○
長谷川(保)
委員 ただいまお手元に
提出いたしました
恩給法の一部を改正する
法律の一部を改正する
法律案の
修正案の提案の
理由を御説明申し上げます。
本
修正案は本来さきに
政府が
提出し、次いで撤回になりましたいわゆる旧
軍人恩給法の
改正案に対しまして対決する意図をもって、
日本社会党の
恩給法の一部を改正する
法律の一部を改正する
法案といたしまして用意されたものでありましたが、
高橋等君ら
提出のいわゆる民主、自由両党の
改正案と公務死の範囲の拡大その他多くの点において同一改正個所を持っておりますために、これを
改正案として
提出する場合には、一事不再議の原則によりまして廃案となるおそれがありますので、やむなく
高橋君ら御
提出の民自
改正案の
修正案として、民自案と異なる個所を
提出したものであります。
本案の修正部分は十カ所あるのでありますが、重要な点は次の二点でありまして、他はこの修正のための法文あるいは表等の整理のためのものであります。すなわち第一点は、准士官以下の恩給を一律平等にして、その恩給額を現行法のほぼ下級将校並みにまで増額引き上げ、大尉以上大将までの恩給は現行にとどめるよう増額をしないこととしようとするものであります。御
承知のように
現行恩給法の理論は、
公務員が公務に服したために失うた経済的取得能力の減損に対して、国の経済力をもってこれを補うということにあります。応召
軍人と旧下級
軍人らは旧帝国憲法にありまする臣民の義務として、徴兵制度のもとにほとんど無報酬で軍務に服したのであります。このほとんど無報酬ともいうべき徴兵あるいは応召された兵に給せられた、いわばお小使程度のものを仮定俸給の基礎といたしまして、その基礎の上に仮定俸給を作り、さらにまたこれを計算の基礎といたしまして
公務扶助料等の恩給額を決定しますために、下士官、兵等と旧高級将校たるいわゆる
職業として俸給を給せられておりました者との間に、恩給にはなはだしい階級差を生じておるのであります。徴兵制も
軍人も、従ってまた
軍人の階級もない今日、これはきわめて不条理のことであります。この時代錯誤的な不条理を是正するために、本
修正案は旧
軍人恩給の仮定俸給すなわち
附則別表第一の
改正案を修正して、准士官以下兵に至るまでを一律九万七千百八円とし、これに応じて
附則別表第二より第五に至る諸表の改正をなさんとするものであります。この結果
公務扶助料においては中尉にいたしまして四万八百九十六円、少尉が四万七百二十四円、准士官以下兵まで一律四万四百二十四円となり、現行法の大尉の
公務扶助料額よりやや低いところまでほぼ一律に増額
支給されることとなるのでありますが、大尉以上大将までは前述のように現行法通り据え置くことといたしました。
普通恩給においては、准士官以下兵までは現行法少尉よりやや低い程度にまで一律増額
支給されることとなりまして、その他の恩給もほぼ同様となるのであります。
第二の修正点は、民自
改正案にはないものでありまして、終戦前後の混乱その他の事情のための手続をしなかったために時効にかかって、当然給せらるべき恩給を受けない傷痍旧
軍人のために、新たに
傷病年金、
増加恩給を受け得る道を開かんとするものであります。すなわち
昭和三十一年九月三十日までに手続をするこれらの者について時効が完成しなかったものといたしまして恩給を
支給せんとするものであります。
以上本
修正案のおもな点を申し上げましたが、これがために要する予算の増額分は六億円であります。どうか本
修正案を御審議いただきまして幸いにして御可決いただきますならば、
生活に苦しみ、涙のうちに戦っておりまする多くの
方々、中尉以下、ことに准士官以下の兵及びその
遺家族の方の数は百六十三万という大きな数でありまして、これに対して高級旧
軍人、大尉以上の
軍人は約三万人でありますから、こういう三万人の
方々は現在の恩給額でがまんをしてもらい、そうしてただいま申しましたような処置をいたしますれば、この兵あるいは下士、准尉、下級将校というような関係の
方々は非常に喜ぶわけであります。おのずからそこに非常な激励をされまして、困難のうちにも子を抱き、年老いた父を抱いて奮闘されております未亡
人たちが、非常な
努力をもって新しい人生行路を踏んでいけるわけであります。何とぞ民主、自由その他の
委員の諸君にも御賛成を賜わりまするように切望する次第であります。