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春日委員 御
答弁を申し上げます。ただいま
福井委員から、
政府に対していろいろと集中融資の悪傾向を
指摘して、きわめて適切な御
質問がございました。これに対する河野
銀行局長の御
答弁は、あのような状態でございまして、いわば何にもしないというのが銀行行政だ、こういうような工合にわれわれは伺ったのでございまして、現に長い間河野
銀行局長は、この集中融資、偏向融資、系列融資、こういうような
金融機関の悪い傾向に対して、ほとんど手を打っておられないというこの事柄が、すなわち私
ども提案者をして
銀行法中一部
改正法律案を上程せざるを得ないような事情にあるのでございます。
そこで、今こういう偏向融資の傾向ば具体的にどういうところがあるかという御
質問でございますが、最近の
資料によりまして、まず十一大銀行における集中融資の状況をかいつまんでお話しを申し述べたいと思います。これは公正取引
委員会が
提出いたしました
資料でありまして、これは
昭和二十九年三月でございます。しかしながらその後私
どもが銀行年報、銀行
金融関係のいろいろな
資料によって調査をいたしましたところ、この比率は、その後あまり改善されてはいないというの、でございますから、おおむねこういうふうな偏向融資が今もなお継続されているものと御理解を願っても、大きくは狂わないと思うのでございます。
そこで申し上げますと、富士銀行の自己資本をかりに百十三億四千万円といたします。自己資本というものはどういうものを称するかと申しますと、資本金、資本剰余金、利益剰余金、繰越利益金、こういうような社内に留保されております株主
関係勘定を総合計をいたしたものでありますが、この場合単名割引だけを申し上げます。単名割引だけでもって高島屋飯田に二十二億七千万円、第一物産に十三億何千万円、丸紅が十二億何千万円、東洋棉花が十七億、
日本鋼管が十四億、
昭和電工が十三億というような工合になっております。これは単名であります。従いまして、これになお付随いたしております商手割引の、これのおおむね二倍を加えますと、貸出総
金額は、会社によって多少の変化はありましょうけれ
ども、三十億、四十億、ただいま
福井委員が
指摘されましたような、朝日麦酒の山本何がしがとにかく三十数億の金を借りて、ロールス・ロイスを乗り回している、こういうような状況も随所に現われてくるわけであろうと思います。
三菱銀行は、これまた自己資本が百十一億と
計算いたしました場合、すなわち単名割引でもって
日本重工が十四億、それから新三菱重工については十九億、特にひどい例を申し上げますと、東京銀行は自己資本がわずか四十四億四千万円、その後増資されたかもしれませんが、この四十四億四千万円の東京銀行が、兼松一社に対しまして六十四億八千八百万円、まさに自己資本の一五〇%をこえる集中融資、偏向融資が行われております。その他協和銀行、三和銀行、第一銀行、三井銀行等をずっと調べて参りますと、特に顕著なのは三菱銀行で、これは三菱系の
事業体へ、三井銀行ば第一物産とか東洋
綿花とか三井鉱山とか、こういうような三井系の
事業体へ、こういう工合にその銀行の預金が集中的に、偏向的に、系列的に流されておるのであります。そこでわれわれが考えなければなりませんことは、少くとも銀行の貸し出す金というものは大衆の預金であり、足ざらるところは
日本銀行から借り入れたところの国家の金であります。すなわち
資金源はこういうような公共の
資金であります。この金が銀行の窓口を通ずることによって、銀行は今やそれぞれの関連産業の
資金調達局に変貌し去っておるわけであります。こういう工合に考えますると、産業に奉仕しなければならないところの、公共性の最も高い
金融機関が、今や彼らの系列産業の
資金を調達するための機関に堕し去っておる面が非常に多いのでございまして、ことにこの当時におきます調査によりますると、総貸出量を一年間二兆七千億といたしますると、この集中融資の傾向にあるものが全貸出量の二五%をこえるといっておる。これは銀行局年報によってわれわれが調査したのでありまするが、この三兆七千億の中で、おおむね一企業に対する貸付が銀行の自己資本に対して一〇%をこえるものが全貸し出しの三〇%、それから二企業に対する集中融資が二五%をこえるものが一七%、これを合しますると、当時の二兆七千億の総貸出量の中のおおむね九千億円、あるいは一兆円近い金が天引き的に銀行
関係の企業体へ流されており、余すところの金を全国の中小企業を初め、その他の産業が使っておるということなのでございます。こういうような集中融資が行われ、偏向融資が行われましても、現在の
銀行法におきましてはこれを何にも制限するということがありません。何らの規制を設けていないのでございます。すなわち銀行家がどこへ金を貸しましょうとも、それは銀行家の自由自在、気随気ままで、これは
金融無
政府状態というのでありまして、まさに
金融行政に関する限り、政治以前の姿であるのでございます。政治というものが行われておる気配はございません。すなわち河野
銀行局長が
答弁されましたように、これは
法律によってとか、あるいはまた通達によってとか、そういうことを行わないで、そうして銀行協会の総会等があったときに、わずかに
銀行局長が行って、あまり相手の気に逆らわない程度のあいがつをなされて、私
どもはこう考えるが、実際の執行はあなた方の思う通りなさいませ、こういうようなことでございまして、われわれ大蔵
委員会においても、実に何カ年間かにわたりましてこの問題を強く論難糾弾しておるのでございまするが、これを全部河野
銀行局長がみずからたてとなって受けて、そうして多くの
金融機関は、この河野
銀行局長の人だての背後に隠れて彼らの利潤を追求し、独占利潤をほしいままにして今日に参っておるのでございます。こういうような状況下におきましては、その
資金が大衆の預金であり、日銀から借りた金であるならば、この金がほんとうに
日本の全的な産業の面に均霑でき得るように、
法律によって規制が行われなければならないのでございまして、先般自由党からの
資金委員会法はどうするんだという御
質問に対しましても、なおこれは出すのか出さないのか、
政府の見解は明確ではないのでございます。すなわち
資金委員会法は、自由党、民主党の予算共同修正に伴って、当然
法律を出すことによって、たとえば今回
金融債を
一般市中に振りかえたのだが、しかしながらそれに対しては、当然
法律によってその
金融債を引き受けなければならないような規制を行うということも、当時の予算の修正の中ですでに
政府は確約しておったとわれわれば了承いたしておるのでございまするが、国会の会期まさに終らんとしている今日、今なおこの
法律は出されておりません。こういうようなわけで、現在の産業と
金融とは、すなわち
政府と大企業と
金融機関との三位一体のやみ結託によりまして、彼らのほしいままになされておるのでありまして、すなわちすでにあなた方両党によって約束をされましたところの
資金委員会法が本日出されていないということが、それを明確に物語っておるのでございます。すなわち
金融に対しては何にも手を触れない、どういう工合にでもいいからやれというのが現在の
政府の立場であるのでございまして、現在私
どもの調査いたしたところによりますと、資本毛義の本山
アメリカにおきましてすら連邦準備法、すなわ
金融を監理いたしておりますところの関連法規においては、同一企業体に、自己資本の一割以上をこえて貸し出した場合には、これは一年以下の懲役、罰金三十万
ドルという
法律の規制があります。
日本におきましては相互
銀行法、貯蓄
銀行法、こういうようなものでみんな同一の規制をいたしておりますのに、ひとり
銀行法の中においては、
法律というものは天衣無縫であって、何らの拘束がされていないということ、これが今日の
日本の中小企業の
金融梗塞の原因をなしておるのでございまして、従いまして、この
法律を出すことによってのみ初めて中小企業の
金融難の緩和がはかられ、しかしてこの
金融というものが産業に奉仕するという本然の姿に初めて立ち戻り得ると考えるのでございまして、ことにわれわれ
日本社会党両派がこの
銀行法一部
改正法律案を上程いたしておるというねらいは、そこにあるものと御了承を願いたいのであります。