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1955-05-19 第22回国会 衆議院 大蔵委員会 第9号 公式Web版

  1. 会議録情報

    昭和三十年五月十九日(木曜日)     午前十時五十四分開議  出席委員    委員長 松原喜之次君    理事 加藤 高藏君 理事 内藤 友明君    理事 大平 正芳君 理事 奧村又十郎君    理事 横路 節雄君 理事 春日 一幸君       有馬 英治君    宇都宮徳馬君       杉浦 武雄君    中山 榮一君       夏堀源三郎君    坊  秀男君       前田房之助君    森下 國雄君       山本 勝市君    淺香 忠雄君       川野 芳滿君    黒金 泰美君       小山 長規君    薄田 美朝君       古川 丈吉君    石村 英雄君       石山 權作君    木原津與志君       横山 利秋君    井上 良二君       川島 金次君    田万 廣丈君       平岡忠次郎君    町村 金五君  出席国務大臣         大 蔵 大 臣 一萬田尚登君  出席政府委員         大蔵事務官         (主税局長)  渡邊喜久造君         大蔵事務官         (銀行局長)  河野 通一君  委員外出席者         農林事務官         (食糧庁総務部         長)      新澤  寧君         専  門  員 椎木 文也君         専  門  員 黒田 久太君     ――――――――――――― 五月十八日  委員福井順一君及び水谷長三郎辞任につき、  その補欠として保利茂君及び春日一幸君が議長  の指名で委員に選任された。 同月十九日  理事春日一幸委員辞任につき、その補欠とし  て同君が理事に当選した。     ――――――――――――― 五月十七日  減税政策に関する陳情書  (第一〇五号)  オーバー・ボロウィング解消対策確立に関する  陳情書  (第一三三号)  揮発油税すえ腰巻に関する陳情書  (第一五九号)  同  (第一七二号)  昭和三十年度税制改正に関する陳情書  (第一六〇号)  門司税関下関出張所を支署に昇格の陳情書  (第一六一号)  同(第一七三号)  証券投資信託に対する税制改正に関する陳情書  (第七一号)  昭和三十年度道路予算並びに地方道路税制度に  関する陳情書  (第一九  二号)  洋紙に対する物品税撤廃に関する陳情書  (第一九三号) を本委員会に送付された。     ――――――――――――― 本日の会議に付した案件  理事の互選  農業共済保険特別会計歳入不足をうめるた  めの一般会計からの繰入金に関する法律案(内  閣提出第七号)  昭和二十九年の台風及び冷害による被害農家に  対して米麦特別価格売り渡したことにより  食糧管理特別会計に生ずる損失をうるための一  般会計からの繰入金に関する法律案内閣提出  第八号)  漁船再保険特別会計における給与保険の再保険  事業について生じた損失をうめるための一般会  計からの繰入金に関する法律案内閣提出第九  号)  臨時通貨法の一部を改正する法律案内閣提出  第一〇号)  あへん特別会計法案内閣提出第一一号)  所得税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一五号)  法人税法の一部を改正する法律案内閣提出第  一六号)  国民金融公庫法の一部を改正する法律案内閣  提出第二一号)  日本輸出入銀行法の一部を改正する法律案(内  閣提出第二八号)  地方道路税法案内閣提出第三一号)  輸入品に対する内国消費税徴収等に関する法  律案内閣提出第三三号)  国税徴収法の一部を改正する法律案内閣提出  第三四号)  砂糖消費税法案内閣提出第三五)  昭和二十八年度昭和二十九年度及び昭和三十  年度における国債整理基金に充てるべき資金の  繰入の特例に関する法律の一部を改正する法律  案(内閣提出第三六号)  租税特別措置法等の一部を改正する法律案(内  閣提出第四一号)  厚生保険特別会計法等の一部を改正する法律案  (内閣提出第四六号)  開拓者資金融通特別会計法の一部を改正する法  律案内閣提出第四七号)     ―――――――――――――
  2. 松原喜之次

    松原委員長 これより会議開きます。  まず理事補欠選挙についてお諮りいたします。理事でありました春日一幸君が去る十六日に一たん委員辞任いたしたことがありますので、理事一名が欠員となっております。この際理事補欠選任を行いたいと存じますが、これは先例によりまして、選挙手続を省略し、委員長より指名いたすに御異議ありませせんか。   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  3. 松原喜之次

    松原委員長 御異議なしと認めます。それでは委員長におきましては春日一幸君を再び理事に指名いたします。     —————————————
  4. 松原喜之次

    松原委員長 次に農業共済保険特別会計歳入不足をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案外十六法案一括議題として質疑を続行いたします。井上良二君。
  5. 井上良二

    井上委員 大蔵大臣が見えますまで、暫時事務当局に質問いたします。政府は、今まで日本の食糧の絶対不足の現状から、供出義務割当制を採用してきたのありますが、この義務供出制度を廃止いたしまして、今度は予約売り渡し制を採用する、こういうことに改めることになったようでございます。そこで予約売り渡し制を採用します場合問題になりますのに、米価の問題がございますが、ここの米価と並んで奨励金及び永久の免税の問題がからんでくるのであります。そこで事務当局に伺いたいのは、予約売り渡し制を採用いたしましても、依然として端境期における時期別価格差早場米に適用するつもりでございますか。それからもう一つ伺いたいのは、この予約売り渡し制を採用いたします場合、大体三十年度政府の買い入れいたします予想買い入れ石数はどのくらいで、そのうち早場奨励金による買付米はどのくらいを予定されており、またその奨励金はおよそどのくらいを予定いたしておりますか、これをまず伺いたいのであります。
  6. 新澤寧

    ○新澤説明員 お答え申し上げます。新しい制度に伴いまして、本年度からは米価考え方を、従来は基本米価奨励金と二つになっておりましたものを、この奨励金というものを今年はやめまして、全部米価でいきたい、こういう考えをただいま持っておるわけであります。従いまして、早場米につきましても、従来の早期供出奨励金という意味合いのものはやめる考えでおります。しかしこれは、端境期には当然需給事情に相応いたしました価格というものがいかなる時期にも当然想定しなければならない意味合いのものでございますので、そういう意味合いにおきまして、従来の早期供出奨励金、あるいは過去におきまして実際にありました季節別価格差等を考慮いたしまして、端境期における季節もしくは時期別の価格差というものを新たに設定して参りたい、こういうふうに考えておるわけでございます。  また新しい制度によりましての三十年度におきまする予定集荷数量でございますが、これは実は今種々検討いたしておるわけでございますが、大体従来の政府の買い入れました数量、あるいは今後現行配給制度を維持いたしていきますについての必要数量等を勘案いたしまして最終的にはきめたい、本月末から来月早々にかけまして予約制度実施に伴いますあらゆる条件をきめて参りたいと思っておりますが、そのときまでには、この数量もはっきり目標数字を立てて参りたいと思っております。また従来の早期供出奨励金に該当する数量でございますが、この新しい制度になりましても、大体従来と同じくらいの数量がこの期間に出てくるのでは血いかというふうに考えておりますが、従来の例によりますと、大体八百万石前後のものが十月までの間に出ております。本年度におきましても、それくらいの数量を想定していかなければならないものと思っております。ただ従来の早期供出奨励金相当いたしますものについては、ただいま申し上げましたような意味合いで、新しく時期別価格差を設定いたして参りたいという考えでおりますので、奨励金総額という意味合いのものは、現在のところ予算面としては別に計上いたしておりません。この時期別価格差と時期別の予定数量をかみ合せてこの金額が出てくるのでございますが、価格の方は先ほど申し上げましたように、全体の米価決定の際にあわせて決定いたすということにしておりますので、現在のところまだ時期別価格差を確定的にきめておりません。従って金額的にも、ただいまこれが幾らくらいになるだろうかということはまだ申し上げられないわけであります。
  7. 井上良二

    井上委員 そうすると、従来の早場奨励金はこれをやめて、時期別価格差によって買い上げていく、こういうやり方に改めるということであります。ところが最近政府が各地方庁に出しました通達の中に、集荷促進協力費として奨励金手数料を支払う、これは別途に考えるということが響いてありますが、この集荷促進協力費としての奨励金とは何を意味しておるのですか。これは予約売り渡し意味奨励金でありますか。そうだといたしますと、予約売り渡し見込み石数は一体どのくらいか、予約売り渡しに登録をされて参りますか、この予約売り渡し見込石数及びそれに基きます売り渡し奨励金というものはどれくらいを予想いたしておりますか。
  8. 新澤寧

    ○新澤説明員 ただいま協力費お話がございましたが、現在新しい制度に伴いまして私どもの方で考えておりますのは、従来集荷委託費という形で各地方庁、あるいま各農業団体等に支出された金額がございましたが、それは今後は、従来の供出割当という形がなくなりましたので、従いまして集荷業務地方庁委託をするという関係がなくなりましたので、委託費というものは、今後の新しい予算ではなくなったわけでございます。ただ新しい制度に移りましても、地方庁の方、あるいは各農業団体等には、この新しい集荷制度の運営につきましては多大の御協力を仰がなければなりませんので、それに対していろいろ活動の費用が必要とされるわけでございます。そういう意味合いにおきまして、従来の集荷委託費相当いたしますものを協力費という名前で出すことにいたしておるわけでございます。それが協力費でございます。  そのほかに新しい制度に伴いまして、集荷団体活動を促進いたしますために、単に集荷事務上の手数のみならず、いろいろ集荷につきまして従来以上の活躍を必要といたしますので、集荷団体等に出します金額につきまして、従来の手数料相当するもの、それから集荷団体活動を促進するための奨励金的なものをあわせ考えまして、集荷団体相当金額を交付するという考えでおるわけであります。これは集荷団体活動を促進するための手数料であり、あるいは活動促進奨励金でございまして、予約を集めるためのいわゆる農家に対しての集荷奨励金というものではないわけでございます。ただ農家に対しましては、先ほど申し上げましたように、価格の一本化という意味合いにおきまして、奨励金という名のついたものは出ないわけでございますが、予約をできるだけたくさんしていただくという意味合いにおきまして、予約に基いて売り渡しました場合と、そうでなくて売り渡した場合におきましての価格の点については、これは若干の区別をして参りたい、こういうふうに考えておるわけでございます。
  9. 井上良二

    井上委員 そうすると、今年は、この予約売り渡し制度が採用される場合は、奨励金は全然出さない、こういう考え方のようでございますが、そうしますと、昨年度産米で早場米供出が二千百万石、この奨励金額が七十九億六千五百万円、超過供出石数が五百二十八万七千石、これに関係する奨励金が六十七億六千八百万円、この奨励金がそれぞれ免税措置が講ぜられまして、二十五億の免税になっておる。この奨励金総額で約百四十億ほどになろうかと存じます。これに税金を加えますと百七十億くらいに達するのですが、この農民負担軽減のためにとりました措置は、今度の新しい制度では一体どう合理化しようとお考えになっておりますか。
  10. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 税の問題でございますから、私の方からお答えすべきものと存じます。お話のように早場米奨励金超過供出奨励金につきましては、従来議員提出立法でございましたが、ここ数年税の方を負けております。今度そうした奨励金をやめました。しかしそれではそうしたものをほんとうの意味で全然なくして、値段を一本にしてしまうかというと、そうではなくて、いわば奨励金という名前で出ましたものを価格の方に織り込むといったような意味措置として全体を持っていこう、こういう考え方になっているわけでございますので、従来国会の方で何回か御提案になりまして税金を負けてきた、そうした御趣旨にもかんがみまして、今大蔵省農林省で話し合っておりますが、そうした供出米につきまして、何らかの一部免税措置といいますか、従来免除していたと大体同じ程度免除額になるような免税措置考えたいということを今研究しております。予算におきましても、これはこの委員会ではまだ御説明申し上げませんでしたが、予算総会で実は御説明申し上げておきましたが、農業所得としてわれわれの方で一応見積ってございますのは、石当り米価が九千百二十円、昨年の九千百二十円の数字を一応そのままとっております。これは昨年の基本米価と同じ数字でございます。本年は一応予算書では、俵込みでありますが、九千七百三十九円、俵代をどういうふうに計算するかで多少これは違いますが、一応そういう数字予算を積算してございまして、予算通りまりましたとしても、そこに相当開きがあるわけであります。大体その開きによる税の——そのままであれば、そこに相当税収入の増加があるわけでございますが、それを大体一応の財源的に頭に置きまして、九千百二十円程度になる減税考えていきたいということを農林省と今相談しております。ただ具体的にどういうふうにやるかという問題につきましては、これは農林省の方で米価のきめ方をどういうふうにきめていくかという問題でございます。今の早場米米価をどうきめるは、あるいは予約の分かどうして、予約外の分はどうする、こういう問題とからみ合いますし、また同時に保有米値段を一体どういう値段で決めるべきか、こういう問題ともからみ合うわけでございまして、その辺の点をさらに両省でよく話し合いました上で具体的に案を作りまして、これは一応本年度臨時立法としまして御提案申し上げて、当委員会の御審議を得たい、かように考えております。
  11. 井上良二

    井上委員 そうしますと、現実にまだ米価がきまらないから、ここで昨年度に出しておりました奨励金を代償にする免税考えられない。米価がどうきまるかということによってきめたい、こういう考え方のようでございます。そこでさらに伺いたいのは、さきに私が伺いました予約売り渡し予定石数というものはどのくらいを見込んでおりますか、おわかりにならないですか。
  12. 新澤寧

    ○新澤説明員 先ほど申し上げましたように、今積算中でございますので、これが確定的な最終的な数字だということではございません。その点を御了承いただきたいと思いますが、現在のところ二千四百万石というふうに考えております。
  13. 井上良二

    井上委員 二千四百万石が完全に予約されるとお考えになっておるのですか。
  14. 新澤寧

    ○新澤説明員 見通しの問題でございますので、どうお答えしていいのかわかりませんが、私どもとしましては、ぜひこの程度のものは予約ができるようにということで、米価につきましても早くきめる、あるいは農業団体方々に御協力を願いまして、この集荷に努力いたしたいというふうに考えております。
  15. 井上良二

    井上委員 その二千四百万石を予定しておるというが、それに対して前渡金を渡すとかいうお話でございますが、前渡金はどのくらいお渡しになりますか。そうしてその前渡金予算はどこへ出ておりますか、それをお示し願いたい。
  16. 新澤寧

    ○新澤説明員 これも米価をきめます際に、全部予約に関する諸条件をあわせてきめたい、こう考えておりまして、まだ前渡金を幾ら出すということまで大蔵省方々とも御相談を申し上げておりません。大体目標といたしましては、今月の末から来月の初めの間にすべてのものを確定いたしたい、こういうふうに考えて、今着々作業を進めておる次第でございます。  それから予算関係でございますが、私ども前渡金と申しますのは、新しい制度におきましては、売買契約が申し込みと同時に成立いたしまして、その売買代金の一部を先に支払う、こういうふうに考えております。従いまして予算的に見ますれば、食糧買い入れ費の一部を先に払うという関係になっておるわけでございます。
  17. 井上良二

    井上委員 そうすると、これは大へん会計上の重要な問題が起って来ます。御存じ通り、従来食管特別会計買い入れ代金といいますのは、現物を買い入れました後に代金を払っておったのです。今度は現物を買い入れる前に一部代金を払うわけです。実際はから買いをやるわけです。これが普通の工業生産品のように原材料、動力、生産施設というものが完備しておって、月々の生産高というものが大体予想されております場合ならばそうわれわれ不安はないと考えますけれども、農作物は御存じ通り天候に支配されまして、万が一不作、減収になりました場合に、予約いたしましたものだけが生産できなかった場合は、政府前渡金は一体どういうことになりますか。その場合の責任は一体どこがお持ちになりますか。そういう法的根拠会計上一体どこに示されておりますか、それを伺いたい。
  18. 新澤寧

    ○新澤説明員 まず法的の根拠でございますが、確かにこれは会計法政令改正しなければならないのでございまして、これは早晩改正して、前払いができるような法的な措置をするというふうに大蔵省とも御相談をして準備を進めております。もちろんその法的な措置ができませんければできないわけでございますが、それを待ちまして実行に移るわけであります。  それから実際に先払いをした金額が、不作等事情によりましてそれに対応する米が買い入れられませんで、先払いをしたのが回収不能になるのを防ぐ手段につきましては、これは、たとえば農業手形等で行なっております連帯性等考えますし、それから前払い金集荷団体を通じて支払うことになっておりますので、集荷団体の間の共済措置と申しますか、共同担保のような形で、政府に対して支払いを保証するというような形もとらせますし、またこれは指導ということになりまして、ぜひそうしろという強制はできないと思いますが、できるだけ前払い金は直ちに消費的な用途に当てないで、米の作柄が確定するまでの間は預金として持っておく、そして作柄が確定して、十分予約したものの売り払いが完遂できるというようなときまでは、そういう形で保留をしていただくということも指導していかなければならないと思っております。まあいろいろの手段を講じまして、この先払いした代金が、もし不作のために政府売り渡しができないようになった場合におきましても、回収が不能にならないようにという措置は十分講じて参りたいと思っております。
  19. 井上良二

    井上委員 ただいまの御説明を伺いますと、さいぜん私が質問をいたしておりますように、奨励金制度を廃止するという問題は、農民にとっては非常に大きな問題であり、かつそれに関する免税措置も非常に重要な影響を持つ問題でございますし、かてて加えて、この予約売り渡しによって政府前渡金を支払うという重要な会計上の行為を行おうといたしておるものについても、まだ政府の方ではっきりした対案ができてないようでございます。何か政府の方では予算上、また会計上、また国民生活の上に、あるいは農業生産全般に対して非常な重要な影響のありますこの制度を変えるに当って、法的措置を講ぜずに事務的操作でこれがいけるような考え方に立っておりはしませんかと思うのであります。承わるところによると、従来の食管法に基く義務供出割当をやめて、予約売り渡し制度に変えるという場合においても、法律改正しないで、食管法で残しておいて、一つ行政事務変更といいますか、食糧買い入れ制度変更という行政事務上の手続変更によってやれるような解釈をいたしておるようであります。これはもう非常な大きな誤まりであろうと私は思います。これほど農民にも一般消費者にも重要な影響を持って参りまする食管制度を変えるに当って、食管法を変えずにやろうというところに非常な無理がありはせぬかと思う。またただいまの前渡金を渡す問預にいたしましても、会計法上の何か政令を変えたらいけるような甘い解釈をとっている。これは非常な誤まりであります。少くとも政府公金を使用いたします場合、その公金を確実に回収できるかどうかという不安な状態に置かれる予想がつきます場合、もちろん農林省としましては、また食糧庁といたしましても、これの裏づけの担保物件を請求するとか、あるいは保証を十分とるとかいういろいろな手続は行われるかもわかりませんが、それにいたしましても、もし集荷団体の方で、かような複雑な手続の上における責任集荷団体が負わなければならぬならば、そういうことは困るというて拒否されたら一体どうなりますか。農業協同組合の方で、さような共同責任を持たなければならぬようなことはごめんだというようなことで拒否されたら、この政府考えは全部だめになってしまうのであります。従って制度を変えます上においての法的措置と、この前渡金を支払います場合の法的措置を当然考えるべきじゃないかと思うが、それに対して法的措置は要らぬとお考えになりますか。
  20. 新澤寧

    ○新澤説明員 まず食管法改正の問題でございますが、これは確かに一つの御意見といたしまして、食管法を変えまして、一方に義務制を排除した新しい制度を立てるということももちろん考えられるわけでございますが、私どもは、今日の食糧事情から見まして、まず集荷団体の非常な熱意を十分感じておりますので、いわゆる集荷団体活動ということで所期の目的を達成し得るということを確信しておるわけでございます。しかし事食糧の問題でございますので、やはり万一の場合を考えまして、義務制を直ちに廃止するというようなこともいかがかと存じますので、食糧管理法上の現行政府に対する売り渡し義務の規定というものはなお存置しておきたい、こういうふうに考えておるわけでございます。そうしてこの新しい制度が固まるに伴いまして、食管法改正の根本の問題は考えていきたい。過渡的なことでありますので、確かに新しい制度食管法の問題についていろいろ御批判が生まれてくると思いますが、やはり過渡的のことであり、初年度から一足飛びにそういうことをするのもいかがかというふうに考えておるわけでございます。  なお前渡金会計法上の問題でございますが、これは私どもいろいろ大蔵省とも御連絡をいたしました結果、法の改正までいかなくても、政令改正でいき得るということで今考えておるわけでございます。また私どもこの制度考えました一つ参考となりましたものの中に、タバコにおきまする前払金制度があったわけでございますので、それらを参考にいたしまして、この新しい制度に伴いまして一部代金概算払いということを考えたわけでございます。ただ回収が一歩誤まりますと、国の財政に大きな影響を与えますので、この回収方法につきましては、もちろん集荷団体とも事前に十分相談をいたしまして、集荷団体もそれならば責任を持って政府の方に対する回収保証をいたしますというような御返事も得ましたので、この制度保証制度とあわせて実施をするという考えをきめたわけでございます。
  21. 井上良二

    井上委員 いま一点伺います。これは主税局長から御答弁を願いたいのですが、主税局長の方でも、米価がどうきまるかということの大体のめどがつかぬと、どのくらいの減税をするかということの見込みが今立たぬというような御返事でございましたようですが、それにいたしましても、昨年度供出米に対する減税の処置の比率というのはおよそ出ておりますか。大体本年度もまた昨年度行いました減税の比率を適用すればいいじゃないか、こういうふうに考えますが、そうはいかぬのですか。
  22. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 その点でございますが、今農林省からいろいろお話がありますのは、基本米価が何ぼにでもなるというのではまた問題があるわけですが、基本米価は従来の九千百二十円より相当上げる、そうしまして、予約買付でもって供出した分について何割か——ちょうど輸出関係でやっておるような、ああいう考え方だと考えていいと思いますが、一部免除をするような考え方を入れてくれないか、こういうふうになりますと、結局問題は、保有米値段をどうきめるかという問題が一つあるのです。従来の制度でございますと、御承知のように基本米価が九千百二十円、そうすると、保有米課税の標準は全部九千百二十円で課税して参りまして、そうして奨励金の分だけ免除していたわけでございますが、今度は基本米価が上る。そうすると、要するに保有米値段もおのずから上ってくるという問題も出てくるわけでありますが、そこで従来と違った考え方がそこに入ってこなければならないという問題が一つあります。ただその場合に、一体保有米値段をどうきめたらいいか。基本米価が何ぼにもなって参りました場合にどうきめるべきかといった問題は、やはり相当慎重に検討して結論を出すべき問題ではないかというふうに考えられるわけであります。従いまして、従来のように同じ予約買付でございましても、基本米価はたとえば九千百二十円にして、奨励金をそれに大体従来と同じようにつけていくのだという考え方でございますれば、従来の義務供出が今度の予約買付の制度と変りましても、従来の先例がございますから、考え方を従来通りにしていいじゃないか、こういう考え方ができるわけでございますが、今農林省考え政府考えておりますところは、そうした奨励金制度は一切やめてしまおう、全部基本米価に入れよう、こういう問題になって参りますから、従いまして、保有米値段がそこで上ってくる。そうすれば、おのずから今度は供出分についての税金を負ける幅は従来よりももう少し広くてもいいじゃないか、こういったような考え方が出て参るわけでございまして、保有米をそういうふうな評価でやっていく場合にどうなるかというととも、もちろん片方では考えてみなければなりませんが、そういろ問題とからみ合うものでございますから、やはりある程度基本米価考え方が固まって参りませんと、われわれの方の案もどうも具体的にきめにくい、こういう事情にあることを御了承願いたいと思います。
  23. 井上良二

    井上委員 主税局の方で一つお考を願いたいのは、主計局との関係もございますけれども、あとで大蔵大臣が参りましたら伺うつもりでございますが、従来義務供出制度によって供出を推進して参りましたけれども、結局は米価が安いといろところからなかなか思うように供出が進まない、そこで奨励金制度を設けて推進をした。これは単に奨励金をつけるだけではないかね、それを免税することによって早場なりあるいは超過供出をした方が得だ、こういうことでどんどん保有米供出に出て参るということを考えた処置であります。もし政府の方が機械的に農民の心理なり、あるいはわが国の食糧の実情を考慮せずに税の問題だけを考えられたのでは、これはたいへんなことになります。何といたしましても、国内産米をできるだけ政府の手元に集めて、そしてこれを消費者に公平に配給するということが日本の経済再建の土台であります。もし国内産の米価農民の得心のいくようにきまらず、かつ従来つけられておった奨励制度が廃止され、免税の面においても十分は措置が講ぜられぬということになりますと、二千四百万石を予定いたしております予約買付はおそらくできなくなってしまいます。そこで私はさらに一歩を進めまして、現在二千四百万石をかりに税金をとるとして、これを免税にした場合の減収はどのくらいになりますか。それを概略でいいですから伺いたい。
  24. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 私の方では、まだそういう案について検討して数字を出したことはございませんが、非常に大ざっぱに考えて参りますと、本年農業所得としまして、大体農家から八十億程度——今のそうした措置を講じました後において、八十億程度税金が入ることを期待しているわけでございますが、これはいろいろな考え方があり得ると思います。しかしそれにしましても、現在の免税点の引き上げ、今度の基礎控除の引き上げ、扶養控除の点などを考えますと、供出米について全部課税しないということにすれば、極端に言えば、おそらく課税される農家というものはほとんどなくなってしまうのじゃないか。従いまして、われわれの方といたしましては、大体この八十億云々といいますか、ほとんど全部といってもいいぐらいな金額が税額からなくなってしまうのではないかというふうに考えております。
  25. 井上良二

    井上委員 それは主税局長、あまり極端な言い方です。御存じ通り、平年作で六千四、五百万石米だけで収穫が上っている。これはさらに麦、あるいはカンショ、バレイショ、その他雑穀を加えるならば、相当生産高になる。そのうちわずか二千四百万石を供出の対象にするというところからその免税考えたときに、八十億全部が免税になるなんで、そんな手荒いそろばんがどこにありますか。
  26. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 井上委員にこういうことを申し上げるのはどうかと思いますが、とにかく米の収入というのは、農家の大きな収入であるわけであります。それを免税していきますと、いわば上積みの分がどんどんなくなっていくわけです。従ってあとの分は残り分になってしまうわけでございます。それで、結局現在の所得税の制度でございますと、基礎控除なり扶養控除したあとへ残った金額に対して税率が適用されて八十億の額が出てくるわけでありますから、その上積みの分がまずなくなってしまうとすれば、それは農家として一応の課税の所得として計算には出て参りますが、しかしそれが基礎控除、扶養控除で消えてしまいまして、税額に入ってこない、こういうことが考えられますので、それで今申したような結論に私はなるのではないかというふうに申し上げているわけです。
  27. 井上良二

    井上委員 昨年、さいぜんも申し上げます通り奨励金免税は二十五億に達している。今かりにあなたのおっしゃる通り八十億が全部なくなるとしても、この二十五億を八十億から引けばあとはわずかです。そこでたかだかあなたの言うことが全部いいとしても、そのことによって供米が宗遂される方がいいか、それともなかなか思うように供米が完遂されず、その反対に貴重な外貨を使って外米を輸入した方がいいか、どっちがいいとあなたはお考えになっておりますか。
  28. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 第一の点でございますが、われわれの方は、先ほども申し上げましたように、昨年度二十五億程度税金を負けている。それは本年度も同じように考えていこうということで、それで先ほど申しましたように、九千百二十円で税額は計算してございます。従いまして、それをそういう考え方をしなかったら、現在の八十億にさらに二十五億プラスされた数字が歳入の見積りに入ってくるわけです。要するにその程度のことは農林省とわれわれの方とで一緒に話し合って考えているわけなのであります。従いまして、今お話のようなことになりまして、八十億云々ということになりますれば、それは二十五億のほかにそうした分がおそらく税収入としては減っていくのではないか、こういうふうなことになるわけでございます。  その次の外貨の問題と税の問題とどう天びんにかけるか、これは私はいろいろな考え方があろうと思いますが、われわれといたしましては、農家が所得税は全然負担しないといったような姿になることは、これは他の税との関係からいいまして、どうも賛成できないと現在考えております。二十五億程度の問題につきましても、いろいろな議論があるわけでございますが、これは米の集荷といったような問題とも関連いたしまして、やはり考えていくべきではないかと考えております。それ以上の問題につきましては、ちょっと考えるべきではないのではないか、大体農林省ともその線で話し合っているわけであります。
  29. 井上良二

    井上委員 渡邊さんのお考えは、税をとる立場に立っておりますから、当然のお考えだと存じますすが、国全体の経済ということを考えますと、私どもといたしましては、やはり食糧がどう確保されるかということが前提になりますものですから、そこで食糧の所要量を集めるためには農民を納得させなければならない。納得さす根拠は何と申しましても米価であります。その米価が生産費を償う価格であるかないかということは議論の余地がありますが、今までどっちかといえば、生産費を償う価格ではない、だから採算が合わぬから供出米は出さぬ、こういう実情に置かれたために、今まで十年も十五、六年も続けてきた供米制度を廃止して、新しい制度によって米を集めようという考え方に立った。これは、この新しい制度を採用するに当って——あとから大蔵大臣に聞くつもりでありますけれども、問題は農民が納得する米価が算定されるかどうか、これにかかっておるわけであります。すでに農業団体の方から政府に対して、石当り一万二千五百円で買い上げてもらいたいという要求がされておる。一万二千五百円で政府が買い上げるならば、政府が勧奨します予約売り渡し制度を支持しよう、協力しよう、もしそれができなければわれわれの方は協力ができないという非常な決意でおるわけです。ところが、かりに一万二千五百円の米価ということになりますと、消費者米価を上げない限りにおいては、現在の消費者価格との間に少くとも五、六百億の財政負担をしなければならないことになる。消費者米価を上げれば、全般の給与ベースも上げなければならぬことになってくるし、物価は上ってくるし、国際収支は悪化してくるということになって、全体がくずれてくる。だから一にかかって米価農民の納得する価格に上げることにある。上げさえすれば、農民といえども納税の義務を怠るものではないのですから、採算の合わぬ価格で強制的に買い上げるところに問題があるのです。採算が合わぬ価格をきめて、それで強制的に買い上げようとするから、予定通りの米が集まらぬということになってくる。そこで集めようとして、奨励金制度を使い、減税制度を使って米の集荷をはかってきたわけです。今度は奨励金を全然やめてしまう、ただ一部減税だけは何とか考えようといっているが、問題はそこにかかっておって、政府米価の算定を何ぼにしようとするかということが大きな問題になります。だから米価が他の工業生産品と比べて採算の合う価格である、再生産をまかなうだけの十分な価格であるということがきめられますならば、当然税金は負担しなければなりません。今年の産米価格も、いろいろ生産方式を検討してきめようといたしておりますけれども、この生産方式の算定がまた非常に政治的に取り扱われて、おそらく一万円前後の価格にきめられるのじゃないかと私は見ておる。そうすると、農民側の要求します価格との間に二千円からの開きを出すのではないかとわれわれは見ておる。そういう状態のもとに供米を進めましても、実際上そんな政府予約売り渡しはしないことになりはせぬか。そうなれば、現実に絶対量が不足をいたして参りまして、輸入をふやさなければならぬことになるが、そうなると大へんなことになりはせぬか。だからこの際、米価があまり引き上げられないわが国の経済の現状から考えて、減税の面で何とか考えてやるべきが妥当で臓いかという意見が出てくるのです。この点をもっと政治的に御考慮を願いたい。私どもは、農民は米を作りさえすれば税を負担せぬでもいいのだ、そういう考え方は持っておりません。農民といえども正当な所得を持っております以上は、当然税の対象になり得るのです。ところがその正当な所得の算出の基礎になっております米価というものが、非常に採算を割っておる価格できめられておるというところに、その税がかけられない原因が起つているのです。だから税金を負けたらどうか、こう考えておるわけだ。それでわかりませんか。
  30. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 現在の米価について、これが適正な価格であるかどうかということについては、いろいろ御議論はあろうと思っております。私は自分の仕事柄といたしまして、その点についてあまりいろいろ意見を申し上げることは適当でないと思いますので、これは申し上げませんが、ただ井上委員のお言葉の中で、奨励金をやめて云々とおっしゃっておりますが、従来の基本米価をそのままにしておいて奨励金をやめるということを考えておるのではなくて、従来の奨励金基本米価の中に織り込むということを考えておるわけで、農民の方の手取りを減らそうという趣旨であるわけではないのであります。ちょっとお言葉のあれと少し違うように思いますので、一応申し上げておきます。  それからもう一つ、われわれの方として申し上げておきたいのは、現在の基礎控除、扶養控除等がだんだん上ってきましたために、一時は農家の中で所得税を納めている方が三百万人以上あったわけでございますが、現在の法制でございますと、今度の減税後におきましては、われわれの方で見積っておりますところでは六十五万三千人、農家といたしましても非常に一部の方であるというふうに思っております。従いまして、税金の問題は、やはりごく一部の方だけの関係の問題であるということも考えてみなければならぬ。従って全部の農家についてそれが影響するものではない。やはりこの問題をお取り扱いになる上におきましては、とにかく比較的富農的の方だけの問題であるということも考えてみなければならぬというふうに思っております。
  31. 井上良二

    井上委員 それは、なるほどあなたの議論で申しますと、いわゆる過小農家、零細農家はどんどん免税になって、実際は富裕農家だけが残っておる。その富裕農家にかかるところの税金免税する道はないじゃないかというような一つの低額所得者減税論から、そういう意見も出て参ります。しかし私どもは、かりに実際面の上ではそういう実情になっておりましても、全体の米をどうして集めるか、どういうふうにして所要量の米を政府は集るかということにかかっておるのですから、政府の手元に米を集めるための何かよい方法はないかということで、いろいろな方が衆知をしぼった結果、そこで奨励金制度考えられ、減税制度というものが考えられてきておるわけです。だから、農民を納得せしめるだけの米価がきめられますならば、これは当然都市の所得者と一緒にやはり税をお取りになってけっこうです。またその場合は、当然供出政府予定数量になるでしょうから、われわれとしても問題といたしておりません。これは、食糧を一体どうして確保するかということを政治的に、また国の置かれております現在の財政規模の現状から、主税当局としても慎重に御検討になって、もし米価農民の納得するだけ上りません場合には、減税の面で相当考慮するということを御検討願いたい、このことを私は申し上げておきます。  大臣が参りましたから、大臣に二、三質問をいたしておきたいと思います。大蔵大臣に質問をいたしたいのです。ただいま主として政府が本年から実施しようとする米の予約買付制度の問題について事務当局に質問しておりましたが、大蔵大臣は、わが国の財政規模の現状から、今年の産米の価格はいかほどを想定されておりますか、これを伺いたい。
  32. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。大蔵大臣といたしましては、財政の見地から米価はこういうふうにあってほしいという考えはないことはありませんが、しかし米価はいろいろの手を経ていろいろの関係者できまることでもありますので、今私がここでどうという米価を申し上げることはいたしません。
  33. 井上良二

    井上委員 大へんな御答弁です。少くともこれから一年間の予算を組んで日本の産業経済をもり立てていこうという大蔵大臣が、本年の産米の米価はこの予算のワクからどの程度が妥当と考えるということがきまらぬで、一体どうして予算をきめたのですか、それを伺いたい。
  34. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 予算の編成の上から申し上げれば、予算米価は一石当り九千七百三十九円ときめておるわけであります。
  35. 井上良二

    井上委員 大蔵大臣が本会議において御説明をいたしました財政演説の中において、御存じ通り、わが国の自立経済を達成するのに所要の対策をこれこれ進めていく、そうすることによって、日本の経済は自立の方向へ確実に進んでいくということをあなたは力説されておるのでありますが、その自立経済達成の中心は、大蔵大臣の御演説を伺い、かつ通産大臣の経審長官代理の経済政策の方針を聞きましても、貿易政策に中心を置いておるようであります。これはわが国の経済をもり立てる上において絶対に推進していかなければならぬ、振興いたさなければならぬ重大な国策の一つでありますが、その貿易を考えます場合において、輸出を推進していくことに非常に力を入れて、輸入に関係のありまする品目についてあまり検討が加えられてないかといいますと、そうじゃない、不要不急のぜいたく品目はできるだけ輸入を抑制する、これは当然のことでありますが、特にわが国の経済自立の上におて重要な輸入品たる食糧の輸入について一体御検討をされたことがありますか。御存じ通り食糧は年々不足を告げまして、ここ数年来毎年必要量全体の二〇%を輸入しておるのです。外貨は毎年五億ドルを使ってきておる。しかし毎年四千万ドルくらい新しく食糧費はふえていく現状に置かれているこの実情から考えて、国内においての食糧増産を何よりも必死にやることが食糧輸入を大幅に食いとめていく唯一の道であると考えて、政府みずから食糧増産の五カ年計画、あるいは六カ年計画なるものを立てておる。しかるにその増産計画を裏づけるのに必要な予算は削ってしまっているじゃないか。それで一体どうして経済自立ができ得ると大蔵大臣はお考えになりますか。米が足らなければ外国から買うた方がいいとお考えになりますか。その点を伺いたい。
  36. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申します。自立経済達成の目標が一面において貿易の伸張であり、他面において国内資源の開発に向けられるべきことは申すまでもありません。そういうような場合において、特に国内資源のうちでも、この食糧あるいは農業というものを取り上げた場合に、お示しのように非常に巨額な輸入を年々しているじゃないか、貿易という見地にかりに立つにしても、大いに食糧増産をはかって輸入を減少さすべきじゃないかというお話については、私もほんとうにその通りに思って、百パーセント賛成なのであります。これは単に貿易収支のしりを合せることばかりでなくて、食糧の増産とともに人口問題をある程度解決する上からも、国内資源、特に農業を盛んにすることの必要はだれも異論はないと思います。今度の三十年度予算においても、そういうことをできればやりたいと思っておるのでありますが、いいことはやりたいのですが、どうも三十年度は悪いときだと私は思っている。三十一年度だったらうまくやれるのであります、三十年度は絶食している病人の最後の段階みたようなときなので、何かを食べさせると喜ぶのに違いないのだが、食べさせると胃かいようになるという非常にむずかしい段階で、いろいろ御議論はありましょうが、そういう意味におきまして思うようにいかない。まあできるだけやっておるわけであります。私は全く異論がありません。お説の通りに拝聴いたします。
  37. 井上良二

    井上委員 来年になったらと申しますが、そのときまで鳩山内閣が続いてくれればいいのですが……。私ども現在予算審議をいたしており、予算関係のある税制を審議いたしておるのでありまして、この観点からただいま申しますように、政府みずから何とか自立経済を達成したいということで、六カ年計画を立てて必要な予算を計上しているのに、ひとり食糧増産関係予算が大幅に削減されておる。災害復旧費においてしかり、土地改良においてしかり、その他耕種改善においてしかり、ことごとく削られてしまっている。そういうように予算書に現われてきた結果は、あなたの主張していることを裏切っていることになっていませんか。どういうわけで一体食糧増産関係予算を前年度に比べて大幅に削減したのですか。国内では米を作らなくてもいいのか、足らなければ外国から米を買うたらいいと政府考えているのですか。といいますのは、たとえば本年政府が国会に出しておりますこの食管の買い入れの予定を考えてみても、内地米におきまして五十五万五千トン買い入れを手控え、外国からは反対に十八万七千トンよけい米を入れるという資料が出されておる。国内産米をできるだけ政府が買い上げる。そうしてあらゆる手段を講じて外国からの輸入を減じていくということをやらなければならぬ。米は国民生活に絶対必要なものでありますけれども、これは再生産をされるものではありません。われわれの必要とするものは、外国に輸出ができます原料と、新しい科学技術をできるだけ多く入れなければならぬ。米のような消費物資はできるだけ国内において増産をする。そのためには全力をあげなければならぬということで、国会をあげて各党ともこの農村振興、食糧増産には選挙を通し、ふだんを通して常に叫び続けてきている。しかるに、今度初めてこの内閣になって食糧増産対策の諸経費が大幅に削られている。この事実の数字の上から、大蔵大臣は、私がさいぜん申したように、もう米は国内でそう作らないでもいい、外国から買うてもいい、率直にそうお考えになっておりはしませんか。といいますのは、ただいま申します通り、輸出振興に対する所要の法的、税法上の措置は至れり尽せりに加えられておる。輸出を高めるためには、政府は輸出入銀行を通じて、あるいは他の資金的な措置を講じて、また税法上もいろいろな手厚い手当を加えて輸出を振興さそうとしておる。肝心の食糧の輸入を抑制して、国内でそれを増産する方がどれほど国の利益に怒るかわからぬのに、その点は全く手抜かりであります。あなたは先般日本に参りました世界銀行の訪日調査団の報告書をごらんになりましたか。この世界銀行の訪日調査団の報告書の第一においても、日本経済が直面している諸問題を解決するのには、何よりもまず国内において食糧増産をやることが日本に課せられた当面の重大な課題であるというととが言われ、その裏づけの数字として、今私が申しましたように、毎年全体の二〇%からを輸入に仰ぎ、貴重な外貨を毎年五、六億ドルもこれに費しておる、こういうことをやっておったのでは日本の経済は成り立たないということを世界銀行団の方からも指摘されておるじゃありませんか。これをあなたはどうお考えになっていますか。率直に一つ御答弁を願いたい。
  38. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほどから申しましたように、私は井上さんのお考えと違わないのです。そこで今度その数字説明すると、実際面から考え予算数字の上で違うじゃないか、こういうことになると思うのでありますが、予算数字につきましては、今度の予算で減っておるのは、特に災害復旧費であると思います。これはやはり減るべき理由があるのであります。要するに、端的に申せば災害が少かったということに起因をいたしておるのであります。私は農業、特に食糧増産についての熱意は決して人後に落ちないのですが、そういうふうないろいろな経費が多いから、単にまんべんなく多く振り向けたから食糧の増産が必ずしもできるとも思われない。それはそういうことができれば一そういいかもしれませんが、私はそういう点について、特に今回は投融資という方面において考慮を加える。また今お示しになった世界銀行の関係においても、たとえば愛知用水というようなものは近く妥結できるように私考えております。また同時に、一方に余剰農産物の輸入から来る資金、これも相当金額がやはり農業の方の開発に向けられていくわけで、そういう方面から相当食糧増産に資金が回っていく。それからまた予算の面においても、金額は減っておりますが、たとえば特別会計に回しておるのが割合にあると思うのです。そういうふうに、私がそういう考えを持ちながら、実質においてそう非常に農業を無視しておるというふうには考えておらないであります。私は同じような考えを持っておるのです。食糧増産については、もしも予算に欠くるところがあれば、他の面において、特に金利の安いもの——それは財政資金が必要ということになるのでありますが、金利が安くて非常に長期の金ということになれば、こういうものについては、私は借款を起してもいいだろうというふうな考えを持っておるわけで、この点申し添えておきます。
  39. 井上良二

    井上委員 私どもは輸出に対する積極的な対策を推進するとともに、輸入品目のうちで、特に食糧と繊維の関係につきましては、国内で増産をされ得るものについては積極的にこれを増産する手を打つことが、結局国際収支を改善していく大きな道であり、ひいては自立経済の支柱となるわけでありますから、この点に対して特に大蔵大臣の積極的な対策を私は要望いたすのでありますが、この食糧増産の上における一番大きなガンとなっており、かつ政府が本年新しく考えております予約買付制を実施いたします場合の米価でございますが、ただいま米価は、まだどうなるかわからぬということでありますけれども、この際この予算を審議し、この税制を考えます上において、われわれが予算の中心とも言え、また国民生活の上における重要血要素になっておる税制の問題を考える場合においても、米価がどうきまるかということが非常に大きな問題になってきておるのであります。そこで、かりに政府は、予算米価を九千七百三十何円で押えておるのでありますが、この予算米価米価審議会の議を経て引き上げられました場合、おそらく予算米価からは下るということはないと思います。当然引き上げられるであろうということが想定されますが、引き上げられた場合は、一体大蔵大臣としては消費価格はどうするつもりございますか、これを伺いたいのであります。
  40. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えしますが、今私が消費者価格をどうするというのもどうでしょうかと思います。これは農林大臣に一つ……。これは農産物の価格ですから、おそらく農林大臣が決定されるべきものだと考えておりますが、私自身の考えとしては、消費者価格は上げるわけにいかないという考えであります。
  41. 井上良二

    井上委員 非常にはっきり言い切っていただいたのですが、消費者価格は生産者米価が上げられても上げないということが明確になりましたから、当然賃金ベースにおいても、物価指数においても、そう変動はないということが想定されます。そうしますと、かりに農業団体が二万二千五百円を要求している、昨年の二十九年度産米は九千百円ですが、その間どこで調整をされますか。実際の計数がまだ出て参りませんから、想定ではなはだ申しわけがないのですが、私の想定をいたしますのには、少くとも一万円以上になるのではないかという考え方を持っております。これがかりに一万円ときまりましても、政府予算米価が九千七百三十何円ですから、ここで少くとも石当り千円の開きが出るわけです。そうなりますると、その価格差は一体どう調整をいたすのですか。消費米価は上げない、生産米価は上げなければならぬ、その価格差予算的にはどう処置されるのですか。
  42. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは食官の問題にねるのでしょうが、生産者価格がきまらぬうちに、こうなったらどうと一々やっていってもしようがありません。まあ私の考えでは、食管の会計のうちにおいて善処をする、こういう程度をお答えする以外にないと思います。
  43. 井上良二

    井上委員 それではもう一つ別の角度から伺いますが、今農林委員会で減収加算の問題が政治的に非常に大きな問題になっておりまして、一昨日以来農林大臣、大蔵大臣とも非常に頭を痛められておるようでございます。かりに減収加算額を想定いたしますと、当りまえに出せば三十三億ぐらいではないかということがいわれている。三十三億という新しい財源に困って、この財源を一体どこからひねり出すかということで、昨日予算委員会においては、農林大臣は食管特別会計からこれを操作する、こういう話でした。ところが食管会計は御承知のように出入り勘定でありまして、こんな臨時的な金を出す費目はどこにもありません。またそんな操作は許されておりません。そうしますと、この減収加算額は、大蔵大臣としてはどこから一体はじき出すつもでありますか、そしてその金額はどのくらいを予定いたしておりますか、この際明らかに願いたい。
  44. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今御指摘の点につきましては、農林大臣と話し合っておるところであります。
  45. 井上良二

    井上委員 農林大臣と話し合っておって、まだ結論を得ておりませんか。大蔵大臣としてはどうしたらいいのですか。出さなければならぬとしたら、どういう方法で出したらいいか。これは大蔵省の了解なしに、農林省が勝手に出すことはできませんから、最高責任者たるあなたから御答弁を願いたい。
  46. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えいたします。大蔵大臣として財政的見地からいたしますれば、非常に困難な状況にあるということは申し上げても差しつかえはないだろうと思います。
  47. 井上良二

    井上委員 財政上もう予算が出ておりますから、今ごろそんなものを要求されても、補正予算を出すというわけにもいくまいし、予算を組みかえるわけにもいくまいから、大蔵大臣としては、この金を出すのに非常に苦慮されておることはわれわれも想像いたします。ところが農林大臣は、はっきり出すということを言明しておる。そうすれば、あなたの方にこの金を出してくれと交渉をやっておるに違いない。そうなると、あなたとしてはその金を出さなければならぬが、あなたとしてはまだ出すところにいっておりませんのか、それとも何とか工夫して出そうとするのですか。河野農林大臣は食管特別会計から出すという答弁をきのうされたようでありますが、食管特別会計からこの金を出すということは、特別会計本来の任務から逸脱する支出でありますから、かようなことは考えられません。そうすれば予備金から出すという手がありますが、予備金を出す意思がありますか、この点をもう一応お答え願いたい。
  48. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 そういういろいろなことをまだお答えする段階になっていないのでありますが、今いろいろお教えをいただきましたので、その点は十分考えていきたいと思います。
  49. 井上良二

    井上委員 大臣が時間の都合があって、工合が悪いそうですから、もう一点で終っておきます。問題は、減収加算でさえ、予算提出後においては出すことが非常に困難な事態に置かれておるわけです。それを何とかして出さなければならぬ政治的な問題が起っておるわけです。今度米価改訂に伴って、消費者米価は据え置くということにいたします以上は、当然ここに大きな価格差が生じて参りまして、食管会計では背負い切れない事態が起り得ると思います。わずかの減収加算でありますならば、当然年度末において調整はでき得ると思いますけれども、現実に大きな価格差が出ました場合には、食管会計で背負い切れないことは明らかだと考えます。あなたが予算上消費者価格を上げないということを言明されました以上は、当然価格差の差金をどう負担するか、一般会計からどう一体これを補うかということについて御検討願わなければなりませんが、大蔵大臣としては、一般会計から補てんするつもりでありますか。食管会計ではとうていまかない切れないであろうと思いますが、との点に対する御見解を伺っておきます。
  50. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えしますが、その点はもう先ほど一度お答えをいたしましたように考えるのであります。それは、今価格の方がまだきまっていないので、こうきまったらこういうふうな形、こうきまったらプラスが出る、こう言ってみてもどうにもならぬ。先ほど申しましたように、そういう際におきましては、今言い得ることは、食管の会計のうちで善処する、こういうふうに今のところは申す以外にないということを申し上げておきます。
  51. 井上良二

    井上委員 大臣、私はあえてあなたの知らないことを追及して、困らすつもりで問うておるのではないのです。御存じ通り、この米価がきまりませんと予約供出制度がきまらないのです。予約供出制度がきまらぬ限りは、本年の産米の集荷の予定が立たない。産米の集荷の予定が立たぬということになると、予算全体がくずれてくるのであります。これは財政上重大な問題だと思うのです。従って私どもは、およそ政府では米価はどのくらいを想定して、これによって消費者価格は据え置くなら据え置く、そこで価格差がこれこれ出てくる場合は、一般会計から補てんする、補正予算なら補正予算を出すということを明らかにしてもらえばそれでよろしい。そうでなければ、予算審議の上に重大な問題を投げかけてくる。またこれは当然税制の上に大きな影響をもたらしてくるので、特に私がこの問題について大臣の所見をただしているのはそこにあるのですから、この点についてお答えを願いたいと思います。
  52. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は何も井上さんの御質問にこだわるわけでも何でもないのです。これは私、あるいは勉強が足らずに、また知識がないのかもしれませんが、どうも農林大臣がおきめにはることで、そしてまた生産者の米の値段というものは、いつもそんなに早くきまるわけでもないのじゃないかと思っておるわけです。ですから、ここで今いろいろと仮定をして、それ一般会計からどうとかほんとかいっても、どうにもならぬと私は思います。そこで今申し上げましたように、大蔵大臣としては、かりにそういうふうな状態がある程度出た場合に、それは食管の会計のうちで始末するように考えてもらわなければならぬという一応の考え方を申し上げておるわけで、何も私はこだわっているわけではありません。どうぞ御了承を願います。
  53. 井上良二

    井上委員 それでは私の質問は午後に延期いたしておきます。これで午前中の質問を一応終ります。
  54. 松原喜之次

    松原委員長 午前中の会議はこの程度とし、午後二時まで休憩いたします。    午後零時二十一分休憩      ————◇—————    午後二時二十一分開議
  55. 松原喜之次

    松原委員長 休憩前に引き続き会議開きます。  農業共済保険特別会計歳入不足をうめるための一般会計からの繰入金に関する法律案外十六法案一括議題として質疑を続行いたします。井上良二君。
  56. 井上良二

    井上委員 午前中主として政府食糧政策を中心にいたしました、大蔵大臣としての所見を伺ったのでありますが、さらにもう一応この点確かめておきたいのは、ただいま本委員会に上程されておりまする税法関係の各法案を審議する上におきまして、特に農業関係食糧関係いたします税金を一体どう考えるかということをこの委員会としても審議をする上において、一番困っております問題は、政府の方においてまだ米価が何ぼにきまるかということについての最後的な結論が出ておりません。この米価がきまらない限り、減税をどの程度あんばいをするかということも、実は見通しがつかない状態が、午前中の質問で明らかにされておりますが、そういたしますと、食糧関係しておりますいろいろ血税金が、本委員会でも他の税制関係との間において全然並行的に審議ができなくなる。そこでこの問題は、農林省所管の産米の予約売り渡し制度が確立し、かつその米価がきまる、それから大蔵当局としては税金考える、こういう段取りに考えているようでありますが、それではこの委員会としてはまことに困る。そこで大蔵大臣としましては、米価がきまらぬ限りは農林関係食糧、供米に関係する税制というのはきめるわけにはいかぬ、こうお考えになっておるのですか、この点をもう一度はっきりしておいていただきたいと思います。
  57. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。やはり米価がきまった上でないと、どういうふうに税をするということは実際上困難ではないかと思います。
  58. 井上良二

    井上委員 そうすると、これは大蔵当局としましても——米価決定の主管は農林大臣にありますけれども、これに関係いたします税の関係はあなたの方の所管でございますから、そうしますと、大蔵大臣としましても、この税制諸法案を成立さす上からも、当然この食糧関係の税制もあわせて考えなければなりませんので、大蔵当局としても米価の決定ということが非常に重要な関係を持っておりますが、大蔵大臣としては、米価決定はいつごろまでにされる予定でございますか、お見通しはございませんか。
  59. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今お話のように、税の関係その他におきまして、大蔵大臣もむろん米価決定関係はあります。しかし米価決定については、そういう減税ということ以外に、なおもう少し本筋においていろいろと、特に農林大臣において検討を要することが多いように思いますので、大蔵大臣としていつごろ米価を決定するという断定は下し得ないと思います。
  60. 井上良二

    井上委員 いつごろきめるということは、この際大蔵大臣としてははっきり申されぬ、こういうお話でありますると、こちらの方はその米価決定に伴って食糧関係の税制を考えていかなければなりませんので、米価がきまらぬと、ただいま審議中の所得税その他の法案の審議がおくれていくのでありますが、それでもやむを得ないとお考えでありますか。
  61. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 米価につきましては、暫定米価でいくか、確定米価でいくか、一体幾らにきめるかということは、米価審議会の答申を待ってきめることになると考えておるのであります。
  62. 井上良二

    井上委員 そうしますと、今まで超過供出、あるいは早場奨励等にかかっておりました税金を免除した食糧関係法律がございましたが、大蔵当局としては、これらの法律はどうお考えになっておりますか。
  63. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 大体超過供出、早場供出に関する法案は、井上委員御承知のように、毎年その年度の産米についての法案として出ております。従いまして昨年当委員会で可決され、国会で可決されましたものは、二十九年度米といいますか、二十九年産米の分でございまして、本年の産米の分につきましてどういう措置をとるかということが今御論議になっておる問題じゃないか。で、われわれの方といたしましては、確定米価でいきますか、暫定米価でいきますか、どちらにしましても米価についての構想が一応きまれば、それが確定米価ということになりませんでも、暫定米価なら暫定米価なりに一応それで何か構想を立てていきたい、こう考えております。ただ先ほど申しましたように、一体米価をどういうような態度できめていくか、同時に保有米はどう課税していくかといういろいろな問題とからみ合いますから、技術的に考えまして、米価に対する考え方が基礎的にきまる。もちろん他の問題もございまして、どういう種類の米価をどういうふうにきめていくか。従来の奨励金のようなものを基本米価の中に入れようというのでございますから、それがどういう姿になるかということが、ある程度、少くとも輪廓だけでも描けませんと、税に対する態度もきめ得ないのではないかと存じます。
  64. 井上良二

    井上委員 そうしますと、政府の方では、米価が一応具体的に算定される過程において、これに関係する減税処置も講ずるということになりますと、米価決定が非常におくれた場合は、本国会中には、その米価に関連する減税措置というものは間に合わぬことになりませんか。
  65. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 暫定米価でいくか確定米価かでいくかという問題があるのじゃないかというふうに思っておりますが、暫定米価の姿というものは、実は私主税当局としては、どういう姿になるのかまだよく聞いておりません。しかし一応現在の予約供出制度という考え方からすれば、確定米価ということでないまでも、暫定米価が、大体米価というのはこの程度のむのだというぐらいの数字になるのじゃないか。それは私の方だけで考えているもので、まだ農林省なりとも別に話し合いを進めたわけではございませんから、確定的なことは申し上げられませんが、しかし大体そこで一応の線が出てくれば、われわれとしても税の方についての態度は決定すべきじゃないか、またし得るのじゃないか、かように考えております。
  66. 井上良二

    井上委員 私が一番心配しますのは、最後的にあなた方の態度をきめます時期がずれますと、大へんなことになってしまいますので、時期は、やはりこの予算が成立するまでに結論が出るか出ないか、この委員会にかかっております税法関係法案と並行してその審議ができるかどうか、私どもが一番心配するのはそこなんです。その点に関してどうお考えになりますか。
  67. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 従来、奨励金の問題で法律が出ましたときは、たとえばことしの分でございますと、通常の場合は四月からいろいろな改正法案が施行されましたが、超過供出とかいう法案は暮れによく出ておりまして、従来は必ずしも当初にきまるということでもなかったように思っております。今回におきましても、早くきまることが望ましいと私は思っておりますが、やはり先ほどのような問題がございますので、できればわれわれの方も早く問題をはっきりさせたいと思っておりますが、米価の問題などがいろいろからみ合っておりますので、主税当局として、いささか責任のがれのような言葉のように受け取られると実はちょっと困るのですが、とにかくもとがきまりませんものですから、われわれの方としては、もとがきまるということを前提にしなければちょっと法案としても考えにくいのではないか、かように考えております。
  68. 井上良二

    井上委員 そうしますと、このぐらいのことは御答弁できませんか。大体農業団体の方からの要求によりますと、予約売り渡し全量の約二割に相当する分を免税の対象にしてもらいたいという要求が出ておるようです。その二割に匹敵する量に対して免税措置を講ずるという要求を、あなた方の方ではどうお考えになっておりますか、減税程度はどの程度にお考えになっておりますか、そこまでまだきまっておりませんか。
  69. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 正直に言いますと、実はまだきまっておりません。一応農林省からある数字は出てきております。その数字は、今おっしゃった数字にかなり近いものになっております。ただそれは、保有米を一体どういう程度で課税するかという問題と実はうらはらになって結びついております。もう少し検討をしてみなければならないということで、この際われわれとしましては、はっきりした数字を申し上げるととはちょっとまだ御猶予願いたい、こういう気持でおります。
  70. 井上良二

    井上委員 次に、大蔵大臣に金利の問題について二、三伺っておきたいと思いますが、すでに前の本委員会におきまして、大蔵大臣は、税制改正資金的血いろいろな関係から、資本の蓄積を積極的に推し進めるということを言われております。また前国会以来大蔵大臣は、わが国の金利は国際金利に比較して非常に割高だ、これを国際金利水準に引き下げるように漸次努力をしなければならぬ、こういうことを申されておるのであります。そこで、大蔵大臣としては、今度の税制上の優遇措置や、それから出て参りますところの資本の蓄積等から考えまして、預金は相当伸びるのであろうが、その結果、貸し出しは一体どういうことになっていこうとするのか。最近の金融界全般の状況は、いろいろな雑誌、新聞等によりますと、貸し出しが緩慢化してきておるということがいわれております。そういう事情のもとにおいて、大蔵大臣が国民に公約いたしましたように、国際金利に近づくようわが国の金利水準を引き下げていくというととが実際行われ得ますか、また行わせるように政府はやりますか、大蔵大臣のこれに対するはっきりした御所見を伺いたいと思います。
  71. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申し上げます。今後金利が低下していく、また政策としても下げていく、これは申し上げて差しつかえないと思います。そうしてそれがむろん実現していくということも私は確信を持っておるのであります。ただ問題は、一挙にこの国際金利水準にいくということではないのでありまして、日本の金利が国際金利水準に比べて高いということは間違いない。従ってこの不利な点をできるだけ幅を縮小していくことに努力を加える、その意味で今後は金利が下っていく、また下げる政策をとる、こういうふうに御了解を願いたいのであります。
  72. 井上良二

    井上委員 大蔵大臣は、長く日本銀行総裁をおやりなっておりましたからおわかりでありましょうが、今日のわが国の高金利の原因は一体どこにありますか、どういうわけで金利の下らない現状にあるのですか、それを御説明願いたい。
  73. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。これは端的に申し上げますれば、今回の戦争によって日本の資本がすべて吹っ飛んだ、この面から資金の需要が非常に多くなり、同時に資本の蓄積がそれほどはかどっていかない、これは人口が多くて領土が非常に小さくなったというような基本的な線とも関連してくるのであります。要するに需給関係から見て資本の蓄積が非常に少いということにあるのです。
  74. 井上良二

    井上委員 資本の蓄積が少く、需要が多いということから高金利が維持されておる、こういうことから考えまして、最近の資本の増加の傾向から考えますならば、当然この金利は漸次下げられていかなければならぬのに、政府はこれに対して何ら必要な法的措置考えていないというのはどういうことによりますか。
  75. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 従来、歴代の政府においても、市中金利を下げることには非常に努力されたのであります。また現に終戦以来の金利の足取りを見れば、御承知の通り相当下げて参ったのであります。ただしかし、なおそれでも高いのであります。従ってここに何としても金利が下るということは、他面において資金の需給がよくなる、言いかえれば資金の供給がよくなるという面がある。これは金融が円滑にいくということが大きなねらいです。円滑にいって金利が下る、そこで事業を興そう、こういうふうな関係になるのでございます。ですから、何をおいても資本の蓄積を増大するということを、あまりかれこれ言わずに大きくつかまえていくということが一番大事で、その資本の蓄積ができれば、今日の自由経済の体制化におきましても必ず金利が下り、資金の供給もよくなる、雇用の関係もふえるという結果が出ることは、私は申すまでもないと思っておるのであります。
  76. 井上良二

    井上委員 さいぜん私が申しましたように、政府みずからとっております金融引き締めの結果、全体の預金がふえて相当資本蓄積ができてきた。しかるに一方貸し出しは漸次緩慢化してきておるという現状にあるわけです。そうなれば、今は金利を引き下げる一番のチャンスであろうと思う。その金利引き下げのチャンスが来ておるのに、大蔵当局はこれに対する積極的金利引き下げの指導をやらない。やらないと言うたら語弊がありますけれども、法的な措置を講じない。これは何かやれない原因がありますか。またあなたは預金利子の免税の問題、あるいは株式配当に対する減税の問題等を考えて、資本の蓄積だけを一生懸命考える。同時に今申したように、現実には貸し出しが緩漫化してきておるのでありますから、そうなりました場合は、金利を引き下げる絶好のチャンスじゃないか。この絶好のチャンスをのがしたらえらいことになる。今はあなたが日ごろ国民に公約されておる、金利引き下げを打つ最もいいときだと思うが、これに対してあなたは、たとえば金利を一厘なり二厘下げることをやるべきじゃありませんか。そうお考えになりませんか。
  77. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 全くごもっともなお説で、私もさように今日の金融市場を把握いたしております。従って具体的に金利を下げることを指導しておるのであります。ただ御承知のように、今日の法制下におきましては、具体的な金利引き下げは金利調整審議会というのがありまして、この審議を経まして日本銀行の政策委員会で決定をするわけであります。ただそれがおもしろくないときにおもしろくないというと誤弊がありますが、大蔵大臣が承服ができぬ場合に直ちに変更を命ずることができる、こういうふうな制度に今日なっておるのであります。そういう意味におきまして、そういうふうな機関を通じまして金利の引き下げに努力をいたしておるわけであります。ただこれは、経済理論の根本に対する立場の相違でいろいろと意見もありましょうが、私どもの立場としては、いかにも金利を命令でこうしょう、ああしょうという態勢は好ましくないという立場をとっておるのでありまして、できるだけ実情に応ずるとともに、やはり金融に携わる者が自主的に下げていくというような形において実現をはかりたい、こう考えて、せっかく努力をしておるわけであります。
  78. 井上良二

    井上委員 市中銀行や特殊銀行に対しては、民間資本の関係もあって、政府法的措置を講じ安い限りは金利の引き下げは実際困難かもわかりません。金融市場が非常に悪化してこない限り非常に困難な実情で、法的根拠を持たない限りは、政府がそこまで命令することのよしあしという問題は考えられぬだろうと思います。ところが政府の各金融機関に対する金利引き下げはどうお考えになりますか。
  79. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は政府の金融機関の金利についても、今後適切に引き下げを断行していきたいと考えております。
  80. 井上良二

    井上委員 もっと具体的に御答弁を願いたいのです。すでに国民金融公庫におきまてしは、櫛田総裁が先般記者会見をいたしまして、金融公庫においては金利引き下げということを声明いたしております。これは大蔵大臣御了解になっておりますか。もし国民金融公庫の金利引き下げが行われるという実情でありますならば、当然中小企業金融公庫、あるいは農林漁業金融公庫、その他輸出入銀行、あるいはまた農林中金、商工中金等は、ほとんど政府の援助によってできている金融機関でありますから、これらの特殊な各金融機関に対して、それぞれ所要の金利引き下げを政府みずから民間金融機関に対する先べんをつける意味からも断行すべきじゃないかと思いますが、そうお考えになりませんか。
  81. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 政府金融機関の金利の引き下げについて、今私は方針を申し上げたのでありまして、どういうふうに金利を取り扱っていくかということは、なお具体的に考えていかないと、単に政府機関なるがゆえに、金利を引き下げることによって補助金を与えるというような結果に陥ってはならないのでありまして、今日政府機関の金融にいたしましても、そういう意味は原則的なものではないのでありまして、市中銀行との金利の関係、個々の政府金融機関の性格の点、そしてまた融資先の特殊性等を考えて、具体的にはそういうもろもろの情勢を考えていきたい。しかし全体の方針としては、私は市中銀行の金利を下げることを指導し、また下げるということでありますから、政府の金融機関も当然考えなくてはならぬと思っております。
  82. 井上良二

    井上委員 具体的に質問をいたしますが、国民金融公庫の櫛田総裁の金利引き下げということについては、あなた自身は承認を与えるつもりですか、それを伺いたい。
  83. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 先ほど申しましたように、私としてはなるべく下げたいという方針でありますから、その銀行の総裁がら下げたいという申請がありますれば、むろん私はその判断が間違っていない限りにおいては、承認を与えてよかろうと考えております。
  84. 井上良二

    井上委員 同時に中小企業金融公庫その他の金融機関も積極的に一つやってもらいたい。民間全般の金利を引き下げるというあなた自身の強い決意の上に立って、政府みずから一つお手本を示していただきたい。たとえば国民金融公庫におきましても、昨年の黒字は約五億円からに上っておりはせんかと思っているのです。五億円を政府の方に納入しております。まだ中小企業金融公庫の方は調べておりませんけれども、これらの金融機関は何も利益を目的にして経営をしているのではなく、金利を安くして多数の人に利用願うという目的を持っておりますので、できるだけその金利を下げていく、これがまた民間市中銀行を刺激いたしまして、金利引き下げの一つの大きな動機にもなりますから、政府みずから進んで積極的に金利引き下げの方策を講じてもらいたい。そうでないと、国民はいろいろな犠牲を払って、租税特別措置法において大法人に対して所要の優遇措置を講じて、それで資本の蓄積をいろいろな角度からはかり、貿易の推進をはかろうとしておる。また現に輸出入銀行の金利内容を調べてみましても、外国金利との関係においては、ほとんど外国金利と一緒の金利で貸し与えている。海外と取引の場合は、特例で外国金利と一緒の金利にこれを貸し与えることを許しておいて、国内の他の金融機関との金利の関係では、非常に高い金利を取っている。はなはだしきは四分も五分も違う金利になっている。こんなべらぼうなことはあり得ないのであります。さようなことからして、ぜひ一つ政府機関の方を、これは大蔵大臣の指導と運営によってやり得るのでありますから、政府関係の金融機関の金利引き下げを一つ努力を願いたいと思います。同時にこの金利引き下げをいかにやりましても、現在の市中銀行が行なっております、歩積みの制度、両建制度がございますが、その歩積み、両建制度をやめてもらわなければ金利引き下げは何の役にも立ちません。この歩積み、両建制度に対して、一体大蔵大臣はどういうお考えを持っておりますか。この点を伺いたい。
  85. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答え申し上げます。歩積みとか両建は、これは、もうこういうもののありますことがはなはだもってよろしくない。当然これはやめてもらわなくてはならない。これはずっと前からこういうようなことの廃止について金融機関に強く要請をして、日本銀行や大蔵省では検査等のときに十分注意をしておるのですが、なかなかわかりにくいところもあります。これは最近の新聞なんかを見ると、ややもすると金融機関で、こういうようなものをやめるからもういいじゃないかという議論、まずこういうやめることから始めるという議論もありますが、私はこれは、非常におそれ入った考え方のように思っておる。そういうことを公然と認めるようなことすら私はおもしろくないので、それは当然あってならないもので、それはやめてもらう。こういうような考え方をしております。全く同様な考え方をいたしております。
  86. 井上良二

    井上委員 大蔵大臣は、この歩積み、両建制度というものは絶対許すべきものじゃない、そういうお考えでございますが、そういうお考えならば、それを具体化しまして、もし市中銀行が歩積み、両建を秘密裡に行なっておるというものに対しましては、取り締っていくというお考えがありますか。取締りについては、取締り法規が必要でありますから、銀行法を改正して、歩積み、両建をやるような銀行に対しては取り締るという措置が講ぜられますか。そうでなければ、単にそこであなたがそういうことを御答弁されても、それこそ法王さんのお経にすぎないことになってしまう。一向実権を握っております金融業者は、馬の耳に風ということになりますから、大蔵大臣がいかぬというお考えならば、具体的にいかぬことを行わせないように法的措置を講ずる必要がある。また現に銀行経理は、あなた方の銀行局の方から検査に行っておるが、一体検査官は何を検査しているか。そういう検査官を置いておいたのでは何の役にも立ちません。だから、そういう点に対してもっと報告を厳重に求めるなり、やっていることが事実ならばやめさせるように、やめなければその銀行には日本銀行からの融資をとめてしまうというくらいのことをやらなかったらやまりません。あなたは金融の実権を握られた経験があるのですから、それをとめようと思ったら簡単にとまり得るのです。高率の貸し出しを日本銀行がやって、金融引き締めをやったと一緒に、日本銀行がもし歩積み、両建をやっておる市中銀行があれば、その銀行には融資させぬ、こういう方針をきめると、一ぺんにやまってしまいます。やるだけの意思がありますか、そういうことを具体的にやってとめさすようにしなければ、通り一ぺんの答弁をしただけでやまるものでありません。もうかることですから、もうけることのためには人を差しおいてでもやろうという人ばかり集まっているのだから、だからこれはなかなかそんな一片の答弁だけでやまるものでございませんので、具体的にそれを抑制していくような金融上の措置を講ずる実権をあなたはお握りになっているのだから、おやりになりますか、それを伺いたい。
  87. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 実はこの問題につきましては、私も井上さんと同じように考えたいし、またそういうようなことを私室は感じたこともあるくらいです。どうすればいいか。今お話のような、これはまあ大蔵省に銀行検査官もあるのだから、あるいはまだ日本銀行の考査局で取引先を御調査なさる機関もあるのですから、これは一つほんとうに具体的に調べて取り締るというふうにしております。ただ何さま、私はそういうものがそうあるとも思いませんけれども、どういうのか実情をよく調べなければ、またあまり平地に波乱を起すようなこともいけませんので、その辺は適切に一つやりたいと、こういうふうに御了承願います。
  88. 松原喜之次

    松原委員長 関連質問の申し出があります。これを許します。山本勝市君。
  89. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 関連質問をいたしたいと思います。ただいま国民金融公庫の総裁が金利を下げたいというふうな御質問があって、その答弁を私はっきり聞きはぐったのですけれども、国民金融公庫に対する資金の需要と申しますか、それは二倍とか三倍とか非常にたくさんの申し込みがあって、その中で実際貸してもいいものでも資金が少くて貸せないという実情だと思います。そういう場合に、金利を下げるということが果して妥当かどうか、もし下げるということになれば、今大臣がおっしゃったように、借りた人に補助金を与えるのと同じような結果になって、借りられない多くの人は、現在のままの金利でも借りたいけれども借りられない実情にある。借りる資格があって借りられない人のことをやはり考えて、しかも一般のノーマルな金利というものはどのくらいになるかよくわかりませんが、実際の金利は非常に高いのではないかと思います。それで政府の金を使って借りられた人だけが非常に得をするということで、下げるとますます需要が多くなってくる。借りられない人がたくさんできてくる、こういうことを私は心配するのです。今ちょっとお答えを聞きはぐったのですけれども、国民金融公庫の金利を下げるというふうなことであるのかどうか、それを認める意思があるのかどうかという質問があったようですので、ちょっとお伺いしておきたいと思います。
  90. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。先ほどから申し上げましたのは、全体として金利を下げるといいますか、あるいは金利が下る状況下にあります。政府機関においても、方針としては、特に政府機関の場合においては、政府の出資になる、あるいは預金の増加になる、こういうことになりますと、預金をとるのとは違いますから、政府機関については下るのではなくして、下げるという方針をとるわけであります。私は根本方針はそうだと考えます。そこで先ほど国民金融公庫総裁が金利を下げたいと言っておるが、そういう申請があった場合にはどうするか、こういうふうな御質問でしたが、私はそういう金利の点については、やはり責任を持っておる総裁にまかした方がいいという考え方をしております。それが適切であるかどうかということについて大蔵大臣は判断を加えて、よかろうとか悪かろうとかいう、こういうふうな考え方をしております。ですから、国民金融公庫の総裁から私は何も話を聞いておりませんので、どういう考え方で、どういう判断のものにそう言っておるか、これをよく聞いて、それがいかにも適切と思えば、上げる方より下げる方がなるほどいいと思えば考えてもいい、こういうふうに申し上げたのです。
  91. 山本勝市

    ○山本(勝)委員 国民金融公庫の総裁の判断が適切であればそれを認める、その適切という意味でありますけれども、私が申し上げたいのは、井上さんも質問されたように、なるべくたくさんの人に貸すということが大切だと思うのです。少数の人が安い金利で借りられるよりも、借りたい人にできるだけ広く貸す。その場合に金利を下げて、もちろんもうける必要はありませんけれども、余裕があればその余裕は、金利はそのままでも多くの人に貸してやるということにして、金利を下げたために余裕ができないというよりも、今のままで余裕ができれば大勢の人に貸してやる方が適切じゃないか。その判断の適切かどうかというときに、私はそのことも考慮に入れてもらいたい、こういうことを申し上げておきます。
  92. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 ごもっともでございまして、これは要するに具体的問題となります金利が、他との比較において、あるいはまた特に中小企業を対象にした金利として、現実の金利がどういう程度にあるかという問題となってくると思います。そこで他と比べてもそう高くないとなれば、そう下げる余地も少いかもしれない。しかし高いなら下げてもいい。これは具体的にいきますが、今申しますのは、一般に金利が低下しつつあり、下げるのですから、従来のべースより国民金融公庫の金利が高くても下るのはいいじゃないか、私はこういうふうに思っておるのです。特に金利を高く上げておいて、その金利の収入でもって融資量をふやすというのももっともだと思いますが、私はそれほどそれを主眼にしなくてもいいのじゃないかというふうに考えております。こういう国家機関としては、金利はこのくらい他との比較において適切に下げることが望ましい。そうすると金利収入が減る、従って融資の量が減るとなれば、やはり新しい財政支出を必要があればするというのが筋ではなかろうかと私は考えております。
  93. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ただいま井上委員から歩積み、両建の御質問がありました。大臣も歩積み、両建はなるべくやめるように取り締りたい、こういう御答弁でありますが、やめるように取り締りたいというまではけっこうですが、しかし具体的にいかにして取り締るか、そこをお聞きしなければならぬ。一体歩積み、両建を取り締る根拠法律がありますか。どういう規定で取り締るのですか、ちょっとお尋ねいたします。
  94. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これはどの法律というよりも、大蔵省の銀行全体に対する行政的な権限といいますか、指導といいますか、一般的行政権といいますか、そういうものをもとにして銀行検査をやっておるもの、そういうふうに考えております。
  95. 奧村又十郎

    ○奧村委員 そうしますと、銀行検査した場合に歩積み、両建がわかった、その上でそれを法的にどうなさるのですか。これは勧告の程度以上には出られないはずですが、また勧告を業者が聞かないという場合に、法的にはどういう根拠を持つのですか。
  96. 河野通一

    ○河野(通)政府委員 銀行法によって検査をいたしました結果、不当なところがあって、これを注意いたします。それに対して大蔵大臣は、銀行法第二十二条ないし二十三条の命令を発動することがあります。その命令に違反いたしました場合におきましては、たとえば業務停止命令を出したり、一番行状の悪いものに対しては免許の取り消しをする、あるいは役員の解任を命ずる、そういったようないろいろな制裁規定があるわけであります。なお大蔵大臣の命令に違反いたしました場合には、ごくノミナルなあれでありますけれども、罰則もあるわけでありますが、罰則よりもやはり今申し上げたような行政上のいろいろな措置、この方が非常に重いわけであります。しかしこれらの銀行法第二十三条あたりの規定は、できるだけこれを具体的に発動するというところまで持っていかないで、指導によってそういうことを是正していくという配慮が行政当局としては望ましい、かように考えておる次第であります。
  97. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ただいま御答弁がありましたが、具体的にそういうことで取り締れるものなら、きょうまでにもっと歩積み、両建は減っているはずです。そこで今言われる銀行法の第二十二条、二十三条で歩積み、両建に対して命令なり、指示なりをやったことがありますか。
  98. 河野通一

    ○河野(通)政府委員 その法律を使ってはいたしておりません。今申し上げましたように、一般の監督権に基きまして、何と申しますか、法律上、あるいは厳格な意味におきましては勧告ということになるのでしょう。あるいは行政指導ということになるのでしょうが、そういったことの通牒はたびたびいたしております。ただ奧村さんもよく御承知の通り、いわゆる歩積み、両建というものは、ことに両建の場合につきましては、債務者預金がある場合においては、これは両建預金であります。その中で特に不当と認められ、あるいは行き過ぎていると見られるものを私どもはいわゆる両建として、それの是正を求めておるわけであります。およそ債務者預金はすべていけないということは言ってない。それから歩積みにいたしましても、普通の担保を、信用がない場合に担保としてある非常にモデレートな率の歩積みといいますか、こういうことは、戦前の経済が正常の状態にあるときからずっとあるわけであります。債務者預金というものもずっと前からあるわけです。その中で特に度合いのきついもの、あるいはそれで利ざやをかせごうとか、あるいはドレッシングしようとか、そういったふうな意図のもとに行われる債務者預金がいけないのであります。また歩積み預金がいけないのでありますから、およそ債務者預金たるものは、すべて両建としてはいけない、また歩積みを少しでもしたらいけない、そういう態度を私はとっていないのであります。従いまして、あらゆる場合におきまして、検査をいたしましても、そのどこから先がいけ拾いかという問題につきましては、個々の場合において非常にむずかしい問題があると実は思うのです。しかしこれらの点につきましては、私どもは大体一つの標準を持って指導をいたしておりますから、個々の場合につきまして、検査に当ってはよく注意をいたしておるわけであります。
  99. 川野芳滿

    ○川野委員 ただいま歩積み、両建問題について御議論がございましたが、その御答弁の中に、検査官をして検査をさせて、そうして注意する点がある場合は注意する、こういう御答弁があったように思います。私はこの検査官の検査が問題であると思います。今検査官が地方に参りましていろいろ検査をいたしますと、断言的に申しても差しつかえないのですが、必ず酒飲みが始まる、あるいはおみやげをもらって帰る。これでは、検査官が地方に参りまして地方銀行を検査され、不正がありましても、とうていこれを注意すべき勇気がないと私は存じます。そこで検査官の取締りというものがまた必要であると思います。そこで銀行を検査する検査官が地方に参りました節には、地方銀行では決して酒を飲まない、みやげをもらわないというような強い監督をすることが最も必要だと存じますが、この点について御答弁を願います。
  100. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 銀行の検査官に今御指摘のようなことがあるとは思いません。しかしながら、こういうことはない上にもないように重々注意をいたしておくことは当然でありまして、そういうふうなお話もあることでありますから、なお一層検査官等には注意を与えます。
  101. 春日一幸

    春日委員 伺いますが、歩積みと両建の問題は、すでに本委員会において先年来しばしば論じられた事柄であるにもかかわりませず、本日まで何ら解決がついておりません。のみならず一そう悪い傾向がさらに激化しておるのであります。それだけに、この問題の取扱いは本委員会において特に慎重を期さなければならぬと思うのであります。  そこで大臣にお伺いをしたいのは、との債務者預金の中で、両建預金の問題は後刻に譲りまして、歩積みですが、これは適法なものだと思われますか。それとも、たとえば貸し出しを行うときに、商手を割るときに、一定の割合の歩合をきめて、それを預金の中に封鎖していくという現在やっておるあのやり方は、現在の銀行法の精神にかんがみて適当でないとお考えになりますか、この点を明らかにしていただきたいと思います。
  102. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。歩積み預金につきましては、たとえば割引手形というような場合、これは担保がありませんが、むろん割引手形は手形自体が担保力を持っており、これは自動的に取り立てに応じて返金ができるというので、非常にいい手形ではありますが、ともするとこれは乱用される。特に戦後における信用調べの不十分な場合においては、往々この危険が起る。従ってそういうような割引手形について、割引額のある程度の歩積みを担保の意味においてとめ置くというのは、その限界を越えない範囲では、私はそう責められないのじゃないかと思っております。ただしかし、他面担保は、たとえば有価証券で担保をとって金を貸しておるのに、その貸した金のある程度を預金に置く、そうして引き出すについて拘束を与えるということがある、そういうのは私はいけないと考えております。
  103. 春日一幸

    春日委員 明らかになったと思うのであります。そういたしますと、単なる商手だけで割引をいたします場合に、ほかに担保物件のない場合は、債権保全のために一応そこの中から歩積みをとって定期の中に繰り入れていく、こういうことは違法ではない。けれども一般の現在の市中銀行の融資は、その融資対象に対して一定のワクがある。そのワクに匹敵するものはすべて不動産担保を徴収いたしております。その商手の発行者にもよりましょうけれども、取引されておりますところの大体の手形というものは、その手形自体のみを対象としないで、その総集計額を割りましょう。しかしながらそれを割るためには、ほとんど根抵当をとっておるのであります。そこで大臣にお伺いいたしますが、そのワクに匹敵する抵当物件をとっておって、そうして商手の割引を行う場合に、そのときに歩積みを行うのは適当でない、こういうふうに御答弁になったと思うのでありますが、そういう工合に理解して差しつかえありませんか。
  104. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 原則としてはその通りでいいと思います。
  105. 春日一幸

    春日委員 では銀行局長にお伺いをいたしますが、現在都心におきます商業手形は、あなたの方はしょっちゅう銀行監査を行なっておられると思うのでありますが、融資をする場合、単なる商手そのものを対象として割引が行われておるもの、あるいは商手の割引をする場合は、他にその銀行と割引債との間にパーマネントな契約を結んで、その大体一定ワクに対する見返りの根抵当権が設定されてあるもの、二つあると思うのであります。その割合は総貸出額のどのくらいになっておりますか、この点を伺いたいと思います。
  106. 河野通一

    ○河野(通)政府委員 お話のような二種の方法がありますが、ちょっと今割合について、どっちが多いかということを申しかねると思います。主として中小企業等の場合におきましては、今お話のありました根抵当を設定する、つまり根担保を作りまして、その根契約に基いて一定のワクの中で割り引いていく、中小企業につきましては、こういうやり方の方が多いのじゃないかと思います。しかし相手方によりますから、商業手形の特に関係人の優良なもの等につきましては、そういうワクに関係なしに割り引くという例も多々あるわけであります。
  107. 春日一幸

    春日委員 そういたしますと、現在中小企業者は、ほとんど根抵当を設定することによって商手の割引を受けておるのであります。それらの中小企業者が商手の割引を受けます場合、現在ほとんど歩積み預金が行われております。現在まで根抵当を設定しつつ、さらに商手について歩積みを銀行から強要されて積み立てておるというような事例を、あなたの方の監査の結果発見されたことはありませんか。またあったといたしましたならば、それに対してどういうような処置をとられておりますか、この際お伺いいたしたいと思います。
  108. 河野通一

    ○河野(通)政府委員 今お話の点につきましては、私的確にそういう事例につきまして具体的に聴取いたしておりませんので、至急調べてみたいと思っております。ただ先ほど大蔵大臣から答弁がありました点は、原則的には全くその通りだと思います。大蔵大臣も原則としてと言われておりますが、つまり根抵当があります場合におきましても、その根抵当の価値とそのワクとの関係におきましては、場合によっては十分にそれがカバーできないというおそれのある場合もあり得る、カバーが十分ついておる場合に、しかもなお歩積みを取っていくということは適当でないと思います。従って同じ根抵当といいましても、それのおそらく——根抵当の場合には、有価証券か不動産ではないかと思いますが、そういった不動産の価値、つまり担保価値というものが十分カバーとれておるかどうかというような具体的な問題については、場合によってはそれを補完する意味において、さらにある程度の歩積みといいますか、言葉は非常に悪いのでありますが、そういったものを取っていく場合もある、またあって差しつかえない場合もあり得るわけであります。
  109. 春日一幸

    春日委員 国が銀行の管理を、銀行法に基いてあなたに信託をいたしておるのであります。そういう大きな責任を負うておられるあなたが、そのようなあいまいもことした答弁をされることをきわめて遺憾に存ずるものであります。現在銀行がどういうような担保の取り方をしておるかということは、これは何人でも知っております。その評価額なんかも、時価より何分の一にも安くこれを評価しておる。たとえば五百万円のワクを設定しようと思えば、千万円も千五百万円もの時価に匹敵するものを取って、一方根抵当を設定しておいて、そうして割る手形については現在歩積みを差っ引いている。だから問題が起きておるのであります。私どもは、三百万円や五百万円の根抵当をとって、そこに一千万円で、その商手のワクのある分については、これは御指摘の通り足らざる分野をそれによってカバーするために、そういうような預金をば保護の立場においてされるということについてはもとより異存はございません。われわれが指摘いたしておりますのは、銀行は十分債権保全の道を別途講じておきながら、なおかつ商手の割引のときに際して、そういうような歩積みを強制的にとっている。これは明らかに不公正取引である。従って、別に公正取引委員会等についても注意を喚起している事柄でありますけれども、ただいま大臣の御答弁によりますと、そういうような歩積みは明らかに適当ではない——適当ではないということが違法であるかどうか私は知りませんけれども、適当でないということを大臣がここで言明された以上、そういう適当でない事柄を見のがしておくということは、もう許されてはならぬと思うのであります。私どもは抽象的な論議を言っておるのではなくして、これは現実に行われている事柄である。しかもそういう事柄が、銀行局において把握され安いということは一体どうしたことであろうか。ただいま自由党からも御質問がありました通りに、銀行監査に行っても、飲めや歌えのどんちゃん騒ぎで、いいころかげんのところで帰ってくるからこそ、こういったような問題がなおかつ続々と続けられている、こういうことであるのであります。私は、この機会に特に大蔵大臣に御要請申し上げたいことは、ただいま銀行局長が申されたように、担保が十分なものであって、別途根抵当が設定されている、そういうような貸し出し先に対して商手割引を行う場合、その都度歩積みをそこで差っ引いておるというような貸し出し方が適当でないとするならば、現在これが白昼公然と行われておるのでありますから、それをあなたの責任において、一つすみやかに調整を願いたいと思うのであります。また事例があなたの方でないとおっしゃいまするならば、こういうような傾向は、ただひとり単なる市中銀行の問題ばかりではございません。商業銀行はそういうことが見のがされて今日に至っておりまして、私は一昨日も予算委員会で、ほとんど銀行は無政府状態だと申し上げましたが、そういうような状態がだんだんと政府関係の金融機関にまで及ぼうといたしております。たとえば商工中金ですら、すなわち政策金融の大任を負います中金ですら、庫荷証券によってその商手割引をいたします場合、商業銀行のやっております悪い事例を踏襲いたしまして、歩積みの徴収なんかをいたしておるのでございます。こういうような銀行管理を、この上さらに見のがしておかれるということでありまするならば、私どもは別途単独立法の権威によってでも、この問題の解決をはからんければならぬと思います。この問題は本日始まった問題ではなく、すでに三カ年間の長きにわたって論議され、なおかつ何ら成果が上っていないことをきわめて遺憾に存ずるのであります。しかし、大臣が初めて歩積みは適当でないということをここで断言されました以上、その責任において即刻本日でも、その指令を全国の銀行に発せされることを強く希望いたしまして、私どもは事の推移を厳重に監視しつつ、大臣の御処置に期待をいたしまして、私の質問を終ります。
  110. 井上良二

    井上委員 次に……。
  111. 松原喜之次

    松原委員長 井上委員に申し上げます。今まで一時間余りの質問になっておりますので、あとは簡単にお願いします。
  112. 井上良二

    井上委員 簡単にやります。ただいま銀行局長から、歩積み両建預金に対する行政指導をやっておる。銀行法二十三条の適用はまだしていないという御答弁でありますが、実際上行政指導の対象になりました歩積み両建の行為を行なっておった銀行はどこの銀行か、そうしてそれを行政指導した結果廃止されたか廃止されていないか、その具体的資料をお出し願いたい。同時に、あなたの方で行政指導をするについては一応の標準を定めてやる、とこういうお話でございますが、その行政指導をする標準の指示規定はどういうことを書いてあるか、それを一つお出し願いたい。なおこの問題は、一般中小企業全般を非常に脅かしておる問題でございまして、金融資本はどんどん太って行って、たとえば日本橋から銀座へ行く間の両側の大きな建物は、ことごとく銀行の支店及び出張所、本店であります。そういうように、銀行は豪壮な投下資本をもってどんどん太っておる。反対に、中小企業は非常な圧迫を受けている。これに何ら政府が手をつけないということは、もう世論としても許されません。この問題は、金利引き下げの問題とからんでぜひ解決をして行かなければならぬ問題でございます。これに対する大蔵大臣の決意を伺いたのでありますが、大蔵大臣はどうお考えになっておりますか、はっきりした結論を御答弁願いたのであります。
  113. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 銀行の店舗につきまして御注意がありましたが、これは商売の上の特殊性からも来ておって、どこの国を見ても、やはり建物のあり方は似たような形になっておる。ただしかし、それだからといって過ぎたるはいけない、その過ぎた点については十分注意を加て行きたい、かように考えております。
  114. 井上良二

    井上委員 伺うところによりますと、政府の指示があったかなかったかは別としまして、日本銀行の政策委員会ですか、委員会で各方面の意見をまとめまして、表面金利を一厘下げる、こういう相談をされておるということがいわれておりますが、事実でありますか、そうして、もしそういうことが相談をされ御決定になっておりましたならば、実施の時期はいつと予定されておりますか、大蔵大臣から御答弁を願いたい。
  115. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 結論的なまとまった報告はまだ私受けておりません。従って、いつということも申しかねますが、そういう方向に話が進んでおるという報告は受けております。
  116. 井上良二

    井上委員 この日銀政策委員会の決定といいますか、協議事項というものは、大蔵大臣の方に報告がございませんか。大蔵大臣には日銀政策委員会の決定、協議内容というものは報告がございませんか。
  117. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 日本銀行政策委員会には、御承知のように大蔵省から政策委員が一人出ておるのでありまして、むろん政策委員会のやったことについては報告を受けております。
  118. 井上良二

    井上委員 そうすると、政策委員会は、一昨日金利一厘引き下げということを決定しておるのですが、その報告はありませんか。
  119. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 いや、先ほどその点については申し上げた。結論が出たという報告はまだ受けていないが、そういうふうに今やっておるという報告を受けております。
  120. 井上良二

    井上委員 最後に申し上げておきますが、今度のこの税制改正に伴う法案の一部に、御承知の通り預金利子全免の問題がございます。この預金利子全免の法案を審議する上において、銀行金利がどうなるかというととは当然考えなければならぬ問題でありますが、この法案を審議する過程において、金利問題をきめることが政府の御指導でできますか、それをお伺いしたい。
  121. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私としては、その間に明らかにしたいと考えております。
  122. 井上良二

    井上委員 わかりました。
  123. 古川丈吉

    ○古川委員 議事進行について。私はこの前にも議事進行について発言をしたのでございますが、きょうあらためて議事進行の発言をいたしますのは、実は今度の三十年度予算が、果して会期の六月一ぱいに通過するかどうかということを非常に懸念するからであります。六月の暫定予算が提案されましたが、願わくは、七月は暫定予算でないように、こういうことを願っての私の発言でございます。政府のやり方を見ておりますと、重要法案提出が非常におくれておる。先般もこの委員会で私が発言をしましたが、そのときは大蔵大臣がおられないで、また委員長も代理でありましたので徹底しなかったのかもしれませんが、予算関係のある法律案というものは、少くとも予算と並行して、願わくは予算の前に審議されるべきものだ、こういうことを申し上げておきまして、皆さんも異議がなかったはずであります。最近法案がぼつぼつ出だしましたけれども、この関連法案はまだ全部出そろっていない。こういう状態から申し上げますと、どうしてもこれらの法案をなるべく早く出してもらいまして、予算の審議が十分間に合うように——また私の考えでは、来月の初めに予算案が衆議院を通過しなければ、おそらく七月もまた暫定予算になるのじゃないかと思います。これはわれわれ委員、あるいは議員が審議をおくらせておるのではなくして、政府そのものが、ただいま申しましたような点で、私は非常に怠慢だと考えております。民主党の諸君にはちょっと悪いのでございますけれども、本日の午後のこの委員会は、現在本会議が開かれておりますから、本日は特別でありますけれども、民主党は十六人の委員で、三人かせいぜい五人しか出ておらない。こういうようなことで、今度の予算が通らないようなな場合に、野党がくだらない質問をしたからというようなことで、われわれが責任を負わされては迷惑千万であります。この点は、ぜひとも与党の諸君も政府も腹を据えて今度の審議を進めるようにお願いいたしたい。この点について大蔵大臣のお考えを伺いたいと思います。
  124. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 全く御注意の通りであります。
  125. 松原喜之次

  126. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私は、先日も大蔵大臣に対して租税政策の構想についてお尋ねしたが、どうも大臣の明確な御答弁がなかったので、重ねて二、三お尋ねしたいと思います。  大臣は、今回の三百二十七億の減税は、特に低額所得者に対して重点的に減税しておる、こういうことを重ねて言っておられるが、ここで具体的に資料をながめてみると、そうなっていないと思いますので、この点お尋ねしたい。  その次には、預金利子免税の御方針について。これは租税の公平原則を大きく破るものであるので、もっと別な方法をお考えになれなかったものか、これをとっくりお聞きいたしたい、かように存ずる次第であります。たびたびの質問でまことに恐縮でありますが、申し上げるまでもなく、税法は、地方税も含めて全体として一つの体系をなしておる、全体として公平な課税制度になっておるわけであります。従いまして、現行の租税制度に対して、民主党内閣はいかに考えておられるか、これはこのままでいいか、改善するとすればどういうふうに改善するか。今まで六年間自由党内閣であった、今度初めて民主党内閣の税の政策をお聞きするのであるから、これはどうしても聞かしていただかなければならぬ。それでなければ、今度の減税というものの趣意がわれわれは十分納得できない。そういう趣旨から先般来ずいぶんお尋ねしたが、どうも一萬田大蔵大臣の確固たる御信念を承わることができなかったことは、私は国民とともにはなはだ残念に思うので、きょうもう一度重ねてお尋ねいたします。  そこで、あまり全般的なことをお尋ねしてもしようがありませんから、一つ現在の所得税の制度について聞きます。現在の所得税の制度というものは、御承知の通り申告納税制度であり、総合して累進して課税する制度でありますが、この制度を今後ともやっていかれるか、これでいいと考えておられるか、これに対する大臣の構想を承わりたい。
  127. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。第一点は、今回の減税が低額の所得の人に対する減税でないように思うという御質問だと思いましたがこれは、基礎控除を従来の七万円から八万円に上げるとか、専従者の所得について控除をふやすとか、この対象は、勤労者並びに中小企業、農民等の低額所得者を対象にしていることは明らかであると考えているわけであります。  それから、今後における税制に対する私の根本について。ほんとうに率直に申しまして、私は今、日本の将来にわたる税の制度の根本について、こういうふうに具体的にするのだというところまで研究がいっておりません。これは率直に申し上げます。  それからもう一つは、累進総合。これも今申しましたように、税制全般について考えなければならぬことでありますが、この制度は、私も非常に研究しているというわけではないが、やはりこれは存置する必要があると考えております。問題は、技術士の点において税率をどうするとかいうことで、そういう基本的な点について私が今日考えていることは、日本においては、終戦直後においてはやむを得なかった、またそれがよかったと思うのですが、だいぶ間接税に移行しつつあるように思うが、直接税が非常に重かった。これはやはり相当間接税に移してもいいのではないか、こういうようなことも考えておりますが、しかしこれは、私が専門的な立場で言うのは少しおかしいので、私はそういう点についても、率直に申してしろうとなんでありますから、今後税制調査会等の意見をそれぞれ十分によく聞いて考えていきたい、こういうように考えるわけであります。
  128. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ただいまの大臣の、現行の租税制度について十分の検討は加えていないという率直な御答弁には敬意を表するのであります。率直でけっこうでありますが、しかし三百二十七億の今回の税法改正は、現行税制の上に手直しをするのだから、現行税制に御検討を加えずに改正するということは、これは頭からあり得ない。どうですか。そういう御答弁は、これは大臣としてはなすべき御答弁じゃない。現行の税制の上に今三百二十七億の改正を加えられるのです。現行の税制には十分の検討を加えていないから答弁できない。もとは研究していないが、減税だけ見てくれ、これじゃどうも御答弁にならぬ。われわれは税制というものをもっと大事に考えている。言葉にからんで恐縮ですが、筋としてそうじゃないでしょうか。
  129. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私は、この今回の減税は、税制の基本的改革というような見地に立ったのじゃないのでありまして、現行の税制下において低額所得者の負担を軽くしたい、こういう考え方で、やっておるわけであります。
  130. 奧村又十郎

    ○奧村委員 大臣のお答えは、さしずめ低額所得者に減税しようということでございますが、その大臣のいわれる低額所得者というのはどういう意味なんですか。つまりなるべく所得の低い人に重点的に減税する、こういう意味なんですか、どうですか。
  131. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 さように考えております。
  132. 奧村又十郎

    ○奧村委員 この間も主税局長にはお尋ねしたのですが、これは政策的な問題ですから大臣にはっきりお尋ねします。具体的に今度の三百二十七億の減税数字に現われたものを集結した資料が主税局から提出されておるので、その数字によって一つ説明を願いたい。  租税及び印紙収入予算説明の二十九ページをごらんいただきます。給与所得者、給与の月割額は、今度の減税に際して、政府減税案によりますと、独身者で一万円の月給を受ける人は、一万円に対して百六十三円の減税になります。ところが三万円の月給取りの方は、合計で八百円の減税でありますから、一万円に対して二百六十六円の減税になります。それから月給五万円の所得者は、合計で二千七十五円の減税です。従って一万円当りの減税は四百円をこえます。そうすると、一万円しかもらわない月給には百六十三円の減税、五万円の人には、一万円に対して四百円の減税、これは低額所得者というのはどっちを低額というのですか。この点一つはっきりお答えを願いたい。
  133. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私よりも政府委員説明した方が詳しく説明できると思うのですが、私の考えておるところでは、仰せのように一万円よりも五万円の所得が大きなことは言うまでもありませんが、これは従前より税負担が大きいという考えで、従って今回は税負担を軽くする、そうして均整をとった、かように私は考えております。
  134. 奧村又十郎

    ○奧村委員 大蔵大臣にお尋ねします。こういうことは主税局長に答弁させた方がいいというが、これは民主党の取っときの公約です。しかも大臣が施政演説で、特に低額所得者にとこう政策的に述べられたのであるから、これは大臣にお伺いしなければならぬ。私が今申し上げましたように、今度の減税案では、一万円の給与所得者には百六十三円の減税、五万円の給与所得者には一万円に対して四百円の減税になる、これは間違いないと思いますが、大臣はそれをお認めに捻りますか。
  135. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 その通りであります。
  136. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それじゃ低額所得者に減税をするというのは、一万円の所得者の方に五万円の所得者よりもよけいに減税するという意味であるか、五万円の所得の方へ四百円も減税して、一万円の所得者には百六十三円しか減税しない、これはさかさまであるが、大臣の言われたお言葉はどういうことをさしておるのか、この事実は事実としてはっきり認めていただきたい。
  137. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは所得が小さい、従って税の負担も小さい、こういうところでおわかりになるのじゃないでしょうか。大体今回は、年所得が十九万くらいの所得者には所得税がかからぬようにする、こういう考え方にな  っておるわけであります。
  138. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私のお尋ねしておるのは、そのことをお尋ねしておるのではない。大蔵大臣が、低額所得者に特に減税すると言われたから、それならば五万円の月給取りよりは一万円の月給取りの方へ減税をする、それが五万円の月給取りの方へよけいに減税しておるので、低額所得者に減税するというお言葉が間違うておるから、大臣のお言葉が違うのか、この実際の資料が違うのか、どちらが違うのか。
  139. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。それはこの表の対現行というところのパーセントで御了承が願えないでしょうか。
  140. 奧村又十郎

    ○奧村委員 大臣の言われるのは、それは今主税局長の入れ知恵で、三万円の月給取り、あるいは五万円の月給取りは、従来税金が重かったから、この方面に重点的に減税するんだというなら、それは話しはわかるのです。それなら何もことさらに低額所得者に減税するという、そういう看板を掲げぬでもよかった。低額所得者に減税するというならすなおに減税すべきであるが、実際は三万円ないし五万円の月給取り、これは年収でいえば六十万円以上のいわば中額、あるいは高額所得者ですが、これに一番重点的に減税しておるから、それは大蔵大臣の言われる言葉と実際のやり方とが違うじゃないか。
  141. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これはいろいろとあるいは御意見があるかもしれませんが、現在の負担の割合からいくと、今度の減税の結果、たとえば低額の所得ほど比較的に大きく現行に比べまして負担割合が減ってきた、かように申し上げられるのじゃないかと思います。
  142. 奧村又十郎

    ○奧村委員 どうも明確な御答弁がありません。それじゃお尋ねの仕方を変えます。大臣は、特に今回は低額所得者に重点を置いて減税すると言われたのでありますが、何がために低額所得者のために重点を置いて減税をなさるのでありますか。
  143. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私の考えでは、低額の方々が、今日の状況から生活その他において一番御苦労なさっておる、こういう面からできるだけ軽減をしたい、こういう意味であります。
  144. 奧村又十郎

    ○奧村委員 全く私も同感であります。大臣のおっしゃる通り、所得の少い人ほど生活が苦しいから、そういう方に特に重く減税する、まことに賛成であります。それなら、五万円の月給取りの方よりも、一万円の月給取りの方になぜよけいに減税をしてあげなかったのか。
  145. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 それは先ほどから申しましょうに、この表の対現行という欄に軽減割合が出ておりますが、一万円の人なら軽減割合が四割くらいになります。五万円でしたら一割六分、こういうふうになっておるということで御了承を得たいと思うのです。
  146. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それは先日主税局長からそういう御答弁がありましたが、これは数学の手品で、国民感情としてそういうことは納得できません。それなら低額所得者に重点的に減税するというお言葉には合わぬ。低額所得者は、もともと税金の負担率は少いのだから、たとえば今まで税金を二百円負担しておった、それに対して二百円減税すれば、百パーセトの減税でしょう。ところが五万円の所得者は、かりに一万円税金を負担しておったとして、その人に二百円の減税なら、これはおそらく百分の二の減税になる。税額に比較するからそういう議論が出るけれども、これはごまかしであります。何といったって国民感情として、せめて五万円の所得者と一万円の所得者を同じ率で百六十三円ずつ引いていくならまだしもわかる。五万円の方へ累進してよけい引くということは、何としても納得できません。それで国民の皆さんが納得できると思われるのですか。——これはもうこれ以上お尋ねしてもどうせお答弁がないと思いますから、それではもう一つ、同じことでありますが、お尋ねの仕方を変えます。  なぜこういう五万円の人に特に減税になるかということは、大臣もおわかりの通り、勤労控除の限度を四万五千円から六万円に引き上げた、そして勤労控除率の一五%はそのまま据え置く、ここに根本の矛盾がある。勤労控除の一五%の率というものは、昭和二十四年度のシャウプ勧告時代からずっと据え置きであります。ところが控除の限度の引き上げは過去二、三回行われている。そこで今度の給与所得者にとって、四万五千円から六万円に限度を引き上げれば、月給で二万五千円、それ以上をもらっている人が助かるわけです。二万五千円以上四万円近くの月給所得者の人だけが、控除限度引き上げで助かる。それではほんとうの低額所得者は救われぬ。そこで勤労控除一五%をせめて一七%まで引き上げれば、最低の給与所得者が助かる。控除の限度を引き上げるよりも、一五%をせめて一七%まで引き上げるべきであったが、なぜ大臣はこの方に先に手をつけなかったか。少くとも低額所得者に重点を置くならば、この方が先であった。その点の大臣の御答弁を願います。
  147. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 主税局長から答弁をさせたいと思います。   〔「これは政策的な問題ですよ」と呼ぶ者あり〕
  148. 松原喜之次

    松原委員長 補足説明をさせます。渡邊政府委員
  149. 渡邊喜久造

    渡邊政府委員 先ほど来いろいろお話がございましたが、政府としまして、  一応低額所得者を中心にして減税を行なったということにつきましては、もう奧村委員のよく御存じのように、今の表をごらん願いましても、たとえば一万円の場合におきましては四割、それから一万五千円の場合には、それが一割九分三厘、こういうふうな軽減割合になっておりまして、軽減の割合をごらん願いますれば、やはりこれが低額所得者を中心にしたものだとわれわれは考えております。ただこれに対しまして奧村委員の御主張は、あるいは絶対額、あるいは百円当りの額がとにかく下の方が大きくなければ、これは低額所得者に重点を置いた減税でない、こういうような御意見のように思いますが、これは、ある意味においては意見の違いというふうにいわざるを得ないと思いますが、われわれといたしましては、とにかく現在におきましても低額所得者の方が御承知のように相当負担は軽くなっております。従いましてこれに対して、たとえばこの負担を半分にするということにいたしましても、軽減する額というものはおのずから一応の限度があるわけです。上の方の人が、たとえば一割負けるということになりましても、現在の負担が大きいということによりまして、やはり額としては大きくならざるを得ないわけです。従いまして、要するにどこにものの見方のポイントを置くかということで、おのずからやはり意見の違いが出てくることはあり得ると思いますが、われわれは今のような立場に立ちます限りにおきまして、その看板に偽わりありといったような意味のものとは考えておらないのであります。  それからもう一つ、限度の引上げをなぜやったかというような点につきましては、これは低額所得者の問題とは多少離れますが、税制全体として考えて参りますと、やはり現在の三十万円で頭打ちしているということにつきましては、どうもそのへんの階層におきましての負担というものが、とたんに重くなるということもございますので、これはやはりある程度引き上げるべきじゃないか、こういう意味で今度の提案をしているわけでございます。御了承願います。
  150. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ただいまの御答弁は、大蔵大臣の御答弁でないから、はなはだ食い違うておる。大蔵大臣がただいまお話になったのは、低額所得者が特に生活に苦しんでいるから、その低額所得者に重点を置いて減税しよう、これが今度の減税の建前だというのです。そうしたならば、五万円の給与所得者と一万円の給与所得者といえば、一万円の給与所得者によけい減税するのが、大臣のお言葉通りになる。そうなんです。また給与所得者でも、限度引き上げに対して、四万五千円を六万円に引き上げるのは、二万五千円以上の月給取りだけが喜ぶ。これは地方の税務署に行ってごらんなさい。この減税法案と肝心の関係のある税務署でも、二万五千円の月給をもろうている税務署員は、一税務署に何人おりますか。百人の税務署員に二、三人です。あとはそういう限度引き上げで恩典を受ける税務署員はおらぬ。そういうような減税で、低額所得者、特に生活に苦しんでいる者に減税しますと言えますか。大臣は、生活に苦しんでいる一番下の人に減税するとおっしゃった。大臣の御答弁をお願いいたします。
  151. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今回の税の改正で所得の低い人ほど減税の割合が大きくなっていると私は承知しております。それでいいんじゃないでしょうか。むろんおっしゃるように、所得の少い人は税に一つもかけないというように持っていく、下ほど絶対額の税も軽くすることができれば、私はそれも一つ考え方で、いいと思うのですが、しかし今度の税制によって、従来にくらべて比較的に割合としてほかの人よりも自分たちの方が税が軽くなったということが言えれば、それも一つ減税としての考え方じゃありませんか、私はそういうふうに考えるわけであります。
  152. 奧村又十郎

    ○奧村委員 われわれは国民を代表して、この民主党内閣減税の内容をここで真剣に討議しておるが、今のような大臣の御答弁では、なるほど低額所得者に今度は減税になったという気持は、おそらく起らぬと思います。けれどもこれ以上お尋ねしても、大臣からこれ以上納得のいくような御説明は得られないと思いますから、この問題はやめておきたいと思います。  次に私は預金利子の免税について大臣のお考えを承りたい。これについてはこの前もお尋ねしました。世界の各国にほとんど例のないことを、また日本の税制でもこれは初めてのことであるが、これをもう少し突っ込んでお尋ねをいたしておきたい。大臣も御存知の通り、すでに十万円までの預金は、国民貯蓄組合等の規定によって免税になっておる。家族の数が多ければ、家族名でみな分割して預金する、また幾つもの金融機関に分けて預金するというように、やり方によっては何百万円の預金でも十万円以下の分割して預金すれば全部税金がかからぬ、そういう状態なんです。としたならば、それ以上の何千万円、あるいは億に近いような高額な預金を預けておる人の利子を免税する、そういうことを今ここでなぜしなければならぬか。しかもすでにこれは民主党の手で、前々国会で分離課税をやっておる。この上はっきりと税の義務をこういう大口預金者に全然免除するということで税の公平を乱すことは、どういう意味を持つかということについてお尋ねをしてみたいと思うのであります。さてそこで大臣にお尋ねしますが、さような処置をとって貯蓄を増強しよう、そうしてそういう大きな所得者、大きな金持ちの方の貯蓄を進めよう、こういう意味合いにおいて今度の免税をなさろうとするのか、お尋ねします。
  153. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 今回の処置によって私の目的といたしておりますことは、何としてもしばしば皆様からも言われますように、金利は高い、それから資金は少い、人口が多くて、そうしていろいろ働こうとしておるのに、資金がないために働けないというのはおかしいじやないかというような考え方は、これは学問的に言えばどういうふうに触りますか、そういう状態、姿が日本の現状と思うのです。それでむろん税制とか税理論とかいうことだけから考えると、私はいろいろと批判の余地があることは覚悟いたしておるのでありますが、何としてもここで資金の蓄積を増大して、資金の量もふえ、金利も下り、資金が円滑にいって事業も起る。こういうことをこの際推し進むべきであるという決意から来ているのでありまして、結果においては、どういう人がどういうふうに預金して下さってもけっこうなんでありまして、そうなれば、貸し出し金利も下り、さらに預金金利も下る、こういうような状態をここで馴致しなければならぬというのが私のねらいであります。
  154. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私のお尋ねしたのは、十万円まではすでに免税になっておる、しかもこれを幾つも分割すれば百万円、二百万円程度でも免税になる。としたならば、今度の免税で恩典を受けるものは、巨額な預金をしておる方だけである。従ってこれによって貯蓄がふえるとすれば、そういう大きな金持ちの預金だけがふえるという結論になるのだが、大臣はそうお考えにならぬのですか。
  155. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 従来の預金政策で、果してそういうふうに分けてどれだけやっているか、これは非常に議論の対象になると思いますが、私の考えておりますことは、さようにしてかりに現在でも分けておるとすれば、現在のところでも相当大きな額が——やはり大金持ちの人が免税の恩典に浴しておる。従いまして私は、この際資本蓄積という重大な、また大きな目的を達成するために、税を全部やめて、そして同時に国民運動を展開してこの貯蓄の増強をする。それは同時に、他面において消費の節約を伴うことであり、物価の安定を期するゆえんである、こういうふうな考慮から来ておるのであります。別に私は、たとえば今お示しのように、一億も持っておるような預金者で、かりに一億の金を銀行預金にして下さる人があれば、それは私はけっこう、歓迎してよろしいと思うのでありますが、それを目的にしているわけでは決してないのであります。
  156. 奧村又十郎

    ○奧村委員 私は、非常血税法上の犠牲を払うて貯蓄させようということであるが、むっと方法を変えて、税の公平を犠牲にせずに、大衆の零細な貯蓄を進める方法がもっとほかにあるじゃないかと思う。それをお考えにならずに、大金持ちの預金を特に免税すということによって貯蓄を増強しようというのであるが、そこに私は考えの相違があると思う。もっと大衆の零細な貯蓄を進めようという方策を大臣は御研究になって、これを実現しようとなされはかったか。
  157. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 結局大衆の預金がふえるということには、物価が安定しておるということが大きな手段であると考えておりますが、やはり物価を安定させるのには、消費のいわゆる節約、こういうことが必要であると思います。そういう結果から、一方において消費の節約を伴わずしては銀行預金もふえないだろう、こういうふうな考え方をいたしております。従って銀行預金をふやす誘因を与えることが消費節約にもなり、物価の安定にもなる、こういうふうに考えて、決して大衆の多くの人々の預金をねらいにいたしていないことではないのでありまして、私はこのやり方で、十分基本において物価が安定しつつ、つましい生活になる、こういうふうな考え方をしております。従ってたんす預金とかいうふうなものが将来において再びあり得る状態が社会情勢で馴致されても、物価が安定してくると、これが銀行預金に回っていく、こういうことも自分としてはねらいにいたしております。
  158. 奧村又十郎

    ○奧村委員 大衆の零細な貯蓄も、物価さえ安定すれば進むということでありますが、それならば、今の分離課税について、わずか五%の課税率ならば、これをしもわざわざはずさなければならぬことはないのじゃないか、そこをお尋ねいたします。
  159. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは貯蓄の増強をやる場合に、しからば今日大衆の人がすべて預金をしておるかということで、私は全体の社会情勢というものを貯蓄増強に打ち込むという態勢において、大衆の預金量もふえていく、こういうふうな考え方をいたしておるわであります。
  160. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ほとんど意見が食い違うのですが、大臣は所得税法において、もし国民が税金をごまかしたならば、どういう刑罰を受けるか御存じですか。所得税法において、最高の刑罰は何を受けるか御存じですか。
  161. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 むろん脱税になるのでありますから……。
  162. 奧村又十郎

    ○奧村委員 脱税の刑罰は……。
  163. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 具体的の刑罰は、私はほんとうを申すと知りませんが、むろん体刑までいくのではいかと思います。
  164. 奧村又十郎

    ○奧村委員 体刑は三年の体刑を受けるのですが、日本の税の刑罰は世界に比べて重い。それほど重く課税の義務を課してあるのに、大金持ちの銀行預金、あるいはその他の預金だけは税金をかけないということは、いかに税の公平の原則を破るか。これは議論になりますから言いませんが、それによって、そういう担税力のある銀行預金者に全然所得税をかけない。従って住民税の所得割もかけない、こういうふうなことによって、その心理的影響はどうなるとお考えになるか。たとえば、これからわれわれは農業課税の減免を考えていかなければならぬ。あるいは勤労者の減税考えなければならぬ。事業税撤廃の陳情もある。そういった場合に、どうしても税の公平上がまんすべきものはがまんしてもらはなければならぬ。ところが、一方こういう大金持ちの預金の利子の税を全免するというふうなことをしておいて、ほかの大衆の陳情を押えていくことができるか、不平を押えていくことができるか、その心理的影響を大臣はお考えになったか。国の財政を担当する責任ある大臣として、この点をお考えになって今の処置をなさるのかどうか。
  165. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 むろんそういう点は十分考えての上であります。私が考えますことは、むろんしばしば申し上げましたように、税理論の公平な見地からいえば、いろいろ批判がある、このことは私も初めから率直に申し上げておるわけであります。ただしかし、一方かりに大口の預金にしても、預金者が将来の物価変動の危険を見つつ非常に安い金利——また預金がふえれば預金利息というものはむろん下っていく。そういう安い金利でがまんして、これを産業のために使わせるわけです。こういう点もやはり全体として考慮する必要があるだろう、こういう考え方をいたしておるわけであります。
  166. 奧村又十郎

    ○奧村委員 大臣にお尋ねします。言葉じりをつかまえるわけではありませんが、預金者の預金金利は安いから、なるべく税金免税していく。ところが私の調べた範囲におきまして、日本の預金の金利は、諸外国の預金金利よりはずっと高いように思う。米国において頭金の金利は幾らになっておりますか。英国において、あるいは西ドイツの預金金利は幾らですか。日本の預金の金利と比較して、日本の方は安いのですか、その点を一つお尋ねいたします。
  167. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 むろん日本の預金の金利が高いから問題があるのでありまして、ですから、ここでこういう資本蓄積をはかって、預金の金利も貸出金利も下げることが、日本経済を再建する上においてぜひとも必要であるという見地に立っておるので、私は先ほど預金の金利が安いから税金はかけぬでもいいとか、安いからかけない、そういうわけではないのであります。ただ全体として、かりに大口の預金者というものから税をとらんでけしからぬじゃないかというような考え方に対しまして、そういうふうに物価の変動にもさらされつつ、しかも安い金利でがまんをして、日本産業の再建に最も必要な資金を供給するという点も、別に税と関達するのではないが、大口預金者の立場を考えました場合、そういう点もやはり考えてみる必要がある、こういうふうにただ申したわけであります。
  168. 奧村又十郎

    ○奧村委員 米国では預金金利は六カ月以上で二分五厘、イギリスで四分、日本は一年以上ですと六分、非常に日本は金利が高い。ところが一方英国や米国では、そういう預金金利に対して総合課税で税金をかけている。日本は分離課税で税率を落しているところへ、今度は全然税金をかけない。こちらの方が金利の高いところへもってきて、税金をかけないということになると、諸外国と比べると、預金者にべらぼうに国が保護を与えるということになるのだが、そういうことを大臣は御研究の上でなさるのですか。
  169. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 そういうふうに預金金利が高い、これをいかに安くするか、下げるようにするかという考え方からきているのであります。
  170. 奧村又十郎

    ○奧村委員 どうも食い違ってのれんと棒押しのような感じがする。そこでお尋ねいたしますが、かりにここに財産を持っている人が預金にする、貸付信託などにすれば、五年ものなどになりますと年九分近くの利子がつく、これには所得税も住民税もかからない。ところが一方株式を持ちますと、全株の相場は下っておりますけれども、しかし大多数の株主というものは長期に株を持っていますから、株主の株券を持っている立場からいきますと、今度の免税によって、株を持っているより預金を持っている方がずっと有利になる。従って今回の制度によって銀行の預金はふえるでしょう。しかし株式の増資払い込みというものは鈍ってくる、そうすると金融資本がどんどんふえていくが、産業資本はふえない。ところが今日の日本においては、どうしても自己資本蓄積が大事である、今日の日本の要求から、同じ資本蓄積であるが、自己資本の増強についてこれは逆行するのじゃないか、かような感じがいたしますが、大臣の御所見はいかがですか。
  171. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 私の考えでは、資金もふえ、かつ一般の金利も下る、こういうことによって、株式発行にしても順調になっていくのでありまして、特に株式に悪い影響ないと思います。また直接家の関係においても、個人的の株式配当については、また別途に処置を講じてあるので、いわゆる自己資本、言いかえれば株式を新規発行することに支障がないかという質問に対しては、私はさように考えておりません。
  172. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それでは非常な犠牲を払うて銀行に資金を蓄積させようというのでありますが、さらに銀行の経理についてお尋ねをいたしたい。そういう犠牲を払うて銀行の金を集めるが、銀行に集まったその金が、必ずしも国の経済再建に最も有効に利用されるという保証は私はないと思う。減税主でして銀行に金を預けるのはいいが、その預かった金を銀行は自由に融資しておる。国家の真に必要な経済再建に有効にその資金を動員するような態勢になっておらぬと思う。この点について大臣はどう考えるか。
  173. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えを申し上げます。そういうふうな、国家が利益を与えて蓄積される資金であるから、これには当然ひもがついて、国家的な目的に使わるべきであるという御意見については、私はそうだと思っています。ただそれをどういうふうな方法でやるかという点において意見の相違があり得るかと思うのであります。私の考えでは、今回経審のうちに産業計画を立案いたします産業計画委員会といいますか、そういう一つ委員会ができまして、総合的見地から日本の産業計画をやる、どういうふうな産業をどういう規模において今後育成し、あるいは拡大していくか、あるいは維持していくか、こういうことが策定されるわけです。この策定に基いて、これは何もどの資金この資金ではありませんで、全体の市場資金を流していく。それで、それならその策定に基いてすぐ法律——あるいは前の資金調整法的な、ああいう統制的なものでいくかどうかという問題はあるのでありますが、私はそれを一応、今日銀行にあります融資自主規制委員会を活用いたしまして、その計画に沿って自主的にやらせる、なおしかしそれが所期のようにいかぬようになれば、私はこの資金が国家目的に沿うて流れるように措置をとりたい、かように考えておるわけであります。
  174. 奧村又十郎

    ○奧村委員 ただいま大臣の言われた、その産業計画委員会とか融資自主規制委員会とかいうのは、法制的にできておるのですか。それからそれはどこにあるのですか。それを具体的にお尋ねいたします。
  175. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 これは、今回経審庁の中にそういう委員会ができることになっておるわけです。
  176. 奧村又十郎

    ○奧村委員 それは法制的にできておるのですか。もう一つ、金融の規制委員会というのは、これも法制的にできているのですか。計画だけしても、それを銀行が実行しなければ何にもならぬが、実行の保障はとれるのですか、その点をお尋ねしたい。
  177. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。自主規制委員会は法的なものではありません。これは自主でありまして、銀行協会のうちにある委員会であります。これは今日不用不急の資金を押える役目を果しておる自主的なものであります。がしかし、先ほど申しました経済審議庁の策定に基く産業計画に沿って資金を流すということが自主的にいかぬとなれば、むろん私は、必要があれば法的な措置もとる、こういうふうに考えておるわけであります。
  178. 古川丈吉

    ○古川委員 関連質問……。先ほどの奧村委員の質問に関連したことでありますが、預金利子に対する税の廃止は、われわれは当初は、一千億円の預貯金の増額になり、そのふえる何割かを国家的な目的に使われるのだと思っておったところが、この間からの説明で、そういうことでないということがわかったのであります。ただ先ほどから質問のありましたように、株式の配当に対する所得と預貯金の利子に対する所得のつり合いがとれない。今度株式配当に対しては一五%を一〇%に減税されるが、全然ないのと一〇%では非常につり合いがとれないじゃないか。この預貯金の利子と株式の配当とは性質が違いますが、この開きは多過ぎはしないか、こう考えるのですけれども大蔵大臣はどう考えられるか。これがまず一つ。  それから預貯金の増加によって資金が潤沢になって産業の振興に役立つ、こういうようなお話でありますけれども、ただいま奧村委員からもお話がありました通りに、会社が増資する場合において非常に差しつかえる、株の持ち手が消極的になる、こういう建前からいうと、資本が金融機関に非常に片寄って、金融機関は従来でも強いのに、さらにこれを強くする結果になり、増資等の場合においては非常に差しつかえる。これが産業の将来のために非常に影響をもたらす、こう考えられるのでございますが、この点について大蔵大臣の御意見はどうでしょうか、お伺いしたい。
  179. 一萬田尚登

    ○一萬田国務大臣 お答えします。今度の預貯金に対する税法上の臨時的な措置と株式に対する税の関係でありますが、株式につきましては、御承知のように税法上の優遇措置を、株式発行についていろいろとっております。また株式配当についても、源泉税率についても、あるいはまた総合的な控除についても、なお今回はまた法人税の軽減とか、いろいろあの手この手で十分考慮いたして参っておるのであります。私どもとしてはバランスがとれていると考えます。  それからもう一つ資金の流れ、こういうように多く集まった資金が思うような国家的目的に使われる保障がない、そういう点についての御質疑と思いますが、これについては先ほど申しましたように、いろいろ考え方があると思うのです。こういうふうにして集める資金だから——それによってどれほど資金が集まるかということはしばらく別として、むろん預金の増大が期待できるのでありますから、ある程度のものは上から縛る、こういう考え方も、私は全然否定するわけでないのでありますけれども、これはやはり時の問題でありまして、今の日本の経済の状況下においては、さような方法にすべきではない。特に市中銀行には、まだ日本銀行に対して二銭五厘という高率の借入金が千億を越えて存在しておることでもあり、こういう特別に高い高利、こういうものを借りて市中銀行がさらに融資をしておるという点においても、金利は下りにくい状況にあるのであります。そういうふうな見地から、何といってもまず資本の蓄積をここで十分ならしめることに重点を置く、そうして資金の需給から自然金利も下ってくる、こういうふうに持っていきたいというねらいであります。そうしてこの重点的に資金を流す点については、先ほどお答え申し上げた通りであります。
  180. 松原喜之次

    松原委員長 本日はこの程度にとどめ、次会は、明二十日午前十時より理事会を開き委員会は午前十時三十分より開会することといたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後四時二十九分散会