○青木
参考人 私は立川
基地のすぐそばの砂川町に住み、毎日
飛行機の昇降によりまして砂塵をかぶり、
爆音に悩まされつつある農家の
青木市五郎でございます。
議員の
皆さんのお手元に略図ではありますがお配りしてありますが、御
参考に供したいと思います。
私は今回
基地拡張予定地に住みます農家の
代表をいたしますとともに、全町の農家を
代表して、今回の
基地拡張に絶対
反対をいたします
理由を述べさせていただきたいと思います。
わが町は戦争中最大の損害をこうおりました町でございます。
米軍の爆撃のために、焼夷弾等によりましてわが町の農家の三分の一は灰じんに帰したのでございます。これと申しますのも、砂川町の
周辺に
飛行基地その他
軍事基地があとあととできたがゆえとわれわれは確信いたしております。これがためにわが町民の老若男女を問わず三つ子に至るも、
基地ということについては、もうまっぴらごめんなのでございます。それがゆえにこのたびの
基地拡張に対しましては
調達庁よりの御来町がございまして、
基地拡張の
基地の基の字が出たときに、われわれはもう
基地拡張についてはまっぴらごめんだ。われわれはそれ以上何も聞く必要はない。これまでわれわれは
基地があるがゆえに非常な災害をこうむっておる。これ以上大きな災害をこうむることは絶対にわが町民としてはできない。これがゆえに
基地のことについては絶対にわれわれもう聞きたくないのだ、こう言ってえらい
反対をしておるのでございます。たまたま終戦後今度の
基地予定地内におけるわれわれ農家は、
米軍の無断接収によって、三分の一の農地が農作物もろともにブルドーザーでもって削り去られてしまっておるのでございます。このためにわれわれ
地元農家はみんな片腕を取られてしまった。われわれは今後農家として
土地がなくしてどうして生きていかれるか。先ほど申し上げた
通り、戦災によって家は焼かれ、農家施設はほとんど壊滅に帰しておるのでございます。それでも農地さえあれば、バラック内でもってどうやら食えるぐらいのことはできそうだと、悲壮な決意を持って立っておるのに、終戦後
土地を
基地に接収されてしまった、かような現状にございます。しかしこれをただ削り取られてしまって茫然としていたのでは――われわれの財産は爆撃によってなくなったのだ、一粒の米でも取らなければあしたからでも食えないのだ、こういう場合におきましては、農地がなくては死んでしまうのだ。このために山林の開墾をいたす。その開墾をするくわすらない。これは全部戦災を受けない農家から借りてきて開墾したのであります。そういたしまして、大体において零細ながらもどうやら食べるくらいの農地が得られた。こういう
状態で、すでに約十カ年が経過する間、われわれは燃える意気のもとに、着々と町の復興に精を出しておったのでございます。どうやら農家としても食べるくらいのことはできるようになりつつあります今日、
基地拡張といった報に接したのでございます。われわれは、今までは、とにかく負けてしまったのだからやむを得ない、とにかく
日本じゅう負けたんだ、こういう気持でおったのでありますが、戦争のために片腕を取られ、すでに両腕を取られてしまったようなわれわれ農家が、どうやら義手ながらもできて、ひとり歩きができそうになったところへ
基地の
拡張ということでは、われわれは生きる道がないのです。この意味合いにおきまして、われわれ
地元といたしましては、
基地拡張については絶対に
反対しております。御
承知のように、目下の
飛行機基地ですら、周囲にあるわれわれ農家におきましても――非農家
方面は後ほどの方が申し上げますが、
飛行機の上り下りする、また上空へ来たときには、何も聞えないのでございます。それと同時に冬になりますと
土地が乾燥してくる。そのために砂塵はもうもうと吹き上げ、まつ暗になってしまうのでございます。こういった目下の
基地ですらそのような状況にあるわが町が、これ以上
基地が大きくなったならば、われわれは
周辺に残された農家としてどうしたらよいか、こういう状況にあるのでございます。
終戦後無断接収されましたこの
土地も、今回
基地を
拡張いたしますことにつきまして、
調達庁よりは、お前たちは今度の
基地についてわれわれの言うことを聞いてくれれば、すでに接収してある
土地を高く買ってやるがどうだ、こういったような通達もわれわれの方へございます。われわれ砂川町の町民も、もともと接収地を高く買ってもらいたいような気持があるならば、物も言わず、絶対に
反対はいたしません。
お金などに絶対に目をくらましておらないのでございます。その際われわれに向って、この際あなた方が言うことを聞くならば高く買ってやるなんという、いわゆる自分のポッポへ入れておいたやつを、とにかくもうおれのものだ、あなた方は向うの言うことを聞けば、こっちの方はそうするという、そんな子供をだますようなことを聞く者は、わが町民には一人もいない、こういうふうにわれわれ農家の者はいきり立っておるのでございます。むしろわれわれは、この際接収されている農地は、もとのようにして返してもらいたいと思います。戦災を受けてくわ一丁ないわれわれが、よそから借りてきて
土地を耗作して、どうやら食べるくらいのことができるように努力した。この思いをしているわれわれ農家が、無断でもって
土地を農作物とともに一瞬にして削り取られたということは、一生涯忘れることはできないのであります。この際そういった子供だましのようなことをやられることは、われわれ農家として心外にたえないのでございます。
くどいようでありますが、今回の
基地拡張につきましては、わが町また農家としては絶対に死を意味するものでございます。農家は、
土地なくしては絶対にやっていけないのであります。今度万が一
拡張されたならば、お手元に差し上げてあります
地図の
通り、全部農地を取られた方は転業しなければならないことになります。農家のわれわれが他に転業いたしましても、かごの鳥が大空に放されると同じことで、たちまちタカにやられてしまう。こういった例はすでに今までにたくさん出ております。前にそういう苦しみをしている人がありますから、今度こそは絶対にそういうことはできない。私は
飛行場の直下で毎日
農業を営んでおります。これを今度われわれが許したならば、影法師のごとくだんだんと
飛行場が延びていって、一部接収されて取り残された農地を持った方も、われわれと同じことを苦しまなければならないのでございます。この意味におきましても、われわれ農家としては、一坪でも
基地拡張はまっぴらごめんでございます。なお大きく町全体から申し上げますと、図にもあります
通り、わが砂川町は東西に二里半もあるという細長い町であります。もとよりこの
拡張については絶対に拒否しておりますから、
調達庁の
皆さんからは細密なことは聞いておりませんが、朝日新聞等に出ました
地図によって想像しておるのでございますが、この
基地が
拡張されたならば、われわれ農家として最もたよりとする
農業協同組合の
経営も、われわれ農家の者が利用しなければ、やはり一瞬にしてつぶれてしまうのでございます。
農業協同組合がつぶれたならばやっぱりわれわれ農家もつぶれなければならないのでございます。
この細長い町で中央部を
飛行場の滑走路が横断してしまう。これは
横田基地の方でございますが、西砂川から福生を結ぶ線に前にも例があるのでございます。あの五日市街道も、最初のうちはむずかしいことを言いながらも、どうやら通したのでございます。やがて三カ月ぐらいで交通遮断されてしまった。今は南の方を一里も迂回して通らなければならないというような
実情になっているのでございます。これは村のはずれでございますが、目下西砂川の方は非常に不便を感じております。今度の
拡張は村の中央を横断されてしまうのでございます。ほんとうに村の心臓部を抜き去られてしまうのと同じでございます。
農業協同組合というのは三番組というところにあるのでございますが、十番組の方からも
農業協同組合へ行かなければならないのでございます。今度の
基地拡張によりまして、最初はゴー・ストップとかで通らせるとかなんとかいっておりますが、やがては防諜とかなんとかいって通らせないということが必ず出てくると、われわれは確信しておるのでございます。万が一この
道路を封鎖して一里迂回して通るということになれば、これは完全にできないのでございまして、われわれ農家としては
農業経営上大なる支障を来たすものでございます。
なおまたこの
基地拡張につきまして、この
基地拡張の近辺に住ね農家も、この
飛行場の滑走路ができたがために、毎日農地に行くことすらできないような状況にある
土地を持っている方が、たくさんあるのでございます。なおまたこの四番組、三番組、二番組、一番組、西砂川、こういった西の方の地区は、今回この
基地が
拡張されたならば、毎日のように蔬菜その他の農産物を東京
方面に出荷しなければならないのでございますが、これがゴー・ストップで朝一時間もとめられたとしたら、野菜はみんな腐ってしまうのでございます。市場が間に合わない。農産物の売りさばきが思うようにいかないということでは、農家は転業をするほかはないのであります。今われわれ農家は東京、立川
方面に出荷する農産物を作らなければ生きる道はないのでございます。かような意味合いにおきまして、今度の
基地を
拡張されたならば、町全体の農家が生きる道はないのでございます。死よりほかはないと思います。
われわれの砂川もようやく町になりました。この市街地へ持ってきて
飛行場があるというのがそもそも矛盾しておる。それに今度五万坪も追加して、なおさら大きな
飛行基地を作るということは、
国会におかれましてもぜひとも考えていただきたいと思います。
この
基地拡張はわれわれは百姓でよく知りませんが、戦争を前提とする
基地拡張ではないか、われわれ農家の者も毎晩のように寄って深く研究をしておりおす。戦争をすれば爆弾は一番先にここに来ます。この大きな
基地へ持ってきて原子爆弾を一発放されれば、われわれは息の根がとまるのでございますが、その爆弾の来るまでの苦しさがわれわれには思われるのでございます。右のような次第でございますので、このわれわれ農家の気持をぜひとも
議員諸公にはおくみ取り下さいまして、今度の立川
基地の砂川町への
拡張ということは絶対に取りとめてもらいたいと思います。
結論といたしまして、万一この
基地が
拡張されるようなことがございましたならば、それこそわれわれは死んでしまう。それをどうしても強行するということは、
政府はわれわれの命取りだと思うのでございます。それゆえにわれわれは死を賭してもこの
基地拡張には絶対
反対をするものでございます。われわれ農家が何がゆえに
反対しておるかということを、
議員諸公がおくみ取り下さいますれば幸いと存じます。御清聴ありがとうございました。