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1955-06-20 第22回国会 衆議院 地方行政委員会 第24号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月二十日(月曜日)     午前十一時十三分開議  出席委員    委員長 大矢 省三君    理事 池田 清志君 理事 亀山 孝一君    理事 古井 喜實君 理事 鈴木 直人君    理事 前尾繁三郎君 理事 門司  亮君       唐澤 俊樹君    川崎末五郎君       纐纈 彌三君    櫻内 義雄君       長谷川四郎君    山崎  巖君       勝間田清一君    北山 愛郎君       五島 虎雄君    中井徳次郎君  出席国務大臣         国 務 大 臣 川島正次郎君  出席政府委員         自治政務次官  永田 亮一君         総理府事務官         (自治庁行政部         長)      小林與三次君         総理府事務官         (自治庁税務部         長)      奧野 誠亮君  委員外出席者         総理府事務官         (自治庁財政部         財政課長)   柴田  護君         専  門  員 有松  昇君         専  門  員 長橋 茂男君     ————————————— 六月十七日  委員前尾繁三郎辞任につき、その補欠として  保利茂君が議長指名委員に選任された。 同月二十日  委員保利茂辞任につき、その補欠として前尾  繁三郎君が議長指名委員に選任された。 同 日  理事前尾繁三郎委員辞任につき、その補欠と  して同君が理事に当選した。     ————————————— 本日の会議に付した案件  理事の互選  小委員補欠選任  地方税法の一部を改正する法律案内閣提出第  八四号)  地方公務員期末手当に関する件     —————————————
  2. 大矢省三

    大矢委員長 これより会議を開きます。  この際理事及び小委員補欠選挙についてお諮りいたします。すなわち、委員の異動に伴って、理事及び地方税法改正に関する小委員に欠員を生じておりますので、この補欠選挙を行いたいと思います。これらは投票の手続を省略いたしまして、委員長より指名することに御異議ございませんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 大矢省三

    大矢委員長 御異議なければさよう取り計らいます。  理事及び地方税法の一部を改正する小委員は、従前通り前尾繁三郎君に御指名いたします。     —————————————
  4. 大矢省三

    大矢委員長 本日は地方税法の一部を改正する法律案を議題とし、前会に引き続き質疑を行います。  本日より理事会の申し合せによりまして、政府より配付されました要綱に基きまして、項目別質疑を行うことといたします。それではまず第一に都道府県民税より始めます。なお本日の政府委員永田政務次官奧野税務部長柴田財政課長以上三人でございます。質疑の通告がございますからこれを許します。北山愛郎君。
  5. 北山愛郎

    北山委員 道府県民税について前会にも質疑をいたしましたが、この前に昨年県民税を初めて作ったときに、市町村民税からこれを分轄して県民税を作る、これが将来増税一つ原因にならないかということについて、税務部長増税をしないように十分配慮する、こういうような御答弁であったのであります。ところがわれわれが心配しておりましたように、今度住民税市町村民税道府県民税に分れた結果といたしまして、それぞれ今回税法改正においても税率引き上げが行われております。たとえば府県民税については百分の五から百分の六へ、それから市町村民税については、百分の十五の制限税率が百分の十八というふうになってきておる。両方分れてそれぞれ増税原因をなしておるわけでありますが、こういうことは昨年の税務部長のお考えと相反する結果になっておると思うのでありますが、一つこの点について奥さんからお答えを願いたいのであります。
  6. 奧野誠亮

    奧野政府委員 御指摘のように住民税増税する手段として、従来の市町村民税道府県民税市町村民税とに分轄するというふうな考え方は毛頭持っていなかったわけであります。今回道府県民税市町村民税税率引き上げを提案いたしておりますのも、もっぱら国税の方で減税されて参りました結果、減税後の所得税額課税標準とした場合に税率を据え置けば減収を生じて参るわけでございます。地方財政状況が許しますならば、もとより国税減税するのでありますから、地方税減税もいたしたいわけでございますけれども地方財政が非常に窮迫しておりまするために、従前程度の額を維持するように税率調整をはかったような次第でございます。率は引き上げておりますが、絶対額としてはおおむね従前通りの額に据え置くということに了解を願いたいと思います。
  7. 北山愛郎

    北山委員 国税の方が減税になったためにそれに伴って地方住民税税収が減る、これを心配してこの税率を変更した、こういうお話でございますが、しかしこの前もお話がありました通りに、多くの市町村では第一方式すなわち所得税額基準とする第一方式をとっているところは非常に少いのです。第二方式、第三方式をとっているところが大部分、従ってこの税率を変更してもそれほど実際問題としては地方税額に響かないのではないか、国税が変更してもそれに応じて地方税割住民税は変らないように思うのですが、いかがですか、これが第一方式しか認められない、すなわち所得税税基準とするやり方しかこの住民税とり方として認めておらないというのであれば、それはお話通り影響するかもしれない。しかし大幅に第二方式、第三方式というような例外の方が大部分を占めておるのですから、従って率を上げるということは理由にならない。そういう意味では理由にならないのではないかと思うのですが、いかがですか。
  8. 奧野誠亮

    奧野政府委員 道府県民税所得割所得税額標準として課税総額を定めることになっておるわけでございますが、市町村民税につきましては第二方式、第三方式をとることによって所得税減税影響を受けないでおくことができるという点は御指摘通りでございます。第二方式、第三方式をとっておりまするものにつきましては、それほど大きな減収は生じないと考えております。また団体の数からいいました場合には、これらの方式を採用しているところが非常に多いのでありますけれども税額から考えて参りますと、第一方式によりまする部分が大体市町村民税所得割の半ばを占めております。団体の数は少いのでありますけれども、大都市の方面におきましては、第二方式、第三方式を採用いたしますことが技術的に非常に困難であり煩瑣であるというような問題もございまして、第一方式によっているわけであります。税額としては半ばを占めておりますので、やはりこれらの関係団体財政収入にも、激減を来たさないような措置はとらざるを得ないというふうに考えておるわけでございます。
  9. 北山愛郎

    北山委員 しかし実際の問題とすれば、この前の説明の中にもあったと思うのですが、金額とすればそれほどの違いがないようなお話であったように思います。従ってそれは第二方式、第三方式などの方法もあるのであるから、むしろその道をあけておるのであれば、無視してもいいのではないか。もしこれを税率を上げるということは、そういう意味ではなくて、むしろ増税の道を開くのだ、こういう趣旨に解さざるを得ないのであります。  それから同時にお伺いしておきたいのは、川島長官説明要旨の中に、改正事項市町村民税に関することでありますが、第一に税率調整をはかることと書いてある。それで「その税率を明らかにし、現行課税限度額規定を除くことによって高額所得者低額所得者との間の負担均衡をはかろうとしているのであります。」こう第十四ページにあるのです。ところが今度の改正によってはこの趣旨は達成されないのじゃないか、むしろ課税総額というものを、今までは七・五%に抑えられてあったのを野放しにすることによって、税額全体を増税する道を開いたけれども、しかしこういうふうに高額所得者低額所得者との負担均衡をはかろうという趣旨ならば、三百十三条というものは別個の形になってこなければならない。すなわち第二方式あるいは第三方式というものがある限りは、いかに地方団体がこのような負担均衡をはかろうとしても、最高税率が七・五というのがある以上は、やはり高額所得者にはそうたくさんのものはかけられない、むしろ全体の税収を上げようと思えば、低い方の人たちの税金を上げなければならぬような結果になってきておるのです。だからもしも大臣説明された要旨のごとくにするならば、三百十三条第二項、第三項というものをむしろ削除すべきではないか。第一項の方を削除するということはおかしいのじゃないか。第一項を改正するということは、むしろ地方団体住民税の額を野放しに取ってもよろしいという道をあけたのだ、このように考えなければならぬのですが、私の言うことは間違っておりますか。
  10. 奧野誠亮

    奧野政府委員 前段の問題は、住民税所得割税率を改訂いたしましても、第二方式、第三方式をとっているところについては影響はないものと考えています。第一方式所得割課税方式を採用している団体についてだけ問題があるわけでありますが、今回の税率改正を行いませんと二十六億円くらい減収になりますので、地方財政状況からいって放置できない、かように考えているわけでございます。  後段の問題につきましては、第一方式では所得税額課税標準として、標準税率制限税率規定を設ける、こういうふうに改正しようとしておるのでございます。もしこれを従来の姿のままにしておきました場合には、年所得四百万円くらいの人の一五%の税率課税所得金額の七・五%に相当いたします。従いましてそれをこえる所得人たちにつきましては、一般には一五%という比例税率を使っておりましても、漸次所得の多くなるに従いまして、比例税率は逆に下げていかなければならないというふうな、矛盾した状態を引き起してくるわけでございます。そういうところから今回、この長官提案理由説明に書いてあるような考え方改正を企てたわけでございます。第二方式、第三方式について制限税率規定をはずしたらどうだろうかというお考え、これも一つのお考えだろうと思うのでございます。ただ所得課税標準といたしまして国でも所得税を課しておるわけでございますし、市町村でも住民税を課しているわけでございます。従いましてどの程度をお互いの税源考えていくかというふうなことで、大きな一線を画しておかなければならないのじゃないだろうか、こういうことが考えられるわけでございます。そういう意味で従来府県民税市町村民税を合せました姿によりまして、大体課税所得金額の一〇%を住民税の側に留保をしよう、その範囲内であればどのような累進税率を採用しようと、市町村がその市町村の実情に適合した姿において運営すればよろしいのだ、こういう考え方になっておるわけでございます。従いましてまた制限税率をはずすということにつきましては、国税との関係もございまして、適当ではないというふうに思うわけでございます。ただ、今申し上げましたような意味において、課税所得金額一定範囲内を市町村民税税源として留保する、そのワクの中でどのような税率を採用するかは市町村の任意である、こういう考え方をとっているわけでございます。しかし高額所得者においては七・五%をこえても、もっと高い負担を求めてもいいのじゃないか、これは考え方としてもちろんあることだと思います。しかし七・五%を撤廃すべきだとするこういうことはやはり適当ではなかろう、こういうふうに考えております。
  11. 北山愛郎

    北山委員 今の点ちょっと明瞭でないのですが、要するに三百十三条の第二項といういわゆる制限税率の七・五%、これはその当該の市町村なら市町村において、全体として課税所得金額の七・五%以内であればよろしいというのであるか、あるいは個々納税義務者について、制限税率というものは七・五%以下でなければならぬか。これは去年の審議の際にも若干問題になったのでありますが、ただいまのお話ではやはり従来普通に考えられておるように、個々納税義務者最高制限税率というものは七・五%以内でなければならぬ、こういうふうに解釈されるわけです。そうするとお話通りにはならなくなる、所得が非常に多い人でも七・五%以上はかけられないことになりますから、今度それ以下ということになるわけです。それ以下でこの累進税率というものを刻んだ場合には、あまり刻み方が合理的にできない、ずっと下げてしまえば今度は税収が上らぬようになってくるわけです。従って地方団体は困るから、そこでただし書きの方によって基礎控除以外の扶養控除なり勤労控除をしないような、負担むしろ下の方へかけるような傾向になっていくのは、そこに問題があるわけなのです。だからもしもその市町村における住民税所得割というものが、総所得金額の七・五%以内ならよろしい、個々納税義務者については随意に累進税率考え得る、こういうふうに解釈されるなら、また市町村ごとに適宜の方法をとれるかもしれない、その点をはっきりしていただきたいと思います。
  12. 奧野誠亮

    奧野政府委員 税法の字句の使い方から見ていきますと、七・五%以上の率を用いることができないように考えられるわけでございます。しかしながら率の定め方といたしまして、超過累進の形をとりませんで、単純累進の形をとっていきますならば、七・五%までは税率を使えるわけでございますので、実質的な負担額課税所得金額の七・五%まで課する道を選ぶことができるわけでございます。おっしゃいましたような方式が、税率のきめ方によりまして、国税所得税についてとっておりまするような超過累進税率のきめ方ではございませんで、単純累進のきめ方、要するに所得何円から何円までのものには根っこから何%、こういうふうなきめ方をすることによりまして、今御指摘になりましたような課税が可能だと考えております。
  13. 北山愛郎

    北山委員 それが実際むずかしいのですよ。それが現実にむずかしいから問題があるわけです。ただ率だけをきめるのが——合理的に率を、あるいは単純累進でもいいですが、そういうふうにしてきめるだけが目標じゃないので、それに基いてその市町村がやはり必要とする税収を上げなければならぬということで、それぞれの市町村所得階層別にその率をやろうとした場合に、実際問題として非常に困るわけなんです。従ってある程度税収を上げるためには、最高制限税率は七・五%ときめられておるから、その中で率をきめる場合に、下の方には重いような負担がかかるような率をきめておるのです。だから、ここに第二方式というのは問題がある。またただし書きによって扶養控除勤労控除も差し引かれないというようなめちゃくちゃなやり方をとるところが多くなってきている。従ってここに少くとも大臣説明要旨の中に書いてある高額所得者低額所得者との間の負担均衡をはかろうとするならば、それには今度の改正は当てはまらない、私どもはそう考えざるを得ない。むしろそれぞれの市町村税収というものを野放しに上げる、最高制限というものをやめてしまって、必要によっては増税もできるというような道を開く、ここに今度の改正目標があるんだ、こういうふうに考えられるわけです。これがまた府県民税においてもあるいは市町村民税においても率をそれぞれ上げた、もしこれを両方加えていくと、最高制限率までいった場合には百分の二十四になるのです。両方とも制限税率までいった場合には、これは前には百分の十八でございましたからして六%も、最高までいけば上げ得る増税の道を開いておるんだと私どもは解釈をせざるを得ない。従ってなぜ第一方式だけにしないのか。もしも大臣説明通りにお考えになっておるならば、第一方式にも問題がございますが、第一方式一本やりでなぜいけないか。これは計算をしてみれば、昨年度の国の所得税額はたしか二千九百億、実際に収入されたものは二千八百五十五億です。ですから、これに対するパーセンテージを出して、それでも一応ことしの地方財政計画にあるところの税収は、大体確保できるような数字が出てくるのです。第一方式をとってです。昨年の所得税の実徴収額基礎にして、そうして標準税額の百分の十八という率をかけていって、ちょうどことしの地方財政計画の五百何億ですか、それが大体確保できるような数字になるので、財政計画上も差しつかえないように思うのですが、なぜ百分の十三とそれから府県税の場合には百分の五、合計百分の十八でいけないかというのです。なぜこの幅を上げていくのか、そのわけを一つ開かしていただきたい。
  14. 奧野誠亮

    奧野政府委員 第一方式だけに限定いたしました場合には、いろいろな障害も起きてくるということを先般来申し上げたわけでございます。なるたけ住民負担市町村間において均衡のとれていることが望ましいわけでありますけれども、しかし第一方式によればその市町村内の円満を保持する上において適当かといいますと、そうではない市町村相当多数出てくるわけでございます。そういうような意味で、ある程度課税方式には幅があった方がいいのじゃないだろうか。しかしそれがために、北山さんが指摘されますように、低額所得者に特に重い負担を負わせるようなことはあってはならないと思います。ただ、北山さんが御指摘になりましたように、第二方式を使いながら超過累進税率を採用しようとします場合には、どうしても下の方に重い負担がかかりがちだと思います。私たちもそれを心配しているものでありますから、近年来単純累進税率のきめ方をするように指導して参ってきておるわけでありまして、また相当多数の市町村単純累進税率を採用してきている、こういうふうに考えているわけでございます。なおそれで十分でなければ、超過累進税率をきめても総負担額が七・五%をこえなければよろしいのだ、こういうような改正の仕方もあるわけでございますけれども現行制度においても大体私が今申し上げているような方向にきているのではないだろうか、従って制度改正をしなくても市町村におきまして適当な課税方式が採用されるのではないだろうか、そういうふうに期待をいたしておるわけでございます。ただ、第二方式相当増収を上げております団体につきまして、直ちに第一方式によらなければならない、こういうようなことをした場合には、必ず相当減収を生ずるわけでございまして、この減収をどこで補てんをするか、そのことのよしあしは別にいたしましても、この減収を補てんするという問題が起きてくるわけでございます。地方財源総額が増額できますならば、相当課税方式改正も可能になってくるわけでございますけれども、今申し上げますような事情から、地方財政計画上も、第一方式による収入のみならず第二方式による相当増収も期待しているような形になっておりますので、ちょっとむずかしいというふうに考えております。
  15. 北山愛郎

    北山委員 今第一方式だけにすれば相当減収になるというのですが、要するに今まで不適当な増税をやらしておったのです。これは制度欠陥で、何も市町村は喜んで第二方式なりあるいはただし書きをとったわけではない。ただ制度欠陥上、どうしてもしゃにむに税収を上げたい、税収を上げるためには、今申し上げたように扶養控除なんかをしないで、あるいは勤労控除をしないでとるような、下に厚いような負担のかけ方をせざるを得ないところに追い込まれておる。むしろ今の地方税法というのは、そういうことをちゃんと考えて、最高限七・五%というものをきめておいて、そうしてそれ以内におっつけておいて、しかも一方においてはある程度税収をどうしても確保させようとする、そういうところにぼくは地方税法の非常に巧妙な、非常に悪いところがあると思うのです。低額所得者に対しては非常に冷酷な面があると思うのです。ですから、私は申し上げるのですが、これは各市町村とも非常に困っている。ただいま佐賀市の陳情のお話の中にも、やはり佐賀市ではこの第二方式ただし書きによりたくはないと思うのです。ああいう都市において、ことさらそういうふうな下の方には重いような市民税をとりたくはない。とりたくはないが、ある程度税収を上げなければならぬから、しかも今地方税法の第三百十三条の第二項では最高限度が押えられておるから、そういうふうなやり方をとらざるを得ないのです。そこにこの市町村民税とり方における税制上の非常に大きな欠陥がある。むしろ大臣が言われるように、現行課税限度額規定を除くことによって、高額所得者低額所得者との負担均衡をはかろうとするならば、なぜそこまで手をつけて、もう少し改善する道を考えなかったか、こういうところに私は非常に疑問を持つ。少くとも第二方式の本文ぐらいで、ただし書きやり方はやめてしまった方がよくはなかったかと思うのですが、その点そのただし書きをやめると税収に一体どれくらいの違いがあるか、ただし書きでやっている市町村はどのくらいあるか、これを一つお聞きしたい。
  16. 奧野誠亮

    奧野政府委員 御承知のように所得税納税義務者は漸次減少して参っているわけでございますが、特に農村方面においては著しい減少を見るようになってきているのでございます。所得税の姿といたしましてはそれがむしろ望ましいのではないかと思います。しかし市町村民税になって参りますと、これはそれぞれ個別の市町村を、国として見ていただかなければならぬ。その個別の市町村の中におきまして所得割を納める者がほとんどなくなってしまったのでは、むしろ市町村民税としてはなかなか住民の納得が得られにくくなってくるのではないかと思うのでございます。そういう意味で、所得税納税義務者がほとんどいなくなったような市町村におきましては、むしろ第二方式ただし書きを採用することによりまして、広く市町村民税所得割負担してもらうという方式を採用するようになってきているのでございまして、これはやはり市町村民税という姿から見ました場合には必要なことじゃなかろうかと思っているのでございます。ただ問題は、低額所得者に特に重い負担をさせるようなことがあってはならないのでございますが、七・五%の範囲内で、さらにどのような負担をさせることが市町村として適当であるか、これは全く市町村の自主的な判断にゆだねておるのでありまして、これが結果的に低額所得者に重くなっているのではないかという御意見であるといたしますならば、それはさらにその市町村の啓蒙その他によりまして是正をはかっていかなければならぬと考えます。また市町村につきましても、第一方式による課税を行なって得られる税収入が、その団体最小限度財政需要額に足らなければ、その足りないものだけを地方交付税補填をするというやり方をしているわけであります。だからこの意味におきましては、第一方式を強要しているのだということも言えると思うのであります。第一方式による収入額で足りなければ地方交付税補填をするというやり方をしているわけであります。もちろんこれにつきましては多少問題があるのでございますが、一応そういう計算の仕方をしているわけでございます。しかしそれでもなお財源が足りないということになってきているわけでございまして、問題は市町村最小限度財政需要額計算しているその限度額が低きに過ぎる、自然多くの団体増税を選ばざるを得ないということになっていると思うのでございます。従いまして所得割課税方式が悪いのではないのであって、全市町村を通じて保証されている最小限度財政需要額というものが、最小限度需要額になっていないのではないかという問題に帰着するのではなかろうかと思うのであります。  なお第二方式ただし書きを採用しておる市町村数は二十八年で八一・五%であります。
  17. 北山愛郎

    北山委員 部長お話では、住民税課税方式の根底が二元的になってくずれてきておるということなのです。もしもお話通りであるならば、なぜ課税所得金額のきめ方について税務署の決定を基準とするか、むしろ市町村が勝手に所得をきめる方が正しいのではないか、それを一応税務署の決定する所得金額にしておいて、しかも所得にかけるとするならば、やはりどの市町村についても所得に対する課税ならば同じような考え方でいかなければならぬのではないか。所得以外にかけるものではないでしょう。今までは一つ標準税率によって所得税基礎になった所得金額、あるいは所得税税額というものを基礎として、それの付加税的なものとしてやってきたわけです。それがお話通りであるならば、住民税というものは性格が変ってくると私は思うのです。それでやはり一つの過渡的な現象といいますか、二元的な形を今とりつつあるのだと思う。その根本にあるのは、やはり国の方では地方に対する財源を交付税なんかを十分やらないで増税をさせようということなのです。地方の自主財源かどうかわかりませんが、とにかく増税をきせていこうというところに基本方針があるのだ、これはやむを得ないと言われるかもしれませんけれども、こういう方向へ道をたどっているのです。そういうところに問題がある。それで、先ほどお伺いしたのですが、かりに第一方式だけにして、今までの標準税率である所得税の百分の十八にしていくというと、昨年の実際に徴収された所得税の額は二千八百五十五億、こういわれておるのです。ですからそれの一八%であれば五百十三億ですか、五百十四億ばかりになる。こちらの方の計画による今度の地方財政計画上の所得割はたしか五百三十億ばかりになるのじゃないかと思うのですが、そうすると大した違いがないのじゃないか、一八%にしてもやっていけるのじゃないか、減収にならないのじゃないかと思うのです。もちろんそれは、国税の方も実際の徴収額ですから、調停額との開きがどのくらいあったか、これも問題になります。またこちらの地方税の計数資料についても、やはり徴収の率も考慮されて五百三十億くらいになっていると思う。しかし、とにかく大体において昨年度の実際の所得税徴収額基礎にして今までの標準の百分の十八という算定でも、全国的にこれを見るならば、地方財政計画上の数字に近いものは取れておるのじゃないか、取れる見込みがあるのじゃないか、多少そこに弾力性を与えさえすれば、財政計画上の数字は確保できるのじゃないかと思うのですが、私の算術が間違っておるならば御指摘を願いたいのです。
  18. 奧野誠亮

    奧野政府委員 市町村民税におきまして第二、第三方式を採用する結果、第一方式のみによった場合よりも百七億円程度収入額がふえてくるだろう、こういうような計算になっております。北山さんのおっしゃっている金額が調停額であるといたしますと、収入金額との間には相当大きな開きが、国税の面においてもあるはずだと思います。私たち計算は今申し上げたような数字になっております。所縁税の数字は別途に調べまして御連絡申し上げたいと思います。
  19. 北山愛郎

    北山委員 私の今申し上げました所得税の昨年度の金額というのは、最近発表された実際の徴収額です。ただ数字に間違いがあるかもしれませんし、私の計算に間違いがあるかもしれませんが、それを基礎にしていうならば、大体昨年度基準でありますから、財政計画上の数字標準税率でも間に合うのじゃないか、こう考えたものでありますからお伺いしたので、あとで一つ数字をお示しを願いたい。  それから、市町村民税の場合に今度は百分の十五になるわけですが、そうしますと、地方交付税法の基準財政収入の場合に、市町村民税基準財政収入を今までは百分の十三で見ておったのが、今度は百分の十五で見ることになる、そういうわけですな。
  20. 奧野誠亮

    奧野政府委員 一五%といたしますのは三十一年度からであります。三十一年度分からは、地方交付税計算に当りまして、やはりその率を基準にして算定をして参ることになります。
  21. 北山愛郎

    北山委員 そういたしますと、市町村民税については基準財政収入は今までよりも二%よけい見るということになってくる。従ってそれだけ交付税の税額も、今の交付税はちょっと性格が違いますけれども少くとも減るという間接の結果になるのじゃないか、いわゆる地方財政需要額とそれから収入額の差額というものが、それだけ従来よりも少くなるわけです。だから、私申し丘げたのは、先ほど申し上げた通り、この標準税率を上げることによって、交付税をよけいやらないで地方税をよけい取らせよう、こういうところに根本のねらいがあるように思うのですが、どうですか。交付税の算定上の関係でそう思うのですが……。
  22. 奧野誠亮

    奧野政府委員 所得割税率引き上げるわけでありますけれども課税標準になる所得税額が減って参っておりますので、絶対額としてはふえないのであります。従いまして率を上げましてもお話になりましたような地方交付税をそれだけで少くしていくことができるのだということにはならないのでございます。
  23. 北山愛郎

    北山委員 しかし少くとも交付税の率というものはいつでも不変なものじゃございません。やはり事情によっては変え得るものだから、地方財源の不足額というものが多い場合と少い場合とでは違ってくるわけです。それだけの違いは出てくる。今のやり方では一応予算でもって千三百億なら千三百億ときまってきますから、この標準税率が一三%が一五%に上ったことによって総額からは直接響いてこないでしょう。だけれどもこれを変更する場合の一つの要素になる点を考えてみると、やはり標準税率を上げるということは、地方によけい税金を取らせて、国の方の交付税の負担を少くしよう、こういうふうな傾向の一つの現われである。しかも三百十三条のいわゆる第二方式、第三方式というようなものを残しておる限りにおいては、やはり住民税の根本的な矛盾というものは除かれない。こういうふうな点について私は非常に不満を覚えるのです。御説明趣旨とは非常に違っておるのじゃないか。  次に道府県民税について、市町村に取り扱わせる徴税の取扱い費ですが、これについてはこの前もいろいろ話があったのですが、実際どの程度県の方から市町村に交付をしておるか、たしか二%でございましたか、実際に交付しておる徴税の取扱い費というのは、どの程度になっておりますか。
  24. 奧野誠亮

    奧野政府委員 地方税法規定しております金額通りに、大部分の府県が徴税費の額を算定するようでございます。
  25. 北山愛郎

    北山委員 それで文句はないというわけですね。それから道府県民税の公示送達の場合におけるみなす送達の期間を国税の取扱いに準じ公告の初日から七日というふうにして、現在十四日であるのを一週間に短かくした。こういうことはどうも芳ばしくないと思うのですが、どういう意味でこれは短かくするのですか。
  26. 奧野誠亮

    奧野政府委員 税務行政につきましては、国税地方税との間に二途に出るようなことはなるべく避けた方がいいのじゃないか、またこういうことにすることによりまして特に納税者に著しく不利な結果を与えるというようなものでもございませんので、今回改正しようとしたわけであります。
  27. 北山愛郎

    北山委員 この規定の場合のような問題については、送達をしたが受け取らない、あるいは不在であるというようなわけですが、大体この内容については納税義務者の方でも推測がついておる場合ですから、あるいは差しつかえないかもしれない。しかし固定資産税の縦覧期間ですが、ああいうものについて国税でもそうでしょうが、税金を取ることについて、名簿を縦覧しておるという公告を出しておいて、あとは一月なら一月が過ぎてしまう。これをほんとうに役場に行って見る人はほんのわずかだし、大体そんなことを知らないで過ぎてしまう。そしてあとになって切符が来てからこれは大へんだということになってしまう。だから公示であるとか、あるいは公示送達であるとか、あるいは縦覧であるとか、税法上の規定は、まことに形式的であって、ただそれだけの手続をしさえすればよろしい、実際にその縦覧なら縦覧の効果はなくてもよろしいというように非常に形式的になっておると思うのですが、これは何か改善する工夫はないものでしょうか。周定資産税なんか、ことにそうなんです。
  28. 奧野誠亮

    奧野政府委員 徴税令書の公示送達の問題は、公示送達をいたしましてから七日を経た日に送達があったとみなされるわけであります。しかしながら別途徴税令書は十日前に納税者に交付しなければならないとなっておりますので、なおそれから十日を経た後に初めて必要があれば督促をするということになってくるわけでございますので、納税義務者の権利というものは別段侵害されないであろうと考えております。なお北山さんのおっしゃいました形式に走る結果、納税者に不測の損害を与えたりすることのないようにいたさなければならないということは当然のことでありまして、税制改正当初におきましては住民の方でもよくわかりませんので、おっしゃいましたような事例があるかと思うのでございますけれども、だんだんそれになれて参りますし、他面また府県や町村におきましても、そういう問題につきまして住民によくわかってもらうように努力して参っておりますので、漸次そういう懸念は払拭されてくるのではないかと思います。現在の徴税令書につきましては、異議の申し立てをしたりする手続まで規定をするように法定をいたして参ったのであります。こういう考え方は、今後もなお進めていきたいというように存じております。
  29. 北山愛郎

    北山委員 しかし今の制度のそういう公示なり縦覧等の税法上の制度は、昔のひまな時代、明治の初めころの役場の仕事を考え制度であって、今のような忙しい複雑な社会では、縦覧をしておりますといっても、そんなことに気をつけるどころではなくて、その日その日の仕事に追われて知らないでおる人がおそらく大部分だろうと思うのです。これは今度参考人を呼んでいろいろ聞けばわかると思うのですが、実際に縦覧するという人は、ほんの一部である。しかも税法が非常にむずかしくて、多少法律をかじったことのある人でも、一ぺんくらい読んだってわからないような税法になっておる。だから何かここに縦覧なりそういう場合の公示、公告の方法について、もう少し工夫がなければ、制度として不完全なものであり、また一般の国民に対して不親切である。このように考えるので、何か一つこの点についての改善を考慮していただきたいと思うのです。  それから住民税については、均等割等の課税の場合に、住所ということになっておるのですが、この住所の統一ができておらないというようなことで、同じ人が二カ所でもって均等割を請求されるという場合があるように聞いております。そういう事例がたくさんございますか、またそれについてはどういうふうにやっておられますか、承おりたいと思います。
  30. 奧野誠亮

    奧野政府委員 同じ県内の市町村間におきまして重複課税が行われました場合には県知事が裁定をいたしまして、どちらか一つ課税市町村をきめればい、わけであります。府県間にまたがってそういう問題を起しました場合には、内閣総理大臣が裁定をすることにいたしております。自治庁に参りまする件数は正確には覚えておりませんが、やはり一年の間に二、三十件あるのではないかというふうに存じております。
  31. 北山愛郎

    北山委員 なるほど制度としてはそういうふうな救済制度になっておるというのですが、問題が非常に単純だというか、大した問題ではない、一カ所でやればいい、どっちかにきめればいいという問題ですから、技術的にもう少しそんな手数はかけなくても、政府までやってきて、住所のきめ方を中央まで持ち込むというようなことがなくて済むようなことはできませんか。奧野さんの明晰なる頭脳によって技術的な名案はございませんか。
  32. 奧野誠亮

    奧野政府委員 やはりこういう判断の問題は、法律、規定によって解決されるというよりも、慣習法的に大体きまってくるんじゃなかろうかというふうに思います。なかなか判断がつかないから結局争いにもなるわけでございましょうし、そういうものは結局実体判断の問題にもなって参りますので、法律で規定するのにも限度があるのじゃないかと考えます。漸次こういう問題は自然的に解決されていくだろうというふうに思っております。
  33. 北山愛郎

    北山委員 住所の問題というのは、簡単にして非常にむずかしい問題のようであります。従ってこの前も、例の挙止選挙権の問題があって、住所の問題が議論されたわけですが、これもおのずから明瞭であるかのごとくにして、実際はなかなか掘り下げていけばむずかしい問題なのです。従って何とかもう少し簡単に、ある場合には多少実体と違うかもしれない、しかし便宜に従って簡単にきまるというような工夫を一つお願いしたいと思うのです。大体僕の道府県民税についての質疑は以上の通りでございます。
  34. 大矢省三

    大矢委員長 他にございませんか——それでは中井君。
  35. 中井徳次郎

    ○中井委員 ちょっと簡単に二、三点だけ質問したいと思いますが、道府県民税市町村民税と関連がありまするので、関連してお尋ねいたします。先ほどもお話がありましたが、何と申しましても、道府県民税市町村民税の最も大きな問題は、どうも具体的な課税というのが非常に不公平である。一つ市町村においても不公平であるだけでなくて、日本全国で見ても地域的には不公平である。これを何とか国民の納得のいくように修正をしなくちゃいかぬということに私はあるだろうと思うのです。まあ法の趣旨としていつも御説明を願うのですが、三つの方法がある。これは市町村の大体自主的な判断にまかされておりまするので、ここ二、三年の間は非常に町村の財政が困難であるから、特に取ろうというふうな制度としては私はりっぱなものであろうと思うのですが、最近はどうもそういうことでもってほとんど固定をいたしておるというところに問題があるのだと思います。  そこで伺いたいのですが、各自治体内のことでありますが、大体これまでオプション・ワンの百分の十八ですか、道府県民税とあわせて百分の十八、去年は百分の十三と百分の五でありましたか、あわせて十八、こういうものを今採用しておりまする原則的な、基本的なものでがんばっておりまする都市、こういう都市は大体人口その他によって私はわかるような気がいたすのでありますが、五大都市は全部百分の十八でいっておるのではないかと思うのですが、その点を最初に伺います。
  36. 奧野誠亮

    奧野政府委員 その通りであります。
  37. 中井徳次郎

    ○中井委員 そういたしますと、どうでございますか、大体川崎だとかあるいは広島だとか長崎、福岡、ああいうところも百分の十八じゃないかと思うのですが、大体人口どの程度以上のものが百分の十八になっておりましょうか。それをちょっと聞かせていただきたい。
  38. 奧野誠亮

    奧野政府委員 大体二、三十万以上の都市におきまして第一方式をとっていないところはほとんどないだろうと思います。
  39. 中井徳次郎

    ○中井委員 私はあくまでやはりここに基本的な欠陥があると思うのです。ある非常に特徴のある市長が出たある議会は非常に積極的であって、ここ二、三年こういうようにしなくちゃならぬというようなことによって、あの法の精神が生かされているのならばけっこうでありますが、やはりそういうふうに客観的に大体きまってしまうというところに欠陥があると思います。そこで政府は今三つの方式でありまするが、これを何とか統一的に考えていく、あるいはこれを将来にわたって何か改正をするというふうな抜本的なお気持があるのかないのか、ちょっと伺っておきたい。
  40. 奧野誠亮

    奧野政府委員 先ほど申し上げたことを、もう少し詳しく申し上げておきたいと思いますが、東京を入れまして六大都市は全部第一方式をとっておりまして、人口二十万以上の都市の十八を調査いたしましたところが、第一方式を採用しておりますのが十二、第二方式の本文によっておりまするものが四、ただし書きによっておりまするものが二、こういう数字になっております。私たちは、この課税方式に選択の範囲があるところに今日の複雑な問題を起しておるのではなくて、地方財源の全体が必ずしも十分でないために、こういう問題を起しておるのだというふうに考えておるわけでございます。もし財政事情が許しますならば、第二方式、第三方式につきましても、標準負担的なものをある程度強力に指導するということが行えるならば、相当多くの今発生しておりまする問題が解決されるのじゃないだろうかというふうにも存じておるわけであります。
  41. 中井徳次郎

    ○中井委員 私はこういうふうに人口の比率で大体きまってしまうというふうなものは、やはり国全体としては非常に不公平きわまるものだと考えるわけであります。その点については私は政府といえども同感だろうと思うのです。それを改めまする方法といたしまして、今のような三つの方式よりも——これは理論的に申しまするといろいろ問題はありましょうが、現在の日本の国税体系を見ましても、はっきりいいますると、逆にいいますると、六大都市その他におきましては、なかなか個々所得その他については当りにくいです。当りにくいですから、法律でもってぴしっとこういうふうにきめてもらえば、所得税に右へならえということでもって、都合がよかろうと思うのですが、地方の群小の都市、あるいは町村に参りますると、その税務署が決定しました所得金額なるものが必ずしも妥当であるかどうか、大都市でももちろんいろいろな問題がありまするけれども、それよりもむしろ町村自体の手によって調べた方が実情に即しておるのではないか。あるいは小さな市でありますと、市自体で調べた方が逆に税務署あたりよりも実情に即しておるのではないだろうか、こう思うのです。そういう点についてどうでございますか、見解を伺っておきたい。
  42. 奧野誠亮

    奧野政府委員 私たちもおおむね同じような考え方を持っておるわけでございます。ただしかしながら両方で調査をすることはほんとうではございませんので、原則として一方に乗っかりながら他方で必要な場合には修正を加えるということができるような行き方、まあ現在の考え方がそうなっておるわけでありますけれども、そういう方式を選びたいというふうに存じております。
  43. 中井徳次郎

    ○中井委員 そういうふうに法律は実際あるというお答えでありまするが、現実には税金をかけるなんということは、町村あるいは市あるいはその議会にとりましては重要問題でありまするので、一応国の法律として、こういうものを基本とせよということになりますると、やはりそれに乗っかってしまうというのが、現状であろうかと私は思うのです。そこで去年ですか、改正がありまして、国の査定を基準とせよということになりましたが、あれをもう一度考え直して、やはり小さいところではむしろ自主的な判断をとうとぶように法の改正をする意思はおありじゃないですか。
  44. 奧野誠亮

    奧野政府委員 現在課税所得金額の決定の問題につきましては、原則として国に乗っかるわけでありますけれども、国の決定額が少い場合には、市町村の方でこれを引き上げることができるということになっております。もし引き下げもできますならば、おそらくもっと容易に中井さんのおっしゃいますような方法市町村はとれるのだろうと思うのでございます。しかし市町村で引き下げもできるということになりますと、納税者はいたずらに市町村の手で引き下げてもらうことを期待するでしょうし、そこに困難が起るだろうと思いますので、引き下げを考えました場合には、納税者に異議の申し立てのできる道も開かれております。逆に引き上げる場合には市町村の方で引き上げることができるということになっております。一応理屈としてはこれで通っているのだろうと思います。ただ市町村引き上げる場合に起きます問題は、給与所得者と事業所得者の不均衡の問題ではないかと思うのでありまして、この辺の問題になって参りますと、所得税法そのもののあり方にも、相当大きな問題があるのじゃないかという考え方をしておりまして、単に地方税法改正だけでは問題は解決されないのじゃないか、こういうふうに考えます。
  45. 中井徳次郎

    ○中井委員 あなたの御意見の通りだと思います。ただしかし所得税法の改正ということになりますと、現実の面でなかなか大問題になってくると思うのです。たとえば数年前に農村の米の超過供出の所得については免税にするとかいろいろ特別な措置ができました。これは国として一度そういうものをきめたのを変更するということもなかなかむずかしかろう。そこでこれは私の見解なのですが、戦争前には見立て割というものが相当あったように私は考えております。やはりああいうものを一つ復活しまして——これは裏から見ますと、理事者は非常に困ります。市町村長は困るというが、しかしそういうことは当然の務めでありますから、見立て割というものを大いに復活して、そしてそこに幅を与える。今のような三つの方法以外はいかぬというのではなくて、幅を与える。あなたのおっしゃる通り具体的にはもう何といいましても勤労者の市民税がべらぼうに高い。しかもそのことが大都市におきましては百分の十八ということでございますが、それがオプション・ツーあるいはただし書きということになりますと非常な差が出てくる。たとえば同じように東京都に勤めている人で東京に住んでいる人は、これは百分の十八きちっときますが、埼玉県のいなかから通勤しているような人ということになりますと、同じ東京都の職員でありましても、二倍も三倍も市町村民税を取られるということが結果として出てくるわけであります。こういうものを修正いたしますためには、私は何としても戦前のあの方法はあるいは日本的でないかもしれませんが、所得税をぴしっと改めてから、あなたのおっしゃるようにしていけばいいのでありますが、現実はなかなかそうもいきにくいという面で、そういうオプション・ツーやスリーを使わなければならないという都市については、さらにできるならばもう一つ、そういう幅を持たす必要があるのではないか。このことはそうむずかしい法の改正でなくてできるようにも実は考えますので、一つ意見として申し上げたのでありますが、どうでございますか、この点は。
  46. 奧野誠亮

    奧野政府委員 御承知のように昭和二十五年からシャウプ勧告を受けまして、一応地方税制につきましても近代的な税制ということを建前に律して参っているわけであります。全国の市町村を同一に論ずることにも多少問題があろうかと思いますし、また現実の市町村を通じて見ました場合には、むしろ見立て割的な課税が十分住民に納得してもらえましょうし、それが適切だという団体相当多いだろうと思いますけれども、現在におきましては所得というものは全国均衡のとれたもので決定されなければならないし、一応所得税の場合の所得決定がそうなっているので、もしそれが適当でないならば、市町村もこれに協力をして、適正なものにしていかなければならない。別個の建前で、別個に所得を算定するようにしてやったのでは、いつまでたっても全国的に所得が適正にならないじゃないか、こういう考え方が持たれているわけであります。一応このような方針のもとに、なお努力してみるべきではなかろうかというふうに思っております。中井さんのおっしゃったようにいたしました場合には、相当数の市町村においては、現在よりもむしろよい結果を止むだろうと思います。ただしかしながら全体を考えました場合に、今またそういう方向に逆戻りをすることが所得課税を適正に持っていくか、遠い将来を考えてみました場合には、必ずしもそれでいいとも言い切れないのではないか、こういう疑問を持っているわけであります。
  47. 中井徳次郎

    ○中井委員 あなたのお話はよくわかったけれども、やはり私は現実的でないと思います。もっと町村や市の現実を見なければならない。これはよくないことかもしれませんけれども、たとえば国税ならばお断わりだ。しかし市町村民税ならばお互いに困っているのだから、一つ庁舎を作ろうじゃないか、われわれも出すから、中にはこれはどうも実際気の毒だ、われわれはもう平等割の五百円か六百円、あとは市民税は助かります、固定資産税はもとより出しますけれども市民税は五百円だ、お隣の鉄道に勤めておられる人はまだ二十五、六の若い人ですが五千円も六千円も払っておられる、これは一体どういうことですか。実は私も御案内の通り昔市長をいたしておりましたから、そういうお話は実はしばしば聞いて、あなたのところはそんなに市が困っているならば何とかしましょうや、そりゃ喜んで市民税なら出します、町村民税なら出しますと、はっきり言います。国税ということになるとまた将来のこともありますしと、これはざっくばらんな話なのですが、そういう声は口に出さずとも庶民のほとんど九〇%の素朴な意見じゃなかろうかと私は思うのです。やはり法はそういうものを見つめて、これは適当に改正さるべきものじゃなかろうかと思いますので、実は去年もこの問題についてはずいぶん皆様にも申し上げた記憶がありますが、ことしはまだそこまで行っておらぬ。そこで私は地方税の中の一番の問題は、やはり不均衡の問題ではなかろうかと思う。土地による不均衡と同一地区内における不均衡。これが所得税ということになれば大きな国策で、たとえば食糧の問題とか大きな国策によって左右されますが、市町村民税県民税ということになると、私はやはりそういう郷土的な考え方というものが素朴に出る、また出て当然であると思うのです。それはやはり自治庁が考えないではうそだと思うのですが、どうですかね。
  48. 奧野誠亮

    奧野政府委員 中井さんのお考えは、たいへん有益な考え方だろうというふうに拝聴しております。ただ私たちは先ほど申し上げましたような近代税制を完成するように持っていきたい。それがために税法上にも協力関係をいろいろうたっているわけでありますけれども、現実の姿というものは、国と府県と市町村との協力態勢が必ずしも完璧なものでないと思うのでございます。昨年来こういう町につきましても努力を払って参ってきているわけでありまして、やはり現在一応の法の建前に立ちまして、所得というものが適正に決定されるように努力したい。ただ先ほど所得税につきまして国が特殊な政策をとっております二、三の問題を指摘になりましたが、場合によりましてはそういう特殊なものにつきましては、地方税においてはその方式によらないというふうに立法することも可能ではないか、またそういうふうに一方で問題を解決しながら、全体として適正課税が行われるように持っていくべきものではないか。いましばらくそういう方向の努力をしていきたいものだと考えております。
  49. 中井徳次郎

    ○中井委員 今の答弁で趣旨はわかりましたが、実際私どもはあなたのおっしゃる通り、理論的に所得税からすぱっといきたいのです。いきたいのですが、過去十年の日本の政治のあり方を見ますと、必ずしもそうなっておりません。食糧政策あるいは貿易政策、海外貿易あるいは重要産業と称して例の船舶の問題、電源の問題、私は非常にでこぼこがあるように思うのです。これを是正いたしますためには自治体にそれだけの権限を与える。与えないならば百分の十八で一本でいく。そして交付税なら交付税で見る。どちらかにいたしませんと、今までのように生かさず殺さずのなま殺しのような格好でここ四、五年を経過しているということは、私は非常に問題であろうかと思うのです。ですからあなたは、今ちょっと御意見がありましたが、国が国策として特に減税をする、免税をするというふうな面は、地方においては認めないというふうな形だけでも、ぜひ出してもらいたいものだと私は思います。どうでしょうか、こういう点についてさらに……。
  50. 奧野誠亮

    奧野政府委員 御趣旨を体しまして将来なおよく研究して参りたいと思います。
  51. 中井徳次郎

    ○中井委員 特にこの問題で最後にお願いいたしておきますのは、何といいましても所得が表面上はっきり出ます勤労者が、ほかのものに比べまして市民税が非常に高い。もちろんそういう人たちは、大部分固定資産税には関係のない人たちであります。ですから負担といたしましては、それは両方合計して、市に対する負担、町村に対する負担というものは考えなければならぬかもしれませんけれども、この面を改めていただきませんことには、公平な地方税の徴収というわけにはいくまい。あといろいろこの他の税制の中にも、今度改善になりまして、多少とも前進をしたという面もありましょうけれども政府がこのでこぼこを今日までほうっておかれましたことについては、われわれはどうしても納得がいかない。この点についてもっと大いに積極的に考えを進めていただきたいということを、最後に重ねて申し上げておきます。
  52. 北山愛郎

    北山委員 さっきの問題にも、今の問題にも関連するのですが、例の住民税課税方式ですね。これは「エコノミスト」の五月二十八日号ですが、この中に表があるわけです。第一方式でやった場合と第一方式でやった場合、給与所得者について十五万円の所得の場合、第一方式でやれば千五百二十円、第二方式で——これけただし書きだと思うのです。税率が四・五%となっていますが、それでやると三千六百円、二倍半近くになっております。それから二十万円のときには、第一方式では二千二百八十円、第一方式では五千四百三十円、これが給与所得者の場合です。それから事業所得者についても、所得が二十万円の場合には、第一方式では二千九百三十円、第一方式でやれば六千七百二十円というふうにものすごく高くなるのです。これは一つの例であって、市町村税率のきめ方によっていろいろ一律にはいかないと思うのですが、大体こういう傾向だと思うのです。今申し上げた「エコノミスト」の五月二十八日号の四十一ページの左の方へ載っておる計算例ですね。これは大体間違いがないかどうか。あとでごらんになってもいいですが、御返事がいただきたいのです。一つの例としてここにあるわけです。
  53. 奧野誠亮

    奧野政府委員 今御指摘になりました第二方式負担額は、どのような税率課税するかということによって、金額が多くも少くもなると思います。従いまして今四・五%という率で課税されておるようでございますが、そうであればそういう数字になるだろうと思います。言いかえれば第二方式をとることによって、第一方式をとる場合の負担よりも低くもできましょうし、二倍以上の重い負担にもさせることができるということも事実でございます。
  54. 北山愛郎

    北山委員 それは実態に触れないで、ただ理論上のお話であって、前からでも安くできるとは思うのです。最高七・五%にしてあって、そして一定額の税率をつけよう、その率を刻んでいこうということになれば、これは実際の場合として、多分十五万円の給与のある人の場合は、大体四・五%というような率がかかってくる、そういう実際の多くある例の一例を示してあると思うのです。ただ安くなる場合もあれば、高くなる場合もある、御説の通りですが、それなれば実際に第二方式をとっておる町村の実例で、どういう程度税率になっておるか、それを示して資料を出していただきたいのです。理論的にはお話通りなんです。しかし実際は大体そういう傾向になってきておるわけなんです。これは一つのワクがはめられておりますから、自然そういうことになってくるのです。そういう一つの例としてここにあげてあると思うのです。だからこれが大体において多くある例の一つである。まれな例でなくて大体においてこの程度所得者は四・五%平均ですよ。これは平均の率をいっていたと思う。最高が七・五ですから平均して四・五くらいというのがあるいは妥当かもしれない。こういうふうな計算例が間違いかどうか、大体の実情を現わしておるかどうか、これを一つお答えを願いたいのであって、そんな理論的な形式論理みたいなことをお話し下さっても一向お答えにならぬと思うのです。
  55. 奧野誠亮

    奧野政府委員 どうも御返事が大へん的をはずれておったようでございまして恐縮に感じております。もちろん税額が第一方式の場合の二倍をこえるような課税を行なっておる団体もございます。ただどのような層からどう重くなっておるかということは、その市町村の納税者の所得構成によって、かなり違っておるようであります。高額所得者が非常に少くて十万、二十万の辺の人たちが大部分であるところにおきましては、下の方にかなり重くかかってきておるだろうと思います。また高額所得者が多いところにおきましては、逆に下の方では低いという団体もないことはないわけであります。傾向としましてはかなり重い負担を背負っておりますことは事実であります。
  56. 中井徳次郎

    ○中井委員 どうも奧野さん、あなたのお話はいいですが、あまり今の御答弁なんかも現実と離れておるように思うのです。高額所得者の多いところは大都市ですよ。中小都市にそんな高額所得者の多いところというものはありはしせん。だから中小都市や町村は、もうこうなるのです。このことは私はあまり激しくは言いませんけれども、これは大問題なんです。現実の面として今の日本の税体系全体の中で一番の欠点はこれですよ。これをほうっておいて、私は方法がないとは言わさぬ。先ほど言いましたように法はあるのですよ。ですからこれをほうっておかれてはいかぬと思って、先ほどからお尋ねしておるのです。だから奧野さん、そんな理論は、中小都市は全部どちらがどうの、何がどうの、お金持はあるいはあるかもしれません。近江商人の発祥地といわれる滋賀県の日野市のようなところは、あるかもしれませんが、そんなところはほとんど例外です。ですから今の数字はほとんど全国共通の事実だろうと私は思う。
  57. 奧野誠亮

    奧野政府委員 別に北山さんのお考えも中井さんのお考えも、私は否定しておるつもりではないわけであります。ただ四・五%という率をこの所得段階において適用しておるところがどれだけあるだろうかということになって参りますと、相当疑問だろうと思うのであります。大体二十八年の調査では三・三から三・五くらいのところが平均税率になっておるようでございますし、今の所得は必ずしも高い所得ではございませんので、多少的をはずれたような答弁になったようでありますけれども、お考えそのものを否定しておるわけではございませんので、御了承を願っておきたいと思います。
  58. 大矢省三

    大矢委員長 それでは午前中の会議はこの程度にして、午後二時から再開いたします。  暫時休憩いたします。    午後零時三十分休憩      ————◇—————    午後二時二十九分開議
  59. 大矢省三

    大矢委員長 休憩前に引き続き会議を開きます。  五島君。
  60. 五島虎雄

    ○五島委員 午前の会議に引き続いて、北山さんあたりからいろいろ質問があると思うのですが、特に先日の委員会のとき、私たちの同志の川村委員から長官に質問しておいたのでございます。それは夏季手当に関する問題ですが、長官は、そのとき国家公務員について〇・〇五ときまった場合は、地方の公務員に対する夏季手当の問題についても、直ちに出すのかという質問に対しまして、十億円程度の融資を用意しているというような説明があったわけです。そこで十億円程度の短期債をもって融資するというようなことですが、地方の財政は非常に逼迫している。それで〇・七五についてもなかなか出せない地方団体がたくさんある。ところが〇・〇五あるいは〇・二五となった場合も同じですが、その場合に申し出をすれば何か世話しようというようなことを説明されたわけですけれども、申し出をすれば直ちに無条件で融資をするというようなことかどうかということを、この際はっきりもう一度再確認しておきたいと思います。
  61. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 夏季手当に関しまして超勤手当なり日直手当を繰り上げ支給するということについては、先般御報告申し上げた通りでありまして、大体標準といたしましては〇・〇五程度を予算の範囲内において渡してもいい、こういうことにきまって、人事院も多分通牒を発したと思うのですが、その際における地方の財政関係でありますが、地方は非常に窮迫した財政状態の際に〇・〇五を出すことは、とうてい資金上困難だということはよくわかるのでありまして、そこでそういう場合には特に政府資金を短期融資しよう、こういうふうに大蔵省と自治庁との間に意見の決定を見ております。ただここで申し上げたいことは、赤字の地方公共団体におきましては単に夏季手当だけでなしに、俸給その他の支払いにも困っているところがあるのでありまして、そういうものを含めて短期融資をしてやろうじゃないか、短期融資を政府に申し込む理由一つの中へ〇・〇五も加えていい、しかしそれだけでなしに、ほかに俸給不払いその他資金難に陥っているところは、一括してこの際短期融資をしようじゃないかという広い意味の了解が大蔵大臣と私との間にできた、こういうことに御了解願っておきます。
  62. 五島虎雄

    ○五島委員 赤字団体に対する融資をしようというような場合に、前例として徳島県ですか、前に赤字融資の問題について申し込んだが貸さなかったという実例がございましたか——それで地方団体が財政的に非常に窮迫した場合、夏季手当あるいは今長官の言われましたように、一般的な間違で融資を申し込んだら、必ず文句なしに自治庁はこれに対して融資されますか。
  63. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 融資をするかぎは大蔵省と郵政省が握っているのでありまして、自治庁としてはどこまでもあっせんする立場にいるのですが、給与のような義務費中でも最も重要な問題が支払い不能になっているところは、どうしても融資のあっせんをしなければならぬのでありますから、私どもとしましては、そういう点につきましては全力をあげて関係者と相談しておるのでありまして、現に最近もいくらも実例があるのですけれども、大体円滑に地方の希望はいれてやっております。ただ地方財政の運営が、大蔵省が見ましてきわめて放漫だというふうに感じているところには、大蔵省はなかなか難色があるのでありますけれども、そういう点に対しても大蔵省の理解を求めまして、地方財政の金繰りにつきましては、できるだけの努力を私たちはいたしているわけであります。
  64. 五島虎雄

    ○五島委員 努力をするという説明はわかるわけです。ところが地方財政が非常に放慢な場合はということになると、地方財政が放漫であるかどうかという判定が下されなければならないわけです。その間に夏季という時期は過ぎてしまう。そうすると地方公務員の夏季手当に対する期待は非常に時期はずれになってしまうおそれがあるわけです。従って努力をするということは、地方公務員としては非常に期待を持ちながら確定的ではないわけです。その点についてもう少し自治庁ははっきりした努力を約束する必要はないかと思うのですが、どうですか。
  65. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 これは一つ一つの実際問題に当てはめませんと、はっきりした答弁をしにくい点があるのですが、実はせんだって佐賀県から申し込まれたときに、七千万円は郵政省の簡保の金を融資しまして、あと四億大蔵省の政府資金がほしいと申し込まれました。ところがだんだん話が進むにつれて、二億でもいい、最後には一億あれば給与が支払われるということになりまして、一億だけ融資をしてやった例もありますので、地方でもなかなかかけ引きがあって、そのまますっかりのみ込みにくい点があるのです。個々に検討いたしまして、御趣旨のようなことに沿いたいと努力いたします。これは必ず努力することに私ども腹をきめているのです。
  66. 五島虎雄

    ○五島委員 そうすると、長官が努力するということは、確実に融資ができるというように確認してよろしいですか。努力だけでは地方公務員は期待のみで期待はずれする場合があるであろうと推測される場合があるでしょう。従って長官が努力するということは、地方公務員も聞いて非常に期待を持つだろう、その期待を裏切らない努力をされるであろうということを、長官が言ったということに確認してよろしいか。
  67. 川島正次郎

    ○川島国務大臣 私と大蔵大臣との話し合いでは〇・〇五に関する分は、特にこの際融資をしようという話ができたのですが、さらにその後進みまして、赤字財政のところでさしあたり資金難のところは、一括して一つ融資をするようにしてくれないかということを申し込みまして、大体これは了解を得ましたので、先ほどのような御答弁をしたわけであります。段階的にそういったようにきまったわけでありまして、〇・〇五については融資をするということは、私と大蔵大臣との間には、はっきり話がついておるわけであります。
  68. 五島虎雄

    ○五島委員 私が〇・〇五ということで質問しましたのは、これは何も〇・〇五に限定したことでないことを長官に認識願いたいと思う。たとえばということで、〇・〇五という数字を出したのです。以上で終ります。
  69. 大矢省三

    大矢委員長 それでは地方税法の一部を改正する法律案を議題として、項目別質疑を続行いたします。第二、事業税に関する質疑に移ります。中井君。
  70. 中井徳次郎

    ○中井委員 この改正案とちょっと離れるのですが、事業税のことについて方々から陳情があるのです。去年から問題になりましたことですが、大工とか左官とかあるいはブリキ屋さんとか、ああいう人たちに対する事業税、これは法律的にはいろいろな解釈ができましょうが、実際問題としては私は勤労所得のように思えてならないのです。何か自治庁として髪際の徴税の場合に、こういう問題についてはこうしろというような通牒その他を出しておられるんじゃないかと思うんですが、重ねて一つ考え方なり現在やっておられることなどについて、端的に御説明が願いたいと思います。
  71. 奧野誠亮

    奧野政府委員 昨年の改正に当りまして、事業税の所得は、国税所得税課税標準とされます所得に、そのまま乗っかっていくようにしたわけでございます。国税所得税につきましても同様の問題がございまして、給与所得と見るか事業所得と見るか、給与所得計算します場合には、勤労控除等の問題も起ってくるわけでございます。現在では、この所得税について事業所得とされた分についてだけ事業税を課していく、こういう方針をとってきておるわけであります。また事業税については、完全に国の決定所得に乗っかるようになって参りました関係もあって、従来国税局が個々にどの程度まで給与所得と児、どの程度まで事業所得と見るかということをきめておった部類もあるようでございますが、漸次統一して扱われるようになって参ったようであります。その結果、多少地域によりまして、今までの取扱いと違った面が出てきたりいたしまして、混乱している面もあるようでありますが、先日も実は委員長から伺いまして、そういうことで、さらに自治庁と国税庁との間で、その辺の問題をよく検討しようじゃないかということで、今係の者が国税庁と話をいたしております。できる限り無理のないように措置されるようにいたしたいものというふうに考えております。
  72. 中井徳次郎

    ○中井委員 この問題について、原則的にやはりいまだに第一種事業税になっておるのでございますか。
  73. 奧野誠亮

    奧野政府委員 事業所得でありますならば、請負業で課税されている部分が多いだろうと思います。従って第一種事業税になっております。
  74. 中井徳次郎

    ○中井委員 大工、左官、ブリキ屋さんは、確かに請負といえば請負と同じようなことですけれども、使います材料というものはきわめてわずかなものでありまするし、ほとんど値段もおかっている。ただあそこのといを直してくれとか、ここに棧をやってくれ、板を二、三枚出す、壁土、青竹が少し要る、そういうようなことで、実際の内容といたしましては、私はやはり勤労所得に入るだろうと思います。そこで政府におかれて、これは毎年々々の問題でありますが、事業税でもたとえば理髪業等は第三種になっておりますし、今これをちょっと見ましたところ、請負ではありませんが、たとえば家の設計監督だけやるということになりますると、これはまた第三種になっておる。こういうことになって参りますると、私はあの零細な、全国に何十万とおられる大工、左官屋、ブリキ屋さんという人たちについては、この際法令を改正いたしまして、七十二条第四項の十九にただ単に「請負業」とありますが、これに例外をぼつぼつ設けていったらいいじゃないか、かように思うのですが、その辺の御見解を伺いたい。
  75. 奧野誠亮

    奧野政府委員 お話のように、請負業にはずいぶん段階があると思います。しかしながら実際問題としてどう区分するかということは、非常にむずかしい問題になるのでありまして、お示しになりましたような部分につきましては、手間請けと申しましょうか、そういうふうなものについては、ほとんど給与所得として扱った方がいいものが多いのであります。そういう意味年所得幾らまでの部分については、そういう徒弟も使わない、下聞請け的な仕事をやっているようなものについては、給与所得と見るというふうな一つの扱いを示しておるわけでありまして、こういうような区分についてはできる限り無理のないような措置をしていくことが、現在の段階では妥当ではなかろうかと思っております。地方によってはあるいは多少無理な区分の仕方をしている向きもあるのではないかと思っております。こういう面につきましては、今後さらによく指導して参りたい、と思っております。
  76. 中井徳次郎

    ○中井委員 今のお話でありますと、各国税局におきまして一定の標準を出しているように伺いましたが、その指令等がありましたら、一つこの次の機会にお示しをいただきたい。それが一点。  それからその指令が下まで行って、府県では果してその通り順応して課税をしているかどうか。これは大いに疑問だろうと思うのですが、どうですか。実情をちょっと……。
  77. 奧野誠亮

    奧野政府委員 資料はガリ版にして提出したいと思いますが、法律的には国の決定所得に乗っかるようになっております。そういうような通達をいたしておりますので、別に違った取扱いをする向きはないのではないかというふうに思っております。ただ国の決定したものにつきまして、府県で異議を持つものがあり得ると思います。その場合には、国の方で給与所得と事業所得との振り分けをしたものにつきまして、税務署自身に訂正方を申し込むことになっておりますので、一方的に変えてしまうということもなかろう、こういうふうに思っております。
  78. 中井徳次郎

    ○中井委員 その点は私ども聞いたところによりますと、あなたのお話とだいぶ違いまして、関東財務局が一応案を出した。ところがたとえば東京都はなかなか言うことを聞かない。東京都は聞いたんですが、近県につきましては、はっきり記憶いたしておりませんが、関西の方に至ってはまるでおかしなことになっておる、こういうことを聞くんです。やるのならば一律にやってもらいたい。またその内容を私も正確には記憶いたしておりませんが、一年に十五、六万円までの者ですと、免税になっておるようであります。しかしその上になると、かかってくる。これは現実の面で十五、六万円という程度の人は、実際問題として、特に大都市あたりでは少い。それでもっと大きく査定をされるというふうなことを伺っております。今ここに陳情書が一部ありますから、ちょっと読んでみますが、これは百分の十二のときの金額であったろうと思うのですけれども、こういうことを言っております。労働省告示第二十六号による一般職種別基本日額表で、これはブリキ屋さん、板金工ですが、その最高日額が四百八十円の地域にある一人の親方、これは親方とありますが、一人でやっておる五人家族のものであります。これが年間二百六十一日の勤労日数になっている。これは労働省の告示によって大体雨が降ったり、何かすると休みますので、一年三百六十五日のうち二百六十一日というふうにきめられておるようでありますが、これによる年間の収入が十二万一千二百八十円ということになっております。これに対し、先ほどの関東財務局ですかの決定ではこういうものにはかからないということになっておりますが、現実にはこれに対して、私はおそらく去年のだろうと思うのですが、百分の十二の七千余円の事業税がかかってきておるそうであります。ところが同じような形で、これはもう事業税がかかると困るというので、どこかの会社に専属で勤めている人の場合でありますが、この人と対照してみると、同じ板金工で会社、工場に働く者は月給制で年間二十四万円を取得する。まあ五人家族で大体二十万円であります。これが勤労控除、年末調整による控除などがあって、その課税が二百余円で済んでおります。こういうことを陳情書では言っております。私は、この金紙の七千余円については、今年あたりは多少修正をされて四千円くらいになるかと思いますが、いずれにしましても、こういうふうにこの差が非常にあるということであります。現実には請負いといいましても、先ほども言ったように材料なんかもしれたものでありますし、ほとんど腕一本でやる仕事であります。そういうものにこのような差があるということは、私はどうしても納得がいかないのであります。できましたらこれを事業税からはずしてもらいたいと思いますが、それができないということでありますならば、せめて私は、請負業についてもいろいろな種類があろうと思いますから、第三種とかあるいは第二種とかいうふうに段階を設けてこれを変更しないことには、どうもこういう人たちの真摯な陳情に対しまして、現実にはどうにもならないということになると思います。私どももはっきり申しまして、板金工なんていってもぴったり来なかったのですが、よく聞いてみるとブリキ屋さんでありまして、戦時中に何か統制の関係でこういうしかつめらしい名前をつけて、そうしてそのままに至っておるそうでありまして、従って一般的に見ると、何か大産業の一部のように考えられますが、実体は決してそういうものではない、ほんとうに零細な腕一本でやっておる人たちであります。こういう人たちに今言いましたような普通の大きな請負いと同じように税をかけるということはどうも納得がいかないのです。ですから、この点については、先ほどお願いしました全国の各財務局の資料をいただきたいのでありますが、これは各地方によってはなはだしいでこぼこをやっているらしいので、これをいただきまして、それによってさらにまた質問を続けたいと思います。それで、きょうは第一の段階として一般的なことだけをお尋ねしたのです。従いまして、その資料は少しおそくなってもけっこうですから、できるだけ正確な、それが実際にどう行われておるか、またどういうような場合にはどうなっておるかというふうなことも一つお調べをいただきたい、かように思うのであります。
  79. 奧野誠亮

    奧野政府委員 御指摘になりました事情では、かなり無理な点があるように私も思うわけでありますが、ただどういうような形で零細なものをはずしていくかということになりますと、同じ請負業の中でいろいろと分類をしていくよりも、やはり最近来とられておりますところの個人事業税の基礎控除額というものを引き上げていく、こういう方向が一番いいのではないかというふうに思っております。今おあげになりました人の取得が十二万円余りということでございますと、今年は基礎控除額が十万円に引き上げられますから、二万円の八%千六百円が課税されることになります。来年は基礎控除額が十二万円になりますから、そうすると事業税の負担というものは全然なくなります。こういう姿になるわけでありまして、こういう考え方でいきたいと思っております。  それから資料の点につきましては、できるだけ努力することにいたします。
  80. 門司亮

    ○門司委員 今事業税の問題が問題になっておりますが、これは例の外形標準はやめられないのですか。私はやめたらいいと思う。やめないからいろいろな問題が起きてくるのだろうと思うのですが、それは徴収技術士だめですか。
  81. 奧野誠亮

    奧野政府委員 これは門司さんと少し考え方が違うかもしれませんが、私たちは事業税というものの性格を考えました場合には、所得課税標準とすることは本来の筋でないのじゃないか、やはり付加価値的なもの、あるいは従業員数その他の外形的なものを課税標準に採用した方がいいのじゃないか、こういう考え方をしております。ただそういう本来の税の性格を無視するといたしましても、外形標準課税によりまして三十牧億円の、所得課税の場合よりも増収を見ているわけでありまして、地方財政の現状から見ますと、こういう点からも所得課税にすることについては、非常な困難があるように存じております。
  82. 門司亮

    ○門司委員 今のお話ですけれども、税の本来の姿というものは、やはり付加価値なものではないと思うのです。同時に付加価値的なものであってはならぬと思います。ですから、問題の焦点は、今お話のありましたように基礎控除を上げることによって、そういう問題がある程度まで解消される。これは納税義務者がだんだん減って参りますから、零細な業者が救済されることによって問題点はだんだん解消されてくるとは思うけれども、実質上の問題として片一方に所得税があって、片一方に事業税がある、従ってこれを両方とも今の自治庁のような考え方でいくということは危険があるのではないかと思う。危険があるというよりも納税者の方に非常な苦痛があって、税に対する考え方が非常に問題にたってくる。これは税総体の問題に関連するのですが、所得税課税標準とした事業税のあり方というものは、転業税の建前からいえばどうしても納得がいかない。事業税の建前というものは純益課税のような建前でいかなければ、事業税本来の姿になっていないと思う。理屈を言えばこれにはいろいろ異論があると思うけれども、今の奧野君の言うような考え方、付加価値税的な性格というものは私にはどうしても考えられない、考えようがないのじゃないか。これはやはり一つの収益税ですよ。これはどうしても流通税とは考えられない。収益税であれば、収益税の本来の姿というものはやはり純益課税であるべきであって、決して流通税的なものの考え方ではないと思うのであります。これは自治庁で課税する上で、非常に困難だといえば困難でいいが、もう一つ聞いておきたいと思うのは、自治庁——自治庁というよりもむしろ政府としては、こういう零細な業者が考え方によっては二重課税とされるような税制についての根本的な考え方は、どうなんですか。できればこの税金は廃止をしていきたいと考えておるが、自治庁の考え方はどうですか。
  83. 奧野誠亮

    奧野政府委員 かつて国税でありました場合の営業税と、現在府県の独立税としての事業税とは全くその存在理由を異にしているだろうと思います。もとより収益源であります事業に着目いたしまして、これに課税していくわけでありますが、ある部分については御指摘のように所得課税標準にしております収益税的なものになっているわけであります。あるものにつきましては、売上金額課税標準にしております売り上げ税的なものになっていると思います。何分にも十億円近い財源でありまして、簡単にこれをやめてしまうにいたしましても、大へんな問題が起ってくるわけであります。それよりは、今のこの事業税をむしろ全体の納得の得られるようなものに育てていきたいというふうな考え方を持っているわけであります。事業税はもうけから払うのか、経費から払うのかという考え方に立ちました場合には、やはりもうけのうちから払う税金じゃなしに、元来事業をやっていきます以上は、それだけのものを経費として考えていってもらわなければならないのではないだろうか、こういうふうに思うのでございます。その場合にどの程度負担してもらえるかということになって参りますと、沿革的な事情もございますし、あるいは負担する場合の難易の問題もございまして、従来通り所得課税標準にしているわけでございますけれども、料金統制の行われているもの等につきまして、漸次売上金額課税標準とするように切りかえていっているわけであります。こういうように個々にいろいろ問題が起きております点を率直に見詰めまして、是正をはかりながら事業税というものを育てていきたい、こういう考え方を現在のところいたしているわけであります。
  84. 門司亮

    ○門司委員 今のお話を聞きますと多少無理があるのです。この税金の性格は、やはり売り上げ税的な性格はありますけれども、それは事実上は間違いであると思うのです。売り上げ税的の性格という毛のについては、やはり所得税の方が実ははっきりした見通しがつくわけです。事業税はどこまでも事業というものを主体とした一つの純益課税が、この税金の正しい行き方だと思う。ただその中で問題になっておりますのは、ただいま中井君から聞きましたように、請負その他ということで、とにかくそれが実際は労力の提供になり、労力によって得られているものであるが、形の上で商品とは言わぬが、商品に近い自分の考え方いわゆる見積り方によって利潤の幅が出てくるという、一つの労力以外の利益があるという考え方がされていると私は思う。この考え方が売り上げ税的なものの考え方と同じような形になってくると私は思う。もし正しい形でいこうとするなら、やはり労力費というものが十分に見られていく形が出てこなければ実際に沿わなくなってくる。それはどういうところにそういう問題が出てくるかといいますと、小さな請負をやっている諸君が一番切り詰めるところはどこかと言えば、資材費その他についての切り詰めはなかなかできません。これは他に支払う関係がありますから、詰めようとすれば自己の労力費を詰めるよりほかに方法がないのである。従って競争の非常に激しいときに仕事をやっていこうとすれば、自己の労力費が切り詰められていく。ところがそれに課税されてくるということになって、今の奧野君の説明のように、一方で商品的の部分がきわめて少くなってくる。ここに今日の大工であるとか、左官であるとか板金業に従事している諸君が非常に苦しい原因があるのではないか。それらの人たちの持っておる材料というものについては、きわめてわずかな利幅しか見られない。ある場合においては利幅が見られないような状態になるかもしれない。従って事業自体がこういう業者については、労力を中心として、同時にさっき申し上げましたように、殺すところはやはり自分の労力というものの価値を下げていって請負になる危険性がある。危険性というよりもむしろそういう実態だと思う。そこらにこれらの業者が事業税に苦しむ一つ原因がある。これは同じように商品的のものの考え方から参りましても、小売業者その他については、やはり売り上げの面でそれを殺していくかしなければ自分の労力というものが犠牲にならざるを得ない形が小売業者についてはだんだん出てくる。従って大企業とそうした零細業者との間に、奧野君のような考え方があるとするならば、何らかの処置をして、零細業者の今日の負担の過重をやわらげていかぬと、この事業税に対する今日の運動が私は非常に熾烈になってくると思う。その点について自治庁は、そういうふうに二つに区分するという考え方がおありであるかどうか。自家労力を主として提供する零細業者に対して、何らかの特別処置をとられるお考えがあるかどうか。
  85. 奧野誠亮

    奧野政府委員 たびたび問題になっておりますように、手間請負的のものを襲業と見ていくか、あるいは労賃収入と見ていくか、大へんむずかしいものが出てくると思います。しかしそういうものにつきましても、給与所得と見られるものにつきましては積極的に給与所得に分類いたしまして、事業税の対象からはずした方がよいのじゃないか、こういう感じを持っておるわけであります。中井さんのおっしゃいましたような格好で一応全国的には一つの線を出しておるわけでありますが、この辺の分類につきまして、さらによく検討を加えて参りたいと考えております。ただ現在のところでは、さらに個人事業税につきましては基礎控除制度を取り入れるようになってきておりますので、この基礎控除の額を上げることによって、御指摘のような部類の人たち負担があるいは排除され、あるいは非常に軽減されていくのじゃないか、こういうような考え方をいたしております。
  86. 門司亮

    ○門司委員 その一面、ごく安易なものの考え方基礎控除を上げるということです。これが一番手っとり早い方法です。しかしこの基礎控除引き上げということは、大事業も小さい業者も実際は恩恵は同じです。ただその度合いが少し違うというだけです。だから事業の実態にはほとんど触れないのです。そういうことで基礎控除さえ上げていけば零細者はそれから落ちていくので、従って課税の対象にならないから問題が解決するように一応考えられることは、きわめて安易なものの考え方だとわれわれは思います。しかしそのことは、税の本質とそれから税の形の上において必ずしも正しい行き方ではないと考えます。税金であります以上は基礎控除を設けるということも必要かもしれませんが、やはりそうした実態をお互いがつかんでいくという形が必要じゃないか。ことに小さな小売商人のごときは、実際問題から言えば、営業自体に対するいろいろな問題があるかもしれませんが、それを個々の労力に当てはめていって自家労力を求めるといたしますと、きわめてわずかのものになってきはしないかというような考え方がされるわけです。たとえば一人では仕事ができないので細君に手伝わせる。もし細君を雇い人としてやる場合にはその請負業は成り立たない。やはり家族全体の労力で辛うじて一つの商売がやっていけるというようなもの等についての問題が、今のようなお考えでは私は完全に除去されるとは考えられない。従って基礎控除を上げるということによって、零細業者がそれからのがれていくからそれでよいじゃないかというような考え方でなく、もう一つ進んだところの、はっきりした線を途中で引いて、そうして労力に対する報酬と見られるものには税金をかけない、事業税を課さないというような方法が、私はこの際必要じゃないかと思います。農民に事業税をかけておらないということも、やはりそこに原因があると思います。すべての人が労力を提供しておるのであって、それに対する労賃というものはきわめて零細なものである。それが積み重ねられた上において辛うじて一つの生計を保ち収入を得ておるというこの農村の実態は、やはり事業税を今日までかけなかった一つのあり方だと思います。これと同じような形が零細業者に当然考慮されなければならない。だから今のような基礎控除を上げればそういう零細なものが脱落していくからそれでよいのだというような見方は、便宜的にはけっこうかもしれませんが、税全体から考えていけば少し無理があるのじゃないかというように私には考えられる。ですからこの点については、もう少し当局の考慮をわずらわしておきたいと思います。これ以上私は議論をいたしません。  それからもう一点、事業税について聞いておきたいと思いますことは、事業税はなるほど八百億を越える、地方財源としてはかなり大きなものになっております。そのほかに遊興飲食税があるといたしましても、これを除くと都道府県税としては現在では一番大きな柱だと思う。ほとんどこれ二つが府県をささえている大きな税金でありますから、地方としてはそう簡単にやめるわけにはいかぬと思う。いかぬと思いますが、実態からいくとそういう無理がありますので、できるだけこの税金は無理のない処置をしていくということになって参りますと、だんだん税金の徴税額というものは減らされてこなければならない。その場合に自治庁としての、財源全体に対する都道府県税の構想が何かありますか。現在の都道府県税というのは非常に赤字をこしらえておって、その中にこういう事業税というものも含まれておって、そしてこの事業税も先ほどお話のように年々何とか考えなければならないという実情に到達しておる。そうすると府県税というものは非常に徴収の額が少くなるような気がする。今度多少大きな固定資産税というものを県に持っていくにしても、あるいは多少府県民税の手かげんをしてみても、府県の財政というものはなかなか困難になってきやしないかと思う。これに対する自治庁の考え方、何かありますか。
  87. 奧野誠亮

    奧野政府委員 府県の税収入をふやすとした場合に、どういう税種で増額をはかることが一番よいと考えているか、こういう御質問であるといたしますれば、私は率直に申し上げて、たばこ消費税のようなものがいいのじゃないだろうか、というふうに考えております。間接税でありますので地方税ではあまり向かないわけでありますけれども市町村とは異なりまして府県のような段階になって参りますと、間接税収入相当大きな部分を占めてくることを、そうきらうべきではなかろうじゃないか、そういう考え方もしております。そういう場合にはもとより国と地方との間で、財源上どうやりくりするかという問題がからまってくるだろうというふうに考えられます。比較的偏在度の少いことも合せまして、そういう考え方をいたしております。
  88. 大矢省三

    大矢委員長 ほかにございませんか。——私からちょっとお尋ねしますが、古本屋ですね、これは町の図書館です。あれを免税か何か特別の処置をするような考えは持っておられませんか。
  89. 奧野誠亮

    奧野政府委員 やはり物品販売業として、その所得課税標準として課税されていると思います。もちろん経費を見ます場合に、どの部分まで見るかというふうなことにつきましては、いろいろしんしゃくの度合があるかもしれませんけれども、それ以外に古本販売業なるがゆえに、特別な措置をとっているということはございません。
  90. 大矢省三

    大矢委員長 考えてないのですか。
  91. 奧野誠亮

    奧野政府委員 物品販売業の中で区分するということになって参りますので、その所得を見ます場合に、特殊な経費を算入する方式があるかないか、この辺は大いに研究の余地があるだろうと思いますけれども、そういう考え方以外に、たとえば税率で区分するとかというような措置でありますと、むしろ避けた方が望ましいのじゃないだろうか、こういうふうに考えまして、その特殊性に応じた所得計算方式というもの、これは研究の余地があるのじゃないだろうか、かように考えております。
  92. 門司亮

    ○門司委員 これはどうせ市町村民税のところで聞くことが正しいと思うのですけれども、この法律の八条の改正、この中の例の法定外普通税ですが、これが重複した場合の規定をここに設けている。この規定は一応設けることは正しいと思うのだが、その場合にただ疑問になりますのは、町村合併によってこういうものができ上るのであるから、町村合併の考え方地方住民負担をそうふやさないということが一つ考え方になっております。従って町村合併をいたしますと、今までAの地でかけておった法定外独立税、それからBの地でかけておった法定外独立税が二つ重なった場合は、どっちか一つにしなければならぬという規定を設けております。法定外独立税を、二つ合併した町村がそれを二つ両方にまたかけるようなことを避けておるようでありますが、これはむしろ避けるよりも、町村合併によって法定外の普通税というものはやめた方が、町村合併の趣旨に沿うのじゃないかと思われますが、これはやはりこういうことをしなければまずいですか。
  93. 奧野誠亮

    奧野政府委員 合併後の新市町村が、従前の法定外普通税を課するか課さないかは、その際に判断をすればよろしいと考えられるので、必ず課さなければならないことはないのでありまして、かりに課するとした場合であっても、ダブって課してはいけない、こういうことを今度規定しようとしておるわけでありますが、もとより門司さんのおっしゃいましたように、合併によって負担が増加してくることは避けるべきでありますので、それは合併を行われた場合の新市町村において考えらるべきものである。同時に新市町村の指導をどうやっていくかという問題であろうと思いますが、今度改正しようとしておりますのは、ぜひ課税しようということではございませんで、課税をする場合であっても重複してはならない、あるいはまた課税しようとする場合にも、前と全く同じように自治庁長官の許可を受けなければならない、そういう繁雑な手続を課するものではない、こういうことを明らかにしているだけの改正でございます。
  94. 門司亮

    ○門司委員 私はさっき言いましたように、自主性にまかしておる、これは当然まかしていいと私は思う。またそうあるべきだと考えております。ただこれを法定してこういう形できめていくと、条文をちょっと読んでみましても、何かそういうことができるんだ、そういうことをやるんだという印象を与えるような書き方がしてあるから、私はさっき聞いたのです。むしろそういう一つの地域にのみかけられておった法定外の普通税というようなものは、これは廃止する方が町村合併からいけば正しいものの見方だと私は思う。それは二つになったから、二つかけることはいかぬが、一つはかけていいんだということは私はちょっとどうかと思うのですがね。これはこの規定がこういうふうに書かれてしまうと、一つはかけてもいいんだということも決定づけるような印象を受ける。選択権がある程度固定されるようなことになりはせぬかと思う。むしろ新しい町村で新しい角度からこれを審議して、そうして必要があるならやはり自治庁長官に一応申請することが正しい。平らに一ぺんなくしてしまった方がいいのじゃないですかね。手数が告げるからというけれども、何だかこうすると二つあったものを一つは残してもいいんだ——これは自治庁長官の許可も要りはしないが、それをしいるような規制になりはせぬかと思うのです。その心配があるからさっき伺ったのです。
  95. 奧野誠亮

    奧野政府委員 今回規定を加えようとしておりますのは、特に現状と違ったものにしようという考えではないのでございまして、現在では規定が欠けておりますために、一体合併になった場合にそれぞれの団体の税条例というものはどうなってくるだろうか、この辺がはっきりしていないのであります。やはりかりにAという名前の団体がなくなりましても、Aという自治団体の実体は引き継がれていくわけであります。従いましてそこで行われておった税の制度というものも、なお引き継がれていっているはずじゃないかというように思われるわけでありますが、そういう意味で今回明文の規定を置いたわけであります。明文の規定を置いておりますと、どうも法定外普通税がダブってくる場合があるものですから、やむを得ずそういう規定を置かなければならなくなったわけであります。その点につきましては、門司さんの御心配のないように、通達をいたします場合には特に敷衍をしておきたいと思います。
  96. 門司亮

    ○門司委員 私も通達で敷衍されるというのはけっこうですが、自治庁の解釈はおかしいのです。これはこの前の上山市の問題が出たときに、要するに地方公務員法二十二条の解釈、任用規定であるべき解釈を、整理規定に使えば使えるのだというような解釈を自治庁はしておるのです。私は実に妙な解釈を自治庁はしたものだと思うのですが、それでああいう問題を起しておる。それと同じような解釈だと思う。あまり安易にものを考え過ぎているのじゃないか。だから当然法人がかわるんだから、かわった場合には、めんどうでもかわった手続で一応村民の意思を十分そんたくしていく、村議会なら、合併された変った法人の議会の承認を得て、やはり新しく修正し直すという建前をとっておいた方がよいのではないかということを心配するのです。これは繰り返していいますけれども、さきの二十二条の解釈には非常に弱ったのです。ずいぶんけんかをしたんですよ。任用規定であるべきものが整理規定に使われてああいう問題を起した。自治庁当局が非常に安易な考え方を持っておるから、こういう問題が起るのではないかと思う。法人が変ったら、変った手続というものをめんどうでもやはりはっきりさしていく必要があるのじゃないか、もしこの規定がこのまま使われると、通達を出されるならけっこうですが、通達が出されなければ理事者の一方的意見でこういう問題がきめられる。新しい法人の議会の意見というものは聞かれないということになりはしないかと私は思う。その点は、もし通達を出されるならはっきりした通達を出していただきたい。
  97. 奧野誠亮

    奧野政府委員 御趣旨に沿うように努力いたします。
  98. 中井徳次郎

    ○中井委員 実は私はもう町村合併の関係のことについては、今度の地方税法改正において非常にこまかいところまで規定をしておりますから、まあこんな事務手続はいいわいと考えておりましたが、今ちょうどお尋ねがありましたから私もお尋ねをするのですが、こういうものを非常に詳細にこれを規定をされておりまするが、大ざっぱに考えてこんなものが要るのですか。これは大局から見るとどうも少しおかしいと思うのです。なるほど法律的にはいろんな問題が起るかもしれませんが、町村合併促進法案をわれわれ審議いたしましたときに、特例を設けておったと記憶をいたしておるのです。それで三年間は徴税に不均衡があってもいいという条文が確かにあった。あなたの方のこの修正によりますとこれはどうですか。四年たっても五年たっても別の徴税でやってもいいのですか。これをちょっとお伺いいたします。
  99. 奧野誠亮

    奧野政府委員 承継した当初の年度におきまして、いずれの課税方式をとるかということについて争いあるいは問題が起って参るわけでございますので、そういう意味でこの規定を置いているわけでございます。しかしかりに従前の町村の条例を、その地域に関しましてだけ承継いたしましても、いつまでにやめなければならない、こういう考え方規定はいたしておりませんので、ただ理屈だけを言えば御指摘のようなことになるかもしれません。しかしそういうことはそれぞれ市町村として運営されていきます場合に、新しい全体の議会で論議されるわけでありますので、必ず条例は統一するようにすみやかに直されなければならない、また直されるだろう、こういうふうな考え方をしているわけでございます。
  100. 中井徳次郎

    ○中井委員 どうも町村合併促進法案の精神というものから言いまして、事務手続もけっこうでありますが、これはあくまでやはり私は三年が四年になっても五年になってもやむを得ないことがあるかもしれないと思いますが、原則は一本の町村になればできるだけはそういうものも地ならしをして、できるだけ早く同じ率にするのが法の精神です。しかしそれでは合併が阻害される。そこで三年くらいは一つしんぼうしようじゃないかというふうな精神なんです。それとこの細則、またそれによる今度の改正案と、ちょっと私はマッチしないような感じなんです。ちょうど小林君が来ておりますから、小林君に一つ伺うが、町村合併促進法の十四条にたしかそういうふうに例外があった。私はこれだけで一つがんばれぬかと実は思うのです。非常にこまかいこともあろうかと思いますが、そのまま従前の旧町村の権利義務を承継する。こんなものは当然なんですから、一々徴税のことで何だということになれば、もう地方自治法全部これはこまかく改正しなければならぬ。税法は特に今住民の権利義務に直接関係があるからという意味もありましょうけれども、できれば法は簡単明瞭であったがいい。地方税法なんか複雑であって、はなはだどうもしろうとにはわかりにくいし、特に合併した人口一万ぐらいの町村の税務係なんていうものはなかなかそこまで人がそろいません。そういう面からいってこの町村合併促進法の特別規定だけで押していく、あとは自治庁の通牒か何かで、問い合せがあったらこういうことでやれという指示をしていく——純理論からいえば、法律違反の面も出てくる疑いもなきにしもあらずとは思うが、こんなことを一々こまかくやっておっては、大精神とするところの三年程度で地ならしをする、一本の世帯になるということが、それが今後何年でも続くことになりはせぬかと思うのです。どうですか。
  101. 奧野誠亮

    奧野政府委員 どうもずっと条文を読みまして、何かこういうことで不均一の課税をずっとやっていくようにお感じになっておるようでありますけれども、実は私たちこの案文を作りますときは、そんなことは毛頭考えておらなかったのであります。ただ引き継ぎました当初におきまして、一体どういうような課税方式をとるか条例ができていない場合に、どうやって税務行政を進めていくか、こういう問題があるわけであります。それと同時にその年なり、あるいはその前年なりにおきまして、法人税割が納められていない、あるいはまた個人所得割課税漏れになっている、こういう場合に新団体の条例で課税をしていくのか、旧団体の条例で課税していくのか、こういうこともはっきりしないのであります。そうしますと税務行政をどう運営していったらよいかはっきりしませんので、当座の処置をはっきりさせるために、こういう規定を置いたのでありまして、当然翌年度になって参りますと統一した条例を作ってもらうことを期待しておるわけであります。どういうことから中井さんがそういう御心配を持たれたのかよくわからないのでありますが、われわれの規定の書き方もあるいは注意が足りない面があったかもしれませんが、運営におきましては今申し上げたような趣旨でございますので、そういう考え方は強く出していかなければならないと思っております。御指摘のように不均一の課税が継続的にいつまでも新団体になってからも行われていくということは、好ましくないことだと私たち考えておるわけでございます。
  102. 中井徳次郎

    ○中井委員 そうなりますと、何ですか、今度の改正案で、これは三年でしまいということを、はっきりどこかでうたっておく必要はあるのじゃありませんか。
  103. 奧野誠亮

    奧野政府委員 三年よりもむしろ、合併をいたしました当該年度限りでよいのじゃないだろうか。翌年度からはかりに不均一の課税をするにいたしましても、新団体が条例を定めるべきじゃないだろうか、こういう考え方を持っておるわけであります。合併以前の課税に漏れているもの等がありました場合には、これを生かしていかなければなりませんので、古い団体の条例が将来にわたってその部分に関します限りは生きていく、こういう精神ははっきりしておるわけであります。
  104. 中井徳次郎

    ○中井委員 それでは別の問題が起ってくると思うのです。現実の町村の姿を見ますと、合併をするあるAならAという村が、これまで何十年の聞こういう方針でやってきた。合併したとたんに、新しい方式になって、これまでほじくられなかった、こういうところまで税金を取られるのだ、これまで抜かしておったようなものまで税金がかかってくるのだ、これでは困りはせぬかと私は思うのです。とにかく合併以前の町村のやり方というものを一応認めていく、こういう形が町村合併の十四条のほんとうの精神だとわれわれは思うのですが、そういう点で合併して新しい団体になったために、合併前の従来のやり方についてまで、過去にさかのぼってメスを入れていくということについては、相当大きな問題が起ってきはせぬかと思いますけれども、どうですか。
  105. 奧野誠亮

    奧野政府委員 どうも御心配が大分きびしいように思うのですが、もし課税漏れであって、あるいは前の団体から引き継いでいるかもしれません。そういう場合にどういう条例が適用されるのだろうかということは明らかになっていなければなりませんので、そういう場合はどういう条例、根拠でするのかということを明らかにしておくというだけのことでございまして、別に将来にわたってずっとほじくっていこうというような考え方じゃ毛頭ないわけであります。ただ合併等の場合におきましても、一つ課税客体が二つ以上の団体に分属するという場合も生じましたりいたしまして、そういう場合にもどうやってきめていくのかというふうな規定も必要といたしましたり、現在のところ全然こういう規定を欠いておるものでございますから、相当市町村においていろいろ争いが起っておるわけであります。そういう場合にはよるべきところを明らかにしておく、そういう意味でこういう改正をやっておるわけであります。
  106. 中井徳次郎

    ○中井委員 私は方々で争いが起っておるということを今聞きましたが、どうもこの条文を見ますと、第八条の二というところにいろいろ消滅市町村だとか書いてありますが、こんなものは当然のことであって、権利義務全部承継するのですから、これをわざわざ書いてやっていくとなると、これは心配が起ってくる。町村合併の促進を遂行する上において、いろいろ問題はありましょうけれども、それを一々取り上げて日本中の法律を変えていくというほどの大きな問題じゃない。これは法のすっとした解釈でいけば、当該市町村でも何でも県なり皆さんの意見を聞けば幾らでもやれるはずであると私は思うのです。そういう意味でお尋ねしたわけですが、どうですか。
  107. 奧野誠亮

    奧野政府委員 大体現状に従って規定を整備していく、こういう考え方に立っておるわけであります。もちろん慣習法的に問題を処理していくというのも一つ考え方かもしれませんが、現在の国の法制全体の建前からいいまして、なるだけ明確な規定の置けるものは置いていった方がいいのじゃないか、こういうふうに考えておるわけであります。
  108. 北山愛郎

    北山委員 二、三お聞きしますが、法人事業税の本年度の収入見積り、これは昨年相当ふやしておるようですが、たしか昨年は五百三十一億、それから今年は六百六億ですか、相当大幅にふえておるわけです。ところが国の法人税の徴収は、二十八年度が千九百八十八億、二十九年度が二千一億、それから三十年度の予算が千九百五十八億というわけですから、この三カ年大した違いがない。そうしますと相当税率引き上げということでもなければ、地方税の方の事業税がそれほど大幅に上るということはちょっとおかしいような感じがするのですが、その理由、どういうところでそういうふうに上るかということをお聞きしたいのです。
  109. 奧野誠亮

    奧野政府委員 お話のように国税の法人税につきましては大体十五倍といっていいと思います。ただ法人税は課せられておるけれども、事業税を課していないのが鉱物について実際あり得るわけであります。石炭業などにつきましては鉱産税を課しております関係上法人事業税は課しておりません。こういう関係の事業の所得というものが従来法人税の中では相当な分量を占めておったわけであります。それが近年だんだん少くなりまして、現在ではほとんどゼロであります。法人税の課税所得としては全体としては変らないわけでありますけれども、ある部分がふえ、ある部分が減っているわけであります。たまたま減っています部分については、事業税が課されていないものが多いわけでありまして、そういう意味で法人事業税の課税所得が横ばいでありましても、法人所得税課税所得の方は若干増加していく、こういう面があるのでございます。それが今おっしゃいましたような数字に現われてきておるわけであります。
  110. 北山愛郎

    北山委員 どうもよくわからないのですが、もう少し具体的にお話し願いたいのです。何しろ昨年の五百三十一億から六百六億ですから七十何億かの食い違いがあるわけです。法人の事業税というのは相当大きく増収が見込まれておるわけです。逆に個人事業税の方は減税措置等によって三十億ばかりの減収を見込んである。だから一つの方針のようにすら見えるわけです。個人事業税の方はできるだけ軽減していく、法人事業税の方はふやしていくという措置がとられておる。こういうふうな結果として、この徴税の見込みの中にもそういう大幅な違いが出てきているのだと思います。単に今のお話のようなことでは、一体その法人税の分と、それから法人税と食い違っている分がどの程度であるかということがわからないと、どうも説明として納得ができないと思うのですが、もう少し具体的にお話しを願いたいのです。
  111. 奧野誠亮

    奧野政府委員 法人税の課税所得の中で、事業税の課税対象にならないもののパーセンテージをきめているわけでありますが、その率を昨年よりもことしは先ほど申し上げた石炭鉱業等の関係から変えておるわけであります。その率をどう変えたか、今調べておりますが、ほかの質疑のうちに調べましてお答えいたしたいと思います。
  112. 北山愛郎

    北山委員 それでは次に徴収率の問題ですが、これはもちろん事業税ばかりでなくて、ほかの税についてもそうでありますが、国税の昨年度の徴収率は上半期は比較的よかった、しかし下半期になって非常に悪いというようなことを、国税庁当局は言っているわけです。その結果、間接税というか酒とか砂糖とかガソリン、こういうものは相当伸びが来た、しかし直接税の方はどうも伸び悩んで徴収が困難になった、いわゆるデフレ経済の影響が下半期に至って相当はっきりと現われた、こういうようなことを私、新聞等で拝見しているのですが、地方税においてこれがもっとはっきりしているのじゃないか、というのは、地方税には酒とか砂糖とかあるいはガソリンというようなものはない。住民税にしてもあるいは事業税にしても固定資産税にしても、そういうふうな直接税的なものが大半を占めているわけです。従って今の国税の傾向がやはり地方税の徴収の上にも現われているのじゃないかと想像されるのです。昨年の特に下半期の徴収の状況について国税におけると同じような傾向が現われておらないかどうか、これを一つお話し願いたいと思います。
  113. 奧野誠亮

    奧野政府委員 具体的に個々の税目につきまして、実はそういう調査はないわけであります。ただしかしながら国税につきましても昨年補正予算の際に法人税を一挙百五十億円増額計上したように記憶しております。もし法人税を百五十億増額計上いたしませんければ、法人税の自然増収が百五十億あったじゃないか、こういうことにもなると思うのでありまして、補正予算の際にどこに財源を当て込んで予算を組むかということで、結果的に税収入が予算よりもどう上回わったかという問だと関連してくるという感じを持っております。もちろんデフレ経済下でございますので、直接税の方が徴収が非常に困難であるという事実はその通りだと思います。
  114. 北山愛郎

    北山委員 そうしますと、地方税についてははっきりとしたそういう傾向を現わすものがないというわけございますか。
  115. 奧野誠亮

    奧野政府委員 法人事業税あるいは法人税割につきましては、当該年の所得を使っているわけでありますけれども、事業税にいたしましてもあるいは所得割にいたしましても、前年の所得課税標準にしておりますので、特に前年所得が決定してしまった以上は異同は生じないわけであります。徴収成績の問題となって参りますと、個人事業税の基礎控除引き上げられましたり徴収税率が引き下げられたりしております関係上、むしろ前年よりは非常に大きく徴収成績が上ってきております。
  116. 北山愛郎

    北山委員 実は法人事業税ばかりじゃないのです。一般的なお話を聞いているのですが、特に地方税の徴収成績がどうかということなんです。要するに経済の不況と税の徴収ということは、常識的に考えても、われわれ地方団体人たちから聞きましても、税金が納まらなくて困る、税の滞納という問題が、やはり地方赤字財政の一つの大きな原因であるわけです。普通は、常識的にはそういうように見えるのですが、数字的にこれがどういうふうに現われておるかということをお聞きしておるのであります。それから同時に、この前にもこういう点を指摘したのですが、地方団体は、税の滞納が多くなって徴収がむずかしくなるということになると、できるだけ調定額というものを伸ばすのです。水増しをするというか、なるべく調定額をふやしておいて、そして徴収率が悪くても予算額だけは取ろう、こういったようなことをやる傾向がある。従って徴収率、収入卒というのは、予算との比較じゃなくて調定額との比較でなければならぬ。調定額との比較が非常に開きがあるということになれば、そこで課税やり方自体にいろいろ問題があると思うのです。そこでこれは検討しなければならぬということになるので、ただ予算額だけのものを年度内に確保したということだけでは、私どもは問題の表面だけを見ているのであって、その裏面を一向把握していないということになると思う。そこで予算に対してはもちろんのことでありますが、さらに調定額に対してどれだけの収入率、徴収率があるか。これは昨年度国税にもそのような情勢が現われておりますので、非常に大きなというか、重要なことであると思いますので、どういう率になっておるか、その数字、そのパーセンテージ、傾向というようなものをお聞きするわけです。
  117. 奧野誠亮

    奧野政府委員 前段の方の問題につきましては、府県税でありますと、個人事業税が一つの目的になると思うのであります。これは先ほど申し上げましたように、前年度よりも非常に成績が上ってきているわけであります。市町村税でありますと、固定費産税が一つの検討の目途になろうかと思います。ところが市町村税につきましては、なお数カ月見ませんと全体のそうした実績がわかりませんので、現在のところちょっと予測がつきかねております。なお私たちが徴収率と言いまするのは、予算額に対する収入済み額の割合じゃございませんので、調定済み額に対する収入済み額の割合、北山さんが御指摘になりましたような意味での率を申し上げているわけであります。これもいっか申し上げたいと思いますが、昭和二十五年度が、府県税市町村税合せまして七七・七%、昭和二十六年度が八一・九%、昭和二十七年度が八二・五%、昭和二十八年度は八三・五%というふうに上昇しておるわけであります。二十九年度は、十二月末日現在と比較して、前年同期よりも三・六%上昇いたしております。
  118. 北山愛郎

    北山委員 その問題は、総体の税の徴収率——これはたとえば電気ガス税であるとか、あるいはいろいろ割に徴収の容易なものがあるわけです。また逆に非常にむずかしい部面もあるわけで、全体の率だけでは何とも言えないのじゃないか。しかし私どもは常に注目をして、そしてこの見込み違いとか、あるいは課税やり方について無理のないようにするためには、税の徴収工合というものをよく注意をしておらなければならぬと思うのです。  次に、今度損害保険会社について外形標準課税に改めたわけですが、自治庁としては、外形標準によって事業税を収入金額にかけるということを、どういうふうな基準で今後ともおやりになる考えであるか。あるいは外形標準で事業税をかけることが適当であるか。やっぱり何かそこに理論的な一つ基準がなければいかぬと思うのですが、どういうふうにお考えになっておりますか。
  119. 奧野誠亮

    奧野政府委員 将来外形課税範囲をどう広げていくとかいうふうなことは、現在のところ考えていないわけであります。ただ現在外形課税を行なっておりまするものにつきましては、三つの類型があると思います。  第一の類型は、国が料金統制を行なっておる企業でありまして、しかもその企業が独占的な形態を持っている、これが一つであります。料金統制を行なっておりまするので、料金をきめます場合に、府県にどの程度の事業税を負担すべきかということもあわせ検討すべきかと思うのであります。料金に織り込まれました場合には、独占の形態を持っておりまする以上は、その料金が必ず守られると思うのであります。電気のごときがその例であります。必ず守られ得るものなら、料金をきめる場合に織り込まれたものだけは事業税として府県へ支払ってもらう、そうするためには売上金額の何パーセントを事業税とするというふうなきめ方をするのが、一番適当だと思われるわけであります。  第二の類型は、企業が相互組織をとっているものでありまして、生命保険業がこれに類すると思われます。相互組織をとっておりまするので、通常利益と思われるようなものが増加して参りましても、これをすべて配当をしてしまいますと、自然税法上の利益というものは上って参りません。相当な規模で事業を行なっておるにもかかわりませず、事業税を負担しないということになってしまうのであります。そこでこういうような相互組織の形態の生命保険事業のようなものにつきましては、収入金額課税標準にして税金を負担してもらう、こういうことになるわけであります。  第三の類型が今回とろうとしております損害保険事業なのであります。損害保険事業は、事業の性格からいたしまして、資産の運用によりまする収益というものを中心にして運営されて参ってきております。事業税の課税標準とします所得は、なるたけ重複課税を避けたいという意味から、法人税の課税標準であります所得を原則として、そのまま使うことにいたしておるのであります。法人税の場合には配当を支払いますと、支払った法人の段階で法人税が課されておりますから、配当を受け取った法人の段階におきましては、この配当を益金に算入いたしません。従いまして損害保険事業につきましては、収益の大部分が配当所得なんでありますけれども、配当所得が益金に算入されません。従って法人税の課税標準となる所得というものが、事業の規模から考えました場合に、少きに失するわけであります。従いましてこういう事業につきましては、配当所得は益金に算入する、課税標準にとっていくという行き方も一つあるようでありますけれども、一体そういう例外をどこまで広げたらいいのだろうかというような問題も起って参りますので、自然生命保険事業に準じまして、収入金額課税標準とするように今回改めたい、かように考えたわけであります。現在のところこの三つに類型を区分することができると思っております。
  120. 北山愛郎

    北山委員 そうすると、その第一の料金統制を受けて独占的な形態をなしておるような事業というものは、たとい税をかけても、それは料金の中に確保される、こういう趣旨でありますから、結局それは消費者に転嫁される、こういうことを前提としてかげておる、こう見ていいわけですか。
  121. 奧野誠亮

    奧野政府委員 消費者に転嫁されますか、あるいは企業の合理化で吸収されますか、料金をきめます場合にどう算定するかということにかかってくると思います。しかしいずれにしましても電気事業の諸経費というものは、結局利用者において負担されるわけでありますので、事業税もまたもうけの中から払う税金というよりも、経費の中から払う税金と考えられます。従いましてそういう意味では、消費者に転嫁されるのだ、こういう言い方もできようかと思います。
  122. 北山愛郎

    北山委員 今のような御説明だとそういうふうな疑問が出てきましたのでお伺いしたのですが、そうなると電気ガスについては、御承知のように電気ガス税というものを別に消費者からとってあるので、消費者はそういうふうな独占事業についての事業税をその料金部分の中でまたダブって払いつつ、さらにまた電気ガス税で二重に払うような感じがするので、どうも先ほどの説明だと私はちょっとおかしいのじゃないかと思うのです。それから損害保険会社についての説明でございますが、保険料の三五%となっておりますが、これはいわゆる経費率を基準としたわけですか。
  123. 奧野誠亮

    奧野政府委員 前段の方の問題は、企業の利潤でありましても、結局消費者が支払っているということになるのだろうと思います。料金統制を行なっていきますと、その料金だけは全部消費者に払ってもらうものでありますので、そういう意味においては消費者に転嫁されるということになると申し上げたわけであります。課税方式といたしましては、あるいは収得の段階で課税いたしましたりあるいはまた流通の段階で課税をいたしましたり、あるいは消費の段階で課税をしたりするわけでありますが、事業税は電気に対しましてもやはり一つの収得課税の形式をとっていると思います。電気ガス税の方は消費課税の形式をとっていると思うのであります。事業税の税率は一・五%でありますけれども、電気ガス税の税率の方は一〇%ということになっておるわけであります。大体現在の電気ガス税は消費税的なものに純化して参りまして、純工業用のものは課税から除外するようにいたして参っております。家庭用の電気につきまして、特に消費課税的な運営をすることによって、ある程度所得の多い人から消費段階においても重い税を負担してもらいたい、こういう考え方に立っておるわけであります。
  124. 北山愛郎

    北山委員 あとの方のお答えがなかったのですが、損害保険会社について……。
  125. 奧野誠亮

    奧野政府委員 後段の方の問題は、保険料として徴収いたしましたものを、事故がありました場合には保険金として返していくわけであります。言いかえれば銀行預金のようなものだと思います。こういうものを純保険料と呼んでいるようでありますが、純保険料を除きました保険料、これを付加保険料と呼んでいるようであります。この付加保険料の率として、それぞれの保険の種類に応じて二〇%とか三五%とかいうような率をはじいていくわけであります。北山さんがおっしゃいましたような経費率プラス利潤率、これが大体その率に当っている、こういえるのじゃないだろうかと思うのであります。
  126. 北山愛郎

    北山委員 私の聞いておる損害保険会社の経費率というか、付加保険料の部分はたしか保険料のうちの四八%くらいに当っておると思いますが、これは一昨年あたりの統計によると四八%くらいの経費を使っておるわけです。そうするとそれと三五%はちょっと食い違いがあるようでありますが、それが違って来た理由を伺いたいと思います。
  127. 奧野誠亮

    奧野政府委員 現在の運営の状況をそのまま押えて参りますと、付加保険料が非常に高い率になって参ります。従いまして現状そのままを抑えて率をきめますと、損害保険事業の税負担が急激に非常に増加することになるわけであります。しかもまた現在の付加保険料のままでよろしいかどうかということを考えますとぜひ付加保険料の率を、もっと下げられるように企業の運営を合理化してもらいたい。私たちはこういうふうに考えておるわけであります。そこでいろいろ考えました結果、現在の付加保険料に当ります分から代理店手数料として支払っておるものを引いたものを逆算して、付加保険料の率を出したわけであります。これが正しい行き方だとは思っていないのでありますけれども、これを引いたものが将来あるべき理想的な付加保険料の率として考えられるのじゃないか、こういうような考え方でこの率をきめたわけでありまして、現在の付加保険料はもっと引き下げられてこなければならない。それでは一体どの程度を適当とするだろうか、こういうことを考えて参りますと、過去の時代のものがそのままいいわけでもありませんし、外国のものがそのままいいわけでもありませんし、いろいろ考えました末、今申しましたような計算の仕方をいたしまして、あるべき付加保険料の率として、こういう率を肯定しようとしたわけであります。
  128. 北山愛郎

    北山委員 ここでお話してもどうかと思いますが、損害保険会社、特に火災保険については、課税上は別個に考えなければならぬのじゃないかというふうに思うのです。今のようなやり方一つ方法ではございましょうが、損害保険というものは普通の金融機関などと違った特殊な性格を持っておるわけです。現在の実績から見ると保険料の二〇%にも足らないものを損害保険金として払うにすぎない。今のお話のように五〇%近くのものを経費に使っておる。そのうち代理店経費が一五%くらいだ、本社費が三五%くらいだというようなことで、今回は三五%の分についてかけるわけですが、何らか別個の課税やり方をしなければならぬのじゃないかと思うのです。ことに先ほどお話のように配当所得についての免税というか、そういう措置があるから、それを補う意味で外形標準でいくということでありますから、何かその辺にも工夫されなければならぬのじゃないかというふうにも考えられるわけであります。大体事業税については以上であります。
  129. 大矢省三

    大矢委員長 他にございませんか。
  130. 中井徳次郎

    ○中井委員 議事進行ですが、私は遊興飲食税その他改正をしないことでも、これについてここでいろいろお尋ねしたいわけです。きょう全部終るならいいですが、私はとうてい終らないと思いますので、きょうはこの程度にしていただいて、明日か明後日か一日で、ずっとしまいまでやるということにしてはどうですか。
  131. 大矢省三

    大矢委員長 ちょっと速記をとめてください。   〔速記中止〕
  132. 大矢省三

    大矢委員長 速記を始めてください。  それでは本日はこの程度にとどめまして散会いたします。  なお次会は公報をもってお知らせいたします。    午後三時五十九分散会