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1955-07-14 第22回国会 衆議院 内閣委員会 第40号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年七月十四日(木曜日)     午前十時三十五分開議  出席委員    委員長 宮澤 胤勇君    理事 高橋 禎一君 理事 辻  政信君    理事 床次 徳二君 理事 江崎 真澄君    理事 高橋  等君 理事 森 三樹二君       大村 清一君    長井  源君       林  唯義君    保科善四郎君       眞崎 勝次君    松岡 松平君       粟山  博君    大坪 保雄君       小金 義照君    大橋 武夫君       福井 順一君    田中 正巳君      茜ケ久保重光君    船田  中君       石橋 政嗣君    飛鳥田一雄君       中村 高一君    下川儀太郎君       矢尾喜三郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣 杉原 荒太君  出席政府委員         防衛庁次長   増原 恵吉君         通商産業政務次         官       島村 一郎君  委員外出席者         専  門  員 龜卦川 浩君         専  門  員 小關 紹夫君         専  門  員 安倍 三郎君     ————————————— 七月十三日  委員大坪保雄辞任につき、その補欠として小  金義照君が議長指名委員に選任された。 同日  委員松野頼三君辞任につき、その補欠として大  坪保雄君が議長指名委員に選任された。 同月十四日  委員船田中君及び中村高一君辞任につき、その  補欠として福井順一君及び西尾末廣君が議長の  指名委員に選任された。     ————————————— 七月十三日  恩給法の一部改正に関する請願松平忠久君紹  介)(第四〇四三号)  同(堀内一雄紹介)(第四〇四四号)長野県  中野市の地域給指定に関する  請願西村彰一紹介)(第四〇四五号)  神奈川県相模原町外五箇町の地域給引上げの請  願(森島守人紹介)(第四〇四六号) の審査を本委員会に付託された。     ————————————— 本日の会議に付した案件  自衛隊法の一部を改正する法律案内閣提出第  八一号)  防衛庁設置法の一部を改正する法律案内閣提  出第八二号)  防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案(内  閣提出第八三号)  通商産業省設置法の一部を改正する法律案(内  閣提出第一四一号)     —————————————
  2. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 これより会議を開きます。通商産業省設置法の一部を改正する法律案議題とし、これより討論に入ります。討論の通告がございませんので、これを省略するに御異議ありませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 なければさよう決します。  これより採決いたします。本案を原案の通り可決するに賛成の諸君の起立を求めます。     〔総員起立
  4. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 起立総員。よって本案は原案通り可決いたしました。  なお本案に対する委員会報告書の作成につきましては、委員長に御一任を願いたいと存じますが、御異議ございませんか。     〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  5. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 なければさよう決します。     —————————————
  6. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 次に自衛隊法の一部を改正する法律案防衛庁設置法の一部を改正する法律案及び防衛庁職員給与法の一部を改正する法律案一括議題とし、質疑を継続いたします。  暑中の折柄上着を脱いで質疑応答なさるようにいたしましょう。  それでは大橋武夫君。
  7. 大橋武夫

    大橋(武)委員 大臣にあらためてお伺いいたしたいと思いますが、前回委員会最後質疑におきまして、特に私は大臣にお願いいたしておきました。すなわち六カ年計画というものがまだ漠然たるものであって、この年次計画としてこれを発表する段階になっておらないと言われます大臣のお言葉は、これはまことに遺憾であります。事実その通りならばお示しいただくわけにはいかないと思いまして、この点は了承いたしました。しかしながら今日議題となっております法案におきましては、陸上部隊は二万、また海上部隊並びに航空部隊において約一万の増員計画が載っておるわけなんでございます。しこうしてこの増員というものは大臣もたびたび言われましたところの将来きまるべき六年計画の当然一部となるべきものである、こういう次第でございますから、六年計画そのものを御説明いただく必要はございませんが、大よその六年計画最終目標と申しましょうか、今日の日本情勢下においてこの程度自衛力が必要である、こういう大見当だけはお示しいただかなければ、この二万の陸上部隊あるいは一万の航空部隊または海上部隊増員が果して現在の日本として必要な増強であるかどうかということを私どもは判断することができないわけなのでございます。従って私は少くとも日本防衛力として、この程度のものが現在必要だろうということについての大よそ見当をお示しいただきたいということを申したわけなのでございます。大臣はたびたび六カ年計画については責任を持って国会に示すことは今日できないということを言われております。おそらくこのおよそ見当についても責任を持って示すことはできないということを言われるのではないかと想像いたします。私は責任を持って示してもらいたいということを申しておるんではありません。今年度ゆえ陸上部隊を二万人増加しなければならぬかということは、この程度陸上部隊が必要であるという最終目標が示されない限りは、本年度計画は果して適当であるかどうかということをわれわれは判断できない。そういう意味におきまして、責任を持って言明できる、できないという問題でなく、事実上今日二万人の増強計画を立てられるに当って、あなたを初め、防衛庁の当局の考えられておりますところのばく然たる目標でもよろしいから、この際ぜひ一応お示しいただきたい。これがこの前私が委員会最後において大臣にお願いをいたしておったところなのでございます。どうぞそういう意味におきまして、私はぜひとも大臣がこの点についてわれわれの審議に絶対必要な資料をお示し下さることを重ねて切望いたす次第でございます。
  8. 杉原荒太

    杉原国務大臣 お答え申し上げます。ただいま大橋委員から少くとも大よそ目標というものを示せ、そうでなければこの審議も非常にむずかしい、これは、御趣旨は私ごもっともなことだと思います。私らも何とか努力いたしまして、そういうものを早く作りたいと努力して参っておるわけでございます。それからまた必ずしも今の内閣なりましたときだけじゃなくして、前の自由党内閣時代からも、内部的にはそういう点に非常に御苦心になって御研究をしておられたわけでございまして、私らもそのあとを継ぎまして、それをもとにしていろいろ研究を重ねてきておるところでございます。この六年にわたる各年次別のは別にしても、少くとも最終のところの大よそ見当というものを考えます際に、その大きな前提といたしましては、自由党内閣時代からもそういう一貫した基本方針だったと思うのですが、日米の共同の安全保障というものを前提にいたしまして、そうしてまた日本国力等考え日本の国情を考えて、いろいろと御苦心になってやっておられた、私らも全然そういう点は同じ考え方でございます。そうして陸につきましては——これはもう陸海空につきまして端的に、適切に言い表わすことはできません、非常にむずかしいと思しますけれども、ごく大体の考え方というものを申し上げますと、陸につきましては一朝事あります場合に、少くともある方面において侵略があったというような場合を仮定いたしますれば、若干の期間はそこで持ちこたえる。そうしてもちろん大きな前提といたしましては、今の日米安全保障、それからアメリカ側支援というようなことも考慮に入れて考えなければならぬことだと考えます。少くともそういったある期間だけは持ちこたえるというものを作りたいという大体の考え方でございます。それから海につきましては、少くとも日本重要港湾、水道とか、それから最小限近海日本海上交通というものにつきましては、これも完全とまではいかなくても、ある程度の備える力を持ちたい。これは大きな背景といたしましては、アメリカ側支援というものを大きく予想しての話であります。それから室につきましては、これはことに財政上の関係で非常にむずかしいものだと思います。一方防衛上の必要から見ますと、防空の必要性ということはよくわかりますけれども、実際問題としては非常に充実をして、またこれなどについては、特にアメリカの空軍の機動力というようなものを考えて、一朝事ある場合にはアメリカ支援というものを期待する、そうして日本側としては一朝事ある場合に侵略してくる力を航空によって、日本の上空を全然こっち自身一人で制室権というようなものはとうていむずかしいと思いますが、敵の跳梁を許さない、そういうふうなことを大体の考え方として考えていくべきじゃないか、こういうふうに考えておる次第であります、そういう点で、前からずっと研究をしておられたところをもとにいたしまして今研究を重ねておる次第でございますから御了承を願いたいと存じます。
  9. 大橋武夫

    大橋(武)委員 大体その必要量を決定する原理原則考え方というものはたびたびお示しをいただきまして私も了承をいたしております。この増強目標を定めるに当っての方針については、一応大臣のお考え方でよろしかろう、こう私は考えておるのであります。しかし問題は、二万というのは、これは現実数字でございまして、この数字が果して適当かどうかということを判断いたしますには、やはり同じ数字だけをもとにして判断する以外にはないわけでございます。従って大臣の言われました陸上部隊としては、侵略に際して領土の一部分を若干期間持ちこたえるだけのものがなければならぬ、こう言われておりますが、それについてはただ口でそう申しましただけでは直ちに数は出てこない。ある人は同じそういう表現もとに三十数万ぐらいはなくちゃいかぬだろう、こういうような数を述べておられる人もあるわけでございますし、また一昨日問題になりました、旧改進党案においては十二万程度でよろしい、こういう案も現実に出ておるわけでございます。そこでこの場合において、大臣陸上部隊二万人の増強を今年度において御計画なりました、その二万人の計画を立てるに当って大よそ大臣の頭の中で描いておられた目標というものは、一体どの程度の概数であるか、これをお示しいただかなければ、私どもはこの二万人が適当かどうかという判断をするのにちょっと困難をいたすわけなのでございます。従ってそういう意味におきまして、どうぞ一歩を進めて陸上部隊については大よそ何万ぐらいというような表現をもちまして大よそ目標をお示し願いたいと存じます。
  10. 杉原荒太

    杉原国務大臣 大橋委員のおっしゃいますことは、数字としてごもっともで、私自身もそう思います。そうしてまたそういった数字的なことをなるべくこれから研究を重ねて、早く成案を得まして、その上で一つ便宜国会にもお示しすることにいたしたい、こう考えておる次第でございますが、今日までのところいろいろ困難な事情によってできないのははなはだ遺憾でございます。どうか、一つその点御了承を得たいと思います。
  11. 大橋武夫

    大橋(武)委員 大臣目標がないとおっしゃるのですか。それとも、あるけれども自信がないからここでは言えないとおっしゃるのですか。
  12. 杉原荒太

    杉原国務大臣 まだほんとうにここで、国会に対して政府として責任を持って申し上げ得るまでの具体的な数字というものを得るに至っていないことを非常に残念に存じておる次第でございます。
  13. 大橋武夫

    大橋(武)委員 しかし大臣はすでに今年度現実増員計画二万人については責任を持って具体的に議会提案をいたしておられるわけでございます。従ってこの二万人という数字の出て出たもとになっておりますところの十八万なり二十万なりというところの陸上部隊の大よそ目標というものが大臣の頭の中にはすでに描かれておらなければならぬといわなければならないのでございます。この大臣の頭の中に描かれておる十八万なり二十万なりという数字が、あるいは将来研究の進むに従って再検討せられ、あるいは将来変った数字になるかもしれぬということは、これは当然あり得ることと私も考えます。従って将来において、この前言明せられた目標と変っておるじゃないかというような場合においては、変った理由をお示しいただいたならば、われわれもそれはけしからぬというような考え方をするつもりはないのでございます。しかし少くとも頭の中にあるところの十八万なり二十万なりという数字が果していかなる数字であるかということをはっきりお述べいただかなければ、私どもはこの二万という数字が果して適当かどうかということを判断することができないのでございますから、一つどうぞその点をお考えいただきまして、ぜひともお漏らしをいただきたいと存じます。
  14. 杉原荒太

    杉原国務大臣 実のところ私自身考え方といたしまして、その点についてこうと申し上げ得るまでの考え方がまだ実は、申しわけない次第でございますけれども、まとまっていないわけでございます。従いまして今ここで国会に対してあまりにも責任のとれないようなものをお話し申し上げる段階に至っていないわけでございまして、そういうものをただお話し申し上げるのは、これは国会を尊重するゆえんでもないと思います。また内外に対する関係というような点から考えましても、もう少し政府として責任を持って国会に対して御説明申し上げる、こういうところに至りまして発表するようにいたしたい、こう考えますから御了承願いたいと思います。
  15. 大橋武夫

    大橋(武)委員 これはどうも非常に私ども大臣の仰せられる意味を理解するに苦しむのでございますが、増員目標というものについては、自信を持って言えないのにもかかわらず、すでにその一部であるところの今年度陸上部隊二万人増員というものについて責任を持って政府提案をいたしておる。何ゆえに一部であるところの二万については責任を持てるが、その二万を算出する根拠になったところの全体の数字については漠然たることもいえない、こう言われるのでございましょうか。
  16. 杉原荒太

    杉原国務大臣 実はこの六カ年計画というようなものをきめて、そしてそれを根拠にして、本年の増員のことを出すのが本来の筋合いと思うのでございますが、遺憾ながら、先ほどから申し上げますように、その六カ年の計画というものがまだできておりませんので、本年はとりあえず三十年度分において必要と認めますものを計上いたしまして御審議をお願いしておるような次第でございます。
  17. 大橋武夫

    大橋(武)委員 今年はとりあえず二万を増員したといわれるのですけれども増員するに当っては、おのずから目標というものがなければならぬわけです。従ってとりあえず二万を増員するという以上は、とりあえず幾らかの目標というものをかりに定めてなければならぬと思うのでございますが、そのとりあえず二万にきめるに至ったとりあえずの目標というものでよろしいから、一つ御発表いただきたい。
  18. 杉原荒太

    杉原国務大臣 考え方といたしましては、先ほど申し上げましたような大体の考え方をいたしておるのでございますが、ただそれを数字的に具体的に述べるというところまでの案をまだ持ち得ないような状況でございます。その考え方そのものは、本年度計画の中でも、その考え方もとにして計上いたした次第でございます。
  19. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それでは少し角度を変えて伺いたいと存じます。今年の二万という増員は、大臣が頭の中に描いておられる目標より多いのですか、少いのですか。二万を増員いたしました結果陸上部隊は十三万何がしになると思いますが、この十三万という陸上部隊の数は、大臣の頭の中に描いておられる目標より多いのですか少いのですか。
  20. 杉原荒太

    杉原国務大臣 本年陸上自衛隊を二万名増員計画の御審議をお願いいたしておる次第でございまして、これで陸上自衛官合計十五万になるわけでありますが、それによって総合部隊といいますか、今できております六管区隊、それから今度規模におきましてはそれの約半分くらいの程度混成団というもの、これの二単位というもの々中心にしてのものでございます。これで合計八個の総合部隊単位というものができるわけでございます。これを今後陸上自衛隊に関しましてどれくらいの総合部隊が必要であるか、これはなお検討を要することと思います。少くともこの程度のことは本年において必要だろう、それでは今後どれくらいの陸上自衛隊総合力が必要か、そしてまたその規模等をどうするか、これは一つ今後さらによく検討いたしたいと考えておる次第であります。
  21. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると今年は十五万になったのですが、十五万というのはあなたのお考えになっておられる目標よりも多過ぎるのですか、少な過ぎるのですか。
  22. 杉原荒太

    杉原国務大臣 もちろんこれは最小限本年はこれだけ必要だろう、こう考えておる次第でございます。将来ある程度総合部隊増加が必要かと存じますが、今それはどういうところにどれくらいということはなお検討をしたいと考えております。
  23. 大橋武夫

    大橋(武)委員 大臣は今回の増員は六カ年計画の一部となるべきものということは当然お認めになっておられますか。
  24. 杉原荒太

    杉原国務大臣 大へん失礼でございますが、御質問の御趣旨は……。
  25. 大橋武夫

    大橋(武)委員 六カ年計画の内容はまだ決定しておらないということは、先般大臣からこんこんおさとしがございまして十分に了承いたしております。しかし今年度のこの陸上部隊二万の増加というものは、これは当然六年間かかって最終的に完成するところの六カ年計画の一部としてできるものだ、考えられるものだという御趣旨でこの二万の増員考えられておられますか。それともこれはこの六カ年計画の外である、こういうお考えでございますか。
  26. 杉原荒太

    杉原国務大臣 お答え申し上げます。この六カ年計画が、先ほどから申しますように、まだ成案を得るに至っていない次第でございますけれども、そうして本年は陸上自衛隊二万ということの計画を立てた次第でございますが、これは六カ年計画がきまります場合には、当然その一部の中に織り込まるべきものと考えている次第でございます。
  27. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それでは、ことし二万を増員した結果、陸上部隊の数が十五万になる。この十五万というのは、六年計画最終目標を突破してしまっておるというようなおそれはございませんか。もう六年計画最終目標以上になってしまっている、六年計画によって今後ふやすどころか、逆に整理をしなければならぬ、こういうことになる心配はないんですか。
  28. 杉原荒太

    杉原国務大臣 これはそういうふうには考えておりませんでございます。
  29. 大橋武夫

    大橋(武)委員 なぜ、そういうふうにならないということが言えるのでしょう。
  30. 杉原荒太

    杉原国務大臣 六年計画において最終陸上自衛隊の量というものがどれくらいであるかということについては、なお検討を重ねなくちゃならぬことだと思いますが、しかし大体の、先ほど申し上げましたような基本的の考え方からいたしまして、ことし十五万名というのは、それをこえるというようなことはない、こう考えておる次第でございます。
  31. 大橋武夫

    大橋(武)委員 多過ぎるか、少な過ぎるかという問題は、これは大臣もすでに御承知通り、数の比較の問題なんです。従って大臣は、今回の増員の結果、陸上部隊が十五万になるが、十五万は多過ぎないんだ、六年計画最終目標と比べてみて多過ぎないんだという以上は、大臣が十五万以上のある目標というものを頭の中に描いておられるから、それと比べて、これはまだその目標には達しておらぬ、だから多過ぎないんだということを、自信をもってただいま断言しておられるわけであります。私どもには不敏にしてその目標なるものがまだ頭の中に描かれておりません。従って私どもは、多過ぎるか多過ぎないか、わからないのです。ですから、多過ぎるものならば、これは明らかに不当な計画といわなければならぬ。多過ぎないものならば、そしてそれが必要なものならば、国民り負担が多少あろうとも、この際この法案は成立せしめる必要があると考えしおる。従って私ども国民に対する国会の義務といたしまして、これは多過ぎないんだということを、われわれ日身も国民に対して責任をもって説明しなければなりません。大臣は、大臣だけが議会に対して責任をもって説明するものができないんだ、こういって自分の責任を非常に言っておられますが、われわれもまた、この法案を通した以上は、国民全体に対して、この増員は妥当なる増員であって、決して不当に多過ぎるものではないんだということを、責任をもって説明しなければはらぬ立場にあるのです。従って大臣だけがこれは多過ぎないということを心得ておられるのでは、われわれとしては自己の職責が果し得ないのでございますから、大臣が多過ぎないという根拠として描いておられる、この最終的な地上部隊目標というものを、一つわれわれにも好意をもってお教えいただきたい。そうすれば、われわれは責任をもって国民の前にこの法案を通すことができるのです。しかしそうした数字が与えられない以上は、われわれは責任上この法案を通過させるというわけにはいかなくなる。どうぞこの点はよくお考えいただきまして、この目標というものをはっきりお示しいただきたいと存じます。
  32. 杉原荒太

    杉原国務大臣 せっかくたびたびの御要求でございますが、遺憾ながら、まだ数字的に申しまして幾ら幾らということまで今申し上げ得る段階に至っておりません。それができましたら、もちろんこれはお話申し上げなくてはならぬことでございますけれども、御了承願いたいと思います。
  33. 大橋武夫

    大橋(武)委員 私は大臣お答えをあげ足をとるわけではないのです。大臣お答え自身に非常に大きな矛盾があるようでございます。従ってこの点を一つ大臣は御判断いただきたいと思うのです。それはどういうことであるかというと、今回の二万人の計画は多過ぎるものではない、こういうことを大臣ははっきり言っておられるのです。二万という数が多過ぎるものでない。従って今年度最終計画として陸上部隊が十五万人になる、これは決して多過ぎるものではないという以上は、多過ぎる、あるいは多過ぎないということは、先ほどからたびたび申し上げております通り二つの数を比べまして、片一方の数よりこっちの方が多くない場合に、これは多くないということを言うわけです。多いか少いかということは、数と数の比較でなければ、多いか少いかということは言えないのです。このことは大臣もむろん御承知であろうと思います。これは小学校の生徒が算術を習うときに、学校の先生から習うんです。多いか少いかというのは、二つの数の比較なんです。そこで大臣がこの十五万人という数は多くないのだというならば、多くないという結論が出るところの、十五万人と比較されたもう一つ陸上部隊目標という数字がなければ、多過ぎるものではないということは断言できないわけです。そこで私はその目標となった、大臣をして自信をもって多過ぎないと言わせるところのその目標数字というものをお示しいただきたいと申し上げますと、その数字については自信をもってここでは言われない、こう言う。自信をもって言われない数字にこの十五万という数字を比べて、そうして多過ぎないという結論をあなたは出しておられるが、多過ぎないというあなたのお言葉がなぜ自信をもって言えるのであるか、これは論理的にきわめて不思議な現象だと私は思う。一体あなたはなぜ二万の増員、従って今年度十五万人の地上部隊の数というものが多過ぎないということをここで自信をもって言っておられるのですか。
  34. 杉原荒太

    杉原国務大臣 陸上自衛隊増強につきましては、これは特にアメリカ側地上軍のかなり早い時期においての撤退ということも予期して、そういうことも考慮の中に入れて考えなければならぬことと思います。そういう関係からいたしましても、わが国自体陸上自衛隊といたしまして、さらにある程度増強は必要だろう、私はこう考えておりますが、それじゃ数字的にいってどれくらいかという点は、なおよく検討いたしまして成案を得たい、こう考えている次第でございまして、陸上自衛隊に関する限りはいま少しくは増強が必要だろう、こうに考えている次第でございます。
  35. 大橋武夫

    大橋(武)委員 大臣はある程度増強が必要だというつもりで二万人を今度御提案になったのでありますか。
  36. 杉原荒太

    杉原国務大臣 さようでございます。
  37. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうすると、二万人という数字はある程度なんですか。
  38. 杉原荒太

    杉原国務大臣 先ほどからの御質問の中に、十五万というものとの比較においての数ということが問題でございましたので、今後増強するためにある程度増員はさらに必要があろう、こう考えておる次第であります。それをどの程度にするかという点はさらに検討する、こう考えております。
  39. 大橋武夫

    大橋(武)委員 ある程度といえば、千人ふやしてもある程度、二万人ふやしたってある程度、五万人ふやしたってある程度なんです。それならば、なぜ本年度増強計画において、ある程度が二万人でなければならないのか、二万以外の、たとえば一万ではいけないのだ、また三万でもいけないのだ。どうしてもある程度だというのは、ことしは二万人でなければならぬのだという、その数字の出てきた根拠をお示しいただかなければ、われわれはこの法律を国民のために通すことはとうてい不可能です。私は、ある程度というその数字が、今年度においてはなぜ地上部隊において二万人でなければならぬのであるかという点について、一つ大臣のお示しをいただきたいと思います。
  40. 杉原荒太

    杉原国務大臣 今年度におきましては、先ほども申し上げましたが、現在総合部隊単位として六管区隊ある。それを日本防衛上からいたしまして、少くとも二単位くらいの、つまり混成団単位くらいのものを中心とした増強程度は今年度においてもぜひ実行に移したい、こういう考え方で今年度計画を立てた次第でございます。
  41. 大橋武夫

    大橋(武)委員 大臣の言われることは、混成団単位ふやすというのがことしは必要だと思った、二単位は二万人に相当するのだ、だからことしは二万人必要なのだ、こう言われるのです。われわれは混成団単位をふやすことがなぜことしにおいて必要かというその点を伺いたいわけなんです。それはいかがでございますか。
  42. 杉原荒太

    杉原国務大臣 その点は、どうしてもわが国として独立体制の完成、日本安全保障というものを基本にして考えまして、そうして一方ことにアメリカ軍の地上軍の撤退ということを考慮に入れまして考えます場合に、どうしてもこの程度のことは本年におきまして必要だ、こう認めた次第でございます。
  43. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それではこの点は今日までの大臣の御答弁では遂に適切な御答弁がございませんが、今日の大臣のお顔色を拝見いたしておりますと、これ以上何時間伺いましてもこの質問は進行しないように存じまするので、また大臣の御気分のよろしいときを見てお答えを願うことにして、この点についての質問は私はなお保留いたしまして、ただいまお話になりました混成団のことをそれでは伺いましょう。  混成団を今度二単位ふやす。この混成団というものが今年において特に出て参りました。従来地上部隊におきましては管区隊という単位はあったのですけれども混成団という単位はなかった。これは従来の編成から見ますと全く新しい編成であります。これはなぜこういう部隊を作ることになったのでありますか。そうしてこの混成団単位管区隊に比べていかなる長所があるかということを伺いたい。
  44. 杉原荒太

    杉原国務大臣 総合部隊の編成をどういうふうにするかということは、非常にこれは世界的にもいろいろ今研究されておるところだと思います。日本といたしましては、現在までの総合部隊としての単位管区隊という編成でやってきております。そうして管区隊におきましても、その人数は最初多くなかったのを現地は約一万二千にしておる。初めはたしか一万六千だったと思いますが、それを一万二千にしておる。世界的にもこういう点はかなり研究課題になっておって、どっちかというと、総合部隊単位というものは割に私は存じます。日本といたしまして今後その総合部隊の編成をどういうふうにするかということは非常に大きな研究問題だと思います。そうして一方総合部隊の数はある程度持たなければならぬ。しかしその人数は、編成上からいたしましてもまた財政上の見地からいたしましても、さらに研究を要する非常に重要な問題だと思いますが、本年度一つの財政上の関係もありますのみならず、編成といたしましてもこういった管区隊の半分くらいで、しかもそれが一つの独立の防衛力の作用をなすものを作ることが適当だと考えまして、こういうものの単位を二個作ります。一つは北海道、一つは九州であります。御承知通り、現在北海道には管区隊が二単位ございますので合せて三個、九州は今管区隊は一個ございますので、今度新しく混成団一個を加えますと二個となりますが、こういうような配置をいたしたいと考えている次第であります。
  45. 大橋武夫

    大橋(武)委員 混成団は、今大臣のお話にもありました通り、財政的な理由を加味してできているということでございます。従ってこの混成団というものは、はっきり自信を持って打ち出したところの一つの戦闘単位ではないと思います。これはほんとうは管区隊を作りたいのであるけれども、しかしそれには今年度の予算が足りない。そこで今年度はこれだけにしておいて将来これを混成団に改編するのだという十定で作られたものだと確信するわけでございますが、混成団は後年度において管区隊に改編されるということは全然考えられないことですか。
  46. 杉原荒太

    杉原国務大臣 管区隊に変えるということは考えておりません。
  47. 大橋武夫

    大橋(武)委員 次にことしの計画の中に潜水艦が一隻手に入ることになっておりますが、この潜水艦一隻というのは一体何にお使いになりますか。
  48. 杉原荒太

    杉原国務大臣 この潜水艦はアメリカ側からの供与を期待しているものでございまして、現実に遠からず受領することに相なっております。その目的は、わが国の海上防衛訓練におきまして、レーダー等の水中目標として使います。海上防衛の訓練をするためにレーダー等の操作訓練をする必要がございますが、その水中標的として使うわけでございます。
  49. 大橋武夫

    大橋(武)委員 そうするとこの潜水艦は護衛艦の訓練用ですね。潜水艦自体を兵器として使用するのではなくて、これは訓練のための道具ですね。
  50. 杉原荒太

    杉原国務大臣 さようでございます。
  51. 大橋武夫

    大橋(武)委員 それでは私先ほど保留しております点について御答弁をいただきたいし、またなおだいぶ残ってもおりますけれども、それらの点は後日に保留させていただきまして、本日はこの程度で終ります。
  52. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 江崎真澄君。
  53. 江崎真澄

    ○江崎委員 だいぶ同じような線がいったりきたり数日間続いたわけですが、先般この六カ年計画の経緯等については長官からも当委員会に一応の了解を求められたのであります。そこで実際にこの六カ年計画を手がけてみると、いろいろな困難に突き当った。特に現実的に対策関係ということもありますし、なかなか困難であったというふうな説明を承わったのでありますが、なぜおくれたか、そしてこの六カ年計画というものは当初鳩山内閣の打ち出した一つ方針であり、方向でありましたけれども、どうもこれはしかく簡単に発表の段階には至らないというような具体的な経緯につきまして、一つ長官からもう一度承わっておきたいと思います。
  54. 杉原荒太

    杉原国務大臣 長期的な計画を立てたいという希望からいたしまして、現内閣におきまし六カ年計画ということを申し上げてきたのでございます。そうしてまた前の自由党内閣時代にもいろいろ御苦心になって研究しておられたことなんでございます。同様に実際にこれに当りましてそこに非常な困難もある。しかく簡単にいかないものである。それにつきましてはこの間から私申し上げておるのでございますが、この計画を立てます際に単一でなくいろいろ複合的な困難の原因があるわけでございます。その中の大きな一つといたしましては、アメリカ側の援助の関係というようなもの、これは実際問題といたしまして、大きな一つの要目をなしておるわけでございまして、そういう点につきましてアメリカ側自体としても一応研究をしておると私は承知いたしておる次第でございます。そういう点などからいたしまして、今日までは最初吉田内閣のしたような方針でやってきたということはすでに申し上げておりましたが、その結果がまだ出ていないということについて大へん残念に存じておる次第でございます。
  55. 江崎真澄

    ○江崎委員 この問題は政府側としても一生懸命取り組んでなかなか御苦心の存するところもあるようでございますから、私どもはきょうは話題を一転いたしまして、今度いよいよこの防衛庁自体においては三万一千二百七十二名増と申しますか、大へんな増加になるわけでございす。陸上自衛隊だけでも十五万人という数に上るわけであります。のみならず鳩山総理はしばしば国会におきまして、自衛のためならばこの自衛隊というものは直接間接の侵略に対してきゅう然たる勢力をもってこれにこたえるというような御説明をなすっておられるわけでございます。この自衛隊は先般も大坪委員から御質問がありました竹島等の問題、ああいった場面の防衛出動はいかになるのか、これなどもしかく簡単には御答弁のできない徴妙な問題でありますが、きん然として死地に向うというか、自衛隊の精神、自衛隊の方向というものは年々困難を加えてきておるものと思います。同時にまた軍隊というものは、そこに絶対服従の要素があって、そこで初めて作戦行動というものが可能になると私ども承知いたして参ったのでありますが、その点十五万人になった自衛隊の士気は一体どうであるか。同時にまた一番大切な点は、敗戦の日本に生まれたこの自衛隊というものがいかなる指導精神によって、これは特に防衛庁長官としてこの指導目標をどこに置いて訓練なさっておられるのでありますか、こういう点につきまして一つはっきりと御答弁を願いたいと思います。のみならず、この指導方向につきましては関係の局長各位からも御答弁を願いたいと思います。
  56. 杉原荒太

    杉原国務大臣 今江崎委員からの御質問の点、自衛隊として基本的にきわめて重要な点だと思います。何と申しましてもいわゆる魂のない自衛力意味をなさないわけでありますから、その魂なるものが最も大事であります。精神的基盤の確立という問題が最も重要なことだと思います。自衛隊の使命は申し上げるまでもなくこの日本を守る、日本をあくまでも守る、われわれのこの国土を守るということであるわけであります。その日本なるものはそれじゃどういう日本でなくてはならぬかという点につきましては、これはあくまでも民主主義日本でなくてはならぬ。それだからこの民主主義日本を守るという点はどうしても指導精神としてしっかりと根本に持っていなければならぬことだと感じ、そうしてそれを指導精神にしていきたい、こう考えておる次第でございます。
  57. 江崎真澄

    ○江崎委員 次長、どうでしょう。もうちょっと具体的に指導精神というか指導目標、方向というような点につきまして承われませんか。
  58. 増原恵吉

    ○増原政府委員 自衛隊員の精神的基盤といいますものは今長官から申し述べました通りでございまして、直接間接侵略に対して国を防衛するというその心構え、国を愛し日本民族を愛するという心持を単に言葉として、あるいは訓示としてでなく、平素の訓練動作の上で時々指令していくという考え方でやっておるわけでございますが、それは長官から申されたように、民主主義日本、伝統ある光輝ある日本を守っていく、民主主義日本を守るという建前であります。これにつきまして各方面からいろいろ御助言をいただくことがしばしばあるわけでございます。何か明確な数カ条よりなるような指針というふうなものを与えることがよくないかという御助言を受けることしばしばであります。私どももそういう方面にものを考えていくことも大切であるということを重々承知をしておるわけでございますが、何分にも終戦後十年、警察予備隊発足以来五年でありますが、その間における国の動き方、一般国民防衛、自衛に対する考え方も、これは五年の歳月を振り返ってみますと相当顕著に変ってきておるように私ども考えるわけでありますが、そうした基本的なものの考え方、精神的な把握というふうなものが次第に動いておる。今の時代におきましていろいろ文章を練りまして、これを示すという形をとりますよりも、現在はそうした基本的な方針を明確に打ち出す、これを平素の学科、術科、その他の座学のみならず訓練の実際を通し、あるいは私どもにとりましては非常に大きなものであります災害派遣等におきまする行動、あるいは一般の工事引き受けというようなものにおきましても、部隊員が厳正な規律でいやしくも物を粗末にしないという態度を指令していくという形におきまして、だんだんと物事を固める、そうしてだんだんそのうちには明確な数カ条の指針を示すということになることが適当であろう、そういうことも十分考慮しながらいくというこの助言に対する受け方の態度を考えておるわけでございます。現在におきましてはただいま長官から申されたような基本方針もとに、訓練、演習等の実際を通してその事態を正確につかませていくという考え方でやっておるわけでございます。
  59. 江崎真澄

    ○江崎委員 数カ条からなる一つの方向を決定したい、これもぜひ必要だと思います。ただ現在の場面におきまして、入隊した隊員に対して、長官、次長初め幹部は、一言にしていうならば教育上のモットーといいますか、どういう心構え、どういう精神を打ち込もうということでお当りになっておられますか。戦争後十年を経ました今日、自衛隊そのものにもだんだん歴史ができつつあるわけでございまして、向う方向はここだというものがきっとあると思いますが、その点一つはっきりと承わりたいのであります。
  60. 杉原荒太

    杉原国務大臣 その点につきましては、自衛隊の使命といいますか、使命第一主義ということで、その使命の遂行のためにはほんとうに身をもって当るということ——御承知通り、あくまでも国の独立と平和を守る、これが自衛隊の使命だということは自衛隊法の中にもすでに規定いたしておるのでありますが、この使命に徹していくということを基本にいたしておるわけでございまして、伝統的にも、人間の至情といたしましても、国家を愛する、また民族を愛するという点そういう点をもとにいたしまして、この使命に徹していく、それを基本にしてやっている次第でございます。
  61. 江崎真澄

    ○江崎委員 次長どうでしょう、隊員として入隊したら、すぐ一言にして教え込む方向というか、モットーというか、そういうものはありませんか。
  62. 増原恵吉

    ○増原政府委員 ただいま長官の申されたところで尽きるわけでございますが、具体的に隊員に関しますものは、御承知通り、宣誓の言葉だけであります。これを読み上げるとかえっておかしいかと思いますが、わが国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚するということで、根本は長官の申されたところに尽きるわけであります。しかし部隊の任務の性質上一致団結というものは最も大切であります。ただいま申された上命下従というような言葉にもなりましょうし、指揮統率の確立ということが大切でありまして、各級の幹部及び隊員がそれぞれの立場において団結し、かつ上命下従、指揮統率の態度を確立するということでございます。これに応じまして厳正な規律を保持するということをうたい、次に徳操を養い、人格を尊重するという言葉がございます。これはやはり民主主義の考え方をここにうたい表わしたのであります。人格を尊重し、徳操を養うということは、国民のために国民の中にある部隊として平素一般の人間としてもよく国民の敬愛を受け得るような人になってもらいたいことを強調しておりますが、そのことでございます。心身を鍛え技能をみがくという言葉を書いておりますが、これはこういう実力部隊の特徴として、あくまでも強健な心身を——これはからだだけでなく精神もですが、忍耐強い、困苦欠乏に耐える心身を鍛えてもらう。技能をみがくという言葉も、特にこれからの防衛として科学技術を取り入れるということが最も大切なことでありますので、そういう点を簡単な言葉でありますが表現をし、そしてくくります言葉は、強い責任感を持って専心その職務遂行に当る、そして事に臨んでは危険を顧みず身をもって責任の完遂に努め、国民の負託にこたえるという服務の本百、これを同時に宣誓の言葉といたしておるわけであります。これを入隊に際してその意味を敷衍して説明をし、一般的には部隊におきましては団結の強化、統率の確立、訓練の精到、科学の尊重というふうなことは各部隊においてはおおむねこの中からとりました標語として部隊長の一つの信条というふうなことで隊員を指導していく。幹部としては、もとよりこの間みずから率先して範を示していくということを強く強調をいたしておるのであります。
  63. 江崎真澄

    ○江崎委員 非常に力強い御表現でけっこうでありますが、やはり自衛隊が十五万ともなり、漸増されるにつけましても、この教育目標方針というものがまず根本でなければならぬと思います。ややもすれば今まで自衛隊が非常にまじめに、また真撃な気持で行動しておられるのに対しまして、世上の批判はものの役に立たない軍備でふるとか、あるいはまた月給取り的な軍備であるとか、いろいろあしざまな誹誇があったのでございます。だからただいまの御説明による御方針はきわめてけっこうずくめでありますが、これをいかに体得させるかというところに今後の指導目標がなければならぬし、重要性があると私は思うのであります。  そこでただいまの上命下従、昔でいう軍隊の絶対服従の精神でありますが、これはどんな形で現在の自衛隊に現われておるでしょうか、確信を持って上命下従は遂行せられるというふうにお答えになれるでしょうか、同時にまた基本的人権というものと新しい自衛隊の上命下従の関係をどういうふうに割り切っておられますか、教育の問題に関連して承わっておきたいのであります。
  64. 増原恵吉

    ○増原政府委員 これは江崎委員もよく御承知と思いますが、一般的にいわゆる民主主義、自由主義という言葉が、自由奔放、放縦というようなことと同義語であるかのごとく、誤解をせられておる向きがあるように考えます。そうした考え方から、部隊における厳格な指揮統率というものは民主主義あるいは基本的人権を相いれないかのごとく論ぜられる肩もないではございません。しかしこれはおよそ民主主義として一応先進国と認められる国の軍隊でありましても、その間における実力部隊の指揮統率というものは、昔といいますか、いわゆる過去における専制時代のものとその基本的な考え方というものは変っておらないように私は考えるのであります。最高幹部から中級幹部、下級幹部、隊員に至るまで、それぞれの職分に応じて国を防衛するという目的を果すためにその職分を果す、自覚的な信念の上にその職分を果すことは、何ら基本的人権に相反するものではないと考えておるのでありますが、これは御同感をいただけると存ずるのであります。指揮命令が最も厳格に行われる、上官が職務上の指揮命令を与えました場合にこれを順奉していくということは、こうした部隊組織においては最も重要な点であるわけであります。もとより意見を申し述べることは差しつかえなく、また必要でもあるわけであります。それに対して意見を述べさせることは尊重をいたしておりますけれども、命令はこれを確実に順守する。私どもが平素最も近くに見ております米国の部隊における行動等を見ましても、彼らが職務上の上官の命令をいわゆるけんけん服腐して、順守していく態度は、実に厳格でございます。私どもが一応ぼんやりと民主主義の軍隊というものを考えておったときのような紛清、なまやさしさというものは絶対ございません。きわめて厳格に命令が実行をされておる状態でございます。しかし彼らはまた一面において、いわゆる人格の尊重、基本人権り尊重ということも徹底しておりまして、職務を離れた場合の団らんなどはきわめて自由にやっておる。これはまた当然であろうと考えるわけでございます。私どもも民主主義日本の自衛隊として育てていく場合に、団結の強化及び指揮統率の確立ということは、部隊としてはやはり生命でございまして、これは基本的人権の尊重と何ら抵触するものでない。もとより下級幹部が正しくりっぱな命令を出すということを一面においてやらなければならぬことは論を待たないところでございまして、これは幹部の勉強反省いうことに最もかかるわけでございます。
  65. 杉原荒太

    杉原国務大臣 ちょっとつけ加えますが、私は実はそういう点非常に大事だと思いまして、いろいろ注意しておりましたが、かつてリッジウエー大将だったと思いますが、朝鮮事変の経験からいたしまして、アメリカとしてもいろいろな面で非常な苦い経験、また今後薬になる経験を経ておる、その中の一つとして、今ちょうど江崎委員のおっしゃいました上命服従という点、民主主義国において一体こういう点をどうやっていくかという点について、アメリカとしても非常な経験を得た、てこからして向うの教範といいますか、そういうものの一部分を改正しなくちゃならぬ点があるということで、意見を出しておったのを私見たことがございますが、今のような点につきましては、特に日本の場合におきましては、非常に深く考えて適切な方策をとっていく必要があるということを感しております。
  66. 江崎真澄

    ○江崎委員 大へんはっきりした御答弁をだんだん承わったのでありますか、そうすると、この自衛隊というものの装備は、アメリカの指導によってできたものであることは言うまでもありませんが、今のところ精神的な方向も、大体アメリカ軍隊の精神的方向というものを相当程度尊重せられて、自由主義国家としての軍隊的方向をとり、精神訓練をするというようなふうに受け取れるのですが、そういうわけでございますか。
  67. 杉原荒太

    杉原国務大臣 これはむろん日本独自のものがあるわけでございます。それは申すまでもございませんが、同時に日本の今後の安全保障のあり方としては、どうしても集団自衛ということを考えなければならぬ。そういう場合に、その主義を相同じくするものについては十分の理解を持ってやっていくことが必要だと考えております。
  68. 江崎真澄

    ○江崎委員 この教育の問題、いわゆる指導精神の問題については、特に軍隊という形がもうはっきりしてきております以上は、上命服従というものの線がはっきりしない限り、これは装備を作って魂を入れずというそしりを免れないと思います。どうぞこの点については十分の御留意を賜わりますことをこの機会に強く要望いたしておきたいのであります。  そこで話題を転じまして、今度の改正法案そのものについて承わりたいのでありますが、陸海室の三自衛隊のもとにおいて、今度は特に陸上自衛隊の場合、陸上幕僚副長というものを二人にするという改正案を御提示になっておるのでありますが、この副長を二人にしようとせられる理由を承わりたいのであります。
  69. 杉原荒太

    杉原国務大臣 端的に申しまして、この陸上自衛隊の仕事の量というものは、他の海、空の仕事に比べて比較にならないほど大きな量になっております。このことは江崎委員承知通りでありますが、今陸上幕僚長のもとに副長が一人おって助けておるわけでございますが、その部隊の管理、運営に伴う平常業務の執行等が非常に多くて、企画方面の仕事が十分に手が回りかれておる、これが理由でございます。何とかこの企画方面のそういう足りない点を補いたいというのがこの改正案の本旨でございます。
  70. 江崎真澄

    ○江崎委員 これは企画と実地とを分けて副幕僚長を置きたいという御希望のようでありますが、少なくとも現在の行政機構から参りまして各省相当膨大な仕事をいたしております。これは大蔵省にしても農林省にしても、それぞれずいぶん手に負えないような広範な仕事を担当しておるわけでありますが、しかしその膨大な各省庁においてもやはり一人であります。同時に今度の場合には、防衛庁として陸海室三つの部門に分れておるわけでありますが、かえってこの企画と実際とを分けられることによってくる不便というものはありませんか。そういう心配等についてお考えにならないのでありますか。
  71. 杉原荒太

    杉原国務大臣 この企画業務と実施業務というものの分界は、観念的には非常にはっきりしておりますが、実際問題としては非常にむずかしい。そうしてこれは、実は私自身の経験を申しましても、趣旨はそういうものであっても、現実の運営という面で、それがうまくいく場合と、いかない場合とがあるということを私は経験いたしておる次第でございます。今回の場合、確かに実際の運営上においてその辺のところに十分気をつけなければならぬ点があると思っておるわけでございます。それをどういうふうな具体的仕組みにしたらよいかという点、いろいろ考えたのでありますが、企画的の方面を主として担当していく仕事そのものは必要だと思うのです。これを幕僚副長二名という形にするかあるいはほかの仕組みにするかというようなことも、確かに一つの課題だと考えます。ここには副長二名ということでお願いしております。
  72. 江崎真澄

    ○江崎委員 ついでながらもうちょっとお尋ねいたしておきますが、今の陸上幕僚の副長につきましてもう一名ふやそうとせられます場合に、これはどういう方面から御採用になる御予定でありますか。たとえばかっての軍人であるのか、あるいは文官関係の方から特に企画に当らせるというような構想がはっきり打ち出されておるわけでありますか。これはどういう人の方が適当であるというふうにお考えになっておりますか、その辺を承わりたい。
  73. 増原恵吉

    ○増原政府委員 具体的の人選は実はまだ考えておらないわけでございます。ですから過去の経歴によってどうというふなことにはならないと思います。適任者を当てるということに尽きるわけでありますが、現在の副長もとより非常に有能なりっぱな人であります。これをよく調和をとりまして、新しく採りまする副長が企画の仕事をやるか、今の副長が企画の仕事をやることが適当であるか、これは具体的な人選によりまして考えて参りたいというふうに存じております。
  74. 江崎真澄

    ○江崎委員 かりに二人の副長ができたという場面を想定しましたときに、この説明にもありますが、幕僚長に事故があるというような場合に、企画と実施との衝に当る二人の副幕僚長があるわけでございますが、どちらが幕僚長——これは実質的には昔でいうと陸軍の最高責任者というわけでありますが、どちらが優先するわけでありますか。
  75. 杉原荒太

    杉原国務大臣 その点もいろいろ考えなければならぬ点でございますが、今まで私らが考えました結果を申し上げますと、これは先任の者というふうにするのが適当であるというふうに考えております。
  76. 江崎真澄

    ○江崎委員 それはわかりました。ところがどうも実際問題として企画と実地の運営ということは、たとえば小さくは会社工場等の経営の面におきましてもきわめて食い違いが多いことは世の中の現実が示しております。今までは特に企画等については陸上幕僚監部におきましてどの部門によってどういう形でおやりになっておるのでございますか。
  77. 増原恵吉

    ○増原政府委員 企画の仕事はそれぞれにあるわけでございます。陸の方では一部というのは人事関係、二部が調査、三部が防衛編成等の関係、四部が後方補給、五部が教育訓練、それに監理部というのがあります。それからあと化学、輸送、衛生いろいろの課があるわけでありまして、それぞれにおいて企画の面があるわけであります。そして現実にこれをまとめていきます場合には、各部課に共通の面が非常に多いわけであります。たとえば来年どういうふうな仕事をやるかという大筋の兼務計画をぼつぼつきめるわけであります。そういうものをやります場合にはそうした各部課の中における企画面を担当しておる者がそれぞれの部課における計画を、もとより課長部長の了承を得てやるわけでございますが、了承を得る前に基本的な了承を得た上でこういう者が集まって討議をしなければならぬ。そういう場合は現在は幕僚副長が座長になりまして、これはなかなか一日や二日でやるというわけにいかぬので、その方に幕僚副長はからだをとられてしまうというような形でやらなければならぬわけであります。後方補給の計画をいたすにしましても、また教育訓練の計画をいたすにしましても、または防衛計画等の年次計画を作ります場合でも、そうした面があるわけであります。これはただみな出してきたものをまとめて作文をするということは、将来もそうでありましょうが、現在もそういう段階ではない、これは頭脳的な優秀な判断、これが論議を通して行われるということでからだを全くとられてしまうという形になっておるわけであります。そういう形で企画的な面——これは大きい企画でございます。小さいものは各部各課でやりますが、大きい企画的な面はそういり形でやっておりますので、そのほかの平常業務——平常業務というと非常にさまつなようでありますが、決してさまつというわけに参りません。やはり幕僚副長が幕僚長を補佐して判断するという面が非常に多いのであります。そういう面は家へ書類を持って帰って一生懸命やっておるのですが、それでもなかなか追っかけられるので、企画的な面をじっくり考えて適切な判断や指示をしたいという余裕がなかなかできないということから副長二人というものを考えたわけであります。
  78. 江崎真澄

    ○江崎委員 命令というものは先ほどの上命下従の建前からいいましても二途に出ないように、命令が一筋であることは言うまでもないと思います。そこで幕僚副長の仕事の量、範囲が広く、特に企画の面においてはこれが非常に困難なものであるという御説明は十分わかりました。しかしでき得べくんば幕僚長を補佐する副長は一人としてこの企画に当るものは、副長と幕僚長とこの両者によって取りまとめられるところの企画部と申しますか、専任の組織を持つことによっても私どもは解決が可能であると考えるのでありますが、この点御考慮の余地はないものでありますかどうか、杉原長官に承わりたい。
  79. 杉原荒太

    杉原国務大臣 私らといたしましては、現在御審議をお願いしております案を適当と考えまして、審議をお願いいたしておる次第でございますが、今おっしゃいましたような御意見も非常に傾聴すべき御意見だと思います。
  80. 江崎真澄

    ○江崎委員 この点につきましては、原案には幕僚副長を二人を置くという意見を打ち出しておられますが、これは事務的な機構の問題であるわけですが、この自衛隊、特に中心の陸上自衛隊でありますがゆえに、私どもは将来に難のあることをおそれて大事をとって実は質問を申し上げ、一つの案を申し上げておるわけでございますので、政府におかれましてもこの点についてはなお御検討を賜わり、今後に話し合いの余地を残していただきたいと思います。  まだいろいろ質問がありますが、午後適当な時間にやります。
  81. 宮澤胤勇

    宮澤委員長 それではこの際休憩いたします。午後の再開の時間は本会議の模様によりまして、あらためてアナウンスいたします。     午前十一時五十九分休憩      ————◇—————     〔休憩後は開会に至らなかった〕