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1955-06-18 第22回国会 衆議院 大蔵委員会 第21号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年六月十八日(土曜日)     午前十時三十九分開議  出席委員    委員長 松原喜之次君    理事 加藤 高藏君 理事 内藤 友明君    理事 森下 國雄君 理事 大平 正芳君    理事 奧村又十郎君 理事 横路 節雄君    理事 春日 一幸君       有馬 英治君    宇都宮徳馬君       杉浦 武雄君    中山 榮一君       福田 赳夫君    坊  秀男君       前田房之助君    山本 勝市君       淺香 忠雄君    川野 芳滿君       小山 長規君    薄田 美朝君       古川 丈吉君    前尾繁三郎君       石村 英雄君    石山 權作君       木原津與志君    横山 利秋君       井上 良二君    川島 金次君       田万 廣文君    平岡忠次郎君       町村 金五君  出席政府委員         大蔵政務次官  藤枝 泉介君         大蔵事務官         (主税局長)  渡邊喜久造君  委員外出席者         大蔵事務官         (主税局税制第         一課長)    白石 正雄君         専  門  員 椎木 文也君         専  門  員 黒田 久太君     ――――――――――――― 六月十七日  委員山崎始男君辞任につき、その補欠として小  川豊明君が議長の指名で委員に選任された。     ――――――――――――― 六月十六日  中小企業に対する税制改正に関する陳情書  (第二一四号)  沖繩在外資産特別処理法施行に関する陳情書  (第二一五号)  砂糖消費税撤廃に関する陳情書外一件  (第二一六号)  石炭手当に対する所得税免除に関する陳情書外  一件  (第二三三号)  揮発油税すえ置きに関する陳情書  (第二三四  号)  同  (第二五七号)  同外一件  (第二九一号)  原、重油の輸入関税課税反対等に関する陳情書  (第二七四号)  税制改正に関する陳情書  (第二九二号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一五号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一六号)  租税特別措置法等の一部を改正する法律案(内  閣提出第四一号)  所得税法の一部を改正する法律案に対する修正  案(前尾繁三郎君外二十五名提出)  法人税法の一部を改正する法律案に対する修正  案(前尾繁三郎君外二十五名提出)  租税特別措置法等の一部を改正する法律案に対  する修正案前尾繁三郎君外二十五名提出)     ―――――――――――――
  2. 松原喜之次

    ○松原委員長 これより会議を開きます。  本日は政府提出にかかる所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法等の一部を改正する法律案の三法律案、並びに三法律案に対する前尾繁三郎君外二十五名提出修正案一括議題として質疑を行います。横山利秋君。
  3. 横山利秋

    横山委員 ただいま議題になりました諸税について、御質問をいたしたいと思います。  最初に、今次修正の重要な問題になっている選択控除制度について質問いたしたいと思いますが、今度の選択控除につきまして、新聞の伝えるところによりますと、個人企業者勤労者減税をバランスさせるためということがいわれているのでありますが、まずもって何がゆえに選択控除制度を採用するか、その目的はどういうところにあるかという点を御質問をいたします。
  4. 前尾繁三郎

    前尾委員 選択控除制度につきましては、御承知のように現在の組織労働者におきましては、社会保険料につきましては控除を受けておるのでありまするが、未組織のもの、あるいはまた商工業者あるいは農業者におきましては、御承知のように帳簿記帳もはっきりしておりませんので、雑損控除、あるいは社会保険料控除というものはほとんど出しておらぬような状況であります。従って当然受くべき恩典に浴しておらぬという点において現在の制度は不均衡だというふうに考えております。従いまして、実際上受くべくして受けておらぬ控除を進んで控除をするということによって均衡をとっていこう。ことに、これは低額所御者におきましてそういうような実情でありまするので、低額所御者を救済するというような意味合いからいたしまして、こういう控除を設けた次第であります。
  5. 横山利秋

    横山委員 御説明によりますと、現在の所得控除の方法が不均衡である。言うなれば、勤労者が得をし過ぎておる、こういう観点にお立ちでございますか。
  6. 前尾繁三郎

    前尾委員 私は決して得をしておると申し上げておるのではありません。現在あります制度で実際上、運用上受けられない恩典を与えようということでありまして、そういう意味において均衡をとると申し上げておるのであります。
  7. 横山利秋

    横山委員 一つ言葉にあやをつけないで、率直に御答弁願いたい。あなたの結論としては、選択控除制度をとることによって均衡をとる、ここで是正される、こういう意味でございましょう。しかりといたしまするならば、現法が不均衡である。つまり片一方は得をしておる、片一方は損をしておる、こういうような意味と受け取ってよろしゅうございますか。
  8. 前尾繁三郎

    前尾委員 そういう意味におきましては、損をしておると申し上げていいと思います。ことに勤労あるいは商工業という関係じゃなしに、低額所得者が今まで非常に損をしておる、さように申し上げておるんです。
  9. 横山利秋

    横山委員 しからばその低額所得者とは——勤労者の中でこの社会保険料等所得控除を受けておる者は、これはもちろん低額所得者のはずでありますが、なぜそれらを除外した低額所得者という定義をなさろうとするのでありますか。
  10. 前尾繁三郎

    前尾委員 御質問の趣旨がわからぬのですが……。
  11. 横山利秋

    横山委員 あなたは、低額所得者のためにやるんだ、こうおっしゃるんですけれども、結果としては、その低額所得者の中から社会保険料控除を受けておる者を除外していられるのではないか、こう言っているんです。
  12. 前尾繁三郎

    前尾委員 社会保険料控除をすでに受けておりまする者は、それだけの恩典を受けておるのでありまするから、もちろんそれ以上に五%にするのであります。従って医療控除とか、そういうような観念も入れて引き上げをやろう、こういうことでありますから、すでに受けております恩典はそれだけ差し控えることはやむを得ぬ、かように考えております。
  13. 横山利秋

    横山委員 政府側にお伺いをいたします。今日までここ数カ年間において、源泉所得営業所得農業所得等減税割合がどういうふうに推移をしておるか、数字がございましたら一つお示しを願いたい。
  14. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 減税割合がどういうふうにという点につきまして、すぐ数字で申し上げることはちょっと困難かと思いますが、従来のここ数年の減税は、おおむね基礎控除引き上げ扶養控除引き上げ、こういうことをずっとやって参っておりまして、この場合におきましては、所得の種類によりまして、特にどの所得フェーヴァが行ったというようなことは、それ自体としてはないのでございます。ただ昭和二十六年の暮れの改正におきまして、今ここで話題になっております社会保険料控除制度認めるような改正がございまして、この社会保険料控除は、それ自体としましては別にどの所御者フェーヴァが行くということを特にねらったものではございませんが、ちょうど今ここで話題になっておりますように、勤労所得者におきましては、おおむね社会保険料控除の額が三・三%ぐらいな平均になっておる、その他の所得者の場合でございますと、これも平均でございますが、〇・七%ぐらいになっているということでございまして、従いまして、それとしての改正としては、勤労所得者、あるいは今の前尾委員のお話であれば、組織労働者ということに特に重点が置かれるのかもしれませんが、そういう面におけるフェーヴァが大きかったということは一つの事実としてあります。
  15. 横山利秋

    横山委員 私は断わりをしておきますけれども、何も営業所得者とか、あるいは農業所得者がよ過ぎる、こういうことを言おうとしておるのではありません。今度の選択控除制度根幹となっております勤労者がいわばよ過ぎる、均衡がとれていないというこの観点に対しまして、猛烈な反対をいたしたいのです。ただいま主税局長は、言葉をややあいまいにされました。しかし大蔵省調査をいたしております数字を私が整理いたしてみて、その表通り考えてみましても、全くこの今日の選択控除制度根幹となっております勤労者によ過ぎるというこの議論を紛砕して余りあるものがございます。たとえば昭和二十三年から三十年まで所得種別納税者負担の比率、大蔵省調査、これを拾ってみますと、たとえば勤労控除は二十三年において一〇・六、二十六年において一〇・八、三十年において八・九と出ています。ところが営業所得においては二十三年が二七・〇、二十六年が一七・一、三十年が一二・三と飛躍的な負担率の軽減が数字として現われておるのです。片や農業所得におきましては、二十三年が一五・四、二十六年が六・四、三十年に至っては四・四という莫大な負担割合の低下が出ています。申告総計を例にとってみますと、総計が二十三年が一五・六、二十六年が一一・八、三十年に至っては九・二です。この大蔵省調査負担率を例にとりますると、まさに選択控除制度というものは大蔵省調査の中に出ております数字と逆行をいたし、平均率をさらに割っておるのであります。こういうような数字調査されてなおかつ勤労者負担率がよ過ぎるとおっしゃるのでありますか、お伺いしたいと思います。
  16. 前尾繁三郎

    前尾委員 私は何も勤労者がよ過ぎると考えておりません。要するに先ほど来申しておりまするように、当然受けらるべき恩典を実際において受け得られない人に対して概算でいこう、こういうことを申し上げておるのであります。
  17. 横山利秋

    横山委員 いかにあなたか言われましょうとも、結果としては、今あげましたこの数字にさらに拍車をかけて、営業所得並びに農業所御者に対する負担割合を低下させ、勤労者をこの状態においてとどまらしめるという結果になるとお認めになりませんか。
  18. 前尾繁三郎

    前尾委員 勤労者と他の事業所得者に対しまする負担関係というのは、私はあるいは勤労控除、あるいはまた税務行政の問題として取り扱わねばならぬ問題だと考えます。そうしてまた全般的に負担考えまして、たとえば事業税の問題、それらをあわせて考えるべき問題で、現在としましては、修正案の問題ではなしに、租税全体の問題だと考えております。従って修正案としましては、当然受けらるべき恩典を受けさせなければならぬという観点のもとに小修正をいたしておるのであります。
  19. 横山利秋

    横山委員 あなたは、どうもすなおに私の質問に対して答弁をしていらっしゃいません。私があげたこの数字に直面をして、その数字が誤まっているなら誤まっているとおっしゃい。またこの数字に対してこういうふうに考えるという御意見があるならばお言いになってしかるべきだと思うのです。今この恩典が受けられない人に恩典をやるのだ、こういう点でありまするならば、たとえば租税特別措置法による大企業に対するべらぼうもない恩典は、なぜ勤労者にそれが与えられないのでありましょう。しかし私はそういう議論をしようとは思いません。今の不均衡議論をなさるならば、今の不均衡がどのように経年してきたかということを議論をし、その議論に立って、なおかつ社会保険料控除恩典は他にも受けさせるべきだという議論をなさらなくては、議論の筋が通らないと思います。この点について明確に御答弁願います。
  20. 前尾繁三郎

    前尾委員 先ほど来申し上げておりますように、根本的な修正でありましたら、これは別であります。もちろんわれわれも勤労所得に対する課税と、それからまた事業者に対する課税の問題につきましては、以前からいろいろ考慮はしておりますが、ただいまの修正案として考えます際におきましては、これを直ちに取り上げるというわけにいかなかった事情を御了承願いたいのでありまして、決してあなたの議論に逆らっておるわけでもなんでもないのです。
  21. 横山利秋

    横山委員 逆らってはいらっしゃらない。逆らってはいらっしゃらないとおっしゃるけれども、私の質問に率直にお答えにならないということは事実であります。しからば逆の立場から質問をいたしましょう。一体今日まで、なぜ社会保険料所得控除を行われてきたのでありますか、提案者考え方を聞きたいのです。
  22. 前尾繁三郎

    前尾委員 これは御承知のように、その他のものにつきましても、実際に帳簿をつけ、そして明確な立証ができましたら当然控除されるべきものであります。それが、ただ遺憾ながら記帳が明確でない、あるいはまた組織ができておらぬというようなことで、実際上恩典が受けられておらぬというところにある。社会保険料控除ということも、これは当然よるべき問題でありまして、そうして、それは組織労働者におきましては実際問題として可能でありますので、その恩典が受けられておったということにすぎないのであります。
  23. 横山利秋

    横山委員 しからば主税局長にお伺いしますが、私が今御質問いたしました社会保険料控除は、何のために設けられておるかということについて、政府側の見解を伺いたい。
  24. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 社会保険料控除が設けられましたときの事情につきましては、政府側提案説明におきましては、比較的漠然とした理由しかあげておりませんが、おそらく、一応社会保険料として支払いますので、政府給与所得者にしましても、その他の所得者にしましても、その金額がいわば強制的に所得から引かれる、そういった意味におきまして、従ってその分をも込めて課税所得にするというのはやはり無理があるだろう、こういう観点によりまして社会保険料控除認めた、こういうふうに解すべきものと思っております。
  25. 横山利秋

    横山委員 私は最近あなたの著書を非常に愛読をし、かつ毎朝の記事を興味深く拝見をいたしておりますが、あなたの今の御答弁は、著書の中にある思想並びに毎日拝見いたします記事と若干異なるような気がいたしまして、まことに遺憾でありまして、ここでの公けの御答弁が事実であるか、著書の上に信念が発露されておるのか疑わざるを得ません。これはしかしあえて申しません。  それでは主税局長にお伺いいたしますが、世界各国における社会保険料控除は、一体どういう趨勢になっており、現在どういう状況になっておりますか。
  26. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 社会保険料控除制度は、各国によって相当扱いが違っておるようでございます。イギリスにおきましては社会保険料控除制度が一応認められております。アメリカにおきましては、社会保険料控除といったような意味制度は別にございません。アメリカでは社会保険料認めていませんが、その他のいろいろな経費を幾つか雑費控除のような制度認めておりまして、同町に選択的な関係におきまして、ちょうど今度の修正案に出ておりますような一種の選択控除——アメリカでは一割になっておりますが、選択控除制度がございます。なおついでに申し上げますと、アメリカには勤労所得控除といったような制度はございません。
  27. 横山利秋

    横山委員 ついでに申し上げますとという伏線をお張りになっているようですが、少くとも今日社会保障が行われておる各国実情は、所得から社会保険料控除がされておるのであります。これが一般の趨勢であります。今回提案されております選択控除制度は、社会保険料に対する世界的な趨勢に対して、これを無意味にしようとする結果になることを、前尾さんはどういうふうにお考えになりますか。
  28. 前尾繁三郎

    前尾委員 私は何も組織労働者だけが社会保険料を払って、それによって救済されるべきものだと思っておりません。すべての人がそれに類似する恩典については当然受けていい、かように考えておるのであります。繰り返して申しますように、勤労所得とその事業所得全体とのバランスというものは、他の制度によって考えるべきものであって、御承知のように、現在は勤労控除という制度によって考えられておりますが、それはそれとして議論をしていくべき問題だ、かように考えております。
  29. 横山利秋

    横山委員 きわめて重大な発育であります。もしあなたがそういうお考えであるならば、今回百分の五という数字をお使いになるならば、すべての低額所得者に一般的に百分の五というものを控除さるべきではありませんか、何がゆえに社会保険をやっておるものだけが損をするという理屈が生れて参りますか、重ねてお答えを願いたいと思います。
  30. 前尾繁三郎

    前尾委員 すべてについて五%を考えておるのであります。何らその間に区別をしておりません。
  31. 横山利秋

    横山委員 私の意味がよくわからないようでありますが、社会保険料控除というものは、世界的に社会保障を前進させようとする国においてはんべて適用されておることである。これを今あなたが低額所得者にやろうというならば、この社会保険料所得控除を犠牲にしなくてもいいではないか、そのほかに一般的に適用していいではないか、こういうことを言おうとしているのです。
  32. 前尾繁三郎

    前尾委員 社会保険料控除は、すでにさきに恩典を受けておりますからそうおっしゃるので、それ以外に国民保険料とか、そういう問題につきましては、実際において繰り返し申しますように、帳簿記帳の不備であるとかいうような関係でその恩典を受けておらぬのにすぎないのです。従って当然社会保険料控除組織労働者のみが受けるという根拠は、私はないように思います。
  33. 横山利秋

    横山委員 何とあなたがいろいろおっしゃいましょうとも——私はあなたのお言葉を聞かないというつもりはごうもございません。しかしやはり筋が通らないといわなければなりません。しからば今度は、かりにこの法案が通って、選択控除が実現をされたあとのことを考えてみたいと思うのです。そこで私も若干わかりませんから、お聞きしながら意見を少し述べてみたいと思うのでありますが、これはこういうことでございますか。申告をしておる人は、毎月々々百分の五が適用されていく、源泉課税を受けておる人は年末に整理をするということでございますか。
  34. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 申告所得税の場合におきましては、別に毎月々々といったような納税制度にはなっておりません。従いまして、三月に確定申告が出まして、この確定申告の場合にこの控除制度が働くわけであります。それから翌年以降になりますと、前年において納めた税金を基準にしまして、三期に納税していただいておるわけであります。従いまして、前年に納めた納税においてこの五%控除が働きますから、予定納税の場合におきましては、その五%の控除が働いたところで納める、こういう制度考えております。それから給与所得の場合でございますが、これは毎月納めていただきます。この場合におきまして一々選択認めるということにつきまして、徴収義務者の方に相当大きな手数が行く関係がございます。これはバランス問題などいろいろ議論してみたのでありますが、どうも事務の性格としまして、年末調整の場合に、そこで一回に控除するという事務よりやむを得ないのじゃないか、それで現在の修正案はそういうふうになっています。
  35. 横山利秋

    横山委員 そうしますと、年末に社会保険料控除雑損控除医療費控除が百分の五に達していない人は、それだけの差額を年末に整理をして、つまり手取りがふえるというわけでございますね。
  36. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 今度の修正案におきまして、百分の五と見合っております控除が現在三つあるわけでございます。社会保険料控除雑損控除医療費控除——雑損控除医療費控除は、現在の制度では、源泉徴収の場合にはちょっと計算もできませんから、これは認めないことになっておりまして、確定申告認めることになっております。毎月の給与の支払いを受ける場合に認めておりますのは、社会保険料控除だけであります。そこで今度の場合におきましては、一応社会保険料控除は、もし修正案通りに可決された場合、従来通り毎月の給与については認めて参ります。そして年末調整に参りまして、社会保険料控除の合計が給与の総額の百分の五か、あるいは一万五千円か、いずれか少い額、それに達していなかった場合におきましては、その達するまでの差額を年末調整の場合に控除する、こういう仕組みになっております。
  37. 横山利秋

    横山委員 そういたしますと、少くとも本年の年末手当ないしは毎年の年末手当におきましては、勤労者階層によって年末手当を非常にたくさんもらう人と、それから控除が適用されないで普通の通りにもらう人、こういう形になるわけですね。たとえば、一般的に言うと三・三%だから、一・七%恩恵が受けられる人がある。ところが共済組合やその恩給の甲種をやっている人は、もう今日すでに百分の五以上を突破しているから、そういう人たちは一文もといいますか、この選択控除恩恵はちっともない。同じ場所で働いておる勤労者の中で、ある者は年末手当が非常に多い、ある者は少い、勤務成績も、あるいはいろいろなものが同様であっても、非常に形が開いていくというようなことが年末で起ることをお認めになりますか。
  38. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 年末調整の場合に、毎月の社会保険料控除が一万五千円以上ですね。主としてこれが多いと思いますが、その額以上である場合におきましては、年末調整の場合に、今度の修正によるフェーヴァはないわけであります。おっしゃる通り、それの額が百分の五に満たない、同時に一万五千円に満たないという場合におきましては、年末調整の場合においてそこにフェーヴァが働きますから、納めていただく税金は少くて済む。ただ当然そういうことの一つ結論としまして、所得の額の少い人がこのフェーヴァを受けることになりまして——大体社会保険料というのは、われわれも役所の方でいろいろ引かれておりますが、それは俸給の額に応じて比例的に引かれているわけでございます。従いまして、給与の額の大きいものは、同じ率でありましても額が一万五千円をこえます。たとえば私などこの間試算してみましたが、私などの場合におきましては、今度の一万五千円は当然つかえてしまいますから、従来の制度の場合と全然違いはありません。しかし給与の額の小さい方々は、率の方でもゆとりがありますし、一万五千円の方でもゆとりがございます。その場合におきましては、一応そのフェーヴァを受けます。年末には御承知のように、通常民間、官庁におきましてもボーナスが出ますので、十二月には一番税金を払わなければならぬときであります。その機会におきまして今のフェーヴァが働く、こういう結果になって来ます。
  39. 横山利秋

    横山委員 根本的な欠陥もございますが、形の上に現われてきます選択控除欠陥は、ここにあると思うのです。毎月々々これが勤労控除のように、勤労者給与の中に及ぼしていくならば、そう目に見えるような問題は起らないかとも思うのです。ところが年末にすべてを調整をするというために、同じ職場の中で、あるいは労働者の各階層の中で非常なアンバランスを一時的に出現をするというところに第二の根本的な欠陥があると思うのです。この点について、前尾さんは提案者としてどういうようにお考えになりますか。
  40. 前尾繁三郎

    前尾委員 私は、低額所得者につきまして有利になることについては、これは当然だと思います。さらにまた、ことしは御承知のように半年分という非常に変則的な行き方をいたしております。従いまして、この制度それ自体をもう少し検討して、毎月々源泉徴収のときに差し引いていくべきものじゃないかと思っておりますが、遺憾ながら非常に時期が遅れておりますので、これから毎月々いろいろ差し引いていくということをしますのには非常に仕事の段取りができません。従ってことしの一つ臨時措置として、一応年末調整でやるということを考えておるのであります。
  41. 横山利秋

    横山委員 勤労者の気持をあなたは一つくんで税制についてもおやりにならなければなりません。普通の通りに働いておる、そうして年末手当をもらう。たとえばあいつは普通にいって二万円、おれは一万五千円、こう考えているのだけれども、この選択控除が一気に働くために、その形式上の額と手取りとの間に非常な常識の相違が働くのであります。そういうことは、あなたが今認められましたように、年末調整で一挙にやることは不適当なものである。かりに、もしあなたがやはり毎月やるのが正しいと思われたならば、なぜそれが実現をするまではこのやり方を保留にするというふうにお考えになりませんか。
  42. 前尾繁三郎

    前尾委員 実際問題として、それを保留にしたのでは気の毒であります。またこれからいろいろ税率、あるいは源泉の税率表でありますか、負担額表でありますか、そういうふうなものを刷り直して配布して、すぐ来月からそれにかかるというようなことは実際上できないのです。従って本年の臨時措置としては、それよりいたし方ないと思っております。あくまでこれを臨時措置法に入れているのもそこでありまして、将来の問題としては、最も一番いい方法を考えてやらなければならぬ問題だと考えております。
  43. 横山利秋

    横山委員 もう一つお伺いします。同じ選択控除の中に入れる部面にある——所得控除関係もございますが、なぜこれをやるといたしましたならば、生命保険料を選択控除の中にお入れになりませんでしたか。
  44. 前尾繁三郎

    前尾委員 一般におきましては、御承知のように国民保険の場合を入れておりますが、一般の生命保険につきましては、これはかなり疑問があります。相当検討すべき問題であります。今後概算控除の中に入れるべき問題につきましては、根本的に検討して、生命保険料につきましても、入れるか入れぬかという問題があると思います。また雑損控除というような問題につきましても、その範囲につきましてはいろいろ問題はあると思います。しかしとりあえずの修正として、一歩進めるという意味合いにおきまして、今回のような限定をした次第であります。
  45. 横山利秋

    横山委員 非常にあいまいなお話で、なぜ生命保険料が問題になったかわかりません。一般に何といっておるか御存じでありましょうか、生命保険料をこの中から除外したことに対してどういう批判が行われているか、あなたは御存じでありましょうか。なぜこの中に、同じような種類のものであるにかかわらず生命保険料が入らなかったか、その理由は何か、もう一回明確に御説明願いたい。
  46. 前尾繁三郎

    前尾委員 第一、強制といいますか、国民保険料というようなものでありますと、ある斜度強制的なものであります。また国がそれを補助しておるというようなもので、これは明確でありまするが、単に生命保険料ということにつきまして、一部は将来の貯蓄というような問題もありまするから、これを直ちにすべて入れるかということについては、私は疑問があると思います。従って今回には入れなかった次第であります。
  47. 横山利秋

    横山委員 少しあなたのお話は納得がいかないと思うのです。同じ系列にある中で、この生命保険料だけを除外して、そうして生命保険会社に影響を与えるのを避けたといいますか、うがった局方をする人もございますけれども、そういうようなことをして、国のやっておりまする健康保険なり、あるいはまた国民健康保険だけを対象にするというところに、私は多少の批判がこの問題につけ加えられてくるゆえんもあるのではないかと思うのであります。生命保険の控除につきましては、すでに二十六年の二千円から、二十七年の四千円、二十八年の八千円、二十九年の一万二千円、三十年の一万五千円と、毎年々々控除額の限度額が高くなっておるのです。それを考えますると、社会保険料はもちろん少い額でもございましょうけれども、設定以来何らのやり方の変更も見ておりません。生命保険料をかくも手厚くし、生命保険会社の利益になるということになるといたしますならば、社会保険料所得控除を二倍にして、所得控除を倍にすることを考えられてもしかるべき段階であるといわなければならぬのであります。社会保障という問題は、健康保険、国民健康保険の赤字問題を根拠として、今日これだけ全国民の関心を呼んでいるときであります。国会におきましても、国庫負担の問題を中心として各党が苦心を重ね、これらの問題を何とかして解決したいと努力をいたしているときであります。こういうときに社会保険をやっている人が損をする、こう言いますと、前尾さんは、そういう意味ではないとおっしゃるかもしれませんが、しかし結果としては、社会保険をやっている者が税率の上で損をするというような提案をなされる意図が何であるか、私には全くわからない。今日国政の中心になっております、現内閣はもちろん、自由党の皆さんもわが社会党両派も声を合せてやらなければならぬと言っている社会保障の充実強化の声に逆行して、社会保険をかけている者が損をするようなことをなぜおやりになろうとするか。この点について、今日の社会保障についてどうお考えになっておられるかを伺いたいと思います。
  48. 前尾繁三郎

    前尾委員 生命保険につきましては、御承知のように、貯蓄奨励という根本的な意味におきまして、従来から相当なフェーヴァーを受けている。さらにこれにつきましては限度がある。これは根本的な考え方の違った措置でありまして、概算控除の今回のやつは、明確でない、また立証ができぬという人に対して受くべき恩典を受けよという趣旨でありますから、社会保険料をかけてきた人が損をするというような考え方は成り立たぬと思います。その点にあなたと私とは根本的に意見の食い違いがあるので、これは幾らお話ししても全く水かけ論にすぎないように考えておるのであります。われわれは社会保険、また社会保障全般について強力に推進していかなければならぬと思います。そうしてこの概算控除制度も、一部の人でなしに、全般的に社会保険に関するような考え方を推し進めていこうというところにあると思います。
  49. 横山利秋

    横山委員 あなたは簡単に観点の相違、見方の相違とおっしゃるわけでありますけれども、私も譲って、あなたの立場になって考えてみましょう。だからあなたも私の立場になって考えてみて、私の議論のどこが間違っているかということを、もう少し御指摘願わなければならぬと思います。結果としては、私の言うことになると思います。いい悪いは別として、社会保険の掛金を払っている人は、今まで受けておった利益がここでなくなるのです。そういうことは結果としてあなたもお認めにならなければならぬのであります。今日社会保険関係のある全団体が声をそろえて政府に迫り、各党も何とかして赤字の国庫負担をできるならばいたしたいというふうに努力しているのに、その努力の方向と根本的に背反するではありませんか。私は低額所得者を何とか救済するという趣旨には全く賛成でありますけれども、やり方があると思うのです。たとえば勤労者を例にとりますと、奥村さんにはまことに恐縮でありますけれども、速記録を読みますと、五月十九日の速記録でありますが、「なぜこういう五万円の人に特に減税になるかということは、大臣もおわかりの通り勤労控除の限度を四万五千円から六万円に引き上げた、そして勤労控除率の一五%はそのまま据え置く、ここに根本の矛盾がある。勤労控除の一五%の率というものは、昭和二十四年度のシャウプ勧告時代からずっと据え置きであります。ところが控除の限度の引き上げは過去二、三回行われている。そこで今度の給与所得者にとって、四万五千円から六万円に限度を引き上げれば、月給で二万五千円、それ以上をもらっている人が助かるわけです。二万五千円以上四万円近くの月給所得者の人だけが、控除限度引き上げで助かる。それではほんとうの低額所得者は救われぬ。そこで勤労控除一五鬼をせめて一七%まで引き上げれば、最低の給与所得者が助かる。控除の限度を引き上げるよりも、一五%をせめて一七%まで引き上げるべきであったが、なぜ大臣はこの方に先に手をつけなかったか。少くとも低額所得者に重点を置くならば、この方が先であった。その点の大臣の御答弁を願います。」と自由党を代表しておっしゃっております。まさにその点については私も同感であります。低額所得者の救済をお考えになるならば、これは一般的に、低額所得者の内部に混乱を持ち込むがごときこの選択控除の方針については、どうしてもお考え直しを願わなければなりません。いわんや先ほどからるる申しております社会保障制度の充実強化、この観点から見ますときには、まさに時代に相反し、逆行しておるというべきであると私は考えるのであります。真にあなたの方が低額所得者の救済をお考えになるならば、技術的にも問題が免じ、税制の根本的な現状からいっても、批判の余地が十分にございます。この選択控除が怱忙の間に、しかも聞きますところによりますと、十分に自民両党の大蔵委員にも御相談がなかった模様であります。他党の私どもといたしましても、税制の具体的な問題につきましは、それぞれの大蔵委員の意思というものをもっと御尊重なさらなければなりません。この間参議院で主税局長答弁をきれておったのでありますが、たとえば政策の問題を、金融の面で、補助金の面で、税の面で、この三つの面で政策をやっていく、担税力の原則という点については、そこで犠牲になるときがある、こういうことを答弁をされておる模様であります。しかしながら今一番国民が税について考えておりますことは、やはり金を持っている人がたくさん出してもらう。そして貧乏人は税金が安い、こういう担税力の相違、担税力によって税金を出すということが国民普遍の常識であります。従ってこの常識の根拠に立ってこれらの政策をやっているのならいざ知らずでありますが、片や七月一日から預金利子課税を撤廃しようとし、片や配当所得については、今日まで八十四万円の配当所得をもらっても、税金が一文もかからないという現実の上に、さらに五%これを引き上げるというようなことをいたされて、これも政策である。金持ちが得するか貧乏人が損するか、そんなことは知らぬ。国家の、政府の政策のためであるというふうに一がいに片づけられたのでは、私どもいわゆる庶民の立場から申しますと、まことに不均衡きわまるものがあるといわなければなりません。従いまして、この選択控除制度をとるそもそもの理由が、低額所得者のために税制の一端を変えようとする趣旨であるならば、いま少しわれわれ大蔵委員に、具体的に前もって御相談なさる必要がございましょうし、また具体的にその手続にどういう矛盾があるということを、いま少し事実をもって御研究願いませんと、税制にきわめて不均衡なものを来たすわけであります、この点についてるる申し上げましたが、重ねて提案者としての御所見を承わりたいと思います。
  50. 前尾繁三郎

    前尾委員 重ねて申し上げますが、勤労所得に対するとその他の事業者との根本的な負担均衡という問題につきましては、今回の修正案では、とてもそれはやり切れる問題じゃありません。御承知のように、勤労控除の問題につきましても、税務・行政と両方からみ合っての問題であります。私は以前におきましても、勤労控除を二割五分まで上げたことがあるのです。従ってそのときそのときに応じて税務・行政全般として、からみ合って根本的に考えていかなければなりません。皆さん方の中では、また事業所得を軽減しろ、あるいはなくしろ、こういうような御意見もあります。しかしこれは、中央、地方を通じて負担均衡考えていかなければなりませんので、そういう意味合いにおきましては、現在なお事業税が残されておるという状況にありますので、これを今われわれが修正案で取り上げてどうこうするというわけにいかぬ問題でございます。従って今回の修正案としましては、従来当然受けるべき恩典を受けておらぬ低額所得について、その恩典を与えようということで満足をしなければならぬ問題であります。  先ほど来配当所得、あるいは利子についての課税の問題のお話がございましたが、これは全くの臨時措置で、決して好ましいことでありませんが、現在の日本の経済情勢、また国全体ということを考えまして、あくまで貯蓄政策を推進していかなければならぬという観点に立ちますと、税務行政としましては多少変則であります。従って臨時租税措置法でやっておるので、しかしそのときに応じた、最も適切な施策をしなければならなぬということはやむを得ないことだと思っております。
  51. 横山利秋

    横山委員 選択控除の問題につきましは、時間もございませんので、この程度に御質問をしておきたいと思うのでありますが、私は、今のあなたとの質疑応答を通じて、ますますこの選択控除が、根本的にもまた技術的にも、問題があるということを痛感いたしました。労働者の中にも、選択控除が持ち込まれました場合に、共済組合の甲種を適用されている人と、同じ共済組合でも乙種の人などと比べた場合、恩給の適用のある乙種、すなわち上の方の人が得をするわけです。上厚下薄といいますか、そういう点で労働者の中にも問題が生じております。それから労働者とほかの方の階層の間に、トラブルを巻き起すという結果にもなると思うのであります。根本的には社会保障を受けておる者が、掛金を掛けておる者が損をするという結果については、どうしても私はあなたの議論に納得するわけには参りません。先般来、私ども官吏のみならず、民間のすべての労働者に対しましても、年末手当五千円までは免税をしろ、こういうふうな法案を出しておるわけでありますが、今の選択控除制度は、私どもの法案の趣旨とうらはらに結果としては相なってくるのです。年末に百分の五が勤労者の中に持ち込まれて参りますから、そういう点をあなたとしてはやはりお考えになることも必要なことだと思うのです。かれこれ考えてみますと、低額所街着の減税という点を思い立たれたゆえんは、決して私は反対するものではありません。しかしその方向とその手段は、全くこれは混乱を招き、今日の情勢に逆行いたす方向になることをとくと私は御注意を喚起いたし、さらに再考慮をお願いいたしたいと思うのです。  それからこまかいことでこの際一つお伺いしておきたいと思うのであります。これは主税局長の方がよろしいかと思います。生命保険料の控除につきまして、必要な事項の書類を添付しろということになっておるのでありますが、これは簡易保険やそういうものについて、郵便局で書類をもらって来い、こういう意味でありますか。
  52. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 その点につきましては、実は政令でどういうふうにきめるかということにつきまして、今保険会社の方々などの意見も聞きまして話を進めております。私のつもりとしましては、納税者に対しましてもあまり大きな迷惑にならぬように、同時に保険会社とかそういう事務をやっていただく人にも、やはりある程度の負担にはなりますが、それほど事務のために大きな負担ができるということにならぬようにしていきたい。ただ現状でありますと、確定申告に対してただ書くだけでは少しルーズに過ぎるのじゃなかろうかというきらいがございますので、あるいは一定の限度をきめて、それ以上の大きな額についてそういう措置をとっていただくとかなんとかいうことも一つ考え方じゃないか。とにかく一応命令にお譲り願いまして、今申しました趣旨で、税務行政としましても必要な限度のことはするが、同時に納税者及び生命保険会社についてもあまり過重な負担にならぬようにというところで、どの程度でこの問題をまとめたらいいかというふうに目下検討しておる最中でございますので、御了承を願います。
  53. 横山利秋

    横山委員 内容の御検討が開始されているということならばけっこうであります。私の計算によりますと、簡易保険の領収書をこの条文によって作成するということでありますと、年額について五億円くらいの超過勤務費の必要があるというような推算が出てきますし、件数として三千三百万件、これはやや甘い見積りかもしれませんが、その一件の所要業務を甘く見て、かりに五分としましても、多忙な不必要な勤務時間がここに必要になってくるわけでありまして、形通りのことをおやりになる結果、かえって不必要な事務の増加ということになるのでありますから、御検討中であるならばけっこうでありますから、さらにこれが簡易化についてお考えを願いたいと思うのであります。  それでは、一応私所得税だけにいたしまして、中心を所得税において論議をしていただいた方がいい思いますので、あとで法人税その他について質問することにいたします。
  54. 松原喜之次

    ○松原委員長 小山長規君。
  55. 小山長規

    ○小山(長)委員 提案者の、立法者の意思を確かめておきたいことがありますので、一点だけ質問をいたします。今度の臨時措置法によりまして、政令あるいは大蔵省の省令に譲っている部面がございますが、それは例の配当所得についての資料提出限度の点であります。これは、元来配当所得につきまして今度の修正をいたしました趣旨が、資本蓄積の観点から、政府案によれば、いわゆる預金の利子所得だけを優遇しておって、配当所縁に対して優遇の度が足りない。その結果は、政府案のままで行きますと、資本というものは預金にだけ片寄って直接投資という方向に向っていかない。従ってこれを是正しなければならぬということで、この一連の修正案を作ったと考えておるのでありますが、その現われの一つとして、配当の控除額を配当所得の百分の二十五から三十に引き上げる、政府案の源泉徴収率を十五から十に下げるのをそのまま認め、さらにその趣旨とあわせて、きき申しましたように、配当所得についての資料提出限度を一回につき三千円から五千円に上げる、こういう措置をとることにいたしたと考えるのでありますが、その場合に、提案者の意思をこの際はっきりいたしておきたいことは、配当所得についての資料提出限度を従来の一回三千円を五千円で引き上げるということは、従来の趣旨と違ってくるのではないか。と申しますことは、従来一回三千円といたしておりましたのは、主として配当会社の手数を省き、あるいは税務行政の手数を省くという点に主眼があったと思うのでありますけれども、今回の趣旨は、預金利子所得者との均衡という点が主たる理由になっておりますから、従って一回についての配当所得の資料の提出限度を引き上げるということは、単に手数の省略ということでなしに、その配当所得の行方を追及しない。配当所得の行方を追及することによって直接投資の気分を阻害してはいけない。ここに提案者なり立法者の趣旨があると思うのでありますが、その通りであるかどうかということを、この際明確にいたしておいてもらいたいことが第一点。  次には、従来は一回三千円未満となっておったのでありますが、今度はそれを一回について五千円、一年を通じた場合には一万円ということに提案理由はなっております。従ってそのように処置されるのでありましょうが、その場合、一回について五千円というときには、五千円というものを含むかどうか、これは五千円以上という場合と四千九百九十九円という場合とでは相当意味が違ってくるのであります。配当会社の手数の問題はもとよりでありますが、配当所得者の側からいっても、五千円を含むと含まないとでは相当違いが出てくる。そういう意味で、これは提案理由によりますと、政府に対して要望いたしておると書いてあります。その要望は満たされたのでありましょうが、同時に政府側は、その要望を私がただいま申し上げた通りに聞かれ、そうしてその通りに省令を改正する意思があるかどうか、これを確めておきたいのであります。
  56. 前尾繁三郎

    前尾委員 ただいまお話の通り、今回の修正案は、配当所得についての優遇措置を講じておるわけでありますが、それはすでに政府原案に盛られております、利子課税につきまして非常に恩典が与えられておるということに相応いたしまして、あくまでわれわれはオーバー・ボローイングを解消するなり、とにかく自己資本を充実しなければならぬというのが現下の大きな要請である、かように考えておりますので、配当所得につきまして優遇措置を講じた次第であります。従って資料の提出限度を引き上げました趣旨も、もとより手数を省略するという従来の意味を失ったわけではありませんが、かなり優遇措置としての考え方で、いわゆるあまりこまかにあさらぬという趣旨を持っておりますこともお話の通りであります。また提出限度の従来三千円でありましたのを五千円に引き上げるという問題につきましては、私どもは五千円を含むものと、かように考えまして、政府にその措置を要請しておるような次第であります。
  57. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 民主党と自由党との申し合せでわれわれがいただいております書類につきましては、配当所得についての資料提出の限度を、現行一回につき三千円、二回配当として六千円を、一回五千円、年二回配当として一万円に引き上げることとし、所得税法施行細則につき所要の改正を行うものとする、こういうふうな文書をいただいております。われわれといたしましては、今のお話しにたてつくつもりもございませんが、一応このような書類をいただいておりますので、この書類の御趣旨によりましてできるだけ——今のこまかい点ですね、細目についてはさらによくお話し合いをした上で政府の案をきめたいと思っております。
  58. 小山長規

    ○小山(長)委員 それでは議案の審議が進んで参りません。すでにこの共同修正案なるものは十数日前に政府に出してあり、その趣旨もお話しをしてあるのでございますから、従って政府としては、この一回を三千円から五千円に引き上げる趣旨が、まず第一点としては、従来のただ手数省略という意味のみならず、むやみにこれを追及していかない、追及していかないということはどういうことかと申しますと、預金の方に命が流れ過ぎては困る、資本蓄積の方にもこれに見合って——直接資本蓄積の立場からいえば、預金と同時に直接投資の方にも、つまり株式の方にも資金が流れていかなければオーバー・ボローイングが解消できないというところにあるというただいま提案者の趣旨の通りでありますからして、むやみに配当所得のこまかいところまで追及していかないという趣旨が一点当然に含まれておる。この点を主税当局として御了承いただいておるかどうかということが一つ。もう一つは、ただいまの三千円を五千円に引き上げるということは、同時に五千円を含むか含まないかということによって配当会社の方もあるいは所得者の方もそれぞれ違った——同じような意味ではありますが、影響するところは非常に大きいので、五千円を含むか含まないかということは、この席上において、政府当局において明らかにしておいてもらいたい。重ねてお伺いいたします。
  59. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 前段のお話しはわれわれも一応聞いております。で、その趣旨はわれわれも尊重したいと思っております。ただ少額の程度というのが、結局問題だと思うのです。そのときのお話しは、どちらかといえばすなおに現在の三千円を五千円に上げるのだ、こういうお話しのようにわれわれは聞いております。そのあとで、いや五千円以下か未満かで相当大きな問題だぞというお話しを聞いておるわけなんです。従ってそれがどういう問題になるかという点について今検討しております。それで、とにかく当初のお話しは三千円を五千円に上げる、これだけだったのですよ。その少額の云々ということについてはわれわれは伺っておりました。これは別にわれわれは異論は持っておりません。しかし五千円未満だって一つの少額ですし、五千円以下が果して少額でないのか、あるいは少額なのか、こういうお話しなんですから、それを今検討しているのだ、こういう意味なんです。
  60. 小山長規

    ○小山(長)委員 それではもう少しこの趣旨を提案者の一人として申し上げますが、この趣旨は、預金利子あるいは社債利子を全免することは、税法上としては何としても非常な異例であります。この点は私ども委員会を通じて申し上げた通り、非常に異例な制度なのでありますが、その異例な制度をとったがゆえに、預金利子が全免されるというような、利子所得が全免されるというような異例な制度をとったがゆえに、投資をしようという人の資金があるいは預金に向い、あるいは株式に向おうとする場合に、投資者の方は有利な方に向うことは当然なことであります。従って配当所得についてある程度の——そこでこの五千円を、一回五千円というのは年一万円ということでありますが、一万円の元本は一体幾らだ、これをかりに一割利回りで還元した場合には十万円、その十万円の元本をどっちに投じようかという投資者の心情をそんたくした場合に、その十万円が預金の方にも向い、あるいは株式配当の方にも向うというふうにイコールにしてやりたいというのがこの趣旨なんであります。従って五千円を含まないということになってきますと、株式は、十万円とか九万五千円とか、八万六千円とかいうふうにならない。市場価格にもよりますけれども、一割とか一割五分とかいうような配当率から換算していくと、四千九百九十九円で切るのと五千円で切るのとでは、株式の分布状態その他からいって相当違ってくるんじゃないか、そういう意味で、ここで五千円を入れておくことがわれわれの提案の趣旨に合うのでありますからして、そんなものは何も慎重審議をして十日も二十日も考えなきゃならぬほどのことではないと思う。あなたが断を下せばいいことなのでありますから、この席上で、それは五千円を含むことにいたしますと言いさえすればいいのです。何もむずかしいことじゃない。
  61. 前尾繁三郎

    前尾委員 ただいま渡邊君の答弁がはっきりいたしておりませんが、これは、現在政府に要請しました書類自身がはっきりしておらぬためであります。一万円と書いてありますが、未満か以下かという疑問はおそらく政府にあると思います。従ってその話しはここで初めて聞かれたことであると思います。しかしわれわれの趣旨といたしましては、ただいま提案者である小山君も言われておりますように、一回五千円を含んで提出しなくてもいいのだというふうに考えてこの書類を出しておりますので、あらためてその点は政府に話しをいたします。
  62. 松原喜之次

    ○松原委員長 春日一幸君。
  63. 春日一幸

    ○春日委員 本修正案は自民両党の修正案であり、その修正案に対しましては、提案者は両党全員になっておると思うのであります。しかるところ、この法律業に関連をする事柄について、今その修正案提出者である自由党の側からこういうような質疑が繰り返されておるということは、はなはだ遺憾に存ずるわけであります。これはまさに不確定議案とも称すべきものであって、提案者の側において疑義の存する事柄は、提案者の内部においてすべからく事前に疑義を一掃されるべきである。こういうような委員会において質疑を繰り返し、問題の所在を究明されなければならないような、そんなずさんな状態において法案を提出されたことに対して、きわめて遺憾の意を表するものであります。本来ならば、議案が確定するまで休憩をいたしまして、そうしてさらに完璧を期した案が提出されるまで待つのが本来でありますが、しかしながら相手が小山君のことでありますから、特に大目に見まして、質問を続行する次第であります。  そこで前尾提案者にお伺いをいたしまするけれども、私は、ただいま小山君が触れられました通り、少くとも税制問題は、われわれ大蔵委員会が責任を持って所管をいたしております。あなた方のごとき門外漢がこういうような問題にくちばしを入れて、そうしてずさんな修正案を出されて参ったということは、きわめて危険なことでありまして、その結果、すでに満身創痍でありましたところの現行税制がまさにかたわになろうとしておるのであります。きわめて重大な事柄でありまして、かつてあなたは主税局長であられたそうでありますけれども、それはすでに八年前とか九年前とか。これは太閤秀吉の日吉丸時代というか、てんであなたの知識は参考になりはしません。そういうような人々が、大蔵委員会が慎重な審議をしておりますさなかに唐突にこういう修正案を出されるということは、国政全般の高い観点から見れば、税制を混乱に陥れるものでありますので、今後こういう事柄については、特に厳重に注意をされたいと思います。従いまして、私ども社会党左右両派は専門家的立場に立ちまして、今後数日間にわたって各条章についで慎重に検討を加えて参りたいと思いますので、十分資料の提出を願いつつ、謙虚な気持で答弁されたいということをまず冒頭に申し上げます。  まず渡邊主税局長選択控除についてお伺いをいたします。本修正案によりますと、この選択控除制度によって軽減せられる額が、それぞれの収入額の段階においてどういう結果を生ずるものであるか、これを一つお伺いをいたします。たとえば最高限度額を一万五千円に置くところの五%の選択控除を適用されます場合、最低の税率の適用を受ける所得者、それから最高の税率の適用を受けます所得者、二万円以下の場合と五百万円以上の場合とはその現実の金額はどういう工合になって参りますか。すなわちそれが上積みの者に対して影響を与えるという立場において、実際どういう金額の軽減を受けるのであるか、これを一つお示し願います。
  64. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 今お話しの計算を持っておりませんが、所得の種類によってある程度違った影響になってくることがまず考えられるのであります。所得の種類といいますか、従来社会保険料控除とか、そういう控除を全然受けていなかった場合、受けていた場合、それによって非常に違ってくると思いますが、この五%控除によりまして一番大きくフェーヴァを受ける場合は、従来全然社会保険料控除とか、そういう控除を受けていなかった場合、これがまず一応考えられます。その場合におきまして、今の一万五千円という限度がございますので、高額所得者になりますれば一万五千円でおそらく頭打ちするだろう。従って、そういう場合においてどれだけの税金が減るかという税金の額になりますと、一万五千円に最高税率六五%をかけた九千七百五十円でございます。その場合におきましても、従来たとえば社会保険料を相当払っているという場合におきましては、大体先ほども横山委員の御質問お答えしましたが、たとえばわれわれのようなものでございますと、社会保険料そのものが俸給に比例しておりますから、三・三%と五%という関係におきましては、一・七%の余地があるよりでございますが、しかし三・三%というものが絶対額において一万五千円を越えておりますので、従いまして、そうした高額の給与所得を受けておるような者で、同時に従来とも社会保険料を払っている者におきましては、今度の関係によりましては、全然フェーヴァがないという結論になると思っております。  それから低額の方の関係でございますが、これも、従来社会保険料を払っていたかいなかったかということで違います。同時に低額の場合でございますと、結局五%の方が働いて参りますから、一応一万五千円という限度はございますが、三十万円の方ですと、五%でもってちょうど一万五千円になります。三十万円以下の場合でございますと、たとえば二十万円でありますれば、一万円というところに一応なるわけでございます。同時に扶養控除基礎控除、いろんな関係がからみ合いまして、給与所得者でありますと、この五%が働きますために、現在の課税最低限が、平年度でございますと、現行が夫婦子三人の場合の給与所得者は十七万五千円でございますが、これが政府改正案で一応十八万五千円になるのでございます。今度の場合におきましては、これは所得額によっていろいろ違いますが、平年度におきまして約十九万五千円というところに課税の最低限度が上る、従いまして、それ以上の方でございますと、その頭を出した分について今言ったような問題が出てくる、こういうわけでございまして、こまかい計算につきましてはいずれまた申し上げます。
  65. 春日一幸

    ○春日委員 ただいま私の質問に対しまして、幾つかの条件を錯綜させて答弁されて、しろうと筋では何が何だかわからぬようなことになって参りましたが、幸いに私は専門家で、知識が豊富だから、よく物事を看破することができるのであります。  そこで私は提案者に申し上げますが、私はそういうようなことを今渡邊局長に聞いたのではない。すなわちいろいろな社会保険料とか厚生年金、失業保険とかの控除の適用を受けていない場合、すなわち二万円以下の所得者と五百万円以上の所御者がこの制度によって受けるところのフェーヴァの実額は何であるかということをお伺いしたのだが、結局は諸君にはわからなかった。今申し上げますと、この制度によって受ける低額所得者の実額は、一万五千円の一五%、二千二百五十円、それから五百万円以上の高額所得者の受けるフェーヴァは一万五千円の六五%だから九千七百五十用、そういうような実に大きな開きをさらに持ってくる。すなわち高額所得者はたいへんな減税を受けて、小額所得者はほんのわずかなフェーヴァしか受けないという結果になって参るのであります。これはあるいは自由党には責任はないかもしれませんが、民主党の大蔵大臣が、責任を持ってここでいろいろ税金に対する改正方針としての強き見解を述べられておりましたが、それによりますと、低額所得者の税負担が重過ぎるので、何とかこれを軽減するために処置を講じたい、こういうことを先年来しばしば繰り返しておりました。にもかかわらず、与党の案では、こういうような低額所得者には二千二百五十円の減税にしかならず、高額所得者は九千七百五十円という減税になってきておる。すなわち今度の税制改正案の政府原案並びに修正案を通じて、われわれの批判をいたしておりまするところは、大企業、それから金持ち、こういうような人々に対しては、資本の蓄積の名に隠れて、大へんな減税が各場面において講じられておる。ところが小額所御者に対しては、全然そういうような措置が講じられず、のみならず、さらにそのギャップがますます大きくなろうといたしておるのであります。こういうことについて、私は藤枝大蔵政務次官にお伺いをいたしますが、大臣が本委員会に言っております方針と、今国会の両党の修正案との関係について、一体どういう考え方を持っておられるのであるか、これをお伺いいたしたいと思います。
  66. 藤枝泉介

    ○藤枝政府委員 ただいま例におあげになりましたような、絶対額を御比較になりまして、税負担の軽減がどうなるかという御議論をなさることも、一つの方法だろうと思いますが、税負担が軽いか重いかというような、あるいは軽減の方法が多いか少いかというようなことは、むしろ税負担の割合で考えるべきものではないか。そういたしますと、ただいま極端な例をおあげになりました、五百万円以上の所得者の九千七百五十円というような数字と、少いところの二千円というような数字と、その絶対額だけで御比較になるということが果して妥当かどうかということを考えますときに、私どもは、常に税負担というものは、やはり負担の率を考えていくべきではないか、かねがね春日さんなどの御主張になっております基礎控除引き上げをいたしましても、同様のことは起り得ることであろうと考えております。
  67. 春日一幸

    ○春日委員 これはターザンの逆襲みたいなものである。しかしながら、それは全然的をはずれた答弁になっております。ならばお伺いをいたしますが、減税のことはそのパーセンテージ、すなわち現行制度のもとにおいて、一定のパーセンテージをもってフェーヴァを及ぼそうというあなたの御答弁であります。高額所得者に一定のパーセンテージを付すれば、その絶対額は多くなるし、低額所得者にそのパーセンテージを付すれば絶対額は少くなる。こういうことであるならば、特に低額所得者の税負担が重過ぎるから、その方面に特に注意をして減税を行なっていきたいという、この一萬田大蔵大臣の御答弁と全然相反する。すなわち低額所得者に特にその負担を軽減する措置を講ずるなら、その措置は幾らでもある。たとえば、この一万五千円というものを基礎控除の中に繰り入れて参りますならば、八万円の基礎控除を九万五千円の基礎控除にしていきさえすれば、すなわち低額所得者に対する税負担のパーセンテージは相当額調整されてくると思う。こういうような方法をとらなかったところに、われわれの批判が存するのであります。あなたは今度の税制のこの改正を、高額所得者低額所得者、ただ一律に漫然とそういうような措置を行おうとするであるか、あるいはまた大蔵大臣が言ったところの、低額所得者に対して負担が重いから、できるだけそれらの軽減のために努力するという方針が、この修正案の一体いかなるところに盛られておるのであるか、これを一つ藤枝大蔵政務次官から御答弁願いたいと思う。
  68. 藤枝泉介

    ○藤枝政府委員 私が先ほど申し上げましたのは、春日さんが極端な一番多いところと少いところをあげられまして、その絶対額をあげて、この通り高額所得者にはフェーヴァが多いじゃないか、低額所得者にはフェーヴァが少いじゃないかということでありますから絶対額で御比較になるのはいかがなものか、われわれは必ずしもそうは思っておりませんということを申し上げたのであります。政府が今回提案をいたしました税制改正につきましては、すでに資料でも差し上げてありまするように、所得額の少い人たち減税の率は多いのでありまして、高額所得者になるほど減税の率が少いことは、すでに御承知であろうと思います。そういう意味で、低額所得者に対する減税の率を上げておるというふうに、かねがね申し上げておるのでございます。
  69. 春日一幸

    ○春日委員 それでは提案者にお伺いをいたしますが、この一万五千円の限度額を一律に基礎控除の側へ持って参りまするならば、これはパーセンテージから考えれば、高額所得者には低く、低額所得者には手厚い減税になるということは、これは当然のことでございます。そうしてただいま横山君から述べられたような批判、すなわち各種の社会保険、あるいは失業保険とか厚生年金とか、こういうような国の総力をあげてそれの助長をはかっておりまする事柄に対する悪影響も、こういうような措置によって回避することができると思います。これを何とか基礎控除の方へ、この際本委員会修正によって持っていく意思はないかどうか。この点を一つお伺いをしたい。もしどうしても持っていくことができないとするならば、その理由についてもこの際明らかにされたいと思うのであります。
  70. 前尾繁三郎

    前尾委員 基礎控除は、基礎控除として検討すべき問題だと思います。ことしに修正案といたしまして、基礎控除を二万五千円に上げるということになりますと、非常に大きな税収の減が立ちます。従って広範囲にわたる修正は、現在におきましては財源の関係その他によって非常に困難であります。従って今まで最も不均衡考えられる点のみの修正に限定したような次第でありますので、ただいまのところ、これを基礎控除にかえて修正を出す意思は持つておりません。
  71. 春日一幸

    ○春日委員 さらにお伺いをいたしますが、この社会保険は多くの場合ほとんど義務加入であります。しかしてこの保険の目的というもりは、おおむね失業したとか病気になったとか、路頭に迷わざるを得ないような者、あるいは不平に直面したような場合における救済を前提として、こういう制度があるわけであります。従いまして、社会保険料所得の中から控除するということは、十分理由にかなったことである。従ってこういうものに入っていない者はむしろ変だと思う。そういうようないわば社会的に、また法制的に強制加入になっておる人々に対しては、この一万五千円という選択控除制度によっては、減税というものはほとんど及ばない、そうして他の者に及ぶ、すなわち今まで健康保険や失業保険、厚生年金に入っていない者に及んで、入っている者、すなわち国策に協力しておる者にはフェーヴァが及ばない。こういうことは、今回のこの選択控除制度の創設によって、保険に入っておる人々に対する既得権の剥奪、要するに、修正君たちにとっては既得権の剥奪になり、それらの人々にとってはこれを喪失するという形になる。これは一つの保険に入っておる者と入っていない者に与えるところの影響ですね。すなわちそれが減税されるということは、まさにこれはその特権になっておるのだから、これによって、現実に入っていない人々が今回一万五千円のこういう大きな減税を受けるのに、そり人々は実質的に何らの減税を受け得ないという結果から生ずるところのいろいろな影響、これを一体どういう工合に考えられておるか。すなわち不公正とか不均衡とか、そういう事項にも触れて、一つあなた方の検討されておるところを、さらに明らかにされたいと思う。
  72. 前尾繁三郎

    前尾委員 社会保険料に類似しました国民保険料とかあるいは医療費、こういうものがせっかく控除恩典がありましても、現実問題としては記帳はされておらぬ、あるいは組織ができておらぬというような事柄のために、従来不均衡でありましたものを是正する、こういう趣旨であります。従って社会保険料をかけておる人は損をさせるという考え一つも持っておりません。さらに社会保険料ばかりでなしに、その他の医療費もあろうというので、五%まで引き上げておるのでありますから、あなたのお考え観点が非常に違っておるのであります。
  73. 春日一幸

    ○春日委員 観点が違っておるということならば、これはまたさらに御理解を願わなければならぬと思うが、たとえば社会保険をかけておる人は、これはケースによってはいろいろ違ってくるとは思いますが、大体三十万円の人において一万五千円程度の各種控除を現在受けておるのです。あなたは今記帳されていない人々と言われまするけれども、すなわちその人々は一部の権利放棄者をさすものであろうと思うのでありますが、そういう権利を放棄した者は、これは特殊の者であって、それを特別措置の対象とされることは、私は変だと思います。権利を放棄しておる者や、あるいはそういう保険をかけていない人々、はこの制度によってフェーヴァを受けるが、しかし法律の定めるところによって記帳もし、そしてそれぞれの控除申請を行なっておる者は、これによって大したフェーヴァが受けられないということは、これは渡邊局長も今答弁されて明らかな通りであります。一体この点提案者は、なおかつこの権利を放棄しておる人々と、それからかけていない人々に対しては恩典を与えられると御主張なさっておりますが、しからばきちんと法規通り記帳もし、またすでに控除を受けておる人々に対しては、こり制度によっていかなるフェーヴァが及ぶのでありますか。これか二つ明確にされたいと思います。
  74. 前尾繁三郎

    前尾委員 現在社会保険につきまして記帳しておるとか、そういうようなことは、これは徴収義務者の方でやっておることで、徴収義務者がありますために、たまたまそういう権利を放棄せずにやっていける。ところがそういう人がいないために、また実際現実には、これはおそらくだれしもそうでありましょうが、こまかい医療費の領収書を一々とって出すというわけにはいかぬ。従って医療費の控除はことに五%まで控除しないというような制度もありますので、それだけは医療費もかかっておるだろう、こういう意味合いで今回の措置がとられておるのでありまして、どうもあなたのお考えの、社会保険料控除するのはそういう組織された勤労者の特権だというふうに従来お考えになっておるとすれば、われわれと見方が違うということを申し上げておるのであります。
  75. 春日一幸

    ○春日委員 それでは渡辺主税局長に伺いますが、徴収義務者、これの存する事業場の数と、それから徴収義務者の存在しない事業場の数、それからこの源泉徴収の所御税を納めておりまする課税対象人員、これと、源泉徴収義務者の手によらないで、そういう申告納税を行なっておりまする対比率、これは一体どの程度になっておりましょうか、こり際お示し願います。
  76. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 徴収義務者の数は今調べておりますが、徴収義務者のないという関係は、結局申告納税をしていただいている方だ、こういうことになるのじゃないかというふうに思います。それで申告納税をしていただいている方々の人員が……。
  77. 春日一幸

    ○春日委員 それは給与所得でですか。
  78. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 いや、全体でです。
  79. 春日一幸

    ○春日委員 給与所得で、徴収義務者の手によらずして納税しているものがありますか。
  80. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 給与所得で、徴収義務者の手によらないで税金を納めている人がどれくらいあるかという数字は、現在手元にございません。税法の上ではそういうこともあるはずでございますが、今その数字は手元にございません。ただ今度の選択控除の問題と一応関連して参りますと、給与所得者だけについて一万五千円を限度とする選択控除フェーヴァ認められるわけではなくて、中小企業者でありますとか、農民でありますとか、そういう方々にも全部及ぶわけでございますから、その意味で、実は私は現在源泉課税を受けている方々、それの徴収義務者の数というふうな点と、それから片方の申告納税の方々の数、そういうふうな御質問になったのじゃないかと思って今お答えしようと思ったのですが、それではこの御質問の要旨と違うなら、もう一ぺんおそれ入りますが、御質問の要旨をおっしゃっていただきたい。
  81. 春日一幸

    ○春日委員 現在の徴税制度によりますと、給与所得者、これはすべて源泉徴収になると思うのですが、その場合は、すべて徴収義務者というものがなければならぬ。それは一人以上ですか、使用人を使う者はすべてこれは徴収義務者になり、それからそういう徴収義務者がなくて給与所得税を払おうとする場合は、これは能力なき者とかなんとかいう何かむずかしい解釈があるように今まで伺っておるのでありますが、この点の関係一つ明確にお示し願いたいと思います。
  82. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 御質問の要旨をちょっと誤解しておりまして、答弁が食い違っておりましたようで、遺憾の意を表したいと思いますが、わかりました。現在の税法でございますと、国内で支払われております給与に関する限りにおいては、現在は、給与については全部が源泉徴収をするという建前になっております。
  83. 春日一幸

    ○春日委員 その通りであります。従いまして、ただいま前尾さんの御意見によりますると、源泉徴収義務者のない人々、そういう人々は社会保険あるいは年金その他の支出証明がないので、結局権利放棄をしている、そういう人々に均霑せしめるんだ、こういうことであります。もとより私は、申告所得税についてはこれがフェーヴァが及ぶことは当然理解をいたしております。ただ私が申し上げるのは、比較的税負担が重いといわれておりまする給与所得者について申し上げておるのでありますから、一つ提案者も、その理解の上に立って御答弁を願いたいと思います。そういたしますと、給与所得者はすべて源泉徴収義務者があって、源泉徴収義務者はすべてそういうような各種控除事務的に取り扱っておるのでありますから、今あなたのおっしゃったような権利放棄とか、あるいは当然控除がされるのに控除されていないとかいうようなことは、私はほとんどないと思います。従いましてそういうような人々は、おおむね現在においてもすでに二万五千円程度の控除をされておる。そう人々に対して、これは全然恩典が及ばないではないか。そうして他の人々にのみ恩典が及ぶ。すなわち健康保険にも失業保険にも厚生年金にも入っていない人々にのみこの恩典か及ぶというこの措置は、これははなはだ不均衡ではないかということを申し上げておるのでありますから、その点の関係をどういう工合に理解されて提案されておりますか、これを一つ伺いたい。
  84. 前尾繁三郎

    前尾委員 社会保険料といってしまいましても、それ以外にそれと同様な費用は、おそらく医療費なりいろんな名目のもとに支出されておると思います。従ってそういう人は、ただいま申しましたように、はっきりした社会保険料ということで出ておらぬ。しかし同様の支出は当然個人的にあるはずです。それを一々書き出すということは、実際問題として不可能であります。従って給与所得者のうちで社会保険料として払っていないような人でも、同様の性質のものがあるということは想定される。ことに現在三・三%でありますが、さらに広げて医療費なり、そういうようなものを考えると、五%くらいはいっているだろうというので、そこまで広げて考えていってそれを控除しよう、こういうことでございます。
  85. 春日一幸

    ○春日委員 私の質問に対するまともな御答弁にはなっておりません。と申しますのは、先ほど来いろいろといっておりますのは、各種の保険をかけておる人々は、もうすでにこれだけの既得権が確保されておる、だから本制度によってその特殊性がなくなってしまった。保険をかけてもかけなくても、税法の建前においては、一万五千円の限度内はおおむね同じことだ、こういうことになってしまったのです。そうだといたしますと、一面においては、給与所得者については、おおむね厚生年金も、あるいは健康保険も、あるいは失業保険もかけておる。こういう人々はこの制度によってら何恩典を受けないし、そうしてこういうものをかけていない人々が一万五千円まで減税されるということは、すでにわれわれがこういうような法律を審議して参りました過程において、これはそういう減免措置を講じなければならないという特別の理由というものがあったわけです。その特別の理由というものが、ここに喪失をされてしまったということについて、私は税法上大きな異変を生じて参ると思います。私は今まで健保や厚生年金や失業保険というものは、一たん不幸に際会をいたしました場合に備えるの措置として、当然そういうような費用は認めていかなければならぬという、大所高所からこれが決定されてきておるのであって、税法上認めて参りましたところの特別の優遇措置とか減免措置というものが、本措置によってなくなってしまうということは、重大な事柄であろうと思いますが、この重大性について、福田さんはもう少し広い範囲で御検討願ったと思うのでありますが、特にあなたは与党といたしまして、一萬田大蔵大臣の、低額所得者に対する特別の減税措置を講じなければならないというその言明に対しても、一半の責任を自由党よりさらにより多く持っておられると思います。前尾さんは野党でありますから、その点責任のない方言をやっておられますけれども、しかしあなたは、そんな答弁は許されないと思うが、一萬田さんの本委員会における累次の発言に関連いたしまして、私が今指摘しております問題についてどういうような見解を持っておられますか。健康保険やその他いろいろな保険を今までかけてきて、そういうものは特別減税措置を講じなければならぬとわれわれは認めてその制度をここに守ってきた。ところが今度の制度は、かけてもかけなくても同じだ、こういうことになってくる。さらに、かけていない人について見ますならば、高額所得者には、同じようなパーセンテージでありますから、絶対額が多く減免され、低額所得者については、同じパーセンテージですから、従ってこれは小さな額しか減税が及ばない。こういうことについてどういうような理解を持ってこの提案をされましたか、さらに一つ敷衍して御答弁を願いたいと思います。
  86. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 お答えいたします。春日委員が力説されるように、低額所得者の問題は、これは私どもも非常に重要視いたしているわけです。また同時に、現行の税制から見まして、実際取扱いの関係上から、勤労所得が割合重くかぶっているというような感じを持っているのです。さようなことを逐次是正していかなければならぬ。財政の状況ともにらみ合せまして、これが是正に努力するということは、大蔵大臣も言っている通りなんでありますが、今回その一端といたしまして、経費控除を実施するという考えに到達いたしたわけです。これがただいままでの社会保険料の優遇措置を無にするんじゃないかというようなお話でありますが、しかしそれはそういうふうには考えておらない。私どもは、五%というものは、平均いたしました場合の社会保障優遇措置よりもはるかに高いものであって、その間のマージンというものを考えますれば、これは明らかに優遇措置であります。また手続が煩雑であるという見地から、何らの手続もいたしておらぬというものに対しましては、これは非常な恩恵を与えるということにもなるわけでありまして、また簡素化ということを通じて、低額所得者全部がその制度に均霑されるということを御考慮下さいまして、御理解あらんことをお願いいたします。
  87. 春日一幸

    ○春日委員 それはまことに不親切な答弁で、不愉快に存じます。ただいま申し上げました通り、日本国内におきまする給与生活者は、すべて源泉徴収義務者によって納税されている。従うてわれわれが考えなければならぬことは、源泉徴収義務者とその納税者とは全然別個の人格であります。従いまして、その納税者に対して与えられております税法土の各種の減税措置を、この源泉徴収義務者事務の怠慢によって、あるいはそういう煩瑣にたえぬという自分の怠惰によってそのことを行わないということは、これは納税者に対する利益の侵害をその源泉徴収義務者が行なっている、すなわち故意に損失を与えた形になっているのであります。従いまして、そういうようなことをやらない人々に対しては、やるように指導すべきである、なし得るように所要の経費を見てやるべきであると思うのであります。やっていないからというのでそういう制度を軽く見て、そうしてやっていない人が多いからというようなことでこの制度考えられるということは、税法の立場をはなはだしく軽視することによって、せっかくのその減税を受け得られるところの権利者たちに対して、はなはだ不親切きわまるところの考え方であろうと私は思うのであります。これは私ども社会党両派が考えております通り、そういうことを考えるならば、当然全面的に基礎控際の率を引き上げて、八万円のものを九万五千円にすればこういうような非難は全然なくなる。あるいはまた勤労控除の一五%のものを一七%にするとか二〇%にするとかいうことによってこういう非難もなくなり、不権衡も不公正もなくなってくる。そういう事柄がわかっておりながら、なおかつ自説に固執されるということは、私はまことに遺憾千万にたえません。しかしながら時間も参っておりますし、一応休憩するという委員会の慫慂もありますので、私は質問を留保いたしまして、さらに午後引き続いてお伺いをいたしたいのでありますが、ただ一つだけ明らかに願っておきたいのは、不具者控除の千円の引き上げをされたことであります。これはその精神において、むろんわれわれに異論のあるものではありませんが、しかしこの際この制度に触れて修正を守るというのでありまするならば、先天的な不具者と後天的な不具者、特に戦争の犠牲者とり間に千円の段階がつけられておりますけれども、この際その段階をなくして、特にその最高額にまで、天然の不具者にフェーヴァを及ぼしてはいかがでありましょうか。と申しますのは、寡婦といい、それぞれの不具者といい、生活をして参りまする上においてはそれぞれの経費がかかり、さらに難渋をきわめております。戦争の犠牲者に対しては、当然他の法律によって国の保障も与えられておるのでありまして、特に税法上五千円の段階を付するということは、よきことではありまするけれども、しかし不具者に対して、税法上の措置、すなわち生活経費に対する特別の経費を見ていくという理念の上に立ちまするならば、先天性、後天性というものについて差異があるはずはないと私は思います。従いまして、この先天性の諸君を戦争犠牲者たちの額にまで引き上げて、そういう身体障害のために生活にさらに苦しみを受けておる人々に対して、いたわりの措置を講ずる意思はないかどうか。この点を一つ前尾さんから御答弁願いたいと思います。
  88. 前尾繁三郎

    前尾委員 ただいまおっしゃるように先天、後天という意味で税法では区別いたしておりません。御承知のように、遺族援護法の適用を受ける者と受けない者というので区別をいたしまして、従来から四千円と六千円というように区別をいたしております。従ってその両者を千円ずつ上げて、その間の差は従来のままになっておりますが、それにしましても、おっしゃるような区別はいたしておるわけであります。
  89. 春日一幸

    ○春日委員 やはり自分の思ったこと以外はどんな正論でも全然耳を傾けないというので、結局人の心、物事の正否というものがてんであなた方はわからないので、ただあきれ果てるばかりであります。いずれ問題はさらに午後に繰り越して質問を続行することといたしまして、私の質問を留保いたします。     —————————————
  90. 松原喜之次

    ○松原委員長 この際お諮りいたします。租税特別措置法等の一部を改正する法律案について、農林水産委員会より連絡審査会開会の申し出がありますが、法案審査の都合上、連合審査会は開かずに、農林水産委員のうち意見のあります方より申し出がありました際は、委員外発言を許可するように取り扱いたいと存じますが、これに御異議はありませんか。   〔「異議なしと」呼ぶ者あり〕
  91. 松原喜之次

    ○松原委員長 御異議なしと認めます。よってさよう決しました。  午前中の会議はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時三十五分休憩      ————◇—————    午後二時二分開議
  92. 横路節雄

    ○横路委員長代理 休憩前に引き続き会議を開きます。  政府提出にかかる所得税法の一部を改正する法律案法人税法の一部を改正する法律案租税特別措置法の一部を改正する法律案の三法律案、並びに三法律案に対する前尾繁三郎君外二十五名提出修正案一括議題として質疑を続行いたします。横山君。
  93. 横山利秋

    横山委員 午前で少しまだ足りないようでありますので、選択課税の問題をもう少しお伺いしたいと思います。  あなたの方の御提案によりますと、初年度四十億、平年度八十億という数字が出ていますが、七月一日から実施をして初年度が四十億、平年度が八十億という数字はどうしても解せないわけでありますが、この四十億を算出された具体的内容は、提案者として御存じでありますか。
  94. 前尾繁三郎

    前尾委員 四十億になりますことは、こちらのいろいろの案は主税局の資料に合せて計算をしたのでありますので、政府委員からお答えいたさせます。
  95. 白石正雄

    ○白石説明員 概算控除制度は、所得の五%ないし一万五千円を限度といたしておりますので、所得階層別にこれを計算いたしまして、それから現在所御控除を受けておる額がございますので、これを差引計算いたしまして算定いたしております。たとえば雑損控除で申しますれば、現在二万八千百七十五名程度のものが雑損控除を受けております実績となっておりますし、医療費控除につきましては、十一万七千人程度のものがその実績になっておりますので、これらの実績を勘案いたしまして、そうして差引計算をやっておるわけでございます。
  96. 横山利秋

    横山委員 勤労者農業者事業者、この三つに分けて、四十億はどういうふうに減税されますか。
  97. 白石正雄

    ○白石説明員 源泉所得税で約三十億、申告所得税で十億に相なっております。
  98. 横山利秋

    横山委員 源泉のさらに具体的な内容はわかりませんか。たとえば早朝来私が言っております——どういうふうに分けたらいいでしょうか、官公吏とか——民間とか、そういうふうな分類はございませんか。
  99. 白石正雄

    ○白石説明員 今具体的にその計数はここに持ち合せがございませんが、大体におきまして、全給与人員のうちの官公吏が三割程度を占めておりますので、そういった算定によってほぼ推定できると考えております。
  100. 横山利秋

    横山委員 官公吏並びに公社職員が三割というわけでございますね。
  101. 白石正雄

    ○白石説明員 地方団体及び政府、それから政府関係機関を含めたものでございます。
  102. 横山利秋

    横山委員 三割という数字はどういうふうにとられたか知りませんが、少くとも官公吏関係社会保険料に該当するものは、共済組合の長期並びに短期、それから恩給等、これらが該当するものとして理解してよろしゅうございますか。
  103. 白石正雄

    ○白石説明員 ただいま申しました約三割というのは、人員的に見ましてそのような数字になっておりますので、それで一つの推定の根拠として申し上げたわけでございます。それから社会保険料控除といたしまして差引計算されますのは、官吏について申しますれば恩給の納付金、国家公務員共済組合の掛金、かようなものになるわけでございます。
  104. 横山利秋

    横山委員 さらにそれを分析してみますると、たとえば公社職員を例にとってみましょう。公社職員が普遍的にかけております社会保険料は、年金関係が千分の四十九、健康保険関係が千分の三十、合して千分の七十九になります。御存じでございましょう。これは基本給に対してかけられる金であり、税法の月収に対してどのくらいになるかと申しますと、私の推算をもっていたしましても六十以上になる。従って公社関係職員については、本法の恩典はない、こういうふうに理解されるわけでございますが、いかがでございますか。
  105. 白石正雄

    ○白石説明員 公社関係の計数をただいま手元に持ち合していないわけでございますが、国家公務員につきまして調べたところによりますと、年間の収入が二十三万六千八百九円、これは七級の二号になっておりますが、この人の負担いたしておりまする社会保険料は七千六百五十六円と相なっております。従いまして、約二十四万円の収入でございますから、五彩といたしますと一万二千円に相なりまするので、一万二千円と七千六百五十六円との差額、約五千円程度の所得控除がこの際さらに差し引かれる、かように相なりまして、減税恩典が及ぶことになると考えております。
  106. 横山利秋

    横山委員 私の聞いておりますのは、まず第一に公社職員には恩典がない、こういう結果になるのを御承知かと言っておるのです。
  107. 白石正雄

    ○白石説明員 ただいまその公社職員の計数を持ち合せておりませんが、国家公務員につきましてはただいまのようなことになりますので、公社職員につきましても、大体相似たものになるだろうと考えております。
  108. 横山利秋

    横山委員 あなたは共済組合の掛金を御存じでございますか。公社職員と一般公務員の掛金が異なることを御存じでありますか。少くとも共済掛金が、公社職員の圧倒的多数を占める甲種は千分の四十九、これが年金の掛金、それから健康保険の短期が千分の三十の掛金、合して千分の七十九ですよ。これが本給に対する掛金であるが、税制の上からいくと月収の百分の五に値するかどうか。つまり月収ですと、基本給に対してよくいって二割、二割に換算しまして、千分の七十九という数字より若干下ります。下りますけれども、千分の五十以下には絶対に下らないのです。従って公社関係の職員は、この選択控除に関する恩恵は圧倒的にない、こういう結論になるが御承知かと言っておるのです。
  109. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 今の長期給付、短期給付の関係が、大体両方合わせまして千分の七十九ですか、これは公社によって必ずしも一律でないと思いますが、大体七十七とか七十九とかいう数字はわれわれも承知しております。問題は、結局横山委員もよく御存じのように、この七十七というのは本俸に対する掛金です。従いまして、本俸以外に勤務地手当とか、盆の手当、それから年末の賞与、こういうものがいろいろあるわけでございまして、それが本俸とどういう割合になるかというところで、結局五%以下になるかどうかという問題がきまってくるわけでございますが、今お話のように、二割と見ることはどうも本俸以外のものがちょっと少いのではないか。これは今手元に数字がございませんから、至急計算してみてもよろしゅうございますが、結局二割と見ることは、私はどうも少いのじゃないか。と申しますのは、一応役人でいえば、盆に〇・七五ですか、暮れに一・二五、結局二カ月分といったものがありますし、勤務地手当もありますし、そういうものとかけ合せてみて一体どういう割合になるかというところで、今のお話の問題は解決するのではないかと考えております。
  110. 横山利秋

    横山委員 あなたはだんだん数字をせんさくなさって御説明しておられるが、大体私の言うことは、あなたも御承知になってお認めになると思うのです。それで、少くとも千分の七十九という数字を甘く見て、手当が二割と言っている。かりにあなたの言うように、もう少し上ったところで、千分の七十九が千分の五十、つまり五%に下るようなことはない。これは考えてみてもおわかりのことと思うのです。さらに一段下って言いますと、一般公務員を取り上げてみましょう。一般公務員の方は長期給付が千分の四十です。それに対して大体短期給付の方が千分の三十五くらいですか、大体七十ですよ。つまり七%。その七%が手当を含めて五%の下にくるか上にくるか、どっちになるかというところがあなたの議論になるわけです。ところが、さらに分析してみますと、たとえば一般公務員を考えてみましょう。任官している人、あなたを含めて土の方の人ですね。そこへ行きますと、恩給関係が千分の二十でしょう。短期給付が大体平均して千分の三十五です。そうすると千分の五十五になる。ところが下の方の一般公務員は千分の七十です。どちらが恩恵を受けることになると思いますか。言わずと知れたことで、恩給をやっている上の方の人がこり選択控除恩恵をどっさり受けて、下の方は受けられないということは、私が朝から繰り返したところです。こういう点について前尾さん、大体おわかりになったと思いますが、どう思いますか。
  111. 前尾繁三郎

    前尾委員 繰り返して申します通りに、それは給与の行き方として、あなたは最初から今までの特権を剥奪するようにおっしゃるのですが、今までの特権と言いますか、権利は権利として置いて、そうしてそれ以外に、実際問題として特権を受けておらぬ人に対して、気の毒だから、その特権を履行できるようにしようというのが趣旨でありますから、あなたの今の御議論の、給与所得者またある特殊の人が持っておる特権を剥奪するような考えのようにおっしゃることが、私と全然考えが違うのです。
  112. 横山利秋

    横山委員 今秋の議論はそういうことを育っているのではないのです。低額所得者のためにやるんだということを育っておられるのだけれども、官公労の関係を見ると、それから公社職員のことを考えると、低額所得者にはこれは恩恵は少くて、高額所得者恩恵があるぞ、これが実際ではないかと私は言っているのです。それに対して前尾さん、どう考えますか。
  113. 前尾繁三郎

    前尾委員 それは具体的な個々の給与のやり方によってそういうような場合が起ることがありましょう。しかし全体としてお考え願ったら、やはり低額所得者に有利になるというふうに考えております。
  114. 横山利秋

    横山委員 そうすると、あなたは少くとも公務員並びに公共企業関係、いわゆる政府関係一般職員、それに関連する職員は、高齢者が得して低給者が損をするのは選択課税の結果であるということをお認めになるわけですね。
  115. 前尾繁三郎

    前尾委員 何回も繰り返して申し上げる通り、低額なるがゆえに不利になるというものじゃないことは明らかです。ただそういう場合が個々のある部分的な問題に起ることはあり得るかもわかりません。それはそれだけであって、全般的にはあくまで——絶対額を比較しての朝のお話もありますけれども、いずれにしましても、割合から言って、総合して考えて、低額所得者が有利になるということは間違いないと私はあくまでも思います。
  116. 横山利秋

    横山委員 あとの方を強調せられるわけですが、今は個々の問題から議論をしておるわけです。大体あなたもわかったと思います。少くとも官公労並びに公社関係の職員百数十万人は、今度の源泉課説で上の方は得をするけれども、下の方は損をする、こういう結果になる。しかもその結果というものはどこで現われるかというと、年末手当で現われてくるので、それが一般のように源泉課税が適用されるというなら目立たぬかもしれぬ。しかし年末にあれだけの騒ぎになって、毎年々々年末手当をふやすかふやさぬかというストライキまで起る事態です。税金の方は上の方は得をする、下の方を損をさせる、こういうことは、あなたはまじめにお考えになりますか。これもやはり一般的な原則からはしようがないというふうにお考えになるなら、私は何をか言わんやでありますけれども、しかし一体共済組合の甲種をかけておる人はどういう人ですか。額に汗して現場で働いておる人です。下の方でじみちに一生懸命働いておる人たちです。そういう人たちに特別に必要があるからといって、共済組合の長期給付というのは恩給がない者のために設定をせられておる、こういう人たちが損をする。私は現場のことはまたあとで議論をしようと思うけれども、そういうことについて、あなたがそれも全般の犠牲だ、なるほど側々には起り得るかもしれぬではあなたも済みません。もう一ぺん誠意ある御答弁を承わりたい。
  117. 前尾繁三郎

    前尾委員 非常に誤解をされておると思います。犠牲にするというようなことは何をお考えになっておるかしらぬが、いずれにいたしましても、五%以上の人は五%以上引くのですから、要するに五%以下の人について五%になるだけです。従って特権を剥奪するとはどうもわれわれと考えがはなはだ違うのでして、あくまで今まで恩典を受けておらぬような人に対してやっていこうとこういうことなんです。
  118. 横山利秋

    横山委員 何回も何回もで恐縮ですけれども、あなたの言うことは、あなたの立場としてわからぬではない、けれども結果を見てみなさいということです。今もしあなたが言われるように、今まで下級労働者共済組合の甲をやっておる労働組合の諸君は恩典がよ過ぎた。比較論として一歩譲って言いますれば、恩典がよ過ぎたのだ、それを上の方にも恩典を及ぼしてやるのだ、こういうのがあなたの議論のようです。それをかりに認めたところで、やり方にも方法があるだろうということがまず第一に言えましょう。年末になって上の方だけがどさっと給料がよくなるというようなことは、どうしても納得のできないことではありませんか。また本来下級労働者に対して与えておったことに対して、あなたの議論は表と裏の関係だけれども、結局はこれがよ過ぎたからならすということになるでありましょう。犠牲という言葉が悪ければ、別の言葉で言うとならす、上の方に得をさせるということになる。低額所得者減税という看板に、これはほんとうに偽わりがある、この問題に関する限りは偽わりがある、こう言わざるを得ないじゃありませんか、いかがですか。
  119. 前尾繁三郎

    前尾委員 五%以上の人は五%以上引くのです。五%にとめるのではないのですから。要するに五%以下の人は、普通よりほかの医療費なりその他を考えまして、平均して考えて五%までは引こう、こういう制度なんですから、あなたのおっしゃることははなはだ趣旨が違っておると思います。
  120. 横山利秋

    横山委員 たとえばここに減税に使われる金が四十億なら四十億ある。その四十億を何のためにどこへ使うか、どこの減税に使うかということになって、あなたの方としては看板を低額所得者、こういうふうに言われたではありませんか。その低額所得者が、この件に関する限りは高額所得者に行っているではありませんか、どうです。
  121. 前尾繁三郎

    前尾委員 ただいまおっしゃるように、われわれは局長級の人が高額所得者とは考えておりません。先ほど来申しておりますように、三十万以下くらいのところはすべて低額所得者だ、その中である非常に小部分の問題で、従来が正しいものとして、それと多少均衡が変ってくるということはやむを得ない、かように申し上げておるのであります。   〔横路委員長代理退席、委員長着席〕
  122. 横山利秋

    横山委員 これは議論が交錯するようでございますけれども、しかしお聞きになっておられる同僚大蔵委員の諸兄には、私の言わんとするところがよくおわかりになったと思うのであります。どうも政府側としては共済掛金の今日のあり方、恩給の掛金のあり方ということについて御認識が乏しいようであります。実際先ほどから申しました掛金の現在の比率、だれが一番掛金の率が高いかということをも勘案をせられまして、具体的に検算をなさったならば、こういう一率のやり方は出てこないと思う。繰り返すようでありますが、給料の高い人——高額所得者ということが当らなければ、給料の高い人がこの恩恵を受けて、給料の少い人恩恵を受けないという結果になるということを、どうしても御銘記、再検討を願わなければならぬのであります。  次に措置法の方で御質問いたします。配当所得につきまして二五%が三〇%になります。この配当所得は、現在でも私どもは非常によ過ぎるという立場をとっておるのであります。よ過ぎる上にさらによくなる。源泉の場合でも、それから総合の場合でもよくなったのでありますけれども、今配当所得課税を検討してみますると、配当所得八十四万円までは税金が一文もかからないという事実について、これを政府側としては正しい計算であると思いますか、いかがですか。
  123. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 控除になります場合に、夫婦子三人の家族の場合、配当だけの所得でございましたら八十四万円で、所得税としては課税にならぬ、その計数は間違いございません。
  124. 横山利秋

    横山委員 配当所得だけでやっている人は少いということを、あとで言いたかったろうかともわれわれとしては思いますけれども、八十四万円の所得があって一文も税金がかからないということが、資本蓄積政策のためだということで国民が納得をすると思いますか。私は大蔵委員になっていろいろ調べているうちにそういうことがわかって、全くびっくりぎょうてんをいたしたものであります。かてて加えて二五%を三〇%にするということは、どうしても納得ができないのでありますが、この真の目的を提案者からお伺いをしたいと思います。
  125. 前尾繁三郎

    前尾委員 八十四万円を配当所得としてもらいました場合に、税金がかからないということは事実でありますが、これはもう全く法人擬制説によっている現在の税制についての御理解がないからであります。その前に、すでに源泉で法人税がかかっているという事実を考えますときには、八十四万円以前に税金がかかっているということによってお考え願いたい。要するに、そうでなかったらもっと多くの配当を受けられたであろうということにすぎないと思います。
  126. 横山利秋

    横山委員 政務次官に伺いますが、この点については、すでに政府原案が出ましたときに、各委員から質問があったのであります。質問に対して、政府としては、この配当所得をなぶる意思はないというふうに御説明なさったわけでありますが、今回自民両党から修正案が出たことにつきまして、この案については、どういうふうに御説明なさろうとするか、御説明を願いたい。
  127. 藤枝泉介

    ○藤枝政府委員 この委員会でも、預貯金の利子課税免除に関連いたしまして、単に預貯金、公社債の利子課税を免除するばかりでは、配当課税との不均衡が生ずるのではないかというような御意見がありまして、私どもは、一応の考え方としては、とにかく預貯金、公社債の利子免税ということによって傾斜的に貯蓄の増強をはかりたいと考えましたために、この方に重点を置いたわけであります。しかしながら、今回のこの自民両党の修正によりまして、この預貯金利子課税の免除とあわせて、直接の投資に対する国民の意欲をかき立てるために、配当についても適当の処置をすべきであるという御意思のもとに、この修正案を出されたものと私は考えます。それは重点をどちらに強く置くかという問題の考え方でありまして、直接投資についても、なお税制上の恩典を与えてこれを奨励すべきであるという御意見も決して理由のないところではありませんので、われわれもまたそれに了承を与えたという次第でございます。
  128. 横山利秋

    横山委員 私は、政府側として、少くとも自民両党の修正された点について、もう少し明確な態度をとるべきではないかと思います。なぜならば、先般一万田大蔵大臣は、小山委員質問に対して、私の考えでは、株式に関する税法上の措置と今回の預金利息に対する免税の点は、各般の事情考えて十分その均衡を得ている、こういうように考えているわけですと明白に答弁をされているわけです。このように明白に答弁をしておって、そしてもう重点の置き方だというふうに態度を変更されるとしたならば、政府側の態度としては、まことに朝令暮改のそしりを免れるわけには参りません。この点について、五月十四日に一万田大蔵大臣が答弁したことについて、一体どういうように政府側としての責任をお持ちになりますか。
  129. 藤枝泉介

    ○藤枝政府委員 大蔵大臣がこの委員会におきまして、そのような答弁をいたしましたことは事案であります。そしてまた私ども、単に利子課税全免の処置と、今回の配当所得に対するあの処置と、これだけをごらんいただいて均衡がとれていないという御議論でなく、昨年以来直接投資についてもいろいろな処置をやって参りましたこともあわせて考えていただいて、この程度で均衡をとるのがいいのではないかというふうに政府側として考えて、政府の原案を出したということを申し上げた次第でございます。しかし先ほども申しましたように、自民両党におかれましては、この今回の処置と利子課税、預貯金利子の非課税の処置と、それから昨年以来とりました株式投資に対するいろいろな処置とを考えまして、さらに株式に直接投資に対する税制上の恩典を与えるのが妥当であるという結論からこの修正をされたのでありまして、そういう観点も決して理由のないことではないのでありますから、私どもはその修正に応じたというふうに申し上げた次第でございます。   〔「心境の変化だ」と呼ぶ者あり〕
  130. 横山利秋

    横山委員 今心境の変化だということを育った人がありますが、そういう心境の変化では困るのであります。この配当所得についてだけたしか四月に遡及されるということは、どういうわけでありますか。その理由を聞きたいと思います。
  131. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 これは私一応修正案提案者からいろいろ御意見を聞いておりましたし、技術的なことでもありますから、便宜私からお答えいたします。これにつきましても、一応七月一日以降の配当分について云々という考え方ができないではないわけでございましたが、それをやりますと、実は事務的に非常に不便になります。たとえば確定申告におきまして、配当の額を一々六月三十日までに受け取った分と、七月一日以降に受け取った分とわけていただかなければならぬ、こういう問題になりまして、事務的に非常に煩瑣になりますので、預金利子ないし配当の源泉課税の方は、本年の七月一日から明後年の三月三十一日までに支払わられる分と、それから今の配当の控除は本年分と来年分、配当の控除は結局確定申告における年分課税の分ということになりまして、年の途中でもって区切りますと、非常にややこしくなります。多少預貯金利子と配当の前後が、配当の方は早く始まるかわりに早く終る、片方の源泉課税の方はおそく始まるかわりにおそく終る、こういうことで一応のバランスをとらざるを得なかった、こういう事情でございます。
  132. 横山利秋

    横山委員 冒頭に言いましたように、配当所得減税については、理論としては私どもは賛成しがたいところでありますけれども、かりに一歩譲ったところで、資本の蓄積が目的であるというのですね。資本の蓄積が目的であるならば、これから貯金をするようにしてくれ、また株を買ってくれというようになるのがこれからの話であるのに今までの人にまでやってやろう、今までのことについてまでやってやろうでは、これはあまりに至れり尽せりです。主税局長のおっしゃるように事務的にむずかしいということは、一銭ですら減税の問題については議論があるときに、目的以外にさかのぼって安くしてやろう、それが事務的な操作のためにやむを得ないということでは私は納得できません。これがもし七月でややこしいというならば、十月でも十二月でも、来年四月でも、これはまた期待感というものが生じますから、やはり資本の蓄積ということにはなるのです。何もさかのぼって貯金をする人がどこにありますか。こういう議論は、事務が政治に優越するように考えられてまことに奇怪なことでありますから、提案者前尾さんにこの点についての御意見を伺います。
  133. 前尾繁三郎

    前尾委員 ただいま主税局長から説明のありましたように、事務的に煩瑣の問題——四月にさかのぼりましたからといって、それほど大きな違いがあることはありません。また利子の課税面での問題とも関連しますと、われわれはむしろ利子が全免になるということにつきましては、配当が相当不利であるというように考えておりますので、配当については相当優遇しなければならぬというような考え方から、手続上困る問題を無理押しに正確にやるということは考えなかった次第であります。
  134. 横山利秋

    横山委員 これは、四月ということはもうどうにもなりませんし、また、どう考えても少し無理が勝ち過ぎておるということに私は感ずる次第であります。あらゆる面について減税が論議に上っております際に、かくまで恩典を与えなければならぬという理由は私にはごうも発見ができません。事務的にえらいからということを国民に話したところで、こんなことで国民が、じゃあ四月にさかのぼるのもやむを得ないというふうに言う人はいないと思う。こういう点については、提案者としても十分にお考えを願って国民に納得のいくような御提案をされんことを特に私は要望をいたしたいと思うわけです。  それから、ちょっとこまかいことで恐縮でありますが、所得税、法人税ともに、酒造組合、同連合会及び同中央会、酒販組合、同連合会及び同中央会がともに恩恵を今度受けられるようでありますが、酒屋さんだけが今回入るのはいかがなものでありましょうか。私は別に入っていかぬとは言わないけれども、酒屋さんを入れるならば、ほかにも関連をする業種がたくさんございましょう。何がゆえに酒屋さんだけ特に入れねばならぬか、今まであった関係企業等に比べますと、どうも酒屋さんだけがぽっと入ったという感じがいたすのでありますが、どうして他の関連の業種が抜けて酒屋さんだけが特に法人税、所得税の面でいい目にあったのか、お伺いをいたしたいと思います。私は、必ずしも入っちゃいかぬとは言わないけれども、入れるならば公平に考えていただくべきであると思うのです。
  135. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 それは政府原案の問題でありますから、私から申し上げます。  酒類業組合につきましては、横山委員承知だと思いますが酒税の保全等に関する法律がございまして、その法律によりまして設立されたものが、今御指摘になっているいろいろの組合でございます。これはあの法律によって設立されました組合でございまして、出資もございません。それから営利的な事業は一切営むことはできないのでありまして、目的といたしましては、酒税の保全等に協力するということでなっているわけでございます。立法の当初からいろいろ議論したわけでございましたが、当初においては他との権衡もございまして、いろいろ考えてみていたのですが、今度同じような種類のものとして調整組合というのがございます。これも出資がございません。従いましてそれとにらみ合いながら、同時に酒の組合は、従来そうしたものは社団法人でやっておりまして、社団法人の時代におきましては、税金がかかっておらなかったわけであります。収益事業を営んでおりますればもちろん収益事業には税金がかかりますが収益事業を営んでおらなければこれはかからなかった。それで今度の団体法による組合は、収益事業を営むことができないことになっております。そうした特殊立法である法人であるがゆえに法人税がかかる。法人税がかかることは実はめったにないのでありまして、結局賦課金と政府の補助金だけが収入でございまして、それによっていろいろな経費をまかなっていくわけであります。賦課金がいわば取り過ぎになったときに剰余金になるわけであります。そういう性格のものでございますので、今度やはりこれは公益法人と同じように扱うべきであるという趣旨で、調整組合、同じ種類の組合と合せまして、それを入れることに改正案を提出したわけでございます。
  136. 横山利秋

    横山委員 私の言っているのはそういうことではないのです。酒屋さんを入れるならば、それに類似した関係のものがまだありはせぬかと言うておるのです。あなたがそれはないというなら、それでもよろしい。私はそういう業種があると見ております。その業種をなぜ入れてやらなかったか。あなたの胸の中に今あると思うのでありますが、その業種を言うてごらんない。
  137. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 そういう種類の組合を一切洗いまして、そうして酒の組合につきましては、酒類業の関係は、今の酒税保全の法難によりまして、それぞれ酒類業組合とか名前がついておりますが、そのほかの種類のものとしましては、調整組合というのがございます。これは通産省が所管いたしているものでして、業種としてはいろいろな範囲にわたっております。この調整組合と酒類業組合、これは目的が違いますから、根拠法令が違いますし、調整組合というものにつきましては業種は一々限定されておりません。従いまして、そういう限定されていない業種でありましても、調整組合である限りにおきましては、これを公益法人と同じように扱う。一切洗った結果としてわれわれはそういう結論を出したわけでございまして、他にこれによって不権衡になる組合というものはないと思っております。
  138. 横山利秋

    横山委員 その点については、また別の機会に、私どもが関連する業種について十分に聞いて参らなければならぬと思っておりますが、次に移りまして、法人税について若干質問いたします。今日まで政府は、しばしば私どもの主張いたしました大法人と中小法人の実効税率の相違について、さようなことはない、またさようなことは湾えるわけには参らないのだというふうに長く主張をしてみえたところであります。今回五十万円以下の法人の自民両党の修正案が出ました。政府はこれに対して賛成をなさっておいでになりますか。
  139. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 自民両党の修正に、政府として了承したわけであります。
  140. 横山利秋

    横山委員 政務次官にお伺いいたしますが、その賛成というのは、今日まで主張し続けてきました政府の所論を白紙に返す、中小企業の実効税率が大企業に比較して悪いということをお認めになった上のことでありますか。
  141. 藤枝泉介

    ○藤枝政府委員 私どもが前々から御質問お答えしておったのは、ただいま皆様方が言われるいわゆる傾斜減税というようなもののうちの相当部分は、中小法人でも適用できるのだ、現実に適用しておる人もある。従ってその傾斜減税恩典に浴さない中小法人の法人税を下げるということについては、私どもは賛成いたしかねるということを従来申し上げて参ったところであります。今後といえども、今の租税特別措置法によるいろいろな積立金その他による税制上の恩典は、中小法人にも十分利用していただくように指導すべきであると考えております。ただ今回の、法人のうちの五十万円未満の所得について税率を変えた方がいいのではないかという御意見について、もちろん提案者考えられた中には、中小法人の法人税の負担を軽くするというような意味もおありでございましょうけれども、全体としてとにかく五十万円未満の所得について法人税の税率を変えるということは、一つのアイデアと考えて、われわれはそれに対して承諾をいたしたのでありまして、ただ傾斜減税が大法人にだけあるのだから、そのかわりとして中小法人と申しますか、法人の所得のうちの五十万円未満の税率を下げるのだというような意味考えているわけではありません。
  142. 横山利秋

    横山委員 きわめてあいまいな答弁でありますが、もっと率直にこの点はやはりお答え願った方がりっぱに筋が通るし、中小企業としても、政府考えてくれたかというふうに私はさっぱりすると思うのです。問題は五十万円がいいか悪いかという議論も大いに残りますけれども、政府側が、今まで中小企業はやれるものをやらぬのだから、お前らが悪いのだ、こういう議論を今後重ねられるとしたならば、これはやはりお考えにならなければなりません。今まで言われてきたけれども、率直に自民両党の主張を取り上げて、中小企業の実効税率を下げる、こういうふうにさっぱりと態度を鮮明にせられることが、私は中小企業に対する政府の立場だと確信いたします。どうか一つあいまいな答弁をしないで、私は先ほど朝令暮改だといって怒りましたけれども、しかしいい方に考えを改めるはいいことだ。だから今まで言っておることは悪うございましたが、これからは一つ中小企業の立場に立ちまますということを明確になさることが私は必要であると思います。その方が政府のためですから、これは御勧告申し上げておきたいと思います。  それから提案者にお伺いしますが、五十万円という数字は一体どこから出た数字でありますか。これをお伺いいたします。
  143. 前尾繁三郎

    前尾委員 根拠のある数字と申し上げるわけには行きませんが、五十万円程度がいわゆる小法人と考えていいと思います。そうして御承知のように、資本金一千万円で一割の利益があるとして百万円ということになれば、五十万円までは三十五、あと四十を適用しますと、百分の三十七・五であります。そういう平均垣税率になってくるわけで、いわゆる累進的になるわけです。基礎控除のような考え方でありますから、ちょうど五十万円ぐらいで適当である、かように考えたのであります。
  144. 横山利秋

    横山委員 全国中小企業連盟やあるいは法人会の皆さんは、少くとも百五十万円だとか、あるいは二百万だとか、こういう点を主張しておいでになるのです。そうして政府側が、今私が御勧告を申し上げた気持を受け入れて下さるならば、もう少し五十万円という数字を延ばして少くとも百五十万とか二百万という数字を出しても何らさしつかえないのではないかと思うのです。今のお話では、やや腰だめ的な五十万ではありますけれども、議論の過程において、百五十万、二百万という数字は出なかったか、どうしてこういうことになりましたか。おそらく自民両党とも、百五十万、二百万という声は、中小企業の皆さんから十分聞いておられると思いますが、何がゆえに五十万というみみっちい数字を選んだかということをお伺いいたします。
  145. 前尾繁三郎

    前尾委員 こういう逓減率を作ることにつきましては、御承知のように従来から非常に議論のあところで、昨年でありましたか、事業税に初めてそういう方法をやったのであります。従って百五十万あるいは二百万というところを小法人と考えるかどうかということになりますと、私は個人的に考えましても、五十万というのがいわゆる小法人だと思っております。中小法人といえば、百万なり百五十万ということになるかもわかりません。しかしそれはやはり五十万が響いて、先ほど申し上げましたように三七・五というような低減した平均率になってくるわけでありますから、そこらの中の下の方につきましては、十分その影響がある。従って今回の措置といたしましては、修正案という一つの限界の設けられた案としましてはこの辺が適当である、かように考えたわけであります。
  146. 横山利秋

    横山委員 そういたしますと、五十万というのは小法人である、中法人には今回諸般の事情からできなかったのだ、簡単に言いますとこういうことでございますか。
  147. 前尾繁三郎

    前尾委員 中法人と申しましても、これは大法人に近い中法人もあり、また小法人に近い中法人もあります。従ってわれわれが普通に非常に気の毒だと考えておりますような法人は、大体において今度の措置によってかなりの恩典を受けるというふうに考えておるのであります。
  148. 横山利秋

    横山委員 先ほどかのらお話によれば、大体私が言ったように、五十万の小法人のことをやったというようになるのでありますが、それにしては、先般公けに承わった政府提案理由で、法人税の一部を改正する法律案に対する修正案におきましては、特に中小法人の法人税負担の軽減をはかるためにというこの文句は、少し僭越過ぎるきらいがあると私は思うのであります。卒直にあなたの御答弁のように、小法人に対して今回は考えたというふうに明確にされることが適当ではありませんか。中小法人を両方ともこれで救うんだということは、あなたの先ほど来の答弁から言いますと、常識上、中法人というふうに育った方がいいと思いますが、この五十万という数字では、その常識上の中法人に対して恩典が与えられぬ。あなたの方としてはやはり今回は小法人に対する措置であって、中法人はできなかったのであるということを明確にせられた方がいいと思いますが、この点はいかがですか。
  149. 前尾繁三郎

    前尾委員 資本金一千万円以下の法人を中小法人と言っておりますが、ただいま申し上げましたように純益に対しての税率でありますから、大体資本命一千万円以下の法人はこれによってかなりの恩典としての影響を受ける、かように考えているのでございまして、これは将来多々ますます弁ずでございましょうが、私はこの際としては、五十万は決してそう低きに過ぎるものであるとは考えておりません。
  150. 横山利秋

    横山委員 それでは提案者に、もう一度この法人税改正の基本的な考え方を承わっておきたいと思うのです。あなたの先般来の御説明を承わりますと、別に百五十万なり、二百万ないしはそれより若干上の中小法人に対する措置——その要求をいかぬというわけではないが、今日の情勢からいって五十万しかいかぬのだ、こういう説明のように承わりました。しかりといたしますならば、かねてから私どもが主張いたしておりました、大法人と中小法人の実効税率が相違する、従って中小企業に対する低減税率を設くべきであるという主張にあなたも御賛同なさったものと思うのです。かてて加えて、五十万というものは、今日としてやむを得ない措置であるから、将来においてもさらにその五十万を伸ばす用意をもってこの立案をされたと思うのでありますが、いかがでありますか。
  151. 前尾繁三郎

    前尾委員 これは先ほども申し上げましたように、多々ますます弁ずということが言えると思います。しかし繰り返して申しますように、いわゆる中小法人に対しましては、大体は三五%と四〇%の五%の開きがあるわけです。その間において累進税を盛っておりますので、第一段の措置としてはこの辺が適当じゃないか、あるいは実施の結果その他によりまして、今後それを引き上げていくかどうかということは、今後の問題としてわれわれも研究し、またその方向に努力したいと思っております。
  152. 横山利秋

    横山委員 この修正案は、個人の所得税率との均衡や財源の関係から十月一日となっています。先ほどの配当所得は四月からで、お金持ちには四月から、そうして小法人には十月から、これはまたいかなるものでありましょうか。かてて加えて、政府の原案としては七月一日からとなっているのです。修正案は十月一日からであります。そのために現在一律に四二%が、七月一日からはすべて四〇%になり、十月一日からは五十万円以下は三五%になる。まさに階段を一段、二段、三段と歩くわけでありまして、事務的に非常に煩雑でございましょうね。主税局長、どうでございましょうか。
  153. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 事務的なお話でございますから、私が申し上げた方がいいと思いますが、それは横山委員にちょっと誤解があるんじゃないかと思います。先ほど申した配当の関係は、事務と申しますと、とかく税務署あるいは国税局の事務というふうに聞えますが、実は納税者の方の方から見ましても、やはり非常にややこしく、不便なことになるということをわれわれ考えた上での事務と申し上げているわけであります。配当の場合におきましては、七月前に支払われた分と、七月以降に支払われた分と、現在株主総会の日を基準にいたしまして、この日に一応配当に対する所得が発生したということに扱っておりますが、さようにいたしますと、各株主が自分でもって一体株主総会が六月中にあったのか、七月以後にあったのか、一々これを調べた上で申告していただかなければならぬ。税務署の方におきましても、それを調べた上で一応確定申告の是非をきめなければならぬ、こういう点が非常にややこしいということを申し上げたわけであります。  今の法人税のお話でございますが、これは事業年度終了の日というのが一応はっきりしておりますから、事業年度が六月中に終了した分、あるいは九月までに終了した分、あるいはそれ以後に終了した分、これはそれぞれはっきりわかるわけです。会社の方にもよくわかりますし、税務署の方にもよくわかります。そういった意味におきまして、配当所得の場合に、とにかく年分課税をして、確定申告一つ課税をする場合に、その一部は控除が二五になり、一部は三〇になるというものとあっても、こっちの方は、とにかくいつまでに事業年度が終ったならば法人税の税率はどうなるか、これはやはり性格が違いますし、おそらく納税者にとっても、税務署にとりましても、両者の点は全然違った意味のものになってくる、かように思っております。
  154. 横山利秋

    横山委員 わかりますけれども、しかしそういうことは、私どもにはわかっても、国民の皆さんには常識的に受け取られますから、なかなか説明に困難です。卒直に申しまして、あなたの言うたことを私が選挙区なんかに行って説明しましても、そういうことでは国民は納得しない。常識的にいって、お傘持ちに関係する法律案は四月から、貧乏人に関係する法律案は十月から、こういうことにならざるを得ない。さらに一歩譲っても、それじゃなぜ政府原案と同じように七月一日からにせぬのかという議論も成り立ち得るわけであります。提案の趣旨は、個人との均衡や財源の関係というておられるのであります。そういう方は財源があって、ほかの方には財源がないという議論にやはりならざるを得ないのでありまして、この点も、多少のことはやはり事務に煩瑣であろう。納税者にいたしましても、煩瑣であっても、やはり税金が安くなることならばけっこうなんであります。十分に一つ考えを願わなければならぬと思うのであります。  時間がございませんので、またあとに春日委員も待っておられるので、最後に一つだけお伺いしておきたい。これは政府並びに提案者の方々に、今回の修正案を中心として将来どういうふうな考え方をされておるかということについてお伺いしたいのであります。すなわちこういうようなことをして、今いろいろ各委員会の審議模様を見ておりますと、補正予算が必至であるという話が国会のすみずみから始まりました。政府並びに提案者として、本年度の補正予算ないしは明年度の本予算の中で、すでに何かの形で増税を予想をしておる、こういう話しがあるわけであります。今回提案をせられた人々としてどういうふうにこの問題をお考えになっておりますか。こういうかっこうをもってやっておいて、あとで増税が今にやってくるという話しを方々でいたしておるのであります。政府は選挙に当って、税制の徹底的簡素化を中小企業減税低額所得者減税と、この三つを三大スローガンとして国民に訴えられたのであります。今回各種改正案を拝見をいたしてみますと、まず第一に、税制の徹底的簡素化というものは片鱗も今年度においては見られません。この点については、先般の委員会におきまして、政務次官から八月には審議会なり調査会なりを作って、明年度には準備をしょう、こういう約束は承わりましたが、本年度においては、選挙民の希望、意思というものは何ら顧みられなかったといわざるを得ないのです。また中小企業減税は、わずかに自足両党の五十万円という姑息な手段が出ましたけれども、中小企業の皆さんの希望ははるかにこれを凌駕して百五十万円、二百万円という線を希望をいたしておるところであります。また低額所得者減税につきましても、これは政府原案をもってしても、奧村又十郎委員の言をかりるならば、これはとんでもないインチキであるということになるのであります。また修正案を見ましても、早朝来私が申しておりましたように、これは目標が間違っておる。方法と手段が間違っておるということはおわかりになった通りであります。これらを考えてみて、しかも各委員会における今後の政府支出の予想を考えてみますと、増税ということを、すでに大蔵省当局なり今回この修正案をお作りになった皆さんは、胸奥深く秘めておられるようでありますが、国民のこの不安に対してどういうふうにおこたえになるか、明確に両者からお聞きをいたしたいと思います。
  155. 藤枝泉介

    ○藤枝政府委員 まず第一に、本年の予算につきましては、今回の修正を含めまして十分収支の均衡をとっております。従いまして、今後この予算に対して政府が補正予算を組むという意思は全然持っておりません。従いまして、また増税というようなことも考えておりません。それから明年以降の問題につきましては、なるほどいろいろ困難は出て参ります。いわゆる歳出の自然増もございまするし、また本年実行いたしました減税の平年度化もございまするから、差引いろいろとむずかしい問題は出て参ります。しかしながら私どもは、現在の税制を増税に持っていくというような考え方は持っておりませんので、財政の均衡を得るためには、他の方法をもって勘案して参りたいというふうに考えておる次第でございます。すなわち徹底的な経費の削減その他をいたしまして、収支の均衡をとりたいと考えておる次第でございます。ただ、ただいまもお話しのありましたような税制の簡素化、あるいは体系の整備というような意味におきまして、先般の委員会お答えをいたしましたように、今後税制調査会等を設けまして、税制の徹底的な体系化、簡素化をはかる諮問をいたしたいと考えておる次第でございまして、単に増税をしようというような考え方を持っておることはございません。
  156. 前尾繁三郎

    前尾委員 提案者におきましても、将来の増税というようなことはもちろん考えておりません。ただ根本的な制度といたしましては検討し、よりよき制度にいたしたいということは考えております。従って今回の措置も、臨時措置として一応出しておる次第であります。こういうものをほんとうに本法に織り込み、あるいは将来の制度として確立していきますには、いろいろ検討が必要だと思っております。ただ増税ということにつきましては、全然考えていないのであります。
  157. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 今回の自民両党の修正案でございますが、これは御承知のごとく、自由党の方から、本年度は大いに貯蓄を奨励して、そうして公債を発行する、従ってこの公債を消化するために集まった貯蓄を天引きをする、こういう考え方だったのです。そのボリュームといいますか、その公債の量をどうするか、また公債というようなものを発行するかどうかという点につきまして、両党の間に非常に議論があったのでありますが、ともかく歳出を大いに減らし、そうして国民の負担を軽くして、貯蓄を伸ばすところの機会を国民に与えて、そうしてこの貯蓄の力によって国の政策を行なっていくんだという点につきましては、これは自局両党一致した見解なのであります。それでありまするから、今後さらに減税をできる限り推し進めるという点につきましては、両党の思想は一致いたしておるのでありますが、増税をどこかに予定しておるというようなことは毛頭あり得ないことであります。この点はっきり申し上げておきます。
  158. 横山利秋

    横山委員 けっこうであります。政府並びに自民両党の代表者が、増税をさらさら予定しないということは、かたく記録にとどめておかれることと思います。願うならば、選挙に当って増税をしないといいながら、ガソリン税の増税をしようとしたり、そういうようなことは、今後は二度と起らないように十分御留意を願いたいと思います。  最後に希望を申し述べておきたいと思うのですが、税制調査会を八月にお作りになる際に、各層からそのメンバーを出していただきたい。特に中小企業労働者、農民も、実際に負担をしておられる階層から出して、真に働く者の声を聞く機会を設けて、民主的におやりにならんことを特に希望をいたしておきます。また多少あるのでございますが、時間もございませんので、次の機会に留保して、次の方に譲ります。
  159. 松原喜之次

    ○松原委員長 春日一幸君。
  160. 春日一幸

    ○春日委員 この配当控除制度を中心といたしまする租税措置法に関連しまして、まず提案者に、徴税制度に対する基本的な理念をいまやたださければならない時期に至ったと思うのでありまする。あなたは、かつてわが国の徴税行政に責任を負われた方であるのみならず、特に今回はこの修正案提案責任者として、徴税のあり方はいかにあるべきであるかということについて、むろん相当の見識をお持ちであろうと思うが、そこで私は伺いたいことは、税金は、所得のあるところに課税をしていく、そうして担税力の最も高いところからとっていくというのが基本的な理念でなければならぬと私は考るが、この税制改革の各般を通じてわれわれが受ける印象は、それとはなはだ逆行するきらいなしとしない。一体前尾さんは、徴税の根本的な理念というものをどういう工合に考えておられるのであるか、まずその点を一つこの際お述べを願いたいと思います。
  161. 前尾繁三郎

    前尾委員 課税の原則は、所得の多い者に対して、担税力のある者に対して課税をする、これはもう変らぬ原則であり、われわれもこれを否定しているわけでは決してないのでございます。またできることでありましたら、租税の政策の中に他の要素をあまり入れることは、私個人としては決して好ましいとは思っておりません。しかし御承知のように、現在の日本の経済状態というものは、敗戦の結果全く非常なかたわになって、不正常なものであります。従ってわれわれが従来考えておりました平常の場合の租税原則そのままを貫き得ないということは、当然のことであります。ことに私の個人的な考えといたしまするなら、できるだけこの際は、世界の各国がとっておりますような政策は織り込んでいくということを考えておるのであります。従って、今回の政府の原案にあります利子の全面的な課税免除、あるいは配当所得に対する問題につきましても、これはできれば避けたいものである。しかし先ほど来、非常に今まででもよ過ぎるじゃないかという御議論もありますが、遺憾ながら国原の要請されておるように資本の蓄積ができぬというので、なおさらにこれだけの優遇措置を講じなければ目的を達せぬという見地に立ちますと、従従来の平常な租税政府策とは多少異なっておりますことはやむを得ない、かように考えております。
  162. 春日一幸

    ○春日委員 あなたは、所得のあるところに課税し、租税力の強い者に対してできるだけ負担をしてもらう、これは徴税方式の基本的なあり方でなければならぬと言っておられる。ところが今度のこの配当控除額の引き上げ措置というものは——配当は資産から入ってくるところの不労所得である。そういう不労所得の源泉を持っておる者は、当然これは担税力の最も高き者といわなければならない。そういう担税力の最も多き者に特に減税をせなければならぬというような天下国家の椿事というものは一体何であるか。これは、あなたの理論となされることと実際とはあまりにも隔たり過ぎておって、それでは理論になりません。  そこで渡邊主税局長に尋問したいが、この制度によって、扶養家族が四人の者、夫婦、子供三人の場合、現行法では幾らまで無税であるか、政府改正案では幾らまで無税になるか、さらに自民両党の修正案で幾らまで無税になるか、その限度額をこの際お示しを願いたい。
  163. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 今すぐ計算しましてお答えいたします。
  164. 春日一幸

    ○春日委員 それでは私が教えますから、われわれの調査政府の資料とどちらが正確であるかをただしたいと思うが、すぐわかるか、それとも相当時間がかかりますか。
  165. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 すぐわかります。四、五分お待ち下さい。
  166. 春日一幸

    ○春日委員 それでは夫婦、子供三人の場合、旧法によりますと配当年額七十万円以内では税金がかからぬ。それから政府改正法ではそれが八十四万円までかからぬのであります。ところが今回の前尾・福田案というものによりますと百二十二万円までは無税である。こういう工合にわれわれは計算をいたしておりますが、果してその通りであるかどうか、御答弁願いたい。
  167. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 改正案による場合において八十四万という数字は、先ほど申し上げた通りその通りでございます。あとの数字につきましては、ただいま計算しましてすぐお答え申し上げます。
  168. 春日一幸

    ○春日委員 修正案政府が大体承認をした段階において、当然その免税点の限界、非課税の限界くらいのことは、計算もむろんされていることであろうし、少くとも主税局長の脳裏に刻みつけられておらなければならないところの欠くべからざる数字一つだと思う。そんな重要な数字すら全然御記憶にないということは、まことに遺憾千万に存じます。問題は、これは非常に複雑でありまして、徴税学説の根本にまでさかのぼって参りますが、これは前尾さんに責任のある問題である。シャウプ税制勧告をまるのみにしてしまったのはあなたであると思うのだが、いずれにしても弱い者には強い、強い者には弱いところの自由党が、アメリカのこの強い勧告に無抵抗に屈してしまって、日本の税制を混乱に陥れた元凶は前尾当時の主税局長でありはしないかと思うのであります。そもそもわが国の徴税は、大正九年から昭和二十四年、これに変るまで法人実在説によってこれが徴税されて参ったのであって、当時何ら異論というものは生じてはいなかった。すなわちこの株式投資ということは、別の名前で俗に有価証券投資と言っておった。これは不確定利付債券と称せられたものであって、こういうようなものは、法人擬制説と根本的に相いれない性格のものであった。このことは前尾さんも当時の経緯をよく御承知のはずであろうと思うわけであります。いずれにしても不労所得百二十二万円まで全然税金をかけないのであるが、これは不労所得であります限り、それだけの資産というものがある、税金の源泉というものがそこにあるのだから、担税力が十分にある。今勤労所得者に対する夏季手当——これは一つ御理解を願わなければならぬ、むしろ懇請をしなければならぬと思うのでありますが、いずれにしましても、今勤労者がやがて迫り来る三伏の夏を越すことのために多くの費用が要ります。暑さに耐えて家族を養っていくということは容易なことでない。そういう三伏の夏を越し、厳寒の冬を越すという節季手当に対してかけるところの税金減税してくれという要求が、昨年の暮れから強く政府にも行われ、特に自民両党に対してわれわれ社会党両派から強く要請されている。彼らはむしろ担税力があるないという問題でなく、そういうようなものに課税すべきではない。正月のもち代に税金をかけるという非常識なことが現在行われておるのです。暑くて耐えられないので、それでカッターのシャツを買うとか半ズボンを買うとか、そういうような手当に対して現在は税金がかけられておるのですよ。財源がないからそういう免税ができないと言うてあなた方は、その同じ立場において、百二十二万円までの不労所得に対して税金をかけないような処置を講じようといたしておる。これはあまりにも残酷ではないか。良心の一片だにあれば、もう少し御反省願うか、われわれのこの夏季手当に対する要求に対して少くとも一つ胸を開いて、この配当控除の特別措置と権衡を保たしめるための措置に出る意思はないかどうか、この問題は、先般来あなた方両党の大蔵委員会理事諸君にわれわれが三顧の礼をもって陳情これ努めておるような事柄であり、当然両責任者に対しても連絡があったことと思うのでありますが、この問題に対しまする前尾さん、蒲田さんの御意見は、今どの方角に向っておるのであるか、今ここで断定的な御意見を承わろうとは思わぬが、とにかく利子課税は今回全廃されようといたしております。一億円の利子を受ける人にも一銭も税金はかからないという制度です。これはあまりに不当であるというので、われわれが伺っておりましたところによると、自由党はそんなむちゃなことができるか、従って三十万円の限度額をきめて、それ以上のものはやはり課税の及ぶような方式にしようという強い主張が新聞に報道されておったが、いつかこのような主張も影を没して、遂に妥協が成ってしまって、利子に対しては全面的に非課税ということになってしまったわけなのです。今申しましたように、この配当控除にしても、それから利子全免の問題にしても、資本蓄積さえできればほかのことはどうなってもいいという、これはあまりにひどいやり方であると思われるので、この際低額所得者、わけて給与所得者に対する何らかのフェーヴァを講じなければならぬ段階にあると思うのでありますが、ただいま申しましたこの夏季手当、期末手当に対する税の軽減措置については、両代表はどういうぐあいに今お考えになり、検討をお進めいただいておるか、この点一つ御理解のあるところをお示し願いたいと思うのであります。
  169. 前尾繁三郎

    前尾委員 最初にお断わりしておきますが、私は別にシャウプの言う通りにしたのではなしに、私が主税局長当時には、御承知のように総司令部と税制について非常な意見の衝突をいたしまして、そのために役人をやめて国会議員に出たのでありまして、全く正反対でありますから、御訂正願いたい。またシャウプの来ましたあとの税制につきましては、私はもうすでに国会議員に出ておりまして、いろいろ意見はありましたが、賛成をいたした次第、これは法人擬制説、独立課税説両方議論のあるところで、どちらをとるのがいいかということについては一朝一夕に断定するわけにはいかぬと思います。しかし現在の配当に対する課税というのは、配当控除なんかの制度を見ますと、やや中間的な行き方をしておることは事実であります。  ただ、現在百数十万円もの配当があるにかかわらず全然課税せぬのは下都合じゃないかというのでありますが、その点については、先ほど来申しておりますように、決して好ましい制度だと思っておりません。しかし現在の正常でない資本の蓄積を非常に必要とする現状におきまして、ことに不労所得と申しておりますが、御承知のように敗戦後財産税その他によって一応はすべて洗われてしまったのでありまして、その後において蓄積したものであるとすれば、これは不労所得と申しましても、その前において相当努力をしなければこれだけの金が蓄積されるわけじゃない、しかもそれが政府考えておりますような、また国か要請しておりますだけの預金の吸収ができぬ、あるいは自己資本ができぬという際でありますので、これは非常の立法として臨時的にこういう措置をやりますこともやむを得ないと思います。  また先ほど来お話の期末手当の非課税の問題でありますが、これにつきましては、全く手続的な問題で私は否定しなければならぬと思います。というのは、夏季手当あるいは年末手当というようなものに課税しないということになりますと、給与の支給方式を変えまして、そして課税を不合理に曲げて減税をするような脱法行為が行われるということがありますので、なかなか期末手当なり、あるいは年末手当を非課税にするということはにわかに賛成できない状況であるのでありますが、これは全く手続といいますか、技術的な問題としてできない、かように考えておる次第であります。
  170. 福田赳夫

    ○福田(赳)委員 ただいま前尾委員が答えたと同じでありますが、要するに勤労所得が税法上またその適用上問題のある点につきましては、全く私もそういうふうに考えておるのです。今後何とか国の費用を節して、そして財源ができるというような際に取り上げらるべき大きな方向は、その問題じゃないかというふうに考えております。ただ当面しておる夏季手当の問題は、技術的に非常に困難なので、私どもはこの夏ごろから税制調査会を設けますが、そういう際の総合的問題の一つとしてお残し願いたい、かように考えております。
  171. 春日一幸

    ○春日委員 私はこれはなかなか納得いたしかねます。と申しますのは、前尾さんが理解いたしがたいと述べられた理由の中に、そういう制度をとると、給与外の手当を出していない企業体が、給与を低めて給与外の手当として出すような形になってくるかもしれないので、そういうような制度をとることは給与体系に関連する問題として反対であるというようなことを言っておられました。しかしながら、それが根本的な理由であるといたしますと、これは一つ前尾さんに申し上げておかなければなりませんが、先般来主税局がこれについて調査した資料によりますと、大体期末手当、すなわち給与外の手当を出しておるという企業体は、企業体総数の八〇%であると言われております。すなわち八〇%といえば、これはもうほとんであるということも言うて言えないことはないと思うのでありますが、まあ四捨五入すればこれは一〇〇%ということになります。そういうような次第で、今や給与外の手当を夏季並びに年末において支払うということは、現実の問題として、その大部分の給与所得者にわたって適用をされ得る事柄であり、あるいはまた御指摘のように、そういう倒産ができることによって、今まで給与外の手当を出していなかった企業体にそういう影響を与うるとしたところで、それは全体の二〇%のことであり、しかも官庁を初めといたしまして、給与以外にそういう季節的な手当を出さなければならないという事柄は、今取り残されておる二〇%の諸君に刺激を与えて、そういう事柄がさらに拡大されていったからといって、別にこれをとがむべきことではないと私は思うのであります。そういうような意味合いにおきましても、この夏季手当、これは今や必ずしも夏季とは限らないで、期末手当をも含めて、そういうようないわば季節を越すに必要とするところの純粋の生活経費、こういうものの最低限、すなわちわれわれが今指摘いたしておりますのは、五千円を限度とするものでありますけれども、その程度のものに非課税の措置を講じていく、そうして一方田大蔵大臣の言うところの低額所得者の税負担の過重を少しでも軽減するという実際的の措置を一つ講じていってもらいたいと思います。いずれにいたしましても、この問題は、今なお私ども大蔵委員会の理解ある委員諸君との間において、さらに深く検討を加えておりますし、今外におけるあの万歳の声もやはりこの事柄に大きく関係しておりますので、十分両党内におきまして、一つ理解ある措置を講ぜられたいことを強く要望いたしておくものであります。  次に進んで、法人税についてお伺いをいたしたいと思うのでありますが、これはどう考えてもあまりに思いつきである、即興的である、科学的基礎というものを発見し得ないのであります。これはわれわれの大いに意見の存するところであります。そもそも中小企業法人と大法人との間に段階を設けよという主張の根底には、次のような事情があるのであります。それは、大企業法人は現行租税特別措置法の各項目のフェヴァを受けて、その減税実額は、これは計算者によって多小の開きはありますけれども、六百五十億ないし八百億という減税が行われておると言っております。ただいま前尾さんの御答弁によりますと、中小企業法人といえども、租税措置法の恩典は受けようと思えば受け得られるのではないかという御答弁がありましたが、これは実情をお調べになっていないのもはなはだしいものと断ぜざるを得ません。と言いますのは、先々月でありましたか、主税局で資料を作ったことがある。それは関東一円の税務署について、中小企業法人なるものが一体どの程度この租税特別措置法の適用を受けておるか、こういう資料があげられたことがありますが、それは一〇〇%の企業体の中において、租税特別措置法の適用を受けておりますところの企業体は、たしか二八%か三〇%しがなかった。すなわち七〇%にわたるところの中小企業法人は、租税特別措置法恩典を現実に受けていない。さてそこで問題は、それらの七〇%の中小企業法人がみずからその特権を放棄したのか、あるいは受けようとしても受け得られないのであるか、私は問題の分岐点はここにあろうと思うのであります。たとえば一つの項目を探し出してみましょう。その中のまず退職準備金引当金、これが損金控除になりますけれども、退職準備金を控除しようとしましても、退職する者のないような零細法人もあるだろうと思う。従業員をあまり雇っていなければ、そんなものを控除して積み立てようと思っても、積み立てようがない。あるいは東京都内において、非常募金積立金とか、違約損失準備金とか、特別修繕費とか、比較的普遍性のあるものとしては価格変動準備金とか、あるいは貸し倒れ準備金というようなものがあると思うが、いずれにしても、中小企業法人として適用を受けようと思ったところで、それはまあ精一ぱいやったところで、たかの知れたものです。現にそういうような恩典があるということを知りながら、その絶対額がきわめて少額なものであるから、やらない。全体として三〇%前後のものしかないという、この計数が明確にそれを証明しておると思うのであります。問題は、大企業法人はこの租税特別措置法の適用を受けることによって、実際の課税額はおおむね三〇%あるいは二五%と指摘する人もあるわけであります。中小企業法人はそういう適用を受けていない。受けようと思っても、受け得れない立場にあるのであります。従って大企業中小企業との権衡をはかるためには、税率でもって段階をつけるのが公正なあり方だという主張に立って、こういう中小企業法人に対しては、三〇%にしようとか三五%にしようとかいう主張が行われておるのであります。ところが今回のあなた方の修正案によりよすと、大企業法人についても、一律に五十万というものは三五%にしてと、まあこういうことになっておりまするけれども、これは段階をつけるという、その出張の条件を何一ついたしていないものであると思うのであります。  そこで前尾さんに伺いたいことは、現在租税特別措置法というこの制度はあるが、一体この制度の適用を受けておるところの大企業法人と、受けていないところの中小企業法人との間に、何らかの権衡をはかっていく必要はあるかないか。この点についてどういうような検討をされましたか、一つ答弁願いたいと思います。
  172. 前尾繁三郎

    前尾委員 租税特別措置法にありますいろいろな措置は、御承知のように、いろいろ特定の目的を持っております。小法人なるがゆえに、特別の措置をしなければならぬというような一般的なものではなしに、個々に輸出振興とか、あるいは特別の退職金の問題は、人数が少ければ少いなりに積み立てればいいので、小法人だから積み立てられぬというものでは決してないのであります。いずれにしましても、個々に具体的な目的を持っておる次第であります。現在小法人が、その租税特別措置の恩恵をあまり受けておらぬというのは事実であります。これは確かに最初——一昨年でありましたか、この輸出免税なんかの措置をしました当時には、下請を入れなかったりいたしておりましたから、その範囲が非常に限定されておりまして、小法人に恩恵が少かったのは事実でありましょうが、これらの税務行政と両々相まって、小法人も適用を受けるような方向にそれぞれ持っていかなければならぬ問題だと思います。われわれが現在出しております、小法人に逓減税率が適用されるということは、一般的な観点からしまして、純益の少いものに対しては逓減税率を使おう、五十万円という数字は、現在資本金五百万円以下の小法人の平均純益が五十万円くらいになっておるようであります。従って五十万円にすれば、平均的には三五%の税率で済む、こういうことに相なりますし、また先ほど申しましたように一千万円の資本金で百万円の所得があれば、三七・五%で済む、こういうことに相なりますから、現在のやり方といたしましては、五十万円くらいが適当である、かように考えまして提案をした次第であります。
  173. 春日一幸

    ○春日委員 ただいま前尾さんは、租税特別措置法はそれぞれその項目別の目的があるものであって、理由の別個に存するものであると言っておられるが、それはわれわれも当然認めておるのであります。ただ結果的に、租税特別措置法恩典を受けておるところのものは大企業、大法人にあまりに片寄り過ぎて、中小企業法人はその恩典を受けていないようであります。そうして中小企業を助長するとか育成するとか、こういうことは何も唐突にわれわれが独断で言っておるのではなく、これは天下、国家の輿論であります。地方行財政の全面を通じ、中小企業というものを育成強化していかなければならぬ、こういうところに現在の施策は向けられておると思うのであります。そうだとすれば、輸出の振興の項目とか、あるいは炭鉱を保護するとか、あるいは保険会社を保護するとかいう、これと同じようなウエイトでもって中小企業というものを保護育成するということは考えられ得ることであります。従ってこれは全面的にいえば、むしろ租税特別措置法みたいなものであると思うのだが、中小企業を保護育成するという意味では、中小企業に対して特に資本の蓄積を行わしめて、そうして彼らの自己資本を確保していく、こういう立場から考えますならば、中小企業という一定のカテゴリーの中において、そういうものに対して税率の軽減を行うということは、これは当然主張にかなったことであり、理由もきわめて明快なることであろうと思うのであります。私はそういう立場に立って、中小企業法人に対する特別の段階を期するということであるならば、あなた方の提案のような、一億円の所得がある人に対しても最初の五十万円だけは三五%をかけるというような、こんな冗談みたいな提案というものは生まれてこないと思うのです。あなたも主税局長などやっていろいろと学がおありだろうと思うが、私はこの点もう少し理論にかなった措置を提案されてこないと、われわれ社会党の了解を得るなどということはとてもできるものではない。今朝来いろいろと高邁な識見について述べておきましたから、これをよくなお一々反芻翫味されまして、いずれ火曜日から引き続いてまた質問をいたしますから、もう少し的確な権威のある御答弁をせられるよう勉強して、次の委員会にお臨みあらんことをお願い申しまして、私の質問を留保いたしておきます。
  174. 奧村又十郎

    ○奧村委員 政府委員の方に資料をお願いしておきたいと思います。それは、政府の案によっての勤労所得者、あるいは申告所得者減税の割合などの資料がたくさん出ております。今度のこの民自両党の修正案によっての減税がどうなるか。独身者あるいは扶養家族三人の場合はどうなるかというふうな減税の資料をお作りになってお出しを願いたいのですが、お願いできますか。
  175. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 今度の修正案の、今奧村委員のおっしゃったのは選択控除の問題になるかと思います。従って選択控除の場合におきましては、いろいろな想定が入らざるを得ない、といいますのは、各人によって相当事情が違いますから、ある程度平均的な想定を織り込まざるを得ないと思います。その辺を御了承願いますれば一応お作りいたします。
  176. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私は言葉が足らなかったのです。今回の選択控除の、つまり五%控除を受けたものとしてどう減税になるか、資料をお願いしたい。
  177. 松原喜之次

    ○松原委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は来る二十一日火曜日午前十時より開会することといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十六分散会