○
鈴木参考人 まずもって御
了承を皆様に得ておきたいと存ずるのでございます。このような重大な問題につきまして、しかも皆様方に非常にお手数をわずらわしておることについて、知事としてまことに申しわけなく存ずる点もあるのでございまして、こうした重大な問題であればこそ、知事としてここにかけつけて、るる皆様方に
実情を御
説明申し上げるのが本旨であるのでございますが、御
承知の
通り現在皇太子様が
愛知県下においでになっておりまして、御案内を続けておる
関係から、本日その機会を失ったことにつきまして、皆様方にあしからず御
了承、お許しを願いたいということでありまして、不肖
総務部長の私が参った次第であります。
私
どもの考えとしまして、こうした問題について、
名古屋市から、さらにまた
関係町村から、るる
説明せられまして、あるものは事実に合致し、あるものは事実にほど遠い、あるものは考え違いではないかといったような問題もあるのでございます。
まず県としまして、この問題についてとったところの態度その他について簡単に御
説明申し上げ、さらにこうした問題について
関係市町村からそれぞれ申されたもので、県の名誉のために、また私の名誉のために、一応ここで疎明さしていただきたい点について、簡単に申し上げさしていただきたいと存ずるのであります。
名古屋市と
関係町村との
合併問題については、私
ども町村合併促進法のねらいとしておりますところの
弱小町村を解消しまして適正規模の
町村を作るそれと軌を一にすることはできないものだということを根本に考えておるのでございます。すなわち
名古屋市につきましては、中部地方の中心
都市としましてふさわしい理想
都市、大
名古屋を建設する、こういったような建前から大局的
見地に立ちまして、その地域の規模の決定は、もちろん中部地方全体の
見地から、
名古屋市と
衛星都市との
関係及び地方
農村との関連、さらに現実の
財政能力、こういったようないろいろな角度から検討して決定することが望ましいということを、知事は常に考えておるのでございます。もちろん
名古屋市の発展、それは大
愛知建設の大きないしずえでございますので、そうしたことについて強く関心を持っておるのでございますが、今回とられたところの措置、それは非常に遺憾きわまりないものであったのでございます。私
どもは、
名古屋市がまずそうした観点から大きな
一つの
委員会のようなものでも作って、あらゆる角度からあらゆる人が集まって、理想
都市大
名古屋をつくるためにどうすればいいかということで、円満裡にこれを相談し、建設への一歩々々を築いていくことが望ましい、こういうことを考えていたのでございますが、
先ほど市長さんの
お話にありました
通り、昨年の三月ごろからどんどんとこの仕事を始めて参りましたが、八月の下旬のころまで、ほとんど県には連絡らしい連絡がなかったのでございます。
町村合併促進法の
委員の中に、
名古屋市としましては入っておりませんが-これは
町村合併促進法の
精神からしまして、普通の市の代表、
議長、いろいろの
町村長というものは入れましたが、
名古屋市は一応これに入っておりませんが、ここに見えております冨田の
町長が、
町村会の会長として当時代表として出ておりまして、いろいろの事情は話されておるのでございますけれ
ども、
町村合併審
議会で、私
どもはこうした
名古屋市がいろいろの手を打っているということのうすうすの話は聞いたけれ
ども、何ら
名古屋市がこうした
合併問題を
取り上げて進んでいるというような事実を知らなかった。立松さんにも何回となしに
町村合併促進の審
議会におきましていろいろと尋ねたことがありますが、いや、これは名隣会として、
名古屋市にいろいろの権利的なものを要望したり、あるいはまたいろいろと連絡をとるだけの会であって、決してそうした
町村合併などのものではないよ、こういうことでありましたので、私
どもも何ら知らずに進んで参ったのでございます。それはそれとしまして、私
どもが現在
名古屋市の
実情を見衣するときに、こうした理想
都市を令すぐ作ることが必要か。それとも、
名古屋市は御
承知の
通り、戦災に見舞われて、その戦災復興についても相当の資金を要する場合でございますし、
都市計画の問題、あるいはまた道路の改良の問題、舗装の問題、その他
学校にしましても、全国一番大きいと言われておる二部授業をしておるような
関係もあります。小中
学校義務教育さえ二部授業を続けており、教室が非常に老朽しておっても、それをいまだに直すこともできないところもある。こういつたようないろいろの問題をやり、さらにまた中部日本の表玄関としての
名古屋港に、県と市とがもっともっと金を出し合って、そうして
名古屋港の拡充のために力を入れることが望ましいのではないか。そうした問題をまず
取り上げて、
名古屋市としては大局的
見地に立って、中部経済圏の市としての立場、それを考えて進むことにし、それをいろいろの角度から研究することにして、先決問題としては市内の整備に重点を置くべきであることを、私
どもは県としての責任ある立場において考えたのでございます。同時に
関係町村につきましては、それぞれ豊かな
農村としての立場において生かすべき多くの問題がありますので、そうした方面に力を入れる。たとえばここに見えておる富田の
町長さんのところから南陽村、十四山村、飛島村といったようなところは、非常にひどい湿田地帯でありまして、海岸よりもずっと低いところの
土地が大部分を占めておるような状態でございます。そうしたところにつきましては、逆潮樋門をつくるとか、あるいはまた
土地改良をうんとやるとか、あるいは河川の改良をやるとか、海岸堤防をもっとよくする、そうしたことによって、豊かなる
農村の穀倉としての職域を生かすことに、もっともっと重点を入れることの方が現在進むべき道ではないか。こういったようなことで、そうした
関係町村にそれぞれ勧告も続けて参ったのでございます。
県議会におきましても、そうした気持から地方制度
調査委員会において詳細これが実地
調査をきわめ、また県の
町村合併審
議会におきましてもこれを
調査しまして、また
県議会の総務常任
委員会においても問題が問題であるだけに慎重に
調査しました結果、去る三月の十六日の
県議会におきまして、これについて総務常任
委員長から報告がなされたのでございます。その報告は、地方制度
調査委員会の報告と、
町村合併審
議会における報告、総務常任
委員会の
審査の結果は、いずれもそれは相一致するものでございまして、二つの
町村は認め、二つの
町村は保留し、他の
町村については
否決するということの問題であったのでございます。そこでその二つの
町村の保留のものにつきましては、目下継続
審査をなしておるような状態でございます。
このようにしましてなされました
議会の
実情はと申しますと、四十五人の
議員が
出席しまして、
議長は
議決をしませんでしたが、起立によるか、あるいは記名投票によるかということによりました結果、万人が見ており、席からもたくさんの人が認めて、多くのやじの飛んでおる中において記名投票がなされたのでございますが、その投票の結果は四十対四であったのでございます。しかも当然四十に加わるべき自由党のある
議員さんが、興奮した結果、どっちにまるをつけるか誤ってやったために、実質的には四十一対三という結果になるようなものであったのでございます。もちろん
県議会としましては、第一線の
市町村の
議決は十二分に尊重したい気持のもとに、相当研究にこれ努めたのでございます。研究に努めたからこそ、その内容におきましては、書類自体は一括申請の措置をとっており、しかも各
町村は
名古屋市と個別的に
審査の措置をとっておるのでございますけれ
ども、もしこれができることならば、認められればといったようないろいろの
実情もありまして、そうしたものを一応あと回しにしてやったのでございますが、事情がそれぞれわかって、
否決すべきものやその他も出る
関係から、遂に、これは一括申請の形をとっておるが、個別的に
審査していいか、分割できるものかどうかということを、
名古屋市に尋ねたのでございます。
名古屋市としましては、それに対して不得要領の回答が来まして、一括申請をしてくれ、個別的に
審査することはやむを得ないがということでありましたが、私
どもはやむを得ませんので、法の解釈としての研究の結果、遂にこれを個別的に
審査しまして、いわゆる分割措置を講ずる結果になったのでございます。私
どもはあらゆる角度から考えまして、そうすることが県に課せられた責任である、こういう気持でほんとうに良心的にやったのであります。そうした気持であればこそ、七十五人の
県会議員の
方々、市会
議員さん、あるいは市の役人さん、あるいはまた
鳴海の
町長さん、その他
関係のそれぞれの立場の方方のそれぞれの陳情が、各家庭にまで及んだのでございますけれ
ども、良心的にほんとうに
県会議員としての責任を果すために、そうした陳情を陳情として聞いて措置した四十一対三の実質的なその得票の結果によって御
了承ができるのではないか、こう思うのでございます。
そこで私は、はなはだ恐縮でございますが、
最後に今申された二、三の問題について
お話をしてみたいと思うのでございます。
鳴海町の問題でございますが、
先ほどの
市長さんの
お話によりますと、思い出せば三月の三十日ということを申されました。三月三十日に
鳴海の
町長さんが、どうしても
名古屋市に持っていくよりほか道がないということをお考えになったとすれば、それははなはだおかしなことではないかと私は思うのでございます。なぜなら、七月から八月のころにかけて、あそこに
一つの市を作りたいということで、県の試案を番いて四
ヵ町村くらい一緒にして、そこに
一つの市を作ってくれということで、ずいぶんやかましく私
どもに要望せられました。私
どもも、そこに
衛星都市なり、
周辺都市としての新しい市を作って、
名古屋市と持ちつ持たれつ行くことが望ましいことではないかということで考えたことがあるのでございますが、そのときに、
豊明の村長、あるいは
有松の
町長という
方々に来てもらって、いろいろと連絡をとり、
大高の
町長にも話したのでございますが、
鳴海と一緒になるのはいやだということは、はっきりとそれぞれの
方々が申されて、とうとうどうにもならずに遂に困っておりましたときに、突然新しい市を作る、独立で行くということをおっしゃられていた
鳴海の
町長さんは、どうした風の吹き回しか、急に
名古屋市に入るという措置を講ずるということに相なったのでございます。そこで今まで独立で行くか、新しい市を作るかということで考えていたところのものが、急に
名古屋市に入るというのは、何がこれをそうしたかというようなところから、遂にそこで問題が大きく出てきたことは、いなめない事実だと私は思うのでございます。
さらに消防の問題でございますが、消防問題についてはお互いに県下全部相互援助の道を講じておりますので、
名古屋市に入ろうと入るまいと、お互いに博愛、消防の
精神に基いて今やっておるので、そうしたことは
理由にならないと思っておるのでございます。一それから消防団長が私と話をしたことについて
議長が申されておりますが、これは
鳴海の消防団員を初めとして、たくさんの人々が急変したところの
町長並びに
議会の人々の
関係について、激高して騒いでおる
実情を、県としては穏やかに阻止しなければならない。
一人々々の人々に
納得の行くところで
議会は開かるべきだ、こういう気持において、私
どもは消防団長に消防団員が騒いでいる問題について、もっと何とか話のつけようはないかということをよく説得に努めさせただけのことでありました。公務員としてなすべき仕事をなしたにすぎないのでございます。この点につきましては消防団長の伊藤さんにおかれましても、
名古屋市から引つばられてごちそうになったりして、今度は各
議員の
方々にごちそうの大きい方に行こうかなということを申しておった、こういうことを私は聞いておる
実情でありまして、いやしくも消防団長としてそうした気持を出すことはもってのほかだと私は信じておるのでございます。
それから富田町の問題でございますけれ
ども、冨田町の
関係は選挙演説のときに誤まって入ってくるというような
お話がありましたが、誤まって入ってくることは私もあり得るだろうと思います。と申しますのは、庄内川という川がございますが、その川を飛び越えて富田町の一部の地域があるのでございます。その地域のところは私
どもはできれば
一つの分村計画によって、境界変更をしたいと思ったのでありますが、その境界変更をすることは今は時期的にどうであろうかという気持がわれわれいたしまして、その地域を
名古屋市に境界変更をして、地勢的に是正することについても問題があったのでございますが、ただそれだけの一事によりまして冨田町がどうだ、こうだということはあまりにも何だかおかしなことだと私は思うのでございます。それから冨田町の
議会の問題でございます。富田町の
議会のあり方が非常に不明朗であったればこそ、行政訴訟が起きておるのでございます。しかも
議会の
決議というものは議事録をつけて、地方
事務所の方にできるだけ早く報告してもらわなければならないのに、私の聞くところによりますと、地方
事務所でもって督促したところが、実は出た
議員さんに腰を上げたことにして
賛成をしてくれということで、ぐるぐる回っているうちに事件が起きたということで、
賛成したのか
反対したのかわけがわからないうちに、ぐるぐるとわずか一分か何分かたたないうちにやってしまった。それでは
反対議員はいきり立つ、そんなことがあり得るものかということが、行政訴訟が起きておる
一つの原因であるということを聞いております。しかも
反対派の
議員を何とかして説得したいということで、夜となし昼となし
反対派の
議員のところに押し詰めておる。それで老人などは泣き崩れてしまっておるというような話も聞いております。そうしたいろいろの
実情から私
ども考えてみますと、
名古屋市の問題についてもはなはだどうかと思うのでございます。
有松町の問題につきましては
財政的に非常に困ると申されますが、
有松町のお隣りにありますところの猪高町、これは非常に富裕な町とせられておるのでございます。もちろん金というものは限りなく欲しいものでございまして、いろいろの
事業をしようとすればたくさんの金が欲しいのでございますが、
市町村の
関係におきましては富裕町となっておりまして、ここには大きな
工場がございます。この
工場は今後固定資産税の
関係の法難改正に基きまして、三十年から償却資産税として県に持ち出さなければならないものができることを心配しまして、もしでき得るならば
有松町を迎え入れて、そうして県に償却資産税
関係のものが行かずに済むようなことができれば、というようなことも考えられておるようでございます。しかもあの辺一帯はきわめて平坦な地域でございます。幾らかの丘陵程度のものはございますけれ
ども、ただしただいまの
町長さんの
お話によると、境が山であって、谷を渡って峠を越えてというまるで十石峠でも越えて行くみたいなことを申しておりますが、決してそんなものではなしに、大きな平野の中にある小さな丘陵でございますので、そうしたところで、やろうという気持さえあれば、決してできないものでないことを私は断言してはばからないのでございます。
それから
市長さんの現在までの
お話について私一言申させていただきます。
市長さんは県と連絡を密にしたと申されておりますが、
先ほど申し上げました
通り町村合併についての問題で県が試案を出したのは、
自治庁からの督促に基きまして四月三十日までに何とかして試案を出したいといって騒いでおりましたときに、
名古屋市の方ではすでに三月三十日には、おかしなことでありますが、
鳴海の
町長は
名古屋市に入るより道がないのだということを言ったということの問題も出ております。それから冨田町の
町長はいやそんなことはないと言いながらも、すでにこの
町村合併の基礎だけが順々と進められていたということでありますれば、なぜ県ともつと連絡をよくして、そうして理想
都市名古屋市を作るために協力し合おうじゃないかということを、ざっくばらんに申し述べないのか。そうした計画性もない。極端に申しますと、
名古屋から非常に遠く離れておりますが。……