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森参考人 私はただいま御紹介を受けました
関西電力の副
社長森でございます。今日
愛知用水公団事業に対する御
審議をなさるに当りまして、
関西電力としての
意見を申し述べろ、こういうことでありまして、その機会を与えられましたことをありがたく感謝いたします。
この
愛知用水の問題は、御
承知のように
木曾川の
上流に
ダムを作りまして、その水を一部
使い、なお現在
木曾川におきまして未
利用の約四〇%を
愛知用水に使う、こういう御
計画でありまして、
上流のそういう
設備を作られることでありますし、その箇所におきまして私
どもが
水力発電所をたくさん持っております。それに
影響するところはもちろんよい結果を与えるものでありまして、私
どもといたしましては、極力御賛同申し上げ、御協力を申し上げたいと思うのであります。ところがこの
愛知用水の問題はこの水の
使い方、
放流計画といいますか、水の
使い方によりましては、本年の六月二十二日
農林省からお
出しになっておりますこの
パンフレット通りになかなかいかないのでありまして、
使い方によりましてはそれほどの
効果も上らないのではないかということを、一応
心配するのでありまして、その点につきまして、少しばかりここに御
意見を申し上げたいと思うのであります。大体の
要旨は皆様のお手元に配付してあります約四ページにわたるガリ版がございますが、これに大体書いてございますので、詳しくはこれをごらん願いたいと思います。私はただその中から要点だけをかいつまんで申し上げたいと思うのでありますが、大体この問題につきましては四点あるのでありまして、その
一つは、上にそういう
設備をせられまして
放流すると、
下流の
発電所に
影響する
キロワット・アワー、それにつきまして御
意見を申し上げます。なお今度
お作りになります
牧尾橋の
堰堤にくっつけて作られる
発電所に関しても少し御
意見を申し上げたいと思うのであります。それからなお御
承知のように別に
地図がくっついておりますが、この
地図をごらん願いますと、
木曾川の一番
最後の地点に
今渡という
発電所がございます。これは
木曾川と
支流の飛騨川とが合流しましたところにある
発電所でありまして、わずか二万キロばかりの
発電所でございますが、この
発電所から
下流に相当川の水を
利用します
用水があります。それは
愛知用水とか木津
用水とか
羽島用水、現在名古屋市の
水道もそれからとっておるのでありますが、そういうところに
影響があるのでありまして、それに悪
影響を及ぼさないように運営せられることが必要である、こういうことなのであります。それからもう
一つは、御
承知のようにこの
地図の一番上にあります
三浦の
堰堤がありますが、この
三浦の
堰堤は、
会社が非常な金をかけましてあの
堰堤を作り、そうしてそれに
貯水いたしまして、
渇水期にこの水を
利用する、こういう
計画なのでありまして、
愛知用水の
計画に当りましてこの
三浦の
貯水池の水を御
計画の中にお入れになることは困る、こういつたようなことについて御
意見を申し上げたいと思うのであります。
まず第一番に
下流の
発電所の増力の問題でございますが、これは御
承知のように私
どもの
兼山の
発電所の
湛水池から水を取り入れてそして
愛知用水にお
使いになるのであります。ところがこの水でありますが、このお
使いになります水は
先ほども申しましたように、
本流の
発電用以外に残った水を四〇%と、それからこのたび
支流王滝川の
上流に
お作りになります
牧尾橋の
堰堤の水であります。これをうまくお
使いになるということなのでありますが、この
有効落差六百九十四・二メートルを
使いまして、現在
発電所が四十五万八千八百キロワットの
設備を持っております。そういたしまして
公団の
事業計画は、
下流の
牧尾橋の
堰堤から下の
発電所、つまり一番上は
常盤でありますが、
常盤から
下流今渡までの年間の
出力増加を六千二百六十万
キロワット・アワーと見込んでおられるのであります。この
発電所は御
承知のように
水路式の
発電所もありますし、また
堰堤と申しますほど大きなものではありませんが、
調節式の
発電所もあります、それで私
どもが長年の経験から申しますと、
三浦の
貯水池で
放流いたしました水が
最後の
今渡の
発電所まで来ますのに約十一時間もかかるのであります。従いまして今度できます
牧尾橋の
堰堤から
放流なさる水もおそらく十時間くらいかかるだろう、従いまして水の
放流でありますが、
灌漑用水なり
工業用水は二六時中必要なものでありますので、ちょうど
兼山の
取入れ口に必要な時期に水が到達するように上から
放流するということは、なかなか困難なことであります。おそらく御
計画といたしましては、大体必要な時期に二六時中ずっと水をお流しになるのじゃないかというふうに
考えるのであります。ところが御
承知のように、
電気の
需用から申しますと、深夜は非常に
需用が落ちるのであります。私
どもの
系統で申しますと、大体百七十万キロくらいがピーク時の
ロードでありますが、それが深夜になりますと七十万くらい落ちるのであります。そういたしますと、上から
放流せられた水は、ある
発電所では深夜にくることもあります。ちょうどいいときに来る場合もありましょうが、深夜に来る場合もあります。この深夜に来ました
電気は実は何にもならぬのでありまして、結局これは余剰ということになるわけであります。そういう
関係でありまして、この六千二百万という
キロワット・アワーは、
放流の方法によりましては必ずしもこういう
効果は上らないのじゃないかということを憂えるわけであります。なお一応その六千二百万という
数字を
愛知用水計画概要の中にはそのまま取り入れられまして、それに単価何がし、三百
幾らという
数字をかけておるようにとれるのでありますが、これは私
どもから申しますと、
下流にはなるほど六千二百万ふえるかもしれませんが、
愛知用水としましてはこれに対して何ら投資することもなしに
会社の
設備をそのまま使って発生するから、その増加した
電力量に対する
料金をみんな払え、こういったような御
計算でありますが、これは私
どもから申しますと少し御無理なように
考えるのでありまして、これにつきましてはただいま通産省の方におかれまして適当な
数字を出すということでありますから、私
どもはそれに期待をしておるわけであります。
なお二番目といたしまして、
堰堤にくっついた
発電所であります。これは一万四千キロの
発電所を御
計画のようであります。そうしてその
発電所の
建設費は七億あるいは八億ぐらいをお
考えになっておるようであります。一万四千キロで七億あるいは八億ということは現在の
建設の
数字から申しますと非常に安いのでありまして、
キロワット当りの
建設費が五万円ないし六万円ということなんでありまして、おそらくこの
数字では
建設は困難ではないかと思われるのであります。なおその上にこの
発電所は御
承知のように、
満水面から
最後の水の
利用面までの
落差の
変動が非常に大きいのでありまして、五十メートル以上をお
考えになっております。そうしますと、私
どもが
発電所を
計画します場合に、そういう高い
落差の
変動に対する
発電所の設計は非常にむずかしいのでありまして、極端なことを申しますと、
一つの水差では間に合わないのではないかというふうに
考えるのであります。
普通水力発電所で
落差の
変動を使う場合にこのごろの技術で申しますと、おそらく二十メートルとか二十五メートルぐらいが最も適当なのではないかと思うのであります。そういたしますと、五十メートルの水深を
利用しますと、二十五メートルのもので、最初の二十五メートル、その次の二十五メートルと二段に
考えなければいかぬじゃないかしらぬというふうに思うのであります。この技術的な問題は非常にむずかしいのでありまして、その点が私
ども実はわからないのでありますが、そういうことにでもなりますと、
建設費はさらに高くなってくる、こういうふうに
考えるのであります。なお
先ほども申し上げましたように、この
堰堤から
放流なさる場合に必要な時期に二六時中流すことになりますと、その中の水の一
部分は
発電せられてもこれは
無効放流になり、この
計画の中にあります三千二百万
キロワット・アワーというのも、これはそのまま金にはならないものと私
どもは
考えるのであります。私
ども系統全体として、
平均の
利用率というか
ロード・
ファクター、
負荷率と申しますが、これは七二、三%、七七%ぐらいが現在のところの
平均の
ロード・
ファクターでありまして、そういたしますと、この御
計画の中に水の
利用につきまして大体九〇%ぐらいをお
考えになっておるようであります。九〇%が
電気になるという御
計画のようでありますが、実際はもっと
利用せられる
電気の量が少いのじゃないかと思うのであります。そういう点について私
どもとしては少し疑念を持っておる次第であります。
それからなお第三番目といたしましては、
先ほどちょっと触れましたが、
今渡の
堰堤から
下流におきまして、
愛知用水その他の
用水関係でわれわれは非常にきつい制約を受けております。といいますのは、これは別に資料を差し上げておりますが、
今渡堰堤操作規程というのがあります。
今渡の
堰堤に到着します水が百
立米以下になった場合はその水はそのまま
下流に
放流しろ、百
立米を越す場合には
堰堤によって任意調整してよろしい、こういうことなのであります。それで
今渡堰堤で百
立米以下になりました場合に、これは非常に
渇水した時期なのでありますが、
愛知用水にも水がほしい、それから
今渡堰堤にも
放流しなければならぬという場合に、これはどういうふうに御処理なさいますか、私
どもとしましては、両者の間に話ができれば私
どもは別に何ら申すことはないのでありますが、
下流の今のわれわれに対する責任をそのままにしておかれまして、
愛知用水に必要なだけ水をお取りになるということは私
ども困るのであります。なぜこういうことを申し上げるかと申しますと、この御
計画でありますが、大体
牧尾橋の
堰堤には三月から四、五と三
月間水を貯溜せられまして、そうして六月から
放流するという御
計画のようであります。ところが私
どもが過去十カ年の毎年々々の
平均流量をもって
計算してみますと、
牧尾橋の
堰堤に
一ぱい水のたまる年はもちろんありますが、たまらない年が十年の間に二年ぐらいありそうなのであります。そういう点をどんなふうにお
考えになっていらっしゃるかという点であります。それからまた、初めはどうも四月から四、五と
貯水せられる御
計画であったようでありますが、今度は三月からという御
計画のようであります。三月も、これは日にちによるのでありまして、三月の初めから貯溜せられますことは——御
承知のように、日本は三月の十五日まではまだ
渇水であります。三月十五日が一番
渇水なのであります。それを三月の初めから貯溜せられますということは、私
どもの
電気事業にも相当
影響するところが大きいのではないかと思うのでありまして、この点も
一つお
考えを願いたいと思います。
それから
最後の問題といたしまして、これも非常に
渇水した場合なのであります。この
地図にありますように、
木曾川の最
上流に私
どもは
三浦堰堤というのを作っておりまして、そうしてそこに水をためております。これは
木曾川水流の全部の
発電所ここの水が
影響をするのでありまして、これは
渇水期のために貯蔵しておるのであります。それで
渇水しまして
愛知用水の方にも水がなくてお困りになるという場合に、
上流の
三浦に水があるじゃないか、あれを
放流してくれということは
電気事業者として非常に困ると思うのでありまして、そういうことは絶対にないように
一つお
考えおきを願いたい。これが大体の
要旨でございます。私
どもといたしましては、
先ほど申し上げましたが、この
事業の成功をすることをこいねがいまする
関係から、できるだけのことは御協力申し上げますが、そういったような場合がありましても、これに協力しなかったからはなはだ
電気事業はけしからぬというおしかりをちょうだいしないように、この際お願いしたいと思うのであります。それからなお六月二十二日ごろ
農林省としてお
出しになりました
愛知用水事業計画概要の一番しまいのところに
償還金分担計画というものがありますが、この中の二番目に、
電気部門における
償還は
年利九分、
据置を含み二十五年で
償還する、こういうことが書いてあります。それから第三番目に、
水道部門における
償還は
年利六分五厘、
据置を含み二十五年で
償還する、こういうことなのであります。こういうことになりますと、同じ金を使われまして、
電気事業が年九分であり、それから
水道の方に対しては六分五厘という扱い方をしておられるのでありまして、
電気事業といたしましては、できることなら六分五厘を適用していただきたい、そうしまして
電気料金を少しでも安くしていただくようにお願いしたいと思うのであります。御
承知のように、
電気料金は今日では私
ども上げるとしましても非常に問題がありまして、これは当分上らないことだと思うのであります。この
意味におきましては特にお願いしたいと思います。私の
意見はこれで終らしていただきます。