○門司
委員 その一面、ごく安易なものの
考え方は
基礎控除を上げるということです。これが一番手っとり早い
方法です。しかしこの
基礎控除の
引き上げということは、大事業も小さい業者も実際は恩恵は同じです。ただその度合いが少し違うというだけです。だから事業の実態にはほとんど触れないのです。そういうことで
基礎控除さえ上げていけば零細者はそれから落ちていくので、従って
課税の対象にならないから問題が解決するように一応
考えられることは、きわめて安易なものの
考え方だとわれわれは思います。しかしそのことは、税の本質とそれから税の形の上において必ずしも正しい行き方ではないと
考えます。税金であります以上は
基礎控除を設けるということも必要かもしれませんが、やはりそうした実態をお互いがつかんでいくという形が必要じゃないか。ことに小さな小売商人のごときは、実際問題から言えば、営業自体に対するいろいろな問題があるかもしれませんが、それを
個々の労力に当てはめていって自家労力を求めるといたしますと、きわめてわずかのものになってきはしないかというような
考え方がされるわけです。たとえば一人では仕事ができないので細君に手伝わせる。もし細君を雇い人としてやる場合にはその請負業は成り立たない。やはり家族全体の労力で辛うじて
一つの商売がやっていけるというようなもの等についての問題が、今のようなお
考えでは私は完全に除去されるとは
考えられない。従って
基礎控除を上げるということによって、零細業者がそれからのがれていくからそれでよいじゃないかというような
考え方でなく、もう
一つ進んだところの、はっきりした線を途中で引いて、そうして労力に対する報酬と見られるものには税金をかけない、事業税を課さないというような
方法が、私はこの際必要じゃないかと思います。農民に事業税をかけておらないということも、やはりそこに
原因があると思います。すべての人が労力を提供しておるのであって、それに対する労賃というものはきわめて零細なものである。それが積み重ねられた上において辛うじて
一つの生計を保ち
収入を得ておるというこの農村の実態は、やはり事業税を今日までかけなかった
一つのあり方だと思います。これと同じような形が零細業者に当然考慮されなければならない。だから今のような
基礎控除を上げればそういう零細なものが脱落していくからそれでよいのだというような見方は、便宜的にはけっこうかもしれませんが、税全体から
考えていけば少し無理があるのじゃないかというように私には
考えられる。ですからこの点については、もう少し当局の考慮をわずらわしておきたいと思います。これ以上私は議論をいたしません。
それからもう一点、事業税について聞いておきたいと思いますことは、事業税はなるほど八百億を越える、
地方財源としてはかなり大きなものになっております。そのほかに遊興飲食税があるといたしましても、これを除くと都道
府県税としては現在では一番大きな柱だと思う。ほとんどこれ二つが府県をささえている大きな税金でありますから、
地方としてはそう簡単にやめるわけにはいかぬと思う。いかぬと思いますが、実態からいくとそういう無理がありますので、できるだけこの税金は無理のない処置をしていくということになって参りますと、だんだん税金の徴
税額というものは減らされてこなければならない。その場合に自治庁としての、
財源全体に対する都道
府県税の構想が何かありますか。現在の都道
府県税というのは非常に赤字をこしらえておって、その中にこういう事業税というものも含まれておって、そしてこの事業税も先ほど
お話のように年々何とか
考えなければならないという実情に到達しておる。そうすると
府県税というものは非常に徴収の額が少くなるような気がする。今度多少大きな固定資産税というものを県に持っていくにしても、あるいは多少
府県民税の手かげんをしてみても、府県の財政というものはなかなか困難になってきやしないかと思う。これに対する自治庁の
考え方、何かありますか。