は知らないと言っている。その報告書内容には、こう書いてあります。防衛予算交渉の際、日本側よりアメリカ側に提示された六カ年計画程度の現実的計画に同調し、これが着実なる具体化を期すべきであるとの政策が漸次高まりつつあるとの印象を受ける次第であるということが載っている。そうなってくると、向うとの交渉において荷もそういう計画的なものは示さないと言っておりますけれども、明らかに防衛六カ年計画というものを、たとい試案にしろ、あるいはまたどんなものにしろ、提示されたということは、私は事実だと思う。しかも杉原長官は知らないと言っておりますけれども、それをそのときの委員会に提示された飛鳥田君は、同じように国会議員である。その持っている資料の出どころはとにかくとして、その資料の中に盛られた内容は、防衛六カ年計画日本側からアメリカ側に提出したものである。その報告書の写しを今日ここにいる飛鳥田君が持っております。そうなると、先般この委員会においてしばしば防衛六カ年計画の試案でもいいから出せといって、野党側は政府要望したのでありますが、試案もないということでわれわれは一擲されてきている。自由党諸君もそうであります。ところがたまたま井口大使からあなたに向けた報告書の中に、確かに六カ年計画の試案を提示したということが出ている。これはわれわれに対する先般の杉原長官答弁とは食い違いがある。この真偽は第二といたしましても、そのようなものか向うに提示されてある以上は、交渉過程において全然そういうものを出さないということは言い得ないと思う。あるいは先ほどからの外相の答弁を聞いておると、数字の面には触れない、あるいは計画のそうした面には触れないということをるる申されておりますが、実際的には、その手紙の一端にもそういうことが書いてある以上は、私は当然そういう交渉があったと思う。その点一つ答弁をお願いしない。
  26. 重光葵

    重光国務大臣 それはどういう書類でしょう。——それは実は私はその問題が提起されたということも聞いて去ります。聞いておりますが、それは大へん何じゃありませんか、その文書をたてにして、六カ年計画を出したのだ、こう断定することは少しくその々書の解釈としてはどうでしょうか。それは第一、井口大使アメリカ側の各方面の人に接触をして、それを伝えて書いておる文書であります。そこでそういう誤解をアメリカ側で持っておったわけで、そういうことがこっちに来たんでしょう。しかしながら、私は交渉の任に当ったのであります。当ったのでありますが、私は防衛庁からもどこからも、六カ年計画というものを交渉の題目にすべく受け取っておりません。それから、これはあります。経済六カ年計画はそれは参考のため示しました。一体そういうことがどういうふうに——間接に言い伝えられたことが報告書の一端にあたっということで、それが確定的な事実ではないのであります。そこで私は、実はそういうことがもしあったなら隠す必要も何もございません。私は外交上の交渉は今日まで最大限度にこれを出しております。そしてまた御批判を仰いでおります。十分に御批判をいただいて、そうして外交をやりたいと思っておりますから、そういう工合にしております。しかしながら実際ないのであります。六カ年計画があるならば、それは防衛庁からも出しましょうけれども——おそらくいろいろなことは考究はしておりましょう。私は国防会議をこしらえて、六カ年計画といわず、長期の国防計画を十分に立てて、国防会議に持ち出して、そうして日本の独自の案を一つこしらえてもらいたい、こう思っておるわけであります。そこでその井口大使報告書というのは、これはアメリカ人が日本関係をどう見ておるかということについて、ずいぶん長い、いろいろな情報を報告してきておるのであります。その報告書を私は非常に有益であると思いましたから、これは閣僚はむろんのこと、その他責任ある地位にある人には十分に一つ考えてもらうために配付しておるのであります。でありますから、その一部をごらんになったということは、これはけっこうなことでございます。しかしながらそれは何も、その交渉に私どもが六カ年計画を出したということの確証になるわけでも何でもないわけであります。そこで早く一つ国会も六カ年計画をこしらえてもらいたいと思う。これは国会の方々に一つなにしてもらわなければならぬ、その上でそういうことをやろう、こう思っておるのであります。それでその報告書をたてとしてそれを言われても、それはその報告書にはそういうはっきりした意味のことはない、こう私は申し上げるのであります。
  27. 下川儀太郎

    下川委員 われわれはその報告書を問題にしているのじゃないわけです。先般来から、できなければできないでけっこうなんだから、試案なるものをわれわれの前に提示してもらいたい。そうしてその試案を中心にして、自由党もあるいは社会党もそれを審議のいろいろな参考にしたいという形で防衛庁長官にこれをお願いしたわけなんです。ところがたまたまそういう文書が出た。その文書の中に井口大使向う防衛六カ年計画を提示したと出ている。そうなると、アメリカ側に提示し日本国会の方にこれを何ら発表してないということは、われわれは非常に奇怪しごくだと思った。しかも今日の日本防衛計画なんというものは日本独自でできるものではない、これはあなた方御承知のことと思う。当然これは、アメリカとの防衛体制に入っている以上は、アメリカ側のいろいろな条件、あるいは示唆を受けなければならぬ。だから日本側としてのプランを出し、そこにアメリカとの合作的な案かできてこなければならぬ。これは試案にしろ何にしろ出さなければできないものだ。いかに防衛庁に才人がそらっておったとしても、防衛庁だけでできるものでもない。政府だけでできるものでもない。やはり防衛という大きな体制になって参りますと、アメリカ側との協力、合作でなければできないのだから、その試案なるものを向うに提示して、それからいろいろな折衝によってこれがなされるものと思うわりです。だから当然こっち側だけででさる試案でなくて、向うに差し出して向うの参考資料にするとか、向うとの相談の資料として出したんだと思う。ですから防衛庁だけで大胆率直に、大きなりっぱなものができるものだとは行えない。どうしてもアメリカ側との合作によってできるものだと考えておるので、井口大使の提示した試案なるものの内容、これは私たちは現在の日本防衛という立場に立っていろいろの審議をする場合においては非常に参考になるという考えでいたわけです。あなたもこの報告書についてはおわかりのようでございますが、しかしここにそれを持って参った飛鳥田君もおりますから、これを読み上げて云々することになると時間の関係もございますので、私はその点は打ち切りますけれども、しかしこの問題は、いやしくも公文書である。しかもこれにはいろいろ書かれておる。この文章を一つ一つ読み上げると、これは明らかに提示したということがはっきりしてくる。しかし私はこういう文書あるいはあなたに対する報告書を手に入れて、そうしてこれをスキャンダル的な立場に持っていこうというような、そういうけちな考えはございません。ただ日本防衛という重大なものでありますから、うそも隠しもなく、率直に、そういう過程というものをまず話していただきたいということを、私は質問に先立ってあなたに申し上げた。井口大使の方にこういうことを訓令する、井口大使の方からこういうことが来ている、あるいはかつての架空的な案であったにしろ、折衝過程において、その相談をするためにこういうものを向うに差し上げているというようなことを率直に話されれば、何も私たちこんなことを問題にいたしません。ですから秘密外交を排除しておる鳩山内閣には似合わしからざる態度だと私は思う。飛鳥田君のこの態度でという横合いからのお話がございますので、この問題には私触れませんけれども、こういう秘密的な外交の立場に立ってのわれわれに対する態度というものは、今後これは改めていただきたいと思うわけです。
  28. 重光葵

    重光国務大臣 私は今の御批判に対しては一言申し上げなければならぬと思います。もしそういう案を持って交渉したならば、これは国会に提示して十分御批判を仰ぐということは、むろん当然なことと私は思っておる。しかし、私自身これを担当してやっておるのでありますが、そういうことはなかったということを申し上げて、それからそういうことがなくても交渉はできたのでございます。何も数字を上げて向うとやり合わなくてもできたのでございます。それから今井口大使報告云々についても、もうこれきりこの問題に触れぬと言われるから私も触れたくないのでありますが、何も井口大使自分で提示したということを言っておるのでも何でもございません。日本側からそういうことを提示したことがあるようなふうなことを間接に言っておるのであります。しかし交渉はこっちでやっておるのでございますから、それはこっちで提示したことがなければ提示したことはないのであります。井口大使に、何もないものをあるように言わせることはむろんできません。しかしそれはそれにしておいて、これはわれわれも、国防会議もやっておるのだ、実況するように努力しておるのだ、長期防衛計画も十分に責任を持ってやろうとしておるのだ、こういう意思表示はいたしました。そこでそういうことに従って今後国防会議もでき、長期防衛計画もできますれば、今後の交渉は一そう容易になる、こう考えておるので、そっちの方に一つ御尽力を願いたいと思っておるわけであります。
  29. 下川儀太郎

    下川委員 井口大使問題等々が述べられましたけれども、しかしこの問題を推し進めていきますと、飛鳥田君とあなたと対決しなければならぬ。そうしてその文書によって真偽を究明しなければなりません。しかし私どもはそういう文書によるスキャンダル的なことはやりませんけれども、一つ念のために言っておきます。  あと時間がございませんので二、三点お伺いいたしたいと思いますが、現在ジュネーヴで行われている四頭会談、その結果が非常に注目されておりますが、日本の今後の防衛計画に関して四頭会談がよい結果を及ぼしたならば、防衛計画もおのずから違ってくるのではなかろうかと思います。それをどのようにお考えになっておられるか、たとえば平和的な立場に立つ妥結がなされたという場合には、おのずから防衛計画の進め方、計画の仕方というものは考え方が違ってくるじゃないか、それを一つお伺いいたしたい。
  30. 重光葵

    重光国務大臣 それは防衛問題の全局にわたっておる重要な問題だと思うのであります。私どもは、日本防衛措置はできるだけ少くて済むように、それからまた日本の国力は武力によらずしてできるだけ発展し得るようにいたしたい、こういう考えをもって、いわゆる平和外交を展開しておることは御承知通りであります。そこで従来日本との国交のない国、特に戦争状態に置かれているような国とは国交を回復して、平和日本の国際関係を作りたい、こういうことで進んでおるわけであります。従いまして四巨頭会談がさようなことにいい影響を及ぼすような結果になることを衷心から希望するわけであります。さようになって世界の国際関係が緩和していくということは、私はわれわれの平和外交の目的を達する上において好影響を受ける、こう信じておるのであります。これがまた間接には防衛力の問題にも影響を及ぼすことを祈っております。現に軍縮問題が取り上げられようといたしておることは御承知通りであります。しかしそれだからといって、日本の独自の自衛力が今なくて済むのだというふうに飛躍的にいくわけにはいきません。これは十分に独立体制を整えて、その上で国際的に日本の地位を高めていく、こういうことが当然の順序だろうか、こう考えます。
  31. 下川儀太郎

    下川委員 よくわかります。いわゆる今後の防衛計画が、もちろん保守側立場に立つと、ある程度防衛力を持つということはわかる。しかし世界が平和的な立場に置かれた場合には、当然防衛という限界が変ってくると思う。いわゆる侵略に備えるという形から、むしろ国内の治安の安定のために持つとか、いわばほんのわずかばかりの防衛力という体制にしか私は考えられなくなってくると思う。     〔委員長退席高橋(禎)委員長代理着席〕 ましてや今後の戦いはいわゆる原水爆の戦いだ、それに備えてのそれを絶滅するための平和的な会議だということははっきりわかっておりますので、今後の防衛に対しては当然原水爆に対する考え方まで持たなければならぬ。それが民族の不幸であり、世界の不幸であるということは明らかである。従ってそれを除去するため努力が今日ジュネーヴで開かれていると私たちは解しておるのでありますから、こういう際における日本防衛体制は、そういう平和的な立場の今後のいかんによって非常に変ってくるということ、それは防衛の限界を少くするという立場に置きかえなければならぬということを話したわけでございます。また今日日本政府は日ソ交渉をやっている。またソ連としても主権と領土を尊重する立場に立っての平和交渉をあくまでも続けようとしている。そういう際に、一方ではアメリカとの共同防衛計画を立てるということは、日本の今後の平和的な外交あるいは独立平和という面に非常に支障を来たす。ですから、その点の憂慮なくしては、今後の外交交渉は暗礁に乗り上げるという考え方もわれわれには立ち得るのであります。その面も十分加味して今後の外交折衝をしていただきたい。従来の外交は秘密外交であります。どたんばにきてわかる。そうして民族が非常に危機に陥る場合が多いのですから、重光外交を私たちは秘密外交というのではありませんけれども、しかしあくまでも経過報告を絶えず国会になされて、国民的な世論、国会の世論ということを反映していく線に沿ってやっていただきたい。時間がありませんので、私言いっぱなしで失礼させてたいだきますが、そういう立場で今後とも一つ防衛の問題あるいは外交の問題等委員会においてできるだけ率直に大胆にお話しなされて、自主日本の建設という立場を擁護していただきたいということを進言して、私の質問を打ち切ります。
  32. 重光葵

    重光国務大臣 今の御忠言はまことにありがとうございました。実は私もその通りに考えておりますが、交渉内容まで何もかも言ったら交渉は初めからできないということになるので、交渉内容まで申すことはできないが、国民として、してもらいたいということについては、重要な問題については、私は全部出しているつもりでございます。今お話の点はさような趣旨をもって将来臨むということに何も異論はあるどころではない、そう努めたいと思っております。日ソ交渉などは、あまり私が説明し過ぎたという非難すらあるくらいなんであります。しかしそれはそれてよろしゅうございます。これはもうできるだけ一つ報告いたします。
  33. 高橋禎一

    高橋(禎)委員長代理 福井順一君。
  34. 福井順一

    ○福井(順)委員 最近基地問題が全国的になって、激烈な反対によってまことに重大なる段階に到達したと思われるのであります。おそらくこの基地拡張はできないだろうという見通しを私は持っておりますが、この基地拡張ができないときに条約違反となるかどうか。これを外務大臣にお答え願いたい。
  35. 重光葵

    重光国務大臣 基地の拡張は今御指摘の通りに、条約上先方の要請に応じて日本が施設を提供するところから来ておるのであります。これは政府としては、あらゆる誠意を持ってこれを実行したい、こう思っております。これが国際信義をつなぐゆえんである。そしてこれが大きな国の利益に合する。しかしながら各個の問題については、これはいろいろ陳情等があることによって、われわれもよく承知しておるずいぶん迷惑するところがあるのであります。これはできるだけ迷惑を軽減しなければなりません。政府としてはあらゆる努力を尽さなければなりません。現に尽しつつあるわけでございます。さようなわけでありますから、これはよく利害関係者の納得を得るように——結局は得る、こう私は思っておるのであります。ただ無理をしてはいけない。十分に納得してもらい、またそれに対する補償等も考えて、そして国際義務を果すようにしていかなければならぬ、こう考えておる次第でございます。
  36. 福井順一

    ○福井(順)委員 今までは日米行政協定による条約を守るために、アメリカ要請によって基地の拡張をするんだということを言ってこられたのでありますけれども、最近非常にこの基地問題が重大な段階に到達いたしましたので、十五日には閣議を開いて、そしてこれはただ単なるアメリカ要請によって拡張するのではない、日本防衛見地から拡張するんだということを国民に徹底させようという方針を立てられたということを伺っておりますが、その点について所見を伺いたい。
  37. 重光葵

    重光国務大臣 その点ははっきり私の記憶にないのでございますから、そういう決定があったということは、申し上げるわけには参りません。しかし基地の拡張の問題は、それは今御承知通りに、空軍飛行隊はむしろ米国側が今受け持っておるというような状態でありますから、米国側要請があったということは、これはそれがきっかけになったことは当然のことであります。しかしながらこれは大きな日本の国防強化の見地から見ますと、日本の国防のために必要であるということは、これは当然言えるわけであります。そうでありますから、さように解釈されるということは、私は誤まった解釈でないと、こう思っております。
  38. 福井順一

    ○福井(順)委員 そういうあいまいもことした答弁をされておるので、国民もさっぱりこれはわからぬ。それが今回のこの基地拡張の問題が、最も重大な段階にきたという一つの大きな原因だと思います。かつて本委員会におきましては、一体これはアメリカ要請によって基地拡張をするものか、それとも日本防衛見地から自主的に基地拡張をするものか、どっちだと言って私は御答弁を求めたときに、あなたも、総理大臣も、それから防衛庁長官も、もっぱらこれはアメリカ要請によって基地の拡張をするものだ、こう言われたのであります。その前にはずっと調達庁長官が、日本防衛見地から基地の拡張をする、アメリカから要請があっても、それは取り上げないんだ、もっぱらこれは日本防衛見地からやるんだというような答弁をしておられたので、そういう質問をしたのでありますけれども、これは従来調達庁長官答弁をしておられたことと、総理大臣外務大臣防衛庁長官がそのときに答弁されたこととは、全く食い違いができておった、ことごとさように政府の方針というものははっきりしていない。そこで甲論乙駿、あるいは総理大臣アメリカ要請だと言い、調達庁長官はこれは日本防衛見地からだ、こういうことを言っておる。そこで国民にも、何ゆえにこの航空機の基地の拡張がなされなければならないかというはっきりした目的がつかめないので、一つは非常に反対するようになった、私はこう思うのであります。まず第一に基地問題をアメリカとの防衛分担金削減交渉の具に供した、これが国民を大へん刺激しておる。またアメリカの言うなり放題にならなければならない。そしてアメリカがどういう要請をしておるかということも、これは秘密外交で全く国民に知らされていない。ただ基地の拡張をするんだというようなこと、それからまた非常に不熱心で、閣僚においても何らこの問題について詳しいことを知っておらない。答弁がまちまちである。こういうことから国民はこれはどうしても拡張しなければならないのかということにはなはだ疑問を持っておるので、大へん反対的になったと思うのであります。従って十五日に閣議を開かれたといいますが、どうしてもこれはやらなければならないことであるということならば、アメリカの基地の拡張約束したかどうか。あるいは従来調達庁長官が言ったように、日本防衛見地からこれはやるんだ、どちらかはっきり国民示してもらわなければ、とうてい国民は同意することはできない。きょうははっきりどちらであるか外務大臣から御答弁願いたい。
  39. 重光葵

    重光国務大臣 じゃ私からはっきりお答えいたします。この問題が最近取り上げられたのは、アメリカ要請に基くものであるということはこれは事実であります。これははっきり申し上げます。その通りであります。しかしながら基地拡張が、日本防衛力ために必要であるということも当然のことであります。安保条約行政協定一も、すべて日本が米国との間に、共同防衛責任を持って引き受けておる条約上の権利であり義務である。そうであればこの飛行場拡張ということは、日本防衛ためであるということは動かすことはできぬことであろうと思います。またそういうことについて、私は国民には何も誤解はないと思います。(「ある」と呼ぶ者あり。)それは議論はあります。双方の議論は大いに闘わせなければならぬと思う。その建前は当然のことであります。ところがその問題がアメリカ要請によって今回起ったので、これを処理したい、こういうことでありますから、調達庁長官見解、総理大臣並びに私の見解というものは、何も矛盾するところはない。それでもってあらゆる努力をし、迷惑のかからないようにあらゆる誠意を披瀝して進んでいきたいと思うのであります。
  40. 福井順一

    ○福井(順)委員 そういうことが今まではっきりと国民に示されておらない。そこで今全国で全面的に基地拡張反対が激化して、これは私の見通しでは、おそらくできないでしょう。それをあなた方はできるように考えておられるところに、大へん国民を愚弄し、国民を甘く考えておられるところがある。なぜもう少しはっきりしたことを——条約上の義務を果すなら果すのだ、どうしてもこれは条約上の義務だから果さなければならない、そう国民に知らせるか。あるいはまた、これは日本防衛立場からどうしても飛行場拡張しなければならないのだということを、なぜもっとはっきり知らされなかったか。これはどういう方針で臨まれるか。十五日の閣議では、日本防衛見地からどうしても飛行場拡張はしなければならぬということを国民に知らせようということを言われたということが新聞にも載っておるのでありますけれども、そういうふうにあなた方はだんだん方針を変えてきておられる。国民承知しないから、承知するような方針に変えてきておられると思うのでありますけれども、もう一ぺん、国民に対してどういう方針で臨まれるか、はっきり一つ答弁願いたい。
  41. 重光葵

    重光国務大臣 今御説明を申し上げた通りであります。この問題が最近取り上げられたのは、米国側要請によって、ジェット機を使用したい、こういうことで取り上げられたのでございます。しかしこれは安保条約以来の日本の国防に関する義務を遂行することになるのでありますから、日本の国防力の増強であるということは当然のことでございます。さような意味においてこれを実現をいたしたい、こういう政府の方針であることを申し上げておるのであります。
  42. 福井順一

    ○福井(順)委員 政府の方で大へん御熱心なことから始まったので、国民も納得しなかったのでありますが、いろいろ条約上の義務というような問題についても疑問が多々あるのであります。従いまして基地問題はたくさんの問題はらんでおります。最近千葉県の九十九里の射撃場で起きた問題でありますけれども、自衛隊が絶えず米軍の射撃場を使って練習をしておる。これは行政協定違反ではないかと思うのでありますが、一つこれに対する御所見を承わりたい。これは外務大臣から……。
  43. 杉原荒太

    杉原国務大臣 自衛隊関係しておりますから、私からお答え申し上げます。片貝の射撃場における訓練のことでございますが、現在米軍が使用しております射的場におきまして、自衛隊の高射砲関係の者の訓練を、アメリカ側に委託訓練ということで、便宜あそこでアメリカ軍の教官のもとに、米軍の器材であるターゲット・プレーンによって訓練を受けておるのでございます。最近は三月から六月まで約三十五日間訓練を受け、それから七、八月は二十六日間ばかり訓練を受ける予定にいたしております。これは行政協定との関係につきましては、行政協定の第三条によるアメリカ側のこういう施設に対する管理権、それに基いて日本側で便宜使っておる、こういうことに相なっておる次第でございます。
  44. 福井順一

    ○福井(順)委員 行政協定第二条4の同によれば、米軍が一時的に使用していないときは、日本国の当局及び国民はこれを臨時に使用することができるとなっておる。米軍が一時的に使用していないときに日本軍がこれを使用することができるということになる。ところがこの片具の射撃場の実情というものは、米軍が一時使用していないときじゃなくて、米軍と一緒になって常時やっておる。従来は白里の町長にあてて、自衛隊が射撃するときは米軍指導のもとに射撃をするからという通達が来ておったのでありますが最近の通達を見すとこういうことが書いてある。「本射場演習は在日米軍高射砲部隊の射撃訓練に便乗実施するので」と書いてある。「便乗実施する」とはいかなる意味であるか。これは独立に自衛隊が射撃演習をするということであって、これは行政協定違反と言わなければならぬじゃないか。これは外務大臣条約上の違反かどうかという大事なところであるから、一つはっきり答弁してもらいたい——外務大臣おわかりにならぬようだから、私は一つ詳しく法律のことを説明してあげるが、来車が使用していないときに一時的に白岡隊が使用するということは条約違反ではないけれども、ずっと米軍と一緒になって使用したり、あるいはまた米軍の演習場において便乗して射撃演習をする、こういうことは自衛隊が独立して米軍の演習場で射撃していることであるから、これは行政協定違反といわざるを得ないのでありますが、これは外務大臣どうですか、一つはっきりした御答弁を願いたい。
  45. 重光葵

    重光国務大臣 その字句の問題としての御議論ならば、一つほかの政府委員から御説明申し上げさせましょう。しかし私は、日米両軍がお互いに助け合って同じところを使用するということは、何も日米行政協定の精神に違反していることでもなんでもない、それはけっこうなことだ、こう思っております。
  46. 福井順一

    ○福井(順)委員 これは条約違反の大へんなことだ。外務大臣として実に重大な発言だと私は思う。とんでもない発言だと思う。米軍と共同して助け合って演習をどこででもやっていいなら、これは条約も何も要らぬ。そういうことにはなっていない。ちゃんと米軍が一時的に使用しないときには、日本国の当局及び国民はこれを臨時的に使用することができるということが行政協定第二条4の(a)にあるわけでありますが、それを何でもかんでも米軍がもているところなら自衛隊が相譲って使うということはまことにけっこうなことじゃないかということは大へんな問題であります。そんなばかな話はありません。今の言葉を取り消すか、それとももっとはっきりした見解を承わりたい。重光さん、それがわからなければ、あなたに外務大臣をやめてもらう。
  47. 重光葵

    重光国務大臣 それはわけはないことでありますが、そういうむちゃな議論じゃ……。それでこれは第三条も一緒によく読んで御研究になれば、そういう解釈は出てこないように考えます。第三条によって米軍使用の大要として行政協定上さしつかえない、こう考えざるを得ないのであります。
  48. 福井順一

    ○福井(順)委員 それはあなた条文の解釈が間違っていると思う。ここにちゃんと明細に書いてあるわけでありますから、これは米軍と一緒になって、いついかなるときでも常時自衛隊か演習をしていいというようなことは条約には書いてありません。またはそういうことだったら大へんな問題でありますから、もう一ぺんはっきりそれを言っていただきたい。これは外務大臣大問題ですぞ。
  49. 重光葵

    重光国務大臣 それはアメリカ軍の意思に反して承諾を得ないでそれを便りことはむろんできません。アメリカ軍が管理しておるのであります。しかし管理者がさようなことを許すと申しますか、アレンジメントしてやるということは少しも差しつかえない。行政勘定によってアメリカ軍が管理しておるのであります。
  50. 福井順一

    ○福井(順)委員 それならアメリカが管理している演習場は、日本政府の何らの意向にかかわらず、もうアメリカ軍基地の司令官のなすがままに、どうでもやっていいということですか、はっきり承わりたい。
  51. 重光葵

    重光国務大臣 さようなことはないと思います。
  52. 福井順一

    ○福井(順)委員 しかしそういう解釈をされたということは、これは速記に残りますから、あとで一つまた研究をして後日に譲りますが、これは実に重大な錯誤を犯しておられます。それならば今アメリカの射撃場は、どこでも自衛隊は一緒になって、アメリカの司令官さえいいといえば、全部一緒になってやっていいと言われるのでありますか。もう一ぺん一つ伺います。これは全国的な問題でありますよ。
  53. 重光葵

    重光国務大臣 それはこちらもそれを希望しなければなりません。向うが管理をしておるのでありますから、向うが承諾をしてこちらの希望を入れるということなれば、これはできることであります。
  54. 福井順一

    ○福井(順)委員 本来ならばそういうことではないのです。これは米軍が使用しているものを使用しない間一時的にこれは使わせてもらうということが条約建前です。条約の精神もそういうところにあるのです。外務大臣は実に詭弁を弄しておられる。また条約の解釈が大へん間違っているのであります。そういうことをされてはすべての問題が困ってくる。たとえば例を九十九里射撃場にとって見まするならば、大へんないろいろな問題が起きてくる。あの赤トンボという無人機を飛ばしてこれをどんどん射撃をする、これは日本軍が射撃して、同じ無人機を米軍が射撃する、あるいはまた一緒にどこかやっている。一体それではこの無人機がかって民家に墜落して二人の人が死んでいる。ほかに重傷者も出ている。こういうようなところに、これはどちらが責任を負うかということもわからないようなことになってくるのでありまして、これは全然アメリカの演習と日本の演習というものは別に考えなければならない。私はいずれこれは後日もっとはっきり条約上の解釈をして、もう一ぺん一つ外務大臣質問したいことを保留しておきます。大体御参考までにそれでは九十九里の射場がどういう様子であったかということを申し上げますが、  第一、豊海射場について   昭和二十三年四月九日、事前に何らの通達もなく突如として元豊海町東南端真亀地区に、米軍が進駐して海岸地先二十八万六千坪を実弾射撃演習場として接収し、対空射撃演習を開始した。当時の米軍の接収報告書によれば、片貝町、豊海町真亀川附近とも片貝射場と命名した。(昭和二十九年現在の名称に改められた)射場は常時七、八十名の管理部隊が駐留してこれを管理し、演習部隊は少いときは二百名、多いときは六百名に及ぶ部隊が七日ないし十日間くらいあて駐留して高射砲及び高射機関銃等の実弾射撃演習を実施し交代する。   昭和二十七年四月二十八日、日米講和条約の発効を見たが射場は条約発効後九十日以内に、日米両国の取りきめが成立しない場合は、従来の区域をそののまま継続使用を許すといういわゆる岡崎・ラスク書簡によって、現在に至っている。射場の射撃の範囲は海上全面にわたって三万一千ヤードを危険区域としていたが、昭和二十八年五月一日付をもって二万二千ヤードに狭められ、なお同時に週六日制が月、火、水、木の四日制となり、年間六月、十二月は漁業最盛期のゆえをもって演習が休止せられることとなった。しかしながら近時に至って百二十ミリ砲等の射撃訓練が激烈をきわめているのみならず、電波操縦機の飛翔訓練も激しく、加うるに自衛隊の大部隊もしばしば射場附近で演習を実施している。このため最近において無電機、砲弾破片等が陸上に落下したことが数回に及び附近住民を極度の不安に陥れている。  第二、射場対策について  一、昭和二十七年四月、講和条約発効に伴い射場の移転あるいは撤廃の措置が講ぜられるものと期待し町当局として政府に対ししばしばこれが陳情を行った。関係当局特に外務省は、日米合同委員会の決定以前に地元関係民と話し合いの後決定する旨を約したが、昭和二十八年五月一日演習条件を前記のごとく若干緩和したのみで依然として使用継続されている。  二、かくのごとく撤退の措置はじんぜん時日を経過し、地元の被害は累増されるのみであるから、昭和二十八年六月町としてすでに数カ年にわたってこうむった被害と将来引き続き受けるべき被害とに対する対策施設を講ぜられるよう、外務当局に強く陳情しまた国会に請願書を提出したのである。次いで射場近接の元白里町、元片貝町、元鳴浜村及び長生都南白亀村等もこれに同調し、ここに九十九里射場演習被害対策委員会が結成せられて補償陳情を強力に行ったのである。同年八月六日参議院においては九十九里米軍演習地における教育施設損害補償等の請願を本会議で採択したが見るべき補償は講ぜられていない。  三、昭和二十八年九月、演習被害の最も激甚な地元豊海の町民は右のような当局の態度に憤激し、九月二十七日町民大会を開催して、基地の即時撤退を決議し、撤退要求の町民署名は全町に及び豊海演習基地対策委員会を組織し、これらの代表として実行委員百十七名は政府関係当局並びに国会等に対し昭和二十九年一月まで大挙陳情すること前後四回に及んでいる。  四、外務当局は熾烈きわめた右の撤退運動にかんがみひそかに町当局に対し、撤退の不可能なこととともに補償の線を示した。これによって一応撤退運動は中止せられ、桜井元豊海町長は被害調査資料を整え、調達庁当局に対し強力かつ継続的に折衝を行なったのである。その結果公共建築物の屋根被害と学校の防音等についていささか方途を講じたが、町道、個人家屋の被害補償、町民の不安感情除去等については、いまだ何らの措置も講ぜられず、町民は納得しないのみならず、当局の誠意を疑って再度一触即発の状態となった。  五、昭和二十九年秋、地元真亀部落民は如上の政府当局者の態度に憤怒し、完全補償が講ぜられない限り納税せずとするものすら続出する最悪の事態に突入し、町当局責任者はその収拾について極度にこんぱいしたのである。  六、千葉県当局もまた調達庁当局も事態の重大さに苦慮し、県は三十余万円余の支出し、地元二十余万円を支出して東大教授等を依頼して個人家屋等の被害状況を調査し、科学的資料を整備し当局に提出することとなり現在調査中である。  こういうような状態でありますが、この自衛隊の問題が起きましたから、自衛隊のことをもうちょっと聞きたいのですが、一体自衛隊はいつごろから豊海射撃場を使用しているか。月何回ぐらい、また週何回ぐらい使用しているか。これをお聞きしたい。
  55. 杉原荒太

    杉原国務大臣 今の福井さんのおっしゃいますことは、私の方といたしましても実情を一つよく調査いたしまして善処をいたしたいと思います。これは、米軍のことについては調達庁が主でございますので、その方ともよく相談し、外務省ともよく相談して善処いたしたいと思いますから、御了承を願いたいと思います。
  56. 福井順一

    ○福井(順)委員 米軍とは別個に演習しているか、また当初は町長あての、自衛隊から演習実施通告書が、米軍の指導のもとに、さっき言ったように実施する旨通達されていたが、最近は米軍の射撃訓練に便乗実施する旨書いてある。この通牒の文面が変ってきたのか、指導訓練と便乗訓練とはどう違うのか、これを一つ明らかにしてもらいたい。
  57. 杉原荒太

    杉原国務大臣 私の方の趣旨は別に変っておる趣旨ではございませんで、なおただいま申し上げましたように、よく一つ事情を調査いたしまして善処いたしたいと思いますから、御了承願いたいと思います。
  58. 福井順一

    ○福井(順)委員 従来は、これは習志野の高射砲学校の方から来てやっておったのでありますが、最近はこれは全国的に、四国からも、名古屋からも、おそらく北海道からも全国的に自衛隊が来て、この射撃場を使用しておるというような状態であります。先ほど外務大臣から、米軍の射撃場を米軍の了解を得て、自衛隊希望があるならば一緒になって使うということは、まことにけっこうじゃないかという、条約に違反する御答弁かあったのでありますけれども、そういうことになると、これは米軍の射撃場でなく自衛隊の射撃場にもなる。また将来は米軍が撤退したあと、自衛隊で使うのではないか、今でも全国的に使っておるのでありますから、これは自衛隊が使うのではないかというような不安も生じてくるわけでありますけれども、これに対する御答弁一つ承わりたい。これは一つはっきりしていただきたい。
  59. 杉原荒太

    杉原国務大臣 はっきり申し上げます。将来の問題についてはまだ決定していないのでありますが、米軍の使用が解除された場合において、自衛隊が訓練上この地域の使用を必要と認めます際は、もちろん地元の方々とよく御協議した上で処理したいと思っております。
  60. 福井順一

    ○福井(順)委員 ところが今もうすでにしきりと米軍と一緒になって、——これは一番最初は習志野の高射砲隊だけが使っておったものを、全国的に全都来ておるのでありますが、おそらくここにいる内閣委員の方々も、そういうことは私は社会党の人でも御存じなかったろうと思う。これは全国的に基地問題で専門家の社会党でさえ、私は知らなかったのじゃないかと思うのでありますけれども、とにかくこういうことになってきておるということは、確かに米軍が撤退しても、これは日本軍が使用するに違いない、こう思われるのであります。しかもこの条約の解釈につきましても、外務大臣のようないいかげんな手前みその解釈をしておられるのでありますから、なおさらそう思わざるを得ないのであります。そういうことになると、これは非常に重大なことでありますから、これはもう一ぺん防衛庁長官のはっきりした御答弁を願いたい。
  61. 杉原荒太

    杉原国務大臣 ただいまお答えを申し上げた通りでございまして、米軍の使用が解除されました後に、自衛隊といたしましてなおその使用の必要があると認める場合には、地元の方々とよく御協議を申し上げた上で処理したい、こういうふうに考えております。
  62. 福井順一

    ○福井(順)委員 一体米軍の使っていたものを、われわれ国民に何にも諮らないで、内閣委員会にも、あるいは国会にも提案しないで、アメリカの基地だからといって、勝手に全国的に使っていいかどうか、もう一ぺんはっきり承わりたい。今までは習志野の高射砲隊だけしか使っていなかった。今は全国的に使っております。こういうときには町長あてにこういうものが来るわけであります。これは白里の町長あてに出ております。実弾射撃実施に関する通報、第六特科連隊第五大隊長代理、日時は昭和三十年七月二十五日から七月二十八日まで、十二時から十五時三十分、実施場所は千葉県豊海在日米軍対空射撃場となっておる、それから実施部隊は陸上自衛隊第六特科連隊第五大隊、参加人員三百二十名。こういうような非常にたくさんの自衛隊員が年中来ておる。これは全国的にやってきて九十九里海岸で射撃しておる。こうなると、これは行政協定にも違反であり、また地元との話し合い、県との話し合いも、これはアメリカの射撃場でありますから——これは全国的に、日本自衛隊が全部来てあそこで射撃するということになると様子が違ってくる。そういう場合は、防衛庁長官や外務大臣が外国に諮らなくてもいいのか、あるいは国内にも諮らなくて、勝手にそんなことを国民が知らない間にしていいかどうかということをはっきり御答弁を願いたい。
  63. 杉原荒太

    杉原国務大臣 自衛隊の高射砲隊の訓練におきまして、その必要上今言ったような措置をとっておる次第でございます。これはもっぱら高射砲の訓練の必要上、先ほど申し上げた措置をとっておる次第でありまして、その必要以外にわたっておるというようなことは考えておる次第ではもちろんございません。
  64. 福井順一

    ○福井(順)委員 そんなことは答弁にならないと思う。必要がありはしないものを子供みたいにどかんどかんと高射砲を撃つばかはないのでありますから、そんなことは児戯に類する答弁であります。これは訓練の必要上撃っているに違いないけれども、そういうことはちゃんと国民に諮った上で、国会でちゃんとその許しを得て、そうして国民にちゃんと知らせて、それから射撃すべきものであって、何かまるで米軍が射撃演習をしておるように見せかけて、全国的に自衛隊がやってきて射撃をすることは間違いだということを私はここで御忠言を申し上げたい。そうしてそれははっきりした一つの態度をとってもらいたい、明らかにしてもらいたいということです。これを一つ責任を持っていただきたい。  それから赤トンボという無人機を飛ばせております。そうしてこの無人機を高射砲で撃っておる。それがどうも大へんいやな音を立てながら飛ぶのであります。そうしてまた大へんこれは危険なものでありまして、演習時間の十二時から六時まで今までは飛ばして射撃をしておったのでありますけれども最近はこれは朝から無人機をじゃんじゃん飛ばしておる。これも行政協定違反じゃないですか。ちゃんと十二時から六時までといういとできまっているわけですから、それを朝っぱら九時から十二時までも始終無人機を飛ばせることは行政協定違反だと私は思うのでありますが、これは外務大臣どうです。
  65. 重光葵

    重光国務大臣 非常に細目になりますが、これは聞けば使用協定によってどう使用するかということがきまるのだそうでございます。その使用協定の内容を十分に調べなければ、私はここで御答弁を申し上げるわけにはいきませんから、そういうことを調べて申し上げることにしましょう。
  66. 福井順一

    ○福井(順)委員 使用協定の内容によってきまるものではないと私は思います。これは演習時間にちゃんとやらなければならないものだと思います。これも非常に危険なものです。御存じでしょうが、かつて二、三年前にこの無人機が民家に墜落いたしまして二人死んだ。ですからこれは何ら人命に危険がないものじゃないのであります。最近こういう高射砲の破片も民家に落ちてきましたが、この無人機も数回にわたって民家近くに落ちている。こういうことになりますと、この高射砲の弾片も無人機も同じことでありますから、まことにこれは危険なもので、一つよくごらんを願いたい。  これは事人命に関する重大問題であります。これはただ単なる標的の無人機じゃない。そこで大へん重大な問題であるから、射撃演習時間にやらなければならぬ、そのほかの時間にやってもらっては困る、こういうのであります。その取りきめを破って今しきりとやっておりますが、これに対する御答弁を伺いたい。アメリカに時間を守らせなければいかぬ。これは外務大臣ここで一つはっきり御答弁願いたい。同時に防衛庁長官も、自衛隊がそれをやっているものならば、それは即刻やめさしてもらわなければならぬ、これは一つ外務大臣防衛庁長官に御答弁願いたい。
  67. 杉原荒太

    杉原国務大臣 危険防止等につきましては、もちろんこれは十分気をつけてやらなければならぬことでございますから、先ほども申しますように、実情を調べまして、その点も特に留意しましてやりますから、一つ御了承願いたいと思います。
  68. 福井順一

    ○福井(順)委員 時間を守らないということは、外務大臣どうですか。
  69. 重光葵

    重光国務大臣 今防衛庁長官のお答えの通りに私もお答えします。
  70. 福井順一

    ○福井(順)委員 防衛庁長官は危険防止については十分配慮を賜わるような、まことにけっこうな御答弁を賜わりましたが、事実はそうでない、これは口先だけに終る可能性があるから、私は文書を読みます。これはアメリカの豊海射撃場司令官代理、砲兵大尉ジェームズ・C・マンデーという人が、千葉県知事にあてたわび状でありますが、「謹啓、御手紙拝見いたしました。今回の百二十粍砲砲弾の破片落下事件は誠に申訳ないと存じます。幸い人畜にも怪我なく建物にも被害のなかった事は不幸中の幸でした。破片は射場外ばかりでなく射場内にも落下いたしました。これは附近の住民ばかりでなく米軍自体も希望しない事件でした。将来充分注意いたすことを確約すると同時に善後策として関係部隊へよく連絡いたしましたことを報告いたしまして陳謝といたします。敬具。昭和三十年四月二十一日、豊海射場司令官代理砲兵大尉ジェームズ・C・マンデー、千葉県知事柴田等殿。」こういうふうに四月二十一日に陳謝したばかりなのに、その弾片がつい数日前に落ちた、こういうことでありますから、役所の御答弁でよく注意するとこう言われますけれども、なかなか人為をもってなしがたい。そしてそういう砲弾は、ついこの間アメリカの砲丘隊の責壮者がこういう陳謝をしたのでありますから、これは相当な覚悟でやったに違いない。相当処分も受けたに違いない。それが四月に砲弾の破片が落下して、またそうやって落下しておる。そこでこれは防衛庁長官は注意すると言われるけれども、注意ではだめだ。だから一体どういう方法でやるかということを御答弁願いたい。
  71. 杉原荒太

    杉原国務大臣 先ほどから申し上げておりますように、実情をよく調べまして、そして御要望の趣旨はよくわかりますから、一つ実情をよく調べまして善処したいと思います。御了承願います。
  72. 福井順一

    ○福井(順)委員 こういうように人命に関するはなはだ危険な問題でありまして、無人機が落ちて人が二人も死んだり、砲弾の破片が再々落下して、地元民は今戦々きょうきょうとしております。戦場にいるのと同じ気持になって今いきり立っておる。こういうことに対して政府は今まで何か方策を講じたか、何にもしていない。基地問題と同じように、政府の首脳部はだんだん問題がこういうことになってきて初めて右往左往して、閣議まで開くというようなことが従来の慣例であります。再再こういう事件が起きておりますけれども、これに対する責任の所在を明らかにしていただきたいということが一つ。それにもまして、これは重光外務大臣の御答弁によりますと、自衛隊アメリカと協力していつ使ってもいいという条約の解釈のようでありますけれども、一体どっちが責任を持つのだ。無人機の問題にいたしましても、最近この無人機が再々民家近くに落ちるので、よく調査してみますと、これは従来は米軍が使っておった、ところが最近は自衛隊がこの無人機を使って演習をしておるので、こういうようにしょっちゅう民家に落ちるということが言われておる。こういう意味からも、私は一体アメリカ自衛隊とどういうふうに使うのだ、どういうふうな時間で使うのだということを申し上げておるようなわけで、ただ条約上の条文のあげ足取りで申し上げておるわけじゃない。責任の所在を明らかにするという意味におきましても、明らかにしなければならない。また自衛隊が内緒でアメリカの射撃場を便乗して使うというような、少くとも日本国の射撃場を使うのに、アメリカに便乗してというような言葉を使うということは、どうも私日本国民の一人として腹の虫がおさまらぬ気もする。日本の射撃場ならば日本人らしく堂々と使ったらいいじゃないか、便乗してとは何事だというような意味もありますので、これは一つ責任の所在を明らかにしてもらいたい。これは非常に重大なる問題であります。責任の所在を明らかにするかせぬか、またアメリカとそういう話し合いをするかせぬか、ここではっきり御答弁願います。
  73. 杉原荒太

    杉原国務大臣 自衛隊ためのものである場合は、明らかに補償等についても自衛隊責任を持ちます。
  74. 福井順一

    ○福井(順)委員 この問題は先ほどの条約の条文の解釈を同時にあとまで残しておきまして、これは一つはっきりしていただかなければなりませんが、こういう重大な問題でありますので、調達庁長官に来てもらわなければならぬと思っていたのに、一体どうして調達庁長官は来ないのか、来なければ、西田国務大臣がどういうわけで来ないのですか、それを一つ答弁願いたい。これは調達庁長官が来なければだめだ。それでなければ西田国務大臣が来て、これから先の私の質問責任ある御答弁を願いたい。
  75. 安田清

    ○安田(清)政府委員 調達庁長官はけさほどから渉外事務に従事いたしておりまして、午府三時ごろにならないと手があかないということで、私が参ることに委員長に申し上げております。
  76. 福井順一

    ○福井(順)委員 これは調達庁長官に聞かなければ私はわからぬと思うのでありますが、今までこういう危険な状態になっておるにもかかわらず、何らそして最近は、地元といたしましては、百二十ミリ砲という高射砲を撃つと、五百メートル以内にいる者はからだが前にすっ飛ぶような揺れ方がする、そこで妊産婦、結核患者、その他病人はとてもおられるものじゃないというようなことから、東大の生産技術研究所に、一体この揺れ方はどのくらいの地震の揺れ方か、また人畜にどういう被害を及ぼすものであるか、あるいはまた構造物にどういう被害を及ぼすものであるかという試験をやってもらった。これも本来ならば当然国家が金を出して研究をすべきものでありますけれども、政府は一向にそういう研究をしないから、先ほど申し上げましたように、千葉県と地元が金を二十数万円ずつ出し合って、そして長期間にわたって東大に委嘱をして調査をしてもらったのでありますが、その結果によりますと、まだ中間報告でありますけれども、二キロ以内では人畜に非常に被害がある、かわらもずり落ち、壁にひびが入るし、ガラスも割れる、こういうようなことが中間報告報告されております。こういう問題についていまだ何らの補償がなされていないのでありますが、これは人道上の見地からどう思われますか。
  77. 高橋禎一

    高橋(禎)委員長代理 ちょっと福井君にお尋ねしますが、外務大臣は他にお急ぎの用事があるようですが、外務大臣に対する御質疑はもうございませんですか。
  78. 福井順一

    ○福井(順)委員 それでは外務大臣はよろしゅうございます。
  79. 安田清

    ○安田(清)政府委員 ただいま福井委員から御質疑のございました豊海射撃場の爆風によります陸上の被害の問題でございますが、これは御承知の、高射砲を撃つ爆風によりまして付近の民家に損害が生じたということで、地元の方々からこれに対する措置を求められておるわけであります。われわれといたしましてもこの射撃によります爆風で被害が生じたということは十分わかるわけでございますけれども、この問題についてアメリカ側と談判をいたしますのに、科学的な裏づけといいますか、被害のうち台風なり地震による被害を除きまして、純粋に高射砲によります被害がどの程度あるかという足がかりを持ちませんと、アメリカとの談判もできないわけでございます。しかしそういうデータをまだ持たない先からもこの交渉を始めてみようということで、アメリカとの談判をやっておりますが、現在東大の生産技術研究所で御研究をいただいておりますその結果が出ますれば、有力な武器といたしまして、なおアメリカとの交渉をいたしまして、御期待に沿うような補償が出るようにいたしたいと考えております。
  80. 福井順一

    ○福井(順)委員 東大の生産技術研究所に頼んで有力な資料ができれば、それによってアメリカ交渉すると言われるけれども、この問題は四年も前から陳情、請願してきているし、最近では地方民の感情も非常に激化して、これは納税までしないということになっておる、東大生産技術研究所に頼んだのは、一体だれが頼んだ。これは調達庁なんかが頼んだりしてやしない。県と地元が金を出し合ってやっている。調達庁は何もやっていない。そんないいかげんなことを言っては困る。  そこで私は、調達庁長官が来なければ、あるいは西田労働大臣が来なければ、そして責任ある回答を賜わらなければ、この質問をやめるわけにいかぬので、質問を中止して、午後に譲ります。午後は必ず長官あるいは西田労働大臣が出てきて、責任のある答弁をしてもらいたい。
  81. 高橋禎一

    高橋(禎)委員長代理 この際暫時休憩いたしまして、午後二時に再開することにいたします。     午後零時四十五分休憩      ————◇—————     午後二時二十一分開議
  82. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。質疑を継続いたします。受田新吉君。
  83. 受田新吉

    ○受田委員 おととい杉原長官にお尋ね申し上げました自衛隊の北部方面総監部と西部方面総監部の設置につきまして、重ねてこれをただしたいと思います。従来の日本の旧軍隊の当時、常備兵力二十個師団として、北海道には一個師団が置かれてあっただけである。そり北海道に国軍の二十分の一が置かれてあった当時と、今日北海道に置かれてある自衛隊の総人数と比較したときに、北海道に重点的に国土防衛の体制を強化されている理由が自然に発生すると思うのでありますが、現在における北海道の自衛隊の総人員と、それから旧軍時代の人員との比較検討の上に立って、北海道に重点的防衛体制をしかれた理由を明らかにしていただきたいと思うのであります。
  84. 杉原荒太

    杉原国務大臣 お答え申し上げます。今の御質問の点にお答え申し上げますにつきまして、一つこういうことを前提としまして申し上げることが適当じゃないかと私は考えるのであります。それは、旧軍時代の日本をどうして防衛するかという防衛方法についての考え方と、現在における防衛考え方というものに、かなり大きな違いがあるやに私は感ずるのでございます。これは断定的に申し上げることはできませんけれども、私の大体推察いたしますところでは、旧軍時代においては、日本防衛するのに、日本の国土直接というよりも、むしろ日本の国土外に出ていって、そこで防ぐ。その意味において、言葉は適切かどうか知りませんけれども、間接防衛的な考え方ではなかったか、つまり日本の国防線とでもいいますか、そういうものを、日本の国土内というのではなくして、外に一つの国防線的なものを考えて、外において防いで、そして間接に日本の国土の安全を守る、こういうふうな考え方が相当強かったのではなかろうかと私は推察いたすのでございます。しかるに今日におきましては、申し上げるまでもなく、いわゆる外征軍的なものではなくして、直接日本の国土において日本防衛する、こういうのが基本の考え方でございます。従いまして日本の国土全体を総合して考えてみまして、その部隊の配置等をどういうふうにするかということ、そういう点からいたしまして、北海道とかあるいは本州、四国、九州、こう考えてみます場合に、日本全体で若干の単位をなす総合部隊というものはここに限りがありますものですから、それをどういうところにどれくらいずつ配置するかということを考えてみます場合に、今日まで、御承知通り、総合的な単位をなす部隊といたしまして六管区隊というものが中心としてあるのでございますが、それは、現在北海道に二管区隊、東北から新潟県にかけて一管区隊と、それより東京を中心として西の方、三重県、岐阜県、福井県というところにわたりまして一管区隊、それ以西の本州の山口県に至るまでのところと四国を合せました部分を管轄するものとして一管区隊、それから、九州と山口県を含めたところに一管区隊というものがおる次第でございます。そうして、今お尋ねの北海道におきましては、現在人員にいたしまして約四万人ということになっておるわけでございます。そういう次第でございます。
  85. 受田新吉

    ○受田委員 そうしますと、現在北海道に置かれております二管区の兵力四万は、現在における自衛隊兵力の四分の一、大まかに言って四分の一ということになるわけですが、この北海道に四分の一の兵力を置くということは、従来においては考えられなかったことであります。今長官のお説では、外部、内部の関係を調整してそういうことに結論を持っていかれたということですが、今度西部の総監部を熊本に置くということとあわせ考えますならば、北海道と九州というところに国土防衛の重点が置かれた、かように了解してよろしゅうございますか。
  86. 杉原荒太

    杉原国務大臣 今後日本の陸上自衛隊をどれくらいの単位の総合部隊にするかということは、なお研究を要するものと思っておりますが、本年度におきまして新しく作ることを計画いたしまして今御審議をお願いしております主なるものといたしまして、混成団が二個ございまして、そうして、その混成団は管区隊に準ずるもので、その規模は、もちろん管区隊の半分といったらよいと思いますが、その二個のうち一つは北海道、もう一つは九州、こういうことにいたしたいと考えておる次第でございます。そうして本州及び四国には先ほど申し上げました総合部隊がおるわけでございますが、本州方面をどういうふうにするか、今後の研究問題でございます。さしあたり総合部隊の数から言いますと、本州、四国を合せたところが三つの総合部隊、北海道がまた三つの総合部隊、九州が二個の総合部隊、こういうふうに相なるわけでございます。
  87. 受田新吉

    ○受田委員 将来の部隊増強は四つの島に平均して進められるということに構想が練られるとするか、あるいは今のところ本州、四国にやや弱いところが存するので、その方へ補いをするという方針であるか、この点について将来の国土防衛の重点をお示し願いたいと思います。
  88. 杉原荒太

    杉原国務大臣 将来総合部隊を若干ふやすといたしますれば、その際は本州、四国ということを考えたら適当じゃないかと今実は考えておる次第であります。
  89. 受田新吉

    ○受田委員 おとといの長官の御答弁では地形、交通等の関係より国土防衛体制を考えていきたいという御所見でありました。従ってその観点から新しい総監部を北海道と九州に置くことにし、なお今後の自衛隊の兵力増強の重点は、北と南が一応固められた場合には、本州、四国へその防衛力を特に考えていきたいという御趣旨に伺ったわけであります。私は、日本の国土防衛の総合計画立場から国民に不安を与えないように、また地方によっては自衛隊の誘致をやっているところもあれば、自衛隊の新しい増強を拒否しているところもある。こういうような国民感情も十分検討しなければならぬと思うのでありますが、今まで政府といたしましては重点的に北海道へまず第一に手をつけ、漸次西の方へ移っていくという体制をしいてきた。その事情がただいまの長官の御答弁でおおよそはっきりしたのであります。そこで今後問題となることは、新しい政府の御提案の中に航空団の名称等に関して一つの委任事項が掲げられておるのであります。それで第二十一条に航空団の名称並びに航空団司令部の名称、所在地が一応定められておるのでありますが、特別の事由によってそれらの増置をする、あるいは廃止するとかいう場合における変更に関する委任規定が政令によって定められるようになっております。このことは特別の事由という場合は、今長官が示された年次計画による自衛隊増強とは別に、急に外敵が侵入してくるおそれがあるとかいうような状態の場合をさすのでありますか。あるいはほかに国内における災害その他の特別な事態が発生いたしたような場合をも含みますか、お示しを願いたいと思います。
  90. 杉原荒太

    杉原国務大臣 お答え申し上げます。そこで予想しておりますのはこういう場合が一番適例だと思います。それは予算措置がすでにきまっておることを前提にいたします。ところが部隊を配置いたしますにつきましては、申し上げるまでもなく施設を前提にいたすわけでございます。その施設の関係等がまだこの法律を作ります際にきめかねるような状態にあるというような場合が一番適例だと思います。
  91. 受田新吉

    ○受田委員 施設に関連した場合の特別事由ということでありますが、それが重点であるということでありましたが、そういう場合であるならば、あえて政令に委任して次の国会法律改正の措置をとらなければならないようなことをしないで、国会は一年に一ぺん開かれるのでありますし、十分そういうものの検討をする余裕があると思うのであります。わざわざこの規定をここにお示しになる必要はないと思うのでありますが、いかがでございましょうか。
  92. 杉原荒太

    杉原国務大臣 これは実際上そういう必要がある場合があるのでございまして、実は昨年も第五管区隊と第六管区隊につきまして、米軍キンャプの返還交渉がそれまで解決しなくて、予算の範囲内で八月に政令で増置いたしまして、そうして十二月に国会の御承認を得た、こういうふうな事例がございまして、全くそれと同じような場合のことに備えてのことでございます。
  93. 受田新吉

    ○受田委員 そのような場合に限るということでありますか、まだほかの場合がありますか。
  94. 杉原荒太

    杉原国務大臣 理論上の問題といたしましては緊急事態の場合も含まれ得るわけでございますが、今のところ実際上予想しておりますのは、先ほど申し上げたところを実益的の規定としては予想しておるわけでございます。
  95. 受田新吉

    ○受田委員 施設に関する特殊な場合を想定して特別の事由ということにしてあるということでありますが、特殊の場合、昨年の例を今引かれたわけでありますが、そういう場合がしばしば起り得る可能性がありますか。
  96. 杉原荒太

    杉原国務大臣 それは自衛隊の場合には非常にしばしば起り得ることでございます。大体アメリカ軍の施設の返還ということを考えておりまして、そうしてそれが大体期待できるのじゃないかと思っておることが、途中でその期待通りにいかぬとか、そこにいろいろ変化があってみたりいたします。これは実際問題として非常にあり得ることでございます。
  97. 受田新吉

    ○受田委員 今後の防衛の重点が航空団の増強というようなところにも置かれているということは、今回の法律改正案におきましても十分了解するところであります。従ってこれに関進して防衛庁職員の給与法においても、これらの航空手当等について新しい規定を設けられたというところに、政府の意図するところが十分うかがえると思います。私は今御答弁いただきましたよう特殊の場合がしばしば起って、その施設の活用等の理由によって国会閉会中における特別措置ができるような便法を講じさせてもらいたいという政府の意図も、今の大臣の御答弁である程度了承しました。しかしここに一つの含みがあることは、今大臣が御説明になりましたように、非常事変の場合等をやはり理論の中で入れなければならぬということを今申されたのでありますが、そうした理論上想定される特別の事由の示される場合を理論的に考えておられるという場合を、もう一度具体的にお示し願えませんでしょうか。
  98. 杉原荒太

    杉原国務大臣 これは申し上げるまでもなく、自衛隊は、直接侵略及び間接侵略に対してわが国の安全を守るということを法によって規定せられ、それを任務といたしておるのであります。そうしてその直接侵略間接侵略なるものが、いつどこでどういうふうな形態をもって現われるか、また現われないかというようなことは、具体的にはなかなか予想はつきません。しかし理論上は、そういうものが起きた場合には、それに備え得るということが自衛隊の任務として必要でございます。そういう意味において実は理論上ということを申し上げた次第でございます。
  99. 受田新吉

    ○受田委員 二十四条の第三項には「前二項の機関は、自衛隊の業務遂行上」云々とされまして、陸上、海上、航空の共同機関として置くという規定があるのでありますが、こういう場合には、その施設にとらわれずに、こういう部隊の増置とか廃止とかいう問題とは離れて、三軍の共同作戦上の立場からの考え方という見方ができはしませんか。
  100. 杉原荒太

    杉原国務大臣 これは端的に申しましょう。今具体的に予想しておりますのは中央病院を私は考えております。この場合別々の病院というよりも一緒にした方が万事よかろう、こういう場合もあり得るように法の規定をしていただきたい、こういうことで実は改正をお願いいたしておる次第でございます。
  101. 受田新吉

    ○受田委員 給与法関係にちょっと入ります。今航空関係その他海上部隊等の増置に関して、それらを重点的に取り入れた給与法の改正というものがこれに出ておるのでありますが、私はこの機会に、この給与法が防衛庁職員に対して特別の恩典を付与するような形に改正されるおそれがあるように心配しておるのであります。少くとも自衛隊の職員も防衛庁の職員も、これは国家公務員であって、国家の公務に従事する点においては何ら一般公務員と異なるところはないと私は確信しております。ところが最近何回かの改正を見ますると、防衛庁関係の職員は一般公務員に比較して相当優遇されている数字が出てくるのであります。一例はこの俸給表をながめましても、陸、海、室の中将に当る陸将等の人々は最高俸二千九百二十円の日額をもらっている。これは月額に直して三十日として八万七千六百円であります。ところが一般公務員の最高俸、通し号俸八十六号で七万二千円の場合を考えてみると、これは非常に大きな開きがある。しかしその中には地域給等で、東京などにおる人は二割、一万五千四百円つくから八万七千四百円になりますが、これは地域給は特殊の場合であって、地域給のない人にはこれはないわけです。こういう点を考えると、われわれがいわゆる武官と見たい陸将、海将、空将の最高俸の二千九百二十円は、一般公務員の最高給与である七万二千円と比較すると、その間に相当の開きが発生していると思うのでありますが、これの説明を願いたいと思うのであります。
  102. 杉原荒太

    杉原国務大臣 今御指摘の点、一般公務員との関係におきまして、自衛隊員の給与につきましては、実質的に均衡のとれたものにするというその基本的の考え方でずっとやってきておりますが、その具体的のことにつきまして今政府委員から詳細御説明申し上げさせます。
  103. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 これは受田委員は先刻御承知のことと思うのでございますが、自衛官の俸給を決定いたしますにつきましては、一般職の国家公務員の給与というものをベースにして考えておるのでございます。具体的に申し上げますと、標準にとりまする二等陸、海、空士、すなわち初任の隊員につきましては、一般職の通し番号の十六号というものを基準にとりまして、それに対しまして勤務地手当を加算し、この勤務地手当は、前回の給与ベース改訂の際に、実際の勤務地手当の率を各自衛官の階級ごとに出しまして、その階級ごとの勤務地手当の率をかけましたものをとっております。たとえて申し上げますと、二等陸、海、空士につきましては八・三二%であります。これを加えましたものに超過勤務手当相当分の一三・八%を加えております。この一三・八%という数字は警察予備隊の発足いたしました当時における基準でございまして、自後これを踏襲して参っておるのでございます。これらの総額に対しまして、その中から恩給納付金に相当する分二分、本人の医療費相当分の百分の二・四、それから営内の食費その他の経費を差し引きましたもの、これを三十で割りまして一日の日給を出しておるわけでございます。今一番上の階級の方について御指摘がございましたが、陸将、空将、海将のうち最高のクラスの者、これを甲乙とわけておりますが、甲種の方は一般通し号俸の七十三号というものを基準にとりまして、これに対しまして勤務地手当として先ほど申し上げましたようなことで計算をいたしました一三・七五%を加え、それに対しまして超過勤務手当の相当分として一三・八%をかけました。この総計から恩給納付金相当分、本人の医療費相当分を差し引きましたものを三十で割りまして基礎といたしたわけであります。大臣のおっしゃいました通り、一般職の職員との給与の均衡をとるということは絶えず考えておるのでありまして、特別に優遇したとは考えておりません。
  104. 受田新吉

    ○受田委員 今御説明のありました勤務地手当とか超勤とかいうものの数字は、今いろいろ理由を説明されたのでありますが、管理職に当る本省の課長クラス以上、あるいはそのくらいのところから上に当る人々には、自衛隊においてはいかなる配慮がされておりますか。
  105. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 ごもっともなお尋ねでございますが、管理職手当は御承知のごとく中央官庁と地方官庁等につきましてそれぞれ比率が異なっております。私どももその管理職手当の分につきましても一般職の職員との均衡ということを考えておるのでございまして、たとえて申しますと、中央官庁に相当する内務部局及び陸上、海上、航空の各幕僚監部につきまして俸給の特別調整額をどうきめておるかと申しまりと、内部部局の参事官、課長以上につきましては百分の八にきめております。それから陸上幕僚監部におきましては、陸上幕僚長を百分の五、課長相当者以上を百分の六、こういうふうに実はきめておるのでございます。これは実質におきまして一般職の職員の中央官庁におきます者の管理職手当の百分の二十五を加えたものに匹敵するというふうにきめておるのでございます。
  106. 受田新吉

    ○受田委員 ベース・アップのある都度これと均衡を保つように配慮を重ねてきたというお言葉であります。従って今の勤務地手当などにおいても、それが相当額によって増額されてきていると御説明があったと了承してよろしゅうございますね。同時にもう一つ問題が起るのはこの昇給規定です。昇給期間長が別表第四にあるわけでありますが、それによると参事官あるいは事務官、自衛官等に分けて、一例を十二カ月以上にとりましても、事務官の場合は差額が千五百円以上である者としてあり、また自衛官なら差額が七十円以上としてありまして、自衛官は月額に直すと二千百円。二千百円と千五百円とが同格に昇給規定を適用されるとなると、そこに均衝を失うおそれがありませんか。
  107. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 これはその刻み方が、七十円のところの刻み工合と千五百円ぐらいの刻み工合との一般職に相当する部分の昇給期間が違うのでありますが、実質上これに合せてきめておるわけでございます。
  108. 受田新吉

    ○受田委員 実質上これに合わすということになると、具体的に説明しますと、一般職の場合の昇給規定とその日割計算からそのようなこまかい芸をなさってきめられるわけですか。
  109. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 一般職の該当する俸給の号俸のクラスの昇給期間と、私の方のこれらの昇給の格差に相当する部分と比べてみまして、実際上月額にしまして、これぐらいの格差の者は半年以上、これぐらいの者は九カ月、それ以上の者は十二カ月というように実質的に合っているつもりであります。
  110. 受田新吉

    ○受田委員 これは非常に疑惑を抱かせられる根拠になると思います。自衛官に日給制がしかれ、一般公務員には月給制がとられている。防衛庁の職員の中においても事務官、参事官には月額制がとられており、自衛官だけに日額制がとられておる。ここに非常な疑義が起ってくると思うのであります。従ってこの際自衛官にだけ日額制を置いて、あたかも特権的な所在のように印象させることをやめて——従来だって軍人はみな月給制だったのです。この際月額制に切りかえられて、すっきりした給与体系をおしきになることが妥当ではないかと思いますが、御所見いかがでございましょう。
  111. 増原恵吉

    ○増原政府委員 これは警察予備隊が発足の当時、部隊としての特質、ことに当初における異動の関係等いろいろ考えまして、便宜的にこの日給、月給の考え方は、日給というものを取り上げたわけであります。日給にしなければならぬというような意味合いでやったわけではないわけであります。しかしたんだん警察予備隊関係では五年間これをやってなれて参りましたので、今直ちにこれを月給に直すということは夫はまだ考えておりませんので、日給といたしましても特別の不都合はなかろう、もっともこれは初め便宜的に作りましたときには、何か日給をもらう方がむしろ気分の上で日雇いのような感じが起るという意見もあったのでありますが、現在別に日給であるからどうということもないようでありますので、今特にどうということは考えておりませんが、給与制度そのものは絶えずいろいろ勉強しておりますので、御意見のところは十分参考にして参りないと思います。
  112. 受田新吉

    ○受田委員 この防衛庁職員の俸給罪なるものは防衛庁自体において作成されるのでありますか。あるいは人事院等と常に連絡をして、各省間との協調が保たれるような措置がとられておりますか。この間の事情を御説明願いたいと思います。
  113. 増原恵吉

    ○増原政府委員 もとより後者にお述べになりましたようなことでありまして、防衛庁で作りますが、特に予算関係で大蔵省、それからいろいろ均衝その他の関係で人事院の意見も聞きますし、彼此十分権衡をとりましてやっておるわけであります。
  114. 受田新吉

    ○受田委員 今の航空手当、その他の特別手当を出されるに当って、本来受くる俸給の百分の五十まではこれらの給与を支給することができるように規定されております。     〔委員長退席高橋(禎)委員長代理着席〕 これはその基礎俸給が、今局長御指摘のような、勤務地手当あるいは超勤手当等を含んだ本俸であって、本俸の中にはすでにそうした一般公務員にとつては特別の形態を有する手当が入っているのであって、その入ったものの上に立つ比率でありますから、一般職の公務員に比べたらそこに相当の開きができると思いますが、こういう点についてはいかがお考えでありますか。
  115. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 ただいま御指摘になりましたことでございますが、一つ航空手当に例をとりまして御説明してしたいと思うのでございます。当初航空手当は百分の二十五に実はきめておったのでございますが、この百分の二十五にきめるにつきましては、一般職の方における航空手当が人事院の方の定めによりますと、八級職以上の者が操縦士、航空士、機関士につきまして一時間五百円、七級職以下者が四百円、これを、最高を十二時間で押えておりまして六千円で切っております。われわれの方も航空手当をきめます際には、一等陸海空尉二号俸日額、これが八百円であります。これを標準に考えまして、六千円の一カ月航空手当をそれから逆算をいたしまして、百分の二十五というように一応きめたのでございます。ところがその後、昨年になりまして、T33のジェット練習機が使用を開始されまして、このT33のジェット練習機はほかの飛行機に比べまして相当の高スピードでございます。ほかの飛行機が三百キロかそこらの速度に対して九百何十キロの速度でございまして、速度の早いこと、及びそれに基く不安定性等を考えまして、百分の二十五ではこれは少し酷であるということで、昨年は百分の二十五の航空手当に特殊航空作業手当といたしまして百分の十五に相当するものを加えまして百分の四十を支給してきたのでございます。ところが今年度はさらにF86の実用ジェット機が運用を開始されますので、これはT33のジェット練習機よりかさらに高性能のものでございますので、このT33のジェット練習機との均衡をとりまして、これを百分の五十まで上げたいというのが今度の法律の改正案の趣旨でございます。そのほかにも航海手当、乗組手当等がございますが、乗組手当につきましても、乗組手当をきめました根拠は、一般の船員俸給表と自衛官の俸給表との差額を乗組手当の基礎としてきめておるのでございまして、一般船員と同じようなところに大体ねらいを置いてきめておるというふうに、どの手当につきましても一般職にはない特別なものがございますので、これはやむを得ませんけれども、そうでないものは、実質的に極力一般職の各種の手当と均衡をとるというふうにいたしております。
  116. 受田新吉

    ○受田委員 一般職の職員は、これは先ほど私も申しあげましたように、勤務地手当あるいは超勤手当というものは別ワクで恩給の算定基礎等にも計算されておるわけです。ところが自衛官の場合にはそういうものが全部本俸になってしまっておるのであるから、自然恩給の算定基礎なども、その自衛官の現にもらっておるそういうものを全部含めたものが基準になるのではないかと思いますが、いかがでございましょうか。
  117. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 恩給の算定基礎につきましてはおっしゃる通りでございます。勤務地手当、超過勤務手当を含んだものが本俸となっておりますから、それだけ同等の他の一般職の職員に比べますればよいということが言えると思います。ただちょっとこれは理由にならないかもわかりませんけれども、それに相当する恩給納付金というものを納めておるわけでございます。それから各種の手当の問題でございますが、これはただいま申しました通り航空手当なら航空手当をきめるにつきましては、月六千円というところを実質的に押えて、逆算して二五%というものをきめておりまして、それを基準にいたしまして、さらにT33のジェット練習機は十五を加えるということにいたしておりますから、御懸念の点は私どもは一応考慮に入れてきめておるということを申し上げてよろしいと思います。
  118. 受田新吉

    ○受田委員 今の航空手当あるいは落下さん隊員手当とか、こういうものについては新しいものがどんどんできて一般公務員に見ることができない過重な労働、責任の重大というようなものが加わって、すでにそれが考慮されるということは、その点は私納得します。しかし基本給において、今私が指摘したような超勤とかあるいは勤務地手当というものまで全部合算したものが本俸になる、今お示しになられたように、恩給納付金もそういうものを含んだものの割合から納められていると言うが、これは言論の一つの遊技にすぎないのであって、ごくわずかな納付金で恩給をもらうということになるのでありますから、われわれこの際給与体系全体の立場を考えたときに、特に本俸の上にそういうものが全部加わった公務員と、本俸と勤務地手当あるいは超勤手当というものを別に考える公務員とがかわった立場で国家の待遇を受けているということに対しては、私は問題があると思う。もし筋を通すとおっしゃるならば、防衛庁の職員にも本俸の部分と、そして勤務地手当とかあるいは超勤手当の部分を別にして、別々の計算で恩給の算定基礎にもしたり、あるいは一般の航空手当その他の別の手当を加えるときの算定基礎にしたり、今のような逆算の問題とは別の意味で給与体系をくずす一角がこの防衛庁の職員に出ていると思う。これを私は非常に心配しているのであって、かつての軍隊とはまた変った意味の、そして特権的な給与体系がどんどんできている。そういう本俸のほかに勤務地手当やら超勤手当まで含んだものを本俸に計算するような給与体系がどんどんできたら、これは大へんな問題になると思います。特に法務省の中に勤務している局長などで、当然行政官であるものが検事の給与をもらってやっているような特例もあるので、今これは非常に問題になっております。この際防衛庁の中の自衛官の職員が何俸を持っているということは異例であると私は思うのです。この点を今私が申し上げたような形に、すっきりした本俸と別の手当を考え、一般職の公務員の給与体系と一貫した体系を防衛庁としてもお立てになる必要があるのではないかと思いますが、いかがでございましょう。
  119. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 私どもの方で考えておりますのは、先ほど御説明いたしましたが、自衛官は常時勤務体制ということでありまして、超過勤務というような観念が実はおかしいのであります。いついかなる場合におきましても勤務につかなければいけない、朝六時に起きましてから夜十時に寝るまでの日課は一応きめておりますけれども、普通の役所に勤務する場合と若干類を異にするものと思います。いつでも出ていかなければならぬ者に、この部分が通常勤務であって、この部分が超過勤務だというような観念を打ち立てること自体につきまして、私どもは実は不満なのでございます。また勤務地手当の点につきましても、先ほど次長がお話になりましたごとく、最近ことに改編が非常に多いので隊員の移動がありますから、移動のたびごとに勤務地手当をかえて給与の計算をするのは、会計の経理の上から申しまして、非常な手数でございます。ここらのところを考えまして勤務地手当も超過勤務手当も実は一律に自衛官についてきめておるのでございます。この建前は残したいと実は思っておるのであります。
  120. 受田新吉

    ○受田委員 実は局長のお言葉の中に一つ問題が存していると思う。先ほど大臣から、給与体系をくずさないように防衛庁の職員については考えているのだという、はっきりしたお言葉があったのです。自衛隊の職員はいつどこへ行かなければならぬかもしれぬのだ、非常に重大な職責を持っているのだ、これは私は認めます。認めますけれども、現にそれと同じような職務に従事している警察官におきましても、超勤手当やら、あるいは勤務地手当に当る部分を本俸に繰り入れたものを基礎にしておりません。私は警察官の立場を尊重して、そうした非常災変に備える労力を自衛官だけに過重に考慮する必要はないと思うのであります。人命の保護、財産の安全をはかるために従事している警察官においてすら、こういう別ワクをとっておらぬというこの事態を見るときに、自衛官にだけこれを認める理由をもう一度お示し願いたいのであります。
  121. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 私が今申し上げましたのは超過勤務手当とか、勤務地手当というものは、自衛官につきましては営内に集合して朝から晩まで二十四時間住んでいる、警察官とは違った生涯をしておるのでありますから、その辺のところはやはり考慮に入れなければいけないのじゃなかろうか、それから大臣のおっしゃった超過勤務という観念を自衛官についてはとりたくないということと、一般職の職員の給与と筋道を違わせないようにしていくという御発言とは、私は矛盾はしないと思うのであります。
  122. 受田新吉

    ○受田委員 私は自衛官の人は昼夜を分たず苦労されるのでありますから、超勤に当る部分について何らかのワクをとることには異議はないのです。ただそれを本俸に加えて、最高俸につきまして陸将の場合は八万七千六百円、これは月額に直した計算でありますが、これと公務員の最高、次官の最高俸というようなところに当る人が七万二千円、それだけでももう一万五千円も違っている。その一万五千円も違った立場で恩給が算定されたりあるいは一般の手当が出たりする形に私は異議があるというのであって、七万二千円なら七万二千円で、本俸の分を押えて、あとの分は自衛隊の特別手当という形で出して、給与体系は一般公務員と同じようにしてはいかがかと私は申し上げた。御意見を伺いたい。
  123. 増原恵吉

    ○増原政府委員 御意見のあるところ重々拝承をいたしましたが、われわれの今やっておりますところでも、自衛官というものの実態をよくにらみまして、実質的に給与体系を乱すというようなことのないように、他の一般公務員との均衡をとるということは十分考えてやっているわけであります。御議論の焦点はそういうものをやることはいいが、本俸に繰り入れることがいけないという御議論のようであります。その点は現在までやってきておりまして、私どももそう悪いことではないとも思いますし、関係各省とも十分連絡をとっているわけでありますが、なお御議論の点は一応研究をいたしておきます。
  124. 受田新吉

    ○受田委員 これは完全に給与体系をくずす結果になると思うのです。そういう別ワクのものが本俸に計上されるということになりますと、自衛官という身分にある者は特別の俸給表を設定されて、特別の恩点に浴することになります。現に恩給などについても明らかにその間に大きな開きがある。この開きは非常な開きです。今私は最高の号俸に例をとったのですが、他もこれに準ずるわけです。今一般の公務員は局長さんたちでも最高七万二千円で頭打ちです。ところが自衛官は八万七千六百円までいく、そうすると一万五千六百円違うのです。最高一万五千六百円という違いは大した違いです。それから超勤などというものについても、管理職にある者は事実超勤をやっているのです。局長さんたちでも超勤をやっている、しかし超勤をやっておっても超勤手当という特別の待遇を受けておらない、こういう形になっているのです。それに自衛官だけが超勤をどんどんもらい、そして超勤に当る部分やあるいは勤務地手当を平均してもらう、防衛庁の職員の中で自衛官だけが別ワクの給与体系によって保護されている、将来の恩給においても大きな開きをもって恩給をつけられている、こういうことになると問題であって、すべて国家の公務に従事する人々は基本的にはその待遇の根拠を一つにしなければならぬ。将来地域給の整理などがされる場合にはまたこれが問題で、自衛官の場合は既得権であるからこれをこわしてはいかぬという問題が必ず起ると思う。そういうときに何か防衛庁の職員の給与だけが知らぬ間にどんどんと優遇された形になってくる。私はその職責の重大さ、あるいは生命財産——財産にはあまり関係はないが、生命において非常な危険を冒してやっておられるという点については、一応納得しているのですけれども、基本的な給与体系が命令二途に出るということはいかぬ。しかも今は武官というのはないのだ、みな文官ではないかというときで、自衛隊の職員でさえも文官になっている。そういう広い意味の文官であるという立場から見ても、こういう給与体系が別にあり、しかもこれが日額で計算されておるのであるから、三十倍にしてかけてみなければみなに納得できないということになるのです。初めは日額は日雇い労務者のように見えて印象が悪いから、日額の方が情ないのだという声もあったが、今日はその声がおさまったというのは、非常に待遇がよいのであるからおさまるはずです。日額にそのまま置いておく方が、そういう筋をごまかすには都合がいいということになる。私は自衛隊に日給制を温存しているところに何かつまらぬところがあると思うのですが、日給制を温存しなければならぬ理由が支払い方法の便宜以外に何かございますか。その点をお示しいただきたいと思います。
  125. 増原恵吉

    ○増原政府委員 今おっしゃったのは、何か日給をやっているのは三十倍しないとみなにわからないから、うまくごまかしがきくから日給をやっておるという意味ではなかったかと思いますが、私どもが折衝する相手は大蔵省とか人事院という練達堪能の連中でありまして、三十倍をかけたり割ったりすることはへのかっぱでありまして、これでごまかしなどは絶対にできません。また従来いわゆる勤務地手当が二五%出ておりましたときと二〇%に最高押えられましたときとで内容計算をやりかえておるわけです。ほかの方が勤務地手当が出なくなったときに、わが方は本俸に入っているからこれでいくというようなことは、大蔵省その他は絶対に認めません。たとえば今の俸給体系でほかの方が完全に超過勤務は出さないというようになりました際も、わが方が沿革的に入いておるものをそのままいくということもおそらく大蔵省の認めるところではございません。そういう点ではこれは別にどうということはないわけでございます。そうして現在自衛官の最高というと統幕議長であります。統幕議長だけは別のあれをとりまして、七万二千円というところに持ってきてある。その前第一幕僚長のときは今おっしゃった八万何ぼもらっておったのでありますが、一段上りまして自衛官の最高の地位になり、俸給は七万二千円になるということで、一向支障なく運用されておる、現在まではそういう状況でございます。これでごまかしをやろうとか何とかいう考え方はないわけでございます。
  126. 受田新吉

    ○受田委員 ごまかしが印象づけられるように一般大衆にはとかくとられがちだと申し上げたのであります。なぜ好んで日額を存置しなければならぬか。かけて三十倍してみるというところに問題がある。こういうことを考えてみたときに、支払い方法などをちょっと工夫されたら、日額が月額に幾らでも切りかえられると思うのです。わざわざ日額制なるものを温存しておいてはとかく疑惑を持たれますよ。何か治外法権的なものではないか。みな月給制なのに、なぜ自衛官だけ日額にしておるのかという疑惑は、一般公務員にだって起るのです。かつての軍人であった人々もみんな月給をもらっているのですから、そのうちにおいて自衛隊だけなぜ日額を温存しなければならぬか、そしてなぜ今のように本俸に全部加えなければならぬかというところに、給与体系をくずす一角があると私は申し上げたのです。当初試みに警察予備隊当時やってみた、五年間やると案外いいものだからそのままにしたのだということですが、この際御検討いただいて、本俸と特別手当の分をはっきり分離すること、及び日額を月額制に切りかえること、かくして一般公務員と同じ基準のもとに置き、自衛隊員には特別手当を出して優遇する、こういうふうにされる方が、この間の均衡を保つには妥当だと思いますが、杉原長官はいかがお考えでありましょうか。
  127. 杉原荒太

    杉原国務大臣 御意見の点よく研究してみたいと思います。
  128. 受田新吉

    ○受田委員 一般職の職員の給与に関する法律の二十五条に「この法律の規定に違反して給与を支払い、若しくはその支払を拒み、又はこれらの行為を故意に容認した者は、一年以下の懲役又は三万円以下の罰金に処する。」というふうに給与支払いに関する違反者に対する処罰規定が書いてあるのです。これは非常に筋の通った規定だと思うのでありますが、防衛庁職員の給与法にこれを削除しておる理由はどこにあるのでありますか、お伺いしたいのであります。
  129. 加藤陽三

    ○加藤政府委員 この問題は昨年の人事委員会で受田委員から御指摘になりましたことを今私思い出したのでありますが、一般職の職員にありますこの規定が、特別職の職員の給与法の中に必ずしも全部ないのでございます。この点は政府の不統一じゃないかというきびしい御追究を受けて、実は官房長官が困っておられたのを覚えておるのでございますが、その後法律の改正がございませんので、実はそのままになっておったのだろうと思いますが、私はいずれかに統一する方がいいのじゃないかと思います。なお統一するならば、私は受田さんの御意見とは反対に、これは行政上の処分でいくべきじゃないかと私個人では考えております。
  130. 受田新吉

    ○受田委員 防衛隊の職員は、とかく国民の再軍備反対の空気のあらしの中にあって、非常に微妙な立場に立っておられる方々である。そこで勤務されている職員の方々は、一般の公務員あるいは一般国民に対して少しでも特権的意識を持つような動きがあってはならない。すべて国民全体の奉仕者としての立場では一般公務員と同じ待遇であり、同じ責任を持ち、同じ行動に終始すべきであると思うのです。そういうところから自衛隊という発足があったにもかかわらずまだ打ち解けてこない面もあるのじゃないかと思うのでありますが、そういうところにも心を配っていただいて、特権意識が多少でも響くような形のものは全部この際おやめになられて、広い立場で国全体の均衡を保たれるような措置をお願いしたい、私はさように考えておるのです。大臣は私が先ほど来申し上げましたことについて今御考慮があるように申されたのですが、今私が申し上げたことに対して大臣は納得される面はないでしょうか。
  131. 杉原荒太

    杉原国務大臣 御意見の根本趣旨については私も同感でございます。
  132. 受田新吉

    ○受田委員 もう一つ最後に、今自衛隊といたしましては、国際的な儀礼の意味で外国使臣を招くときにおける儀仗兵とかそういうような形のものを、考慮しておるとかいうことをわれわれ何かの機会に聞いたのでありますが、われわれはこれに対してはっきりした態度を示しておるわけでありますが、こういうものに対しての大臣の御意見はいかがですか。
  133. 杉原荒太

    杉原国務大臣 これはまだ具体的には考えておりませんが、しかしそういう問題もよく研究せねばならぬかと思います。
  134. 高橋禎一

    高橋(禎)委員長代理 福井君。
  135. 福井順一

    ○福井委員 午前中の杉原防衛庁長官に対する質問の結末をつけなければなりませんので、一点御質問をいたします。四月二十何日に高射砲の破片が落ちて、米軍から千葉県知事にわび状が来た、そのわび状は先ほど読んだ通りでありますが、それには今後厳重に注意して危険のないような方途を講ずる、こうなっております。それにもかかわらず、つい数日前再び高射砲弾が炸裂いたしまして、無数の高射砲の破片が落下した。大きいものに至っては、直径五寸もあるような大きな高射砲の破片が落下しまして、かさをさしておる人がかさに穴をあけられて、もうちょっとで脳天を撃ち抜かれるところであったとか、あるいは網を修理していた漁夫の中間に落ちて、もう五寸も間違えば、これは肺臓を貫かれるところであったというような状態でありますが、これに対して杉原防衛庁長官は、危険防止の方途を講ずるということを先ほど答弁いたされましたが、先ほども私が申し上げましたように、危険防止の方途を講ずるといいましても、なかなかそれが言うべくして行われにくいことである。従いましてわれわれといたしましては、ただ杉原長官の、危険がないように何か方途を講ずるという、答弁だけでは満足しかねるのであります。安心ができかねるのであります。何となれば、これは事人命に関するまことに重大なる問題であるからであります。そこで私は一つ杉原防衛庁長官にお約束をしていただきたい。それは具体的に危険防止について、どういう措置をとられるかということを、また防止ができるかできないかということを水曜日の朝までに一つ報告していただきたい。これは自衛隊法の審議ともかね合いがありますので、水曜日の朝までにどういう危険防止の方途を講じたかということをお示しを願いたいのであります。そうでないと、現地の住民としては、再々こういうことが今までにも起きてきておりますので、これはどうも納得しかねる。また安心して生業を営むことができないのであります。これは高射砲の破片のみでなく、例の標的の無人機においてもまたしかりであります。先ほど私が申し上げましたように、かつて無人機が人家に落ちて、二名死んでおります。そういうことでありますから、ぜひこれは私のお願いを聞いて、水曜の朝までにどういう危険防止の方途を講じたか報告をしていただきたいということをお願いいたします。  それからもう一点は、無人機をやたらに朝から飛ばしておりますが、これは私が先ほどやはり申し上げましたように、明らかに行政協定違反なりと思われます。この行政協定の附表によりますと、「(5)使用期間及び時間、月曜から木曜まで、一二、〇〇時から一八、〇〇時まで。但し、射撃演習は一年を通じ三五週間をこえない。六月及び十二月は射撃を行わない。」こう書いてある。これは月曜から木曜まで、十二時から十八時までとなっておるのであります。ところが最近では、これを絶えず朝からぶんぶん飛ばしておる。やはりこれは明らかに行政協定違反でもあり、また現地住民の神経を非常に刺激いたしておりますから、これはきめられた通りに十二時から十八時までにしていただきたい。厳重にこれを守っていただきたいと思うのであります。先ほど重光外務大臣自衛隊と米軍が一緒になって仲よく演習をするということは、これはまことにけっこうなことであると答弁をされましたが、これほど矛盾してそうして無情な答弁はないのであります。何となれば米軍が基地で演習をし、自衛隊が演習をするということは、大きな現地住民の危険においてなされれておることである。そういうことに一顧もわずらわさないで、しかもその衝に当る外務大臣ともあろう者が、米軍と自衛隊がここで仲よく演習するということはまことにけっこうなことであるという、これは行政協定違反でもあり、また大へん無情な答弁をされたということを、私は先ほどもよく考えてみましたが、これは許すべからざる答弁であると考えますので、いずれこの責任を私はとっていただきたいと思う。何となれば米軍が演習をするだけでも今まで幾多の被害、幾多の人命の犠牲という損傷をこうむってなされておる、それに便乗して先ほども申し上げましたように、米軍指導による射撃演習と従来はなっておりましたけれども、ついこの一、二カ月前からは米軍の射撃に便乗して自衛隊の射撃を行う、こういうことになっておりますが、いたずらに便乗して自衛隊が射撃を行えば、現地住民の犠牲は倍加するのでありますから、この点もよく一つ防衛庁長官は考えていただきたい。外務大臣が言われるように、そんなのんびりした米軍と自衛隊が仲よくすればよいというようなことではない、何らそこに危険もなければ犠牲もないならば、それははなはだけっこうなことだと言えるかもわかりませんが、大へんこれは日本国民の危険と犠牲においてこの演習が行われておるのでありますから、そういうばかな無責任な無慈悲な答弁をされては困るのであります。どうかこの点は一つよく杉原防衛庁長官は考えてもらって、そうしてこの無人機を朝から飛ばすことはやめてもらいたい。これも一つ約束をしてもらいたい。そうしてこの行政協定の中にあるように、十二時から十八時までの間に飛ばしてもらいたい。特に最近は無人機が数回にわたって立て続けに民家近くに落ちて非常に戦々きょうきょうといたしております。聞くところによれば、従来アメリカ軍でやっておった無人機の操作を自衛隊が訓練をしておる、それでこういう不測の事態が起きてきておるというようなことを聞いておりますが、この問題などに対しましても、その長官であるところの防衛庁長官はとくと一つ考えてもらいたい。私が先ほど来申し上げますように、ゆゆしい人道上の問題である。現地住民の大きな危険においてなされておることであるということは、いつも脳裏から離れないように考えていただきたいということであります。どうかこの点を一つ考えていただきたいのでありますが、今の十二時から十八時までしか無人機を飛ばさない、これは行政協定できめられておる時間の間しか飛ばさない、これは来週の水曜日の朝までに危険防止の措置をどういうふうにとったかという答弁をしてもらうことを一つお答え願いたい。
  136. 杉原荒太

    杉原国務大臣 実は先ほどすでに現地の方に至急こちらに来るようにということを言ってやりました。それで現地の事情をよく聴取いたしまして、われわれの方でもその対策を至急協議いたしたいと思っておりますから、御了承願いたいと思います。
  137. 福井順一

    ○福井委員 至急というのはいつまでであるかということでありまして、私は来週の水曜の朝までに——これは自衛隊法の審議ともかね合せて御答弁を願いたいのでありますが、こういう非常に危険な問題についての防止策がとられないならば、自衛隊法の審議というものはあらためて私は国民の代表の一人として考え直さなければならぬ、こういうことでありますから、はっきりと何月何日までということを答弁していただきたい。
  138. 杉原荒太

    杉原国務大臣 今、来週の水曜までにはということであります。それまでにはぜひそういたしたいと思っております。
  139. 福井順一

    ○福井委員 どうか一つそういうようにお願いいたします。それから自衛隊が九十九里にやってきて米軍と一緒に射撃をしておるということに対しまして、防衛庁長官はどうお考えになりますか。
  140. 杉原荒太

    杉原国務大臣 これは、必ずしも全国的というわけでもございません。この点は御了承願いたいと思います。高射砲の訓練を受ける場所というものが非常に少いものでございますから、従来習志野方面だけであったのが多少ふえておるということ、しかしこれもほかでやることができませんので、やむを得ずやるというこの間の事情は何とか御了承願いたいと思います。
  141. 福井順一

    ○福井(順)委員 それならばそれのように、もう少しはっきりしたことを、秘密にしないで、知らせられるだけ国民に知らせる必要があると私は思う。何にもわけがわからなくて、どうも最近は射撃が大へん多いようだ、どうも無人機が大へん落っこってくる、今までと様子が違ったということから、現地住民がいろいろ調査をいたしますと——これは全国的ではないとおっしやるが、私どもは全国的といっても差しつかえないと思いますが、しきりと自衛隊が米軍と一緒になってやっておる。こういうことでは、了解してくれと言われてもなかなか了解のできるものではないと私は思うのであります。この点、午前中に申し上げうした基地拡張問題もやっぱり同じことだと思うのであります。もう少しはっきりとすべてのことを国民の前に打ちあけて話をしていただきたい。行政協定アメリカにこういう約束をしたから、これは条約上の義務で、どうしても飛行場拡張をしなければならないんだから一つがまんしてくれ、あるいはまた、日本自体の国防上の見地からどうしても飛行場拡張しなければならないので、一つ了解してくれということを国民の前に訴えたときに、われわれ日本国民は、日本防衛にどうしても必要なものであるならば了解しないわけかないと私は思うのでありますけれども、政府ではやたらに秘密にしておる。それにはいろいろ防衛分担金折衝の問題もからんでおるでありましょう、また政府自体の研究不足もありましょうが、やたらにこういうことを秘密にしておるということが、全面的な、全国的なあの熾烈な基地拡張反対運動になって現われておる。そうしてどうにも政府は手がつかなくなって、十四日にはまた閣議で何か新しい方針をきめて国民に納得してもらわなければならぬということになってくる。そういうわけでありますから、でき得る限りこの演習地の問題も国民に知らさなければならない。でないと、国民は、一体最後にはどうなるかわからないというような疑心暗鬼を生むのであります。九十九里の海岸は、今まで七年間というものはテントでありましたが、最近はかまぼこ型の永久的な兵舎が建つことになっている。そういうことになりますと、テントならばどうせ長居をするのではなかろう、いずれは立ちのいてくれるだろうと思っておった現地住民も、かまぼこ型の永久的な兵舎が建つことになると、どうもアメリカさんが立ちのいたあとは、自衛隊がそっくりそのままここを使って、ここで永久に演習をするに違いない、これは大へんなことだと考えるに至ると思う。こういう点につきまして、どうしても政府の方では、もう少しはっきりした目安というか、いつまで要るんだ、どうするんだ、またどうしたいんだというようなことを、国民に知らさなければいけない。でないと、そういう問題が起きてくるのであります。これは先ほども申します人道上の問題で、現地住民の危険において行われている射撃演習でありますから、ぜひ一つその点を考えていただきたい。現地住民にとっては、これはまことに深刻かつ重大な問題であります。この点につきまして、これからそういう方針を国民の前に明らかにしていかれるかどうかを御答弁願いたい。
  142. 杉原荒太

    杉原国務大臣 今福井委員のおっしゃる御趣旨はごもっともだと思います。ぜひそういう方針でやっていきたいと思います。
  143. 福井順一

    ○福井(順)委員 それでは防衛庁長官の御答弁で了解をいたしましたから、先ほど来お願いいたしましたことをぜひ一つ守っていただきたいということで、防衛庁長官に対する質問を終りまして、調達庁の福島長官に質問をいたしたいと思います。
  144. 高橋禎一

    高橋(禎)委員長代理 福井君、発言中ですが、防衛庁長官初め防衛庁関係の方の方には、きょうは質疑ございませんですか。
  145. 福井順一

    ○福井(順)委員 もうよろしゅうございます。  経過報告で申し上げましたように、豊海射撃場の問題は、最初外務省の国際協力局が担当して、その後調達庁が引き継がれて今日に至っておるのでありますが、当時外務省の関次長は、撤退運動の中止条件として補償の問題を出されたので、地元においては補償要求の五項目を提示いたしました。すなわち、第一に、道路を完全修理すること、第二に、学校防音施設を講ずをこと、第三に、消防施設を整備拡充すること、第四に、個人家屋の被害の補償をすること、第五に、青少年補導施設を講ずることであります。本件につきまして、外務省においては、一、二、三項目については補償を確約し、一、二項については、不十分ながら一応解決を見たのでありますが、三項はいまだ解決されていない。関次長はワシントンへ赴任するため、渡米に際して、ただ豊海の消防施設のできなかったことは役人としても、一、人間、関としても一番心残りがすると言って非常に残念がった。調達庁に対しましても強くこれが解決方を要求されたはずでありますが、その後こういう補償問題は一体どうなっておりますか。
  146. 福島愼太郎

    ○福島政府委員 御指摘の五項目のうち、道路、学校等十分ではございますまいが、若干手のつきましたものに比べまして、消防とか個人家屋の補償とか、あるいは青少年の思想対策、そういう面で十分なる手が施されておらない、外務省から調達庁に引き継がれて以後の措置いかん、そういうお話でございました。消防の問題につきましては、これはアメリカ側とも再三話をいたしておるわけでありますが、アメリカ側の施設そのものは安全基準に合致しておるという主張をアメリカ側はいたしております。アメリカ側としては、現場の施設並びに消防設備が安全基準に合致しておれば、それ以上のことをしないでもよいのであります。結局アメリカとの交渉はそういうところに参っておりますが、アメリカの消防基準というものを離れまして、国内的に消防庁でございますが、日本側の官庁において、消防基準に照して危険があるという判定を下すことになりますれば、政府としては必要な措置をとらなければならないと考えております。現在のところ、消防庁におきまして、国内的な安全基準から申して消防上の設備を増設せねばならないという判定はまだ出しておりませんので、これをアメリカ側の措置に求めるということ以外方法はないものでございますから、アメリカ側と、先ほど申し上げました消防設備の増加という問題で、交渉をいたしておるところでございます。  次に、四番目に御指摘になりました個人家屋の補償という問題であります。これは爆風、爆音によって屋根その他がゆるむという問題がおもな問題であろうと思いますが、これにつきましては、われわれといたしましては行政協定十八条による補償を求めようということで、再三熱心に交渉を続けて参ったわけでありますが、これまた必ずしも十八条にいわゆる不法行為とは申しかねる面もございまして、アメリカ側としても不法行為として払うということは困難である、そういう点では水かけ論になるおそれもありますので、われわれといたしましては、十八条に準ずる損害として、全額アメリカ側の補償を取りつけようということで、目下交渉中であります。私どもといたしましては、それまでは例年たとえば七年に一年とか八年に一度の屋根のふきかえで済んだものが、三年のうちに屋根のふきかえが絶対に必要であるという事態になれば、科学的な調査を待たずとも、その間の変化というものは射撃によって起ったのであるということは、当然の帰結としていえることであると思います。ただ現在存在します補償額は十八条の不法行為によるか、あるいは特別損失の法律によるか、この二つの道しか法律的にはありません、いずれにいたしましても、いずれの法律もこれは適用上困難であるということになりますれば、実質的にアメリカ側に十八条に準じた全額の補償金を出させるか、さもなければ日本政府としての見舞金を考える、この二つの方法しかないはずでございます。この二つのいずれかの方法をとろうと考えております。さらに考えられることは、方法といたしましては、特別損失の法律の改正ということがあります。これまた容易なことでは片づきますまいと思われます。当面は十八条に準ずるアメリカ側の補償を得るという方に力を入れて交渉して参りたい。万一交渉が長引くようであれば、その間日本側としての閣議決定もございますので、見舞金の措置という方法に持っていくべきものであると考え、それとなく用意をいたしておるわけであります。根本的に申せば特別損失法の改正ということになるかと思います。これは問題が非常に広がりまして、かえってこの問題の解決としては事態を困難にするゆえんだと考えますので、申し上げますような十八条に準ずるアメリカ側の補償か、さもなければ閣議決定に基きます日本政府の見舞金という方に事務上の準備をいたしておる次第であります。  最後に、五項目の最後になっております青少年対策の問題であります。これは問題は大きな問題であります。調達庁としても容易に具体的の解決としてお話のできる解決案を持たないわけであります。あらゆる方面の御協力を得て、中央の政府の諸機関、地方の諸機関並びにアメリカ側の協力も得て、実質的に事態を改善していく方法をしんぼう強く考えて、また実施して参らねばならないかと思っております。的確にこれによって処理解決という方式の成り立っておりませんことははなはだ遺憾であります。各方面の御協力を得て、少しでも事態を改善させる方に持っていきたいと思います。
  147. 福井順一

    ○福井(順)委員 一番初めの消防施設の拡充ということは、当時米軍基地の撤退運動が熾烈をきわめて外務省としても非常に困ってその交換条件といいましょうか、こういう五項目の要求をいれるから撤退運動をやめてくれという外務省の意向に基いて、現地の住民は撤退運動をやめたのであります。その一つが消防設備の拡充、これは当時無人機が民家に落ちて二人焼け死んでしまった、再々そういうことがあると困るというところから、消防設備の拡充をしてもらいたいということになり、関次長はそれについては自分は確約をしたのであるが、まだできないということは、人間、関としてまことにどうも恥かしい、何としてもこれはやってもらわなければならぬと言って調達庁に引き継いでいったのでありますから、これは一ぺん役所が約束をしたことは、しかもこれは大へん熾烈な撤退運動の交換条件としてそういう約束政府がしたのでありますから、これはどうしても調達庁で守っていただきたい。守らないと、これはまたいろいろ問題が紛糾してくる原因にもなると思いますが、この点について御答弁願いたい。
  148. 福島愼太郎

    ○福島政府委員 御指摘のような事情で、消防問題というものが存在いたしましたことは事実であろうと思います。私も着任した当時の話でありますので、その点明確に引き継ぎを受けたわけではございませんけれども、消防設備を充実するという問題が、無人機その他の問題に関連してきわめて大事な問題であるということにつきましては、疑問を持っておりません。一般的な安全基準というものから申しますれば、アメリカの方式に照しても、日本の方式に照しても、一応安全基準には合致しておりましても、そういう安全基準というものは、おそらくは無人機の飛び回るところでないところで適用すべきものでありましょうから、その安全基準に合致しておるから、諸事それまでということにはなるまいと思います。御指摘の点まことにごもっともであると思います。ただアメリカにいたしましても、日本側にいたしましても、国の措置として消防の拡充をはかるといった場合に、安全基準との関係その他がとかく事務上の問題でありますので、早急に事態を改善するため一つの障害になっておるという事情はいなめません。単に法律的な安全基準というものに合致しておるということのみにとらわれずに、特別の従来の経緯、あるいは今日においても無人機が飛んでおって、ほかの地方とは違うのだという特別の事情も十分考慮をいたしまして、この問題はできるだけ早く解決できるように努力したいと考えます。
  149. 福井順一

    ○福井(順)委員 今の御答弁で私は大へん満足をいたしましたが、とにかくこれは特別な事情でありますから、しかも前外務省からの引き継ぎでもありますし、現地住民もこれは必ずやってもらえるものと信じております。それには貯水池も作らなければならぬ、ポンプも買わなければならぬというようなこともありますが、ぜひ一つ今長官が言われましたように、特別なケースとして可及的すみやかにこの約束したことを果していただきたいと思います。  第二に、個人家屋の被害補償については、本年三月調達庁に提出してある二十八年十一月三十一日より二十九年の十一月二十九日まで一カ年分、すなわち白里千四百四十九戸、三千四十三万一千九百三円、豊海千三百六十三戸二千四百七十八万一千三百三十六円、片貝九百八十五戸、一千二百九十万四千四百十五円、合計三千七百九十七戸、六千八百十一万七千六百五十四円、これに対し調達庁より科学的被害調査資料の提出の要求があったので、地元及び県においては東大生産技術研究所に依頼したところ、試験の結果、これは八月調査完了の予定になっておりますが、中間報告として、射撃地点から半径二キロ以内の住家は地震の中震から軽震程度のショックを常に受けているということが一応証明されているのでありますが、特に五百メートル以内というものは、高射砲の一二〇ミリ射撃のときなど行って聞いておりますと、どかんと撃つと、まるでからだがふっと浮き上るような実に猛烈なるショックを感ずるのであります。しかもこれが五分間に一回とか十分間に一回ならいいけれども、連発されると、からだも神経も心臓もこのためにとまってしまうような気さえする。こういうひどい、大地震のようなショックを受けるわけでありますから、人畜や構築物に被害があるということは当然なわけでありますが、これに対する長官の御所見を承わりたい。
  150. 福島愼太郎

    ○福島政府委員 この爆風による個人家屋の被害という問題は、先ほどもちょっと申し上げたわけでありますが、確かにそういう影響があることは間違いないと私も考えております。ただ問題は補償とかそういう計算になりますので、これは役所仕事でありますので、その原因と結果の関係をどういうふうに数字的につきとめるかという問題があるわけであります。それからまた、そういう損害があるときめられた場合に、法規上どういう規定に基いて補償するかという両方の問題があるわけであります。調達庁といたしましては、先ほども申し上げましたように、科学的の研究とかそういう数字上の根拠を突きとめる必要ももちろんあるのでございますが、それ以前に、そういう損害があったものと仮定して、これをいかように、補償金をどこから出してくるかという点がせんじ詰まっておりません。原因と結果の探究をいたしましても、事態がわかっても金の出るところがないということになっても困りますので、主として補償の方法という問題に力を入れて参ったわけであります。爆発音によって必然的に発生するということは考えられます。行政協定十八条の規定に基いて、米軍側が法律責任を有する作為または不作為によるというものが一応考えられるわけであります。日本の国内法規でありますところの国家賠償法等の例も考えられるわけであります。しかしながら十八条の規定そのままでは不法という面が射撃そのものは許されて射撃をいたしております。最近にありましたとかいう、その弾片が人家に落ちるという問題と違いまして、射撃を許している以上、音がする、爆風が起る、それによって損害が起ることは間違いございませんでも、これを不法とすることはちょっといたしにくいわけであります。従いまして、どういうふうにしてその法律関係をたどって参るかということになるわけで、現在ではそういう損害の補償を求める方法は、十八条の不法行為、さもなければ、これは日本側の補償でありますが、特別損失の法律、間接的な損失を補償する法律があるわけであります。ところが不幸にいたしまして、いかように工夫いたしましても、これらの事案というものは、爆風による被害というものは、持別損失法にはひっかかってこないということになるわけであります。従いまして現存の法規で補償金を出してくる道がないということになります。ところが私どもの調べましたところでは、いろいろ調べて参りましたのですが、アメリカの本国におきましては、軍隊の補償なりこういうものの補償をする規定があるというような情報もつかんで参りました。しからば十八条に準じてアメリカ側に補償額の支出を求めることができるのではないかという見解に達しましたので、とりあえず最近に発生いたしました損害額をアメリカ側に請求するという措置をとって、目下交渉中なのであります。そこで被害額の算定というのがこれから問題になって参ります。これは地元でおやりいただいたのだそうでありますが、東京大学の研究所によります調査、これらもだんだん完了してくると考えておりますので、一応の請求と申しますか、交渉上に必要な損害額の見通しその他をアメリカ側に連絡いたしてございます。その研究所の調査完了をまちまして、さらに正確な資料を先方に提出しよう。アメリカ軍といたしましても、国の規則に基いて本国においては補償する、日本においては補償しないということは一応考えられないので、この困難な問題もここへ参りまして解決の道が開けたのではないかと考えております。もし万一アメリカ側との交渉妥結しないということになりますと、現存の法律関係にかかって参りません以上は、日本側の措置といたしましては見舞金が研究される道が残るだけであります。しかしアメリカ側との交渉において相当に見込みも出て参り、かつまた地元の諸君において莫大な費用をかけて調査せられた調査の結果が活用せられるということになりますと、相当見通しもつきまして、解決の見込みがあるように考えております。
  151. 福井順一

    ○福井(順)委員 声も小さくてちょっと聞き取りにくい点も多々あったのですが、アメリカ側法律で補償ができる見通しはついたということと、補償の額をアメリカ側示したということを言われたようでありますが、このアメリカ側に示された補償の額というのは、私が今申し上げた補償の額でございましょうか、御答弁を賜わりたい。
  152. 福島愼太郎

    ○福島政府委員 補償の額と申しますのは、われわれといたしましては最終的な額というものの考え方はまだ出ておらないのでありまして、問題は補償金を取る道をあけるということがこの際最も大事なことであります。最も明白な事例につきまして、とりあえずごく最近の明白な事例についてアメリカ側交渉いたしまして、道をあけるという段階でございます。従いまして御指示のありましたような総括的な金額について、これを交渉しているわけではございません。そういう総括的な金額について議論が先に出まして、多いとか少いとかいうことになるのは必ずあることであります。またそういう水かけ論の対象にもなる数字とも——これは失礼でありますが、言って言えぬことはないのであります。そういう交渉方法を避けまして、こくわかりやすい、議論にならない事例をあげて補償を得る道を開くということが今日の交渉の段階でございます。従いましてどの事例をあげておりますか、ちょっとここで記憶しておりませんが、いずれにいたしましても、そういうサンプル的な事例であると思っております。それが先ほど申し上げましたように、東大研究所その他の調査が完了するのを待ちまして、次第に拡充されて参るということになるはずでございます。
  153. 福井順一

    ○福井(順)委員 十八条でもなかなかうまく適用ができない、特損法は適用するすべもないというようなことであったけれども、アメリカ側法律で何とか補償ができるのではなかろうかというような道が開けそうだ、こうおっしゃったように解釈してよろしいでございましょうか。
  154. 福島愼太郎

    ○福島政府委員 その通りでございます。アメリカ側法律日本国において適用する責件はございませんので、これを適用してというわけには参らないのでありますが、これに準じてやったらどうかということで、交渉も若干の見込みがあると考えておるということでございます。
  155. 福井順一

    ○福井(順)委員 私どもに解釈させてもらえば、これは十八条でもよかろうし、あるいはまた特損法は、ちょうどこの前私どもが作った法律でありまして、実害をこうむっているにもかかわらずこの損害の補償ができなければ、法律はいつでも改廃ができるものでありますから、この補償を政令で特損法に入れていいということで、これも私はできると解釈しておりますけれども、政府の方でどう解釈しておられますか。どうも特損法では工合が悪いといっておられますけれども、特損法は前会私どもが作った法律で、この法律の立法の精神からいえば、明らかに損害補償を特損法ですることはできると私は思います。政令でこの特損法の中に入れるということもできると思いますから、この点ももう一度考えていただきたい。特損法は日本国に駐留するアメリカ合衆国軍隊の行為による特別損失の補償に関する法律、昭和二十八年の八月二十五日にできたものであります。これには漁業、農業及び林業その他政令に定むるものということで、学校教育法、海上輸送法というのが入っております。特に海上輸送法というのを政令でこの特損法にあとで入れたものでありまして、この法律を作るときには、全く私は一人でやったようなことでありますから、よくその法律を作ったときの精神というものをわきまえておりますけれども、これは入れられないことはない。当然九十九里の補償の問題などは、特損法に入れてしかるべきだとさえ思っているのでありますから、政府の方でぜひもう一度一つよくお考えいただきたい。もしできなければ私どもの方でまた大いにやってもよろしい、こう思っております。  それから実際に長官もかつて九十九里のあの演習場をごらんになったこともありますが、私はちょうど落選中で長官にお伴ができなくて、撃っているときに行かれたか、行かれないかは存じませんが、とにかくあの大砲をのべつまくなしに撃っていることは、実にたいへんなことであります。特に最近ではその射撃は熾烈をきわめておる。従来六月と十二月は撃たないという月でありますので、六月に撃たなかった分を七月に撃とうということから、実に猛烈に撃つというようなことでありまして、あれをどかどかやられた日には、とてもいても立ってもいられない。私などはたいへんどうも生れつき心臓の弱い、気の弱い男でございますから、とてもああいうようにどかどかやられた日には、私は一日もいられない。よくあの攻撃下であそこに住んでおられるものだと不思議に思うくらいであります。特に九十九里の射撃場の特徴といたしましては、全国にあれくらい砲座と家屋が接近しているところはないでしょう。御承知のように砲座のすぐ裏はずっと家屋になっておるのでありますから、そのものすごいことはとうてい筆舌に尽しがたいといってもいいと思うのであります。東大生産技術研究所に頼んだ経由は、先ほど安田議長が東大生産技術研究所に頼んだんだ。いかにも特別調達庁で頼んだかのごとく言われましたけれども、あれは間違いで、最初調達庁では、そんなものに頼まなくてもよかろうというような御意向であったそうですが、どうもこの補償がはかばかしく行かない。そのはかばかしく行かない原因は、どのくらいの被害があるかわからぬじゃないか。なるほど大砲を撃てば、けつが持ち上げられるような大きな音もするけれども、それによってどの程度の被害があるかということははっきりわからぬから、科学的なものがなくてはわからぬということを言われまして、それがこの補償の延びた原因でもあると思って、それではということで、千葉県と地元で約七十万円くらい金を出し合って東大生産技術研究所で日本で初めての砲撃によるところの被害の研究をしてもらって、調達庁にもすでに中間報告書が行っていると思いますけれども、その中間報告書によれば、とにかく五百メートル以内は大地震だということでありますから、これは五百メートル以内にある数百戸の家屋というものは屋根瓦がずり落ち、壁にひびが入り、ガラスが割れるということは当然のことである。これがいかに科学的な根拠が今までなかった、あるいはまた補償するところの法がなかったというような理由で、今までいたずらに遷延されたということは、私は人道上から言ってもゆゆしい問題じゃなかろうかと思う。特に私は非常に人道主義の提唱者であるところの特別調達庁長官の一考を煩わしたいと思うのであります。そこで早急にこれは補償してもらわなければならない。今まで三年にもなりまして何十回、何百回となく地元の住民は外務省にあるいはその後調達庁に、あるいは国会に対して陳情いたしておりますけれども、一つもらちがあいてない、全然個人の被害というものに対しましては補償が与えられていないのであります。どうかぜひ早急に補償するように考えていただきたい。現在申請してある個人補償は一年分でありますが、二十八年十一月三十日以前のものについては、海上同様補償の対象として考慮さるべきものだと思うのでありますが、御所見承わりたい。
  156. 福島愼太郎

    ○福島政府委員 この家屋の被害と申しますのは、被害のあることは間違いなくあると思っておりますが、目に見えてその場で瓦が落ちる、ガラスが割れるというだけのものでありません。何年かかかってずれてくるということであろうと思いますので、その算定がなかなかむずかしいということも御指摘の通り、確かに補償のらちがあかなかった原因であることは間違いございません。ただそれ以上にいかような筋道によって補償金を取り立てるかという点にさらに困難もあったということも、先ほど申し上げました通りでございますから、御承知おきを得たいのでございます。この補償の道があいて参りますれば、そのきまり方にも若干関係をするであろうと思いますけれども、過去における損害を見ないというわけに参らない次第のものであろう、何年間かかかって一定の損害が出るということになりますか、それともその都度々々の損害というものを算出する方法が出ますか、いずれ補償方法それ自体というものにつきましてはきまり方によると思いますけれども、実質的には射撃を開始いたしまして以来損害を考えるという方式をとる必要があるとは考えております。
  157. 福井順一

    ○福井(順)委員 これは海上がすでにそういうことで補償がされておるのでありますから、海上と同様の補償をしていただきたい。また直接被害がないといわれましたけれども、これはたまたまその場におられれば、砲撃による震動によって即座にガラスも割れることもたくさんあります。また瓦が自然とずり落ちて来ていたのが全部落ちてしまう。直接にたまたまおられれば、そういうことも目撃されるのでありますが、これに対しましてはどの程度の直接の損害かというようなことは、いずれはっきりした東大の生産技術研究所の調査結果が八月にはできますから、それによってまた論議したいと思っております。とにかく海上と同様に、今までのものに対しては補償の対象として考慮さるべきだと思うのでありますから、そういうことで一つお考えいただきたい。その基地周辺五百メートル以内には病人、妊産婦が二十五人ばかりおります。米軍は午前中無人機操縦訓練、正午から六時間ほとんどぶつ通しで百二十ミリ高射砲の演習を行なっており、その音響と震動は病人でなくても神経衰弱で参ってしまうほどであるが、これに対し救護施設をどうしても講じてもらわなければならない。とにかくこの砲撃の音響と震動は非常なものであります。かつて菊池寛という有名な小説家は、自分は従軍をしたいけれども、非常に心臓が弱いので、小さい砲撃でもショックを受けてころっと死にやしないかという恐怖心があるので、従軍ができないのだといったことがあります。これは小説を読む人なら大てい知っていることでありますが、私なども百二十ミリ砲を近くで撃たれると心臓の鼓動がとまってしまうような気がする。それが最近はのべつまくなしに撃つわけでありますから、行って見ているとどかっといえばしりが持ち上ってしまう。それが十分か十五分間隔があってそれからまた撃つのならば神経が休まってだいぶ耐えやすいのでありますけれども、これはきめられた時間によけいに撃つというのが訓練だそうであります。実は少し砲撃の速度をゆるめてくれぬか、これじゃとても住んでいられないということで、対策委員の数人がつい数日前に現地の司令官に申し入れをしたことがある。そういたしますと現地の司令官は、よけい撃つのがわれわれの訓練だ、ここで何発撃てということまでワシントンからの通報によってわれわれはやっているのだから、君たちの申し入れをじかに受け付けるわけにはいかぬと言っております。現地の住民が、こんな熾烈な砲撃ではいても立ってもいられないと、たまりかねて司令官に直接交渉に行ったわけでありますが、断わられた。こういうように、実にものすごい衝撃を精神的に肉体的に与えられるのでありますから、妊産婦やまたは長く結核で療養している人、その他病気で寝ている人々に与える影響というものは実に多大なものがある、非常に悪い影響があるということを、これは医者も再三忠告をいたしております。そういうことでありますから、これはどうしてもこの救護施設を考えていただきたい。たとえば十キロなり二十キロなり離れたところに、こういう妊産婦とか結核患者、その他長い病気で寝ている患者、あるいはこういう衝撃によって悪影響をこうむる患者を連れていって、見てもらう救護施設をどうしても講じてもらいたい。これは人道上の見地からどうしても考えていただきたいと思いますが、これに対する長官の御所見はいかがでしょう。
  158. 福島愼太郎

    ○福島政府委員 砲撃と申しますか、射撃演習が熾烈でありますことは仰せの通りであります。従いましてその付近五百メートルの半径内におられる妊産婦なり病人なりに影響があるということは、御指摘の通りであろうと思います。当方といたしましてそれに対してどういう処置をとるか、これははなはだ申しわけありませんが、そこまでまだ考えておりません次第でございます。御指摘の点は十分研究さしていただきたいと思います。
  159. 福井順一

    ○福井(順)委員 今まで現地では住民が再三陳情、請願をいたしてきておりますが、三年になってもらちがあかない。一向政府の誠意が見えないということから、鳩山総理大臣を相手取って人権擁護局に提訴したそうです。そういうようなことも起きてきている。またわれわれは損害を長い間こうむっているにかかわらず、政府は何ら誠意ある態度をもって臨まない。すなわち補償してくれない。何回かけ合っても、何十ぺん陳情しても、政府の方で何ら誠意ある答弁をしてくれないということから、現地では今税金を納めないという運動が起きて、町長などもその将来の成り行きを非常に憂慮しております。そういうこともありますので、その点諸般の事情を勘案の上に、早急にこの問題の補償をしていただくよう最大の努力を切に長官に要望いたします。  もう一つ自衛隊と米軍の演習の問題であります。自衛隊によるところの補償は調達庁ではされぬということにもなりましょうし、その辺の補償問題はまことにむずかしい問題になってくる。先ほど外務大臣は、米軍と日本自衛隊とが仲よく演習したり射撃したりするということは、まことに慶賀すべきことだと言われましたが、これは人道上非常にゆゆしき問題だと思う。この現地の住民の犠牲においてなされているところの演習を何と心得るか、私はほんとうにもっと食い下りたかったのでありますが、午前の時間がなくてそのままになってしまったのであります。しかしこのけしからぬ無知な答弁については、責任を厳重に追及することにいたしておりますが、こういうわけで自衛隊と米軍が一緒に演習するようになりますと、この補償関係はまことにむずかしいことになって参りますか、その点のところはどういうような御見解でありましょうか、長官の御所見を伺いたい。
  160. 福島愼太郎

    ○福島政府委員 これはもともと調達庁で提供いたしました米軍の演習場でありますので、これを自衛隊が使えるかどうかというところに、御指摘の通り問題がございます。私どもの考えと申しますか、われわれの処置いたしております限りでは、米軍の演習場に吹いて日本自衛隊が演習する場合には、これが一時的のものであれ臨時的のものであれ、米軍の演習計画の範囲内で共同に演習するというたちのものであれば、演習場の管理権は米軍に与えておりますので、その管理権の範囲内において米軍が日本自衛隊と一緒に演習するという計画を立てれば、これはできることと考えております。ただこれが恒久的になりましたり、あるいは大規模になりましたり、自衛隊の力が多くて米軍がほとんどおらないというように様相が変って参りますと、これは演習場そのものの性格を変えるとかあるいは共同使用ということにいたすとか、そういう処置が必要になって参ると思っております。現在の九十九里の演習場の状態をなお私どもも精密に調べてみたいと思っておりますが、アメリカ側の持っております演習場の管理権の範囲内において、共同防衛の当事者たちが共同演習してみるという計画の範囲内であると考えますので、一時射撃の演習に参ってまた帰っていくというたちのものであると考えられますから、それならば米軍の演習場で、米軍の計画に基いて、自衛隊と共同の演習をするということになりますので、演習場は使って差しつかえないという限度であると考えております。共同使用なりあるいはそれ以上に演習場の性格を変えなければ、自衛隊をして使用させることができないという問題は、そういう事態になりましてから処置いたさなければならぬと思います。従いましてこの補償という問題も、現在の状態、すなわちアメリカ側の管理権に基いてアメリカ側の発意に基いている共同トレーニングであるという限りにおきましては、自衛隊の与えました損害とアメリカ側の与えました損害とを差別するいわれはないのであります。アメリカ側責任において自衛隊に使わしております以上は、調達庁がこのすべての損害の補償を見ろという建前になっておるのでございます。
  161. 福井順一

    ○福井(順)委員 今の御答弁で大へんはっきりいたしたのであります。現地の住民といたしましては、こう再々自衛隊が来てやっているようでは、一体自衛隊によって損害をこうむったときはどちらが損害を補償するのだろうということで大へん不安に思っていたわけであります。特に今までの通達は米軍の指導により射撃演習をする、こういう通達でありましたが、最近では米軍の射撃演習に便乗しと書いてありますから、便乗して射撃演習をするというのでは、どうもこれは独立してやっているのだ、こういうことになるのでありまして、この用語も米軍に便乗して射撃演習するという、こんな自衛隊で自衛ができるわけはない、米軍に便乗して射撃演習するような、精神的な基礎の薄弱な、こんな自衛隊が戦争ができるわけはないのでありまして、まことに自衛隊の精神いずこにありやと言いたい。私はこの点も将来一ぺん防衛庁長官の所信を聞きたいと思ったのでありますけれども、そういうことが書いてあります。米軍の射撃に便乗して射撃演習をするということが書いてありましたから、特に私は長官に伺ったのでありますが、今後自衛隊がたくさんやってきて、そして補償の点をどっちがやるかわからぬような場合がありましたら、いち早く地元に通達して補償関係もはっきりしていただきたいと思います。ぜひそういうことで調達庁一本でやっていただきたい、これはお願いする次第であります。  るる申し上げましたように、現地住民は大へんな犠牲をこうむっております。これは事実行ってみられればどなたもわかることと思いますが、その犠牲においての演習であります。その犠牲をひとり現地住民のみに負わせるということは許すべからざることでありますから、そういう見地からとくと御考慮願って、たいへん早い機会に誠意のある補償をしてもらいたい。私は、補償と申し上げると、補償さえすればいつまでここでやってもいいのだ、米軍がアメリカへ帰ったならば、あとは自衛隊がどしどしやっていいというような、外務大臣のような思想の持ち合せはございません。現地の方々の一番希望するところは何としても一刻も早く撤退してもらいたいということであります。あの九十九里からあの射撃による轟音やあのショックをなくしたい、そして憲法にあるところの安心して平和な楽しい生活を毎日したいということが、現地住民の最大の要望でありますけれども、日本が敗戦の結果こういうざまになって、条約ができて、そうしてどうしてもアメリカの兵隊が撤退できないものならば、しかたがないからがまんしようじゃないかというような、うるわしい考えでありますから、どうかその点を考えてもらいたい。補償さえすればいいということでは決してございません。どうしても撤退していただきたいということであります。従いましてここで一言私がつけ加えて申し上げ、念を押しておくことは、アメリカの射撃場としての使命が終ったならば、これを自衛隊の射撃場にするということは不可能だということを銘記していただきたい。第一にとにかくあの射撃場を撤退してもらうということが切なる要望であります。それができないから、第二の要望といたしましてすみやかに補償をしてもらいたい。それからまた病人をこの砲撃のショックから守れる安全なところに運んで養生ができるような救護施設をしてもらいたいということであります。どうか一つ誠意を持って考えていただきたいということ、そしてその方途をすみやかに講じていただきたいということを要望いたしまして、私の質問を終ります。最後に一つ福島調達庁長官の御答弁をお願いいたします。
  162. 福島愼太郎

    ○福島政府委員 ただいままでるるお示しいただきましたことは、まことにごもっとものことばかりであると考えております。政府といたしまして射撃場の廃止というようなことも希望にたえないのでありますけれども、いつ具体的にどういう計画になりますか、その辺のところは今のところわかりかねます。将来アメリカ軍の演習場として使用されることがなくなりました暁に、自衛隊の演習場になるという場合には、もちろんその点地元の諸君の了解を得る必要がありましょうし、そういう問題は将来の問題でございます。当面はアメリカのおります限りは、調達庁におきまして、これの補償業務に万全を期さなければならないと考えております。その補償業務につきまして、直接非常に処置しやすいものもございます。また非常に間接的になりまして、損害そのものはだれが考えてもあるものでありましても、間接の問題として相当研究を要するものもあるわけでございます。しかしながらいずれにいたしましても、射撃というものから起って参ります影響についてでき得る限りこれを改善すること、また改善のおくれるものについては、あるいは改善のできないものについては、補償そのものが目的ではございますまいけれども、補償という問題について公平な措置をとれるように最善の努力をいたしたいと考えております。
  163. 福井順一

    ○福井(順)委員 落しましたので、もう一つ。今後の機会に内閣委員会で一ぺん現地を、砲撃しているときに調査に行っていただきたいことと、生産技術研究所の人を呼んで研究の結果をここで発表してもらいたいこと、それから現地住民の責任者を参考人として呼んでもらいたいこと、この三点を一つお願いいたしまして私の質問を終ります。委員長におかれましては、しかるべくお取り計らい願います。
  164. 高橋禎一

    高橋(禎)委員長代理 ただいまの申し出の件は理事会を開いて決定することにいたしましょう。次会は公報をもってお知らせすることとし、本日はこれにて散会いたします。     午後四時二十九分散会