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高橋(等)
委員 ただいま議題となりました
恩給法の一部を改正する
法律の一部を改正する
法律案につきまして、その提案理由を御説明申し上げます。本案は自民両党の共同提案にかかるものであります。
戦没者遺家族戦傷病者老齢旧軍人の人々は、今次戦争の犠牲者中最も気の毒な方々であります。国家が英霊の祭をおごそかにいたし、遺家族を初め、これらの人々の処置を厚くすることは、平和国家、道義国家の建設発展の重大要件であることは申すまでもありません。従って、
わが国の独立とともに弔慰金及び遺族年金の支給をなし、引き続いて恩給の復活を実現し、予算掛額の八%強に当る金額をこれに充てておるのであります。しかもなお、これらの人々の恩給給与は一般文官に比較してはなはだしく均衡を失しておる
現状であることを遺憾といたします。
国民の間に不平等があり、ことに戦争に当り
国民にかわって犠牲となった人人が、終戦後十年に及ぶ今日まで、一般
国民と不当な差別待遇を受けておるという事実を十分認識するときは、温情と誠意をもって事の解決に当ることが民主主義の鉄則であることは申すまでもありません。
以上の見地に立ちまして、国家財政の現況を勘案しつつ先般来自民両党によって予算等の修正をなし、ここに文官との不均衡是正を中心としてその他必要なる改正を加えて本改正
法案を上程いたした次第であります。
この
法律案におきまして、改正を加えようとするおもなる点につき御説明申し上げます。その第一点は、旧軍人及び旧準軍人並びにこれらの人々の遺族の恩給の年額の増額に関するものであります。これらの人々の恩給金額計算の基礎となる仮定俸給年額は、現在、軍人恩給廃止前に退職しまたは死亡した一般公務員、もしくはその遺族のそれに比べて少く、従って、その恩給支給水準も低くなっておりますので、一般公務員との間のかような違いをなくするため、旧軍人及び旧準軍人並びにこれらの人々の遺族の受ける恩給金額計算の基礎となっている仮定俸給年額をいわゆる一万二千円ベースの支給水準に引き上げ、かつ号俸についても、上に薄く下に厚くする精神をもって一般文官との調整をはかり、原則として四号俸、一部のものについて三号俸または二号俸を引き上げ、その恩給金額を一般公務員及びその遺族の恩給支給水準の程度まで増額いたそうとするものであります。
ところで、その実施につきましては、国家財政に及ぼす影響を緩和する目的をもって、本年十月分から昭和三十一年六月分までの間の恩給については、現行の恩給金額にこの改正による増額分の五割に
相当する金額を加えたものを給することとし、昭和三十一年七月分からこの改正
通りの金額を給することといたそうとするものであります。昭和二十八年
法律第百五十五号附則別表第一の改正規定並びに附則第一項及び附則第七項から第十項までの規定がこれに関するものであります。
第二の点は、旧軍人、旧準軍人及び旧軍属の恩給の基礎在職年に引き続く一年以上七年未満の実在職年を通算することに関するものであります。現行法におきましては、これらの人々の在職年は、軍人恩給廃止前に裁定された恩給の基礎在職年に算入されていたものを除き、引き続く七年以上の実在職年に限り恩給の基礎在職年に算入されることになっておりますため、二年、三年、四年というふうに何回も応召し、前後を合しますと、普通恩給についての所要最短在職年数に達するのに年金たる恩給を給せられない場合も少くありませんので、少くとも最短在職年数に応ずる年金たる恩給を給する道を開く
趣旨をもちまして、旧軍人、旧軍人または旧軍属の恩給につきましては、一年以上七年未満の在職年をもその恩給の基礎在職年に通算することといたそうとするものであります。しかし、国家財政の
現状にかんがみ、現行法によって普通恩給を受ける権利を取得できる人々及びその遺族につきましては、この通算措置をしないこととし、またこの措置により恩給の基礎在職年が旧軍人、旧準軍人又は旧軍属の普通恩給についての所要最短在職年数をこえることとなる場合には、これを最短在職年数で押えることとし、この措置により、新たに普通恩給または扶助料を給せられることとなる人々がすでに一時恩給または一時扶助料を給せられていた場合におきましては、重複給与になることを避ける
趣旨をもちまして、その金額を普通恩給または扶助料の年額から控除する等
相当の調節をはかろうとするものであります。昭和二十八年
法律第百五十五号附則第二十四条の二、附則第一項、第三項及び第四項の規定がこれに関するものであります。
第三の点は、いわゆる戦犯者として拘禁された人々の拘禁中の
期間及び傷病に関する
恩給法上の取扱に関するものであります。
ソ連、中共に抑留されているいわゆる戦犯中、旧軍人軍属であった未復員者、その他については、
恩給法上未帰還公務員という制度を設け、抑留中の
期間は恩給の在職
期間に通算されております。よって、連合国最高司令官により抑留または逮捕せられ有罪の刑に処せられ拘禁された公務員であって、在職中の職務に
関連して拘禁された者についても、
恩給法上、右に準じて取り扱い、その人々の公務員としての在職年を計算するに当っては、当該公務員の普通恩給についての所要最短在職年限に達するまでを限度として、拘禁中の
期間を加えることし、この措置により、初めて普通恩給または扶助料を給せられることとなる者につきましては、第二の点で申し上げましたと同じ
趣旨により、一時恩給または一時扶助料を給せられた場合におきましては、その金額と年金恩給との調節をはかることとし、また、拘禁されている間に自己の責に帰することのできない事由によって傷痍を受けまたは疾病にかかった公務員につきましては、これらの者の拘禁されるに至った事情等にかんがみ、裁定庁が在職中に公務のため傷痍を受けまたは疾病にかかった場合と同視するを
相当と認めたときは、その人々またはその遺族に対し、いわゆる公務傷病恩給または公務扶助料と同額の恩給を給しようとするものであります。昭和二十八年
法律第百五十五号附則第二十四条の三、第二十九条の二、附則第一項及び附則第三項から第五項までの規定がこれに関するものであります。
第四の点は別途
国会に
提出されております戦傷病者戦没者遺族等援護法の改正
法律案におきまして、いわゆる公務死の範囲が拡張せられることになりましたので、これに伴う公務扶助料に関する規定の改正であります。
別途
国会に
提出されております右援護法の改正
法律案におきましては、戦地において負傷し、または疾病にかかり死亡したものであって、援護審査会の議決により公務上負傷し、または疾病にかかったものとみなされるものについては、その遺族に遺族年金または弔慰金を給せられることとなっておりますので、これらの措置に対しては、
恩給法においても公務扶助料を給するよう措置しようとするものであります。昭和二十八年
法律第百五十五号附則第三十五条の二の改正規定並びに附則第一項、第二項及び第三項の規定がこれに関するものであります。
第五の点は、今次の終戦に
関連する非常事態におきまして、いわゆる責任自殺をした者の遺族に給する扶助料の特例に関するものであります。
前述の援護法の改正
法律案におきましては、今次の終戦に
関連する非常事態に当っていわゆる責任自殺をした旧軍人、旧準軍人または旧軍属につきまして、その死亡が公務による傷病によるものと同視すべきものと援護審査会において議決された場合には、これらの者の遺族に遺族年金及び弔慰金を支給することになっておりますので、これに対応いたしまして、これらの者の遺族に対し、昭和二十八年四月分から、公務扶助料の年額に
相当する金額の扶助料を給することといたそうとするものであります。昭和二十八年
法律第百五十五号附則第三十五条の三、附則第一項、第四項及び第六項の規定がこれに関するものであります。
第六の点は、新警察法の施行に伴い、自治体警察職員から新警察法のもとにおける警察職員となった者等の恩給の特例に関するものであります。
昨年、警察法の改正によりまして、自治体警察職員であった者が引き続き新制度の警察庁もしくは都道府県警察の職員となった場合、五大市警察の職員が五大市警察の廃止に伴い新制度の府県警察の職員となった場合及び新制度の地方公務員たる警察職員が国家公務員たる警察職員となった場合におきまして、身分切りかえ前の俸給と身分切りかえ後の俸給とを比較いたしますと、後の俸給は必ずしも前の俸給よりも多額となっておらない場合もあり、従いまして、身分切りかえ後退職して受ける恩給がかえって身分切りかえの際退職して受ける恩給よりも少くなるという結果が生じますので、身分切りかえ後に退職した者について、恩給的に不利な取扱いを受けることのないように措置をいたそうとするものであります。附則第一項及び第十一項の規定がこれに関するものであります。
第七の点は、昭和二十三年三月の自治体警察設置前の警視庁または道府県警察部の吏員としての在職
期間の通算に関するものであります。
昭和二十三年三月に自治体警察が設けられたのでありますが、その際警視庁または道府県警察部に勤務していた吏員が、自治体警察の設置に伴い引き続きその職員となりさらに引き続き新警察制度のもとにおける警察職員となった場合におきましては、現行法ではこの自治体警察設置前の警視庁または道府県警察部に勤務する吏員としての在職
期間は
恩給法上の公務員としての在職年に通算されることになっておりませんので、この
期間について都道府県の退隠料に関する条例の規定による退職給付を受けた場合は別としまして、この
期間を
恩給法上の公務員としての在職年に通算することといたそうとするものであります。附則第一項及び第十二項の規定がこれに関するものであります。なお、以上のほか
総理府恩給局の旧軍人恩給事務処理要員二十名増員のため行政機関職員定員法の一部を改正することとし、その他以上の
法律改正に伴う字句整理をいたそうとするものでありまして、附則第十三項及び第十四項の規定並びに昭和二十八年
法律第百五十五号附則第二十六条、第二十九条及び別表第二から第五までの改正規定がこれに関するものであります。
以上が、この
法律案の提案の理由であります。何とぞ慎重御
審議の上、すみやかに御賛同あらんことをお願いいたします。